説明

熱伝導性フィラー及びその製造方法

【課題】 本発明の目的は、熱伝導性フィラーを樹脂に練り込んだ場合において、熱伝導性フィラー重量あたりの該樹脂の熱伝導性が高く、樹脂の軽量化を達成可能にする熱伝導性フィラーを提供することである。
【解決手段】 平均短径が1〜1000nm、の粒子(A)の表面に、平均厚み1〜1000nmの無機化合物(B)からなる熱伝導層を形成した平均短径が2〜2000nm、好ましくは平均長径が10nm〜100μmであり、かつ平均長径/平均短径で表されるアスペクト比が10〜10000である複合熱伝導性フィラー(C)、及び該複合熱伝導性フィラー(C)の内部に存在する粒子(A)の少なくとも一部が除去された、内部に空洞を有し、空洞の体積分率が20〜95体積%である中空無機熱伝導性フィラー(D)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性フィラー及び該熱伝導性フィラーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイやパソコン、プロジェクター、携帯電話など多くの機器に搭載されている精密電子部品の発熱量が極めて高くなってきている。これは電子部品の高集積化に伴うものであり、今後さらに発熱量は増加する傾向にある。現状では、金属からなる放熱板を使用して放熱を行っているが、部品のコストや軽量化、小型化、加工性などの観点から、金属を樹脂に代替したいという要求が強くなってきた。
このニーズに対応すべく、金属やセラミックからなる熱伝導フィラーを練り込んだ樹脂が数多く検討されている(特許文献1、2)。
【特許文献1】特開2002−371192
【特許文献2】特開昭52−118300
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、金属やセラミックからなる熱伝導性フィラーを練り込んだ樹脂からなる放熱板は、熱伝導性を高めるために多大な重量のフィラーを添加しなければならず、コスト高になるばかりか、部品の重量が重くなり軽量化のニーズに十分対応できていなかった。
また、精密電子部品、特に、プリント配線板や半導体封止材等の用途においては、熱伝導性を高めることに加えて低誘電率化も求められているが、多大な重量の金属やセラミックを添加する従来の方法によれば、軽量化のニーズに十分対応できず、誘電率が極めて高くなり絶縁性も確保できない場合がある。
すなわち、本発明の目的は、熱伝導性フィラーを樹脂に練り込んだ場合において、熱伝導性フィラー重量あたりの該樹脂の熱伝導性が高く、樹脂の軽量化を達成可能にする熱伝導性フィラーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明による熱伝導性フィラーは、平均短径が1〜1000nmの粒子(A)の表面に、平均厚み1〜1000nmの無機化合物(B)からなる熱伝導層を形成した平均短径が2〜2000nmの複合熱伝導性フィラー(C)及びその製造方法であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明の熱伝導性フィラーを樹脂に練り込んだ場合において、熱伝導性フィラー重量あたりの該樹脂の熱伝導性が高く、樹脂の軽量化を達成可能にすることができる。また、電気絶縁性が要求される場合には、樹脂の熱伝導性、軽量化、及び電気絶縁性を同時に満足させることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
粒子(A)としては、平均短径が1nm以上1000nm以下であれば、各種形態のものが使用でき、球状、繊維状、板状、不定形状等が挙げられる。平均短径が1nm以上1000nm以下であれば、小型化が進む精密電子部品用の熱伝導フィラーとしても使用することができる。小型精密電子部品への適用等の観点から、平均短径としては1nm以上900nm以下が好ましく、更に好ましくは1nm以上800nm以下、特に好ましくは1nm以上600nm以下である。
平均短径が1nm未満であれば、表面に無機微粒子(B)からなる熱伝導層を形成することが極めて困難となり、1000nmを超えれば小型化が要求されている精密電子部品に使用することができなくなる。
【0007】
各種形態のうち、熱伝導性向上及び樹脂等に添加したときの加工性、添加量低減等の観点から、繊維状であることが好ましい。更に好ましくは、平均長径が10nm以上100μm以下、かつ、アスペクト比が10〜10000の繊維状化合物、特に好ましくは、平均50nm以上10μm以下、かつ、アスペクト比が30〜5000の繊維状化合物である。この範囲内であると、熱伝導性がより良好となり、かつ、小型の精密電子部品にも使用することができる。
ここで平均短径とは、(A)の短い方の辺の長さを意味し、平均長径とは、(A)の長い方の辺の長さを意味する。アスペクト比とは、(A)の平均長径/平均短径で表される。例えば、(A)が真球状粒子の場合は、長径と短径が同一となり、アスペクト比は1である。
平均短径及び平均長径は、たとえば透過型電子顕微鏡(TEM)により、直接粒子(A)を観察することにより測定する。無差別に50個の(A)をサンプリングして、平均短径及び平均長径を個々にカウントし、その平均値を平均短径及び平均長径とした。後述の無機化合物(B)、複合熱伝導性フィラー(C)及び中空体(D)の平均短径及び平均長径も同様に測定することができる。
【0008】
粒子(A)は、上記の形状を満たすものであれば、有機化合物又は無機化合物若しくはこれらの複合熱伝導性フィラーであってもよい。
(A)の密度は、無機化合物(B)よりも小さいことが好ましい。若しくは、(A)は、除去可能なものが好ましく、熱分解性及び/又は溶剤溶解性を有し、除去できることがさらに好ましい。
(A)の密度が無機化合物(B)の密度よりも小さい場合、又は、(A)を除去して中空化)できる場合には、従来の金属やセラミックを樹脂にそのまま添加する方法よりも少ない添加量(重量基準)で、従来と同等の該樹脂の熱伝導性を得ることができる。
【0009】
ここで熱分解性とは、高温(200〜700℃程度)に加熱することにより分解し消失させることができることを意味する。溶剤溶解性とは、アルカリ水等の水系溶剤及び/又はジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、トルエン等の有機溶剤により、溶解し消失させることができることを意味する。
更には、粒子(A)の比誘電率は、無機化合物(B)よりも小さいことが好ましい。この場合には、従来の金属やセラミックを樹脂にそのまま添加する方法よりも該樹脂を低誘電率化することができる。複合熱伝導性フィラー(C)から化合物(A)を除去して得られる中空無機熱伝導性フィラー(D)は、更なる低誘電性を有する。
【0010】
粒子(A)が有機化合物である場合の有機化合物としては、高分子化合物及び低分子化合物に大別される。
高分子化合物とは、重量平均分子量が1000以上の化合物を意味し、縮合系ポリマー及びビニル重合系ポリマー、天然ポリマー(生体ポリマー)等に大別される。
縮合系ポリマーとしては、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂等が挙げられる。
ビニル重合系ポリマーは、ビニル基を有するモノマーを構成単位とするポリマーであり、
シアノ基含有ビニルモノマー、(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有ビニルモノマー、炭素数8〜12の芳香族ビニル炭化水素、炭素数2〜18の脂肪族ビニル炭化水素、炭素数5〜15の脂環式ビニル炭化水素、炭素数3〜22の(メタ)アクリルアミド、炭素数2〜10のビニルスルホン酸、炭素数3〜10のビニルエーテル、炭素数4〜11のビニルケトン、架橋性モノマー等を構成単位として使用することができる。具体的には、ポリメチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ソーダ、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどのホモポリマー、又は、これらの構成単位を共重合したコポリマーが挙げられる。
天然ポリマーとしては、多糖類(セルロース、アミロース、アミロペクチン、アラミド繊維など)、脂質(リン脂質、糖脂質、コレステロールなど)、各種ポリペプチド(コラーゲンなど)、DNA等が挙げられる。ここでいう天然ポリマーには、人工的に合成したポリペプチドやDNAなどが含まれる。
低分子化合物とは、重量平均分子量が1000未満の化合物を意味し、反応媒体中で球状ミセルや棒状ミセルを形成する化合物を使用することができる。
具体的には、アニオン性界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(重合度1〜100)ラウリル硫酸ナトリウム及び(ポリ)オキシエチレン(重合度1〜100)ラウリル硫酸トリエタノールアミン等)、カチオン性界面活性剤(塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド乳酸塩、ジラウリルアミン塩酸塩及びオレイルアミン乳酸塩等)、ノニオン性界面活性剤(アジピン酸ジエタノールアミン縮合物、ラウリルジメチルアミンオキシド、モノステアリン酸グリセリン、モノラウリン酸ソルビタン及びステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド乳酸塩等)及び両性界面活性剤(ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン及びβ−ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等)が挙げられる。
【0011】
無機化合物としては、天然物、天然物の変性物及び合成物(精製物を含む)のいずれであってもよい。
天然物としては、石灰石(重質炭酸カルシウム)、石英、珪石(シリカ)、ウオラスナイト、石膏、アスベスト、アパタイト、マグネタイト、ゼオライト及びクレイ等が含まれる。
クレイとしては、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト、バーミキュライト、ハロイサイト、タルク、雲母及びマイカ等が挙げられる。
天然物の変性物としては、クレイを有機化合物により変性したもの(有機化クレイ)等が含まれる。有機化クレイとしては、有機陽イオン(有機カチオン)により変性したクレイ(クレイの陽イオンを有機陽イオンでイオン交換したもの)等が含まれる。
有機化の方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法が使用できる。
有機陽イオンとしては、特に限定されず、アルキル基の炭素数が2〜70であるアルキルアンモニウムイオン(ヘキシルアンモニウムイオン、オクチルアンモニウムイオン、2−エチルヘキシルアンモニウムイオン、ドデシルアンモニウムイオン、ラウリルアンモニウムイオン、オクタデシルアンモニウムイオン、ステアリルアンモニウムイオン、ジオクチルジメチルアンモニウムイオン、トリオクチルアンモニウムイオン、ジステアリルジメチルアンモニウムイオン、ステアリルベンジルジメチルアンモニウムイオン、ドデカン酸アンモニウムイオン及びラウリルアンモニウムイオン等)等及びこれらの混合物などが挙げられる。
【0012】
合成物(精製物を含む)としては、金属、金属化合物、その他の複合物等(金属複合化合物、非金属化合物及び非金属複合化合物等)及び有機物を前駆体とする炭化物等が挙げられる。
金属としては、室温以上の温度(20〜250℃)で固体である金属であれば使用でき、元素の周期率表において、1族〜16族の金属(亜鉛、アルミニウム、モリブデン、タングステン、ジルコニウム、バリウム、マンガン、コバルト、カルシウム、金、銀、クロム、チタン、鉄、白金、銅、鉛及びニッケル等)等が挙げられ、この他、ニッケル−銅、コバルト−ニッケル、銅−パラジウム、鉄−ビスマス及びアルミニウム−マグネシウム等の合金(固溶体)等も使用できる。
金属化合物としては、元素の周期率表において、1族〜16族の金属酸化物(酸化チタン、酸化ケイ素(シリカ)、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化バナジウム、酸化スズ、酸化鉄(磁性酸化鉄を含む)及び酸化インジウム等)、金属水酸化物(水酸化アルミニウム、水酸化金、水酸化マグネシウム等)、金属硫化物(硫化銅、硫化ナトリウム、硫化鉛、硫化ニッケル及び硫化白金等)、金属ハロゲン化物(フッ化カルシウム、フッ化スズ及びフッ化カリウム等)、金属炭化物(炭化カルシウム、炭化チタン、炭化鉄及び炭化ナトリウム等)、金属窒化物(窒化アルミニウム、窒化クロム、チッ化ケイ素、窒化ゲルマニウム及び窒化コバルト等)、炭酸金属塩(炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム)、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ナトリウム(重曹)及び炭酸鉄等)、硫酸金属塩(硫酸アルミニウム、硫酸コバルト、硫酸水素ナトリウム、硫酸銅、硫酸ニッケル及び硫酸バリウム等)及びその他の金属塩(チタン酸塩(チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カリウム等)、ホウ酸塩(ホウ酸アルミニウム、ホウ酸亜鉛等)、燐酸塩(リン酸カルシウム、燐酸ナトリウム、燐酸マグネシウム等)、アルミン酸塩(アルミン酸イットリウム(YAG)等)及び硝酸塩(硝酸ナトリウム、硝酸鉄、硝酸鉛等))等が挙げられる。
その他の複合物等としては、フェライト、ゼオライト、銀イオン担持ゼオライト、ジルコニア、ミョウバン、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、アルミナ繊維、セメント、ゾノトライト等が挙げられる。
有機物を前躯体とする炭化物としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、活性炭、竹炭、木炭及びフラーレン等が挙げられる。
これらのうち、軽量性向上の観点等から、密度の小さいもの又は容易に除去できるものが好ましく、具体的には、天然物、金属化合物、有機物を前躯体とする炭化物が好ましく、特に好ましくは、ゼオライト、クレイ、酸化ケイ素、グラファイトである。
【0013】
これらのうち、熱伝導性向上及び製造容易性、軽量性の観点等から、有機化合物であることが好ましく、更に好ましくは、高分子化合物であり、特に好ましくは、ビニル重合系ポリマー又は天然高分子である。さらに具体的には、繊維状若しくは反応溶媒中にて繊維状となるビニル重合系ポリマー又は天然高分子が好ましく、表面に無機化合物(B)の前駆体と反応する官能基を有しているもの、特に、水酸基を有しているものが好ましい。
中空無機熱伝導性フィラー(D)を製造する場合には、除去可能、好ましくは熱分解性及び/又は溶剤溶解性を有し、除去できるものを使用する必要があり、有機化合物を使用することが好ましい。
【0014】
無機化合物(B)としては、粒子(A)の表面に平均厚み1nm以上1000nm以下で熱伝導層を形成できるものであれば使用できる。(B)の平均厚みは1nm以上1000nm以下であることが好ましく、更に好ましくは、3nm以上500nm以下である。
(B)の平均厚みが1nm未満の場合には、(A)の表面に熱伝導層を形成することが極めて困難となり、1000nmを超える場合には、軽量化効果が小さくなるとともに、比誘電率も高くなり好ましくない。
ここで平均厚みとは、(A)の表面に形成される無機化合物(B)からなる層(熱伝導層)の厚さの平均であって、TEM(透過型電子顕微鏡)により直接観察して測定される。無差別に50個の複合熱伝導性フィラー(C)若しくは中空無機物粒子(D)をサンプリングして個々の厚さをカウントし、これを平均することにより測定する。無機化合物(B)からなる熱伝導層単独の厚みが観察し難く測定が困難である場合には、複合熱伝導性フィラー(C)若しくは中空無機熱伝導性フィラー(D)の平均短径から使用した(A)の平均短径を差し引いた値を平均厚みとすることができる。
【0015】
前述のように、粒子(A)の密度が無機化合物(B)よりも小さい及び(A)の比誘電率が無機化合物(B)よりも小さいとの条件を満たすことが好ましい。また、無機化合物(B)は熱分解性及び/又は溶剤溶解性を有さないことが好ましい。
無機化合物(B)は、熱伝導率が高いことが好ましく、具体的には、熱伝導率が、1W/Km以上が好ましく、更に好ましくは、1〜1000W/Km、より好ましくは10〜700W/Km、特に好ましくは、20〜500W/Kmであることが好ましい。無機化合物(B)の熱伝導率が高ければ、熱伝導性の高い熱伝導層を形成することが可能となり、熱伝導率が更に良好なものとなる。具体的には、電気伝導性が高いもの(金属、炭化物など)、金属酸化物、金属窒化物が好ましい。
【0016】
本発明の複合熱伝導性フィラー(C)及び中空無機熱伝導性フィラー(D)をプリント配線板や半導体封止材等の絶縁性及び低誘電性が要求される用途に使用する場合には、無機化合物(B)は電気絶縁性であり、大凡低誘電性であることが好ましい。無機化合物(B)の電気伝導率としては0.1μS以下であることが好ましく、更に好ましくは、0.05μS以下である。
具体的には、金属酸化物、金属窒化物が好ましく、更に好ましくは、酸化アルミニウム、酸化セリウム、ジルコニア、金属窒化物であり、特に好ましくは、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素である。
【0017】
熱伝導層とは、無機化合物(B)からなる平均厚み1nm以上1000nm以下の有機化合物(A)の表面被覆層であり、被覆率は50%以上であることが好ましく、更に好ましくは70%以上である。
熱伝導層の形成方法としては、無機化合物(B)を電気的相互作用、化学反応、機械的作用等により粒子(A)の表面に被覆する方法(方法(1)とする)、無機化合物(B)の前駆体を(A)の表面に吸着若しくは反応させて無機化合物(B)を合成し被覆する方法(方法(2)とする)などが考えられる。
【0018】
方法(1)は、無機化合物(B)を直接粒子(A)に被覆することにより熱伝導層を形成する方法であり、(A)と無機化合物(B)との表面電荷が異なるものを使用し、+−の電気的な相互作用により熱伝導層を形成する方法、(A)表面に官能基(水酸基等)を持たせておき、この官能基と反応する基を有する無機化合物(B)とを反応させることにより熱伝導層を形成する方法、(A)と無機化合物(B)とをハイブリダイザー(奈良機械社製)等の機械的な剪断力を利用して熱伝導層を形成する方法が挙げられる。
【0019】
方法(2)は、無機化合物(B)の前駆体(B0)を粒子(A)の表面に作用させて無機化合物(B)の合成を(A)の表面で行うことにより熱伝導層を形成する方法であり、前駆体(B0)として金属アルコキシド、金属ハロゲン化物、金属錯体又は炭化可能な有機化合物などを使用することができる。
金属アルコキシドは、無機化合物(B)の種類により使用するものが異なる。例えば、シリコン、ボロン、チタン、ゲルマニウム、バリウム、カルシウム、インジウム、ランタン、ジルコニウム、イットリウム、ニオブ、タングステン又はアルミニウムのメトキシド、エトキシド又はプロポキシド、ブトキシド等が挙げられる。
金属ハロゲン化物も無機化合物(B)の種類により使用するものが異なる。例えば、シリコン、ボロン、チタン、ゲルマニウム、バリウム、カルシウム、インジウム、ランタン、ジルコニウム、イットリウム、ニオブ、タングステン又はアルミニウムのフッ化物、臭化物又はヨウ化物等が挙げられる。金属ハロゲン化物には、ケイフッ化水素酸や金属ハロゲン化錯体も含まれる。
炭化可能な有機化合物としては、アクリロニトリル、フェノール樹脂などが挙げられる。
具体的には、これら前駆体を粒子(A)及び必要により触媒が分散した溶剤中に加える、好ましくは滴下することにより、(A)の表面に無機化合物(B)からなる熱伝導層を形成する。前駆体は、電気的相互作用、化学結合又は疎水性相互作用等により、(A)の表面に付着するとともに反応が進行して無機化合物(B)が合成される。若しくは、体が反応しながら、(A)の表面に付着する。
触媒としては、前駆体として金属アルコキシドを使用する場合には、水及び/又は酸又はアルカリを使用することができる。酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、酢酸等が挙げられる。アルカリとしては、アルカリ・アルカリ土類金属の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウムなど)、アルカリ・アルカリ土類金属の炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウムなど)、アンモニア等が挙げられる。前駆体として金属ハロゲン化物を使用する場合には、ホウ酸などを使用することができる。
溶媒としては、水、アルコール、その他有機溶剤を使用することができる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。有機溶剤としては、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、ペンタン、ヘキサン等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらのうち、反応制御性の観点等から、水及び/又はアルコールを使用することが好ましい。
【0020】
方法(1)若しくは(2)により、粒子(A)の表面に形成した無機化合物(B)からなる熱伝導層を更に処理して無機化合物(B)の組成を変化させることもできる。例えば、無機化合物(B)が金属酸化物(酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ホウ素等)であって、これを窒素、アンモニアなど窒素源を含むガス中で高温焼成することにより、金属窒化物(窒化アルミ、窒化ケイ素、窒化ホウ素等)とすることができる。なお、この窒化処理は、複合熱伝導性フィラー(C)及び中空無機熱伝導性フィラー(D)のどちらでも行うことができる。
具体的には、プロパンガスを5容積%含有するアンモニアガス雰囲気中で、1400℃で1時間加熱することにより金属酸化物からなる熱伝導層を金属窒化物からなる熱伝導層にすることができる。金属窒化物(酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ホウ素等)からなる熱伝導層を有する場合、熱伝導性の大幅な向上が期待できる。
なお、窒化方法としては特に限定されるものではない。反応ガスは、窒素、アンモニアなど窒素源を含むガスならば制限無く使用することができるが、窒素ガスが好適である。反応ガスの供給量は、還元窒化反応が十分に行われる窒素濃度に維持すれば良く、生成ガス中の一酸化炭素濃度が25%未満になる様に維持することが好適である。焼成炉としては、バッチ炉、トンネル式のプッシャー炉などが使用できる。還元窒化反応の温度は、1400〜1800℃が好適であり、還元窒化反応が終了するまで該温度以上で保持する。
【0021】
複合熱伝導性フィラー(C)は、平均短径が2nm以上2000nm以下であって、粒子(A)の表面に無機化合物(B)からなる熱伝導層を形成したものである。平均が1nm以上1000nm以下であれば、小型化が進む精密電子部品用の熱伝導フィラーとしても使用することができるので好ましい。小型精密電子部品への適用等の観点から、平均としては1nm以上900nm以下が好ましく、更に好ましくは1nm以上800nm以下、特に好ましくは1nm以上600nm以下である。
(C)の平均短径が2nm未満であると、複合熱伝導性フィラーの作製が極めて困難となり、2000nmを超えると小型化が要求される精密電子部品には使用することができない。
複合熱伝導性フィラー(C)の形態は、概ね化合物(A)の形態に依存するため、複合熱伝導性フィラー(C)の形態を制御するには、適当な化合物(A)を使用する必要がある。形態としては、熱伝導性向上及び樹脂等に添加したときの加工性、添加量低減等の観点から、繊維状であることが好ましい。更に好ましくは、平均長径10nm以上100μm以下、かつ、アスペクト比が10倍以上の繊維状物体、特に好ましくは、平均長径50nm以上10μm以下、かつ、アスペクト比が30倍以上の繊維状物体である。この範囲内であると、少量の添加でも熱伝導経路が効率的に形成され、更に熱伝導性が良好なものとなる。
【0022】
複合熱伝導性フィラー(C)の密度は、3.0g/cm3以下であることが好ましく、更に好ましくは、2.0g/cm3以下、特に好ましくは、1.5g/cm3以下である。(C)の密度は、JIS Z8807−1976「固体比重測定方法」の2.比重びんによる測定方法(液体;蒸留水又はメタノール)に準拠して測定される。この範囲内であると電子部品の軽量化に大きく寄与することができる。
化合物(A)と無機化合物(B)との組み合わせとしては、熱伝導性、軽量性、製造容易性等の観点から、化合物(A)が有機化合物、無機化合物(B)が電気伝導性が高いもの(金属、炭化物など)、金属酸化物、金属窒化物が好ましく、更に好ましくは、化合物(A)が高分子化合物、無機化合物(B)が電気伝導性が高いもの(金属、炭化物など)、金属酸化物、金属窒化物であり、特に好ましくは、化合物(A)が繊維状若しくは反応溶媒中にて繊維状となるビニル重合系ポリマー又は天然高分子、無機化合物(B)が電気伝導性が高いもの(金属、炭化物など)、金属酸化物、金属窒化物である。
【0023】
プリント配線板や半導体封止材等の絶縁性及び低誘電性が要求される用途に使用する場合には、熱伝導性、軽量性、絶縁性、低誘電性、製造容易性等の観点から、化合物(A)が有機化合物、無機化合物(B)が金属酸化物、金属窒化物が好ましく、更に好ましくは、化合物(A)が高分子化合物、無機化合物(B)が酸化アルミニウム、酸化セリウム、ジルコニア、金属窒化物であり、特に好ましくは、化合物(A)が繊維状若しくは反応溶媒中にて繊維状となるビニル重合系ポリマー又は天然高分子、無機化合物(B)が窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素である。
【0024】
中空無機熱伝導性フィラー(D)は、複合熱伝導性フィラー(C)の内部に存在する物質(A)を除去することにより得られる。
(D)の形態は、概ね化合物(A)の形態に依存するため、(D)の形態を制御するには、適当な化合物(A)を使用する必要がある。形態としては、熱伝導性向上及び樹脂等に添加したときの加工性、添加量低減等の観点から、繊維状であることが好ましい。更に好ましくは、平均長径10nm以上100μm以下、かつ、アスペクト比が10倍以上の繊維状物体、特に好ましくは、平均長径50nm以上10μm以下、かつ、アスペクト比が30倍以上の繊維状物体である。この範囲内であると、更に熱伝導性が良好なものとなる。
【0025】
中空無機熱伝導性フィラー(D)の密度は、2.0g/cm3以下であることが好ましく、更に好ましくは、1.5g/cm3以下、特に好ましくは、1.0g/cm3以下である。(D)の密度は、JIS Z8807−1976「固体比重測定方法」の2.比重びんによる測定方法(液体;蒸留水又はメタノール)に準拠して測定される。この範囲内であると、軽量性が更に良好となり、少しの重量の添加量でも高い熱伝導性が発揮できる。また、低誘電性も十分に発揮することができる。
【0026】
中空無機熱伝導性フィラー(D)の空洞の体積分率は、20%以上95%以下であることが好ましく、更に好ましくは、30%以上90%以下、特に好ましくは、40%以上85%以下である。この範囲であると、軽量性、誘電性が更に良好となり、強度も保持することができる。(D)の空洞の体積分率は、(D)の平均短径と無機化合物(B)からなる熱伝導層の平均厚みから計算される。
【0027】
粒子(A)と無機化合物(B)との組み合わせとしては、(A)として、熱分解性及び/又は溶剤溶解性を有し、除去できるものを使用する必要がある他は、複合熱伝導性フィラー(C)と同様の組み合わせが好ましい。
(A)の除去方法としては、高温(200〜700℃程度)に加熱することにより(A)を分解し消失させる方法、アルカリ水等の水系溶剤及び/又はジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、トルエン等の有機溶剤により、(A)を溶解し消失させる方法などが挙げられる。
【0028】
複合熱伝導性フィラー(C)又は中空無機熱伝導性フィラー(D)と樹脂からなる複合樹脂としては、(C)又は(D)と重縮合系樹脂との複合樹脂、(C)又は(D)とビニル重合系樹脂との複合樹脂が挙げられる。
縮合系ポリマーとしては、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂等が挙げられる。
ビニル重合系ポリマーは、ビニル基を有するモノマーを構成単位とするポリマーであり、
シアノ基含有ビニルモノマー、(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有ビニルモノマー、炭素数8〜12の芳香族ビニル炭化水素、炭素数2〜18の脂肪族ビニル炭化水素、炭素数5〜15の脂環式ビニル炭化水素、炭素数3〜22の(メタ)アクリルアミド、炭素数2〜10のビニルスルホン酸、炭素数3〜10のビニルエーテル、炭素数4〜11のビニルケトン、架橋性モノマー等を構成単位として使用することができる。具体的には、ポリメチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ソーダ、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどのホモポリマー、又は、これらの構成単位を共重合したコポリマーが挙げられる。
複合熱伝導性フィラー(C)及び中空無機熱伝導性フィラー(D)は、各種樹脂に添加して複合化することができるが、電子部品として使用する場合には、耐熱性の高い樹脂と複合することが好ましい。具体的には、縮合系樹脂との複合樹脂であることが好ましく、特に好ましくは、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂との複合樹脂である。
【実施例】
【0029】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されない。
シートの密度、熱伝導率、比誘電率は、JISK6249に準拠して測定した。
【0030】
<実施例1>
平均短径が50nm、平均長径が10μm、アスペクト比が200の水分含量90重量%のセルロース繊維(A)(ダイセル社製)100重量部(固形分量10重量部)を、20%アンモニア水96重量部及びエタノール1600重量部の溶液に加え、スターラーを用いて分散した。この分散液に、テトラエトキシシラン(TEOS)30重量部を24時間で滴下し、滴下終了後24時間静置した。次いで、分散液を濾過した後、60℃にて10時間乾燥させてセルロース繊維表面にシリカ(B)からなる熱伝導層を形成した複合熱伝導性フィラー(C−1)を得た。
複合熱伝導性フィラー(C−1)の平均短径は60nm、平均長径が10μm、アスペクト比が170、熱伝導層平均厚みが10nm、密度が1.2g/cm3であった。
本複合熱伝導性フィラー(C−1)を空気中にて500℃で10時間加熱することによりシリカ繊維中空体である中空無機熱伝導性フィラー(D−1)を得た。
(D−1)の平均短径は60nm、平均長径が10μm、アスペクト比が170、密度が0.8g/cm3、空洞の体積分率65体積%であった。
(C−1)及び(D−1)を各々80重量部をそれぞれ側鎖ビニル基含有ジメチルポリシロキサン(重合度700,ビニル価0.0094mol/100g)100重量部、プラネタリーミキサーにて30分撹拌を続けた後、更に架橋剤として両末端及び側鎖にSi−H基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサンA(重合度17,Si−H量0.0030mol/g)を3.8重量部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.05重量部を添加し、15分撹拌した。これにに白金触媒(Pt濃度1%)0.1部を混合し、120℃/10分のプレスキュアーにより50μmのシートを得た。
複合熱伝導性フィラー(C−1)を添加したシートの密度は1.1g/cm3、熱伝導率が5.0、比誘電率(1MHz)が3.5であった。
中空無機熱伝導性フィラー(D−1)を添加したシートの密度は0.9g/cm3、熱伝導率が9.0、比誘電率(1MHz)が2.8であった。
以下、粒子(A)、無機化合物(B)、複合熱伝導性フィラー(C)、及び中空無機熱伝導性フィラー(D)の物性値、及び(C)、(D)を添加したシートの評価結果は表1〜3に示した。
【0031】
<実施例2>
テトラエトキシシララン30重量部の代わりに、アルミニウムイソプロポキシド40重量部をイソプロパノール200重量部に溶解したものを使用する以外は実施例1と同様に合成及び評価等を行った。
【0032】
<実施例3>
20%アンモニア水96重量部及びエタノール1600重量部の溶液に代えて、ホウ酸30重量部及びイオン水1600重量部の溶液を使用し、テトラエトキシシラン30重量部の代わりに、フッ化アルミニウム20重量部をイオン水400重量部に溶解したものを使用する以外は実施例1と同様に合成及び評価等を行った。
【0033】
<実施例4>
アルミニウムイソプロポキシド40重量部をの代わりに、アルミニウムイソプロポキシド20重量部を使用する以外は実施例2と同様に複合熱伝導性フィラー(C−4)を得た。
この複合熱伝導性フィラー(C−4)をプロパンガスを5容積%含有するアンモニアガス雰囲気中で、1400℃で1時間加熱することによりチッ化アルミ繊維中空体である中空無機熱伝導性フィラー(D−4)を得た。
【0034】
<実施例5>
20%アンモニア水96重量部及びエタノール1600重量部の溶液にポリボリニピロリドン(PVP)10重量部を加え、平均短径が20nm、平均長径が1μm、アスペクト比が50倍のPVP繊維(A−5)を形成し、これ(A−5)として使用する以外は、実施例4と同様にして複合熱伝導性フィラー(C−5)を得た。この複合熱伝導性フィラー(C−5)を実施例4と同様にしてチッ化アルミ繊維中空体である中空無機熱伝導性フィラー(D−5)を得た。
【0035】
<実施例6>
アルミニウムイソプロポキシド20重量部をの代わりに、アルミニウムイソプロポキシド50重量部を使用する以外は、実施例5と同様にして複合熱伝導性フィラー(C)を得た。
【0036】
<実施例7>
水分含量90重量%のセルロース繊維の代わりに、平均短径が10nm、平均長径が0.3μm、アスペクト比が30の水分含量90重量%のコラーゲン繊維(A−7)(固形分10重量部)を使用する以外は実施例1と同様にして複合熱伝導性フィラー(C−7)を得た。
この複合熱伝導性フィラー(C−7)をプロパンガスを5容積%含有するアンモニアガス雰囲気中で、1400℃で1時間加熱することによりチッ化ケイ素繊維中空体である中空無機熱伝導性フィラー(D−7)を得た。
【0037】
<実施例8>
水分含量90重量%のセルロース繊維の代わりに、平均短径が10nm、平均長径が0.3μm、アスペクト比が30の水分含量90重量%のコラーゲン繊維(A−8)(固形分10重量部)を使用し、アルミニウムイソプロポキシド20重量部をの代わりに、フッ化アルミニウム30重量部を使用する以外は実施例4と同様にして複合熱伝導性フィラー(C−8)及び酸化アルミ繊維中空体である中空無機熱伝導性フィラー(D−8)を得た。
【0038】
<実施例9>
水分含量90重量%のセルロース繊維の代わりに、平均短径が5nm、平均長径が0.1μm、アスペクト比が20の水分含量90重量%の合成DNA(A−9)(固形分10重量部)を使用使用し、フッ化アルミニウム30重量部をの代わりに、フッ化アルミニウム50重量部を使用する以外は、実施例8と同様に合成及び評価等を行った。
【0039】
<実施例10>
水分含量90重量%のセルロース繊維の代わりに、平均短径が1750nm、平均長径が50μm、アスペクト比が25の10重量部のナイロン繊維(A−10)を使用する以外は、実施例8と同様に合成及び評価等を行った。
【0040】
<実施例11>
水分含量90重量%のセルロース繊維の代わりに、平均短径が500nm、平均長径が50μm、アスペクト比が100の水分含量90重量%のアラミド繊維(A−11)(固形分10重量部)を使用する以外は、実施例8と同様に合成及び評価等を行った。
【0041】
<実施例12>
水分含量90重量%のセルロース繊維の代わりに、平均短径が80nm、平均長径が50μm、アスペクト比が630の水分含量90重量%のポリジアセチレン繊維(A−12)(固形分10重量部)をフッ化アルミニウム30重量部をの代わりに、フッ化アルミニウム15重量部を使用する以外は、実施例8と同様に合成及び評価等を行った。
【0042】
<比較例1>
20%アンモニア水96重量部及びエタノール1600重量部の溶液に、アルミニウムイソプロポキシド(TEOS)30重量部を24時間で滴下し、滴下終了後24時間静置した。次いで、分散液を濾過した後、60℃にて10時間乾燥させてほぼ真球状のアルミナ粒子を得た。
【0043】
<比較例2>
20%アンモニア水96重量部及びエタノール1600重量部の溶液に、アルミニウムイソプロポキシド(TEOS)60重量部を24時間で滴下し、滴下終了後24時間静置した。次いで、分散液を濾過した後、60℃にて10時間乾燥させてほぼ真球状のアルミナ粒子を得た。このアルミナ粒子をプロパンガスを5容積%含有するアンモニアガス雰囲気中で、1400℃で1時間加熱することによりチッ化アルミ粒子を得た。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
【表3】

【0047】
表1及び表2の評価結果から、シートへの含有量が同じで、かつ、熱伝導層の組成が同じである場合、実施例の熱伝導フィラーはいずれも対応する比較例よりも熱伝導率が極めて高い。また、シート密度も極めて小さく、軽量化に大きく寄与する。更に、比誘電率もきわめて低く、特に中空体ではその効果が著しい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の熱伝導性フィラーは、重量あたりの熱伝導性が高く、かつ、極めて微細であるため、高熱伝導性、軽量性、小型化等の要求される電子部品に好適である。また、絶縁性の付与、更には低誘電性の付与も可能であり、高絶縁性・低誘電性が要求されるプリント配線板や半導体封止剤に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均短径が1〜1000nmの粒子(A)の表面に、平均厚み1〜1000nmの無機化合物(B)からなる熱伝導層を形成した平均短径が2〜2000nmの複合熱伝導性フィラー(C)。
【請求項2】
平均長径が10nm〜100μmであり、かつ平均長径/平均短径で表されるアスペクト比が10〜10000である請求項1に記載の複合熱伝導性フィラー(C)。
【請求項3】
粒子(A)が除去可能である請求項1又は2に記載の複合熱伝導性フィラー(C)。
【請求項4】
粒子(A)が、熱分解性及び/又は溶剤溶解性である請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合熱伝導性フィラー(C)。
【請求項5】
無機化合物(B)の熱伝導率が1W/Km以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合熱伝導性フィラー(C)。
【請求項6】
無機化合物(B)が、電気絶縁性である請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合熱伝導性フィラー(C)。
【請求項7】
無機化合物(B)の電気伝導率が0.1μS以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載の複合熱伝導性フィラー(C)。
【請求項8】
無機化合物(B)が、金属窒化物である請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合熱伝導性フィラー(C)。
【請求項9】
粒子(A)が溶媒中に分散された分散体中に、無機化合物(B)の前駆体(B0)を加えることにより、粒子(A)の表面に無機化合物(B)からなる熱伝導層を形成することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の複合熱伝導性フィラー(C)の製造方法。
【請求項10】
無機化合物(B)の前駆体(B0)が金属アルコキシド又は金属ハロゲン化物であり、無機化合物(B)が金属酸化物である請求項9に記載の複合熱伝導性フィラー(C)の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の複合熱伝導性フィラー(C)の内部に存在する粒子(A)の少なくとも一部が除去された、内部に空洞を有する中空無機熱伝導性フィラー(D)。
【請求項12】
空洞の体積分率が20〜95体積%である請求項11に記載の中空無機熱伝導性フィラー(D)。
【請求項13】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の複合熱伝導性フィラー(C)から、熱分解又は溶剤に溶解することにより粒子(A)を除去することを特徴とする中空無機熱伝導性フィラー(D)の製造方法。
【請求項14】
さらに、アンモニアガス及び窒素ガスから選ばれる少なくとも1種のガスの存在下において焼成する請求項13に記載の中空無機熱伝導性フィラー(D)の製造方法。
【請求項15】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の複合熱伝導性フィラー(C)を、アンモニアガス及び窒素ガスから選ばれる少なくとも1種のガスの存在下において焼成することにより、粒子(A)を除去することを特徴とする中空無機熱伝導性フィラー(D)の製造方法。
【請求項16】
請求項11又は12に記載の中空無機熱伝導性フィラー(D)と樹脂からなる複合樹脂。




【公開番号】特開2007−112843(P2007−112843A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−303270(P2005−303270)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】