説明

画像処理装置

【課題】車両の走行ルートに沿った路面のデータベース画像を生成することができる技術を提供する。
【解決手段】単眼カメラ3の撮影画像が背景画像取得手段6aにより取得されたときの自車両1の位置情報が位置情報取得手段6bにより取得され、位置情報取得手段6aの自車両1の位置情報に基づいて、生成手段6dにより、各フレームの撮影画像が射影変換された障害物を含まない上方視の画像がつなぎ合わされて、路面領域が連続する路面のデータベース画像が生成される。したがって、走行中の自車両1の単眼カメラ3の撮影画像に基づいて路面のデータベース画像を生成することができるため、例えば通勤の際に単眼カメラ3により撮影された撮影画像から自車両1の走行ルートに沿った路面のデータベース画像を生成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車載カメラの撮影画像を処理して路面のデータベース画像を生成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載カメラの撮影画像と予め設定された背景画像との間の差分画像に基づいて障害物を認識する技術が知られている。例えば、特許文献1に記載の技術では、フレーム単位で連続的に入力される車載カメラの撮影画像と予め設定された背景画像との間の差分画像である背景差分画像が2値化されて、障害物が存在することにより背景画像に対して変化のある対象領域と、障害物が存在しないことにより背景画像に対して変化のない背景領域とからなる2値化画像がフレーム毎に生成される。そして、この2値化画像がフレーム間で比較されることにより障害物の移動量などが認識される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−59252号公報(段落[0012]〜[0019],[0035],[0042],[0043]、図7など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、通勤などにより、車両はほぼ決まった走行ルートで運転されることが多いため、少なくともその走行ルートの風景が背景画像として設定されていれば、走行ルートの路面領域の障害物を容易に認識できると考えられる。しかしながら、上記した従来の技術では、背景画像の具体的な設定方法については詳細には述べられておらず、技術の改善が求められていた。
【0005】
本発明は、車両の走行ルートに沿った路面のデータベース画像を生成することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、本発明の画像処理装置は、車両の周辺を撮影する車載カメラと、前記車載カメラの撮影画像であって路面領域を含む背景画像を取得する背景画像取得手段と、前記背景画像が取得されたときの前記車両の位置情報を取得する位置情報取得手段と、各フレームの前記背景画像を、前記車両の上方から俯瞰する下向き姿勢の仮想的なカメラ視点の射影変換画像に変換する射影変換手段と、前記位置情報取得手段の前記車両の位置情報に基づいて、前記各フレームの障害物を含まない射影変換画像をつなぎ合わせ、前記路面領域が連続する路面のデータベース画像を生成する生成手段とを備えたことを特徴としている(請求項1)。
【0007】
また、請求項1に記載の画像処理装置において、前記生成手段は、前記各フレームの射影変換画像の同じ路面領域における共通する画像部分を、障害物を含まない画像部分としてつなぎ合わせて前記データベース画像を生成するようにしてもよい(請求項2)。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、車載カメラの撮影画像であって路面領域を含む背景画像が背景画像取得手段により取得されたときの車両の位置情報が位置情報取得手段により取得され、各フレームの背景画像が射影変換手段により、車両の上方から俯瞰する下向き姿勢の仮想的なカメラ視点の射影変換画像に変換される。そして、位置情報取得手段の車両の位置情報に基づいて、生成手段により、各フレームの障害物を含まない射影変換画像がつなぎ合わされて、路面領域が連続する路面のデータベース画像が生成される。このとき、各フレームの背景画像が射影変換手段により射影変換された射影変換画像が生成手段によりつなぎ合わされるが、各フレームの射影変換画像はカメラ視点が一致しているため、各フレームの射影変換画像を路面領域が連続するように容易につなぎ合わせることができ、生成される路面のデータベース画像の精度を向上することができる。また、走行中の車両の車載カメラの撮影画像に基づいて路面のデータベース画像を生成することができるため、例えば通勤の際の車載カメラによる背景画像から車両の走行ルートに沿った路面のデータベース画像を生成することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、各フレームの射影変換画像の同じ路面領域における共通する画像部分が、障害物を含まない画像部分として生成手段によりつなぎ合わされて路面のデータベース画像が生成される。例えば、一のフレームの背景画像に停車車両や先行車などの障害物、路面に投影された影などが含まれているときには、障害物や影などは常に同じ路面領域に存在するわけではないため、他のフレームの背景画像の同じ路面領域には障害物や影などが含まれていない蓋然性が高く、各フレームの背景画像の同じ路面領域の画像には差異が生じる。しかしながら、例えば、一のフレームの背景画像に道路標示が含まれていたとしても、道路標示などは常に同じ路面領域に存在するものであるため、各フレームの背景画像の同じ路面領域に障害物や影などが含まれていなければ、各フレームの背景画像の同じ路面領域の画像は共通するものとなる。したがって、各フレームの射影変換画像の同じ路面領域における共通する画像部分を障害物を含まない画像部分としてつなぎ合わせることで、車載カメラの背景画像に障害物や影などが含まれていたとしても、障害物や影などが除去された状態で射影変換画像がつなぎ合わされるため、障害物や影を含まない路面のデータベース画像を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の画像処理装置としての機能を備える障害物認識装置の一実施形態のブロック図である。
【図2】図1の単眼カメラの構成の一例を示す図である。
【図3】背景画像の一例である。
【図4】路面のデータベース画像の一例である。
【図5】データベース画像生成処理を示すフローチャートである。
【図6】障害物認識処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態について、図1〜図6を参照して説明する。
【0012】
図1は本発明の画像処理装置としての機能を備える障害物認識装置2の一実施形態のブロック図である。図2は図1の単眼カメラ3の構成の一例を示す図である。図3は本発明の路面領域を含む背景画像としての単眼カメラ3の撮影画像IMGの一例を示し、(a1),(a2)はそれぞれ異なる時刻に撮影された撮影画像IMG(t1),IMG(t2)、(b1),(b2)はそれぞれ撮影画像IMG(t1),IMG(t2)を上方視の画像tIMG(t1),tIMG(t2)に射影変換したもの、(c)は画像tIMG(t1)および画像tIMG(t2)の差分画像dIMGである。図4は各フレームの障害物を含まない上方視の画像tIMGをつなぎ合わせることによる路面のデータベース画像DBの一例である。図5はデータベース画像生成処理を示すフローチャートである。図6は障害物認識処理を示すフローチャートである。
【0013】
1.構成
図1に示す障害物認識装置2(本発明の「画像処理装置」に相当)は、自車両1(本発明の「車両」に相当)に搭載された単眼カメラ3(本発明の「車載カメラ」に相当)の路面領域を含む撮影画像IMGを処理して自車両1周辺の障害物(他車両12)を認識するものであって、自車両1の走行ルートに沿った路面のデータベース画像DBを生成する画像処理装置としての機能を備えるとともに、単眼カメラ3と、単眼カメラ3の撮影画像IMGや路面のデータベース画像DBなどの種々のデータを記憶する記憶手段4と、自車両1の現在位置に関する情報を出力するGPS5(本発明の「位置情報取得手段」に相当)と、単眼カメラ3の撮影画像IMGを処理するマイクロコンピュータ構成のECU6と、例えばインストルメントパネルなどに取付けられたCRT、液晶ディスプレイなどの走行モニタ7と、警報用のスピーカ8とを備えている。
【0014】
単眼カメラ3は、自車両1の周辺を撮影するものであって、この実施形態では自車両1の前方の撮影が可能なモノクロあるいはカラー撮影が可能なカメラから成り、連続的に時々刻々と撮影した画像IMGの信号を出力する(図3参照)。また、図2に示すように、自車両1の前方の撮影を行なうため、単眼カメラ3は、自車両1の車内の前方のインストルメントパネルの上部位置に、上方に適当な角度でつけて前方を撮影することができるように設けられている。
【0015】
記憶手段4は、各種メモリやハードディスクドライブなどを備え、単眼カメラ3から時々刻々と出力される撮影画像IMGに対してECU6により種々の処理が施されることにより得られた各種データなどを格納する。
【0016】
GPS5は、受信したGPS信号に基づいて自車両1の現在位置を検出するものであって、この実施形態では、単眼カメラ3により撮影画像IMGが取得されたときの自車両1の現在位置に関する情報をECU6に出力する。
【0017】
ECU6は、例えばイグニッションキーのオンにより、予め設定された路面のデータベース画像DBを生成するためのプログラムや走行路の障害物認識のプログラムを実行することにより以下の各手段を備えている。
【0018】
(1)背景画像取得手段6a
背景画像取得手段6aは、単眼カメラ3により異なる時刻に撮影された、本発明の路面領域を背景画像としての複数フレームの撮影画像IMG(t1),IMG(t2)を取得する。例えば、図3(a1),(a2)に示すように、単眼カメラ3により時系列に撮影された撮影画像IMG(t1),IMG(t2)には、走行車線の自車両1の前方を先行車として走行する他車両12が撮影されており、背景画像取得手段6aはこれらの撮影画像IMG(t1),IMG(t2)を取得する。
【0019】
なお、図3(a1)は、時刻t1に単眼カメラ3が撮影した自車両1の前方の撮影画像IMG(t1)を示し、同図(a2)は、所定の時間が経過した時刻t2において撮影された撮影画像IMG(t2)を示す。そして、単眼カメラ3により時系列に撮影された撮影画像IMGに関する種々のデータは記憶手段4に記憶される。
【0020】
(2)位置情報取得手段6b
位置情報取得手段6bは、単眼カメラ3の撮影画像IMG(t1),IMG(t2)がそれぞれ背景画像取得手段6aにより取得されたとき、すなわち、撮影画像IMG(t1),IMG(t2)がそれぞれ撮影されたときの自車両1の位置情報を取得する。そして、位置情報取得手段6bにより取得された位置情報は、各撮影画像IMG(t1),IMG(t2)に対応付けられて記憶手段4に記憶される。
【0021】
(3)射影変換手段6c
射影変換手段6cは、図2に示すように、単眼カメラ3の撮影画像IMGを、自車両1の上方から俯瞰する下向き姿勢のカメラ視点の射影変換画像である上方視の画像tIMGに変換するものであって、図3(a1),(a2)に示す、各フレームの撮影画像IMG(t1),IMG(t2)を、図3(b1),(b2)に示す、上方視の画像tIMG(t1),tIMG(t2)に変換する。そして、射影変換手段6cによる上方視の画像tIMGに関する種々のデータは記憶手段4に記憶される。
【0022】
(4)生成手段6d
生成手段6dは、位置情報取得手段6bの自車両1の位置情報に基づいて、各フレームの障害物を含まない上方視の画像tIMGをつなぎあわせて、図4に示すような、路面領域が連続する路面のデータベース画像DBを生成する。
【0023】
ところで、図3(a1)に示すように、一のフレームの撮影画像IMG(t1)に先行車12などの障害物や路面に投影された影などが含まれているときには、障害物や影などは常に同じ路面領域に存在するわけではないため、他のフレームの撮影画像IMG(t2)の同じ路面領域の全く同じ位置に障害物や影などが含まれていない蓋然性が高く、各フレームの撮影画像IMG(t1),IMG(t2)の同じ路面領域の画像に差異が生じる。
【0024】
しかしながら、例えば、一のフレームの撮影画像IMG(t1)に道路標示が含まれていたとしても、道路標示などは常に路面領域の同じ位置に存在するため、各フレームの撮影画像IMG(t1),IMG(t2)の路面領域に障害物や影などが含まれていなければ、各フレームの撮影画像IMG(t1),IMG(t2)の同じ路面領域の画像は共通するものとなる。
【0025】
そこで、この実施形態では、生成手段6dは、各フレームの上方視の画像tIMG(t1),tIMG(t2)の同じ路面領域における共通する画像部分を障害物を含まない画像部分としてつなぎ合わせることで、障害物や影を含まない路面のデータベース画像DBを生成する。
【0026】
すなわち、この実施形態では、各時刻t1,t2における撮影画像IMG(t1),IMG(t2)は、図3(b1),(b2)に示す、上方視の画像tIMG(t1)、tIMG(t2)に射影変換手段6cにより射影変換される。生成手段6dは、自車速度および単眼カメラ3の撮影間隔に起因する上方視の画像tIMG(t1),tIMG(t2)の位置ずれの位置合わせを行った後、画像tIMG(t1)および画像tIMG(t2)の差分、すなわち単眼カメラ3の撮影画像のフレーム間差分を取って差分画像dIMGを導出する(図3(c)参照)。
【0027】
このとき、白線などの道路標示などが設けられただけの路面領域では差分が生じず、路面以外の部分には差分112aが生じ、これにより生成手段6dは、差分112aの集合体である差分集合体112から障害物候補12aを検出する。図3(c)に示す例では、上方視の画像tIMG(t1),tIMG(t2)中の他車両12の部分が障害物候補12aとして検出される。
【0028】
そして、生成手段6dは、各フレームの上方視の画像tIMG(t1),tIMG(t2)から差分112aが生じた部分を削除するとともに、差分112aが生じなかった部分を同じ路面領域における共通する画像部分として、射影変換前の元の画像である各撮影画像IMG(t1),IMG(t2)が取得されたときの自車両1の位置に基づき、各フレームの上方視の画像tIMG(t1),tIMG(t2)をつなぎ合わせて、図4に示す、路面領域が連続する路面のデータベース画像DBを生成する。なお、図4に示す路面のデータベース画像DBは、各時刻t3〜t5における撮影画像IMG(t3)〜IMG(t5)が射影変換された上方視の画像tIMG(t3)〜tIMG(t5)が、上記したように障害物が除去されて、さらにつなぎ合わされている。
【0029】
また、この実施形態では、例えば通勤の際などに同じルートで自車両1が運転されることにより、異なる日に単眼カメラ3により撮影されて、同じ路面領域を含む複数フレームの撮影画像IMGが背景画像取得手段6aにより取得されることがある。このとき、生成手段6dは、各フレームの撮影画像IMGが射影変換されて上記したように障害物が除去された複数フレームの上方視の画像tIMGを、それぞれの画像tIMGの同じ位置における各画素値を平均して路面のデータベース画像DBにつなぎ合わせるように構成されている。また、データベース画像DBに新たにつなぎ合わせる上方視の画像tIMGに含まれる路面領域と同じ路面領域がデータベース画像DBに含まれている場合には、生成手段6dは、新たにつなぎ合わせる上方視の画像tIMGおよびデータベース画像DBの同じ位置における各画素値を平均してつなぎ合わせることによりデータベース画像DBを生成する。
【0030】
このように構成すると、ほぼ同じ位置から撮影された複数の撮影画像IMGに基づく各上方視の画像tIMGの同じ位置における画素値を平均化することで、生成手段6dにより生成される路面のデータベース画像DBの精度を向上することができる。
【0031】
(5)認識手段6e
認識手段6eは、単眼カメラ3の撮影画像IMGが射影変換された上方視の画像tIMGと、生成手段6dにより生成されて記憶手段4に格納された障害物が存在しない路面のデータベース画像DBとの異同に基づいて、単眼カメラ3の撮影画像IMGに障害物が含まれているか、含まれていないかを認識する。
【0032】
例えば、単眼カメラ3の撮影画像IMG(t1),IMG(t2)が射影変換された上方視の画像tIMG(t1),tIMG(t2)と(図3参照)、図4に示す路面のデータベース画像DB中の各画像tIMG(t1),tIMG(t2)が含む路面領域と同じ部分との間の異同の有無が、例えば差分を取ることにより検出されて、これにより、他車両12が障害物として認識手段6eにより認識される。
【0033】
また、認識された障害物(他車両12)の各フレームの上方視の画像tIMG内での相対的な位置が比較されることにより、障害物の動き、すなわち、自車両1に近づくものであるのか、自車両1から離れるものであるのかなどが周知の手法により認識手段6eにより認識される。なお、単眼カメラ3の撮影画像IMGに基づく上方視の画像tIMGと、データベース画像DBとの比較は、位置情報取得手段6bにより取得された自車両1の位置情報に基づいて行われる。
【0034】
(6)報知手段6f
報知手段6fは、認識手段6eにより監視される、自車両1と障害物(他車両12)との距離の変化に基づき、例えば走行モニタ7に表示中のカーナビゲーション用の地図に警告表示を重畳して表示したりして、障害物の存在を視覚的にドライバに報知する。また、スピーカ8から、検出結果の音声メッセージ、警告音を発生して障害物の存在を聴覚的にドライバに報知する。これらの視覚的または聴覚的なドライバに対する報知により、ドライバの運転支援を行う。
【0035】
2.動作
次に、上記したように構成された障害物認識装置2の動作について図5および図6を参照して説明する。なお、この実施形態では、図3に示すように、走行車線の自車両1の前方を先行車として他車両12が走行している状態を例に挙げて説明する。
【0036】
<データベース画像生成処理>
障害物認識装置2による障害物の認識処理が行われる際に使用される路面のデータベース画像DBを生成する処理について図5を参照して説明する。まず、自車両1のイグニッションキーのオンにより単眼カメラ3による撮影が開始されると、図3(a1),(a2)に示すような、路面領域を含む本発明の背景画像としての自車両1の前方の撮影画像IMG(t1),IMG(t2)の信号が背景画像取得手段6aにより時々刻々とECU6に取込まれ(ステップS1)、各撮影画像IMG(t1),IMG(t2)が取得(撮影)されたときの自車両1の位置情報が位置情報取得手段6bにより取得される(ステップ2)。そして、図3(b1),(b2)に示すように、取込まれた各撮影画像IMG(t1),IMG(t2)が上方視の画像tIMG(t1),tIMG(t2)に射影変換手段6cにより射影変換される(ステップS3)。
【0037】
次に、各フレームの上方視の画像tIMG(t1),tIMG(t2)の同じ路面領域の共通する画像部分が、障害物を含まない画像部分としてつなぎ合わされて、図4に示す、路面領域が連続する路面のデータベース画像DBが生成手段6dにより生成されて(ステップS4)、生成されたデータベース画像DBが記憶手段4に格納される(ステップS5)。そして、ステップS1〜ステップS5の処理が自車両1の走行中の単眼カメラ3の撮影画像IMGと、各撮影画像IMGが撮影されたときの自車両1の位置情報とに基づいて繰返し実行されることにより、特に通勤や通学など、日常生活において自車両1を使用することの多い走行ルートを主とする一枚の路面のデータベース画像DBが生成される。
【0038】
<障害物認識処理>
次に、上記したデータベース画像生成処理により生成された路面のデータベース画像DBに基づく障害物認識処理について図6を参照して説明する。なお、記憶手段4には、生成手段6dにより生成された路面のデータベース画像DBが格納されているものとする。
【0039】
まず、自車両1のイグニッションキーのオンにより単眼カメラ3による撮影が開始されると、図3(a1),(a2)に示すような、自車両1の前方の撮影画像IMG(t1),IMG(t2)の信号が背景画像取得手段6aにより時々刻々とECU6に取込まれ(ステップS11)、各撮影画像IMG(t1),IMG(t2)が取得(撮影)されたときの自車両1の位置情報が位置情報取得手段6bにより取得される(ステップ12)。そして、図3(b1),(b2)に示すように、取込まれた各撮影画像IMG(t1),IMG(t2)が上方視の画像tIMG(t1),tIMG(t2)に射影変換手段6cにより射影変換される(ステップS13)。
【0040】
次に、各上方視の画像tIMG(t1),tIMG(t2)が取得(撮影)された位置に基づいて、各上方視の画像tIMG(t1),tIMG(t2)と、データベース画像DB中の各画像tIMG(t1),tIMG(t2)が含む路面領域と同じ部分との間の異同が検出される。そして、画像に異なる部分があれば障害物が存在すると認識手段6eにより認識されて、画像に異なる部分が無ければ障害物が存在しないと認識手段6eにより認識される(ステップS14)。また、各フレームの上方視の画像tIMG(t1),tIMG(t2)内での障害物の相対的な位置が比較されることにより、障害物の動きが認識手段6eにより監視されて、障害物(他車両12)が自車両1に異常接近するものであれば、走行モニタ7による警告表示が行われたり、スピーカ8から音声メッセージや警報音が出力されたりすることにより、障害物が存在することがドライバに報知手段6fにより報知される(ステップS15)。すなわち、この実施形態では、ECU6がプログラムを実行することにより備える機能により、他車両12が自車両1に異常接近すると判断されれば、報知手段6fによる報知が行われる。
【0041】
以上のように、この実施形態によれば、路面領域を含む背景画像としての単眼カメラ3の撮影画像IMGが背景画像取得手段6aにより取得されたときの自車両1の位置情報が位置情報取得手段6bにより取得され、各フレームの撮影画像IMG(背景画像)が射影変換手段6cにより、自車両1の上方から俯瞰する下向き姿勢の仮想的なカメラ視点の射影変換画像である上方視の画像tIMGに変換される。そして、位置情報取得手段6aの自車両1の位置情報に基づいて、生成手段6dにより、各フレームの障害物を含まない上方視の画像tIMGがつなぎ合わされて、路面領域が連続する路面のデータベース画像DBが生成される。
【0042】
このとき、各フレームの撮影画像IMGが射影変換手段6cにより射影変換された上方視の画像tIMGが生成手段6dによりつなぎ合わされるが、各フレームの上方視の画像tIMGはカメラ視点が一致しているため、各フレームの上方視の画像tIMGを路面領域が連続するように容易につなぎ合わせることができ、生成される路面のデータベース画像DBの精度を向上することができる。また、走行中の自車両1の単眼カメラ3の撮影画像IMBに基づいて路面のデータベース画像DBを生成することができるため、例えば通勤の際に単眼カメラ3により撮影された撮影画像IMG(背景画像)から自車両1の走行ルートに沿った路面のデータベース画像DBを生成することができる。
【0043】
また、この実施形態によれば、各フレームの撮影画像IMGの同じ路面領域における共通する画像部分が、障害物を含まない画像部分として生成手段によりつなぎ合わされて路面のデータベース画像DBが生成される。したがって、各フレームの上方視の画像tIMGの同じ路面領域における共通する画像部分を障害物を含まない画像部分としてつなぎ合わせることで、単眼カメラ3の撮影画像IMGに障害物や影などが含まれていたとしても、障害物や影などが除去された状態で上方視の画像tIMGがつなぎ合わされるため、障害物や影を含まない路面のデータベース画像DBを生成することができる。
【0044】
また、この実施形態では、カメラ視点が一致する上方視の画像tIMGがつなぎ合わされることにより一枚の路面のデータベース画像DBが生成されるため、射影変換されていない単眼カメラ3の複数フレームの撮影画像IMGからなる従来のデータベース画像と比較すると、この実施形態のデータベース画像DBでは同じ路面領域が重複することがないため、データベース画像DBのデータ容量を従来のものと比べて縮小することができる。
【0045】
また、複数フレームの撮影画像から成る従来のデータベース画像を用いた装置では、車載カメラの撮影画像と、データベース画像を構成する複数フレームの撮影画像のうち、車載カメラの撮影画像が含む路面領域と同じ路面領域を含むフレームの撮影画像との2つの画像を射影変換し、位置合わせを行った後に差分を取ることにより障害物の検出が行われていた。一方、この実施形態では、上方視の画像tIMGがつなぎ合わされることによる路面のデータベース画像DBと、単眼カメラ3の撮影画像IMGが射影変換された上方視の画像tIMGとの間の異同を検出することにより認識手段6eによる障害物の認識が行われるため、単眼カメラ3の撮影画像IMGのみを射影変換するだけで2つの画像の差分を取ることができ、これにより、単眼カメラ3の撮影画像IMG内の障害物の認識を行えるため、障害物を認識する処理時間の短縮を図ることができる。
【0046】
また、この実施形態によれば、上方視の画像tIMGがつなぎ合わされて一枚の路面のデータベース画像DBが生成されているため、障害物を認識する際に、撮影画像IMGが単眼カメラ3により撮影されたときの自車両1のGPS5(位置情報取得手段6b)による位置情報に基づいて、撮影画像IMGが射影変換された上方視の画像tIMGに含まれる路面領域と同じ路面領域を、路面のデータベース画像DB内から容易に同定することができ、2つの画像間の異同を検出することによる障害物認識処理を簡単に行うことができる。
【0047】
また、この実施形態によれば、障害物認識用の単眼カメラ3を用いて路面のデータベース画像DBを生成することができるため、データベース画像DB生成用のカメラを自車両1に別途搭載する必要がなくコストダウンを図ることができる。
【0048】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能であり、例えば、路面のデータベース画像DB生成用の車載カメラを自車両1にさらに設けてもよい。また、障害物認識用の単眼カメラ3を、後方を撮影可能に自車両1の後部に取付けてもよい。このように構成すると、自車両1の後方から異常接近する他車両が存在するかどうかを監視することができる。
【0049】
また、本発明は種々の車両のデータベース画像DBを生成するための画像処理に適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 自車両(車両)
2 障害物認識装置(画像処理装置)
3 単眼カメラ(車載カメラ)
5 GPS(位置情報取得手段)
6a 背景画像取得手段
6b 位置情報取得手段
6c 射影変換手段
6d 生成手段
12 他車両(障害物)
IMG 撮影画像(背景画像)
tIMG 上方視の画像(射影変換画像)
DB 路面のデータベース画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周辺を撮影する車載カメラと、
前記車載カメラの撮影画像であって路面領域を含む背景画像を取得する背景画像取得手段と、
前記背景画像が取得されたときの前記車両の位置情報を取得する位置情報取得手段と、
各フレームの前記背景画像を、前記車両の上方から俯瞰する下向き姿勢の仮想的なカメラ視点の射影変換画像に変換する射影変換手段と、
前記位置情報取得手段の前記車両の位置情報に基づいて、前記各フレームの障害物を含まない射影変換画像をつなぎ合わせ、前記路面領域が連続する路面のデータベース画像を生成する生成手段と
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記生成手段は、
前記各フレームの射影変換画像の同じ路面領域における共通する画像部分を、障害物を含まない画像部分としてつなぎ合わせて前記データベース画像を生成する画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−113339(P2011−113339A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269607(P2009−269607)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】