説明

画像形成装置

【課題】 露光装置の発光素子の温度変化によって変化する発光素子と結像位置との間の距離を補正する。
【解決手段】 記録媒体に画像を形成する画像形成装置100は、像担持体6と、像担持体の回転方向に直交する長手方向に並んで設けられ像担持体の表面を露光するために画像情報に従って発光する複数個の発光素子5aと、複数個の発光素子からの光を像担持体の表面に結像する結像素子4とを有する露光装置23と、複数個の発光素子の温度の変化に従って変化する、複数個の発光素子からの光の像担持体の上における結像位置と複数個の発光素子との間の距離を補正するために、複数個の発光素子と像担持体との間の光路上に移動可能に配置された光学部材1と、複数個の発光素子の温度に関する情報に従って、複数個の発光素子と結像位置との間の距離を補正するために光学部材を移動させる駆動装置12とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置を有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機やプリンタ等の画像形成装置、特に電子写真画像形成装置は、画像書込方式(露光方式)として、レーザ走査方式や、以下に説明するLED露光方式を用いている。
【0003】
LED露光方式は、露光用の光源としてのLED(発光ダイオード)アレイと、結像素子としてのロッドレンズアレイとを用いた方式である。LED露光方式の画像形成装置は、LEDアレイから出力される光を、ロッドレンズアレイ(結像素子)を介して感光体ドラム(像担持体)の表面上に結像し、感光体ドラムの表面上に静電潜像を形成する。
【0004】
LEDアレイは、感光体ドラムの回転方向に直交する長手方向に並べて配置された複数のLED(発光素子)を有する。感光体ドラムを回転させながら、複数のLEDを選択的に発光させる。複数のLEDからの光は、ロッドレンズアレイを介して感光体ドラムの表面上に結像され、感光体ドラムの表面上に静電潜像が形成される。以下、LEDアレイとロッドレンズアレイの組合せをLEDヘッド(露光装置)という。
【0005】
LED露光方式は、レーザ走査方式に比べ、画像形成装置を大幅に小型化できる利点がある。複数の画像形成部を有する、いわゆるタンデム式のカラー画像形成装置において、装置の小型化の効果は特に大きい。
【0006】
ロッドレンズアレイの共役長(結像位置または焦点距離:TC)は、10ミリメートル(mm)程度であり、その焦点深度は±0.05mm程度である。レーザ走査方式の焦点深度が±2mm程度であるのに対して、LED露光法式の焦点深度は極端に浅い。そのため、ロッドレンズアレイを用いた光学系はピントずれに対して極めて敏感である。感光体ドラムとLEDアレイ及びロッドレンズアレイの平行位置又は光軸方向の位置がずれると、ピントずれを生じやすい。ピントずれを生じると、画像品位が著しく低下する。
【0007】
このような問題を解決するために、特許文献1に記載の発明は、感光体ドラムの上に形成されたトナー像の濃度分布を濃度センサにより測定し、その測定結果に基づいて、LEDヘッドを光軸方向に移動させて、ピントを調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−151543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、露光装置の温度上昇により、結像位置がずれることがある。
露光装置に使用されている発光素子は、連続点灯動作により発光素子の温度が上昇する。発光素子の光の波長は、温度依存性を有している。発光素子の温度が上昇するにつれて、発光素子の光の波長が延びる。
【0010】
露光装置に使用されている結像素子の共役長は、波長依存性を有している。結像素子の共役長は、波長の延びに比例して延びる。このため、発光素子の温度上昇とともに、結像素子の共役長が延びる。
【0011】
すなわち、組立時において、露光装置の結像位置を像担持体の表面上に正確に調整したとしても、発光素子の温度変化によって結像素子の共役長が変化するため、結像位置のずれを生じる。
【0012】
このような従来の課題に鑑みて、本発明は、露光装置の発光素子の温度変化によって変化する発光素子と結像位置との間の距離を、発光素子の温度に関する情報に従って補正することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明に係る記録媒体に画像を形成する画像形成装置は、像担持体と、前記像担持体の回転方向に直交する長手方向に並んで設けられ前記像担持体の表面を露光するために画像情報に従って発光する複数個の発光素子と、前記複数個の発光素子からの光を前記像担持体の表面に結像する結像素子とを有する露光装置と、前記複数個の発光素子の温度の変化に従って変化する、前記複数個の発光素子からの光の前記像担持体の上における結像位置と前記複数個の発光素子との間の距離を補正するために、前記複数個の発光素子と前記像担持体との間の光路上に移動可能に配置された光学部材と、前記複数個の発光素子の前記温度に関する情報に従って、前記複数個の発光素子と前記結像位置との間の前記距離を補正するために前記光学部材を移動させる駆動装置とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、露光装置の発光素子の温度変化によって変化する発光素子と結像位置との間の距離を、発光素子の温度に関する情報に従って補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1による画像形成装置の概略断面図。
【図2】LEDヘッドを示す図。
【図3】LEDの温度変化に対するロッドレンズアレイの共役長の変化を示す図。
【図4】楔形光学部材の移動による光線の屈折と光路の移動を示す図。
【図5】LEDアレイと感光体ドラムとの間の光路に配置された楔形光学部材を示す図。
【図6】楔形光学部材を支持する支持部材を示す図。
【図7】光学部材の断面図。
【図8】LEDの温度に関する情報に従ってモータを駆動する制御装置のブロック図。
【図9】実施例1による結像位置の調整を示すフローチャート。
【図10】実施例2による結像位置の調整を示すフローチャート。
【図11】実施例3による結像位置の調整を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その配置などについては特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明の実施例1による画像形成装置100の概略断面図である。画像形成装置100は、画像形成部80と、画像形成部80へシート(記録媒体)Sを給送する給送部90とを有する。
画像形成部80は、タンデムに配列された4つの画像形成ステーション81(81Y、81C、81M、81K)と、中間転写ベルト(中間転写体)26と、定着装置28とを有する。画像形成ステーション81のそれぞれは、感光体ドラム(像担持体)6(6Y、6C、6M、6K)を有する。感光体ドラム6は、矢印Rで示す方向に回転する。感光体ドラム6の周りには、帯電装置22、LEDヘッド(露光装置)23、現像装置24、一次転写部材25、及びクリーニング装置21が設けられている。
帯電装置22(22Y、22C、22M、22K)は、感光体ドラム6(6Y、6C、6M、6K)の表面を均一に帯電する。LEDヘッド23(23Y、23C、23M、23K)は、均一に帯電された感光体ドラム6の表面を画像情報に従って露光し、感光体ドラム6の表面に静電潜像を形成する。現像装置24(24Y、24C、24M、24K)は、感光体ドラム6の表面の静電潜像を現像剤(トナー)で現像してトナー像にする。
現像装置24Yは、イエロー現像剤(イエロートナー)を有する。現像装置24Yは、感光体ドラム6Yの表面にイエロートナー像を形成する。現像装置24Cは、シアン現像剤(シアントナー)を有する。現像装置24Cは、感光体ドラム6Cの表面にシアントナー像を形成する。現像装置24Mは、マゼンタ現像剤(マゼンタトナー)を有する。現像装置24Mは、感光体ドラム6Mの表面にマゼンタトナー像を形成する。現像装置24Kは、ブラック現像剤(ブラックトナー)を有する。現像装置24Kは、感光体ドラム6Kの表面にブラックトナー像を形成する。
中間転写ベルト26は、感光体ドラム6に接触して矢印Eで示す方向に回転する。
一次転写部材25(25Y、25C、25M、25K)は、感光体ドラム6の表面のトナー像を中間転写ベルト26の上へ転写する。シアントナー像は、中間転写ベルト26の上のイエロートナー像の上に重ね合わされる。マゼンタトナー像は、シアントナー像の上に重ね合わされる。ブラックトナー像は、マゼンタトナー像の上に重ね合わされる。
中間転写ベルト26の上に順次重ね合わされた4つのトナー像は、給送部90から給送されたシートSの上へ二次転写ローラ27により転写される。
シートSの上のトナー像は、定着装置28によりシートに定着されシートSの上に画像が形成される。画像が形成されたシートSは、排出ローラ29により排出トレイ30の上に排出される。
【0018】
次に、図2を参照して、実施例1の画像形成装置100に用いられるLEDヘッド23を詳細に説明する。
図2は、LEDヘッド23を示す図である。図2(a)は、LEDヘッド23を示す斜視図である。図2(a)に示すように、感光体ドラム6は、軸線Xを中心として矢印Rで示す方向に回転する。
LEDヘッド23は、感光体ドラム6の軸線Xと平行な長手方向に延在する細長い形状を有する。LEDヘッド23は、LEDアレイ(発光素子アレイ)5と、ロッドレンズアレイ(結像素子アレイ)4とを有する。
LEDアレイ5は、感光体ドラム6の軸線Xに沿って並べて配置された複数個のLED(発光素子)5aを有する。実施例1において、複数のLED5aは、直線状に配置されている。すなわち、LEDヘッド23は、感光体ドラム6の回転方向Rに直交する長手方向(軸線方向)に並んで設けられ、感光体ドラム6の表面を露光するために画像情報に従って発光する複数個のLED5aを有する。
複数個のLED5aは、LED駆動回路18(図8)によって駆動されて、画像情報に従って発光させられる。複数個のLED5a及びLED駆動回路18は、基板(不図示)の上に配置されている。
ロッドレンズアレイ4は、感光体ドラム6の軸線Xに沿って並べて配置された複数のロッドレンズ(結像素子)4aを有する。図2(b)は、ロッドレンズアレイ4の部分断面斜視図である。ロッドレンズアレイ4は、2枚の板4bの間に、2列で直線状に配置された複数のロッドレンズ4aを有する。4aは、正立等倍結像レンズである。本実施例において、ロッドレンズ4aの直径は約0.6mmである。ロッドレンズ4aは、複数個のLED5aから射出された光を集光して感光体ドラム6の表面の上に等倍で結像する。実施例1では、LEDアレイ5とロッドレンズアレイ4とを一体化して、露光光源としてのLEDヘッド23を構成している。
感光体ドラム6を矢印Rで示す方向に回転させながら、LEDアレイ5の複数のLED5aを選択的に発光させることにより、感光体ドラム6の表面に2次元的な静電潜像を形成する。
【0019】
ロッドレンズアレイ4の焦点深度は、極端に浅く、±0.05mm程度である。LED5aの点灯動作により、LED5aは、自己発熱して発光中心波長(以下、波長という。)λが延びる。ロッドレンズアレイ4の共役長TC(図5)は、波長λの延びに比例して延びる。共役長TCは、LED5aと結像位置との間の距離である。このため、組立時において、感光体ドラム6の表面上に結像位置を正確に調整できたとしても、LED5aの発熱によって共役長TCが延びることにより、LED5aと結像位置との間の距離が延びる。このため、結像位置が感光体ドラム6の表面からずれる。
【0020】
図3は、LED5aの温度変化に対するロッドレンズアレイ4の共役長TCの変化を示す図である。図3(a)は、LED5aの温度上昇に対するLED5aの光の波長λの変化を示す図である。LED5aは、連続点灯動作などの使用状況に従って発熱する。LED5aの光の波長λは、温度依存性を有する。図3(a)からわかるように、LED5aの温度が1度上昇すると波長λが約0.3ナノメートル(nm)延びる。
【0021】
ロッドレンズアレイ4の共役長TCは、波長依存性を有する。図3(b)は、光の波長λの変化に対するロッドレンズアレイ4の共役長TCの変化を示す図である。ロッドレンズアレイ4は、570nmの波長λの光に対して9.1mmの公称共役長TC0を有する。図3(b)からわかるように、波長λの延びに比例して共役長TCが延びる。
【0022】
このため、LED5aの温度上昇に従って、ロッドレンズアレイ4の共役長TCが延びる。図3(c)は、LED5aの温度上昇に対するロッドレンズアレイ4の共役長TCの変化を示す図である。図3(c)からわかるように、LED5aの温度が約26.3℃上昇することにより、ロッドレンズアレイ4の共役長TCが約0.05mm延びる。この0.05mmの共役長TCの延びは、LEDヘッド23の±0.05mmの焦点深度に相当する。つまり、LED5aの温度が26.3℃以上上昇すると、ピントのずれが生じる。
一般に、LED5aの連続発光による温度上昇Δtは、約60〜70℃にまで達することが知られている。仮に、温度上昇Δtが60℃とすると、共役長TCの変化ΔTCは、約0.11mmとなる。従って、結像位置は、感光体ドラム6の表面からずれる。
実施例1においては、LED5aと感光体ドラム6の表面との間の光路に、楔形光学部材1を挿入することにより、LED5aと感光体ドラム6の表面との間の光学距離を補正する。すなわち、ロッドレンズアレイ4の共役長TCの変化量ΔTCだけ、光路への楔形光学部材1の挿入量を変化させることにより、LED5aと感光体ドラム6の表面との間の光学距離を変化させる。LED5aと感光体ドラム6の表面との間の光学距離を補正することにより、LED5aと結像位置との間の実際の距離を補正して、結像位置を感光体ドラム6の表面に一致させる。
【0023】
次に、実施例1の楔形光学部材(光学部材)1を説明する。
楔形光学部材1は、光透過性に優れ、空気と異なる屈折率を有する材質により形成されている。楔形光学部材1は、成形性を考慮して、例えば、アクリルやスチレンなどの樹脂により形成されていることが好ましい。
【0024】
図4は、楔形光学部材1の移動による光線3の屈折と光路の移動を示す図である。楔形光学部材1は、複数のLED5aからの光線(露光光)3が入射される入射面1aと、光線3を射出する射出面1bとを有する。入射面1aは、射出面1bと平行でない。実施例1において、楔形光学部材1は、三角形の断面形状を有する。楔形光学部材1の断面形状は、三角形に限らず台形でもよい。また、後述する光学条件を満足すれば、その他の形状であっても良い。楔形光学部材1は、LEDアレイ5及びロッドレンズアレイ4の長手方向の長さと同程度の長さを有する(図6(a))。
【0025】
楔形光学部材1の入射面1aと射出面1bは互いに平行ではないので、空気の屈折率と楔形光学部材1の屈折率との差によって光線3は、楔形光学部材1により屈折する。
図4に示すように、楔形光学部材1の入射面1aと射出面1bとで形成される角度をθとする。入射面1aに入射する光線3が射出面1bの垂線P1に対してなす角をαとする。空気に対する楔形光学部材1の材質の屈折率をnとする。
光線3が楔形光学部材1の射出面1bに垂直な方向(垂線方向)に射出される場合、光線3が射出面1bの垂線P1に対してなす角αは、以下の式(1)で算出される。
【数1】

仮にθ=10°、n=1.49の楔形光学部材1を用いた場合、α=5.0°と算出することができる。
【0026】
図4に示すように、射出面1bと平行な面内で、感光体ドラム6の長手方向に直交する方向Bへ楔形光学部材1を移動させると、楔形光学部材1の形状に由来する屈折が原因で、感光体ドラム6への照射位置にずれが発生する。照射位置は、感光体ドラム6の長手方向に直交する方向Bにずれる。
実施例1において、LED駆動回路(発光タイミング調整手段)18(図8)は、楔形光学部材1の移動量に応じてLED5aの発光タイミングを調整することにより、照射位置のずれを補正する。
【0027】
図4に示すように、射出面1bと平行な面内で、感光体ドラム6の長手方向に直交する方向Bへの楔形光学部材1の移動量をΔxとする。射出面1bから射出される光線3のB方向への移動量をΔdとする。光線3が楔形光学部材1の中を通過する実空間上の距離の変化量をΔlとする。移動量Δdと変化量Δlは、それぞれ式(2)と式(3)により算出される。
【数2】

【数3】

上記と同様に、θ=10°、n=1.49の楔形光学部材1を用いた場合、光線3のB方向への移動量Δdと、光線3が楔形光学部材1の中を通過する実空間上の距離の変化量Δlは、以下のように算出される。
Δd=0.0156ΔX
Δl=0.179ΔX
【0028】
図3(c)から、LED5aの温度上昇Δtが60℃のときに、ロッドレンズアレイ4の共役長TCの変化量ΔTCは、0.11mmである。
0.11mmの変化量ΔTCを補正するためには、距離の変化量Δlは、次のように計算される。
(n−1)Δl=0.11
屈折率nは、1.49であるので、距離の変化量Δlは、0.2245mmとなる。
0.2245mmの変化量Δlを得るための楔形光学部材1の移動量Δxは、上記式から、1.25mmと算出される。
楔形光学部材1を、射出面1bと平行な面内で、感光体ドラム6の長手方向に直交する方向Bへ1.25mm移動させることにより、複数個のLED5aの温度の変化に従って変化する複数個のLED5aと結像位置との間の距離を補正することができる。
このときの光線3のB方向への移動量Δdは、上記式から、0.020mmと算出される。移動量Δdは、LED駆動回路18(図8)により、LED5aの発光タイミングを調整することにより、補正することができる。
【0029】
図5は、LEDアレイ5(複数個のLED5a)と感光体ドラム6との間の光路に配置された楔形光学部材1を示す図である。
図5(a)は、LEDアレイ5とロッドレンズアレイ4との間の光路に配置された楔形光学部材1を示す図である。ロッドレンズアレイ4は、ロッドレンズアレイ4の光軸OA1が、目標照射位置TPにおける感光体ドラム6の表面の法線P2と平行になるように、配置されている。楔形光学部材1は、楔形光学部材1の射出面1bの垂線P1が、ロッドレンズアレイ4の光軸OA1と平行になるように、配置されている。
LEDアレイ5からの光線3は、楔形光学部材1により屈折されるので、LEDアレイ5は、LEDアレイ5の光軸OA2が、楔形光学部材1の射出面1bの垂線P1すなわちロッドレンズアレイ4の光軸OA1に対して傾くように、配置されている。すなわち、LEDアレイ5の光線3の射出方向は、感光体ドラム6の表面の法線P2に対して傾いて配置されている。
図5(a)において、ロッドレンズアレイ4の光軸OA1に対するLEDアレイ5の光軸OA2の傾き角度は、上記αに設定されている。
このように、目標照射位置TPにおける感光体ドラム6の表面に対して垂直に光線を入射させる場合は、楔形光学部材1に入射する光線を、予め感光体ドラム6の表面の法線P2に対して傾ける。
【0030】
図5(b)は、ロッドレンズアレイ4と感光体ドラム6との間の光路に配置された楔形光学部材1を示す図である。楔形光学部材1は、楔形光学部材1の射出面1bの垂線P1が、目標照射位置TPにおける感光体ドラム6の表面の法線P2と平行になるように、配置されている。
LEDアレイ5からの光線3は、楔形光学部材1により屈折されるので、LEDアレイ5は、LEDアレイ5の光軸OA2が、楔形光学部材1の射出面1bの垂線P1に対して傾くように、配置されている。すなわち、LEDアレイ5の光線3の射出方向は、感光体ドラム6の表面の法線P2に対して傾いて配置されている。
ロッドレンズアレイ4は、ロッドレンズアレイ4の光軸OA1が、LEDアレイ5の光軸OA2と平行になるように、配置されている。すなわち、ロッドレンズアレイ4は、ロッドレンズアレイ4の光軸OA1が、楔形光学部材1の射出面1bの垂線P1に対して傾くように、配置されている。
図5(b)において、楔形光学部材1の射出面1bの垂線P1に対するロッドレンズアレイ4の光軸OA1の傾き角度は、上記αに設定されている。
図5(b)において、LEDアレイ5及びロッドレンズアレイ4は、ロッドレンズアレイ4から射出され楔形光学部材1により屈折した光線が感光体ドラム6の表面の法線P2と平行になるように、法線P2に対して傾いて配置されている。
実施例1において、楔形光学部材1は、図5に示すように、LEDアレイ5(複数個のLED5a)と感光体ドラム6の表面との間の光路に、配置されていればよい。
【0031】
図5は、LED5aの温度上昇による結像位置のずれ(ピントずれ)も示している。
図5において、LED5aの温度が上昇する前の光線経路を実線で示す。結像位置は、感光体ドラム6の表面にある。
LED5aの温度が上昇した後の光線経路を点線で示す。ロッドレンズアレイ4の共役長TCは、変化量ΔTCだけ延びている。結像位置は、感光体ドラム6の表面から変化量ΔTCだけずれている。
楔形光学部材1を、射出面1bと平行な面内で、感光体ドラム6の長手方向に直交する方向Bへ移動することにより、光学距離を調整した後の光線経路を破線で示す。結像位置は、感光体ドラム6の表面に調整される。
LED5aの温度上昇によりロッドレンズアレイ4の共役長TCが延びたときに、楔形光学部材1を、射出面1bと平行な面内で、感光体ドラム6の長手方向に直交する方向Bへ移動することにより、結像位置を調整することができる。
【0032】
以下に、楔形光学部材1の位置を調整可能に支持する支持部材7を説明する。
図6は、楔形光学部材1を支持する支持部材7を示す図である。図6(a)は、支持部材7の平面図である。図6(b)は、図6(a)の線VIB−VIBに沿って取った支持部材7の断面図である。
楔形光学部材1は、支持部材7により支持される。支持部材7は、座面7a及び7bを有する。楔形光学部材1の射出面1bは、座面7a及び7bに当接している。楔形光学部材1は、座面7a及び7bの上を摺動可能である。支持部材7は、光線3が通過する開口部10を有する。
支持部材7の長手方向の両端部には、楔形光学部材1を保持するための板ばね(弾性部材)11がそれぞれ設けられている。楔形光学部材1の長手方向の両端部は、板ばね11により、支持部材7の座面7a及び7bに向けて付勢されて、保持されている。
支持部材7の一方側7cの両端部に、弾性部材9がそれぞれ設けられている。楔形光学部材1の両端部において、楔形光学部材1の鋭角な先端部1dは、弾性部材9のそれぞれに当接している。弾性部材9は、楔形光学部材1を、支持部材7の長手方向に直交する方向に付勢する。弾性部材9は、例えば、板ばね、コイルばね、ゴム部材などである。
支持部材7の他方側7dの両端部に、セットビス(調整部材)8がそれぞれ設けられている。セットビス8は、弾性部材9に対向して配置されている。セットビス8は、楔形光学部材1の先端部1dと反対の側の側面1cに当接する。
セットビス8を右回転させることにより、セットビス8は、楔形光学部材1の端部を、弾性部材9の付勢力に抗して、矢印A1で示す支持部材7の一方側7cへ向けて移動させる。セットビス8を左回転させることにより、弾性部材9は、楔形光学部材1の端部を、矢印A2で示す支持部材7の一方側7dへ向けて移動させる。
二つのセットビス8を同じ回転量だけ回転させることにより、射出面1bと平行な面内で、感光体ドラム6の長手方向に直交する方向に、楔形光学部材1を平行移動させることができる。
また、二つのセットビス8を異なる回動量だけ回転させることにより、射出面1bと平行な面内で、楔形光学部材1を矢印A3及びA4で示す方向に揺動させることができる。
LEDヘッド23の組み付け時において、結像位置が感光体ドラム6の表面上に合うように、支持部材7に対して、楔形光学部材1を、射出面1bと平行な面内で、感光体ドラム6の長手方向に直交する方向に移動させる。必要に応じて、支持部材7に対して、楔形光学部材1を、射出面1bと平行な面内で、揺動させて、結像位置が感光体ドラム6の表面上に合うようにする。
以上の構成により、LED5aから楔形光学部材1を通過して感光体ドラム6の表面へ至る光線3の光学距離を変化させて、感光体ドラム6の表面に、高い精度で結像させることができる。LEDアレイ5、ロッドレンズアレイ4、及び感光体ドラム6が組み立てられたときに、これらの部材の平行関係や位置精度が高くない場合でも、支持部材7により楔形光学部材1の位置を調整することにより、結像位置を調整できる。
支持部材7を使用することにより、LEDアレイ5、ロッドレンズアレイ4、及び感光体ドラム6を高い精度の平行度や位置精度で組み立てるための特別なピント調整機構を設ける必要がない。
【0033】
支持部材7の両端部には、ナット部材19及び20がそれぞれ設けられている。ナット部材19及び20には、支持部材7の長手方向に直交する矢印Bで示す方向に延在するネジ部材14及び15が螺合している。ネジ部材14及び15のそれぞれの一端部にモータ(駆動装置)12が連結されている。モータ12によりネジ部材14及び15が回転すると、ネジ部材14及び15とナット部材19及び20との螺合により、支持部材7は、射出面1bと平行な面内で、感光体ドラム6の長手方向に直交するB方向に移動する。
画像形成装置100の稼動時に、LED5aの温度上昇に従ってモータ12の回転量を調整することにより、楔形光学部材1を駆動して、LED5aと結像位置との間の距離を補正することができる。
【0034】
以上述べたように、支持部材7は、楔形光学部材1を、光軸に対して略垂直な平面内において揺動可能に支持する。楔形光学部材1を揺動させることによって、像高ごとに、楔形光学部材1を通過する光線の光路長を変化させることが可能となる。例えば、組み付け時のLEDアレイ5、ロッドレンズアレイ4、及び感光体ドラム6の間の平行関係が正確に調整されていない場合であっても、楔形光学部材1の揺動によって光路長を変化させて感光体ドラム6の表面上に露光光を好適に結像させることができる。すなわち、LEDアレイ5、ロッドレンズアレイ4、及び感光体ドラム6の光軸方向の実空間上の距離が像高ごとに異なる場合でも、楔形光学部材1を揺動させることにより、感光体ドラム6の表面上に光線を結像させるようにピントを合わせることが可能となる。
【0035】
楔形光学部材1を支持する支持部材7が光軸に対して略垂直な方向に移動することで、像高によらず楔形光学部材1を通過する光線の光路長を変化させることができる。これにより、LED5aの温度上昇に起因するピントずれが発生した場合、ピントずれ量に従って、支持部材7を光軸に対して略垂直な方向への移動量Δxを変化させることにより、楔形光学部材1を通過する光線の光路長を変化させることができる。従って、楔形光学部材1の移動量Δxを調整することにより、LED5aからの光線を感光体ドラムの表面に結像させることができる。
【0036】
モータ12により、楔形光学部材1を支持する支持部材7を光軸に略垂直な方向に移動させることができる。その結果、画像形成装置の稼動時のLED5aの発熱によるピントずれを、画像形成装置の稼動中に補正することができる。
【0037】
実施例1においては、LED5aと感光体ドラム6との間の光路に、楔形光学部材1を単体で配置している。しかし、図7に示すように、複数枚の楔形光学部材を設けてもよい。
図7は、光学部材41の断面図である。光学部材41は、楔形光学部材(光学素子)1(以下、図7に示す実施例において第一楔形光学部材という。)と、第二楔形光学部材(光学素子)2とを有する。
光学部材41は、光線の第一楔形光学部材1を通過した光線3の屈折による感光体ドラム6への照射位置のずれを、LEDアレイ5の発光タイミングを制御することなく相殺(キャンセル)する。
光学部材41は、第一楔形光学部材1に加えて第二楔形光学部材2を有する。第一楔形光学部材1は、平らな入射面(一方の面)1aと射出面(他方の面)1bを有する。第一楔形光学部材1の入射面1aは、射出面1bに対して角度θ傾いている。第二楔形光学部材2は、平らな入射面(他方の面)2aと射出面(一方の面)2bを有する。第二楔形光学部材2の射出面2bは、入射面2aに対して角度θ傾いている。
光学部材41の入射面2aと射出面1bとが平行になるように、第一楔形光学部材1と第二楔形光学部材2は、第二楔形光学部材2の射出面2bと第一楔形光学部材1の入射面1aとを接触させて重ね合わされている。第二楔形光学部材2は、第一楔形光学部材1の光入射側に配置され、LEDアレイ5からの光線3と略直交する入射面2aと、第一楔形光学部材1の入射面1aと平行に対向する射出面2bを有する。第二楔形光学部材2の入射面2aと第一楔形光学部材1の射出面1bは、平行であるので、光線3は屈折しない。
光学部材41は、LEDアレイ5と感光体ドラム6との間の光路に配置される。前記した単体の楔形光学部材1と同様に、光学部材41は、LEDアレイ5とロッドレンズアレイ4との間の光路に、又は、ロッドレンズアレイ4と感光体ドラム6との間の光路に配置される。
第一楔形光学部材1と第二楔形光学部材2は、第一楔形光学部材1の入射面1bと第二楔形光学部材2の射出面2bとを接触させた状態で、感光体ドラム6の長手方向に直交するB方向に相対的に移動可能である。
しかし、第二楔形光学部材2の射出面2bと第一楔形光学部材1の入射面1aとの間に間隔を設けてもよい。この場合に、第一楔形光学部材1と第二楔形光学部材2は、第一楔形光学部材1の入射面1bと第二楔形光学部材2の射出面2bとの間の距離を一定に維持した状態で、感光体ドラム6の長手方向に直交するB方向に相対的に移動可能に構成してもよい。LEDアレイ5からの光線3は、光学部材41内で屈折するけれども、入射面2aに入射する光線3と、射出面1bから射出される光線3とは、平行になる。
第一楔形光学部材1と第二楔形光学部材2のB方向への相対移動により、光学部材41を通過する光線3の光路長が変化する。これによって、LEDアレイ5と感光体ドラム6の表面との間の光学距離が変化するので、LEDアレイ5と結像位置との間の距離を補正して、LEDアレイ5からの光線を感光体ドラム6の表面に結像することができる。この場合に、第一楔形光学部材1と第二楔形光学部材2のB方向への相対移動により光線3の光路がB方向へ移動することはないので、LEDアレイ5の発光タイミングを制御する必要がなくなる。
LEDアレイ5の光軸OA2を目標照射位置TPにおける感光体ドラム6の表面の法線P2に対して傾ける必要がない。LEDアレイ5は、LEDアレイ5の光軸OA2がロッドレンズアレイ4の光軸OA1及び感光体ドラム6の表面の法線P2と平行になるように、配置される。
以上のように、露光光の光路上に光学部材を複数個配置することによって、複数個の光学部材に露光光を入射させる際の入射角度を傾けることなく、像高或いは光路長の調整を行うことが可能となる。
【0038】
図8は、LED5aの温度に関する情報に従ってモータ12を駆動する制御装置のブロック図である。
図8(a)は、実施例1によるLED5aの温度に関する情報に従ってモータ12を駆動する制御装置のブロック図である。LED5aの温度変化に従って、モータ12の駆動量を変化させ、支持部材7に支持された楔形光学部材1の位置を変化させる。
【0039】
LEDアレイ5には、LED5aの温度に対応する温度情報を得るLED温度測定部(温度情報取得部)17aが配置されている。LED温度測定部17aは、LED5aの温度を測定する熱電対、又は、LED5aの温度あるいは温度変化に対応する温度情報(電流値又は電圧値)を取得する装置である。
LED温度測定部17aは、CPU13に電気的に接続されている。CPU13は、モータ駆動制御装置16及びLED駆動回路18に電気的に接続されている。モータ駆動制御装置16は、モータ12を制御する。
CPU13は、LED5aの温度閾値Tmに対するモータ12の駆動量のルックアップテーブルを記憶している。ルックアップテーブルは、予め測定して得られたものである。CPU13は、LED5aの温度情報から、ルックアップテーブルに従って、モータ12の駆動量を決定する。CPU13は、決定したモータ12の駆動量をモータ駆動制御装置16へ指示する。モータ駆動制御装置16は、指示されたモータ12の駆動量に従ってモータ12を駆動させる。モータ12は、楔形光学部材1の射出面1bと平行な面内で、感光体ドラム6の長手方向に直交する方向に、楔形光学部材1の支持部材7を移動させる。
【0040】
また、式(2)から、楔形光学部材1が図6(a)の矢印Bで示す方向に移動させた際の移動量Δxに従って、射出面1bから射出される光線3のB方向への移動量(感光体ドラム6の表面上の照射位置ずれ)Δdが発生する。この照射位置ずれを補正するために、CPU13は、決定したモータ12の駆動量に従ってLED発光タイミング遅延時間を算出し、LED駆動回路18へLED発光タイミング遅延時間を指示する。LED駆動回路18は、指示されたLED発光タイミング遅延時間だけ遅延してLED5aを発光させる。
【0041】
図9は、実施例1による結像位置の調整を示すフローチャートである。
CPU13は、LED5aの温度を測定する回数を予め設定した測定回数閾値jと、予め段階的に設定したLED5aの温度閾値Tm(T,T,T,・・・・・,Tn)とを記憶している。さらに、CPU13は、LED5aの温度閾値Tm(T,T,T,・・・・・,Tn)に対するモータ12の駆動量のルックアップテーブルを記憶している。
【0042】
CPU13は、ステップS1において、温度閾値Tmの段階を表すmと、測定回数を表すiとを初期化する。CPU13は、温度閾値Tmの段階mをm+1に設定し(ステップS2)、測定回数iをi+1に設定する(ステップS3)。以上の設定後、CPU13は、ステップS4において、LED温度測定部17aによりLED5aの温度に対応する温度情報Tを得る。
【0043】
CPU13は、ステップS5において、LED5aの温度情報Tを温度閾値Tと比較する。T≦Tmの場合(ステップS5のNO)には、ステップS6において、測定回数iと測定回数閾値jとを比較する。i≦jの場合(ステップS6のNO)には、ステップS3へ戻り、ステップS5においてT>Tmとなるまで、LED5aの温度測定(ステップS4)を繰り返す。LED5aの温度を測定する毎に、ステップS3において、測定回数iをi+1に設定する。
【0044】
ステップS5において、LED5aの温度情報Tが温度閾値Tmを超える場合(ステップS5のYES)には、CPU13は、楔形光学部材1の移動と、LEDの発光タイミング遅延とを並列して同時に行うことにより、結像位置(ピント)を調整する。
具体的には、CPU13は、ステップS7において、LED5aの温度閾値Tm(T,T,T,・・・・・,Tn)に対するモータ12の駆動量のルックアップテーブルに従って、モータ12の駆動量を決定する。CPU13は、ステップS8において、モータ駆動制御装置16へモータ12の駆動量を指示する。
モータ駆動制御装置16は、モータ12の駆動量に従って、モータ12を駆動する。モータ12の駆動により、支持部材7と共に楔形光学部材1は、楔形光学部材1の射出面1bと平行な面内で、感光体ドラム6の長手方向に直交する方向に移動させられる。これによって、LED5aと感光体ドラム6との間の光学距離が補正されるので、LED5aと結像位置との間の距離が補正される。
CPU13は、モータ12の駆動と並行してLED発光タイミングの遅延も制御する。すなわち、CPU13は、ステップS9において、モータ12の駆動量に対応したLED5aの発光タイミング遅延時間を算出する。CPU13は、ステップS10において、LED駆動回路18へLED5aの発光タイミング遅延時間を指示する。
LED駆動回路18は、指示されたLED5aの発光タイミング遅延時間に従ってLED5aの発光タイミングを遅延させる。LED5aの発光タイミングを遅延させることにより、楔形光学部材1の移動量Δxに従う光線3の移動量(感光体ドラム6の表面上の照射位置ずれ)Δdを補正する。
モータ12の駆動及びLED5aの発光タイミングの遅延により、LED5aからの光は、感光体ドラム6の表面上の所望の位置に結像される。
以上の楔形光学部材1の移動とLED5aの発光タイミングの遅延が為され、結像位置(ピント)の調整が終了した後、工程は、ステップS2に戻る。ステップS2において、CPU13は、温度閾値Tmの段階mをm+1に設定し、測定回数iを0に初期化する。これによって、温度閾値は、TmからTm+1に書き換えられ、LED5aの温度測定が繰り返される(ステップS4)。
【0045】
LED5aの温度測定を繰り返して、ステップS6において、LED5aの温度の測定回数iが予め設定した測定回数閾値jを超えた場合(ステップS6のYES)には、LED5aの温度が或る値に収束したと判断する。LED5aの温度が或る値に収束したので、結像位置(ピント)の変動も収まったものと判断し、結像位置の調整を終了する。
n,Tm(T1,T2,T3,・・・・・,Tn)の各パラメータは、画像形成装置100の特性に応じて任意に決定される。
実施例1によれば、LED5aの温度に関する情報に従って、楔形光学部材1を駆動することにより、LED5aと結像位置との間の距離を補正し、適正な結像位置(ピント)を確保することができる。
【実施例2】
【0046】
次に、実施例2を説明する。
実施例2の画像形成装置は、実施例1の画像形成装置と略同様である。実施例2は、実施例1のLED温度測定部17aの代わりに、画像形成装置により画像が形成された記録媒体の出力枚数に対応する出力枚数情報を得る出力枚数測定部17bを使用する。実施例2の他の構造は、実施例1の構造と同様である。実施例2において、実施例1の構造と同様の構造には、同様の参照符号を付して説明を省略する。
なお、出力枚数は、画像形成装置100において紙などのシート(記録媒体)S上に画像を形成し、画像形成後のシートを装置外部の排出トレイ30に排出した時の、排出されたシートすなわち出力された画像の枚数を表す。
【0047】
図8(b)は、実施例2によるLED5aの温度に関する情報に従ってモータ12を駆動する制御装置のブロック図である。実施例2において、LED5aの温度に関する情報は、画像形成装置100により画像が形成された記録媒体Sの出力枚数に対応する出力枚数情報である。
画像形成装置100により画像が形成される記録媒体Sの出力枚数が増加するにつれて、LED5aの温度が上昇する。従って、実施例2においては、出力枚数情報に従って、モータ12の駆動量を変化させ、支持部材7に支持された楔形光学部材1の位置を変化させる。
画像形成装置100には、画像形成装置100により画像が形成された記録媒体Sの出力枚数に対応する出力枚数情報を得る出力枚数測定部(温度情報取得部)17bが設けられている。
出力枚数測定部17bは、CPU13に電気的に接続されている。
【0048】
CPU13は、記録媒体の出力枚数閾値Nmに対応するモータ12の駆動量のルックアップテーブルを記憶している。ルックアップテーブルは、予め測定して得られたものである。CPU13は、出力枚数測定部17bの出力枚数情報から、ルックアップテーブルに従って、モータ12の駆動量を決定する。
CPU13は、決定したモータ12の駆動量をモータ駆動制御装置16へ指示する。モータ駆動制御装置16は、指示されたモータ12の駆動量に従ってモータ12を駆動させる。モータ12は、楔形光学部材1の射出面1bと平行な面内で、感光体ドラム6の長手方向に直交する方向に、楔形光学部材1の支持部材7を移動させる。
【0049】
実施例1と同様に、楔形光学部材1の移動により、照射位置ずれが発生する。この照射位置ずれを補正するために、CPU13は、決定したモータ駆動量に従ってLED発光タイミング遅延時間を算出し、LED駆動回路18へLED発光タイミング遅延時間を指示する。LED駆動回路18は、指示されたLED発光タイミング遅延時間だけ遅延してLED5aを発光する。
【0050】
図10は、実施例2による結像位置の調整を示すフローチャートである。
図10に示すフローチャートは、上述したLED5aの温度をパラメータとして判断処理を行った図9に示すフローチャートと比較して、記録媒体の出力枚数をパラメータとする点で相違する。図10に示す実施例2のその他のステップは、図9に示す実施例1のステップと同様であるので説明を省略する。以下の説明では、相違点を中心に図10のフローチャートを説明する。
【0051】
CPU13は、画像形成装置100により画像が形成された記録媒体の出力枚数の測定回数を予め設定した測定回数閾値jと、予め段階的に設定した出力枚数閾値Nm(N,N,N,・・・・・,Nn)とを記憶している。さらに、CPU13は、出力枚数閾値Nm(N,N,N,・・・・・,Nn)に対するモータ12の駆動量のルックアップテーブルを記憶している。
【0052】
CPU13は、ステップS14において、出力枚数測定部17bにより、画像形成装置100により画像が形成された記録媒体Sの出力枚数に対応する出力枚数情報Nを得る。
CPU13は、ステップS15において、出力枚数情報Nと出力枚数閾値Nmを比較する。N≦Nmの場合(ステップS15のNO)には、ステップS16において、測定回数iと測定回数閾値jとを比較する。i≦jの場合(ステップS16のNO)には、ステップS3へ戻り、ステップS15においてN>Nmとなるまで、出力枚数情報Nの測定(ステップS14)を繰り返す。出力枚数情報Nを測定する毎に、ステップS3において、測定回数iをi+1に設定する。
【0053】
ステップS15において、出力枚数情報Nが出力枚数閾値Nmを超える場合(ステップS15のYES)には、CPU13は、楔形光学部材1の移動と、LEDの発光タイミング遅延とを並列して同時に行うことにより、結像位置(ピント)を調整する。
具体的には、CPU13は、ステップS17において、出力枚数閾値Nm(N,N,N,・・・・・,Nn)に対するモータ12の駆動量のルックアップテーブルに従って、モータ12の駆動量を決定する。
CPU13は、ステップS8において、モータ駆動制御装置16へモータ12の駆動量を指示する。CPU13は、ステップS9において、モータ12の駆動量に対応したLED5aの発光タイミング遅延時間を算出する。CPU13は、ステップS10において、LED駆動回路18へLED5aの発光タイミング遅延時間を指示する。
結像位置(ピント)の調整が終了した後、工程は、ステップS2に戻る。ステップS2において、CPU13は、出力枚数閾値Nmの段階mをm+1に設定し、測定回数iを0に初期化する。これによって、出力枚数閾値は、NmからNm+1に書き換えられ、画像が形成された記録媒体Sの出力枚数測定が繰り返される(ステップS14)。
【0054】
出力枚数測定を繰り返して、ステップS16において、記録媒体Sの出力枚数の測定回数iが予め設定した測定回数閾値jを超えた場合(ステップS16のYES)には、記録媒体Sの出力枚数が或る値に収束したものと判断する。記録媒体Sの出力枚数が或る値に収束したので、結像位置(ピント)の変動も収まったものと判断し、結像位置の調整を終了する。
n,Nm(N,N,N,・・・・・,Nn)の各パラメータは、画像形成装置100の特性に応じて任意に決定される。
実施例2によれば、LED5aの温度に関する情報としての出力枚数情報に従って、楔形光学部材1を駆動することにより、LED5aと結像位置との間の距離を補正し、適正な結像位置(ピント)を確保することができる。
【実施例3】
【0055】
次に、実施例3を説明する。
実施例3の画像形成装置は、実施例1の画像形成装置と略同様である。実施例3は、実施例1のLED温度測定部17aの代わりに、画像形成装置100の稼働時間に対応する稼働時間情報を得る稼働時間測定部17cを使用する。実施例3の他の構造は、実施例1の構造と同様である。実施例3において、実施例1の構造と同様の構造には、同様の参照符号を付して説明を省略する。
【0056】
図8(c)は、実施例3によるLED5aの温度に関する情報に従ってモータ12を駆動する制御装置のブロック図である。実施例3において、LED5aの温度に関する情報は、画像形成装置100の稼働時間に対応する稼働時間情報である。
画像形成装置100の稼働時間が増加するにつれて、LED5aの温度が上昇する。従って、実施例3においては、稼働時間情報に従って、モータ12の駆動量を変化させ、支持部材7に支持された楔形光学部材1の位置を変化させる。
画像形成装置100には、画像形成装置100の稼働時間に対応する稼働時間情報を得る稼働時間測定部(温度情報取得部)17cが設けられている。
稼働時間測定部17cは、CPU13に電気的に接続されている。
CPU13は、画像形成装置100の稼働時間閾値tmに対応するモータ12の駆動量のルックアップテーブルを記憶している。ルックアップテーブルは、予め測定して得られたものである。CPU13は、稼働時間測定部17cの稼働時間情報から、ルックアップテーブルに従って、モータ12の駆動量を決定する。
CPU13は、決定したモータ12の駆動量をモータ駆動制御装置16へ指示する。モータ駆動制御装置16は、指示されたモータ12の駆動量に従ってモータ12を駆動させる。モータ12は、楔形光学部材1の射出面1bと平行な面内で、感光体ドラム6の長手方向に直交する方向に、楔形光学部材1の支持部材7を移動させる。
【0057】
実施例1と同様に、楔形光学部材1の移動により、照射位置ずれが発生する。この照射位置ずれを補正するために、CPU13は、決定したモータ駆動量に従ってLED発光タイミング遅延時間を算出し、LED駆動回路18へLED発光タイミング遅延時間を指示する。LED駆動回路18は、指示されたLED発光タイミング遅延時間だけ遅延してLED5aを発光する。
【0058】
図11は、実施例3による結像位置の調整を示すフローチャートである。
図11に示すフローチャートは、上述したLED5aの温度をパラメータとして判断処理を行った図9に示すフローチャートと比較して、画像形成装置100の稼働時間をパラメータとする点で相違する。図11に示す実施例3のその他のステップは、図9に示す実施例1のステップと同様であるので説明を省略する。以下の説明では、相違点を中心に図11のフローチャートを説明する。
CPU13は、画像形成装置100の稼働時間の測定回数を予め設定した測定回数閾値jと、予め段階的に設定した稼働時間閾値tm(t,t,t,・・・・・,tn)とを記憶している。さらに、CPU13は、稼働時間閾値tm(t,t,t,・・・・・,tn)に対するモータ12の駆動量のルックアップテーブルを記憶している。
【0059】
CPU13は、ステップS24において、稼働時間測定部17cにより、画像形成装置100の稼働時間に対応する稼働時間情報tを得る。
CPU13は、ステップS25において、稼働時間情報tと稼働時間閾値tmを比較する。t≦tmの場合(ステップS25のNO)には、ステップS26において、測定回数iと測定回数閾値jとを比較する。i≦jの場合(ステップS26のNO)には、ステップS3へ戻り、ステップS25においてt>tmとなるまで、稼働時間情報tの測定(ステップS24)を繰り返す。稼働時間情報tを測定する毎に、ステップS3において、測定回数iをi+1に設定する。
【0060】
ステップS25において、稼働時間情報tが稼働時間閾値tmを超える場合(ステップS25のYES)には、CPU13は、楔形光学部材1の移動と、LEDの発光タイミング遅延とを並列して同時に行うことにより、結像位置(ピント)を調整する。
具体的には、CPU13は、ステップS27において、稼働時間閾値tm(t,t,t,・・・・・,tn)に対するモータ12の駆動量のルックアップテーブルに従って、モータ12の駆動量を決定する。
CPU13は、ステップS8において、モータ駆動制御装置16へモータ12の駆動量を指示する。CPU13は、ステップS9において、モータ12の駆動量に対応したLED5aの発光タイミング遅延時間を算出する。CPU13は、ステップS10において、LED駆動回路18へLED5aの発光タイミング遅延時間を指示する。
結像位置(ピント)の調整が終了した後、工程は、ステップS2に戻る。ステップS2において、CPU13は、稼働時間閾値tmの段階mをm+1に設定し、測定回数iを0に初期化する。これによって、稼働時間閾値は、NmからNm+1に書き換えられ、画像形成装置100の稼働時間測定が繰り返される(ステップS24)。
【0061】
稼働時間測定を繰り返して、ステップS26において、画像形成装置100の稼働時間の測定回数iが予め設定した測定回数閾値jを超えた場合(ステップS26のYES)には、画像形成装置100の稼働時間が或る値に収束したものと判断する。画像形成装置100の稼働時間が或る値に収束したので、結像位置(ピント)の変動も収まったものと判断し、結像位置の調整を終了する。
n,tm(t,t,t,・・・・・,tn)の各パラメータは、画像形成装置100の特性に応じて任意に決定される。
実施例3によれば、LED5aの温度に関する情報としての稼働時間情報に従って、楔形光学部材1を駆動することにより、LED5aと結像位置との間の距離を補正し、適正な結像位置(ピント)を確保することができる。
以上に説明した実施例によれば、LEDやロッドレンズアレイを光軸方向に動かすことなく簡単な構成で発光素子と結像位置との間の距離を短時間で調整することができる。
前記実施例において、像担持体として感光体ドラムを使用して本発明を説明した。しかし、本発明は、これに限定されるものではなく、像担持体として感光体ベルトを使用してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 楔形光学部材(光学部材)
2 第二楔形光学部材(光学部材)
4 ロッドレンズアレイ(結像素子)
5a LED(発光素子)
6 感光体ドラム(像担持体)
12 モータ(駆動装置)
23 LEDヘッド(露光装置)
41 光学部材
100 画像形成装置
S 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に画像を形成する画像形成装置であって、
像担持体と、
前記像担持体の回転方向に直交する長手方向に並んで設けられ前記像担持体の表面を露光するために画像情報に従って発光する複数個の発光素子と、前記複数個の発光素子からの光を前記像担持体の表面に結像する結像素子とを有する露光装置と、
前記複数個の発光素子の温度の変化に従って変化する、前記複数個の発光素子からの光の前記像担持体の上における結像位置と前記複数個の発光素子との間の距離を補正するために、前記複数個の発光素子と前記像担持体との間の光路上に移動可能に配置された光学部材と、
前記複数個の発光素子の前記温度に関する情報に従って、前記複数個の発光素子と前記結像位置との間の前記距離を補正するために前記光学部材を移動させる駆動装置と
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記複数個の発光素子の前記温度に対応する温度情報を得る温度測定部を有し、
前記複数個の発光素子の前記温度に関する情報は、前記温度測定部により得られた前記温度情報であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記画像形成装置により前記画像が形成された前記記録媒体の出力枚数に対応する出力枚数情報を得る出力枚数測定部を有し、
前記複数個の発光素子の前記温度に関する情報は、前記出力枚数測定部により得られた前記出力枚数情報であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記画像形成装置の稼働時間に対応する稼働時間情報を得る稼働時間測定部を有し、
前記複数個の発光素子の前記温度に関する情報は、前記稼働時間測定部により得られた前記稼働時間情報であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記光学部材は、平らな入射面と、平らな射出面とを有し、前記入射面は、前記射出面に対して傾いていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記光学部材は、前記射出面と平行な面内で、前記長手方向に直交する方向に、前記駆動装置により移動させられることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記駆動装置による前記光学部材の駆動量に従って、前記複数個の発光素子の発光タイミングを調整する発光タイミング調整手段を有する請求項5又は6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記光学部材は、二つの光学素子を有し、
前記二つの光学素子のそれぞれは、二つの平らな面を有し、
前記平らな二つの面の一方の面は、他方の面に対して傾いており、
一方の光学素子の前記他方の面が前記光学部材の入射面を形成し、
他方の光学素子の前記他方の面が前記光学部材の射出面を形成し、
前記光学部材の前記入射面と前記射出面とが平行になるように、前記一方の光学素子の前記一方の面と前記他方の光学素子の前記一方の面とを接触させて、前記一方の光学素子が前記他方の光学素子に重ね合わされていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記一方の光学素子は、前記他方の光学素子に対して、前記長手方向に直交する方向に、前記駆動装置により移動させられることを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記光学部材の前記射出面と平行な面内で前記光学部材を揺動可能に支持する支持部材を有することを特徴とする請求項5乃至9のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記光学部材は、前記複数個の発光素子と前記結像素子との間に配置されていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記光学部材は、前記結像素子と前記像担持体との間に配置されていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記光学部材は、前記複数個の発光素子と前記結像素子との間に配置されており、
前記複数個の発光素子の光軸は、前記結像素子の光軸に対して傾いていることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記光学部材は、前記結像素子と前記像担持体との間に配置されており、
前記結像素子の光軸は、前記光学部材の前記射出面の垂線に対して傾いていることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記光学部材は、樹脂で成形されていることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記結像素子は、ロッドレンズアレイであり、
前記複数個の発光素子と前記結像位置との間の前記距離は、前記ロッドレンズアレイの共役長であることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか一項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−14044(P2013−14044A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147265(P2011−147265)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】