説明

現像装置、カートリッジ、及び画像形成装置

【課題】本発明の目的は、上記従来の技術を更に発展させたものであり、循環変化部材を用いた現像装置において、現像容器内のトナーが少なくなり且つトナーの流動性が低下した場合においても、画像濃度が薄くなるのを抑えること。
【解決手段】現像容器47に収納されたトナーを現像スリーブ41に向けて搬送する回転可能なトナー搬送部材43と、現像スリーブ41から離れた位置に対向して設けられ、現像スリーブ41の近傍のトナーの循環を変化させる循環変化部材1と、を有する現像装置40であって、トナー搬送部材43を、循環変化部材1がトナー搬送部材43の回転領域内に位置するように設けて、現像スリーブ41と循環変化部材1の間のトナーをトナー搬送部材43によってトナー搬送部材43の回転方向に押し出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置、カートリッジ、及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた画像形成装置においては、感光体上の静電潜像を忠実に再現するために、磁性一成分現像剤であるトナーにおいて乾式現像法の一つとしてジャンピング現像法がある。このジャンピング現像法とは、次のようなものである。まず、感光体に対して現像剤担持体としての現像スリーブを一定の間隔(50〜500μm)を保って対向させて配置する。そして、現像スリーブに直流と交流を重畳した現像バイアスを印加してトナー粒子を往復させる電界を形成する。これにより、現像スリーブ上に薄層に塗布されたトナーが感光体上の静電潜像に飛翔、付着して、潜像が反転現像されたトナー像として可視化される。
【0003】
このジャンピング現像法は、摩擦帯電したトナーを電界の力によって感光体上に移動させるため、潜像を忠実に再現させるためにはトナーの均一帯電が重要になってくる。トナーを均一帯電させる手段の1つとして、図6(a)に示すように、現像剤層厚規制部材としての現像ブレード442を、現像スリーブ441の回転方向(矢印R2方向)に対してカウンター方向に当接する構成が知られている。この構成では、図6(b)に示すように、現像ブレード442のニップ部Nの端部から自由端までの部位(以下、NE部という)と現像スリーブ441の表面との間に微小なくさび部が形成される。そのため、現像スリーブ441に搬送されてくるトナーは、現像ブレード442と現像スリーブ441とのニップ部Nに到達する前に、その大部分がNE部に入り込むことができず、少量のトナーをニップ部Nに通過させることになる。従って、現像スリーブ441の回転方向に対しカウンターに当接する現像ブレード442を用いた場合、低圧で薄層コートを実現できるメリットがある。しかしながら、この構成では、現像起因のネガゴーストが発生する場合がある。この現像起因のネガゴーストを改善する方法の1つとして、現像容器内の現像スリーブ近傍のトナー循環を変化させる部材である循環変化部材401を用いて改善する構成が提案されている(特許文献1)。
【0004】
図6(a)に循環変化部材を用いた現像容器内のトナーの循環を表す。循環変化部材を用いた現像容器内では、現像ブレード442のNE部(図6(b)参照)で現像ブレード外にはじかれたトナーの一部が現像スリーブ441と循環変化部材401の間を矢印M1方向に循環する。これにより、現像スリーブ近傍には帯電された鏡映力を持つトナーが増加する。そのため、循環変化部材が無いときと比較して、スリーブ1周目に潜像に対して現像を行う直前の現像スリーブ上のトナーコート量と、スリーブ1周目に現像を行った直後のスリーブ2周目に潜像に対して現像を行う直前の現像スリーブ上のトナーコート量の差が少なくなる。その結果、ネガゴーストの発生を抑えることが可能になる。それと同時にゆっくりではあるが循環変化部材401と現像スリーブ441の間のトナーを循環変化部材441上に押し上げる方向(矢印M2方向)にトナーが循環する。これにより、同じトナーが現像スリーブ441と循環変化部材401の間を長時間循環(矢印M1方向に循環)するのを防止し、トナー劣化を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−298755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、循環変化部材を用いた現像装置であっても、現像容器内のトナーが消費されて少なくなる使用終了近傍まで画像を印刷していくと、画像濃度が薄くなる場合がある。この傾向は、温度と湿度が常温常湿環境より高い高温高湿環境下で、より顕著になる。以下、説明する。
【0007】
一般的に、トナーは、温度や湿度が常温常湿環境より高い高温高湿環境だと、画像を印刷しなくても流動性が低い傾向がある。
【0008】
現像容器内のトナーが少なくなる使用終了近傍まで画像を印刷していくと、現像容器内のトナーは、現像ブレードのNE部を何度も通過するので、トナーにストレスがかかり、外添剤がトナーの母体に埋め込まれてしまう傾向にある。そのため、現像容器内のトナーは、トナーが消費されて少なくなるほど、流動性が低下し、劣化してしまう。特に、温度や湿度が常温常湿環境より高い高温高湿環境下では、常温常湿環境より外添剤がトナーの母体に埋め込まれやすくなる。そのため、現像容器内のトナーは、常温常湿環境よりも更に流動性が低下し、劣化してしまう。
【0009】
このように現像容器内のトナーが消費されて少なくなると、現像スリーブ近傍にしかトナーが存在しなくなり、上述したようにトナーの流動性が低下する。そのため、矢印M2方向へのトナーの循環が鈍くなり、矢印M1方向への循環によって同じトナーが長い時間摺擦を繰り返されるようになる。これにより、更に外添剤がトナーの母体に埋め込まれることとなり、トナーの流動性の低下とトナー劣化が更に進むという悪循環に陥り、画像濃度が薄くなってしまう。
【0010】
そこで、本発明の目的は、上記従来の技術を更に発展させたものであり、循環変化部材を用いた現像装置において、現像容器内のトナーが少なくなり且つトナーの流動性が低下した場合においても、画像濃度が薄くなるのを抑えることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は、表面に現像剤を担持して搬送する回転可能な現像剤担持体と、現像剤を収納する現像容器と、前記現像容器に収納された現像剤を前記現像剤担持体に向けて搬送する回転可能な現像剤搬送部材と、前記現像剤担持体から離れた位置に対向して設けられ、前記現像剤担持体の近傍の現像剤の循環を変化させる循環変化部材と、を有する現像装置であって、前記現像剤搬送部材を、前記循環変化部材が前記現像剤搬送部材の回転領域内に位置するように設けて、前記現像剤担持体と前記循環変化部材の間の現像剤を前記現像剤搬送部材によって前記現像剤搬送部材の回転方向に押し出すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、現像剤担持体と循環変化部材の間の現像剤が、現像剤搬送部材によってその回転方向に押し出されて、現像容器内の別の現像剤と入れ代えられる。そのため、現像剤が少なくなり且つ現像剤の流動性が低下した場合においても、現像剤担持体と循環変化部材の間で同じ現像剤が長時間循環するのを抑えることができる。これにより、更なる現像剤の流動性の低下と劣化を防止し、画像濃度が薄くなるのを抑え、使用終了近傍まで安定した濃度の画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係る現像装置の部分断面図
【図2】本実施形態に係る現像装置の部分断面図
【図3】本実施形態に係るプロセスカートリッジの断面図
【図4】本実施形態に係るプロセスカートリッジにおける現像装置の断面図
【図5】本実施形態に係る画像形成装置の断面図
【図6】(a)は従来の現像装置の部分断面図、(b)は現像ブレードの拡大図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、それらの相対配置などは、本発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。従って、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0015】
以下に、現像装置を備えたカートリッジ、及びこのカートリッジが着脱可能に装着された電子写真画像形成装置について説明する。
【0016】
ここで、電子写真画像形成装置とは、電子写真画像形成プロセスを用いて、記録媒体に画像を形成するものである。そして、電子写真画像形成装置の例としては、例えば電子写真複写機、電子写真プリンタ(例えばレーザビームプリンタ、LEDプリンタ等)、フアクシミリ装置及びワードプロセッサ等が含まれる。
【0017】
また、記録媒体とは、電子写真画像形成装置によって画像が形成されるものであって、例えば、紙、OHPシート等が含まれる。
【0018】
また、カートリッジとは、例えば、プロセスカートリッジ或いは現像カートリッジであって、電子写真画像形成装置の本体に取り外し可能に装着されて、記録媒体に画像を形成する画像形成プロセスに寄与するものである。ここで、前記プロセスカートリッジとは、少なくとも、プロセス手段としての現像手段と、電子写真感光体ドラムとを一体的にカートリッジ化して、電子写真画像形成装置の本体に取り外し可能に装着するものである。従って、プロセスカートリッジとは、前記電子写真感光体ドラムとプロセス手段としての現像手段のほか、帯電手段またはクリーニング手段を一体的にカートリッジ化して、前記本体に取り外し可能に装着するものも含まれる。尚、電子写真感光体ドラムと現像手段とを一体的に有するプロセスカートリッジを所謂一体型と称する。また、電子写真感光体ドラムと現像手段以外のプロセス手段とを一体的に有するプロセスカートリッジを所謂分離型と称する。
【0019】
ここで前記プロセスカートリッジは、使用者自身によって画像形成装置本体に対する着脱を行うことができる。そのため、装置本体のメンテナンスを容易に行うことができる。尚、前記プロセス手段は、前記電子写真感光体ドラムに作用するものである。
【0020】
また、現像カートリッジとは、現像スリーブを有し、前記現像スリーブによって、前記電子写真感光体ドラムに形成された静電潜像を現像するのに用いられる現像剤(トナー)を収納しており、前記本体に取り外し可能に装着されるものである。尚、前記現像カートリッジの場合には、前記電子写真感光体ドラムは前記装置本体に取り付けられている。或いは、前記電子写真感光体ドラムは、前記所謂分離型プロセスカートリッジに設けられている(この場合には、プロセスカートリッジは、現像手段を有してはいない)。尚、前記現像カートリッジも、使用者自身によって画像形成装置本体に対する着脱を行うことができる。そのため、装置本体のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0021】
そこで、カートリッジとしては、前記所謂一体型又は所謂分離型のプロセスカートリッジが含まれる。また、カートリッジとしては、所謂分離型のプロセスカートリッジと前記現像カートリッジが対になって用いられる場合が含まれる。また、カートリッジとしては、前記電子写真感光体ドラムが前記装置本体に固定して取り付けられており、前記電子写真感光体ドラムに作用可能に前記現像カートリッジが着脱可能に用いられる場合が含まれる。
【0022】
〔第1実施形態〕
(画像形成装置の全体構成)
まず図5を用いて、画像形成装置の全体構成について簡単に説明する。図5は、画像形成装置の概略断面図である。
【0023】
図5において、画像形成装置は、プロセスカートリッジ2を画像形成装置本体(以下、装置本体という)101に着脱可能とした、電子写真技術を利用したレーザービームプリンタである。
【0024】
プロセスカートリッジ2が装置本体101に装着されたとき、プロセスカートリッジ2の上側には露光装置(レーザースキャナユニット)3が配置されている。また、前記プロセスカートリッジ2の下側には画像形成対象となる記録媒体としてシートPを収容したシートトレイ4が配置されている。
【0025】
更に、装置本体101には、シートPの搬送方向に沿って、ピックアップローラ5、給送ローラ(不図示)、搬送ローラ(不図示)、転写ガイド6、転写用帯電ローラ7、搬送ガイド8、定着装置9、排出ローラ対10、排出トレイ11等が配置されている。
【0026】
(プロセスカートリッジの構成)
次にプロセスカートリッジの構成について簡単に説明する。図3は、本実施形態に係るプロセスカートリッジ2を示す概略断面図である。図4は、本実施形態に係るプロセスカートリッジ2における現像装置40を示す概略断面図である。
【0027】
図5及び図3において、プロセスカートリッジ2は、電子写真感光体としての感光体ドラム20と、これに作用するプロセス手段を一体的に収容している。ここでは、プロセス手段としての、帯電装置(帯電手段)30と、現像装置(現像手段)40と、クリーニング装置(クリーニング手段)50を一体的に収容している。感光体ドラム20と帯電装置30はクリーニング装置50の枠体51に取り付けられている。
【0028】
(画像形成プロセスの説明)
次に、図5を用いて画像形成動作の概略を説明する。
【0029】
プリントスタート信号に基づいて、感光体ドラム20は矢印R1方向に回転駆動される。感光体ドラム20の外周面にはバイアス電圧が印加された帯電装置30が接触している。この帯電装置30によって前記感光体ドラム20の外周面は、一様均一に帯電される。
【0030】
レーザースキャナーユニット3からは、目的画像情報の時系列的電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザー光Lが出力される。そして、レーザー光Lは、プロセスカートリッジ2の上面の露光窓部(不図示)からプロセスカートリッジ2内部に入光して感光体ドラム20の外周面を走査露光する。
【0031】
これにより、感光体ドラム20の外周面には目的画像情報に対応した静電潜像が形成されていく。この静電潜像は、現像装置40の現像剤層厚規制部材としての現像ブレード42によってトリボ付与と層厚規制を受けた、現像剤担持体としての現像スリーブ41上の現像剤(トナー)によってトナー像として現像される。
【0032】
一方、レーザー光Lの出力するタイミングと合わせて、ピックアップローラ5、給送ローラ(不図示)、搬送ローラ対(不図示)によって記録媒体としてのシートPがシートトレイ4から給送される。シートPは、転写ガイド6を経由して、感光体ドラム20と転写用帯電ローラ7との間の転写位置へタイミングよく供給される。この転写位置において、トナー像は感光体ドラム20からシートPに順次転写されていく。
【0033】
トナー像が転写されたシートPは、感光体ドラム20から分離されて搬送ガイド8に沿って定着装置9に搬送される。定着装置9を構成する定着ローラ9aと加圧ローラ9bとのニップ部で加圧・加熱定着処理が行われて前記トナー像はシートPに定着される。トナー像の定着処理を受けたシートPは排出ローラ対10まで搬送され、排出トレイ11に排出される。
【0034】
一方、転写後の感光体ドラム20は、クリーニング装置50のクリーニングブレード52により外周面との残留トナーが除去されて、再び、帯電から始まる作像に供される。
【0035】
(現像装置)
ここで前記プロセスカートリッジ2における現像装置40について詳しく説明する。図4に示すように、現像装置40は、トナーTを収納する現像容器47と、現像剤担持体である現像スリーブ41と、現像剤層厚規制部材である現像ブレード42と、現像剤搬送部材であるトナー搬送部材43と、循環変化部材1等を有している。
【0036】
なお、現像容器47は、トナー供給開口45aで隔てられたトナー室45と現像室44とからなり、トナー室45にはトナー搬送部材43が、現像室44には現像スリーブ41が設けられている。トナー室45内のトナーをトナー搬送部材43の回転によってトナー供給開口45aを通して現像室44に送り出す。
【0037】
(現像スリーブと現像ブレードの説明)
本実施形態における現像スリーブ41は、表面に現像剤(トナー)を担持して搬送する回転可能な現像剤担持体であり、矢印R2方向に回転駆動される。ここでは、現像スリーブとして、φ16mmの素管にカーボン粒子等を分散した塗液をコーティングし、乾燥して、表面粗さRa=1.4μmのものを用いた。
【0038】
また、現像ブレード42は、現像スリーブ41の周面のトナー量(トナー層の厚さ)を規定する現像剤層厚規制部材である。現像ブレード42は、ウレタンゴムを支持板金に接着してなり、現像スリーブ41の回転に対して逆らう方向(カウンター方向)で現像スリーブ41に所定の圧(ここでは圧30g/cm)で当接する。本実施形態では現像ブレード42の厚みが均一のものを使用した。
【0039】
ここで、現像スリーブ41には現像バイアス電源46により、直流電圧に交流電圧を重畳した現像バイアスが印加され、感光体ドラム20は接地されている。感光体ドラム20と現像スリーブ41との対向領域では電界が発生するため、前述の帯電されたトナーによって感光体ドラム20表面の潜像に現像される。
【0040】
(マグネットロールの説明)
現像スリーブ41内に周方向に設けた4つの磁極分布が配設されている現像用マグネットロール41aが設けられている。現像スリーブ41の回転中心をOとし、現像スリーブ41の回転中心から重力方向に対して垂直に引いた線を線Aとし、現像スリーブ41の回転方向を正とした場合に、トナー搬送極S2は5°の方向にあり、磁力が800ガウスのものを用いた。
【0041】
(循環変化部材の説明)
循環変化部材1は、現像スリーブ41と現像ブレード42から離れた近傍の位置に対向して設けられ、トナー室45内の現像スリーブ41近傍のトナーの循環を変化させる部材である。ここでは、循環変化部材1として、平板を真中で折り曲げてL字型にした循環規制部材を用いている。この折り曲げ部をXとし、折り曲げ部Xが現像スリーブ41の表面に最も近接するように配置している。この循環変化部材1は、上端部及び下端部を有し、この折り曲げ部Xを介して上端部をa、下端部をbとする。
【0042】
ここでは、現像スリーブ41に対する循環変化部材1の位置を以下のようにしている。現像スリーブ41の回転中心をOとし、この回転中心Oから重力方向に対して垂直に引いた線を線Aとする。現像スリーブ41の回転中心Oから現像スリーブ41表面に最も近接している循環変化部材1の折り曲げ部Xに引いた線を線Bとする。そして、現像スリーブ41の回転方向を正とした場合、線Bの線Aに対する傾きが所定の角度αとなるように、現像スリーブ41に対する循環変化部材1の位置を設定している。更に、現像スリーブ41と循環変化部材1の最短距離をCとし、この距離CがC=1〜10mmの範囲になるようにしている。
【0043】
なお、ここでは、現像容器内の現像スリーブ近傍のトナーの循環を変化させる循環変化部材として、ネガゴーストが発生しない高品位な画像を得るため手段であるL字型の循環規制部材を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、現像装置内の現像剤量を検知する現像剤検知手段であるプレートアンテナの一方の手段を、循環変化部材として利用するために設置するなど、その他の手段を循環変化部材を設けた構成としても良い。また、循環変化部材1の形状は、前述したL字型に限定されるものではない。
【0044】
(トナー搬送部材の説明)
トナー搬送部材43は、トナー室45に収納されたトナーを現像スリーブ41に向けて搬送する回転可能な現像剤搬送部材である。トナー搬送部材43は、基端部が回転軸に設けられた、先端部が自由端の弾性シート43aを有しており、矢印R3方向に回転駆動される。ここでは、弾性シート43aは厚さ100μmのPPSを用いた。更に、トナー搬送部材43は、前記循環変化部材1がトナー搬送部材43の回転領域内に位置するように設けられている。これにより、現像スリーブ41と循環変化部材1の間のトナーが、トナー搬送部材43によってその回転方向に押し出され、別のトナーと入れ代えることができる。
【0045】
(実験1)
以下に、図1に示す距離Y1,Y2を変化させて、高温高湿環境下(温度32.5度、湿度80%環境)で使用終了近傍まで画像を印刷していった場合の、画像濃度と現像スリーブと循環変化部材の間のトナーの押し上げについて調べた。なお、距離Y1は、トナー搬送部材43の回転軸中心から、現像スリーブ41に最も近接している循環変化部材1の位置(ここでは折り曲げ部X)までの距離である。距離Y2は、トナー搬送部材43の回転軸中心から弾性シート43aの先端部までの距離である。この距離Y1,Y2のY2−Y1を変化させた場合の画像濃度と現像スリーブと循環変化部材の間のトナーの押し上げについて調べた。結果を表1に示す。
【0046】
本実験における循環変化部材の位置について、図2を用いて装置本体に装着した場合の位置で説明する。
【0047】
ここでは循環変化部材として6mmの平板を真中で垂直に折り曲げてL字型にしたものを用いている。折り曲げ部Xが現像スリーブ41の表面に最も近接するように循環変化部材を配置している。
【0048】
具体的には、現像スリーブ41の回転方向を正とした場合、前述した線Bの線Aに対する傾き(角度α)が25°、スリーブと循環変化部材の最短距離Cが5mmとなる位置に、現像スリーブ41に対して循環変化部材1を設置している。更に、上端部aは循環変化部材の折り曲げ部Xから線Bに対して45°方向に3mmの位置にあり、下端部bは循環変化部材の折り曲げ部Xから線Bに対して−45°方向にXから3mmの位置にある。
【0049】
本実験では印刷可能ページ枚数13000枚のプロセスカートリッジを用いて、使用終了近傍の12800枚まで印刷し、12800枚時点で印字率100%のベタ黒画像を印刷し、画像濃度を確認した。尚、このときの画像濃度はMacbeth社製濃度計RD−918を用いて測定した。画像濃度の判断は、画像濃度1.3以上を○、画像濃度1.2以上を△、画像濃度1.2未満を×としている。トナー搬送部材43の回転方向へのトナーの押し出し(矢印M2方向のトナー循環)の判断は、12800枚まで印刷した後にプロセスカートリッジ上部に穴をあけて、空回転機を用いてプロセスカートリッジを空回転させながら直接目視して判断した。現像スリーブと循環変化部材の間からトナーが押し出される様子を観察できれば○、トナーが押し出される様子を観察できなければ×と判断した。空回転の速度は装置本体にプロセスカートリッジを装着した時のプロセススピードと同様にし、209nmm/secとした。結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
前記距離Y1,Y2の関係がY2−Y1<0mmの条件では、高温高湿環境下で使用終了近傍まで画像を印刷した場合、画像濃度及びトナーの押し上げはともに×であった。すなわち、Y2−Y1<0mmの条件では、トナーが消費されて少なくなった場合に、トナー搬送部材43による現像スリーブと循環変化部材の間のトナーの押し上げが行えない。そのため、トナーの流動性の低下とトナーの劣化が進み、矢印M2方向の循環が鈍くなり、トナーの流動性の低下とトナーの劣化が更に進むという悪循環に陥り、画像濃度が薄くなったものと思われる。
【0052】
一方、前記距離Y1,Y2の関係がY2−Y1>0mmの条件では、高温高湿環境下で使用終了近傍まで画像を印刷した場合、画像濃度及びトナーの押し上げはともに○であった。すなわち、Y2−Y1>0mmの条件では、トナーが消費されて少なくなっても、トナー搬送部材43による現像スリーブと循環変化部材の間のトナーの押し上げが行われた。そのため、現像容器内のトナーは現像ブレードのNE部を何度も通過し流動性が低下しても、現像スリーブと循環変化部材の間のトナーはトナー搬送部材によって矢印M2方向に強制的に押し上げられた。これにより、矢印M1方向へのトナーの循環によって同じトナーが長い時間循環(現像スリーブとの摺擦)を繰り返さないため、トナーの外添剤が母体に埋め込まれず、トナーの流動性の低下とトナーの劣化を抑えることができる。そのため、画像濃度が薄くなるのを押さえることができたものと思われる。
【0053】
なお、前記距離Y1,Y2の関係がY2−Y1=0mmの条件では、高温高湿環境下で使用終了近傍まで画像を印刷した場合、画像濃度及びトナーの押し上げはともに△であった。Y2−Y1=0mmの条件では、トナーの押し上げを観察すると、Y2−Y1>0mmのときほどではないがトナーの押し上げを目視することができた。そのため、Y2−Y1=0mmの条件のときでも、画像濃度に対してわずかに効果があったものと思われる。
【0054】
上述したように、循環変化部材1がトナー搬送部材43の回転領域内に位置するようにトナー搬送部材43を設けることで、現像スリーブ41と循環変化部材1の間のトナーが、トナー搬送部材43によってその回転方向に押し出されて、別のトナーと入れ代えられる。そのため、トナーが少なくなり且つトナーの流動性が低下した場合においても、現像スリーブと循環変化部材の間で同じトナーが長時間循環するのを抑えることができる。これにより、更なるトナーの流動性の低下と劣化を防止し、画像濃度が薄くなるのを抑え、使用終了近傍まで安定した濃度の画像を得ることができる。
【0055】
〔第2実施形態〕
以下に、実験1と同様の現像装置と実験条件で、距離Y2−Y1だけでなく、最短距離Cを変化させたときのネガゴーストと画像濃度について調べた。画像濃度の判断は実験1と同様であり、画像濃度1.3以上を○、画像濃度1.2以上を△、画像濃度1.2未満を×としている。結果を表2に示す。
【0056】
【表2】

【0057】
本実験の結果より、距離Y2−Y1=−0.5〜0.5mmで最短距離C=12mmでは画像濃度は低下しないもののネガゴーストが発生した。これは矢印M2方向の循環が増加する一方で矢印M1方向の循環が減少するためだと思われる。
【0058】
距離Y2−Y1=−0.5mmで最短距離C=1〜10mmの範囲では、ネガゴーストは発生せず、画像濃度が薄くなった。これは現像スリーブ近傍のトナーを撹拌できないので、現像スリーブと循環変化部材の間のトナーを循環変化部材の上部に押し出せなくなる。これにより現像スリーブと循環変化部材の間にあるトナーが現像容器内の別のトナーと入れ代えられずに、トナーの流動性の低下と劣化が進み、画像濃度が低下したものと思われる。
【0059】
一方、距離Y2−Y1=0.5mmで最短距離C=1〜10mmの範囲では、画像濃度が低下しなかった。この条件では、距離Y2−Y1=−0.5mmからトナー搬送部材43が1mm伸びたことになる。これにより、現像スリーブ近傍のトナーを撹拌できるようになり、現像スリーブと循環変化部材の間のトナーを循環変化部材の上部に押し出すことができるようになったものと思われる。これにより、現像スリーブと循環変化部材の間にあるトナーが現像容器内の別のトナーと入れ代えられるので、トナーの流動性の低下と劣化が進まず、画像濃度が低下しなかったものと思われる。
【0060】
また、距離Y2−Y1=0mmで最短距離C=1〜10mmのときは、距離Y2−Y1=−0.5mmの条件のときほど画像濃度が低下しなかった。この条件では、距離Y2−Y1=−0.5mmからトナー搬送部材43が0.5mm伸びたことになる。これにより、現像スリーブ近傍のトナーを撹拌できるようになり、現像スリーブと循環変化部材の間のトナーを循環変化部材の上部に押し出すことができるようになったものの、その量が十分ではなかったものと思われる。そのため、現像スリーブと循環変化部材の間にあるトナーが現像容器内の別のトナーと十分には入れ代わらず、同じトナーが長時間摺擦することをわずかに抑え、トナーの流動性の低下と劣化を防止したものと思われる。
【0061】
なお、最短距離C<1mm以下のときは縦スジが発生してしまった、これは現像スリーブと循環変化部材との間が狭すぎて、トナーの循環が遅くなり、トナーが凝集してしまったものと思われる。
【0062】
上述したように、循環変化部材に対するトナー搬送部材43の設置位置だけでなく、現像スリーブと循環変化部材の間の最短距離も考慮することで、トナーの流動性の低下と劣化を更に抑えることができ、画像濃度が薄くなるのを抑え、使用終了近傍まで安定した濃度の画像を得ることができる。
【0063】
〔他の実施形態〕
前述した実施形態では、装置本体に着脱可能なカートリッジとして、感光体ドラムと、該感光体ドラムに作用するプロセス手段としての帯電手段,現像手段,クリーニング手段を一体に有するプロセスカートリッジを例示したが、これに限定されるものではない。感光体ドラムと現像手段のほか、帯電手段又はクリーニング手段のいずれかを一体に有するプロセスカートリッジなど、その他のプロセスカートリッジであっても良い。
【0064】
また、カートリッジは、感光体ドラムとプロセス手段を一体に有するプロセスカートリッジに限定されるものでもない。前述した現像装置を備えた現像カートリッジであっても良い。ここで現像カートリッジとは、現像スリーブ、循環変化部材、及びトナー搬送部材を有する現像装置を一体に有し、前記装置本体に取り外し可能に装着されるものである。或いは、使用者が容易に交換できるカートリッジタイプでなく、装置本体に具備された現像装置であっても本発明は有効である。
【0065】
また前述した実施形態では、画像形成装置としてプリンタを例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば複写機、ファクシミリ装置等の他の画像形成装置や、或いはこれらの機能を組み合わせた複合機等の他の画像形成装置であっても良い。これらの画像形成装置に用いられる現像装置又は現像装置を具備したカートリッジに本発明を適用することにより同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0066】
T …トナー
Y1,Y2 …距離
1 …循環変化部材
2 …プロセスカートリッジ
20 …感光体ドラム
40 …現像装置
41 …現像スリーブ
41a …マグネットロール
42 …現像ブレード
43 …トナー搬送部材
43a …弾性シート
44 …現像室
45 …トナー室
45a …開口
47 …現像容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に現像剤を担持して搬送する回転可能な現像剤担持体と、
現像剤を収納する現像容器と、
前記現像容器に収納された現像剤を前記現像剤担持体に向けて搬送する回転可能な現像剤搬送部材と、
前記現像剤担持体から離れた位置に対向して設けられ、前記現像剤担持体の近傍の現像剤の循環を変化させる循環変化部材と、
を有する現像装置であって、
前記現像剤搬送部材を、前記循環変化部材が前記現像剤搬送部材の回転領域内に位置するように設けて、前記現像剤担持体と前記循環変化部材の間の現像剤を前記現像剤搬送部材によって前記現像剤搬送部材の回転方向に押し出すことを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記現像剤搬送部材は、基端部が回転軸に設けられた、先端部が自由端の弾性シートを有し、
前記現像剤搬送部材の回転軸中心から前記循環変化部材の最も遠い位置までの距離をY1、前記現像剤搬送部材の回転軸中心から前記弾性シートの先端部までの距離をY2としたとき、Y2−Y1>0mmを満たし、かつ前記弾性シートの先端部が前記現像剤担持体に触れないことを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記現像剤担持体の表面と前記現像剤搬送部材の最短距離をCとしたとき、C=1〜10mmの範囲であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の現像装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の現像装置を具備し、画像形成装置に対して着脱可能であることを特徴とするカートリッジ。
【請求項5】
電子写真感光体、及び前記電子写真感光体に作用するプロセス手段として請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の現像装置を具備し、画像形成装置に対して着脱可能であることを特徴とするカートリッジ。
【請求項6】
電子写真感光体、及び前記電子写真感光体に作用するプロセス手段として請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の現像装置を具備し、記録媒体に画像を形成することを特徴とする電子写真画像形成装置。
【請求項7】
請求項4又は請求項5に記載のカートリッジを具備したことを特徴とする電子写真画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−34021(P2011−34021A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183064(P2009−183064)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】