説明

現像装置、画像形成装置および画像形成方法

【課題】表面に凸部および凹部を配したトナー担持ローラーを有する現像装置、画像形成装置および該ローラーを用いて画像を形成する画像形成方法において、トナー担持ローラー上におけるトナーの帯電量のばらつきを抑えてカブリを抑制する。
【解決手段】例えば酸化チタンのような金属酸化物系外添剤を所定量含有したトナーTを使用する。金属製の板状部材461と導電性ゴムによる弾性部材462とよりなる規制ブレード46に、現像ローラー44よりも負電位となるような規制バイアス電圧Vrbを規制バイアス用電源141により付与する。規制ブレード46に接触したトナーの外添剤に負電荷が注入されることにより当該トナーの帯電量が増加し、帯電量不足に起因するトナーの飛散やカブリが抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、表面に凸部および凹部を配したトナー担持ローラーを有する現像装置、画像形成装置および該ローラーを用いて画像を形成する画像形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
静電潜像をトナーにより現像する技術においては、略円筒形状に形成されたトナー担持ローラーの表面にトナーを担持させるものが一般的である。この種の技術においては、トナーの帯電量にばらつきが不可避的に生じるため、特に帯電量の低いトナーや本来の帯電極性とは逆極性に帯電したトナーが、画像のうち本来トナーを付着させるべきでない部分に付着していわゆるカブリを生じさせる。そこで、トナー担持ローラー表面に担持されるトナーの帯電量を高めるために、トナーとして導電性のトナーを使用するとともに、トナーの帯電極性と同極性のバイアス電圧を印加された電荷注入部材をトナー担持ローラーに対向させて、トナー担持ローラー表面のトナーに電荷を付与するように構成されたものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−331780号公報(例えば、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本願発明者らの実験によれば、特許文献1に記載の技術では、電荷注入部材に印加されたバイアス電圧による電界が、既に帯電しているトナーをトナー担持ローラー側へ押しやる方向に作用するため、トナー担持ローラー上でのトナー搬送量が増大する。この結果、電荷を注入すべきトナーの量が多くなり、全体としての帯電量は多くなるものの、個々のトナーの帯電量のばらつきを抑える効果は十分とは言えなかった。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、表面に凸部および凹部を配したトナー担持ローラーを有する現像装置、画像形成装置および該ローラーを用いて画像を形成する画像形成方法において、トナー担持ローラー上におけるトナーの帯電量のばらつきを抑えてカブリを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明にかかる現像装置は、上記目的を達成するため、内部にトナーを収容するハウジングと、前記ハウジングに軸着され、それぞれの頂面が互いに同一の円筒面の一部をなす複数の凸部および該凸部を取り囲む凹部を表面に形成されて、該表面に前記ハウジングから供給される帯電トナーを担持しながら回転するトナー担持ローラーと、自由端が前記トナー担持ローラーの回転方向上流側を向くとともに該自由端または該自由端に隣接する隣接部位が前記トナー担持ローラー表面に当接することで、前記トナー担持ローラー表面に担持されるトナーの量を規制する、導電性の規制ブレードとを備え、前記トナーが金属酸化物からなる外添剤を有するものであり、前記規制ブレードには前記トナーの正規帯電極性と同極性の規制バイアス電圧が印加され、前記自由端の先端と前記トナー担持ローラーの前記凸部との間隔が前記トナーの体積平均粒径よりも小さいことを特徴としている。
【0007】
また、この発明にかかる画像形成装置は、上記目的を達成するため、内部にトナーを収容するハウジングと、前記ハウジングに軸着され、それぞれの頂面が互いに同一の円筒面の一部をなす複数の凸部および該凸部を取り囲む凹部を表面に形成されて、該表面に前記ハウジングから供給される帯電トナーを担持しながら回転するトナー担持ローラーと、自由端が前記トナー担持ローラーの回転方向上流側を向くとともに該自由端または該自由端に隣接する隣接部位が前記トナー担持ローラー表面に当接することで、前記トナー担持ローラー表面に担持されるトナーの量を規制する、導電性の規制ブレードと、前記規制ブレードに対し所定の規制バイアス電圧を印加するバイアス印加手段と、前記トナー担持ローラーと対向配置され、表面に静電潜像を担持する潜像担持体とを備え、前記トナーが金属酸化物からなる外添剤を有するものであり、前記規制バイアス電圧が前記トナーの正規帯電極性と同極性であり、前記自由端の先端と前記トナー担持ローラーの前記凸部との間隔が前記トナーの体積平均粒径よりも小さいことを特徴としている。
【0008】
また、この発明にかかる画像形成方法は、上記目的を達成するため、それぞれの頂面が互いに同一の円筒面の一部をなす複数の凸部および該凸部を取り囲む凹部を表面に形成したトナー担持ローラーの表面にトナーを担持させ、前記トナー担持ローラーの表面に、自由端が前記トナー担持ローラーの回転方向上流側を向くとともに該自由端または該自由端に隣接する隣接部位が前記トナー担持ローラー表面に当接する、導電性の規制ブレードを当接させてトナーの量を規制し、静電潜像を担持させた潜像担持体と前記トナー担持ローラーとを対向させて前記静電潜像をトナーにより現像し、しかも、前記トナーを金属酸化物からなる外添剤を有するものとし、前記規制ブレードに前記トナーの正規帯電極性と同極性の規制バイアス電圧を印加し、前記自由端の先端と前記トナー担持ローラーの前記凸部との間隔を前記トナーの体積平均粒径未満とすることを特徴としている。
【0009】
これらの発明では、まず規制ブレードをトナー担持ローラー表面に当接させ、しかも、規制ブレードの自由端の先端とトナー担持ローラーの凸部との間隔(以下、「開口高さ」という)をトナーの体積平均粒径未満とすることで、凸部に担持されるトナーを1層未満に規制している。また、このように開口高さを規定することで、規制ブレードの先端と凹部との間隔も規定されるため、凹部に担持されるトナーの量もほぼ一定に規制される。したがって、トナー担持ローラーに担持されるトナーの量については、規制ブレードへのバイアス印加の有無によらず機械的にほぼ一定量とすることができる。このような効果は、凸部の頂面が互いに同一の円筒面の一部をなすような構造のトナー担持ローラーを採用することによって得られるものである。こうしてトナー量を機械的に規制した上で、これらの発明では、導電性の規制ブレードにトナーの正規帯電極性と同極性の規制バイアス電圧を印加している。
【0010】
後に詳述するが、本願発明者らは種々の実験を行った結果、バイアスを印加した導電部材と接触させて電荷を付与することでトナーを帯電させる帯電メカニズムにおいては、前記した特許文献1に記載されているようにトナーが導電性を有するか否かではなく、トナー表面に付与された特定の外添剤の存在がトナーの帯電に大きく寄与している、との知見を得た。具体的には、適量の金属酸化物の微粒子を外添剤として付与したトナーでは、トナー母粒子自体の導電性とは関係なく、その正規帯電極性と同極性の電位を付与した導電部材からトナー表面の金属酸化物外添剤に電荷を注入することによって、トナー全体の帯電量を効果的に制御することが可能である。
【0011】
そこで、上記の発明では、金属酸化物外添剤を付与されたトナーと、凸部頂面の高さが管理されたトナー担持ローラーとを採用し、その表面に担持されるトナーの量を規制ブレードによって機械的に規制することで、トナー担持ローラーと規制ブレードとの当接により形成されるニップ部に送り込まれるトナーの量を管理している。その上で、トナーの正規帯電極性と同極性の規制バイアス電圧を規制ブレードに印加することにより、ニップ部に送り込まれたトナーに電荷を付与しその帯電量を制御している。その結果、これらの発明では、帯電量の不足したトナーがトナー担持ローラーから離脱して飛散したり、画像に付着してカブリを生じさせるのを効果的に防止することができる。
【0012】
これらの発明において、前記自由端の先端と前記トナー担持ローラーの前記凸部との間隔を0としてもよい。すなわち、規制ブレードの先端がトナー担持ローラーの凸部に直接接触する、いわゆるエッジ規制としてもよい。このようにすると、凸部にはほとんどトナーが担持されないことになる。凸部に担持されたトナーのうち帯電量の低いものはトナー担持ローラーの回転による受ける風圧で飛散しやすい。この発明では凸部に薄く付着させたトナーに規制ブレードから電荷を付与することで帯電量を上昇させ、トナー担持ローラー表面から離れにくくさせることで飛散は起こりにくいが、このことは凸部のトナーが現像濃度の向上にあまり寄与しないということでもある。したがって、飛散やカブリをより確実に抑制し、また凹部でのトナー担持量をより正確に制御するという観点から、凸部でのトナー担持をなくしてもかまわない。
【0013】
また、前記トナーが、前記金属酸化物として酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化セリウムまたは酸化スズの少なくとも1つを含むことが望ましい。これらの金属酸化物については、本発明の構成による帯電量制御が有効に機能することが本願発明者らの実験により確認されている。
【0014】
また、前記凹部に、前記トナー担持ローラー表面に直接接触する接触トナーと、前記トナー担持ローラー表面に直接接触しない非接触トナーとの双方を担持するようにしてもよい。凹部においてトナー担持ローラー表面に直接接触している接触トナーは、もともと帯電量が高くトナー担持ローラー表面に対し静電的に強く付着したものである。一方、トナー担持ローラー表面に直接接触しない非接触トナーは帯電量がより低いものが主体であり、トナー担持ローラー表面に付着した接触トナー層を覆う形で担持されている。このように帯電量の低いトナーは飛散やカブリの原因となりうるが、凸部表面から後退した凹部に担持されたトナーは風圧を受けにくいので飛散は抑制される。なお、接触トナーのみを担持する系においては、ほぼ全てのトナーが規制ブレードに接触するために帯電量が過剰となりやすく、これはトナー担持ローラーへのトナーの付着力を増大させるので、飛散やカブリ抑制の点からは問題ないが、高い現像濃度を得るという観点からは不利である。
【0015】
また、このような凹部のトナー層にバイアス印加した規制ブレードを接触させた場合、表面側に露出した非接触トナーのみに電荷を付与することとなるので、非接触トナーのみ帯電量を上昇させることが可能である。その一方で、もともと帯電量の高い接触トナーの帯電量を過剰に上昇させることがない。また、非接触トナーであっても帯電量の高いものに対しては、規制バイアス電圧が斥力を生じさせるように作用するので、やはり過剰な帯電は抑制される。その結果、凹部に担持されるトナーのうち低帯電のもののみ帯電量が上昇して帯電量のばらつきが小さくなり、カブリの発生が抑制される。
【0016】
具体的には、例えば、自由端の先端とトナー担持ローラーの凹部との間隔がトナーの体積平均粒径の1倍より大きくなるようにすればよい。こうすることで、凹部には1層を超えるトナー層が担持され、結果として接触トナーと非接触トナーとの双方を含むことになる。なお、凹部に担持されるトナー層の層数が多くなると、非接触トナーの中に規制ブレードと当接することができないものが出現する。このようなトナーはカブリの原因となるので、非接触トナーに確実に電荷を付与するためには、層数を2層以下とするのが望ましい。すなわち、規制ブレードの先端と凹部との間隔はトナーの体積平均粒径の2倍以下とすることが望ましい。
【0017】
また、前記トナー担持ローラーは、表面を非晶質めっき処理された金属製であってもよい。このようなトナー担持ローラーでは、ハウジング内でトナーを良好に摩擦帯電させることができることが、本願発明者らの実験により明らかになっている。このようなトナー担持ローラーと、規制バイアス電圧を印加した規制ブレードとを組み合わせることにより、トナー担持ローラー表面に担持されるトナーの特性を良好なものに維持し、優れた画像品質を得ることが可能となる。
【0018】
また、前記トナーにおける前記外添剤としての金属酸化物の含有率が、0.5重量%以上であることが望ましい。金属酸化物外添剤の添加量が少なすぎたのでは本発明の帯電制御効果は薄く、本願発明者らの実験によれば、少なくとも0.5重量%以上の金属酸化物を加えることが好ましい。特に、シリカや樹脂ビーズなど絶縁性の高い他の外添剤を添加したトナーにおいては、金属酸化物外添剤の量をさらに多くすれば効果的であった。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明を適用した画像形成装置の一実施形態を示す図。
【図2】図1の画像形成装置の電気的構成を示すブロック図。
【図3】現像器の外観を示す図。
【図4】現像器の構造および現像バイアス波形を示す図。
【図5】現像ローラーおよびその表面の部分拡大図を示す図。
【図6】本願発明者らの行った実験の概要を示す図。
【図7】トナーの物性値によるカブリ量、現像濃度の評価結果を示す図。
【図8】規制バイアス電圧を変化させたときのカブリ量の測定結果を示す図。
【図9】凹部でのトナーの挙動を示すモデル図。
【図10】図9の現象をより微視的に見たモデル図。
【図11】図10の現象をさらに微視的に見たモデル図。
【図12】凸部でのトナー担持を許容した変形例を示す図。
【図13】異なる規制条件におけるトナー層の特性の測定結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1はこの発明を適用した画像形成装置の一実施形態を示す図である。また、図2は図1の画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である。この装置は、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の4色のトナー(現像剤)を重ね合わせてフルカラー画像を形成したり、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成する画像形成装置である。この画像形成装置では、ホストコンピューターなどの外部装置から画像信号がメインコントローラー11に与えられると、このメインコントローラー11からの指令に応じてエンジンコントローラー10に設けられたCPU101がエンジン部EG各部を制御して所定の画像形成動作を実行し、シートSに画像信号に対応する画像を形成する。
【0021】
このエンジン部EGでは、感光体22が図1の矢印方向D1に回転自在に設けられている。また、この感光体22の周りにその回転方向D1に沿って、帯電ユニット23、ロータリー現像ユニット4およびクリーニング部25がそれぞれ配置されている。帯電ユニット23は所定の帯電バイアスを印加されており、感光体22の外周面を所定の表面電位に均一に帯電させる。クリーニング部25は一次転写後に感光体22の表面に残留付着したトナーを除去し、内部に設けられた廃トナータンクに回収する。これらの感光体22、帯電ユニット23およびクリーニング部25は一体的に感光体カートリッジ2を構成しており、この感光体カートリッジ2は一体として装置本体に対し着脱自在となっている。
【0022】
そして、この帯電ユニット23によって帯電された感光体22の外周面に向けて露光ユニット6から光ビームLが照射される。この露光ユニット6は、外部装置から与えられた画像信号に応じて光ビームLを感光体22上に露光して画像信号に対応する静電潜像を形成する。
【0023】
こうして形成された静電潜像は現像ユニット4によってトナー現像される。すなわち、この実施形態では、現像ユニット4は、図1紙面に直交する回転軸中心に回転自在に設けられた支持フレーム40、支持フレーム40に対して着脱自在のカートリッジとして構成されてそれぞれの色のトナーを内蔵するイエロー用の現像器4Y、シアン用の現像器4C、マゼンタ用の現像器4M、およびブラック用の現像器4Kを備えている。この現像ユニット4は、エンジンコントローラー10により制御されている。そして、このエンジンコントローラー10からの制御指令に基づいて、現像ユニット4が回転駆動されるとともにこれらの現像器4Y、4C、4M、4Kが選択的に感光体22と対向する所定の現像位置に位置決めされると、当該現像器に設けられて選択された色のトナーを担持する現像ローラー44が感光体22に対し所定のギャップを隔てて対向配置され、その対向位置において現像ローラー44から感光体22の表面にトナーを付与する。これによって、感光体22上の静電潜像が選択トナー色で顕像化される。
【0024】
図3は現像器の外観を示す図である。また、図4は現像器の構造および現像バイアス波形を示す図である。より詳しくは、図4(a)は現像器の構造を示す断面図である。また、図4(b)は現像バイアス波形と感光体表面電位との関係を示す図である。各現像器4Y、4C、4M、4Kはいずれも同一構造を有している。したがって、ここでは、現像器4Kの構成について図3および図4(a)を参照しながらさらに詳しく説明するが、その他の現像器4Y、4C、4Mについてもその構造および機能は同じである。
【0025】
この現像器4Kでは、その内部に非磁性一成分トナーTを収容するハウジング41に供給ローラー43および現像ローラー44が回転自在に軸着されており、当該現像器4Kが上記現像位置に位置決めされると、現像ローラー44が感光体2と現像ギャップDGを隔てて対向位置決めされるとともに、これらのローラー43、44が本体側に設けられた回転駆動部(図示省略)と係合されて所定の方向に回転する。供給ローラー43は例えば発泡ウレタンゴム、シリコンゴムなどの弾性材料により円筒状に形成されている。また、現像ローラー44は、銅、アルミニウム、ステンレス等の金属または合金により円筒状に形成されている。この実施形態では、鉄製の円筒表面を無電解ニッケル・リンめっき処理したものを使用している。そして、2つのローラー43、44が接触しながら回転することでトナーが現像ローラー44の表面に擦り付けられて所定厚みのトナー層が現像ローラー44表面に形成される。この実施形態では負帯電トナーを用いるが、正帯電トナーであってもよい。
【0026】
ハウジング41の内部空間は隔壁41aによって第1室411および第2室412に仕切られている。供給ローラー43および現像ローラー44はともに第2室412に設けられており、これらのローラーの回転に伴って第2室412内のトナーが流動し攪拌されながら現像ローラー44の表面に供給される。一方、第1室411に貯留されているトナーは、供給ローラー43および現像ローラー44とは隔離されているので、これらの回転によっては流動しない。このトナーは、現像ユニット4が現像器を保持したまま回転することによって、第2室412に貯留されたトナーと混合され攪拌される。
【0027】
このように、この現像器では、ハウジング内部を2室に仕切り、供給ローラー43および現像ローラー44の周囲をハウジング41の側壁および隔壁41aで囲み比較的容積の小さい第2室412を設けることにより、トナー残量が少なくなった場合でも、トナーが効率よく現像ローラー44の近傍に供給されるようにしている。また、第1室411から第2室412へのトナー供給およびトナー全体の攪拌を現像ユニット4の回転によって行うようにすることで、現像器内部にトナー攪拌のための攪拌部材(オーガ)を省いたオーガレス構造を実現している。
【0028】
また、この現像器4Kでは、現像ローラー44の表面に形成されるトナー層の厚みを所定厚みに規制するための規制ブレード46が配置されている。この規制ブレード46は、ステンレスやリン青銅などの弾性を有する板状部材461と、板状部材461の先端部に取り付けられたシリコンゴムやウレタンゴムなどの樹脂部材からなる弾性部材462とで構成されている。弾性部材462にはカーボン粒子などの導電性粒子が分散されて、その抵抗率が約10Ωcmに調整されている。また、その硬度はJIS−A硬度70度である。
【0029】
この板状部材461の後端部はハウジング41に固着されており、図4の矢印に示す現像ローラー44の回転方向D4において、板状部材461の先端部に取り付けられた弾性部材462が板状部材461の後端部よりも上流側に位置するように配設されている。つまり、規制ブレード46は、一方端(後端部)が固定されるとともにこれとは反対側の自由端である先端部が現像ローラー44の回転方向D4において上流側に向かうように取り付けられており、弾性部材462が現像ローラー44表面に対しいわゆるカウンタ方向に弾性的に当接することで規制ニップを形成し、現像ローラー44の表面に形成されるトナー層を最終的に所定の厚みに規制する。現像ローラー44表面への規制ブレード46の当接圧、すなわち規制荷重は5gf/cmに調整されている。
【0030】
このようにして現像ローラー44の表面に形成されたトナー層は、現像ローラー44の回転によって順次、その表面に静電潜像が形成されている感光体22との対向位置に搬送される。そして、エンジンコントローラー10に制御されるバイアス用電源140からの現像バイアスが現像ローラー44に印加される。図4(b)に示すように、感光体22の表面電位Vsは、帯電ユニット23により均一に帯電された後露光ユニット6からの光ビームLの照射を受けた露光部では残留電位Vr程度にまで低下し、光ビームLが照射されなかった非露光部ではほぼ均一の電位Voとなっている。一方、現像ローラー44に与えられる現像バイアスVbは直流電位を重畳した矩形波交流電圧であり、そのピーク間電圧を符号Vppにより表す。このような現像バイアスVbが印加されることにより、現像ローラー44上に担持されたトナーは現像ギャップDGにおいて飛翔して感光体22の表面各部にその表面電位Vsに応じて部分的に付着し、こうして感光体22上の静電潜像が当該トナー色のトナー像として顕像化される。
【0031】
現像バイアス電圧Vbとしては、例えば、ピーク間電圧Vppが1500Vで3〜4kHz程度の周波数を有する矩形波電圧を用いることができる。現像バイアスVbの交流成分の繰り返し周期Tcのうち、電位が正側に振れている期間を符号Tp、負側に振れている期間を符号Tnにより表すとともに、現像バイアスVbの波形デューティWDを次式:
WD=Tp/(Tp+Tn)=Tp/Tc
により定義すると、この実施形態ではTp>Tnとなるように、つまり波形デューティWDが50%より大きくなるように、バイアス波形が定められている。代表的には、WD=60%程度とすることができる。
【0032】
矩形波交流電圧に重畳された直流成分に、上記波形デューティに起因して生じる直流成分を加えた、現像バイアスVbの加重平均電圧Vaveは、感光体22の残留電位Vrとの電位差がいわゆる現像コントラストとなり画像濃度に影響を与えるので、所定の画像濃度を得るために必要な値とすることができる。代表的には、例えば(−200)V程度とすることができる。
【0033】
また、詳しくは後述するが、この実施形態では、規制ブレード46を構成する金属製の板状部材461と現像ローラー44との間に規制バイアス用電源141が接続されており、導電性を有する弾性部材462に所定の規制バイアス電圧が印加されている。
【0034】
さらに、ハウジング41には、現像ローラー44の回転方向において感光体22との対向位置よりも下流側で現像ローラー44表面に圧接されたシール部材47が設けられている。シール部材47は、ポリエチレン、ナイロンまたはフッ素樹脂などの柔軟性を有する樹脂材料により形成され、現像ローラー44の回転軸に平行な方向Xに沿って延びる帯状のフィルムであり、長手方向Xに直交する短手方向(現像ローラー44の回転方向に沿った方向)における一方端部がハウジング41に固着されるとともに、他方端部が現像ローラー44表面に当接されている。他方端部は現像ローラー44の回転方向D4における下流側に向かうように、いわゆるトレイル方向に現像ローラー44に当接されており、感光体22との対向位置を通過した現像ローラー44表面に残留しているトナーをハウジング41内に案内するともに、ハウジング内のトナーが外部へ漏れ出すのを防止している。
【0035】
図5は現像ローラーおよびその表面の部分拡大図を示す図である。現像ローラー44は略円筒形のローラー状に形成されており、その長手方向の両端にはローラーと同軸にシャフト440が設けられており、該シャフト440が現像器本体により軸支されて現像ローラー44全体が回転自在となっている。現像ローラー44表面のうちその中央部44aには、図5の部分拡大図(点線円内)に示すように、規則的に配置された複数の凸部441と、それらの凸部441を取り囲む凹部442とが設けられている。
【0036】
複数の凸部441のそれぞれは、図5紙面の手前側に向けて突出しており、各凸部441の頂面は、現像ローラー44の回転軸と同軸である単一の円筒面の一部をそれぞれ成している。また、凹部442は凸部441の周りを網目状に取り囲む連続した溝となっており、凹部442全体も現像ローラー44の回転軸と同軸かつ凸部のなす円筒面とは異なる1つの円筒面をなす。そして、凸部441とそれを取り囲む凹部442との間は緩やかな側面443によって繋がれている。すなわち、該側面443の法線は現像ローラー44の半径方向外向き(図において上方)、つまり現像ローラー44の回転軸から遠ざかる方向の成分を有する。
【0037】
この実施形態では、現像ローラー44表面における凸部441の配列ピッチPは、周方向、軸方向(X方向)とも80μmである。凹部442の深さ、つまり凸部441と凹部442との高低差は10μmである。また、現像位置における感光体22と現像ローラー44とのギャップ(現像ギャップ)は190μmとする。
【0038】
このような構造の現像ローラー44については、例えば特開2007−140080号公報に記載のいわゆる転造加工を用いた製造方法により製造することができる。これにより、現像ローラー44の円筒面に規則的かつ均一な凹凸部を形成することができる。そのため、得られる現像ローラー44は、その円筒面に均一かつ最適な量のトナーを担持させることができ、また、現像ローラー44の円筒面でのトナーの転動性(転がりやすさ)も均一なものとすることができる。その結果、トナーの局所的な帯電不良や搬送不良を防止して、優れた現像特性を発揮させることができる。また、型を用いて凹凸部を形成するため、ブラスト加工により得られた一般的な現像ローラーと異なり、得られる凹凸部はその凸部の先端の幅を比較的大きくすることができる。このような凹凸部は優れた機械的強度を有する。特に、型により押圧された部位は機械的強度が向上するので、得られる凹凸部は、切削加工のような処理で得られたものと比しても優れた機械的強度を有する。このような凹凸部を有する現像ローラー44は、優れた耐久性を発揮することができる。また、凹凸部の凸部の先端の幅が比較的大きいと、磨耗しても形状変化が少ないので、現像特性が急激に低下することも防止して、長期にわたり優れた現像特性を発揮することができる。
【0039】
図1に戻って画像形成装置の説明を続ける。上記のようにして現像ユニット4で現像されたトナー像は、一次転写領域TR1で転写ユニット7の中間転写ベルト71上に一次転写される。転写ユニット7は、複数のローラー72〜75に掛け渡された中間転写ベルト71と、ローラー73を回転駆動することで中間転写ベルト71を所定の回転方向D2に回転させる駆動部(図示省略)とを備えている。そして、カラー画像をシートSに転写する場合には、感光体22上に形成される各色のトナー像を中間転写ベルト71上に重ね合わせてカラー画像を形成するとともに、カセット8から1枚ずつ取り出され搬送経路Fに沿って二次転写領域TR2まで搬送されてくるシートS上にカラー画像を二次転写する。
【0040】
このとき、中間転写ベルト71上の画像をシートS上の所定位置に正しく転写するため、二次転写領域TR2にシートSを送り込むタイミングが管理されている。具体的には、搬送経路F上において二次転写領域TR2の手前側にゲートローラー81が設けられており、中間転写ベルト71の周回移動のタイミングに合わせてゲートローラー81が回転することにより、シートSが所定のタイミングで二次転写領域TR2に送り込まれる。
【0041】
また、こうしてカラー画像が形成されたシートSは定着ユニット9によりトナー像を定着され、排出前ローラー82および排出ローラー83を経由して装置本体の上面部に設けられた排出トレイ部89に搬送される。また、シートSの両面に画像を形成する場合には、上記のようにして片面に画像を形成されたシートSの後端部が排出前ローラー82後方の反転位置PRまで搬送されてきた時点で排出ローラー83の回転方向を反転し、これによりシートSは反転搬送経路FRに沿って矢印D3方向に搬送される。そして、ゲートローラー81の手前で再び搬送経路Fに乗せられるが、このとき、二次転写領域TR2において中間転写ベルト71と当接し画像を転写されるシートSの面は、先に画像が転写された面とは反対の面である。このようにして、シートSの両面に画像を形成することができる。
【0042】
また、図2に示すように、各現像器4Y,4C,4Mおよび4Kには該現像器の製造ロットや使用履歴、内蔵トナーの残量などに関するデータを記憶するメモリー91〜94がそれぞれ設けられている。さらに、各現像器4Y,4C,4M、4Kには無線通信器49Y、49C、49M、49Kがそれぞれ設けられている。そして、必要に応じて、これらが選択的に本体側に設けられた無線通信器109と非接触にてデータ通信を行い、インターフェース105を介してCPU101と各メモリー91〜94との間でデータの送受を行って該現像器に関する消耗品管理等の各種情報の管理を行っている。なお、この実施形態では、無線通信等の電磁的手段を用いて非接触にてデータ送受を行っているが、本体側および各現像器側にコネクター等を設け、コネクター等を機械的に嵌合させることで相互にデータ送受を行うようにしてもよい。
【0043】
また、この装置では、図2に示すように、メインコントローラー11のCPU111により制御される表示部12を備えている。この表示部12は、例えば液晶ディスプレイにより構成され、CPU111からの制御指令に応じて、ユーザーへの操作案内や画像形成動作の進行状況、さらに装置の異常発生やいずれかのユニットの交換時期などを知らせるための所定のメッセージを表示する。
【0044】
なお、図2において、符号113はホストコンピューターなどの外部装置よりインターフェース112を介して与えられた画像を記憶するためにメインコントローラー11に設けられた画像メモリーである。また、符号106はCPU101が実行する演算プログラムやエンジン部EGを制御するための制御データなどを記憶するためのROM、また符号107はCPU101における演算結果やその他のデータを一時的に記憶するRAMである。
【0045】
また、ローラー75の近傍には、クリーナー76が配置されている。このクリーナー76は図示を省略する電磁クラッチによってローラー75に対して近接・離間移動可能となっている。そして、ローラー75側に移動した状態でクリーナー76のブレードがローラー75に掛け渡された中間転写ベルト71の表面に当接し、二次転写後に中間転写ベルト71の外周面に残留付着しているトナーを除去する。
【0046】
さらに、ローラー75の近傍には、濃度センサー60が配置されている。この濃度センサー60は、中間転写ベルト71の表面に対向して設けられており、必要に応じ、中間転写ベルト71の外周面に形成されるトナー像の画像濃度を測定する。そして、その測定結果に基づき、この装置では、画像品質に影響を与える装置各部の動作条件、例えば各現像器に与える現像バイアスや、露光ビームLの強度、さらには装置の階調補正特性などの調整を行っている。
【0047】
この濃度センサー60は、例えば反射型フォトセンサーを用いて、中間転写ベルト71上の所定面積の領域の濃淡に対応した信号を出力するように構成されている。そして、CPU101は、中間転写ベルト71を周回移動させながらこの濃度センサー60からの出力信号を定期的にサンプリングすることで、中間転写ベルト71上のトナー像各部の画像濃度を検出することができる。
【0048】
次に、この実施形態において使用するトナーについて説明する。トナーは公知の粉砕法により製造された非磁性一成分トナーであり、摩擦帯電によって負極性に帯電する性質を有する。このトナーは、体積平均粒径(以下、符号Daveにより表す)が8μmで、外添剤として体積平均粒径12nm、50nmの2種類のシリカをそれぞれ1.0重量%、0.5重量%含んでいる。さらに、帯電量を調整する金属酸化物外添剤として、体積平均粒径30nmの酸化チタン(チタニア)を1.0重量%含んでいる。トナーの組成をこのようにした理由について、次に説明する。なお、以下の説明においては、特に説明のない限り、実験に使用したトナーの物性値は上記したとおりのものである。
【0049】
規制ブレードにバイアスを印加して現像ローラー上のトナーの帯電特性を改善する技術は従来より多く提案されており、前記した特許文献1(特開2005−331780号公報)の他にも例えば特開2006−220967号公報、特開昭58−153972号公報などがある。これらの文献においては、規制ブレードにバイアスを印加することに加えて、トナー粒子の導電性を適宜に調整することがトナーの帯電量を改善する上で有効であることが記載されている。しかしながら、本願発明者らが種々の実験を行った結果によれば、これとは異なる知見が得られた。
【0050】
図6は本願発明者らの行った実験の概要を示す図である。この実験では、感光体22を回転方向D1に回転させながら帯電ユニット23により所定の表面電位に帯電させ、露光ユニット6による露光を行わない状態で、現像ローラー44に現像バイアスVbを印加した。このとき、現像ローラー44と規制ブレード46との間を規制バイアス用電源141を介して電気的に接続し、規制ブレード46に対し規制バイアス電圧Vrbを印加した。この状態で、規制バイアス電圧Vrbやトナーの組成や物性値を種々に変化させて現像特性を評価した。
【0051】
まず、現像ローラー44表面のうち、凸部441に1層を超えるトナー層を担持させたり、凹部442に2層を超えるトナー層を担持させた場合には、その他の条件によらず現像ローラー44からのトナーの飛散やカブリ発生が顕著である。そこで、以下の実験では、規制ブレード46の弾性部材462の上流側エッジ部を現像ローラー44表面の凸部441に当接させる、いわゆるエッジ規制によって凸部441へのトナー担持を規制するとともに、凸部441と凹部442との高低差を、トナーの体積平均粒径の1倍を超え2倍を越えない値に設定することで、凹部442でのトナー層を1〜1.5倍程度となるようにした。この目的のため、実験に用いた現像ローラー44では凸部441と凹部442との高低差を15μm(≒1.88Dave)とした。
【0052】
現像ローラー上のトナー層が1層を超えると、該トナー層には、現像ローラー表面に直接接触する形で担持されるトナー(接触トナー)と、現像ローラー表面には直接接触せず、該表面上の接触トナーの上に担持されるトナー(非接触トナー)とが混在することとなる。後に詳述するが、現像ローラーへの付着力の差に起因して、接触トナーは現像ローラー表面から離脱しにくく、非接触トナーは離脱しやすい。この点において、飛散・カブリ防止の観点からはトナー層は接触トナーのみで構成されることが望ましいが、十分な現像濃度を得るとの観点からは、離脱しやすい非接触トナーを含んでいることが望ましい。理想的なのは、接触トナー、非接触トナーの双方を含むトナー層が担持され、かつ飛散・カブリを防止するための方策が採られている状態である。
【0053】
図7および図8は実験結果の一部を示す図である。個々の実験内容およびその結果について詳しく説明する。図7(a)は、規制バイアス電圧Vrbとして200〜500Vを印加し、トナー母粒子におけるカーボンブラック含有量、外添剤としての酸化チタンの含有量を変化させたときの感光体22へのカブリ量および現像濃度を評価した結果である。ここでは、いずれも体積平均粒径が8μmであるマゼンタトナーと、カーボン含有量の異なる2種類のブラックトナーとを用いている。カーボンブラックは黒色顔料としてブラックトナー母粒子に添加されるものであるが、導電性を有するため、その含有量が多いほどトナー母粒子の導電性が高くなるという点で、トナーの導電性を制御する機能も有している。当然にマゼンタトナーにはカーボンブラックは含まれない。したがって、これら3種類のトナーは母粒子の導電性が互いに異なっている。
【0054】
外添剤としての粒径50nmのシリカの量を一定(0.5重量%)とし、酸化チタンの含有量を変化させると、それに応じてカブリ量が変化した。図において、「○」印はカブリ量が少なく、「×」印はカブリ量が多く、「△」印は中程度であることを示している。この結果によると、トナー母粒子のカーボン含有量とは関係なく、外添剤としての酸化チタンの含有量が多いほど、カブリ量は少なくなっている。より具体的には、酸化チタンの含有量がシリカの含有量よりも多いとき、カブリが少ない。十分なカブリ抑制効果を得るためには、少なくともシリカ含有量と同程度の0.5重量%の酸化チタンが必要である。
【0055】
記載を省略しているが、外添剤としてのシリカの量を変化させても、上記実験では結果にほとんど差が出なかった。ただし、シリカの量を酸化チタンの量よりも多く、特に粒径の大きなものの含有量を大きくすると、酸化チタンの量を加減してもカブリ低減効果はほとんど得られなかった。
【0056】
一方、現像濃度については、次のようにして評価した。図6に示すように、規制バイアス電圧Vrbの極性は、現像ローラー44に対し規制ブレード46を低電位とする方向に規定されている。したがって、この実験における規制バイアス電圧Vrbの値(200〜500V)では、現像ローラー44よりも規制ブレード46側が負電位となっている。規制ブレード46に印加された負電圧により、トナー帯電量が上昇するだけでなく、規制ブレード46から現像ローラー44に向かう電界が形成され、負極性に帯電したトナーが現像ローラー44側に押し付けられるようになった結果、現像性が低下し現像濃度が低下する。また、規制ブレード46への印加電圧を大きくしすぎると、トナー粒子内またはトナー表面を電流が流れるようになり、帯電電荷が乱れて搬送不良を起こし画像の濃度ムラを生じる。そこで、搬送不良が発生し始める規制バイアス電圧Vrbの値を「上限電圧」として記載している。外添剤としての酸化チタンの量が少ないと上限電圧が低下し、このことは規制バイアス電圧Vrbが取りうる範囲が狭くなり設計の自由度が低下することを意味している。
【0057】
図7(b)は互いに粒径の異なるブラックトナーについて、現像ローラー44表面でのトナー搬送量および上記した上限電圧を比較した結果である。ここでも、凹部442におけるトナー層を1〜1.5層に調整しているので、各トナー間の差は主に母粒子のカーボンブラック含有量によると考えられる。図7(a)に示す結果とも一致するが、カーボン含有量の多いトナーでは上限電圧が低くなっている。また、このように上限電圧の低い条件では、現像ローラー44表面のトナーの帯電量の安定的な向上は見られなかった。これは、トナー母粒子の導電性が高くなると、現像ローラー44と規制ブレード46との間でトナーを介したリーク電流が流れ、これによりトナーの帯電量が乱されるためと考えられる。
【0058】
このように、規制ブレードにバイアス電圧を印加して現像ローラー表面のトナーの帯電量を制御しようという構成においては、トナーの導電性を高めることは良好な結果につながらず、むしろ逆効果となる場合もあった。つまり、「導電性トナーに電荷付与することで帯電量を向上させる」とするモデルは、この実験では実証することができなかった。
【0059】
図8は規制バイアス電圧を変化させたときのカブリ量の測定結果を示す図である。トナーとしては、酸化チタン1重量%を含むマゼンタトナーと、酸化チタンの量を1重量%および0.5重量%とした2種類のブラックトナーを用いた。その結果、酸化チタンの量を1重量%としたトナーでは、マゼンタ、ブラックのいずれにおいても、規制バイアス電圧Vrbとして適当な正電圧(規制ブレード46から見れば、トナーの帯電極性と同じ負電圧)を印加したときに、カブリ量が最小となった。これに対して、酸化チタンの含有量の少ないトナーでは、規制ブレード46に負電圧を与えるとカブリ量は増加し、むしろトナーの帯電極性と逆極性の電圧を規制ブレード46に印加したときの方がカブリ量が少なくなった。また、酸化チタンの含有量が同じである場合、ブラックトナーよりも、カーボン含有量が少なくより導電性の低いマゼンタトナーの方がカブリ量は少なかった。
【0060】
以上より、トナーの帯電量を向上させて飛散やカブリを低減するためには、トナーの導電性よりも、外添剤としての酸化チタンの含有量を制御するのが有効であると言える。より具体的には、外添剤として適当な量の酸化チタンをトナーに添加するとともに、トナーの帯電極性と同極性の適当な規制バイアス電圧を規制ブレード46に印加することが望ましい。
【0061】
図9ないし11はこの実施形態においてトナーの帯電量が改善されるメカニズムのモデルを示す図である。より具体的には、図9は凹部でのトナーの挙動を示すモデル図である。また、図10は図9の現象をより微視的に見たモデル図であり、図11は図10の現象をさらに微視的に見たモデル図である。ここでは、このモデルを「再配列・誘導帯電モデル」と称する。
【0062】
トナーには帯電ばらつきがあり、帯電量の高いものや低いもの、また本来の帯電極性(負極性)とは反対の正極性に帯電したものなどが含まれる。以下では便宜的に、本来の帯電極性である負極性に帯電したトナーのうち比較的帯電量の高いものを「強帯電トナー」、帯電量の低いものを「弱帯電トナー」、反対極性(つまり正極性)に帯電したものを「逆帯電トナー」と称する。また、強帯電トナーのうち特に帯電量の高いものを「過帯電トナー」という。
【0063】
図9(a)に示すように、規制ブレード46によって層規制される前では、帯電量の様々に異なるトナー粒子が現像ローラー44の表面に分布している。このうち、比較的帯電量の高い強帯電トナーは、鏡像力の作用によって現像ローラー44の金属表面に強く引き付けられる。そのため、強帯電トナーが現像ローラー44の表面に近い位置に多く存在する一方、これに押しやられて弱帯電トナーや逆帯電トナーは現像ローラー44の表面から離れた位置に多く存在している。
【0064】
現像ローラー44がその回転方向D4に回転することにより、規制ブレード46(より詳しくは規制ブレード46を構成する弾性部材462)は相対的に(−D4)方向に移動している。この実施形態では、現像ローラー44の回転方向D4において最上流側に当たる弾性部材462のエッジ部462eが凸部441に当接するエッジ規制としているため、図9(b)に示すように、規制ブレード46の(−D4)方向への進行に伴い、凸部441からはトナーが排除される。また、凹部442においては、凸部441と凹部442との高低差Hdに相当する厚さ以上のトナーはすり切られてやはり排除される。この実施形態では、トナーの体積平均粒径が8μmであるのに対して凸部441と凹部442との高低差Hdが10μmであるため、凹部442のトナー層は1層よりは多いが2層よりは少ない厚さとなる。
【0065】
このとき、現像ローラー44と規制ブレード46との間に規制バイアス電圧Vrbが印加されていると、図9(c)に示すように、凹部442においては現像ローラー44から規制ブレード46に向かう方向の電界(以下、「規制電界」という)Erが形成されている。この規制電界Erは、負に帯電するトナーに対し、現像ローラー44表面側に押しやる方向の力を生じさせる。この力は帯電量の高いトナーにより強く作用するから、強帯電トナーに対しては該トナーを現像ローラー44表面に向けて押しやる強い力が作用する。これに対して、より帯電量の低い低帯電トナーや逆帯電トナーに対してはこの力がより弱く、あるいは逆方向に力が作用するため、結果として、現像ローラー44表面に近い位置には強帯電トナーが集まってくる一方、弱帯電トナーや逆帯電トナーは現像ローラー44表面から離れる方向に移動する。こうして凹部442においてトナーの再配列が生じ、帯電量の高いトナーほど現像ローラー44表面に近い位置で担持される一方、帯電量の低い、あるいは逆極性に帯電したトナーは現像ローラー44表面から離れた位置で担持されることになる。
【0066】
この実施形態では凹部442のトナー層を2層未満としているので、図9(c)に示すように、現像ローラー44から離れた位置で担持される低帯電トナーや逆帯電トナーは規制ブレード46に接触する。このとき、図9(d)に示すように、規制バイアス電圧Vrb(現像ローラー44に対して負電圧)を印加された規制ブレード46からトナーに負電荷(符号「e−」により表す)が注入されることにより、帯電量の不足していた低帯電トナーや逆帯電トナーの帯電量が上昇する。なお、現像ローラー44に接触する形で担持されていたトナーのうち一部は規制ブレード46にも接触することが考えられるが、このようなトナーはさらに帯電量が上昇して過帯電トナーとなる場合がある。過帯電トナーはその帯電量の高さゆえに現像ローラー44表面から離れにくく、過帯電トナーが多くなりすぎると現像性が低下し濃度低下の原因となるが、飛散・カブリ抑制の観点からは特に問題とはならない。
【0067】
規制ブレード46との接触による電荷注入のメカニズムについて、図10および図11を参照しながらさらに詳しく説明する。図10に示すように、トナー粒子は母粒子Tmの周囲により粒子の細かい外添剤Adが分散された状態となっている。そして、このようなトナー粒子が現像ローラー44の凹部442と規制ブレード46の弾性部材462との間に充填された状態となっており、ここに規制バイアス電圧Vrbによる規制電界Erが形成されている。基本的に、現像ローラー44(凹部442)表面に接触しているトナーは規制ブレード46(弾性部材462)には接触しておらず、逆に規制ブレード46に接触しているトナーは現像ローラー44には接触していない。
【0068】
ここで、トナー母粒子Tmおよび外添剤Adが十分な導電性を有する場合には、これらを通じてリーク電流が流れる。このような電流は、トナー粒子内を通過するだけでトナーの帯電には寄与しないと考えられる。ただし、トナーの帯電電荷が外部に散逸して帯電量が乱れる可能性がある。一方、トナー母粒子Tmの導電性が低ければ、外添剤Adが導電性でかつ母粒子Tmの表面全体を密に覆っているのでない限り、このようなリーク電流はほとんど流れない。ここでは、導電性を持たないトナー母粒子について考える。
【0069】
外添剤Adとして用いられる酸化チタンやその他の金属酸化物では、同じく外添剤として使用される絶縁性の高いシリカなどとは異なって、微粒子の状態で若干の導電性(10〜10Ωcm程度)を示すことがわかっている。この実施形態におけるトナーは、このような性質を有する外添剤を適量加えて、母粒子Tmの表面を外添剤Adにより疎らに覆った状態としたものである。
【0070】
現像ローラー44と接触していないトナーに対しては、現像ローラー44の回転に伴って規制ブレード46が次第に接近して接触し、そして離間してゆくという現象が生じる。このうち、接近過程では、図11(a)に示すように、負バイアスVrbを付与された弾性部材462が接近することにより、トナー母粒子Tm表面の外添剤Ad内では静電誘導により正電荷が弾性部材462側に引き寄せられる。この状態で、外添剤Adが弾性部材462と接触すると、図11(b)に示すように、正電荷が弾性部材462側に移動する。これは弾性部材462から負電荷が外添剤Adに注入されるのと等価である。そして、最終的に弾性部材462が離間すると、図11(c)に示すように、外添剤Adは負電荷が過剰な状態となる。その結果、摩擦帯電によりトナー母粒子Tmがもともと有していた帯電電荷に外添剤Adの電荷が加わって、トナー粒子全体としての帯電量が増加すると考えられる。
【0071】
このような再配列・誘導帯電モデルによれば、先の実験結果をうまく説明することができる。すなわち、トナー母粒子Tmが導電性であるか否かに関わらず、外添剤Adとして適量の酸化チタンを添加し、かつ規制ブレード46にトナーの帯電極性と同極性のバイアスを印加すると、トナーの帯電量が向上しカブリが抑制される。これは、酸化チタン外添剤が規制ブレード46から負電荷を受け取りトナー粒子全体としての帯電量が向上したためと考えられる。また、カーボン含有量の少ない、つまり導電性の低いトナーの方がカブリが少なく現像濃度を得るための上限電圧も高いという結果が見られるが(例えば図8)、これは、トナー母粒子の導電性が高くなると外添剤に注入された電荷が母粒子側にリークし、外添剤が電荷を保持できなくなる(つまりトナー粒子全体としての電荷を保持できなくなる)ためと考えられる。
【0072】
また、絶縁性外添剤であるシリカの影響については、次のように考えることができる。このような絶縁性外添剤は、上記した規制ブレード46から酸化チタン外添剤への電荷付与を阻害するものである。特にその粒径が大きい場合や、添加量が多い場合に影響が大きい。実験結果では、粒径の大きいシリカ外添剤よりも酸化チタンの量を多くしたときに帯電性の改善が見られ、このことから、酸化チタンを絶縁性外添剤よりも多くすることで、より確実に規制ブレード46からの電荷を受け取ることができ、これが帯電性の改善につながっていると考えられる。
【0073】
また、凹部442に担持されるトナー層を1層より多く、かつ2層より少なくしたときに、カブリ、現像濃度とも最も良好な結果が得られたが、これは、上記した凹部442でのトナーの再配列および誘導帯電プロセスによれば、もともと帯電量の高い強帯電トナーには影響を与えることなく、弱帯電トナーや逆帯電トナーのみに選択的に電荷を注入することができるため、帯電量のばらつきが小さくなっているためと考えられる。このような帯電ばらつきを抑える効果は、現像ローラー44表面に規則的な凹凸を設けたことによって凸部と凹部との高低差を管理し、かつ凹部のみにトナーを担持させる構成としたことによって得られるものである。
【0074】
実際に、担持されるトナー層を厚くしすぎると飛散やカブリが多くなることが観察されており、これは電荷を注入すべき弱帯電トナーや逆帯電トナーの量が多くなりすぎて、帯電量の不足を補いきれないトナーが多くなるためと考えられる。特に、2層を超えるトナー層では現像ローラー44、規制ブレード46のいずれにも接触しないトナーが存在するため、上記した再配列・誘導帯電モデルでも帯電量を上昇させることのできないトナーが現れてしまう。逆に、トナー層を薄くするとカブリは良好であるが現像濃度が極端に低下する。これは、単にトナーの搬送量が少ないというだけでなく、もともと帯電量の高いトナーがさらに電荷注入されることで過帯電となり、現像ローラー44への付着力が強くなって感光体22上に移行しにくくなっているためと考えられる。
【0075】
なお、上記のように凸部441でのトナー担持を禁止するのに代えて、1層未満のトナーを担持させるようにしてもよい。トナー層を1層未満とすることで、トナーは凸部441頂面に直接接触した状態で担持されることとなる。そして、トナーが規制ブレード46と接触することにより、さらに帯電量が増加する。このため、トナーは鏡像力により凸部441の頂面に強く付着しており、現像ローラー44の回転に起因するトナー飛散は起こりにくい。また、このような凸部のトナーが現像バイアスVbの作用により現像ギャップDGにおいて飛翔すれば現像濃度の向上が期待できる。また飛翔しなかったとしても、現像濃度としては凸部にトナーを担持させない場合と同等であるので、現像濃度の点でも不利益はない。むしろ、凸部441に小粒径トナーを選択的に付着させることによって凹部442におけるトナーの粒径ばらつきが抑えられるので、特に小粒径のものを多く含むトナーや粒度ばらつきの大きなトナーを使用する場合などにはこの方法が有効である。
【0076】
図12は凸部でのトナー担持を許容した変形例を示す図である。凸部でのトナー担持を許容する場合には、図12(a)に示すように、規制ブレード46の上流側端部46aをさらに上流側(図において左方)に突出させ、弾性部材462のエッジ部462eと、現像ローラー44表面との間に所定の間隔Ho(>0)を設ければよい。これにより、弾性部材462と現像ローラー44表面との間に上流側に向けた開口部が形成され、両者の間隔に対応する開口高さHo以下の粒径を有するトナーが凸部に担持されることが許容される。ここで、開口高さHoについては、現像ローラー44の回転中心と弾性部材462のエッジ部462eとを結ぶ直線Rに沿った間隔として定義される。
【0077】
この開口高さHoをトナーの体積平均粒径Daveより小さくすれば、図12(b)に示すように、凸部441には体積平均粒径Daveより小さな粒径を有するトナーTsのみを担持させることができる。粒径の小さなトナーは小径ゆえに強い鏡像力が作用するため、現像ローラー44から離脱しにくく、また規制ブレード46との接触によりさらに帯電量が増加するため、このようなトナーのみを凸部に付着させることで、確実に飛散やカブリを防止することができる。なお、この実施形態では規制ブレード46によるトナーの摩擦帯電は期待していないので、規制ブレード46を高い荷重で現像ローラー44に押し当てる必要はなく、規制荷重は5gf/cm程度である。この程度の荷重であれば、凸部441のトナーが規制ブレード46に押圧されることに起因するフィルミングは問題とならない。
【0078】
一方、凹部442での帯電ばらつきを抑える効果を得るためには、凹部442におけるトナー層を1層より多くかつ2層未満とする必要がある。トナー層が1層以下では過帯電となり、また2層を超えると現像ローラー44、規制ブレード46のいずれにも接触しないトナーが現れるからである。凹部442と規制ブレード46との間隔Hpは、凸部441と規制ブレード46との間隔、つまり開口高さHoに凸部441と凹部442との高低差Hdを加えたものであるから、この値Hpがトナーの体積平均粒径Daveの1倍より大きく2倍より小さな値とすることが望ましい。
【0079】
次に、現像ローラー44上でのトナー搬送量と規制ブレード46に印加する規制バイアス電圧Vrbとの組み合わせを変えて、現像ローラー上のトナー層の特性を評価した。具体的には、現像ローラー44表面の凸部441と凹部442との高低差Hdと、凸部441と規制ブレード46の最上流側エッジ部462eとの間隔(開口高さ)Hoとを変えることによりトナー層の厚さが異なる2つのサンプルを作成し、それぞれのサンプルにおいて規制バイアス電圧Vrbを変化させた。
【0080】
第1のサンプルでは、開口高さHoを20μm、高低差Hdを6μmとした。以下ではこの条件を「規制条件1」と称する。このとき、開口高さHoはトナーの体積平均粒径Daveよりも大きく、凸部、凹部とも2層以上のトナーが担持される。一方、第2のサンプルでは、開口高さHoを5μm、高低差Hdを10μmとした。以下ではこの条件を「規制条件2」とする。この規制条件が、本実施形態において採用している条件である。このとき、開口高さHoはトナーの体積平均粒径Daveよりも小さく、また凹部442と規制ブレード46との間隔Hp(=Ho+Hd=15μm)はトナーの体積平均粒径Daveの約1.88倍である。
【0081】
図13は異なる規制条件におけるトナー層の特性の測定結果を示す図である。図において横軸の規制バイアス電圧Vrbは、右側ほど規制ブレード46の負電位が大きくなることを示している。まず、現像ローラー44のトナー搬送量については、図13(a)に示すように、規制条件1ではバイアス値に応じて搬送量の増大が見られたが、規制条件2ではほぼ一定であった。また、トナーの質量当たりの帯電量(Q/M)については、図13(b)に示すように、規制条件1ではほぼ変化がなく、規制条件2ではバイアス値に応じて帯電量が増加した。また、カブリ量については、図13(c)に示すように、規制条件1ではバイアス値によってあまり変化しないか僅かに増加する一方、規制条件2では、適当な規制バイアス電圧Vrb(代表的には、400V程度)を与えることによってカブリ量を大きく低減することができた。
【0082】
このことから、トナーの帯電量のばらつきを抑えてカブリを抑えるという目的からは、規制ブレード46を当接させることで現像ローラー44上に送り込まれるトナーの量を予め機械的に規制した上で、導電性を持たせた規制ブレード46(弾性部材462)にトナーの帯電極性と同極性の適当な規制バイアス電圧Vrbを印加することが有効である。より一般的には、現像ローラー44表面に担持された強帯電トナーによって生じる現像ローラー44表面に搬送されるトナー層の表面電位に対し、極性が同じでその絶対値が現像ローラー44表面に搬送されるトナー層の表面電位より大きい電位を規制ブレード46に印加することが望ましい。この点において、トナー量を規制するよりも前に導電性トナーに電荷付与する特許文献1に記載の技術や、搬送量増大を期待して導電性トナーに電荷付与する特開2006−220967号公報に記載された技術と本発明とは相違している。
【0083】
以上より、この実施形態では、体積平均粒径が8μmである粉砕法によるトナー母粒子に対し、その流動性を向上させるための外添剤として、粒径50nmのシリカを0.5重量%、粒径12nmのシリカを1重量%添加するとともに、トナーの帯電性を調整するため、金属酸化物外添剤である酸化チタンを1重量%添加したものをトナーとして使用している。そして、現像ローラー44としてその表面に転造加工により規則的な凹凸を形成された金属製の円筒を用いるとともに、その表面に当接させる規制ブレード46を、導電性ゴムによる弾性部材462を有するものとして規制バイアス電圧Vrbを印加している。
【0084】
このような構成とすることにより、この実施形態では、現像ローラー44表面に担持されるトナーの帯電量のばらつきを抑えて、現像ローラー44からのトナーの飛散やカブリの発生を防止しながら良好な画像品質で画像を形成することができる。
【0085】
なお、本願発明者らの実験によれば、上記した酸化チタン以外にも、金属酸化物系の外添剤、例えば酸化アルミニウム(特に、遷移アルミナ)、酸化亜鉛、酸化セリウムおよび酸化スズなどを使用したときに、同様の効果が得られることが確認されている。特に、シリカなどのより絶縁性の高い外添剤よりも被覆率が高くなる程度の量を添加したときに、その効果が顕著である。また、シリカなどの絶縁物外添剤については、その粒径が金属酸化物系外添剤よりも小さなものはあまり問題とならず、より粒径の大きなものがトナーの帯電特性に大きな影響を与える。そこで、このように粒径の大きな絶縁物外添剤よりも多くの金属酸化物系外添剤を加えることが望ましい。本実施形態では、粒径の大きな(50nm)シリカ外添剤の含有量が0.5重量%であるので、少なくともこれと同量、より好ましくはより多くの金属酸化物系外添剤を加えるのがよい。また、粒径の小さな絶縁性外添剤でも、その含有量が多くなると金属酸化物系外添剤の機能を阻害することが考えられるので、その含有量と同等以上の金属酸化物系外添剤を加えることが望ましい。本実施形態では、粒径30nmの酸化チタンの含有量を1重量%とすることで、大粒径シリカ(50nm、0.5重量%)よりは十分に多く、また小粒径シリカ(12nm、1重量%)と同程度の含有量となるようにしている。
【0086】
また、現像ローラー44の表面処理によっても効果に差のあることが確認されており、例えば現像ローラー44を鉄製とした場合、表面を非晶質の無電解めっき処理としたときに良好な結果が得られている。好ましい処理としては、例えば、ニッケル・リンめっき処理、ニッケル・タングステンめっき処理、ニッケル・ホウ素・タングステンめっき処理およびクロムカーバイドめっき処理などが挙げられる。このような非晶質材料で表面を覆った現像ローラーでは、供給ローラー43との摺擦によってトナーの摩擦帯電が起きやすいとみられ、規制ブレード46との当接位置に送り込まれてくるトナーの帯電量が高められているので、規制バイアス電圧Vrbによる帯電量の調整がより有効に機能することが確認されている。
【0087】
また、現像ローラー44がアルミニウム製であるとき、表面をアルマイト処理すると、現像ローラー44表面に薄い絶縁膜が形成されるため、現像ローラー44と規制ブレード46との間の絶縁抵抗を高めることができ、特に小粒径のトナーやカーボンブラック顔料の含有量が多く導電性の高いトナーであっても電流リークを防止しつつ高い絶縁耐圧を確保することができ、十分な規制バイアス電圧を印加してトナーの帯電量を制御性よく高めることが可能となる。このことは、絶縁性に劣る小粒径あるいは高顔料トナーにおける飛散・カブリの抑制を図る上で有効である。
【0088】
また、本発明の思想によればトナー母粒子自体は必ずしも導電性を必要とせず、カブリ抑制の観点からは、むしろ導電性が低い方が、金属酸化物等の導電性外添剤による帯電制御を行いやすいという点で好ましい。この点から、顔料を樹脂により覆って導電性を低く抑えることが可能な重合法により製造されたトナーを用いてもよい。
【0089】
以上説明したように、この実施形態においては、感光体22、現像ローラー44および規制ブレード46がそれぞれ本発明の「潜像担持体」、「トナー担持ローラー」および「規制ブレード」として機能している。また、これらを備える現像器4Y、4M、4Cおよび4Kが本発明の「現像装置」に相当している。また、規制バイアス用電源141が本発明の「バイアス印加手段」として機能している。
【0090】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態は感光体22と現像ローラー44とを所定のギャップを隔てて対向させ両者の間でトナーを飛翔させる、いわゆるジャンピング現像方式の画像形成装置であるが、両者を当接させた状態で交流現像バイアスを印加する装置に対しても、本発明を適用することが可能である。
【0091】
また、例えば、上記実施形態の現像ローラー44の凸部441は略菱形に形成されているが、これに限定されるものではなく、例えば凸部を円形や三角形など他の形状となるようにしてもよい。また、各凸部の形状が同一である必要はなく、異なる形状のものが混在していてもよい。ただし、いずれの場合においても、本発明にかかるトナー層制御の効果を得るためには、少なくとも各凸部の頂面については、互いに同一の円筒面の一部をそれぞれなすような構造であることが望ましい。また凹部の深さも概ね一定であることが望ましい。この点において、元は平滑な円筒面に凹部を刻み込むことによって凹凸を形成した構造のものが特に有効である。
【0092】
また、上記実施形態の画像形成装置は、ロータリー現像ユニット4に現像器4K等を装着したカラー画像形成装置であるが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではない。例えば、中間転写ベルトに沿って複数の現像器を並べたいわゆるタンデム方式のカラー画像形成装置や、現像器を1個だけ備えてモノクロ画像を形成するモノクロ画像形成装置に対しても本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0093】
22…感光体(潜像担持体)、 41…ハウジング、 44…現像ローラー(トナー担持ローラー)、 46…規制ブレード、 46a…(規制ブレードの)自由端、 141…規制バイアス用電源(バイアス印加手段)、 441…(現像ローラー表面の)凸部、 442…(現像ローラー表面の)凹部、 462…弾性部材、 462e…(弾性部材の)エッジ部、 Hd…(凸部と凹部との)高低差、 Ho…凸部開口高さ、 Hp…(規制ブレードと凹部との)開口高さ、 T…トナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にトナーを収容するハウジングと、
前記ハウジングに軸着され、それぞれの頂面が互いに同一の円筒面の一部をなす複数の凸部および該凸部を取り囲む凹部を表面に形成されて、該表面に前記ハウジングから供給される帯電トナーを担持しながら回転するトナー担持ローラーと、
自由端が前記トナー担持ローラーの回転方向上流側を向くとともに該自由端または該自由端に隣接する隣接部位が前記トナー担持ローラー表面に当接することで、前記トナー担持ローラー表面に担持されるトナーの量を規制する、導電性の規制ブレードと
を備え、
前記トナーが金属酸化物からなる外添剤を有するものであり、前記規制ブレードには前記トナーの正規帯電極性と同極性の規制バイアス電圧が印加され、前記自由端の先端と前記トナー担持ローラーの前記凸部との間隔が前記トナーの体積平均粒径よりも小さい
ことを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記自由端の先端と前記トナー担持ローラーの前記凸部との間隔が0である請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記トナーが、前記金属酸化物として酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化セリウムまたは酸化スズの少なくとも1つを含む請求項1または2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記凹部に、前記トナー担持ローラー表面に直接接触する接触トナーと、前記トナー担持ローラー表面に直接接触しない非接触トナーとの双方を担持する請求項1ないし3のいずれかに記載の現像装置。
【請求項5】
前記トナー担持ローラーは、表面を非晶質めっき処理された金属製である請求項1ないし4のいずれかに記載の現像装置。
【請求項6】
前記トナーにおける前記外添剤としての金属酸化物の含有率が、0.5重量%以上である請求項1ないし5のいずれかに記載の現像装置。
【請求項7】
内部にトナーを収容するハウジングと、
前記ハウジングに軸着され、それぞれの頂面が互いに同一の円筒面の一部をなす複数の凸部および該凸部を取り囲む凹部を表面に形成されて、該表面に前記ハウジングから供給される帯電トナーを担持しながら回転するトナー担持ローラーと、
自由端が前記トナー担持ローラーの回転方向上流側を向くとともに該自由端または該自由端に隣接する隣接部位が前記トナー担持ローラー表面に当接することで、前記トナー担持ローラー表面に担持されるトナーの量を規制する、導電性の規制ブレードと、
前記規制ブレードに対し所定の規制バイアス電圧を印加するバイアス印加手段と、
前記トナー担持ローラーと対向配置され、表面に静電潜像を担持する潜像担持体と
を備え、
前記トナーが金属酸化物からなる外添剤を有するものであり、前記規制バイアス電圧が前記トナーの正規帯電極性と同極性であり、前記自由端の先端と前記トナー担持ローラーの前記凸部との間隔が前記トナーの体積平均粒径よりも小さい
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
それぞれの頂面が互いに同一の円筒面の一部をなす複数の凸部および該凸部を取り囲む凹部を表面に形成したトナー担持ローラーの表面にトナーを担持させ、
前記トナー担持ローラーの表面に、自由端が前記トナー担持ローラーの回転方向上流側を向くとともに該自由端または該自由端に隣接する隣接部位が前記トナー担持ローラー表面に当接する、導電性の規制ブレードを当接させてトナーの量を規制し、
静電潜像を担持させた潜像担持体と前記トナー担持ローラーとを対向させて前記静電潜像をトナーにより現像し、しかも、
前記トナーを金属酸化物からなる外添剤を有するものとし、前記規制ブレードに前記トナーの正規帯電極性と同極性の規制バイアス電圧を印加し、前記自由端の先端と前記トナー担持ローラーの前記凸部との間隔を前記トナーの体積平均粒径未満とする
ことを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−224182(P2010−224182A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70844(P2009−70844)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】