説明

熱伝導性樹脂組成物、接着剤層、及びそれらを用いて作製した半導体装置

【課題】良好な硬化性、熱伝導率を示しながら塗布作業性に優れ、かつ塗布後の広がり性の悪化が少ない熱伝導性樹脂組成物を提供し、該熱伝導性樹脂組成物を使用することで安定した接着剤層厚みかつボイドの少ない半導体装置を提供することである。
【解決手段】熱伝導率が10W/mK以上である熱伝導性充填材(A)、炭素−炭素2重結合を有する化合物(B)、及びスルフィド結合と水酸基を有する化合物(C)を含むことを特徴とする熱伝導性樹脂組成物並びに該熱伝導性樹脂組成物を使用して作製したことを特徴とする半導体装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性樹脂組成物、その熱伝導性樹脂組成物を加熱することにより得られる接着剤層、及び、その熱伝導性樹脂組成物を用いて作製した半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の大容量化、高速処理化、微細配線化などに伴い半導体装置作動中に発生する熱の問題が顕著になってきており、半導体装置から熱を逃がす、いわゆるサーマルマネージメントがますます重要な課題となってきている。このため半導体装置にヒートシンク、ヒートスプレッダーといった放熱部材を取り付ける方法などが一般的に採用されているが、一方で放熱部材を接着する材料自体の熱伝導率もより高いものとすることが望まれてきている。
【0003】
また、半導体装置の形態についても検討がなされており、半導体素子そのものを金属製のヒートスプレッダーに接着したもの(例えば特許文献1、2)、サーマルビアなどの放熱機構を有する有機基板などに接着したもの(例えば特許文献3)、さらには金属リードフレームを使用する半導体装置においてもダイパッド(半導体素子を接着する部分)の裏面が半導体装置裏面に露出するようにしたもの、露出はしないがリードフレーム自体を通って熱を拡散させるようにしたものなどが採用されている。
これらの場合に半導体素子を接着する材料は熱伝導率だけでなく各界面において良好な塗布作業性が求められ、ボイド、剥離など熱拡散を悪化させる要因は排除される必要がある。
【0004】
一方、環境対応の一環として半導体装置からの鉛撤廃が進められている中、基板実装時に使用する半田も鉛フリー半田が使用されるため、錫−鉛半田の場合よりリフロー温度を高くする必要がある。高温でのリフロー処理は半導体装置内部のストレスを増加させるため、リフロー中に半導体装置中に剥離ひいてはクラックが発生しやすくなる。このような剥離やクラックは界面での熱伝導性を悪化させる。このため、ここに使用する接着用材料は、リフロー処理によっても剥離やクラックなどが生じにくい接着性に優れたものが求められる。
【0005】
また、半導体装置の外装めっきを脱鉛化する目的のためリードフレームのめっきをNi−Pdに変更する場合が増えてきている。ここで、Ni−Pdめっきは表面のPd層の安定性を向上する目的で薄く金めっき(金フラッシュ)が行われるが、Ni−Pdめっきそのものの平滑性及び表面に存在する金のため通常の銀めっき銅フレームなどと比較すると接着力が低下する。接着力の低下はリフロー処理時の半導体装置中の剥離、クラックの原因となる。
このため、ここに使用する接着用材料は、Ni−Pdめっきなどでも良好な接着性、塗布作業性に優れたものが求められる。
【0006】
ここで、このような接着用材料の硬化物の熱伝導率を向上させるためには、基剤となる樹脂組成物に銀粉などの高熱伝導性フィラーを高充填する必要があるが、これは得られた熱伝導性樹脂組成物の高粘度化に繋がっていた。熱伝導性樹脂組成物の粘度が高い場合にはヒートスラッグ、リードフレーム、有機基板などといった被着体へ濡れ性が悪化しその結果接着性の悪化の原因となっていた。また熱伝導性樹脂組成物の粘度を下げる目的で溶剤を使用することは一般的であるが、溶剤を使用した熱伝導性樹脂組成物は乾燥しやすく塗布後直ぐに半導体素子あるいは放熱部材を搭載しないと広がり性が悪化し接着剤層が厚くなる、さらには十分に接着性が得られないなどの不具合が生じていた。(例えば特許文献4)
さらに半導体装置の生産性向上としてダイアタッチペーストまたは放熱部材接着用材料の硬化時間短縮の検討が行われ、半導体素子または放熱部材を搭載した支持体を熱板あるいはその他の加熱設備を有する装置を用いた硬化方式が提案されている。(例えば特許文献5)
この場合、硬化処理中の温度上昇は、マガジンを用いた一括処理に比較し著しく早いため硬化物中あるいは硬化物と被着体の界面にボイドが発生しやすい。ボイドは接着力の悪化、熱伝導率の低下の原因となり、短時間硬化を行ってもボイドの発生しない材料が望まれている。
【特許文献1】特開2003−204019号公報
【特許文献2】特開平10−64928号公報
【特許文献3】特開平11−330322号公報
【特許文献4】特開平11−150135号公報
【特許文献5】特開平10−199904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、硬化性が良好で、熱伝導性、塗布作業性、塗布後の広がり性とのバランスに優れる熱伝導性樹脂組成物、その熱伝導性樹脂組成物を加熱することにより得られる接着剤層、また、その熱伝導性樹脂組成物を半導体用ダイアタッチペーストまたは放熱部材接着用材料として用いることで安定した厚みかつボイドの少ない接着剤層を形成することのできる半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の熱伝導性樹脂組成物は、(A)熱伝導率が10W/mK以上である熱伝導性充填材、(B)炭素−炭素2重結合を有する化合物、及び(C)スルフィド結合と水酸基を有する化合物を含むことを特徴とする。
本発明の熱伝導性樹脂組成物では、前記化合物(C)が、一般式(1)に示される官能基を有することができる。
−S−R−OH (1)
(式中のSは硫黄原子、Rは炭素数1から12の有機基である。)
本発明の熱伝導性樹脂組成物では、前記一般式(1)に示される官能基のRが、炭素数1から6のアルキレン基とすることができる。
本発明の熱伝導性樹脂組成物では、前記一般式(1)に示される官能基のRが、エチレン基とすることができる。
本発明の熱伝導性樹脂組成物では、前記化合物(C)が、2,2'−ジチオジエタノール、3−チアペンタンジオール、3,6−ジチアオクタン−1,8−ジオール、及び3,6,9−トリチアウンデカン−1,11−ジオールからなる群より選ばれる少なくとも1つ以上の化合物とすることができる。
本発明の熱伝導性樹脂組成物では、前記化合物(B)が、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、及びマレイミド基からなる群より選ばれる少なくとも1つ以上の官能基を有する化合物とすることができる。
本発明の接着剤層は、前記熱伝導性樹脂組成物を加熱することにより得られることを特徴とする。
本発明の半導体装置は、前記熱伝導性樹脂組成物を半導体用ダイアタッチペーストまたは放熱部材接着用材料として用いて作製したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に従うと、硬化性が良好で、熱伝導性、塗布作業性、塗布後の広がり性とのバランスに優れる熱伝導性樹脂組成物を得ることができる。また、その熱伝導性樹脂組成物を加熱することにより、安定した厚みかつボイドの少ない接着剤層を得ることができる。
また、本発明に従うと、熱伝導性、塗布作業性、塗布後の広がり性とのバランスに優れる熱伝導性樹脂組成物を半導体用ダイアタッチペーストまたは放熱部材接着用材料として用いることにより、安定した厚みかつボイドの少ない接着剤層が形成された半導体装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の熱伝導性樹脂組成物は、(A)熱伝導率が10W/mK以上である熱伝導性充填材、(B)炭素−炭素2重結合を有する化合物、及び(C)スルフィド結合と水酸基を有する化合物を含むことを要旨とし、硬化性が良好で、熱伝導性、塗布作業性、塗布後の広がり性とのバランスに優れるといった効果を奏する。またその熱伝導性樹脂組成物を加熱することにより得られる接着剤層は安定した厚みかつボイドの少ない接着剤層となるといった効果を奏する。
また、本発明の半導体装置は、前述の熱伝導性樹脂組成物を半導体用ダイアタッチペーストまたは放熱部材接着用材料として用いて作製されたものであり、安定した厚みかつボイドの少ない接着剤層が形成されるといった効果を奏する。
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に用いる熱伝導性充填材(A)は、単体の熱伝導率が10W/mK以上の金属、無機材料、有機材料などからなる充填材である。このような熱伝導性充填材(A)としては、銀粉、金粉、銅粉、アルミニウム粉、ニッケル粉、パラジウム粉などの金属粉、アルミナ粉末、チタニア粉末、アルミニウムナイトライド粉末、ボロンナイトライド粉末などのセラミック粉末が挙げられる。これらの中でも、熱伝導率の観点からより好ましいのは単体での熱伝導率が200W/mK以上の金属粉であり、特に好ましいのは、銀粉、金粉、銅粉、アルミニウム粉、ベリリウム粉からなる群より選ばれる少なくとも1つ以上の充填材である。熱伝導性充填材(A)は、それを含む熱伝導性樹脂組成物をノズルを使用して吐出する場合があるので、ノズル詰まりを防ぐために平均粒径は30μm以下が好ましく、ナトリウム、塩素などのイオン性の不純物が少ないものであることが好ましい。
これら熱伝導性充填材のなかでも良好な熱伝導率及び酸化などへの安定性の観点からもっとも好ましいものは、銀粉である。
ここで銀粉とは純銀または銀合金の微粉末である。銀合金としては銀を50重量%以上、好ましくは70重量%以上含有する銀−銅合金、銀−パラジウム合金、銀−錫合金、銀−亜鉛合金、銀−マグネシウム合金、銀−ニッケル合金などが挙げられる。
通常電子材料用として市販されている銀粉であれば、還元粉、アトマイズ粉などが入手可能で、好ましい粒径としては平均粒径が0.5μm以上、30μm以下である。より好ましい平均粒径は1μm以上、10μm以下である。下限値未満では熱伝導性樹脂組成物の粘度が高くなりすぎ、上限値を超える範囲ではディスペンス時にノズル詰まりの原因となりうるからである。電子材料用以外の銀粉ではイオン性不純物の量が多い場合があるので注意が必要である。必要により平均粒径が1μm以下の金属粉との併用も可能である。
銀粉の形状としては、フレーク状、球状など特に限定されないが、好ましくはフレーク状であり、その添加量は通常熱伝導性樹脂組成物中70重量%以上、95重量%以下であることが好ましい。銀粉の割合が下限値より少ない場合には硬化物の熱伝導性が悪化し、上限値より多い場合には熱伝導性樹脂組成物の粘度が高くなりすぎ塗布作業性が悪化するおそれがあるためである。
【0012】
本発明に用いる化合物(B)とは、炭素−炭素2重結合を有している化合物であり、その種類は特に限定されない。本発明ではこの化合物(B)を熱伝導性樹脂組成物に含有させることで、熱伝導性、塗布作業性、塗布後の広がり性とのバランスを維持しつつ、塗布後の硬化性が良好になることを見出したものである。この化合物(B)は、炭素−炭素2重結合を有していればよいが、好ましくは2つ以上有している化合物である。炭素−炭素2重結合を2つ以上有することにより反応性が高くなり、硬化性が良好になるからである。また本発明では、炭素−炭素2重結合を有する化合物(B)が、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、及びマレイミド基からなる群より選ばれる少なくとも1つ以上の官能基を有する化合物であることが好ましい。これら化合物(B)を含有させることで、熱伝導性樹脂組成物の反応性が高くなり、硬化性がさらに良好となるからである。なお本発明では、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、マレイミド基とは2重結合を形成する炭素原子のいずれか1つあるいは2つが炭素数1〜6の炭化水素基で置換されているものを含むものとすることができる。例えば芳香族環に結合したビニル基のα位が炭素数1の炭化水素基で置換されたものがα−メチルスチリル基であり、アクリロイル基のカルボニル基に結合している炭素原子が炭素数1の炭化水素基で置換されたものがメタアクリロイル基である。このような炭素−炭素2重結合を有する化合物(B)は加熱することにより3次元的網目構造を形成する熱硬化性樹脂である。
【0013】
好ましい化合物(B)としては、炭素−炭素2重結合を含む官能基を有する分子量500以上、10000以下の化合物であり、炭素−炭素2重結合を含む官能基を両末端に有する化合物も好ましい。
これらのなかでも好ましい化合物(B)として以下の化合物が挙げられる。
アクリロイル基を有する化合物として好ましいものは、分子量が500〜10000のポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリブタジエン、ブタジエンアクリロニトリル共重合体でアクリロイル基を有する化合物である。
ポリエーテルとしては、炭素数が3〜6の有機基がエーテル結合を介して繰り返したものが好ましく、芳香族環を含まないものが好ましい。ポリエーテルポリオールと(メタ)アクリル酸またはその誘導体との反応により得ることが可能である。
ポリエステルとしては、炭素数が3〜6の有機基がエステル結合を介して繰り返したものが好ましく、芳香族環を含まないものが好ましい。ポリエステルポリオールと(メタ)アクリル酸またはその誘導体との反応により得ることが可能である。ポリカーボネートとしては、炭素数が3〜6の有機基がカーボネート結合を介して繰り返したものが好ましく、芳香族環を含まないものが好ましい。ポリカーボネートポリオールと(メタ)アクリル酸またはその誘導体との反応により得ることが可能である。
【0014】
ポリ(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリレートとの共重合体または水酸基を有する(メタ)アクリレートと極性基を有さない(メタ)アクリレートとの共重合体などが好ましい。これら共重合体とカルボキシ基と反応する場合には水酸基を有するアクリレート、水酸基と反応する場合には(メタ)アクリル酸またはその誘導体を反応することにより得ることが可能である。
ポリブタジエンとしては、カルボキシ基を有するポリブタジエンと水酸基を有する(メタ)アクリレートとの反応、水酸基を有するポリブタジエンと(メタ)アクリル酸またはその誘導体との反応により得ることが可能であり、また無水マレイン酸を付加したポリブタジエンと水酸基を有する(メタ)アクリレートとの反応により得ることも可能である。
ブタジエンアクリロニトリル共重合体としては、カルボキシ基を有するブタジエンアクリロニトリル共重合体と水酸基を有する(メタ)アクリレートとの反応により得ることが可能である。
ビニル基を有する化合物として好ましいものは、分子量が500〜10000のポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリブタジエン、ブタジエンアクリロニトリル共重合体でビニル基を有する化合物であり、特に好ましいのはビニルエーテル基を有する化合物である。
アリル基を有する化合物として好ましいものは、分子量が500〜10000のポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリブタジエン、ブタジエンアクリロニトリル共重合体でアリル基を有する化合物であり、特に好ましいのはアリルエステル基を有する化合物であり、もっとも好ましいのはアリルエステルシクロヘキシル基を有する化合物である。
マレイミド基を有する化合物として好ましいものは、ダイマー酸ジアミンと無水マレイン酸の反応により得られる化合物、マレイミド酢酸、マレイミドカプロン酸といったマレイミド化アミノ酸とポリオールの反応により得られる化合物である。マレイミド化アミノ酸は、無水マレイン酸とアミノ酢酸またはアミノカプロン酸とを反応することで得られ、ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリ(メタ)アクリレートポリオールが好ましく、芳香族環を含まないものが特に好ましい。
【0015】
必要により以下に示す化合物を併用することも可能である。例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,2−シクロヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,3−シクロヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,2−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、1,3−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、1,2−シクロヘキサンジエタノールモノ(メタ)アクリレート、1,3−シクロヘキサンジエタノールモノ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジエタノールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する(メタ)アクリレートやこれら水酸基を有する(メタ)アクリレートとジカルボン酸またはその誘導体を反応して得られるカルボキシ基を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。ここで使用可能なジカルボン酸としては、例えばしゅう酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0016】
上記以外にもメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャルブチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、その他のアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ターシャルブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジンクモノ(メタ)アクリレート、ジンクジ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフロロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4−ヘキサフロロブチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリロキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、1,2−ジ(メタ)アクリルアミドエチレングリコール、ジ(メタ)アクリロイロキシメチルトリシクロデカン、N−(メタ)アクリロイロキシエチルマレイミド、N−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、N−(メタ)アクリロイロキシエチルフタルイミド、n−ビニル−2−ピロリドン、スチレン誘導体、α−メチルスチレン誘導体などを使用することも可能である。
【0017】
さらに重合開始剤として熱ラジカル重合開始剤が好ましく用いられる。通常熱ラジカル重合開始剤として用いられるものであれば特に限定しないが、望ましいものとしては、急速加熱試験(試料1gを電熱板の上にのせ、4℃/分で昇温した時の分解開始温度)における分解温度が40〜140℃となるものが好ましい。分解温度が40℃未満だと、導電性ペーストの常温における保存性が悪くなり、140℃を越えると硬化時間が極端に長くなるため好ましくない。これを満たす熱ラジカル重合開始剤の具体例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、P−メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α、α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、桂皮酸パーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、α、α’−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3,−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−m−トルオイルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどが挙げられるが、これらは単独または硬化性を制御するため2種類以上を混合して用いることもできる。
これら炭素−炭素2重結合を有する化合物(B)の他に、シアネート樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などを含むことも可能である。
【0018】
本発明ではスルフィド結合と水酸基を有する化合物(C)を含むことを特徴とするが、これは化合物(C)を含有させることで塗布作業性、塗布後の広がり性とを維持しつつ、硬化物の熱伝導率が向上することを見出したことによるためである。硬化物の熱伝導率向上は熱伝導性充填材(A)として、金属粉を使用した場合に顕著であり、なかでも銀粉を使用した場合に最も顕著である。なお本発明では、スルフィド結合と水酸基を有する化合物(C)が芳香族環を含まない化合物であることが好ましい。芳香族環を含まない化合物とすることにより、特に熱伝導性樹脂組成物は硬化物の熱伝導率が向上するためである。
【0019】
また、本発明では、スルフィド結合と水酸基を有する化合物(C)が一般式(1)に示される官能基を有することが好ましい。
−S−R−OH (1)
(式中のSは硫黄原子、Rは炭素数1から12の有機基である。)
一般式(1)におけるRは、炭素数が1から12の有機基であるが、より好ましいのは炭素数1から6のアルキレン基であり、特に好ましいのはエチレン基である。こうすることで、より効果的に硬化物の熱伝導率を向上させることができる。
【0020】
スルフィド結合と水酸基を有する化合物(C)としては、例えば、チオビス(ペンタデカグリセロール)、チオビス(イコサエチレングリコール)、チオビス(ペンタコンタエチレングリコール)、2,2′−チオジブタノールビス(オクタエチレングリコールペンタグリセロール)エーテル、チオビス(ドデカエチレングリコール)、ジチオビス(ヘンテトラコンタエチレングリコール)、ジチオビス(イコサエチレングリコールペンタプロピレングリコール)、ジチオビス(デカグリセロール)、1,3−プロパンジチオールビス(デカエチレングリコール)チオエーテル、1,4−ブタンジチオールビス(ペンタデカグリセロール)チオエーテル、1,3−ジチオグリセロールビス(ペンタエチレングリコール)チオエーテル、1,2−エタンジチオールビス(ペンタ(1−エチル)エチレングリコール)チオエーテル、1,3−ジチオグリセロールビス(ジ(1−エチル)エチレングリコール)チオエーテル、2−メルカプトエチルスルフィドビス(ヘキサトリアコンタエチレングリコール)、2−メルカプトエチルエーテルビス(ジエチレングリコール)、ジエチレングリコールモノメチルチオエーテル、デカグリセロールモノ(6−メチルチオヘキシル)チオエーテル、ペンタデカエチレングリコールモノ((アセチルメチル)チオエチル)チオエーテル、1,2−エタンジオール−ω−(グリシジル)チオエーテル−ω′−イコサエチレングリコールチオエーテル、キサデカエチレングリコールモノ(2−メチルチオエチル)チオエーテル、イコサエチレングリコールモノメチルチオエーテル、ドデカエチレングリコールビス(2−ヒドロキシエチル)チオエーテル、ペンタトリアコンタエチレングリコールモノ(2−n−ブチルジチオエチル)ジチオエーテル、イコサグリセロールモノ(2−エチルチオエチル)チオエーテル、トリアコンタエチレングリコールモノ(2−メチルチオエチル)チオエーテル、トリデカエチレングリコールモノメチルチオエーテル、1,2−エタンジチオールビス(イコサエチレングリコール)チオエーテル、ジチオビス(ペンタデカエチレングリコール)、1,4−ブタンジオール−ω−((2−ベンジルオキシ−1−メチル)エチル)チオエーテル−ω′−(デカプロピレングリコールオクタコンタエチレングリコール)チオエーテル、1,2−エタンジオール−ω−(4−メトキシベンジル)チオエーテル−ω′−(ペンタコンタエチレングリコール)チオエーテルや、一般式(1)に示される官能基を有するスルフィド結合と水酸基を有する化合物(C)として、チオビス(ジエチレングリコール)、チオビス(ヘキサエチレングリコール)、4,10−ジオキサ−7−チアトリデカン−2,12−ジオール、チオジグリセリン、チオビス(トリグリセリン)、ジチオビス(トリグリセロール)、4,7,10−トリチアトリデカン−1,2,12,13−テトラオール、2,5−ビス(2−ヒドロキシエチルチオメチル)−1,4−ジチアン、5,5−ビス(ヒドロキシエチルチオメチル)−3−チオ−1−ヘキサノール、5,5−ビス(ヒドロキシエチルチオメチル)−3−チオ−1−ヘプタノール、トリス(ヒドロキシエチルチオメチル)メタン、4,8,12−トリチアペンタデカン−1,2,6,10,14,15−ヘキサオール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチルチオ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチルチオメチル)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチルチオエチル)ベンゼン、4,4’−ビス(4−(ヒドロキシエチルチオ)フェニル)スルフィド、(2−ヒドロキシエチルチオ)ベンゼン、(2−ヒドロキシエチルチオメチル)ベンゼン、(2−ヒドロキシエチルチオエチル)ベンゼン、2−(2−ヒドロキシエチルチオ)ナフタレン、下記の一般式(1)に示される官能基のRが炭素数1から6のアルキレン基を有する化合物などが挙げられる。一般式(1)に示される官能基のRが炭素数1から6のアルキレン基(但しエチレン基を除く)であるのものとして、チオジメタノール、ジチオジメタノール、3,3′−チオジプロパノール、3,3′−ジチオジプロパノール、4,4’−チオジブタノール、4,4’−ジチオジブタノール、5,5’−チオジペンタノール、5,5’−ジチオジペンタノール、6,6’−チオジヘキサノール、6,6′−ジチオジヘキサノールなどが挙げられ、Rがエチレン基のものとしては、2,2'−ジチオジエタノール、3−チアペンタンジオール、3,6−ジチアオクタン−1,8−ジオール、3,6,9−トリチアウンデカン−1,11−ジオール、2−メチルチオエタノール、2−エチルチオエタノール、2−プロピルチオエタノールなどが挙げられる。これらは単独でも2種以上を併用しても構わない。
【0021】
また本発明では、前記化合物(C)が、2,2'−ジチオジエタノール、3−チアペンタンジオール、3,6−ジチアオクタン−1,8−ジオール、及び3,6,9−トリチアウンデカン−1,11−ジオールからなる群より選ばれる少なくとも1つ以上の化合物であることが好ましい。このような化合物とすることで、さらに熱伝導性樹脂組成物の硬化物の熱伝導率を向上させることができる。
【0022】
スルフィド結合と水酸基を有する化合物(C)は、炭素−炭素2重結合を有する化合物(B)に対し0.05重量%以上、10重量%以下含まれることが好ましい。より好ましくは0.1重量%以上、5重量%以下であり、特に好ましいのは0.5重量%以上、2重量%以下である。この範囲内であれば目的とする熱伝導性の向上が得られるからである。
【0023】
本発明の熱伝導性樹脂組成物には、必要に応じてその他の添加剤を使用してもよい。その他の添加剤としては、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン、スルフィドシランなどのシランカップリング剤や、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、アルミニウム/ジルコニウムカップリング剤などのカップリング剤、カーボンブラックなどの着色剤、シリコーンオイル、シリコーンゴムなどの低応力化成分、ハイドロタルサイトなどの無機イオン交換体、消泡剤、界面活性剤、各種重合禁止剤、酸化防止剤などであり、種々の添加剤を適宜配合しても差し支えない。
【0024】
本発明の熱伝導性樹脂組成物は、例えば各成分を予備混合した後、3本ロールを用いて混練した後真空下脱泡することにより製造することができる。
本発明の接着剤層は、上記得られた熱伝導性樹脂組成物を例えばリードフレームや基板などの支持体の所定の部位に塗布し、半導体素子搭載後加熱することにより得ることができる。また基板に半田接合し封止したフリップチップの所定の位置に塗布し放熱部材搭載後、加熱することにより得ることができる。
このとき接着剤層の厚みについてはとくに制限を受けるものではないが、熱伝導性、塗布作業性、及び塗布後の広がり性のバランスを考慮すると、5μm以上、100μm以下、好ましくは10μm以上、50μm以下であるのが望ましい。特に好ましいのは10μm以上、30μm以下である。下限値未満では接着特性が悪化する場合があり、上限値を超える範囲では接着剤層の厚み制御が困難になり熱伝導性が安定しない場合があるからである。
【0025】
本発明の半導体装置を作製する方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、市販のダイボンダーを用いて、リードフレームや基板などの支持体、または放熱部材の所定の部位に本発明の熱伝導性樹脂組成物をディスペンス塗布した後、半導体素子をマウントし、加熱硬化する。その後、ワイヤーボンディングして、エポキシ樹脂を用いてトランスファー成形することによって半導体装置を作製する。またはフリップチップ接合後アンダーフィル材で封止したフリップチップBGA(Ball Grid Array)などのチップ裏面に本発明の熱伝導性樹脂組成物をディスペンスしヒートスプレッダー、リッドといった放熱部品を搭載し加熱硬化するなどといった使用方法も可能である。
【実施例】
【0026】
以下実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、これらに限定されるものではない。配合割合は重量部で示す。
[実施例1]
熱伝導性充填材(A)として平均粒径7μm、タップ密度5.8g/cmの銀粉(銀の熱伝導率は427W/mK、以下銀粉)を、炭素−炭素2重結合を有する化合物(B)としてポリテトラメチレングリコールとイソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシメチルメタクリレートとの反応により得られたウレタンジメタクリレート化合物(分子量約1600、以下化合物B1)、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート(日本化成(株)製、CHDMMA、以下化合物B6)、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸(共栄社化学(株)製、ライトエステルHO−MS、以下化合物B7)、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート(共栄社化学(株)製、ライトエステル1,6HX、以下化合物B8)を、重合開始剤としてジクミルパーオキサイド(日本油脂(株)製、パークミルD、急速加熱試験における分解温度:126℃、以下重合開始剤)を、スルフィド結合と水酸基を有する化合物(C)として3,6−ジチアオクタン−1,8−ジオール(試薬、以下化合物C1)を、その他の添加剤としてビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(ダイソー(株)製、カブラス4、以下化合物Z1)、3−グリシジルプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM−403E、以下化合物Z2)を表1のように配合し、3本ロールを用いて混練し、脱泡することで熱伝導性樹脂組成物を得た。配合割合は重量部である。得られた熱伝導性樹脂組成物を以下の方法により評価した。評価結果を表1に示す。
【0027】
[実施例2〜6]
炭素−炭素2重結合を有する化合物(B)として、ポリテトラメチレングリコールとマレイミド化酢酸の反応により得られたビスマレイミド化合物(分子量580、以下化合物B2)、シクロヘキサンジカルボン酸のジアリルエステルとポリプロピレングリコールとの反応により得られたジアリルエステル化合物(分子量1000、ただし原料として用いたシクロヘキサンジカルボン酸のジアリルエステルを約15%含む、以下化合物B3)、1,4−シクロヘキサンジメタノール/1,6−ヘキサンジオール(=3/1(重量比))と炭酸ジメチルの反応により得られたポリカーボネートジオールとメチルメタクリレートの反応により得られたポリカーボネートジメタクリレート化合物(分子量1000、以下化合物B4)、酸価108mgKOH/gで分子量4600のアクリルオリゴマーと2−ヒドロキシメタクリレート/ブチルアルコール(=1/2(モル比))との反応により得られたメタクリル化アクリルオリゴマー(分子量5000、以下化合物B5)、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応により得られるジグリシジルビスフェノールA(エポキシ当量180、常温で液体、以下化合物B9)を、炭素−炭素2重結合を有さない化合物として、クレジルグリシジルエーテル(エポキシ当量185、以下化合物B10)、ビスフェノールF(大日本インキ工業(株)製、DIC−BPF、水酸基当量100、以下化合物B11)、ジシアンジアミド(以下化合物B12)、2−メチルイミダゾールと2,4−ジアミノ−6−ビニルトリアジンとの付加物(四国化成工業(株)製、キュアゾール2MZ−A、以下化合物B13)を、スルフィド結合と水酸基を有する化合物(C)として3,6,9−トリチアウンデカン−1,11−ジオール(試薬、以下化合物C2)を使用した。これらの中から選択した化合物を表1のように配合し、実施例1と同様に3本ロールを用いて混練し、脱泡することで熱伝導性樹脂組成物を得た。配合割合は重量部である。得られた熱伝導性樹脂組成物を以下の方法により評価した。評価結果を表1に示す。
【0028】
[比較例1〜4]
実施例で用いた化合物の中から選択した化合物を、表1に示す割合で配合し実施例1と同様に熱伝導性樹脂組成物を得た。
なお比較例3では、γ−ブチロラクトン(試薬、以下溶剤)を用いた。
得られた熱伝導性樹脂組成物を以下の方法により評価した。評価結果を表1に示す。
【0029】
評価方法
・塗布作業性(粘度):E型粘度計(3°コーン)を用い25℃、2.5rpmでの値を熱伝導性樹脂組成物作製直後に測定した。粘度が15〜25Pa・sの場合を合格とした。粘度の単位はPa・sである。
【0030】
・広がり性(1):表1に示す熱伝導性樹脂組成物を22Gのシングルノズル(内径0.47mm)を用いてリードフレーム上に1点塗布し、直後に6×6mmのガラスチップをマウント荷重300g、マウント時間1秒でマウントし、サンプルを作製し、熱伝導性樹脂組成物の広がった直径を測定した。得られた12個のサンプルに対し測定した値の平均値を広がり性(1)の値とした。広がり性(1)の単位はmmである。
・広がり性(2):熱伝導性樹脂組成物塗布後、1時間放置した後にマウントした以外は広がり性(1)と同様に広がり性(2)の測定を行った。広がり性(2)の単位はmmである。広がり性(2)/広がり性(1)の値が0.9以上1.1以下の場合を塗布後の広がり性が良好として合格とした。
【0031】
・接着剤層厚み(1):表1に示す熱伝導性樹脂組成物を用いて下記のリードフレームにシリコンチップをマウントし175℃の熱板上で60秒間硬化し接着した。マウントはダイボンダー(ASM社製)を用い、熱伝導性樹脂組成物塗布直後に塗布厚みが約25μmになるように調整して行った。接着剤層厚みの測定は非接触型の厚み計を用い予め測定しておいたリードフレームとシリコンチップの厚みを差し引くことで算出した。24個のサンプルでの測定値の平均値を接着剤層厚み(1)とした。塗布厚み(1)の単位はμmである。
リードフレーム:Ni−Pdめっきした銅フレーム(QFP用)
チップサイズ:6×6mm
・接着剤層厚み(2):マウントを接着剤層厚み(1)と同じ条件で熱伝導性樹脂組成物塗布後1時間放置した後に行った以外は接着剤層厚み(1)と同様に接着剤層厚み(2)の測定を行った。接着剤層厚み(2)の単位はμmである。接着剤層厚み(2)/接着剤層厚み(1)の値が0.9以上1.1以下の場合を接着剤層厚みが安定しているとして合格とした。
【0032】
・接着強度(1):接着剤層厚み(1)でシリコンチップをマウント硬化したリードフレームを用いて自動接着強度測定装置にて260℃での接着強度を測定した。12個のサンプルでの測定値の平均値を接着強度とし、30N/チップ以上の場合を硬化性が良好として合格とした。接着強度(1)の単位はN/チップである。
・接着強度(2):接着剤層厚み(2)でシリコンチップをマウント硬化したリードフレームを用いた以外は接着強度(1)と同様に接着強度(2)の測定を行った。30N/チップ以上の場合を硬化性が良好として合格とした。接着強度(2)の単位はN/チップである。
【0033】
・熱伝導率:表1に示す熱伝導性樹脂組成物を用いて直径2cm、厚さ1mmのディスク状の試験片を作製した。(硬化条件は175℃×2時間。ただし175℃までは室温から30分間かけて昇温した。)レーザーフラッシュ法(t1/2法)にて測定した熱拡散係数(α)、DSC法により測定した比熱(Cp)、JIS−K−6911準拠で測定した密度(ρ)より次式を用いて熱伝導率を算出した。熱伝導率の単位はW/mKである。熱伝導率が5W/mK以上のものを熱伝導性が良好として合格とした。
熱伝導率=α×Cp×ρ
・耐温度サイクル性:表1に示す熱伝導性樹脂組成物を用いて、15×15×0.5mmのシリコンチップをNiめっきした銅ヒートスプレッダー(25×25×2mm)にマウントし、175℃の熱板上で120分硬化した。硬化後及び温度サイクル処理(−65℃←→150℃、100サイクル)後、接着剤層の剥離及びボイドの様子を超音波探傷装置(反射型)にて測定した。剥離及びボイドの面積が10%以下のものを合格とした。
・耐リフロー性(1):接着剤層厚み(1)でシリコンチップをマウント硬化したリードフレームを封止材料(スミコンEME−G620A、住友ベークライト(株)製)を用い封止し、半導体装置を作製した。この半導体装置を30℃、相対湿度60%、168時間吸湿処理した後、IRリフロー処理(260℃、10秒、3回リフロー)を行った。処理後の半導体装置を超音波探傷装置(透過型)により剥離の程度を測定した。剥離面積の単位は%である。ダイアタッチ部の剥離面積が10%未満の場合を合格とした。
半導体装置:QFP(14×20×2.0mm)
リードフレーム:Ni−Pdめっきした銅フレーム
チップサイズ:6×6mm
・耐リフロー性(2):接着剤層厚み(2)で作製したリードフレームを用いた以外は耐リフロー性(1)と同様にして剥離の測定を行った。ダイアタッチ部の剥離面積が10%未満の場合を合格とした。
【0034】
【表1】

【0035】
表1から明らかなように実施例1〜6に示す熱伝導性樹脂組成物は粘度が適切な範囲であるため塗布作業性が良好で、塗布後1時間放置しても塗布後の広がり性が良好であった。熱伝導率も5W/mK以上と良好な値を示し、175℃、60〜120秒間という短い時間での硬化でも接着強度が高く、硬化性が良好であった。接着剤層は、厚みに変化が少なく、厚みも安定しており、耐温度サイクル性試験、耐リフロー性試験においても剥離、ボイドの発生は少なく、良好な接着力を示した。
これに対し本発明を逸脱する比較例1に示す熱伝導性樹脂組成物は、粘度が適切な範囲であるため塗布作業性が良好で、塗布後1時間放置しても広がり性が良好で、短時間硬化でも接着強度が高く硬化性が良好であり、接着剤層は、厚みに変化が少なかったが、化合物(C)を含まないため熱伝導率が不足していた。
比較例2に示す熱伝導性樹脂組成物は、銀粉の配合割合を増すことで熱伝導率を向上することはできたが、粘度が高くなりすぎ、塗布作業性が劣る結果となった。このため耐温度サイクル性試験のように接着面積が大きい場合には全体を接着することが困難であった。
比較例3に示す熱伝導性樹脂組成物は、溶剤を配合することで熱伝導率を向上することはできたが、熱板を用いた短時間硬化の場合には溶剤の揮発により接着剤層には多数のボイドが発生し、接着剤層厚みが不安定で、接着力も低下し、耐温度サイクル性試験では硬化後に溶剤の揮発に基づくボイドが処理中に剥離に進展した。また耐リフロー性試験においてもボイドが剥離に進展した。
比較例4に示す熱伝導性樹脂組成物は、化合物(B)を含まないため接着強度試験において十分な接着力を示すことができなかった。このため耐温度サイクル性試験及び耐リフロー性試験は実施しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の熱伝導性樹脂組成物は、硬化性が良好で、良好な熱伝導率を示しながら塗布作業性に優れ、かつ塗布後の広がり性が良好なため、ダイアタッチペーストまたは放熱部材接着用材料として用いた場合、安定した接着剤層厚みかつボイドの少ない半導体装置を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)熱伝導率が10W/mK以上である熱伝導性充填材、(B)炭素−炭素2重結合を有する化合物、及び(C)スルフィド結合と水酸基を有する化合物を含むことを特徴とする熱伝導性樹脂組成物。
【請求項2】
前記化合物(C)が、一般式(1)に示される官能基を有する請求項1に記載の熱伝導性樹脂組成物。
−S−R−OH (1)
(式中のSは硫黄原子、Rは炭素数1から12の有機基である。)
【請求項3】
前記一般式(1)に示される官能基のRが炭素数1から6のアルキレン基である請求項1または請求項2に記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項4】
前記一般式(1)に示される官能基のRがエチレン基である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項5】
前記化合物(C)が、2,2'−ジチオジエタノール、3−チアペンタンジオール、3,6−ジチアオクタン−1,8−ジオール、及び3,6,9−トリチアウンデカン−1,11−ジオールからなる群より選ばれる少なくとも1つ以上の化合物である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項6】
前記化合物(B)が、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、及びマレイミド基からなる群より選ばれる少なくとも1つ以上の官能基を有する化合物である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の熱伝導性樹脂組成物を加熱することにより得られることを特徴とする接着剤層。
【請求項8】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の熱伝導性樹脂組成物を半導体用ダイアタッチペーストまたは放熱部材接着用材料として用いて作製したことを特徴とする半導体装置。

【公開番号】特開2009−203416(P2009−203416A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−49502(P2008−49502)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】