説明

熱硬化性樹脂組成物、及びこれを用いたプリプレグ、積層板

【課題】導体層との接着性、耐熱性、難燃性、低熱膨張性、低誘電特性、低誘電正接性、ドリル加工性などのそれぞれが、使用する製品や環境に応じた基準をともに満足する熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】熱硬化性樹脂(A)と、溶融シリカ(B)とを含有する熱硬化性樹脂組成物であって、前記熱硬化性樹脂(A)は、末端に水酸基を有するシロキサン樹脂(a)と、1分子中に少なくとも2個以上のシアネート基を有する化合物(b)とが有機溶媒中で反応して得られたものであり、該シロキサン樹脂(a)と該化合物(b)との総和100質量部に対し、該シロキサン樹脂(a)10〜70質量部及び該化合物(b)30〜90質量部が含まれており、該化合物(b)の反応率が40〜70mol%であり、前記溶融シリカ(B)の表面は、トリメトキシシラン化合物により処理されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導体層との接着性、耐熱性、難燃性、低熱膨張性、低誘電特性、低誘電正接性、ドリル加工性に優れた熱硬化性樹脂組成物、該熱硬化性樹脂組成物を用いたプリプレグ、及び積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性樹脂組成物は、架橋構造を有し、高い耐熱性や寸法安定性を発現するため、電子機器等の分野において広く使われる。特に、配線や回路パターンがプリントされたプリント配線板、またプリント配線板を多層化した銅張積層板を構成するプリプレグや、層間絶縁材料として用いられている。
【0003】
近年、電子機器の小型化、軽量化、動作周波数の高速化が一段と進み、プリント配線及び回路パターンの高集積化が進んでいる。高集積化の方法として、プリント配線板に形成されるプリント配線及び回路パターンの微細化、回路パターンが形成された回路基板の多層化、或いはこれらの併用が提案されている。
例えば、銅張積層板では、プリント配線及び回路パターンが微細化された場合であっても、プリント配線及び回路パターンを構成する導体層が剥がれないようなピール強度が求められる。
【0004】
また、近年の環境問題から、鉛フリーはんだやハロゲンフリー基板のニーズが高まっている。しかし、鉛フリーはんだプロセスに要求されるリフロー温度は、通常のはんだの温度条件よりも高い。また、ハロゲンフリー基板は、通常のハロゲン含有基板に比べて難燃性に劣る。このため、ハロゲンフリー基板であって、高い耐熱性及び難燃性を有する基板が必要とされる。
【0005】
一例として、熱硬化性樹脂であるシアネート化合物は、低誘電特性、難燃性に優れる樹脂であるが、エポキシ硬化系の熱硬化性樹脂にそのまま使用した場合、耐熱性や強靭性が不足する問題があった。また、動作周波数の高速化に応え得るだけの低熱膨張性が得られない可能性がある。
特許文献1、2および3には、シアネート化合物と無機充填剤からなり、低熱膨張性を発現させる樹脂組成物が開示されているが、これらは低熱膨張性を発現させるため無機充填剤の配合量が多く、銅張積層板や層間絶縁材料として使用した場合、ドリル加工性や成形性が不足する。
【0006】
また、特許文献4、特許文献5にシアネート樹脂とアラルキル変性エポキシ樹脂を必須成分として含有する熱硬化性樹脂に関する事例が開示されているが、必須成分であるシアネート樹脂が靭性や硬化反応性に劣る樹脂であるため、この熱硬化性樹脂の硬化反応性や強靭性の改良が依然不十分であり、これらを銅張積層板や層間絶縁材料として使用した場合も、耐熱性や信頼性、加工性等が不足する傾向にある。
このように、多層プリント配線板などの回路基板に用いられる熱硬化性樹脂組成物には、導体層との接着性、耐熱性、難燃性、ドリル加工性などのそれぞれが使用する製品や環境に応じた基準を満たしていることが求められるが、これらの特性をともに満足する熱硬化性樹脂組成物を得ることには、困難性が高かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−268136号公報
【特許文献2】特開2003−73543号公報
【特許文献3】特開2002−285015号公報
【特許文献4】特開2002−309085号公報
【特許文献5】特開2002−348469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、回路基板を形成したとき、導体層との接着性、耐熱性、難燃性、低熱膨張性、低誘電特性、低誘電正接性、ドリル加工性などのそれぞれが、使用する製品や環境に応じた基準をともに満足する熱硬化性樹脂組成物、該熱硬化性樹脂組成物を使用したプリプレグ、及び該プリプレグを使用した積層板を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記の課題を解決すべく検討を進めた結果、熱硬化性樹脂と、溶融シリカとを含有する熱硬化性樹脂組成物であって、末端に水酸基を有するシロキサン樹脂と、1分子中に少なくとも2個以上のシアネート基を有する特定の化合物とを配合してなる熱硬化性樹脂組成物は、回路基板を形成したとき、導体層の接着性、耐熱性、難燃性、ドリル加工性をともに満足できることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0010】
本発明は、以下の内容を含む。
<1>熱硬化性樹脂(A)と、溶融シリカ(B)とを含有する熱硬化性樹脂組成物であって、
前記熱硬化性樹脂(A)は、
下記一般式(I)で示される末端に水酸基を有するシロキサン樹脂(a)と、
1分子中に少なくとも2個以上のシアネート基を有する化合物(b)とが有機溶媒中で反応して得られたものであり、
該シロキサン樹脂(a)と該化合物(b)との総和100質量部に対し、該シロキサン樹脂(a)10〜70質量部及び該化合物(b)30〜90質量部が含まれており、
該化合物(b)の反応率が40〜70mol%であり、
前記溶融シリカ(B)の表面が下記式(II)で示されるトリメトキシシラン化合物によって処理された熱硬化性樹脂組成物。
【0011】
【化1】

(式中、R1は各々独立に炭素数1〜5のアルキレン基又はアルキレンオキシ基,Ar1は各々独立に単結合、アリーレン基又は炭素数1〜5のアルキレン基であり、mは5〜100の整数である。)
【0012】
【化2】

<2>上記<1>の熱硬化性樹脂組成物が基材に含浸又は塗布されたプリプレグ。
<3>上記<2>のプリプレグが所定の枚数積層されて形成された積層板。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、回路基板を形成したとき、導体層との接着性、耐熱性、難燃性、低熱膨張性、低誘電特性、低誘電正接性、ドリル加工性などのそれぞれが使用する製品や環境に応じた基準をともに満足する熱硬化性樹脂組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
[熱硬化性樹脂組成物]
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂(A)と、溶融シリカ(B)とを含有する熱硬化性樹脂組成物であって、前記熱硬化性樹脂(A)は、下記一般式(I)で示される末端に水酸基を有するシロキサン樹脂(a)と、1分子中に少なくとも2個以上のシアネート基を有する化合物(b)とが有機溶媒中で反応して得られたものである。該シロキサン樹脂(a)と該化合物(b)との総和100質量部に対し、該シロキサン樹脂(a)10〜70質量部及び該化合物(b)30〜90質量部が含まれており、該化合物(b)の反応率が40〜70mol%であり、前記溶融シリカ(B)が、下記式(II)で示されるトリメトキシシラン化合物を表面に有する。
【0015】
【化3】

(式中、R1は各々独立に炭素数1〜5のアルキレン基又はアルキレンオキシ基,Ar1は各々独立に単結合、アリーレン基又は炭素数1〜5のアルキレン基であり、mは5〜100の整数である。)
【0016】
【化4】

【0017】
[硬化性樹脂(A)]
熱硬化性樹脂(A)は、シロキサン樹脂(a)と、化合物(b)とを有機溶媒中でイミノカーボネ−ト化反応、及びトリアジン環化反応させることにより得られる。有機溶媒は、特に限定しないが、トルエン、メシチレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどが挙げられる。
【0018】
<シロキサン樹脂(a)>
熱硬化性樹脂(A)に配合されるシロキサン樹脂(a)は、上記一般式(I)で示される構造の水酸基を含有するシロキサン樹脂であれば特に限定されないが、シロキサン樹脂(a)の両末端がフェノール性水酸基、又はアルコール性水酸基であると好ましい。
両末端にフェノール性水酸基を有するシロキサン樹脂(a)の市販品としては、例えば、信越化学工業株式会社製、商品名X−22−1821(水酸基価:35KOHmg/g)、商品名X−22−1822(水酸基価:20KOHmg/g)が挙げられる。
また、両末端にアルコール性水酸基を有するシロキサン樹脂(a)の市販品としては、例えば、信越化学工業株式会社製、商品名X−22−160AS(水酸基価:112KOHmg/g)、商品名X−22−4015(水酸基価:27KOHmg/g)等が挙げられる。また、例えば、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製、商品名KF−6001(水酸基価:62KOHmg/g)、商品名KF−6002(水酸基価:35KOHmg/g)、商品名KF−6003(水酸基価:20KOHmg/g)等が挙げられる。
【0019】
<化合物(b)>
熱硬化性樹脂(A)に配合される化合物(b)としては、例えば、ノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、ビスフェノールF型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を混合して使用することができる。これらの中で、誘電特性、耐熱性、難燃性、低熱膨張性、及び安価である点から、ビスフェノールA型シアネート樹脂、又は下記一般式(III)に示すノボラック型シアネート樹脂が好ましい。
【0020】
【化5】

(nは、0又は1以上の整数である。)
【0021】
一般式(III)で示されるノボラック型シアネート樹脂の平均繰り返し数:nは、特に限定されないが、1〜30が好ましい。1より少ないと結晶化しやすくなり取り扱いが困難となる場合がある。また、30より多いと硬化物が脆くなる場合がある。
化合物(b)として使用可能なビスフェノールA型シアネート樹脂の市販品としては、ロンザジャパン株式会社製、商品名Arocy B−10が挙げられる。また、ノボラック型シアネート樹脂の市販品としては、ロンザジャパン株式会社製、商品名プリマセットPT−30(重量平均分子量500〜1,000)、商品名プリマセットPT−60(重量平均分子量2,000〜3,000)等が挙げられる。
【0022】
<シロキサン樹脂(a)と化合物(b)との配合量>
シロキサン樹脂(a)と化合物(b)との配合量は、次のとおりとすることが好ましい。
シロキサン樹脂(a)と化合物(b)との総和100質量部に対して、シロキサン樹脂(a)の配合量を10〜70質量部の範囲とする。また、化合物(b)の配合量を30〜90質量部の範囲とする。
シロキサン樹脂(a)の配合量が10質量部未満であると、得られる基材の面方向の低熱膨張性が低下する場合がある。また、シロキサン樹脂(a)の配合量が70質量部を超えると、耐熱性及び耐薬品性が低下する場合がある。また、化合物(b)の配合量が30質量部未満であると、耐熱性が低下する場合があり、化合物(b)の配合量が90質量部を超えると、得られる基材の面方向の低熱膨張性が低下する場合がある。
【0023】
本発明では、シロキサン樹脂(a)と化合物(b)とを、化合物(b)の反応率(消失率)が40〜70mol%となるように、有機溶媒中で予めプレ反応させることが好ましい。プレ反応としては、イミノカーボネ−ト化反応、及びトリアジン環化反応が挙げられる。
イミノカーボネ−ト化反応は、水酸基とシアネート基の付加反応によりイミノカーボネ−ト結合(−O−(C=NH)−O−)が生成される反応であり、トリアジン環化反応は、シアネート基が3量化しトリアジン環を形成する反応である。
【0024】
化合物(b)の反応率が40mol%未満であると、得られる熱硬化性樹脂(A)と汎用の有機溶媒との相溶性が低下し、耐熱性が低下したり、銅箔接着性が低下したりする場合がある。また、化合物(b)の反応率が40mol%未満であると、得られる熱硬化性樹脂(A)が結晶化し、Aステージのワニス(熱硬化性樹脂組成物)が製造できなくなったり、Bステージの塗工時にタックが生じたりする場合がある。また、得られる熱硬化性樹脂(A)の硬化が不十分になり、耐熱性が低下する場合がある。
また、化合物(b)の反応率が70mol%を超えると、得られる熱硬化性樹脂(A)が汎用の有機溶剤に不溶化し、Aステージのワニスが製造できなくなったり、ワニスの成形性が低下する場合がある。
なお、化合物(b)の反応率は、GPC測定の測定結果から求められる。具体的に、シロキサン樹脂(a)と化合物(b)とが配合された反応前の溶液と、この溶液を反応させた後の溶液とで、所定の保持時間付近に出現するシアネート樹脂のピークの面積を比較する。反応前の溶液のピーク面積に対する反応後の溶液のピーク面積の消失率が反応率に相当する。
【0025】
[溶融シリカ(B)]
溶融シリカ(B)は、前記式(II)で示されるトリメトキシシラン化合物により表面処理(湿式処理)されたものである。
本発明の溶融シリカ(B)は、溶融シリカを、上記式(II)で示されるトリメトキシシラン化合物を使用して表面処理(湿式処理)することにより得られる。
溶融シリカ(B)の製造法の例としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶媒、又はエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系有機溶媒に、溶融シリカを添加して混合した後、上記式(II)で示されるトリメトキシシラン化合物を添加して60℃〜120℃で、0.5〜5時間程度攪拌することにより得られる。
溶融シリカ(B)の市販品としては、株式会社アドマテックス製の商品名SC−2050KNK、SC−2050HNK等が挙げられる。
【0026】
本発明の熱硬化性樹脂組成物において、溶融シリカ(B)の配合量は、固形分換算で、熱硬化性樹脂(A)100質量部に対し、10〜300質量部とすることが好ましく、100〜250質量部とすることがより好ましく、150〜250質量部とすることが特に好ましい。10〜300質量部であれば、十分な、基材の剛性、耐湿耐熱性、難燃性、めっき溶液による浸食に対する耐性などが得られる。
【0027】
[無機充填剤]
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、溶融シリカ以外の他の無機充填剤(成分(C))を配合してもよく、例えば、破砕シリカ、マイカ、タルク、ガラス短繊維又は微粉末及び中空ガラス、炭酸カルシウム、石英粉末、金属水和物等が挙げられる。これらの中で、低熱膨張性や高弾性、耐熱性、難燃性の点から、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水和物を使用することが好ましい。
さらに金属水和物の中でも、高い耐熱性と難燃性が両立する点から熱分解温度が300℃以上である金属水和物、例えば、ベーマイト型水酸化アルミニウム(AlOOH)、あるいはギブサイト型水酸化アルミニウム(Al(OH)3)を熱処理によりその熱分解温度を300℃以上に調整した化合物、水酸化マグネシウム等がより好ましく、特に、安価であり、350℃以上の特に高い熱分解温度と、高い耐薬品性を有するベーマイト型水酸化アルミニウム(AlOOH)が特に好ましい。
これらの無機充填剤(成分(C))の配合量は、固形分換算で、熱硬化性樹脂(A)100質量部に対し、10〜200質量部とすることが好ましく、10〜150質量部とすることがより好ましく、50〜150質量部とすることが特に好ましい。10〜200質量部の範囲であれば、十分な難燃性、めっき溶液による浸食に対する耐性、成形性が得られる。
【0028】
[その他の成分]
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、耐熱性や難燃性、銅箔接着性等の向上化のため、硬化促進剤を用いることが望ましい。また、任意に公知の熱可塑性樹脂、エラストマー、難燃剤、有機充填剤等の併用ができる。
【0029】
<硬化促進剤>
本発明の熱硬化性樹脂組成物に配合可能な硬化促進剤の例としては、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸錫、オクチル酸コバルト等の有機金属塩、イミダゾール類及びその誘導体、第三級アミン類及び第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0030】
<難燃剤>
本発明の熱硬化性樹脂組成物に配合可能な難燃剤の例としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、リン酸エステル系化合物、ホスファゼン、赤リン等のリン系難燃剤、三酸化アンチモン、モリブデン酸亜鉛等の無機難燃助剤等が挙げられる。
【0031】
<熱可塑性樹脂>
本発明の熱硬化性樹脂組成物に配合可能な熱可塑性樹脂の例としては、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、キシレン樹脂、石油樹脂及びシリコーン樹脂等が挙げられる。
【0032】
<エラストマー>
本発明の熱硬化性樹脂組成物に配合可能なエラストマーの例としては、ポリブタジエン、アクリロニトリル、エポキシ変性ポリブタジエン、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、フェノール変性ポリブタジエン及びカルボキシ変性アクリロニトリル等が挙げられる。
【0033】
<有機充填剤>
本発明の熱硬化性樹脂組成物に配合可能な有機充填剤の例としては、シリコーンパウダー、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、並びにポリフェニレンエーテル等の有機物粉末等が挙げられる。
【0034】
<紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤、密着性向上剤>
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤及び密着性向上剤等の配合剤が適宜配合されていてもよい。本発明の熱硬化性樹脂組成物に配合可能な配合剤の例としては、ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤、ヒンダードフェノール系やスチレン化フェノール等の酸化防止剤、ベンゾフェノン類、ベンジルケタール類、チオキサントン系等の光重合開始剤、スチルベン誘導体等の蛍光増白剤、尿素シラン等の尿素化合物やシランカップリング剤等の密着性向上剤等が挙げられる。
【0035】
[プリプレグ]
以下、本発明のプリプレグについて詳述する。
本発明のプリプレグは、上述の熱硬化性樹脂組成物が基材に含浸又は塗布されてなる。
本発明のプリプレグは、本発明の熱硬化性樹脂組成物を、基材に含浸又は塗工し、加熱等により半硬化(Bステージ化)して本発明のプリプレグを製造することができる。基材としては、各種の電気絶縁材料用積層板に用いられている周知のものが使用でき、一例としては、Eガラス、Dガラス、Sガラス及びQガラス等の無機物繊維、ポリイミド、ポリエステル及びテトラフルオロエチレン等の有機繊維、並びにそれらの混合物等が挙げられる。
【0036】
これらの基材は、例えば、織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマット及びサーフェシングマット等の形状を有するが、材質及び形状は、目的とする成形物の用途や性能により選択され、必要により、単独又は2種類以上の材質及び形状を組み合わせることができる。基材の厚さは、特に制限されず、例えば、約0.03〜0.5mmを使用することができ、シランカップリング剤等で表面処理したもの又は機械的に開繊処理を施したものが、耐熱性や耐湿性、加工性の面から好適である。該基材に対する樹脂組成物の付着量が、乾燥後のプリプレグの樹脂含有率で、20〜90質量%となるように、基材に含浸又は塗工した後、通常、100〜200℃の温度で1〜30分加熱乾燥し、半硬化(Bステージ化)させる。
以上の工程により、本発明のプリプレグを得ることができる。
【0037】
[積層板]
本発明の積層板は、前述の本発明のプリプレグを用いて、所定の枚数を積層成形して、製造することができる。本発明のプリプレグを、例えば、1〜20枚重ね、その片面又は両面に銅及びアルミニウム等の金属箔を配置した構成で積層成形することにより製造することができる。金属箔は、電気絶縁材料用途で用いるものであれば特に制限されない。また、成形条件は、例えば、電気絶縁材料用積層板及び多層板の手法が適用でき、例えば多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機等を使用し、温度100〜250℃、圧力0.2〜10MPa、加熱時間0.1〜5時間の範囲で成形することができる。また、本発明のプリプレグと内層用配線板とを組合せ、積層成形して、多層板を製造することもできる。
【実施例】
【0038】
次に、下記の実施例により本発明を更に詳しく説明するが、これらの実施例は本発明を制限するものではない。熱硬化性樹脂(A)と溶融シリカ(B)とを製造し、これらを用いて、プリプレグ、積層板、さらに積層板に銅箔を配置した銅張積層板を作製した。また、作製された銅張積層板を評価した。評価方法を以下に示す。
【0039】
[評価方法]
<銅箔接着性(銅箔ピール強度)の評価>
銅箔の接着性は、ピール強度によって評価した。銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより1cm幅の銅箔を形成して評価基板を作製し、引張り試験機を用いて銅箔のピール強度を測定した。銅箔のピール強度は、1.0kN/m以上であることが望ましく、1.2kN/m以上であることがより望ましい。
【0040】
<ガラス転移温度(Tg)の測定>
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた5mm角の評価基板を作製し、TMA試験装置「TMA2940」(デュポン株式会社製)を用い、評価基板の面方向の熱膨張特性を観察することにより評価した。リフローはんだの温度条件(〜250℃程度)に対する耐性を考慮すると、銅張積層板のガラス転移温度は、250℃以上であることが好ましい。
【0041】
<線熱膨張係数の測定>
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた5mm角の評価基板を作製し、TMA試験装置「TMA2940」(デュポン株式会社製)を用い、評価基板の面方向の30℃〜100℃の線熱膨張率を測定した。
銅張積層板は、さらなる薄型化が望まれており、これに併せて銅張積層板を構成するプリプレグの薄型化も検討されている。薄型化されたプリプレグは、反りやすくなるため、熱処理時におけるプリプレグの反りが小さいことが望まれる。すなわち、熱膨張係数の値が7ppm/℃以下であることが望ましく、5ppm/℃以下であることがより望ましい。
【0042】
<はんだ耐熱性の評価>
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた5cm角の評価基板を作製し、プレッシャー・クッカー試験装置(平山製作所株式会社製)を用いて、121℃、2atmの条件で4時間までプレッシャー・クッカー処理を行った後、温度288℃のはんだ浴に、評価基板を20秒間浸漬した後、外観を観察することにより、リフローはんだの温度条件に対する耐熱性(はんだ耐熱性という)を評価した。
【0043】
<銅付き耐熱性(T−300)の評価>
銅張積層板から5mm角の評価基板を作製し、TMA試験装置「TMA2940」(デュポン株式会社製)を用い、300℃で評価基板の膨れが発生するまでの時間を測定することにより評価した。銅付き耐熱性(T−300)試験では、基板のふくれ等が30分以上生じないことが望ましい。
【0044】
<難燃性の評価>
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた評価基板から、長さ127mm、幅12.7mmに切り出した試験片を作製し、UL94の試験法(V法)に準じて評価した。
【0045】
<比誘電率及び誘電正接の測定>
得られた銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた評価基板を作製し、比誘電率測定装置「HP4291B」(Hewllet Packerd株式会社製)を用いて、周波数1GHzでの比誘電率及び誘電正接を測定した。基材の比誘電率は、4.7以下であること、また誘電正接は、0.010以下であることが望ましい。
【0046】
<ドリル加工性>
ドリル穴の内壁粗さの評価は、ドリル穴へのめっき銅の染み込み性により評価することができる。
直径0.105mmのドリル(ユニオンツールMV J676)を用い、回転数:160,000rpm、送り速度:0.8m/分、重ね枚数:1枚でドリル加工を行い、6000ヒットさせて評価基板を作製し、ドリル穴を形成した。続いて、無電解銅めっきを行い(めっき厚:15μm)、ドリル穴の内壁から基板内部へめっきが染み込んだ長さの最大値を測定することにより評価した。めっき染み込み長さの最大が20μm以下であることが望ましく、15μm以下であることがより望ましい。
【0047】
[熱硬化性樹脂Aの製造]
<熱硬化性樹脂(A−1)の製造>
温度計、攪拌装置、還流冷却管の付いた加熱及び冷却可能な容積3リットルの反応容器に、シロキサン樹脂(a)として下記式(IV)に示すシロキサン樹脂(信越化学工業株式会社製;商品名X−22−1821、水酸基当量;1600g/eq.):500gとトルエン:1000gと、化合物(b)としてビスフェノールA型シアネート樹脂(ロンザジャパン株式会社製;商品名Arocy B−10):500とを配合し、攪拌しながら昇温し、120℃に到達後、ナフテン酸亜鉛の8質量%ミネラルスピリット溶液を0.01g添加し、約115〜125℃で4時間還流反応を行った後、室温(25℃)に冷却し、熱硬化性樹脂(A−1)の溶液を得た。
【0048】
【化6】

(式中のpは、35〜40の整数である。)
【0049】
シロキサン樹脂(a)と化合物(b)とが配合された反応前の溶液と、反応後の溶液とを少量ずつ取り出し、それぞれについてGPC測定(ポリスチレン換算、溶離液:テトラヒドロフラン)を行った。反応前の溶液と反応後の溶液とで、保持時間が約12.4分付近に出現するビスフェノールA型シアネート樹脂のピークの面積を比較し、反応前の溶液のピーク面積に対する反応後の溶液のピーク面積の消失率を算出した。その結果、反応後の溶液におけるピーク面積の消失率が65%であった。よって、熱硬化性樹脂(A−1)における化合物(b)の反応率は、65mol%であった。また、約10.9分付近、及び8.0〜10.0付近に出現する熱硬化性樹脂の生成物のピークが確認された。さらに、少量取り出した反応溶液を、メタノールとベンゼンの混合溶媒(混合質量比1:1)に滴下して再沈殿させることにより、精製された固形分を取り出し、FT−IR測定を行ったところ、イミノカーボネート基に起因する1700cm-1付近のピーク、また、トリアジン環に起因する1560cm-1付近、及び1380cm-1付近の強いピークが確認でき、熱硬化性樹脂(A−1)が製造されていることを確認した。
【0050】
<熱硬化性樹脂(A−2)の製造>
温度計、攪拌装置、還流冷却管の付いた加熱及び冷却可能な容積3リットルの反応容器に、化合物(b)としてノボラック型シアネート樹脂(ロンザジャパン株式会社製;商品名プリマセットPT−30,重量平均分子量500〜1,000):800gと、シロキサン樹脂(a)として下記式(V)に示すシロキサン樹脂(信越化学工業株式会社製;商品名KF−6003、水酸基当量;2800g/eq.):200gとトルエン:1000gを配合し、攪拌しながら昇温し、120℃に到達後ナフテン酸亜鉛の8質量%ミネラルスピリット溶液を0.01g添加し、約115〜125℃で4時間還流反応を行った後、室温(25℃)に冷却し、熱硬化性樹脂(A−2)の溶液を得た。
【0051】
【化7】

(式中のqは70〜75の整数である。)
【0052】
シロキサン樹脂(a)と化合物(b)とが配合された反応前の溶液と、反応後の溶液とを少量ずつ取り出し、それぞれについてGPC測定(ポリスチレン換算、溶離液:テトラヒドロフラン)を行った。反応前の溶液と反応後の溶液とで、保持時間が約12.1分付近に出現するビスフェノールA型シアネート樹脂のピークの面積を比較し、反応前の溶液のピーク面積に対する反応後の溶液のピーク面積の消失率を算出した。その結果、反応後の溶液におけるピーク面積の消失率が43%であった。よって、熱硬化性樹脂(A−2)における化合物(b)の反応率は、43mol%であった。また、約10.9分付近、及び8.0〜10.0付近に出現する熱硬化性樹脂の生成物のピークが確認された。さらに、少量取り出した反応溶液を、メタノールとベンゼンの混合溶媒(混合質量比1:1)に滴下して再沈殿させることにより、精製された固形分を取り出し、FT−IR測定を行ったところ、イミノカーボネート基に起因する1700cm-1付近のピーク、また、トリアジン環に起因する1560cm-1付近、及び1380cm-1付近の強いピークが確認でき、熱硬化性樹脂(A−2)が製造されていることを確認した。
【0053】
<熱硬化性樹脂(A−3)の製造>
温度計、攪拌装置、還流冷却管の付いた加熱及び冷却可能な容積3リットルの反応容器に、化合物(b)としてノボラック型シアネート樹脂(ロンザジャパン株式会社製;商品名プリマセットPT−60,重量平均分子量2,000〜3,000):300gと、シロキサン樹脂(a)として下記式(VI)に示すシロキサン樹脂(信越化学工業株式会社製;商品名X−22−160AS、水酸基当量;500g/eq.):700gとメシチレン:1000gを配合し、攪拌しながら昇温し、120℃に到達後ナフテン酸亜鉛の8質量%ミネラルスピリット溶液を0.30g添加し、約115〜125℃で4時間還流反応を行った後、室温(25℃)に冷却し、熱硬化性樹脂(A−3)の溶液を得た。
【0054】
【化8】

(式中のrは、10〜15の整数である。)
【0055】
シロキサン樹脂(a)と化合物(b)とが配合された反応前の溶液と、反応後の溶液とを少量ずつ取り出し、それぞれについてGPC測定(ポリスチレン換算、溶離液:テトラヒドロフラン)を行った。反応前の溶液と反応後の溶液とで、保持時間が約12.0分付近に出現するビスフェノールA型シアネート樹脂のピークの面積を比較し、反応前の溶液のピーク面積に対する反応後の溶液のピーク面積の消失率を算出した。その結果、反応後の溶液におけるピーク面積の消失率が43%であった。よって、熱硬化性樹脂(A−3)における化合物(b)の反応率は、43mol%であった。また、約10.9分付近、及び8.0〜10.0付近に出現する熱硬化性樹脂の生成物のピークが確認された。さらに、少量取り出した反応溶液を、メタノールとベンゼンの混合溶媒(混合質量比1:1)に滴下して再沈殿させることにより、精製された固形分を取り出し、FT−IR測定を行ったところ、イミノカーボネート基に起因する1700cm-1付近のピーク、また、トリアジン環に起因する1560cm-1付近、及び1380cm-1付近の強いピークが確認でき、熱硬化性樹脂(A−3)が製造されていることを確認した。
【0056】
<比較例用の熱硬化性樹脂(A−4)の製造>
温度計、攪拌装置、還流冷却管の付いた加熱及び冷却可能な容積3リットルの反応容器に、ビスフェノールA型シアネート樹脂(ロンザジャパン株式会社製;商品名Arocy B−10):500gと、上記式(IV)に示すシロキサン樹脂(信越化学工業株式会社製;商品名X−22−1821、水酸基当量;1600g/eq.):500gとトルエン:1000gを配合し、攪拌しながら昇温し、120℃に到達後ナフテン酸亜鉛の8質量%ミネラルスピリット溶液を0.01g添加し、約100℃で2時間還流反応を行った後、室温(25℃)に冷却し、熱硬化性樹脂(A−4)の溶液を得た。
【0057】
熱硬化性樹脂(A−4)の溶液は、結晶化により沈殿物が生じた。
シロキサン樹脂(a)と化合物(b)とが配合された反応前の溶液と、反応後の溶液とを少量ずつ取り出し、それぞれについてGPC測定(ポリスチレン換算、溶離液:テトラヒドロフラン)を行った。反応前の溶液と反応後の溶液とで、保持時間が約12.4分付近に出現するビスフェノールA型シアネート樹脂のピークの面積を比較し、反応前の溶液のピーク面積に対する反応後の溶液のピーク面積の消失率を算出した。その結果、反応後の溶液におけるピーク面積の消失率が35%であった。よって、熱硬化性樹脂(A−4)における化合物(b)の反応率は、35mol%であった。
【0058】
<比較例用の熱硬化性樹脂(A−5)の製造>
温度計、攪拌装置、還流冷却管の付いた加熱及び冷却可能な容積3リットルの反応容器に、ビスフェノールA型シアネート樹脂(ロンザジャパン株式会社製;商品名Arocy B−10):500gと、上記式(IV)に示すシロキサン樹脂(信越化学工業株式会社製;商品名X−22−1821、水酸基当量;1600g/eq.):500gとトルエン:1000gを配合し、攪拌しながら昇温し、120℃に到達後ナフテン酸亜鉛の8質量%ミネラルスピリット溶液を0.05g添加し、約120℃で8時間還流反応を行った後、室温(25℃)に冷却し、熱硬化性樹脂(A−5)の溶液を得た。
【0059】
熱硬化性樹脂(A−5)の溶液は、不溶成分により濁りが生じた。
シロキサン樹脂(a)と化合物(b)とが配合された反応前の溶液と、反応後の溶液とを少量ずつ取り出し、それぞれについてGPC測定(ポリスチレン換算、溶離液:テトラヒドロフラン)を行った。反応前の溶液と反応後の溶液とで、保持時間が約12.4分付近に出現するビスフェノールA型シアネート樹脂のピークの面積を比較し、反応前の溶液のピーク面積に対する反応後の溶液のピーク面積の消失率を算出した。その結果、反応後の溶液におけるピーク面積の消失率が79%であった。よって、熱硬化性樹脂(A−5)における化合物(b)の反応率は、79mol%であった。
【0060】
<比較例用の熱硬化性樹脂(A−6)の製造>
温度計、攪拌装置、還流冷却管の付いた加熱及び冷却可能な容積3リットルの反応容器に、ビスフェノールA型シアネート樹脂(ロンザジャパン株式会社製;商品名Arocy B−10):200gと、上記式(IV)に示すシロキサン樹脂(信越化学工業株式会社製;商品名X−22−1821、水酸基当量;1600g/eq.):800gとトルエン:1000gを配合し、攪拌しながら昇温し、120℃に到達後ナフテン酸亜鉛の8質量%ミネラルスピリット溶液を0.05g添加し、約120℃で8時間還流反応を行った後、室温(25℃)に冷却し、熱硬化性樹脂(A−6)の溶液を得た。
【0061】
シロキサン樹脂(a)と化合物(b)とが配合された反応前の溶液と、反応後の溶液とを少量ずつ取り出し、それぞれについてGPC測定(ポリスチレン換算、溶離液:テトラヒドロフラン)を行った。反応前の溶液と反応後の溶液とで、保持時間が約12.4分付近に出現するビスフェノールA型シアネート樹脂のピークの面積を比較し、反応前の溶液のピーク面積に対する反応後の溶液のピーク面積の消失率を算出した。その結果、反応後の溶液におけるピーク面積の消失率が65%であった。よって、熱硬化性樹脂(A−6)における化合物(b)の反応率は、65mol%であった。
また、約10.9分付近、及び8.0〜10.0付近に出現する熱硬化性樹脂の生成物のピークが確認された。さらに、少量取り出した反応溶液を、メタノールとベンゼンの混合溶媒(混合質量比1:1)に滴下して再沈殿させることにより、精製された固形分を取り出し、FT−IR測定を行ったところ、イミノカーボネート基に起因する1700cm-1付近のピーク、また、トリアジン環に起因する1560cm-1付近、及び1380cm-1付近の強いピークを確認した。
【0062】
<比較例用の熱硬化性樹脂(A−7)の製造>
温度計、攪拌装置、還流冷却管の付いた加熱及び冷却可能な容積3リットルの反応容器に、ビスフェノールA型シアネート樹脂(ロンザジャパン株式会社製;商品名Arocy B−10):1000gと、トルエン:1000gを配合し、攪拌しながら昇温し、120℃に到達後ナフテン酸亜鉛の8質量%ミネラルスピリット溶液を0.01g添加し、約120℃で4時間還流反応を行った後、室温(25℃)に冷却し、熱硬化性樹脂(A−7)の溶液を得た。
【0063】
シロキサン樹脂(a)と化合物(b)とが配合された反応前の溶液と、反応後の溶液とを少量ずつ取り出し、それぞれについてGPC測定(ポリスチレン換算、溶離液:テトラヒドロフラン)を行った。反応前の溶液と反応後の溶液とで、保持時間が約12.4分付近に出現するビスフェノールA型シアネート樹脂のピークの面積を比較し、反応前の溶液のピーク面積に対する反応後の溶液のピーク面積の消失率を算出した。その結果、反応後の溶液におけるピーク面積の消失率が45%であった。よって、熱硬化性樹脂(A−7)における化合物(b)の反応率は、45mol%であった。
さらに、少量取り出した反応溶液を、メタノールとベンゼンの混合溶媒(混合質量比1:1)に滴下して再沈殿させることにより、精製された固形分を取り出し、FT−IR測定を行ったところ、トリアジン環に起因する1560cm-1付近、及び1380cm-1付近の強いピークを確認した。
【0064】
[溶融シリカ(B)の製造]
<溶融シリカ(B−1)の製造>
温度計、攪拌装置、還流冷却管の付いた加熱及び冷却可能な容積3リットルの反応容器に、溶融シリカ(アドマテックス社製;商品名SO−25R):700gと、プロピレングリコールモノメチルエーテル:1000gを配合し、攪拌しながらN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製;商品名KBM−573):7gを添加した。次いで80℃に昇温し、80℃で1時間反応を行い溶融シリカの表面処理(湿式処理)を行った後、室温(25℃)に冷却し、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランにより表面処理(湿式処理)された溶融シリカ(B−1)の溶液を得た。
【0065】
[実施例1〜4、比較例1〜4]
希釈溶剤としてメチルエチルケトンを使用して、熱硬化性樹脂(A−1)〜(A−7)、溶融シリカ(B)、必要により無機充填剤、硬化促進剤を、表1と表2に示した配合量(質量部)で配合して、樹脂分60質量%の均一な熱硬化性樹脂組成物のワニスを得た。
次に、ワニスを厚さ0.2mmのSガラスクロスに含浸させた。これを160℃で10分加熱することにより乾燥させて、樹脂含有量55質量%のプリプレグを得た。
続いて、プリプレグを4枚重ねて積層体を形成し、積層体の一方の表面と他方の表面とに配線幅が18μmの電解銅箔を配置し、圧力2.45MPa、温度185℃の条件で90分間圧着することにより、銅張積層板を得た。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
表中の数字は、固形分としての質量部を示している。また、表1に示す注書きは、下記のとおりである。
*1:N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランにより表面処理された溶融シリカ(株式会社アドマテック製;商品名SC−2050KNK,希釈溶剤;メチルイソブチルケトン)
*2:N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランにより表面処理された溶融シリカ(株式会社アドマテック製;商品名SC−2050HNK,希釈溶剤;シクロヘキサノン)
*3:ベーマイト型水酸化アルミニウム(河合石灰工業株式会社製;商品名BMT−3L,熱分解温度:400℃)
*4:ナフテン酸亜鉛の8質量%ミネラルスピリット溶液
*5:溶融シリカ(株式会社アドマテック製;商品名SO−25R)
【0069】
[評価結果]
実施例1〜4、比較例1〜4の銅張積層板の評価結果を、表3と表4に示す。
【0070】
【表3】

【0071】
【表4】

【0072】
表3から明らかなように、本発明の実施例1〜4は、銅箔ピール強度、ガラス転移温度(Tg)、はんだ耐熱性(T−288)、低熱膨張性、難燃性、銅付き耐熱性(T−300)、低誘電特性、低誘電正接性、ドリル加工性の全てにおいて優れており、基準値を満たすことが判った。
これに対して、比較例1,2では、熱硬化性樹脂(A)が析出し、ワニスを製造することができなかったため、評価できなかった。また、比較例3,4は、銅箔ピール強度、ガラス転移温度(Tg)、はんだ耐熱性(T−288)、低熱膨張性、難燃性、銅付き耐熱性(T−300)、低誘電特性、低誘電正接性、ドリル加工性において、基準値を下回っていた。
【0073】
本発明の熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸又は塗布して得たプリプレグ、及び該プリプレグを積層成形することにより製造した銅張積層板は、銅箔ピール強度、ガラス転移温度(Tg)、はんだ耐熱性(T−288)、低熱膨張性、難燃性、銅付き耐熱性(T−300)、低誘電特性、低誘電正接性、ドリル加工性が全て基準値を満たしており、電子機器用のプリント配線板などに有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂(A)と、溶融シリカ(B)とを含有する熱硬化性樹脂組成物であって、
前記熱硬化性樹脂(A)は、
下記一般式(I)で示される末端に水酸基を有するシロキサン樹脂(a)と、
1分子中に少なくとも2個以上のシアネート基を有する化合物(b)とが有機溶媒中で反応して得られたものであり、
該シロキサン樹脂(a)と該化合物(b)との総和100質量部に対し、該シロキサン樹脂(a)10〜70質量部及び該化合物(b)30〜90質量部が含まれており、
該化合物(b)の反応率が40〜70mol%であり、
前記溶融シリカ(B)の表面が下記式(II)で示されるトリメトキシシラン化合物によって処理された熱硬化性樹脂組成物。
【化1】

(式中、R1は各々独立に炭素数1〜5のアルキレン基又はアルキレンオキシ基,Ar1は各々独立に単結合、アリーレン基又は炭素数1〜5のアルキレン基であり、mは5〜100の整数である。)
【化2】

【請求項2】
請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物が基材に含浸又は塗布されたプリプレグ。
【請求項3】
請求項2に記載のプリプレグが所定の枚数積層されて形成された積層板。

【公開番号】特開2012−52110(P2012−52110A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172362(P2011−172362)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】