熱伝導性シート及び熱伝導性シート包装体
【課題】優れたハンドリング性および取り付け性を有する熱伝導性シート、及び該熱伝導性シートを備える熱伝導性包装体を提供する。
【解決手段】熱伝導性シート包装体11は、熱伝導性シート21(シート21)と、袋状をなし、シート21を包装する包装体31とを備えている。シート21は、発熱体と放熱体との間に介在して用いられるシート本体22と、該シート本体22の外面22a上に設けられる粘着層23とを備えている。シート本体22の静摩擦係数は1.0以下であり、粘着層23は、シート本体22に比べて高い粘着性を有するとともにシート本体22の外面22aの一部に設けられている。包装体31は、開口32と、該開口32から延びる切り欠き33とを有しており、粘着層23は切り欠き33から露出している。
【解決手段】熱伝導性シート包装体11は、熱伝導性シート21(シート21)と、袋状をなし、シート21を包装する包装体31とを備えている。シート21は、発熱体と放熱体との間に介在して用いられるシート本体22と、該シート本体22の外面22a上に設けられる粘着層23とを備えている。シート本体22の静摩擦係数は1.0以下であり、粘着層23は、シート本体22に比べて高い粘着性を有するとともにシート本体22の外面22aの一部に設けられている。包装体31は、開口32と、該開口32から延びる切り欠き33とを有しており、粘着層23は切り欠き33から露出している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱体と放熱体との間に介在して用いられ、発熱体から放熱体への熱伝導を促進する熱伝導性シート及び熱伝導性シート包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータのCPU(中央処理装置)を代表とする電子素子の高性能化に伴い、電子素子の消費電力および発熱量が増大している。電子素子の処理能力は熱により低下する。よって、電子素子の性能を維持するために電子素子の蓄熱を回避する必要があり、電子素子の冷却が重要な課題となっている。そのため、発熱体である電子素子と、ヒートシンク等の放熱体との間に介在して用いられる熱伝導性シートには、優れた熱伝導性能が求められている。
【0003】
特許文献1には、繊維長が10mm以下である熱伝導性繊維を含有する組成物からなる熱伝導性成形体が開示されている。特許文献2には、耐熱性高分子マトリックスと、熱伝導性繊維とを含有する組成物からなる熱伝導性成形体が開示されている。これらの熱伝導性成形体は、熱伝導性繊維が一定の方向に配向されることにより、熱伝導性能を高めている。
【0004】
特許文献3には、グラファイトシートと、該グラファイトシート上に形成された絶縁膜とを備える熱伝導性シートが開示されている。絶縁膜は、グラファイトシートの絶縁を行うとともに該シートの表面からのグラファイト粉末の脱離を防止し、更に熱伝導性シートの機械的強度を向上させている。
【0005】
特許文献4には、高分子部材と熱伝導性部材とからなり、非粘着化処理が施されている熱伝導性シートが開示されている。この熱伝導性シートは、非粘着化処理により、その表面に対して物体が圧接された場合にも、当該物体との接着状態が防止される。
【特許文献1】特開平4−173235号公報
【特許文献2】特開平11−46021号公報
【特許文献3】特開2001−287299号公報
【特許文献4】特開2001−316502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1及び2の熱伝導性成形体には、その粘着性が高いことから、運搬時などの取扱い性(ハンドリング性)が低いという問題があった。熱伝導性成形体の粘着性は、該熱伝導性成形体の硬度が低いほど高い。そのため、上述の問題を解決する方法として、例えば特許文献3に開示されているように、グラファイトシート等の硬度が高い層を熱伝導性成形体の外面に形成することによって熱伝導性成形体の粘着性を低下させる方法が挙げられる。しかしながら、この方法では、熱伝導性成形体の硬度が高いことから、該熱伝導性成形体の接触熱抵抗値が高くなって熱伝導性能が低下するという問題がある。更に、熱伝導性成形体が発熱体および放熱体に挟持される際に、熱伝導性成形体と、発熱体および放熱体との密着性を高めるために、それらに外方から大きな荷重を加える必要がある。そのため、この大きな荷重によって発熱体に不具合が生じるおそれがあるという問題がある。また、特許文献4の熱伝導性シートのハンドリング性は、該熱伝導性シートに非粘着化処理が施されることにより高くなる。しかしながら、この非粘着化処理に起因して、熱伝導性シートが発熱体に取り付けられる際に該シートの位置ずれが生じ易く、熱伝導性シートの取り付け性が低いという問題があった。
【0007】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、優れたハンドリング性および取り付け性を有する熱伝導性シート、及び該熱伝導性シートを備える熱伝導性包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、発熱体と放熱体との間に介在して用いられるシート本体と、該シート本体の外面上に設けられる粘着層とを備える熱伝導性シートであって、前記シート本体の静摩擦係数が1.0以下であり、前記粘着層は、前記シート本体に比べて高い粘着性を有するとともに、シート本体よりも小さい外形を有する熱伝導性シートを提供する。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記粘着層の厚さが50μm以下である請求項1に記載の熱伝導性シートを提供する。
請求項3に記載の発明は、前記粘着層が前記シート本体の周縁部に設けられている請求項1又は請求項2に記載の熱伝導性シートを提供する。
【0010】
請求項4に記載の発明は、前記シート本体の粘着層が設けられた外面において、該外面全体の面積に対して粘着層が占める面積の割合が30%以下である請求項1から3のいずれか一項に記載の熱伝導性シートを提供する。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の熱伝導性シートと、袋状をなし、前記熱伝導性シートを包装する包装体とを備える熱伝導性シート包装体であって、前記包装体は、開口と、該開口に連通する切り欠きとを有し、前記熱伝導性シートが包装体に収容された状態で、熱伝導性シートの粘着層が前記切り欠きから露出している熱伝導性シート包装体を提供する。
【0012】
請求項6に記載の発明は、前記包装体が透光性を有する請求項5に記載の熱伝導性シート包装体を提供する。
請求項7に記載の発明は、前記シート本体の静摩擦係数が0.3以下である請求項5又は請求項6に記載の熱伝導性シート包装体を提供する。
【0013】
請求項8に記載の発明は、前記粘着層を覆う離型シートを更に備える請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の熱伝導性シート包装体を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、優れたハンドリング性および取り付け性を有する熱伝導性シート、及び該熱伝導性シートを備える熱伝導性包装体が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を熱伝導性シート包装体に具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1(a)及び(b)に示すように、本実施形態の熱伝導性シート包装体11は、熱伝導性シート21(以下、単にシート21という。)と、該シート21を包装する包装体31とを備えている。シート21は、熱伝導性高分子組成物(以下、単に組成物という)から成形されるシート本体22と、該シート本体22の対向する一対の外面22aにおける一方の外面22a上に積層される粘着層23とを備えている。シート21は発熱体と放熱体との間に介在して用いられ、発熱体から放熱体への熱伝導を促進する。
【0016】
シート21には、熱伝導性能、ハンドリング性、及び取り付け性が具備されている。熱伝導性能は発熱体から放熱体への熱伝導のし易さを表す指標であり、主にシート本体22の熱伝導率と、熱抵抗値と、発熱体および放熱体との密着性とに起因している。シート本体22は、熱伝導率が高いほど、熱抵抗値が小さいほど、且つ発熱体および放熱体との密着性が高いほど、発熱体から放熱体への熱伝導を促進し、熱伝導性能に優れたものとなる。
【0017】
ハンドリング性はシート21の運搬時などにおける取扱い易さを表す指標であり、主にシート本体22の粘着性に起因している。シート21は、シート本体22の粘着性が小さいほど運搬時などに容易に取り扱うことができ、ハンドリング性に優れたものとなる。
【0018】
取り付け性はシート21の発熱体または放熱体への取り付け易さを表す指標であり、シート本体22の粘着性と、粘着層23の粘着性とに起因している。シート21は、シート本体22の粘着性が低いとともに粘着層23が適当な粘着性を有することにより、位置ずれが発生することなく発熱体または放熱体に取り付けられ、取り付け性に優れたものとなる。
【0019】
組成物は、高分子マトリックスと、熱伝導性充填材とを含有している。高分子マトリックスは、熱伝導性充填材をシート本体22内に保持する。高分子マトリックスは、シート本体22に要求される性能、例えば硬度等の機械的強度、耐熱性等の耐久性、又は電気的特性に応じて選択され、高分子マトリックスとして例えば熱可塑性又は熱硬化性の高分子材料が選択される。熱可塑性の高分子材料の具体例としては、熱可塑性樹脂材料及び熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0020】
熱可塑性樹脂材料の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のエチレン−αオレフィン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリフッ化ビニリデン及びポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、ポリフェニレン−エーテル共重合体(PPE)樹脂、変性PPE樹脂、脂肪族ポリアミド類、芳香族ポリアミド類、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル等のポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリル酸類、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルケトン、ポリケトン、液晶ポリマー、シリコーン樹脂、及びアイオノマーが挙げられる。
【0021】
熱可塑性エラストマーの具体例としては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体及びその水添ポリマー、スチレン−イソプレンブロック共重合体及びその水添ポリマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、及びポリアミド系熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0022】
熱硬化性の高分子材料の具体例としては、架橋ゴム、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、及びジアリルフタレート樹脂が挙げられる。架橋ゴムの具体例としては、天然ゴム、アクリルゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ニトリルゴム、水添ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、塩素化ポリエチレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、及びシリコーンゴムが挙げられる。
【0023】
熱伝導性充填材は、シート本体22の熱伝導率を高めることにより、シート21の熱伝導性能を高める。熱伝導性充填材の形状としては、繊維状、粒子状、板状等が挙げられるが、好ましくは熱伝導性充填材の少なくとも一部が繊維状に形成されている。以下においては、繊維状に形成された熱伝導性充填材、即ち繊維状充填材を含有するシート21について説明する。繊維状充填材の具体例としては、炭素繊維、金属繊維、及びガラス繊維が挙げられる。これらは単独で繊維状充填材を構成してもよいし、二種以上が組み合わされて繊維状充填材を構成してもよい。これらの中でも、シート本体22の熱伝導率が高いことから、炭素繊維が好ましい。
【0024】
炭素繊維は、溶融紡糸した繊維状ピッチを不融化処理した後、炭素化又は黒鉛化処理することにより、あるいは、有機繊維を炭素化又は黒鉛化処理することにより製造される。炭素繊維の繊維長は、炭素繊維がその製造中又は製造後に粉砕されることにより、任意に調整される。炭素繊維の粉砕は、例えばハンマーミル、ボールミル、振動ボールミル、ブレードミル、ジェットミル、トルネードミル、又はミルミキサーを用いて行われる。炭素繊維の製造中又は製造後に切断機によって粉砕されることにより得られるチョップドファイバーが前記各装置を用いて更に粉砕されることにより、繊維長分布の幅が狭くてシート本体22に適した炭素繊維が得られるが、チョップドファイバーのままの炭素繊維が用いられてもよい。
【0025】
繊維状充填材はシート本体22中で一定方向に配向されており、発熱体からの熱は、繊維状充填材の配向方向に沿ってシート本体22中を伝導する。そのため、繊維状充填材の平均繊維長は、繊維状充填材の配向方向におけるシート本体22の厚さ以上であることが好ましい。この場合、シート本体22の熱伝導率は、熱伝導の方向に沿って繊維状充填材が切れ目なく存在していることから容易に高められる。繊維状充填材の平均繊維長が繊維状充填材の配向方向におけるシート本体22の厚さ未満である場合、例えば配向した繊維状充填材同士が重なり合うことにより、シート本体22の熱伝導の方向に沿って熱伝導性繊維が切れ目なく存在していることが好ましい。
【0026】
繊維状以外の形状の熱伝導性充填材、即ち非繊維状充填材の材質は、シート本体22の熱伝導率が高いことから、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、及び二酸化ケイ素から選ばれる少なくとも一種が好ましい。
【0027】
組成物中の熱伝導性充填材の含有量は、90質量%以下が好ましい。熱伝導性充填材の含有量が90質量%を超えると、シート本体22の柔軟性が低いことから、シート本体22が脆くなるとともに、シート本体22の発熱体及び放熱体の表面形状への追従性が低下するおそれがある。組成物は、前記各成分以外にも、例えばシート本体22の硬度を調整するための可塑剤、及び耐久性を高めるための安定剤を含有してもよい。
【0028】
図2(a)〜(c)に示すように、シート本体22は、高分子マトリックス24と、熱伝導性充填材25とを備えている。熱伝導性充填材25は、繊維状充填材26と、粒子状充填材27とを有している。繊維状充填材26はシート本体22中で一定方向に配向されている。例えば、図2(a)〜(c)に示すシート本体22においては、繊維状充填材26はシート本体22の厚さ方向に沿って配向されている。そのため、シート本体22において、厚さ方向の熱伝導率の値は、幅方向の熱伝導率の値に2〜数百を乗じた値と等しい。
【0029】
シート本体22において、繊維状充填材26の配向方向と交差する外面22a上には、繊維状充填材26が露出している。即ち、図2(a)〜(c)に示すシート本体22における繊維状充填材26は、シート本体22の幅方向に沿って延びるとともに対向する一対の外面22a上に露出している。シート本体22の外面22a上に露出している繊維状充填材26において、外面22aに交差した状態で露出している繊維状充填材26の割合は、50〜100%が好ましい。
【0030】
外面22aに交差した状態で露出している繊維状充填材26の割合が50%未満の場合、即ち、外面22aと平行に延びた状態で露出している繊維状充填材26の割合が50%を超えると、繊維状充填材26の配向が不十分であることから、繊維状充填材26の配向方向におけるシート本体22の熱伝導率が低下するおそれがある。そのため、外面22aに交差した状態で露出している繊維状充填材26の割合が50%を超えることにより、繊維状充填材26の配向方向におけるシート本体22の熱伝導率は、20W/m・k以上を達成することができる。更に、外面22aに交差した状態で露出している繊維状充填材26の割合が高くなるに伴って、繊維状充填材26の配向方向におけるシート本体22の熱伝導率は、例えば50W/m・k以上を達成することができる。
【0031】
シート本体22の外面22aにおいて、露出した繊維状充填材26が占める割合は、該外面22aの投影図における面積に換算して例えば5〜10%である。露出した繊維状充填材26が占める割合が5%未満の場合、繊維状充填材26の配向が不十分であることや、繊維状充填材26の配合量が少ないことから、繊維状充填材26の配向方向におけるシート本体22の熱伝導率が低下するおそれがある。露出した繊維状充填材26が占める割合が10%を超えると、シート本体22の熱伝導率を高めることができるものの、シート本体22の柔軟性が低下するおそれがある。
【0032】
繊維状充填材26の露出長、即ちシート本体22の外面22aと、露出した繊維状充填材26の先端との距離は、50μm以下が好ましい。繊維状充填材26の露出長が50μmを超えると、シート本体22から繊維状充填材26が脱落するおそれがある。
【0033】
シート本体22の粘着力は非常に小さいことから、シート本体22の粘着性は、該シート本体22の静摩擦係数によって示される。即ち、シート本体22の静摩擦係数が小さい場合にはシート本体22の粘着性が低く、シート本体22の静摩擦係数が大きい場合にはシート本体22の粘着性が高い。シート本体22の静摩擦係数は1.0以下であり、好ましくは0.3以下である。シート本体22の静摩擦係数が1.0を超えると、シート本体22の粘着性が過剰に高いことから、シート21の取扱い及び発熱体などへの取り付けが困難になり、シート21のハンドリング性および取り付け性が低下する。シート本体22の静摩擦係数が0.3以下の場合、熱伝導性シート包装体11において、包装体31からのシート21の脱離が容易になる。シート本体22の静摩擦係数の下限は特に限定されず、シート本体22の静摩擦係数が小さいほど、シート21は優れたハンドリング性および取り付け性を発揮する。
【0034】
シート本体22の厚さは、好ましくは0.03〜0.5mmである。シート本体22の厚さが0.03mm未満の場合、該シート本体22の製造が困難になる。シート本体22の厚さが0.5mmを超えると、発熱体から放熱体への熱の伝導に時間を要し、シート21の熱伝導性能が低下するおそれがある。厚さが0.5mm以下であるシート本体22は、その材質に起因する可撓性を容易に発揮する。
【0035】
図1(a)〜図2(b)に示すように、粘着層23は、シート本体22の外面22aの一部において四角板状に形成されている。粘着層23はシート本体22に比べて高い粘着性を有しており、シート21が例えば発熱体に取り付けられる際に、発熱体に貼付されてシート21の位置ずれの発生を防止する。
【0036】
粘着層23の材質は、該粘着層23がシート本体22に比べて高い粘着性を有することができるものであれば特に限定されず、粘着層23の材質の具体例として、アクリル系、シリコーン系、ウレタン系、ビニル系、及び合成ゴム系の粘着剤と、接着剤とが挙げられる。粘着層23は、シート本体22に粘着層23を形成する材料が塗布されることによって形成されている。接着剤は、シート本体22に塗布された直後には粘着性を有するものの、時間の経過とともに粘着性を喪失する。そのため、粘着層23が粘着性を維持することによってシート21が繰り返して使用され得ることから、粘着層23の材質は粘着剤が好ましい。更に、同様の効果を奏することから、粘着層23は、高分子フィルムに前記粘着剤が塗布されている粘着テープによって構成されてもよい。加えて、シート本体22が発熱体又は放熱体に密着し易いことから、粘着層23の材質は、柔軟性を有するものが好ましい。
【0037】
シート本体22の粘着層23が取り付けられた片方の外面22aにおいて、該外面22a全体の面積に対して粘着層23が占める面積の割合は、好ましくは30%以下である。粘着層23が占める面積の割合が30%を超えると、粘着層23の粘着性に起因してシート21のハンドリング性が低下するおそれがある。更に、粘着層23は熱伝導性充填材25を含有しないことから、粘着層23の熱伝導性能はシート本体22の熱伝導性能に比べて低い。そのため、粘着層23が占める面積の割合が30%を超えると、シート21の熱伝導性能が過剰に低下するおそれがある。
【0038】
粘着層23はシート本体22よりも小さい外形を有し、シート本体22の一部であればシート本体22の中央部に形成されてもよいが、シート本体22の周縁部に形成されることが好ましい。発熱体の中央部の発熱量は通常、該発熱体の周縁部の発熱量に比べて高いことから、発熱体の中央部は周縁部に比べて高温である。シート本体22の周縁部に粘着層23が形成されている場合、発熱体に取り付けられたシート本体22の周縁部の接触熱抵抗値は、シート本体22の中央部の接触熱抵抗値に比べて高くなる。そのため、発熱体において周縁部に比べて高温である中央部に、シート本体22において周縁部に比べて接触熱抵抗値が低い中央部が対応することから、シート本体22の中央部に粘着層23が形成されている場合に比べてシート21の熱伝導性能を高めることができる。
【0039】
本実施形態の粘着層23は、シート本体22の周縁部に形成されている。ここで、シート本体22の周縁部とは、シート本体22の中心から周縁までの距離を5等分し、シート本体22の周縁から前記距離の3/5までの領域のことをいう。例えば、縦40mm及び横40mmのシート本体22においては、シート本体22の周縁部は、幅が24mmである四角環状をなす。また、半径が20mmである円形状のシート本体22においては、シート本体22の周縁部は、幅が12mmである円環状をなす。
【0040】
粘着層23の厚さは、好ましくは50μm以下である。粘着層23の厚さが50μmを超えると、シート本体22の外面22aと粘着層23の表面との段差が大きくなることから、シート21が発熱体又は放熱体に取り付けられた際に、シート本体22と発熱体又は放熱体との密着性が低下して、シート21の接触熱抵抗値が上昇するおそれがある。上述したように、粘着層23の熱伝導性能はシート本体22の熱伝導性能に比べて低い。そのため、粘着層23の厚さの下限は特に限定されず、粘着層23が薄いほど、シート本体22と発熱体又は放熱体との密着性が高くなるとともに、シート21での熱伝導の方向における粘着層23の割合が低くなることから、シート21は小さい接触熱抵抗値を有する。
【0041】
図1(a)及び(b)に示すように、包装体31は、開口32を有する扁平な袋状に形成されており、前記シート21を収容することにより、熱伝導性シート包装体11の運搬時などにおいてシート21を保護する。
【0042】
包装体31の材質は特に限定されず、包装体31の材質の具体例として、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリアクリレート、及びポリカーボネートが挙げられる。包装体31は、収容されたシート21の発熱体又は放熱体への取り付けを容易にするために、例えばその一端が挟持された際に包装体31自身が撓まない程度の剛性を有することが好ましい。更に、包装体31は、包装されたシート21の状態を外方から容易に視認することができ、且つシート21の発熱体又は放熱体への取り付けの際にシート21の位置決めが容易であることから、透光性を有することが好ましい。そのため、前記具体例の中でも、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETという。)などのポリエステルが好ましい。
【0043】
包装体31の一側壁には、開口32に連通するとともにその開口32から包装体31の中央に向かって延びる切り欠き33が形成されている。この切り欠き33の形状および大きさは、シート21が包装体31に収容された状態で、前記粘着層23が包装体31から露出するように設定されている。本実施形態の切り欠き33は四角形状に形成されている。
【0044】
熱伝導性シート包装体11は、シート21と包装体31とがそれぞれ形成された後、シート21が包装体31に収容されることにより製造される。
シート21は、組成物を調製する調製工程と、繊維状充填材を一定方向に配向させる配向工程と、シート本体22を成形する成形工程と、繊維状充填材26を露出させる露出工程と、シート本体22に粘着層23を積層する積層工程とを経て製造される。
【0045】
調製工程では、前記各成分が適宜に混合されて組成物が調製される。配向工程では、例えば組成物が金型内に充填された後、繊維状充填材26が一定方向に配向される。繊維状充填材26を配向させる方法としては、磁場発生装置を用いて組成物に磁場を印加する方法、及び振動装置を用いて組成物に振動を印加する方法が挙げられるが、繊維状充填材26が容易に配向されることから、磁場及び振動の両方を組成物に印加する方法が好ましい。このとき、磁場及び振動は、組成物を介して繊維状充填材26に印加される。
【0046】
成形工程では、金型内において、繊維状充填材の配向を維持した状態で高分子マトリックス24を硬化又は固化させることにより、図3に示すように、所定の形状を有するシート本体22が成形される。成形工程後のシート本体22中の繊維状充填材26は、外面22aから露出していない。露出工程では、シート本体22が高分子マトリックス24として熱可塑性の高分子材料を有する場合、該高分子材料を溶解可能な溶媒を用いてシート本体22の外面22aから高分子マトリックス24を除去することにより、外面22a上に繊維状充填材26が露出される。また、メッシュ状の刃をシート本体22の外面22aに押し当てた後、それを外面22aに沿って摺動させることにより、外面22aから高分子マトリックス24が除去されて外面22a上に繊維状充填材26が露出される。この場合、高分子マトリックス24は均一の厚みで除去される。また、研磨紙等を用いた研磨によって、外面22aから高分子マトリックス24が除去されて外面22a上に繊維状充填材26が露出される。
【0047】
積層工程では、粘着層23を形成する材料が公知の方法によってシート本体22の外面22aにおける所定の個所に塗布されることにより、粘着層23がシート本体22の外面22aに積層される。
【0048】
シート21を発熱体及び放熱体に取付ける際には、図4(a)に示すように、例えば基板12上に配設された発熱体13(例えば電子素子)上に熱伝導性シート包装体11を載置する。発熱体13の下部は絶縁層14で覆われており、基板12と絶縁層14との間には、発熱体13を基板12上の図示しない電気回路に接続するための端子15が配設されている。熱伝導性シート包装体11を発熱体13上に載置するときには、シート21の位置決めを行いながら、前記粘着層23を発熱体13に対向させる。次いで、包装体31において粘着層23に対応する箇所を、例えば指先で発熱体13に向かって押圧する。このとき、粘着層23は露出していることから、その粘着性に起因して発熱体13に貼付される。続いて、包装体31を、発熱体13において粘着層23の貼付箇所の反対側に向かって引き抜く。このとき、図4(b)に示すように、粘着層23が発熱体13に貼付されていることから、包装体31の移動に伴うシート21の位置ずれの発生が防止される。更に、例えば厚さが0.5mm以下であるシート本体22は、その可撓性に起因して発熱体13に接触する。
【0049】
そして、図5(a)に示すように、シート21上に放熱体16を載置した後、シート21が発熱体13および放熱体16に密着するように、放熱体16から発熱体13に向かって荷重を加え、発熱体13及び放熱体16によってシート21を挟持する。このとき、図5(b)に示すように、シート本体22の外面22aから露出した繊維状充填材26の端部は、前記荷重によってシート本体22内に圧入される。更に、高分子マトリックス24は、前記荷重によって、露出した繊維状充填材26の間に浸み出す。そのため、前記露出した繊維状充填材26は、シート本体22内において高分子マトリックス24に対して相対的に没入する。その結果、シート本体22の粘着性が高まるとともに、シート本体22は、発熱体13及び放熱体16との間に間隙を形成することなく発熱体13及び放熱体16に密着する。放熱体16に加えられる荷重の値は、例えば4.9Nである。
【0050】
前記の実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
・ 本実施形態の熱伝導性シート包装体11は、シート21と、該シート21を包装する包装体31とを備えている。包装体31は切り欠き33を有し、シート21の粘着層23は切り欠き33から露出している。そのため、本実施形態の熱伝導性シート包装体11は、該熱伝導性シート包装体11の運搬時などのシート21の使用時以外のときには包装体31によってシート21を保護することができる。更に、シート21の使用時には、露出した粘着層23の粘着性に起因してシート21の位置ずれの発生を容易に防止するとともに、シート本体22の粘着性(静摩擦係数)に起因して包装体31からのシート21の脱離を容易に行うことができる。
【0051】
更に、シート本体22の静摩擦係数および粘着層23の粘着性が上述のように設定されているとともに、粘着層23がシート本体22の一部にのみ形成されている。そのため、本実施形態のシート21は、熱伝導性能がシート本体22に比べて低い粘着層23に影響されることなく優れた熱伝導性能を発揮することができるとともに、シート本体22の粘着性に起因して優れたハンドリング性を発揮することができる。以上のことから、シート21は、優れた熱伝導性能、ハンドリング性、及び取り付け性を発揮することができる。
【0052】
・ 熱伝導性シート包装体11において、シート本体22が包装体31に収容されているとともに粘着層23が包装体31から露出している。そのため、シート21を直接触れることなく発熱体13に取り付けることができ、シート21の取り付け性を高めることができるとともに、発熱体13への取り付けの際にシート21に異物が付着することを防止することができる。更に、シート本体22が薄くて該シート本体22の強度が低い場合にも、シート21の把持などによってシート本体22が破損することを防止することができる。
【0053】
これに対して、粘着層23が包装体31から露出していない場合には、シート21を発熱体13に取り付ける際に、粘着層23を発熱体13に貼付するためにシート21全体を包装体31から前もって取り出す必要がある。そのため、例えばシート21を把持して包装体31からシート21を取り出す際に、シート21に異物が付着したり、強度が低いシート本体22に破損が生じたりする。
【0054】
・ 本実施形態の粘着層23は、シート本体22の周縁部に形成されている。そのため、粘着層23がシート本体22の中央部に形成されている場合に比べて包装体31に形成される切り欠き33の大きさを小さくすることができ、包装体31の剛性を容易に確保することができる。
【0055】
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 図6(a)〜(c)及び図7に示すように、粘着層23の形状が帯状に変更されてもよいし、楕円板状に変更されてもよいし、円板状に変更されてもよい。更に、シート本体22の外面22aにおいて複数の粘着層23が積層されてもよい。図8(a)に示すように、複数の粘着層23が積層される場合、包装体31には各粘着層23に対応する個所に切り欠き33が形成される。また、図6(a)及び(b)に示すように、複数の粘着層23がシート本体22の四隅または各側縁に沿って形成されている場合、シート21の包装体31への収納および該包装体31からの取り出しが困難であることから、シート21は、好ましくは包装体31とともに熱伝導性シート包装体11を構成することなく単独で用いられる。
【0056】
・ 図7に示すように、包装体31において、開口32の全長にわたって切り欠き33が形成されてもよい。また、図8(b)に示すように、切り欠き33の形状が例えば円弧状に変更されてもよい。切り欠き33の外形は、粘着層23の外形と相似形であることが好ましい。
【0057】
・ 図9(a)及び(b)に示すように、熱伝導性シート包装体11は離型シート17を更に備えてもよい。離型シート17は粘着層23を覆うように包装体31に貼付されている。この場合、熱伝導性シート包装体11の運搬時には離型シート17が粘着層23を保護することにより、粘着層23に異物が付着したり、互いに重ねられた熱伝導性シート包装体11同士がそれらの粘着層23によって他の熱伝導性シート包装体11に付着したりすることを防止することができる。また、包装体31と離型シート17とが一体化されてもよい。具体的には、例えば離型シート17がその一端で包装体31と一体化され、離型シート17の他端が包装体31に着脱可能に付着されている。
【0058】
・ 熱伝導性シート包装体11の製造において、シート本体22及び包装体31を形成した後に包装体31でシート本体22を包装し、次いでシート本体22の外面22aにおいて包装体31から露出している個所に粘着層23を形成してもよい。
【0059】
・ 包装体31の内表面に、エンボス加工が施されたりシボが形成されたりしてもよい。この場合、包装体31の内表面の形状に起因して、包装体31へのシート21の収容および包装体31の引き抜きが容易になる。
【0060】
・ シート本体22がグラファイトシートによって構成されてもよい。この場合にも、シート本体22の静摩擦係数は、グラファイトシートに起因して1.0以下である。更に、粘着層23は、グラファイトシートからなるシート本体22に比べて高い粘着性を有する。
【0061】
・ シート21は、包装体31とともに熱伝導性シート包装体11を構成することなく、単独で用いられてもよい。
【実施例】
【0062】
次に、実施例および比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1−a)
実施例1−aにおいては、調整工程として、高分子マトリックス24としての付加型の液状シリコーン(以下、液状シリコーンゲルという。)に、繊維状充填材26としての炭素繊維と、粒子状充填材27としての球状アルミナとを混合して組成物を調製した。液状シリコーンゲルは、硬化後にゲル状となる。各成分の配合量を表1に示す。各成分の配合量の単位は重量部である。液状シリコーンゲルの25℃における粘度は400mPa・sであり、液状シリコーンゲルの比重は1.0であった。炭素繊維の平均繊維径は10μmであり、炭素繊維の平均繊維長は160μmであった。球状アルミナの平均粒径は3.2μmであった。次に、炭素繊維及び球状アルミナが均一に分散されるまで組成物を攪拌した後、組成物の脱泡を行った。
【0063】
続いて、配向工程として、回転粘度計を用いて組成物の25℃における粘度を測定した後、金型内に組成物を充填した。粘度の測定結果を表1に示す。次に、超伝導磁石を用いて、100,000ガウスの磁束密度を有する磁場を組成物に印加するとともに、圧縮空気を用いて、3.0Hzの周波数及び10mmの振幅を有する振動を、金型を介して組成物に印加して、炭素繊維をシート本体22の厚さ方向に沿って配向させた。
【0064】
次いで、成形工程として、組成物を120℃で90分加熱することにより、液状シリコーンゲルを硬化させてシート本体22を得た。そして、露出工程として、回転式カッターを用いてシート本体22の一対の外面22aから硬化したシリコーンを5μmの厚さで除去することにより、炭素繊維を露出させた。露出工程後のシート本体22の厚さは0.3mmであった。露出工程後のシート本体22の外面22aを電子顕微鏡で観察したところ、炭素繊維の露出を確認することができ、露出した炭素繊維において、外面22aに交差した状態で露出している炭素繊維の割合は70%であった。このようにして得られたシート本体22を、四角板状(縦および横の長さ:40mm)に切断した。
【0065】
続いて、積層工程として、図10(a)に示すように、シート本体22の周縁部の外面22aにシリコーン系粘着剤を塗布することにより、正方形状の粘着層23(厚さ:30μm、縦および横の長さ:5mm)を形成してシート21を得た。
【0066】
(実施例1−b)
図10(b)及び表2に示すように、粘着層23の横の長さを30mmに変更して粘着層23を長方形状に形成した以外は、実施例1−aと同様にしてシート21を得た。
【0067】
(実施例1−c)
図10(c)に示すように、シート本体22の四隅に粘着層23(厚さ:50μm、縦および横の長さ:10mm)を形成した以外は、実施例1−aと同様にしてシート21を得た。
【0068】
(実施例1−d)
積層工程として、図10(d)に示すように、PETフィルムにアクリルシリコーン系粘着剤が塗布されている粘着テープ(厚さ:20mm、幅:2mm、長さ:20mm)をシート本体22の周縁部の外面22aに貼付した。その工程を付加して、粘着層23を形成した以外は、実施例1−aと同様にしてシート21を得た。
【0069】
(実施例1−e)
図10(e)に示すように、粘着層23をシート本体22の中央部に形成した以外は、実施例1−aと同様にしてシート21を得た。
【0070】
(実施例1−f)
図10(f)及び表2に示すように、粘着層23の縦および横の長さを10mmに変更した以外は、実施例1−eと同様にしてシート21を得た。
【0071】
(実施例1−g)
図10(g)及び表2に示すように、粘着層23の縦および横の長さを12mmに変更した以外は、実施例1−cと同様にしてシート21を得た。
【0072】
(実施例1−h)
表2に示すように、粘着層23の厚さを70μmに変更した以外は、実施例1−dと同様にしてシート21を得た。
【0073】
(実施例2−a〜2−h)
実施例2−a〜2−hにおいては、繊維状充填材26としてポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール前駆体炭素繊維(PBO炭素繊維)を用いるとともに、各成分の配合量を表1に示すように変更し、更に、露出工程において金属製のメッシュを用いた研磨によってシリコーンを除去した。それ以外は、実施例1−a〜1−hと同様にしてシート本体22を得た。露出工程後のシート本体22の外面22aを電子顕微鏡で観察したところ、PBO炭素繊維の露出を確認することができ、露出したPBO炭素繊維において、外面22aに交差した状態で露出しているPBO炭素繊維の割合は70%であった。このようにして得られたシート本体22を、四角板状(縦および横の長さ:40mm)に切断した。そして、表3に示すように、実施例1−a〜1−hと同様にして粘着層23を形成してシート21を得た。
【0074】
(実施例3−a〜3−h)
実施例3−a〜3−hにおいては、厚さが0.1mmであるとともに厚さ方向の熱伝導率が15W/m・Kであるグラファイトシート(パナソニック エレクトロニックデバイス株式会社製のPGS(登録商標)を用いてシート本体22を得た。そして、表4に示すように、実施例1−a〜1−hと同様にして粘着層23を形成してシート21を得た。
【0075】
ここで、実施例2−a〜2−h及び実施例3−a〜3−hにおけるアルファベットは、実施例1−a〜1−hとの対応を示している。例えば、実施例2−aでは、実施例1−aと同様にして粘着層23が形成され、実施例2−bでは、実施例1−bと同様にして粘着層23が形成されている。同様に、実施例3−aでは、実施例1−aと同様にして粘着層23が形成され、実施例3−bでは、実施例1−bと同様にして粘着層23が形成されている。
【0076】
(比較例1〜3)
比較例1においては、粘着層23を省略した以外は実施例1−aと同様にしてシートを得た。比較例2においては、粘着層23を省略した以外は実施例2−aと同様にしてシートを得た。比較例3においては、粘着層23を省略した以外は実施例3−aと同様にしてシートを得た。
【0077】
そして、各例のシート本体22およびシート21について、下記の各項目に関して測定または評価を行った。その結果を表1〜表4に示す。表1の“交差方向の繊維状充填材(%)”欄の数値は、シート本体22の外面22aに交差した状態で露出している炭素繊維またはPBO炭素繊維の割合を示す。表2〜4の“割合(%)(対外面)”欄の数値は、シート本体22の粘着層23を取り付けた片方の外面22a全体の面積に対して粘着層23が占める面積の割合を示す。
【0078】
<ハンドリング性>
各実施例のシート本体22について、それらの粘着性に基づいてハンドリング性を評価した。表1の“ハンドリング性”欄において、“○”は、シート本体22の粘着性が適度に低く、シート本体22の取扱いが容易であること示す。
【0079】
<熱伝導率>
各実施例のシート本体22から円板状の試験片(直径:10mm、厚さ:0.3mm)を得た後、レーザーフラッシュ法により試験片の熱伝導率を測定した。
【0080】
<熱抵抗値>
図11に示すように、基板12上に形成された発熱体13上に各例のシート21及び金属製の放熱体16を順に載置した後、放熱体16上に10kgの重り41を載置してシート21に6.1×104Paの荷重を加えた。そして、発熱体13が発熱した状態で10分間放置した後、シート21における発熱体13側の外面の温度T1と放熱体16側の外面の温度T2とを測定機により測定した。そして、下記式(1)によりシート21の熱抵抗値を算出した。発熱体13は通常、CPUに代表される電子部品であるが、シート21の性能評価の簡素化および迅速化のため、本試験では発熱体13として発熱量が100Wであるヒータを用いた。前記荷重の値は、シート21が電子部品に取り付けられる際に、シート21に通常加わる荷重の大きさを示す。
【0081】
熱抵抗値(℃/W)=(T1(℃)−T2(℃))/発熱量(W) …(1)
<位置決め>
前記<熱抵抗値>において、シート21を発熱体13に取り付ける際のシート21の位置決めの容易性を評価した。表2〜4中の“位置決め”欄において、“○”は、シート21が取り付けられた発熱体13が斜めに傾けられてもシート21の位置ずれが起きなかったことを示し、“×”は、シート21が取り付けられた発熱体13が斜めに傾けられた際にシート21がずれ落ちたりしてシート21の位置ずれが起きたことを示す。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
【表4】
表1に示すように、各実施例のシート本体22においては、各項目について優れた評価および結果が得られた。そのため、各実施例のシート本体22は、優れた熱伝導性能およびハンドリング性を有する。表2〜4に示すように、各実施例のシート21においても、各項目について優れた評価および結果が得られた。そのため、各実施例のシート21は、粘着層23による熱伝導性能の低下が見られず、且つ位置ずれが起こることなく容易に発熱体13に取り付けられることができる。以上のことから、各実施例のシート21は、優れた熱伝導性能、ハンドリング性、及び取り付け性を有している。
【0086】
加えて、表1〜3の示すように、実施例1−c、2−c及び3−cに係るシート21の熱抵抗値は、実施例1−f、2−f及び3−fに係るシート21の熱抵抗値に比べてそれぞれ小さかった。実施例1−c、2−c及び3−cでは粘着層23がシート本体22の四隅に形成されており、実施例1−f、2−f及び3−fでは粘着層23がシート本体22の中央部に形成されている。更に、シート本体22の粘着層23が取り付けられた片方の外面22a全体の面積に対して粘着層23が占める面積の割合は、実施例1−c、2−c及び3−cが実施例1−f、2−f及び3−fに比べてそれぞれ高い。以上のことから、たとえシート本体22の外面22a全体の面積に対して粘着層23が占める面積の割合が大きくても、粘着層23がシート本体22の周縁部に形成されることにより、粘着層23がシート本体22の中央部に形成される場合に比べてシート21の熱伝導性能を高めることができることが分かった。
【0087】
一方、比較例1〜3においては、位置決めに関する評価が各実施例に比べて劣っていた。そのため、各比較例のシートの取り付け性は、各実施例に比べて劣っている。
(実施例4)
実施例4においては、実施例1−aと同様にしてシート本体22(厚さ:0.3mm)を得た。
【0088】
(実施例5)
実施例5においては、実施例2−aと同様にしてシート本体22(厚さ:0.3mm)を得た。
【0089】
(実施例6)
実施例6においては、実施例3−aと同様にしてシート本体22(厚さ:0.13mm)を得た。
【0090】
(実施例7)
実施例7においては、繊維状充填材26を省略するとともに粒子状充填材27として球状水酸化アルミニウムおよび球状アルミナを用い、配向工程における磁場および振動の印加と、露出工程とを省略した以外は実施例1−aと同様にしてシート本体22(厚さ:0.3mm)を得た。各成分の配合量を表5に示す。
【0091】
(実施例8)
実施例8においては、露出工程を省略した以外は実施例1−aと同様にしてシート本体22を得た。
【0092】
(比較例4)
比較例4においては、繊維状充填材26を省略するとともに粒子状充填材27として球状水酸化アルミニウムおよび球状アルミナを用い、配向工程における磁場および振動の印加と、露出工程とを省略した以外は実施例1−aと同様にしてシート本体(厚さ:0.3mm)を得た。各成分の種類および配合量を表5に示す。比較例4のシート本体は、その一方の外面が粘着性を有しており、他方の外面が粘着性を有していなかった。
【0093】
【表5】
そして、実施例4〜8及び比較例4のシートについて、下記の各項目に関して測定または評価を行った。その結果を表6に示す。表6の“比較例4”欄の“粘着面”は、比較例4のシート本体において粘着性を有している外面についての結果を示し、“非粘着面”は、比較例4のシート本体において粘着性を有していない外面についての結果を示す。
【0094】
<静摩擦係数>
図12に示すように、水平台43上に各例のシート本体22を載置した後、該シート本体22上に滑り片44及び120gの重り41(直径:28mm、高さ:25mmの円柱形)を順に載置した。次いで、重り41に牽引用のテープ45の一端を貼付し、該テープ45の他端をプッシュプルゲージ46(アイコーエンジニアリング(株)製のCPUゲージ M−9500)に固定した。続いて、図12に矢印で示すように、プッシュプルゲージ46を、シート本体22の外面に平行な方向に100mm/minの速度で牽引した。次に、プッシュプルゲージ46の牽引時におけるシート本体22と滑り片44との静摩擦力Fs(N)を測定した。そして、下記式(2)により静摩擦係数を算出した。ここで、各例のシート本体22について静摩擦力Fsの測定および静摩擦係数の算出を5回行い、それらの静摩擦係数の値の平均値をシート本体22の静摩擦係数とした。また、滑り片44として、PETフィルム(東レ株式会社製のルミラーS10 75μm)及びアルミニウム箔テープ(3M社製のScotch Brand Tape 433HD)の2種類を用いた。アルミニウム箔テープについては、該テープのアルミニウム箔面がシート本体22に対向するように、アルミニウム箔テープをシート本体22上に載置した。また、比較例3のシート本体については、粘着性を有する外面と、粘着性を有していない外面との両方について測定および算出を行った。
【0095】
静摩擦係数=Fs(N)/Fp(N) …(2)
上記式(2)において、Fpは、滑り片44の質量(重量)によって生じる垂直抗力を示し、Fpの値は0.12kg(重り41の重量)×9.8m/s2(重力加速度)=0.1176Nで表される。
【0096】
<粘着力>
日本工業規格のJISZ0237に従って各例のシート本体22の粘着力を測定した。具体的には、図13に示すように、水平台43の表面にフィルム47を固定した後、各例のシート本体22を載置した。そして、シート本体22の一端を引張り試験機のロードセル49に取り付けた。そして、シート本体22を300mm/minの速度で水平台43に対する垂線に沿って引き剥がす際の荷重を測定した。ここで、各例のシート本体22について荷重の測定を5回行い、それらの測定値の平均値をシート本体22の粘着力とした。フィルム47として、PETフィルム(東レ株式会社製のルミラーS10 75μm)及びアルミニウム箔テープ(3M社製のScotch Brand Tape 433HD)の2種類を用いた。アルミニウム箔テープについては、該テープのアルミニウム箔面がシート本体22に対向するように、アルミニウム箔テープを水平台43に固定した。また、比較例4のシート本体については、粘着性を有する外面と、粘着性を有していない外面との両方について測定を行った。表6の“粘着力(対アルミ)(N/25mm)”欄は、アルミニウム箔テープを用いた場合の粘着力の測定結果を示し、“粘着力(対PET)(N/25mm)”欄は、PETフィルムを用いた場合の粘着力の測定結果を示す。これらの欄において、“−”は、上述の方法で粘着力を測定することができないほど粘着力が小さかったことを示す。
【0097】
【表6】
表6に示すように、実施例4〜6のシート本体22は、その静摩擦係数が1.0以下であり、上述の方法で粘着力を測定することができないほど粘着力が小さかった。そのため、実施例4〜6のシート本体22は取扱いが容易である。実施例7及び8のシート本体22の静摩擦係数も1.0以下であった。更に、実施例7及び8のシート本体22は、上述の方法で測定することができる程度の粘着力を有しており、実施例4〜6のシート本体22に比べて取扱いが若干困難になるものの、十分に実用に耐えるものである。
【0098】
一方、比較例4のシート本体は、各外面の静摩擦係数が1.0を超えており、各実施例に比べて高い粘着力を有していた。そのため、比較例4のシート本体の取扱いは、各実施例に比べて困難であった。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】(a)本実施形態に係る熱伝導性シート包装体を示す平面図、(b)は図1(a)の1b−1b線における断面図。
【図2】(a)はシートを示す平面図、(b)は図2(a)の2b−2b線における断面図、(c)はシート本体を示す拡大断面図。
【図3】成形工程後のシート本体を示す断面図。
【図4】(a)及び(b)はシートの発熱体への取り付けを示す断面図。
【図5】(a)は発熱体および放熱体に挟持されたシートを示す断面図、(b)はシート本体を示す拡大断面図。
【図6】(a)〜(c)は粘着層の別例を示す平面図。
【図7】熱伝導性シート包装体の別例を示す平面図。
【図8】(a)及び(b)は熱伝導性シート包装体の別例を示す平面図。
【図9】(a)は熱伝導性シート包装体の別例を示す平面図、(b)は図9(a)の9b−9b線における断面図。
【図10】(a)〜(g)は実施例に係るシートを示す平面図。
【図11】シートの熱抵抗値の測定方法を示す概略図。
【図12】シート本体の静摩擦係数の測定方法を示す概略図。
【図13】シート本体の粘着力の測定方法を示す概略図。
【符号の説明】
【0100】
11…熱伝導性シート包装体、13…発熱体、16…放熱体、17…離型シート、21…熱伝導性シート、22…シート本体、22a…外面、23…粘着層、31…包装体、32…開口、33…切り欠き。
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱体と放熱体との間に介在して用いられ、発熱体から放熱体への熱伝導を促進する熱伝導性シート及び熱伝導性シート包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータのCPU(中央処理装置)を代表とする電子素子の高性能化に伴い、電子素子の消費電力および発熱量が増大している。電子素子の処理能力は熱により低下する。よって、電子素子の性能を維持するために電子素子の蓄熱を回避する必要があり、電子素子の冷却が重要な課題となっている。そのため、発熱体である電子素子と、ヒートシンク等の放熱体との間に介在して用いられる熱伝導性シートには、優れた熱伝導性能が求められている。
【0003】
特許文献1には、繊維長が10mm以下である熱伝導性繊維を含有する組成物からなる熱伝導性成形体が開示されている。特許文献2には、耐熱性高分子マトリックスと、熱伝導性繊維とを含有する組成物からなる熱伝導性成形体が開示されている。これらの熱伝導性成形体は、熱伝導性繊維が一定の方向に配向されることにより、熱伝導性能を高めている。
【0004】
特許文献3には、グラファイトシートと、該グラファイトシート上に形成された絶縁膜とを備える熱伝導性シートが開示されている。絶縁膜は、グラファイトシートの絶縁を行うとともに該シートの表面からのグラファイト粉末の脱離を防止し、更に熱伝導性シートの機械的強度を向上させている。
【0005】
特許文献4には、高分子部材と熱伝導性部材とからなり、非粘着化処理が施されている熱伝導性シートが開示されている。この熱伝導性シートは、非粘着化処理により、その表面に対して物体が圧接された場合にも、当該物体との接着状態が防止される。
【特許文献1】特開平4−173235号公報
【特許文献2】特開平11−46021号公報
【特許文献3】特開2001−287299号公報
【特許文献4】特開2001−316502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1及び2の熱伝導性成形体には、その粘着性が高いことから、運搬時などの取扱い性(ハンドリング性)が低いという問題があった。熱伝導性成形体の粘着性は、該熱伝導性成形体の硬度が低いほど高い。そのため、上述の問題を解決する方法として、例えば特許文献3に開示されているように、グラファイトシート等の硬度が高い層を熱伝導性成形体の外面に形成することによって熱伝導性成形体の粘着性を低下させる方法が挙げられる。しかしながら、この方法では、熱伝導性成形体の硬度が高いことから、該熱伝導性成形体の接触熱抵抗値が高くなって熱伝導性能が低下するという問題がある。更に、熱伝導性成形体が発熱体および放熱体に挟持される際に、熱伝導性成形体と、発熱体および放熱体との密着性を高めるために、それらに外方から大きな荷重を加える必要がある。そのため、この大きな荷重によって発熱体に不具合が生じるおそれがあるという問題がある。また、特許文献4の熱伝導性シートのハンドリング性は、該熱伝導性シートに非粘着化処理が施されることにより高くなる。しかしながら、この非粘着化処理に起因して、熱伝導性シートが発熱体に取り付けられる際に該シートの位置ずれが生じ易く、熱伝導性シートの取り付け性が低いという問題があった。
【0007】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、優れたハンドリング性および取り付け性を有する熱伝導性シート、及び該熱伝導性シートを備える熱伝導性包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、発熱体と放熱体との間に介在して用いられるシート本体と、該シート本体の外面上に設けられる粘着層とを備える熱伝導性シートであって、前記シート本体の静摩擦係数が1.0以下であり、前記粘着層は、前記シート本体に比べて高い粘着性を有するとともに、シート本体よりも小さい外形を有する熱伝導性シートを提供する。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記粘着層の厚さが50μm以下である請求項1に記載の熱伝導性シートを提供する。
請求項3に記載の発明は、前記粘着層が前記シート本体の周縁部に設けられている請求項1又は請求項2に記載の熱伝導性シートを提供する。
【0010】
請求項4に記載の発明は、前記シート本体の粘着層が設けられた外面において、該外面全体の面積に対して粘着層が占める面積の割合が30%以下である請求項1から3のいずれか一項に記載の熱伝導性シートを提供する。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の熱伝導性シートと、袋状をなし、前記熱伝導性シートを包装する包装体とを備える熱伝導性シート包装体であって、前記包装体は、開口と、該開口に連通する切り欠きとを有し、前記熱伝導性シートが包装体に収容された状態で、熱伝導性シートの粘着層が前記切り欠きから露出している熱伝導性シート包装体を提供する。
【0012】
請求項6に記載の発明は、前記包装体が透光性を有する請求項5に記載の熱伝導性シート包装体を提供する。
請求項7に記載の発明は、前記シート本体の静摩擦係数が0.3以下である請求項5又は請求項6に記載の熱伝導性シート包装体を提供する。
【0013】
請求項8に記載の発明は、前記粘着層を覆う離型シートを更に備える請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の熱伝導性シート包装体を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、優れたハンドリング性および取り付け性を有する熱伝導性シート、及び該熱伝導性シートを備える熱伝導性包装体が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を熱伝導性シート包装体に具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1(a)及び(b)に示すように、本実施形態の熱伝導性シート包装体11は、熱伝導性シート21(以下、単にシート21という。)と、該シート21を包装する包装体31とを備えている。シート21は、熱伝導性高分子組成物(以下、単に組成物という)から成形されるシート本体22と、該シート本体22の対向する一対の外面22aにおける一方の外面22a上に積層される粘着層23とを備えている。シート21は発熱体と放熱体との間に介在して用いられ、発熱体から放熱体への熱伝導を促進する。
【0016】
シート21には、熱伝導性能、ハンドリング性、及び取り付け性が具備されている。熱伝導性能は発熱体から放熱体への熱伝導のし易さを表す指標であり、主にシート本体22の熱伝導率と、熱抵抗値と、発熱体および放熱体との密着性とに起因している。シート本体22は、熱伝導率が高いほど、熱抵抗値が小さいほど、且つ発熱体および放熱体との密着性が高いほど、発熱体から放熱体への熱伝導を促進し、熱伝導性能に優れたものとなる。
【0017】
ハンドリング性はシート21の運搬時などにおける取扱い易さを表す指標であり、主にシート本体22の粘着性に起因している。シート21は、シート本体22の粘着性が小さいほど運搬時などに容易に取り扱うことができ、ハンドリング性に優れたものとなる。
【0018】
取り付け性はシート21の発熱体または放熱体への取り付け易さを表す指標であり、シート本体22の粘着性と、粘着層23の粘着性とに起因している。シート21は、シート本体22の粘着性が低いとともに粘着層23が適当な粘着性を有することにより、位置ずれが発生することなく発熱体または放熱体に取り付けられ、取り付け性に優れたものとなる。
【0019】
組成物は、高分子マトリックスと、熱伝導性充填材とを含有している。高分子マトリックスは、熱伝導性充填材をシート本体22内に保持する。高分子マトリックスは、シート本体22に要求される性能、例えば硬度等の機械的強度、耐熱性等の耐久性、又は電気的特性に応じて選択され、高分子マトリックスとして例えば熱可塑性又は熱硬化性の高分子材料が選択される。熱可塑性の高分子材料の具体例としては、熱可塑性樹脂材料及び熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0020】
熱可塑性樹脂材料の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のエチレン−αオレフィン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリフッ化ビニリデン及びポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、ポリフェニレン−エーテル共重合体(PPE)樹脂、変性PPE樹脂、脂肪族ポリアミド類、芳香族ポリアミド類、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル等のポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリル酸類、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルケトン、ポリケトン、液晶ポリマー、シリコーン樹脂、及びアイオノマーが挙げられる。
【0021】
熱可塑性エラストマーの具体例としては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体及びその水添ポリマー、スチレン−イソプレンブロック共重合体及びその水添ポリマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、及びポリアミド系熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0022】
熱硬化性の高分子材料の具体例としては、架橋ゴム、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、及びジアリルフタレート樹脂が挙げられる。架橋ゴムの具体例としては、天然ゴム、アクリルゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ニトリルゴム、水添ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、塩素化ポリエチレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、及びシリコーンゴムが挙げられる。
【0023】
熱伝導性充填材は、シート本体22の熱伝導率を高めることにより、シート21の熱伝導性能を高める。熱伝導性充填材の形状としては、繊維状、粒子状、板状等が挙げられるが、好ましくは熱伝導性充填材の少なくとも一部が繊維状に形成されている。以下においては、繊維状に形成された熱伝導性充填材、即ち繊維状充填材を含有するシート21について説明する。繊維状充填材の具体例としては、炭素繊維、金属繊維、及びガラス繊維が挙げられる。これらは単独で繊維状充填材を構成してもよいし、二種以上が組み合わされて繊維状充填材を構成してもよい。これらの中でも、シート本体22の熱伝導率が高いことから、炭素繊維が好ましい。
【0024】
炭素繊維は、溶融紡糸した繊維状ピッチを不融化処理した後、炭素化又は黒鉛化処理することにより、あるいは、有機繊維を炭素化又は黒鉛化処理することにより製造される。炭素繊維の繊維長は、炭素繊維がその製造中又は製造後に粉砕されることにより、任意に調整される。炭素繊維の粉砕は、例えばハンマーミル、ボールミル、振動ボールミル、ブレードミル、ジェットミル、トルネードミル、又はミルミキサーを用いて行われる。炭素繊維の製造中又は製造後に切断機によって粉砕されることにより得られるチョップドファイバーが前記各装置を用いて更に粉砕されることにより、繊維長分布の幅が狭くてシート本体22に適した炭素繊維が得られるが、チョップドファイバーのままの炭素繊維が用いられてもよい。
【0025】
繊維状充填材はシート本体22中で一定方向に配向されており、発熱体からの熱は、繊維状充填材の配向方向に沿ってシート本体22中を伝導する。そのため、繊維状充填材の平均繊維長は、繊維状充填材の配向方向におけるシート本体22の厚さ以上であることが好ましい。この場合、シート本体22の熱伝導率は、熱伝導の方向に沿って繊維状充填材が切れ目なく存在していることから容易に高められる。繊維状充填材の平均繊維長が繊維状充填材の配向方向におけるシート本体22の厚さ未満である場合、例えば配向した繊維状充填材同士が重なり合うことにより、シート本体22の熱伝導の方向に沿って熱伝導性繊維が切れ目なく存在していることが好ましい。
【0026】
繊維状以外の形状の熱伝導性充填材、即ち非繊維状充填材の材質は、シート本体22の熱伝導率が高いことから、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、及び二酸化ケイ素から選ばれる少なくとも一種が好ましい。
【0027】
組成物中の熱伝導性充填材の含有量は、90質量%以下が好ましい。熱伝導性充填材の含有量が90質量%を超えると、シート本体22の柔軟性が低いことから、シート本体22が脆くなるとともに、シート本体22の発熱体及び放熱体の表面形状への追従性が低下するおそれがある。組成物は、前記各成分以外にも、例えばシート本体22の硬度を調整するための可塑剤、及び耐久性を高めるための安定剤を含有してもよい。
【0028】
図2(a)〜(c)に示すように、シート本体22は、高分子マトリックス24と、熱伝導性充填材25とを備えている。熱伝導性充填材25は、繊維状充填材26と、粒子状充填材27とを有している。繊維状充填材26はシート本体22中で一定方向に配向されている。例えば、図2(a)〜(c)に示すシート本体22においては、繊維状充填材26はシート本体22の厚さ方向に沿って配向されている。そのため、シート本体22において、厚さ方向の熱伝導率の値は、幅方向の熱伝導率の値に2〜数百を乗じた値と等しい。
【0029】
シート本体22において、繊維状充填材26の配向方向と交差する外面22a上には、繊維状充填材26が露出している。即ち、図2(a)〜(c)に示すシート本体22における繊維状充填材26は、シート本体22の幅方向に沿って延びるとともに対向する一対の外面22a上に露出している。シート本体22の外面22a上に露出している繊維状充填材26において、外面22aに交差した状態で露出している繊維状充填材26の割合は、50〜100%が好ましい。
【0030】
外面22aに交差した状態で露出している繊維状充填材26の割合が50%未満の場合、即ち、外面22aと平行に延びた状態で露出している繊維状充填材26の割合が50%を超えると、繊維状充填材26の配向が不十分であることから、繊維状充填材26の配向方向におけるシート本体22の熱伝導率が低下するおそれがある。そのため、外面22aに交差した状態で露出している繊維状充填材26の割合が50%を超えることにより、繊維状充填材26の配向方向におけるシート本体22の熱伝導率は、20W/m・k以上を達成することができる。更に、外面22aに交差した状態で露出している繊維状充填材26の割合が高くなるに伴って、繊維状充填材26の配向方向におけるシート本体22の熱伝導率は、例えば50W/m・k以上を達成することができる。
【0031】
シート本体22の外面22aにおいて、露出した繊維状充填材26が占める割合は、該外面22aの投影図における面積に換算して例えば5〜10%である。露出した繊維状充填材26が占める割合が5%未満の場合、繊維状充填材26の配向が不十分であることや、繊維状充填材26の配合量が少ないことから、繊維状充填材26の配向方向におけるシート本体22の熱伝導率が低下するおそれがある。露出した繊維状充填材26が占める割合が10%を超えると、シート本体22の熱伝導率を高めることができるものの、シート本体22の柔軟性が低下するおそれがある。
【0032】
繊維状充填材26の露出長、即ちシート本体22の外面22aと、露出した繊維状充填材26の先端との距離は、50μm以下が好ましい。繊維状充填材26の露出長が50μmを超えると、シート本体22から繊維状充填材26が脱落するおそれがある。
【0033】
シート本体22の粘着力は非常に小さいことから、シート本体22の粘着性は、該シート本体22の静摩擦係数によって示される。即ち、シート本体22の静摩擦係数が小さい場合にはシート本体22の粘着性が低く、シート本体22の静摩擦係数が大きい場合にはシート本体22の粘着性が高い。シート本体22の静摩擦係数は1.0以下であり、好ましくは0.3以下である。シート本体22の静摩擦係数が1.0を超えると、シート本体22の粘着性が過剰に高いことから、シート21の取扱い及び発熱体などへの取り付けが困難になり、シート21のハンドリング性および取り付け性が低下する。シート本体22の静摩擦係数が0.3以下の場合、熱伝導性シート包装体11において、包装体31からのシート21の脱離が容易になる。シート本体22の静摩擦係数の下限は特に限定されず、シート本体22の静摩擦係数が小さいほど、シート21は優れたハンドリング性および取り付け性を発揮する。
【0034】
シート本体22の厚さは、好ましくは0.03〜0.5mmである。シート本体22の厚さが0.03mm未満の場合、該シート本体22の製造が困難になる。シート本体22の厚さが0.5mmを超えると、発熱体から放熱体への熱の伝導に時間を要し、シート21の熱伝導性能が低下するおそれがある。厚さが0.5mm以下であるシート本体22は、その材質に起因する可撓性を容易に発揮する。
【0035】
図1(a)〜図2(b)に示すように、粘着層23は、シート本体22の外面22aの一部において四角板状に形成されている。粘着層23はシート本体22に比べて高い粘着性を有しており、シート21が例えば発熱体に取り付けられる際に、発熱体に貼付されてシート21の位置ずれの発生を防止する。
【0036】
粘着層23の材質は、該粘着層23がシート本体22に比べて高い粘着性を有することができるものであれば特に限定されず、粘着層23の材質の具体例として、アクリル系、シリコーン系、ウレタン系、ビニル系、及び合成ゴム系の粘着剤と、接着剤とが挙げられる。粘着層23は、シート本体22に粘着層23を形成する材料が塗布されることによって形成されている。接着剤は、シート本体22に塗布された直後には粘着性を有するものの、時間の経過とともに粘着性を喪失する。そのため、粘着層23が粘着性を維持することによってシート21が繰り返して使用され得ることから、粘着層23の材質は粘着剤が好ましい。更に、同様の効果を奏することから、粘着層23は、高分子フィルムに前記粘着剤が塗布されている粘着テープによって構成されてもよい。加えて、シート本体22が発熱体又は放熱体に密着し易いことから、粘着層23の材質は、柔軟性を有するものが好ましい。
【0037】
シート本体22の粘着層23が取り付けられた片方の外面22aにおいて、該外面22a全体の面積に対して粘着層23が占める面積の割合は、好ましくは30%以下である。粘着層23が占める面積の割合が30%を超えると、粘着層23の粘着性に起因してシート21のハンドリング性が低下するおそれがある。更に、粘着層23は熱伝導性充填材25を含有しないことから、粘着層23の熱伝導性能はシート本体22の熱伝導性能に比べて低い。そのため、粘着層23が占める面積の割合が30%を超えると、シート21の熱伝導性能が過剰に低下するおそれがある。
【0038】
粘着層23はシート本体22よりも小さい外形を有し、シート本体22の一部であればシート本体22の中央部に形成されてもよいが、シート本体22の周縁部に形成されることが好ましい。発熱体の中央部の発熱量は通常、該発熱体の周縁部の発熱量に比べて高いことから、発熱体の中央部は周縁部に比べて高温である。シート本体22の周縁部に粘着層23が形成されている場合、発熱体に取り付けられたシート本体22の周縁部の接触熱抵抗値は、シート本体22の中央部の接触熱抵抗値に比べて高くなる。そのため、発熱体において周縁部に比べて高温である中央部に、シート本体22において周縁部に比べて接触熱抵抗値が低い中央部が対応することから、シート本体22の中央部に粘着層23が形成されている場合に比べてシート21の熱伝導性能を高めることができる。
【0039】
本実施形態の粘着層23は、シート本体22の周縁部に形成されている。ここで、シート本体22の周縁部とは、シート本体22の中心から周縁までの距離を5等分し、シート本体22の周縁から前記距離の3/5までの領域のことをいう。例えば、縦40mm及び横40mmのシート本体22においては、シート本体22の周縁部は、幅が24mmである四角環状をなす。また、半径が20mmである円形状のシート本体22においては、シート本体22の周縁部は、幅が12mmである円環状をなす。
【0040】
粘着層23の厚さは、好ましくは50μm以下である。粘着層23の厚さが50μmを超えると、シート本体22の外面22aと粘着層23の表面との段差が大きくなることから、シート21が発熱体又は放熱体に取り付けられた際に、シート本体22と発熱体又は放熱体との密着性が低下して、シート21の接触熱抵抗値が上昇するおそれがある。上述したように、粘着層23の熱伝導性能はシート本体22の熱伝導性能に比べて低い。そのため、粘着層23の厚さの下限は特に限定されず、粘着層23が薄いほど、シート本体22と発熱体又は放熱体との密着性が高くなるとともに、シート21での熱伝導の方向における粘着層23の割合が低くなることから、シート21は小さい接触熱抵抗値を有する。
【0041】
図1(a)及び(b)に示すように、包装体31は、開口32を有する扁平な袋状に形成されており、前記シート21を収容することにより、熱伝導性シート包装体11の運搬時などにおいてシート21を保護する。
【0042】
包装体31の材質は特に限定されず、包装体31の材質の具体例として、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリアクリレート、及びポリカーボネートが挙げられる。包装体31は、収容されたシート21の発熱体又は放熱体への取り付けを容易にするために、例えばその一端が挟持された際に包装体31自身が撓まない程度の剛性を有することが好ましい。更に、包装体31は、包装されたシート21の状態を外方から容易に視認することができ、且つシート21の発熱体又は放熱体への取り付けの際にシート21の位置決めが容易であることから、透光性を有することが好ましい。そのため、前記具体例の中でも、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETという。)などのポリエステルが好ましい。
【0043】
包装体31の一側壁には、開口32に連通するとともにその開口32から包装体31の中央に向かって延びる切り欠き33が形成されている。この切り欠き33の形状および大きさは、シート21が包装体31に収容された状態で、前記粘着層23が包装体31から露出するように設定されている。本実施形態の切り欠き33は四角形状に形成されている。
【0044】
熱伝導性シート包装体11は、シート21と包装体31とがそれぞれ形成された後、シート21が包装体31に収容されることにより製造される。
シート21は、組成物を調製する調製工程と、繊維状充填材を一定方向に配向させる配向工程と、シート本体22を成形する成形工程と、繊維状充填材26を露出させる露出工程と、シート本体22に粘着層23を積層する積層工程とを経て製造される。
【0045】
調製工程では、前記各成分が適宜に混合されて組成物が調製される。配向工程では、例えば組成物が金型内に充填された後、繊維状充填材26が一定方向に配向される。繊維状充填材26を配向させる方法としては、磁場発生装置を用いて組成物に磁場を印加する方法、及び振動装置を用いて組成物に振動を印加する方法が挙げられるが、繊維状充填材26が容易に配向されることから、磁場及び振動の両方を組成物に印加する方法が好ましい。このとき、磁場及び振動は、組成物を介して繊維状充填材26に印加される。
【0046】
成形工程では、金型内において、繊維状充填材の配向を維持した状態で高分子マトリックス24を硬化又は固化させることにより、図3に示すように、所定の形状を有するシート本体22が成形される。成形工程後のシート本体22中の繊維状充填材26は、外面22aから露出していない。露出工程では、シート本体22が高分子マトリックス24として熱可塑性の高分子材料を有する場合、該高分子材料を溶解可能な溶媒を用いてシート本体22の外面22aから高分子マトリックス24を除去することにより、外面22a上に繊維状充填材26が露出される。また、メッシュ状の刃をシート本体22の外面22aに押し当てた後、それを外面22aに沿って摺動させることにより、外面22aから高分子マトリックス24が除去されて外面22a上に繊維状充填材26が露出される。この場合、高分子マトリックス24は均一の厚みで除去される。また、研磨紙等を用いた研磨によって、外面22aから高分子マトリックス24が除去されて外面22a上に繊維状充填材26が露出される。
【0047】
積層工程では、粘着層23を形成する材料が公知の方法によってシート本体22の外面22aにおける所定の個所に塗布されることにより、粘着層23がシート本体22の外面22aに積層される。
【0048】
シート21を発熱体及び放熱体に取付ける際には、図4(a)に示すように、例えば基板12上に配設された発熱体13(例えば電子素子)上に熱伝導性シート包装体11を載置する。発熱体13の下部は絶縁層14で覆われており、基板12と絶縁層14との間には、発熱体13を基板12上の図示しない電気回路に接続するための端子15が配設されている。熱伝導性シート包装体11を発熱体13上に載置するときには、シート21の位置決めを行いながら、前記粘着層23を発熱体13に対向させる。次いで、包装体31において粘着層23に対応する箇所を、例えば指先で発熱体13に向かって押圧する。このとき、粘着層23は露出していることから、その粘着性に起因して発熱体13に貼付される。続いて、包装体31を、発熱体13において粘着層23の貼付箇所の反対側に向かって引き抜く。このとき、図4(b)に示すように、粘着層23が発熱体13に貼付されていることから、包装体31の移動に伴うシート21の位置ずれの発生が防止される。更に、例えば厚さが0.5mm以下であるシート本体22は、その可撓性に起因して発熱体13に接触する。
【0049】
そして、図5(a)に示すように、シート21上に放熱体16を載置した後、シート21が発熱体13および放熱体16に密着するように、放熱体16から発熱体13に向かって荷重を加え、発熱体13及び放熱体16によってシート21を挟持する。このとき、図5(b)に示すように、シート本体22の外面22aから露出した繊維状充填材26の端部は、前記荷重によってシート本体22内に圧入される。更に、高分子マトリックス24は、前記荷重によって、露出した繊維状充填材26の間に浸み出す。そのため、前記露出した繊維状充填材26は、シート本体22内において高分子マトリックス24に対して相対的に没入する。その結果、シート本体22の粘着性が高まるとともに、シート本体22は、発熱体13及び放熱体16との間に間隙を形成することなく発熱体13及び放熱体16に密着する。放熱体16に加えられる荷重の値は、例えば4.9Nである。
【0050】
前記の実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
・ 本実施形態の熱伝導性シート包装体11は、シート21と、該シート21を包装する包装体31とを備えている。包装体31は切り欠き33を有し、シート21の粘着層23は切り欠き33から露出している。そのため、本実施形態の熱伝導性シート包装体11は、該熱伝導性シート包装体11の運搬時などのシート21の使用時以外のときには包装体31によってシート21を保護することができる。更に、シート21の使用時には、露出した粘着層23の粘着性に起因してシート21の位置ずれの発生を容易に防止するとともに、シート本体22の粘着性(静摩擦係数)に起因して包装体31からのシート21の脱離を容易に行うことができる。
【0051】
更に、シート本体22の静摩擦係数および粘着層23の粘着性が上述のように設定されているとともに、粘着層23がシート本体22の一部にのみ形成されている。そのため、本実施形態のシート21は、熱伝導性能がシート本体22に比べて低い粘着層23に影響されることなく優れた熱伝導性能を発揮することができるとともに、シート本体22の粘着性に起因して優れたハンドリング性を発揮することができる。以上のことから、シート21は、優れた熱伝導性能、ハンドリング性、及び取り付け性を発揮することができる。
【0052】
・ 熱伝導性シート包装体11において、シート本体22が包装体31に収容されているとともに粘着層23が包装体31から露出している。そのため、シート21を直接触れることなく発熱体13に取り付けることができ、シート21の取り付け性を高めることができるとともに、発熱体13への取り付けの際にシート21に異物が付着することを防止することができる。更に、シート本体22が薄くて該シート本体22の強度が低い場合にも、シート21の把持などによってシート本体22が破損することを防止することができる。
【0053】
これに対して、粘着層23が包装体31から露出していない場合には、シート21を発熱体13に取り付ける際に、粘着層23を発熱体13に貼付するためにシート21全体を包装体31から前もって取り出す必要がある。そのため、例えばシート21を把持して包装体31からシート21を取り出す際に、シート21に異物が付着したり、強度が低いシート本体22に破損が生じたりする。
【0054】
・ 本実施形態の粘着層23は、シート本体22の周縁部に形成されている。そのため、粘着層23がシート本体22の中央部に形成されている場合に比べて包装体31に形成される切り欠き33の大きさを小さくすることができ、包装体31の剛性を容易に確保することができる。
【0055】
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 図6(a)〜(c)及び図7に示すように、粘着層23の形状が帯状に変更されてもよいし、楕円板状に変更されてもよいし、円板状に変更されてもよい。更に、シート本体22の外面22aにおいて複数の粘着層23が積層されてもよい。図8(a)に示すように、複数の粘着層23が積層される場合、包装体31には各粘着層23に対応する個所に切り欠き33が形成される。また、図6(a)及び(b)に示すように、複数の粘着層23がシート本体22の四隅または各側縁に沿って形成されている場合、シート21の包装体31への収納および該包装体31からの取り出しが困難であることから、シート21は、好ましくは包装体31とともに熱伝導性シート包装体11を構成することなく単独で用いられる。
【0056】
・ 図7に示すように、包装体31において、開口32の全長にわたって切り欠き33が形成されてもよい。また、図8(b)に示すように、切り欠き33の形状が例えば円弧状に変更されてもよい。切り欠き33の外形は、粘着層23の外形と相似形であることが好ましい。
【0057】
・ 図9(a)及び(b)に示すように、熱伝導性シート包装体11は離型シート17を更に備えてもよい。離型シート17は粘着層23を覆うように包装体31に貼付されている。この場合、熱伝導性シート包装体11の運搬時には離型シート17が粘着層23を保護することにより、粘着層23に異物が付着したり、互いに重ねられた熱伝導性シート包装体11同士がそれらの粘着層23によって他の熱伝導性シート包装体11に付着したりすることを防止することができる。また、包装体31と離型シート17とが一体化されてもよい。具体的には、例えば離型シート17がその一端で包装体31と一体化され、離型シート17の他端が包装体31に着脱可能に付着されている。
【0058】
・ 熱伝導性シート包装体11の製造において、シート本体22及び包装体31を形成した後に包装体31でシート本体22を包装し、次いでシート本体22の外面22aにおいて包装体31から露出している個所に粘着層23を形成してもよい。
【0059】
・ 包装体31の内表面に、エンボス加工が施されたりシボが形成されたりしてもよい。この場合、包装体31の内表面の形状に起因して、包装体31へのシート21の収容および包装体31の引き抜きが容易になる。
【0060】
・ シート本体22がグラファイトシートによって構成されてもよい。この場合にも、シート本体22の静摩擦係数は、グラファイトシートに起因して1.0以下である。更に、粘着層23は、グラファイトシートからなるシート本体22に比べて高い粘着性を有する。
【0061】
・ シート21は、包装体31とともに熱伝導性シート包装体11を構成することなく、単独で用いられてもよい。
【実施例】
【0062】
次に、実施例および比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1−a)
実施例1−aにおいては、調整工程として、高分子マトリックス24としての付加型の液状シリコーン(以下、液状シリコーンゲルという。)に、繊維状充填材26としての炭素繊維と、粒子状充填材27としての球状アルミナとを混合して組成物を調製した。液状シリコーンゲルは、硬化後にゲル状となる。各成分の配合量を表1に示す。各成分の配合量の単位は重量部である。液状シリコーンゲルの25℃における粘度は400mPa・sであり、液状シリコーンゲルの比重は1.0であった。炭素繊維の平均繊維径は10μmであり、炭素繊維の平均繊維長は160μmであった。球状アルミナの平均粒径は3.2μmであった。次に、炭素繊維及び球状アルミナが均一に分散されるまで組成物を攪拌した後、組成物の脱泡を行った。
【0063】
続いて、配向工程として、回転粘度計を用いて組成物の25℃における粘度を測定した後、金型内に組成物を充填した。粘度の測定結果を表1に示す。次に、超伝導磁石を用いて、100,000ガウスの磁束密度を有する磁場を組成物に印加するとともに、圧縮空気を用いて、3.0Hzの周波数及び10mmの振幅を有する振動を、金型を介して組成物に印加して、炭素繊維をシート本体22の厚さ方向に沿って配向させた。
【0064】
次いで、成形工程として、組成物を120℃で90分加熱することにより、液状シリコーンゲルを硬化させてシート本体22を得た。そして、露出工程として、回転式カッターを用いてシート本体22の一対の外面22aから硬化したシリコーンを5μmの厚さで除去することにより、炭素繊維を露出させた。露出工程後のシート本体22の厚さは0.3mmであった。露出工程後のシート本体22の外面22aを電子顕微鏡で観察したところ、炭素繊維の露出を確認することができ、露出した炭素繊維において、外面22aに交差した状態で露出している炭素繊維の割合は70%であった。このようにして得られたシート本体22を、四角板状(縦および横の長さ:40mm)に切断した。
【0065】
続いて、積層工程として、図10(a)に示すように、シート本体22の周縁部の外面22aにシリコーン系粘着剤を塗布することにより、正方形状の粘着層23(厚さ:30μm、縦および横の長さ:5mm)を形成してシート21を得た。
【0066】
(実施例1−b)
図10(b)及び表2に示すように、粘着層23の横の長さを30mmに変更して粘着層23を長方形状に形成した以外は、実施例1−aと同様にしてシート21を得た。
【0067】
(実施例1−c)
図10(c)に示すように、シート本体22の四隅に粘着層23(厚さ:50μm、縦および横の長さ:10mm)を形成した以外は、実施例1−aと同様にしてシート21を得た。
【0068】
(実施例1−d)
積層工程として、図10(d)に示すように、PETフィルムにアクリルシリコーン系粘着剤が塗布されている粘着テープ(厚さ:20mm、幅:2mm、長さ:20mm)をシート本体22の周縁部の外面22aに貼付した。その工程を付加して、粘着層23を形成した以外は、実施例1−aと同様にしてシート21を得た。
【0069】
(実施例1−e)
図10(e)に示すように、粘着層23をシート本体22の中央部に形成した以外は、実施例1−aと同様にしてシート21を得た。
【0070】
(実施例1−f)
図10(f)及び表2に示すように、粘着層23の縦および横の長さを10mmに変更した以外は、実施例1−eと同様にしてシート21を得た。
【0071】
(実施例1−g)
図10(g)及び表2に示すように、粘着層23の縦および横の長さを12mmに変更した以外は、実施例1−cと同様にしてシート21を得た。
【0072】
(実施例1−h)
表2に示すように、粘着層23の厚さを70μmに変更した以外は、実施例1−dと同様にしてシート21を得た。
【0073】
(実施例2−a〜2−h)
実施例2−a〜2−hにおいては、繊維状充填材26としてポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール前駆体炭素繊維(PBO炭素繊維)を用いるとともに、各成分の配合量を表1に示すように変更し、更に、露出工程において金属製のメッシュを用いた研磨によってシリコーンを除去した。それ以外は、実施例1−a〜1−hと同様にしてシート本体22を得た。露出工程後のシート本体22の外面22aを電子顕微鏡で観察したところ、PBO炭素繊維の露出を確認することができ、露出したPBO炭素繊維において、外面22aに交差した状態で露出しているPBO炭素繊維の割合は70%であった。このようにして得られたシート本体22を、四角板状(縦および横の長さ:40mm)に切断した。そして、表3に示すように、実施例1−a〜1−hと同様にして粘着層23を形成してシート21を得た。
【0074】
(実施例3−a〜3−h)
実施例3−a〜3−hにおいては、厚さが0.1mmであるとともに厚さ方向の熱伝導率が15W/m・Kであるグラファイトシート(パナソニック エレクトロニックデバイス株式会社製のPGS(登録商標)を用いてシート本体22を得た。そして、表4に示すように、実施例1−a〜1−hと同様にして粘着層23を形成してシート21を得た。
【0075】
ここで、実施例2−a〜2−h及び実施例3−a〜3−hにおけるアルファベットは、実施例1−a〜1−hとの対応を示している。例えば、実施例2−aでは、実施例1−aと同様にして粘着層23が形成され、実施例2−bでは、実施例1−bと同様にして粘着層23が形成されている。同様に、実施例3−aでは、実施例1−aと同様にして粘着層23が形成され、実施例3−bでは、実施例1−bと同様にして粘着層23が形成されている。
【0076】
(比較例1〜3)
比較例1においては、粘着層23を省略した以外は実施例1−aと同様にしてシートを得た。比較例2においては、粘着層23を省略した以外は実施例2−aと同様にしてシートを得た。比較例3においては、粘着層23を省略した以外は実施例3−aと同様にしてシートを得た。
【0077】
そして、各例のシート本体22およびシート21について、下記の各項目に関して測定または評価を行った。その結果を表1〜表4に示す。表1の“交差方向の繊維状充填材(%)”欄の数値は、シート本体22の外面22aに交差した状態で露出している炭素繊維またはPBO炭素繊維の割合を示す。表2〜4の“割合(%)(対外面)”欄の数値は、シート本体22の粘着層23を取り付けた片方の外面22a全体の面積に対して粘着層23が占める面積の割合を示す。
【0078】
<ハンドリング性>
各実施例のシート本体22について、それらの粘着性に基づいてハンドリング性を評価した。表1の“ハンドリング性”欄において、“○”は、シート本体22の粘着性が適度に低く、シート本体22の取扱いが容易であること示す。
【0079】
<熱伝導率>
各実施例のシート本体22から円板状の試験片(直径:10mm、厚さ:0.3mm)を得た後、レーザーフラッシュ法により試験片の熱伝導率を測定した。
【0080】
<熱抵抗値>
図11に示すように、基板12上に形成された発熱体13上に各例のシート21及び金属製の放熱体16を順に載置した後、放熱体16上に10kgの重り41を載置してシート21に6.1×104Paの荷重を加えた。そして、発熱体13が発熱した状態で10分間放置した後、シート21における発熱体13側の外面の温度T1と放熱体16側の外面の温度T2とを測定機により測定した。そして、下記式(1)によりシート21の熱抵抗値を算出した。発熱体13は通常、CPUに代表される電子部品であるが、シート21の性能評価の簡素化および迅速化のため、本試験では発熱体13として発熱量が100Wであるヒータを用いた。前記荷重の値は、シート21が電子部品に取り付けられる際に、シート21に通常加わる荷重の大きさを示す。
【0081】
熱抵抗値(℃/W)=(T1(℃)−T2(℃))/発熱量(W) …(1)
<位置決め>
前記<熱抵抗値>において、シート21を発熱体13に取り付ける際のシート21の位置決めの容易性を評価した。表2〜4中の“位置決め”欄において、“○”は、シート21が取り付けられた発熱体13が斜めに傾けられてもシート21の位置ずれが起きなかったことを示し、“×”は、シート21が取り付けられた発熱体13が斜めに傾けられた際にシート21がずれ落ちたりしてシート21の位置ずれが起きたことを示す。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
【表4】
表1に示すように、各実施例のシート本体22においては、各項目について優れた評価および結果が得られた。そのため、各実施例のシート本体22は、優れた熱伝導性能およびハンドリング性を有する。表2〜4に示すように、各実施例のシート21においても、各項目について優れた評価および結果が得られた。そのため、各実施例のシート21は、粘着層23による熱伝導性能の低下が見られず、且つ位置ずれが起こることなく容易に発熱体13に取り付けられることができる。以上のことから、各実施例のシート21は、優れた熱伝導性能、ハンドリング性、及び取り付け性を有している。
【0086】
加えて、表1〜3の示すように、実施例1−c、2−c及び3−cに係るシート21の熱抵抗値は、実施例1−f、2−f及び3−fに係るシート21の熱抵抗値に比べてそれぞれ小さかった。実施例1−c、2−c及び3−cでは粘着層23がシート本体22の四隅に形成されており、実施例1−f、2−f及び3−fでは粘着層23がシート本体22の中央部に形成されている。更に、シート本体22の粘着層23が取り付けられた片方の外面22a全体の面積に対して粘着層23が占める面積の割合は、実施例1−c、2−c及び3−cが実施例1−f、2−f及び3−fに比べてそれぞれ高い。以上のことから、たとえシート本体22の外面22a全体の面積に対して粘着層23が占める面積の割合が大きくても、粘着層23がシート本体22の周縁部に形成されることにより、粘着層23がシート本体22の中央部に形成される場合に比べてシート21の熱伝導性能を高めることができることが分かった。
【0087】
一方、比較例1〜3においては、位置決めに関する評価が各実施例に比べて劣っていた。そのため、各比較例のシートの取り付け性は、各実施例に比べて劣っている。
(実施例4)
実施例4においては、実施例1−aと同様にしてシート本体22(厚さ:0.3mm)を得た。
【0088】
(実施例5)
実施例5においては、実施例2−aと同様にしてシート本体22(厚さ:0.3mm)を得た。
【0089】
(実施例6)
実施例6においては、実施例3−aと同様にしてシート本体22(厚さ:0.13mm)を得た。
【0090】
(実施例7)
実施例7においては、繊維状充填材26を省略するとともに粒子状充填材27として球状水酸化アルミニウムおよび球状アルミナを用い、配向工程における磁場および振動の印加と、露出工程とを省略した以外は実施例1−aと同様にしてシート本体22(厚さ:0.3mm)を得た。各成分の配合量を表5に示す。
【0091】
(実施例8)
実施例8においては、露出工程を省略した以外は実施例1−aと同様にしてシート本体22を得た。
【0092】
(比較例4)
比較例4においては、繊維状充填材26を省略するとともに粒子状充填材27として球状水酸化アルミニウムおよび球状アルミナを用い、配向工程における磁場および振動の印加と、露出工程とを省略した以外は実施例1−aと同様にしてシート本体(厚さ:0.3mm)を得た。各成分の種類および配合量を表5に示す。比較例4のシート本体は、その一方の外面が粘着性を有しており、他方の外面が粘着性を有していなかった。
【0093】
【表5】
そして、実施例4〜8及び比較例4のシートについて、下記の各項目に関して測定または評価を行った。その結果を表6に示す。表6の“比較例4”欄の“粘着面”は、比較例4のシート本体において粘着性を有している外面についての結果を示し、“非粘着面”は、比較例4のシート本体において粘着性を有していない外面についての結果を示す。
【0094】
<静摩擦係数>
図12に示すように、水平台43上に各例のシート本体22を載置した後、該シート本体22上に滑り片44及び120gの重り41(直径:28mm、高さ:25mmの円柱形)を順に載置した。次いで、重り41に牽引用のテープ45の一端を貼付し、該テープ45の他端をプッシュプルゲージ46(アイコーエンジニアリング(株)製のCPUゲージ M−9500)に固定した。続いて、図12に矢印で示すように、プッシュプルゲージ46を、シート本体22の外面に平行な方向に100mm/minの速度で牽引した。次に、プッシュプルゲージ46の牽引時におけるシート本体22と滑り片44との静摩擦力Fs(N)を測定した。そして、下記式(2)により静摩擦係数を算出した。ここで、各例のシート本体22について静摩擦力Fsの測定および静摩擦係数の算出を5回行い、それらの静摩擦係数の値の平均値をシート本体22の静摩擦係数とした。また、滑り片44として、PETフィルム(東レ株式会社製のルミラーS10 75μm)及びアルミニウム箔テープ(3M社製のScotch Brand Tape 433HD)の2種類を用いた。アルミニウム箔テープについては、該テープのアルミニウム箔面がシート本体22に対向するように、アルミニウム箔テープをシート本体22上に載置した。また、比較例3のシート本体については、粘着性を有する外面と、粘着性を有していない外面との両方について測定および算出を行った。
【0095】
静摩擦係数=Fs(N)/Fp(N) …(2)
上記式(2)において、Fpは、滑り片44の質量(重量)によって生じる垂直抗力を示し、Fpの値は0.12kg(重り41の重量)×9.8m/s2(重力加速度)=0.1176Nで表される。
【0096】
<粘着力>
日本工業規格のJISZ0237に従って各例のシート本体22の粘着力を測定した。具体的には、図13に示すように、水平台43の表面にフィルム47を固定した後、各例のシート本体22を載置した。そして、シート本体22の一端を引張り試験機のロードセル49に取り付けた。そして、シート本体22を300mm/minの速度で水平台43に対する垂線に沿って引き剥がす際の荷重を測定した。ここで、各例のシート本体22について荷重の測定を5回行い、それらの測定値の平均値をシート本体22の粘着力とした。フィルム47として、PETフィルム(東レ株式会社製のルミラーS10 75μm)及びアルミニウム箔テープ(3M社製のScotch Brand Tape 433HD)の2種類を用いた。アルミニウム箔テープについては、該テープのアルミニウム箔面がシート本体22に対向するように、アルミニウム箔テープを水平台43に固定した。また、比較例4のシート本体については、粘着性を有する外面と、粘着性を有していない外面との両方について測定を行った。表6の“粘着力(対アルミ)(N/25mm)”欄は、アルミニウム箔テープを用いた場合の粘着力の測定結果を示し、“粘着力(対PET)(N/25mm)”欄は、PETフィルムを用いた場合の粘着力の測定結果を示す。これらの欄において、“−”は、上述の方法で粘着力を測定することができないほど粘着力が小さかったことを示す。
【0097】
【表6】
表6に示すように、実施例4〜6のシート本体22は、その静摩擦係数が1.0以下であり、上述の方法で粘着力を測定することができないほど粘着力が小さかった。そのため、実施例4〜6のシート本体22は取扱いが容易である。実施例7及び8のシート本体22の静摩擦係数も1.0以下であった。更に、実施例7及び8のシート本体22は、上述の方法で測定することができる程度の粘着力を有しており、実施例4〜6のシート本体22に比べて取扱いが若干困難になるものの、十分に実用に耐えるものである。
【0098】
一方、比較例4のシート本体は、各外面の静摩擦係数が1.0を超えており、各実施例に比べて高い粘着力を有していた。そのため、比較例4のシート本体の取扱いは、各実施例に比べて困難であった。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】(a)本実施形態に係る熱伝導性シート包装体を示す平面図、(b)は図1(a)の1b−1b線における断面図。
【図2】(a)はシートを示す平面図、(b)は図2(a)の2b−2b線における断面図、(c)はシート本体を示す拡大断面図。
【図3】成形工程後のシート本体を示す断面図。
【図4】(a)及び(b)はシートの発熱体への取り付けを示す断面図。
【図5】(a)は発熱体および放熱体に挟持されたシートを示す断面図、(b)はシート本体を示す拡大断面図。
【図6】(a)〜(c)は粘着層の別例を示す平面図。
【図7】熱伝導性シート包装体の別例を示す平面図。
【図8】(a)及び(b)は熱伝導性シート包装体の別例を示す平面図。
【図9】(a)は熱伝導性シート包装体の別例を示す平面図、(b)は図9(a)の9b−9b線における断面図。
【図10】(a)〜(g)は実施例に係るシートを示す平面図。
【図11】シートの熱抵抗値の測定方法を示す概略図。
【図12】シート本体の静摩擦係数の測定方法を示す概略図。
【図13】シート本体の粘着力の測定方法を示す概略図。
【符号の説明】
【0100】
11…熱伝導性シート包装体、13…発熱体、16…放熱体、17…離型シート、21…熱伝導性シート、22…シート本体、22a…外面、23…粘着層、31…包装体、32…開口、33…切り欠き。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体と放熱体との間に介在して用いられるシート本体と、該シート本体の外面上に設けられる粘着層とを備える熱伝導性シートであって、
前記シート本体の静摩擦係数が1.0以下であり、
前記粘着層は、前記シート本体に比べて高い粘着性を有するとともに、シート本体よりも小さい外形を有することを特徴とする熱伝導性シート。
【請求項2】
前記粘着層の厚さが50μm以下である請求項1に記載の熱伝導性シート。
【請求項3】
前記粘着層が前記シート本体の周縁部に設けられている請求項1又は請求項2に記載の熱伝導性シート。
【請求項4】
前記シート本体の粘着層が設けられた外面において、該外面全体の面積に対して粘着層が占める面積の割合が30%以下である請求項1から3のいずれか一項に記載の熱伝導性シート。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の熱伝導性シートと、袋状をなし、前記熱伝導性シートを包装する包装体とを備える熱伝導性シート包装体であって、
前記包装体は、開口と、該開口に連通する切り欠きとを有し、
前記熱伝導性シートが包装体に収容された状態で、熱伝導性シートの粘着層が前記切り欠きから露出していることを特徴とする熱伝導性シート包装体。
【請求項6】
前記包装体が透光性を有する請求項5に記載の熱伝導性シート包装体。
【請求項7】
前記シート本体の静摩擦係数が0.3以下である請求項5又は請求項6に記載の熱伝導性シート包装体。
【請求項8】
前記粘着層を覆う離型シートを更に備える請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の熱伝導性シート包装体。
【請求項1】
発熱体と放熱体との間に介在して用いられるシート本体と、該シート本体の外面上に設けられる粘着層とを備える熱伝導性シートであって、
前記シート本体の静摩擦係数が1.0以下であり、
前記粘着層は、前記シート本体に比べて高い粘着性を有するとともに、シート本体よりも小さい外形を有することを特徴とする熱伝導性シート。
【請求項2】
前記粘着層の厚さが50μm以下である請求項1に記載の熱伝導性シート。
【請求項3】
前記粘着層が前記シート本体の周縁部に設けられている請求項1又は請求項2に記載の熱伝導性シート。
【請求項4】
前記シート本体の粘着層が設けられた外面において、該外面全体の面積に対して粘着層が占める面積の割合が30%以下である請求項1から3のいずれか一項に記載の熱伝導性シート。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の熱伝導性シートと、袋状をなし、前記熱伝導性シートを包装する包装体とを備える熱伝導性シート包装体であって、
前記包装体は、開口と、該開口に連通する切り欠きとを有し、
前記熱伝導性シートが包装体に収容された状態で、熱伝導性シートの粘着層が前記切り欠きから露出していることを特徴とする熱伝導性シート包装体。
【請求項6】
前記包装体が透光性を有する請求項5に記載の熱伝導性シート包装体。
【請求項7】
前記シート本体の静摩擦係数が0.3以下である請求項5又は請求項6に記載の熱伝導性シート包装体。
【請求項8】
前記粘着層を覆う離型シートを更に備える請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の熱伝導性シート包装体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−283509(P2007−283509A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−110066(P2006−110066)
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【出願人】(000237020)ポリマテック株式会社 (234)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【出願人】(000237020)ポリマテック株式会社 (234)
【Fターム(参考)】
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