説明

燃料噴射制御装置

【課題】燃焼室内に生じる空気流動のうち、上昇気流もしくは下降気流に着目し、これらが噴射された燃料に及ぼす影響を抑制し、シリンダ壁面やピストン頂面への燃料付着を低減することで、オイル希釈やスモークの発生などを抑制することのできる燃料噴射制御装置を提供する。
【解決手段】本願発明の燃料噴射制御装置である電子制御装置30は、燃料の噴射角度を変更することのできる燃料噴射弁18を制御することにより、燃焼室11内に噴射する燃料の噴射角度を変更する。電子制御装置30は吸気行程中に燃料を噴射する場合には、開弁している吸気バルブ24と弁座との隙間から燃焼室11内に流入する空気の流速が速いときに燃料を噴射するときほど燃料の噴射角度を吸気バルブ24側に傾ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は筒内噴射式内燃機関における燃料噴射を制御するための燃料噴射制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼室内に直接燃料を噴射する筒内噴射式内燃機関は、燃焼室内の混合気形成において、その自由度が高いという特徴がある。
例えば、点火プラグ周りは燃料濃度が濃い混合気、その周辺部は燃料濃度が薄い混合気となるように成層混合気を形成することができる。低負荷運転時にこうした成層混合気を形成すれば希薄空燃比での燃焼が可能となるため、スロットルバルブを大きく開いた状態で低負荷運転を行うことができるようになり、ポンピングロスが低減される。また、こうした成層混合気に点火した場合には燃焼ガスとシリンダ壁面との間に空気層が形成されるため、断熱効果によって燃焼ガスの温度低下が抑制され、冷却損失が低減されるようになる。そのため、筒内噴射式内燃機関では、成層混合気を形成して燃焼させることにより燃費を向上させることができる。
【0003】
一方で、筒内噴射式内燃機関では、燃料と空気との混合を燃焼室内で行うため、噴射された燃料がシリンダ壁面やピストン頂面へ衝突し易い。また、噴射された燃料が気化するまでの時間がポート噴射式内燃機関と比べて短くなる。
【0004】
筒内に噴射された燃料がシリンダ壁面に衝突し、シリンダ壁面に燃料が付着すると、付着した燃料とエンジンオイルとが混ざり合い、エンジンオイルが希釈される。また、筒内に噴射された燃料がピストン頂面に衝突し、ピストン頂面に燃料が付着すると、局所的に混合気の濃度が高くなり、その過濃度部分の燃焼により煤が生成され、スモーク発生量が増加する。特に、低温始動時や高負荷運転時など燃料噴射量が多い場合には燃料が気化され難いため、上記のような傾向が強くなる。更に、燃焼室内の空気流動が強い場合、燃焼室内に生じた気流によって混合気が流され、シリンダ壁面やピストン頂面に燃料が付着し易くなる。
【0005】
これに対し、特許文献1に記載の燃料噴射制御装置は、燃料を噴射するための噴射口を燃料噴射弁に複数設け、使用する噴射口を適宜切り替えるものである。そして、この特許文献1では、使用する噴射口を切り替えることにより、スワールやタンブルなどの旋回流の影響を打ち消すように噴射された燃料によって形成される燃料噴霧の形状を変更するようにしている。
【0006】
このように、スワールやタンブルなどの旋回流に対して、その影響を打ち消すように燃料噴霧の形状を変更すれば、空気流動(旋回流)が過大であっても噴射された燃料が大きく流されることを抑えることができ、シリンダ壁面やピストン頂面への燃料付着を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011‐7046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記特許文献1に記載の発明においては、燃焼室内に生じる空気流動のうち、スワールやタンブルといった旋回流に着目し、これに起因するシリンダ壁面やピストン頂面への燃料付着を低減するようにしている。しかし、燃焼室内にはスワールやタンブルといった旋回流の他にも上昇気流や下降気流が発生しており、これらの上昇気流や下降気流によってもシリンダ壁面やピストン頂面への燃料付着が助長される。
【0009】
例えば、図12に示されるように吸気行程中に燃料を噴射する場合には、開弁した吸気バルブ90と弁座との隙間から燃焼室91内に流入する空気によって矢印で示されるような下降気流が発生する。そのため、図12に破線で示される領域Z3に燃料を到達させようと一点鎖線の矢印で示されるように領域Z3に向かって燃料を噴射した場合には、図12に白抜き矢印で示されるように下降気流の影響によって噴射された燃料が下方に向かって流されてしまう。こうして噴射された燃料が下方に流されてしまうと、燃料を領域Z3に到達させることができないばかりでなく、燃料がピストン92の頂面に到達し易くなり、図12の中央に示されるように燃料がピストン92の頂面に付着し易くなってしまう。
【0010】
また、図13に示されるように圧縮行程中に燃料を噴射する場合には、ピストン92の上昇に伴って矢印で示されるように燃焼室内に上昇気流が発生する。そのため、図13に破線で示される領域Z4に燃料を到達させようと一点鎖線の矢印で示されるように領域Z4に向かって燃料を噴射した場合には、図13に白抜き矢印で示されるように上昇気流の影響によって噴射された燃料が上方に向かって流されてしまう。こうして噴射された燃料が上方に流されてしまうと、燃料を領域Z4に到達させることができないばかりでなく、燃料がシリンダ93における燃料噴射弁が設けられている位置とは反対側に位置する壁面に到達し易くなり、図13の右側に示されるように燃料がシリンダ93の壁面に付着し易くなってしまう。
【0011】
しかし、特許文献1に記載の発明では、燃焼室内に生じる上昇気流もしくは下降気流には着目していない。そのため、特許文献1に記載の発明によっては燃焼室内に生じる上昇気流や下降気流に起因するシリンダの壁面やピストンの頂面への燃料付着を十分に抑制することができない虞がある。
【0012】
この発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は燃焼室内に生じる空気流動のうち、上昇気流もしくは下降気流に着目し、これらが噴射された燃料に及ぼす影響を抑制し、シリンダ壁面やピストン頂面への燃料付着を低減することでオイル希釈やスモークの発生などを抑制することのできる燃料噴射制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、燃料の噴射角度を変更することのできる燃料噴射弁を制御することにより、燃焼室内に噴射する燃料の噴射角度を変更する筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置であり、吸気行程中に燃料を噴射する場合には、開弁している吸気バルブと弁座との隙間から燃焼室内に流入する空気の流速が速いときに燃料を噴射するときほど燃料の噴射角度を前記吸気バルブ側に傾けることをその要旨とする。
【0014】
吸気行程では吸気バルブの開弁に伴い吸気バルブと弁座との隙間を通じて吸気ポートから空気が流入する。そのため、吸気行程ではこの空気の流入によって燃焼室内に下降気流が生じる。燃焼室内に噴射された燃料はこの下降気流の影響を受け、ピストン側に流されるように拡散する。つまり、燃料噴射弁から噴射された燃料は下降気流の影響を受けてピストン側に偏向される。その結果、噴射された燃料がピストン頂面に付着し易くなる。
【0015】
これに対して上記請求項1に記載の構成によれば、吸気バルブと弁座との隙間から燃焼室内に流入する空気の流速が速いときに燃料を噴射するときほど、燃料の噴射角度が吸気バルブ側に傾けられる。すなわち、燃料が下降気流の上流側に向かって予め傾けられた状態で噴射されるため、噴射された燃料が下降気流の影響を受けてピストン側に偏向されたとしても、噴射された燃料がピストン頂面に過剰に近づくことを抑制することができる。
【0016】
また、吸気バルブと弁座との隙間から燃焼室内に流入する空気の流速が速く、噴射された燃料が下降気流によってピストン側に流され易いときほど燃料の噴射角度が吸気バルブ側に傾けられるため、下降気流が噴射された燃料に及ぼす影響の大きさに合わせて噴射角度を変更し、下降気流が噴射された燃料に及ぼす影響を好適に抑制することができる。
【0017】
要するに、上記請求項1に記載の発明によれば、燃焼室内に生じる空気流動のうち、下降気流が噴射された燃料に及ぼす影響を抑制し、ピストン頂面への燃料付着を低減することで、スモークの発生を抑制することができる。
【0018】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の燃料噴射制御装置において、吸気バルブが開弁し始めた吸気行程初期に燃料を噴射する場合に燃料の噴射角度を吸気バルブ側に傾ける量を最も多くし、吸気行程の後期に燃料を噴射する場合ほど燃料の噴射角度を吸気バルブ側に傾ける量を少なくすることをその要旨とする。
【0019】
吸気バルブが開弁し始めた吸気行程初期は吸気ポート側と燃焼室側の圧力差が大きいため、また吸気バルブのリフト量が小さい状態で燃焼室に空気が流入するため、吸気バルブと弁座との隙間から流入する空気の流速が特に速くなる。そのため、請求項1に記載されているように吸気バルブと弁座との隙間から流入する空気の流速が速いときに燃料を噴射するときほど燃料の噴射角度を吸気バルブ側に傾ける構成を実現するためには、上記請求項2に記載されているように吸気バルブが開弁し始めた吸気行程初期に燃料を噴射する場合に燃料の噴射角度を吸気バルブ側に傾ける量を最も多くし、吸気行程の後期に燃料を噴射する場合ほど燃料の噴射角度を吸気バルブ側に傾ける量を少なくすればよい。
【0020】
上記請求項2に記載されている構成によれば、吸気バルブと弁座との隙間から燃焼室に流入する空気の流速が特に速くなる吸気行程初期に燃料を噴射する場合に燃料の噴射角度を吸気バルブ側に傾ける量が最も多くされるようになり、下降気流の影響の大きさに合わせて噴射角度を設定することができる。
【0021】
請求項3に記載の発明は、燃料の噴射角度を変更することのできる燃料噴射弁を制御することにより、燃焼室内に噴射する燃料の噴射角度を変更する筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置であり、圧縮行程中に燃料を噴射する場合には、ピストンの上昇に伴って燃焼室内に発生する上昇気流の流速が速いときに燃料を噴射するときほど燃料の噴射角度をピストン側に傾けることをその要旨とする。
【0022】
圧縮行程ではピストンの上昇に伴い燃焼室内に上昇気流が生じる。燃焼室内に噴射された燃料はこの上昇気流の影響を受け、吸気バルブや排気バルブ、点火プラグが取り付けられている燃焼室の頂面に向かって押し上げられるように拡散する。つまり、燃料噴射弁から噴射された燃料は上昇気流の影響を受けてピストンから遠ざかるように偏向される。その結果、噴射された燃料が燃料噴射弁の取り付けられている位置とは反対側に位置するシリンダ壁面に付着し易くなる。
【0023】
これに対して上記請求項3に記載の構成によれば、ピストンの上昇に伴って燃焼室内に発生する上昇気流の流速が速いときに燃料を噴射するときほど、燃料の噴射角度がピストン側に傾けられる。すなわち、燃料が上昇気流の上流側に向かって予め傾けられた状態で噴射されるため、噴射された燃料が上昇気流の影響を受けてピストンから遠ざかるように偏向されたとしても、噴射された燃料がシリンダ壁面へ過剰に近づくことを抑制することができる。
【0024】
また、ピストンの上昇に伴って燃焼室内に発生する上昇気流の流速が速く、噴射された燃料が上昇気流によって燃焼室の頂面に向かって流され易いときほど燃料の噴射角度がピストン側に傾けられるため、上昇気流が噴射された燃料に及ぼす影響の大きさに合わせて噴射角度を変更し、上昇気流が噴射された燃料に及ぼす影響を好適に抑制することができる。
【0025】
要するに、上記請求項3に記載の発明によれば、燃焼室内に生じる空気流動のうち、上昇気流が噴射された燃料に及ぼす影響を抑制し、シリンダ壁面への燃料付着を低減することで、オイル希釈を抑制することができる。
【0026】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の燃料噴射制御装置において、圧縮行程中に燃料を噴射する場合には、ピストンの上昇速度が速いときに燃料を噴射するときほど燃料の噴射角度をピストン側に傾けることをその要旨とする。
【0027】
圧縮行程においてピストンの上昇に伴って発生する上昇気流の流速は、ピストンの上昇速度に比例し、ピストンの上昇速度が速いときほど上昇気流の流速も速くなる。そのため、請求項3に記載されているようにピストンの上昇に伴って燃焼室内に発生する上昇気流の流速が速いときに燃料を噴射するときほど燃料の噴射角度をピストン側に傾ける構成を実現するためには、上記請求項4に記載されているようにピストンの上昇速度が速いときに燃料を噴射するときほど燃料の噴射角度をピストン側に傾けるようにすればよい。
【0028】
上記請求項4に記載されている構成によれば、ピストンの上昇速度が速く、ピストンの上昇に伴って燃焼室内に発生する上昇気流の流速が速いときほど燃料の噴射角度がピストン側に傾けられるようになり、上昇気流の影響の大きさに合わせて噴射角度を設定することができる。
【0029】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の燃料噴射制御装置において、圧縮行程の中期に燃料を噴射する場合に噴射角度をピストン側に傾ける量を最も多くし、圧縮行程の初期及び後期に燃料を噴射する場合には圧縮行程の中期に燃料を噴射する場合よりも噴射角度をピストン側に傾ける量を少なくすることをその要旨とする。
【0030】
コネクティングロッドを介してクランクシャフトに連結されたピストンは、圧縮行程の中期において最も上昇速度が速くなる。そのため、請求項3に記載されているようにピストンの上昇に伴って燃焼室内に発生する上昇気流の流速が速いときに燃料を噴射するときほど燃料の噴射角度をピストン側に傾ける構成を実現するためには、上記請求項5に記載されているように圧縮行程の中期に燃料を噴射する場合に噴射角度をピストン側に傾ける量を最も多くし、圧縮行程の初期及び後期に燃料を噴射する場合には圧縮行程の中期に燃料を噴射する場合よりも噴射角度をピストン側に傾ける量を少なくすればよい。
【0031】
上記請求項5に記載の構成によれば、ピストンの上昇速度が速く、ピストンの上昇に伴って燃焼室内に発生する上昇気流の流速が速くなる圧縮行程中期において燃料の噴射角度が最も大きくピストン側に傾けられるようになり、上昇気流の影響の大きさに合わせて噴射角度を設定することができる。
【0032】
請求項6に記載の発明は、請求項2又は請求項5に記載の燃料噴射制御装置において、燃料を噴射するときの機関回転速度が高いときほど燃料の噴射角度を傾ける量を多くすることをその要旨とする。
【0033】
機関回転速度が高いときほど、吸気行程において吸気バルブと弁座との隙間を通じて燃焼室内に流入する空気の流速は速くなる。そのため、機関回転速度が高いときほど吸気行程において燃焼室内に生じる下降気流の流速は速くなる。
【0034】
また、機関回転速度が高いときほど、圧縮行程におけるピストンの上昇速度は速くなる。したがって、機関回転速度が高いときほど圧縮行程において燃焼室内に生じる上昇気流の流速は速くなる。
【0035】
上記請求項6に記載の構成によれば、機関回転速度が高いときほど燃料の噴射角度を傾ける量を多くするため、機関回転速度が高く、燃焼室内に生じる上昇気流又は下降気流の流速が速い場合であっても、それにあわせて噴射角度を傾ける量を増大させることによりこれら上昇気流又は下降気流による影響を抑制することができる。
【0036】
すなわち、機関回転速度の変化による空気流動の影響の大きさの変化も加味してその影響の大きさの変化を打ち消すように燃料の噴射角度を設定することができる。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の燃料噴射制御装置において、燃料噴射弁から燃焼室内に噴射される燃料の噴射圧が低いときほど燃料の噴射角度を傾ける量を多くする一方、燃料噴射弁から燃焼室内に噴射される燃料の噴射圧が高いときほど燃料の噴射角度を傾ける量を少なくすることをその要旨とする。
【0037】
燃焼室内に噴射される燃料の噴射圧が低いほど、噴射された燃料の貫徹力が低下し、噴射された燃料が燃焼室内の空気流動による影響を受け易くなる。
上記請求項7に記載の構成によれば、燃料の噴射圧が低いときほど燃料の噴射角度を傾ける量を多くする一方、燃料の噴射圧が高いときほど燃料の噴射角度を傾ける量を少なくする。そのため、燃料の噴射圧の変化による空気流動の影響の大きさの変化も加味してその影響の大きさの変化を打ち消すように燃料の噴射角度を設定することができる。
【0038】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の燃料噴射制御装置において、燃料噴射弁が噴射する燃料の噴射量が規定値以上の場合には、燃料の噴射角度を傾けずに燃料を噴射することをその要旨とする。
【0039】
燃焼室内に噴射される燃料の噴射量が少ないほど、燃焼室内に存在する空気の量に対する燃料の量の割合は低くなる。また、燃焼室内に噴射される燃料の噴射量が少ないほど、噴射された燃料の貫徹力は低下する。そのため、燃焼室内に噴射される燃料の噴射量が少ないほど、噴射された燃料が燃焼室内の空気流動による影響を受け易くなる。一方で、燃焼室内に噴射される燃料の噴射量が多いときには、燃焼室内に存在する空気の量に対する燃料の量の割合が高く、また噴射された燃料の貫徹力が高いため、噴射された燃料が燃焼室内の空気流動による影響を受け難くなる。
【0040】
上記請求項8に記載の発明は、燃料の噴射量が規定量以上の場合には、燃料の噴射角度を傾けずに燃料を噴射する。そのため、燃料の噴射量が多く、噴射された燃料が燃焼室内の空気流動による影響を受け難くい場合には、噴射角度がピストン側や吸気バルブ側に傾けられずに通常の噴射角度のまま燃料が噴射されるようになる。したがって、不必要に燃料の噴射角度が傾けられることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】この発明の燃料噴射制御装置の一実施形態である電子制御装置と、同電子制御装置の制御対象である内燃機関との関係を示す模式図。
【図2】(A),(B),(C)は同実施形態にかかる電子制御装置が制御する燃料噴射弁の作動態様と燃料の噴射角度との関係を説明する模式図。
【図3】同実施形態にかかる電子制御装置が実行する補正量設定処理の流れを示すフローチャート。
【図4】(A),(B),(C),(D)は補正量設定処理において参照する吸気行程用補正量マップ。
【図5】(A),(B),(C),(D)は補正量設定処理において参照する圧縮行程用補正量マップ。
【図6】同実施形態にかかる電子制御装置が実行する燃料噴射制御を通じて吸気行程中に燃料を噴射した場合の燃料の状態を示す模式図。
【図7】同実施形態にかかる電子制御装置が実行する燃料噴射制御を通じて圧縮行程中に燃料を噴射した場合の燃料の状態を示す模式図。
【図8】第1の変更例としての補正量設定処理の流れを示すフローチャート。
【図9】第2の変更例としての補正量設定処理の流れを示すフローチャート。
【図10】(A)は機関回転速度と筒内気流速度の増加量との関係を示すマップ。(B)は第2の変更例としての補正量設定処理を通じて設定される補正量の増大量と機関回転速度との関係を示すマップ。
【図11】(A)は機関回転速度並びに機関冷却水温と燃料噴射圧との関係を示すマップ。(B)は機関回転速度並びに機関冷却水温と燃料の噴射角度の補正量との関係を示すマップ。
【図12】噴射された燃料に対する下降気流の影響を説明するための模式図。
【図13】噴射された燃料に対する上昇気流の影響を説明するための模式図。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、この発明にかかる燃料噴射制御装置を、車両に搭載される内燃機関を統括的に制御する電子制御装置として具体化した実施形態について、図1〜7を参照して説明する。
図1に示されるように内燃機関1のシリンダ10には、ピストン12が往復運動可能に収容されている。ピストン12は、コネクティングロッド14を介して図示しないクランクシャフトに連結されている。このようにピストン12がシリンダ10内に収容されていることにより、シリンダ10の内壁とピストン12の頂面とによって燃焼室11が区画形成されている。
【0043】
なお、図1においては説明の便宜上1つの燃焼室11のみを図示しているが、内燃機関1は複数の燃焼室11を備えた多気筒内燃機関である。図示しない他の燃焼室11の構成も図1に示されている燃焼室11と同様の構成であるため、ここでは図示しない他の燃焼室11についての説明を割愛する。
【0044】
各燃焼室11の上部には、その先端部が燃焼室11内に露出するように点火プラグ16が取り付けられている。また、各燃焼室11には吸気ポート20と排気ポート22がそれぞれ接続されている。吸気ポート20と燃焼室11とが接続している部分には、吸気ポート20と燃焼室11とを連通したり遮断したりする吸気バルブ24が設けられている。また、排気ポート22と燃焼室11とが接続している部分には、排気ポート22と燃焼室11とを連通したり遮断したりする排気バルブ26が設けられている。
【0045】
なお、吸気バルブ24及び排気バルブ26は図示しないバルブスプリングによって閉弁方向に付勢されている。そして吸気バルブ24は図示しないタイミングチェーンを介してクランクシャフトに連結されている吸気カムシャフトの作用によって開弁され、排気バルブ26はタイミングチェーンを介してクランクシャフトに連結されている排気カムシャフトの作用よって開弁される。
【0046】
また、図1の中央に示されるように各シリンダ10の壁面における吸気バルブ24の近傍には、燃焼室11内に直接燃料を噴射する燃料噴射弁18が取り付けられている。
燃焼室11に導入される空気の量を調整する吸入空気量制御や、燃料噴射弁18を開閉制御することによる燃料噴射制御、そして点火プラグ16を制御することによる点火時期制御などは、内燃機関1を統括的に制御する電子制御装置30によって実行される。
【0047】
電子制御装置30は、こうした各種の制御にかかる演算処理を実行する中央演算処理装置(CPU)、制御用のプログラムやデータが記憶された読み出し専用メモリ(ROM)、演算処理の結果等を一時的に記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)などを備えて構成される。
【0048】
電子制御装置30には内燃機関1の各部の状態や車両各部の状態を検出するための各種のセンサが接続されている。
例えば、クランクポジションセンサ31はクランクシャフトが回転するのに伴って所定の回転角ごとにパスル信号を出力する。カムポジションセンサ32は吸気バルブ24を駆動する吸気カムシャフトや排気バルブ26を駆動する排気カムシャフトが回転するのに伴って所定の回転角ごとにパルス信号を出力する。電子制御装置30は、これらクランクポジションセンサ31及びカムポジションセンサ32から出力されるパルス信号に基づいて、各シリンダ10が吸気行程、圧縮行程、燃焼行程、排気行程のいずれに該当しているかを判別する。また、電子制御装置30はクランクポジションセンサ31から出力されるパルス信号に基づいてクランクシャフトの回転速度である機関回転速度を算出する。
【0049】
アクセルポジションセンサ33は運転者によるアクセルの操作量を検出する。車速センサ34は車輪の回転速度に基づいて車速を検出する。水温センサ35は内燃機関1に設けられたウォータージャケット内を循環する機関冷却水の温度を検出する。燃圧センサ36は、燃料噴射弁18に供給されている燃料の圧力である燃料噴射圧を検出する。
【0050】
電子制御装置30は、これら各種センサ31〜36からの検出信号を読み込み、内燃機関1の制御にかかる各種演算処理を実行する。
例えば、電子制御装置30はアクセルの操作量と車速とに基づいて要求されるトルクの大きさを推定し、吸入空気量を調整するとともに、要求されるトルクの大きさに見合ったトルクを発生させるように燃料噴射量を設定する。そして、機関回転速度や燃料噴射圧などに基づいて各シリンダ10に設けられた燃料噴射弁18の開閉時期を設定し、クランクポジションセンサ31やカムポジションセンサ32から出力されるパルス信号に基づいて開閉時期の到来を判別して燃料噴射弁18を開閉し、設定された量の燃料を噴射させる。
【0051】
なお、本実施形態の電子制御装置30は内燃機関1の運転状態に応じて燃料の噴射時期を変更することにより吸気行程中に燃料を噴射させたり、圧縮行程中に燃料を噴射させたりする。また、こうした吸入空気量や燃料噴射量の制御とあわせて点火プラグ16を制御することにより、点火時期の調整も行う。
【0052】
また、燃料噴射弁18は燃料の噴射角度を変更することができるようになっており、本実施形態にかかる電子制御装置30は燃料噴射制御を通じて燃料噴射弁18を制御し、燃料噴射弁18から燃焼室11内に噴射される燃料の噴射角度を調整する。
【0053】
次に、図2を参照して燃料噴射弁18の内部構造と、燃料噴射弁18を制御することにより燃料の噴射角度を変更する方法について説明する。
図2(A),(B),(C)に示されるように燃料噴射弁18には、第1ニードル60が収容される第1貯留部80が設けられている。そして、第1貯留部80には、第2貯留部82を介して第1流路70が接続されている。第1流路70は燃料噴射弁18の先端部に設けられた噴射口50に連通しており、噴射口50には同噴射口50の開口面積を拡大するように湾曲する湾曲部52が設けられている。
【0054】
第1ニードル60は、第1貯留部80内に摺動可能に収容されており、第1貯留部80と第2貯留部82とが接続する弁座部分に着座することにより、第1貯留部80と第2貯留部82との間の連通を遮断する。
【0055】
また、図2(A),(B),(C)に示されるように燃料噴射弁18には、第1流路70に加えて、第2貯留部82から分岐する第2流路72が設けられている。第2流路72は、噴射口50における湾曲部52と対向する位置に開口するように第1流路70に側方から連通している。第2流路72の途中には第3貯留部84が設けられており、この第3貯留部84には第2流路72を開閉する第2ニードル62が収容されている。
【0056】
こうした燃料噴射弁18では、電子制御装置30からの制御指令に基づいて第1ニードル60が弁座部分から離間するように駆動されることにより、第1貯留部80内に供給されている燃料が第2貯留部82及び第1流路70を通じて噴射口50に導かれ、噴射口50から噴射されるようになる。また、燃料噴射にあわせて電子制御装置30からの制御指令に基づいて第2ニードル62が駆動されることにより、燃料の噴射角度が変更されるようになっている。
【0057】
具体的には、図2(A)に示されるように第2ニードル62が第2流路72を閉塞している場合には、第2流路72を通じて第1流路70に側方から燃料が供給されることはないため、燃料は図2(A)に一点鎖線L1で示される第1流路70の延伸方向に沿った方向に噴射される。
【0058】
これに対して、図2(B)及び図2(C)に示されるように第2ニードル62が第3貯留部84から引き抜かれるように駆動され、第2流路72を通じて第1流路70に側方から燃料が供給されるようになった場合には、第1流路70を通じて噴射口50に導かれた燃料が湾曲部52側に曲げられた状態で噴射口50から噴射される。
【0059】
これは、第2流路72を通じて側方から供給される燃料によって第1流路70を通じて噴射口50に導かれた燃料が湾曲部52側に押し曲げられることと、燃料が湾曲部52側に押し曲げられて湾曲部52に接触することによりコアンダ効果によって燃料が湾曲部52に沿って流れようとすることによるものである。
【0060】
燃料噴射弁18から燃料が噴射される方向、すなわち噴射口50から噴射される燃料の噴射角度は第2ニードル62の開弁量に応じて変化する。
図2(C)に示されるように第2ニードル62が第2流路72を全く閉塞しないように完全に開弁されている場合には、燃料噴射弁18から噴射される燃料は図2(C)に一点鎖線L3で示されるように燃料噴射弁18の中心軸に対して大きく傾けられた状態で噴射される。
【0061】
図2(B)は燃料の噴射角度が図2(A)に示される噴射角度と図2(C)に示される噴射角度との中間になるように第2ニードル62の開弁量を調整した状態を示している。本実施形態の電子制御装置30は図2(B)に一点鎖線L2で示されるように図2(A)に示される噴射角度と図2(C)に示される噴射角度との中間になる燃料の噴射角度を基準の噴射角度としている。そして、第2ニードル62の開弁量を制御することによりこの基準の噴射角度から噴射角度を傾ける量、すなわち燃料の噴射角度の補正量を変更し、燃料の噴射角度を任意に変更する。
【0062】
要するに、図2(A)に示されるように、図2(B)に示される開弁量よりも第2ニードル62の開弁量を小さくすることにより、燃料の噴射角度が第1流路70の延伸方向(図2(A)における一点鎖線L1の方向)に近づけるように基準の噴射角度から噴射角度を傾ける。一方で、図2(C)に示されるように、図2(B)に示される開弁量よりも第2ニードル62の開弁量を大きくすることにより、湾曲部52が湾曲している方向に近づけるように基準の噴射角度から噴射角度を傾ける。
【0063】
なお、以下の説明では図2(A)に示されるように基準の噴射角度から第1流路70の延伸方向に沿った方向に近づけるように噴射角度を傾ける場合の噴射角度の補正量を「補正量α」とする。図2(A)には第2ニードル62が第2流路72を完全に閉塞している状態が示されている。すなわち、図2(A)に示されている状態は第2ニードル62の開弁量が最も小さい「0」にされている状態であるため、図2(A)には補正量αを最も大きくするように第2ニードル62の開弁量を制御した状態が示されていることになる。
【0064】
また、以下の説明では図2(C)に示されるように基準の噴射角度から湾曲部52が湾曲している方向に近づけるように噴射角度を傾ける場合の噴射角度の補正量を「補正量β」とする。なお、図2(C)には第2ニードル62が第2流路72を全く閉塞していない状態が示されている。すなわち、図2(C)に示されている状態は第2ニードル62の開弁量が最も大きくされている状態であるため、図2(C)には補正量βを最も大きくするように第2ニードル62の開弁量を制御した状態が示されていることになる。
【0065】
なお、燃焼室11内に取り付けられた燃料噴射弁18は、補正量αを大きくするほど燃料の噴射角度が吸気バルブ24側に傾くように、補正量βを大きくするほど燃料の噴射角度がピストン12側に傾くようにその向きが調整されている。すなわち、補正量αは燃料の噴射角度を図2(B)に示される基準の噴射角度から吸気バルブ24側に傾ける量を示す値となっており、補正量βは燃料の噴射角度を図2(B)に示される基準の噴射角度からピストン12側に傾ける量を示す値となっている。
【0066】
次に、本実施形態にかかる電子制御装置30が実行する燃料噴射制御における燃料の噴射角度の補正量の設定態様について図3を参照して説明する。
図3は電子制御装置30が実行する補正量設定処理の流れを示すフローチャートである。電子制御装置30は燃料噴射制御において燃料の噴射量及び燃料の噴射時期を設定するたびにこの補正量設定処理を実行し、燃料を噴射する際に、この補正量設定処理を通じて設定された補正量に応じて第2ニードル62を駆動することによって燃料の噴射角度を制御する。
【0067】
電子制御装置30はこの処理を開始すると図3に示されるようにステップS120において、設定されている燃料の噴射時期が吸気下死点以前であるか否かを判定する。ステップS120において、設定されている燃料の噴射時期が吸気下死点以前であると判定された場合(ステップS120:YES)には、ステップS180へ進み、図4(A)に示される吸気行程用補正量マップを参照して燃料の噴射時期に対応する補正量αを取得する。
【0068】
図4(A)に示されるように吸気行程用補正量マップには燃料の噴射時期に応じた補正量αの値が設定されている。吸気行程では吸気バルブ24の開弁に伴い吸気バルブ24と弁座との隙間を通じて吸気ポート20から燃焼室11内に空気が流入する。そのため、吸気行程ではこの空気の流入によって吸気バルブ24が設けられた燃焼室11の上方からピストン12が位置する燃焼室11の下方に向かって流れる下降気流が生じる。吸気バルブ24が開弁し始めた吸気行程初期は吸気ポート20側と燃焼室11側の圧力差が大きいため、また吸気バルブ24のリフト量が小さい状態で燃焼室11に空気が流入するため、吸気バルブ24と弁座との隙間から流入する空気の流速、すなわち下降気流の流速が特に速くなる。そしてその後、吸気行程中期、吸気行程後期へと吸気行程が進行するのに伴い下降気流の流速は遅くなる。吸気行程用補正量マップでは、下降気流による影響を燃料の噴射角度を傾けることによって打ち消すことができるように、この下降気流の流速の変化傾向に即したかたちで補正量αが設定されている。すなわち、図4(A)に示されるように噴射時期が上死点に近い吸気行程初期に設定されているときに最も補正量αが大きくされる一方、噴射時期がより下死点に近い時期に設定され、吸気行程中期、吸気行程後期へと吸気行程が進行した状態で燃料が噴射されるときほど補正量αが小さくされるようになっている。
【0069】
なお、補正量αを算出する際に参照する吸気行程用補正量マップは、上記のように吸気行程の初期において最も流速が速くなる下降気流の流速の変化傾向に沿ったものであればよい。そのため、ステップS180において参照する吸気行程用補正量マップは、例えば図4(B)に示されるように燃料の噴射時期に対して補正量αの値が直線的に変化するものであってもよい。また、図4(C)に示されるように噴射時期に対して補正量αの値がステップ状に変化するものであってもよい。更に、図4(A)に示した吸気行程用補正量マップでは上死点及び下死点における補正量αが略同一の値になっているが、図4(D)のように上死点における補正量αと下死点における補正量αとが異なるものであってもよい。
【0070】
電子制御装置30はステップS180を通じて吸気行程用補正量マップを参照して現在設定されている燃料の噴射時期に応じた補正量αの値を読み出し、読み出された値を補正量αとして設定する。そして、ステップS180を通じて補正量αを設定すると、電子制御装置30はこの補正量設定処理を一旦終了する。
【0071】
一方、ステップS120において、燃料の噴射時期が吸気下死点以降である旨の判定がなされた場合(ステップS120:NO)には、ステップS280へ進み、圧縮行程用補正量マップを参照して補正量βを取得する。
【0072】
図5(A)に示されるように圧縮行程用補正量マップには燃料の噴射時期に応じた補正量βの値が設定されている。圧縮行程ではピストン12の上昇に伴い燃焼室11内にピストン12側から点火プラグ16が取り付けられた燃焼室11の頂面に向かって流れる上昇気流が生じる。
【0073】
圧縮行程においてピストン12の上昇に伴って発生する上昇気流の流速は、ピストン12の上昇速度に比例し、ピストン12の上昇速度が速いときほど上昇気流の流速も速くなる。コネクティングロッド14を介してクランクシャフトに連結されたピストン12は、クランク角が90°CAになる圧縮行程の中期に向かって次第にその上昇速度が速くなり、圧縮行程の中期において最も上昇速度が速くなる。そして、圧縮行程の後期に向かって次第に上昇速度は遅くなる。そのため、燃焼室11内に発生する上昇気流の流速も圧縮行程中期に向かって次第に速くなり、圧縮行程中期において最も速くなったあと、圧縮行程後期に向かって次第に遅くなる。圧縮行程用補正量マップでは、上昇気流による影響を燃料の噴射角度を傾けることによって打ち消すことができるように、この上昇気流の流速の変化傾向に即したかたちで補正量βが設定されている。すなわち、図5(A)に示されるように噴射時期が下死点と上死点の中間に近い圧縮行程中期に設定されているときに最も補正量βが大きくされる一方、圧縮行程初期や圧縮行程後期で燃料が噴射されるときには補正量βが圧縮行程中期において燃料が噴射されるときよりも小さくされるようになっている。
【0074】
なお、補正量βを算出する際に参照する圧縮行程用補正量マップは、上記のように圧縮行程中期において最も流速が速くなる上昇気流の流速の変化傾向に沿ったものであればよい。そのため、ステップS280において参照する圧縮行程用補正量マップは、例えば図5(B)に示されるように燃料の噴射時期に対して補正量βの値が直線的に変化するものであってもよい。また、図5(C)に示されるように噴射時期に対して補正量βの値がステップ状に変化するものであってもよい。更に、図5(A)に示した圧縮行程用補正量マップでは上死点及び下死点における補正量βが略同一の値になっているが、図5(D)のように上死点における補正量βと下死点における補正量βとが異なるものであってもよい。
【0075】
電子制御装置30はステップS280を通じて圧縮行程用補正量マップを参照して現在設定されている燃料の噴射時期に応じた補正量βの値を読み出し、読み出された値を補正量βとして設定する。そして、ステップS280を通じて補正量βを設定すると、電子制御装置30はこの補正量設定処理を一旦終了する。
【0076】
こうして補正量設定処理を通じて設定された補正量に応じて電子制御装置30は燃料噴射に際して第2ニードル62を駆動し、燃料の噴射角度を調整する。
(作用)
次に、図6及び図7を参照して補正量設定処理を通じて設定された補正量に応じて燃料の噴射角度を調整することによる作用について説明する。
【0077】
吸気行程中に燃料噴射が実行される場合には、図6に一点鎖線の矢印で示されるように燃料の噴射角度が基準の噴射角度(図6における一点鎖線L2)から補正量αの分だけ吸気バルブ24側に傾けられる。すなわち、吸気バルブ24と弁座との隙間を通じて燃焼室11内に流入する空気によって生じる図6に矢印で示される下降気流の上流側に向かって予め傾けられた状態で燃料が噴射される。そのため、噴射された燃料は図6に示されるように下降気流の影響を受けてピストン12側に偏向されるものの、下降気流の影響によってピストン12側に流された燃料が目標とする領域Z1に到達するようになる。
【0078】
一方、圧縮行程中に燃料噴射が実行される場合には、図7に一点鎖線の矢印で示されるように燃料の噴射角度が基準の噴射角度(図7における一点鎖線L2)から補正量βの分だけピストン12側に傾けられる。すなわち、ピストン12の上昇に伴って発生する図7に矢印で示される上昇気流の上流側に向かって予め傾けられた状態で燃料が噴射される。そのため、噴射された燃料は図7に示されるように上昇気流の影響を受けて吸気バルブ24や排気バルブ26が設けられている燃焼室11の上方に向かって変更されるものの、上昇気流の影響によって流された燃料が目標とする領域Z2に到達するようになる。
【0079】
以上説明した実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)吸気行程中に燃料を噴射する場合には、燃料が下降気流の上流側に向かって予め傾けられた状態で噴射されるため、噴射された燃料が下降気流の影響を受けてピストン12側に偏向されたとしても、噴射された燃料がピストン12の頂面に過剰に近づくことを抑制することができる。
【0080】
また、吸気バルブ24と弁座との隙間から燃焼室11内に流入する空気の流速が速く、噴射された燃料が下降気流によってピストン12側に流され易いときほど燃料の噴射角度が吸気バルブ24側に傾けられる。そのため、下降気流が噴射された燃料に及ぼす影響の大きさに合わせて噴射角度を変更し、下降気流が噴射された燃料に及ぼす影響を好適に抑制することができる。
【0081】
要するに、燃焼室11内に生じる下降気流が噴射された燃料に及ぼす影響を抑制し、ピストン12の頂面への燃料付着を低減することで、スモークの発生を抑制することができる。
【0082】
(2)吸気バルブ24と弁座との隙間から燃焼室11に流入する空気の流速が特に速くなる吸気行程初期に燃料を噴射する場合に燃料の噴射角度を吸気バルブ24側に傾ける量である補正量αが最も多くされるため、下降気流の影響の大きさに合わせて噴射角度を設定することができる。
【0083】
(3)圧縮行程中に燃料を噴射する場合には、燃料が上昇気流の上流側に向かって予め傾けられた状態で噴射されるため、噴射された燃料が上昇気流の影響を受けてピストン12から遠ざかるように偏向されたとしても、噴射された燃料がシリンダ10の壁面へ過剰に近づくことを抑制することができる。
【0084】
また、ピストン12の上昇に伴って燃焼室11内に発生する上昇気流の流速が速く、噴射された燃料が上昇気流によって燃焼室11の頂面に向かって流され易いときほど燃料の噴射角度がピストン12側に傾けられる。そのため、上昇気流が噴射された燃料に及ぼす影響の大きさに合わせて噴射角度を変更し、上昇気流が噴射された燃料に及ぼす影響を好適に抑制することができる。
【0085】
要するに、燃焼室11内に生じる上昇気流が噴射された燃料に及ぼす影響を抑制し、シリンダ10の壁面への燃料付着を低減することで、オイル希釈を抑制することができる。
(4)ピストン12の上昇速度が速く、ピストン12の上昇に伴って燃焼室11内に発生する上昇気流の流速が特に速くなる圧縮行程中期に燃料を噴射する場合に燃料の噴射角度をピストン12側に傾ける量である補正量βが最も大きくされるため、上昇気流の影響の大きさに合わせて噴射角度を設定することができる。
【0086】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・燃焼室11内に噴射される燃料の噴射量が少ないほど、燃焼室11内に存在する空気の量に対する燃料の量の割合は低くなる。また、燃焼室11内に噴射される燃料の噴射量が少ないほど、噴射された燃料の貫徹力は低下する。これに対して燃料噴射弁18から噴射される燃料の噴射量が多い場合には燃焼室11内に存在する空気の量に対する燃料の量の割合が高くなるとともに、噴射された燃料の貫徹力が高くなるため、噴射された燃料は燃焼室11内の空気流動の影響を受け難くなる。
【0087】
そのため、燃料噴射量が多い場合には、噴射角度の補正を実行する必要がない場合もある。図8は燃料噴射量が多い場合には燃料の噴射角度の補正量を設定せずに基準の噴射角度のまま燃料を噴射するようにする第1の変更例にかかる補正量設定処理の流れを示すフローチャートである。
【0088】
この第1の変更例にかかる補正量設定処理にあっては、上記の実施形態において説明した補正量設定処理に対して燃料噴射量が規定値以上であるか否かを判断する処理を追加している。
【0089】
具体的には、図8に示されるようにステップS120において、設定されている燃料の噴射時期が吸気下死点以前であると判定された場合(ステップS120:YES)には、ステップS130へ進み、設定されている燃料噴射量が規定値X未満であるか否かを判定する。なお、規定値Xは燃料の噴射角度の補正を実行せずとも吸気行程中に噴射された燃料が目標とする領域Z1に到達するようになる貫徹力が得られる噴射量であり、予め実験や計算によって求めておけばよい。
【0090】
ステップS130において、設定されている燃料噴射量が規定値X未満である旨の判定がなされた場合(ステップS130:YES)には、ステップS180へと進み、上記の実施形態と同様に図4(A)に示される吸気行程用補正量マップを参照して燃料の噴射時期に対応する補正量αを取得する。
【0091】
一方、ステップS130において、設定されている燃料噴射量が規定値X以上である旨の判定がなされた場合(ステップS130:NO)には、ステップS180をスキップし、補正量αを設定せずに補正量設定処理が終了され、燃料の噴射角度を補正しないまま基準の噴射角度で燃料が噴射される。
【0092】
また、図8に示されるようにステップS120において、設定されている燃料の噴射時期が吸気下死点以降であると判定された場合(ステップS120:NO)には、ステップS230へ進み、設定されている燃料噴射量が規定値Y未満であるか否かを判定する。なお、規定値Yは燃料の噴射角度の補正を実行せずとも圧縮行程中に噴射された燃料が目標とする領域Z2に到達するようになる貫徹力が得られる噴射量であり、予め実験や計算によって求めておけばよい。
【0093】
ステップS230において、設定されている燃料噴射量が規定値Y未満である旨の判定がなされた場合(ステップS230:YES)には、ステップS280へと進み、上記の実施形態と同様に図5(A)に示される圧縮行程用補正量マップを参照して燃料の噴射時期に対応する補正量βを取得する。
【0094】
一方、ステップS230において、設定されている燃料噴射量が規定値Y以上である旨の判定がなされた場合(ステップS230:NO)には、ステップS280をスキップし、補正量βを設定せずに補正量設定処理が終了され、燃料の噴射角度を補正しないまま基準の噴射角度で燃料が噴射される。
【0095】
このような第1の変更例にかかる補正量設定処理を実行した場合には、燃料の噴射量が規定量以上の場合には、噴射角度が傾けられずに燃料が噴射される。そのため、燃料の噴射量が多く、噴射された燃料が燃焼室11内の空気流動による影響を受け難くい場合には、噴射角度がピストン12側や吸気バルブ24側に傾けられずに基準の噴射角度のまま燃料が噴射される。したがって、不必要に燃料の噴射角度が傾けられることを抑制することができる。
【0096】
・機関回転速度が高いときほど、吸気行程において吸気バルブ24と弁座との隙間を通じて燃焼室11内に流入する空気の流速は速くなる。そのため、機関回転速度が高いときほど吸気行程において燃焼室11内に生じる下降気流の流速は速くなる。また、機関回転速度が高いときほど、圧縮行程におけるピストン12の上昇速度は速くなる。したがって、機関回転速度が高いときほど圧縮行程において燃焼室11内に生じる上昇気流の流速は速くなる。そのため、燃料を噴射するときの機関回転速度に応じて補正量αや補正量βを増減させるようにしてもよい。
【0097】
また、燃焼室11内に噴射される燃料の噴射圧が低いほど、噴射された燃料の貫徹力が低下し、噴射された燃料が燃焼室11内の空気流動による影響を受け易くなる。そのため、燃料噴射圧に応じて補正量αや補正量βを増減させるようにしてもよい。
【0098】
図9は、第1の変更例として示した補正量設定処理に対して機関回転速度及び燃料噴射圧に応じて補正量α及び補正量βを増減させる処理を追加した第2の変更例にかかる補正量設定処理の流れを示すフローチャートである。
【0099】
この第2の変更例にかかる補正量設定処理にあっては、図9に示されるようにステップS130において、設定されている燃料噴射量が規定値X未満である旨の判定がなされた場合(ステップS130:YES)には、ステップS140へと進み、機関回転速度及び燃料噴射圧に応じた吸気行程用補正量マップを取得する。ここでは、機関回転速度と燃料噴射圧の組合せに応じて複数用意されている吸気行程用補正量マップの中から現在設定されている燃料噴射時期における機関回転速度並びに燃料噴射圧に対応する吸気行程用補正量マップを取得する。
【0100】
図10(A)に示されるように機関回転速度が高いときほど燃焼室11内に発生する上昇気流や下降気流の流速の増加量、すなわち筒内気流速度の増加量は大きくなる。そこで、こうした筒内気流速度の増加量の変化傾向にあわせて図10(B)に示されるように機関回転速度が高いときほど補正量αの増大量が大きくなるように吸気行程用補正量マップが選択されるようになっている。
【0101】
また、燃料噴射圧が高いときほど噴射された燃料の貫徹力は高くなり、燃焼室11内に発生する上昇気流や下降気流の影響を受け難くなる。そこで、こうした傾向にあわせて燃料噴射圧が高いときほど補正量αが小さくなるように吸気行程用補正量マップが選択されるようになっている。
【0102】
なお、燃料噴射圧は機関回転速度に応じて変化する燃料ポンプの吐出量と燃料の温度に応じて変化するため、機関回転速度と機関冷却水温とに基づいて燃料噴射圧を推定し、吸気行程用補正量マップを選択することもできる。すなわち、燃料噴射圧は、機関回転数が高く燃料ポンプの吐出量が多いときほど、また機関冷却水温が高く燃料の温度が高いときほど、高くなる。そこで図11(A)に示されるように燃料噴射圧の高さに応じた複数の領域(図11におけるP1,P2,P3,P4)を設定し、図11(B)に示されるように燃料噴射圧が高いことを示す領域に属しているときほど補正量αが小さくなる吸気行程用補正量マップが取得されるようにすることもできる。
【0103】
こうしてステップS140を通じて機関回転速度及び燃料噴射圧に応じた吸気行程用補正量マップを取得すると、ステップS180へと進み、取得された吸気行程用補正量マップを参照して噴射時期に対応する補正量αを取得する。
【0104】
また、ステップS230において、設定されている燃料噴射量が規定値Y未満である旨の判定がなされた場合(ステップS230:YES)には、ステップS240へと進み、上述したステップS140と同様に機関回転速度及び燃料噴射圧に応じた圧縮行程用補正量マップを取得する。ここでも、機関回転速度と燃料噴射圧の組合せに応じて圧縮行程用補正量マップが複数用意されており、用意されている複数の圧縮行程用補正量マップの中から現在設定されている燃料噴射時期における機関回転速度並びに燃料噴射圧に対応する圧縮行程用補正量マップを取得する。
【0105】
この場合にも、機関回転速度が高いときほど補正量βの増大量が大きくなるように吸気行程用補正量マップが選択されるようになっているとともに、燃料噴射圧が高いときほど補正量βが小さくなるように圧縮行程用補正量マップが選択されるようになっている。
【0106】
こうしてステップS240を通じて機関回転速度及び燃料噴射圧に応じた圧縮行程用補正量マップを取得すると、ステップS280へと進み、取得された圧縮行程用補正量マップを参照して噴射時期に対応する補正量βを取得する。
【0107】
こうした第2の変更例にかかる補正量設定処理によれば、機関回転速度が高いときほど燃料の噴射角度を傾ける量が多くされるようになる。そのため、機関回転速度が高く、燃焼室11内に生じる上昇気流又は下降気流の流速が速い場合であっても、それにあわせて噴射角度を傾ける量を増大させることにより上昇気流又は下降気流による影響を抑制することができる。
【0108】
すなわち、機関回転速度の変化による空気流動の影響の大きさの変化も加味してその影響の大きさの変化を打ち消すように燃料の噴射角度を設定することができる。
また、燃料噴射圧が低いときほど燃料の噴射角度を傾ける量が多くなる一方、燃料の噴射圧が高いときほど燃料の噴射角度を傾ける量が少なくなる。そのため、燃料噴射圧の変化による空気流動の影響の大きさの変化も加味してその影響の大きさの変化を打ち消すように燃料の噴射角度を設定することができる。
【0109】
・なお、上記のような機関回転速度及び燃料噴射圧に応じて補正量αや補正量βを増減させる処理は、第1の変更例にかかる補正量設定処理に限らず、図3を参照して説明した補正量設定処理に組み合わせることもできる。具体的には、図3の補正量設定処理におけるステップS120とステップS180との間にステップS140の処理を追加するとともに、ステップS120とステップS280との間にステップS240の処理を追加する。これにより、燃料噴射量が規定値X,Y以上であるか否かに拘わらず、補正量α,βを設定するとともに機関回転速度及び燃料噴射圧に応じて補正量αや補正量βを増減させる補正量設定処理を実現することができる。
【0110】
・また、機関回転速度や燃料噴射圧に応じて補正量αや補正量βを増減させるための具体的な方法は、第2の変更例にかかる補正量設定処理のように複数用意されている補正量マップの中から補正量マップを選択する方法に限らず適宜変更することができる。
【0111】
例えば、基本となる1つの補正量マップから算出した補正量αや補正量βに機関回転速度や燃料噴射圧に応じて設定される補正係数を乗じることによって補正量を増減させることもできる。
【0112】
・また、補正量α、補正量βのうち一方のみを機関回転速度や燃料噴射圧に応じて増減させる構成や、機関回転速度と燃料噴射圧のうちどちらか一方のみに応じて補正量α、補正量βを増減させる構成を採用することもできる。
【0113】
・また、上記実施形態にあっては、第2ニードル62を制御することにより燃料の噴射角度を変更する燃料噴射弁18を例示したが、本願発明は燃料の噴射角度を変更することのできる燃料噴射弁を備えた筒内噴射式内燃機関であれば適用することができる。そのため、燃料噴射弁の構成は上記実施形態で例示した燃料噴射弁18のような構成に限定されるものではない。すなわち、燃料噴射弁は燃料の噴射角度を変更することができるものであればよい。
【0114】
・上記実施形態では、吸気行程において燃料を噴射する場合と圧縮行程において燃料を噴射する場合の双方において燃料の噴射角度を傾ける構成を示したが、圧縮行程において燃料を噴射する場合にのみ噴射角度を傾ける処理を実行するようにしてもよい。また、吸気行程において燃料を噴射する場合にのみ噴射角度を傾ける処理を実行するようにしてもよい。そのため、吸気行程噴射と圧縮行程噴射とを切り替える内燃機関に限らず、吸気行程噴射のみを行う内燃機関に対して本願発明を適用し、下降気流の流速に応じて燃料の噴射角度を吸気バルブ側に傾けるようにすることもできる。
【0115】
・上記実施形態では、燃焼室11の上面に設けられた吸気バルブ24よりも下方に位置するシリンダ10の壁面に燃料噴射弁18を設け、吸気行程中に燃料を噴射する場合には、同燃料噴射弁18よりも上方に設けられた吸気バルブ24側に向かって燃料の噴射角度を傾ける構成を例示した。これに対して、本願発明は吸気バルブと同様に燃焼室の上面に燃料噴射弁が設けられている筒内噴射式内燃機関に適用することもできる。その場合にも、吸気行程中には吸気バルブと弁座との隙間から燃焼室内に空気が流入するため、燃料噴射弁から噴射された燃料はこの空気流動の影響を受ける。これに対してこうした燃焼室の上面に燃料噴射弁が設けられている筒内噴射式内燃機関に本願発明を適用した場合には、燃焼室に流れ込む空気の流れの上流側である吸気バルブ側に向かって燃料が噴射されるため、噴射された燃料が空気流動によって流されてしまい、シリンダ壁面やピストン頂面に付着してしまうことを抑制することができる。
【符号の説明】
【0116】
1…内燃機関、10…シリンダ、11…燃焼室、12…ピストン、14…コネクティングロッド、16…点火プラグ、18…燃料噴射弁、20…吸気ポート、22…排気ポート、24…吸気バルブ、26…排気バルブ、30…電子制御装置、31…クランクポジションセンサ、32…カムポジションセンサ、33…アクセルポジションセンサ、34…車速センサ、35…水温センサ、36…燃圧センサ、50…噴射口、52…湾曲部、60…第1ニードル、62…第2ニードル、70…第1流路、72…第2流路、80…第1貯留部、82…第2貯留部、84…第3貯留部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料の噴射角度を変更することのできる燃料噴射弁を制御することにより、燃焼室内に噴射する燃料の噴射角度を変更する筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置であり、
吸気行程中に燃料を噴射する場合には、開弁している吸気バルブと弁座との隙間から燃焼室内に流入する空気の流速が速いときに燃料を噴射するときほど燃料の噴射角度を前記吸気バルブ側に傾ける
ことを特徴とする燃料噴射制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料噴射制御装置において、
前記吸気バルブが開弁し始めた吸気行程初期に燃料を噴射する場合に燃料の噴射角度を前記吸気バルブ側に傾ける量を最も多くし、吸気行程の後期に燃料を噴射する場合ほど燃料の噴射角度を前記吸気バルブ側に傾ける量を少なくする
ことを特徴とする燃料噴射制御装置。
【請求項3】
燃料の噴射角度を変更することのできる燃料噴射弁を制御することにより、燃焼室内に噴射する燃料の噴射角度を変更する筒内噴射式内燃機関の燃料噴射制御装置であり、
圧縮行程中に燃料を噴射する場合には、ピストンの上昇に伴って燃焼室内に発生する上昇気流の流速が速いときに燃料を噴射するときほど燃料の噴射角度を前記ピストン側に傾ける
ことを特徴とする燃料噴射制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の燃料噴射制御装置において、
圧縮行程中に燃料を噴射する場合には、前記ピストンの上昇速度が速いときに燃料を噴射するときほど燃料の噴射角度を前記ピストン側に傾ける
ことを特徴とする燃料噴射制御装置。
【請求項5】
請求項3に記載の燃料噴射制御装置において、
圧縮行程の中期に燃料を噴射する場合に噴射角度を前記ピストン側に傾ける量を最も多くし、圧縮行程の初期及び後期に燃料を噴射する場合には圧縮行程の中期に燃料を噴射する場合よりも噴射角度を前記ピストン側に傾ける量を少なくする
ことを特徴とする燃料噴射制御装置。
【請求項6】
請求項2又は請求項5に記載の燃料噴射制御装置において、
燃料を噴射するときの機関回転速度が高いときほど燃料の噴射角度を傾ける量を多くする
ことを特徴とする燃料噴射制御装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の燃料噴射制御装置において、
前記燃料噴射弁から前記燃焼室内に噴射される燃料の噴射圧が低いときほど燃料の噴射角度を傾ける量を多くする一方、前記燃料噴射弁から前記燃焼室内に噴射される燃料の噴射圧が高いときほど燃料の噴射角度を傾ける量を少なくする
ことを特徴とする燃料噴射制御装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の燃料噴射制御装置において、
前記燃料噴射弁が噴射する燃料の噴射量が規定値以上の場合には、燃料の噴射角度を傾けずに燃料を噴射する
ことを特徴とする燃料噴射制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−36342(P2013−36342A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170405(P2011−170405)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】