説明

画像形成装置および画像形成方法

【課題】 エネルギー消費が少なく、小型で、かつ高精度な画像を形成可能な画像形成装置およびそれを用いた画像形成方法を提供する。
【解決手段】 画像形成装置1は、インク像形成手段2と、照射手段3と、中間転写手段4と、転写手段5と、記録媒体供給手段6と、排出手段7とを含む。画像を形成するとき、外部機器から伝達される画像情報に応じて、照射手段3がインク像形成手段2に光を照射して静電潜像を形成し、インク像形成手段2は得られた静電潜像にインクを供給してインク像を形成する。得られたインク像は、中間転写手段4に中間転写された後、転写手段5によって記録媒体に転写される。記録媒体は、記録媒体供給手段6によって転写手段5に供給され、インク像が転写された後、排出手段7によって画像形成装置1の外へ排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置および画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、複写機、ファクシミリ、プリンターなどの画像形成装置は、インクジェット方式または電子写真方式を用いたものが主流である。
【0003】
インクジェット方式では、熱または振動によってインクカートリッジのインクヘッドから、インクを記録媒体に向けて噴射して、画像を形成する。装置構成は単純であり、小型化が可能であるが、印字速度が遅い。
【0004】
電子写真方式では、いわゆる乾式現像方式を用いているものが主流であり、粉体トナーを用いて画像形成を行っている。近年、高精細かつ高画質の画像を形成することが可能な画像形成装置が望まれているのに伴い、乾式現像方式で用いられる粉体トナーの粒径はより微小になっている。粒径の小さいトナーは、画像形成装置外へのトナー飛散によって周囲を汚染する。また転写処理後に画像形成装置内に浮遊して残留しているトナーの除去が困難である。
【0005】
またトナーの粒径が小さくなり過ぎると、それを取り扱う人が大気中に浮遊するトナーを吸い込んでしまった場合、肺に吸入されたトナーが代謝されずに塵肺などの疾病になる可能性があり、小粒径トナーを用いた乾式現像方式には限界がある。
【0006】
そこで湿式現像方式が検討されている。湿式現像方式では、トナーは溶剤に分散して使用されるため、乾式現像方式で発生するような問題は生じず、微小トナーとしての取り扱いが容易である。
【0007】
電子写真方式では、印字速度は速いが、トナーを記録媒体に定着するためにトナーを加熱して溶融しなければならず、加熱・溶融手段を備える装置の構成が大きくなり、小型化が困難である。またトナーを溶融させるために大きなエネルギーを必要とする。
【0008】
また印刷分野で利用されている印刷機も湿式現像方式を用いている。しかし従来の印刷機においては、原稿の版をおこす必要があり、電子写真のようなオンデマンド印刷には不向きであった。
【0009】
このような背景から、小型で、印字速度が速く、人体または環境に及ぼす影響が少なく、消費エネルギーが少ないと同時にオンデマンド印刷も可能である画像形成装置が望まれている。
【0010】
従来技術では、湿式現像方式を用いて電子写真方式画像形成を行っている。画像形成に際して、潜像担持体を帯電・露光して静電潜像を形成し、潜像担持体上の静電潜像を、少なくとも誘電体層と導電体層とを有する中間転写媒体上に静電転写し、静電転写された中間転写媒体上の静電潜像を湿式現像により可視像化し、中間転写媒体上の可視像を加熱加圧することによって非静電気的に最終記録体へ転写している(たとえば特許文献1参照)。
【0011】
【特許文献1】特開平5−11566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来技術では、電子写真方式を用いているため、潜像担持体を帯電する帯電手段に高電圧を印加する必要があり、装置が複雑で大掛かりになる。たとえばコロナ放電器等によって潜像担持体を帯電させる場合、大きなエネルギーを消費する。また高電圧によって潜像担持体が劣化し、帯電不良を起こす可能性もある。帯電不良を起こすと、高精度な画像を得ることが困難になる。
【0013】
またトナーを記録媒体に定着するためにトナーを加熱して溶融する必要があり、その際にも大きなエネルギーを消費する。
【0014】
本発明の目的は、消費エネルギーが少なく、小型で、かつ高精度な画像を形成可能な画像形成装置およびそれを用いた画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、記録媒体に画像を形成する画像形成装置であって、
前記画像の静電潜像にインク粒子を付着させてインク像を形成する、複数のインク像形成手段と、
1または複数の前記インク像形成手段に形成された前記インク像が中間転写される中間転写手段と、
前記中間転写手段に転写された前記インク像を前記記録媒体に転写する転写手段と、
前記転写手段に前記記録媒体を送給する記録媒体供給手段と、
前記インク像が転写された前記記録媒体を画像形成装置の外部に排出する排出手段とを備え、
前記インク像形成手段は、
前記インク粒子を溶媒中に分散させてなるインクを収容するインク収容手段と、
光触媒を含んで構成される感光層を有し、前記インクに浸って、回転可能に配置されるインク粒子担持手段と、
前記インク粒子担持手段に光を照射して、前記光触媒を活性化させて、前記静電潜像を前記インク粒子の帯電極性と逆極性に帯電させる照射手段とを含むことを特徴とする画像形成装置である。
【0016】
また本発明は、前記インク粒子担持手段は、前記インクに一部が浸って配置されていることを特徴とする。
【0017】
また本発明は、前記インク収容手段に収容されていて、前記インクに浸って配置され、前記インク粒子担持手段に対向して配置されている対向電極と、
前記対向電極に、前記インク粒子の帯電極性と同極性の印加電圧を印加する印加手段とを備えることを特徴とする。
【0018】
また本発明は、前記対向電極の形状は、スプリング状であることを特徴とする。
また本発明は、前記インク粒子担持手段に形成された前記インク像が、前記中間転写手段に中間転写される中間転写位置が、前記インク粒子担持手段の中心を通り水平な平面よりも前記インクの液面側にあることを特徴とする。
【0019】
また本発明は、前記インク粒子担持手段は、前記感光層の外側にオーバーコート層を有することを特徴とする。
【0020】
また本発明は、前記光はレーザ光であることを特徴とする。
また本発明は、前記インク粒子担持手段をクリーニングするクリーニング手段を備えることを特徴とする。
【0021】
また本発明は、前記インク粒子担持手段が円筒形状であることを特徴とする。
また本発明は、前記インク粒子担持手段がベルト形状であることを特徴とする。
【0022】
また本発明は、前記光触媒は、酸化チタンであることを特徴とする。
また本発明は、前記酸化チタンはルチル型酸化チタンであることを特徴とする。
【0023】
また本発明は、前記酸化チタンの体積平均粒径が10nm以上30nm以下であることを特徴とする。
【0024】
また本発明は、前記インク粒子の帯電極性とは逆極性の印加電圧を前記中間転写手段に印加することによって、前記インク像を前記インク粒子担持手段から前記中間転写手段に中間転写することを特徴とする。
【0025】
また本発明は、前記インクは、ブラックインク、シアンインク、マゼンタインクおよびイエローインクであり、
ブラックインクを収容するブラックインク収容手段に収容可能なインク容量が、シアンインクを収容するシアンインク収容手段、マゼンタインクを収容するマゼンタインク収容手段およびイエローインクを収容するイエローインク収容手段に収容可能な、それぞれのインク容量よりも多いことを特徴とする。
【0026】
また本発明は、前記ブラックインクによるブラックインク像が最後に中間転写されることを特徴とする。
【0027】
また本発明は、前記ブラックインクによるインク像を形成するブラックインク像形成手段が、前記シアンインクによるインク像を形成するシアンインク像形成手段、前記マゼンタインクによるインク像を形成するマゼンタインク像形成手段および前記イエローインクによるインク像を形成するイエローインク像形成手段よりも上部に配置されていることを特徴とする。
【0028】
また本発明は、記録媒体に画像を形成する画像形成方法であって、
インク粒子を溶媒中に分散させてなるインクを複数のインク収容手段に収容し、
光触媒を含んで構成される感光層を有し、前記インクに浸って、回転可能に配置されるインク粒子担持手段に光を照射して、前記光触媒を活性化させて、前記画像の静電潜像を前記インク粒子の帯電極性と逆極性に帯電させ、
前記静電潜像に前記インク粒子を付着させてインク像を形成し、
1または複数の前記インク粒子担持手段に形成された前記インク像を中間転写手段に中間転写し、
前記中間転写手段に中間転写された前記インク像を記録媒体供給手段によって送給される前記記録媒体に転写し、
前記インク像が転写された前記記録媒体を画像形成装置の外部に排出することを特徴とする画像形成方法である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、記録媒体に画像を形成する画像形成装置は、画像の静電潜像にインク粒子を付着させてインク像を形成する、複数のインク像形成手段と、1または複数のインク像形成手段に形成されたインク像が中間転写される中間転写手段と、中間転写手段に転写されたインク像を記録媒体に転写する転写手段と、転写手段に記録媒体を送給する記録媒体供給手段と、インク像が転写された記録媒体を画像形成装置の外部に排出する排出手段とを備え、インク像形成手段は、インク粒子を溶媒中に分散させてなるインクを収容するインク収容手段と、光触媒を含んで構成される感光層を有し、インクに浸って、回転可能に配置されるインク粒子担持手段と、インク粒子担持手段に光を照射して、光触媒を活性化させて、静電潜像をインク粒子の帯電極性と逆極性に帯電させる照射手段とを含む。
【0030】
インク粒子担持手段は、光触媒を含んで構成される感光層を有しているので、照射手段によって光触媒に光が照射されると、価電子帯の電子が励起されて、価電子帯に正孔が生成され、伝導帯に電子が生成され、インク粒子担持手段の感光層の表面が帯電される。また液体インク中に分散しているインク粒子によって画像を形成する湿式現像方式によって画像形成を行っているので、乾式現像方式による場合と比較して、インク粒子担持手段の感光層の表面の帯電強度が弱くても、インク粒子をインク粒子担持手段表面に付着させることが可能である。したがって、帯電させるためのエネルギーが不要になるので、消費エネルギーを抑えることができる。帯電手段を設ける必要がなくなるので、画像形成装置の小型化が可能になる。また帯電手段を必要としないので、インク粒子担持手段の劣化が抑えられ、高精度な画像を形成可能な画像形成装置を提供することができる。
【0031】
またインクを用いているので、記録媒体にインク像を転写する際に、トナーのように加熱溶融する必要がない。これによってエネルギーの消費を抑えることができる。
【0032】
また本発明によれば、インク粒子担持手段は、インクに一部が浸って配置されていることが好ましい。インク粒子担持手段は、インクに浸っていない領域で、照射手段によって画像の静電潜像がインク粒子の帯電極性と逆極性に帯電させられたあと、インクに浸って静電潜像にインク粒子を付着させてインク像を形成する。その後、インクに浸っていない領域へ移り、インク像を中間転写手段に転写する。これらのインク像形成過程において、たとえばインク粒子担持手段が円筒形状の場合、回転するだけで足り、インク粒子担持手段の移動距離を最小限に抑えることが可能になる。
【0033】
また本発明によれば、インク収容手段に収容されていて、インクに浸って配置され、インク粒子担持手段に対向して配置されている対向電極と、対向電極に、インク粒子の帯電極性と同極性の印加電圧を印加する印加手段とを備えることが好ましい。
【0034】
インク粒子と逆極性に帯電しているインク粒子担持手段と、インク粒子と同極性に帯電している対向電極との間には、電界が形成される。インク内のインク粒子は、対向電極とは同極性で、インク粒子担持手段とは逆極性に帯電しているので、インク粒子担持手段に引き寄せられる。対向電極からインク粒子担持手段に向かうインク流が形成され、インク粒子が継続してインク粒子担持手段に供給されるので、安定したインク像をインク粒子担持手段上に形成することが可能になる。
【0035】
また本発明によれば、対向電極の形状は、スプリング状であることが好ましい。スプリング状電極によれば、インク粒子担持手段との間に強い電界を形成することが可能である。さらにスプリング状電極の隙間からインク粒子が継続してインク粒子担持手段に供給されるので、安定したインク像をインク粒子担持手段上に形成することが可能になる。
【0036】
また本発明によれば、インク粒子担持手段に形成されたインク像が、中間転写手段に中間転写される中間転写位置が、インク粒子担持手段の中心を通り水平な平面よりもインクの液面側にあることが好ましい。
【0037】
インク像形成後に、インク像が速やかに中間転写手段へ中間転写されることによって、インク粒子担持手段上でインク像を形成するインク粒子が垂れることを防ぐので、インク粒子担持手段が汚染されることを防ぐ。またインク像が高精度になることによって、高精度な画像を形成することが可能になる。
【0038】
また本発明によれば、インク粒子担持手段は、感光層の外側にオーバーコート層を有することが好ましい。オーバーコート層は、インクに含まれる溶媒に対して耐性が強いため、感光層の劣化を抑えることができる。
【0039】
また本発明によれば、光はレーザ光であることが好ましい。レーザ光による書き込み速度が速いため、高速印刷が可能になる。また高解像度な静電潜像を形成することが可能である。また装置の小型化を図ることができる。
【0040】
また本発明によれば、インク粒子担持手段をクリーニングするクリーニング手段を備えることが好ましい。中間転写手段に中間転写した後に、インク粒子担持手段上に残ったインク粒子をクリーニングすることによって、照射手段による帯電安定性が向上する。また残ったインク粒子を回収して再利用するができるので、インクの使用量を抑えることができる。
【0041】
また本発明によればインク粒子担持手段が円筒形状であることが好ましい。円筒形状にすることによって、インク粒子担持手段を回転させるための回転機構が単純化され、安定して回転させることが可能になる。
【0042】
また本発明によれば、インク粒子担持手段がベルト形状であることが好ましい。楕円形状等の様々な形状に変形できるため、省スペース化が可能になり、装置設計に空間的な余裕が生まれる。
【0043】
また本発明によれば、光触媒は、酸化チタンであることが好ましい。酸化チタンには、顕著な光触媒活性効果が見られるので、より小さなエネルギーで活性化され、インク粒子担持手段上に静電潜像を容易に形成することができる。
【0044】
また本発明によれば、酸化チタンはルチル型酸化チタンであることが好ましい。アナターゼ型またはブルッカイト型と比較して、物理的、化学的に安定であるため、光触媒として使いやすい。
【0045】
また本発明によれば、酸化チタンの体積平均粒径が10nm以上30nm以下であることが好ましい。酸化チタンの体積平均粒径が30nmを超えると帯電性を確保できなくなる。また10nm未満では、焼成法によっても湿式法によってもこのような酸化チタンを製造することは困難であり、製造コストが高くなる。
【0046】
また本発明によれば、インク粒子の帯電極性とは逆極性の印加電圧を中間転写手段に印加することによって、インク粒子をインク粒子担持手段から中間転写手段に中間転写することが好ましい。
【0047】
中間転写手段にインク粒子の帯電極性とは逆極性の印加電圧を印加することによって、中間転写がより容易になり、インク像が安定して中間転写手段に供給される。
【0048】
また本発明によれば、インクは、ブラックインク、シアンインク、マゼンタインクおよびイエローインクであり、ブラックインクを収容するブラックインク収容手段に収容可能なインク容量が、シアンインクを収容するシアンインク収容手段、マゼンタインクを収容するマゼンタインク収容手段およびイエローインクを収容するイエローインク収容手段に収容可能な、それぞれのインク容量よりも多い。ブラックインクは、使用量が多いので、インク容量を多くすることによって、交換時期の間隔を長くすることが可能になる。
【0049】
また本発明によれば、ブラックインクによるブラックインク像が最後に中間転写される。最後にブラックインクによるインク像が中間転写されることによって、色の重ね合わせが良好となり、良好な画像を得ることができる。
【0050】
また本発明によれば、ブラックインクによるインク像を形成するブラックインク像形成手段が、シアンインクによるインク像を形成するシアンインク像形成手段、マゼンタインクによるインク像を形成するマゼンタインク像形成手段およびイエローインクによるインク像を形成するイエローインク像形成手段よりも上部に配置されている。画像形成装置において鉛直方向最上部にブラックインク像形成手段が配置されているので、交換頻度の高いブラックインクについて、画像形成装置の上部からの交換が容易になり、交換時の作業効率が向上する。
【0051】
また本発明によれば、記録媒体に画像を形成する画像形成方法は、インク粒子を溶媒中に分散させてなるインクを複数のインク収容手段に収容し、光触媒を含んで構成される感光層を有し、インクに浸って、回転可能に配置されるインク粒子担持手段に光を照射して、光触媒を活性化させて、画像の静電潜像をインク粒子の帯電極性と逆極性に帯電させ、静電潜像にインク粒子を付着させてインク像を形成し、1または複数のインク粒子担持手段に形成されたインク像を中間転写手段に中間転写し、中間転写手段に中間転写されたインク像を記録媒体供給手段によって送給される記録媒体に転写し、インク像が転写された記録媒体を画像形成装置の外部に排出する。
【0052】
インク粒子担持手段は、光触媒を含んで構成される感光層を有しているので、照射手段によって光触媒に光が照射されると、価電子帯の電子が励起されて、価電子帯に正孔が生成され、伝導帯に電子が生成され、インク粒子担持手段の感光層の表面が帯電される。また液体インク中に分散しているインク粒子によって画像を形成する湿式現像方式によって画像形成を行っているので、乾式現像方式による場合と比較して、インク粒子担持手段の感光層の表面の帯電強度が弱くても、インク粒子をインク粒子担持手段表面に付着させることが可能である。したがって、帯電させるためのエネルギーが不要になるので、消費エネルギーを抑えることができる。帯電手段を設ける必要がなくなるので、画像形成装置の小型化が可能になる。また帯電手段を必要としないので、インク粒子担持手段の劣化が抑えられ、高精度な画像を形成可能な画像形成方法を提供することができる。
【0053】
またインクを用いているので、記録媒体にインク像を転写する際に、加熱溶融する必要がない。これによってエネルギーの消費を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
図1は、本発明の実施の第1形態である画像形成装置1の構成を模式的に示す断面図である。画像形成装置1は、図示しない外部機器から伝達される画像情報に応じて、記録媒体上にフルカラーの画像を形成する。外部機器には、画像情報の形成または取得が可能であり、かつ画像形成装置1に電気的に接続可能な電気・電子機器を使用でき、たとえば、コンピュータ、デジタルカメラ、テレビジョン受像機器、ビデオレコーダ、DVD(
Digital Versatile Disc)レコーダ、ブルーレイディスクレコーダ、ファクシミリ装置、携帯端末装置などが挙げられる。
【0055】
画像形成装置1は、インク像形成手段2と、照射手段3と、中間転写手段4と、転写手段5と、記録媒体供給手段6と、排出手段7とを含む。画像を形成するとき、外部機器から伝達される画像情報に応じて、照射手段3がインク像形成手段2に光を照射して静電潜像を形成し、インク像形成手段2は得られた静電潜像にインクを供給してインク像を形成する。得られたインク像は、中間転写手段4に中間転写された後、転写手段5によって記録媒体に転写される。記録媒体は、記録媒体供給手段6によって転写手段5に供給され、インク像が転写された後、排出手段7によって画像形成装置1の外へ排出される。
【0056】
インク像形成手段2を構成する各部材は、カラー画像情報に含まれるブラック(k)、シアン(c)、マゼンタ(m)およびイエロー(y)の各色の画像情報に対応するために、4つずつ設けられる。ここでは、各色に応じて4つずつ設けられる各部材は、各色を表すアルファベットを参照符号の末尾に付して区別し、総称する場合は参照符号のみで表す。
【0057】
図2は、インク像形成手段2および中間転写手段4の構成を簡略化して示す断面図である。インク像形成手段2は、感光体ドラム11と、対向電極12と、クリーニングユニット13と、インク収容手段14とを含む。感光体ドラム11と、対向電極12と、クリーニングユニット13とはインク収容手段14内に収容され、感光体ドラム11は、図示しない駆動手段により、軸線回りに回転駆動可能に支持され、矢符15の方向へ回転している。インク収容手段14内には、画像を形成するためのインク粒子17を含むインク16が収容されていて、感光体ドラム11は、インク16に一部が浸って配置されている。
【0058】
対向電極12は、インク16に浸って配置され、印加手段18によって、インク粒子17の帯電極性と同極性の印加電圧を印加されている。後述する照射手段3によって、感光体ドラム11の表面の静電潜像は、インク粒子17の帯電極性と逆極性に帯電される。
【0059】
図3は、感光体ドラム11の一部を示す断面図である。感光体ドラム11は、導電性基体21と、導電性基体21の表面に形成される感光層22と、さらに感光層22の外側にオーバーコート層23とを含む。感光層22は、光触媒24とバインダ25とを含んで構成されている。
【0060】
導電性基体21は種々の形状を採ることができ、たとえば、感光体ドラム11のような円筒形状のほかに、円柱形状、薄膜シート形状、ベルト形状などが挙げられる。これらの中でも円筒形状が好ましい。円筒形状にすることによって、感光体ドラム11を回転させるための回転機構が単純化され、安定して回転させることが可能になる。またベルト形状であってもよい。楕円形状等の様々な形状に変形できるため、省スペース化が可能になり、装置設計に空間的な余裕が生まれる。導電性基体21は導電性材料によって形成される。
【0061】
また円筒形状をとる場合、半径は25mm以上35mm以下、幅方向長さは300mm以上340mm以下であることが好ましい。
【0062】
導電性基体21の導電性材料としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、アルミニウム、銅、真鍮、亜鉛、ニッケル、ステンレス鋼、クロム、モリブデン、バナジウム、インジウム、チタン、金、白金などの金属、これらの2種以上の合金、合成樹脂フィルム、金属フィルム、紙などのフィルム状基体にアルミニウム、アルミニウム合金、酸化錫、金、酸化インジウムなどの1種または2種以上からなる導電性層を形成してなる導電性フィルム、導電性粒子または導電性ポリマーを含有する樹脂組成物などが挙げられる。なお、導電性フィルムに用いられるフィルム状基体としては、合成樹脂フィルムが好ましく、ポリエステルフィルムが特に好ましい。また、導電性フィルムにおける導電性層の形成方法としては、蒸着、塗布などが好ましい。
【0063】
感光層22は、光触媒24およびそれを保持するバインダ25を含み、導電性基体21上に設けられており、さらにその感光層22の上にオーバーコート層23が設けられている。
【0064】
感光層22は、画像形成に先立ち、初期化される。この初期化は感光層22の表面が均一化されることにより行われる。感光層22の静電潜像に光を照射すると、光を照射された部分と照射されていない部分とで電位差が生じる。このような挙動の化学変化のメカニズムは明らかではないが、光触媒24が光照射により励起されると正孔分離が起こることによると考えられている。
【0065】
光触媒24は、そのような作用をするものであれば任意のものを用いることができるが、具体的にはTiO、SnO、WO、V、Nb、Ta、Fe、SrTiO、CdS、ZnS、PbS、CdSe、GaP、およびその他が挙げられる。また、必要に応じて、複数の光触媒を混合して用いてもよい。このように光触媒24は任意のものを用いることができるが、これらのうち、その感度の高さと、環境または人体への影響が小さいことからTiO2が特に好ましい。酸化チタンには、顕著な光触媒活性効果が見られるので、より小さなエネルギーで活性化され、インク粒子担持手段上に静電潜像を容易に形成することができる。
【0066】
TiOは、ルチル型、アナターゼ型などが知られていて、ルチル型であることが好ましい。ルチル型は、アナターゼ型またはブルッカイト型と比較して、物理的、化学的に安定であるため、光触媒として使いやすい。
【0067】
また、光触媒として用いるTiOの体積平均粒径は、光触媒の活性を高くするという観点から、透過型電子顕微鏡観察によって測定した体積平均粒径が10nm以上30nm以下であることが好ましい。酸化チタンの体積平均粒径が30nmを超えると帯電性を確保できなくなる。また10nm未満では、焼成法によっても湿式法によってもこのような酸化チタンを製造することは困難であり、製造コストが高くなる。
【0068】
光触媒24を導電性基体21上に保持するバインダ25のバインダ材料として、無機材料であれば、金属酸化物、炭化物、窒化物セラミックスなどを用いることができる。金属酸化物としては、たとえばSiO、Al、In、MgO、ZrO、Y、SnO、Cr、Laなどを用いることができる。炭化物としては、たとえばSiC、WC、またはTiCなどを用いることができる。窒化物セラミックスとしては、たとえばC、Si、BN、TiNなどを用いることができる。
【0069】
有機材料であれば、たとえば、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、ナイロン樹脂、シリコン樹脂、シロキサン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ビニルアルコール樹脂、ポリアクリレート樹脂、ブチラール樹脂、ポビニルアセタール樹脂、酢酸ビニル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリスルホン樹脂、アクリル樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、アルキド樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、スチレン−無水マレイン酸共重合体樹脂、ウレタン樹脂、およびその他のポリマー、を用いることができる。
【0070】
これらのバインダ材料は、任意に選ぶことができ、必要に応じて、これらのうちの複数のバインダ材料を任意の割合で混合して用いることもできる。しかし、感光層22のバインダ材料として有機材料を選んだ場合、感光層22に光が照射された部分のバインダ材料が化学変化を起こすこともある。そうであっても、光照射された感光層22から同じ画像を繰り返し得る場合、光照射された部分が所望の電位を有すれば、画像形成の目的は達成される。しかし、複写機のように、毎回異なった画像を形成させる場合には、インク画像を画像記録媒体に転写したあとの感光体は、感光層22が復元されるべきである。従って、このような用途を意図している場合には、感光層22のバインダ材料として、光触媒24による化学変化が起こりにくいものが好ましい。特に好ましいのは金属酸化物、炭化物、または窒化物セラミックスであり、これらをバインダ材料として用いた場合には、初期化と画像形成とを繰り返す場合においても、感光層22の長寿命化が達成される。
【0071】
導電性基体21と感光層22との間には、下引き層を設けてもよい。下引き層を設けることによって、導電性基体21の表面に存在する傷および凹凸を被覆して、感光層22表面を平滑化する、繰り返し使用時における感光層22の帯電性の劣化を防止する、低温、低湿環境下における感光層22の帯電特性を向上させるといった利点が得られる。
【0072】
下引層としては、各種樹脂材料からなる樹脂層、アルマイト層などが挙げられる。樹脂層を形成する樹脂材料としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアリレート樹脂、シリコン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド樹脂などの樹脂、これらの樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エチルセルロースなどを挙げることができる。
【0073】
また下引層は、金属酸化物などの粒子を含有してもよい。これらの粒子を含有させることによって、下引層の体積抵抗値を調節し、導電性基体21から感光層22に対する電荷の注入をさらに抑制することができるとともに、温度、湿度などの変化があっても電子写真感光体の電気特性を維持することができる。金属酸化物粒子としては、たとえば、酸化チタン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化スズなどの粒子を挙げることができる。下引層に金属酸化物などの粒子を含有させる場合、たとえば、前述の樹脂が溶解した樹脂溶液中に、これらの粒子を分散させて下引層形成用塗布液を調製し、この塗布液を導電性基体21上に塗布することによって下引層を形成することができる。
【0074】
また最上層に、感光層22を保護するオーバーコート層23を設けた耐久性の大きい三層構造の積層感光体であってもよい。オーバーコート層23は、インクに含まれる溶媒に対して耐性が強いため、感光層の劣化を抑えることができる。
【0075】
オーバーコート層23としては、たとえば硬化型樹脂、無機フィラー含有樹脂、無機酸化物などからなる層が用いられる。オーバーコート層23に使用される樹脂としてはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルベンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂などの樹脂が挙げられる。
【0076】
オーバーコート層23に添加されるフィラーとしては、たとえば、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、窒化ケイ素、酸化カルシウム、硫酸バリウム、インジウム−スズ酸化物(ITO)、シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、カーボンブラック、フッ素系樹脂微粉末、ポリシロキサン系樹脂微粉末、高分子電荷輸送材料微粉末などが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのフィラーは、分散性向上、表面性改質などの理由から無機物、有機物で表面処理されてもよい。このような表面処理のうち撥水性処理したフィラーとしては、シランカップリング剤で処理したもの、フッ素系シランカップリング剤処理したもの、高級脂肪酸で処理したもの、高分子材料などと共重合処理させたものなどが挙げられる。また無機物で処理されたものとしては、たとえば、フィラー表面をアルミナ、ジルコニア、酸化スズ、シリカなどで処理したものなどが挙げられる。
【0077】
感光体ドラム11は、光触媒24を含んで構成される感光層22を有しているので、照射手段3によって光触媒24に光が照射されると、価電子帯の電子が励起されて、価電子帯に正孔が生成され、伝導帯に電子が生成され、感光体ドラム11の感光層22の表面が帯電される。また液体インク16中に分散しているインク粒子17によって画像を形成する湿式現像方式によって画像形成を行っているので、乾式現像方式による場合と比較して、感光体ドラム11の感光層22の表面の帯電強度が弱くても、インク粒子17を感光体ドラム11表面に付着させることが可能である。したがって、帯電させるためのエネルギーが不要になるので、消費エネルギーを抑えることができる。帯電手段を設ける必要がなくなるので、画像形成装置1の小型化が可能になる。また帯電手段を必要としないので、感光体ドラム11の劣化が抑えられ、高精度な画像を形成可能な画像形成装置1を提供することができる。
【0078】
またインク16を用いているので、記録媒体にインク像を転写する際に、トナーのように加熱溶融する必要がない。これによってエネルギーの消費を抑えることができる。
【0079】
インク収容手段14は容器状部材であり、その内部空間にインク16を収容し、かつ撹拌翼などのスクリュー部材を収容して回転自在に支持する。撹拌翼などのスクリュー部材は、インク16を攪拌して、インク流を発生させている。
【0080】
ブラックインクを収容するブラックインク収容手段14kに収容可能なインク容量が、シアンインクを収容するシアンインク収容手段14c、マゼンタインクを収容するマゼンタインク収容手段14mおよびイエローインクを収容するイエローインク収容手段14yに収容可能なインク容量よりも多い。ブラックインクは、使用量が多いので、インク容量を多くすることによって、交換時期の間隔を長くすることが可能になる。
【0081】
また、ブラックインクによるインク像を形成するブラックインク像形成手段2kが、シアンインクによるインク像を形成するシアンインク像形成手段2c、マゼンタインクによるインク像を形成するマゼンタインク像形成手段2mおよびイエローインクによるインク像を形成するイエローインク像形成手段2yよりも上部に配置されている。画像形成装置1において鉛直方向最上部にブラックインク像形成手段2kが配置されているので、交換頻度の高いブラックインクについて、画像形成装置1の上部からの交換が容易になり、交換時の作業効率が向上する。
【0082】
インク16に感光体ドラム11の一部が浸ることによって、静電潜像にインク粒子17が付着して、感光体ドラム11上にインク像が形成される。インク像の形成に際しては、感光体ドラム11表面の静電潜像は、インク粒子17の帯電電位とは逆極性に帯電しているので、インク収容手段14内の感光体ドラム11付近のインク粒子17が、静電潜像に円滑に供給され、付着する。
【0083】
感光体ドラム11は、インクに浸っていない領域で、照射手段3によって画像の静電潜像がインク粒子17の帯電極性と逆極性に帯電させられたあと、インク16に浸って静電潜像にインク粒子17を付着させてインク像を形成する。その後、インク16に浸っていない領域へ移り、インク像を中間転写手段4に転写する。これらのインク像形成過程において、たとえば感光体ドラム11が円筒形状の場合、回転するだけで足り、感光体ドラム11の移動距離を最小限に抑えることが可能になる。
【0084】
図4は、インク粒子17の帯電極性を説明するための模式図である。インク粒子17の周りを固定層81が、固定層81の周りを拡散層82が覆っている。図4では、インク中に分散しているインク粒子17は、負に帯電している。電気的に中性を保とうとしてインク粒子17表面のインク中には、インク粒子17とは逆極性のイオンが集まってくる。そのようなイオン群が、インク粒子17表面を取り巻いて球殻状に集まると、インク粒子17の表層を、逆極性のイオンからなる層が取り巻くことになる。このような層を電気二重層または固定層という。
【0085】
インク中のイオンの分布は熱運動のために攪乱されているので、インク粒子17と反対荷電(正)のイオン濃度は、インク粒子17表面近傍では高く、インク粒子17表面から遠ざかるにつれて次第に低下していく。インク粒子17と同荷電(負)のイオン濃度は、逆の傾向を示す。インク粒子17から充分に離れた領域では、正のイオンの荷電と負のイオンの荷電が相殺して、電気的中性が保たれている。このように液体中において現実に見られるものを、拡散電気二重層または拡散層という。
【0086】
本発明で用いられるインクとしては特に制限されず、顔料、水分散性樹脂および有機溶剤を必須成分とし、残部が水である組成物である。以下、インクの各成分について説明する。
【0087】
〔顔料〕
顔料としては公知の無機顔料および有機顔料を使用できる。無機顔料の具体例としては、たとえば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラックなどのカーボンブラックである黒色系顔料などが挙げられる。有機顔料の具体例をカラーインデックスナンバーで示せば、たとえば、C.I.ピグメントブルー1、2、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17:1、56、60、63などの青色系顔料、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、7、17、22、23、31、38、48:2(Ba)、48:2(Ca)、48:3(Sr)、48:4(Mn)、49:1、52:2、53:1、57:1、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101、104、105、106、108、112、114、122、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、185、190、193、209、219などの赤色系顔料、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42、53、55、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、128、138、153などの黄色系顔料、C.I.ピグメントブラック1(アニリンブラック)などの黒色系顔料、C.I.ピグメントオレンジ1、2、5、7、13、14、15、16、34、36、38、C.I.ピグメントバイオレット1、2、19、32、C.I.ピグメントグリーン1、4、36、C.I.ピグメントブラウン3、5、25、26などが挙げられる。
【0088】
また顔料は、顔料の表面に親水基を導入することによって水中での自己分散性が付与された自己分散顔料であってもよい。親水基としては特に制限されず、たとえば、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン基、アンモニウム基などが挙げられる。また親水基は、1種または2種以上が顔料の表面に導入される。顔料の表面に導入される親水基は、適当なカチオンまたはアニオンと結合して、塩を形成していてもよい。
【0089】
顔料表面に親水性官能基を導入するには、公知の方法を利用できる。たとえば、酸化処理、スルホン化処理、芳香族アゾ化合物、アルキルアゾ化合物などを顔料と反応させ、フェニル基、アルキル基などを連結基として親水性官能基を顔料表面に導入する方法、シラン化合物などのカップリング剤による処理、ポリマーグラフト化処理、プラズマ処理などが挙げられる。これらの方法の2種以上を組み合わせてもよい。
【0090】
市販の自己分散型顔料も使用できる。その具体例としては、たとえば、Cab−o−jet 200、Cab−o−jet 300(いずれも商品名、キャボット社製)、BONJET BLACK CW−1、Microjet Black CW−1(いずれも商品名、オリエント化学工業株式会社製)などが挙げられる。
【0091】
顔料は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
顔料の含有量は特に制限されず、顔料自体の分散比重および嵩密度、樹脂の種類および含有量、インクに要求されるインク特性、得ようとする記録画像に要求される色目、濃度などに応じて広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは水性顔料インク全量の1〜20重量%である。1重量%を著しく下回ると、記録画像の画像濃度が不充分になる可能性がある。一方20重量%を大幅に超えると、水性顔料インクが構造粘性(非ニュートン粘性)を示すようになり、インクの流動性が低下し、形成画像にむらが発生するおそれがある。
【0092】
〔水分散性樹脂〕
水分散性樹脂は、たとえば、バインダとして使用される。自己分散型顔料と水分散性樹脂との合計量である固形分含有量を上記特定の範囲に保ちながら、水分散性樹脂の自己分散型顔料に対する配合量を上記特定の範囲から選択することによって、記録媒体に対する浸透性(乾燥性)に優れ、記録媒体が普通紙であっても、色滲みがなく、高い光学濃度を有する記録画像を形成することのできるインクが得られる。
【0093】
水分散性樹脂に代えて水溶性樹脂を用いる場合には、上記特定の含有割合に準じても、色滲み、光学濃度の低下などを避けることができない。
【0094】
水分散性樹脂としては公知のものを使用でき、たとえば、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、マレイン酸樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリウレタン樹脂などを挙げることができる。これらの中でも、ポリエステル樹脂、スチレン−アクリル樹脂などが好ましい。
【0095】
水分散性樹脂は、公知の方法に従って、エマルジョン化して用いてもよい。
また、市販の水分散性樹脂のエマルジョンを用いてもよい。市販品としては、たとえば、バイロナール(水分散性ポリエステル樹脂エマルジョン、商品名、東洋紡績株式会社製)、ジョンクリル(分散性スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、商品名、水ジョンソンポリマー社製)、マイクロジェル(水分散性スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、商品名、日本ペイント株式会社製)、ボンコート(水分散性スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、商品名、大日本インキ化学工業株式会社製)などが挙げられる。
水分散性樹脂は、1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
【0096】
〔有機溶剤〕
有機溶剤は、たとえば、インクの保存安定性、記録媒体に対する浸透性などを調整するために用いられる。有機溶剤としては、水溶性有機溶剤が好ましい。水溶性有機溶剤としては公知のものを使用でき、たとえば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオールなどの1,2−アルカンジオール、1,6−へキサンジオール、グリセリン、1,2,6−へキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ぺトリオールなどの多価アルコ−ル類、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコールなどの一価アルコール類、トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル、テトラエチレングリコール−n−ブチルエーテル等のグリコールエーテル類、ジプロピレングリコール−n−プロピレンエーテル、ジエチレングリコール−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル、テトラエチレングリコール−n−ブチルエーテル、プロピレングリコール−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテルなどのアルキレングリコールアルキルエーテル類、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、蛛|カプロラクタムなどの含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどのアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール、チオジグリセロール、エチレン尿素、尿素などの含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン、縺|ブチロラクトンなどが挙げられる。
有機溶剤は、1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
【0097】
〔水〕
水の含有量は、通常は、顔料、水分散性樹脂および有機溶剤を所定量ずつ用いたあとの残部とすればよい。しかしながら、インクの保存安定性などを考慮すると、水の含有量は、好ましくはインク全量の20重量%以上である。
【0098】
〔界面活性剤〕
インクは、その好ましい特性を損なわない範囲で、界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤は、たとえば、インクの表面張力を調整したり、顔料の分散を補助したり、有機溶剤による記録媒体への浸透効果を補助したりする。
【0099】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤などが好ましく、ノニオン界面活性剤が特に好ましい。ノニオン界面活性剤としては、たとえば、ポリオキシエチレン系界面活性剤、ポリオキシプロピレン系界面活性剤、ポリオキシ(エチレン−プロピレン)系ノニオン界面活性剤、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどのエーテル系、ポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレートなどのエステル系、その他フッ素アルキルエステル、パーフルオロアルキルカルボン酸塩などの含フッ素系界面活性剤などが挙げられる。界面活性剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。界面活性剤の含有量は特に制限されない。しかしながら、通常は、インク全量の0.01〜3重量%である。
【0100】
〔その他のインク成分〕
インクは、その好ましい特性を損なわない範囲で、従来から用いられている添加剤の1種または2種以上を配合することができる。添加剤としては、たとえば、防腐防黴剤、pH調整剤、キレート試薬、防錆剤などが挙げられる。防腐防黴剤としては、たとえば、プロキセル(商品名)、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウムなどが挙げられる。pH調整剤としては、調合されるインクに悪影響を及ぼさずにpHを7以上に調整できるものであれば、任意の物質を使用することができ、たとえば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物、第4級ホスホニウム水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩などが挙げられる。キレート試楽としては、たとえば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウムなどが挙げられる。防錆剤としては、たとえば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニイウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライトなどが挙げられる。
【0101】
さらにインクは、その好ましい特性を損なわない範囲で、水溶性紫外線吸収剤、水溶性赤外線吸収剤、溶解助剤、酸化防止剤、消泡剤、粘度調整剤、殺菌剤などを含んでいてもよい。
【0102】
インクは、たとえば、自己分散型顔料、水分散性樹脂および有機溶剤の所定量、ならびに必要に応じてその他の添加剤などの適量を用い、これに水を加えて全量を100重量%に調整し、各成分を水に分散または混合させることによって製造できる。分散は、通常の分散機を用いて行われる。分散機には、たとえば、ディスパ、サンドミル、ホモジナイザ、ボールミル、ビーズミル、ペイントシェーカ、超音波分散機などが含まれる。また混合は、攪拌用の羽根を備えている攪拌機、高速の分散機、乳化機などによって行われる。
【0103】
この様にして得られるインクはそのまま使用できるけれども、その使用に先立ち、濾過を施してもよい。濾過は、たとえば、孔径0.3〜1.2・μmのフィルタを用い、常圧下、加圧下または減圧下に行われる。
【0104】
さらに静電潜像へのインク粒子17の供給を円滑にするために、インク収容手段14内には、対向電極12が設けられている。対向電極12は、インク16に浸って配置され、感光体ドラム11に対向して配置されている。対向電極12には、印加手段18によって、インク粒子17の帯電極性と同極性の印加電圧が印加される。インク粒子17は正に帯電しているので、対向電極12にも正の印加電圧が印加されている。印加電圧値を変更することによって、静電潜像に供給されるインク量を制御することができる。
【0105】
インク粒子17と逆極性に帯電している感光体ドラム11と、インク粒子17と同極性に帯電している対向電極12との間には、電界が形成される。インク16内のインク粒子17は、対向電極12とは同極性で、感光体ドラム11とは逆極性に帯電しているので、感光体ドラム11に引き寄せられる。対向電極12から感光体ドラム11に向かうインク流が形成され、インク粒子17が継続して感光体ドラム11に供給されるので、安定したインク像を感光体ドラム11上に形成することが可能になる。
【0106】
対向電極12の形状は、スプリング状であることが好ましい。スプリング状電極は、コイルばね状の電極であり、感光体ドラム11と対向する位置に感光体ドラム11の軸方向と平行に、インク16に浸るように設置される。スプリング状電極の伸張時の長さは、感光体ドラム11の軸方向の長さと同程度の300mm〜340mmである。またスプリング状電極の外径は5〜7mm、スプリング状電極の線の直径は0.5〜0.6mmであることが好ましい。スプリング状電極は、等間隔で複数設置されていてもよい。この間隔は、隣り合うスプリング状電極が接触しない程度に1〜2mm間隔をあけて設置する。スプリング状電極同士が接触すると、短絡してしまうからである。
【0107】
スプリング状の電極の材質は、ステンレス鋼(SUS)であることが好ましい。たとえばSUS304WPばね材を用いることが好ましい。スプリング状電極によれば、感光体ドラム11との間に強い電界を形成することが可能である。さらにスプリング状電極の隙間からインク粒子17が継続して感光体ドラム11に供給されるので、安定したインク像を感光体ドラム11上に形成することが可能になる。
【0108】
また対向電極12の形状は、グリッド状であることが好ましい。グリッド状電極は、網目上の電極であり、感光体ドラム11と対向する位置に感光体ドラム11の軸方向と平行に、インク16に浸るように設置される。グリッド状電極は、感光体ドラム11の周面に合わせて湾曲していることが好ましい。グリッド状電極の長手方向の長さは、感光体ドラム11の軸方向の長さと同程度の300mm〜340mmである。また幅方向の長さは、特に限定されないが、グリッド状電極がすべてインク16内に浸ることが可能な幅である。網目の粗さは、0.5〜2mmであることが好ましい。
【0109】
グリッド状電極の材質は、ステンレス鋼(SUS)であることが好ましい。たとえばSUS304を用いることが好ましい。
【0110】
スプリング状電極もグリッド状電極も、感光体ドラム11から0.8mm以上1.2mm以下の間隔をあけて設置されることが好ましい。0.8mm未満だと、感光体ドラム11と接触するおそれがあり、逆に1.2mmを超えると、十分な強さの電界を得ることができない。印加電圧は、100〜400Vであることが好ましい。
【0111】
インク収容手段14の互いに対向する2つの側面には開口部が形成され、インク収容手段14の互いに対向する2つの端面には、感光体ドラム11の回転軸が回転駆動可能に固定されている。一方の開口部から、感光体ドラム11に、後述する照射手段3によって光が照射され、感光体ドラム11上に静電潜像を形成する。またもう一方の開口部を介して感光体ドラム11の周面に対向する位置に、後述する中間転写手段4の中間転写ベルト41が回転駆動可能に設けられる。感光体ドラム11の周面と中間転写ベルト41の外周面との圧接部において、感光体ドラム11上のインク像が中間転写ベルト41に中間転写される。
【0112】
インク収容手段14に収容されているインク16が、開口部から漏れないように、開口部には、開口部と感光体ドラム11との隙間を減らすためのシーリング加工がなされていることが好ましい。
【0113】
感光体ドラム11に形成されたインク像が、中間転写ベルト41に中間転写される中間転写位置が、感光体ドラム11の中心を通り水平な平面よりもインク16の液面側にあることが好ましい。インク像形成後に、インク像が速やかに中間転写ベルト41へ中間転写されることによって、感光体ドラム11上でインク像を形成するインク粒子17が垂れることを防ぐので、感光体ドラム11が汚染されることを防ぐ。またインク像が高精度になることによって、高精度な画像を形成することが可能になる。
【0114】
クリーニングユニット13は、感光体ドラム11表面のインク像を中間転写ベルト41に中間転写した後に、感光体ドラム11の表面に残留するインク粒子を除去し、感光体ドラム11の表面を清浄化する。クリーニングユニット13には、たとえば、クリーニングブレードやスクレーパなどの板状部材が用いられる。本実施の形態ではクリーニングユニット13を設けるけれども、それに限定されず、クリーニングユニット13を設けなくてもよい。中間転写ベルト41に中間転写した後に、感光体ドラム11上に残ったインク粒子17をクリーニングすることによって、照射手段3による帯電安定性が向上する。また残ったインク粒子17を回収して再利用するができるので、インク16の使用量を抑えることができる。
【0115】
インク像形成手段2によれば、感光体ドラム11の表面に、照射手段3から画像情報に応じた信号光を照射して静電潜像を形成し、これにインク収容手段14に収容されたインク16中のインク粒子17を供給してインク像を形成し、このインク像を中間転写手段4に中間転写した後に、感光体ドラム11表面に残留するインクをクリーニングユニット13で除去する。この一連のインク像形成動作が繰り返し実行される。
【0116】
またインク収容手段14内には、図示しないインク補給手段によって、インク粒子のみまたはインク粒子を含むインクを補給することが可能である。インク粒子の残量は、センサなどによって検出し、インク補給手段に伝達される。
【0117】
照射手段3は、光源31から出射される各色情報の光が、感光体ドラム11の表面に照射される。光は、感光体ドラム11の回転方向まわりに、クリーニングユニット13、光照射位置、対向電極12、の順序で配置されるような光照射位置に照射される。光源31から出射される光は、画像情報を照射手段3内に設けられている分岐手段32が、k,c,m,yの各色情報の光に分岐し、感光体ドラム11表面に各色情報の光を照射し、その表面に静電潜像を形成する。照射手段3には、たとえば、光源31としてレーザ照射部を備え、分岐手段32として複数の反射ミラーを備えるレーザスキャニングユニットを使用できる。他にもLEDアレイ、液晶シャッタと光源とを適宜組み合わせたユニットを用いてもよい。レーザ光による書き込み速度が速いため、高速印刷が可能になる。また高解像度な静電潜像を形成することが可能である。また画像形成装置1の小型化を図ることができる。
【0118】
レーザ光の波長は、たとえば感光層が酸化チタンを含んで構成される場合、380nm以下であることが好ましい。酸化チタンは、380nm以下の短波長を吸収して、光触媒反応を起こすからである。なお、色素増感した酸化チタンを用いた場合は、より長波長のレーザ光を使用することもできる。
【0119】
中間転写手段4は、感光体ドラム11に隣接して配置され、中間転写ベルト41と、駆動ローラ42と、従動ローラ43と、中間転写ベルトクリーニングユニット44とを含む。中間転写ベルト41は、その外周面が感光体ドラム11の周面と接するように配置され、駆動ローラ42と従動ローラ43とによって張架されてループ状の移動経路を形成する無端ベルト状部材である。駆動ローラ42は、図示しない駆動手段によって、その軸線回りに回転駆動可能に設けられる。駆動ローラ42が回転駆動することによって、中間転写ベルト41が矢符46の方向に循環移動する。中間転写ベルト41が、感光体ドラム11に接しながら感光体ドラム11を通過する際、中間転写ベルト41に感光体ドラム11表面のインク粒子17の帯電極性とは逆極性の中間転写バイアスが印加され、感光体ドラム11の表面に形成されたインク像が中間転写ベルト41上へ中間転写される。
【0120】
中間転写ベルト41の外周面の材質は、水分を吸収せず、かつインク粒子が付着しやすいものを用いることが好ましい。たとえばエチレンプロピレンゴム(EPM,EPDM)であることが好ましい。
【0121】
中間転写ベルト41と感光体ドラム11との圧接部には、感光体ドラム11の幅全体に、1〜5kg程度の線圧がかかっている。中間転写ベルト41には、中間転写バイアスを印加する図示しない電源が接続され、中間転写バイアス値は、−2000〜0V程度である。この圧接部において感光体ドラム11表面のインク像を中間転写ベルト41に中間転写する。
【0122】
この中間転写バイアス値は、一定または可変いずれであっても構わない。中間転写バイアス値を変化させる場合、たとえば圧接部にインク像が存在するときは、−2000〜−1000V程度の中間転写バイアスをかけ、圧接部にインク像が存在しないとき、つまりレーザ書き込みの画像がないときは、中間転写ベルト41の汚れを防止するために、−1000〜0V程度とインク像転写時よりも絶対値が小さい値の中間転写バイアスをかけることが好ましい。中間転写ドラム41にインク粒子17の帯電極性とは逆極性の印加電圧を印加することによって、中間転写がより容易になり、インク像が安定して中間転写ドラム41に供給される。
【0123】
中間転写ベルトクリーニングユニット44は、中間転写ベルト41を介して従動ローラ43に対向し、中間転写ベルト41の外周面に接触するように設けられる。感光体ドラム11との接触によって中間転写ベルト41に付着するインクは、記録媒体の裏面を汚染する原因となるので、中間転写ベルトクリーニングユニット44が中間転写ベルト41外周面のインク粒子を除去し回収する。
【0124】
各色のインク像形成手段2は、中間転写ベルト41の移動方向下流から、ブラック(k)、シアン(c)、マゼンタ(m)およびイエロー(y)の順に配置され、各感光体ドラム11で形成される各色のインク像が、中間転写ベルト41上に順次重ねて転写されることによって、フルカラーインク像が形成される。ブラックインクによるブラックインク像が最後に中間転写される。最後にブラックインクによるインク像が中間転写されることによって、色の重ね合わせが良好となり、良好な画像を得ることができる。
【0125】
転写手段5は、転写ローラ51を含む。転写ローラ51は、中間転写ベルト41を介して駆動ローラ42に圧接し、図示しない駆動手段によって軸線回りに回転駆動可能に設けられる。転写ローラ51と駆動ローラ42との圧接部(以下「転写ニップ部」という場合がある)において、中間転写ベルト41に担持されて搬送されて来るインク像が、後述する記録媒体供給手段6から送給される記録媒体に転写される。転写手段5によれば、感光体ドラム11と中間転写ベルト41との圧接部において感光体ドラム11から中間転写ベルト41に転写されるインク像が、中間転写ベルト41の矢符46方向への回転駆動によって転写ニップ部に搬送され、そこで記録媒体に転写される。
【0126】
記録媒体供給手段6は、自動給紙トレイ61と、ピックアップローラ62と、搬送ローラ63とを含む。自動給紙トレイ61は画像形成装置1の鉛直方向下部に設けられ、記録媒体を貯留する容器状部材である。記録媒体には、普通紙、カラーコピー用紙、オーバーヘッドプロジェクタ用シート、葉書などがある。普通紙、カラーコピー用紙などの記録紙を分類すると、標準紙、平滑紙、ラフ紙がある。標準紙は、主に、一般に市販されるコピー用紙などである。平滑紙は主にコート紙などである。ラフ紙は主に再生紙などである。ピックアップローラ62は、自動給紙トレイ61に貯留される記録媒体を1枚ずつ取り出し、用紙搬送路S1に送給する。搬送ローラ62は互いに圧接するように設けられる一対のローラ部材であり、記録媒体を中間転写ベルト41に担持されるインク像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、転写ニップ部に送給する。図示しないが、手差給紙トレイが備えられていてもよい。手差給紙トレイは、手動動作によって記録媒体を画像形成装置1内に取り込む装置である。
【0127】
排出手段7は、排出ローラ71と、排出トレイ72とを含む。排出ローラ71は、画像が転写された記録媒体を、画像形成装置1の鉛直方向上面に設けられる排出トレイ72に排出する。排出トレイ72は、画像が転写された記録媒体を貯留する。
【0128】
記録媒体としては、従来から使用されているものを用いることができ、たとえば、普通紙、葉書、カラーコピー用紙、インクジェット用紙、プラスチックシート、プラスチックフィルムなどを挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】本発明の画像形成装置1の構成を示す断面図である。
【図2】インク像形成手段2および中間転写手段4の構成を簡略化して示す断面図である。
【図3】感光体ドラム11の一部を示す断面図である。
【図4】インク粒子17の帯電極性を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0130】
1 画像形成装置
2,2k,2c,2m,2y インク像形成手段
3 照射手段
4 中間転写手段
5 転写手段
6 記録媒体供給手段
7 排出手段
11,11k,11c,11m,11y 感光体ドラム
12,12k,12c,12m,12y 対向電極
13,13k,13c,13m,13y クリーニングユニット
14,14k,14c,14m,14y インク収容手段
15,46 矢符
16 インク
17 インク粒子
18 印加手段
21 導電性基体
22 感光層
23 オーバーコート層
24 光触媒
25 バインダ
31 光源
32,32k,32c,32m,32y 分岐手段
41 中間転写ベルト
42 駆動ローラ
43 従動ローラ
44 中間転写ベルトクリーニングユニット
51 転写ローラ
61 自動給紙トレイ
62 ピックアップローラ
63 搬送ローラ
71 排出ローラ
72 排出トレイ
81 固定層
82 拡散層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に画像を形成する画像形成装置であって、
前記画像の静電潜像にインク粒子を付着させてインク像を形成する、複数のインク像形成手段と、
1または複数の前記インク像形成手段に形成された前記インク像が中間転写される中間転写手段と、
前記中間転写手段に転写された前記インク像を前記記録媒体に転写する転写手段と、
前記転写手段に前記記録媒体を送給する記録媒体供給手段と、
前記インク像が転写された前記記録媒体を画像形成装置の外部に排出する排出手段とを備え、
前記インク像形成手段は、
前記インク粒子を溶媒中に分散させてなるインクを収容するインク収容手段と、
光触媒を含んで構成される感光層を有し、前記インクに浸って、回転可能に配置されるインク粒子担持手段と、
前記インク粒子担持手段に光を照射して、前記光触媒を活性化させて、前記静電潜像を前記インク粒子の帯電極性と逆極性に帯電させる照射手段とを含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記インク粒子担持手段は、前記インクに一部が浸って配置されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記インク収容手段に収容されていて、前記インクに浸って配置され、前記インク粒子担持手段に対向して配置されている対向電極と、
前記対向電極に、前記インク粒子の帯電極性と同極性の印加電圧を印加する印加手段とを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記対向電極の形状は、スプリング状であることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記インク粒子担持手段に形成された前記インク像が、前記中間転写手段に中間転写される中間転写位置が、前記インク粒子担持手段の中心を通り水平な平面よりも前記インクの液面側にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記インク粒子担持手段は、前記感光層の外側にオーバーコート層を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記光はレーザ光であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記インク粒子担持手段をクリーニングするクリーニング手段を備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記インク粒子担持手段が円筒形状であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記インク粒子担持手段がベルト形状であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記光触媒は、酸化チタンであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記酸化チタンはルチル型酸化チタンであることを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記酸化チタンの体積平均粒径が10nm以上30nm以下であることを特徴とする請求項11または12に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記インク粒子の帯電極性とは逆極性の印加電圧を前記中間転写手段に印加することによって、前記インク像を前記インク粒子担持手段から前記中間転写手段に中間転写することを特徴とする請求項1〜13のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記インクは、ブラックインク、シアンインク、マゼンタインクおよびイエローインクであり、
ブラックインクを収容するブラックインク収容手段に収容可能なインク容量が、シアンインクを収容するシアンインク収容手段、マゼンタインクを収容するマゼンタインク収容手段およびイエローインクを収容するイエローインク収容手段に収容可能な、それぞれのインク容量よりも多いことを特徴とする請求項1〜14のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記ブラックインクによるブラックインク像が最後に中間転写されることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項17】
前記ブラックインクによるインク像を形成するブラックインク像形成手段が、前記シアンインクによるインク像を形成するシアンインク像形成手段、前記マゼンタインクによるインク像を形成するマゼンタインク像形成手段および前記イエローインクによるインク像を形成するイエローインク像形成手段よりも上部に配置されていることを特徴とする請求項1〜16のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項18】
記録媒体に画像を形成する画像形成方法であって、
インク粒子を溶媒中に分散させてなるインクを複数のインク収容手段に収容し、
光触媒を含んで構成される感光層を有し、前記インクに浸って、回転可能に配置されるインク粒子担持手段に光を照射して、前記光触媒を活性化させて、前記画像の静電潜像を前記インク粒子の帯電極性と逆極性に帯電させ、
前記静電潜像に前記インク粒子を付着させてインク像を形成し、
1または複数の前記インク粒子担持手段に形成された前記インク像を中間転写手段に中間転写し、
前記中間転写手段に中間転写された前記インク像を記録媒体供給手段によって送給される前記記録媒体に転写し、
前記インク像が転写された前記記録媒体を画像形成装置の外部に排出することを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−281876(P2008−281876A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−127314(P2007−127314)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】