説明

生体関連物質の検査装置とその反応ステージ

生体関連物質の検査装置は、生体関連物質のプローブを固相化した基板含む反応容器(101)を支持するとともに反応を促進するための反応ステージ(103)と、DNAマイクロアレイを光学的に観察する
ための顕微鏡(102)とを備えている。反応ステージ(103)は、反応容器(101)を支持するため、反応容器(101)が載置されるベース部(120)と、ベース部(120)に対して開閉し得るカバー部(123)とを有している。反応ステージ(103)はさらに、反応容器(101)に対して流体を移送するためのシリンジピストンポンプ部(125)を有している。反応ステージ(103)はさらに、反応容器(101)内の生体関連物質のプローブを固相化した基板(110)aの温度を調整するため、ベース部(120)とカバー部(123)に埋め込まれた板状ヒーター(105)を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、生体関連物質の検査装置と反応ステージに関する。
【背景技術】
近年、遺伝子解析技術が進み、ヒトを含む多くの生物における遺伝子配列が明らかにされつつある。また、解析された遺伝子産物と疾病の因果関係も少しずつ解明されつつある。
現在用いられている遺伝子検査方法は、生体試料から核酸を抽出する工程、PCR、NASBA法などと呼ばれる核酸増幅方法を用いて検査対象となるターゲット遺伝子を増幅する工程、核酸を放射性同位元素や蛍光分子等によって標識する工程、標識されたターゲット遺伝子の塩基配列またはその濃度を測定する工程から構成されている。
最近は、蛍光標識された核酸を複数のキャピラリーを用いることで高速に多数のサンプルを処理できるキャピラリー電気泳動装置が数多く用いられている。これにより、従来の電気泳動装置などを用いた方法に比べて三分の1から四分の1程度の時間で行なえるようになった。
さらに近年になって同時に複数の遺伝子を検査するためのDNAチップを用いた検査方法が開発された。DNAチップは、ガラス基板の表面に多数のcDNAプローブを固定化するものや、半導体製造過程を応用してシリコン上の微小な領域に合成した多数のオリゴプローブを作製したものである。いずれもサンプル中のDNAの塩基配列や発現量を、複数、同時に決定できる。
DNAチップの応用によって、多くの遺伝子発現量や複数の変異の解析を行なうことが可能となった。また、DNAチップを用いて得られたデータから、多くの遺伝子を複数のグループに分類したり(すなわち、クラスタリング)、発生や分化に伴う遺伝子の変動に関する情報を得たりしている。こうして得られた遺伝子情報は、インターネットを通じて容易にアクセスできるようなデータベースとして利用されている。
遺伝子の発現量の検査や突然変異の解析には従来、電気泳動法やマイクロアレイ法が用いられてきた。しかし、電気泳動法は、検査に必要な時間が長く、また、一度に行なえる検査は少数に限られるという欠点を有している。
DNAチップを用いた遺伝子解析方法は、一度に多数の検査を行なうことができる。しかし、一部では長い検査時間を必要とし、多くの検査工程を含んでおり、煩雑な操作を必要としている。そのため、再現性のよい分析結果を得られないという欠点を有している。
このような欠点を克服するために、DNAチップの担体に、微細加工プロセスを利用して作製された多孔性ガラスウエハーを用いる手法が開発された。このような多孔性ガラスウエハーをDNAチップの担体に用いる手法は、例えば特表平9−504864号公報に開示されており、DNAチップと同様の検査を再現性が良く短時間で行なえる。
従来の多孔性ガラスウエハーをDNAチップの担体に用いる手法では、液体の移動と温度制御を行なう反応部分と、蛍光検出を行なう測定部分とが別々であり、各種の装置構成が必要である。このため、各種の装置間の搬送に時間と手間を要するだけでなく、搬送時に温度変化が生じたり、搬送によりゴミが付着したりするなどの問題がある。測定結果の再現性を確保するために注意が必要と考えられる。
特に、臨床検査においては、遺伝子を短時間で高い精度で簡便に検査したいという要求が強く、これらのユーザーニーズに応えることが難しいと推測される。
【発明の開示】
本発明は、このような現状を考慮して成されたものであり、その目的は、遺伝子等の生体関連物質を短時間で高い精度で簡便に検査できる検査装置を提供することである。
本発明の他の目的は、このような検査装置に好適に用いられる反応ステージを提供することである。
本発明は、ひとつには、流体を通し得る固相担体を利用した生体関連物質の反応を検査するための生体関連物質の検査装置であり、固相担体を含む反応容器を支持するとともに固相担体の反応を促進するための反応ステージと、固相担体を光学的に観察するための顕微鏡とを備えており、反応ステージは、反応容器に対して流体を移送するための流体移送機構と、反応容器内の固相担体の温度を調整するための温度調整機構とを有している。
本発明は、ひとつには、流体を通し得る固相担体を利用した生体関連物質の反応を検査する装置の反応ステージであり、固相担体を含む反応容器を支持する反応容器支持機構と、反応容器に対して流体を移送させるための流体移送機構と、反応容器内の固相担体の温度を調整するための温度調整機構とを有している。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の第一実施形態における遺伝子検査装置の概略的な斜視図であり、反応ステージがせり出された状態が示されている。
図2は、図1と同じく本発明の第一実施形態における遺伝子検査装置の概略的な斜視図であり、フード内に収容された反応ステージを示すために、フードを透かして描かれている。
図3は、図1と図2に示された反応容器の斜視図であり、組み立てられた状態と分解された状態が描かれている。
図4は、図3に示されたスライドチップの拡大斜視図である。
図5は、図4に示されたスライドチップの分解斜視図である。
図6は、図3に示された反応容器の上面と縦断面と横断面とを示している。
図7は、DNAマイクロアレイに配列された多数の核酸プローブスポットを示している。
図8は、図1と図2に示された反応ステージの斜視図であり、反応容器が設置される前の状態を示している。
図9は、図1と図2に示された反応ステージの斜視図であり、反応容器が設置された後の状態を示している。
図10は、図9に示された反応ステージと反応容器の断面図であり、反応容器が設置された直後の、核酸サンプルがDNAマイクロアレイの上に位置している状態を示している。
図11は、図9に示された反応ステージと反応容器の断面図であり、核酸サンプルが貯液孔に移送された状態を示している。
図12は、本発明の第一実施形態における遺伝子検査装置の流路を概略的に示している。
図13は、本発明の第一実施形態における遺伝子検査装置の温度調整機構とその制御系とを概略的に示している。
図14は、図10と図11に示されたシリンジピストンに代えて適用可能な別のシリンジピストンの構成を概略的に示している。
図15は、本発明の第二実施形態における反応ステージと反応容器の断面図であり、ベース部に設けられた圧電素子によりDNAマイクロアレイが超音波洗浄されている状態を示している。
図16は、本発明の第三実施形態における遺伝子検査装置における反応ステージと反応容器と洗浄ノズルの断面図であり、洗浄ノズルから洗浄水が供給されている状態を示している。
図17は、本発明の第三実施形態における遺伝子検査装置における反応ステージと反応容器と洗浄ノズルの断面図であり、洗浄ノズルにより洗浄水が吸引されている状態を示している。
図18は、本発明の第四実施形態における遺伝子検査装置における反応ステージと反応容器の断面図であり、核酸サンプルがDNAマイクロアレイの上に位置している状態を示している。
図19は、本発明の第四実施形態における遺伝子検査装置における反応ステージと反応容器の断面図であり、核酸サンプルが貯液孔に移送された状態を示している。
図20は、本発明の第四実施形態における遺伝子検査装置の流路を概略的に示している。
図21は、本発明の第五実施形態における遺伝子検査装置の反応容器と洗浄ノズルと廃液ノズルの断面図である。
図22は、本発明の第六実施形態における反応容器の断面図である。
図23は、本発明の第七実施形態における遺伝子検査装置の概略的な斜視図である。
図24は、本発明の第八実施形態における遺伝子検査装置における反応ステージと反応容器と洗浄ノズルと廃液ノズルの断面図であり、洗浄ノズルから洗浄水が供給されている状態を示している。
図25は、本発明の第八実施形態における遺伝子検査装置における反応ステージと反応容器と洗浄ノズルと廃液ノズルの断面図であり、廃液ノズルにより洗浄水が吸引されている状態を示している。
図26は、本発明の第八実施形態における遺伝子検査装置における反応ステージと反応容器と洗浄ノズルと廃液ノズルの断面図であり、シリンジピストンポンプから洗浄水が供給されている状態を示している。
図27は、本発明の第八実施形態における遺伝子検査装置における反応ステージと反応容器と洗浄ノズルと廃液ノズルの断面図であり、廃液ノズルにより洗浄水が吸引されている状態を示している。
図28は、本発明の第八実施形態における遺伝子検査装置の流路を概略的に示している。
図29は、本発明の第九実施形態における遺伝子検査装置における反応ステージと反応容器と洗浄ノズルと廃液ノズルの断面図であり、洗浄ノズルから洗浄水が供給されている状態を示している。
図30は、本発明の第九実施形態における遺伝子検査装置における反応ステージと反応容器と洗浄ノズルと廃液ノズルの断面図であり、廃液ノズルにより洗浄水が吸引されている状態を示している。
図31は、本発明の第九実施形態における遺伝子検査装置の流路を概略的に示している。
図32は、本発明の第十実施形態における遺伝子検査装置における反応ステージと反応容器の断面図である。
図33は、本発明の第十実施形態における遺伝子検査装置における反応ステージと反応容器の断面図であり、核酸サンプルがDNAマイクロアレイの上に位置している状態を示している。
図34は、本発明の第十実施形態における遺伝子検査装置における反応ステージと反応容器と洗浄ノズルの断面図であり、洗浄ノズルから洗浄水が供給されている状態を示している。
図35は、本発明の第十実施形態における遺伝子検査装置における反応ステージと反応容器の断面図であり、廃液孔により洗浄水が排出されている状態を示している。
図36は、本発明の第十実施形態における遺伝子検査装置における反応ステージと反応容器と廃液ノズルの断面図であり、廃液ノズルにより洗浄水が吸引されている状態を示している。
図37は、本発明の第十一実施形態における遺伝子検査装置における反応ステージと反応容器の断面図である。
図38は、図10と図11に示される反応ステージの変形例を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
第一実施形態
本発明の第一実施形態は、生体関連物質である遺伝子を検査するための装置、特にDNAマイクロアレイを利用した遺伝子検査装置に向けられている。
本実施形態の遺伝子検査装置において実施される検出方法の基本的な原理は、配列が既知の固定化された核酸プローブを用いて、試料中に含まれる特定の配列をもった核酸鎖を検出するというものである。この方法では、例えば基板に一本鎖核駿の試料を固定化し、次に蛍光物質等で標識した試料中に含まれる核酸に接触させる。試料中の核酸が核酸プローブと相捕的な配列を有していれば、試料中の核酸は、核酸プローブとハイブリダイズして二本鎖を形成し、基板上に固定される。従って、プローブに付された標識(ローダミン、FITC、Cy3、Cy5など)を蛍光検出することにより、プローブに対して相捕的な配列を有する標的核酸が検出される。さらに、洗浄により未反応の核酸鎖を除去することで、蛍光検出のS/N比が良くなる。
図1と図2に示すように、本実施形態における遺伝子検査装置100は、DNAマイクロアレイを含む反応容器101を支持するとともにDNAマイクロアレイの反応を促進するための反応ステージ103と、DNAマイクロアレイを光学的に観察するための顕微鏡102とを備えている。顕微鏡102はXYステージを有しており、反応ステージ103はXYステージの上に載置される。反応ステージ103は、例えば、顕微鏡102によって観察される視野を変更するために、XYステージによって移動される。
制御コンピューター210は、遺伝子検査装置100の動作を所定の検査ステップに沿って制御するとともに、検査結果の記憶、演算、表示等のデータ処理を行なうためのものである。
遺伝子検査装置100はさらに、顕微鏡102によって得られるDNAマイクロアレイの蛍光画像を撮影するためのCCD(charge coupled device)カメラ104を備えている。CCDカメラ104は、検査精度向上のために、冷却型が好ましい。
遺伝子検査装置100はさらに、反応ステージ103を覆うためのフード106を有している。フード106は、顕微鏡的観察に不要な外乱光を遮断するため、温度環境の変動を防止するため、観察領域内へのゴミの侵入を防止するために設けられている。フード106は、反応ステージ103を出し入れするための出入口と、顕微鏡的観察を可能にする観察窓とを有している。
反応ステージ103は、XYステージにより、図1に示されるように、反応容器101を設置する際にはフード106の外にせり出され、観察の際には、図2に示されるように、フード106の中に収容される。フード106の出入口は開閉扉を有しており、反応ステージ103の収容後、開閉扉が閉じられる。フード106の内部の環境は、その内部に設けられた温度調整器や湿度調整器によって一定に保たれてもよい。
遺伝子検査装置100はさらに、反応容器101内の固相担体の温度を強制対流によって下げるための冷却機構を備えている。冷却機構は、フード106に形成された換気孔を介して、反応ステージ103に空気を送る送風機209を有している。送風機209は、より好ましくは、反応ステージ103に送られる空気を冷却するためのペルチェ素子を有している。図1には、二つの送風機209が図示されているが、送風機の個数と位置はこれに限定されるものではなく、任意に変更可能である。
図3に示されるように、反応容器101は、例えば、四つのDNAマイクロアレイ110aを有する薄板形状のスライドチップ107と、これを上下から挟んで保持する上ハウジング108と下ハウジング109とを備えている。上ハウジング108と下ハウジング109は、好ましくは遮光性のある部材で構成され、より好ましくは暗黒色の部材で構成される。上ハウジング108と下ハウジング109は、ネジや接着剤などの締結手段によって互いに固定されることにより、スライドチップ107を保持する。
スライドチップ107の上下面には、四つのDNAマイクロアレイ110aを取り囲むように(図示しない)Oリングが設けられており、後に供給される流体(核酸サンプルや洗浄液)が上ハウジング108と下ハウジング109の隙間から漏れるのを防止している。流体の漏れを防止するための部材はOリングに限定されるものではなく、液体の漏れを防止できさえすれば、任意のシールが適用可能である。例えば、流体の漏れを防止するための部材は、四つのDNAマイクロアレイ110aを除いてスライドチップ107の上面あるいは下面の全体を覆う一枚のゴムシートであってもよい。また、例えば、シールが可能な接着剤であっても良い。
図3に示される反応容器101は、四つのDNAマイクロアレイ110aを有しているが、一つの反応容器101に含まれるDNAマイクロアレイ110aの個数は、これに限定されるものではなく、任意に変更されてもよい。
図4と図5に示されるように、スライドチップ107は、例えば、固相担体であるセラミック製の多孔質部110と、多孔質部110を間に挟んで支持するための一対の支持板111とを備えている。一対の支持板111は、互いに対応する位置に、DNAマイクロアレイ110aを規定するための四つの開口部112を有している。つまり、一つのDNAマイクロアレイ110aは、多孔質部110の上下に位置する一対の開口部112を介して露出している多孔質部110の部分をいう。
多孔質部110は、その厚み方向に延びている多数の微細な多孔を有している。多孔質部110の材質は、遺伝子反応の際に多孔質部110がさらされる温度と圧力において壊れなければ、どのような材質であってもよい。
多孔質部110の構造は、液体が通過できる構造であれば、どのような構造であってもよい。
多孔質部110は、一定の厚みに、しかも、全ての多孔が等しくなるように製造されれば、全ての多孔はほぼ均等な容積を有する。また、多孔質部110の厚みを十分に薄くし、多孔の穴径も十分に小さくすれば、所要量のサンプルや試薬を多数の貫通質に分配して収容させることができる。従って、多孔質部110の表面の特定面積当たりに、所望量の液体を収容するのに必要な個数の多孔を作製し、その所定の面積に対してサンプルや試薬を供給すれば多孔質部110内で安定した分析を実行することができる。
図6に示されるように、上ハウジング108は、スライドチップ107の四つのDNAマイクロアレイ110aを露出させるための四つのテーパー形状の開口部113を有している。開口部113の内側の空間には、DNAマイクロアレイ110aに供給される核酸サンプル114を含む流体が貯められ得る。
下ハウジング109は、スライドチップ107の四つのDNAマイクロアレイ110aに対応する位置に、その底面が傾斜している四つの凹部115と、凹部115の最下部から下ハウジング109の下面まで延びている廃液のための廃液孔116と、廃液孔116の途中から下ハウジング109の側面まで延びている、DNAマイクロアレイ110aに供給される核酸サンプル114を含む流体を貯め得る貯液孔117とを有している。
各DNAマイクロアレイ110aの多孔質部110には、例えば、インクジェット吐出原理を用いた液体分注装置により、核酸プローブ溶液の複数の液滴が吐出される。図7に示されるように、多孔質部110に吐出された核酸プローブ溶液の一つの液滴118は、微細な多孔の内部に瞬時に吸引され、微小径の核酸プローブスポット118が形成される。
一つのDNAマイクロアレイ110aは、多孔質部110に形成された多数の核酸プローブスポット118を有する。通常、一つの核酸プローブスポット118は、そこに含まれる多孔質部110の部分の微細な多孔の内壁に一種類の核酸プローブ118が固定されている。言い換えれば、その内壁に一種類の核酸プローブ118が固定されている微細な多孔を含む領域が一つの核酸プローブスポット118である。
通常、一つのDNAマイクロアレイ110a内の異なる核酸プローブスポット118には異なる種類の核酸プローブ118が固定されているが、必要に応じて、一つのDNAマイクロアレイ110a内の複数の核酸プローブスポット118に同じ核酸プローブ118が固定されていてもよい。また、多孔質部110の微細な多孔の内壁に表面処理を施し、流体への摩擦抵抗や核酸プローブ118等の試薬の吸着性が調節されてもよい。
スライドチップ107の大きさは、例えば、通常のスライドガラスの半分の大きさであり、約37mm×約12mm×約1mmである。例えば、一つのDNAマイクロアレイ110aは約4mmの直径を有し、一つの核酸プローブスポット118は約100μmの直径を有し、一つのDNAマイクロアレイ110aの中に400個の核酸プローブスポット118が200μm間隔で配列されている。
一つの核酸プローブスポット118は、100ないし1000個、好ましくは1000個の微細な多孔を有し、一つの多孔は0.05〜5μmの直径を有している。
一つのDNAマイクロアレイ110aは、一種類の反応が実施される一つの反応単位に対応している。従来のDNAチップは、スライドガラス表面にプローブを固定化して形成され、二次元的な広がりを持つ反応領域を有している。このようなDNAチップとは異なり、DNAマイクロアレイ110aは、基板の表面における二次元的な広がりに加えて、基板の厚み方向の広がりをも持つ三次元的な反応領域を有している。
核酸プローブ118は、一般的に、約10ヌクレオチド以上約100ヌクレオチド以下の核酸からなるポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドであり、一般的にハイブリダイゼーションにより核酸を検出する際に使用される。
DNAマイクロアレイ110aに含まれる一つの核酸プローブスポット118は、前述したように複数の微細な多孔、つまり、微量な液体を収容し得る三次元的な空間を有している。一つの核酸プローブスポット118は、DNAマイクロアレイ110aを上方から見たときの平面内で占める非常に狭いが、多孔質部110の厚さ方向に延びている三次元的な空間を有しているので、一つの核酸プローブスポット118が実際に占めている面積は見た目よりも遙かに大きい。
例えば、核酸プローブスポット118毎に(固定する核酸プローブ118の種類を変更したり、表面処理を変更したりする等して)条件を変えることによって、小さな一つのDNAマイクロアレイ110aの中で非常に多くの情報を十分な感度で得ることができる。
一枚のスライドチップ107に含まれる四つのDNAマイクロアレイ110aは、それぞれ異なる検体(核酸サンプル114)の検査に適用されてもよく、あるいは、一つの検体に関する異なる四種類の解析に適用されてもよい。
DNAマイクロアレイ110aを用いた解析としては、例えば、被験者における癌関連遺伝子、薬剤代謝遺伝子等の変異や多型の有無の検出、あるいは、癌関連遺伝子、細胞内シグナル遺伝子、アポトーシス関連遺伝子等の発現解析等である。
反応容器101を支持するとともに反応を促進するための反応ステージ103について図8〜図11を参照しながら説明する。
図8と図9に示されるように、反応ステージ103は、反応容器101が載置されるベース部120と、ベース部120に対して開閉し得るカバー部123とを有している。ベース部120とカバー部123は、反応容器101を支持する反応容器支持機構を構成している。
カバー部123は、顕微鏡102によるDNAマイクロアレイ110aの観察を可能にする顕微鏡観察孔122と、顕微鏡観察孔122を塞いでいる光学的に透明な二枚のカバーガラス121とを有している。二枚のカバーガラス121は、図10と図11に示されるように、間隔を置いて位置している。
ベース部120は、反応容器101の廃液孔116の各々と流体的に連絡される四つの排出用流路119と、それらの排出用流路119の各々の途中に設けられた、それぞれ排出用流路119を開閉するための四つの電磁弁128とを有している。四つの排出用流路119は共に廃液集合管134と流体的に連絡しており、廃液集合管134はベース部120の側面で終端している。ただし、廃液集合管134は必ずしもベース部120の側面で終端する必要はない。例えば、ベース部120の上面や下面で終端していてもよく、望ましくは下面であった方が重力によりベース部120から廃液集合管134への廃液の流れが良くなるので好ましい。
排出用流路119は、反応容器101と対向する面で終端しており、その終端すなわち送液口の周りにはそれを取り囲む円形の溝が形成されており、その溝の中にはOリング130が配置されている。排出用流路119は、反応ステージ103に支持された反応容器101の廃液孔116と、Oリング130によって液密に保たれて、流体的に連絡される。排出用流路119と廃液孔116とで液密が保たれれば、例えばOリング130と送液口の周りの円形の溝は反応容器101にあっても構わない。
反応ステージ103はさらに、反応容器101に対して流体を移送するための流体移送機構であるシリンジピストンポンプ部125を有している。シリンジピストンポンプ部125すなわち流体移送機構は、例えば、反応容器101内に供給された核酸サンプルを反応容器101内において移動させたり、あるいは、洗浄水を反応容器101内に供給したりする。
シリンジピストンポンプ部125は、反応容器101の貯液孔117の各々と流体的に連絡される四つの移送用流路124と、移送用流路124の各々と流体的に連絡した、反応容器101内の流体を移送するための四つの移送用ポンプであるシリンジピストンポンプ131とを有している。シリンジピストンポンプ部125はさらに、移送用流路124の途中に設けられた、移送用流路124を開閉するための電磁弁127を有している。
移送用流路124は、反応容器101と対向する面で終端しており、その終端すなわち送液口の周りにはそれを取り囲む円形の溝が形成されており、その溝の中にはOリング130が配置されている。移送用流路124は、反応ステージ103に支持された反応容器101の貯液孔117と、Oリング130によって液密に保たれて、流体的に連絡される。移送用流路124と貯液孔117とで液密が保たれれば、例えばOリング130と送液口の周りの円形の溝は反応容器101にあっても構わない。
シリンジピストンポンプ131は、シリンジ138と、シリンジ138内を移動し得るピストン129と、シリンジ138とピストン129を液密に保つためのシール139とを有している。シール139は、例えば、シリンジ138に固定されたOリングである。しかしながら、シール139はOリングに限定されるものではなく、他の任意の適当なシール、例えばパッキンやテフロンシール等が適用されてもよい。
シリンジピストンポンプ部125のピストン129は、例えば(図示しない)モーターユニットによって駆動される。言い換えれば、遺伝子検査装置100は、図示されていないが、シリンジピストンポンプ部125のピストン129を駆動するためのモーターユニットを有している。モーターユニットは、例えば、ステッピングモータと、ステッピングモータの回転軸の運動を直線運動に変換するラックピニオン機構とで構成される。
遺伝子検査装置100は、シリンジピストンポンプ部125の四つのピストン129を一緒に駆動する一つのモーターユニットを有していてもよいが、より好ましくは、シリンジピストンポンプ部125の四つのピストン129を独立に駆動するために、四つのモーターユニットを有しているとよい。
シリンジピストンポンプ部125はさらに、それぞれのシリンジピストンポンプ131から延びている四つの流路と、それらの流路の各々の途中に設けられた、流路を開閉するための四つの電磁弁126とを有している。四つの流路は共に集合配管132と流体的に連絡しており、集合配管132はシリンジピストンポンプ部125の側面で終端している。ただし、集合配管132は、必ずしもシリンジピストンポンプ部125の側面で終端する必要はない。例えば、ポンプ部125の上面や下面であってもよく、望ましくは側面であった方が流路が単純化されて、加工しやすくなるので好ましい。
図12に模式的に示されるように、シリンジピストンポンプ部125の集合配管132は洗浄水タンク133と流体的に連絡され、ベース部120に設けられた廃液集合管134は、吸引ポンプ135を介して、廃液タンク136と流体的に連絡される。言い換えれば、遺伝子検査装置100は、反応ステージ103のシリンジピストンポンプ部125と流体的に連絡した洗浄水タンク133と、反応ステージ103の排出用流路119と流体的に連絡した廃液タンク136とをさらに有している。
図12において、例えば、DNAマイクロアレイ110a側の電磁弁127と廃液経路側の電磁弁128を閉じ、洗浄水タンク133側の電磁弁126を開放し、シリンジピストンポンプ131のピストン129を吸引側(紙面に対して右側)に移動させると、洗浄水タンク133の洗浄水137がシリンジ138内に吸引される。次に、洗浄水タンク133側の電磁弁126を閉じ、DNAマイクロアレイ110a側の電磁弁127を開放し、ピストン129を吐出側(紙面に対して左側)に移動すると、洗浄水137がDNAマイクロアレイ110aの各多孔質部110に送られる。
また、別の動作として、洗浄水タンク133側の電磁弁126と廃液経路側の電磁弁128を閉じ、DNAマイクロアレイ110a側の電磁弁127を開放し、ピストン129を吸引側と吐出側に繰り返し移動させると、反応容器101内に収容された核酸サンプル114が攪拌されながらDNAマイクロアレイ110aを繰り返し通過させられる。
また、別の動作として、廃液経路側の電磁弁128を開放し、DNAマイクロアレイ110a側の電磁弁127を閉じ、吸引ポンプ135を動作させると、各多孔質部110上の核酸サンプル114や洗浄水137が廃液タンク136に排出される。
それぞれ四つある電磁弁126と電磁弁127と電磁弁128とを選択的に駆動することにより、四つのDNAマイクロアレイ110aの内の任意のDNAマイクロアレイ110aを選択的に検査に使用できる。
また、シリンジピストンポンプ部125のピストン129の各々に設けられた四つのモーターユニットを選択的に駆動することによっても、四つのDNAマイクロアレイ110aの内の任意のDNAマイクロアレイ110aを選択的に検査に使用できる。
反応容器101とシリンジピストンポンプ131を連絡する流路の途中や反応容器101と吸引ポンプ135を連絡する流路の途中に、その流路内を流れる流体の圧力を検知するための圧力センサーが設けられてもよい。言い換えれば、シリンジピストンポンプ部125は移送用流路124の途中に設けられた圧力センサーを有していてもよい。また、遺伝子検査装置100は反応容器101と吸引ポンプ135を連絡する流路の途中に圧力センサーを有していてもよい。
例えば、圧力センサーにより流体の圧力をモニターすることにより、流体の圧力が所定圧力を越えないように、シリンジピストンポンプ131や吸引ポンプ135を制御してもよい。
また、シリンジピストンポンプ131および吸引ポンプ135の動作開始後、所定圧力以上の数値が圧力センサーにモニターされることで、多孔質部110がシリンジピストンポンプ131および吸引ポンプ135の動作開始前から既に詰まっていたことを定量的に検出してもよい。
また、シリンジピストンポンプ131および吸引ポンプ135の動作開始後、所定圧力以上の数値が圧力センサーにモニターされることで、多孔質部110がシリンジピストンポンプ131および吸引ポンプ135の動作中に異物により詰まったことを定量的に検出してもよい。
また、シリンジピストンポンプ131および吸引ポンプ135の動作開始後、所定圧力以下の数値が圧力センサーにてモニターされることで、多孔質部110がシリンジピストンポンプ131および吸引ポンプ135の動作開始前から既に割れていたことを定量的に検出してもよい。
また、シリンジピストンポンプ131および吸引ポンプ135の動作開始後、所定圧力以下の数値が圧力センサーにてモニターされることで、ステージ103とDNAマイクロアレイ110aとの間にリークが発生していることを定量的に検出してもよい。
また、シリンジピストンポンプ131および吸引ポンプ135の動作開始後、所定圧力範囲内の数値が圧力センサーにてモニターされることで、シリンジピストンポンプ131の吸引動作と吐出動作、および吸引ポンプ135の吸引動作が正常に行なわれていることの確認を定量的に検出してもよい。
また、シリンジピストンポンプ131および吸引ポンプ135の動作開始後、所定圧力範囲内の数値が圧力センサーにてモニターされることで、核酸サンプル114や洗浄水137が多孔質部110へ分注・供給されたことを定量的に検出してもよい。
反応ステージ103はさらに、反応容器101内のDNAマイクロアレイ110aの温度を調整するための温度調整機構を有している。温度調整機構は、反応容器101の温度を上げるための加熱手段を有している。加熱手段は、例えば、図8〜図11に示されるように、シリコンラバーヒーターやセラミックヒーターやペルチェ素子等の板状ヒーター105である。
板状ヒーター105は、ベース部120とカバー部123に設けられており、好ましくは、反応ステージ103に支持されている反応容器101と面接触する。具体的には、図10と図11に示されるように、ベース部120に設けられた板状ヒーター105は、これに載せられた反応容器101の下ハウジング109と面接触する。
図13に示されるように、板状ヒーター105は温度調整器211と電気的に接続されており、温度調整器211によって駆動制御される。温度調整器211は、フード106に設けられた送風機209と共に、制御コンピューター210と電気的に接続されており、制御コンピューター210によって制御される。言い換えれば、遺伝子検査装置100は、板状ヒーター105を駆動する温度調整器211と、温度調整器211と送風機209を制御する制御コンピューター210とをさらに有している。
温度調整機構は、好ましくは、図13に示されるように、板状ヒーター105の表面温度を測定する温度センサー212をさらに有している。温度センサー212は、例えば、サーミスタや熱電対であり、これらは、図示されていないが、ベース部120とカバー部123に設けられている。これらの温度センサーは、板状ヒーターの近傍に備えられていることが好ましい。
温度調整機構は、板状ヒーター105の過度の加熱を防止するサーモスタット等のヒーター制御機構を有しているとよい。このようなヒーター制御機構は、板状ヒーター105を駆動制御する温度調整器211(図13参照)の故障が原因で引き起こされる反応容器101の不所望な過度の加熱の防止に効果的である。
温度調整機構は、さらに好ましくは、反応容器101の温度を下げるための冷却手段をさらに有している。冷却手段は、例えば、ベース部120とカバー部123に設けられた(図示しない)ペルチェ素子である。ペルチェ素子は、好ましくは、反応ステージ103に支持されている反応容器101と面接触する。冷却用のペルチェ素子も温度調整器211と電気的に接続され、温度調整器211によって駆動制御される。ペルチェ素子は板状ヒーターの代替で用いてもよい。電流を制御することで、ヒーター105に代わる加熱手段としてペルチェ素子は機能する。
反応容器101は、制御コンピューター210により制御される板状ヒーター105と温度センサー212と(図示しない)ペルチェ素子と送風機209とによって、例えば、ハイブリダイズ反応の際に、30℃程度から90℃程度の範囲で温度調整される。温度制御は、DNAマイクロアレイ110aで行なわせる反応に応じて決まり、反応容器101の温度を所定の一定温度に保つ制御や、予め設定された複数の温度値の間を所定の温度勾配で加熱したり冷却したりする制御を含んでいる。
好適な反応ステージ103では、加熱のための板状ヒーター105が反応容器101に接触しており、このため反応容器101の温度を短時間で上昇させることができる。
好適な検査装置100においては、検査装置自体が冷却のための送風機209を備えているとともに、反応ステージ103が冷却のためのペルチェ素子を備えている。このような検査装置100においては、送風機209とペルチェ素子を一緒に使用することにより、反応容器101の温度を短時間で下降させることができる。
以下、遺伝子検査動作について説明する。
図8に示されるように、カバー部123が開かれた状態で、反応容器101が反応ステージ103のベース部120に載置される。その後、反応容器101の開口部113の中に核酸サンプル114が供給される。つまり、核酸サンプル114がDNAマイクロアレイ110aに貯液される。その後、図9に示されるように、カバー部123が閉じられる。
これにより、図10に示されるように、反応容器101の廃液孔116がベース部120に設けられた排出用流路119と流体的に連絡されるとともに、反応容器101の貯液孔117がシリンジピストンポンプ部125に設けられた移送用流路と流体的に連絡される。なお、反応ステージ103のシリンジピストンポンプ部125のすべての配管内には予め洗浄水137が充填されている。
カバー部123が閉じられた状態では、図10に示されるように、カバー部123に設けられた下側のカバーガラス121は、反応容器101の上ハウジング108と面接触する。これにより、反応容器101の上ハウジング108に形成された開口部113(核酸サンプル114をDNAマイクロアレイ110aに貯液する部分)が覆われる。
これにより、フード106内の埃などの異物が、反応容器101の上ハウジング108の開口部113内に入り込むことが防止される。これにより、異物の混入による顕微鏡102によるDNAマイクロアレイ110aの誤検査を防止できる。
その後、核酸サンプルを反応させるため、反応容器101内のDNAマイクロアレイ110aが温度制御される。
ここで、DNAマイクロアレイ110aの温度制御について触れる。
図13において、DNAマイクロアレイ110aの所定加熱温度情報213は制御コンピューター210に入力され、制御コンピューター210は入力された温度情報213の信号を温度調整器211に出力し、温度調整器211は温度センサー212が出力するヒーター105の表面温度の信号を受け取り、受け取ったヒーター105の表面温度情報が制御コンピューター210に入力された所定温度213の一定範囲内に達していないようであれば、温度調整器211がヒーター105に対して加熱する信号を出すという動作を、温度調整器211の設定済みの所定の温度勾配に基づいて所定の温度で一定に恒温されるまで繰り返す。
一方、温度センサー212より温度調整器211が受け取ったヒーター105の表面温度情報が制御コンピューター210に入力した所定温度213の一定範囲を上回っているようであれば、温度調整器211はヒーター105に対して加熱を停止する信号を出力する。また、制御コンピューター210は必要に応じて送風機209を回転させる信号を出力し、ヒーター105の表面温度情報が所定の温度以下になるまでの冷却時間の短縮を図ってもよい。
四つのヒーター105により、DNAマイクロアレイ110aと各液体が所定温度に加温される。
反応容器101の開口部113はカバーガラス121によって覆われているので、その内部は高湿度環境となり、核酸サンプル114は蒸発することがなく、核酸サンプル114の濃度は一定に保たれる。従って、不所望な核酸サンプル114の濃度変化は生じない。
また、反応容器101の開口部113は、密閉された空気を間に挟んで配置されている二枚のカバーガラス121を介して、外部環境と遮断されているので、外部環境との温度勾配が低減されている。これにより、温度制御中にカバーガラス121の面に結露が生じることが防止される。
次に、DNAマイクロアレイ110a側の電磁弁127のみが開放され、図11に示されるように、シリンジピストンポンプ131のピストン129が吸引側に紙面右側に移動される。これにより、核酸サンプル114は、DNAマイクロアレイ110aを通過し、下ハウジング109内の貯液孔117の中に移動する。次に、図10に示されるように、ピストン129が吐出側に紙面左側に移動される。これにより、核酸サンプル114は、DNAマイクロアレイ110aを通過し、再びDNAマイクロアレイ110aの上側すなわち開口部113の中に戻る。この動作が繰り返し行なわれる。これにより、核酸サンプル114は、短時間の内に、DNAマイクロアレイ110a内の核酸プローブスポット118とハイブリダイズ反応を起こす。その結果、所定の核酸プローブスポット118だけが蛍光を発し得る。
その後、図11に示されるように、全量の核酸サンプル114が貯液孔117に留まっている状態で、顕微鏡102によって蛍光観察が行なわれ、ハイブリダイズした各核酸プローブスポット118の微弱蛍光が検査される。このとき、核酸サンプル114はDNAマイクロアレイ110aの上部の上ハウジング108のテーパー形状開口部113より除去されている。
シリンジピストンポンプ部125の内部に核酸サンプル114が到達しないように、予め貯液孔117の容積が決められており、シリンジピストンポンプ131はピストン129の移動距離が貯液孔117の容積に応じて制限されて駆動される。これにより、シリンジピストンポンプ部125内部には核酸サンプル114が侵入せず、別のDNAマイクロアレイ110aをセットした際のキャリーオーバーは発生しない。
反応ステージ103に設置されているDNAマイクロアレイ110aの全項目の検査の終了後、制御コンピューター210は送風機209に回転の信号を出力し、送風機209は反応ステージ103に風を送る。温度センサー212はヒーター105の表面温度の信号を温度調整器211を介して制御コンピューター210に送り、制御コンピューター210は、温度の信号が予め入力されている所定の温度(例えばユーザーがステージ103に接触しても火傷しない温度)以下になったら、反応ステージ103をフード106外にせり出させる。ただし、送風機209で風を送る工程は必ずしも必要ではなく、放冷したり、冷却水を循環してもよく、ペルチェ素子により冷却することは可能である。したがって、反応ステージが所定の温度以下になったところでフード外にせり出すことにより、安全に装置の操作を行うことができる。
反応ステージ103をフード106外にせり出させる条件は、必ずしもDNAマイクロアレイ110aの検査が全項目終了した後であることに限定されない。例えば、各検査項目前後の間で、ユーザーがDNAマイクロアレイ110aの上ハウジング108のテーパー形状開口部113に新たな核酸サンプル114や洗浄液等のその他の液体を必要に応じて分注するために、反応ステージ103がせり出されてもよい。
その際、必ずしも送風機209により反応ステージ103を所定の温度以下に冷却する必要はなく、例えば、前検査項目のハイブリダイゼーションの所定温度より次検査項目の所定温度が高い場合などは、冷却することなくフード106外にステージ103がせり出されてもよい。この場合は、ステージの温度が高いことをステージまたはモニター等に表示することが好ましい。
また、核酸サンプル114は、貯液孔117に移送される代わりに、吸引ポンプ135によってDNAマイクロアレイ110aから除去されてもよい。この場合にもスポットの蛍光強度のS/N比が向上される。
しかしながら、より好ましくは、ハイブリダイズ反応の終了後に、DNAマイクロアレイ110aが洗浄水で洗浄される。DNAマイクロアレイ110aに核酸サンプル114を数回通過させてハイブリダイズ反応を行なった後、シリンジピストンポンプ131により、洗浄水137をDNAマイクロアレイ110aの上まで送液する。その後、廃液用電磁弁128を開放し、電磁弁127を閉じ、吸引ポンプ135を動作させて、余剰の核酸サンプル114や洗浄水137等を反応容器101から排除する。これにより、単に余剰の核酸サンプル114だけが除去されるだけでなく、洗浄水137によってDNAマイクロアレイ110aが洗浄される。
このような洗浄動作と廃液吸引動作は繰り返し行なわれてもよく、これにより、より確実に余剰の核酸サンプル114が除去される。
本実施形態の遺伝子検査装置100では、顕微鏡102のXYステージに載せられた反応ステージ103がヒーター105とシリンジピストンポンプ131を備えているので、反応容器101内のDNAマイクロアレイ110aを各種装置間で搬送させる必要がない。これにより、これまで搬送に要していた時間が短縮されるので、検査が高速に行なわれるようになる。搬送の際に発生していたDNAマイクロアレイの温度変化がなくなる。搬送の際に生じていたDNAマイクロアレイのゴミ付着がなくなるので、高精度な検査が行なわれるようになる。搬送の手間がなくなるので、検査が簡易になる。
本実施形態では、DNAマイクロアレイを例にあげて説明しているが、DNAマイクロアレイは微弱な信号を精度良く検出しなければならないので、本発明はその精度向上において非常に有効である。しかし、多孔質の固相担体にプローブを固相化して検出を行なうものであれば、本発明を適用することが可能である。ここで用いることのできる生体関連物質は、動物、植物、微生物等の細胞のみならず、これらに寄生しなければ自ら増殖できないウイルス等に由来する物質をも含む。生体関連物質は、これらの細胞等より直接抽出・単離された天然形態のもののみならず、遺伝子工学的手法を利用して生産されたもの、化学的に修飾されたものも含む。より具体的には、ホルモン類、酵素、抗体、抗原、アブザイム、その他のタンパク質、核酸等が含まれる。
また、プローブとしては、上記の生体関連物質に対して特異的に結合する物質であり、例えば、ホルモン等のリガンドとその受容体、酵素とその基質、抗原とその抗体、特定配列を有する核酸とこれに相補的な配列を有する核酸等の関係にある、何れかを用いることができる。
本実施形態の遺伝子検査装置100は、さまざまな変更や変形が成されてもよい。
図10と図11に示されるシリンジピストンポンプ131に代替可能なシリンジピストンポンプの変形例を図14に示す。図14に示されるように、本変形例のシリンジピストンポンプ205は、シリンジ206内を移動し得るピストン207の送液吸引口側(紙面に対して左側)の先端部に溝208を形成されており、この溝208にOリング139を嵌合され、Oリング139がピストン207の移動と共にシリンジ206の内壁を摺動する構成であってもよい。
図10と図11に示される反応ステージの変形例を図38に示す。本変形例の反応ステージは、図10と図11の反応ステージに、反応容器101の温度を下げるためのペルチェ素子142が追加された構成を有している。
図38に示されるように、本変形例の反応ステージは、ベース部120に、反応容器101の温度を下げるためのペルチェ素子142をさらに有している。ペルチェ素子142は、反応ステージ103に支持されている反応容器101と面接触する。ペルチェ素子142は、温度調整器211と電気的に接続され、温度調整器211によって駆動制御される。
この反応ステージにおいては、反応容器101は、板状ヒーター105によって温められ、ペルチェ素子142によって冷却される。
第二実施形態
本実施形態は、第一実施形態において説明した洗浄水によるDNAマイクロアレイの洗浄効果を高めるために圧電素子を備えているベース部に向けられている。
図15に示されるように、ベース部120は、その上に載置された反応容器101の下ハウジング109と面接触する二枚の圧電素子140を備えている。圧電素子140は、例えば、10mm×30mm×1mmの大きさを有している。圧電素子140は、例えば、厚み方向の分極処理が施されたチタン酸シリコン酸鉛(PZT)の板と、その厚み方向の二面に蒸着された銀電極とで構成されている。
圧電素子140には、図示しない駆動回路からフレキシブルケーブルなどを用いて、100Vp−p程度の正弦波の交番電圧が印加される。圧電素子140に印加する交番電圧の周波数は、好ましくは、ステージ103の固有振動数に一致した周波数である。このような周波数の交番電圧の印加に対して、圧電素子140は強い超音波振動を発生する。
図15に示されるように、ハイブリダイズ反応の終了後、シリンジピストンポンプ131により、洗浄水137がDNAマイクロアレイ110aの上まで送液される。このようにDNAマイクロアレイ110aの上まで洗浄水137が供給されている状態で、ベース部120に内蔵されている圧電素子140が正弦波の交番電圧で駆動され、圧電素子140は超音波振動を発生する。これにより、洗浄水が供給されている部分は超音波洗浄される。
その後、廃液用電磁弁128を開放し、電磁弁127を閉じ、吸引ポンプ135を動作させることにより、余剰の核酸サンプル114と洗浄水137は反応容器101から排除される。
このとき、洗浄水による洗浄の際に超音波振動を加えることにより、その洗浄効果がさらに向上される。その結果、核酸サンプル114はハイブリダイズ反応を起こした適正な核酸プローブスポットにのみ存在し、余剰の核酸サンプル114はほとんど存在しなくなる。これにより、不所望な蛍光がさらに軽減され、蛍光観察のS/N比がさらに向上される。
第三実施形態
本実施形態は、第一実施形態において説明したDNAマイクロアレイの洗浄の際に、洗浄水をDNAマイクロアレイに上方から供給する機能、あるいは洗浄液をDNAマイクロアレイの上方から吸引する機能を有している検査装置に向けられている。
図16と図17に示されるように、検査装置は、洗浄水をDNAマイクロアレイに上方からすなわち検査面側から供給する洗浄ノズル141をさらに有している。洗浄ノズル141は、反応ステージ103のカバー部123が開かれた状態で、反応容器101の上ハウジング108と接触され、上ハウジング108に形成されたテーパー形状開口部113に洗浄液を供給する。図示しないが、洗浄ノズル141は別の搬送部材により支持されており、洗浄ノズル141には洗浄水タンク133の洗浄水137を送液するポンプが接続されている。
ハイブリダイズ反応の終了後、図16に示されるように、カバー部123が開けられ、洗浄ノズル141が反応容器101の上ハウジング108と接触され、上ハウジング108に形成されたテーパー形状開口部113に洗浄液が供給される。ただし、洗浄ノズル141は必ずしも上ハウジング108と接触する必要はなく、接触していなくても洗浄液を供給することは可能である。
洗浄ノズル141から洗浄液が供給されている間、廃液用電磁弁128だけが開かれ、吸引ポンプ135が動作される。これにより、洗浄水137が余剰の核酸サンプル114と共に反応容器101から排出される。
第二実施形態と同様に、ベース部120は洗浄効果を高める圧電素子140を備えており、この洗浄動作の間、圧電素子140による超音波洗浄が併用されてもよい。
また、図17に示されるように、シリンジピストンポンプ131より、洗浄水タンク133の洗浄水137をDNAマイクロアレイ110aに送液しながら、洗浄水が洗浄ノズル141で吸引され除去される。これにより余剰の核酸サンプルが除去される。
本実施形態では、洗浄動作の間、洗浄水が一方向に流されるので、DNAマイクロアレイ110aは常に清浄な洗浄水で洗浄され続ける。これにより、洗浄時間が大幅に短縮される。また、DNAマイクロアレイ110aの上方に位置する洗浄ノズルによって洗浄液が吸引されて除去されることにより、DNAマイクロアレイ110aの上側すなわち検査面側に存在するゴミも一緒に除去される。
その結果、核酸サンプル114はハイブリダイズ反応を起こした適正な核酸プローブスポットにのみ存在し、余剰の核酸サンプル114はほとんど存在しなくなる。これにより、不所望な蛍光がさらに軽減され、蛍光観察のS/N比がさらに向上される。
DNAマイクロアレイを洗浄するための物質は液体に限定されるものではない。つまり、洗浄ノズル141から供給される物質は、温度制御された微小液滴であってもよい。温度制御された微小液滴も、余剰の核酸サンプル114を効率よく除去し得る。好ましくは、DNAマイクロアレイを通過する際の圧力負荷を抑えるために、蒸気の液滴の大きさは、数μm程度以下の大きさであるとよい。また、洗浄ノズル141から供給される物質は、空気であってもよい。この場合は、反応容器101の開口部113を洗浄ノズル141により密封するか、他の手段で密封することが必要となる。
第四実施形態
本実施形態は、空気によって核酸サンプルを移送する反応ステージに向けられている。本実施形態は、第一実施形態におけるシリンジピストンポンプ部が、空気によって流体を移送する構成に変更された検査装置に向けられている。
図18と図19に示されるように、本実施形態の反応ステージ202は、反応容器101に対して流体を移送するための流体移送機構であるシリンジピストンポンプ部200を有している。
シリンジピストンポンプ部200は、反応容器101の貯液孔117の各々と流体的に連絡される四つの移送用流路124と、移送用流路124の各々と流体的に連絡した、反応容器101の貯液孔117の各々と流体的に連絡される四つのシリンジピストンポンプ203を有している。
各シリンジピストンポンプ203は、シリンジ204と、シリンジ204内を移動し得るピストン129と、シリンジ204とピストン129を気密に保つためのシールであるシール139とを有している。
ピストン129の移動に伴う空気201の吸入・排出により、反応ステージ202に支持された反応容器101内の核酸サンプルが移送される。
四つの電磁弁128を選択的に駆動することにより、四つのDNAマイクロアレイ110aの内の任意のDNAマイクロアレイ110aを選択的に検査に使用できる。
ベース部120は第一実施形態と同様であり、図20に模式的に示されるように、ベース部120の廃液集合管134は吸引ポンプ135を介して廃液タンク136と連絡されている。
カバー部123が開かれ、反応容器101が反応ステージ103のベース部120に載置され、反応容器101の開口部113の中に核酸サンプル114が供給された後、図18に示されるように、カバー部123が閉じられる。
これにより、反応容器101の貯液孔117は、移送用流路124のみを介して、シリンジピストンポンプ203と流体的に連絡される。また、反応容器101の廃液孔116はベース部120に設けられた排出用流路119と流体的に連絡される。
次に、DNAマイクロアレイ110a側の電磁弁128のみが開放され、図19に示されるように、シリンジピストンポンプ203のピストン129が吸引側に紙面右側に移動される。これにより、反応容器101の中の空気がシリンジピストンポンプ203の中に吸い込まれるため、核酸サンプル114は、DNAマイクロアレイ110aを通過し、下ハウジング109内の貯液孔117の中に移動する。次に、図18に示されるように、ピストン129が吐出側に紙面左側に移動される。これにより、シリンジピストンポンプ203の中の空気が反応容器101の中に排出されるため、核酸サンプル114は、DNAマイクロアレイ110aを通過し、開口部113の中に戻る。この動作が繰り返し行なわれることにより、核酸サンプル114は、短時間の内に、DNAマイクロアレイ110a内の核酸プローブスポット118とハイブリダイズ反応を起こす。その結果、所定の核酸プローブスポット118だけが蛍光を発し得る。
ハイブリダイズ反応の後、第三実施形態と同様の手法によって、DNAマイクロアレイ110aの洗浄が行なわれる。つまり、洗浄ノズル141が反応容器101に検査面側から設置され、洗浄ノズル141から洗浄水137が供給されるとともに、供給される洗浄水137が吸引ポンプ135により廃液孔116を介して除去される。
本実施形態では、シリンジピストンポンプ203と反応容器101とを連絡する移送用流路124は、その途中に電磁弁が設けられていないことにより、短く、屈曲箇所も有していない。このため、シリンジピストンポンプ203による核酸サンプル114や洗浄水137の移動応答性が良い。
シリンジピストンポンプ部200は、電磁弁を有していないため、そのぶん、小型化され、省電力化され、安価に構成される。
また、シリンジピストンポンプ部200の配管内に洗浄水137に替わって気体(空気)201を使用することで、ユーザーが反応容器101をベース部120から取り外した際に、貯液孔117が大気に触れて貯液孔117内に陰圧が働き、貯液孔117と接触していた送液口の洗浄水137がシリンジピストンポンプ部200から漏れ出し、洗浄水137の液量が減ることで、多孔質部110と貯液孔117を通過する核酸サンプル114の移動応答性が悪くなる可能性を防げる。
また、シリンジピストンポンプ部200の配管内に洗浄水137に替わって気体(空気)201を使用することで、洗浄水137を充填させる操作の手間と、充填するのを待つ時間が無くなる。
また、シリンジピストンポンプ部200の配管内に洗浄水137に替わって気体(空気)201を使用することで、例えば装置の点検の前に洗浄水137を全て抜き取るといったメンテナンスの際の手間が無くなり、メンテナンス性が良くなる。
また、前述の実施形態では、シリンジピストンポンプ部200の配管内に洗浄水137を充填させることで、空気が混入して配管内で空気層ができる可能性があり、その空気層によって多孔質部110と貯液孔117を通過する核酸サンプル114のシリンジピストンポンプ203による移動応答性を悪くさせる可能性があるが、本実施形態では、配管内に全て気体(空気)201を充填させる為、空気層によって移動応答性が悪くなる要因を防ぐことができる。
本実施形態においても、特に図示していないが、シリンジピストンポンプ部200は、吸入・排出される空気201の圧力を検知する圧力センサーを有していてもよい。
第五実施形態
本実施形態は、洗浄水を供給する洗浄ノズルと、洗浄水を除去する廃液ノズルとを備えている遺伝子検査装置に向けられている。
図21に示されるように、本実施形態の遺伝子検査装置は、反応容器101の上ハウジング108に形成されたテーパー形状開口部113に対して、上方から、洗浄水137を供給する洗浄ノズル214と、洗浄水137を除去する廃液ノズル215とを有している。洗浄ノズル214は、例えば圧力手段を有したロッドとロッドに嵌合したノズルチップによる液体移送機構も含まれる。
洗浄ノズル214は洗浄水タンク133の洗浄水137を送液するための図示しないポンプに接続されている。また、廃液ノズル215は上ハウジング108のテーパー形状開口部113から洗浄水137を廃液タンク136へ排出するための図示しないポンプに接続されている。廃液ノズル215の端部すなわち吸引口は、好ましくは、DNAマイクロアレイの近くに配置される。これにより、洗浄水137の検査表面の液残り量が少なくなる。さらに、洗浄ノズル214は、好ましくは、上ハウジング108のテーパー形状開口部113に貯液された洗浄水137に一切触れない位置に配置される。これにより、核酸サンプル114とのコンタミネーションが防止される。
図21には図示されていないが、反応容器101は、第一実施形態で説明した反応ステージ103に支持される。すなわち、反応容器101の貯液孔117はシリンジピストンポンプ131と連絡される。
例えば、洗浄ノズル214から上ハウジング108のテーパー形状開口部113の中に洗浄水137が供給される。シリンジピストンポンプ131の吸引動作により、開口部113の中の洗浄水137はDNAマイクロアレイを通過して貯液孔117の中に移動する。その後、シリンジピストンポンプ131の排出動作により、貯液孔117の中の洗浄水137はDNAマイクロアレイを通過して開口部113の中に移動する。
シリンジピストンポンプ131の吸引動作と排出動作が適当に繰り返された後、開口部113の中の洗浄水137は、廃液ノズル215により吸引されて除去される。これにより、洗浄水137と一緒に、DNAマイクロアレイの上に存在する異物が取り除かれる。
廃液ノズル215による吸引後、DNAマイクロアレイの上に残る洗浄水137が検査結果に影響を及ぼすようであれば、吸引ポンプ135により廃液孔116を介して洗浄水137が排出されるとよい。
洗浄水137は、洗浄ノズル214から供給されるだけでなく、シリンジピストンポンプ131からも供給されてもよい。
例えば、ハイブリダイズ反応の後、シリンジピストンポンプ131により洗浄水137がDNAマイクロアレイの上まで供給される。その後、廃液ノズル215により洗浄水137が吸引される。これにより、洗浄水137と一緒に、DNAマイクロアレイの上に存在する異物が取り除かれる。その後、洗浄ノズル214から洗浄水137が供給され、洗浄水137が吸引ポンプ135により吸引される。これにより、洗浄水137はDNAマイクロアレイを通過し、廃液孔116を通って反応容器101から除去される。
前述の洗浄水137の供給の順番は逆にされてもよい。すなわち、先に洗浄ノズル214から洗浄水137が供給され、吸引ポンプ135により洗浄水137が反応容器101から排出された後、シリンジピストンポンプ131によりDNAマイクロアレイの上まで洗浄水137が供給され、DNAマイクロアレイの上の洗浄水137が廃液ノズル215により吸引されてもよい。
本実施形態では、DNAマイクロアレイの上側に配置された廃液ノズル215によって洗浄水137が吸引されるので、DNAマイクロアレイの上側に存在する異物が洗浄水と一緒に取り除かれる。
また、吸引ポンプ135による洗浄水137の排出と廃液ノズル215による洗浄水137の排出とを併用することにより、洗浄水137の排出時間の短縮を図ることができる。
また、シリンジピストンポンプ131による洗浄水137の供給と洗浄ノズル214による洗浄水137の供給とを併用することにより、洗浄水137の供給時間の短縮を図ることができる。
第六実施形態
本実施形態は、流体移送機構を備えた反応容器101に向けられている。
図22に示されるように、本実施形態の反応容器101では、下ハウジング109の貯液孔117は、円柱形状あるいは多角柱形状を有しており、シリンジピストンポンプのシリンジを兼ねている。貯液孔117の中を移動し得るピストン207が設けられている。ピストン207は、その端部に形成された溝208を有しており、溝208にはシール139が嵌め込まれている。シール139は、ピストン207と、貯液孔117すなわちシリンジとを気密に保っている。
本実施形態の反応容器101を支持する反応ステージは、第一実施形態の反応ステージ103からシリンジピストンポンプ部125が省かれた構成であってよい。ピストン207は、反応容器101が反応ステージに設置される前に、反応容器101の貯液孔117にピストン207が挿入され、反応容器101が反応ステージに設置された後、図示しないモーターユニットに連結され、モーターユニットによって図22の左右に移動され得る。
核酸サンプル114の分注後、核酸サンプルは、ピストン207に接触しても、接触しなくてもよい。
本実施形態では、シリンジピストンポンプが反応容器101に設けられているので、核酸サンプル114とピストン207との間の空気層が少なく、核酸サンプル114の移動応答性が良い。
また、本実施形態の反応容器101はシリンジピストンポンプを備えているので、これを支持する反応ステージの小型化の小型化、従って遺伝子検査装置の小型化が図れる。
第七実施形態
本実施形態は、複数の反応容器101を支持し得る円形反応ステージを有する遺伝子検査装置に向けられている。
図23に示されるように、本実施形態の遺伝子検査装置は、上述したように制御コンピューター210によって全体が制御されていて、その中心を軸として回転され得る円形反応ステージ217と、これを覆うフード106と、円形反応ステージ217に支持され回転されている反応容器101内のDNAマイクロアレイを蛍光観察するためのCCDカメラ104とを有している。
円形反応ステージ217は、複数の反応容器101を放射状に支持し得る。つまり、円形反応ステージ217は、反応容器101を支持するための支持機構を複数箇所設けている。さらに、円形反応ステージ217は、図示されていないが、支持された反応容器101に対して流体を移送するための流体移送機構と、支持された反応容器101内のDNAマイクロアレイの温度を調整するための温度調整機構とを有している。支持機構と流体移送機構と温度調整機構には、これまでに説明した実施形態の構成が適用され得る。
好ましくは、遺伝子検査装置はさらに、円形反応ステージ217に支持され回転されている反応容器101に核酸サンプルを分注するための核酸サンプル分注ノズル216を有している。より好ましくは、遺伝子検査装置はさらに、円形反応ステージ217に支持され回転されている反応容器101内のDNAマイクロアレイを洗浄するための洗浄ノズル141を有している。核酸サンプル分注ノズル216と洗浄ノズル141とCCDカメラ104は、円形反応ステージ217の周囲に、その回転方向に沿って配置されている。
例えば、反応容器101を円形反応ステージ217に設置する際、設置を容易にするために、支持機構が図示しないYステージによりフード106の外にせり出される。支持機構は、反応容器101が設置された後、再びYステージによりフード106の中に収納される。
円形反応ステージ217に支持された反応容器101は、円形反応ステージ217の回転によって、核酸サンプル分注ノズル216による作業領域に搬送される。ここにおいて、核酸サンプル分注ノズル216により反応容器101に核酸サンプルが分注される。
円形反応ステージ217に支持された反応容器101は、核酸サンプルの分注後、円形反応ステージ217の回転によって搬送されながら、ハイブリダイズ反応が行なわれる。ハイブリダイズ反応の終了後、円形反応ステージ217に支持された反応容器101は、円形反応ステージ217の回転によって、洗浄ノズル141による作業領域に搬送される。ここにおいて、反応容器101内のDNAマイクロアレイが洗浄される。図23においては、洗浄ノズルを1本用いる場合について説明しているが、洗浄水供給用と吸引用等の複数のノズルを設けることも可能である。
円形反応ステージ217に支持された反応容器101は、洗浄後、円形反応ステージ217の回転によって、CCDカメラ104による撮像領域に搬送される。ここにおいて、反応容器101内のDNAマイクロアレイの蛍光画像が撮像される。撮像が終了した反応容器101は、反応容器交換手段218によって新たな反応容器101と交換される。
本実施形態の遺伝子検査装置は、複数のDNAマイクロアレイの検査を連続的に行なえる。これまでDNAマイクロアレイについて述べてきたが、他の生体関連物質の解析、例えばRNA、抗原抗体、たんぱく質、ペプチド等の配列、定量、そして構造の解析でもよい。
第八実施形態
本実施形態は、第一実施形態における反応容器から廃液孔が省かれた反応容器と、その反応容器に好適に対応した反応ステージを有する検査装置に向けられている。
図24〜図27に示されるように、本実施形態の反応容器101Aは、凹部115の最下部から下ハウジング109Aの下面まで延びている廃液のための廃液孔を有していない。
つまり、下ハウジング109Aは、スライドチップ107の四つのDNAマイクロアレイ110aに対応する位置に形成された、その底面が傾斜している四つの凹部115と、凹部115の最下部から下方へ途中まで延びている縦孔部221と、縦孔部221の下端から下ハウジング109Aの側面まで延びている、DNAマイクロアレイ110aに供給される核酸サンプル114を含む流体を貯め得る貯液孔117とを有している。
本実施形態のベース部120Aは、反応容器101Aが廃液孔を有していないことに対応して、第一実施形態のベース部120Aから、排出用流路119と電磁弁128と廃液集合管134とが、さらには、排出用流路119の終端すなわち送液口を取り囲む円形の溝と、その溝の中に配置されるOリング130とが省かれた構成となっている。
つまり、ベース部120Aは、単に、反応容器101Aを加熱するための板状ヒーター105を有しているだけである。ベース部120Aは、第二実施形態と同様に、洗浄動作時の洗浄効果を高めるために、超音波洗浄を行なうための圧電素子を有していてもよい。
本実施形態の遺伝子検査装置は、さらに、第五実施形態と同様に、反応容器101Aに上方から洗浄水137を供給する洗浄ノズル214と、反応容器101Aから洗浄水137を除去する廃液ノズル215とを有している。
第五実施形態において既に説明したように、洗浄ノズル214は洗浄水タンク133の洗浄水137を送液するための図示しないポンプに接続されている。また、廃液ノズル215は上ハウジング108のテーパー形状開口部113から洗浄水137を廃液タンク136へ排出するための図示しないポンプに接続されている。
廃液ノズル215の端部すなわち吸引口は、好ましくは、DNAマイクロアレイの近くに配置される。これにより、洗浄水137の検査表面の液残り量が少なくなる。さらに、洗浄ノズル214は、好ましくは、上ハウジング108のテーパー形状開口部113に貯液された洗浄水137に一切触れない位置に配置される。これにより、核酸サンプル114とのコンタミネーションが防止される。
その他の構成は第一実施形態と同様である。
第一実施形態と同様、反応容器101Aは反応ステージ103に支持され、貯液孔117はシリンジピストンポンプ131と流体的に連絡される。ハイブリダイズ反応は第一実施形態と同様に行なわれる。
ハイブリダイズ反応の終了後、図24に示されるように、例えば、洗浄ノズル214から上ハウジング108のテーパー形状開口部113の中に洗浄水137が供給される。シリンジピストンポンプ131の吸引動作により、開口部113の中の洗浄水137はDNAマイクロアレイを通過して貯液孔117の中に移動する。その後、シリンジピストンポンプ131の排出動作により、貯液孔117の中の洗浄水137はDNAマイクロアレイを通過して開口部113の中に移動する。
シリンジピストンポンプ131の吸引動作と排出動作が適当に繰り返された後、図25に示されるように、開口部113の中の洗浄水137は、廃液ノズル215により吸引されて除去される。これにより、洗浄水137と一緒に、DNAマイクロアレイの上に存在する異物が取り除かれる。
廃液ノズル215による吸引後、DNAマイクロアレイの上に残る洗浄水137が検査結果に影響を及ぼすようであれば、シリンジピストンポンプ131により洗浄水137が貯液孔117内に吸引されるとよい。
図24と図25においては、洗浄ノズル214から洗浄水137を供給する例について述べたが、洗浄水137は、シリンジピストンポンプ131からも供給されてもよい。
例えば、ハイブリダイズ反応の後、図26に示されるように、シリンジピストンポンプ131により洗浄水137がDNAマイクロアレイの上まで供給される。その後、図27に示されるように、廃液ノズル215により洗浄水137が吸引される。
シリンジピストンポンプ131による洗浄水137の供給と廃液ノズル215による洗浄水137の吸引は、必要に応じて、適当な回数繰り返されるとよい。
本実施形態では、DNAマイクロアレイの上側に配置された廃液ノズル215によって洗浄水137が吸引されるので、DNAマイクロアレイの上側に存在する異物が洗浄水と一緒に取り除かれる。
本実施形態では、第一実施形態と異なり、反応容器101Aが凹部115から下面まで延びる廃液孔を有していない。このため、図12と図28とを比較して分かるように、廃液孔を利用した流体の排出に必要なさまざまな要素(例えば図12の吸引ポンプ135や電磁弁128や廃液タンク136ほか)が不要である。これは、検査装置の小型化や省電力化につながる。
また、本実施形態の反応容器101Aは、廃液孔を有していない分、内部の流路の体積がより小さい。このため、例えばシリンジピストンポンプによる圧力伝達に対する流体(例えば核酸サンプル液)の移送応答性が向上する。これにより、検査時間の短縮化が図れる。
さらに、本実施形態では、反応容器101Aが廃液孔を有していないため、凹部115と貯液孔117の間の流路に分岐が無くなり、流路内を通過する流体の移送量がより安定する。このため、より精度の高い検査を行なうことが可能となる。
本実施形態は、さまざまな修正や変更が施されてもよい。例えば、洗浄水137の供給に関して、洗浄ノズル214からの洗浄水137の供給とシリンジピストンポンプ131からの洗浄水137の供給は同時に行なわれてもよい。この場合、より短時間の間により多くの新鮮な洗浄水を多孔質部110に通過させることができる。つまり、洗浄水137の供給時間の短縮を図ることができる。これにより、検査時間の短縮化が図れる。
第九実施形態
本実施形態は、第八実施形態におけるシリンジピストンポンプ部が、第四実施形態と同様に、空気によって流体を移送する構成に変更された検査装置に向けられている。言い換えれば、本実施形態は、第八実施形態と同様に、第四実施形態における反応容器から廃液孔が省かれた反応容器と、その反応容器に好適に対応した反応ステージを有する検査装置に向けられている。
図29と図30に示されるように、本実施形態の反応ステージ202Aは、反応容器101Aが載置されるベース部120Aと、ベース部120Aに対して開閉し得るカバー部123と、反応容器101Aに対して流体を移送するための流体移送機構であるシリンジピストンポンプ部200を有している。
反応容器101Aとベース部120Aの構成は第八実施形態と同様である。また、カバー部123の構成は第一実施形態と同様である。シリンジピストンポンプ部200の構成は第四実施形態と同様である。
つまり、シリンジピストンポンプ部200は、反応容器101Aの貯液孔117の各々と流体的に連絡される四つの移送用流路124と、移送用流路124の各々と流体的に連絡した、反応容器101Aの貯液孔117の各々と流体的に連絡される四つのシリンジピストンポンプ203を有している。
各シリンジピストンポンプ203は、シリンジ204と、シリンジ204内を移動し得るピストン129と、シリンジ204とピストン129を気密に保つためのシールであるシール139とを有している。
ピストン129の移動に伴う空気201の吸入・排出により、反応ステージ202Aに支持された反応容器101A内の流体(核酸サンプルや洗浄液)が移送される。
本実施形態の遺伝子検査装置は、第八実施形態と同様に、反応容器101Aに上方から洗浄水137を供給する洗浄ノズル214と、反応容器101Aから洗浄水137を除去する廃液ノズル215とを有している。
第四実施形態と同様、反応容器101Aは反応ステージ202Aに支持され、貯液孔117はシリンジピストンポンプ203と流体的に連絡される。ハイブリダイズ反応は第四実施形態と同様に行なわれる。
ハイブリダイズ反応の終了後、図29に示されるように、例えば、洗浄ノズル214から上ハウジング108のテーパー形状開口部113の中に洗浄水137が供給される。シリンジピストンポンプ203の吸引動作により、開口部113の中の洗浄水137はDNAマイクロアレイを通過して貯液孔117の中に移動する。その後、シリンジピストンポンプ203の排出動作により、貯液孔117の中の洗浄水137はDNAマイクロアレイを通過して開口部113の中に移動する。
シリンジピストンポンプ203の吸引動作と排出動作が適当に繰り返された後、図30に示されるように、開口部113の中の洗浄水137は、廃液ノズル215により吸引されて除去される。これにより、洗浄水137と一緒に、DNAマイクロアレイの上に存在する異物が取り除かれる。
廃液ノズル215による吸引後、DNAマイクロアレイの上に残る洗浄水137が検査結果に影響を及ぼすようであれば、シリンジピストンポンプ131により洗浄水137が貯液孔117内に吸引されるとよい。
本実施形態では、DNAマイクロアレイの上側に配置された廃液ノズル215によって洗浄水137が吸引されるので、DNAマイクロアレイの上側に存在する異物が洗浄水と一緒に取り除かれる。
本実施形態は、第四実施形態が第一実施形態に対して有している利点と同様の利点を第八実施形態に対して有している。その利点については、第四実施形態の説明において詳しく説明しているので、ここでは省略する。
また、本実施形態は、第八実施形態が第一実施形態に対して有している利点と同様の利点を第四実施形態に対して有している。
つまり、本実施形態では、第四実施形態と比較して、反応容器101Aが凹部115から下面まで延びる廃液孔を有していない。このため、図20と図31とを比較して分かるように、廃液孔を利用した流体の排出に必要なさまざまな要素(例えば図20の吸引ポンプ135や電磁弁128や廃液タンク136ほか)が不要である。これは、検査装置の小型化や省電力化につながる。
また、本実施形態の反応容器101Aは、廃液孔を有していない分、内部の流路の体積がより小さい。このため、例えばシリンジピストンポンプによる圧力伝達に対する流体(例えば核酸サンプル液)の移送応答性が向上する。これにより、検査時間の短縮化が図れる。
さらに、本実施形態では、反応容器101Aが廃液孔を有していないため、凹部115と貯液孔117の間の流路に分岐が無くなり、流路内を通過する流体の移送量がより安定する。このため、より精度の高い検査を行なうことが可能となる。
加えて、シリンジピストンポンプ203による圧力伝達部が反応容器101Aの貯液孔117の近くに位置するため、流体移送応答性や移送量の安定性がさらに向上する。これにより、さらなる検査時間の短縮化や検査精度の向上化が図れる。
また、シリンジピストンポンプ内に洗浄液を満たす構造を持たないため、さらなる装置の小型化や省電力化が図れる。
第十実施形態
本実施形態は、スライドチップを直接支持する反応ステージを有する遺伝子検査装置に向けられている。
図32〜図36に示すように、本実施形態における遺伝子検査装置は、DNAマイクロアレイを有するスライドチップ107を支持するとともにDNAマイクロアレイの反応を促進するための反応ステージ310を有している。
反応ステージ310は、スライドチップ107を収容し得る凹部321を有するベース部320と、ベース部320に対して開閉し得る内側カバー部330と、ベース部320に対して開閉し得る外側カバー部340と、シリンジピストンポンプ部125とを有している。
内側カバー部330と外側カバー部340は共に、それぞれの軸を中心とした回転によってベース部320に対して開閉される。内側カバー部330と外側カバー部340の開閉動作は、手動により行なわれてもよく、また電動により行なわれてもよい。
内側カバー部330は、スライドチップ107の四つのDNAマイクロアレイ110aに対応する位置に形成された四つのテーパー形状の開口部331を有している。開口部331の内側の空間は、内側カバー部330が閉じられた際に、DNAマイクロアレイ110aに供給される核酸サンプル114を含む流体を貯め得る。
ベース部320は、スライドチップ107を収容する凹部321の底面に形成された、その底面が傾斜している四つの凹部322を有している。四つの凹部322は、それぞれ、凹部321に収容されるスライドチップ107の四つのDNAマイクロアレイ110aに対応する位置に形成されている。ベース部320は、さらに、凹部322の最下部から延びている廃液のための四つの排出用流路323と、四つの排出用流路323が共に流体的に連絡している廃液集合管324と、排出用流路323を開閉するための四つの電磁弁328とを有している。
電磁弁328はベース部320の下面に設けられている。排出用流路323は、凹部322から電磁弁328を経由して廃液集合管324まで延びている。つまり、排出用流路323は、ベース部320をいったん通り抜け、電磁弁328の中を通り、再びベース部320内に入り、廃液集合管324で終端している。
ベース部320は、さらに、排出用流路323の途中から側方に延びている貯液孔325とを有している。貯液孔325は、DNAマイクロアレイ110aに供給される核酸サンプル114を含む流体を貯め得る。貯液孔325は、シリンジピストンポンプ部125と流体的に連絡している。
シリンジピストンポンプ部125の構成は第一実施形態と同じである。つまり、シリンジピストンポンプ部125は、ベース部320内の貯液孔325と流体的に連絡している四つの移送用流路124と、移送用流路124とそれぞれ流体的に連絡している四つのシリンジピストンポンプ131と、移送用流路124の途中にそれぞれ設けられた、移送用流路124を開閉するための電磁弁127を有している。
外側カバー部340は、顕微鏡102によるDNAマイクロアレイ110aの観察を可能にする顕微鏡観察孔122と、顕微鏡観察孔122を塞いでいる光学的に透明な二枚のカバーガラス121とを有している。二枚のカバーガラス121は、間隔を置いて位置している。
ベース部320は、スライドチップ107を収容する凹部321の底面に、凹部322を取り囲む円形の溝が形成されており、その溝の中にはOリング130が配置されている。また、内側カバー部330は、閉じられたスライドチップ107と対向する下面に、開口部331を取り囲む円形の溝が形成されており、その溝の中にはOリング130が配置されている。
内側カバー部330は、図33に示されるように、閉じられた際に、ベース部320と共働して、スライドチップ107を間に挟んで支持する。つまり、ベース部320と内側カバー部330は、スライドチップ107を支持するスライドチップ支持機構を構成している。
ベース部320と内側カバー部330に設けられたOリング130は、それぞれ、ベース部320とスライドチップ107の間と、内側カバー部330とスライドチップ107の間とを液密に保つ働きをする。
このように、ベース部320とスライドチップ107の間や、内側カバー部330とスライドチップ107の間を液密に保つシールは、Oリングに限定されるものではなく、他の任意の適当なシール、例えばパッキンやテフロンシール等が適用されてもよい。また、ベース部320とスライドチップ107の間や、内側カバー部330とスライドチップ107の間を液密に保てさえすれば、シールはスライドチップ107の側に設けられても構わない。
反応ステージ310は、さらに、第一実施形態と同様の温度調整機構を有している。このため、ベース部320と内側カバー部330は、図32〜図36に示されるように、スライドチップ107を加熱するため、板状ヒーター105をそれぞれ有している。
スライドチップ107を効率良く加熱するために、ベース部320内の板状ヒーター105は、スライドチップ107を収容する凹部321の近くに設けられるとよい。また、内側カバー部330内の板状ヒーター105は、図33に示されるように閉じられた際に、スライドチップ107を収容するベース部320の凹部321の近く位置する個所に設けられるとよい。
また、反応ステージ310は、図示されていないが、第一実施形態と同様に、ペルチェ素子などからなる冷却手段をさらに有していてもよい。
以下、本実施形態の遺伝子検査動作について説明する。
まず、図32に示されるように、外側カバー部340と内側カバー部330が共に開かれた状態で、スライドチップ107が反応ステージ310のベース部320の凹部321の中に載置される。次に、内側カバー部330が閉じられ、前述したように、スライドチップ107がベース部320と内側カバー部330の間に挟まれて支持される。この状態では、スライドチップ107とベース部320と内側カバー部330の相互間は液密に保たれている。その後、内側カバー部330の開口部331の中に核酸サンプル114が供給され、続いて、図33に示されるように、外側カバー部340が閉じられる。
その後は、第一実施形態と同様に、ヒーター105によりスライドチップ107と核酸サンプル114を適切な温度に加温しながら、シリンジピストンポンプ131により核酸サンプル114を繰り返し多孔質部110に通過させることにより、ハイブリダイズ反応を比較的短時間の内に終了させることができる。
ハイブリダイズ反応の終了後、スライドチップ107は光学顕微鏡などにより検査される。検査終了後、外側カバー部340と内側カバー部330とが開かれ、検査の済んだスライドチップ107が取り除かれる。
その後は、次の検査のために、別のスライドチップ107が反応ステージ310に装着される。あるいは、検査が終了される。検査終了の際、核酸サンプルが接触した反応ステージ310の部分の洗浄が行なわれる。また、別のスライドチップ107の検査の際には、別のスライドチップ107の装着に先立ち、コンタミネーション防止のため、必要に応じて、核酸サンプルが接触した反応ステージ310の部分が洗浄される。
次に検査する別のスライドチップ107が、先に検査したスライドチップ107と同じものである場合には、コンタミネーションの心配がないので、このような洗浄作業は省略されてもよい。
次に洗浄作業について説明する。スライドチップ107がベース部320から取り除かれた状態で、図34に示されるように、内側カバー部330が閉じられ、内側カバー部330の開口部331の内側の空間内に、洗浄ノズル214により洗浄水137が供給される。
続いて、シリンジピストンポンプ131の吸引動作により、開口部331の中の洗浄水137はDNAマイクロアレイを通過して貯液孔325の中に移動する。その後、シリンジピストンポンプ131の排出動作により、貯液孔325の中の洗浄水137はDNAマイクロアレイを通過して331の中に移動する。
シリンジピストンポンプ131の吸引動作と排出動作が適当に繰り返された後、洗浄水137が吸引ポンプ135により吸引される。これにより、洗浄水137は排出用流路323を通って反応ステージ310から排出される。
図34では、洗浄ノズル214から洗浄水137を供給する例について述べたが、洗浄水137は、図35に示されるように、シリンジピストンポンプ131からも供給されてもよい。その後、図36に示されるように、開口部331の中に洗浄水137が溜まる程度に供給されるとともに、過剰な洗浄水137は吸引ポンプ135により排出用流路323を通して反応ステージ310から排出される。
また、洗浄水137の排出は、排出用流路323を利用した手法に限定されるものでなく、例えば、図36に示されるように、開口部331の中に廃液ノズル215を配置し、廃液ノズル215により洗浄水137を吸引することにより行なわれてもよい。
本実施形態の検査装置では、スライドチップ107を収容している反応容器に比べて体積が小さいスライドチップ107単位で交換が行なわれるので、反応容器単位で交換する検査装置に比べて、固相担体への温度の伝達速度が向上する。このため、検査時間の短縮が図れる。また、熱伝導のムラが少なくなる。さらに、検査装置の限られた一定領域内に、より多くのスライドチップを設置することが可能になる。これにより、より多くの検査を一度に行なうことができるようになる。
本実施形態は、さまざまな修正や変更が施されてもよい。例えば、本実施形態では、内側カバー部330と外側カバー部340は共に、それぞれの軸を中心とした回転によってベース部320に対して開閉される構成であるが、水平方向への移動によってベース部320に対して開閉される構成であってもよい。
第十一実施形態
本実施形態は、スライドチップを直接支持する反応ステージを有する別の遺伝子検査装置に向けられている。本実施形態の遺伝子検査装置では、第十実施形態に対して、ベース部から排出用流路とそれに関連する要素が省かれるとともに、シリンジピストンポンプ部が空気によって流体を移送する構成に変更されている。
図37に示されるように、本実施形態の反応ステージ310Aは、ベース部320Aと、ベース部320に対して開閉し得る内側カバー部330と、ベース部320に対して開閉し得る外側カバー部340と、シリンジピストンポンプ部200とを有している。
内側カバー部330と外側カバー部340の構成は、第十実施形態と同じである。
本実施形態のベース部320Aは、第十実施形態のベース部320から、排出用流路323と廃液集合管324と電磁弁328とが省かれた構成となっている。このため、凹部322と貯液孔325は、凹部322の最下部と貯液孔325の端部との間に延びている縦孔部326を介して流体的に連絡している。
シリンジピストンポンプ部200の構成は第四実施形態とほとんど同様である。
本実施形態では、シリンジピストンポンプ部200の四つのシリンジピストンポンプ203は移送用流路124を介してベース部320Aの貯液孔325とそれぞれ流体的に連絡されている。
本実施形態の検査装置では、ハイブリダイズ反応は、核酸サンプルがシリンジピストンポンプ部200により空気を介して移送される点を除けば、第十実施形態と同様にして行なわれる。
本実施形態の検査装置の洗浄作業は、第十実施形態とほぼ同様にして行なわれる。まず、スライドチップ107がベース部320から取り除かれた状態で、内側カバー部330が閉じられ、内側カバー部330の開口部331の内側の空間内に、洗浄ノズル214(図34参照)により洗浄水137が供給される。
シリンジピストンポンプ203の吸引動作により、開口部331の内側の空間内の洗浄水137はDNAマイクロアレイを通過して貯液孔325の中に移動する。その後、シリンジピストンポンプ203の排出動作により、貯液孔325の中の洗浄水137はDNAマイクロアレイを通過して開口部331の内側の空間内に移動する。
シリンジピストンポンプ203の吸引動作と排出動作が適当に繰り返された後、開口部113の中の洗浄水137は廃液ノズル215(図36参照)により吸引されて除去される。これにより、洗浄水137と一緒に、DNAマイクロアレイの上に存在する異物が取り除かれる。
本実施形態の検査装置では、第十実施形態と同様、スライドチップ107単位で交換が行なわれるので、固相担体への温度の伝達速度が向上する。このため、検査時間の短縮が図れる。また、熱伝導のムラが少なくなる。さらに、検査装置の限られた一定領域内に、より多くのスライドチップを設置することが可能になる。これにより、より多くの検査を一度に行なうことができるようになる。
また、空気により送液を行なうシリンジピストンポンプ部200に変更した利点は第四実施形態と同様であり、ベース部から排出用流路ほかを省した利点は第八実施形態と同様である。
これまで、図面を参照しながら本発明の実施の形態を述べたが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲においてさまざまな変形や変更が施されてもよい。
【産業上の利用可能性】
本発明によれば、生体関連物質を短時間で高い精度で簡便に検査できる検査装置が提供される。本発明の検査装置によれば、反応部分の検体液の状態(濃度など)や、温度条件を変化させながら対象生体関連物質の反応程度を測定することができる。従って、対象生体関連物質の発現の有無やその発現量、遺伝子の配列(変異および多型)を正確に測定することができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図12】

【図11】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】

【図23】

【図24】

【図25】

【図26】

【図27】

【図28】

【図29】

【図30】

【図31】

【図32】

【図33】

【図37】

【図34】

【図35】

【図36】

【図38】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を通し得る固相担体を利用した生体関連物質の反応を検査するための生体関連物質の検査装置であり、
固相担体を含む反応容器を支持するとともに固相担体の反応を促進するための反応ステージと、
固相担体を光学的に観察するための顕微鏡とを備えており、
反応ステージは、反応容器に対して流体を移送するための流体移送機構と、反応容器内の固相担体の温度を調整するための温度調整機構とを有している、生体関連物質の検査装置。
【請求項2】
温度調整機構は、固相担体の温度を上げるための加熱手段を有している、請求項1に記載の生体関連物質の検査装置。
【請求項3】
温度調整機構は、固相担体の温度を下げるための冷却手段をさらに有している、請求項2に記載の生体関連物質の検査装置。
【請求項4】
反応ステージを覆うためのフードと、反応ステージをフードに出し入れする出し入れ手段とをさらに有し、出し入れ手段は、反応ステージの温度が所定の温度以下になった時点で、反応ステージをフード外にせり出させる、請求項1ないし請求項3のいずれかひとつに記載の生体関連物質の検査装置。
【請求項5】
固相担体の温度を強制対流によって下げるための冷却機構をさらに備えており、冷却機構は反応ステージに空気を送る送風機を有している、請求項2または請求項3に記載の生体関連物質の検査装置。
【請求項6】
冷却機構は、反応ステージに送られる空気を冷却するためのペルチェ素子をさらに有している、請求項5に記載の生体関連物質の検査装置。
【請求項7】
固相担体は、反応容器に支持されている、請求項1ないし請求項6のいずれかひとつに記載の生体関連物質の検査装置。
【請求項8】
反応容器は、固相担体と流体的に連絡した、反応容器内の流体を収容し得る貯液孔を有しており、
流体移送機構は、反応容器の貯液孔と流体的に連絡される移送用流路と、この移送用流路と流体的に連絡した、反応容器内の流体を移送するための移送用ポンプとを有している、請求項7に記載の生体関連物質の検査装置。
【請求項9】
反応容器は、固相担体と流体的に連絡した、反応容器内の流体を外に排出させるための廃液孔をさらに有しており、
反応ステージは、反応容器の廃液孔と流体的に連絡される排出用流路をさらに有しており、
検査装置は、反応ステージの排出用流路を介して、反応容器内の流体を外に排出するための流体排出機構をさらに有している、請求項8に記載の生体関連物質の検査装置。
【請求項10】
移送用ポンプは、シリンジピストンポンプである、請求項8または請求項9に記載の生体関連物質の検査装置。
【請求項11】
移送用ポンプは、その内部に気体を吸引し、また、その内部の気体を排出することにより、反応容器内の流体を移送する、請求項8ないし請求項10のいずれかひとつに記載の生体関連物質の検査装置。
【請求項12】
流体移送機構は、移送用流路内の流体の圧力を検知するための圧力センサーをさらに有している、請求項8ないし請求項11のいずれかひとつに記載の生体関連物質の検査装置。
【請求項13】
反応容器内の流体を固相担体の検査面側から吸引するためのノズルをさらに備えている、請求項1に記載の生体関連物質の検査装置。
【請求項14】
反応容器内に流体を固相担体の検査面側から吐出するためのノズルをさらに備えている、請求項1に記載の生体関連物質の検査装置。
【請求項15】
流体を通し得る固相担体を利用した生体関連物質の反応を検査する装置の反応ステージであり、
固相担体を含む反応容器を支持する反応容器支持機構と、
反応容器に対して流体を移送させるための流体移送機構と、
反応容器内の固相担体の温度を調整するための温度調整機構とを有している、生体関連物質の検査装置の反応ステージ。
【請求項16】
温度調整機構は、固相担体の温度を上げるための加熱手段を有している、請求項15に記載の反応ステージ。
【請求項17】
温度調整機構は、固相担体の温度を下げるための冷却手段をさらに有している、請求項16に記載の反応ステージ。
【請求項18】
固相担体は、反応容器に支持されている、請求項15ないし請求項17のいずれかひとつに記載の反応ステージ。
【請求項19】
反応容器は、固相担体と流体的に連絡した、反応容器内の流体を収容し得る貯液孔を有しており、
流体移送機構は、反応容器の貯液孔と流体的に連絡される移送用流路と、この移送用流路と流体的に連絡した、反応容器内の流体を移送するための移送用ポンプとを有している、請求項18に記載の反応ステージ。
【請求項20】
反応容器は、固相担体と流体的に連絡した、反応容器内の流体を外に排出させるための廃液孔をさらに有しており、
反応ステージは、反応容器の廃液孔と流体的に連絡される排出用流路をさらに有している、請求項19に記載の反応ステージ。
【請求項21】
移送用ポンプは、シリンジピストンポンプである、請求項19または請求項20に記載の反応ステージ。
【請求項22】
移送用ポンプは、その内部に気体を吸引し、また、その内部の気体を排出することにより、反応容器内の流体を移送する、請求項19ないし請求項21のいずれかひとつに記載の反応ステージ。
【請求項23】
流体移送機構は、移送用流路内の流体の圧力を検知するための圧力センサーをさらに有している、請求項19ないし請求項22のいずれかひとつに記載の反応ステージ。
【請求項24】
流体を通し得る固相担体を利用した生体関連物質の反応を検査する装置の反応ステージであり、
固相担体を含むスライドチップを支持するスライドチップ支持機構と、
スライドチップに対して流体を移送させるための流体移送機構と、
固相担体の温度を調整するための温度調整機構とを有している、生体関連物質の検査装置の反応ステージ。
【請求項25】
温度調整機構は、固相担体の温度を上げるための加熱手段を有している、請求項24に記載の反応ステージ。
【請求項26】
温度調整機構は、固相担体の温度を下げるための冷却手段をさらに有している、請求項25に記載の反応ステージ。
【請求項27】
スライドチップ支持機構は、スライドチップを収容し得る凹部を有するベース部と、ベース部に対して開閉し得るカバー部とを有し、カバー部は、固相担体の上に流体を貯めるための開口部を有している、請求項24に記載の反応ステージ。
【請求項28】
反応ステージは、固相担体を光学的に観察可能に、カバー部の開口部を塞ぐ別のカバー部をさらに有している、請求項27に記載の反応ステージ。
【請求項29】
ベース部は、固相担体と流体的に連絡した、カバー部の開口部の内側の空間に収容された流体を収容し得る貯液孔を有しており、
流体移送機構は、ベース部の貯液孔と流体的に連絡した移送用流路と、この移送用流路と流体的に連絡した、流体を移送するための移送用ポンプとを有している、請求項27に記載の反応ステージ。
【請求項30】
ベース部は、固相担体と流体的に連絡される排出用流路をさらに有している、請求項29に記載の反応ステージ。
【請求項31】
移送用ポンプは、シリンジピストンポンプである、請求項29または請求項30に記載の反応ステージ。
【請求項32】
移送用ポンプは、その内部に気体を吸引し、また、その内部の気体を排出することにより、反応ステージ内の流体を移送する、請求項29ないし請求項31のいずれかひとつに記載の反応ステージ。
【請求項33】
流体移送機構は、移送用流路内の流体の圧力を検知するための圧力センサーをさらに有している、請求項29ないし請求項32のいずれかひとつに記載の反応ステージ。

【国際公開番号】WO2005/052578
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【発行日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−510917(P2005−510917)
【国際出願番号】PCT/JP2003/015263
【国際出願日】平成15年11月28日(2003.11.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】