説明

燃料タンク用弁装置

【課題】弁装置の上下方向の寸法を可能な限りコンパクトにできるようにしながら、初回の満タン検知をもたらす下部フロート体の動作を円滑ならしめる。
【解決手段】タンク外と通じる通気弁口10を上部にこれより下方に燃料の流入部11を備えると共に通気弁口10と流入部11との間に形成された隔壁12により上部室13と下部室14とに区分されたケース1と、上部室13内にあってケース1内に流入される燃料によって上昇して前記通気弁口10に着座される上部フロート体3と、上方に突き出すガイド軸50を隔壁12に形成させた挿通部165に上下動可能に挿通してケース1の下部室14内に支持されると共にケース1内に流入される燃料によって上昇して隔壁12に形成された下部室14と上部室13との主連通部161を閉鎖する下部フロート体5とを備えている。上部フロート体3には、下部フロート体5のガイド軸50の納まる収容孔33が備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車や二輪自動車などの燃料タンクに取り付けられて、開弁状態においてタンク内外を連通させるように機能される弁装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料タンク用の満タン検知手段を持った弁として、特許文献1に示されるものがある。この弁は、燃料タンク内に連通した第1弁室と、この第1弁室上に第1弁室と外部とにそれぞれ連通した第2弁室とを備えている。第1弁室には弁室側壁に形成されたガイド穴にガイド突部を入れ込ませるようにして第1フロートが上下動可能にガイドされている。この弁では、かかるガイド手法により第1フロートは上下方向に比較的寸法が小さくできるようになっており、弁全体の上下寸法のコンパクト化が図られている。
【0003】
しかるに、この弁は、燃料液位が第1弁室内に燃料を入り込ませる高さとなったときに第1フロートを上昇させて第2弁室との主たる接続通路を閉じ、これによるタンク内の圧力の上昇によってフィーラーパイプ内の燃料液位を上昇させて給油ガンのセンサに初回の満タンを検知させるものであるが、第1フロートは前記の手法でガイドされているため、次の2点の課題を有するものであった。
(1)第1フロートの側面と第1弁室の弁室側壁との間のクリアランスが大きくできないため、第1フロートの下降時に車両の走行により両者が接し合って異音を生じさせ易い。
(2)第1フロートに傾きが生じた場合、第1フロートが第1弁室の弁室側壁にかじりつき、可動しなくなるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−266096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、この種の燃料タンク用弁装置において、その上下方向の寸法を可能な限りコンパクトにできるようにしながら、初回の満タン検知をもたらす下側のフロート弁体、すなわち、下部フロート体の動作を円滑ならしめる点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、燃料タンク用弁装置を、燃料タンクに取り付け用いられる弁装置であって、
タンク外と通じる通気弁口を上部に備え、これより下方に燃料の流入部を備えると共に、この通気弁口と流入部との間に形成された隔壁により上部室と下部室とに区分されたケースと、
ケースの上部室内にあってケース内に流入される燃料によって上昇して前記通気弁口に着座される上部フロート体と、
上方に突き出すガイド軸を有し、このガイド軸を前記隔壁に形成させた挿通部に上下動可能に挿通してケースの下部室内に支持されると共に、ケース内に流入される燃料によって上昇して前記隔壁に形成された下部室と上部室との主連通部を閉鎖する下部フロート体とを備えており、
前記上部フロート体には、下部フロート体のガイド軸の納まる収容孔が備えられているものとした。
【0007】
給油により燃料液位がケースの流入部に達すると、タンク内の圧力とケース内の圧力との圧力差により燃料は下部室内に入り込み、下部フロート体は上昇され、これにより前記主連通部が閉鎖され、タンク内の圧力上昇によりフィーラーパイプの内の燃料液位を上昇させて給油ガンのセンサに初回の満タンを検知させる。初回の満タンの検知により給油を停止すると、下部フロート体は主連通部を閉鎖するに留まることから、通気弁口を通じた通気によりタンク内の内圧は低下し、追加給油が可能になる。これによりタンク内の圧力上昇によりフィーラーパイプの内の燃料液位を再び上昇させて給油ガンのセンサに最終的な満タンを検知させる。燃料液位が低下すると、先ず上部室内から燃料が流出して上部フロート体が下降して通気弁口が開弁され、次いで、さらに燃料液位が低下すると下部フロート体が下降して主連通部が開放される。下部フロート体は、隔壁に設けた挿通部にガイド軸を通して支持されるようになっているので、下部フロート体の側面と下部室の内側面との間には隙間を作って両者の接触を防ぐことができる。また、上部フロート体にはガイド軸の納まる収容孔が設けられているので、上部フロート体と下部フロート体とを含んで構成される弁装置の上下方向の寸法をできるだけ小さくすることができる。上部フロート体が上昇せず、つまり、下降位置にあり、且つ下部フロート体が上昇しているときに、下部フロート体のガイド軸が上部フロート体の収容孔に納まるようにしておくことが好まし態様の一つである。
【0008】
前記隔壁に設けられた前記挿通部が、少なくともその上端側と下端側とにそれぞれ、ガイド軸に対する摺接部を備えるようにしておけば、下部フロート体の上下動は上下少なくとも二点での支持により傾きを生じさせることなく円滑になされる。
【0009】
また、ガイド軸は上端に頭部を備えさせると共に、前記挿通部の上端に弾性変形によりガイド軸の頭部の下方からの通過を許容する係合部を形成させておけば、隔壁に下部フロート体を容易且つ適切に組み合わせこの隔壁に吊り下げ状に支持させることができる。
【0010】
また、前記挿通部の係合部の少なくとも一部を、上方に突き出す基部片の上端から横向きに突き出して突き出し端を頭部に係合させる腕片から構成させておけば、上昇位置にある下部フロート体が下降したときにこの腕片に上方から当接される頭部の衝撃をこの腕片の弾性変形により吸収してこの場合の衝突音の発生を防止することができる。また、下部フロート体の上部における少なくとも上昇時に隔壁に当接される箇所を弾性材により覆わせておけば、下降位置にある下部フロート体が上昇したときの隔壁への下部フロート体の当接の衝撃を前記弾性材としての弾性シール材により吸収してこの場合の衝突音の発生も防止することができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、上下二つのフロート弁体として機能されるフロート体を備えた弁装置の上下方向の寸法を可能な限りコンパクトにできるようにしながら、初回の満タン検知をもたらす下部フロート体の動作を円滑なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は弁装置の斜視図である。
【図2】図2は弁装置を断面にして表しており、具体的には、この弁装置の下端に設けられた流入部のレベルにタンク内の燃料液位が達していない状態を示している。
【図3】図3弁装置を断面にして表しており、具体的には、この弁装置の下端に設けられた流入部となる内筒部の筒下端のレベルにタンク内の燃料液位が達した状態を示している。
【図4】図4は弁装置を断面にして表しており、具体的には、図3の状態から給油がさらになされて弁装置を構成するケース内に燃料が流入して上部フロート体が上昇して通気弁口を閉鎖させた状態(着座状態)を示している。
【図5】図5はケースを構成するロアボディを一部を破断して示した斜視図であり、下部フロート体は下降位置にある。
【図6】図6はケースを構成するロアボディを一部を破断して示した斜視図であり、下部フロート体は上昇位置にある。
【図7】図7はケースを構成するロアボディを上方から見て示している。
【図8】図8はロアボディ及び下部フロート体の構成の一部の変更例を示した斜視図である。
【図9】図9は図8の変更例の一部破断斜視図であり、下部フロート体は下降位置にある。
【図10】図10は図8の変更例の一部破断斜視図であり、下部フロート体は上昇位置にある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1〜図10に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について説明する。この実施の形態にかかる燃料タンク用弁装置は、自動車や二輪自動車などの燃料タンクTに取り付けられて、開弁状態においてタンク内外を連通させるように機能されるものである。
【0014】
かかる弁装置は、典型的には、燃料タンクTの上部に取り付けられて、燃料タンクTに対する接続通路(通気路E)の一部を構成する。それと共にこの実施の形態にかかる弁装置は、燃料タンクT内への燃料Fの注入による燃料液位の上昇を利用してタンク内外の前記連通を遮断しこれによるタンク内の圧力の上昇によってフィーラーパイプ内の燃料液位を上昇させて給油ガンのセンサに満タンを検知させるように機能する。
【0015】
より具体的には、この実施の形態にかかる弁装置は、第一に、燃料タンクT内の燃料液位が所定の第一液位faに達したときに後述する下部フロート体5を上昇させて前記通気路Eをいわば絞り、これによる燃料タンクT内の圧力の上昇によって図示しないフィーラーパイプ内の燃料液位を上昇させて給油ガンのセンサに初回の満タンを検知させる。次いで第二に、この初回の満タンの検知により給油が停止された後は絞られた通気路Eを通じた通気により燃料タンクT内の圧力を低下させてフィーラーパイプ内の燃料液位を下降させて追加給油を許容させる。そして第三に、この追加給油により燃料タンクT内の燃料液位が第一液位faより高い所定の第二液位fbに達したときに後述する上部フロート体3を上昇させて前記通気路Eを閉鎖して、これによる燃料タンクT内の圧力の上昇によってフィーラーパイプ内の燃料液位を上昇させて給油ガンのセンサに最終的な満タンを検知させる。
【0016】
かかる弁装置は、ケース1と、上部フロート体3と、下部フロート体5とを備えている。
【0017】
ケース1は、タンク外と通じる通気弁口10を上部に備え、これより下方に燃料の流入部11を備えると共に、この通気弁口10と流入部11との間に形成された隔壁12により上部室13と下部室14とに区分されてなる。
【0018】
図示の例では、かかるケース1は、アッパーボディ15とロアボディ16とから構成されている。アッパーボディ15は、円筒状をなすように構成されている。アッパーボディ15の筒上端は、中央に円形の通気弁口10を備えた天板部15aによって閉塞されている。天板部15aの上面には、通気弁口10に筒内空間を連通させてこの天板部15aから上方に突き出す短寸筒状部15bが天板部15aと一体に形成されている。この短寸筒状部15bの外側にはシールリング15cが嵌め付けられている。アッパーボディ15の筒下端は開放されている。
【0019】
一方、ロアボディ16は、筒上下端を共に開放させた円筒状をなすように構成されている。ロアボディ16の筒上下端間には、このロアボディ16内の空間を上下に区分する仕切り壁160が形成されている。仕切り壁160の中央部には、円形の貫通穴161aが形成されており、この貫通穴161aが後述の主連通部161となっている。また、この貫通穴161aを挟んだ両側位置には、この貫通穴161aより小さい後述の副連通部162となる貫通孔162aが形成されている。
【0020】
また、仕切り壁160の貫通穴121aの直上には、貫通穴161aの穴径と略等しい外径を備えた円板状体163が平面視の状態においてその外縁を貫通穴161aの穴縁に重ねるようにして、かつ、円板状体163の下面と仕切り壁160の上面との間に上下方向に隙間を開けるようにして、配されている。図示の例では、円板状体163と仕切り壁160との間に亘る架橋片164を円板状体163の中心を巡る方向において間隔を開けて四箇所に設け、この四箇所の架橋片164により前記のように仕切り壁160上に円板状体163を支持するようになっている。図示の例では、かかる仕切り壁160と円板状体163とによって前記隔壁12を構成するようにしている。
【0021】
また、円板状体163の中央には、後述する挿通部165が形成されている。挿通部165は円板状体163の中央に貫通状態に設けられた挿通穴165aと、この挿通穴165aに筒下端を連通させるように円板状体163の上面から上方に突き出す筒状支持部165bとから構成されている。筒状支持部165bはその筒上端から筒下端との間に亘る割溝を筒軸を巡る向きにおいて間隔を開けて四箇所に設けることで四つに分割されており、また、各分割箇所は弾性片165cとして機能するようになっている。
【0022】
また、円板状体163の上面には、筒状支持部165bを囲う仮想の円の円弧上に隣り合う突起166との間に略等しい間隔を開けて複数の突起166、166…が形成されており、後述する圧縮コイルバネ4のバネ下端の内側にこの突起166、166…列を納めるようにしてこのバネ下端が円板状体163に組み合わされるようになっている。
【0023】
また、ロアボディ16の仕切り壁160の下方には、内筒部167が配されている。この内筒部167は筒上端の内側に主連通部161を位置させるようにしてこの筒上端を仕切り壁160の下面に一体に連接させている。また、内筒部167の筒下端はロアボディ16の筒下端と同じレベルに位置されるようになっている。
【0024】
また、ロアボディ16の筒下端側であって、副連通部162の直下となる位置では、このロアボディ16の外殻の一部を割り欠く割り欠き部168が形成されている。この割り欠き部168はロアボディ16の筒下端において開放され、割り欠き部168の上端は内筒部167の筒下端より上方で且つ隔壁12よりも下方に位置されている。
【0025】
図示の例では、かかるロアボディ16における仕切り壁160より上の箇所の内側にアッパーボディ15が筒下端側からはめ込まれてケース1が構成されるようになっている。このように構成されるケース1は、ロアボディ16の筒下端及び割り欠き部168を前記流入部11として機能させる。
【0026】
また、図示の例では、かかるケース1はフランジ2に組み合わされ、このフランジ2によって燃料タンクTに取り付けられるようになっている。フランジ2は、頭部20と、頭部20から下方に突き出される筒状接続部21とを有している。頭部20には側方に突き出す接続管部22が一体に備えられており、この接続管部22は頭部20の中央において筒状接続部21内の空間と連通されている。この連通部はフランジ2の内側において周回立ち上がり部23に囲繞されている。図示の例では、アッパーボディ15の短寸筒状部15bをフランジ2の周回立ち上がり部23内に入れ込ませるようにしてフランジ2の筒状接続部21の内側にアッパーケース1の上部をはめ込むことで、フランジ2とケース1とを一体化させている。アッパーボディ15の短寸筒状部15bとフランジ2の周回立ち上がり部23との間は前記シールリング15cによって気密状態にシールされる。これにより、タンク内外は、ケース1の流入部11と通気弁口10と接続管部22とを介して連通されるようになっている。ケース1は、かかるフランジ2の頭部20を入り込ませない大きさの燃料タンクTに開設された取り付け穴Taに外側から入れ込まれてタンク内に配され、フランジ2の頭部20を燃料タンクTの外面部に溶着などして止着させることで燃料タンクTに備え付けられる。
【0027】
上部フロート体3は、前記ケース1の上部室13内にあってケース1内に流入される燃料によって上昇して前記通気弁口10に着座される。上部室13に燃料が流入されていない状態では上部フロート体3はロアボディ16の隔壁12を構成する円板状体163に支持される下降位置にあり、通気弁口10は開放されている。(図2、図3)
【0028】
図示の例では、かかる上部フロート体3は、天部と、筒状をなす側部とを備えてなるフロート主体30と、通気弁口10のシール部材31と、このシール部材31の支持部材32とを備えてなる。支持部材32は外周部に下方に突き出す係合爪32aを、中央部に貫通穴32bを有した概ね円板状をなすように構成されている。フロート主体30の天部の外周部にはかかる支持部材32の係合爪32aの引っかかる被係合部30aが形成されており、支持部材32はこの被掛合部30aに係合爪32aを係合させた状態でフロート主体30の天部上に配される。シール部材31は通気弁口10を塞ぐ外径を備えた円板状をなすと共に下部中央に支持部材32の貫通穴32bに対する嵌め込み突部31aを備えており、この嵌め込み突部31aをもって支持部材32に組み付けられて通気弁口10の直下に位置されるようになっている。
【0029】
かかる上部フロート体3には、下部フロート体5の後述するガイド軸50の納まる収容孔33が備えられている。この収容孔33は上部フロート体3のフロート主体30の下部の中央に形成された凹所30b内に形成されている。この凹所30bは円形の穴状をなす。この凹所30b内には、この凹所30bの上底から下方に突き出すボス状部30cが形成されている。ボス状部30cの下端は上部フロート体3の筒下端より上方に位置され、このボス状部30cの下端下の凹所30b内に上部フロート体3の下降時に前記筒状支持部165b及び突起166、166…列が納まるようになっている。(図2、図3)また、この凹所30b内にはボス状部30cを内側に納めるようにして圧縮コイルバネ4が圧縮状態で内蔵されている。このバネ4のバネ下端はロアボディ16の仕切り壁160に接し、バネ上端は凹所30bの上底に接しており、このバネ4により上部フロート体3には一定の上向きの力が作用されるようになっている。
【0030】
下部フロート体5は、上方に突き出すガイド軸50を有し、このガイド軸50を前記隔壁12に形成させた挿通部165にケース1の下部室14側から上下動可能に挿通してこの下部室14内に支持されると共に、ケース1内に流入される燃料によって上昇して前記隔壁12に形成された下部室14と上部室13との主連通部161を閉鎖する。
【0031】
図示の例では、かかる下部フロート体5は、ロアケース1の内筒部167内に上下動可能に納められたフロート主体51と、前記ガイド軸50とを有している。フロート主体51は短寸の筒状をなし、その筒軸を上下方向に沿わせるようにして前記内筒部167内に納められている。このフロート主体51の筒上端は閉塞され、筒下端は開放されている。下部フロート体5の外径は隔壁12を構成する仕切り壁160に設けられた主連通部161よりも大きくなっている。
【0032】
ガイド軸50は上端に頭部50aを有する。また、頭部50aと基部50bとの間の中間部50cの外径を前記挿通部165を構成する筒状支持部165bの筒上端の内径と略等しくすると共に、基部50bの外径を頭部50aと略等しく且つ中間部50cより太くし前記挿通部165を構成する挿通穴165aの穴径と略等しくさせている。そして、この実施の形態にあっては、下部フロート体5は、挿通穴165aを通じて筒状支持部165bに通されたガイド軸50の頭部50aをこの筒状支持部165bの筒上端に引っかけた状態で隔壁12に吊り下げ状に支持されるようになっている。この引っかかり状態において、下部フロート体5は最も下降した位置にあり、隔壁12とフロート主体の閉塞された筒上端とは離隔して主連通部161は開放されている。(図2)
【0033】
燃料液位がケース1の流入部11に達するまでは、流入部11、主連通部161及び副連通部162、通気弁口10を通じてタンク内外の通気が確保される。主連通部161を通じた通気は下部フロート体5のフロート主体51の側面と内筒部167の内側面との間を通じてなされ、副連通部162を通じた通気は前記割り欠き部168を通じてなされ、通気弁口10を通じた通気は上部フロート体3のフロート主体30の側部と上部室13の内側面との間を通じてなされる。(図2)給油により燃料液位がケース1の流入部11を構成する内筒部167の筒下端に達すると(第一液位fa)、タンク内の圧力とケース1内の圧力との圧力差により燃料Fは下部室14内に入り込み、下部フロート体5は上昇され、これにより前記主連通部161が閉鎖され、タンク内の圧力上昇によりフィーラーパイプ内の燃料液位を上昇させて給油ガンのセンサに初回の満タンを検知させる。具体的には、このときは内筒部167に燃料が入り込み下部フロート体5が上昇される。(図3)初回の満タンの検知により給油を停止すると、下部フロート体5は主連通部161を閉鎖するに留まることから、通気によりタンク内の内圧は低下し、追加給油が可能になる。具体的には、割り欠き部168と副連通部162を通じた通気により、追加給油が許容される。追加給油により燃料液位がさらに上昇すると上部室13に燃料が入り込み上部フロート体3が上昇して通気弁口10に着座される。これによりタンク内の圧力上昇によりフィーラーパイプの内の燃料液位を再び上昇させて給油ガンのセンサに最終的な満タンを検知させる。具体的には、燃料液位が前記割り欠き部168の上端に達すると(第二液位fb)、タンク内の圧力とケース1内の圧力との圧力差により燃料は副連通部162を通じて上部室13内に入り込む。(図4)燃料液位が低下すると、先ず上部室13内から燃料Fが流出して上部フロート体3が下降して通気弁口10が開弁され、次いで、さらに燃料液位が低下すると下部フロート体5が下降して主連通部161が開放される。下部フロート体5は、隔壁12に設けた挿通部165にガイド軸50を通して支持されるようになっているので、下部フロート体5の側面と下部室14の内側面、図示の例では内筒部167の内側面との間には隙間を作って両者の接触を防ぐことができる。また、上部フロート体3にはガイド軸50の納まる収容孔33が設けられているので、上部フロート体3と下部フロート体5とを含んで構成される弁装置の上下方向の寸法をできるだけ小さくすることができる。具体的には、この実施の形態にあっては、上部フロート体3が上昇せず、つまり、下降位置にあり、且つ下部フロート体5が上昇しているときに、下部フロート体5のガイド軸50が上部フロート体3の収容孔33に納まるようになっている。(図3)
【0034】
また、この実施の形態にあっては、隔壁12に設けられた前記挿通部165は、少なくともその上端側と下端側とにそれぞれ、ガイド軸50に対する摺接部165dを備えている。具体的には、下部フロート体5がどの位置にあるときでも、つまり、主連通部161を閉鎖する上昇位置にあるときでも、前記下降位置にあるときでも、ガイド軸50の基部50bは挿通穴165aに摺接され、ガイド軸50の中間部50cは筒状支持部165bの筒上端の内側に摺接されるようになっている。これにより、この実施の形態にあっては、下部フロート体5の上下動は上下少なくとも二点での支持により傾きを生じさせることなく円滑になされる。
【0035】
また、この実施の形態にあっては、前記挿通部165の上端には弾性変形によりガイド軸50の頭部50aの下方からの通過を許容する係合部165eが形成されている。図示の例では、前記筒状支持部165bを四つの弾性片165c…165cにより構成させており、挿通穴165aを通じて下方からガイド軸50を挿通部165に通すと、四つの弾性片165c…165cが外側に一旦撓みだした後にこの頭部50aが弾性片165cの上端から先に抜け出した位置で撓み戻しこの頭部50aに係合されるようになっている。すなわち、図示の例では、かかる弾性片165cの上端が前記係合部165eとして機能するようになっている。これにより、この実施の形態にあっては、隔壁12に下部フロート体5を容易且つ適切に組み合わせこの隔壁12に吊り下げ状に支持させることができる。
【0036】
図8〜図10は、以上に説明した弁装置を構成するロアボディ16と下部フロート体5の構成の一部を変更させた例を示している。
【0037】
この変更例では、前記挿通部165の係合部165eの少なくとも一部を、上方に突き出す基部片165fの上端から横向きに突き出して突き出し端を前記頭部50aに係合させる腕片165gから構成させている。また、下部フロート体5の上部における少なくとも上昇時に隔壁12に当接される箇所を弾性材により覆わせている。
【0038】
この変更例では、挿通部165を構成する前記筒状支持部165bを構成する四つの弾性片165cのうちの対向位置にある二つの弾性片165cを、前記基部片165f及び腕片165gに代えている。基部片165fは弾性片165cよりも外側に位置され、基部片165fとガイド軸50との間には間隔が形成されている。腕片165gはこの基部片165fの上端から内方に突き出してその突き出し端を頭部50aに係合させる位置に位置させている。これによりこの変更例では、上昇位置(図10)にある下部フロート体5が下降したときにこの腕片165gに上方から当接される頭部50aの衝撃をこの腕片165gの弾性変形により吸収して衝突音の発生を防止するようになっている。(図9)
【0039】
また、この変更例では、下部フロート体5の外径よりもやや外径を小さくする円板状の弾性シール材52によって、フロート主体51の閉塞された筒上端が覆われるようになっている。弾性シール材52の中央には貫通孔52aが形成されており、この貫通孔52aにガイド軸50を通してフロート主体51の筒上端に弾性シール材52が付設されている。これによりこの変更例では、下降位置(図9)にある下部フロート体5が上昇したときの隔壁12への下部フロート体5の当接の衝撃を前記弾性材としての弾性シール材52により吸収してこの場合の衝突音の発生も防止するようになっている。(図10)
【符号の説明】
【0040】
1 ケース
10 通気弁口
11 流入部
12 隔壁
13 上部室
14 下部室
161 主連通部
165 挿通部
3 上部フロート体
33 収容孔
5 下部フロート体
50 ガイド軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクに取り付け用いられる弁装置であって、
タンク外と通じる通気弁口を上部に備え、これより下方に燃料の流入部を備えると共に、この通気弁口と流入部との間に形成された隔壁により上部室と下部室とに区分されたケースと、
ケースの上部室内にあってケース内に流入される燃料によって上昇して前記通気弁口に着座される上部フロート体と、
上方に突き出すガイド軸を有し、このガイド軸を前記隔壁に形成させた挿通部に上下動可能に挿通してケースの下部室内に支持されると共に、ケース内に流入される燃料によって上昇して前記隔壁に形成された下部室と上部室との主連通部を閉鎖する下部フロート体とを備えており、
前記上部フロート体には、下部フロート体のガイド軸の納まる収容孔が備えられていることを特徴とする燃料タンク用弁装置。
【請求項2】
ガイド軸は上端に頭部を有すると共に、挿通部の上端には弾性変形により頭部の下方からの通過を許容する係合部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料タンク用弁装置。
【請求項3】
挿通部の係合部の少なくとも一部を、上方に突き出す基部片の上端から横向きに突き出して突き出し端を頭部に係合させる腕片から構成させていることを特徴とする請求項2に記載の燃料タンク用弁装置。
【請求項4】
下部フロート体の上部における少なくとも上昇時に隔壁に当接される箇所が弾性材により覆われていることを特徴とする請求項1に記載の燃料タンク用弁装置。
【請求項5】
挿通部は、少なくともその上端側と下端側とにそれぞれ、ガイド軸に対する摺接部を備えていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の燃料タンク用弁装置。
【請求項6】
少なくとも上部フロート体が上昇せず且つ下部フロート体が上昇しているときに、下部フロート体のガイド軸が上部フロート体の収容孔に納まるようになっていることを特徴とする請求項1に記載の燃料タンク用弁装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−126414(P2011−126414A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286400(P2009−286400)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】