説明

画像処理装置、画像処理方法、画像処理プログラム、記録媒体および記録装置

【課題】 処理ステップ数を低減して、画像処理のスループットを向上するとともに、画
質劣化を抑制しつつ濃度ムラの補正を行う。
【解決手段】 メディア上にインクにより複数のドットを形成して画像形成を行わせるに
際し、入力画像データの処理を行う画像処理装置において、二次元配置される複数の画素
について前記ドットの形成の可否を判別するためのしきい値を規定したディザマトリクス
を記憶したディザマトリクス記憶部215と、前記ディザマトリクスを構成する前記しき
い値を記録ヘッドのノズルのインク吐出特性に基づいて補正するしきい値補正部216と
、各前記ノズルのインク吐出特性および前記補正後のディザマトリクスに基づいて、各前
記ノズル毎に前記ドットの形成の可否を判別するドット形成判別部217とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理方法、制御プログラム、記録媒体および記録装置に
係り、特に濃度ムラ補正を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より画像を記録する記録装置として、インクジェットプリンタが知られている。
このインクジェットプリンタにおいて、インクを吐出する印字ヘッドには、高速な印刷
を実現するために、複数のノズルが設けられている。そして、印字ヘッドを主走査方向に
走査しながら、各ノズルから並行してインクを吐出することによって、数ライン分の印字
を行い、印字完了後、記録用紙を副走査方向に搬送することにより印字を実施する。
また、ラインヘッドと呼ばれる印字ヘッドを有するインクジェットプリンタでは、記録
用紙を搬送することなく印字できる印字ヘッドの印字可能幅が、記録可能な最大記録用紙
の一片のサイズと同じである。
【0003】
したがって、ラインヘッド型のインクジェットプリンタは、印字ヘッドを主走査方向に
走査するインクジェットの1走査(主走査方向)分の印字を、走査することなく処理を終
えることができるので、非常に高速な印字が可能である。
上記従来のラインヘッド型のインクジェットプリンタにおいて、ラインヘッドが持つ複
数の各ノズルの特性を均一にあわせることは、非常に困難であり、一般的に同一ヘッド内
においてばらつき特性を持ち、印字位置によって、濃度が異なる濃度ムラが発生するとい
う不具合が生じ得る。
【0004】
ここで、濃度ムラについて詳細に説明する。
濃度ムラ特性の一つとしては、例えば、ヘッド中央部とヘッド端との特性が異なるシェ
ーディング特性が挙げられる。シェーディング特性はヘッドの作り方により異なるが、例
えば、ヘッド中央よりもヘッド端の方がドットサイズが大きくなり、ヘッド端部分の方が
濃い画像が印字されるマクロ的な現象などが存在する。マクロ的な現象に注目した場合に
は、印字面で濃度変化が波打ったように発生する場合もある。
さらに、ノズル一つ一つのばらつきにより、常に濃い印字を行うノズル、薄い印字を行
うノズルなどが存在することによる、濃度ムラが発生することもある。
ところで、印字ヘッドが複数回主走査方向に走査して画像を形成するマルチパス方式の
プリンタでは、複数回走査することを利用して、濃度ムラ特性を補償するさまざまな仕組
みが実施されている。
【0005】
一方、ある領域をヘッドが一度だけ走査して印刷するラインヘッド型プリンタは、マル
チパス方式のプリンタと比較して高速化が図れるものの、ヘッドの濃度ムラ特性が直接印
刷する画像に反映され、結果として得られる画像に悪影響を及ぼす傾向がある。
また、ラインヘッド型と呼ばれるプリンタではその原理上、複数回走査することが困難
であることが多い。そこで、ラインヘッド型のプリンタでは1走査にて適切な画像を出力
する必要がある。
そこで、濃度ムラに対しては、濃度ムラが画像に存在することを前提にして、結果とし
て濃度ムラが発生しないように補正して画像データ出力を行う。
上述したようなノズルのばらつきや不吐出などに対処するために、さまざまな技術が提
案されている。
【0006】
例えば、濃度ムラを補正する先行技術が開示された特許文献として、例えば、特許文献
1〜3に示すようなものが挙げられる。
いずれも、ノズルに対するばらつきを記録しておいて、そのばらつきを補正するもので
あるが、特許文献1記載の技術は、ノズル毎に濃度特性を補正を行うものであり、特許文
献2記載の技術は、ノズル間のばらつきに対応して補正を行うものであり、特許文献3記
載の技術は、濃度特性ごとに補正テーブルを用意して補正を行うものである。
【特許文献1】特許第2748321号
【特許文献2】特許第3040407号
【特許文献3】特許第2942048号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の技術においては、濃度補正を行うに際し、濃度ムラに対する補正も同時に行
っているので、視覚的に最も問題となる濃度ムラは回避されるが、濃度補正のための画像
補整処理が必要となり、処理ステップ数が増加してしまうという問題点があった。
そこで本発明の目的は、処理ステップ数を低減して、画像処理のスループットを向上す
るとともに、画質劣化を抑制しつつ濃度ムラの補正を行うことが可能な画像処理装置、画
像処理方法、制御プログラム及び記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、メディア上にインクにより複数のドットを形成して画像形成
を行わせるに際し、入力画像データの処理を行う画像処理装置において、前記入力画像デ
ータに対応する各画素について前記ドットの形成の可否を判別するためのしきい値を記録
ヘッドのノズルのインク吐出特性に基づいて補正して得られる補正後のしきい値および各
前記ノズルの実際のインク吐出特性に基づいて、各前記ノズル毎に前記ドットの形成の可
否を判別するドット形成判別部を備えたことを特徴としている。
上記構成によれば、ドット形成判別部は、入力画像データに対応する各画素についてドッ
トの形成の可否を判別するためのしきい値を記録ヘッドのノズルのインク吐出特性に基づ
いて補正して得られる補正後のしきい値および各ノズルの実際のインク吐出特性に基づい
て、各前記ノズル毎に前記ドットの形成の可否を判別する。
この場合において、二次元配置される複数の画素について前記ドットの形成の可否を判別
するためのしきい値を規定したディザマトリクスを記憶したディザマトリクス記憶部と、
前記ディザマトリクスを構成する前記しきい値を記録ヘッドのノズルのインク吐出特性に
基づいて補正する前記しきい値補正部と、を備え、記ドット形成判別部は、各前記ノズル
のインク吐出特性および前記補正後のディザマトリクスに基づいて、各前記ノズル毎に前
記ドットの形成の可否を判別するようにしてもよい。
【0009】
また、二次元配置される複数の画素について前記ドットの形成の可否を判別するためのし
きい値をディザマトリクスとして規定し、記録ヘッドのノズルのインク吐出特性に応じて
複数種類の前記ディザマトリクスを記憶したディザマトリクス記憶部を備え、前記ドット
形成判別部は、各前記ノズルのインク吐出特性および当該インク吐出特性に対応する前記
ディザマトリクスに基づいて、各前記ノズル毎に前記ドットの形成の可否を判別するよう
にしてもよい。
またさらに、前記ノズルのインク吐出特性を、前記ドットの濃度として規定し、基準とな
るノズルのドット濃度を基準濃度とし、前記ディザマトリクスは前記基準濃度に対応する
ものであり、前記しきい値補正部は、前記基準濃度に対する各前記ノズルのインク吐出特
性に対応するドット濃度の比に基づいて前記ディザマトリクスを構成する前記しきい値を
補正するようにしてもよい。
【0010】
また、前記しきい値補正部は、前記基準濃度をCREFとし、基準濃度CREFに対応する補
正値をDREFとし、前記インク特性に対応するドット濃度をCDとし、ドット濃度CDに対
応する補正値をDDとした場合に、
DD≒CD・DREF/CREF
となるように、補正値をDREFを補正して、補正値DDを得るようにしてもよい。
また、メディア上にインクにより複数のドットを形成して画像形成を行わせるに際し、入
力画像データの処理を行う画像処理方法において、前記入力画像データに対応する各画素
について前記ドットの形成の可否を判別するためのしきい値を記録ヘッドのノズルのイン
ク吐出特性に基づいて補正するしきい値補正過程と、補正後のしきい値および各前記ノズ
ルの実際のインク吐出特性に基づいて、各前記ノズル毎に前記ドットの形成の可否を判別
するドット形成判別過程と、を備えたことを特徴としている。
【0011】
この場合において、前記しきい値補正過程は、二次元配置される複数の画素について前記
ドットの形成の可否を判別するためのしきい値を規定すべく予め記憶されたディザマトリ
クスを構成する前記しきい値を、記録ヘッドのノズルのインク吐出特性に基づいて補正し
、前記ドット形成判別過程は、各前記ノズルのインク吐出特性および前記補正後のディザ
マトリクスに基づいて、各前記ノズル毎に前記ドットの形成の可否を判別するようにして
もよい。
また、前記ドット形成判別過程は、二次元配置される複数の画素について前記ドットの形
成の可否を判別するためのしきい値を規定すべく記録ヘッドのノズルのインク吐出特性に
応じて複数種類の前記ディザマトリクスを予め記憶されたディザマトリクスのうち、各前
記ノズルのインク吐出特性に応じたディザマトリクスおよび当該インク吐出特性に基づい
て、各前記ノズル毎に前記ドットの形成の可否を判別するようにしてもよい。
【0012】
また、メディア上にインクにより複数のドットを形成して画像形成を行わせるに際し、入
力画像データの処理を行う画像処理装置をコンピュータにより制御するための制御プログ
ラムにおいて、前記入力画像データに対応する各画素について前記ドットの形成の可否を
判別するためのしきい値を記録ヘッドのノズルのインク吐出特性に基づいて補正させ、
補正後のしきい値および各前記ノズルの実際のインク吐出特性に基づいて、各前記ノズル
毎に前記ドットの形成の可否を判別させる、ことを特徴としている。
この場合において、前記しきい値を補正させるに際し、二次元配置される複数の画素につ
いて前記ドットの形成の可否を判別するためのしきい値を規定すべく予め記憶されたディ
ザマトリクスを構成する前記しきい値を、記録ヘッドのノズルのインク吐出特性に基づい
て補正させ、前記ドットの形成の可否を判別させるに際し、各前記ノズルのインク吐出特
性および前記補正後のディザマトリクスに基づいて、各前記ノズル毎に前記ドットの形成
の可否を判別させるようにしてもよい。
【0013】
また、前記ドットの形成の可否を判別させるに際し、二次元配置される複数の画素につ
いて前記ドットの形成の可否を判別するためのしきい値を規定すべく記録ヘッドのノズル
のインク吐出特性に応じて複数種類の前記ディザマトリクスを予め記憶されたディザマト
リクスのうち、各前記ノズルのインク吐出特性に応じたディザマトリクスおよび当該イン
ク吐出特性に基づいて、各前記ノズル毎に前記ドットの形成の可否を判別させるようにし
てもよい。
また、上記各制御制御プログラムをコンピュータ読取可能な記録媒体に記録してもよい

【0014】
また、記録装置は、複数のノズルを有し、前記各ノズルからインクを吐出してドットを
形成する記録ヘッドと、記録画像の画像データが入力される入力部と、前記入力画像デー
タに対応する各画素について前記ドットの形成の可否を判別するためのしきい値を記録ヘ
ッドのノズルのインク吐出特性に基づいて補正して得られる補正後のしきい値および各前
記ノズルの実際のインク吐出特性に基づいて、各前記ノズル毎に前記ドットの形成の可否
を判別するドット形成判別部と、前記ドット形成判別部の結果に基づいて、前記記録ヘッ
ドを制御して画像記録を実行する制御手段と、を備えたことを特徴としている。
この場合において、二次元配置される複数の画素について前記ドットの形成の可否を判別
するためのしきい値を規定したディザマトリクスを記憶したディザマトリクス記憶部と、
前記ディザマトリクスを構成する前記しきい値を記録ヘッドのノズルのインク吐出特性に
基づいて補正する前記しきい値補正部と、を備え、前記ドット形成判別部は、各前記ノズ
ルのインク吐出特性および前記補正後のディザマトリクスに基づいて、各前記ノズル毎に
前記ドットの形成の可否を判別するようにしてもよい。
また、二次元配置される複数の画素について前記ドットの形成の可否を判別するためのし
きい値をディザマトリクスとして規定し、記録ヘッドのノズルのインク吐出特性に応じて
複数種類の前記ディザマトリクスを記憶したディザマトリクス記憶部を備え、前記ドット
形成判別部は、各前記ノズルのインク吐出特性および当該インク吐出特性に対応する前記
ディザマトリクスに基づいて、各前記ノズル毎に前記ドットの形成の可否を判別するよう
にしてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。
[1]第1実施形態
図1は、記録装置(画像形成装置)の一態様たるカラーインクジェットプリンタ(以下
、単に「プリンタ」という)2を備えたコンピュータシステム1の概略構成図である。こ
の図に示すように、プリンタ2は、記録用紙3を搬送する用紙搬送機構20と、記録用紙
3に向けてインクを吐出してドットを形成するヘッドユニット21と、このヘッドユニッ
ト21によるインクの吐出およびドット形成を制御するヘッド駆動回路22(図2参照)
と、操作パネル23と、これらの用紙搬送機構20、ヘッドユニット21および操作パネ
ル23との信号のやり取りを司る制御回路24とを備えている。
用紙搬送機構20は、制御回路24により駆動制御される紙送りモータ25と、この紙
送りモータ25の回転によって回転駆動される紙送りローラ26とを備え、この紙送りロ
ーラ26の回転によって記録用紙3が搬送される。
【0016】
ヘッドユニット21は、インクタンク27と、ラインヘッド28とを備えている。
インクタンク27には、ブラック(K)のインクを収納したカートリッジ29Aと、カ
ラーインクを収容したカートリッジ29Bとが着脱自在に設けられている。ここで、本実
施の形態のプリンタ2は、後述する通り、カラーインクを用いて小中大の径からなるドッ
トを形成可能な多値プリンタであり、カラーインクとして、シアン(C)、マゼンタ(M
)およびイエロ(Y)の合計3色のカラーインクを用いることとしている。すなわち、プ
リンタとしては、C、M、Y、Kの4色構成となっている。なお、必要に応じ、C、M、
Y、Kに加えてライトシアン(LC)、ライトマゼンタ(LM)、ライトイエロ(LY)
、ライトブラック(LK)などの淡色インクや、レッド(R)、グリーン(G)等のイン
クを適宜用いるようにすることが可能である。
インクタンク27からはインク供給路30が引き出されて対応するインクのラインヘッ
ド28に接続されており、このインク供給路30を介してインクタンク27からラインヘ
ッド28へインクが供給される。
ラインヘッド28は、図2に示すように、保持用フレーム31と、この保持用フレーム
31に並べて固定された複数のノズルユニット32とを備えている。各ノズルユニット3
2にはインクが吐出される複数のノズル(吐出口)33が形成されている。
【0017】
ここで、ラインヘッド28は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエ
ロ(Y)のそれぞれごとに設けられている。
各ノズル33には、電歪素子の1つであって応答性に優れたピエゾ素子(図示せず)が
配置され、これらのピエゾ素子は、ノズル33にインクを導くインク通路を形成する部材
に接して配置されている。ピエゾ素子は、電圧の印加により結晶構造が歪み、極めて高速
に電気−機械エネルギの変換を行うものであり、ピエゾ素子の両端に設けられた電極間に
所定時間幅の電圧を印加することにより、ピエゾ素子が電圧の印加時間だけ伸張し、イン
ク通路の一側壁を変形させる。この結果、インク通路の体積はピエゾ素子の伸張に応じて
収縮し、この収縮分に相当するインクが、インク滴となって、ノズル33の先端から高速
に吐出される。そして、このインク滴が紙送り紙送りローラ26に沿わされた記録用紙3
に染み込むことにより、ドットが形成されて画像の印刷が行われる。
【0018】
また、このようなノズルユニット32が保持用フレーム31に記録用紙3の幅方向(い
わゆる主走査方向)に沿って複数並べられることにより、記録用紙3の全幅にわたってノ
ズル33が配列され、記録用紙3の全幅にわたって一斉に画像形成が行われる。そして、
ヘッドユニット21により記録用紙3の幅方向に画像を形成しつつ、記録用紙3を搬送方
向(いわゆる副走査方向)に搬送することで、記録用紙3の搬送方向への画像形成が行わ
れる。
ここで、各ラインヘッド28を構成するノズル33の各々は、略一定の径を有して形成
されているが、本プリンタ2は、かかるノズル33を用いて径の異なる小(S)、中(M
)、大(L)の3種類のドットを形成可能としている。詳細には、ピエゾ素子に印加する
電圧波形(特に、負電圧印加時の電圧波形)を制御することでドット径を制御可能である
ことが一般に知られており、本プリンタ2にあっては、電圧波形とドット径との関係に基
づいて、小(S)ドット、中(M)ドット、大(L)ドットを形成するためのそれぞれの
電圧波形を予め用意し、これらの電圧波形を適宜選択することで、径の異なる3種類のド
ットを形成可能としている。そして、これらの3種類のドットを適宜の密度で形成するこ
とにより、画像の階調(濃度)を表現している。具体的には、高階調(高濃度)の表現す
る場合には大(L)ドットを密に形成することとし、階調(濃度)が低くなるにしたがっ
て、ドット径を小さくし、或いは、ドットの密度を低くする。
【0019】
さて、図1に示すように、プリンタ2の制御回路24は、コネクタ40を介してコンピ
ュータ4に接続されている。このコンピュータ4は、プリンタ2用のドライバーソフトを
搭載し、入力装置であるキーボードや、マウス等の操作によるユーザの指令を受け付け、
また、プリンタ2における種々の情報を表示装置の画面表示によりに提示するユーザイン
ターフェイスを構成している。
【0020】
図3は、制御回路24を中心としたプリンタ2の主要部分の構成例を示すブロック図で
ある。この図に示すように、制御回路24は、CPU(Central Processing Unit)41
、プログラマブルROM(P-ROM: Programable Read Only Memory)43、RAM(Rando
m Access Memory)44、文字のドットマトリクスを記憶したキャラクタジェネレータ(C
G: Character Generator)45、およびEEPROM(Electrically Erasable and Pro
grammable ROM)46を備えた算術論理演算回路として構成されている。
この制御回路24は、さらに、外部のモータ等とのインタフェース(I/F: Interface)
であるI/F専用回路50と、このI/F専用回路50に接続されヘッドユニット21を
駆動してインクを吐出させるヘッド駆動回路22と、紙送りモータ25を駆動するモータ
駆動回路54とを備えている。
I/F専用回路50は、パラレルインタフェース回路を内蔵しており、コネクタ40を
介してコンピュータ4から供給される印刷信号PSを受け取ることができる。
つぎに、コンピュータ4の構成について、図4を参照して説明する。
【0021】
図4に示すように、コンピュータ4は、CPU91、ROM92、RAM93、HDD
(Hard Disk Drive)94、ビデオ回路95、I/F96、バス97、表示装置98、入
力装置99および外部記憶装置100を備えている。
CPU91は、ROM92やHDD94に格納されているプログラムに従って各種演算
処理を実行するとともに、装置の各部を制御する制御部である。
ROM92は、CPU91が実行する基本的なプログラムやデータを格納しているメモ
リである。RAM93は、CPU91が実行途中のプログラムや、演算途中のデータ等を
一時的に格納するメモリである。
HDD94は、CPU91からの要求に応じて、記録媒体であるハードディスクに記録
されているデータやプログラムを読み出すとともに、CPU91の演算処理の結果として
発生したデータを前述したハードディスクに記録するものである。
【0022】
ビデオ回路95は、CPU91から供給された描画命令に応じて描画処理を実行し、得
られた画像データを映像信号に変換して表示装置98に出力する回路である。
I/F96は、入力装置99および外部記憶装置100から出力された信号の表現形式
を適宜変換するとともに、プリンタ2に対して印刷信号PSを出力する回路である。
バス97は、CPU91、ROM92、RAM93、HDD94、ビデオ回路95およ
びI/F96を相互に接続し、これらの間でデータの授受を可能とする信号線である。
表示装置98は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)モニタやCRT(Cathod
e Ray Tube)モニタによって構成され、ビデオ回路95から出力された映像信号に応じた
画像を表示する装置である。
入力装置99は、例えば、キーボードやマウスによって構成されており、ユーザの操作
に応じた信号を生成して、I/F96に供給する装置である。
【0023】
外部記憶装置100は、例えば、CD−ROM(Compact Disk-ROM)ドライブユニット
、MO(Magneto Optic)ドライブユニット、FDD(Flexible Disk Drive)ユニットに
よって構成され、CD−ROMディスク、MOディスク、FDに記録されているデータや
プログラムを読み出してCPU91に供給する装置である。また、MOドライブユニット
およびFDDユニットの場合には、CPU91から供給されたデータを、MOディスクま
たはFDに記録する装置である。
上記のように、コンピュータ4には、プリンタ2用のプリンタドライバソフトが予めイ
ンストールされ、コンピュータ4にプリンタドライバが搭載される。プリンタドライバソ
フトには、印刷に供される画像処理プログラムが組み込まれており、コンピュータ4が画
像処理プログラムを実行することで、プリンタ2用の画像処理装置として機能する。
【0024】
図5は、N値化処理に着目した場合のコンピュータ4にインストールされているプリン
タ2用のプリンタドライバソフトによって実現される画像処理装置200の機能ブロック
を示す図である。
画像処理装置200は、ヘッドのノズル毎の濃度情報であるヘッド濃度情報を記憶する
ヘッド濃度情報記憶部210と、ヘッド濃度情報に基づいて入力画像データのN値化(実
施形態では二値化)を行って、プリンタ2に印字データを出力するN値化処理部211と
、を備えている。
【0025】
図6は、N値化処理部の機能ブロック図である。
N値化処理部211は、二次元配置される複数の画素についてドットの形成の可否を判
別するためのしきい値を規定したディザマトリクスを記憶したディザマトリクス記憶部2
15と、ディザマトリクスを構成するしきい値をヘッド濃度情報、すなわち、記録ヘッド
のノズルのインク吐出特性に基づいて補正するしきい値補正部216と、各ノズルのイン
ク吐出特性およびディザマトリクスに基づいて、各ノズル毎にドットの形成の可否を判別
するドット形成判別部217と、を備えている。
【0026】
図7は、基準ディザマトリクスの構成説明図である。
ディザマトリクス記憶部215は、例えば、図7に示す基準ディザマトリクスDMREF
を含む複数のディザマトリクスを記憶するものである。図7に示すように、基準ディザマ
トリクスDMREFを例として説明すると、各ディザマトリクスは、例えば、4×4個(=
16個)のセルC11〜C44を有するマトリクスとして構成されて、画像データをN値化す
る際には、画像データの各画素を、ディザマトリクス240のサイズと同じ大きさ(ここ
では4×4画素)のブロック毎に分割し、各ブロックに対してディザマトリクスを適用し
てN値化を行う。なお、画質の向上をねらう場合には、4×4個のセルからなるマトリク
スではなく、8×8個あるいは16×16個のセル等、より大きいマトリクスを用いるの
がよい。
ここで、一般的なディザ法にあっては、ドット形成の可否を規定するための濃度しきい
値(以下、単にしきい値という)がディザマトリクスの各セルに設定される。なお、N値
化を行う場合には、ドットサイズ毎にディザマトリクスが設定される。
ディザ処理がなされるデータは、濃度データ(濃度情報)であり、本実施形態では0〜
255の値を有している。ここで、値0は最小濃度(=濃度0)であり、値255は最大
濃度である。
【0027】
そして、ブロックに属する画素の濃度値がディザマトリクスの対応するセルのしきい値
以上である場合にはドットを形成し、ブロックに属する画素の濃度値がディザマトリクス
の対応するセルのしきい値未満である場合には、ドットを形成しない。
ディザマトリクスを用いたN値化方法では、面積階調によるN値以上の中間調の表現が
可能であるので、写真画像などをプリンタで印刷し、再現することが可能となっている。
本実施形態の説明においては、記録ヘッドの両端部(あるいは記録ヘッドが複数のヘッ
ドユニットで構成されている場合には、各ヘッドユニットの両端部)が中央部よりも同一
のドット種類であってもドット径がより大きくなり、印字濃度が高く(濃く)なるものと
する。
したがって、調整が正しく行われている場合、同一印字面積当たりのドット数は記録ヘ
ッドの両端部の方が少なくなる。
上述したように、基準ディザマトリクスDMREFは、4×4個のセルC11〜C44から構
成されており、各セルには、しきい値が割り当てられており、具体的には、例えば、セル
C11には濃度しきい値=8が割り当てられ、セルC41には濃度しきい値=168が割り当
てられ、セルC41には濃度しきい値=88が割り当てられている。
【0028】
図8は、基準濃度よりも10%高い濃度で印字するノズルに対応するディザマトリクス
の一例である。
基準濃度よりも10%高い濃度で印字するノズルに対応するディザマトリクスDM+10
も、4×4個のセルC11〜C44から構成されており、各セルには、基準ディザマトリクス
DMREFの濃度しきい値よりも10%高い濃度しきい値が割り当てられている。
より詳細には、基準濃度をCREFとし、基準濃度CREFに対応する補正値をDREFとし、
インク特性に対応するドット濃度をCDとし、ドット濃度CDに対応する補正値をDDとし
た場合に、
DD≒DREF・CD/CREF
となるようになっている。
具体的には、セルC31の場合、基準濃度CREF=100とすると、インク特性に対応す
るドット濃度CD=110となり、基準濃度CREFに対応する補正値DREF=40であるの
で、ドット濃度CDに対応する補正値DDは以下の通りとなる。
DD=40・110/100
=44
【0029】
図9は、基準濃度よりも20%高い濃度で印字するノズルに対応するディザマトリクス
の一例である。
基準濃度よりも20%高い濃度で印字するノズルに対応するディザマトリクスDM+20
も、4×4個のセルC11〜C44から構成されており、各セルには、基準ディザマトリクス
DMREFの濃度しきい値よりも20%高い濃度しきい値が割り当てられている。
より詳細には、ディザマトリクスDM+10と同様に、セルC31の場合、基準濃度CREF=
100とすると、インク特性に対応するドット濃度CD=120となり、基準濃度CREFに
対応する補正値DREF=40であるので、ドット濃度CDに対応する補正値DDは以下の通
りとなる。
DD=40・120/100
=48
図8あるいは図9に示したように、ディザマトリクスを構成することにより、対応する
濃度ムラ(10%あるいは20%増)に相当するだけ、ドットの生成比率を10%あるい
は20%低減することとなり、面積階調が基準濃度の場合と同様になるようにしている。
【0030】
図10は、カラー画像に対応するN値化処理の機能構成ブロック図である。
カラー画像の場合、CMYK色変換部220により、RGB形式で入力される画像デー
タをCMYK形式の濃度値に変換する。そして、C、M、Y、Kの各インク毎にN値化(
実施形態では二値化)処理が行われる。このN値化処理においては、各インク間の濃度値
を参照しながら処理する場合も考えられるが、本実施形態では、N値化処理は各インク毎
に独立して行われるものとして説明する。
Cのインクに対応する二値化処理部221Cは、Cのインクに対応するノズルのインク
吐出状態に対応するCヘッド濃度情報222Cに基づいて、ディザマトリクスを参照して
、二値化処理を行う。すなわち、Cのインクに対応する二値化処理部221Cは、Cのイ
ンクに対応するノズル毎の濃度ムラ情報(ヘッド濃度情報)に基づいて印字位置毎に、デ
ィザマトリックスの値を参照して、二値化処理を実行することとなる。
【0031】
同様にMのインクに対応する二値化処理部221Mは、Mのインクに対応するノズルの
インク吐出状態に対応するMヘッド濃度情報222Mに基づいて、ディザマトリクスを参
照して、二値化処理を行い、Yのインクに対応する二値化処理部221Yは、Yのインク
に対応するノズルのインク吐出状態に対応するYヘッド濃度情報222Yに基づいて、デ
ィザマトリクスを参照して、二値化処理を行い、Kのインクに対応する二値化処理部22
1Kは、Kのインクに対応するノズルのインク吐出状態に対応するKヘッド濃度情報22
2Kに基づいて、ディザマトリクスを参照して、二値化処理を行うこととなる。
これらの場合において、しきい値の設定は、ヘッド濃度情報に基づいて予め設定された
値を読み込むことによって実施する。
そして、二値化処理された画像データに基づいて印刷データ生成部により印刷データが
生成されて、プリンタ2により印字が実行される。
図11は、ヘッド濃度値と、装置が持つディザマトリクスを用いて、濃度補正処理を行
う処理フローチャートである。
各二値化処理部は、画像データが入力されると(ステップS11)、印字する画像の画
素データ位置に対して、ヘッドの位置情報に伴う濃度情報が読み出され、入力される(ス
テップS12)。
【0032】
入力された濃度情報にしたがって、二値化処理に用いるディザマトリクスを選択し(ス
テップS13)、二値化処理を実行することとなる(ステップS14)。
次に各二値化処理部は、全画素の処理が済んだか否かを判別し(ステップS15)、処
理が完了するまでは、ステップS11〜S14の処理を繰り返すこととなる。
[1.1]第1実施形態の第1変形例
次に第1実施形態の第1変形例について説明する。
図12は、入力された濃度情報にしたがって二値化処理に用いるディザマトリクスの選
択に代えて、二つのディザマトリクスおよびヘッド濃度情報に基づいて、入力された濃度
情報に対応するディザマトリクスを合成して、算出する場合の処理フローチャートである

この場合においては、基準濃度となる記録ヘッドの中央部のノズルのインク濃度に対応
するディザマトリクスと、基準濃度よりも高い濃度となる記録ヘッドの両端部のノズルの
インク濃度に対応するディザマトリクスと、を用意する。
これにより、各二値化処理部は、画像データが入力されると(ステップS21)、印字
する画像の画素データ位置に対して、ヘッドの位置情報に伴う濃度情報が読み出され、入
力される(ステップS22)。
そして、画像データに基づいて対応する画素の印字位置のしきい値をそれぞれのディザ
マトリクスから読み出し、両しきい値を濃度情報にしたがって新しいディザマトリクスを
合成し、処理対象の画素のしきい値を決定する(ステップS23)。
【0033】
図13は、ディザマトリクスを合成する処理フローチャートである。
ここでは、合成対象のディザマトリクスAとして基準濃度であるヘッド中央部(本実施
形態では、インク濃度が最も薄い部分)のディザマトリクスDMREFを用い、合成対象の
ディザマトリクスBとしてヘッド端部(本実施形態では、インク濃度が最も濃い部分)の
ディザマトリクス(ここでは、ディザマトリクスDM+20とする)を用いるものとする。
まず、各二値化処理部は、合成対象のディザマトリクスAとして基準濃度であるヘッド
中央部のディザマトリクスDMREFが読み出され、入力される(ステップS31)。
次に合成対象のディザマトリクスBとしてディザマトリクスDM+20が読み出され、入
力される(ステップS32)。
次に、各二値化処理部は、ヘッド濃度情報に基づき、処理対象となるノズル位置の濃度
値にしたがって、二つのディザマトリクスDMREF、DM+20とを合成し(ステップS33
)、処理対象となる画素のしきい値を算出する(ステップS34)。
【0034】
図14は、二つのディザマトリクスDMREF、DM+20とを合成する際の合成比率を示す
図である。
横軸は記録ヘッドの中央部からの距離、すなわち、濃度変動値であり、縦軸は、合成比
率である。
通常の記録ヘッドにおいては、図15に示すように、ヘッド中央部のノズルからヘッド
端部のノズルに向かうにしたがって、徐々にインクの濃度(面積階調)が高くなる。 そ
こで、ノズルのヘッド中央部からの距離、すなわち濃度変動値に応じて対応する合成比率
で二つのディザマトリクスDMREF、DM+20のしきい値を合成して当該位置のノズルのし
きい値を算出する。
【0035】
例えば、基準濃度CREFよりも10%が高い濃度に相当するディザマトリクスに属する
しきい値を算出する場合には、二つのディザマトリクスDMREF、DM+20のしきい値を5
0パーセントずつ合成すればよいこととなる。
すなわち、セルC23(図7および図9参照)の場所に相当するしきい値は、図8に示す
ように、
184×50%+221×50%≒202
となる。
そして、ディザマトリクスの合成が完了すると、入力された濃度情報にしたがって、当
該合成後のディザマトリクスを用いて4値化処理を実行することとなる(ステップS24
)。
次に各4値化処理部は、全画素の処理が済んだか否かを判別し(ステップS25)、処
理が完了するまでは、ステップS11〜S14の処理を繰り返すこととなる。
【0036】
[1.2]第1実施形態の第2変形例
以上の説明は、N値化の一例として、二値化の場合について説明したが、本第2変形例は
、4値化を例として説明する。
この場合において、ドットサイズとしては、0、S、M、Lがあり、S、M、Lの各ドッ
ト毎にディザマトリクスが予め設定されている。
カラー画像の場合、CMYK色変換部220により、RGB形式で入力される画像データ
をCMYK形式の濃度値に変換する。そして、C、M、Y、Kの各インク毎に4値化処理
が行われる。この4値化処理においては、各インク間の濃度値を参照しながら処理する場
合も考えられるが、本第2変形例でも、4値化処理は各インク毎に独立して行われるもの
として説明する。
Cのインクに対応する4値化処理部は、Cのインクに対応するノズルのインク吐出状態
に対応するCヘッド濃度情報に基づいて、ディザマトリクスを参照して、4値化処理を行
う。すなわち、Cのインクに対応する4値化処理部は、Cのインクに対応するノズル毎の
濃度ムラ情報(ヘッド濃度情報)に基づいて印字位置毎に、ディザマトリックスの値を参
照して、4値化処理を実行することとなる。
【0037】
同様にMのインクに対応する4値化処理部は、Mのインクに対応するノズルのインク吐
出状態に対応するMヘッド濃度情報に基づいて、ディザマトリクスを参照して、4値化処
理を行い、Yのインクに対応する二値化処理部は、Yのインクに対応するノズルのインク
吐出状態に対応するYヘッド濃度情報に基づいて、ディザマトリクスを参照して、4値化
処理を行い、Kのインクに対応する二値化処理部は、Kのインクに対応するノズルのイン
ク吐出状態に対応するKヘッド濃度情報に基づいて、ディザマトリクスを参照して、4値
化処理を行うこととなる。
これらの場合において、しきい値の設定は、ヘッド濃度情報に基づいて予め設定された
値を読み込むことによって実施する。
そして、4値化処理された画像データに基づいて印刷データ生成部により印刷データが
生成されて、プリンタ2により印字が実行される。
【0038】
次に図12を再び参照して、4値化を行う場合のディザマトリクスを用いた濃度補正処
理について説明する。なお、図12において、二値化を4値化と読み替えるものとする。
この場合においては、各ドットサイズ毎に基準濃度となる記録ヘッドの中央部のノズル
のインク濃度に対応するディザマトリクスと、基準濃度よりも高い濃度となる記録ヘッド
の両端部のノズルのインク濃度に対応するディザマトリクスと、を用意する。
具体的には、Sサイズドットの場合には、図16に示すように、基準濃度であるヘッド
中央部(本実施形態では、インク濃度が最も薄い部分)のディザマトリクスDMSREFを
用い、図17に示すように、ヘッド端部(本実施形態では、インク濃度が最も濃い部分)
のディザマトリクス(ここでは、ディザマトリクスDMS+20とする)を用いる。
【0039】
また、Mサイズドットの場合には、図18に示すように、基準濃度であるヘッド中央部
(本実施形態では、インク濃度が最も薄い部分)のディザマトリクスDMSREFを用い、
図19に示すように、ヘッド端部(本実施形態では、インク濃度が最も濃い部分)のディ
ザマトリクス(ここでは、ディザマトリクスDMS+20とする)を用いる。
また、本実施例においては、Lサイズドットは、SサイズとMサイズの両方のドットが形
成されると判断されたドットに対して形成することにする。
これにより、各4値化処理部は、画像データが入力されると(ステップS21)、印字
する画像の画素データ位置に対して、ヘッドの位置情報に伴う濃度情報が読み出され、入
力される(ステップS22)。
【0040】
そして、画像データに対応するドットサイズに基づいて対応する画素の印字位置のしき
い値を、それぞれのディザマトリクスから読み出し、両しきい値を濃度情報にしたがって
新しいディザマトリクスを合成し、処理対象の画素のしきい値を決定する(ステップS2
3)。ディザマトリクスの合成手法については、図13で説明した場合と同様である。
そして、ディザマトリクスの合成が完了すると、入力された濃度情報にしたがって、当
該合成後のディザマトリクスを用いて4値化処理を実行することとなる(ステップS24
)。この場合において、入力された濃度情報にしたがって、形成すべきドットがSサイズ
ドットあるいはMサイズドットのいずれかである場合には、SサイズドットあるいはMサ
イズドットを形成する旨の4値化処理を行うこととなるが、同一のドット形成位置におい
て、形成すべきドットがSサイズドットおよびMサイズドットの双方であると4値化の結
果がなった場合には、Lサイズドットを印字すべく4値化処理を行うものとする。
【0041】
次に各4値化処理部は、全画素の処理が済んだか否かを判別し(ステップS25)、処
理が完了するまでは、ステップS21〜S24の処理を繰り返すこととなる。
以上の説明では、常時ディザマトリクスを合成するものとして説明したが、合成前のデ
ィザマトリクスをそのまま使用できる場合には、そのまま使用するようにしている。
【0042】
[2]第2実施形態
次に第2実施形態について説明する。
図20は、単純二値化処理に伴うエッジ部に注目した場合におけるドットサイズが変化
したことによる文字のエッジ部が移動する場合と(ドットサイズが大きいほど文字が太く
なる)、エッジの移動を防ぐためのしきい値変化の処理のしきい値変動の様子である。
図15は、記録ヘッドの位置における二値化しきい値の例である。印字二値化閾値本実
施形態においては、1画素辺りの濃度値が高くなるに伴い、二値化のしきい値を高くして
、二値化される画素数を少なくするようにして、線の太さを一定に保つようにしている。
本実施例においては、中央部の閾値を0〜255の濃度にて階調が記載されていた場合の
中央値である128に設定し、インクドットサイズが大きくなるヘッド端になるほど閾値
を高くして、ドットが打たれにくいようにしている。
【0043】
すなわち、単純二値化の場合、一画素当たりの濃度が濃くなることによって、文字など
に代表される線画像を二値化処理した場合、文字が太く表現される。結果としてヘッド中
央部で印字された線画像は細く、ヘッド端部で印字された線画像は太くなる。
このため、印字濃度に伴って上述したしきい値を変動させる処理を行えば、線画像を構
成する線の太さを所定範囲内に保つことが可能となる。
図20(a)は、線画像の一部に注目した場合の濃度変化を表した図である。図20(b
)は、記録ヘッドの中央部で印字した場合のドット形成状態の説明図である。また、図2
0(c)は、図20(b)と同一の二値化方法により、二値化した場合に記録ヘッドの端
部部で印字した場合のドット形成状態の説明図である。また、図20(d)は、実施形態
の手法で、しきい値を制御して二値化した場合に記録ヘッドの端部部で印字した場合のド
ット形成状態の説明図である。
【0044】
図20(b)と、図20(c)および図20(d)を比較し、そのエッジ位置に着目す
ると、図20(d)の方が、図20(b)のエッジ位置に近い位置にエッジが形成されて
いるのが分かる。
したがって、記録ヘッド端部においても、印刷結果として得られる線画像の太さを、記
録ヘッド中央部と略同一とすることができる。
以上の説明のように、本実施形態によればヘッドの特性(ノズルのインク吐出特性)に
伴う濃度ムラの発生を単純な処理によって回避することが可能となる。また、これに伴い
、濃度ムラ補正に伴う画質劣化を最小限に抑制することができる。
【0045】
[3]実施形態の効果
以上の説明のように各実施形態によれば、ラインヘッドプリンタにおいては、1パスに
よる高品位の印字を行うことが可能となる。
さらに、プリンタに要求されるノズルの濃度ムラ特性の許容範囲を広くすることが可能
となり、ノズルの製造上のばらつきの許容範囲も広がって、製造を容易に行うことができ
る。
【0046】
[4]実施形態の変形例
また以上の説明では、ラインヘッドを有するラインヘッドプリンタについて説明したが
、本発明は、ヘッドが走査されて往復して画像を形成するマルチパスプリンタについても
適用が可能である。このマルチパスプリンタに適用した場合には、濃度ムラを回避すべく
、ヘッドの往復パス数を多くする必要がなくなり、高品位を維持しつつ、ヘッドの往復パ
ス数を少なくすることができ、スループットの向上が図れる。
以上の説明では、コンピュータ4にインストールされるプリンタドライバソフトに画像
処理プログラムを組み込むことで、コンピュータ4を画像処理装置200として機能させ
たが、これに限らず、プリンタ4の制御回路24に画像処理プログラムを実行させ、この
制御回路24を画像処理装置200として機能させる構成としても良い。この構成におい
ては、画像処理プログラムが例えば制御回路24のP−ROM43などに予め格納される

【0047】
また、上述した画像処理プログラムは、コンピュータ4やプリンタ2の半導体ROMに
予め記憶させて製品に組み込まれるほかにも、インターネットなどのネットワークを介し
て配信することも可能である。また、図21に示すようにCD−ROMやDVD−ROM
、FDなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体300を介することによって所望する
ユーザなどに対して容易に提供することも可能である。
以上の説明では、記録ヘッドとして、ピエゾ素子を用いてインクを吐出する構成のもの
を例示したが、他の方法によりインクを吐出する記録ヘッドを用いても良い。例えばイン
ク通路に配置したヒータに通電し、インク通路内に発生する泡(バブル)によりインクを
吐出する記録ヘッドを用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1実施形態の印刷用のコンピュータシステムを示す図である。
【図2】ヘッドユニットの構成を示す図である。
【図3】プリンタの制御回路の機能的構成を示す図である。
【図4】コンピュータの機能的構成を示す図である。
【図5】画像処理装置の機能的構成を示す図である。
【図6】N値化処理部の機能ブロック図である。
【図7】二値化時あるいはLサイズドットの基準ディザマトリクスの構成説明図である。
【図8】基準濃度よりも10%高い濃度で印字するノズルに対応するディザマトリクスの一例である。
【図9】二値化時あるいはLサイズドットの基準濃度よりも20%高い濃度で印字するノズルに対応するディザマトリクスの一例である。
【図10】カラー画像に対応するN値化処理の機能構成ブロック図である。
【図11】ヘッド濃度値と、装置が持つディザマトリクスを用いて、濃度補正処理を行う処理フローチャートである。
【図12】ディザマトリクスを合成して算出する場合の処理フローチャートである。
【図13】ディザマトリクスを合成する処理フローチャートである。
【図14】二つのディザマトリクスを合成する際の合成比率を示す図である。
【図15】ノズル位置に応じたインクの濃度(面積階調)変化を説明する図である。
【図16】Sサイズドットの基準ディザマトリクスの構成説明図である。
【図17】Sサイズドットの基準濃度よりも20%高い濃度で印字するノズルに対応するディザマトリクスの一例である。
【図18】Mサイズドットの基準ディザマトリクスの構成説明図である。
【図19】Mサイズドットの基準濃度よりも20%高い濃度で印字するノズルに対応するディザマトリクスの一例である。
【図20】単純二値化処理に伴うしきい値変化の処理のしきい値変動の様子である。
【図21】本発明の画像処理プログラムが記録された記録媒体を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
2…プリンタ、3…記録用紙(メディア)、4…コンピュータ、24…制御回路、28
…ラインヘッド、33…ノズル、200…画像処理装置、210…ヘッド濃度情報記憶部
、211…N値化処理部、215…ディザマトリクス記憶部、216…しきい値補正部、
217…ドット形成判別部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
メディア上にインクにより複数のドットを形成して画像形成を行わせるに際し、入力画
像データの処理を行う画像処理装置において、
前記入力画像データに対応する各画素について前記ドットの形成の可否を判別するため
のしきい値を記録ヘッドのノズルのインク吐出特性に基づいて補正して得られる補正後の
しきい値および各前記ノズルの実際のインク吐出特性に基づいて、各前記ノズル毎に前記
ドットの形成の可否を判別するドット形成判別部を備えたことを特徴とする画像処理装置

【請求項2】
請求項1記載の画像処理装置において、
二次元配置される複数の画素について前記ドットの形成の可否を判別するためのしきい値
を規定したディザマトリクスを記憶したディザマトリクス記憶部と、
前記ディザマトリクスを構成する前記しきい値を記録ヘッドのノズルのインク吐出特性
に基づいて補正する前記しきい値補正部と、を備え、
前記ドット形成判別部は、各前記ノズルのインク吐出特性および前記補正後のディザマト
リクスに基づいて、各前記ノズル毎に前記ドットの形成の可否を判別する、
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1記載の画像処理装置において、
二次元配置される複数の画素について前記ドットの形成の可否を判別するためのしきい
値をディザマトリクスとして規定し、記録ヘッドのノズルのインク吐出特性に応じて複数
種類の前記ディザマトリクスを記憶したディザマトリクス記憶部を備え、
前記ドット形成判別部は、各前記ノズルのインク吐出特性および当該インク吐出特性に
対応する前記ディザマトリクスに基づいて、各前記ノズル毎に前記ドットの形成の可否を
判別する、
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3記載の画像処理装置において、
前記ノズルのインク吐出特性を、前記ドットの濃度として規定し、基準となるノズルの
ドット濃度を基準濃度とし、前記ディザマトリクスは前記基準濃度に対応するものであり

前記しきい値補正部は、前記基準濃度に対する各前記ノズルのインク吐出特性に対応す
るドット濃度の比に基づいて前記ディザマトリクスを構成する前記しきい値を補正するこ
とを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項4記載の画像処理装置において、
前記しきい値補正部は、前記基準濃度をCREFとし、基準濃度CREFに対応する補正値を
DREFとし、前記インク特性に対応するドット濃度をCDとし、ドット濃度CDに対応する
補正値をDDとした場合に、
DD≒CD・DREF/CREF
となるように、補正値をDREFを補正して、補正値DDを得ることを特徴とする画像処理装
置。
【請求項6】
メディア上にインクにより複数のドットを形成して画像形成を行わせるに際し、入力画
像データの処理を行う画像処理方法において、
前記入力画像データに対応する各画素について前記ドットの形成の可否を判別するため
のしきい値を記録ヘッドのノズルのインク吐出特性に基づいて補正するしきい値補正過程
と、
補正後のしきい値および各前記ノズルの実際のインク吐出特性に基づいて、各前記ノズル
毎に前記ドットの形成の可否を判別するドット形成判別過程と、
を備えたことを特徴とする画像処理方法。
【請求項7】
請求項6記載の画像処理方法において、
前記しきい値補正過程は、二次元配置される複数の画素について前記ドットの形成の可否
を判別するためのしきい値を規定すべく予め記憶されたディザマトリクスを構成する前記
しきい値を、記録ヘッドのノズルのインク吐出特性に基づいて補正し、
前記ドット形成判別過程は、各前記ノズルのインク吐出特性および前記補正後のディザマ
トリクスに基づいて、各前記ノズル毎に前記ドットの形成の可否を判別する、
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
請求項6記載の画像処理装置において、
前記ドット形成判別過程は、二次元配置される複数の画素について前記ドットの形成の
可否を判別するためのしきい値を規定すべく記録ヘッドのノズルのインク吐出特性に応じ
て複数種類の前記ディザマトリクスを予め記憶されたディザマトリクスのうち、各前記ノ
ズルのインク吐出特性に応じたディザマトリクスおよび当該インク吐出特性に基づいて、
各前記ノズル毎に前記ドットの形成の可否を判別する、
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項9】
メディア上にインクにより複数のドットを形成して画像形成を行わせるに際し、入力画
像データの処理を行う画像処理装置をコンピュータにより制御するための制御プログラム
において、
前記入力画像データに対応する各画素について前記ドットの形成の可否を判別するため
のしきい値を記録ヘッドのノズルのインク吐出特性に基づいて補正させ、
補正後のしきい値および各前記ノズルの実際のインク吐出特性に基づいて、各前記ノズル
毎に前記ドットの形成の可否を判別させる、
ことを特徴とする制御プログラム。
【請求項10】
請求項9記載の制御プログラムにおいて、
前記しきい値を補正させるに際し、二次元配置される複数の画素について前記ドットの形
成の可否を判別するためのしきい値を規定すべく予め記憶されたディザマトリクスを構成
する前記しきい値を、記録ヘッドのノズルのインク吐出特性に基づいて補正させ、
前記ドットの形成の可否を判別させるに際し、各前記ノズルのインク吐出特性および前記
補正後のディザマトリクスに基づいて、各前記ノズル毎に前記ドットの形成の可否を判別
させる、
ことを特徴とする制御プログラム。
【請求項11】
請求項9記載の制御プログラムにおいて、
前記ドットの形成の可否を判別させるに際し、二次元配置される複数の画素について前
記ドットの形成の可否を判別するためのしきい値を規定すべく記録ヘッドのノズルのイン
ク吐出特性に応じて複数種類の前記ディザマトリクスを予め記憶されたディザマトリクス
のうち、各前記ノズルのインク吐出特性に応じたディザマトリクスおよび当該インク吐出
特性に基づいて、各前記ノズル毎に前記ドットの形成の可否を判別させる、
ことを特徴とする制御プログラム。
【請求項12】
請求項9ないし請求項11記載の制御プログラムを記録したことを特徴とするコンピュ
ータ読取可能な記録媒体。
【請求項13】
複数のノズルを有し、前記各ノズルからインクを吐出してドットを形成する記録ヘッド
と、
記録画像の画像データが入力される入力部と、
前記入力画像データに対応する各画素について前記ドットの形成の可否を判別するため
のしきい値を記録ヘッドのノズルのインク吐出特性に基づいて補正して得られる補正後の
しきい値および各前記ノズルの実際のインク吐出特性に基づいて、各前記ノズル毎に前記
ドットの形成の可否を判別するドット形成判別部と、
前記ドット形成判別部の結果に基づいて、前記記録ヘッドを制御して画像記録を実行す
る制御手段と、
を備えたことを特徴とする記録装置。
【請求項14】
請求項13記載の記録装置において、
二次元配置される複数の画素について前記ドットの形成の可否を判別するためのしきい値
を規定したディザマトリクスを記憶したディザマトリクス記憶部と、
前記ディザマトリクスを構成する前記しきい値を記録ヘッドのノズルのインク吐出特性
に基づいて補正する前記しきい値補正部と、を備え、
前記ドット形成判別部は、各前記ノズルのインク吐出特性および前記補正後のディザマト
リクスに基づいて、各前記ノズル毎に前記ドットの形成の可否を判別する、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項15】
請求項13記載の記録装置において、
二次元配置される複数の画素について前記ドットの形成の可否を判別するためのしきい
値をディザマトリクスとして規定し、記録ヘッドのノズルのインク吐出特性に応じて複数
種類の前記ディザマトリクスを記憶したディザマトリクス記憶部を備え、
前記ドット形成判別部は、各前記ノズルのインク吐出特性および当該インク吐出特性に
対応する前記ディザマトリクスに基づいて、各前記ノズル毎に前記ドットの形成の可否を
判別する、
ことを特徴とする記録装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2006−239980(P2006−239980A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−57132(P2005−57132)
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】