画像形成装置
【課題】現像バイアス電圧の交流成分の周波数を適正に設定することにより再現画像の画質を向上することが可能な画像形成装置を提供すること。
【解決手段】列設された複数の感光体ドラム上に形成された各色トナー像を中間転写ベルトに多重転写して、中間転写ベルト上の各色トナー像を、記録シートに転写するタンデム型のカラー画像形成装置において、中間転写ベルトのベルト抵抗値Rを検出し(ステップS2)、中間転写ベルトの抵抗値とこれに適した現像バイアス電圧の交流成分の周波数とを対応付けた抵抗値/周波数対応情報を参照し、検出した中間転写ベルトの抵抗値に対応する周波数を現像バイアス電圧の交流成分の周波数に設定する(ステップS3、S4)。
【解決手段】列設された複数の感光体ドラム上に形成された各色トナー像を中間転写ベルトに多重転写して、中間転写ベルト上の各色トナー像を、記録シートに転写するタンデム型のカラー画像形成装置において、中間転写ベルトのベルト抵抗値Rを検出し(ステップS2)、中間転写ベルトの抵抗値とこれに適した現像バイアス電圧の交流成分の周波数とを対応付けた抵抗値/周波数対応情報を参照し、検出した中間転写ベルトの抵抗値に対応する周波数を現像バイアス電圧の交流成分の周波数に設定する(ステップS3、S4)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体上の静電潜像を、交流成分を含む現像バイアス電圧が印加された現像剤担持体に担持されている現像剤により現像する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ等の画像形成装置では、像担持体、例えば感光体ドラム上に形成された静電潜像をトナーなどの現像剤で現像する方法として、現像剤を担持する現像剤担持体、例えば現像ローラに、直流(DC)成分に交流(AC)成分を重畳させてなる現像バイアス電圧を印加し、現像バイアス電圧の印加により生じる感光体ドラムと現像ローラ間の電位差によって、現像ローラに担持されているトナーを感光体ドラムの現像位置において感光体ドラム上の静電潜像の形成部分に移動させてトナーを付着させる方法が用いられている。
【0003】
この現像方法では、現像バイアス電圧のAC成分により、現像ローラに担持されているトナー粒子が、現像位置において現像ローラと感光体ドラムとの間を往復運動しながら感光体ドラム上の静電潜像の形成部分に付着していくという工程で現像が行われる。
この工程においてトナー粒子の、現像ローラと感光体ドラム間での往復運動が十分であれば、例えばあるトナー粒子が感光体ドラム上の静電潜像の形成部分(画像領域)から少しずれた、本来、現像されるべきでない部分(非画像領域)に移動して、感光体ドラム上の非画像領域に付着したとしても、トナー粒子に往復運動を作用させるAC成分による静電力によって、そのトナー粒子が感光体ドラムの非画像領域から外れて、現像位置を通過するまでの間に現像ローラに戻り、現像ローラから再度、感光体ドラム上の本来の画像領域に付着するという動作が行われ易い。
【0004】
これに対して、トナー粒子の往復運動が十分でなければ、トナー粒子が感光体ドラム上の非画像領域に付着した場合に現像ローラに戻らずに非画像領域に付着したままの状態になってしまい、本来の画像領域の周辺にトナーが飛び散ったような再現画像になる、いわゆるトナー飛び散りが発生し易くなる。
トナー飛び散りの発生は、再現画像の画質の低下をもたらすが、特に、写真などの中間調の画像をドットパターンで再現する場合に影響を与え易い。中間調の画像をドットパターンで再現する場合、異なる階調値毎に、その階調値に適した各ドットの径、濃度、単位面積当たりの個数などが予め決められるが、ドットのそれぞれにトナー飛び散りが発生すれば、トナー飛び散りのない場合に比べて、ドットの径、形状、濃度などが変化してしまい、本来の適した階調値を表すことができなくなり再現性が低下してしまうからである。
【0005】
トナー飛び散りの発生を抑制するには、現像ローラと感光体ドラム間でのトナー粒子の往復運動を十分に行わせることが効果的であり、トナーの往復運動を十分に行わせるには、現像バイアス電圧の交流成分の周波数(以下、「現像バイアス周波数」という。)を適正に設定することが必要になる。
特許文献1には、現像バイアス周波数を設定する構成として、環境の温湿度と現像バイアス周波数との対応関係を予めテーブル化し、画像形成時に温湿度を検知して、検知した温湿度に対応する現像バイアス周波数を選択する構成が開示されている。
【0006】
環境の温湿度が変化するとトナー帯電量が変化し、トナー帯電量が変化すると現像ローラ上での現像剤搬送量が変化して現像性能が低下することを防止するための技術であり、現像ローラ上での現像剤搬送量が現像バイアス周波数により変化することを利用して、温湿度が変化しても現像ローラ上での現像剤搬送量が同じになるように、温湿度と現像バイアス周波数との対応関係を予めもつようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−91803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1のように環境の温湿度を検知する構成では、現像バイアス周波数を適正に設定することができないという問題がある。
すなわち、画像形成装置の機内の温湿度は、通常、定着部からの熱や駆動系のギアやローラなどの部材同士間の摩擦熱などにより、機内の場所ごとに異なり、機内における同じ場所でも、機外の温湿度の変化や機内に流れる空気流による熱気の移動などによって経時的に変動することが生じ易い。
【0009】
このため、機内にセンサを配置して温湿度を検知しても、その時々で、検知した温湿度と、トナーの帯電量に影響を与える現像器内の実際の温湿度とが同じになるとは限らず、検知された温湿度と実際の温湿度とがずれていれば、検知された温湿度により選択された現像バイアス周波数が適正なものとはいえなくなるからである。
また、現像ローラ上の現像剤搬送量を実際に検知するのではなく、現像剤搬送量とトナーの帯電量との関係、トナーの帯電量と温湿度との関係から、現像剤搬送量と温湿度を対応付けて現像剤搬送量を温湿度で推定しようとするものであり、検知された温湿度に対応する現像剤搬送量(推定値)と、実際の現像剤搬送量とが一致しているとは限らず、不一致であれば、選択された現像バイアスAC周波数が適したものともいえない。
【0010】
上記のようなトナー飛び散りによる画質低下は、いわゆる中間転写方式の画像形成装置において特に影響を受け易い。ここで、中間転写方式とは、像担持体、例えば感光体ドラムに形成された現像剤像を、感光体ドラムの転写位置において中間転写体、例えば中間転写ベルトに一次転写し、中間転写ベルト上に一次転写されたトナー像を、搬送される記録シートに二次転写位置で二次転写する方式のものである。
【0011】
この中間転写方式において、例えば一次転写の際に転写位置で中間転写ベルトから感光体ドラムに流れる転写電流の流れ込み量が中間転写ベルトの電気抵抗値の変動によって変われば、一次転写の際に感光体ドラム上のトナー像を構成するトナー粒子が中間転写ベルト上の本来、転写されるべき部分(画像領域)から外れたところ(非画像領域)に移動して付着するといった飛び散りが発生し易くなる。現像工程でトナー飛び散りが生じ、これに転写時の飛び散りによりトナー粒子の飛び散る範囲がより広がるようになれば、記録シート上での再現画像の画質がさらに低下してしまうことになる。
【0012】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、現像バイアス電圧の交流成分の周波数を適正に設定することにより再現画像の画質を向上することが可能な画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係る画像形成装置は、像担持体上の静電潜像を、現像剤担持体に担持されている現像剤により現像し、前記像担持体上の現像剤像を中間転写体に転写した後、当該中間転写体上の現像剤像をシートに転写する画像形成装置であって、前記中間転写体の電気抵抗値の大きさを検出する検出手段と、交流成分を含む現像バイアス電圧を前記現像剤担持体に出力すると共に前記交流成分の周波数を可変可能な電源部と、前記検出手段による検出値が第1の大きさである場合には、前記交流成分の周波数を第1の値に設定し、前記検出手段による検出値が第1よりも大きい第2の大きさである場合には、前記交流成分の周波数を前記第1よりも低い第2の値に設定する設定手段と、出力される現像バイアス電圧の交流成分の周波数が前記設定された周波数と同じになるように、前記電源部を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
また、前記設定手段は、前記第1の大きさの検出値を所定の電気抵抗値の基準値とすると共に、前記第1の値の周波数を前記電気抵抗値の基準値に対する基準の周波数とした場合に、前記検出手段による第2の大きさの検出値と前記電気抵抗値の基準値との差分が大きくなるに連れて、前記交流成分の周波数を、前記基準の周波数に対して低い値に設定するとしても良い。
【0015】
さらに、前記中間転写体の電気抵抗値と現像バイアス電圧の交流成分の周波数について、一方が大きくなると他方が小さくなる対応関係を示す情報を記憶している記憶手段を有し、前記設定手段は、前記情報に基づき前記検出値に対応する周波数を現像バイアス電圧の交流成分の周波数に設定するとしても良い。
また、前記設定手段は、(a)1枚のシートの片面への画像形成を1回の画像形成回数としたときその画像形成回数の積算値が所定回数に達するごと、(b)装置周辺または装置内の温度および湿度の少なくとも一方の変動量が所定量以上になったとき、(c)形成画像の画質を安定化させるための画像安定化制御が実行されるとき、(d)所定時間が経過するごと、(e)1回の画像形成の開始に先立って、または終了直後の、少なくとも1つの条件を満たしたときに、前記検出手段による検出値に基づいて前記設定を実行するとしても良い。
【0016】
本発明に係る画像形成装置は、像担持体上に静電潜像を形成し、形成された静電潜像を、現像剤担持体に担持されている現像剤により現像する作像部を有する画像形成装置であって、交流成分を含む現像バイアス電圧を前記現像剤担持体に出力すると共に前記交流成分の周波数を可変可能な電源部と、前記作像部と前記電源部を制御して、前記像担持体上に、複数のドットのそれぞれが間隔をおいて配列されてなるドットパターンを複数個、その複数個のドットパターンのそれぞれを前記現像バイアス電圧の交流成分の周波数を異なる値に切り替えて形成させるドットパターン形成手段と、前記像担持体上に形成されたドットパターンごとに当該ドットパターンに含まれる各ドットの濃度を検出する検出手段と、前記ドットパターンごとの、各ドットの濃度検出波形の形状に基づいて、現像バイアス電圧の交流成分の周波数Xを設定する設定手段と、前記出力される現像バイアス電圧の交流成分の周波数が前記設定された周波数Xと同じになるように前記電源部を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0017】
また、前記設定手段は、前記ドットパターンごとの濃度検出波形の形状に基づき、画質が許容範囲内にある1以上のドットパターンを特定し、特定した1以上のドットパターンのうち、最も画質が低いドットパターンを形成したときに用いられた現像バイアス電圧の交流成分の周波数X1を設定するとしても良い。
さらに、前記特定は、1つのドットに対する濃度検出波形の、第1の濃度を示す閾値Aにおける幅をWa、第1よりも濃度が低い第2の濃度を示す閾値Bにおける幅をWb、WaをWbで除した値をU、1つのドットパターンに含まれる複数のドットのそれぞれに対する値Uの平均値をTave、画質が許容範囲内にあるか否かを平均値Taveの大きさから判断するための閾値を所定値T1としたとき、複数個のドットパターンのうち、平均値Tave≧所定値T1の関係を満たすドットパターンを判断することにより行われるとしても良い。
【0018】
また、前記特定は、1つのドットに対する濃度検出波形の、第1の濃度を示す閾値Aにおける幅をWa、1つのドットパターンに含まれる複数のドットの数をp、複数のドットpのうち、前記濃度検出波形の幅Waが、画質低下にまで至っていないことを幅Waの大きさから判断するための所定範囲から外れているドットの数をr、値rを値pで除した値を割合Tpct、画質が許容範囲内にあるか否かを割合Tpctの大きさから判断するための閾値を所定値T2としたとき、複数個のドットパターンのうち、割合Tpct≦所定値T2の関係を満たすドットパターンを判断することにより行われるとしても良い。
【0019】
さらに、前記作像部と前記電源部を制御して、前記像担持体上に、中間調の濃度を有するハーフトーンパターンを複数個、その複数個のハーフトーンパターンのそれぞれを前記現像バイアス電圧の交流成分の周波数を異なる値に切り替えて形成させるハーフトーンパターン形成手段と、を備え、前記検出手段は、前記複数個のハーフトーンパターンの濃度を検出し、前記設定手段は、複数個のハーフトーンパターンのそれぞれについて、そのハーフトーンパターンにおける前記像担持体の回転方向後端部の濃度に基づいて、1以上のハーフトーンパターンを特定し、特定した1以上のハーフトーンパターンのうち、最も画質が高いハーフトーンパターンを形成したときに用いられた現像バイアス電圧の交流成分の周波数をX2としたとき、前記周波数X1とX2の間の値である周波数を、前記周波数X1に代えて設定するとしても良い。
【0020】
ここで、前記周波数X1とX2との間の値とは、周波数X1とX2とを加算して2で除することにより得られる中間値であるとしても良い。
また、前記ハーフトーンパターンの特定は、1つのハーフトーンパターンにおける後端部以外の部分における濃度値をD1、当該後端部における濃度値をD2、濃度値D1とD2の差分をD3、画質が許容範囲内にあるか否かを差分D3の大きさから判断するための閾値を所定値T3としたとき、複数個のハーフトーンパターンのうち、差分D3≦所定値T3の関係を満たすハーフトーンパターンを判断することにより行われるとしても良い。
【0021】
さらに、前記ハーフトーンパターンの特定は、複数個のハーフトーンパターンのうち、ハーフトーンパターンにおける後端部における濃度値が、画質が許容範囲内にあるか否かを判断するための閾値以下の関係を満たすハーフトーンパターンを判断することにより行われるとしても良い。
【発明の効果】
【0022】
上記のように検出手段による中間転写体の検出値の大きさによって現像バイアス電圧の交流成分の周波数を設定する構成をとれば、中間転写体の電気抵抗値が通電の繰り返しなどによって長期間に亘って経時的に徐々に変化しても、実際の電気抵抗の検出値に応じた現像バイアス電圧の交流成分の周波数(現像バイアス周波数)をその都度、設定することができるようになり、従来のように温湿度の検知結果に対応する推定値を用いて現像バイアス周波数を設定する構成に比べて、再現画像の画質を向上することが可能になる。
【0023】
また、上記のように実際にドットパターンを形成し、形成されたドットパターンの濃度検出波形の形状に基づいて現像バイアス電圧の交流成分の周波数を設定する構成をとれば、ドットパターンを実際に形成しない構成に比べて、より適正な現像バイアス電圧の交流成分の周波数を設定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施の形態1に係るプリンタの全体の構成を示す図である。
【図2】プリンタに備えられる制御部の構成を示すブロック図である。
【図3】Y色用の抵抗値/周波数対応情報の内容を示す図である。
【図4】ドットパターンの形成例を示す図である。
【図5】感光体ドラム上におけるトナー像の様子を示す拡大図である。
【図6】転写位置における転写電流の流れ込み領域が変化する様子を模式的に現した図である。
【図7】中間転写ベルト上に転写された後のドットパターンにおけるトナー像の様子を示す拡大図である。
【図8】感光体ドラム上に形成されるハーフトーン画像のパターンの形成例を示す模式図である。
【図9】現像バイアス周波数と粒状性および後端掃き寄せとの対応関係およびベルト抵抗値と粒状性の対応関係を示す図である。
【図10】検出されたベルト抵抗値が基準抵抗値よりも大きい場合における現像バイアス周波数の決定方法を説明するための図である。
【図11】検出されたベルト抵抗値が基準抵抗値よりも小さい場合における現像バイアス周波数の決定方法を説明するための図である。
【図12】現像バイアス周波数の設定処理の内容を示すフローチャートである。
【図13】プリントジョブの実行時における現像バイアス周波数の出力制御処理の内容を示すフローチャートである。
【図14】実施の形態2に係るプリンタの構成を示す図である。
【図15】実施の形態2に係る制御部の構成を示す図である。
【図16】中間転写ベルト表面に形成されたY色のトナーパターンの形成例を示す図である。
【図17】トナーパターンに含まれるドットパターンの、パターン検出センサによる検出信号の波形の例を示す図である。
【図18】トナーパターンに含まれるハーフトーンパターンの、パターン検出センサによる検出信号の波形の例を示す図である。
【図19】現像バイアス周波数設定処理の内容を示すフローチャートである。
【図20】第1判断処理のサブルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図21】第2判断処理のサブルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図22】現像バイアス周波数の可変範囲内において、トナー飛び散りと後端掃き寄せに対する許容範囲内と許容範囲外を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る画像形成装置の実施の形態を、タンデム型カラーデジタルプリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)を例にして説明する。
<実施の形態1>
(1)プリンタの全体構成
図1は、プリンタ1の全体の構成を示す図である。
【0026】
同図に示すように、プリンタ1は、周知の電子写真方式により画像を形成するものであり、作像部10と、中間転写部20と、給送部30と、定着部40と、制御部50と、現像バイアス電源部60と、ベルト電流値検出部70と、転写バイアス電源部80とを備え、ネットワーク(例えば、LAN)に接続されて、外部端末(不図示)からの印刷(プリント)ジョブの実行指示を受け付けると、その指示に基づいてイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)色からなるカラーの画像形成を実行する。
【0027】
作像部10は、Y〜K色のそれぞれに対応する作像ユニット10Y〜10Kを備えている。作像ユニット10Yは、像担持体の一例としての感光体ドラム11Yと、その周囲に配設された帯電器12Y、露光部13Y、現像器14Y、一次転写ローラ15Y、感光体ドラム11Yを清掃するためのクリーナなどを備えている。
帯電器12Yは、矢印で示す方向に回転する感光体ドラム11Yの周面を帯電させる。ここでは、帯電極性がマイナス極性にされる。
【0028】
露光部13Yは、帯電された感光体ドラム11Yをレーザ光により露光走査して、感光体ドラム11Y上に静電潜像を形成する。
現像器14Yは、感光体ドラム11Yの現像位置において感光体ドラム11Yに対向配置される現像剤担持体の一例としての現像ローラ19Yに担持されている現像剤Dを用いて、感光体ドラム11Y上の静電潜像を現像する。ここでは、現像剤として、プラスの帯電極性を有するキャリアとマイナスの帯電極性を有するトナーを含む二成分現像剤が用いられ、トナーが感光体ドラム11Yに移動して感光体ドラム11Y上の静電潜像に付着することによって現像が行われ、感光体ドラム11Y上にY色のトナー像が作像される。
【0029】
一次転写ローラ15Yは、感光体ドラム11上の転写位置において感光体ドラム11上のY色トナー像を静電作用により中間転写部20の中間転写ベルト21上に転写させる。他の作像ユニット10M〜10Kについても、作像ユニット10Yと同様の構成である。
中間転写ベルト21は、所定の電気抵抗値を有する、例えばポリイミドなどの樹脂からなる無端状のベルトであり、駆動ローラと従動ローラに張架されて、駆動ローラの駆動力により同図の矢印で示す方向(ベルト周回方向)に周回走行される。
【0030】
作像ユニット10Y〜10Kにおいて、感光体ドラム11Y〜11K上に、対応する色のトナー像が作像され、その作像されたトナー像のそれぞれが中間転写ベルト21上に転写される。このY〜Kの各色の作像動作は、各色のトナー像が、走行する中間転写ベルト21の同じ位置に重ね合わせて転写(一次転写)されるようにベルト周回方向の上流側から下流側に向けてタイミングをずらして実行される。
【0031】
給送部30は、作像部10における上記の作像タイミングに合わせて、給紙カセットから記録シートSを1枚ずつ繰り出して、繰り出された記録シートSを搬送路35に沿って二次転写ローラ22に送る。
2次転写ローラ22に送られた記録シートSが二次転写ローラ22と中間転写ベルト21の間を通過する際に、中間転写ベルト21上に形成された各色トナー像が2次転写ローラ22の静電作用により記録シートSに一括して二次転写される。
【0032】
各色トナー像が二次転写された後の記録シートSは、定着部40まで搬送され、定着部40の定着ローラ41と加圧ローラ42との間を通過する際に加熱、加圧されることにより、その表面のトナーが記録シートSの表面に融着して定着された後、排紙ローラ38によって排紙トレイ39上に排出される。
現像バイアス電源部60は、現像器14Y〜14Kの現像ローラ19Y〜19Kに現像のための現像バイアス電圧を供給するものであり、作像ユニットのそれぞれに対応する電源部60Y〜60Kが設けられている。電源部60Y〜60Kは、それぞれが現像バイアス電圧として直流(DC)成分に交流(AC)成分が重畳された電圧を出力する。
【0033】
この直流成分に交流成分が重畳された現像バイアス電圧が現像ローラ19Y〜19Kに印加されることにより、現像位置において、現像ローラ19Y〜19Kと感光体ドラム11Y〜11Kとの間に現像に必要な所定の電位差が生じ、AC成分により現像剤Dのトナー粒子が現像ローラ19Y〜19Kと感光体ドラム11Y〜11Kとの間で往復運動が行われるようになって、トナー粒子の、現像ローラ19Y〜19Kから感光体ドラム11Y〜11Kの静電潜像への移動が行われ易くなって現像性が向上する。
【0034】
現像バイアス電圧は、Y〜K色のそれぞれについて、その直流電圧の値が例えば、−100〔V〕〜−1000〔V〕の範囲内の値であり、交流成分の周波数が例えば、5〔kHz〕〜9〔kHz〕の間で可変され、交流波形が例えば矩形波であり、ピーク・ツー・ピークの値が例えば、1.4〔kV〕とされる。
電源部60Y〜60Kは、出力される現像バイアス電圧の交流成分の周波数(現像バイアス周波数)を可変可能に構成されている。このように現像バイアス周波数を可変可能に構成しているのは、現像の際に生じるトナー飛び散りを抑制しつつ、後端掃き寄せを抑制するためである。この理由については、後述する。
【0035】
ベルト電流値検出部70は、導電性の電極71、72と、電流検出部73と、DC電源部74とを備える。
電極71、72は、中間転写ベルト21の表面側と裏面側とから挟むように中間転写ベルト21に接触した状態で中間転写ベルト21を介して対向配置される。これにより、電極71と電極72間が、中間転写ベルト21との接触部位における中間転写ベルト21の表面から裏面までのベルト厚み部分を介して直列接続される。なお、電極71、72は、例えばローラ状であっても良いし、ブラシ状であっても良い。
【0036】
電流検出部73は、電極72と直列接続される。
DC電源部74は、電極71から中間転写ベルト21、電極72を介して電流検出部73までの間に形成される直列回路75に所定値の直流電圧を供給する。この直流電圧の供給により直列回路75に電流が流れ、その電流値が電流検出部73により検出される。電流検出部73で検出された電流値を示す情報は、制御部50に送られる。
【0037】
制御部50では、電流検出部73で検出された電流値から、中間転写ベルト21のベルト表面と裏面間の厚み方向における電気抵抗値(以下、「ベルト抵抗値」という。)を求める。求めたベルト抵抗値は、現像バイアス周波数の適正値を求めるための処理に利用される。この処理については、後述する。
転写バイアス電源部80は、転写ローラ15Y〜15Kに対して、一次転写のための所定値の電圧、ここではプラス極性の電圧を供給するものであり、作像ユニット10Y〜10Kのそれぞれに対応する電源部80Y〜80Kが設けられている。
(2)制御部50の構成
図2は、制御部50の構成を示すブロック図である。
【0038】
同図に示すように制御部50は、主な構成要素として、通信インターフェース(I/F)部101と、CPU102と、ROM103と、RAM104と、ベルト抵抗値検出部105と、現像バイアス周波数設定部(以下、「設定部」という。)106と、ベルト抵抗値/現像バイアス周波数対応情報記憶部(以下、「記憶部」という。)107などを備え、各部は相互に信号やデータのやりとりを行えるようになっている。
【0039】
通信I/F部101は、ネットワーク、ここではLANと接続するためのLANカード、LANボードといったインターフェースであり、外部端末からLANを介して送られてくるプリントジョブのデータを受信する。
CPU102は、ROM103から必要なプログラムを読み出し、通信I/F部101を介して受信したプリントジョブのデータに基づき、作像部10、中間転写部20、給送部30、定着部40などを制御して画像形成動作を円滑に実行させる。
【0040】
また、CPU102は、所定の検出タイミングに、ベルト抵抗値検出部105に指示してベルト抵抗値を検出させる処理を行うと共に、設定部106に指示して現像バイアス周波数として最適な周波数を、検出されたベルト抵抗値に基づき設定させる処理を行う。
さらに、転写バイアス電源部80に指示して、プリントジョブ実行中に、一次転写のための電圧を転写ローラ15Y〜15Kに供給させる。
【0041】
ベルト抵抗値検出部105は、CPU102からの指示があると、DC電源部74に指示して、所定値のDC電圧を出力させる。これにより、ベルト電流値検出部70の直列回路75に電流が流れ、その電流値が電流検出部73で検出され、検出された電流値(検出電流値)を示す情報がベルト抵抗値検出部105に送られる。
ベルト抵抗値検出部105は、電流検出部73からの検出電流値に基づきベルト抵抗値を求める。ここでは、DC電源部74から出力される電圧値が決まっており、電極71、72の抵抗値も予め判っているので、DC電源部74の出力電圧値と、電極71、72の抵抗値と、検出電流値とから、オームの法則によりベルト抵抗値が求められる。ベルト抵抗値は、転写時の通電を繰り返すことによる耐久や温湿度の影響などにより経時的に変動する特性を有するので、検出毎にその検出時点でのベルト抵抗値が得られることになる。得られたベルト抵抗値を示す情報は、設定部106に送られる。
【0042】
設定部106は、現時点でのベルト抵抗値の大きさに基づき、Y〜K色毎に現像バイアス周波数の最適値を設定する。この設定には、記憶部107に記憶されているY色〜K色毎の抵抗値/周波数対応情報108が参照される。
図3は、Y色用の抵抗値/周波数対応情報108の内容を示す図である。
同図に示すように、抵抗値/周波数対応情報108は、ベルト抵抗値Rと現像バイアス周波数Xの対応関係を示す情報であり、ベルト抵抗値Rの基準値をRaとして基準値Raに対する差分δの大きさを所定の範囲ごとに区切り、所定の範囲ごとに、その範囲に適した現像バイアス周波数Xの値を対応付けてなる。ここで差分δは、ベルト抵抗値Rの検出値から基準値Raを差し引いた値に相当する。
【0043】
ベルト抵抗値Rが基準値Raのときに現像バイアス周波数Xが基準の周波数(基準値)X0に対応しており、ベルト抵抗値Rが基準値Raよりも小さい場合(差分δがマイナスになる場合)、現像バイアス周波数Xが基準値X0に+βを加えた値になり(高くなり)、ベルト抵抗値Rが基準値Raよりも大きい場合(差分δがプラスになる場合)、現像バイアス周波数Xが基準値X0からγを差し引いた値になる(低くなる)。
【0044】
同図では、α1<α2<・・<αm、β1<β2<・・<βm、γ1<γ2<・・<γmの関係になっているので、ベルト抵抗値Rと現像バイアス周波数Xは、所定の範囲を単位として、一方が大きくなるに連れて他方が小さくなる関係を有するといえる。
この一方が大きくなると他方が小さくなるという関係は、他のM〜K色についても同様である。なお、ベルト抵抗値Rの基準値Raは、例えば1×1010〔Ω□〕程度である。ベルト抵抗値Rと現像バイアス周波数Xの対応関係が、上記の関係になっている理由については、次の(3)項で具体的に説明する。
【0045】
設定部106により設定されたY〜K色用の現像バイアス周波数は、設定された以降のプリントジョブごとに、そのプリントジョブ開始の際に読み出され、プリントジョブ実行中に現像バイアス電源部60Y〜60Kから現像ローラ19Y〜19Kに供給される現像バイアス電圧の現像バイアス周波数が、読み出された周波数の値になるように制御される。なお、設定部106により現像バイアス周波数が設定されるごとに、現像バイアス周波数の情報が上書き保存(更新)されるとしても良いし、消去せずに過去の情報を管理しつつ最新の情報が読み出されるとしても良い。
【0046】
以下、ベルト抵抗値Rと現像バイアス周波数Xの対応関係について、Y色を例に具体的に説明する。
(3)ベルト抵抗値Rと現像バイアス周波数Xの対応関係について
(3−1)現像バイアス周波数Xとドットパターンのドットの粒状性との関係
図4は、ドットパターン120の形成例を示す図であり、図4(a)は、トナー飛び散が発生していない状態の例を示しており、図4(b)は、トナー飛び散りが発生している状態の例を示している。両図のそれぞれについて、左右方向がベルト周回方向に沿う方向(副走査方向)に相当する。
【0047】
両図に示すように、ドットパターン120は、複数個のドット121のそれぞれが間隔122をおいて配列されてなり、主に階調画像を擬似的に再現するのに用いられ、1つのドットが例えば直径1〔mm〕の円形状になっている。再現すべき階調値に応じて、それぞれのドット121の大きさと単位面積当たりの個数とが予め決められている。
図4(a)に示すようにトナー飛び散りが発生していない状態では、A−A線上におけるドットパターン120の濃度分布をとると、同図のグラフの波形F1〜F8がドット121の濃度を示す部分に相当し、波形F1〜F8のうち隣り合うもの同士の間が間隔122の濃度を示す部分に相当し、それぞれのドット121の濃度がBで略一定であり、径(ベルト周回方向における幅)もdで略一定になっている。ドット121の形状が円形、濃度がB、径がdであることをそれぞれ以下、基準という。
【0048】
これに対して、図4(b)に示すようにトナー飛び散りが発生している状態では、ドットのうち、径が基準よりも小さいドット125、大きいドット126、また形状が星型になっているドット127、濃度が基準よりも低いドット128などが含まれている。ドットの形状、径、濃度がそれぞれ基準からずれると、濃度分布波形も図4(b)に示すように、基準のドットの波形(図4(a))に対して崩れたような波形になる。
【0049】
このように形状、径、濃度が基準からすれたドットが形成されるのは、トナー飛び散りに起因するものである。このトナー飛び散りは、現像工程と転写工程で発生し易い。
すなわち、現像工程では、現像バイアス周波数Xが大きくなると、現像位置において感光体ドラム11Yと現像ローラ19Y間でのトナー粒子の往復運動が行われ易くなる。
従って、現像ローラ19Yから感光体ドラム11Yに向かって飛翔したトナー粒子が、感光体ドラム11Y上の静電潜像である本来の画像領域から外れた位置(非画像領域)に付着したとしても、現像位置を通過するまでの間に再度、現像ローラ19Yに戻り、非画像領域に付着したままになることが少なくて済み、トナー粒子の整列性と再配置性が向上し、より静電潜像に忠実にトナー粒子が付着することになって画質が向上する。
【0050】
これに対して、現像バイアス周波数Xが小さくなると、トナー粒子の往復運動が十分に行われなくなって、感光体ドラム11Y上の非画像領域にトナー粒子が付着すると、現像ローラ19Yに戻らずに、そのまま非画像領域に付着してしまうことが多くなる。
ドットパターン120では、隣り合うドット121とドット121の間である間隔121の部分が非画像領域になり、非画像領域である間隔122の部分へのトナー粒子の飛び散り方によって、形状が星型になったドット、径が大きめまたは小さめになったドット、濃度が下がったドットがそれぞれ形成されることが生じる。
【0051】
図5は、実験により現像バイアス周波数Xを可変してドットパターンを形成したときの、感光体ドラム11Y上におけるトナー像の様子を観察した結果を示す拡大図であり、図5(a)が現像バイアス周波数Xを5〔kHz〕に設定した場合の例を示し、図5(b)が現像バイアス周波数Xを9〔kHz〕に設定した場合の例を示している。
なお、図5の観察結果は、現像バイアス周波数以外の現像条件を、感光体ドラム11Yの表面電位をVa、現像バイアス電圧の実効値をVb、潜像電位(露光された部分の電位)をVcとしたとき、VaとVbの差を100〔V〕程度、VbとVcの差を250〔V〕程度にすると共に、現像バイアス電圧のAC成分の波形を矩形波、そのピーク・ツー・ピークの電圧を1.4〔kV〕に設定し、現像バイアス周波数Xを可変すること以外は、同じ条件で実験した結果を示している。
【0052】
両図を見ると、図5(a)で示す現像バイアス周波数Xが低い場合よりも、図5(b)で示す現像バイアス周波数Xが高い場合の方が、1つのドットを構成するトナー粒子の集まり具合が良く、ドットの再現性や整列性が向上しており、ドット周辺へのトナー粒子の飛び散りが少ないことが判る。ドットの再現性や整列性のことを以下、ドットの粒状性という。なお、このドットの粒状性の特性は、現像バイアス周波数Xが5〔kHz〕と9〔kHz〕の間のそれぞれの周波数においても同様に有しており、現像バイアス周波数Xが高くなるに連れて向上することが確認されている。
【0053】
このように現像バイアス周波数Xが低から高に移るに連れて現像時におけるドットの粒状性が向上するのは、上記のように現像バイアス周波数Xが低から高くなるに連れて、現像位置におけるトナー粒子の往復運動が行われ易くなり、感光体ドラム11Y上における本来の画像領域ではなくその周辺の非画像領域にトナー粒子が付着してしまっても、一旦、現像ローラ19Yに戻り、再度の往復運動で感光体ドラム11Yの画像領域に移動することで、非画像領域に付着したままにならないことから、非画像領域に付着したままになるトナーの飛び散りが低減されたものと推定される。
【0054】
次に、転写工程におけるトナー飛び散りについて説明する。
(3−2)ベルト抵抗値Rとドットパターンのドットの粒状性との関係
転写工程では、中間転写ベルト21は、耐久や温湿度などによってベルト抵抗値が変化し、ベルト抵抗値が変化すると、転写電流が転写ローラ15Yから中間転写ベルト21を介して感光体ドラム11Yに流れ込む際のその流れ込み領域が変化する。
【0055】
図6は、転写位置における転写電流の流れ込み領域が変化する様子を模式的に現した図であり、感光体ドラム11Yの回転方向(ドラム回転方向)における幅mが本来の転写位置における流れ込み領域を示している。
ベルト抵抗値が小さくなると、抵抗値が下がった分だけ幅mよりも広い幅、例えばm1に亘った領域まで流れ込み領域が広がることが生じ、この流れ込み領域の広がりは、ベルト抵抗値が小さくなるに連れて大きくなる傾向にある。
【0056】
このように流れ込み領域が広がると、同図の拡大図に示すように、感光体ドラム11Y上の一部のトナー粒子3が転写位置において本来、中間転写ベルト21に転写されるべき領域260に到達する前に、領域260よりもドラム回転方向上流側の領域261において転写が先立って行われてしまうトナー飛び散りが生じ易くなる。
図7は、中間転写ベルト21上に転写された後のドットパターンにおけるトナー像の様子を観察した結果を示す拡大図であり、図7(a)はベルト抵抗値RがRaであった場合を示し、図7(b)は、ベルト抵抗値RがRb(>Ra)であった場合を示している。なお、両図は、ベルト抵抗値が異なる中間転写ベルト21を実際にそれぞれ取り替えて実験したときの結果を示しており、ベルト抵抗値が異なる以外は同じ条件によるものである。
【0057】
両図を見ると、図7(a)で示すベルト抵抗値Rが小さい場合よりも、図7(b)で示すベルト抵抗値Rが大きい場合の方が、ドットの粒状性が良くなっていることが判る。このドットの粒状性の特性は、ベルト抵抗値RがRaとRb間のそれぞれの値についても同様に有しており、ベルト抵抗値Rが大きくなるに連れてドットの粒状性が向上することが確認されている。
【0058】
このようにベルト抵抗値Rが小から大になるに連れて転写時におけるドットの粒状性が向上するのは、以下の理由による。すなわち、ベルト抵抗値Rが小さいと、転写電流が転写ローラ15Yから中間転写ベルト21を介して感光体ドラム11Yに流れ込むときのその流れ込み領域が本来の転写位置よりも広がって転写時のトナー飛び散りが発生し易くなる。これに対して、ベルト抵抗値Rが大きいと、その流れ込み領域が、ベルト抵抗値Rが小さい場合に比べて広がらず、流れ込み領域が広がることによるトナー飛び散りが発生し難くなったからであると推定される。
【0059】
図5の現像時のトナー飛び散りと、図7の転写時のトナー飛び散りとを比較すると、転写時の方が現像時よりも飛び散りの程度が大きくなっており、この比較結果は、通常、他の一般の画像形成装置にも当てはまる。
(3−3)現像バイアス周波数Xと後端掃き寄せとの関係
上記の(3−1)では、現像バイアス周波数Xを高くすると現像時のトナー飛び散りの低減を図れることを説明したが、現像バイアス周波数Xを高くしすぎると、特に中間調であるハーフトーンのベタ画像(以下、「ハーフトーン画像」という。)に後端掃き寄せと呼ばれる現象が生じ易くなる。
【0060】
この後端掃き寄せとは、感光体ドラム11Y上に形成される現像後におけるハーフトーン画像の形成領域のうち、ドラム回転方向の先端部から中央部を介して後端部をみたときに、先端部と中央部に位置すべきトナー粒子の一部が後端部側に流れて後端部に集まるようになり、先端部や中央部の濃度が本来よりもやや下がり(薄くなり)、後端部の濃度が本来よりもやや上がる(濃くなる)といったように、ハーフトーン画像における先端部から後端部にかけて濃度ムラが生じる現象である。
【0061】
図8は、感光体ドラム11Y上に形成されるハーフトーン画像のパターン(ハーフトーンパターン)130の形成例を示す模式図であり、図8(a)は後端掃き寄せが発生していない状態を示し、図8(b)は後端掃き寄せが発生している状態を示している。
後端掃き寄せは、上記のようにハーフトーンパターン130におけるドラム回転方向の後端部131の濃度が先端部や中央部の濃度よりも濃くなることにより、ドラム回転方向に沿って濃度ムラが生じる現象である。
【0062】
図8(a)に示すように後端掃き寄せが発生していない状態では、A−A線上におけるハーフトーンパターン130の濃度分布をとると、同図のグラフの波形G0に示すように濃度が略一定(中間長の階調値に相当する濃度)になっている。
これに対して、後端掃き寄せが発生している状態では、図8(b)のグラフのピーク波形Gaに示すように、ハーフトーンパターン130におけるドラム回転方向の後端部131の濃度が先端部や中央部よりも高濃度になっている。
【0063】
このように現像時にハーフトーンパターン130にドラム回転方向に沿って濃度ムラが発生するのは、現像バイアス周波数が高くなり、現像位置においてトナー粒子の往復運動が過度になったことにより、ハーフトーンパターン130におけるドラム回転方向の先端部や中央部に本来、付着すべきトナー粒子の一部が付着せずに往復運動を継続してしまい、先端部から中央部にかけて徐々にずれて後端部の方に移動して、後端部では本来、後端部に位置すべきトナー粒子と、中央からずれてきたトナー粒子とが足し合わされるようになって、後端部の濃度が先端部や中央部に比べて上がることによるものと推定される。
【0064】
この後端掃き寄せによるハーフトーン画像の濃度ムラは、階調再現性の低下に繋がるので、トナー飛び散りとの関係を考慮して、現像バイアス周波数Xを設定する必要が生じる。なお、後端掃き寄せは、現像工程で発生するが転写工程では発生せず、ベルト抵抗値Rの大きさが変化しても影響を受けることがないことが確認されている。
(3−4)現像バイアス周波数Xの設定方法
図9(a)は、現像バイアス周波数Xと、粒状性および後端掃き寄せとの対応関係を表形式で示す図であり、図9(b)は、ベルト抵抗値Rと、粒状性および後端掃き寄せとの対応関係を表形式で示す図であり、図9(c)は、ベルト抵抗値Rが異なる場合の現像バイアス周波数Xと粒状性との対応関係をグラフで示す図であり、図9(d)は、現像バイアス周波数Xと後端掃き寄せとの対応関係をグラフで示す図である。
【0065】
図9(a)〜図9(d)から、現像バイアス周波数Xと粒状性とは、現像バイアス周波数Xが高くなるに連れて粒状性が良くなる関係を有し、現像バイアス周波数Xと後端掃き寄せとは、現像バイアス周波数Xが低くなるに連れて後端掃き寄せが良くなる関係を有し、ベルト抵抗値Rが変化した場合、現像バイアス周波数Xが同じ値であれば、ベルト抵抗値Rが大きいほど粒状性が良くなる関係を有していることが判る。
【0066】
これらの関係をもとに、ベルト抵抗値Rに適した現像バイアス周波数Xの値を設定することができる。この設定方法を、図10と図11を用いて説明する。
図10は、ベルト抵抗値Rの可変範囲内で基準となる値(基準抵抗値)Raに対して、検出された抵抗値(検出抵抗値)Rbが大きかった場合における現像バイアス周波数Xの設定方法を説明するための図である。
【0067】
図10(a)は、現像バイアス周波数Xと粒状性との関係を示す図であり、実線で示すグラフが基準抵抗値Raの場合を、一点鎖線で示すグラフが検出抵抗値Rbの場合を示しており、図10(b)は、図10(a)の現像バイアス周波数Xと同じレンジ(範囲)をとった場合の現像バイアス周波数Xと後端掃き寄せとの関係を示す図である。
両図において粒状性の基準をJとして、ベルト抵抗値が基準値Raの場合、現像バイアス周波数Xを基準値X0にすれば、基準Jの粒状性が得られ、かつ後端掃き寄せとしてU0が得られることが判る。
【0068】
これに対して、ベルト抵抗値が基準値Raよりも高いRbである場合、基準値Raのときと同じ粒状性Jを得るには、現像バイアス周波数Xを基準値X0よりも低いX1に設定すれば良く、現像バイアス周波数XをX1に設定すれば、後端掃き寄せをU0よりも良好なU1を得られることになる。
一方、ベルト抵抗値Rが基準値Raよりも低いRcの場合には、図11(a)に示すように粒状性Jを得るには、現像バイアス周波数Xを基準値X0よりも高いX2に設定すれば良く、この場合には後端掃き寄せはU0よりも低減するU2が得られることになる。なお、後端掃き寄せの低下をできるだけ抑制するには、粒状性を基準Jよりも少し下げて、現像バイアス周波数XをX0とX2の間に設定することもできる。
【0069】
従って、ベルト抵抗値Rの、基準値Raとの差分δの大きさに対する粒状性の変化幅と後端掃き寄せの変化幅とを実験などから求めて、差分δの大きさごとに、粒状性と後端掃き寄せとが、再現画像の画質が人の目で劣化と感じられる範囲まで低下しないように(画質が一定レベル以上の範囲内に収まるように)、その差分δの大きさに適した現像バイアス周波数Xの値を対応付けることにより、現像バイアス電圧の交流成分の周波数を適正に設定して、再現画像の画質の向上を図ることが可能になる。
【0070】
このベルト抵抗値Rの、基準値Raとの差分δの大きさを所定の範囲ごとに区切り、それぞれの範囲に対して、その範囲に適した現像バイアス周波数Xを対応付けた結果が図3に示すY色の抵抗値/周波数対応情報108に相当し、記憶部107に予め格納される。
(4)制御部50による現像バイアス周波数の設定と現像バイアス周波数の出力制御
図12は、現像バイアス周波数の設定処理の内容を示すフローチャートである。
【0071】
この設定処理は、図示しないメインルーチンにより所定時間、例えば0.1秒ごとにコールされることにより繰り返し実行される。
図12に示すように現像バイアス周波数の設定時期であるか否かを判断する(ステップS1)。この判断は、例えば1枚のシートにおける片面へのプリントを行うことを1回の画像形成回数として、プリントごとに画像形成回数を積算する構成をとった場合に、その画像形成回数の積算値(プリント回数)が所定回数、例えば1000回に達したか否かにより行うとすることができる。プリント回数が所定値に達するごとに、その時点でのベルト抵抗値Rに適した現像バイアス周波数Xの値を設定することができる。
【0072】
現像バイアス周波数の設定時期ではないことを判断すると(ステップS1で「NO」)、メインルーチンにリターンする。現像バイアス周波数の設定時期であることを判断すると(ステップS1で「YES」)、ベルト抵抗値Rを検出する(ステップS2)。この検出は、ベルト抵抗値検出部105が実行する。
そして、検出されたベルト抵抗値Rから基準値Raを差し引いた値(差分)δを求め(ステップS3)、記憶部107に記憶されている抵抗値/周波数対応情報108を参照し、求めた差分δが属する抵抗値の範囲に対応する現像バイアス周波数を読み出し、読み出した現像バイアス周波数を、プリントジョブ時に用いるべき現像バイアス周波数として設定して(ステップS4)、メインルーチンにリターンする。
【0073】
この現像バイアス周波数の設定は、設定部106により実行され、例えば現像バイアス周波数を示す情報が設定部106に設けられている不揮発性の記憶部(不図示)に記憶されることにより行われる。なお、前回の設定で現像バイアス周波数を示す情報が既に記憶されている場合には、これに代えて今回の現像バイアス周波数を示す情報が保存される(今回の情報に更新される)。また、現像バイアス周波数が設定されるごとに、プリント回数がゼロにリセットされる。
【0074】
上記では、プリント回数が所定回数に達したときを、現像バイアス周波数の設定条件を満たしたとして、現像バイアス周波数を設定するとしたが、これに限られない。例えば、装置周辺または装置内の温度および湿度の少なくとも一方の変動量が所定量以上になったときを設定条件としても良い。ベルト抵抗値Rは、温度、湿度によっても変動が生じる場合があり、温度、湿度の影響を受けて変動している実際のベルト抵抗値Rの大きさに基づき、その時点での最適な現像バイアス周波数を設定することができる。
【0075】
さらに、いわゆる色ずれ補正や階調補正などの、形成画像の画質を安定化させるための画像安定化制御の実行時期と同じ時期に達したときを設定条件としても良い。例えば、装置の電源オン時、プリント回数が所定値に達したとき、ジャムや故障などからの復帰の際、節電(スリープ)状態からの解除時などの時期が考えられる。
また、本実施の形態では、ベルト抵抗値Rを検出するという処理だけで、その検出時における最適な現像バイアス周波数を設定することができることから、所定時間ごとや1回のプリントごとに、その開始に先立って、または終了直後などに設定を実行するとしても良い。さらに、上記の少なくとも1つの条件を満たしたときに設定するとしても良い。
【0076】
図13は、プリントジョブの実行時における現像バイアス周波数の出力制御処理の内容を示すフローチャートである。この出力制御処理は、図示しないメインルーチンにより所定時間、例えば0.1秒ごとにコールされることにより繰り返し実行される。
図13に示すようにプリントジョブを実行するか否かを判断する(ステップS5)。
プリントジョブの実行を判断すると(ステップS5で「YES」)、設定部106に設けられている記憶部から現像バイアス周波数を示す情報を読み出して(ステップS6)、読み出した現像バイアス周波数と同じ値のAC周波数の現像バイアス電圧が出力されるように、現像バイアス電源部60Yを制御して(ステップS7)、リターンする。
【0077】
これにより、プリントジョブ実行中には、現像バイアス周波数の設定処理で設定された周波数とAC周波数が一致する現像バイアス電圧が現像ローラ19Yに供給されることになる。なお、プリントジョブを実行しないことを判断すると(ステップS5で「NO」)、そのままリターンする。
以上、説明したように本実施の形態では、ベルト抵抗値Rとこれに適した現像バイアス周波数Xとを対応付けた抵抗値/周波数対応情報を保持しておいて、ベルト抵抗値Rが検出されると、その検出値に対応する現像バイアス周波数Xを適正値として設定するので、トナー飛び散りと後端掃き寄せによる画質劣化を抑制して、トナー飛び散りと後端掃き寄せの両方をバランスさせたトータルの再現画像の画質向上を図ることができる。
【0078】
<実施の形態2>
上記実施の形態1では、抵抗値/周波数対応情報を参照し、検出されたベルト抵抗値Rに適した現像バイアス周波数Xを設定するとしたが、本実施の形態2では、現像バイアス周波数Xを異なる値に可変しながら実際に中間転写ベルト12上にトナーパターンを形成し、形成されたトナーパターンをセンサで検出して、その検出結果から再現画像の画質が一定レベル以上のトナーパターンを特定し、特定したトナーパターンを形成したときの現像バイアス周波数Xを、検出時点における適正値として設定するとしており、この点が実施の形態1と異なっている。以下、説明の重複を避けるため、実施の形態1と同じ内容についてはその説明を省略し、同じ構成要素については同符号を付すものとする。
(1)実施の形態2に係るプリンタの構成
図14は、実施の形態2に係るプリンタ201の構成を示す図であり、実施の形態1で配置されていたベルト電流値検出部70が設けられておらず、中間転写ベルト21の下方であり、作像ユニット10Kよりもベルト周回方向の下流側、かつ二次転写位置221よりもベルト周回方向の上流側の位置にパターン検出センサ210が配置されている。
【0079】
パターン検出センサ210は、発光部と受光部を有する反射型の光学センサであり、発光部から中間転写ベルト21の表面に向かって光が発せられ、その光の、中間転写ベルト21表面に形成されているトナーパターン(図16)からの反射光を受光部で受光して、受光した光量の大きさに応じた電気信号を出力するものである。出力された電気信号は、制御部250に送られる。
(2)制御部250の構成
図15は、実施の形態2に係る制御部250の構成を示す図であり、実施の形態1の制御部50に設けられていたベルト抵抗値検出部105と、設定部106と、記憶部107に代えて、パターン形成部251と現像バイアス周波数設定部252が設けられている。
【0080】
パターン形成部251は、作像部10を制御して、Y〜K色ごとに、中間転写ベルト21表面に複数個のトナーパターン(図16)のそれぞれを、現像バイアス周波数Xを異なる値に切り替えて形成する。
現像バイアス周波数設定部252は、形成されたトナーパターンの、パターン検出センサ210による検出結果に応じてその検出時点での現像バイアス周波数を設定する。以下、Y色を例にして、トナーパターンの形成例と現像バイアス周波数の設定方法とを具体的に説明する。
(3)トナーパターンについて
図16は、中間転写ベルト21表面に形成されたY色のz個(zは、2以上の整数)のトナーパターンP1〜Pzの形成例を示す図であり、図14の矢印Aで示す方向から中間転写ベルト21表面を見たときの図に相当する。
【0081】
図16に示すように、複数個のトナーパターンP1〜Pzのそれぞれは、ベルト周回方向に所定の間隔をおいて形成されてなる。トナーパターンP1は、ドットパターンQ1とハーフトーンパターンE1を含み、トナーパターンP2は、ドットパターンQ2とハーフトーンパターンE2を含み、トナーパターンPzは、ドットパターンQzとハーフトーンパターンEzを含んでいる。他のトナーパターンP3・・PZ−1も同様である。
【0082】
ドットパターンQ1は、複数個のドットd1、d2・・dpがベルト周回方向に所定の間隔をおいて形成されてなり、ハーフトーンパターンE1は、所定の中間調の階調値を示す濃度のベタ画像からなる。他のトナーパターンP2〜Pzについても、トナーパターンP1と同じ構成になっている。
トナーパターンP1〜Pzのそれぞれは、現像バイアス周波数Xが異なるが、これ以外の作像条件が同じであり、同じ印字用データに基づき作像ユニット10Yにおいて感光体ドラム11Y上に形成され、その形成後に中間転写ベルト21上に転写される。トナーパターンP1〜Pzは、中間転写ベルト21上での主走査方向における転写位置が同図の一点鎖線で示す、パターン検出センサ210による検出ライン209上にそれぞれ形成されるようになっている。なお、印字用データは、予めROM103などに格納されている。
【0083】
感光体ドラム11Yから中間転写ベルト21上に転写されたY色のトナーパターンP1〜Pzは、中間転写ベルト21の周回走行によりパターン検出センサ210の検出位置に向かって移動し、検出位置を通過する際に検出ライン209上でそれぞれ検出される。
図17は、ドットパターンQ1〜Qzのうち、あるドットパターンの、パターン検出センサ210による検出信号の波形(検出波形)F0の例を示す図であり、横軸が時間、縦軸が濃度になっている。濃度は、大きくなるにつれて濃くなることを示す。
【0084】
同図に示す検出波形F0における波形F1、F2、F3・・Fpは、ドットd1、d2、d3・・dpの検出部分に相当し、波形F1〜Fpのそれぞれの時間軸における幅W1、W2、W3・・Wpは、ドットd1、d2、d3・・dpの径の大きさに相当する。
ドットパターンにトナーの飛び散りが発生していなければ、それぞれのドットの粒状性が略均等であり、ドットの粒状性が略均等ということは、それぞれのドットの大きさが略同じであるといえ、幅W1〜Wpもそれぞれが略同じ幅になるはずである。
【0085】
これに対して、トナーの飛び散りが発生していれば、ドットごとに粒状性が異なり、ドットの大きさが異なって、幅W1〜Wpのそれぞれにばらつきが生じることになる。
同図の波形F2は、トナーの飛び散りにより、ドットd2が本来の大きさよりも小さくなって、幅W2が本来の幅W1よりも狭くなった例を示している。
波形F3は、ドットd3を構成するトナー粒子の一部がドットd3の周囲に飛び散ったことにより、ドットd3が本来の大きさよりも拡張されたようになって幅W3が本来の幅W1よりも広くなり、ドットd3の中央部の濃度が下がり、ドットd3の周辺部(飛び散りにより生じた部分)の濃度が中央部に対して低い濃度になっている例を示している。
【0086】
このように、ドットパターンQ1〜Qzのそれぞれの検出波形をモニターして、検出波形の形状を解析することにより、ドットパターンQ1〜Qzのうち、トナーの飛び散りが生じていないパターン、トナーの飛び散りが生じているが記録シートS上での再現画像の画質に影響を与える程度には至っていないパターン、トナーの飛び散りの程度が画質に影響を与える程度に至っているパターンなどを区別して、画質が一定以上のドットパターンを判断することができるようになる。この判断方法については、後述する。
【0087】
図18は、ハーフトーンパターンE1〜Ezのうち、あるハーフトーンパターンの、パターン検出センサ210による検出信号の波形(検出波形)G0の例を示す図であり、横軸が時間、縦軸が濃度になっている。濃度は、大きくなるにつれて濃くなることを示す。
同図に示す検出波形G0の時間軸における幅Lが、検出対象のハーフトーンパターンのベルト周回方向における長さに相当する。
【0088】
同図は、ハーフトーンパターンに後端掃き寄せが発生している場合の例を示しており、波形G0のうち、後端部(ベルト周回方向下流側の端部)の波形Gaがピークを有する波形になっている。ハーフトーンパターンの濃度値は、後端部が最大値D2になっており、先端部(ベルト周回方向上流側の端部)から中央部を介して後端部までの間の濃度よりも濃くなっている。
【0089】
ハーフトーンパターンに後端掃き寄せが発生していなければ、上記の図8(a)に示すようにハーフトーンパターンの先端部から後端部にかけて濃度値が略一定になり、ハーフトーンパターンの濃度値を示す波形G0の形状は、略フラットになる。
このことから、ハーフトーンパターンE1〜Ezのそれぞれの検出波形をモニターして、検出波形の形状を解析することにより、ハーフトーンパターンE1〜Ezのうち、後端掃き寄せが生じていないパターン、後端掃き寄せが生じているが記録シートS上での再現画像の画質に影響を与える程度には至っていないパターン、後端掃き寄せの程度が画質に影響を与える程度に至っているパターンなどを区別して、画質が一定レベル以上のハーフトーンパターンを判断することができるようになる。
【0090】
画質が一定レベル以上のドットパターンとハーフトーンパターンの判断は、現像バイアス周波数設定部202による現像バイアス周波数設定処理において実行される。
(4)現像バイアス周波数設定処理の内容
図19は、現像バイアス周波数設定処理の内容を示すフローチャートであり、現像バイアス周波数の設定時期が到来するごとに実行される。この現像バイアス周波数の設定時期は、上記実施の形態1と同じとすることができる。
【0091】
現像バイアス周波数の設定時期になると、Y色のトナーパターンを形成する(ステップS10)。このY色のトナーパターンは、図16に示すトナーパターンP1〜Pzに相当する。Y色のトナーパターンの形成は、作像部10Yにおける感光体ドラム11Y上への帯電、露光、現像の各工程により感光体ドラム11Y上に形成されたトナーパターンP1〜Pzのトナー像が中間転写ベルト21上に転写されることにより行われる。このトナーパターンP1〜Pzの形成の現像工程では、上記のようにトナーパターンP1〜Pzのそれぞれについて、トナーパターンを現像する際に用いられる現像バイアス周波数Xが異なる値に順次、切り替えられることにより実行される。
【0092】
例えば、トナーパターンP1に対して現像バイアス周波数X1、トナーパターンP2に対して現像バイアス周波数X2(ここで、X1<X2)・・トナーパターンPzに対して現像バイアス周波数Xz(ここで、XZ−1<Xz)とされる。現像バイアス周波数X1、X2・・Xzの値は、予め決められており、例えば5〔kHz〕〜9〔kHz〕の範囲においてZ(複数)に等分された値が設定される。感光体ドラム11Yに形成されたトナーパターンP1〜Pzのそれぞれの静電潜像が現像位置に到達するタイミングに合わせて、現像バイアス周波数Xが切り替えられる。
【0093】
ステップS11では、変数nを1に設定する。そして、画質が一定レベル以上のドットパターンを判断するための第1判断処理(ステップS12)と、画質が一定レベル以上のハーフトーンパターンを判断するための第2判断処理(ステップS13)を実行する。
(4−1)第1判断処理の内容
図20は、第1判断処理のサブルーチンの内容を示すフローチャートである。
【0094】
同図に示すように、n番目、ここではn=1としてドットパターンQ1の、パターン検出センサ210からの濃度検出信号を取得する(ステップS21)。
取得した濃度検出信号をモニターして、その検出波形のうち、ドットd1〜dpの濃度値を示す波形F1〜Fpのそれぞれについて、閾値A(図17)における幅Waを検出する(ステップS22)。図17の例では、幅Waは、波形F1であればW1、波形F2であればW2、波形F3であればW3aが検出されることになる。
【0095】
さらに、波形F1〜Fpのそれぞれについて、閾値B(図17)における幅Wbを検出する(ステップS23)。ここで、閾値Bは、閾値Aよりも低い濃度値に相当し、トナー飛び散りによりトナー粒子が飛び散った部分の濃度と同程度の濃度値が予め設定されている。図17の例では幅Wbは、波形F1、F2では閾値Aの幅Waと同じW1、W2になるが、波形F3についてはW3が検出される。この幅W3のうち、幅W3a以外の部分は、トナー飛び散りによりドットd3の本来の大きさに対してその周辺に飛び散ったトナー粒子の濃度値を示す部分に相当する。
【0096】
このようにトナー飛び散りが発生すると、ドットごとにそのドットの周囲にトナーが飛び散った部分の濃度が検出波形に現れ、波形の形状がトナーの飛び散りの状態によって波形F3のような階段状になったり山型になったりする。換言すれば、波形の形状が階段状や山型になっていれば、トナー飛び散りが発生している蓋然性が高いといえる。
従って、異なる2つの閾値AとBを用いて波形の幅WaとWbの大きさをそれぞれ検出して、検出されたそれぞれの幅WaとWbの差分をとれば、その差分の大きさからトナー飛び散りの発生の有無を判断することができる。
【0097】
そこで、ステップS24では、波形F1〜Fpのそれぞれについて、幅WaをWbで除した値U(=Wa/Wb)を算出し、算出値U1〜Upの平均値Taveを算出する。トナー飛び散りが激しくなるほど、検出波形において裾の部分が頂部よりも広くなる形状になり、検出波形Fにおいて閾値Bにおける幅Wbの方が閾値Aにおける幅Waよりも大きくなるので、算出値Uが小さくなる。従って、算出値Uの平均値であるTaveが小さいということは、トナー飛び散りが激しいことを示し、平均値Taveが大きいということは、トナー飛び散りが少ないことを示しているといえる。
【0098】
算出された平均値Taveが所定値T1以上であるか否かを判断する(ステップS25)。この所定値T1は、平均値Taveの大きさからトナー飛び散りが再現画像の画質の許容範囲内にあるか否か判断するための第1閾値であり、予め設定されている。
平均値Tave≧所定値T1の場合、平均値Taveの大きさに基づく判断では許容範囲と判断され、平均値Tave<所定値T1の場合、許容範囲内にはないと判断される。
【0099】
平均値Tave≧所定値T1と判断すると(ステップS25で「YES」)、波形F1〜Fpのうち、幅Waが所定範囲から外れているものを特定し、特定した波形に対応するドットの数rの、全数pに対する割合Tpctを算出する(ステップS26)。
ここで、所定範囲は、幅Waの大きさからトナー飛び散りの大きさを判断するための範囲であり、トナー飛び散りが発生していない本来の幅Wの大きさに許容量を付加してなり、予め設定されている。この意味で、トナー飛び散りによる画質低下にまで至っていないことを幅Waの大きさから判断するための所定範囲といえる。
【0100】
トナー飛び散りにより径が小さくなったドットや、飛び散ったトナー粒子により極端に径が大きくなったドットなどを判定するために用いられる。
割合Tpctは、幅Waが所定範囲から外れているドットの個数rを、ドットd1〜dpの全数であるp(複数)で除することにより算出される。
算出された割合Tpctが所定値T2以下であるか否かを判断する(ステップS27)。この所定値T2は、割合Tpctの大きさからトナー飛び散りが再現画像の画質の許容範囲内にあるか否かを判断するための第2閾値であり、予め設定されている。
【0101】
割合Tpct≦所定値T2の場合、許容範囲内と判断され、割合Tpct>所定値T2の場合、許容範囲内にはないと判断される。
割合Tpct≦所定値T2と判断すると(ステップS27で「YES」)、n番目、ここでは1番目のドットパターンQ1について、トナー飛び散りが発生していない、または発生していても画質に影響を与える程度ではなく、トナー飛び散りが画質の許容範囲内(画質が一定レベル以上)と判断して(ステップS28)、リターンする。
【0102】
平均値Tave<所定値T1と判断した場合(ステップS25で「NO」)、割合Tpct>所定値T2と判断した場合には(ステップS27で「NO」)、ドットパターンQ1について、トナー飛び散りが許容範囲内にない、すなわち範囲外である(画質が一定レベルよりも低い)と判断して(ステップS29)、リターンする。上記の許容範囲内にあるか否かの判断結果は、一時的に保存され、後述のステップS16以降において利用される。得られた判断結果が保存され利用されることは、以下に説明する他の判断結果が得られた場合について同様に適用される。
【0103】
なお、第1判断処理では、平均値Taveと所定値T1の大小関係と、割合Tpctと所定値T2の大小関係の両方を判断するとしたが、装置構成によっては、いずれか一方だけを判断する構成をとるとしても良い。
(4−2)第2判断処理の内容
図21は、第2判断処理のサブルーチンの内容を示すフローチャートである。
【0104】
同図に示すように、n番目、ここではn=1のハーフトーンパターンE1の、パターン検出センサ210からの濃度検出信号を取得する(ステップS41)。
取得した濃度検出信号をモニターして、その検出波形の全域L(図18)のうち、パターン先端から所定長さの範囲L1における濃度の平均値D1を算出する(ステップS42)。ここで、範囲L1は、ハーフトーンパターンE1において後端掃き寄せが発生すると想定される後端部を示す範囲L2を除く部分(先端から後端部までの間の領域)のベルト周回方向における長さに相当する。
【0105】
次に、範囲L2における最大濃度値D2を求め(ステップS43)、濃度値D1とD2の差分D3を算出する(ステップS44)。
算出された差分D3が所定値T3以下であるか否かを判断する(ステップS45)。ここの所定値T3は、差分D3の大きさから後端掃き寄せが再現画像の画質の許容範囲内にあるか否かを判断するための閾値であり、予め設定されている。
【0106】
差分D3≦所定値T3と判断すると(ステップS45で「YES」)、n番目、ここでは1番目のハーフトーンパターンE1について、後端掃き寄せが発生していない、または発生していても画質に影響を与える程度ではなく、後端掃き寄せが画質の許容範囲内(画質が一定レベル以上)と判断して(ステップS46)、リターンする。
差分D3>所定値T3と判断すると(ステップS45で「NO」)、ハーフトーンパターンE1について、後端掃き寄せが許容範囲内にない、すなわち範囲外である(画質が一定レベルよりも低い)と判断して(ステップS47)、リターンする。
【0107】
図19に戻って、ステップS14では、変数nの値が最後の値zであるか否かを判断する。最後ではないと判断すると(ステップS14で「NO」)、現在のnの値に「1」をインクリメントした値を新たなnの値、ここではn=2として(ステップS15)、ステップS12に戻る。ステップS12では、2番目のトナーパッチP2に含まれるドットパターンQ2についてトナー飛び散りが許容範囲内であるか否かが判断され、ステップS13では、トナーパッチP2に含まれるハーフトーンパターンE2について後端掃き寄せが許容範囲内であるか否かが判断される。
【0108】
ステップS14で変数nの値が最後の値zに達するまで、ステップS12〜S15の処理が繰り返し実行される。これにより、トナーパターンP1〜Pzのそれぞれについて順次、トナー飛び散りと後端掃き寄せが許容範囲内にあるか否かが判断されることになる。
変数nの値が最後の値zに達したことを判断すると(ステップS14で「YES」)、z個のドットパターンQ1〜Qzのうち、第1判断処理で許容範囲内であると判断されたパターンを特定する(ステップS16)。
【0109】
ドットパターンQ1〜Qzの形成時に適用される現像バイアス周波数Xは、上記のようにドットパターンQ1からQzにかけて段階的に上げられる条件になっており、実施の形態1で説明したように現像時におけるトナー飛び散りは、現像バイアス周波数Xが低くなると生じ易く、現像バイアス周波数Xが高くなると生じ難くなる関係を有している。
このことから、許容範囲内にあると判断されるドットパターンは、現像バイアス周波数Xが最大であるQzから降順にQZ−1、QZ−2・・Qm(ここで、z≧m>1)というように連続し、許容範囲内ではないと判断されるドットパターンは、現像バイアス周波数Xが最小のQ1から順にQ2、Q3・・Qm−1というように連続する傾向になり易い。
【0110】
ステップS17では、許容範囲内と特定されたドットパターンQz〜Qmのうち、形成時に適用された現像バイアス周波数が最小のものの周波数X1を記憶する。
許容範囲内に属するドットパターンQz〜Qmのうち、現像バイアス周波数が最も小さいものがQmであり、ドットパターンQmを形成したときの現像バイアス周波数X1が許容範囲内における最小の現像バイアス周波数になり、現像バイアス周波数がX1以上であれば、トナー飛び散りが許容範囲内に入ることになる。
【0111】
図22は、現像バイアス周波数の可変範囲内において、トナー飛び散りと後端掃き寄せに対する許容範囲内と許容範囲外を模式的に示す図である。
同図に示すように、現像バイアス周波数X1を境に許容範囲内と許容範囲外とが分けられており、トナー飛び散りの欄における許容範囲内にドットパターンQz〜Qmを形成したときの周波数が含まれ、許容範囲外にドットパターンQ1〜Qm−1を形成したときの周波数が含まれることになる。
【0112】
図19に戻り、ステップS18では、z個のハーフトーンパターンE1〜Ezのうち、第2判断処理で許容範囲内であると判断されたパターンを特定する。
ハーフトーンパターンE1〜Ezの形成時に適用される現像バイアス周波数Xは、ドットパターンと同様に、ハーフトーンパターンE1からEzにかけて段階的に上げられる条件になっており、実施の形態1で説明したように現像時における後端掃き寄せは、現像バイアス周波数Xが高くなると生じ易く、現像バイアス周波数Xが低くなると生じ難くなる関係を有している。
【0113】
このことから、許容範囲内にあると判断されるハーフトーンパターンは、現像バイアス周波数Xが最小であるE1から順にE2・・Es(ここで、1≦s<z)というように連続し、許容範囲内ではないと判断されるドットパターンは、現像バイアス周波数Xが最大であるEzから降順にEZ−1、EZ−2・・ES+1というように連続する傾向になり易い。
【0114】
ステップS19では、許容範囲内と特定されたハーフトーンパターンE1〜Esのうち、形成時に適用された現像バイアス周波数が最大であるEsの周波数X2を記憶する。
図22において後端掃き寄せを示す欄を見ると、現像バイアス周波数X2を境に許容範囲内と許容範囲外とが分けられていることが判る。この許容範囲内にハーフトーンパターンE1〜Esを形成したときの周波数が含まれ、許容範囲外にハーフトーンパターンEz〜ES+1を形成したときの周波数が含まれることになり、現像バイアス周波数がX2以下であれば、後端掃き寄せが許容範囲内に入ることになる。
(4−3)現像バイアス周波数の設定
図19に戻り、ステップS20では、記憶しておいた現像バイアス周波数X1とX2の中間の値X3(図22参照)を、現時点での最適な現像バイアス周波数に設定して、メインルーチンにリターンする。このように現像バイアス周波数をX1とX2の中間値(X1とX2を加算して2で除した値)であるX3に設定するのは、次の理由による。
【0115】
すなわち、現像バイアス周波数X1とX2の間の範囲は、トナーの飛び散りの許容範囲と後端掃き寄せの許容範囲との重複範囲を示し、この重複範囲内では一定以上の画質を維持できるので、X1以上、X2以下の範囲内のどの値をとっても良いことになるが、トナーの飛び散りと後端掃き寄せとは、一方が良ければ他方が悪くなる関係にあり、トナーの飛び散りと後端掃き寄せの両方を、特に優劣をつけずに同程度に抑制させるには、その中間値X3が適していると考えられるからである。
【0116】
従って、例えばトナーの飛び散りよりも後端掃き寄せの方を優先しようとすれば、現像バイアス周波数をX1または重複範囲内においてX1により近い値に設定する構成をとることができ、また、後端掃き寄せよりもトナーの飛び散りの方を優先しようとすれば、X2または重複範囲内においてX2により近い周波数に設定する構成をとることもできる。いずれをとるかは、装置ごとに予め決められるとしても良いし、例えばユーザによる選択、すなわち優劣なし、一方を優先などの入力を受け付ける構成をとるとしても良い。
【0117】
ユーザからの選択を受け付ける構成をとる場合には、例えば優劣なし、トナー飛び散りを優先、後端掃き寄せを優先のそれぞれに対して、周波数の重複領域内において設定されるべき周波数の値が予め決められて、選択された結果に応じてその周波数の値を設定するとしても良い。また、周波数の重複領域内におけるいずれかの値をユーザが入力可能に構成して、その入力値を現像バイアス周波数として設定する構成としても良い。
【0118】
なお、上記では現像バイアス周波数がX1≦X2の関係から、トナーの飛び散りの許容範囲と後端掃き寄せの許容範囲とが重複する場合の例を説明したが、例えば現像バイアス周波数がX1>X2の関係になることもあり得る。このような関係になれば、トナーの飛び散りの許容範囲と後端掃き寄せの許容範囲とが重複しなくなるが、この場合でもX1とX2の中間値を設定することが望ましい。X1とX2の一方に片寄った値に設定すると、トナー飛び散りと後端掃き寄せの一方による画質劣化がより大きくなるからである。
【0119】
上記のステップS20で設定された周波数X3が、設定時以降における画像形成動作時に現像バイアス電圧の現像バイアス周波数として適用されることになる。
以上、説明したように本実施の形態では、実際に、複数個のトナーパターンP1〜Pzのそれぞれを、現像バイアス周波数を異なる値に切り替えて形成し、形成されたトナーパターンP1〜Pzのうち、画質レベルが許容範囲内に入るトナーパターンを形成したときに用いられた現像バイアス周波数を設定するとしたので、より装置構成に適した現像バイアス周波数を設定して、トナーの飛び散りと後端掃き寄せの抑制を図り、再現画像の画質を一定以上に維持することが可能になる。
【0120】
なお、上記ではY色を例に説明したが、他のM〜K色についてもY色と同様の処理を行うことにより、装置構成に適した現像バイアス周波数を設定することができる。
本発明は、画像形成装置に限られず、現像バイアス周波数の設定方法であるとしてもよい。また、その方法をコンピュータが実行するプログラムであるとしてもよい。また、本発明に係るプログラムは、例えば磁気テープ、フレキシブルディスク等の磁気ディスク、DVD−ROM、DVD−RAM、CD−ROM、CD−R、MO、PDなどの光記録媒体、フラッシュメモリ系記録媒体等、コンピュータ読み取り可能な各種記録媒体に記録することが可能であり、当該記録媒体の形態で生産、譲渡等がなされる場合もあるし、プログラムの形態でインターネットを含む有線、無線の各種ネットワーク、放送、電気通信回線、衛星通信等を介して伝送、供給される場合もある。また、上記の実施の形態における処理がソフトウェアにより行なわれる構成であっても良いし、ハードウェア回路を用いて行なれる構成であっても良い。
【0121】
<変形例>
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施の形態1では、ベルト電流値検出部70の電極71、72が中間転写ベルト21の表面と裏面に常時、接触した状態の構成例を説明したが、これに限られない。
【0122】
例えば、電極71、72を中間転写ベルト21に対して接触、離間可能に構成して、ベルト抵抗値Rの検出時以外には離間状態にして、ベルト抵抗値Rの検出時にだけ接触状態に切り替える制御を行うとしても良い。画像形成時に電極71、72を中間転写ベルト21から離間させ、画像形成以外のときに接触させてベルト抵抗値Rを検出する構成をとることにより、周回走行中の中間転写ベルト21に電極71、72が接触している場合に生じる接触部における摺動摩擦による磨耗を常時接触した状態の構成よりも抑制できる。
【0123】
また、中間転写ベルト21を介して電極71、72間に流れる電流値を計測し、計測した電流値と、電極71、72の抵抗値と、電極71、72に供給される電圧値とからベルト抵抗値Rを求めたが、これに限られない。例えば、定電流回路であれば、電極71、72間の電圧値を計測して、計測した電圧値と定電流の電流値とからベルト抵抗値Rを求めることもできる。
【0124】
なお、ベルト抵抗値Rの大きさは、例えば定電流であれば電極71、72間の電圧値の大きさに置き換えることもでき、この電圧値の大きさがベルト抵抗値の大きさを示すものといえるので、ベルト抵抗値Rの大きさの検出には、ベルト抵抗値を指標する電圧値などを検出することを含む意味で用いることができる。
(2)上記実施の形態1では、ベルト抵抗値Rの基準値Raに対する差分と現像バイアス周波数Xとの対応関係を示す情報108をテーブル形式で予め記憶している構成例を説明したが、検出されたベルト抵抗値Rに適した現像バイアス周波数Xを設定することができる構成であれば、この構成に限られない。
【0125】
例えば、ベルト抵抗値Rとこれに適した現像バイアス周波数Xとを一対一に対応付けた情報を記憶しておく構成としても良い。また、ベルト抵抗値Rと現像バイアス周波数Xとの関係式を予め求めておき、この関係式を用いるとしても良い。
(3)上記実施の形態2では、トナーパターンP1〜Pzとして、ドットパターンQ1〜QzとハーフトーンパターンE1〜Ezを形成するとしたが、例えばドットパターンQだけを形成する構成をとることもできる。
【0126】
この構成をとる場合、第2判断処理(ステップS13)と、ハーフトーンパターンの特定(ステップS18)と、現像バイアス周波数X2の記憶(ステップS19)の各処理が行われず、現像バイアス周波数の設定(ステップS20)では、ステップS17で記憶された周波数X1(ドットパターンについての許容範囲内で最小の周波数)を設定することができる。このようにすれば、トナーの飛び散りを許容範囲内に収めつつ、後端掃き寄せによる画質劣化を最も抑制することができる。
【0127】
また、ハーフトーンパターンE1〜Ezだけを形成するとしても良い。この場合、ステップS19で記憶された周波数X2(ハーフトーンパターンについての許容範囲内で最大の周波数)を現像バイアス周波数として設定することができる。
(4)上記実施の形態2では、ハーフトーンパターンP1〜Pzのそれぞれについて、ドラム回転方向後端部の濃度の最大値D2とこれ以外の部分における濃度の平均値D1との差分D3の大きさにより後端掃き寄せが許容範囲にあるか否かを判断するとしたが、この方法に限られない。例えば、ハーフトーンパターンの後端部における濃度の最大値が所定の閾値以下であれば、後端掃き寄せが許容範囲にあり、閾値よりも大きければ許容範囲にないことを判断する方法をとることもできる。
【0128】
また、ハーフトーンパターンの後端部の濃度値D1と、これ以外の部分の濃度値D2を平均値、最大値をとる構成としたが、後端部とこれ以外の部分との濃度値の差分の大きさが判れば良く、平均値や最大値に限られない。それぞれの部分の濃度値を指標するもの、例えばそれぞれの部分についてその後端縁での濃度値を比較すると方法をとっても良い。これらの濃度値を含めて、濃度値D1、D2と表すことができる。
【0129】
(5)上記実施の形態2では、トナーパターンP1〜Pzを反射型の光学センサにより検出するとしたが、トナーパターンP1〜Pzを検出可能なものであれば、これに限られない。例えば、中間転写ベルト21が光透過性を有するものであれば、透過型の光学センサを用いることもできる。
また、感光体ドラム11Y〜11Kから中間転写ベルト21上に転写された後のトナーパターンP1〜Pzを検出するとしたが、像担持体上に形成されたトナーパターンを検出することができれば良く、例えば感光体ドラム11Y〜11K上のトナーパターンP1〜Pz(転写前のもの)を検出するとしても良い。
【0130】
さらに、トナーパターンとしてのドットパターンとハーフトーンパターンの形状、個数、濃度などが上記のものに限られないことはいうまでもなく、また、ハーフトーンパターンの濃度は、後端掃き寄せが人の目で判りやすい階調値、例えば最小の濃度値と最大の濃度値の中間を示す階調値などとすることが望ましい。
(6)上記実施の形態では、本発明に係る画像形成装置をタンデム型カラーデジタルプリンタに適用した場合の例を説明したが、これに限られない。カラーやモノクロの画像形成に関わらず、交流成分を含む現像バイアス電圧を用いて現像を行い、交流成分の周波数を可変可能な構成の画像形成装置、例えば複写機、FAX、MFP(Multiple Function Peripheral)等に適用できる。
【0131】
また、上記では、タンデム型として、中間転写ベルトなどの中間転写体の周回移動方向に沿って列設された複数の感光体ドラムなどの像担持体上に形成された各色の現像剤像を、それぞれの像担持体の転写位置で中間転写体に静電的に多重転写し、中間転写体に多重転写された各色の現像剤像を二次転写位置で記録シートに転写する中間転写方式の例を説明したが、これに限られない。
【0132】
例えば、搬送ベルトで搬送される記録シートが、列設された複数の像担持体のそれぞれの転写位置を順次、通過する際に、それぞれの像担持体上の現像剤像をその記録シート上に多重転写する、いわゆる直接転写方式の構成などにも適用することができる。
さらに、1つの像担持体上に形成された現像剤像を像担持体の転写位置で記録シートに転写するモノクロの画像形成装置にも適用することができる。なお、中間転写方式においては、中間転写体も現像剤像を担持する機能を有するので、感光体ドラムとは別の像担持体ということができる。また、像担持体の形状が上記のものに限られず、例えばドラム状に代えてベルト状のものを用いることや、その逆とすることもできる。
【0133】
また、現像剤を担持する現像剤担持体として現像ローラ19Y〜19Kを用いる例を説明したが、ローラ状に限られず、例えばスリーブ状のものなどを用いることもできる。現像剤として、キャリアとトナーを含む二成分現像剤を用いる構成例を説明したが、例えばキャリアが含まれず、トナーが含まれる一成分現像剤を用いる構成にも適用できる。
また、上記実施の形態及び上記変形例の内容をそれぞれ組み合わせるとしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明は、像担持体を有する画像形成装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0135】
1、201 プリンタ
11Y、11M、11C、11K 感光体ドラム
14Y、14M、14C、14K 現像器
19Y、19M、19C、19K 現像ローラ
21 中間転写ベルト
50、250 制御部
60Y、60M、60C、60K 現像バイアス電源部
70 ベルト電流値検出部
80Y、80M、80C、80K 転写バイアス電源部
105 ベルト抵抗値検出部
106、252 現像バイアス周波数設定部
107 ベルト抵抗値/現像バイアス周波数対応情報記憶部
108 抵抗値/現像バイアス周波数対応情報
120、Q1〜Qz ドットパターン
121、125、126、127、128、d1〜dp ドット
122 間隔
130、E1〜Ez ハーフトーンパターン
131 ハーフトーンパターンの後端部
210 パターン検出センサ
251 パターン形成部
D 現像剤
F0 ドットパターンの検出波形
F1〜Fp 各ドットの検出波形
G0 ハーフトーンパターンの検出波形
P1〜Pz トナーパターン
X1、X2、X3 現像バイアス周波数
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体上の静電潜像を、交流成分を含む現像バイアス電圧が印加された現像剤担持体に担持されている現像剤により現像する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ等の画像形成装置では、像担持体、例えば感光体ドラム上に形成された静電潜像をトナーなどの現像剤で現像する方法として、現像剤を担持する現像剤担持体、例えば現像ローラに、直流(DC)成分に交流(AC)成分を重畳させてなる現像バイアス電圧を印加し、現像バイアス電圧の印加により生じる感光体ドラムと現像ローラ間の電位差によって、現像ローラに担持されているトナーを感光体ドラムの現像位置において感光体ドラム上の静電潜像の形成部分に移動させてトナーを付着させる方法が用いられている。
【0003】
この現像方法では、現像バイアス電圧のAC成分により、現像ローラに担持されているトナー粒子が、現像位置において現像ローラと感光体ドラムとの間を往復運動しながら感光体ドラム上の静電潜像の形成部分に付着していくという工程で現像が行われる。
この工程においてトナー粒子の、現像ローラと感光体ドラム間での往復運動が十分であれば、例えばあるトナー粒子が感光体ドラム上の静電潜像の形成部分(画像領域)から少しずれた、本来、現像されるべきでない部分(非画像領域)に移動して、感光体ドラム上の非画像領域に付着したとしても、トナー粒子に往復運動を作用させるAC成分による静電力によって、そのトナー粒子が感光体ドラムの非画像領域から外れて、現像位置を通過するまでの間に現像ローラに戻り、現像ローラから再度、感光体ドラム上の本来の画像領域に付着するという動作が行われ易い。
【0004】
これに対して、トナー粒子の往復運動が十分でなければ、トナー粒子が感光体ドラム上の非画像領域に付着した場合に現像ローラに戻らずに非画像領域に付着したままの状態になってしまい、本来の画像領域の周辺にトナーが飛び散ったような再現画像になる、いわゆるトナー飛び散りが発生し易くなる。
トナー飛び散りの発生は、再現画像の画質の低下をもたらすが、特に、写真などの中間調の画像をドットパターンで再現する場合に影響を与え易い。中間調の画像をドットパターンで再現する場合、異なる階調値毎に、その階調値に適した各ドットの径、濃度、単位面積当たりの個数などが予め決められるが、ドットのそれぞれにトナー飛び散りが発生すれば、トナー飛び散りのない場合に比べて、ドットの径、形状、濃度などが変化してしまい、本来の適した階調値を表すことができなくなり再現性が低下してしまうからである。
【0005】
トナー飛び散りの発生を抑制するには、現像ローラと感光体ドラム間でのトナー粒子の往復運動を十分に行わせることが効果的であり、トナーの往復運動を十分に行わせるには、現像バイアス電圧の交流成分の周波数(以下、「現像バイアス周波数」という。)を適正に設定することが必要になる。
特許文献1には、現像バイアス周波数を設定する構成として、環境の温湿度と現像バイアス周波数との対応関係を予めテーブル化し、画像形成時に温湿度を検知して、検知した温湿度に対応する現像バイアス周波数を選択する構成が開示されている。
【0006】
環境の温湿度が変化するとトナー帯電量が変化し、トナー帯電量が変化すると現像ローラ上での現像剤搬送量が変化して現像性能が低下することを防止するための技術であり、現像ローラ上での現像剤搬送量が現像バイアス周波数により変化することを利用して、温湿度が変化しても現像ローラ上での現像剤搬送量が同じになるように、温湿度と現像バイアス周波数との対応関係を予めもつようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−91803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1のように環境の温湿度を検知する構成では、現像バイアス周波数を適正に設定することができないという問題がある。
すなわち、画像形成装置の機内の温湿度は、通常、定着部からの熱や駆動系のギアやローラなどの部材同士間の摩擦熱などにより、機内の場所ごとに異なり、機内における同じ場所でも、機外の温湿度の変化や機内に流れる空気流による熱気の移動などによって経時的に変動することが生じ易い。
【0009】
このため、機内にセンサを配置して温湿度を検知しても、その時々で、検知した温湿度と、トナーの帯電量に影響を与える現像器内の実際の温湿度とが同じになるとは限らず、検知された温湿度と実際の温湿度とがずれていれば、検知された温湿度により選択された現像バイアス周波数が適正なものとはいえなくなるからである。
また、現像ローラ上の現像剤搬送量を実際に検知するのではなく、現像剤搬送量とトナーの帯電量との関係、トナーの帯電量と温湿度との関係から、現像剤搬送量と温湿度を対応付けて現像剤搬送量を温湿度で推定しようとするものであり、検知された温湿度に対応する現像剤搬送量(推定値)と、実際の現像剤搬送量とが一致しているとは限らず、不一致であれば、選択された現像バイアスAC周波数が適したものともいえない。
【0010】
上記のようなトナー飛び散りによる画質低下は、いわゆる中間転写方式の画像形成装置において特に影響を受け易い。ここで、中間転写方式とは、像担持体、例えば感光体ドラムに形成された現像剤像を、感光体ドラムの転写位置において中間転写体、例えば中間転写ベルトに一次転写し、中間転写ベルト上に一次転写されたトナー像を、搬送される記録シートに二次転写位置で二次転写する方式のものである。
【0011】
この中間転写方式において、例えば一次転写の際に転写位置で中間転写ベルトから感光体ドラムに流れる転写電流の流れ込み量が中間転写ベルトの電気抵抗値の変動によって変われば、一次転写の際に感光体ドラム上のトナー像を構成するトナー粒子が中間転写ベルト上の本来、転写されるべき部分(画像領域)から外れたところ(非画像領域)に移動して付着するといった飛び散りが発生し易くなる。現像工程でトナー飛び散りが生じ、これに転写時の飛び散りによりトナー粒子の飛び散る範囲がより広がるようになれば、記録シート上での再現画像の画質がさらに低下してしまうことになる。
【0012】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、現像バイアス電圧の交流成分の周波数を適正に設定することにより再現画像の画質を向上することが可能な画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係る画像形成装置は、像担持体上の静電潜像を、現像剤担持体に担持されている現像剤により現像し、前記像担持体上の現像剤像を中間転写体に転写した後、当該中間転写体上の現像剤像をシートに転写する画像形成装置であって、前記中間転写体の電気抵抗値の大きさを検出する検出手段と、交流成分を含む現像バイアス電圧を前記現像剤担持体に出力すると共に前記交流成分の周波数を可変可能な電源部と、前記検出手段による検出値が第1の大きさである場合には、前記交流成分の周波数を第1の値に設定し、前記検出手段による検出値が第1よりも大きい第2の大きさである場合には、前記交流成分の周波数を前記第1よりも低い第2の値に設定する設定手段と、出力される現像バイアス電圧の交流成分の周波数が前記設定された周波数と同じになるように、前記電源部を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
また、前記設定手段は、前記第1の大きさの検出値を所定の電気抵抗値の基準値とすると共に、前記第1の値の周波数を前記電気抵抗値の基準値に対する基準の周波数とした場合に、前記検出手段による第2の大きさの検出値と前記電気抵抗値の基準値との差分が大きくなるに連れて、前記交流成分の周波数を、前記基準の周波数に対して低い値に設定するとしても良い。
【0015】
さらに、前記中間転写体の電気抵抗値と現像バイアス電圧の交流成分の周波数について、一方が大きくなると他方が小さくなる対応関係を示す情報を記憶している記憶手段を有し、前記設定手段は、前記情報に基づき前記検出値に対応する周波数を現像バイアス電圧の交流成分の周波数に設定するとしても良い。
また、前記設定手段は、(a)1枚のシートの片面への画像形成を1回の画像形成回数としたときその画像形成回数の積算値が所定回数に達するごと、(b)装置周辺または装置内の温度および湿度の少なくとも一方の変動量が所定量以上になったとき、(c)形成画像の画質を安定化させるための画像安定化制御が実行されるとき、(d)所定時間が経過するごと、(e)1回の画像形成の開始に先立って、または終了直後の、少なくとも1つの条件を満たしたときに、前記検出手段による検出値に基づいて前記設定を実行するとしても良い。
【0016】
本発明に係る画像形成装置は、像担持体上に静電潜像を形成し、形成された静電潜像を、現像剤担持体に担持されている現像剤により現像する作像部を有する画像形成装置であって、交流成分を含む現像バイアス電圧を前記現像剤担持体に出力すると共に前記交流成分の周波数を可変可能な電源部と、前記作像部と前記電源部を制御して、前記像担持体上に、複数のドットのそれぞれが間隔をおいて配列されてなるドットパターンを複数個、その複数個のドットパターンのそれぞれを前記現像バイアス電圧の交流成分の周波数を異なる値に切り替えて形成させるドットパターン形成手段と、前記像担持体上に形成されたドットパターンごとに当該ドットパターンに含まれる各ドットの濃度を検出する検出手段と、前記ドットパターンごとの、各ドットの濃度検出波形の形状に基づいて、現像バイアス電圧の交流成分の周波数Xを設定する設定手段と、前記出力される現像バイアス電圧の交流成分の周波数が前記設定された周波数Xと同じになるように前記電源部を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0017】
また、前記設定手段は、前記ドットパターンごとの濃度検出波形の形状に基づき、画質が許容範囲内にある1以上のドットパターンを特定し、特定した1以上のドットパターンのうち、最も画質が低いドットパターンを形成したときに用いられた現像バイアス電圧の交流成分の周波数X1を設定するとしても良い。
さらに、前記特定は、1つのドットに対する濃度検出波形の、第1の濃度を示す閾値Aにおける幅をWa、第1よりも濃度が低い第2の濃度を示す閾値Bにおける幅をWb、WaをWbで除した値をU、1つのドットパターンに含まれる複数のドットのそれぞれに対する値Uの平均値をTave、画質が許容範囲内にあるか否かを平均値Taveの大きさから判断するための閾値を所定値T1としたとき、複数個のドットパターンのうち、平均値Tave≧所定値T1の関係を満たすドットパターンを判断することにより行われるとしても良い。
【0018】
また、前記特定は、1つのドットに対する濃度検出波形の、第1の濃度を示す閾値Aにおける幅をWa、1つのドットパターンに含まれる複数のドットの数をp、複数のドットpのうち、前記濃度検出波形の幅Waが、画質低下にまで至っていないことを幅Waの大きさから判断するための所定範囲から外れているドットの数をr、値rを値pで除した値を割合Tpct、画質が許容範囲内にあるか否かを割合Tpctの大きさから判断するための閾値を所定値T2としたとき、複数個のドットパターンのうち、割合Tpct≦所定値T2の関係を満たすドットパターンを判断することにより行われるとしても良い。
【0019】
さらに、前記作像部と前記電源部を制御して、前記像担持体上に、中間調の濃度を有するハーフトーンパターンを複数個、その複数個のハーフトーンパターンのそれぞれを前記現像バイアス電圧の交流成分の周波数を異なる値に切り替えて形成させるハーフトーンパターン形成手段と、を備え、前記検出手段は、前記複数個のハーフトーンパターンの濃度を検出し、前記設定手段は、複数個のハーフトーンパターンのそれぞれについて、そのハーフトーンパターンにおける前記像担持体の回転方向後端部の濃度に基づいて、1以上のハーフトーンパターンを特定し、特定した1以上のハーフトーンパターンのうち、最も画質が高いハーフトーンパターンを形成したときに用いられた現像バイアス電圧の交流成分の周波数をX2としたとき、前記周波数X1とX2の間の値である周波数を、前記周波数X1に代えて設定するとしても良い。
【0020】
ここで、前記周波数X1とX2との間の値とは、周波数X1とX2とを加算して2で除することにより得られる中間値であるとしても良い。
また、前記ハーフトーンパターンの特定は、1つのハーフトーンパターンにおける後端部以外の部分における濃度値をD1、当該後端部における濃度値をD2、濃度値D1とD2の差分をD3、画質が許容範囲内にあるか否かを差分D3の大きさから判断するための閾値を所定値T3としたとき、複数個のハーフトーンパターンのうち、差分D3≦所定値T3の関係を満たすハーフトーンパターンを判断することにより行われるとしても良い。
【0021】
さらに、前記ハーフトーンパターンの特定は、複数個のハーフトーンパターンのうち、ハーフトーンパターンにおける後端部における濃度値が、画質が許容範囲内にあるか否かを判断するための閾値以下の関係を満たすハーフトーンパターンを判断することにより行われるとしても良い。
【発明の効果】
【0022】
上記のように検出手段による中間転写体の検出値の大きさによって現像バイアス電圧の交流成分の周波数を設定する構成をとれば、中間転写体の電気抵抗値が通電の繰り返しなどによって長期間に亘って経時的に徐々に変化しても、実際の電気抵抗の検出値に応じた現像バイアス電圧の交流成分の周波数(現像バイアス周波数)をその都度、設定することができるようになり、従来のように温湿度の検知結果に対応する推定値を用いて現像バイアス周波数を設定する構成に比べて、再現画像の画質を向上することが可能になる。
【0023】
また、上記のように実際にドットパターンを形成し、形成されたドットパターンの濃度検出波形の形状に基づいて現像バイアス電圧の交流成分の周波数を設定する構成をとれば、ドットパターンを実際に形成しない構成に比べて、より適正な現像バイアス電圧の交流成分の周波数を設定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施の形態1に係るプリンタの全体の構成を示す図である。
【図2】プリンタに備えられる制御部の構成を示すブロック図である。
【図3】Y色用の抵抗値/周波数対応情報の内容を示す図である。
【図4】ドットパターンの形成例を示す図である。
【図5】感光体ドラム上におけるトナー像の様子を示す拡大図である。
【図6】転写位置における転写電流の流れ込み領域が変化する様子を模式的に現した図である。
【図7】中間転写ベルト上に転写された後のドットパターンにおけるトナー像の様子を示す拡大図である。
【図8】感光体ドラム上に形成されるハーフトーン画像のパターンの形成例を示す模式図である。
【図9】現像バイアス周波数と粒状性および後端掃き寄せとの対応関係およびベルト抵抗値と粒状性の対応関係を示す図である。
【図10】検出されたベルト抵抗値が基準抵抗値よりも大きい場合における現像バイアス周波数の決定方法を説明するための図である。
【図11】検出されたベルト抵抗値が基準抵抗値よりも小さい場合における現像バイアス周波数の決定方法を説明するための図である。
【図12】現像バイアス周波数の設定処理の内容を示すフローチャートである。
【図13】プリントジョブの実行時における現像バイアス周波数の出力制御処理の内容を示すフローチャートである。
【図14】実施の形態2に係るプリンタの構成を示す図である。
【図15】実施の形態2に係る制御部の構成を示す図である。
【図16】中間転写ベルト表面に形成されたY色のトナーパターンの形成例を示す図である。
【図17】トナーパターンに含まれるドットパターンの、パターン検出センサによる検出信号の波形の例を示す図である。
【図18】トナーパターンに含まれるハーフトーンパターンの、パターン検出センサによる検出信号の波形の例を示す図である。
【図19】現像バイアス周波数設定処理の内容を示すフローチャートである。
【図20】第1判断処理のサブルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図21】第2判断処理のサブルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図22】現像バイアス周波数の可変範囲内において、トナー飛び散りと後端掃き寄せに対する許容範囲内と許容範囲外を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る画像形成装置の実施の形態を、タンデム型カラーデジタルプリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)を例にして説明する。
<実施の形態1>
(1)プリンタの全体構成
図1は、プリンタ1の全体の構成を示す図である。
【0026】
同図に示すように、プリンタ1は、周知の電子写真方式により画像を形成するものであり、作像部10と、中間転写部20と、給送部30と、定着部40と、制御部50と、現像バイアス電源部60と、ベルト電流値検出部70と、転写バイアス電源部80とを備え、ネットワーク(例えば、LAN)に接続されて、外部端末(不図示)からの印刷(プリント)ジョブの実行指示を受け付けると、その指示に基づいてイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)色からなるカラーの画像形成を実行する。
【0027】
作像部10は、Y〜K色のそれぞれに対応する作像ユニット10Y〜10Kを備えている。作像ユニット10Yは、像担持体の一例としての感光体ドラム11Yと、その周囲に配設された帯電器12Y、露光部13Y、現像器14Y、一次転写ローラ15Y、感光体ドラム11Yを清掃するためのクリーナなどを備えている。
帯電器12Yは、矢印で示す方向に回転する感光体ドラム11Yの周面を帯電させる。ここでは、帯電極性がマイナス極性にされる。
【0028】
露光部13Yは、帯電された感光体ドラム11Yをレーザ光により露光走査して、感光体ドラム11Y上に静電潜像を形成する。
現像器14Yは、感光体ドラム11Yの現像位置において感光体ドラム11Yに対向配置される現像剤担持体の一例としての現像ローラ19Yに担持されている現像剤Dを用いて、感光体ドラム11Y上の静電潜像を現像する。ここでは、現像剤として、プラスの帯電極性を有するキャリアとマイナスの帯電極性を有するトナーを含む二成分現像剤が用いられ、トナーが感光体ドラム11Yに移動して感光体ドラム11Y上の静電潜像に付着することによって現像が行われ、感光体ドラム11Y上にY色のトナー像が作像される。
【0029】
一次転写ローラ15Yは、感光体ドラム11上の転写位置において感光体ドラム11上のY色トナー像を静電作用により中間転写部20の中間転写ベルト21上に転写させる。他の作像ユニット10M〜10Kについても、作像ユニット10Yと同様の構成である。
中間転写ベルト21は、所定の電気抵抗値を有する、例えばポリイミドなどの樹脂からなる無端状のベルトであり、駆動ローラと従動ローラに張架されて、駆動ローラの駆動力により同図の矢印で示す方向(ベルト周回方向)に周回走行される。
【0030】
作像ユニット10Y〜10Kにおいて、感光体ドラム11Y〜11K上に、対応する色のトナー像が作像され、その作像されたトナー像のそれぞれが中間転写ベルト21上に転写される。このY〜Kの各色の作像動作は、各色のトナー像が、走行する中間転写ベルト21の同じ位置に重ね合わせて転写(一次転写)されるようにベルト周回方向の上流側から下流側に向けてタイミングをずらして実行される。
【0031】
給送部30は、作像部10における上記の作像タイミングに合わせて、給紙カセットから記録シートSを1枚ずつ繰り出して、繰り出された記録シートSを搬送路35に沿って二次転写ローラ22に送る。
2次転写ローラ22に送られた記録シートSが二次転写ローラ22と中間転写ベルト21の間を通過する際に、中間転写ベルト21上に形成された各色トナー像が2次転写ローラ22の静電作用により記録シートSに一括して二次転写される。
【0032】
各色トナー像が二次転写された後の記録シートSは、定着部40まで搬送され、定着部40の定着ローラ41と加圧ローラ42との間を通過する際に加熱、加圧されることにより、その表面のトナーが記録シートSの表面に融着して定着された後、排紙ローラ38によって排紙トレイ39上に排出される。
現像バイアス電源部60は、現像器14Y〜14Kの現像ローラ19Y〜19Kに現像のための現像バイアス電圧を供給するものであり、作像ユニットのそれぞれに対応する電源部60Y〜60Kが設けられている。電源部60Y〜60Kは、それぞれが現像バイアス電圧として直流(DC)成分に交流(AC)成分が重畳された電圧を出力する。
【0033】
この直流成分に交流成分が重畳された現像バイアス電圧が現像ローラ19Y〜19Kに印加されることにより、現像位置において、現像ローラ19Y〜19Kと感光体ドラム11Y〜11Kとの間に現像に必要な所定の電位差が生じ、AC成分により現像剤Dのトナー粒子が現像ローラ19Y〜19Kと感光体ドラム11Y〜11Kとの間で往復運動が行われるようになって、トナー粒子の、現像ローラ19Y〜19Kから感光体ドラム11Y〜11Kの静電潜像への移動が行われ易くなって現像性が向上する。
【0034】
現像バイアス電圧は、Y〜K色のそれぞれについて、その直流電圧の値が例えば、−100〔V〕〜−1000〔V〕の範囲内の値であり、交流成分の周波数が例えば、5〔kHz〕〜9〔kHz〕の間で可変され、交流波形が例えば矩形波であり、ピーク・ツー・ピークの値が例えば、1.4〔kV〕とされる。
電源部60Y〜60Kは、出力される現像バイアス電圧の交流成分の周波数(現像バイアス周波数)を可変可能に構成されている。このように現像バイアス周波数を可変可能に構成しているのは、現像の際に生じるトナー飛び散りを抑制しつつ、後端掃き寄せを抑制するためである。この理由については、後述する。
【0035】
ベルト電流値検出部70は、導電性の電極71、72と、電流検出部73と、DC電源部74とを備える。
電極71、72は、中間転写ベルト21の表面側と裏面側とから挟むように中間転写ベルト21に接触した状態で中間転写ベルト21を介して対向配置される。これにより、電極71と電極72間が、中間転写ベルト21との接触部位における中間転写ベルト21の表面から裏面までのベルト厚み部分を介して直列接続される。なお、電極71、72は、例えばローラ状であっても良いし、ブラシ状であっても良い。
【0036】
電流検出部73は、電極72と直列接続される。
DC電源部74は、電極71から中間転写ベルト21、電極72を介して電流検出部73までの間に形成される直列回路75に所定値の直流電圧を供給する。この直流電圧の供給により直列回路75に電流が流れ、その電流値が電流検出部73により検出される。電流検出部73で検出された電流値を示す情報は、制御部50に送られる。
【0037】
制御部50では、電流検出部73で検出された電流値から、中間転写ベルト21のベルト表面と裏面間の厚み方向における電気抵抗値(以下、「ベルト抵抗値」という。)を求める。求めたベルト抵抗値は、現像バイアス周波数の適正値を求めるための処理に利用される。この処理については、後述する。
転写バイアス電源部80は、転写ローラ15Y〜15Kに対して、一次転写のための所定値の電圧、ここではプラス極性の電圧を供給するものであり、作像ユニット10Y〜10Kのそれぞれに対応する電源部80Y〜80Kが設けられている。
(2)制御部50の構成
図2は、制御部50の構成を示すブロック図である。
【0038】
同図に示すように制御部50は、主な構成要素として、通信インターフェース(I/F)部101と、CPU102と、ROM103と、RAM104と、ベルト抵抗値検出部105と、現像バイアス周波数設定部(以下、「設定部」という。)106と、ベルト抵抗値/現像バイアス周波数対応情報記憶部(以下、「記憶部」という。)107などを備え、各部は相互に信号やデータのやりとりを行えるようになっている。
【0039】
通信I/F部101は、ネットワーク、ここではLANと接続するためのLANカード、LANボードといったインターフェースであり、外部端末からLANを介して送られてくるプリントジョブのデータを受信する。
CPU102は、ROM103から必要なプログラムを読み出し、通信I/F部101を介して受信したプリントジョブのデータに基づき、作像部10、中間転写部20、給送部30、定着部40などを制御して画像形成動作を円滑に実行させる。
【0040】
また、CPU102は、所定の検出タイミングに、ベルト抵抗値検出部105に指示してベルト抵抗値を検出させる処理を行うと共に、設定部106に指示して現像バイアス周波数として最適な周波数を、検出されたベルト抵抗値に基づき設定させる処理を行う。
さらに、転写バイアス電源部80に指示して、プリントジョブ実行中に、一次転写のための電圧を転写ローラ15Y〜15Kに供給させる。
【0041】
ベルト抵抗値検出部105は、CPU102からの指示があると、DC電源部74に指示して、所定値のDC電圧を出力させる。これにより、ベルト電流値検出部70の直列回路75に電流が流れ、その電流値が電流検出部73で検出され、検出された電流値(検出電流値)を示す情報がベルト抵抗値検出部105に送られる。
ベルト抵抗値検出部105は、電流検出部73からの検出電流値に基づきベルト抵抗値を求める。ここでは、DC電源部74から出力される電圧値が決まっており、電極71、72の抵抗値も予め判っているので、DC電源部74の出力電圧値と、電極71、72の抵抗値と、検出電流値とから、オームの法則によりベルト抵抗値が求められる。ベルト抵抗値は、転写時の通電を繰り返すことによる耐久や温湿度の影響などにより経時的に変動する特性を有するので、検出毎にその検出時点でのベルト抵抗値が得られることになる。得られたベルト抵抗値を示す情報は、設定部106に送られる。
【0042】
設定部106は、現時点でのベルト抵抗値の大きさに基づき、Y〜K色毎に現像バイアス周波数の最適値を設定する。この設定には、記憶部107に記憶されているY色〜K色毎の抵抗値/周波数対応情報108が参照される。
図3は、Y色用の抵抗値/周波数対応情報108の内容を示す図である。
同図に示すように、抵抗値/周波数対応情報108は、ベルト抵抗値Rと現像バイアス周波数Xの対応関係を示す情報であり、ベルト抵抗値Rの基準値をRaとして基準値Raに対する差分δの大きさを所定の範囲ごとに区切り、所定の範囲ごとに、その範囲に適した現像バイアス周波数Xの値を対応付けてなる。ここで差分δは、ベルト抵抗値Rの検出値から基準値Raを差し引いた値に相当する。
【0043】
ベルト抵抗値Rが基準値Raのときに現像バイアス周波数Xが基準の周波数(基準値)X0に対応しており、ベルト抵抗値Rが基準値Raよりも小さい場合(差分δがマイナスになる場合)、現像バイアス周波数Xが基準値X0に+βを加えた値になり(高くなり)、ベルト抵抗値Rが基準値Raよりも大きい場合(差分δがプラスになる場合)、現像バイアス周波数Xが基準値X0からγを差し引いた値になる(低くなる)。
【0044】
同図では、α1<α2<・・<αm、β1<β2<・・<βm、γ1<γ2<・・<γmの関係になっているので、ベルト抵抗値Rと現像バイアス周波数Xは、所定の範囲を単位として、一方が大きくなるに連れて他方が小さくなる関係を有するといえる。
この一方が大きくなると他方が小さくなるという関係は、他のM〜K色についても同様である。なお、ベルト抵抗値Rの基準値Raは、例えば1×1010〔Ω□〕程度である。ベルト抵抗値Rと現像バイアス周波数Xの対応関係が、上記の関係になっている理由については、次の(3)項で具体的に説明する。
【0045】
設定部106により設定されたY〜K色用の現像バイアス周波数は、設定された以降のプリントジョブごとに、そのプリントジョブ開始の際に読み出され、プリントジョブ実行中に現像バイアス電源部60Y〜60Kから現像ローラ19Y〜19Kに供給される現像バイアス電圧の現像バイアス周波数が、読み出された周波数の値になるように制御される。なお、設定部106により現像バイアス周波数が設定されるごとに、現像バイアス周波数の情報が上書き保存(更新)されるとしても良いし、消去せずに過去の情報を管理しつつ最新の情報が読み出されるとしても良い。
【0046】
以下、ベルト抵抗値Rと現像バイアス周波数Xの対応関係について、Y色を例に具体的に説明する。
(3)ベルト抵抗値Rと現像バイアス周波数Xの対応関係について
(3−1)現像バイアス周波数Xとドットパターンのドットの粒状性との関係
図4は、ドットパターン120の形成例を示す図であり、図4(a)は、トナー飛び散が発生していない状態の例を示しており、図4(b)は、トナー飛び散りが発生している状態の例を示している。両図のそれぞれについて、左右方向がベルト周回方向に沿う方向(副走査方向)に相当する。
【0047】
両図に示すように、ドットパターン120は、複数個のドット121のそれぞれが間隔122をおいて配列されてなり、主に階調画像を擬似的に再現するのに用いられ、1つのドットが例えば直径1〔mm〕の円形状になっている。再現すべき階調値に応じて、それぞれのドット121の大きさと単位面積当たりの個数とが予め決められている。
図4(a)に示すようにトナー飛び散りが発生していない状態では、A−A線上におけるドットパターン120の濃度分布をとると、同図のグラフの波形F1〜F8がドット121の濃度を示す部分に相当し、波形F1〜F8のうち隣り合うもの同士の間が間隔122の濃度を示す部分に相当し、それぞれのドット121の濃度がBで略一定であり、径(ベルト周回方向における幅)もdで略一定になっている。ドット121の形状が円形、濃度がB、径がdであることをそれぞれ以下、基準という。
【0048】
これに対して、図4(b)に示すようにトナー飛び散りが発生している状態では、ドットのうち、径が基準よりも小さいドット125、大きいドット126、また形状が星型になっているドット127、濃度が基準よりも低いドット128などが含まれている。ドットの形状、径、濃度がそれぞれ基準からずれると、濃度分布波形も図4(b)に示すように、基準のドットの波形(図4(a))に対して崩れたような波形になる。
【0049】
このように形状、径、濃度が基準からすれたドットが形成されるのは、トナー飛び散りに起因するものである。このトナー飛び散りは、現像工程と転写工程で発生し易い。
すなわち、現像工程では、現像バイアス周波数Xが大きくなると、現像位置において感光体ドラム11Yと現像ローラ19Y間でのトナー粒子の往復運動が行われ易くなる。
従って、現像ローラ19Yから感光体ドラム11Yに向かって飛翔したトナー粒子が、感光体ドラム11Y上の静電潜像である本来の画像領域から外れた位置(非画像領域)に付着したとしても、現像位置を通過するまでの間に再度、現像ローラ19Yに戻り、非画像領域に付着したままになることが少なくて済み、トナー粒子の整列性と再配置性が向上し、より静電潜像に忠実にトナー粒子が付着することになって画質が向上する。
【0050】
これに対して、現像バイアス周波数Xが小さくなると、トナー粒子の往復運動が十分に行われなくなって、感光体ドラム11Y上の非画像領域にトナー粒子が付着すると、現像ローラ19Yに戻らずに、そのまま非画像領域に付着してしまうことが多くなる。
ドットパターン120では、隣り合うドット121とドット121の間である間隔121の部分が非画像領域になり、非画像領域である間隔122の部分へのトナー粒子の飛び散り方によって、形状が星型になったドット、径が大きめまたは小さめになったドット、濃度が下がったドットがそれぞれ形成されることが生じる。
【0051】
図5は、実験により現像バイアス周波数Xを可変してドットパターンを形成したときの、感光体ドラム11Y上におけるトナー像の様子を観察した結果を示す拡大図であり、図5(a)が現像バイアス周波数Xを5〔kHz〕に設定した場合の例を示し、図5(b)が現像バイアス周波数Xを9〔kHz〕に設定した場合の例を示している。
なお、図5の観察結果は、現像バイアス周波数以外の現像条件を、感光体ドラム11Yの表面電位をVa、現像バイアス電圧の実効値をVb、潜像電位(露光された部分の電位)をVcとしたとき、VaとVbの差を100〔V〕程度、VbとVcの差を250〔V〕程度にすると共に、現像バイアス電圧のAC成分の波形を矩形波、そのピーク・ツー・ピークの電圧を1.4〔kV〕に設定し、現像バイアス周波数Xを可変すること以外は、同じ条件で実験した結果を示している。
【0052】
両図を見ると、図5(a)で示す現像バイアス周波数Xが低い場合よりも、図5(b)で示す現像バイアス周波数Xが高い場合の方が、1つのドットを構成するトナー粒子の集まり具合が良く、ドットの再現性や整列性が向上しており、ドット周辺へのトナー粒子の飛び散りが少ないことが判る。ドットの再現性や整列性のことを以下、ドットの粒状性という。なお、このドットの粒状性の特性は、現像バイアス周波数Xが5〔kHz〕と9〔kHz〕の間のそれぞれの周波数においても同様に有しており、現像バイアス周波数Xが高くなるに連れて向上することが確認されている。
【0053】
このように現像バイアス周波数Xが低から高に移るに連れて現像時におけるドットの粒状性が向上するのは、上記のように現像バイアス周波数Xが低から高くなるに連れて、現像位置におけるトナー粒子の往復運動が行われ易くなり、感光体ドラム11Y上における本来の画像領域ではなくその周辺の非画像領域にトナー粒子が付着してしまっても、一旦、現像ローラ19Yに戻り、再度の往復運動で感光体ドラム11Yの画像領域に移動することで、非画像領域に付着したままにならないことから、非画像領域に付着したままになるトナーの飛び散りが低減されたものと推定される。
【0054】
次に、転写工程におけるトナー飛び散りについて説明する。
(3−2)ベルト抵抗値Rとドットパターンのドットの粒状性との関係
転写工程では、中間転写ベルト21は、耐久や温湿度などによってベルト抵抗値が変化し、ベルト抵抗値が変化すると、転写電流が転写ローラ15Yから中間転写ベルト21を介して感光体ドラム11Yに流れ込む際のその流れ込み領域が変化する。
【0055】
図6は、転写位置における転写電流の流れ込み領域が変化する様子を模式的に現した図であり、感光体ドラム11Yの回転方向(ドラム回転方向)における幅mが本来の転写位置における流れ込み領域を示している。
ベルト抵抗値が小さくなると、抵抗値が下がった分だけ幅mよりも広い幅、例えばm1に亘った領域まで流れ込み領域が広がることが生じ、この流れ込み領域の広がりは、ベルト抵抗値が小さくなるに連れて大きくなる傾向にある。
【0056】
このように流れ込み領域が広がると、同図の拡大図に示すように、感光体ドラム11Y上の一部のトナー粒子3が転写位置において本来、中間転写ベルト21に転写されるべき領域260に到達する前に、領域260よりもドラム回転方向上流側の領域261において転写が先立って行われてしまうトナー飛び散りが生じ易くなる。
図7は、中間転写ベルト21上に転写された後のドットパターンにおけるトナー像の様子を観察した結果を示す拡大図であり、図7(a)はベルト抵抗値RがRaであった場合を示し、図7(b)は、ベルト抵抗値RがRb(>Ra)であった場合を示している。なお、両図は、ベルト抵抗値が異なる中間転写ベルト21を実際にそれぞれ取り替えて実験したときの結果を示しており、ベルト抵抗値が異なる以外は同じ条件によるものである。
【0057】
両図を見ると、図7(a)で示すベルト抵抗値Rが小さい場合よりも、図7(b)で示すベルト抵抗値Rが大きい場合の方が、ドットの粒状性が良くなっていることが判る。このドットの粒状性の特性は、ベルト抵抗値RがRaとRb間のそれぞれの値についても同様に有しており、ベルト抵抗値Rが大きくなるに連れてドットの粒状性が向上することが確認されている。
【0058】
このようにベルト抵抗値Rが小から大になるに連れて転写時におけるドットの粒状性が向上するのは、以下の理由による。すなわち、ベルト抵抗値Rが小さいと、転写電流が転写ローラ15Yから中間転写ベルト21を介して感光体ドラム11Yに流れ込むときのその流れ込み領域が本来の転写位置よりも広がって転写時のトナー飛び散りが発生し易くなる。これに対して、ベルト抵抗値Rが大きいと、その流れ込み領域が、ベルト抵抗値Rが小さい場合に比べて広がらず、流れ込み領域が広がることによるトナー飛び散りが発生し難くなったからであると推定される。
【0059】
図5の現像時のトナー飛び散りと、図7の転写時のトナー飛び散りとを比較すると、転写時の方が現像時よりも飛び散りの程度が大きくなっており、この比較結果は、通常、他の一般の画像形成装置にも当てはまる。
(3−3)現像バイアス周波数Xと後端掃き寄せとの関係
上記の(3−1)では、現像バイアス周波数Xを高くすると現像時のトナー飛び散りの低減を図れることを説明したが、現像バイアス周波数Xを高くしすぎると、特に中間調であるハーフトーンのベタ画像(以下、「ハーフトーン画像」という。)に後端掃き寄せと呼ばれる現象が生じ易くなる。
【0060】
この後端掃き寄せとは、感光体ドラム11Y上に形成される現像後におけるハーフトーン画像の形成領域のうち、ドラム回転方向の先端部から中央部を介して後端部をみたときに、先端部と中央部に位置すべきトナー粒子の一部が後端部側に流れて後端部に集まるようになり、先端部や中央部の濃度が本来よりもやや下がり(薄くなり)、後端部の濃度が本来よりもやや上がる(濃くなる)といったように、ハーフトーン画像における先端部から後端部にかけて濃度ムラが生じる現象である。
【0061】
図8は、感光体ドラム11Y上に形成されるハーフトーン画像のパターン(ハーフトーンパターン)130の形成例を示す模式図であり、図8(a)は後端掃き寄せが発生していない状態を示し、図8(b)は後端掃き寄せが発生している状態を示している。
後端掃き寄せは、上記のようにハーフトーンパターン130におけるドラム回転方向の後端部131の濃度が先端部や中央部の濃度よりも濃くなることにより、ドラム回転方向に沿って濃度ムラが生じる現象である。
【0062】
図8(a)に示すように後端掃き寄せが発生していない状態では、A−A線上におけるハーフトーンパターン130の濃度分布をとると、同図のグラフの波形G0に示すように濃度が略一定(中間長の階調値に相当する濃度)になっている。
これに対して、後端掃き寄せが発生している状態では、図8(b)のグラフのピーク波形Gaに示すように、ハーフトーンパターン130におけるドラム回転方向の後端部131の濃度が先端部や中央部よりも高濃度になっている。
【0063】
このように現像時にハーフトーンパターン130にドラム回転方向に沿って濃度ムラが発生するのは、現像バイアス周波数が高くなり、現像位置においてトナー粒子の往復運動が過度になったことにより、ハーフトーンパターン130におけるドラム回転方向の先端部や中央部に本来、付着すべきトナー粒子の一部が付着せずに往復運動を継続してしまい、先端部から中央部にかけて徐々にずれて後端部の方に移動して、後端部では本来、後端部に位置すべきトナー粒子と、中央からずれてきたトナー粒子とが足し合わされるようになって、後端部の濃度が先端部や中央部に比べて上がることによるものと推定される。
【0064】
この後端掃き寄せによるハーフトーン画像の濃度ムラは、階調再現性の低下に繋がるので、トナー飛び散りとの関係を考慮して、現像バイアス周波数Xを設定する必要が生じる。なお、後端掃き寄せは、現像工程で発生するが転写工程では発生せず、ベルト抵抗値Rの大きさが変化しても影響を受けることがないことが確認されている。
(3−4)現像バイアス周波数Xの設定方法
図9(a)は、現像バイアス周波数Xと、粒状性および後端掃き寄せとの対応関係を表形式で示す図であり、図9(b)は、ベルト抵抗値Rと、粒状性および後端掃き寄せとの対応関係を表形式で示す図であり、図9(c)は、ベルト抵抗値Rが異なる場合の現像バイアス周波数Xと粒状性との対応関係をグラフで示す図であり、図9(d)は、現像バイアス周波数Xと後端掃き寄せとの対応関係をグラフで示す図である。
【0065】
図9(a)〜図9(d)から、現像バイアス周波数Xと粒状性とは、現像バイアス周波数Xが高くなるに連れて粒状性が良くなる関係を有し、現像バイアス周波数Xと後端掃き寄せとは、現像バイアス周波数Xが低くなるに連れて後端掃き寄せが良くなる関係を有し、ベルト抵抗値Rが変化した場合、現像バイアス周波数Xが同じ値であれば、ベルト抵抗値Rが大きいほど粒状性が良くなる関係を有していることが判る。
【0066】
これらの関係をもとに、ベルト抵抗値Rに適した現像バイアス周波数Xの値を設定することができる。この設定方法を、図10と図11を用いて説明する。
図10は、ベルト抵抗値Rの可変範囲内で基準となる値(基準抵抗値)Raに対して、検出された抵抗値(検出抵抗値)Rbが大きかった場合における現像バイアス周波数Xの設定方法を説明するための図である。
【0067】
図10(a)は、現像バイアス周波数Xと粒状性との関係を示す図であり、実線で示すグラフが基準抵抗値Raの場合を、一点鎖線で示すグラフが検出抵抗値Rbの場合を示しており、図10(b)は、図10(a)の現像バイアス周波数Xと同じレンジ(範囲)をとった場合の現像バイアス周波数Xと後端掃き寄せとの関係を示す図である。
両図において粒状性の基準をJとして、ベルト抵抗値が基準値Raの場合、現像バイアス周波数Xを基準値X0にすれば、基準Jの粒状性が得られ、かつ後端掃き寄せとしてU0が得られることが判る。
【0068】
これに対して、ベルト抵抗値が基準値Raよりも高いRbである場合、基準値Raのときと同じ粒状性Jを得るには、現像バイアス周波数Xを基準値X0よりも低いX1に設定すれば良く、現像バイアス周波数XをX1に設定すれば、後端掃き寄せをU0よりも良好なU1を得られることになる。
一方、ベルト抵抗値Rが基準値Raよりも低いRcの場合には、図11(a)に示すように粒状性Jを得るには、現像バイアス周波数Xを基準値X0よりも高いX2に設定すれば良く、この場合には後端掃き寄せはU0よりも低減するU2が得られることになる。なお、後端掃き寄せの低下をできるだけ抑制するには、粒状性を基準Jよりも少し下げて、現像バイアス周波数XをX0とX2の間に設定することもできる。
【0069】
従って、ベルト抵抗値Rの、基準値Raとの差分δの大きさに対する粒状性の変化幅と後端掃き寄せの変化幅とを実験などから求めて、差分δの大きさごとに、粒状性と後端掃き寄せとが、再現画像の画質が人の目で劣化と感じられる範囲まで低下しないように(画質が一定レベル以上の範囲内に収まるように)、その差分δの大きさに適した現像バイアス周波数Xの値を対応付けることにより、現像バイアス電圧の交流成分の周波数を適正に設定して、再現画像の画質の向上を図ることが可能になる。
【0070】
このベルト抵抗値Rの、基準値Raとの差分δの大きさを所定の範囲ごとに区切り、それぞれの範囲に対して、その範囲に適した現像バイアス周波数Xを対応付けた結果が図3に示すY色の抵抗値/周波数対応情報108に相当し、記憶部107に予め格納される。
(4)制御部50による現像バイアス周波数の設定と現像バイアス周波数の出力制御
図12は、現像バイアス周波数の設定処理の内容を示すフローチャートである。
【0071】
この設定処理は、図示しないメインルーチンにより所定時間、例えば0.1秒ごとにコールされることにより繰り返し実行される。
図12に示すように現像バイアス周波数の設定時期であるか否かを判断する(ステップS1)。この判断は、例えば1枚のシートにおける片面へのプリントを行うことを1回の画像形成回数として、プリントごとに画像形成回数を積算する構成をとった場合に、その画像形成回数の積算値(プリント回数)が所定回数、例えば1000回に達したか否かにより行うとすることができる。プリント回数が所定値に達するごとに、その時点でのベルト抵抗値Rに適した現像バイアス周波数Xの値を設定することができる。
【0072】
現像バイアス周波数の設定時期ではないことを判断すると(ステップS1で「NO」)、メインルーチンにリターンする。現像バイアス周波数の設定時期であることを判断すると(ステップS1で「YES」)、ベルト抵抗値Rを検出する(ステップS2)。この検出は、ベルト抵抗値検出部105が実行する。
そして、検出されたベルト抵抗値Rから基準値Raを差し引いた値(差分)δを求め(ステップS3)、記憶部107に記憶されている抵抗値/周波数対応情報108を参照し、求めた差分δが属する抵抗値の範囲に対応する現像バイアス周波数を読み出し、読み出した現像バイアス周波数を、プリントジョブ時に用いるべき現像バイアス周波数として設定して(ステップS4)、メインルーチンにリターンする。
【0073】
この現像バイアス周波数の設定は、設定部106により実行され、例えば現像バイアス周波数を示す情報が設定部106に設けられている不揮発性の記憶部(不図示)に記憶されることにより行われる。なお、前回の設定で現像バイアス周波数を示す情報が既に記憶されている場合には、これに代えて今回の現像バイアス周波数を示す情報が保存される(今回の情報に更新される)。また、現像バイアス周波数が設定されるごとに、プリント回数がゼロにリセットされる。
【0074】
上記では、プリント回数が所定回数に達したときを、現像バイアス周波数の設定条件を満たしたとして、現像バイアス周波数を設定するとしたが、これに限られない。例えば、装置周辺または装置内の温度および湿度の少なくとも一方の変動量が所定量以上になったときを設定条件としても良い。ベルト抵抗値Rは、温度、湿度によっても変動が生じる場合があり、温度、湿度の影響を受けて変動している実際のベルト抵抗値Rの大きさに基づき、その時点での最適な現像バイアス周波数を設定することができる。
【0075】
さらに、いわゆる色ずれ補正や階調補正などの、形成画像の画質を安定化させるための画像安定化制御の実行時期と同じ時期に達したときを設定条件としても良い。例えば、装置の電源オン時、プリント回数が所定値に達したとき、ジャムや故障などからの復帰の際、節電(スリープ)状態からの解除時などの時期が考えられる。
また、本実施の形態では、ベルト抵抗値Rを検出するという処理だけで、その検出時における最適な現像バイアス周波数を設定することができることから、所定時間ごとや1回のプリントごとに、その開始に先立って、または終了直後などに設定を実行するとしても良い。さらに、上記の少なくとも1つの条件を満たしたときに設定するとしても良い。
【0076】
図13は、プリントジョブの実行時における現像バイアス周波数の出力制御処理の内容を示すフローチャートである。この出力制御処理は、図示しないメインルーチンにより所定時間、例えば0.1秒ごとにコールされることにより繰り返し実行される。
図13に示すようにプリントジョブを実行するか否かを判断する(ステップS5)。
プリントジョブの実行を判断すると(ステップS5で「YES」)、設定部106に設けられている記憶部から現像バイアス周波数を示す情報を読み出して(ステップS6)、読み出した現像バイアス周波数と同じ値のAC周波数の現像バイアス電圧が出力されるように、現像バイアス電源部60Yを制御して(ステップS7)、リターンする。
【0077】
これにより、プリントジョブ実行中には、現像バイアス周波数の設定処理で設定された周波数とAC周波数が一致する現像バイアス電圧が現像ローラ19Yに供給されることになる。なお、プリントジョブを実行しないことを判断すると(ステップS5で「NO」)、そのままリターンする。
以上、説明したように本実施の形態では、ベルト抵抗値Rとこれに適した現像バイアス周波数Xとを対応付けた抵抗値/周波数対応情報を保持しておいて、ベルト抵抗値Rが検出されると、その検出値に対応する現像バイアス周波数Xを適正値として設定するので、トナー飛び散りと後端掃き寄せによる画質劣化を抑制して、トナー飛び散りと後端掃き寄せの両方をバランスさせたトータルの再現画像の画質向上を図ることができる。
【0078】
<実施の形態2>
上記実施の形態1では、抵抗値/周波数対応情報を参照し、検出されたベルト抵抗値Rに適した現像バイアス周波数Xを設定するとしたが、本実施の形態2では、現像バイアス周波数Xを異なる値に可変しながら実際に中間転写ベルト12上にトナーパターンを形成し、形成されたトナーパターンをセンサで検出して、その検出結果から再現画像の画質が一定レベル以上のトナーパターンを特定し、特定したトナーパターンを形成したときの現像バイアス周波数Xを、検出時点における適正値として設定するとしており、この点が実施の形態1と異なっている。以下、説明の重複を避けるため、実施の形態1と同じ内容についてはその説明を省略し、同じ構成要素については同符号を付すものとする。
(1)実施の形態2に係るプリンタの構成
図14は、実施の形態2に係るプリンタ201の構成を示す図であり、実施の形態1で配置されていたベルト電流値検出部70が設けられておらず、中間転写ベルト21の下方であり、作像ユニット10Kよりもベルト周回方向の下流側、かつ二次転写位置221よりもベルト周回方向の上流側の位置にパターン検出センサ210が配置されている。
【0079】
パターン検出センサ210は、発光部と受光部を有する反射型の光学センサであり、発光部から中間転写ベルト21の表面に向かって光が発せられ、その光の、中間転写ベルト21表面に形成されているトナーパターン(図16)からの反射光を受光部で受光して、受光した光量の大きさに応じた電気信号を出力するものである。出力された電気信号は、制御部250に送られる。
(2)制御部250の構成
図15は、実施の形態2に係る制御部250の構成を示す図であり、実施の形態1の制御部50に設けられていたベルト抵抗値検出部105と、設定部106と、記憶部107に代えて、パターン形成部251と現像バイアス周波数設定部252が設けられている。
【0080】
パターン形成部251は、作像部10を制御して、Y〜K色ごとに、中間転写ベルト21表面に複数個のトナーパターン(図16)のそれぞれを、現像バイアス周波数Xを異なる値に切り替えて形成する。
現像バイアス周波数設定部252は、形成されたトナーパターンの、パターン検出センサ210による検出結果に応じてその検出時点での現像バイアス周波数を設定する。以下、Y色を例にして、トナーパターンの形成例と現像バイアス周波数の設定方法とを具体的に説明する。
(3)トナーパターンについて
図16は、中間転写ベルト21表面に形成されたY色のz個(zは、2以上の整数)のトナーパターンP1〜Pzの形成例を示す図であり、図14の矢印Aで示す方向から中間転写ベルト21表面を見たときの図に相当する。
【0081】
図16に示すように、複数個のトナーパターンP1〜Pzのそれぞれは、ベルト周回方向に所定の間隔をおいて形成されてなる。トナーパターンP1は、ドットパターンQ1とハーフトーンパターンE1を含み、トナーパターンP2は、ドットパターンQ2とハーフトーンパターンE2を含み、トナーパターンPzは、ドットパターンQzとハーフトーンパターンEzを含んでいる。他のトナーパターンP3・・PZ−1も同様である。
【0082】
ドットパターンQ1は、複数個のドットd1、d2・・dpがベルト周回方向に所定の間隔をおいて形成されてなり、ハーフトーンパターンE1は、所定の中間調の階調値を示す濃度のベタ画像からなる。他のトナーパターンP2〜Pzについても、トナーパターンP1と同じ構成になっている。
トナーパターンP1〜Pzのそれぞれは、現像バイアス周波数Xが異なるが、これ以外の作像条件が同じであり、同じ印字用データに基づき作像ユニット10Yにおいて感光体ドラム11Y上に形成され、その形成後に中間転写ベルト21上に転写される。トナーパターンP1〜Pzは、中間転写ベルト21上での主走査方向における転写位置が同図の一点鎖線で示す、パターン検出センサ210による検出ライン209上にそれぞれ形成されるようになっている。なお、印字用データは、予めROM103などに格納されている。
【0083】
感光体ドラム11Yから中間転写ベルト21上に転写されたY色のトナーパターンP1〜Pzは、中間転写ベルト21の周回走行によりパターン検出センサ210の検出位置に向かって移動し、検出位置を通過する際に検出ライン209上でそれぞれ検出される。
図17は、ドットパターンQ1〜Qzのうち、あるドットパターンの、パターン検出センサ210による検出信号の波形(検出波形)F0の例を示す図であり、横軸が時間、縦軸が濃度になっている。濃度は、大きくなるにつれて濃くなることを示す。
【0084】
同図に示す検出波形F0における波形F1、F2、F3・・Fpは、ドットd1、d2、d3・・dpの検出部分に相当し、波形F1〜Fpのそれぞれの時間軸における幅W1、W2、W3・・Wpは、ドットd1、d2、d3・・dpの径の大きさに相当する。
ドットパターンにトナーの飛び散りが発生していなければ、それぞれのドットの粒状性が略均等であり、ドットの粒状性が略均等ということは、それぞれのドットの大きさが略同じであるといえ、幅W1〜Wpもそれぞれが略同じ幅になるはずである。
【0085】
これに対して、トナーの飛び散りが発生していれば、ドットごとに粒状性が異なり、ドットの大きさが異なって、幅W1〜Wpのそれぞれにばらつきが生じることになる。
同図の波形F2は、トナーの飛び散りにより、ドットd2が本来の大きさよりも小さくなって、幅W2が本来の幅W1よりも狭くなった例を示している。
波形F3は、ドットd3を構成するトナー粒子の一部がドットd3の周囲に飛び散ったことにより、ドットd3が本来の大きさよりも拡張されたようになって幅W3が本来の幅W1よりも広くなり、ドットd3の中央部の濃度が下がり、ドットd3の周辺部(飛び散りにより生じた部分)の濃度が中央部に対して低い濃度になっている例を示している。
【0086】
このように、ドットパターンQ1〜Qzのそれぞれの検出波形をモニターして、検出波形の形状を解析することにより、ドットパターンQ1〜Qzのうち、トナーの飛び散りが生じていないパターン、トナーの飛び散りが生じているが記録シートS上での再現画像の画質に影響を与える程度には至っていないパターン、トナーの飛び散りの程度が画質に影響を与える程度に至っているパターンなどを区別して、画質が一定以上のドットパターンを判断することができるようになる。この判断方法については、後述する。
【0087】
図18は、ハーフトーンパターンE1〜Ezのうち、あるハーフトーンパターンの、パターン検出センサ210による検出信号の波形(検出波形)G0の例を示す図であり、横軸が時間、縦軸が濃度になっている。濃度は、大きくなるにつれて濃くなることを示す。
同図に示す検出波形G0の時間軸における幅Lが、検出対象のハーフトーンパターンのベルト周回方向における長さに相当する。
【0088】
同図は、ハーフトーンパターンに後端掃き寄せが発生している場合の例を示しており、波形G0のうち、後端部(ベルト周回方向下流側の端部)の波形Gaがピークを有する波形になっている。ハーフトーンパターンの濃度値は、後端部が最大値D2になっており、先端部(ベルト周回方向上流側の端部)から中央部を介して後端部までの間の濃度よりも濃くなっている。
【0089】
ハーフトーンパターンに後端掃き寄せが発生していなければ、上記の図8(a)に示すようにハーフトーンパターンの先端部から後端部にかけて濃度値が略一定になり、ハーフトーンパターンの濃度値を示す波形G0の形状は、略フラットになる。
このことから、ハーフトーンパターンE1〜Ezのそれぞれの検出波形をモニターして、検出波形の形状を解析することにより、ハーフトーンパターンE1〜Ezのうち、後端掃き寄せが生じていないパターン、後端掃き寄せが生じているが記録シートS上での再現画像の画質に影響を与える程度には至っていないパターン、後端掃き寄せの程度が画質に影響を与える程度に至っているパターンなどを区別して、画質が一定レベル以上のハーフトーンパターンを判断することができるようになる。
【0090】
画質が一定レベル以上のドットパターンとハーフトーンパターンの判断は、現像バイアス周波数設定部202による現像バイアス周波数設定処理において実行される。
(4)現像バイアス周波数設定処理の内容
図19は、現像バイアス周波数設定処理の内容を示すフローチャートであり、現像バイアス周波数の設定時期が到来するごとに実行される。この現像バイアス周波数の設定時期は、上記実施の形態1と同じとすることができる。
【0091】
現像バイアス周波数の設定時期になると、Y色のトナーパターンを形成する(ステップS10)。このY色のトナーパターンは、図16に示すトナーパターンP1〜Pzに相当する。Y色のトナーパターンの形成は、作像部10Yにおける感光体ドラム11Y上への帯電、露光、現像の各工程により感光体ドラム11Y上に形成されたトナーパターンP1〜Pzのトナー像が中間転写ベルト21上に転写されることにより行われる。このトナーパターンP1〜Pzの形成の現像工程では、上記のようにトナーパターンP1〜Pzのそれぞれについて、トナーパターンを現像する際に用いられる現像バイアス周波数Xが異なる値に順次、切り替えられることにより実行される。
【0092】
例えば、トナーパターンP1に対して現像バイアス周波数X1、トナーパターンP2に対して現像バイアス周波数X2(ここで、X1<X2)・・トナーパターンPzに対して現像バイアス周波数Xz(ここで、XZ−1<Xz)とされる。現像バイアス周波数X1、X2・・Xzの値は、予め決められており、例えば5〔kHz〕〜9〔kHz〕の範囲においてZ(複数)に等分された値が設定される。感光体ドラム11Yに形成されたトナーパターンP1〜Pzのそれぞれの静電潜像が現像位置に到達するタイミングに合わせて、現像バイアス周波数Xが切り替えられる。
【0093】
ステップS11では、変数nを1に設定する。そして、画質が一定レベル以上のドットパターンを判断するための第1判断処理(ステップS12)と、画質が一定レベル以上のハーフトーンパターンを判断するための第2判断処理(ステップS13)を実行する。
(4−1)第1判断処理の内容
図20は、第1判断処理のサブルーチンの内容を示すフローチャートである。
【0094】
同図に示すように、n番目、ここではn=1としてドットパターンQ1の、パターン検出センサ210からの濃度検出信号を取得する(ステップS21)。
取得した濃度検出信号をモニターして、その検出波形のうち、ドットd1〜dpの濃度値を示す波形F1〜Fpのそれぞれについて、閾値A(図17)における幅Waを検出する(ステップS22)。図17の例では、幅Waは、波形F1であればW1、波形F2であればW2、波形F3であればW3aが検出されることになる。
【0095】
さらに、波形F1〜Fpのそれぞれについて、閾値B(図17)における幅Wbを検出する(ステップS23)。ここで、閾値Bは、閾値Aよりも低い濃度値に相当し、トナー飛び散りによりトナー粒子が飛び散った部分の濃度と同程度の濃度値が予め設定されている。図17の例では幅Wbは、波形F1、F2では閾値Aの幅Waと同じW1、W2になるが、波形F3についてはW3が検出される。この幅W3のうち、幅W3a以外の部分は、トナー飛び散りによりドットd3の本来の大きさに対してその周辺に飛び散ったトナー粒子の濃度値を示す部分に相当する。
【0096】
このようにトナー飛び散りが発生すると、ドットごとにそのドットの周囲にトナーが飛び散った部分の濃度が検出波形に現れ、波形の形状がトナーの飛び散りの状態によって波形F3のような階段状になったり山型になったりする。換言すれば、波形の形状が階段状や山型になっていれば、トナー飛び散りが発生している蓋然性が高いといえる。
従って、異なる2つの閾値AとBを用いて波形の幅WaとWbの大きさをそれぞれ検出して、検出されたそれぞれの幅WaとWbの差分をとれば、その差分の大きさからトナー飛び散りの発生の有無を判断することができる。
【0097】
そこで、ステップS24では、波形F1〜Fpのそれぞれについて、幅WaをWbで除した値U(=Wa/Wb)を算出し、算出値U1〜Upの平均値Taveを算出する。トナー飛び散りが激しくなるほど、検出波形において裾の部分が頂部よりも広くなる形状になり、検出波形Fにおいて閾値Bにおける幅Wbの方が閾値Aにおける幅Waよりも大きくなるので、算出値Uが小さくなる。従って、算出値Uの平均値であるTaveが小さいということは、トナー飛び散りが激しいことを示し、平均値Taveが大きいということは、トナー飛び散りが少ないことを示しているといえる。
【0098】
算出された平均値Taveが所定値T1以上であるか否かを判断する(ステップS25)。この所定値T1は、平均値Taveの大きさからトナー飛び散りが再現画像の画質の許容範囲内にあるか否か判断するための第1閾値であり、予め設定されている。
平均値Tave≧所定値T1の場合、平均値Taveの大きさに基づく判断では許容範囲と判断され、平均値Tave<所定値T1の場合、許容範囲内にはないと判断される。
【0099】
平均値Tave≧所定値T1と判断すると(ステップS25で「YES」)、波形F1〜Fpのうち、幅Waが所定範囲から外れているものを特定し、特定した波形に対応するドットの数rの、全数pに対する割合Tpctを算出する(ステップS26)。
ここで、所定範囲は、幅Waの大きさからトナー飛び散りの大きさを判断するための範囲であり、トナー飛び散りが発生していない本来の幅Wの大きさに許容量を付加してなり、予め設定されている。この意味で、トナー飛び散りによる画質低下にまで至っていないことを幅Waの大きさから判断するための所定範囲といえる。
【0100】
トナー飛び散りにより径が小さくなったドットや、飛び散ったトナー粒子により極端に径が大きくなったドットなどを判定するために用いられる。
割合Tpctは、幅Waが所定範囲から外れているドットの個数rを、ドットd1〜dpの全数であるp(複数)で除することにより算出される。
算出された割合Tpctが所定値T2以下であるか否かを判断する(ステップS27)。この所定値T2は、割合Tpctの大きさからトナー飛び散りが再現画像の画質の許容範囲内にあるか否かを判断するための第2閾値であり、予め設定されている。
【0101】
割合Tpct≦所定値T2の場合、許容範囲内と判断され、割合Tpct>所定値T2の場合、許容範囲内にはないと判断される。
割合Tpct≦所定値T2と判断すると(ステップS27で「YES」)、n番目、ここでは1番目のドットパターンQ1について、トナー飛び散りが発生していない、または発生していても画質に影響を与える程度ではなく、トナー飛び散りが画質の許容範囲内(画質が一定レベル以上)と判断して(ステップS28)、リターンする。
【0102】
平均値Tave<所定値T1と判断した場合(ステップS25で「NO」)、割合Tpct>所定値T2と判断した場合には(ステップS27で「NO」)、ドットパターンQ1について、トナー飛び散りが許容範囲内にない、すなわち範囲外である(画質が一定レベルよりも低い)と判断して(ステップS29)、リターンする。上記の許容範囲内にあるか否かの判断結果は、一時的に保存され、後述のステップS16以降において利用される。得られた判断結果が保存され利用されることは、以下に説明する他の判断結果が得られた場合について同様に適用される。
【0103】
なお、第1判断処理では、平均値Taveと所定値T1の大小関係と、割合Tpctと所定値T2の大小関係の両方を判断するとしたが、装置構成によっては、いずれか一方だけを判断する構成をとるとしても良い。
(4−2)第2判断処理の内容
図21は、第2判断処理のサブルーチンの内容を示すフローチャートである。
【0104】
同図に示すように、n番目、ここではn=1のハーフトーンパターンE1の、パターン検出センサ210からの濃度検出信号を取得する(ステップS41)。
取得した濃度検出信号をモニターして、その検出波形の全域L(図18)のうち、パターン先端から所定長さの範囲L1における濃度の平均値D1を算出する(ステップS42)。ここで、範囲L1は、ハーフトーンパターンE1において後端掃き寄せが発生すると想定される後端部を示す範囲L2を除く部分(先端から後端部までの間の領域)のベルト周回方向における長さに相当する。
【0105】
次に、範囲L2における最大濃度値D2を求め(ステップS43)、濃度値D1とD2の差分D3を算出する(ステップS44)。
算出された差分D3が所定値T3以下であるか否かを判断する(ステップS45)。ここの所定値T3は、差分D3の大きさから後端掃き寄せが再現画像の画質の許容範囲内にあるか否かを判断するための閾値であり、予め設定されている。
【0106】
差分D3≦所定値T3と判断すると(ステップS45で「YES」)、n番目、ここでは1番目のハーフトーンパターンE1について、後端掃き寄せが発生していない、または発生していても画質に影響を与える程度ではなく、後端掃き寄せが画質の許容範囲内(画質が一定レベル以上)と判断して(ステップS46)、リターンする。
差分D3>所定値T3と判断すると(ステップS45で「NO」)、ハーフトーンパターンE1について、後端掃き寄せが許容範囲内にない、すなわち範囲外である(画質が一定レベルよりも低い)と判断して(ステップS47)、リターンする。
【0107】
図19に戻って、ステップS14では、変数nの値が最後の値zであるか否かを判断する。最後ではないと判断すると(ステップS14で「NO」)、現在のnの値に「1」をインクリメントした値を新たなnの値、ここではn=2として(ステップS15)、ステップS12に戻る。ステップS12では、2番目のトナーパッチP2に含まれるドットパターンQ2についてトナー飛び散りが許容範囲内であるか否かが判断され、ステップS13では、トナーパッチP2に含まれるハーフトーンパターンE2について後端掃き寄せが許容範囲内であるか否かが判断される。
【0108】
ステップS14で変数nの値が最後の値zに達するまで、ステップS12〜S15の処理が繰り返し実行される。これにより、トナーパターンP1〜Pzのそれぞれについて順次、トナー飛び散りと後端掃き寄せが許容範囲内にあるか否かが判断されることになる。
変数nの値が最後の値zに達したことを判断すると(ステップS14で「YES」)、z個のドットパターンQ1〜Qzのうち、第1判断処理で許容範囲内であると判断されたパターンを特定する(ステップS16)。
【0109】
ドットパターンQ1〜Qzの形成時に適用される現像バイアス周波数Xは、上記のようにドットパターンQ1からQzにかけて段階的に上げられる条件になっており、実施の形態1で説明したように現像時におけるトナー飛び散りは、現像バイアス周波数Xが低くなると生じ易く、現像バイアス周波数Xが高くなると生じ難くなる関係を有している。
このことから、許容範囲内にあると判断されるドットパターンは、現像バイアス周波数Xが最大であるQzから降順にQZ−1、QZ−2・・Qm(ここで、z≧m>1)というように連続し、許容範囲内ではないと判断されるドットパターンは、現像バイアス周波数Xが最小のQ1から順にQ2、Q3・・Qm−1というように連続する傾向になり易い。
【0110】
ステップS17では、許容範囲内と特定されたドットパターンQz〜Qmのうち、形成時に適用された現像バイアス周波数が最小のものの周波数X1を記憶する。
許容範囲内に属するドットパターンQz〜Qmのうち、現像バイアス周波数が最も小さいものがQmであり、ドットパターンQmを形成したときの現像バイアス周波数X1が許容範囲内における最小の現像バイアス周波数になり、現像バイアス周波数がX1以上であれば、トナー飛び散りが許容範囲内に入ることになる。
【0111】
図22は、現像バイアス周波数の可変範囲内において、トナー飛び散りと後端掃き寄せに対する許容範囲内と許容範囲外を模式的に示す図である。
同図に示すように、現像バイアス周波数X1を境に許容範囲内と許容範囲外とが分けられており、トナー飛び散りの欄における許容範囲内にドットパターンQz〜Qmを形成したときの周波数が含まれ、許容範囲外にドットパターンQ1〜Qm−1を形成したときの周波数が含まれることになる。
【0112】
図19に戻り、ステップS18では、z個のハーフトーンパターンE1〜Ezのうち、第2判断処理で許容範囲内であると判断されたパターンを特定する。
ハーフトーンパターンE1〜Ezの形成時に適用される現像バイアス周波数Xは、ドットパターンと同様に、ハーフトーンパターンE1からEzにかけて段階的に上げられる条件になっており、実施の形態1で説明したように現像時における後端掃き寄せは、現像バイアス周波数Xが高くなると生じ易く、現像バイアス周波数Xが低くなると生じ難くなる関係を有している。
【0113】
このことから、許容範囲内にあると判断されるハーフトーンパターンは、現像バイアス周波数Xが最小であるE1から順にE2・・Es(ここで、1≦s<z)というように連続し、許容範囲内ではないと判断されるドットパターンは、現像バイアス周波数Xが最大であるEzから降順にEZ−1、EZ−2・・ES+1というように連続する傾向になり易い。
【0114】
ステップS19では、許容範囲内と特定されたハーフトーンパターンE1〜Esのうち、形成時に適用された現像バイアス周波数が最大であるEsの周波数X2を記憶する。
図22において後端掃き寄せを示す欄を見ると、現像バイアス周波数X2を境に許容範囲内と許容範囲外とが分けられていることが判る。この許容範囲内にハーフトーンパターンE1〜Esを形成したときの周波数が含まれ、許容範囲外にハーフトーンパターンEz〜ES+1を形成したときの周波数が含まれることになり、現像バイアス周波数がX2以下であれば、後端掃き寄せが許容範囲内に入ることになる。
(4−3)現像バイアス周波数の設定
図19に戻り、ステップS20では、記憶しておいた現像バイアス周波数X1とX2の中間の値X3(図22参照)を、現時点での最適な現像バイアス周波数に設定して、メインルーチンにリターンする。このように現像バイアス周波数をX1とX2の中間値(X1とX2を加算して2で除した値)であるX3に設定するのは、次の理由による。
【0115】
すなわち、現像バイアス周波数X1とX2の間の範囲は、トナーの飛び散りの許容範囲と後端掃き寄せの許容範囲との重複範囲を示し、この重複範囲内では一定以上の画質を維持できるので、X1以上、X2以下の範囲内のどの値をとっても良いことになるが、トナーの飛び散りと後端掃き寄せとは、一方が良ければ他方が悪くなる関係にあり、トナーの飛び散りと後端掃き寄せの両方を、特に優劣をつけずに同程度に抑制させるには、その中間値X3が適していると考えられるからである。
【0116】
従って、例えばトナーの飛び散りよりも後端掃き寄せの方を優先しようとすれば、現像バイアス周波数をX1または重複範囲内においてX1により近い値に設定する構成をとることができ、また、後端掃き寄せよりもトナーの飛び散りの方を優先しようとすれば、X2または重複範囲内においてX2により近い周波数に設定する構成をとることもできる。いずれをとるかは、装置ごとに予め決められるとしても良いし、例えばユーザによる選択、すなわち優劣なし、一方を優先などの入力を受け付ける構成をとるとしても良い。
【0117】
ユーザからの選択を受け付ける構成をとる場合には、例えば優劣なし、トナー飛び散りを優先、後端掃き寄せを優先のそれぞれに対して、周波数の重複領域内において設定されるべき周波数の値が予め決められて、選択された結果に応じてその周波数の値を設定するとしても良い。また、周波数の重複領域内におけるいずれかの値をユーザが入力可能に構成して、その入力値を現像バイアス周波数として設定する構成としても良い。
【0118】
なお、上記では現像バイアス周波数がX1≦X2の関係から、トナーの飛び散りの許容範囲と後端掃き寄せの許容範囲とが重複する場合の例を説明したが、例えば現像バイアス周波数がX1>X2の関係になることもあり得る。このような関係になれば、トナーの飛び散りの許容範囲と後端掃き寄せの許容範囲とが重複しなくなるが、この場合でもX1とX2の中間値を設定することが望ましい。X1とX2の一方に片寄った値に設定すると、トナー飛び散りと後端掃き寄せの一方による画質劣化がより大きくなるからである。
【0119】
上記のステップS20で設定された周波数X3が、設定時以降における画像形成動作時に現像バイアス電圧の現像バイアス周波数として適用されることになる。
以上、説明したように本実施の形態では、実際に、複数個のトナーパターンP1〜Pzのそれぞれを、現像バイアス周波数を異なる値に切り替えて形成し、形成されたトナーパターンP1〜Pzのうち、画質レベルが許容範囲内に入るトナーパターンを形成したときに用いられた現像バイアス周波数を設定するとしたので、より装置構成に適した現像バイアス周波数を設定して、トナーの飛び散りと後端掃き寄せの抑制を図り、再現画像の画質を一定以上に維持することが可能になる。
【0120】
なお、上記ではY色を例に説明したが、他のM〜K色についてもY色と同様の処理を行うことにより、装置構成に適した現像バイアス周波数を設定することができる。
本発明は、画像形成装置に限られず、現像バイアス周波数の設定方法であるとしてもよい。また、その方法をコンピュータが実行するプログラムであるとしてもよい。また、本発明に係るプログラムは、例えば磁気テープ、フレキシブルディスク等の磁気ディスク、DVD−ROM、DVD−RAM、CD−ROM、CD−R、MO、PDなどの光記録媒体、フラッシュメモリ系記録媒体等、コンピュータ読み取り可能な各種記録媒体に記録することが可能であり、当該記録媒体の形態で生産、譲渡等がなされる場合もあるし、プログラムの形態でインターネットを含む有線、無線の各種ネットワーク、放送、電気通信回線、衛星通信等を介して伝送、供給される場合もある。また、上記の実施の形態における処理がソフトウェアにより行なわれる構成であっても良いし、ハードウェア回路を用いて行なれる構成であっても良い。
【0121】
<変形例>
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施の形態1では、ベルト電流値検出部70の電極71、72が中間転写ベルト21の表面と裏面に常時、接触した状態の構成例を説明したが、これに限られない。
【0122】
例えば、電極71、72を中間転写ベルト21に対して接触、離間可能に構成して、ベルト抵抗値Rの検出時以外には離間状態にして、ベルト抵抗値Rの検出時にだけ接触状態に切り替える制御を行うとしても良い。画像形成時に電極71、72を中間転写ベルト21から離間させ、画像形成以外のときに接触させてベルト抵抗値Rを検出する構成をとることにより、周回走行中の中間転写ベルト21に電極71、72が接触している場合に生じる接触部における摺動摩擦による磨耗を常時接触した状態の構成よりも抑制できる。
【0123】
また、中間転写ベルト21を介して電極71、72間に流れる電流値を計測し、計測した電流値と、電極71、72の抵抗値と、電極71、72に供給される電圧値とからベルト抵抗値Rを求めたが、これに限られない。例えば、定電流回路であれば、電極71、72間の電圧値を計測して、計測した電圧値と定電流の電流値とからベルト抵抗値Rを求めることもできる。
【0124】
なお、ベルト抵抗値Rの大きさは、例えば定電流であれば電極71、72間の電圧値の大きさに置き換えることもでき、この電圧値の大きさがベルト抵抗値の大きさを示すものといえるので、ベルト抵抗値Rの大きさの検出には、ベルト抵抗値を指標する電圧値などを検出することを含む意味で用いることができる。
(2)上記実施の形態1では、ベルト抵抗値Rの基準値Raに対する差分と現像バイアス周波数Xとの対応関係を示す情報108をテーブル形式で予め記憶している構成例を説明したが、検出されたベルト抵抗値Rに適した現像バイアス周波数Xを設定することができる構成であれば、この構成に限られない。
【0125】
例えば、ベルト抵抗値Rとこれに適した現像バイアス周波数Xとを一対一に対応付けた情報を記憶しておく構成としても良い。また、ベルト抵抗値Rと現像バイアス周波数Xとの関係式を予め求めておき、この関係式を用いるとしても良い。
(3)上記実施の形態2では、トナーパターンP1〜Pzとして、ドットパターンQ1〜QzとハーフトーンパターンE1〜Ezを形成するとしたが、例えばドットパターンQだけを形成する構成をとることもできる。
【0126】
この構成をとる場合、第2判断処理(ステップS13)と、ハーフトーンパターンの特定(ステップS18)と、現像バイアス周波数X2の記憶(ステップS19)の各処理が行われず、現像バイアス周波数の設定(ステップS20)では、ステップS17で記憶された周波数X1(ドットパターンについての許容範囲内で最小の周波数)を設定することができる。このようにすれば、トナーの飛び散りを許容範囲内に収めつつ、後端掃き寄せによる画質劣化を最も抑制することができる。
【0127】
また、ハーフトーンパターンE1〜Ezだけを形成するとしても良い。この場合、ステップS19で記憶された周波数X2(ハーフトーンパターンについての許容範囲内で最大の周波数)を現像バイアス周波数として設定することができる。
(4)上記実施の形態2では、ハーフトーンパターンP1〜Pzのそれぞれについて、ドラム回転方向後端部の濃度の最大値D2とこれ以外の部分における濃度の平均値D1との差分D3の大きさにより後端掃き寄せが許容範囲にあるか否かを判断するとしたが、この方法に限られない。例えば、ハーフトーンパターンの後端部における濃度の最大値が所定の閾値以下であれば、後端掃き寄せが許容範囲にあり、閾値よりも大きければ許容範囲にないことを判断する方法をとることもできる。
【0128】
また、ハーフトーンパターンの後端部の濃度値D1と、これ以外の部分の濃度値D2を平均値、最大値をとる構成としたが、後端部とこれ以外の部分との濃度値の差分の大きさが判れば良く、平均値や最大値に限られない。それぞれの部分の濃度値を指標するもの、例えばそれぞれの部分についてその後端縁での濃度値を比較すると方法をとっても良い。これらの濃度値を含めて、濃度値D1、D2と表すことができる。
【0129】
(5)上記実施の形態2では、トナーパターンP1〜Pzを反射型の光学センサにより検出するとしたが、トナーパターンP1〜Pzを検出可能なものであれば、これに限られない。例えば、中間転写ベルト21が光透過性を有するものであれば、透過型の光学センサを用いることもできる。
また、感光体ドラム11Y〜11Kから中間転写ベルト21上に転写された後のトナーパターンP1〜Pzを検出するとしたが、像担持体上に形成されたトナーパターンを検出することができれば良く、例えば感光体ドラム11Y〜11K上のトナーパターンP1〜Pz(転写前のもの)を検出するとしても良い。
【0130】
さらに、トナーパターンとしてのドットパターンとハーフトーンパターンの形状、個数、濃度などが上記のものに限られないことはいうまでもなく、また、ハーフトーンパターンの濃度は、後端掃き寄せが人の目で判りやすい階調値、例えば最小の濃度値と最大の濃度値の中間を示す階調値などとすることが望ましい。
(6)上記実施の形態では、本発明に係る画像形成装置をタンデム型カラーデジタルプリンタに適用した場合の例を説明したが、これに限られない。カラーやモノクロの画像形成に関わらず、交流成分を含む現像バイアス電圧を用いて現像を行い、交流成分の周波数を可変可能な構成の画像形成装置、例えば複写機、FAX、MFP(Multiple Function Peripheral)等に適用できる。
【0131】
また、上記では、タンデム型として、中間転写ベルトなどの中間転写体の周回移動方向に沿って列設された複数の感光体ドラムなどの像担持体上に形成された各色の現像剤像を、それぞれの像担持体の転写位置で中間転写体に静電的に多重転写し、中間転写体に多重転写された各色の現像剤像を二次転写位置で記録シートに転写する中間転写方式の例を説明したが、これに限られない。
【0132】
例えば、搬送ベルトで搬送される記録シートが、列設された複数の像担持体のそれぞれの転写位置を順次、通過する際に、それぞれの像担持体上の現像剤像をその記録シート上に多重転写する、いわゆる直接転写方式の構成などにも適用することができる。
さらに、1つの像担持体上に形成された現像剤像を像担持体の転写位置で記録シートに転写するモノクロの画像形成装置にも適用することができる。なお、中間転写方式においては、中間転写体も現像剤像を担持する機能を有するので、感光体ドラムとは別の像担持体ということができる。また、像担持体の形状が上記のものに限られず、例えばドラム状に代えてベルト状のものを用いることや、その逆とすることもできる。
【0133】
また、現像剤を担持する現像剤担持体として現像ローラ19Y〜19Kを用いる例を説明したが、ローラ状に限られず、例えばスリーブ状のものなどを用いることもできる。現像剤として、キャリアとトナーを含む二成分現像剤を用いる構成例を説明したが、例えばキャリアが含まれず、トナーが含まれる一成分現像剤を用いる構成にも適用できる。
また、上記実施の形態及び上記変形例の内容をそれぞれ組み合わせるとしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明は、像担持体を有する画像形成装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0135】
1、201 プリンタ
11Y、11M、11C、11K 感光体ドラム
14Y、14M、14C、14K 現像器
19Y、19M、19C、19K 現像ローラ
21 中間転写ベルト
50、250 制御部
60Y、60M、60C、60K 現像バイアス電源部
70 ベルト電流値検出部
80Y、80M、80C、80K 転写バイアス電源部
105 ベルト抵抗値検出部
106、252 現像バイアス周波数設定部
107 ベルト抵抗値/現像バイアス周波数対応情報記憶部
108 抵抗値/現像バイアス周波数対応情報
120、Q1〜Qz ドットパターン
121、125、126、127、128、d1〜dp ドット
122 間隔
130、E1〜Ez ハーフトーンパターン
131 ハーフトーンパターンの後端部
210 パターン検出センサ
251 パターン形成部
D 現像剤
F0 ドットパターンの検出波形
F1〜Fp 各ドットの検出波形
G0 ハーフトーンパターンの検出波形
P1〜Pz トナーパターン
X1、X2、X3 現像バイアス周波数
【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体上の静電潜像を、現像剤担持体に担持されている現像剤により現像し、前記像担持体上の現像剤像を中間転写体に転写した後、当該中間転写体上の現像剤像をシートに転写する画像形成装置であって、
前記中間転写体の電気抵抗値の大きさを検出する検出手段と、
交流成分を含む現像バイアス電圧を前記現像剤担持体に出力すると共に前記交流成分の周波数を可変可能な電源部と、
前記検出手段による検出値が第1の大きさである場合には、前記交流成分の周波数を第1の値に設定し、前記検出手段による検出値が第1よりも大きい第2の大きさである場合には、前記交流成分の周波数を前記第1よりも低い第2の値に設定する設定手段と、
出力される現像バイアス電圧の交流成分の周波数が前記設定された周波数と同じになるように、前記電源部を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記設定手段は、
前記第1の大きさの検出値を所定の電気抵抗値の基準値とすると共に、前記第1の値の周波数を前記電気抵抗値の基準値に対する基準の周波数とした場合に、
前記検出手段による第2の大きさの検出値と前記電気抵抗値の基準値との差分が大きくなるに連れて、前記交流成分の周波数を、前記基準の周波数に対して低い値に設定することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記中間転写体の電気抵抗値と現像バイアス電圧の交流成分の周波数について、一方が大きくなると他方が小さくなる対応関係を示す情報を記憶している記憶手段を有し、
前記設定手段は、
前記情報に基づき前記検出値に対応する周波数を現像バイアス電圧の交流成分の周波数に設定することを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記設定手段は、
(a)1枚のシートの片面への画像形成を1回の画像形成回数としたときその画像形成回数の積算値が所定回数に達するごと、(b)装置周辺または装置内の温度および湿度の少なくとも一方の変動量が所定量以上になったとき、(c)形成画像の画質を安定化させるための画像安定化制御が実行されるとき、(d)所定時間が経過するごと、(e)1回の画像形成の開始に先立って、または終了直後の、少なくとも1つの条件を満たしたときに、前記検出手段による検出値に基づいて前記設定を実行することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
像担持体上に静電潜像を形成し、形成された静電潜像を、現像剤担持体に担持されている現像剤により現像する作像部を有する画像形成装置であって、
交流成分を含む現像バイアス電圧を前記現像剤担持体に出力すると共に前記交流成分の周波数を可変可能な電源部と、
前記作像部と前記電源部を制御して、前記像担持体上に、複数のドットのそれぞれが間隔をおいて配列されてなるドットパターンを複数個、その複数個のドットパターンのそれぞれを前記現像バイアス電圧の交流成分の周波数を異なる値に切り替えて形成させるドットパターン形成手段と、
前記像担持体上に形成されたドットパターンごとに当該ドットパターンに含まれる各ドットの濃度を検出する検出手段と、
前記ドットパターンごとの、各ドットの濃度検出波形の形状に基づいて、現像バイアス電圧の交流成分の周波数Xを設定する設定手段と、
前記出力される現像バイアス電圧の交流成分の周波数が前記設定された周波数Xと同じになるように前記電源部を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記設定手段は、
前記ドットパターンごとの濃度検出波形の形状に基づき、画質が許容範囲内にある1以上のドットパターンを特定し、特定した1以上のドットパターンのうち、最も画質が低いドットパターンを形成したときに用いられた現像バイアス電圧の交流成分の周波数X1を設定することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記特定は、
1つのドットに対する濃度検出波形の、第1の濃度を示す閾値Aにおける幅をWa、第1よりも濃度が低い第2の濃度を示す閾値Bにおける幅をWb、WaをWbで除した値をU、1つのドットパターンに含まれる複数のドットのそれぞれに対する値Uの平均値をTave、画質が許容範囲内にあるか否かを平均値Taveの大きさから判断するための閾値を所定値T1としたとき、
複数個のドットパターンのうち、平均値Tave≧所定値T1の関係を満たすドットパターンを判断することにより行われることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記特定は、
1つのドットに対する濃度検出波形の、第1の濃度を示す閾値Aにおける幅をWa、1つのドットパターンに含まれる複数のドットの数をp、複数のドットpのうち、前記濃度検出波形の幅Waが、画質低下にまで至っていないことを幅Waの大きさから判断するための所定範囲から外れているドットの数をr、値rを値pで除した値を割合Tpct、画質が許容範囲内にあるか否かを割合Tpctの大きさから判断するための閾値を所定値T2としたとき、
複数個のドットパターンのうち、割合Tpct≦所定値T2の関係を満たすドットパターンを判断することにより行われることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記作像部と前記電源部を制御して、前記像担持体上に、中間調の濃度を有するハーフトーンパターンを複数個、その複数個のハーフトーンパターンのそれぞれを前記現像バイアス電圧の交流成分の周波数を異なる値に切り替えて形成させるハーフトーンパターン形成手段と、を備え、
前記検出手段は、前記複数個のハーフトーンパターンの濃度を検出し、
前記設定手段は、
複数個のハーフトーンパターンのそれぞれについて、そのハーフトーンパターンにおける前記像担持体の回転方向後端部の濃度に基づいて、1以上のハーフトーンパターンを特定し、
特定した1以上のハーフトーンパターンのうち、最も画質が高いハーフトーンパターンを形成したときに用いられた現像バイアス電圧の交流成分の周波数をX2としたとき、前記周波数X1とX2の間の値である周波数を、前記周波数X1に代えて設定することを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記周波数X1とX2との間の値とは、周波数X1とX2とを加算して2で除することにより得られる中間値であることを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記ハーフトーンパターンの特定は、
1つのハーフトーンパターンにおける後端部以外の部分における濃度値をD1、当該後端部における濃度値をD2、濃度値D1とD2の差分をD3、画質が許容範囲内にあるか否かを差分D3の大きさから判断するための閾値を所定値T3としたとき、
複数個のハーフトーンパターンのうち、差分D3≦所定値T3の関係を満たすハーフトーンパターンを判断することにより行われることを特徴とする請求項9または10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記ハーフトーンパターンの特定は、
複数個のハーフトーンパターンのうち、ハーフトーンパターンにおける後端部における濃度値が、画質が許容範囲内にあるか否かを判断するための閾値以下の関係を満たすハーフトーンパターンを判断することにより行われることを特徴とする請求項9または10に記載の画像形成装置。
【請求項1】
像担持体上の静電潜像を、現像剤担持体に担持されている現像剤により現像し、前記像担持体上の現像剤像を中間転写体に転写した後、当該中間転写体上の現像剤像をシートに転写する画像形成装置であって、
前記中間転写体の電気抵抗値の大きさを検出する検出手段と、
交流成分を含む現像バイアス電圧を前記現像剤担持体に出力すると共に前記交流成分の周波数を可変可能な電源部と、
前記検出手段による検出値が第1の大きさである場合には、前記交流成分の周波数を第1の値に設定し、前記検出手段による検出値が第1よりも大きい第2の大きさである場合には、前記交流成分の周波数を前記第1よりも低い第2の値に設定する設定手段と、
出力される現像バイアス電圧の交流成分の周波数が前記設定された周波数と同じになるように、前記電源部を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記設定手段は、
前記第1の大きさの検出値を所定の電気抵抗値の基準値とすると共に、前記第1の値の周波数を前記電気抵抗値の基準値に対する基準の周波数とした場合に、
前記検出手段による第2の大きさの検出値と前記電気抵抗値の基準値との差分が大きくなるに連れて、前記交流成分の周波数を、前記基準の周波数に対して低い値に設定することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記中間転写体の電気抵抗値と現像バイアス電圧の交流成分の周波数について、一方が大きくなると他方が小さくなる対応関係を示す情報を記憶している記憶手段を有し、
前記設定手段は、
前記情報に基づき前記検出値に対応する周波数を現像バイアス電圧の交流成分の周波数に設定することを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記設定手段は、
(a)1枚のシートの片面への画像形成を1回の画像形成回数としたときその画像形成回数の積算値が所定回数に達するごと、(b)装置周辺または装置内の温度および湿度の少なくとも一方の変動量が所定量以上になったとき、(c)形成画像の画質を安定化させるための画像安定化制御が実行されるとき、(d)所定時間が経過するごと、(e)1回の画像形成の開始に先立って、または終了直後の、少なくとも1つの条件を満たしたときに、前記検出手段による検出値に基づいて前記設定を実行することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
像担持体上に静電潜像を形成し、形成された静電潜像を、現像剤担持体に担持されている現像剤により現像する作像部を有する画像形成装置であって、
交流成分を含む現像バイアス電圧を前記現像剤担持体に出力すると共に前記交流成分の周波数を可変可能な電源部と、
前記作像部と前記電源部を制御して、前記像担持体上に、複数のドットのそれぞれが間隔をおいて配列されてなるドットパターンを複数個、その複数個のドットパターンのそれぞれを前記現像バイアス電圧の交流成分の周波数を異なる値に切り替えて形成させるドットパターン形成手段と、
前記像担持体上に形成されたドットパターンごとに当該ドットパターンに含まれる各ドットの濃度を検出する検出手段と、
前記ドットパターンごとの、各ドットの濃度検出波形の形状に基づいて、現像バイアス電圧の交流成分の周波数Xを設定する設定手段と、
前記出力される現像バイアス電圧の交流成分の周波数が前記設定された周波数Xと同じになるように前記電源部を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記設定手段は、
前記ドットパターンごとの濃度検出波形の形状に基づき、画質が許容範囲内にある1以上のドットパターンを特定し、特定した1以上のドットパターンのうち、最も画質が低いドットパターンを形成したときに用いられた現像バイアス電圧の交流成分の周波数X1を設定することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記特定は、
1つのドットに対する濃度検出波形の、第1の濃度を示す閾値Aにおける幅をWa、第1よりも濃度が低い第2の濃度を示す閾値Bにおける幅をWb、WaをWbで除した値をU、1つのドットパターンに含まれる複数のドットのそれぞれに対する値Uの平均値をTave、画質が許容範囲内にあるか否かを平均値Taveの大きさから判断するための閾値を所定値T1としたとき、
複数個のドットパターンのうち、平均値Tave≧所定値T1の関係を満たすドットパターンを判断することにより行われることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記特定は、
1つのドットに対する濃度検出波形の、第1の濃度を示す閾値Aにおける幅をWa、1つのドットパターンに含まれる複数のドットの数をp、複数のドットpのうち、前記濃度検出波形の幅Waが、画質低下にまで至っていないことを幅Waの大きさから判断するための所定範囲から外れているドットの数をr、値rを値pで除した値を割合Tpct、画質が許容範囲内にあるか否かを割合Tpctの大きさから判断するための閾値を所定値T2としたとき、
複数個のドットパターンのうち、割合Tpct≦所定値T2の関係を満たすドットパターンを判断することにより行われることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記作像部と前記電源部を制御して、前記像担持体上に、中間調の濃度を有するハーフトーンパターンを複数個、その複数個のハーフトーンパターンのそれぞれを前記現像バイアス電圧の交流成分の周波数を異なる値に切り替えて形成させるハーフトーンパターン形成手段と、を備え、
前記検出手段は、前記複数個のハーフトーンパターンの濃度を検出し、
前記設定手段は、
複数個のハーフトーンパターンのそれぞれについて、そのハーフトーンパターンにおける前記像担持体の回転方向後端部の濃度に基づいて、1以上のハーフトーンパターンを特定し、
特定した1以上のハーフトーンパターンのうち、最も画質が高いハーフトーンパターンを形成したときに用いられた現像バイアス電圧の交流成分の周波数をX2としたとき、前記周波数X1とX2の間の値である周波数を、前記周波数X1に代えて設定することを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記周波数X1とX2との間の値とは、周波数X1とX2とを加算して2で除することにより得られる中間値であることを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記ハーフトーンパターンの特定は、
1つのハーフトーンパターンにおける後端部以外の部分における濃度値をD1、当該後端部における濃度値をD2、濃度値D1とD2の差分をD3、画質が許容範囲内にあるか否かを差分D3の大きさから判断するための閾値を所定値T3としたとき、
複数個のハーフトーンパターンのうち、差分D3≦所定値T3の関係を満たすハーフトーンパターンを判断することにより行われることを特徴とする請求項9または10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記ハーフトーンパターンの特定は、
複数個のハーフトーンパターンのうち、ハーフトーンパターンにおける後端部における濃度値が、画質が許容範囲内にあるか否かを判断するための閾値以下の関係を満たすハーフトーンパターンを判断することにより行われることを特徴とする請求項9または10に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2012−154965(P2012−154965A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11157(P2011−11157)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
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