説明

熱硬化性樹脂組成物およびそれを用いた半導体のパッケージ

【課題】安価でありながら成形加工性が良好であり、光線反射率が高く、耐熱耐光性が良好な硬化物を与える硬化性組成物を提供すること。
【解決手段】(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するポリオルガノシロキサン、(C)ヒドロシリル化触媒、(D)白色顔料、(E)無機充填材、を必須成分として含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物であって、(D)成分と(E)成分の合計の含有量が70〜95重量%であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱硬化性組成物およびそれを用いた半導体のパッケージおよびそれを用いて製造された半導体部品に関するものであり、更に詳しくは、安価でありながら光線反射率が高い硬化性樹脂組成物およびそれを用いた発光ダイオード用のパッケージおよびそれを用いて製造された発光ダイオードに関する。
【背景技術】
【0002】
これまで高い耐光性および耐熱性を有する発光ダイオードのパッケージ用硬化性樹脂組成物が開示されている(特許文献1)。すなわち(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する化合物、(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物、(C)ヒドロシリル化触媒を必須成分として含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物からなる半導体パッケージ用硬化性樹脂組成物である(特許文献1の請求項1)。特許文献1では、((B)成分の好ましい構造)として次の開示がある。(A)成分と良好な相溶性を有するという観点、および(B)成分の揮発性が低くなり得られる組成物からのアウトガスの問題が生じ難いという観点からは、(B)成分は、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個以上含有する有機化合物(α)と、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状のポリオルガノシロキンサン(β)を、ヒドロシリル化反応して得られることができる化合物であることが好ましい[段落0106]。
【0003】
しかし上記の好ましい化合物は、特許文献の合成例1に見られるように、比較的大量の溶媒中で大過剰の(β)成分中に(α)成分を徐々に加えゲル化しないように反応させた後、過剰の(β)成分及び溶媒を除去して得られるのが一般的である。従い好ましい(B)成分は一般的に高コストとなり、実用上大きな問題になっているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−146191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の課題は、安価でありながら成形加工性が良好であり、高い耐光性および耐熱性を有する発光ダイオードのパッケージ用硬化性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、
(A)成分として、ポリシロキサン骨格を含まないSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物を用い、かつ、(B)成分として市場からの入手が容易であり上記(A)成分と一般的には相溶性が良好ではないSiH基を2個以上有する鎖状および/又は分岐状ポリシロキサンを用いることにより、フィラー含有系であれば実用上全く問題のない均一なレベルで熱硬化性樹脂組成物を得ることができること、また該組成物を用いたパッケージは、特許文献1の好ましい(B)成分を用いた場合と同レベルの発光ダイオード用パッケージとしての基本性能を有することを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明は、(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する鎖状および/又は分岐状ポリオルガノシロキサン、(C)ヒドロシリル化触媒、(D)白色顔料、(E)無機充填材、を必須成分として含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物であって、(D)成分と(E)成分の合計の含有量が70〜95重量%であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物であり、
前記熱硬化性樹脂組成物からなる発光ダイオードのパッケージ用硬化性樹脂組成物であり、
前記熱硬化性樹脂組成物を成形してなり、表面の波長470nmの光線反射率が90%以上である成形体であり、
前記熱硬化性樹脂組成物を用いてトランスファー成形したことを特徴とする発光ダイオード用のパッケージであり、
前記発光ダイオード用のパッケージを用いて製造された発光ダイオードである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いれば、安価でありながら成形加工性が良好であり、硬化後は白色で光線反射率が高く、耐熱耐光性が良好な硬化物を得ることができ、光取り出し効率が高く、長期間使用しても光取り出し効率が低下しない優良な発光ダイオードを作成できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】高化式フローテスター模式図
【図2】3030MAPイメージ図
【図3】簡易強度試験の模式図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明における(A)成分)について説明する。
((A)成分の骨格)
(A)成分はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物であれば特に限定されないが、強度が高くなりやすい、接着性が高くなりやすいという点においては、(A)成分としては有機骨格を有するものが好ましい。
【0011】
有機化合物としてはポリシロキサン−有機ブロックコポリマーやポリシロキサン−有機グラフトコポリマーのようなシロキサン単位(Si−O−Si)を含むものではなく、構成元素としてC、H、N、O、S及びハロゲン以外の元素を含まない化合物がより好ましい。シロキサン単位を含むものの場合は、半導体のパッケージとリードフレームや封止樹脂との接着性が低くなりやすいという問題がある。
【0012】
(A)成分の有機化合物は、有機重合体系の化合物と有機単量体系化合物に分類できる。
【0013】
((A)成分が重合体の場合の例)
有機重合体系の(A)成分としては、例えば、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリアリレート系、ポリカーボネート系、飽和炭化水素系、不飽和炭化水素系、ポリアクリル酸エステル系、ポリアミド系、フェノール−ホルムアルデヒド系(フェノール樹脂系)、ポリイミド系の骨格を有するものを挙げることができる。
【0014】
これらのうち、ポリエーテル系重合体としては、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体等が挙げられる。さらに具体的な例を示すと、
【0015】
【化1】

【0016】
(式中、R、Rは構成元素としてC、H、N、O、S、ハロゲン以外の元素を含まない炭素数1〜6の2価の有機基、n、m、lは1〜300の数を表す。)
等が挙げられる。
【0017】
その他の重合体としては、例えばアジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等の2塩基酸とエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等のグリコールとの縮合またはラクトン類の開環重合で得られるポリエステル系重合体、エチレン−プロピレン系共重合体、ポリイソブチレン、イソブチレンとイソプレン等との共重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、イソプレンとブタジエン、アクリロニトリル、スチレン等との共重合体、ポリブタジエン、ブタジエンとスチレン、アクリロニトリル等との共重合体、ポリイソプレン、ポリブタジエン、イソプレンあるいはブタジエンとアクリロニトリル、スチレン等との共重合体を水素添加して得られるポリオレフィン系(飽和炭化水素系)重合体、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のモノマーをラジカル重合して得られるポリアクリル酸エステル、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアクリル酸エステルと酢酸ビニル、アクリロニトリル、メチルメタクリレート、スチレン等とのアクリル酸エステル系共重合体、前記有機重合体中でビニルモノマーを重合して得られるグラフト重合体、ポリサルファイド系重合体、ε−アミノカプロラクタムの開環重合によるナイロン6、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の重縮合によるナイロン66、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の重縮合によるナイロン610、ε−アミノウンデカン酸の重縮合によるナイロン11、ε−アミノラウロラクタムの開環重合によるナイロン12、上記のナイロンのうち2成分以上の成分を有する共重合ナイロン等のポリアミド系重合体、例えばビスフェノールAと塩化カルボニルより重縮合して製造されたポリカルボネート系重合体、ジアリルフタレート系重合体、フェノール−ホルムアルデヒド系(フェノール樹脂系)骨格としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、アンモニアレゾール型フェノール樹脂、ベンジリックエーテル型フェノール樹脂などが挙げられる。
【0018】
これらの重合体骨格に、炭素−炭素二重結合を有するアルケニル基を導入して(A)成分とすることができる。
【0019】
この場合、炭素−炭素二重結合を有するアルケニル基は分子内のどこに存在してもよいが、反応性の点から側鎖または末端に存在する方が好ましい。
【0020】
アルケニル基を前記重合体骨格に導入する方法については、種々提案されているものを用いることができるが、重合後にアルケニル基を導入する方法と重合中にアルケニル基を導入する方法に大別することができる。
【0021】
重合後にアルケニル基を導入する方法としては、例えば、末端、主鎖あるいは側鎖に水酸基、アルコキシド基、カルボキシル基、エポキシ基等の官能基を有する有機重合体に、その官能基に対して反応性を示す活性基とアルケニル基の両方を有する有機化合物を反応させることによりアルケニル基を末端、主鎖あるいは側鎖に導入することができる。上記官能基に対して反応性を示す活性基とアルケニル基の両方を有する有機化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、アクリル酸クロライド、アクリル酸ブロマイド等のC3〜C20の不飽和脂肪酸、酸ハライド、酸無水物等やアリルクロロホルメート(CH=CHCHOCOCl)、アリルブロモホルメート(CH=CHCHOCOBr)等のC3〜C20の不飽和脂肪族アルコール置換炭酸ハライド、アリルクロライド、アリルブロマイド、ビニル(クロロメチル)ベンゼン、アリル(クロロメチル)ベンゼン、アリル(ブロモメチル)ベンゼン、アリル(クロロメチル)エーテル、アリル(クロロメトキシ)ベンゼン、1−ブテニル(クロロメチル)エーテル、1−ヘキセニル(クロロメトキシ)ベンゼン、アリルオキシ(クロロメチル)ベンゼン、アリルイソシアネート等が挙げられる。
【0022】
また、エステル交換法を用いてアルケニル基を導入する方法がある。この方法はポリエステル樹脂やアクリル樹脂のエステル部分のアルコール残基をエステル交換触媒を用いてアルケニル基含有アルコール又はアルケニル基含有フェノール誘導体とエステル交換する方法である。アルコール残基との交換に用いるアルケニル基含有アルコール及びアルケニル基含有フェノール誘導体は、少なくとも1個のアルケニル基を有し少なくとも1個の水酸基を有するアルコール又はフェノール誘導体であれば良いが、水酸基を1個有する方が好ましい。触媒は使用してもしなくても良いが、チタン系および錫系の触媒が良い。
【0023】
上記化合物の例としては、ビニルアルコール、アリルアルコール、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、6−ヘプテン−1−オール、7−オクテン−1−オール、8−ノネン−1−オール、9−デセン−1−オール、2−(アリルオキシ)エタノール、ネオペンチルグリコールモノアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、トリメチロールエタントリアリルエーテル、ペンタエリストールテトラアリルエーテル、1,2,6−ヘキサントリオールトリアリルエーテル、ソルビタントリアリルエーテル、
【0024】
【化2】

【0025】
などが挙げあれる。この中でも、入手の容易さから、アリルアルコール、ビニルアルコール、3−ブテン−1−オール、2−(アリルオキシ)エタノール、および
【0026】
【化3】

【0027】
が好ましい。
【0028】
さらに、上記アルコール又はフェノール誘導体の酢酸エステル等のエステル化物とポリエステル樹脂やアクリル樹脂のエステル部分をエステル交換触媒を用いてエステル交換しながら、生成するポリエステル樹脂やアクリル樹脂のエステル部分のアルコール残基の酢酸エステル等の低分子量エステル化物を減圧脱揮等で系外に留去する方法でアルケニル基を導入する方法もある。
【0029】
また、リビング重合によりメチル(メタ)アクリレート等の重合を行った後、リビング末端をアルケニル基を有する化合物によって停止させる方法により末端にアルケニル基を導入することもできる。
【0030】
重合中にアルケニル基を導入する方法としては、例えば、ラジカル重合法で本発明に用いる(A)成分の有機重合体骨格を製造する場合に、アリルメタクリレート、アリルアクリレート等の分子中にラジカル反応性の低いアルケニル基を有するビニルモノマーや、アリルメルカプタン等のラジカル反応性の低いアルケニル基を有するラジカル連鎖移動剤を用いることにより、有機重合体骨格の側鎖や末端にアルケニル基を導入することができる。
【0031】
(A)成分としては、分子量は特に制約はないが、100〜100,000の任意のものが好適に使用でき、アルケニル基含有有機重合体であれば500〜20,000のものが特に好ましい。分子量が500以下では可とう性の付与等の有機重合体の利用による特徴が発現し難く、分子量が100、000以上ではアルケニル基とSiH基との反応による架橋の効果が発現し難い。
【0032】
((A)成分が単量体の場合の例)
有機単量体系の(A)成分としては例えば、フェノール系、ビスフェノール系、ベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素系:直鎖系、脂環系等の脂肪族炭化水素系:複素環系の化合物およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0033】
((A)成分の炭素−炭素二重結合)
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の結合位置は特に限定されず、分子内のどこに存在してもよい。
【0034】
(A)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合としては特に限定されないが、下記一般式(I)
【0035】
【化4】

【0036】
(式中Rは水素原子あるいはメチル基を表す。)で示される基が反応性の点から好適である。また、原料の入手の容易さからは、
【0037】
【化5】

【0038】
示される基が特に好ましい。
【0039】
(A)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合としては、下記一般式(II)
【0040】
【化6】

【0041】
(式中R2は水素原子あるいはメチル基を表す。)で示される脂環式の基が、硬化物の耐熱性が高いという点から好適である。また、原料の入手の容易さからは、
【0042】
【化7】

【0043】
示される脂環式の基が特に好ましい。
【0044】
((A)成分の炭素−炭素二重結合と骨格の結合基)
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合は(A)成分の骨格部分に直接結合していてもよく、2価以上の置換基を介して共有結合していても良い。2価以上の置換基としては炭素数0〜10の置換基であれば特に限定されないが、構成元素としてC、H、N、O、S、およびハロゲン以外の元素を含まないものが好ましい。これらの置換基の例としては、
【0045】
【化8】

【0046】
【化9】

【0047】
が挙げられる。また、これらの2価以上の置換基の2つ以上が共有結合によりつながって1つの2価以上の置換基を構成していてもよい。
【0048】
以上のような骨格部分に共有結合する基の例としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、アクリル基、メタクリル基、2−ヒドロキシ−3−(アリルオキシ)プロピル基、2−アリルフェニル基、3−アリルフェニル基、4−アリルフェニル基、2−(アリルオキシ)フェニル基、3−(アリルオキシ)フェニル基、4−(アリルオキシ)フェニル基、2−(アリルオキシ)エチル基、2、2−ビス(アリルオキシメチル)ブチル基、3−アリルオキシ−2、2−ビス(アリルオキシメチル)プロピル基、
【0049】
【化10】

【0050】
が挙げられる。
【0051】
((A)成分の具体例)
有機重合体系の(A)成分の具体的な例としては、1,2−ポリブタジエン(1、2比率10〜100%のもの、好ましくは1、2比率50〜100%のもの)、ノボラックフェノールのアリルエーテル、アリル化ポリフェニレンオキサイド、
【0052】
【化11】

【0053】
(式中、RはHまたはCH、R、Rは構成元素としてC、H、N、O、S、ハロゲン以外の元素を含まない炭素数1〜6の2価の有機基、X、Yは炭素数0〜10の2価の置換基、n、m、lは1〜300の数を表す。)
【0054】
【化12】

【0055】
(式中、RはHまたはCH、R、Rは炭素数1〜6の2価の有機基、X、Yは炭素数0〜10の2価の置換基、n、m、lは1〜300の数を表す。)
【0056】
【化13】

【0057】
(式中、RはHまたはCH、R、Rは炭素数1〜20の2価の有機基、X、Yは炭素数0〜10の2価の置換基、n、m、lは1〜300の数を表す。)
【0058】
【化14】

【0059】
(式中、RはHまたはCH、R、Rは炭素数1〜6の2価の有機基、X、Yは炭素数0〜10の2価の置換基、n、m、lは1〜300の数を表す。)
【0060】
【化15】

【0061】
(式中、RはHまたはCH、R10、R11、R12は炭素数1〜6の2価の有機基、X、Yは炭素数0〜10の2価の置換基、n、m、l、pは1〜300の数を表す。)
等が挙げられる。
【0062】
有機単量体系の(A)成分の具体的な例としては、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、1,1,2,2,−テトラアリロキシエタン、ジアリリデンペンタエリスリット、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、ジビニルベンゼン類(純度50〜100%のもの、好ましくは純度80〜100%のもの)、ジビニルビフェニル、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、およびそれらのオリゴマー、
【0063】
【化16】

【0064】
【化17】

【0065】
の他、従来公知のエポキシ樹脂のグルシジル基の一部あるいは全部をアリル基に置き換えたもの等が挙げられる。
【0066】
(A)成分としては、上記のように骨格部分とアルケニル基とに分けて表現しがたい、低分子量化合物も用いることができる。これらの低分子量化合物の具体例としては、ブタジエン、イソプレン、オクタジエン、デカジエン等の脂肪族鎖状ポリエン化合物系、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、ノルボルナジエン等の脂肪族環状ポリエン化合物系、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキセン等の置換脂肪族環状オレフィン化合物系等が挙げられる。
【0067】
((A)成分の好ましい要件)
(A)成分としては、耐熱性をより向上し得るという観点からは、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を(A)成分1gあたり0.001mol以上含有するものが好ましく、1gあたり0.005mol以上含有するものがより好ましく、0.008mol以上含有するものがさらに好ましい。
【0068】
(A)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の数は、平均して1分子当たり少なくとも2個あればよいが、力学強度をより向上したい場合には2を越えることが好ましく、3個以上であることがより好ましい。(A)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の数が1分子内当たり1個以下の場合は、(B)成分と反応してもグラフト構造となるのみで架橋構造とならない。
【0069】
(A)成分としては反応性が良好であるという観点からは、1分子中にビニル基を1個以上含有していることが好ましく、1分子中にビニル基を2個以上含有していることがより好ましい。また貯蔵安定性が良好となりやすいという観点からは、1分子中にビニル基を6個以下含有していることが好ましく、1分子中にビニル基を4個以下含有していることがより好ましい。
【0070】
(A)成分としては、力学的耐熱性が高いという観点、原料液の糸引き性が少なく取扱い性が良好であるという観点、(D)成分および(E)成分などの粉体との均一な混合が容易という観点から、分子量が900未満のものが好ましく、700未満のものがより好ましく、500未満のものがさらに好ましい。
【0071】
(A)成分としては、他の成分、特に(D)成分および(E)成分などの粉体との均一な混合を容易にするため、更に詳しくは均一な混合のために融点以上に加熱して液体化させる必要がないことから、23℃において液体であることが好ましく、その粘度としては23℃において50Pa秒以下のものが好ましく、20Pa秒以下のものがより好ましく、5Pa秒以下のものがさらに好ましい。粘度はE型粘度計によって測定することができる。
【0072】
(A)成分としては、耐光性がより高いという観点から、フェノール性水酸基および/あるいはフェノール性水酸基の誘導体を有する化合物の含有量が少ないものが好ましく、フェノール性水酸基および/あるいはフェノール性水酸基の誘導体を有する化合物を含まないものが好ましい。本発明におけるフェノール性水酸基とはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等に例示される芳香族炭化水素核に直接結合した水酸基を示し、フェノール性水酸基の誘導体とは上述のフェノール性水酸基の水素原子をメチル基、エチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、アセトキシ基等のアシル基等により置換された基を示す。
【0073】
また、特に耐光性が良好であるという観点からは、芳香環の(A)成分中の成分重量比が50重量%以下であるものが好ましく、40重量%以下のものがより好ましく、30重量%以下のものがさらに好ましい。最も好ましいのは芳香族炭化水素環を含まないものである。
【0074】
得られる硬化物の着色が少なく、耐光性が高いという観点からは、(A)成分としてはビニルシクロヘキセン、ジシクロペンタジエン、ビニルノルボルネン、トリアリルイソシアヌレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのジアリルエーテル、1,2,4−トリビニルシクロヘキサンが好ましく、トリアリルイソシアヌレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのジアリルエーテル、1,2,4−トリビニルシクロヘキサンが特に好ましい。
((A)成分の好ましい構造)
(A)成分としては、耐熱性および耐光性が特に高いという観点からは、下記一般式(III)
【0075】
【化18】

【0076】
(式中Rは炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのRは異なっていても同一であってもよい。)で表される化合物が好ましい。
【0077】
上記一般式(III)のRとしては、得られる硬化物の耐熱性がより高くなりうるという観点からは、炭素数1〜20の一価の有機基であることが好ましく、炭素数1〜10の一価の有機基であることがより好ましく、炭素数1〜4の一価の有機基であることがさらに好ましい。これらの好ましいRの例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ビニル基、アリル基、グリシジル基、
【0078】
【化19】

【0079】
等が挙げられる。
【0080】
上記一般式(III)のRとしては、パッケージとリードフレームあるいは封止剤との接着性が良好になりうる、あるいは得られるパッケージの力学強度が高くなり得るという観点からは、3つのRのうち少なくとも1つがエポキシ基を一つ以上含む炭素数1〜50の一価の有機基であることが好ましく、
【0081】
【化20】

【0082】
で表されるエポキシ基を1個以上含む炭素数1〜50の一価の有機基であることがより好ましい。これらの好ましいRの例としては、グリシジル基、
【0083】
【化21】

【0084】
等が挙げられる。
【0085】
上記一般式(III)のRとしては、得られる硬化物の耐熱性が良好になりうるという観点からは、2個以下の酸素原子を含みかつ構成元素としてC、H、Oのみを含む炭素数1〜50の一価の有機基であることが好ましく、炭素数1〜50の一価の炭化水素基であることがより好ましい。これらの好ましいRの例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ビニル基、アリル基、グリシジル基、
【0086】
【化22】

【0087】
等が挙げられる。
【0088】
上記一般式(III)のRとしては、反応性が良好になるという観点からは、3つのRのうち少なくとも1つが
【0089】
【化23】

【0090】
で表される基を1個以上含む炭素数1〜50の一価の有機基であることが好ましく、下記一般式(IV)
【0091】
【化24】

【0092】
(式中Rは水素原子あるいはメチル基を表す。)で表される基を1個以上含む炭素数1〜50の一価の有機基であることがより好ましく、
3つのRのうち少なくとも2つが下記一般式(V)
【0093】
【化25】

【0094】
(式中Rは直接結合あるいは炭素数1〜48の二価の有機基を表し、Rは水素原子あるいはメチル基を表す。)で表される有機化合物(複数のRおよびRはそれぞれ異なっていても同一であってもよい。)であることがさらに好ましい。
【0095】
上記一般式(V)のRは、直接結合あるいは炭素数1〜48の二価の有機基であるが、得られるパッケージの耐熱性がより高くなりうるという観点からは、直接結合あるいは炭素数1〜20の二価の有機基であることが好ましく、直接結合あるいは炭素数1〜10の二価の有機基であることがより好ましく、直接結合あるいは炭素数1〜4の二価の有機基であることがさらに好ましい。これらの好ましいRの例としては、
【0096】
【化26】

【0097】
等が挙げられる。
【0098】
上記一般式(V)のRとしては、得られるパッケージの耐熱性が良好になりうるという観点からは、直接結合あるいは2つ以下の酸素原子を含みかつ構成元素としてC、H、Oのみを含む炭素数1〜48の二価の有機基であることが好ましく、直接結合あるいは炭素数1〜48の二価の炭化水素基であることがより好ましい。これらの好ましいRの例としては、
【0099】
【化27】

【0100】
が挙げられる。
【0101】
上記一般式(V)のRは、水素原子あるいはメチル基であるが、反応性が良好であるという観点からは、水素原子が好ましい。
【0102】
ただし、上記のような一般式(III)で表される有機化合物の好ましい例においても、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有することは必要である。耐熱性をより向上し得るという観点からは、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に3個以上含有する有機化合物であることがより好ましい。
【0103】
以上のような一般式(III)で表される有機化合物の好ましい具体例としては、トリアリルイソシアヌレート、
【0104】
【化28】

【0105】
等が挙げられる。
【0106】
((A)成分のその他の反応性基)
(A)成分としてはその他の反応性基を有していてもよい。この場合の反応性基としては、エポキシ基、アミノ基、ラジカル重合性不飽和基、カルボキシル基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、アルコキシシリル基等が挙げられる。これらの官能基を有している場合には得られる硬化性組成物の接着性が高くなりやすく、得られる硬化物の強度が高くなりやすい。接着性がより高くなりうるという点からは、これらの官能基のうちエポキシ基が好ましい。また、得られる硬化物の耐熱性が高くなりやすいという点においては、反応性基を平均して1分子中に1個以上有していることが好ましい。
【0107】
((A)成分の混合)
(A)成分は、単独もしくは2種以上のものを混合して用いることが可能である。
【0108】
次に本発明における(B)成分について説明する。
【0109】
(B)成分は、市場からの入手が容易であり上記(A)成分と一般的には相溶性が良好ではないSiH基を2個以上有する鎖状、分岐状ポリシロキサンである。
【0110】
具体的に例示するならば、下記のものをあげることができる。
【0111】
【化29】

【0112】
【化30】

【0113】
[SiO[HSiMeO](m=1〜1000、n=2〜100)。
【0114】
(B)成分の分子量は特に制約はなく任意のものが好適に使用できるが、流動性が高く(D)成分および(E)成分などの粉体と均一に混合しやすいという観点からは低分子量のものが好ましく用いられる。この場合、好ましい分子量の下限は50であり、好ましい分子量の上限は100,000である。
【0115】
(B)成分としては、(D)成分および(E)成分などの粉体との均一な混合を容易にするため、更に詳しくは均一な混合のために融点以上に加熱して液体化させる必要がないことから、23℃において液体であることが好ましく、その粘度としては23℃において100Pa秒以下のものが好ましく、50Pa秒以下のものがより好ましく、30Pa秒以下のものがさらに好ましい。粘度はE型粘度計によって測定することができる。
【0116】
(B)成分は単独もしくは2種以上のものを混合して用いることが可能である。
【0117】
((A)成分と(B)成分の混合)
(A)成分と(B)成分の組合せについては(A)成分の例として挙げたものおよびそれらの各種混合物/(B)成分の例として挙げたものおよびそれらの各種混合物、の各種組み合わせを挙げることができる。
【0118】
(A)成分と(B)成分の混合比率は、必要な強度を失わない限りは特に限定されないが、(B)成分中のSiH基の数(Y)の(A)成分中の炭素−炭素二重結合の数(X)に対する比において、好ましい範囲の下限はY/X≧0.3、より好ましくはY/X≧0.5、さらに好ましくはY/X≧0.7であり、好ましい範囲の上限は3≧Y/X、より好ましくは2≧Y/X、さらに好ましくは1.5≧Y/Xである。好ましい範囲からはずれた場合には十分な強度が得られなかったり、熱劣化しやすくなる場合がある。
【0119】
本発明の(A)成分と(B)成分とは一般的には相溶性が良好ではないが、本発明の(D),(E)成分と混合することにより、組成物として十分な均一性を保持することが可能である。
【0120】
次に本発明における(C)成分について説明する。
【0121】
(C)成分はヒドロシリル化触媒である。
【0122】
ヒドロシリル化触媒としては、ヒドロシリル化反応の触媒活性があれば特に限定されないが、例えば、白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金−オレフィン錯体(例えば、Pt(CH=CH(PPh、Pt(CH=CHCl)、白金−ビニルシロキサン錯体(例えば、Pt(ViMeSiOSiMeVi)、Pt[(MeViSiO))、白金−ホスフィン錯体(例えば、Pt(PPh4、Pt(PBu)、白金−ホスファイト錯体(例えば、Pt[P(OPh)、Pt[P(OBu))(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは、整数を示す。)、ジカルボニルジクロロ白金、カールシュテト(Karstedt)触媒、また、アシュビー(Ashby)の米国特許第3159601号および3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、ならびにラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒が挙げられる。さらに、モディック(Modic)の米国特許第3516946号明細書中に記載された塩化白金−オレフィン複合体も本発明において有用である。
【0123】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh)、RhCl、RhAl、RuCl、IrCl、FeCl、AlCl、PdCl・2HO、NiCl、TiCl、等が挙げられる。
【0124】
これらの中では、触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体等が好ましい。また、これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0125】
触媒の添加量は特に限定されないが、十分な硬化性を有し、かつ硬化性組成物のコストを比較的低く抑えるため好ましい添加量の下限は、(B)成分のSiH基1モルに対して10−8モル、より好ましくは10−6モルであり、好ましい添加量の上限は(β)成分のSiH基1モルに対して10−1モル、より好ましくは10−2モルである。
【0126】
また、上記触媒には助触媒を併用することが可能であり、例としてトリフェニルホスフィン等のリン系化合物、ジメチルマレエート等の1、2−ジエステル系化合物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−ブチン等のアセチレンアルコール系化合物、単体の硫黄等の硫黄系化合物、トリエチルアミン等のアミン系化合物等が挙げられる。助触媒の添加量は特に限定されないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対しての好ましい添加量の下限は、10−2モル、より好ましくは10−1モルであり、好ましい添加量の上限は10モル、より好ましくは10モルである。
【0127】
次に本発明における(D)成分について説明する。
【0128】
(D)成分は白色顔料であり、得られる硬化物の光線反射率を高める効果を有する。(D)成分としては種々のものを用いることができ、例えば、酸化チタン、酸化マグネシウム、中空ガラス粒子、などが挙げられる。中でも、取り扱いの容易性や入手性、コストの観点から酸化チタンが好ましい。
【0129】
(D)成分の酸化チタンとしては種々のものを用いることができ、アナターゼ型であってもルチル型であってもよいが、光触媒作用がなく組成物が安定になりやすいという点ではルチル型であることが好ましい。
【0130】
(D)成分の酸化チタンの平均粒径としても種々のものが用いられるが、得られる硬化物の光線反射率が高くなりやすいという観点からは、1.0μm以下のものが好ましく、0.30μm以下のものがより好ましく、0.25μm以下のものが最も好ましい。平均粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布計を用いて測定することができる。
【0131】
(D)成分の酸化チタンの製造方法としても硫酸法、塩素法などいずれの方法により製造されたものも使用できる。
【0132】
(D)成分の酸化チタンの表面処理については特に限定されず、種々の表面処理が用いられるが、得られる硬化物の光線反射率が高くなることから有機シロキサン処理で処理されていることが好ましい。その場合の有機シロキサン処理剤としては種々のものが適用される。例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリメチルハイドロジェンシロキサン、あるいはそれらの共重合体などのポリシロキサン類、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、ヘプタメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、などのシクロシロキサン類、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシランなどのクロロシラン類、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ官能基を有するシラン類、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン等のメタクリル基あるいはアクリル基を有するシラン類、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン等のビニル基を有するシラン類、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のメルカプトシラン類、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−[ビス(β−ヒドロキシエチル)]アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(β−アミノエチル)アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N−(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するシラン類、イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基を有するシラン類、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン等のアルキル基を有するシラン類、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン等のその他のシラン類等の各種シラン類で例示されるシランカップリング剤、やヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシラザンなどを挙げることができる。これらの表面処理剤としては炭素−炭素二重結合を含まないものであることが好ましく、炭素−炭素二重結合を含むと耐熱性が低下しやすくなる。また、有機シロキサン以外の表面処理を併用することも可能であり、Al、Zr、Zn等で処理することもできる。
【0133】
表面処理の方法としても各種方法を適用することができ、湿式法、乾式法、液相法、気相法等、種々の方法が例示できる。
【0134】
(D)成分の量としては、特に限定されないが、熱硬化性樹脂組成物全体に占める(D)成分の量が10重量%以上であることが好ましく、15重量%以上であることがより好ましく、20重量%以上であることがさらに好ましい。10重量%未満であると、得られる硬化物の光線反射率が低下することがある。
【0135】
次に本発明における(E)成分について説明する。
【0136】
(E)成分は無機充填材であり、(D)成分として使用される白色顔料とは異なる。(E)成分は、得られる硬化物の強度や硬度を高くしたり、線膨張率を低減化したりする効果を有する。
【0137】
(E)成分としては特に限定されないが、例えば、石英、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ等のシリカ系無機充填材、アルミナ、ジルコン、酸化チタン、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミ、炭化ケイ素、ガラス繊維、アルミナ繊維、炭素繊維、マイカ、黒鉛、カーボンブラック、グラファイト、ケイソウ土、白土、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、チタン酸カリウム、ケイ酸カルシウム、無機バルーン、銀粉等の無機充填材をはじめとして、エポキシ系等の従来の半導体封止材の充填材として一般に使用あるいは/および提案されている無機充填材等を挙げることができる。なかでも、硬化反応を阻害し難く、線膨張係数の低減化効果が大きく、リードフレームとの接着性が高くなりやすいという観点からは、シリカ系無機充填材が好ましい。さらに、成形性、電気特性等の物性バランスがよいという点において溶融シリカが好ましく、パッケージの熱伝導性が高くなり易く放熱性の高いパッケージ設計が可能になるという点においては結晶性シリカが好ましい。より放熱性が高くなり易いという点ではアルミナが好ましい。その他、補強効果が高くパッケージの強度が高くなり易いという点においてはガラス繊維、チタン酸カリウム、ケイ酸カルシウムが好ましい。これら無機充填材は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0138】
(E)成分の形状としては特に限定されず、破砕状、片状、球状、棒状等を用いることができるが、熱硬化性樹脂組成物中の含有率を高くしても成形性が良好となることから、球状あるいは丸みのある破砕状であることが好ましく、球状であることがより好ましい。
【0139】
(E)成分の粒径としては、特に限定されないが、エポキシ系等の従来の半導体封止材の充填材として使用あるいは/および提案されている範囲のものを使用することができる。好ましい平均粒径の上限としては120μmであり、流動性が良好になりやすいという点から好ましくは60μm、より好ましくは30μmである。
【0140】
(E)成分の比表面積についても、特に限定されず、エポキシ系等の従来の封止材の充填材として使用あるいは/および提案されているものをはじめ、各種設定できる。
【0141】
(E)成分としては、半導体素子へダメージを与え難いという観点から、低放射線性であることが好ましい。
また、(E)成分は適宜表面処理してもよい。表面処理としては、アルキル化処理、トリメチルシリル化処理、シリコーン処理、カップリング剤による処理等が挙げられる。
【0142】
この場合のカップリング剤の例としては、シランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、分子中に有機基と反応性のある官能基と加水分解性のケイ素基を各々少なくとも1個有する化合物であれば特に限定されない。有機基と反応性のある基としては、取扱い性の点からエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基が好ましく、硬化性及び接着性の点から、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。加水分解性のケイ素基としては取扱い性の点からアルコキシシリル基が好ましく、反応性の点からメトキシシリル基、エトキシシリル基が特に好ましい。
【0143】
(添加剤)
本発明の熱硬化性樹脂組成物には種々の添加剤を添加することができる。
【0144】
(硬化遅延剤)
本発明の熱硬化性樹脂組成物の保存安定性を改良する目的、あるいは製造過程でのヒドロシリル化反応の反応性を調整する目的で、硬化遅延剤を使用することができる。硬化遅延剤としては、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、これらを併用してもかまわない。
【0145】
脂肪族不飽和結合を含有する化合物としては、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、3−ヒドロキシ−3−フェニル−1−ブチン、1−エチニル−1−シクロヘキサノール等のプロパギルアルコール類、エン−イン化合物類、ジメチルマレート等のマレイン酸エステル類等が例示される。有機リン化合物としては、トリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類等が例示される。有機イオウ化合物としては、オルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイド等が例示される。窒素含有化合物としては、アンモニア、1〜3級アルキルアミン類、アリールアミン類、尿素、ヒドラジン等が例示される。スズ系化合物としては、ハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズ等が例示される。有機過酸化物としては、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t−ブチル等が例示される。
【0146】
これらの硬化遅延剤のうち、遅延活性が良好で原料入手性がよいという観点からは、ベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルマレート、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、1−エチニル−1−シクロヘキサノールが好ましい。
【0147】
硬化遅延剤の添加量は種々設定できるが、使用するヒドロシリル化触媒1molに対する好ましい添加量の下限は10−1モル、より好ましくは1モルであり、好ましい添加量の上限は10モル、より好ましくは50モルである。
【0148】
また、これらの硬化遅延剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0149】
(接着性改良剤)
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、接着性改良剤を添加することもできる。接着性改良剤としては一般に用いられている接着剤の他、例えば種々のカップリング剤、エポキシ化合物、フェノール樹脂、クマロン−インデン樹脂、ロジンエステル樹脂、テルペン−フェノール樹脂、α−メチルスチレン−ビニルトルエン共重合体、ポリエチルメチルスチレン、芳香族ポリイソシアネート等を挙げることができる。
【0150】
カップリング剤としては例えばシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。
【0151】
カップリング剤の例は、上記したものと同じである。
【0152】
カップリング剤の添加量としては種々設定できるが、[(A)成分+(B)成分]100重量部に対しての好ましい添加量の下限は0.1重量部、より好ましくは0.5重量部であり、好ましい添加量の上限は50重量部、より好ましくは25重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化物物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0153】
エポキシ化合物としては、例えば、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、2,2’−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカーボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−5,5−スピロ−(3,4−エポキシシクロヘキサン)−1,3−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、1,2−シクロプロパンジカルボン酸ビスグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート等を挙げることができる。
【0154】
エポキシ化合物の添加量としては種々設定できるが、[(A)成分+(B)成分]100重量部に対しての好ましい添加量の下限は1重量部、より好ましくは3重量部であり、好ましい添加量の上限は50重量部、より好ましくは25重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化物物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0155】
また、これらのカップリング剤、シランカップリング剤、エポキシ化合物等は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0156】
また、本発明においてはカップリング剤やエポキシ化合物の効果を高めるために、さらにシラノール縮合触媒を用いることができ、接着性の向上および/あるいは安定化が可能である。このようなシラノール縮合触媒としては特に限定されないが、ほう素系化合物あるいは/およびアルミニウム系化合物あるいは/およびチタン系化合物が好ましい。シラノール縮合触媒となるアルミニウム系化合物としては、アルミニウムトリイソプロポキシド、sec−ブトキシアルミニウムジイソフロポキシド、アルミニウムトリsec−ブトキシド等のアルミニウムアルコキシド類:、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシド、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミキレートM(川研ファインケミカル製、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシド)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)等のアルミニウムキレート類等が例示でき、取扱い性の点からアルミニウムキレート類がより好ましい。シラノール縮合触媒となるチタン系化合物としては、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン等のテトラアルコキシチタン類:チタンテトラアセチルアセトナート等のチタンキレート類:オキシ酢酸やエチレングリコール等の残基を有する一般的なチタネートカップリング剤が例示できる。
シラノール縮合触媒となるほう素系化合物としては、ほう酸エステルが挙げられる。ほう酸エステルとしては下記一般式(VII)、(VIII)で示されるものを好適に用いることが出来る。
【0157】
【化31】

【0158】
【化32】

【0159】
(式中Rは炭素数1〜48の有機基を表す。)。
【0160】
ほう酸エステルの具体例として、ほう酸トリ−2−エチルヘキシル、ほう酸ノルマルトリオクタデシル、ほう酸トリノルマルオクチル、ほう酸トリフェニル、トリメチレンボレート、トリス(トリメチルシリル)ボレート、ほう酸トリノルマルブチル、ほう酸トリ−sec−ブチル、ほう酸トリ−tert−ブチル、ほう酸トリイソプロピル、ほう酸トリノルマルプロピル、ほう酸トリアリル、ほう酸トリエチル、ほう酸トリメチル、ほう素メトキシエトキサイドを好適に用いることができる。
【0161】
これらほう酸エステルは1種類のみを用いてもよく、2種類以上を混合して用いても良い。混合は事前に行なっても良く、また硬化物作成時に混合しても良い。
これらほう酸エステルのうち、容易に入手でき工業的実用性が高いという点からは、ほう酸トリメチル、ほう酸トリエチル、ほう酸トリノルマルブチルが好ましく、なかでもほう酸トリメチルがより好ましい。
【0162】
硬化時の揮発性を抑制できるという点からは、ほう酸ノルマルトリオクタデシル、ほう酸トリノルマルオクチル、ほう酸トリフェニル、トリメチレンボレート、トリス(トリメチルシリル)ボレート、ほう酸トリノルマルブチル、ほう酸トリ−sec−ブチル、ほう酸トリ−tert−ブチル、ほう酸トリイソプロピル、ほう酸トリノルマルプロピル、ほう酸トリアリル、ほう素メトキシエトキサイドが好ましく、なかでもほう酸ノルマルトリオクタデシル、ほう酸トリ−tert−ブチル、ほう酸トリフェニル、ほう酸トリノルマルブチルがより好ましい。
【0163】
揮発性の抑制、および作業性がよいという点からは、ほう酸トリノルマルブチル、ほう酸トリイソプロピル、ほう酸トリノルマルプロピルが好ましく、なかでもほう酸トリノルマルブチルがより好ましい。
【0164】
高温下での着色性が低いという点からは、ほう酸トリメチル、ほう酸トリエチルが好ましく、なかでもほう酸トリメチルがより好ましい。
【0165】
シラノール縮合触媒を用いる場合の使用量は種々設定できるが、カップリング剤あるいは/およびエポキシ化合物エポキシ化合物100重量部に対しての好ましい添加量の下限は0.1重量部、より好ましくは1重量部であり、好ましい添加量の上限は50重量部、より好ましくは30重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化物物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0166】
また、これらのシラノール縮合触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0167】
また、本発明においては接着性改良効果をさらに高めるために、さらにシラノール源化合物を用いることができ、接着性の向上および/あるいは安定化が可能である。このようなシラノール源としては、例えばトリフェニルシラノール、ジフェニルジヒドロキシシラン等のシラノール化合物、ジフェニルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン類等を挙げることができる。
【0168】
シラノール源化合物を用いる場合の使用量は種々設定できるが、カップリング剤あるいは/およびエポキシ化合物エポキシ化合物100重量部に対しての好ましい添加量の下限は0.1重量部、より好ましくは1重量部であり、好ましい添加量の上限は50重量部、より好ましくは30重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化物物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0169】
また、これらのシラノール源化合物は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0170】
本発明においてはカップリング剤やエポキシ化合物の効果を高めるために、カルボン酸類あるいは/および酸無水物類を用いることができ、接着性の向上および/あるいは安定化が可能である。このようなカルボン酸類、酸無水物類としては特に限定されないが、
【0171】
【化33】

【0172】
2−エチルヘキサン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、メチルシクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルハイミック酸、ノルボルネンジカルボン酸、水素化メチルナジック酸、マレイン酸、アセチレンジカルボン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、桂皮酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、およびそれらの単独あるいは複合酸無水物が挙げられる。
【0173】
これらのカルボン酸類あるいは/および酸無水物類のうち、ヒドロシリル化反応性を有し硬化物からの染み出しの可能性が少なく得られる硬化物の物性を損ない難いという点においては、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有するものが好ましい。好ましいカルボン酸類あるいは/および酸無水物類としては、例えば、
【0174】
【化34】

【0175】
テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸およびそれらの単独あるいは複合酸無水物等が挙げられる。
【0176】
カルボン酸類あるいは/および酸無水物類を用いる場合の使用量は種々設定できるが、カップリング剤あるいは/およびエポキシ化合物エポキシ化合物100重量部に対しての好ましい添加量の下限は0.1重量部、より好ましくは1重量部であり、好ましい添加量の上限は50重量部、より好ましくは10重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化物物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0177】
また、これらのカルボン酸類あるいは/および酸無水物類は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0178】
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、上記のシラン化合物を使用することができる。シラン化合物は、リードとの密着性向上に寄与し、パッケージとリードの界面からの水分の浸入の防止に効果的である。これを例示すると、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン等が挙げられ、中でも特にジメチルジメトキシシランが好ましい。
【0179】
(熱硬化性樹脂の硬化物)
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、特性を改質する等の目的で、他の熱硬化樹脂の硬化物を粉砕して粒子状態で混合してもよい。熱硬化性樹脂を分散させて用いる場合は、平均粒子径は種々設定できるが、好ましい平均粒子径の下限は10nmであり、好ましい平均粒子径の上限は10μmである。粒子系の分布はあってもよく、単一分散であっても複数のピーク粒径を持っていてもよいが、硬化性組成物の粘度が低く成形性が良好となりやすいという観点からは粒子径の変動係数が10%以下であることが好ましい。
【0180】
(熱可塑性樹脂)
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、特性を改質する等の目的で、種々の熱可塑性樹脂を添加することも可能である。熱可塑性樹脂としては種々のものを用いることができるが、例えば、メチルメタクリレートの単独重合体あるいはメチルメタクリレートと他モノマーとのランダム、ブロック、あるいはグラフト重合体等のポリメチルメタクリレート系樹脂(例えば日立化成社製オプトレッツ等)、ブチルアクリレートの単独重合体あるいはブチルアクリレートと他モノマーとのランダム、ブロック、あるいはグラフト重合体等のポリブチルアクリレート系樹脂等に代表されるアクリル系樹脂、ビスフェノールA、3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール等をモノマー構造として含有するポリカーボネート樹脂等のポリカーボネート系樹脂(例えば帝人社製APEC等)、ノルボルネン誘導体、ビニルモノマー等を単独あるいは共重合した樹脂、ノルボルネン誘導体を開環メタセシス重合させた樹脂、あるいはその水素添加物等のシクロオレフィン系樹脂(例えば、三井化学社製APEL、日本ゼオン社製ZEONOR、ZEONEX、JSR社製ARTON等)、エチレンとマレイミドの共重合体等のオレフィン−マレイミド系樹脂(例えば東ソー社製TI−PAS等)、ビスフェノールA、ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン等のビスフェノール類やジエチレングリコール等のジオール類とテレフタル酸、イソフタル酸、等のフタル酸類や脂肪族ジカルボン酸類を重縮合させたポリエステル等のポリエステル系樹脂(例えば鐘紡社製O−PET等)、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の他、天然ゴム、EPDMといったゴム状樹脂が例示されるがこれに限定されるものではない。
【0181】
熱可塑性樹脂としては、分子中にSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合あるいは/およびSiH基を有していてもよい。得られる硬化物がより強靭となりやすいという点においては、分子中にSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合あるいは/およびSiH基を平均して1分子中に1個以上有していることが好ましい。
【0182】
熱可塑性樹脂としてはその他の架橋性基を有していてもよい。この場合の架橋性基としては、エポキシ基、アミノ基、ラジカル重合性不飽和基、カルボキシル基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、アルコキシシリル基等が挙げられる。得られる硬化物の耐熱性が高くなりやすいという点においては、架橋性基を平均して1分子中に1個以上有していることが好ましい。
【0183】
熱可塑製樹脂の分子量としては、特に限定はないが、(A)成分や(B)成分との相溶性が良好となりやすいという点においては、数平均分子量が10000以下であることが好ましく、5000以下であることがより好ましい。逆に、得られる硬化物が強靭となりやすいという点においては、数平均分子量が10000以上であることが好ましく、100000以上であることがより好ましい。分子量分布についても特に限定はないが、混合物の粘度が低くなり成形性が良好となりやすいという点においては、分子量分布が3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1.5以下であることがさらに好ましい。
【0184】
熱可塑性樹脂の配合量としては特に限定はないが、好ましい使用量の下限は硬化性組成物全体の5重量%、より好ましくは10重量%であり、好ましい使用量の上限は硬化性組成物中の50重量%、より好ましくは30重量%である。添加量が少ないと得られる硬化物が脆くなりやすいし、多いと耐熱性(高温での弾性率)が低くなりやすい。
【0185】
熱可塑性樹脂としては単一のものを用いてもよいし、複数のものを組み合わせて用いてもよい。
【0186】
熱可塑性樹脂は(A)成分あるいは/および(B)成分に溶かして均一な状態として混合してもよいし、粉砕して粒子状態で混合してもよいし、溶媒に溶かして混合する等して分散状態としてもよい。(A)成分あるいは/および(B)成分に溶かして均一な状態として混合することが好ましい。この場合も、熱可塑性樹脂を(A)成分あるいは/および(B)成分に直接溶解させてもよいし、溶媒等を用いて均一に混合してもよいし、その後溶媒を除いて均一な分散状態あるいは/および混合状態としてもよい。
【0187】
熱可塑性樹脂を分散させて用いる場合は、平均粒子径は種々設定できるが、好ましい平均粒子径の下限は10nmであり、好ましい平均粒子径の上限は10μmである。粒子系の分布はあってもよく、単一分散であっても複数のピーク粒径を持っていてもよいが、硬化性組成物の粘度が低く成形性が良好となりやすいという観点からは粒子径の変動係数が10%以下であることが好ましい。
【0188】
(老化防止剤)
本発明の熱硬化性樹脂組成物には老化防止剤を添加してもよい。老化防止剤としては、ヒンダートフェノール系等一般に用いられている老化防止剤の他、クエン酸やリン酸、硫黄系老化防止剤等が挙げられる。
【0189】
ヒンダートフェノール系老化防止剤としては、チバスペシャリティーケミカルズ社から入手できるイルガノックス1010をはじめとして、各種のものが用いられる。
【0190】
硫黄系老化防止剤としては、メルカプタン類、メルカプタンの塩類、スルフィドカルボン酸エステル類や、ヒンダードフェノール系スルフィド類を含むスルフィド類、ポリスルフィド類、ジチオカルボン酸塩類、チオウレア類、チオホスフェイト類、スルホニウム化合物、チオアルデヒド類、チオケトン類、メルカプタール類、メルカプトール類、モノチオ酸類、ポリチオ酸類、チオアミド類、スルホキシド類等が挙げられる。
【0191】
また、これらの老化防止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0192】
(ラジカル禁止剤)
本発明の熱硬化性樹脂組成物にはラジカル禁止剤を添加してもよい。ラジカル禁止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−3−メチルフェノール(BHT)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、テトラキス(メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン等のフェノール系ラジカル禁止剤や、フェニル−β−ナフチルアミン、α−ナフチルアミン、N,N’−第二ブチル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン等のアミン系ラジカル禁止剤等が挙げられる。
【0193】
また、これらのラジカル禁止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0194】
(紫外線吸収剤)
本発明の熱硬化性樹脂組成物には紫外線吸収剤を添加してもよい。紫外線吸収剤としては、例えば2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)セバケート等が挙げられる。
【0195】
また、これらの紫外線吸収剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0196】
(溶剤)
本発明の熱硬化性樹脂組成物には必要に応じて溶剤を用いてもよい。使用できる溶剤は特に限定されるものではなく、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1, 4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、1, 2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒を好適に用いることができる。
【0197】
溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、クロロホルムが好ましい。
【0198】
使用する溶媒量は適宜設定できるが、用いる熱硬化性組成物1gに対しての好ましい使用量の下限は0.1mLであり、好ましい使用量の上限は10mLである。使用量が少ないと、低粘度化等の効果が得られにくく、また、使用量が多いと材料に溶剤が残留して熱クラック等の問題となり易く、またコスト的にも不利になり工業的利用価値が低下する。
【0199】
これらの溶媒は単独で使用してもよく、2種類以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0200】
(発光ダイオードのための添加剤)
さらに、本発明の熱硬化性樹脂組成物には必要に応じて、種々の発光ダイオード特性改善のための添加剤を添加してもよい。添加剤としては例えば、発光素子からの光を吸収してより長波長の蛍光を出す、セリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体等の蛍光体や、特定の波長を吸収するブルーイング剤等の着色剤、光を拡散させるための酸化チタン、酸化アルミニウム、メラミン樹脂、CTUグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等のような拡散材、アルミノシリケート等の金属酸化物、窒化アルミニウム、窒化ボロン等の金属窒化物等の熱伝導性充填材等を挙げることができる。
【0201】
発光ダイオード特性改善のための添加剤は均一に含有させても良いし、含有量に傾斜を付けて含有させてもよい。
【0202】
(離型剤)
本発明の熱硬化性樹脂組成物には成形時の離型性を改良するために種々の離型剤を添加してもよい。
【0203】
離型剤としては、従来使用されている各種のものが用いられる。例えば、金属石鹸、ワックス類等が挙げられる。ここでいう金属石鹸とは、一般に長鎖脂肪酸と金属イオンが結合したものであり、脂肪酸に基づく無極性あるいは低極性の部分と、金属との結合部分に基づく極性の部分を一分子中に合わせて持っていれば使用できる。長鎖脂肪酸としては、例えば炭素数1〜18の飽和脂肪酸、炭素数3〜18の不飽和脂肪酸、脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。これらの中では、入手性が容易であり工業的実現性が高いという点からは炭素数1〜18の飽和脂肪酸が好ましく、さらに、離型性の効果が高いという点からは炭素数6〜18の飽和脂肪酸がより好ましい。金属イオンとしては、アルカリ金属、アルカリ土類金属の他に亜鉛、コバルト、アルミニウム、ストロンチウム等が挙げられる。金属石鹸をより具体的に例示すれば、ステアリン酸リチウム、12−ヒドロキシステアリン酸リチウム、ラウリン酸リチウム、オレイン酸リチウム、2−エチルヘキサン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、12−ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、2−エチルヘキサン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、12−ヒドロキシステアリン酸カリウム、ラウリン酸カリウム、オレイン酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム、ステアリン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、ラウリン酸マグネシウム、オレイン酸マグネシウム、2−エチルヘキサン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、オレイン酸カルシウム、2−エチルヘキサン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、12−ヒドロキシステアリン酸バリウム、ラウリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、12−ヒドロキシステアリン酸鉛、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸アルミニウム、オレイン酸マンガン、リシノール酸バリウム、などが例示される。これらの金属石鹸の中では、入手性が容易であり、安全性が高く工業的実現性が高いという点からステアリン酸金属塩類が好ましく、特に経済性の点から、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛からなる群から選択される1つ以上のものが最も好ましい。
【0204】
この金属石鹸の添加量としては特に制限はないが、好ましい量の下限は熱硬化性樹脂組成物タブレット全体100重量部に対して0.025、より好ましくは0.05重量部であり、好ましい量の上限は組成物全体100重量部に対して5重量部、より好ましくは4重量部である。添加量多すぎる場合は硬化物の物性の低下をきたし、少なすぎると金型離型性が得られないことがある。
【0205】
ワックス類としては、天然ワックス、合成ワックス、酸化または非酸化のポリオレフィン、ポリエチレンワックス等が例示できる。
【0206】
尚、離型剤を添加しなくても十分な離型性が得られる場合には離型剤は用いない方がよい。
【0207】
(その他添加剤)
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、その他、着色剤、難燃剤、難燃助剤、界面活性剤、消泡剤、乳化剤、レベリング剤、はじき防止剤、アンチモン−ビスマス等のイオントラップ剤、チクソ性付与剤、粘着性付与剤、保存安定改良剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、反応性希釈剤、酸化防止剤、熱安定化剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、金属不活性化剤、熱伝導性付与剤、物性調整剤等を本発明の目的および効果を損なわない範囲において添加することができる。
【0208】
(Bステージ化)
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、各成分および添加剤等の配合物をそのまま用いてもよいし、加熱等により部分的に反応(Bステージ化)させてから使用してもよい。Bステージ化することにより粘度調整が可能であり、トランスファー成形性を調整することもできる。また、硬化収縮をより抑制する効果もある。
【0209】
(熱硬化性樹脂組成物の性状)
本発明の熱硬化性樹脂組成物としては上記したように各種組み合わせのものが使用できるが、トランスファー成形などによる成形性が良好であるという点においては、組成物としては150℃以下の温度で流動性を有するものが好ましい。
【0210】
本発明の熱硬化性樹脂組成物の硬化性については、任意に設定できるが、成形サイクルが短くできるという点においては120℃における硬化時間が120秒以内であることが好ましく、60秒以内であることがより好ましい。また、150℃における硬化時間が100秒以内であることが好ましく、60秒以内であることがさらに好ましく、30秒以内であることがより好ましい。また、100℃における硬化時間が180秒以内であることが好ましく、120秒以内であることがより好ましい。
【0211】
この場合の硬化時間は、以下のようにして調べられる。設定温度に調整したホットプレート上に厚み50μmのアルミ箔を置き、その上に熱硬化性樹脂組成物100mgを置いてゲル化するまでの時間を測定して硬化時間とする。
【0212】
熱硬化性樹脂組成物が使用される工程において、熱硬化性樹脂組成物中へのボイドの発生および熱硬化性樹脂組成物からのアウトガスによる工程上の問題が生じ難いという観点においては、硬化中の重量減少が5重量%以下であることが好ましく、3重量%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。
【0213】
硬化中の重量減少は以下のように調べられる。熱重量分析装置を用いて熱硬化性樹脂組成物10mgを室温から150℃まで10℃/分の昇温速度で昇温して、減少した重量の初期重量の割合として求めることができる。
【0214】
また、電子材料等として用いた場合にシリコーン汚染の問題を起こし難いという点においては、この場合の揮発成分中のSi原子の含有量が1%以下であることが好ましい。
【0215】
(硬化物の性状)
本発明の熱硬化性樹脂組成物を成形硬化すれば白色の成形体得ることができるが、硬化して得た白色成形体としては、表面の波長470nmの光線反射率が90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、97%以上であることがさらに好ましく、99%以上であることが特に好ましい。表面の光線反射率は以下のように測定することができる。PETフィルムを離型フィルムとして用い、所定の温度条件でプレス成形にてボイドのない0.5mm厚の成形体を作成する。得られた成形体に必要に応じて所定の後硬化を実施する。得られた成形体について積分球を設置した分光光度計を用いて470nmの全反射を測定することにより求めることができる。
【0216】
耐熱性が良好であるという観点からは、組成物を硬化させて得られる硬化物のTgが100℃以上となるものが好ましく、150℃以上となるものがより好ましい。
この場合、Tgは以下のようにして調べられる。3mmx5mmx30mmの角柱状試験片を用いて引張りモード、測定周波数10Hz、歪0.1%、静/動力比1.5、昇温側度5℃/分の条件にて測定した動的粘弾性測定(アイティー計測制御社製DVA−200使用)のtanδのピーク温度をTgとする。
【0217】
また、リードフレーム等にイオンマイグレーション等の問題が生じ難く信頼性が高くなるという点においては、硬化物からの抽出イオン含有量が10ppm未満であることが好ましく、5ppm未満であることがより好ましく、1ppm未満であることがさらに好ましい。
【0218】
この場合、抽出イオン含有量は以下のようにして調べられる。裁断した硬化物1gを超純水50mlとともにテフロン(登録商標)製容器に入れて密閉し、121℃、2気圧、20時間の条件で処理する。得られた抽出液をICP質量分析法(横河アナリティカルシステムズ社製HP−4500使用)によって分析し、得られたNaおよびKの含有量の値を、用いた硬化物中の濃度に換算して求める。一方同じ抽出液をイオンクロマト法(ダイオネクス社製DX−500使用、カラム:AS12−SC)によって分析し、得られたClおよびBrの含有量の値を、用いた硬化物中の濃度に換算して求める。以上のように得られたNa、K、Cl、Brの硬化物中の含有量を合計して抽出イオン含有量とする。
【0219】
硬化物の線膨張係数としては、特に制約はないが、リードフレーム等の金属やセラミック等との接着性が良好になりやすいという点においては、線膨張係数は100℃において50ppm以下であることが好ましく、30ppm以下であることがより好ましい。また、封止樹脂等の有機材料との接着性が良好になりやすいという点においては、線膨張係数は100℃において70ppm以上であることが好ましく、100ppm以上であることがより好ましい。また、硬化時、硬化後、熱試験時にパッケージと封止剤との間に応力が発生しにくく信頼性が高くなりやすいという点においては、封止剤と近い線膨張係数および線膨張係数の温度依存性を有することが好ましい。
【0220】
(発光ダイオードのパッケージ)
本発明で言う発光ダイオードのパッケージとは、発光ダイオード素子から出た光が照射されるように設計されたものであり、さらに好ましくは発光ダイオード素子から出た光を反射させて外部に取出すように設計されたものである。その形状等には特に制約はない。例えば、発光ダイオード素子を搭載するための凹部を有する形状のものでもよいし、単に平板状のものであってもよい。本発明の発光ダイオードのパッケージの表面は平滑であってもよいし、エンボス等のような平滑でない表面を有していてもよい。
【0221】
形状についても特定されないが、半導体のパッケージが実質的に金属の片面に樹脂が成形されている形状を有する場合(MAPタイプ)において特に本発明の効果が得られやすい。
【0222】
(発光ダイオードのパッケージの成形方法)
本発明で言う半導体パッケージの成形方法としては各種の方法が用いられる。例えば、射出成形、トランスファー成形、RIM成形、キャスティング成形、プレス成形等、熱可塑性樹脂やエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂に一般に用いられる各種成形方法が用いられる。これらの内、成形サイクルが短く成形性が良好であるという点においてはトランスファー成形が好ましい。成形条件も任意に設定可能であり、例えば成形温度についても任意であるが、硬化が速く成形サイクルが短く成形性が良好になりやすいという点においては100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは150℃以上の温度が好ましい。上記のような各種方法によって成形した後、必要に応じて後硬化(アフターキュア)することも任意である。後硬化することで耐熱性が高くなり易い。
【0223】
(発光ダイオード素子)
本発明で言う発光ダイオードの各種の発光ダイオード素子としても、特に限定なく従来公知の発光ダイオードに用いられる発光ダイオード素子を用いることができる。
【0224】
発光ダイオード素子のサイズ、個数についても特に限定なく用いることができる。
【0225】
発光ダイオード素子の発光出力としては特に限定なく任意のものを用いることができるが、20mAにおいて1mW以上の発光素子を用いた場合に本発明の効果が顕著であり、20mAにおいて4mW以上の発光素子を用いた場合により本発明の効果が顕著であり、20mAにおいて5mW以上の発光素子を用いた場合にさらに本発明の効果が顕著である。
【0226】
発光ダイオード素子の発光波長は紫外域から赤外域まで種々のものを用いることができるが、主発光ピーク波長が550nm以下のものを用いた場合に特に本発明の効果が顕著である。
【0227】
用いる発光ダイオード素子は一種類で単色発光させても良いし、複数用いて単色或いは多色発光させても良い。
【0228】
(リード)
本発明の発光ダイオードに用いられるリード端子としては、ボンディングワイヤー等の電気接続部材との密着性、電気伝導性等が良好なものが好ましく、リード端子の電気抵抗としては、300μΩ-cm以下が好ましく、より好ましくは3μΩ-cm以下である。これらのリード端子材料としては、例えば、鉄、銅、鉄入り銅、錫入り銅や、これらに金、銀、ニッケル、パラジウム等をメッキしたもの等が挙げられる。これらのリード端子は良好な光の広がりを得るために適宜光沢度を調整してもよい。
【0229】
(封止剤)
本発明の発光ダイオードの封止剤としては各種のものを用いることができ、例えば従来用いられるエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ユリア樹脂、イミド樹脂等の封止樹脂を用いることができる。また、特開2002−80733、特開2002−88244で提案されているような、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個有する脂肪族系有機化合物、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する化合物、およびヒドロシリル化触媒を含有する硬化性組成物からなる封止剤を用いてもよく、この封止剤を用いる方が、パッケージ樹脂との接着性が高いという点、および透明性が高く本発明のパッケージの耐光性が高いという効果が顕著であるという点において、好ましい。
【0230】
一方、樹脂封止を用いず、ガラス等でカバーしてハーメチック封止により封止することも可能である。
【0231】
また発光ダイオードや受光素子の場合などにおいてはさらにレンズを適用することも可能であり、封止剤をレンズ形状に成形してレンズ機能を持たせることも可能である。
【0232】
(発光ダイオードの用途)
本発明の発光ダイオードは従来公知の各種の用途に用いることができる。具体的には、液晶表示装置等のバックライト、照明、センサー光源、車両用計器光源、信号灯、表示灯、表示装置、面状発光体の光源、ディスプレイ、装飾、各種ライト等を挙げることができる。
【実施例】
【0233】
以下に、本発明の実施例および比較例を示すが、本発明は以下によって限定されるものではない。
【0234】
(比較合成例1)
5Lの四つ口フラスコに、攪拌装置、滴下漏斗、冷却管をセットした。このフラスコにトルエン1800g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン1440gを入れ、120℃のオイルバス中で加熱、攪拌した。トリアリルイソシアヌレート200g、トルエン200g及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)1.44mlの混合液を50分かけて滴下した。得られた溶液をそのまま6時間加温、攪拌した後、未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン及びトルエンを減圧留去した。H−NMRの測定によりこのものは1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部がトリアリルイソシアヌレートと反応した以下の構造を有するものであることがわかった。
【0235】
【化35】

【0236】
(比較合成例2)
2Lオートクレーブにトルエン720g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン240gを入れ、気相部を窒素で置換した後、ジャケット温50℃で加熱、攪拌した。アリルグリシジルエーテル171g、トルエン171g及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.049gの混合液を90分かけて滴下した。滴下終了後にジャケット温を60℃に上げて40分反応、H−NMRでアリル基の反応率が95%以上であることを確認した。トリアリルイソシアヌレート17g、トルエン17gの混合液を滴下した後、ジャケット温を105℃に上げて、トリアリルイソシアヌレート66g、トルエン66g及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.033gの混合液を30分かけて滴下した。滴下終了から4時間後にH−NMRでアリル基の反応率が95%以上であることを確認し、冷却により反応を終了した。1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの未反応率は0.8%だった。未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンとトルエンとアリルグリシジルエーテルの副生物(アリルグリシジルエーテルのビニル基の内転移物(シス体およびトランス体))が合計5,000ppm以下となるまで減圧留去し、無色透明の液体を得た。H−NMRの測定によりこのものは1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部がアリルグリシジルエーテル及びトリアリルイソシアヌレートと反応したものであり平均的に以下の構造を有するものであることがわかった。
【0237】
【化36】

【0238】
(a+b=3、c+d=3、e+f=3、a+c+e=3.5、b+d+f=5.5)
【0239】
【表1】

【0240】
(実施例1〜3、比較例1〜2)
表1に、熱硬化性樹脂組成物の各成分の配合割合を記載した。使用した各原料は以下の通りである。
(A)成分:トリアリルイソシアヌレート:TAIC(デグッサ製)、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート:DAMGIC(四国化成(株)製)。
(B)成分:MeSiO(Si(H)Me)SiMe(n=40)で示されるポリメチルハイドロジェンシロキサン(B−1)(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)、比較合成例1で得られたSiH基を含有する化合物(B−2)、比較合成例2で得られたSiH基を含有する化合物(B−3)、
(C)成分:白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)(エムイーケムキャット社製)あるいは該溶液を重量で20倍に希釈したキシレン溶液。
(白色顔料)
(D)成分:酸化チタン(石原産業製タイペークPC−3、ルチル型、比重4.2、塩素法、表面有機:Al、Si、ポリメチルハイドロジェンシロキサン、平均粒径0.21μm、12μm以下の粒子の割合:100%)
(E)成分:球状シリカ(龍森製MSR−2212−TN、比重2.2、平均粒径24.8μm、12μm以下の粒子の割合:28%)、球状シリカ(龍森製MSR−3500、比重2.2、平均粒径36.5μm、12μm以下の粒子の割合:19%)。
その他の成分:CH=CHMeSiO(SiMeO)(SiPhO)SiMeCH=CHで示されるポリオルガノシロキサン(ジフェニルシロキサンのモル%=22〜25%、分子量12,500、ゲレスト社製商品名PDV−2331)、1−エチニル−1−シクロヘキサノール:ECH(アルドリッチ社製試薬)
【0241】
(熱硬化性樹脂組成物の配合)
(A)成分としてDAMGICを併用する場合には、TAICとあらかじめ混合後、加熱して溶解した。(C)成分のPt触媒は(A)成分に加え均一に混合した。別途(B)成分にECHを加え均一に混合した。上記2成分を混合しさらにPDV−2331を加え均一に混合し樹脂成分を調製した。(A)(B)成分は静置しておくと1夜間で完全にそう分離するが、混合攪拌して1時間程度は外観上濁ってはいるが均一な状態を保っている。フィラー成分である(D)および(E)成分を予めドライブレンドしておき、該フィラー混合物を、外観上均一な状態にある上記の樹脂混合成分に少量ずつ加えて混練した。得られた熱硬化性組成物は粘土状であったため、丸棒状の冶具にて押し延ばした後、折り重ねて再度押し延ばす作業を繰り返して均一化した。
【0242】
(硬化性)
150℃に加熱したホットプレート上に50μmのアルミ箔を置き、その上に熱硬化性樹脂組成物100mgを置いた場合に、一旦液状化した熱硬化性樹脂組成物が硬化して流動性を失う時間(スナップアップタイム:SUT)を測定した。
【0243】
硬化性は発光ダイオード用パッケージ、例えばリードフレーム付きリフレクター成形時の生産性に直接影響するパラメーターであり、短ければ短いほど生産性は高くなる。一方金型細部にまで充分にコンパウンドが充填された良好な成形品を得るためには、コンパウンドが流動するのに必要な時間は硬化せずに流動性保っている必要がある。相反するこれらの点を勘案すれば、スナップアップタイムで表される硬化性の好ましい範囲としては、200〜10秒、より好ましくは100〜10秒、さらに好ましくは80〜10秒、特に好ましくは60〜10秒である。
【0244】
(流動性)
島津製作所製高化式フローテスターを用いて測定した。ダイス形状:φ1mmxL10mm、150℃定温。シリンダー内に熱硬化性樹脂組成物約2.3gを投入後、プランジャーを装填した(組成物投入から約13秒)。装填後、約13秒後に荷重をかけ測定を開始した。プランジャー位置の経時変化から、粘度のせん断速度依存性を求めた。表1には各荷重をかけた時のせん断速度とそのときの粘度を記載した。
【0245】
流動性は例えば発光ダイオード用パッケージ作製時に使用する白色コンパウンドがスムーズに金型に流れて良好な成形品が得られるかどうかの尺度である。高化式フローテスターを用いた場合の粘度(Pa・s)は流動性の指標の一つであり、掛ける荷重(せん断速度)により大きく変化する。リードフレーム付きリフレクター成形時の場合、リフレクターの形状にもよるが、一般的にいえば、せん断速度が50〜35000s-1の範囲において、500〜10Pa・sの範囲であればよい。通常はせん断速度に対してチクソトロピー性を示す。粘度が所定の範囲より小さいと流動性が不十分で金型に充分できず成形品に欠陥が生じる。また粘度が小さすぎると金型の隙間に入り込んで大きなバリが生じる。
【0246】
(MAP(Mold Array Package)状リードフレーム付リフレクターの作製)
表1に示した実施例1〜3及び比較例1〜2の硬化性組成物を用いて下記の方法に従いMAP状リードフレーム付リフレクターを作製した。
【0247】
Agメッキした縦50mm、横55mm、厚み0.25mmのCu製のリードフレームを準備する。成形後のMAPは縦15列、横12列で合計180個のリフレクターが含まれる。各リフレクターは上面φ2.1mm、底面φ1.8mm(テーパー角度:15度)、高さ0.55mmで、横方向直径に沿って右端から0.45mmのところに幅0.20mmの本発明の硬化性組成物を硬化させた白色コンパウンドからなる電極スリットが縦に設けられている。各リフレクター間の間隔は縦横直径方向ともに1.1mmである。リードフレームおよび金型は、上記の要件を満足するリードフレーム付きリフレクターが作製できれば、特に制約はない。この成形品形状を3030MAP型とよぶ。
【0248】
トランスファー成形は、アピックヤマダ株式会社製G−Lineマニュアルプレスを用いた実施した。型締力30ton、注入圧力8MPa、注入速度3mm/s。白色コンパウンド5.0gを計量、円柱状に賦形しシリンダー内へ装填し成形した。成形条件は、170℃/10分(実施例)あるいは150℃/5分(比較例)。成形後180℃/1h(実施例)あるいは150/1h+180℃/30min(比較例)で後キュアした。
【0249】
(簡易強度試験)
先に作製したMAPのエッジ部の強度を次の方法にて測定した。先端部がテーパ形状で、先端を球状にした鋼鉄製の針状の突刺棒を平面上に置いたサンプルに、直角にゆっくりと下ろして、サンプルに突刺棒先端を押付ける。 押付けている最中のデータを採取しながら、亀裂が入ったり、破壊した時の押付け力を簡易突刺強度とする。
1; 針先端の形状 半径 0.5mm
2; 針先端の角度 30度
3; 針を押付ける速さ 0.05mm/sec
4; 読み取り数値 クラック入いるなど破壊が発生した時点
【0250】
(平板成形体の作製及び反射率の測定)
本発明の熱硬化性樹脂組成物を、0.1mm厚PETフィルムを離型フィルムとし、内寸法が80mmx50mmであり厚み0.5mmのステンレス鋼(SUS304)製の長方形型枠を用いて、実施例については170℃/10分の条件で、比較例については150℃/5分の条件でプレス成形した。作成した長方形板状のプレス成形体をオーブン中で150℃/1時間、180℃/0.5時間の条件で後硬化させた。得られた成形体について積分球を設置した分光光度計(日本分光(株)製、紫外可視分光光度計V−560)を用いて470nmの全反射を測定した。反射率は、ラブスフェア製スペクトラロン板を標準板として測定した。また、この成形体を180℃の熱風循環オーブンで20時間加熱処理した後、上記と同様にして470nmの全反射を測定した。
【0251】
表1に示される通り、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、安価でありながら成形加工性が良好であり、また得られた硬化物は光線反射率が高く、耐熱試験後の光線反射率も高いことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する鎖状および/又は分岐状ポリオルガノシロキサン、(C)ヒドロシリル化触媒、(D)白色顔料、(E)無機充填材、を必須成分として含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物であって、(D)成分と(E)成分の合計の含有量が70〜95重量%であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物からなる発光ダイオードのパッケージ用硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1あるいは2いずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を成形してなり、表面の波長470nmの光線反射率が90%以上である成形体。
【請求項4】
請求項1あるいは2に記載の熱硬化性樹脂組成物を用いてトランスファー成形したことを特徴とする発光ダイオード用のパッケージ。
【請求項5】
請求項4記載の発光ダイオード用のパッケージを用いて製造された発光ダイオード。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−102244(P2012−102244A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252151(P2010−252151)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】