説明

熱処理装置、熱処理方法及び記憶媒体

【課題】加熱板に基板を載置して熱処理するにあたり、加熱板の温度を速やかに降温すること。
【解決手段】加熱板84の下方側に加熱板84と略同じ大きさの2枚の冷却プレート81、82を水平に設け、下側の冷却プレート81は断熱部材を介して加熱板84に固定し、上側の冷却プレート82は下側の冷却プレート81に対して昇降できるように構成する。下側の冷却プレート81には冷媒流路88を設け、上側の冷却プレート82を下側の冷却プレート81に接触させて予め冷却しておき、加熱板84の温度を降温させるときには、上側の冷却プレート82を上昇させて加熱板84に接触あるいは近接させる。また、2枚の冷却プレート81、82を用いずに、冷媒流路88を備えた1枚の冷却プレートを加熱板84に接触あるいは近接させるようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱板上に基板を載置して基板の熱処理を行う熱処理装置、熱処理方法及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造におけるフォトリソグラフィ工程には、基板を加熱板上に載置して基板に対して熱処理を行う熱処理工程が含まれる。具体的には、レジスト塗布後の熱処理、露光後、現像前の熱処理、現像後の熱処理などが挙げられる。加熱板は、例えば抵抗発熱線を熱板本体にパターン印刷して構成され、基板の種別(ロット)に応じて設定された設定温度にコントロールされる。従って、一のロットについて熱処理を終えた後、後続のロットの設定温度が当該一のロットの設定温度と異なる場合には、加熱板の温度を変更する必要がある。例えば、後続のロットの基板の設定温度が前のロットの基板の設定温度よりも低い場合、前のロットの最終の基板が加熱板から搬出された後、例えば当該加熱板の裏面側にエアーを供給して(パージして)、加熱板を降温するようにしている。
しかし、エアーパージによる加熱板の冷却手法では熱交換率が低いことから温度整定を行うために長い時間がかかり、スループットの向上の妨げの一因となっている。また、パージ用のエアーが加熱板の表面側に回り込んで、パーティクル汚染を起こす虞もある。
【0003】
ここで特許文献1には、加熱板に温調部を接触させることで加熱する加熱板について、加熱板温度を僅かに降温させる場合に、温調部を昇降機構により移動させて加熱板から離すことが記載されている。しかし、この手法では加熱板を短時間で降温させることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−194237号公報(段落0055、図14)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような背景の下になされたものであり、その目的は加熱板の温度を速やかに降温させることができる熱処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の熱処理装置は、
基板を加熱板に載置して熱処理を行うための熱処理装置において、
前記加熱板に接触あるいは近接することにより当該加熱板を冷却するための冷却部材と、
この冷却部材を冷却するための冷却部と、
前記冷却部材を、待機位置と前記加熱板を冷却するための冷却位置との間で相対的に昇降させるための昇降機構と、
熱処理された前記基板が前記加熱板から搬出された後、当該加熱板を降温させるために前記冷却部材を前記冷却位置に設定するように前記昇降機構を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の熱処理方法は、
基板を加熱板に載置して熱処理を行う熱処理方法において、
冷却部により冷却部材を冷却する工程と、
次いで、熱処理された前記基板が前記加熱板から搬出された後、前記冷却部材を昇降機構により加熱板に接触あるいは近接する位置まで移動させることにより当該加熱板を冷却する工程と、
前記加熱板の温度が降温した後、前記冷却部材を前記昇降機構により冷却位置から移動させる工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
そして、本発明における記憶媒体は、
基板を加熱板に載置して熱処理を行うための熱処理装置に用いられるコンピュータプログラムを記憶した記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは、上述の熱処理方法を実行するようにステップ群が組まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、基板を熱処理する加熱板を冷却する場合に、冷却部材を冷却部により冷却した上で、昇降機構により移動させて、加熱板に接触あるいは近接させるようにしている。従って、加熱板を速やかに冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る熱処理装置の全体を一部を切欠して示す斜視図である。
【図2】前記熱処理装置の全体を示す縦断側面図である。
【図3】前記熱処理装置に用いられる加熱ユニットを示す縦断側面図である。
【図4】前記熱処理装置に用いられる加熱ユニットを示す縦断側面図である。
【図5】前記熱処理装置に用いられる加熱板の裏面図である。
【図6】前記熱処理装置に用いられる第1の冷却プレートを示す平面図である。
【図7】加熱板の冷却工程を示すフロー図である。
【図8】加熱板の冷却工程を示す作用説明図である。
【図9】加熱板の冷却工程を示す作用説明図である。
【図10】加熱板の冷却工程を示す作用説明図である。
【図11】加熱板の冷却工程を示す作用説明図である。
【図12】加熱板の冷却工程における経過時間と加熱板の温度との関係を説明するグラフである。
【図13】本発明における第2の実施形態に係る加熱ユニットを示す縦断側面図である。
【図14】第2の実施形態に係る加熱板の冷却工程を示す作用説明図である。
【図15】第2の実施形態に係る加熱板の冷却工程を示す作用説明図である。
【図16】第2の実施形態に係る加熱板の冷却工程を示す作用説明図である。
【図17】本発明における第3の実施形態に係る加熱ユニットを示す縦断側面図である。
【図18】第3の実施形態に係る加熱板の冷却工程を示す作用説明図である。
【図19】第3の実施形態に係る加熱板の冷却工程を示す作用説明図である。
【図20】本発明における第4の実施形態に係る加熱ユニット及び冷却アームを示す縦断側面図である。
【図21】第4の実施形態に係る加熱板の冷却工程を示す作用説明図である。
【図22】第4の実施形態に係る加熱板の冷却工程を示す作用説明図である。
【図23】本発明における第5の実施形態に係る加熱ユニット及び冷却アームを示す縦断側面図である。
【図24】第5の実施形態に係る加熱板の冷却工程を示す作用説明図である。
【図25】第5の実施形態に係る加熱板の冷却工程を示す作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の熱処理装置の第1の実施形態について説明する。図1及び図2に示す熱処理装置は、基板例えば半導体ウエハ(以下、ウエハという。)Wに対してレジストの塗布、現像を行うための塗布、現像装置に使用されるものである。
熱処理装置は、例えばアルミニウムよりなる筐体1によって囲まれており、この筐体1内は、区画板7によってウエハWに対して熱処理が行われる上方領域3aと、ウエハWを昇降させる駆動機構が収納された下方領域3bと、に区画されている。
【0012】
図1中の左側(Y軸正方向)を便宜的に前方として説明すると、上方領域3aには、前方側から基板(ウエハ)冷却プレートである冷却アーム5、加熱ユニット6及び排気系部品の一部が収納された収納室4がこの順番で設置されている。この冷却アーム5は、加熱板との間でウエハの受け渡しを行う受け渡し機構に相当する。筐体1の側壁44の前方側には、本熱処理装置外に設けられた図示しないウエハ搬送機構と冷却アーム5との間で、ウエハWの受け渡しを行うための開口部45が形成されており、この開口部45は、図示しないシャッターなどにより開閉可能に構成されている。また、加熱ユニット6の側方位置における側壁44の両側には、この加熱ユニット6の周囲の雰囲気を冷却するために、冷媒が上下に通流する冷媒流路40が例えば4本並ぶように埋設されており、温度調整された冷却水がこの冷媒流路40内を通流するように構成されている。
【0013】
冷却アーム5は、区画板7に形成されたガイド46に沿って脚部51が筐体1の長手方向にスライドすることにより、既述のウエハ搬送機構との間でウエハWの受け渡しを行う位置と、加熱ユニット6との間でウエハWの受け渡しを行う位置と、の間において移動できるように構成されている。また冷却アーム5の下面側には、加熱されたウエハWを粗冷却するために、例えば冷媒を通流させるための図示しない冷媒流路が設けられている。
下方領域3bには、図2に示すように、既述の開口部45の側方位置と後述の加熱板84の上方位置とにおいて、冷却アーム5上のウエハWを昇降させるために、それぞれ昇降機構49a、49bに接続された支持ピン47a、47bが設けられている。冷却アーム5には、これら支持ピン47a、47bが貫通するスリット53が形成されている。区画板7には、支持ピン47aが突没するための孔部48が形成されている。尚、支持ピン47bは、区画板7に形成された後述の第1のガス排出口72を介して突没する。
【0014】
加熱ユニット6の下方領域3bの左右両側には、図2に示すように、筐体1の長手方向に伸びる排気管104、104が設けられている。これら排気管104、104は、排気路2に収納室4を介して接続されており、排気管104、104同士の互いに対向する面に形成された多数の図示しない吸引孔から、この下方領域3bの雰囲気を排出できるように構成されている。
【0015】
加熱ユニット6は、図1に示すように、ウエハWを加熱するための加熱板84と、下面側が開口しこの加熱板84の周囲を上方側から気密に覆うように形成された概略カップ型の蓋体62と、から構成されている。
この蓋体62は、加熱板84と冷却アーム5との間でウエハWの受け渡しを行う際の待機位置である上方位置と、ウエハWの熱処理時に加熱板84を蓋う下方位置と、の間で図示しない昇降機構により昇降できるように構成されている。
蓋体62の天井部には、給気管66を介してガス供給源65が接続されており、加熱板84上のウエハWに対して、例えば蓋体62の天井部中央の開口部67から、例えば空気や窒素ガスなどのパージガスを供給できるように構成されている。また、蓋体62の側壁の内側には、下方位置におけるウエハWの側面を臨む位置に、例えば全周に亘って多数の孔部68が形成されている。この孔部68は、排気路70を介して排気路2に接続されている。
【0016】
加熱板84の下方側には、図3及び図4に示すように、区画板7上に設けられた冷却用昇降機構83、冷却部である第1の冷却プレート81及び冷却部材である第2の冷却プレート82が下側からこの順番で積層されており、これらの部材をサポートリング80が側方及び下方から囲うような構成となっている。
【0017】
加熱板84は、ウエハWを載置するための例えば厚さが10mmの板状のプレートであり、例えばアルミニウム、ステンレス、銅合金等のように比較的安価で加工しやすい金属からなっている。また、この加熱板84の表面には、ウエハWの裏面側のパーティクル汚染を防止するためのプロキシミティピン(図示せず)が複数設けられ、ウエハWはこのピンの上に載置される。
この加熱板84の下面には、図5に示すように、ウエハWを加熱するためのリング状の加熱部である抵抗発熱線からなるヒータ841が同心円状にパターン印刷されている。また、この加熱板84内には、例えば中央部に加熱板84の上面の温度を検出するための例えば熱電対などの温度検出部842が設けられており、この温度検出部842の温度検出値により、後述の制御部10が接続されており、加熱板84の表面の温度を制御するように構成されている。
加熱板84は、その周縁部において例えば緩衝材などの図示しない受け部材を介して、断熱性の熱板支持部92により加熱板84の周方向に等間隔に例えば3ヶ所で下方から支持されている。そして、加熱板84は、ネジなどの図示しない固定部材によりこの熱板支持部92を介して第1の冷却プレート81の外周縁に固定されている。
また、加熱板84の下方には、例えばアルミニウムからなる第2の冷却プレート82がこの加熱板84に対向するように設けられている。
【0018】
また、加熱板84に第2の冷却プレート82を接触させて加熱板84を降温する際に、加熱板84の裏面に設けられたヒータ841に第2の冷却プレート82が接触しないように、この第2の冷却プレート82の上面には、ヒータ841に対応する位置に凹部822が形成されている。そして、第2の冷却プレート82の下面には、突起部821が例えば3ヶ所形成されており、この突起部821が冷却用昇降機構83に下から押し上げられることにより、第2の冷却プレート82が冷却位置に移動することができる。
第2の冷却プレート82は、加熱板84を冷却していないときには第1の冷却プレート81上にて待機している。このとき加熱板84の下面と第2の冷却プレート82の上面との間に形成される薄い円板状の空間領域は、冷却ガス通流領域Gをなし、冷却ガスによる加熱板84の冷却の際に冷却ガスが通流する。
【0019】
第1の冷却プレート81は、図3及び図4に示すように、内部に冷媒通流部88が設けられている。この冷媒通流部88は、前述の冷却アーム5に設けられた冷媒流路の出口と繋がっており、冷却アーム5を通ってきた冷媒が通流するようになっている。また、第1の冷却プレート81における第2の冷却プレート82の突起部821に対応する位置には、図3、図4及び図6に示すように、この突起部821をダイヤフラム832が押し上げるための空間である開口部813が設けられている。
この第1の冷却プレート81における中央部には、図3、図4及び図6に示すように、複数の冷却ガス吹き付け用の冷却ガス供給管90が、第1の冷却プレート81の中心を囲むように配置されると共に、第1の冷却プレート81を貫通して冷却ガス通流領域G内に突き出して設けられている。第2の冷却プレート82には、図3及び図4に示すように、多数の開口部91が設けられており、この開口部91のうち一部は、第2の冷却プレート82が第1の冷却プレート81上に載置されている待機位置にある状態において、冷却ガス供給管90と第2の冷却プレート82とが接触しないように配置されている。一方、第1の冷却プレート81においても、この冷却ガス供給管90に対応していない残りの開口部91に対応して開口部96が設けられている。この第1の冷却プレート81の開口部96と第2の冷却プレート82の開口部91とで冷却ガス排出孔97を形成しており、ここから冷却ガスが排出される。
【0020】
冷却用昇降機構83は、図3及び図4に示すように、支持部材831、ダイヤフラム832、エア供給機構833及び送気路834とからなる。支持部材831は、区画板7上に設けられダイヤフラム832を介して第1の冷却プレート81を例えば3ヶ所で支持しており、その上部には凹部835が、第2の冷却プレート82の突起部821及び第1の冷却プレート81の開口部813に対応する位置に形成されている。そして、凹部835には、ダイヤフラム832が下方に突出した状態の時には、このダイヤフラム832の下方に突出した部分が収納される。また、凹部835には、この凹部835とダイヤフラム832とにより気密に囲まれた空間836が形成されている。この気密空間836は、送気路834を介して、下部領域3bにあるエア供給機構833に接続されている。このエア供給機構833により、送気路834を介して気密空間836に圧縮空気を送り込むことで、ダイヤフラム832が上方に突出する。このとき、ダイヤフラム832により突起部821を介して第2の冷却プレート82が冷却位置に押し上げられる。逆に、エア供給機構833により、気密空間836内の空気を抜き負圧にすることで、ダイヤフラム832を下方に突出するように反転させ、第2の冷却プレート82を待機位置に下降させることができる。
【0021】
上述の第1の冷却プレート81、第2の冷却プレート82及び加熱板84を側方及び下方から囲うように、サポートリング80が設けられている。このサポートリング80は、中心部に第2のガス排出口85が形成された円板状であり、その周縁部には、上側に向かって伸び上がる起立壁86が周方向に亘って形成されている。このサポートリング80の外径は、ウエハWの外径よりも片側が例えば20mmずつ大きくなるように形成されている。このサポートリング80は、支持部材87によって区画板7に支持されている。また、区画板7には、図3及び図4に示すように、このサポートリング80の第2のガス排出口85の位置に対応するように、この第2のガス排出口85とほぼ同径の第1のガス排出口72が開口している。また、サポートリング80を貫通するように冷却用昇降機構83が設けられているが、サポートリング80は冷却用昇降機構83との間に僅かに隙間を設けて接触しないようになっている。
【0022】
なお、第1の冷却プレート81、第2の冷却プレート82及び加熱板84には、図3〜図6に示すように、既述の支持ピン47bが突没するための孔部102が形成されている。また、区画板7及びサポートリング80においては、この支持ピン47bは、夫々に形成されたガス排出口72、85を介して昇降する。
【0023】
熱処理装置2には、図2に示すように、例えばコンピュータからなる制御部10が接続されており、この制御部10には、昇降機構やバルブなどの作動機構を制御するステップ群やウエハWの熱処理あるいは加熱板84の冷却を行うためのプログラム、CPU、メモリなどが格納されている。プログラムにおける加熱板84の冷却を行うステップ群については、ウエハWの加熱プロセス温度ごとに、プロセス温度T2よりも少し高い温度(設定温度近傍)をしきい値T1として備え、一のプロセス温度T0からこれよりも低い他のプロセス温度T2に加熱板84を降温させるときに、次の動作を行うように構成されている。
a. 温度検出部842からの温度検出値が前記しきい値T1以上のときには冷却用昇降機構83に対して第2の冷却プレート82を上昇させておくための制御信号、具体的にはコンプレッサー833が圧縮空気を送気するための制御信号を出力する。
b. 温度検出値が前記しきい値T1を下回ったときには、ガス供給源93をオンにして冷却ガスを冷却ガス通流領域Gに供給させるための制御信号を出力し、かつコンプレッサー833が圧縮空気を排出してダイヤフラム832に負圧を作用させ、第2の冷却プレート82を下降させるための制御信号を出力する。
c. 温度検出値が前記他のプロセス温度T2に達したときにガス供給源93をオフにして冷却ガスの通気を止めるための制御信号を出力する。
このプログラムは、記憶媒体例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスクまたはメモリーカードなどの記憶部11に格納されて、制御部10にインストールされる。
【0024】
次に、上述の実施形態の作用について、図7〜図11を用いて説明する。先ず図示しないシャッタが開くと、例えばレジスト液が塗布されたウエハWが図示しないウエハ搬送機構によって、開口部45を介して筐体1内の冷却アーム5の上方に搬送され、支持ピン47aの昇降とウエハ搬送機構の退避作用とにより冷却アーム5上に載置される。そして、冷却アーム5が加熱板84の上方まで移動すると、加熱ユニット6の下方の支持ピン47bの昇降と当該冷却アーム5の退避作用とにより、ウエハWは加熱板84上に載置される。この時、加熱板84は設定温度(プロセス温度)T0である例えば120℃に加熱されている。
【0025】
次いで、蓋体62を下降させて、ウエハWの周囲を密閉して、ガス供給源65から所定の冷却ガスを供給すると共に、孔部68からウエハWの周囲の雰囲気を排気し、所定の時間この状態を保持してウエハWの熱処理を行う。このウエハWに対する熱処理終了後、蓋体62を上昇させて、ウエハWを搬入時と逆の動作で冷却アーム5に引き渡し、この冷却アーム5上において所定の時間冷却して、図示しないウエハ搬送機構により筐体1から搬出する。その後、所定の枚数の例えば同一ロットのウエハWについても同様に熱処理が行われる。また、この熱処理中に、第2の冷却プレート82は、第1の冷却プレート81上に載置されていることにより冷却され、加熱板84の冷却工程に備えている(図8)。そして、このロットにおける最後のウエハWに対する熱処理が終了し(図7中ステップS1)、このウエハWが冷却アーム5を介して、熱処理装置外へ搬出される(ステップS2)。
【0026】
続いて次ロットのウエハWに対して熱処理を行うが、次ロットのウエハWについてのプロセス温度が先のロットのウエハWについてのプロセス温度よりも低い場合には、加熱板84を次のようにして降温させる。
先ず、記憶部11に格納されているレシピから次ロットのウエハWに対する熱処理の設定温度T2を読み出し、この加熱板84の設定温度T2が次ロットのウエハWの加熱温度となるように、ヒータ841の出力制御を行う(ステップS3)。この場合、加熱板84を降温させるためヒータ841の出力はゼロとなるが、加熱板84はこのままではその熱容量により速やかには降温しない。そこで、エアー供給機構833から支持部材831の凹部835における気密空間836内に圧縮空気を送ってダイヤフラム832を上側に突出させ、これにより、既述のように、事前に冷却してある第2の冷却プレート82を上昇させて、加熱板84に接触させる(ステップS4及び図9)。こうすることで、加熱板84の温度(温度検出部842による温度検出値)は急速に低下(降温)する。加熱板84の温度が設定温度近傍であるしきい値T1に到達すると、冷却用昇降機構83の一部である支持部材831の凹部835における気密空間836内を負圧にしてダイヤフラム832を下方に突出するように反転させ、これにより、第2の冷却プレート82を下降させる。下降させた第2の冷却プレート82は、第1の冷却プレート81上に載置され、当該第1の冷却プレート81により、次の冷却工程に備えて冷却される(ステップS5及び図10)。なお、加熱板84を例えば120℃から100℃に降温する場合、103℃をしきい値T1とする。
【0027】
更にまた、ガス供給源93から冷却機構94を介して冷却された冷却ガスを冷却ガス通流領域Gへ供給する。これにより、冷却ガスが、加熱板84下面に吹き付けられて冷却ガス通流領域Gを通流し加熱板84から熱を奪って、冷却ガス排出孔91を通って第1の冷却プレート81の下方に排出される(ステップS6及び図11)。排出された冷却ガスは、第2のガス排出口85及び第1のガス排出口72を通って下方領域3bに流入し、排気管104を介して排気路2に排気される。こうして第2の冷却プレート82による加熱板84の冷却に替えて冷却ガスによる冷却が行われる。そして、加熱板84の温度が設定温度T2に到達した時点で、冷却ガスの吹き付けを停止し、冷却工程を終了する(ステップS7)。図12は、加熱板84の温度推移のプロファイルを示す図であり、この図から分かるように加熱板84の温度は第2の冷却プレート82により急激に降温し、次いで冷却ガスによる冷却に切り替わった後は、緩やかに降温してオーバーシュートが抑えられた状態で設定温度T2になる。以後、加熱板84はヒータ841により設定温度T2に維持されるように温度制御され、次ロットのウエハWを先のロットのウエハWと同様にして熱処理装置内に搬入し、熱処理が行われる(ステップS8及びステップS9)。
【0028】
上述の実施の形態によれば、加熱板84を一の設定温度T0からこれよりも低いほかの設定温度T2に整定するときに、予め冷却された熱抵抗の小さな材質例えば金属板からなる第2の冷却プレート82を上昇させ加熱板84に接触させているため、加熱板84を速やかに冷却させることができる。そのため、加熱板84が降温するまでの温度整定時間(待ち時間)が短く、スループットの向上に寄与する。また、上述の実施形態では、第2の冷却プレート82におけるヒータ841のパターンに対応する位置には凹部822を設けており、第2の冷却プレート82とヒータ841とが接触することはないため、ヒータ841が損傷することはない。
【0029】
また、加熱板84を急速に降温させることができる第2の冷却プレート82による冷却工程と緩やかに降温させる冷却ガスによる冷却工程とを分けることにより、冷却工程における加熱板84の温度のオーバーシュートを防止することができる。
そして、冷媒通流部88を備えた冷却部である第1のプレート81と冷却位置と待機位置の間を何度も移動する冷却部材である第2のプレート82とを別々に分けて設けることにより、冷媒通流部88が動くことがないため、冷媒通流部88に接続している配管の劣化や損傷が抑えられる。
【0030】
なお、本発明の実施形態における冷却用昇降機構83は、エアシリンダー機構、ボールネジ機構などであってもよい。
また、本熱処理装置の加熱ユニット6における換気機構は、冷却アーム5と加熱ユニット6との間に送気機構が設けられて、この送気機構から加熱ユニット6に向けてエアが供給され、加熱ユニット6に対して送気機構と反対側にあり排気路2に接続された排気機構によりこのエアは排気される構成であってもよい。
更にまた、本発明の実施形態における冷却ガス供給は、冷却プレート82による冷却と並行して行ってもよい。
【0031】
次に、本発明の第2の実施形態について、図13〜図16を用いて説明する。この実施形態においては、図13に示すように、支持ピン47bの支持板を冷却部材である第2の冷却プレート82として使用している。この第2の冷却プレート82は、例えばモータ491、昇降軸492を含む昇降機構49bにより、待機位置(図14)、ウエハWの受け渡し位置(図15)及び冷却位置(図16)に移動可能となっている。ここでいう待機位置とは、ウエハWの熱処理中に第2の冷却プレート82を冷却するために第1の冷却プレート81に接触する位置である。ウエハWの受け渡し位置とは、冷却アーム5の溝の中を支持ピン47bが通過してウエハWを突き上げているときの位置である。また冷却位置とは、第2の冷却プレート82である支持板471の上面が加熱板84の下面に接触し、加熱板84を冷却することができる位置である。その他の構造及び加熱板84の冷却工程のシーケンスに関しては、第1の実施形態と同様であるが、加熱板84と待機位置にある第2の冷却プレート82との間の離間寸法は、第1の実施形態の場合よりも大きく設定されている。
このような実施形態によれば、第1の実施形態の効果に加えて、支持ピン47bの昇降機構と第2の冷却プレート82の昇降機構とを兼用できるので、構成が簡素化できる利点がある。
【0032】
本発明の第3の実施形態について、図17〜図19を用いて説明する。この実施形態が第1の実施形態と異なるところは、図17に示すように、昇降自在な第2の冷却プレート82に冷却機構例えば冷媒通流部88を設け、第1の冷却プレート81側には冷媒通流部88を設けていない点が第1の実施形態と異なる。それ以外の構成については、第1の実施形態と同じである。冷媒通流部88は冷却アーム5の冷媒流路の出口と図示しない配管で接続されており、冷媒通流部88には冷却アーム5の冷媒流路を通ってきた冷媒が通流される。よって、第2の冷却プレート82は、ウエハWの熱処理中には、図18に示すように、待機位置にて当該第2の冷却プレート82を冷媒通流部88により冷却しながら待機し、また、図19に示すように、冷却用昇降機構83により、加熱板84に接触することで加熱板84を冷却する。第2の冷却プレート82による冷却の後に冷却ガスにより冷却を行うシーケンスに関しては、第1の実施形態と同様である。この実施形態においても、加熱板84の温度を速やかに降温させることができる。なお、第2の実施形態と第3の実施形態とを組み合わせた実施形態、即ち支持ピン47bの支持板に冷媒通流部88を設ける構成としてもよい。
【0033】
本発明の第4の実施形態について、図20〜図22を用いて説明する。この実施形態においては、図20に示すように、冷却アーム5の下面側に加熱板84と略同じ大きさの第3の冷却プレート89が設けられている。この第3の冷却プレート89は、冷却アーム5を支持する脚部51に取り付けた昇降機構891により昇降軸892を介して、冷却アーム5に接触する待機位置と加熱板84に接触する冷却位置との間で昇降するように構成されている。この例では、第3の冷却プレート89は、ウエハWの熱処理中には、待機位置である冷却アーム5の下面に接触して当該冷却アーム5により冷却されている。このとき、冷却アーム5は加熱ユニット6の外で待機している。そして、ウエハWに対する熱処理が終わりウエハWを熱処理装置の外に搬出した後、図21に示すように、冷却アーム5が加熱ユニット6内に進入し、図22に示すように、冷却用昇降機構83により、加熱板84の上面に第3の冷却プレート89を接触させることで加熱板84を冷却する。その他の構造や冷却工程のシーケンスに関しては、第1の実施形態と同様である。この実施形態においても、加熱板84の温度を速やかに降温できる効果に加えて、加熱板84を冷却する冷却機構として冷却アームの冷却機構(冷媒通流部)を利用しているので、加熱板84のための冷却機構を特別に用意しなくても済むという利点がある。
【0034】
第5の実施形態について、図23〜図25を用いて説明する。この実施形態においては、図23に示すように、冷却アーム5が当該冷却アーム5の脚部51に設けられた昇降機構511により昇降自在となっている。そして、加熱板84の冷却の際には、冷却アーム5が加熱ユニット6内に進入し(図24)、冷却アーム昇降機構511により冷却アーム5を降下させ冷却アーム5の下面と加熱板84の上面とを接触させることにより、加熱板84を冷却する(図25)。その他の構造や冷却工程のシーケンスに関しては、第1の実施形態と同様である。
【0035】
上述の実施形態では、加熱板84の冷却において、冷却部材である第2の冷却プレート82を加熱板84に接触させていたが、第2の冷却プレート82と加熱板84との間隔が例えば0.5mm以内になるように近接させることで冷却を行ってもよい。また、冷却部材(例えば第2の冷却プレート82)と冷却ガスとを併用して加熱板84を冷却する場合、第2の冷却プレート82を加熱板84に接触させた状態で冷却ガスを冷却ガス通流領域Gに通流させ、加熱板84の温度が既述のしきい値T1以下になったときに、冷却ガスのみで加熱板84を冷却するようにしてもよい。あるいは、第2の冷却プレート82と冷却ガスとにより、加熱板84を設定温度T2まで降温させてもよい。また、本発明では、冷却ガスを用いなくてもよい。
本発明は、冷却アーム5を備えていない熱処理装置であってもよく、この場合、外部の基板搬送機構により加熱板84との間で基板Wの受け渡しが行われる。
【符号の説明】
【0036】
W ウエハ
1 熱処理装置の筐体
2 排気路
3a 熱処理装置の上方領域
3b 熱処理装置の下方領域
45 筐体側面の開口部
47a、47b
支持ピン
49a、49b
支持ピン昇降機構
5 冷却アーム
51 冷却アームの脚部
6 加熱ユニット
62 蓋体
7 区画板
72 第1のガス排出口
80 サポートリング
81 第1の冷却プレート
82 第2の冷却プレート
83 冷却用昇降機構
84 加熱板
85 第2のガス排出口
841 ヒータ
842 温度検出部
88 冷媒通流部
90 冷却ガス供給管
91 第2の冷却プレートにおける開口部
96 第1の冷却プレートにおける開口部
97 冷却ガス排出孔
10 制御部
11 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を加熱板に載置して熱処理を行うための熱処理装置において、
前記加熱板に接触あるいは近接することにより当該加熱板を冷却するための冷却部材と、
この冷却部材を冷却するための冷却部と、
前記冷却部材を、待機位置と前記加熱板を冷却するための冷却位置との間で相対的に昇降させるための昇降機構と、
熱処理された前記基板が前記加熱板から搬出された後、当該加熱板を降温させるために前記冷却部材を前記冷却位置に設定するように前記昇降機構を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
前記加熱板の板面に冷却ガスを接触させるための冷却ガス供給部を備え、
前記制御部は、前記加熱板の温度が降温した後、前記冷却部材を冷却位置から離し、前記冷却ガスにより更に加熱板の温度を降温するように制御信号を出力することを特徴とする請求項1記載の熱処理装置。
【請求項3】
前記冷却部は、前記冷却部材とは別個に設けられ、前記待機位置に位置している前記冷却部材に接触または近接して当該冷却部材を冷却するように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の熱処理装置。
【請求項4】
前記冷却部材は、前記加熱板の下方側に設けられ、
この冷却部材には、加熱板の上方に基板を搬送する受け渡し機構との間で基板の受け渡しを行うために、加熱板を各々貫通し、当該加熱板の表面に対して突没する複数の支持部材が設けられ、
前記冷却部材は、前記支持部材が基板を支持するときには、加熱板から離れた位置に設定されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の熱処理装置。
【請求項5】
前記加熱板は、下面に抵抗発熱体のパターンが形成され、前記冷却部材における加熱板側の冷却面には、前記パターンとの接触を避けるために当該パターンに対応した形状の凹部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の熱処理装置。
【請求項6】
前記冷却部は、前記冷却部材に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の熱処理装置。
【請求項7】
前記加熱板の上方位置と当該上方位置から横方向に離れた位置との間で移動し、基板を冷却するための基板冷却プレートを備え、
この基板冷却プレートは前記冷却部を兼用し、
前記冷却部材は、前記基板冷却プレートに接触する位置と加熱板を冷却する位置との間で昇降するように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の熱処理装置。
【請求項8】
前記加熱板の上方位置と当該上方位置から横方向に離れた位置との間で移動し、基板を冷却するための基板冷却プレートを備え、
この基板冷却プレートが前記冷却部材を兼用し、横方向に移動する位置と加熱板を冷却する位置との間で昇降するように構成されている請求項1または2に記載の熱処理装置。
【請求項9】
前記冷却部は、外部との間で循環する冷媒が通る冷媒通流部を備えていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一つに記載の熱処理装置。
【請求項10】
基板を加熱板に載置して熱処理を行う熱処理方法において、
冷却部により冷却部材を冷却する工程と、
次いで、熱処理された前記基板が前記加熱板から搬出された後、前記冷却部材を昇降機構により加熱板に接触あるいは近接する位置まで移動させることにより当該加熱板を冷却する工程と、
前記加熱板の温度が降温した後、前記冷却部材を前記昇降機構により冷却位置から移動させる工程と、を含むことを特徴とする熱処理方法。
【請求項11】
前記加熱板の温度が降温した後、前記冷却部材を冷却位置から離し、前記冷却ガスを加熱板の板面に接触させて更に加熱板の温度を降温する工程を含むことを特徴とする請求項10記載の熱処理方法。
【請求項12】
前記冷却部は、前記冷却部材とは別個に設けられ、前記待機位置に位置している前記冷却部材に接触または近接して当該冷却部材を冷却するように構成されていることを特徴とする請求項11または12に記載の熱処理方法。
【請求項13】
基板を加熱板に載置して熱処理を行うための熱処理装置に用いられるコンピュータプログラムを記憶した記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは、請求項10ないし12のいずれか一つに記載された熱処理方法を実行するようにステップ群が組まれていることを特徴とする記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2012−79940(P2012−79940A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224170(P2010−224170)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】