説明

物流技術車両、特にローリフトトラック

【課題】本発明の課題は、冒頭で述べた形式の物流技術車両(1)を改良して、安価な構造費用および小さい取付けスペースしか必要としない走行駆動ユニットを有する物流技術車両を提供することである。
【解決手段】本発明の構成では、走行モータが、ブラシレスな電動機(15)として構成されており、該電動機(15)が、伝動装置の介在なしに前記駆動車輪(5)に駆動接続しているようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物流技術車両、特にローリフトトラックであって、走行駆動ユニットを有しており、該走行駆動ユニットが、駆動車輪と、走行モータとを有しており、該走行モータが、前記駆動車輪に駆動接続され、電動機として構成されている形式のものに関する。
【背景技術】
【0002】
このような、冒頭に述べた形式の物流技術車両(Lagertechnikfahrzeug)では、走行駆動ユニットの走行モータは通常、物流技術車両の駆動車輪の上方に配置されている。この場合、走行モータは減速歯車装置、たとえばかさ歯車によって形成された斜交かさ歯車を介して、駆動車輪を駆動するために駆動車輪に接続している。このような種類の走行駆動ユニットは、多くの構造費用がかかり、かつ大きな取付けスペースを必要とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、冒頭で述べた形式の物流技術車両を改良して、安価な構造費用および小さい取付けスペースしか必要としない走行駆動ユニットを有する物流技術車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題を解決するために本発明の構成では、走行モータがブラシレスな電動機として構成されており、該電動機が、伝動装置の介在なしに駆動車輪に駆動接続しているようにした。本発明によって、駆動車輪の、伝動装置を用いない直接駆動が得られる。この場合、走行モータとしてブラシレスな電動機が使用される。伝動装置を使用せずにブラシレスな電動機を走行モータとして使用することで、少ない構造費用および取付けスペースを必要とする、メンテナンス不要な走行駆動ユニットが得られる。さらに、減速歯車装置を省いたことで、少ない自重を有する走行駆動ユニットを得ることができる。この走行駆動ユニットでは物流技術車両を駆動する際の騒音が少ない。
【発明の効果】
【0005】
本発明の有利な実施形態によれば、走行モータは、インホイールモータ(車輪ハブモータ:Radnabenmotor)として形成されている。このインホイールモータは駆動車輪の内側に配置されている。走行モータを駆動車輪の輪郭の内側に配置することによって、取付けスペースをさらに減じることができる。軽量かつコンパクトに組み立てられた走行駆動ユニットの低い重心、ひいては物流技術車両の低い重心によって、有利な重心位置を得ることができる。これによって本発明による物流技術車両は、非平坦な走行路面がある、たとえば道路上やフィールド、特に倉庫外や製造工場外での使用に特に適している。この有利な重心位置および少ない自重によって、本発明による物流技術車両は、縁石の縁部や縁石段差のような障害物、上り坂や下り坂、または側方に傾斜した路面において高い安定性を有する。
【0006】
走行モータのハウジングが、駆動車輪のリムを収容するためのフランジを備えていると有利である。回動可能なハウジングを有するアウターロータとしてこの種の走行モータを構成した場合、フランジを使用して、インホイールモータとして形成された走行モータによって簡単な形式で駆動車輪が駆動され得る。この場合、このフランジにはリムが取り付け可能である。
【0007】
走行モータのハウジングが、ブレーキ装置、特に駐車ブレーキ装置のブレーキディスクを取り付けるための別のフランジを有していると特に有利である。これによって、駐車ブレーキ装置を、走行モータと、ひいては駆動車輪とに簡単な形式で接続させることができる。
【0008】
本発明による別の有利な実施形態では、ハウジングが、走行モータを貫通している支承シャフトに回動可能に支承されている。この場合、この支承シャフトは物流技術車両の支承構成部分に相対回動不能に取り付けられている。走行モータの支承シャフトは、したがって、物流技術車両の走行駆動ユニットを取り付けるための定置の車輪シャフトを形成している。これによって、安価な構造費用で走行駆動ユニットを物流技術車両に取り付けることができ、物流技術車両に設けられた走行モータの反動モーメントを支えることができる。
【0009】
走行駆動ユニットの安価な構造費用および簡単な組立てもしくは分解に関連して、本発明による有利な別の実施形態に従って、支承シャフトが支承構成部分に摩擦接続結合部、すなわち摩擦による束縛に基づいた結合部を使用して取付け可能であるようにすると有利である。たとえば緊締結合部として形成される摩擦接続結合部の代わりに、物流技術車両に設けられた走行駆動ユニットを取り付けるための形状接続結合部、すなわち形状による束縛に基づいた結合部が設けられていて良い。この場合、走行駆動ユニットは駆動車輪と走行モータとから成っている。
【0010】
支承構成部分は、本発明の有利な実施形態によれば、二又支承部材として形成されている。この二又支承部材は、支承シャフトの少なくとも一方のシャフト段部と作用接続可能である。この場合、たとえばねじ結合部を用いて、シャフト段部に対して軸線方向で二又支承部材を緊締することによって、支承シャフトと支承構成部分との間で、走行駆動ユニットを物流技術車両に取り付けるための摩擦接続結合が簡単な形式で形成され得る。
【0011】
インホイールモータとして構成された走行モータに電気的なエネルギーを簡単に供給することは、本発明の有利な実施形態によって、電動機に給電するための電気的なケーブル接続部が、支承シャフトを通って案内されていることによって得られる。
【0012】
電動機に電子制御部が組み込まれていると有利であり、これによって構造費用がさらに減じられる。
【0013】
本発明の有利な別の実施形態によって、駆動モータを用いた回生ブレーキによって、運転ブレーキ装置が提供可能であると、簡単な形式でブレーキ段階において良好な制御特性を有する物流技術車両の運転ブレーキ装置を設けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の別の利点および特徴を、以下に実施例の概略的な図面につき詳しく説明する。図1は、ローリフトトラックとして形成された本発明による物流技術車両を示した図であり、図2は、走行駆動ユニットの拡大図であり、図3は、走行モータの拡大図であり、図4は、走行駆動ユニットを有する物流技術車両の駆動部分の拡大図である。
【0015】
図1は、本発明によるローリフトトラックとして形成された物流技術車両1を示している。この物流技術車両1は、駆動部分2と積載部分3とを有している。この積載部分3は、図示されていない手段によって駆動部分2に対して鉛直に運動可能である。駆動部分2は、湾曲したフレーム区分4を有している。このフレーム区分4には、駆動車輪5を備えた走行駆動ユニット14が操舵可能に配置されている。リフトトラック1の操舵は、走行駆動ユニット14と接続している操舵桿6によって行われる。駆動車輪5は、この場合、空気入りの駆動車輪として構成されている。
【0016】
積載部分3は積載アーム7a,7bを有している。これらの積載アーム7a,7bは、鉛直方向に昇降可能な積載ローラ8a,8bによって路面に支持されている。これらの積載アーム7a,7bによって、積載物、たとえばパレット、格子状ボックスパレット、または小物用コンテナが収容され、持ち上げられかつ搬送され得る。積載部分3の、駆動部分2に面した領域には、鉛直なハウジング収容部9が配置されている。このハウジング収容部9は、鉛直に配置された側方のフレーム部分9a,9bと、下側の横方向フレーム部分9cと、上側の横方向フレーム部分9dとによって形成されている。このハウジング収容部9には、ハウジング10が取り付けられる。ハウジング10には、バッテリ11のためのバッテリボックスと、物流技術車両1に設けられた電気的な駆動システムの、別の電気的もしくは電子的コンポーネントとが備えられている。
【0017】
駆動部分2に設けられた湾曲されたフレーム区分4と、積載アーム7a、7bおよびハウジング収容部9によって形成された積載部分3とは、この場合、閉じた横断面を有する一体的な中空プロフィール、たとえば管状成形材によって形成されている。これによって物流技術車両1は、高い安定性と頑丈性を備えるにもかかわらず、僅かな自重しか有さない。
【0018】
本発明によって、駆動車輪5を駆動するための走行駆動ユニット14は、ブラシレスな電動機15として形成されたインホイールモータを有している。このインホイールモータは伝動装置の介在なしに駆動車輪5と接続している。インホイールモータとして形成された電動機15は、この場合、図2から判るように、駆動車輪の輪郭内に配置されていて、それによって駆動車輪5に組み込まれて構成されている。
【0019】
走行モータを形成している電動機15は、図3から判るように、支承シャフト16を有している。支承シャフト16には、電動機15のハウジング17が回動可能に支承されている。ハウジング17は、この場合、駆動車輪5のリム19を取り付けるためのフランジ18を備えている。
【0020】
支承シャフト16は、電動機15のハウジング17を軸線方向で貫通している。この支承シャフト16は、図4に図示の物流技術車両1の支承構成部分20に相対回動不能に固定可能である。
【0021】
支承構成部分20は、二又支承部材21として形成されていて、図1および図4に示すようにフランジプレート21a、21bを有している。これらのフランジプレート21a、21bはそれぞれ長孔状の切欠を備えている。この切欠は、支承シャフト16の、電動機15のハウジング17から突出したシャフト端部16a,16bを収容するために設けられている。この場合、支承シャフト16は両シャフト端部16a,16bにシャフト段部22a,22bをそれぞれ有している。シャフト段部22a,22bは、対応するフランジプレート21a,21bと作用接続させることができる。フランジプレート21a,21bの、シャフト段部22a,22bに対する軸線方向の緊締は、この場合、支承シャフト16と支承構成部分20との間に摩擦接続結合を生ぜしめてもよく、支承シャフト16が支承構成部分20に相対回動不能に取り付けられてよい。この場合、支承シャフト16のシャフト端部16a,16bは、それぞれねじ山区分を備えている。これによって、支承シャフト16のシャフト端部16a,16bに螺着されたねじ山ナット(図示せず)によって、フランジプレート21a、21bが、シャフト段部22a,22bに対して軸線方向で緊締されてよい。
【0022】
電動機15のハウジング17には、別のフランジ(図示せず)が配置されている。この別のフランジには、図4に示したブレーキ装置26、たとえば駐車ブレーキ装置のブレーキディスクが取り付けられて良い。
【0023】
支承シャフト16、たとえばシャフト端部16aを通って、さらに電気的なケーブル接続部が案内されている。これによって簡単な形式で、電動機15とハウジング10との電気的な接続が形成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】ローリフトトラックとして形成された本発明による物流技術車両を示した図である。
【図2】走行駆動ユニットの拡大図である。
【図3】走行モータの拡大図である。
【図4】走行駆動ユニットを有する物流技術車両の駆動部分の拡大図である。
【符号の説明】
【0025】
1 物流技術車
2 駆動部分
3 積載部分
4 フレーム区分
5 駆動車輪
6 操舵桿
7a 積載アーム
7b 積載アーム
8a 積載ローラ
8b 積載ローラ
9 ハウジング収容部
10 ハウジング
11 バッテリ
14 走行駆動ユニット
15 電動機
16 支承シャフト
16a シャフト端部
16b シャフト端部
17 ハウジング
18 フランジ
19 リム
20 支承構成部分
21 二又支承部材
22a シャフト段部
22b シャフト段部
25 ケーブル接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物流技術車両であって、走行駆動ユニットを有しており、該走行駆動ユニットが、駆動車輪と、走行モータとを有しており、該走行モータが、前記駆動車輪に駆動接続され、電動機として構成されている形式のものにおいて、走行モータが、ブラシレスな電動機(15)として構成されており、該電動機(15)が、伝動装置の介在なしに前記駆動車輪(5)に駆動接続していることを特徴とする、物流技術車両。
【請求項2】
走行モータが、インホイールモータとして構成されていて、該インホイールモータが、駆動車輪(5)の内側に配置されている、請求項1記載の物流技術車両。
【請求項3】
走行モータのハウジング(17)が、駆動車輪(5)のリム(19)を収容するためのフランジ(18)を有している、請求項1または2記載の物流技術車両。
【請求項4】
走行モータのハウジング(17)が、ブレーキ装置(26)のブレーキディスクを取り付けるためのさらに別のフランジを有している、請求項1から3までのいずれか1項記載の物流技術車両。
【請求項5】
前記ハウジング(17)が、走行モータを貫通している支承シャフト(16)に回動可能に支承されており、前記支承シャフト(16)が、物流技術車両の支承構成部分(20)に相対回動不能に取付け可能である、請求項3または4記載の物流技術車両。
【請求項6】
前記支承シャフト(16)が、支承構成部分(20)に摩擦接続結合部によって取付け可能である、請求項5記載の物流技術車両。
【請求項7】
前記支承構成部分(20)が、二又支承部材(21)として形成されおり、該二又支承部材(21)が、支承シャフト(16)の、少なくとも1つのシャフト段部(22a;22b)に作用接続可能である、請求項5または6記載の物流技術車両。
【請求項8】
走行モータに給電するために、電気的なケーブル接続部(25)が、支承シャフト(16)を通って案内されている、請求項5から7までのいずれか1項記載の物流技術車両。
【請求項9】
走行モータに電子制御部が組み込まれている、請求項1から8までのいずれか1項記載の物流技術車両。
【請求項10】
走行モータを用いた回生ブレーキによって、運転ブレーキ装置が提供可能である、請求項1から9までのいずれか1項記載の物流技術車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−29418(P2009−29418A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−192164(P2008−192164)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(507094326)リンデ マテリアル ハンドリング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (22)
【氏名又は名称原語表記】Linde Material Handling GmbH
【住所又は居所原語表記】Carl−von−Linde−Platz, D−63743 Aschaffenburg, Germany
【Fターム(参考)】