説明

画像記録装置

【課題】複数の照射領域において、1画素に相当する距離を大幅に超える走査方向の位置ずれの補正を容易に実現する。
【解決手段】複数の光変調素子からの光がそれぞれ照射される基板上の複数の照射領域92a〜92cを、照射領域92a〜92cの配列に交差する走査方向に移動して描画を行う際に、1画素に相当する基板上の領域の走査方向の幅を単位幅として、基板上において複数の照射領域92a〜92cに対して相対的に固定された参照位置と各照射領域との間における走査方向の位置ずれ量と、単位幅のα倍(ただし、αは正の整数)との差が単位幅未満となる当該αだけ所定数から増減した数のダミー画素が、当該照射領域に対応する画素列の先頭に付加され、当該差が描画時に利用される位置補正シフト量として取得される。これにより、複数の照射領域において1画素に相当する距離を大幅に超える走査方向の位置ずれの補正が容易に実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の照射により記録媒体に画像を記録する画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置製造技術を利用して基板上に固定リボンと可撓リボンとを交互に形成し、可撓リボンを固定リボンに対して撓ませることにより回折格子の深さを変更することができる回折格子型の光変調素子が開発されている。このような回折格子では溝の深さを変更することにより正反射光や回折光の強度が変化するため、各種記録媒体に画像を記録する画像記録装置への利用が提案されている。
【0003】
例えば、画像記録装置に複数の回折格子型の光変調素子を設けて光を照射し、固定リボンと可撓リボンとが基準面から同じ高さに位置する状態の光変調素子からの反射光(0次光)を記録媒体へと導き、可撓リボンが撓んだ状態の光変調素子からの非0次回折光(主として1次回折光)を遮光することにより、記録媒体への画像記録が実現される。
【0004】
特許文献1では、このような画像記録装置において、光変調素子がON−OFF間で遷移するタイミングを補正することにより、光変調素子がOFF状態からON状態へと遷移するときとON状態からOFF状態へと遷移するときの非対称性、感光材料毎の特性の相違、および、光変調素子毎の照射領域の走査方向の長さの相違や位置のずれに起因して生じる描画領域のずれを補正する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−4525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、画像記録装置では、光変調器の複数の光変調素子からの光がそれぞれ照射される記録媒体上の複数の照射領域を、照射領域の配列に交差する走査方向に移動しつつ各光変調素子が制御されるが、画像記録装置における光変調器の取り付け精度等、機械的な調整に係る精度によっては、複数の照射領域の走査方向の位置が大幅に相違し、画像を精度よく記録することができないという問題が生じることがある。
【0007】
この場合に、仮に、特許文献1の手法を採用したとしても、当該手法では、1画素に相当する時間内で、順次僅かな時間だけずれたクロック群から1つのクロックを選択することにより、当該クロックに対応する画素の画素値に従った駆動電圧が光変調素子に入力されるため、1画素に相当する時間を超えて遷移タイミングをシフトさせる(または、1画素に相当する距離を超えて遷移位置をシフトさせる)ことができず、上記問題を解決することはできない。もちろん、画像記録装置の各構成要素の機械的な調整により、複数の照射領域の走査方向の位置を一致させることも考えられるが、このような調整は容易ではない。また、同一のベース板上に複数の光変調素子が配列形成される光変調器では、ベース板の反りにより、複数の照射領域の走査方向の位置を一致させることが不可能となることもある。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、複数の光変調素子からの光がそれぞれ照射される複数の照射領域において、1画素に相当する距離を大幅に超える走査方向の位置ずれの補正を容易に実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、光の照射により記録媒体に画像を記録する画像記録装置であって、複数の光変調素子を有する光変調器と、前記複数の光変調素子からの光がそれぞれ照射され、記録媒体上におよそ直線状に並ぶ複数の照射領域を、前記複数の照射領域の配列に交差する走査方向に、前記記録媒体に対して相対的に移動する移動機構と、記録媒体への記録対象である対象画像において前記走査方向に対応する列方向に並ぶ複数の画素を画素列として、前記複数の光変調素子が前記対象画像に含まれる複数の画素列にそれぞれ対応付けられており、1つの画素に相当する記録媒体上の領域の前記走査方向の幅を単位幅として、記録媒体上において前記複数の照射領域に対して相対的に固定された参照位置と各照射領域との間における前記走査方向の位置ずれ量と、前記単位幅のα倍(ただし、αは正の整数)との差が前記単位幅未満となる前記αだけ所定数から増減した数の非描画を示すダミー画素を前記各照射領域に対応する画素列の先頭に付加して付加済み画素列を生成するとともに、前記差を前記各照射領域に対する位置補正シフト量として取得する演算部と、前記移動機構に同期しつつ、付加済み画素列および位置補正シフト量に基づいて各光変調素子を制御する制御部とを備える。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像記録装置であって、前記対象画像の各画素列が、それぞれが前記列方向に連続して同一の画素値を有する複数の画素群の集合であり、前記演算部が、各付加済み画素列において隣接する2つの画素群の間の位置である各変化点に関して、画素群の描画ずれを補正するために光変調素子からの出力光量の遷移位置をシフトするシフト量を、前記位置補正シフト量および画素群の描画幅を補正するための線幅補正シフト量に基づいて求め、前記シフト量を前記単位幅にて除した値の整数部分の画素数だけ前記各変化点が前記列方向に移動するように、前記各付加済み画素列に含まれる画素の画素値を変更するとともに、前記各変化点に対応する前記シフト量を前記値の小数部に相当する値に修正し、前記制御部が、変更後の前記各付加済み画素列および修正後の前記シフト量に基づいて前記各光変調素子を制御する。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の画像記録装置であって、前記演算部において、前記各変化点に対して、前記隣接する2つの画素群の画素値の組合せに基づいて修正前の前記シフト量が求められ、前記演算部が、前記各光変調素子に対して、複数通りの2つの画素値の組合せのそれぞれに対する変化点の移動量を示す画素加工テーブルを記憶する第1テーブル記憶部と、前記各付加済み画素列の前記各変化点における2つの画素値の組合せを用いて前記画素加工テーブルを参照することにより、前記各変化点の移動量を取得して前記各変化点を前記列方向に移動する画像変更部と、前記各光変調素子に対して、前記複数通りの2つの画素値の組合せのそれぞれに対する修正後のシフト量を示す修正シフト量テーブルを記憶する第2テーブル記憶部と、前記各付加済み画素列の前記各変化点における2つの画素値の組合せを用いて前記修正シフト量テーブルを参照することにより、前記各変化点に対する前記修正後のシフト量を取得するシフト量取得部とを備える。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の画像記録装置であって、記録媒体を保持する保持部をさらに備え、前記移動機構により前記保持部が前記走査方向に前記光変調器に対して相対移動することにより、前記複数の光変調素子が前記対象画像に含まれる前記複数の画素列の描画を行い、前記保持部が前記走査方向に垂直かつ記録媒体に沿う方向に相対移動し、その後、前記複数の画素列の描画時とは反対方向に相対移動することにより、前記複数の光変調素子が前記対象画像に含まれる他の複数の画素列の描画を行い、前記複数の画素列の描画時、および、前記他の複数の画素列の描画時において、前記各光変調素子に対して異なる画素加工テーブルおよび修正シフト量テーブルが用いられる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の画像記録装置であって、前記複数の光変調素子が、それぞれが2以上の光変調素子である少なくとも1つの素子群にて構成され、素子群毎に能動化と非能動化との切り替えが可能となっており、前記演算部が、前記各照射領域に対応する画素列の末尾にもダミー画素を付加することにより、前記少なくとも1つの素子群のそれぞれにおいて、対応する付加済み画素列の長さが等しくされる。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の画像記録装置であって、前記複数の光変調素子のそれぞれが、少なくとも1つのリボン対を有する回折格子型の光変調素子であり、前記複数の光変調素子が同一のベース板上にて一の方向に配列形成されており、前記参照位置と前記各照射領域との間における前記走査方向の前記位置ずれ量が、前記ベース板の法線方向への反りに起因する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数の照射領域において、1画素に相当する距離を大幅に超える走査方向の位置ずれの補正を容易に実現することができる。
【0016】
請求項2の発明では、1画素に相当する距離を超えて遷移位置をシフトさせつつ、記録媒体に画像を容易に記録することができ、請求項3の発明では、画素加工テーブルおよび修正シフト量テーブルを利用することにより、1画素に相当する距離を超える遷移位置のシフトを容易に実現することができる。
【0017】
請求項4の発明では、往復移動の往路および復路の双方にて、記録媒体に画像を精度よく記録することができ、請求項5の発明では、複数の光変調素子が、それぞれが能動化と非能動化との切り替え単位とされる少なくとも1つの素子群にて構成される場合でも、記録媒体に画像を適切に記録することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施の形態に係る画像記録装置の側面図である。
【図2】画像記録装置の平面図である。
【図3】空間光変調器を示す図である。
【図4.A】光変調素子の断面を示す図である。
【図4.B】光変調素子の断面を示す図である。
【図5】素子駆動要素の一部の構成を示す図である。
【図6】ベースクロックおよびディレイクロックを示す図である。
【図7】変調器制御部の構成を示すブロック図である。
【図8】変換画素データの構造を示す図である。
【図9】変換画素データを説明するための図である。
【図10】基準位置アドレステーブルを示す図である。
【図11】修正シフト量テーブルを示す図である。
【図12】駆動電圧テーブルを示す図である。
【図13.A】基板上に画像を記録する動作の流れを示す図である。
【図13.B】基板上に画像を記録する動作の流れを示す図である。
【図14】空間光変調器のベース板を示す図である。
【図15】複数の位置における光変調素子を重ねて示す図である。
【図16】基板上の複数の照射領域を示す図である。
【図17】標準シフト量を説明するための図である。
【図18】線幅補正シフト量を説明するための図である。
【図19】位置補正シフト量を説明するための図である。
【図20】画素列を示す図である。
【図21】付加済み画素列を示す図である。
【図22】画素列のデータ構造を示す図である。
【図23】ベースクロックおよび画素列を示す図である。
【図24】ベースクロックおよび画素列を示す図である。
【図25】第2の実施の形態に係る画像記録装置の構成を示す図である。
【図26】光学ヘッドの内部構成を示す図である。
【図27】線幅補正シフト量および位置補正シフト量の他の例を示す図である。
【図28】ベースクロック間画素数の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本発明の第1の実施の形態に係る画像記録装置1の側面図であり、図2は画像記録装置1の平面図である。画像記録装置1は、液晶表示装置用のガラス基板(以下、単に「基板」という。)上の感光材料に光を照射して画像を記録する装置(パターン描画装置とも呼ばれる。)である。図1および図2に示すように、画像記録装置1は、(+Z)側の主面91(以下、「上面91」という。)上に感光材料の層が形成された基板9を保持する基板保持部3、基台11上に設けられて基板保持部3をZ方向に垂直なX方向およびY方向に移動する保持部移動機構2、基板保持部3および保持部移動機構2を跨ぐように基台11に固定されるフレーム12、並びに、フレーム12に取り付けられて基板9上の感光材料に変調された光を照射する光照射部4を備える。また、画像記録装置1は、図1に示すように、保持部移動機構2や光照射部4等の各構成を制御する制御部6を備える。
【0020】
基板保持部3は、基板9が載置されるステージ31、ステージ31を回転可能に支持する支持プレート33、および、支持プレート33上において、基板9の上面91に垂直な回転軸321を中心としてステージ31を回転するステージ回転機構32を備える。
【0021】
保持部移動機構2は、基板保持部3を図1および図2中のX方向(以下、「副走査方向」という。)に移動する副走査機構23、副走査機構23を介して支持プレート33を支持するベースプレート24、並びに、基板保持部3をベースプレート24と共にX方向に垂直なY方向(以下、「主走査方向」という。)に連続的に移動する主走査機構25を備える。画像記録装置1では、保持部移動機構2により、基板9の上面91に平行な主走査方向および副走査方向に基板保持部3が移動される。
【0022】
図1および図2に示すように、副走査機構23は、支持プレート33の下側(すなわち、(−Z)側)において、ステージ31の主面に平行、かつ、主走査方向に垂直な副走査方向に伸びるリニアモータ231、並びに、リニアモータ231の(+Y)側および(−Y)側において副走査方向に伸びる一対のリニアガイド232を備える。主走査機構25は、ベースプレート24の下側において、ステージ31の主面に平行な主走査方向に伸びるリニアモータ251、リニアモータ251の(+X)側および(−X)側において主走査方向に伸びる一対のエアスライダ252、並びに、図示省略のリニアスケールを備える。
【0023】
図2に示すように、光照射部4は、副走査方向に沿って等ピッチにて配列されてフレーム12に取り付けられる複数(本実施の形態では、8つ)の光学ヘッド41を備える。また、光照射部4は、図1に示すように、各光学ヘッド41に接続される光源光学系42、並びに、紫外光を出射するUV光源43および光源駆動部44を備える。UV光源43は固体レーザであり、光源駆動部44が駆動されることにより、UV光源43から例えば波長355nmの紫外光が出射され、光源光学系42を介して光学ヘッド41へと導かれる。
【0024】
各光学ヘッド41は、UV光源43からの光を下方に向けて出射する出射部45、出射部45からの光を反射して空間光変調器46へと導く光学系451、光学系451を介して照射された出射部45からの光を変調しつつ反射する空間光変調器46、および、空間光変調器46からの変調された光を基板9の上面91に設けられた感光材料上へと導く光学系47を備える。
【0025】
図3は、空間光変調器46を拡大して示す図である。図3に示すように、空間光変調器46は、出射部45を介して照射されたUV光源43からの光を基板9の上面91へと導く回折格子型の複数の光変調素子461を備える。光変調素子461は半導体装置製造技術を利用して製造され、格子の深さを変更することができる回折格子となっている。光変調素子461には複数の可撓リボン461aおよび固定リボン461bが交互に平行に配列形成され、複数の可撓リボン461aは背後の基準面に対して個別に昇降移動可能とされ、複数の固定リボン461bは基準面に対して固定される。回折格子型の光変調素子としては、例えば、GLV(Grating Light Valve:グレーチング・ライト・バルブ)(シリコン・ライト・マシーンズ(サニーベール、カリフォルニア)の登録商標)が知られている。
【0026】
図4.Aおよび図4.Bは、可撓リボン461aおよび固定リボン461bに対して垂直な面における光変調素子461の断面を示す図である。図4.Aに示すように可撓リボン461aおよび固定リボン461bがベース板(例えば、シリコンにて形成される基板)460の主面である基準面460aに対して同じ高さに位置する(すなわち、可撓リボン461aが撓まない)場合には、光変調素子461の表面は面一となり、入射光L1の反射光が0次光(正反射光)L2として導出される。一方、図4.Bに示すように可撓リボン461aが固定リボン461bよりも基準面460a側に撓んで可撓リボン461aと固定リボン461bとの高さの差が所定の値とされる場合には、可撓リボン461aが回折格子の溝の底面となり、1次回折光L3(さらには、高次回折光)が光変調素子461から導出され、0次光L2は消滅する。実際の光変調素子461では、可撓リボン461aと固定リボン461bとの高さの差を複数通りに変更することにより0次光L2の強度が複数通りに変更され、回折格子を利用した多階調の光変調が行われる。
【0027】
図1に示す光照射部4では、UV光源43からの光が光源光学系42により線状光(光束断面が線状の光)とされ、出射部45を介して空間光変調器46のライン状に配列された複数の可撓リボン461aおよび固定リボン461b(図4.Aおよび図4.B参照)上に照射される。光変調素子461では、隣接する各1本の可撓リボン461aおよび固定リボン461bを1つのリボン対とすると、3つ以上のリボン対が描画されるパターンの1つの画素に対応する。もちろん、光変調素子461が1つのリボン対とされ、1つのリボン対が1つの画素に対応していてもよい。すなわち、空間光変調器46における各光変調素子461は、少なくとも1つのリボン対を有するものであればよい。
【0028】
光変調素子461では、各空間光変調器46に接続される変調器制御部60からの信号に基づいてパターンの各画素に対応するリボン対の可撓リボン461aがそれぞれ制御され、リボン対が複数通りの出力光量(強度)の0次光を出射する複数の状態の間で遷移可能とされる。光変調素子461から出射される0次光は光学系47へと導かれ、非0次回折光(主として1次回折光((+1)次回折光および(−1)次回折光))は光学系47とは異なる方向へと導かれる。なお、迷光となることを防止するために1次回折光は図示を省略する遮光部により遮光される。
【0029】
光変調素子461からの0次光は、光学系47を介して基板9の上面91へと導かれ、これにより、基板9の上面91上においてX方向(すなわち、副走査方向)に沿っておよそ直線状に並ぶ複数の照射領域のそれぞれに変調された光(光の強度がおよそ0とされる場合を含む。)が照射される。以上のように、各画素に対応する光変調素子461は多階調(基板9上に描画用の光が照射されない階調を含む。)にて基板9上に光を照射することが可能とされる。後述するように、複数の照射領域では、相互に主走査方向の位置ずれが生じている。
【0030】
図1および図2に示す画像記録装置1では、保持部移動機構2の主走査機構25により主走査方向に移動される基板9に対し、光照射部4の光変調素子461から変調された光が照射される。換言すれば、主走査機構25は、複数の光変調素子461からの光がそれぞれ照射される複数の照射領域の位置(すなわち、照射位置)を、基板9に対して相対的にかつ連続的に、複数の照射領域の配列に交差する主走査方向へと移動する移動機構となっている。なお、画像記録装置1では、基板9を移動することなく、光学ヘッド41が主走査方向に移動することにより基板9上の照射位置が主走査方向に移動されてもよい。画像記録装置1では、制御部6の変調器制御部60により、光変調素子461からの光の変調が制御されることにより、基板9への記録対象である画像(以下、「対象画像」という。)を示すパターンが基板9上に記録される。
【0031】
図5は変調器制御部60の一部の構成を示す図であり、変調器制御部60における各光変調素子461の駆動に係る要素(以下、「素子駆動要素61」という。)の一部を示している。素子駆動要素61は、レジスタ610,611、シフト部616およびD/Aコンバータ612、並びに、D/Aコンバータ612からの出力を光変調素子461の実際の駆動電圧(以下、「実駆動電圧」という。)へと変換する回路を有し、シフト部616はレジスタ613、カウンタ614およびコンパレータ615を有する。
【0032】
変調器制御部60は図示省略のクロック発生部をさらに備え、クロック発生部には主走査機構25のリニアスケールからの信号が入力される。そして、図6の上段に示すように、基板9上における光の照射位置が一定の距離(後述の画像記録の際に設定される距離であり、以下、「設定距離」という。)だけ主走査方向(Y方向)に移動する毎にクロック発生部にてベースクロック303が発生し、図5に示すレジスタ610、並びに、シフト部616のレジスタ613およびカウンタ614に入力される。図5では、符号303を付す矢印にてレジスタ610,613およびカウンタ614に順次入力されるベースクロックを示している(後述のディレイクロック304、駆動電圧データ301、シフトディレイ数データ302およびシフト済みクロック305において同様)。
【0033】
また、クロック発生部では、図6の中段に示すように、設定距離を所定数(例えば200)に等分割した距離(例えば、10ナノメートル(nm))だけ基板9上の照射位置が移動する毎にディレイクロック304が発生し、カウンタ614に入力される。なお、主走査機構25による基板9の主走査方向への移動速度はほぼ一定であるため、図6の上段および中段のそれぞれでは、横軸を時間と捉えることも可能である(後述の図9、図17ないし図19、図23、図24、図27、並びに、図28において同様)。
【0034】
図5のレジスタ610には実駆動電圧が時間とともに漸次変化して最終的に到達する目標となる電圧(以下、「目標駆動電圧」という。)を示す駆動電圧データ301がベースクロック303に応答して順次入力されるとともに、ベースクロック303に同期してレジスタ610から駆動電圧データ301がレジスタ611に出力される。また、シフト部616のレジスタ613には光変調素子461の動作位置(動作タイミング)を調整するために利用されるシフトディレイ数データ302がベースクロック303に応答して順次入力される。
【0035】
コンパレータ615には、ベースクロック303に同期してレジスタ613からシフトディレイ数データ302が入力される。そして、ディレイクロック304がカウンタ614に入力される毎に、カウンタ614におけるディレイクロック304のカウント数がコンパレータ615に出力され、シフトディレイ数データ302が示す値とカウンタ614からのカウント数とが一致すると、ベースクロック303に対して遅延したクロック(以下、「シフト済みクロック」という。)305がコンパレータ615からレジスタ611へと出力される。これにより、レジスタ611からD/Aコンバータ612を経由して駆動電圧データ301のアナログ信号が出力される。なお、カウンタ614におけるディレイクロック304のカウント数はベースクロック303が入力される毎にリセットされる。
【0036】
シフト済みクロック305毎の駆動電圧データ301は光変調素子461を1回駆動する際の目標駆動電圧に対応しており、D/Aコンバータ612からの出力は電流源51に入力されて電流へとさらに変換される。電流源51は一端が抵抗52を介して高電位Vcc側に接続され、他端が接地される。
【0037】
電流源51の両端は、接続パッド53を介して光変調素子461の可撓リボン461aおよび基準面460aに接続される。したがって、駆動電圧データ301がD/Aコンバータ612および電流源51を介して電流へと変換されると、抵抗52による電圧降下により両接続パッド53間の実駆動電圧へと変換される。以上のように、素子駆動要素61は、ディレイクロック304に対応する距離を最小分解能としつつ、シフトディレイ数データ302に基づいて光変調素子461の動作位置をベースクロック303に対応する位置からシフトさせる(調整する)ことが可能とされている。
【0038】
なお、接続パッド53間は浮遊容量を有するため、接続パッド53間の実際の駆動電圧(実駆動電圧)は接続パッド53間の時定数に従った変化を行い、時間と共に目標駆動電圧へと向かう。
【0039】
図7は変調器制御部60の構成を示すブロック図である。変調器制御部60は、既述の素子駆動要素61に加えて、各種演算を行うCPUおよび各種情報を記憶するメモリを有する主演算部62、および、プログラミング可能な電子回路であるFPGA(Field Programmable Gate Array)制御要素63(図7中にて破線のブロックにて示す。)を備える。実際には、変調器制御部60には、各光変調素子461に対して1つの素子駆動要素61および1つのFPGA制御要素63が設けられるが、図7では1つの光変調素子461に対応する素子駆動要素61およびFPGA制御要素63のみを図示している。
【0040】
主演算部62は、複数の照射領域の主走査方向の位置ずれを補正するためのパラメータを取得する付加画素数取得部620、画像記録の際に利用される各種テーブルを生成するテーブル生成部622、および、後述のテーブル生成時にテーブルの生成に係る条件を検出するシフト量超過検出部621を備える。FPGA制御要素63では、対象画像の変更(画素の付加や加工)に用いられる付加画素数6302および画素加工テーブル6301を記憶するメモリ630、付加画素数6302を用いて対象画像に後述のダミー画素を付加する画素付加部631、画素加工テーブル6301を用いて対象画像の画素の画素値を変更する画素列加工部632、および、変更後の画像を素子駆動要素61用のデータフォーマットに変換する出力データ生成部633の機能が実現される。
【0041】
また、各素子駆動要素61は、シフトディレイ数データ302を取得する修正シフト量取得部618、駆動電圧データ301を取得する駆動電圧取得部619、および、メモリ617を有し、光変調素子461毎に準備される後述の修正シフト量テーブル6171、全光変調素子461にて共通の基準位置アドレステーブル6172、および、描画時の複数階調の出射光量に対応する目標駆動電圧を示す駆動電圧テーブル6173が主演算部62からメモリ617に入力されて記憶される。
【0042】
ここで、画像記録装置1における記録対象である対象画像では、主走査方向に対応する列方向および副走査方向に対応する行方向に複数の画素が配列されており、後述の画像記録(パターン描画)では、列方向に並ぶ複数の画素を画素列として、複数の光変調素子461が対象画像に含まれる複数の画素列にそれぞれ対応付けられ、各光変調素子461により1つの画素列に対する描画が行われる。また、各画素列は、それぞれが列方向に連続して同一の画素値を有する複数の画素群の集合とされ(すなわち、各画素列はそれぞれが2以上の画素の集合である複数の画素群にて構成され)、画素列において隣接する2つの画素群の間の位置が、光変調素子461から照射領域に照射される出力光量の遷移を示す変化点とされる。本実施の形態では、対象画像が1ないし4の4値の画像であるものとするが、もちろん、5以上の階調レベルを有する画像、あるいは、2または3の階調レベルを有する画像であってもよい。
【0043】
各光変調素子461の素子駆動要素61に接続される画素付加部631には、当該光変調素子461に対応する画素列のデータ(以下、「画素列データ」という。)691がランレングスデータとして入力され、後述するように付加画素数6302が示す個数のダミー画素を付加した後、画素列加工部632に出力され、画素加工テーブル6301を用いて画素列データ691が加工される。そして、出力データ生成部633では、加工後の画素列データ691が素子駆動要素61用のデータフォーマットに変換され、ベースクロック303が発生する毎に変換画素データ692として素子駆動要素61に順次出力される。
【0044】
ここで、ベースクロック303を示す図6の上段、および、1つの画素列の画素を示す図6の下段のように、画像記録装置1では、隣接する2つのベースクロック303間の期間(以下、「ベースクロック期間」という。)において、対象画像の各画素列における2以上の画素71(図6の下段の例では4個の画素71)が描画制御の対象とされる。換言すれば、ベースクロック期間にて描画制御の対象とされる画素の個数をベースクロック間画素数として、ベースクロック期間において光変調素子461からの光の照射位置が主走査方向に移動する設定距離は、ベースクロック間画素数の画素71に相当する距離(図6の上段にて符号Wを付す矢印にて示す距離)とされる。以下の説明では、図6の上段および下段において、対象画像の各画素71の先頭に対応する主走査方向の位置(符号A1を付す矢印にて示す位置)を当該画素の「基準位置」といい、隣接する2つの基準位置間の距離(すなわち、設定距離をベースクロック間画素数で除した距離であり、1つの画素に相当する基板9上の領域の主走査方向の幅である。)を「単位幅」という。図6の下段では、単位幅を符号Tを付す矢印にて示している。なお、単位幅は、描画における論理的な最小分解能と捉えることができる。
【0045】
また、画像記録装置1では、図5に示す素子駆動要素61の構成においてシフト済みクロック305がベースクロック期間にて1度だけ出力されるため、光変調素子461からの出力光量の遷移は、ベースクロック期間にて1度だけ可能とされており、ベースクロック303に応じて出力される変換画素データ692は、図8に示すように、ベースクロック期間におけるベースクロック間画素数の画素において、直前の画素から画素値が変化する画素の番号、および、当該画素の画素値(以下、それぞれ「変化画素番号」および「変化後画素値」という。)を示すものとなっている。
【0046】
例えば、ベースクロック間画素数が4であり、図9の最下段に示すように、あるベースクロック期間における4個の画素71(図9の最下段において太線の矩形にて囲む画素71)において、3番目の画素71と4番目の画素71との間にて画素値が1から2に変化する場合には(図9の最下段において画素値が1の画素71を白色にて示し、画素値が2の画素71に平行斜線を付す。図9の下から2ないし5段目、並びに、図17ないし図19、図23、図24において同様。)、変化画素番号および変化後画素値はそれぞれ4および2とされ、図9の下から2段目に示すように、2番目の画素71と3番目の画素71との間にて画素値が1から2に変化する場合には、変化画素番号および変化後画素値はそれぞれ3および2とされ、図9の下から3段目に示すように、1番目の画素71と2番目の画素71との間にて画素値が1から2に変化する場合には、変化画素番号および変化後画素値は共に2とされる。
【0047】
また、図9の下から4段目に示すように、1番目の画素71と直前のベースクロック期間における4番目の画素71との間にて画素値が1から2に変化する場合には、変化画素番号および変化後画素値はそれぞれ1および2とされ、図9の下から5段目(上から2段目)に示すように、画素値が変化する画素71が存在しない場合には、変化画素番号は1とされ、変化後画素値は直前のベースクロック期間における最後の画素の画素値と同じとされる。なお、変化画素番号は、単位幅Tを単位とする論理的な座標値と捉えることができる。
【0048】
図10は基準位置アドレステーブル6172を示す図である。図10に示す基準位置アドレステーブル6172は、直前のベースクロック303が発生した位置から1ないし4番目の画素のそれぞれに対する基準位置までの主走査方向の距離(以下、「基準位置アドレス」という。)をディレイクロック304のカウント数として示すテーブルとなっている(図9の最上段参照)。図10では、1ないし4番目の画素の基準位置アドレスをそれぞれ「第1基準位置アドレス」、「第2基準位置アドレス」、「第3基準位置アドレス」、「第4基準位置アドレス」と記している。
【0049】
図11は修正シフト量テーブル6171を示す図である。修正シフト量テーブル6171は、後述の補正テーブルを修正することにより生成されるものであり、複数通りの2つの画素値の組合せのそれぞれに対してシフト量(後述の補正テーブルから導かれる値を修正(変更)することにより得られる値であり、以下、「修正シフト量」という。)を示すものとなっており、実際には、修正シフト量はディレイクロック304のカウント数にて表されている。図11では、画素値Mと画素値Nとの組合せに対する修正シフト量を「画素値M→N変化時修正シフト量」と記している(ただし、M、Nは1ないし4)。なお、修正シフト量は、隣接する2つの基準位置間の距離(すなわち、単位幅T)に相当するカウント数よりも小さい。
【0050】
図7の修正シフト量取得部618では、出力データ生成部633からベースクロック303毎に入力される変換画素データ692の変化画素番号を用いて図10の基準位置アドレステーブル6172を参照することにより、1つの基準位置アドレスが特定される。また、修正シフト量取得部618では、直前のベースクロック303にて入力された変換画素データ692の変化後画素値が記憶されており、直前の変化後画素値および今回の変化後画素値を用いて図11の修正シフト量テーブル6171を参照することにより、1つの修正シフト量が特定される。そして、特定された基準位置アドレスおよび修正シフト量(既述のように、両者はディレイクロック304のカウント数として表されている。)を加算した値がシフトディレイ数として求められ、図5のシフト部616のレジスタ613に、シフトディレイ数データ302として入力される。
【0051】
図12は駆動電圧テーブル6173を示す図である。駆動電圧テーブル6173は複数通りの画素値にそれぞれ対応する目標駆動電圧を示すテーブルとなっており、図7の駆動電圧取得部619では、変換画素データ692の変化後画素値を用いて駆動電圧テーブル6173を参照することにより、変化後画素値に対応する駆動電圧が特定される。図12では、変化後画素値1ないし4に対応する駆動電圧をそれぞれ「第1階調駆動電圧」、「第2階調駆動電圧」、「第3階調駆動電圧」、「第4階調駆動電圧」と記している。特定された駆動電圧は駆動電圧データ301として図5のレジスタ610に入力される。
【0052】
以上のようにして、図7の素子駆動要素61において変換画素データ692から駆動電圧データ301およびシフトディレイ数データ302が生成されることにより、光変調素子461からの出力光量を変化後画素値に対応する階調に遷移させるとともに、その遷移位置をシフト(調整)することが可能となる。なお、付加画素数6302、画素加工テーブル6301および修正シフト量テーブル6171の詳細については後述する。
【0053】
次に、画像記録装置1が基板9上に画像を記録する動作について図13.Aおよび図13.Bを参照しつつ説明する。画像記録装置1では、まず、各光変調素子461に対して照射領域の位置ずれ量、および、画素群の描画幅を補正するための線幅補正シフト量が操作者により準備され、図7の主演算部62に入力される(ステップS10)。なお、図7では符号681を付す矢印にて照射領域の位置ずれ量および線幅補正シフト量を示している。
【0054】
ここで、照射領域の位置ずれ量について説明する(線幅補正シフト量については後述する。)。図14は空間光変調器46のベース板460を示す図であり、図3の可撓リボン461aおよび固定リボン461bに対して垂直な面におけるベース板460の断面を示している。なお、図14ではベース板460の反りを強調して図示している。また、図14では可撓リボン461aおよび固定リボン461bの図示を省略している。
【0055】
複数の光変調素子461の多数のリボンが一の方向に配列形成されるベース板460は、空間光変調器46の製造時に基準面460a上に形成される蒸着膜等の各種薄膜の影響(圧縮力や引張力等)により、図14に示すように、リボンの配列方向(図14の横方向)の全体亘って、基準面460aに垂直な方向(正確には、基準面460aの平均法線の方向であり、以下、単に「法線方向」という。)に、ダイボウ(die bow)と呼ばれる反りが生じる。これにより、リボンの配列方向における基準面460aの複数の位置にて法線方向の位置が相違することとなる。例えば、図14中にて符号γ1を付す位置と符号γ2を付す位置との法線方向の差はD1となり、位置γ1と符号γ3を付す位置との法線方向の差はD2となっている。既述のように、可撓リボン461aおよび固定リボン461bは基準面460a上に形成されることにより、位置γ1,γ2,γ3における光変調素子461の表面(可撓リボン461aおよび固定リボン461bの表面)についてもベース板460と同様に法線方向の位置ずれが生じている。なお、リボンに垂直な面におけるベース板460の断面形状は一定ではなく、空間光変調器46毎に様々な形状となる。
【0056】
図15は、リボンの配列方向に沿って見た場合の位置γ1,γ2,γ3における光変調素子461を重ねて示す図である。図15では、各光変調素子461にその位置γ1,γ2,γ3と同じ符号を付している。
【0057】
空間光変調器46では、リボンの配列方向に垂直な面上において法線方向に対して傾斜した光軸J1(図15中にて一点鎖線にて示す。)に沿って光が入射しており、空間光変調器46の各光変調素子461からの0次光は、図15中にて符号J2を付す光軸に平行な方向へと反射される。既述のように、複数の光変調素子461からの0次光は基板9上にて主走査方向に垂直な副走査方向に沿っておよそ直線状に並ぶ複数の照射領域にそれぞれ照射されるが、図15に示すように、光軸J2およびリボンの配列方向に垂直な方向に関して、複数の光変調素子461からの0次光の光路(図15では、符号P1,P2を付す線にて位置γ1,γ2の光変調素子461からの0次光の光路を示している。)にずれが生じることにより、基板9上において複数の照射領域の主走査方向の位置(中心位置)が一致しなくなる。
【0058】
また、画像記録装置1における空間光変調器46の取り付け精度によっては、リボンの配列方向が理想的な方向に対して僅かに傾くことがあり、この場合、基板9上の複数の照射領域の配列方向も主走査方向に垂直な方向に対して僅かに傾くこととなる。
【0059】
以上のように、画像記録装置1では、ベース板460の法線方向への反りや空間光変調器46の取り付け状態に起因して複数の照射領域の主走査方向の位置が相互にずれており、基板9の上面91上において、複数の(全ての)照射領域に対して相対的に固定された所定の位置(例えば、複数の照射領域が存在するX方向およびY方向の範囲の中央の位置や、最も(+Y)側の照射領域の位置等、複数の照射領域との位置関係が変わることなく、複数の照射領域と共に基板9上を移動する仮想的な位置であり、以下、「参照位置」という。)と各照射領域との間における主走査方向の距離が照射領域の位置ずれ量として取得されている。なお、位置ずれ量は、例えば、ステージ31上に光検出部を設け、全ての光変調素子461からの光の照射領域の主走査方向の位置を測定することにより取得可能である。また、空間光変調器46が傾いていない(すなわち、リボンの配列方向が理想的な方向となっている)場合は、各照射領域の位置ずれ量が、空間光変調器46の法線方向における各光変調素子461の位置(撓み量)に基づいて求められてもよい。線幅補正シフト量については、以下のステップS11の処理内容と合わせて説明する。
【0060】
照射領域の位置ずれ量および線幅補正シフト量が入力されると、図7の主演算部62の付加画素数取得部620では、後述の処理にて各光変調素子461に対応する画素列に付加される非描画を示す画素(以下、「ダミー画素」という。)の数が付加画素数として求められるとともに、画素列データに基づく描画時に照射領域の位置ずれを補正するために用いられる位置補正シフト量が取得される(ステップS11)。
【0061】
図16は、基板9上の複数の照射領域を示す図である。既述のように、画像記録装置1では、複数の照射領域の主走査方向の位置が一致しておらず、図16中の3つの照射領域では、主走査方向(Y方向)に関して、図16中にて符号92aを付す実線の円にて示す照射領域の中心が参照位置と同じ位置となっており、符号92bを付す実線の円にて示す照射領域が参照位置(ここでは、照射領域92aの位置)よりも単位幅Tの7/3倍だけ(+Y)側に位置しており、符号92cを付す実線の円にて示す照射領域が参照位置よりも単位幅Tの7/3倍だけ(−Y)側に位置している。本実施の形態では、説明の都合上、主走査方向に関して照射領域92aが参照位置と同じ位置であるものとしているが、既述のように、参照位置は複数の照射領域に対して相対的に固定された任意の位置とすることができ、必ずしもいずれかの照射領域と同じ位置である必要はない。
【0062】
付加画素数取得部620では、参照位置に対して所定の基準数(本実施の形態では、8)が定められており、参照位置(照射領域92aの位置)よりも相対移動方向の前側((+Y)側)に位置する照射領域92bに対しては、当該照射領域92bと参照位置との間における主走査方向の位置ずれ量である単位幅Tの7/3倍よりも大きい単位幅Tの整数倍のうち最小となる単位幅Tの3倍が特定され、単位幅Tの3倍を単位幅Tにて割った値3を基準数8から引いた値5が付加画素数として求められる。また、単位幅Tの3倍から位置ずれ量である単位幅Tの7/3倍を引いた値(すなわち、単位幅Tの2/3倍)が位置補正シフト量として取得される。
【0063】
参照位置よりも相対移動方向の後側((−Y)側)に位置する照射領域92cに対しては、当該照射領域92cと参照位置との間における主走査方向の位置ずれ量である単位幅Tの7/3倍よりも小さい単位幅Tの整数倍のうち最大となる単位幅Tの2倍が特定され、単位幅Tの2倍を単位幅Tにて割った値2を基準数8に足した値10が付加画素数として求められる。また、位置ずれ量である単位幅Tの7/3倍から単位幅Tの2倍を引いた値(すなわち、単位幅Tの1/3倍)が位置補正シフト量として取得される。主走査方向の位置が参照位置と同じとなる照射領域92aに対しては、基準数が付加画素数として決定されるとともに、位置補正シフト量が0として取得される。
【0064】
以上のように、主演算部62では、各照射領域と参照位置との間における主走査方向の位置ずれ量と、単位幅のα倍(ただし、αは正の整数)との差が(0以上)単位幅未満となる当該αだけ基準数から増減した数が付加画素数として求められるとともに、当該差がこの照射領域に対する位置補正シフト量として取得される。実際には、各付加画素数がベースクロック間画素数よりも十分に多くなるように基準数が決定されている。付加画素数取得部620では、各付加画素数6302が対応するFPGA制御要素63のメモリ630に入力されて記憶されるとともに、各光変調素子461に対して線幅補正シフト量および位置補正シフト量を示す補正テーブルが生成される。
【0065】
ここで、既述の線幅補正シフト量について述べる。線幅補正シフト量とは、各光変調素子461に対応する画素列における各変化点に関して、当該変化点を挟む2つの画素群に対応する基板9上の2つの領域(2つの画素群に対応するパターンが形成される2つの領域)間の境界の当該2つの画素群の画素値に依存する主走査方向の位置ずれを補正するために、当該光変調素子461からの出力光量の遷移位置をシフトするシフト量を示すものである。変化点を挟む2つの画素群に依存する位置ずれの原因としては、撓み量が変化する際に可撓リボン461aの状態が安定するまでの時間が、当該2つの画素群の画素値の組合せによって相違すること、あるいは、当該光変調素子461の照射領域の主走査方向の長さが他の光変調素子461と相違すること等が挙げられる。なお、線幅補正シフト量は、例えば、ダミー基板に副走査方向に伸びるパターンを実際に描画することにより取得される。
【0066】
表1に示す補正テーブルでは、注目している注目画素の直前の画素の画素値と、注目画素の画素値(表1において、それぞれ「直前の画素値」および「現在の画素値」と記す。)との全ての組合せのそれぞれに対して、「標準シフト量」、「線幅補正シフト量」および「位置補正シフト量」が設定されている。なお、表1では、「直前の画素値」および「現在の画素値」が1と1の組合せ、1と2の組合せ、2と1の組合せ、2と2の組合せとされる場合のみを示しているが、実際には、「直前の画素値」および「現在の画素値」のそれぞれが3および4とされる組合せについても「標準シフト量」、「線幅補正シフト量」および「位置補正シフト量」が設定されている。
【0067】
【表1】

【0068】
図17は、補正テーブルにおける標準シフト量を説明するための図である。図17の上段はベースクロック303を示し、中段は目標駆動電圧を示し、下段は画素列を示している。ここでは、図17の上段および下段に示すようにベースクロック間画素数が4であるものとし、図17の上段では、図6の上段と同様に、設定距離Wをベースクロック間画素数にて除した単位幅を符号Tを付す矢印にて示している。
【0069】
標準シフト量は、上述の描画ずれを補正する必要が無い場合でも、出力光量の遷移位置を変化点に対応する位置から照射位置の基板9に対する相対移動方向の前側(主走査方向への移動時の前側であり、図17の右側)に移動させるためのものである。例えば、図17の中段および下段に示す例では、光変調素子461に対する目標駆動電圧を画素値1に対応する第1階調駆動電圧V1から画素値2に対応する第2階調駆動電圧V2へと変更する遷移位置が、画素値1の白い画素71から平行斜線を付す画素値2の画素71への変化点の位置(すなわち、画素値2の画素群の最初の画素71の基準位置A1a)に対して、標準シフト量である単位幅Tの1/2倍だけ移動する。既述のように、全ての光変調素子461のそれぞれに対して補正テーブルが個別に準備されるが、全ての補正テーブルの全ての画素値の組合せにおいて標準シフト量は等しくされる。
【0070】
図18は、補正テーブルにおける線幅補正シフト量を説明するための図である。線幅補正シフト量は、既述のように、隣接する2つの画素群の画素値の組合せに依存する描画ずれを補正するためのものであり、例えば、変化点において画素値が1から2に変化する際には、表1を参照することにより光変調素子461からの出力光量の遷移位置(例えば、出力光量の立ち上がり時間に依存する位置)を単位幅Tの1/3倍だけ照射位置の相対移動方向の前側に移動させることを示す(+(1/3)T)が特定され、これにより、基板9上において画素値1の画素群に対応する領域と画素値2の画素群に対応する領域との境界位置のずれが補正される。また、変化点において画素値が2から1に変化する際には、表1を参照することにより光変調素子461からの出力光量の遷移位置(例えば、出力光量の立ち下がり時間に依存する位置)を単位幅Tの1/3倍だけ照射位置の相対移動方向の後側に移動させることを示す(−(1/3)T)が特定され、これにより、基板9上において画素値2の画素群に対応する領域と画素値1の画素群に対応する領域との境界位置のずれが補正される。
【0071】
図18の上から2段目には、図17の中段における目標駆動電圧の変化(図18の上から3段目にも同じものを破線にて示している。後述の図19の上から4段目において同様。)に対して表1の線幅補正シフト量によるシフトをさらに追加したものを示している。ここでは、図18の最下段に示すように、隣接する3つの画素群の画素値が1、2、1の順番にて変化し、中央の画素値2の画素群の画素数が5とされているため、図18の上から2段目にて光変調素子461の目標駆動電圧が第2階調駆動電圧V2とされる距離は、5個の画素に相当する距離(単位幅Tの5倍)よりも単位幅Tの2/3倍だけ短くなり、これにより、画素値2の画素群に対応する基板9上の領域の主走査方向の幅が補正されることとなる。このように、補正テーブルにおける線幅補正シフト量は、実質的には、各画素値の画素群に対応する基板9上の領域の主走査方向の幅(線幅)を補正するためのものとなっている。
【0072】
図19は、補正テーブルにおける位置補正シフト量を説明するための図である。位置補正シフト量は、後述する付加画素数のダミー画素の付加動作と協働して、各光変調素子461の照射領域と他の照射領域とのずれ(主走査方向のずれ)を補正するためのものである。既述のように、位置補正シフト量は、各光変調素子461に対して個別に取得されるものであり、2つの画素群の画素値の全ての組合せに対して同じ値となっている。例えば、図18の上から2段目に示す例において(図19の上から3段目にも同じものを一点鎖線にて示している。)、さらに、表1の位置補正シフト量(+(1/3)T)によるシフトを追加すると、変化点において画素値が1から2に変化する場合、および、変化点において画素値が2から1に変化する場合のいずれにおいても、図19の上から2段目に示すように、光変調素子461からの出力光量の遷移位置が単位幅Tの1/3倍だけ照射位置の相対移動方向の前側((+Y)側)にさらに移動することとなる。その結果、画素群の理想的な位置からの描画ずれが補正され、全ての光変調素子461を用いて、例えば副走査方向(X方向)に真っ直ぐに伸びる一定の幅のラインの描画が可能となる。
【0073】
ところが、この場合、光変調素子461の目標駆動電圧を第1階調駆動電圧V1から第2階調駆動電圧V2へと変更する位置(すなわち、出力光量の遷移位置)が、図19の最下段に示す画素列における画素値1の画素71から画素値2の画素71への変化点の位置(画素71aの基準位置A1a)に対して、単位幅Tよりも大きくかつ単位幅Tの2倍以下の距離だけ移動し、光変調素子461からの出力光量の遷移位置のシフト量が1画素に相当する距離を超える。これにより、画素値1の画素71から画素値2の画素71への変化点(基準位置A1a)に対する出力光量の遷移タイミングが、当該変化点が属するベースクロック期間の次のベースクロック期間に含まれてしまう。既述のように、図5のカウンタ614におけるディレイクロック304のカウント数はベースクロック303が入力される毎にリセットされるため、図1の画像記録装置1では、図19の最下段に示す画素列に基づいて図19の上から2段目に示すような目標駆動電圧の変更を行うことはできない。
【0074】
そこで、以下の説明にて詳述するように、画像記録装置1では、図19の最下段において太線の矩形にて囲む画素71aの画素値を1に変更することにより、画素値1から画素値2への変化点を1画素分だけ移動(遅延)させる処理が行われるとともに、移動後の変化点に対して修正されたシフト量を求める処理が行われる。
【0075】
画像記録装置1において、付加画素数および位置補正シフト量を取得して補正テーブルが生成されると、図7の主演算部62により画像記録動作にて採用するベースクロック間画素数(または、設定距離)が決定され(ステップS12)、当該ベースクロック間画素数が出力データ生成部633に入力されるとともに、当該ベースクロック間画素数に応じた基準位置アドレステーブル6172が素子駆動要素61に入力される。実際には、ステップS12の処理は、画像記録装置1に対して予め設定されているベースクロック間画素数(以下、「初期ベースクロック間画素数」という。)を変更するか否かが確認され、変更することが確認された場合に、実際に使用するベースクロック間画素数を決定する処理となっており、ここでは、初期ベースクロック間画素数が5として設定されており、所定の処理により4に変更されるものとする。ステップS12の処理の詳細については後述する。
【0076】
続いて、主演算部62では、画素加工テーブル6301および修正シフト量テーブル6171の生成に係る処理が行われる。まず、図7のシフト量超過検出部621では、表1における2つの画素値の各組合せにおいて標準シフト量、線幅補正シフト量および位置補正シフト量を足し合わせることにより、表2に示すように合計シフト量が求められる(ステップS13)。
【0077】
【表2】

【0078】
続いて、異なる2つの画素値の全ての組合せ(表2では、画素値1と画素値2の組合せおよび画素値2と画素値1の組合せ)において、標準シフト量、線幅補正シフト量および位置補正シフト量に基づく合計シフト量が1画素に相当する単位幅Tを超えるものが存在するか否かが確認される。ここでは、直前の画素値および現在の画素値がそれぞれ1および2とされる組合せのみにおいて、合計シフト量が単位幅Tの(+7/6)倍となって単位幅Tの1倍よりも大きくかつ2倍以下となることが確認される。そして、テーブル生成部622では、直前の画素値および現在の画素値がそれぞれ1および2とされる組合せにおいて「画素加工数」を(+1)とし、他の組合せにおいて「画素加工数」を0として、表3に示す画素加工テーブル6301が生成される。
【0079】
【表3】

【0080】
画素加工数は、隣接する2つの画素群の間の変化点の移動量を示すものであり、表3の画素加工テーブル6301では、画素値1から画素値2に変化する変化点に対して画素加工数が(+1)となることにより、当該変化点を1画素分だけ遅延させる画素列の加工が指示され、他の画素値の組合せに対しては画素加工数が0となることにより画素の加工を行わないことが指示されることとなる。画素加工テーブル6301は、図7のFPGA制御要素63のメモリ630に入力されて記憶される(ステップS14)。なお、合計シフト量が単位幅Tのα倍(ただし、αは1以上の整数)よりも大きくかつ(α+1)倍以下となる場合には、画素加工数はαとされる。
【0081】
テーブル生成部622では、合計シフト量が単位幅Tよりも大きくなって画素加工数が0以外とされた画素値の組合せにおいて、対応する画素加工数に単位幅Tを乗じた値が求められ、合計シフト量から当該値を引いた値(すなわち、単位幅Tのβ倍として表される合計シフト量におけるβの小数部に単位幅Tを乗じた値)が修正シフト量として求められる。また、合計シフト量が単位幅Tよりも小さい画素値の組合せについては合計シフト量がそのまま修正シフト量とされる。したがって、表2の例では、直前の画素値および現在の画素値がそれぞれ1および2とされる組合せにおいて修正シフト量が単位幅Tの(+1/6)倍とされ、他の画素値の組合せについては合計シフト量がそのまま修正シフト量とされ、表4に示す修正シフト量テーブル6171が生成される。修正シフト量テーブル6171は図7の素子駆動要素61のメモリ617に入力されて記憶される(ステップS15)。なお、同一の2つの画素値の組合せにおいて合計シフト量が単位幅Tを超えるものが存在する場合には、単位幅Tのβ倍として表される合計シフト量におけるβの小数部に単位幅Tを乗じた値が修正シフト量とされる。また、実際には、修正シフト量は、ディレイクロック304の分解能に相当するシフト量の整数倍に近い値に変更され、既述のように、ディレイクロック304のカウント数であるシフトディレイ数を素子駆動要素61にて与えることが可能となっている。
【0082】
【表4】

【0083】
以上のようにして、付加画素数、画素加工テーブル6301および修正シフト量テーブル6171が準備されると、基板9の主走査方向への一定速度での移動が開始されるとともに(ステップS16)、制御部6が有する図示省略の画像メモリに記憶された対象画像のデータが変調器制御部60に入力される。既述のように、図7の変調器制御部60では、各画素付加部631に対応する画素列データ691が入力される。
【0084】
画素付加部631では、メモリ630にて記憶される付加画素数6302が示す個数のダミー画素が、画素列データ691が示す画素列の先頭に付加される(ステップS17)。例えば、図16に示す照射領域92aに対応する画素付加部631では、既述のように基準数8が付加画素数とされており、8個のダミー画素72(図20中にて平行斜線を付して示す。)が図20中の右側の画素列691aの先頭に付加される。また、照射領域92aよりも(+Y)側に位置するとともに、位置ずれ量が単位幅Tの7/3倍である照射領域92bに対応する画素付加部631では、位置ずれ量を単位幅にて割った値との差が単位幅未満となる2つの整数2および3のうちの大きい方の数を基準数8から引いた数5が付加画素数とされており、5個のダミー画素72が図20中の中央の画素列691bの先頭に付加される。さらに、照射領域92aよりも(−Y)側に位置するとともに、位置ずれ量が単位幅Tの7/3倍である照射領域92cに対応する画素付加部631では、位置ずれ量を単位幅にて割った値との差が単位幅未満となる2つの整数2および3のうちの小さい方の数を基準数8に足した数10が付加画素数とされており、10個のダミー画素72が図20中の左側の画素列691cの先頭に付加される。以下の説明では、付加画素数のダミー画素が先頭に付加された画素列を、「付加済み画素列」とも呼ぶ。
【0085】
ここで、仮に線幅補正シフト量および標準シフト量が0である場合に、後述の各光変調素子461の制御において、対応する付加済み画素列の最初の画素(ダミー画素)に従って変調動作が行われる際の照射領域92a〜92cが図16中に実線にて示す位置であるときには、照射領域92aに対応する光変調素子461における元の画素列691aの最初の画素71、すなわち、図20中の右側の付加済み画素列の上から9番目の画素71に従った変調動作は、照射位置が単位幅Tの8倍の距離だけ移動した時に行われる(既述のように、照射領域92aに対する位置補正シフト量は0となっている。)。また、照射領域92bに対応する光変調素子461における元の画素列691bの最初の画素71、すなわち、図20中の中央の付加済み画素列の上から6番目の画素71に従った変調動作は、照射位置が単位幅の5倍の距離だけ移動した時に、さらに単位幅Tの(2/3)倍の位置補正シフト量を伴って行われ、照射領域92cに対応する光変調素子461における元の画素列691cの最初の画素71、すなわち、図20中の左側の付加済み画素列の上から11番目の画素71に従った変調動作は、照射位置が単位幅の10倍の距離だけ移動した時に、さらに単位幅Tの(1/3)倍の位置補正シフト量を伴って行われる。
【0086】
図16では、実線にて示す位置から単位幅Tの8倍、5倍および10倍の距離だけそれぞれ移動した照射領域92a〜92cを二点鎖線にて示しており、二点鎖線にて示す位置から単位幅Tの(2/3)倍および(1/3)倍だけそれぞれシフトした照射領域92b,92cを破線にて示している。各光変調素子461に対応する画素列の先頭に付加画素数のダミー画素72を付加するとともに、当該光変調素子461に対する変調動作を、ダミー画素72が付加された画素列に従いつつ位置補正シフト量だけシフトさせた位置にて行うことにより、複数の光変調素子461において、それぞれ対応する元の複数の画素列における列方向の同位置の画素の描画を、基板9上の主走査方向の同じ位置にて行うことが可能となる。このように、位置ずれ量から導かれる付加画素数および位置補正シフト量は、複数の光変調素子461からの光が照射される複数の照射領域の位置ずれを補正するためのオフセットデータとなっている。
【0087】
また、図21の上から2ないし4段目に示すように、画素列691a〜691cの末尾にもダミー画素(図21の上から2ないし4段目では、複数のダミー画素を符号720を付す1つの矩形にて示している。)が付加される。このとき、照射領域92aに対応する画素付加部631では基準数8のダミー画素が画素列691aの末尾に付加され、照射領域92bに対応する画素付加部631では基準数8の2倍から付加画素数5を引いた個数11のダミー画素が画素列691bの末尾に付加され、照射領域92cに対応する画素付加部631では基準数8の2倍から付加画素数10を引いた個数6のダミー画素が画素列691cの末尾に付加される。これにより、先頭および末尾にダミー画素が付加された全ての付加済み画素列の長さが等しくなる。
【0088】
既述のように、画素列データ691はランレングスデータとして入力されるため、画素付加部631では、非描画を示す画素値と付加画素数とを示すランレングスを先頭のランレングスの直前に付加し、末尾のランレングスの直後にも、非描画を示す画素値と、基準数の2倍から付加画素数を引いた画素数とを示すランレングスを付加することにより、付加済み画素列が容易に生成される。実際には、付加済み画素列のデータに含まれる複数のランレングスは画素列加工部632に順次出力される。
【0089】
画素列加工部632では、図19の最下段に示すように、隣接する3つの画素群の画素値がそれぞれ1、2、1である場合、最初の(図19の左側の)画素値1の白い画素群と画素値2の平行斜線を付す画素群との間の変化点に対する画素加工数が表3の画素加工テーブル6301を参照することにより(+1)として求められ、画素値2の画素群の最初の画素71aの画素値が1に変更されて変化点が移動(遅延)する。また、画素値2の画素群と次の(図19の右側の)画素値1の画素群との間の変化点に対する画素加工数は0として求められ、変化点の移動は行われない。なお、表3に示すように同一の画素値を有する画素71の間では画素加工数は0となり、画素の加工は行われないため、画素加工数は変化点に対してのみ影響を与えるものとなる。
【0090】
実際には、画素列加工部632では、図22に示すようにランレングスデータとして入力される画素列(正確には、付加済み画素列)のデータにおいてランレングスの長さ(すなわち、ランレングスが示す画素数)を変更することにより、変化点の移動が行われる。図22では、1つのランレングスを矩形(符号690a,690b,690cを付す。)にて図示している。
【0091】
図22中にて「DATA(n)」と記すランレングス690bと直後の「DATA(n+1)」と記すランレングス690cとの間の位置である変化点(以下、「注目変化点」という。)に注目した場合、まず、ランレングス690bの画素値および直後のランレングス690cの画素値を用いて画素加工テーブル6301を参照することにより注目変化点に対する画素加工数が求められる。画素列加工部632には、表5に示す画素列データの修正条件が予め記憶されており、例えばランレングス690bの直前の「DATA(n−1)」と記すランレングス690aとランレングス690bとの間の変化点に対して求められた画素加工数(表5中にて「DATA(n−1)に対する画素加工数」と記す。)が0であり、注目変化点に対して求められる画素加工数(表5中にて「DATA(n)に対する画素加工数」と記す。)も0である場合には、ランレングス690bの長さの変更量(表5中にて「DATA(n)に対する実際の加工」と記す。)は0とされる。
【0092】
【表5】

【0093】
表5に示すように、ランレングス690aとランレングス690bとの間の変化点に対して求められた画素加工数が0であり、注目変化点に対して求められる画素加工数が(+1)である場合には、ランレングス690bの長さの変更量が(+1)とされる(すなわち、ランレングス690bが1画素だけ長くされる。)。また、ランレングス690aとランレングス690bとの間の変化点に対して求められた画素加工数が(+1)であり、注目変化点に対して求められる画素加工数が0である場合には、ランレングス690aが(+1)だけ伸長されていることにより、注目変化点が1画素だけ遅延しているため、ランレングス690bの長さの変更量が(−1)とされる(すなわち、ランレングス690bが1画素だけ短くされる。)。さらに、ランレングス690aとランレングス690bとの間の変化点に対して求められた画素加工数が(+1)であり、注目変化点に対して求められる画素加工数が(+1)である場合には、ランレングス690aが(+1)だけ伸長されていることにより、注目変化点が1画素だけ既に遅延しているため、ランレングス690bの長さの変更量が0とされる。
【0094】
図19の最下段に示す例において、隣接する3つの画素群のうち中央の画素群の画素数(ランレングスの長さ)が5である場合には、最初の(図19の左側の)画素値1の白い画素群と画素値2の平行斜線を付す画素群との間の変化点に対する画素加工数が(+1)であり、画素値2の画素群と次の(図19の右側の)画素値1の画素群との間の変化点に対する画素加工数が0であることにより、画素値2の画素群の画素数(ランレングスの長さ)の変更量は(−1)となり、画素値2の画素群の画素数が4に変更される。
【0095】
以上のように、画像記録装置1では、画素列データ(正確には、付加済み画素列のデータ)がランレングスデータとして画素列加工部632に入力され、各変化点を移動する際に、ランレングスデータのランレングスの長さを変更することにより、変化点の移動が容易に行われ、画素列データが加工される(ステップS18)。画素列加工部632の設計によっては、対象画像のデータはランレングスデータ以外の形式にて表されていてもよい。
【0096】
画素列加工部632における画素列データの加工に並行して、加工後の画素列データ(の部分)は、出力データ生成部633にて復号化されてベースクロック間画素数毎に区切られ、既述のように、ベースクロック間画素数の画素において直前の画素から画素値が変化する画素の番号、および、当該画素の画素値(すなわち、変化画素番号および変化後画素値)を示す変換画素データ692が生成される。
【0097】
例えば、図19の最下段において、画素71aの画素値が画素列加工部632の処理により1に変更されている(白い画素となっている)ものとして、ベースクロック303aに対応する描画の際に参照される変換画素データ692の変化画素番号および変化後画素値は、ベースクロック303a,303b間の4個の画素71における変化点の不存在により共に1とされる(既述のように、変化点が存在しない場合も変化画素番号は1とされ、変化後画素値は直前のベースクロック期間における最後の画素の画素値と同じとされる。)。また、ベースクロック303bに対応する描画の際に参照される変換画素データ692の変化画素番号および変化後画素値は、ベースクロック303b,303c間の4個の画素71のうち最初の画素(最初の基準位置)における画素値1から画素値2への変化点の存在により、それぞれ1および2とされ、ベースクロック303cに対応する描画の際に参照される変換画素データ692の変化画素番号および変化後画素値は、ベースクロック303c,303d間の4個の画素71のうち最初の画素(最初の基準位置)における画素値2から画素値1への変化点の存在により、共に1とされる。
【0098】
そして、基板9がベースクロック間画素数に相当する設定距離だけ移動する毎に発生するベースクロック303に応じて、変換画素データ692が素子駆動要素61に出力される(ステップS19)。素子駆動要素61では、変換画素データ692から駆動電圧データ301およびシフトディレイ数データ302を生成して(ステップS20)、光変調素子461を制御することにより、光変調素子461からの出力光量の遷移位置をシフトしつつ基板9上にパターンが描画される(ステップS21)。
【0099】
このとき、図19の最上段におけるベースクロック303bに対応する描画の際には、変化画素番号および変化後画素値がそれぞれ1および2とされる変換画素データ692に基づいて1番目の画素に対応する基準位置アドレス(ここでは0となる。)が特定されるとともに、修正シフト量が直前の変化後画素値および今回の変化後画素値を用いて(+(1/6)T)として特定される。これにより、シフトディレイ数データ302が距離(+(1/6)T)に相当するカウント数として求められ、図19の上から2段目に示すような目標駆動電圧の変更が実現される。なお、変更後の目標駆動電圧は、変換画素データ692の変化後画素値に基づいて第2階調駆動電圧V2とされる。
【0100】
実際には、図21の最上段に示すように、一のベースクロック303に応答して生成される開始信号306に基づいて、空間光変調器46の複数の(全ての)光変調素子461にそれぞれ対応する複数の素子駆動要素61にて変調制御が同時に開始される。
【0101】
ステップS19における変換画素データ692の生成および素子駆動要素61への入力、並びに、ステップS20,S21における変換画素データ692に基づくパターンの描画は基板9上に対象画像を示す画像の全体が記録されるまで繰り返される(ステップS22)。対象画像の全体が記録されると、基板9の主走査方向への移動が停止され、基板9上に画像を記録する動作が完了する(ステップS23)。
【0102】
なお、図21の最下段に符号93を付して示す矩形が、元の画素列に基づく変調制御を行うべき理想的な主走査方向の範囲を示すものであるとすると、矩形93の(−Y)側の端部から単位幅の基準数倍だけ(−Y)側に離れた位置にて開始信号306を発生させることにより、全ての画素列(元の画素列691a〜691c)に基づく変調制御が矩形93のY方向の範囲にて行われることとなる。
【0103】
次に、ステップS12におけるベースクロック間画素数を決定する処理について説明する。図23はベースクロック303および画素列を示す図である。図23の上段はベースクロック303を示し、中段は変化点の移動前の画素列を示し、下段は変化点の移動後の画素列を示している(後述の図24において同様。)。なお、図23の中段および下段では、変化点の位置を符号A2を付す矢印にて示している。
【0104】
図23の上段および中段に示すように、初期ベースクロック間画素数が5として設定されている場合には、対象画像のデータは、各画素列において連続して同一の画素値を有する各画素群における画素数が5以上として生成されており(論理的な最小線幅が5画素に相当する幅であると捉えることができる。)、これにより、光変調素子461からの出力光量の遷移がベースクロック期間にて1度だけ可能とされる画像記録装置1において、画像を適切に記録することが可能とされている。この場合に、仮に、図13.BのステップS18の画素列データの加工において、変化点を1画素だけ遅延させる処理が行われると、図23の下段に示すように、画素数が4となる画素群(平行斜線を付す画素71の集合)が生成されてベースクロック期間にて2つの変化点が存在してしまう。
【0105】
したがって、主演算部62では、まず、表1の補正テーブルにおいて、各画素値が直前の画素値とされる複数の2つの画素値の組合せにおける線幅補正シフト量の最大値から、当該画素値が現在の画素値とされる複数の組合せにおける線幅補正シフト量の最小値を引いた値が最大細らせ量として求められる。そして、初期ベースクロック間画素数に相当する距離(すなわち、初期ベースクロック間画素数に対応する設定距離)から全ての画素値に対する最大細らせ量の最大値を引いた値(物理的な最小線幅と捉えることができる。)を、さらに単位幅Tにて割った値の整数部が画素群最小幅として求められる。
【0106】
表1の例では、画素値1が直前の画素値とされる場合における線幅補正シフト量の最大値が単位幅Tの(+1/3)倍とされ、画素値1が現在の画素値とされる場合における線幅補正シフト量の最小値が単位幅Tの(−1/3)倍とされ、単位幅Tの(+1/3)倍から単位幅Tの(−1/3)倍を引いた値(単位幅Tの(2/3)倍)が最大細らせ量の全ての画素値に対する最大値とされる。そして、初期ベースクロック間画素数に相当する単位幅Tの5倍から最大細らせ量の最大値を引いた値(単位幅Tの(13/3)倍)を、さらに単位幅Tにて割った値の整数部4が画素群最小幅として求められる。そして、図24の上段に示すように、ベースクロック間画素数が初期ベースクロック間画素数よりも少ない4として決定される。これにより、画素列データの加工において、変化点を1画素だけ遅延させる処理が行われ、図24の下段に示すように、画素数が4となる画素群(平行斜線を付す画素71の集合)が生成される場合でも、ベースクロック期間にて2つの変化点が存在することが防止される。
【0107】
このように、主演算部62では、加工後の画素列において、それぞれが列方向に連続して同一の画素値を有する複数の画素群のうち最も画素数が少ない最少画素群の画素数が、初期ベースクロック間画素数よりも少ない場合に、設定距離を最少画素群の画素数に相当する距離に短縮する処理が行われる。そして、上述のように、出力データ生成部633においてベースクロック間画素数を4として変換画素データ692が生成されることにより、ベースクロック期間にて2つの変化点を存在させることなく、光変調素子461の変調によるパターン描画が行われる。
【0108】
図1の画像記録装置1では、実際には、保持部移動機構2により基板保持部3が(−Y)方向に光照射部4に対して移動する(すなわち、基板9上の照射領域が(+Y)方向に相対移動する)ことにより、複数の光変調素子461が対象画像に含まれる複数の画素列の描画を行い、基板9上の複数の照射領域が基板9の(+Y)側の端部まで到達して当該複数の画素列の描画が完了すると、基板保持部3がY方向に垂直かつ基板9に沿うX方向に移動し、その後、直前の複数の画素列の描画時とは反対方向((+Y)方向)に移動することにより、複数の光変調素子461が対象画像に含まれる他の複数の画素列の描画を行う。
【0109】
このとき、基板保持部3の(−Y)方向への移動による複数の画素列の描画時に、参照位置よりも相対移動方向の前側((+Y)側)に位置する照射領域は、基板保持部3の(+Y)方向への移動による他の複数の画素列の描画時において参照位置よりも相対移動方向の後側((+Y)側)に位置することとなり、基板保持部3の移動方向に応じて付加画素数および位置補正シフト量が相違する。したがって、画像記録装置1では、基板保持部3の(−Y)方向への移動による複数の画素列の描画時、および、基板保持部3の(+Y)方向への移動による他の複数の画素列の描画時において、各光変調素子461に対して、異なる付加画素数、画素加工テーブル6301および修正シフト量テーブル6171が用いられることにより、基板保持部3の往復移動の往路および復路の双方にて、基板9上に画像が精度よく記録される。
【0110】
以上に説明したように、図1の画像記録装置1では、参照位置と各照射領域との間における主走査方向の位置ずれ量と、単位幅のα倍(ただし、αは正の整数)との差が単位幅未満となる当該αだけ基準数から増減した数のダミー画素を当該照射領域に対応する画素列の先頭に付加して付加済み画素列が生成されるとともに、当該差が当該照射領域に対する位置補正シフト量として取得される。そして、保持部移動機構2に同期しつつ制御部6により付加済み画素列および位置補正シフト量に基づいて各光変調素子461が制御される。これにより、複数の照射領域において、1画素に相当する距離(単位幅)を大幅に超える走査方向の位置ずれの補正を容易に実現することができ、その結果、画像記録装置の各構成要素の機械的な調整を極めて厳密に行って、複数の照射領域の主走査方向の位置をおよそ一致させることなく(すなわち、機械的な調整の要求精度を緩和して)、あるいは、ベース板の反りにより複数の照射領域の主走査方向の位置を一致させることが不可能な場合であっても、基板9上に高精度な画像を容易に記録することができる。
【0111】
また、画像記録装置1では、各光変調素子461に対して線幅補正シフト量および位置補正シフト量を示す補正テーブルを生成し、補正テーブルにおいて2つの画素値の各組合せに対して合計シフト量を求めることにより、実質的に、各光変調素子461に対応する付加済み画素列の各変化点に関して、画素群の描画ずれを補正するために光変調素子461からの出力光量の遷移位置をシフトするシフト量(修正前のシフト量)が求められる。そして、実際の画像記録の際に、各変化点に対する上記シフト量が単位幅を超える場合に、当該シフト量を単位幅にて除した値の整数部分の画素数だけ変化点が列方向に移動するように、付加済み画素列に含まれる画素の画素値が変更されるとともに、当該変化点に対応するシフト量が小数部に相当する値に修正され、変更後の付加済み画素列および修正後のシフト量に基づいて光変調素子461が制御される。これにより、基板9に画像を記録する際に、1画素に相当する距離を超えて光変調素子461からの出力光量の遷移位置をシフトさせつつ画像を精度よく記録することが実現される。
【0112】
さらに、画像記録装置1では、2つの画素値の各組合せに対する変化点の移動量を示す複数の画素加工テーブル6301、および、2つの画素値の各組合せに対して補正テーブルの値を修正したシフト量(修正シフト量)を示す複数の修正シフト量テーブル6171が、主演算部62により複数の補正テーブルから生成される。そして、画素列加工部632において付加済み画素列の各変化点における2つの画素値の組合せを用いて対応する画素加工テーブル6301を参照することにより、当該変化点の移動量を取得して変化点を列方向に移動する処理が行われ、修正シフト量取得部618において付加済み画素列の各変化点における2つの画素値の組合せを用いて対応する修正シフト量テーブル6171を参照することにより、当該変化点の修正シフト量を取得する処理が行われる。これにより、画像記録装置1では、基板9に画像を記録する際に、1画素に相当する距離を超える遷移位置のシフトを容易に実現することができる。
【0113】
ここで、主演算部62において、仮に、各光変調素子461に対する位置ずれ量をそのまま位置補正シフト量として取り扱う場合、合計シフト量が取り得る範囲が広くなり、画素加工数が取り得る範囲も広くなる。その結果、表5の画素列データの修正条件において、「DATA(n−1)に対する画素加工数」および「DATA(n)に対する画素加工数」の組合せが大幅に増加してしまい、画素列データの修正条件のサイズが増大するとともに、画素列加工部632の機能を実現するロジックも複雑化(大型化)してしまう。
【0114】
これに対し、実際の主演算部62では、位置ずれ量が付加画素数と位置補正シフト量とに分けられ、位置補正シフト量が1画素に相当する距離(すなわち、単位幅)よりも小さくされることにより、画素列データの修正条件において、「DATA(n−1)に対する画素加工数」および「DATA(n)に対する画素加工数」の組合せが大幅に増加するのを防止して、画素列データの修正条件のサイズを小さくするとともに、画素列加工部632の機能を実現するロジックも簡素化(小型化)することができる。
【0115】
既述のように、画像記録装置1では、複数(全て)の光変調素子461のそれぞれに対して1つの素子駆動要素61および1つのFPGA制御要素63が設けられるため、本実施の形態では、複数のFPGA制御要素63におけるメモリ630の集合が複数の光変調素子461にそれぞれ対応する複数の画素加工テーブル6301を記憶する第1のテーブル記憶部と捉えられ、複数の素子駆動要素61におけるメモリ617の集合が複数の光変調素子461にそれぞれ対応する複数の修正シフト量テーブル6171を記憶する第2のテーブル記憶部と捉えられる。また、複数のFPGA制御要素63における画素列加工部632の集合が、各変化点の移動量を取得して当該変化点を列方向に移動する画像変更部と捉えられ、複数の素子駆動要素61における修正シフト量取得部618の集合が、各変化点に対する修正後のシフト量を取得するシフト量取得部と捉えられる。
【0116】
図25は、本発明の第2の実施の形態に係る画像記録装置1aの構成を示す図である。画像記録装置1aは画像記録用の光を出射する1つの光学ヘッド41aおよび画像が記録される記録媒体9aを外側面に保持する保持部である保持ドラム70を有する。記録媒体9aには光学ヘッド41aからの光の照射(露光)による描画により画像が記録される。記録媒体9aとしては、例えば、刷版、刷版形成用のフィルム等が用いられる。なお、保持ドラム70として無版印刷用の感光ドラムが用いられてもよく、この場合、記録媒体9aは感光ドラムの表面に相当し、保持ドラム70が記録媒体9aを一体的に保持していると捉えることができる。
【0117】
保持ドラム70は円筒面の中心軸を中心にモータ81により回転し、これにより、光学ヘッド41aが記録媒体9aに対して主走査方向に(後述する複数の光変調素子からの光が照射される複数の照射領域の配列方向に対して垂直な方向に)相対的に一定の速度で移動する。また、光学ヘッド41aはモータ82およびボールねじ83により保持ドラム70の回転軸に平行な(主走査方向に垂直な)副走査方向に移動可能とされ、光学ヘッド41aの位置はエンコーダ(図示省略)により検出される。このように、モータ81,82、ボールねじ83を含む移動機構により、保持ドラム70の外側面および記録媒体9aが、空間光変調器を有する光学ヘッド41aに対して一定の速度で主走査方向に相対的に移動するとともに主走査方向に交差する副走査方向にも相対的に移動する。モータ81,82およびエンコーダは制御部6aに接続され、制御部6aがモータ81,82および光学ヘッド41a内の空間光変調器からの信号光の出射を制御することにより、保持ドラム70上の記録媒体9aに光による画像記録が行われる。
【0118】
図26は光学ヘッド41aの内部構成の概略を示す図である。光学ヘッド41a内には、複数の発光点を一列に有するバータイプの半導体レーザである光源43a、および、回折格子型の複数の光変調素子を一列に配列して有する空間光変調器46が配置され、光源43aからの光は、レンズ471(実際には、集光レンズ、シリンドリカルレンズ等により構成される。)およびプリズム472を介して空間光変調器46へと導かれる。このとき、光源43aからの光は線状光(光束断面が線状の光)とされ、ライン状に配列される複数の光変調素子上に照射される。
【0119】
空間光変調器46の各光変調素子は、上記第1の実施の形態と同様の構成である制御部6aの変調器制御部60(図25参照)により制御される。なお、図26では、変調器制御部60の素子駆動要素61をブロックにて示している。光変調素子から出射される0次光はプリズム472へと戻され、1次回折光はプリズム472とは異なる方向へと導かれる。なお、迷光となることを防止するために1次回折光は図示を省略する遮光部により遮光される。
【0120】
各光変調素子からの0次光はプリズム472にて反射され、ズームレンズ473を介して光学ヘッド41a外の記録媒体9aへと導かれ、複数の光変調素子の像が副走査方向に並ぶように記録媒体9a上に形成される。ズームレンズ473はズームレンズ駆動モータ474にて倍率が可変とされており、これにより、記録される画像の解像度が変更される。
【0121】
図25の画像記録装置1aにおいても、図1の画像記録装置1と同様の動作にて記録媒体9aに画像が記録される。このとき、各光変調素子に対する位置ずれ量と単位幅のα倍(ただし、αは正の整数)との差が単位幅未満となる当該αが特定されるとともに、当該差が当該光変調素子に対する位置補正シフト量として取得される。これにより、各画素列に適切な個数(付加画素数)のダミー画素を付加するとともに、単位幅よりも小さい位置補正シフト量を用いて、複数の光変調素子にて主走査方向の描画の開始位置を一致させることが可能となる。
【0122】
また、画像記録装置1aでは、線幅補正シフト量および位置補正シフト量を示す補正テーブルにおいて2つの画素値の各組合せに対して合計シフト量を求めることにより、当該光変調素子に対応する画素列の各変化点に関して、画素群の描画ずれを補正するために光変調素子からの出力光量の遷移位置をシフトするシフト量が実質的に求められ、当該シフト量が1つの画素に対応する記録媒体9a上の領域の主走査方向の幅(すなわち、単位幅)を超える場合に、当該シフト量を単位幅にて除した値の整数部分の画素数だけ当該変化点が移動するように、対象画像の画素の画素値が変更されるとともに、当該変化点に対応するシフト量が小数部に相当する値に修正される。これにより、記録媒体9aに画像を記録する際に、1画素に相当する距離を超えて光変調素子からの出力光量の遷移位置をシフトさせることが実現され、画像を精度よく記録することが可能となる。
【0123】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0124】
図18の例では、光変調素子461において目標駆動電圧が画素値2に対応する第2階調駆動電圧V2とされる距離が短くされる例(図27の上から4段目参照)について述べたが、図27の上から3段目に示すように、目標駆動電圧が第2階調駆動電圧V2とされる距離が長くなるように補正テーブルにおける線幅補正シフト量が決定されていてもよい。また、画像記録装置1,1aでは、光変調素子461の遷移位置を照射位置の進行方向の前側にシフトさせる以外に(図27の上から5段目参照)、図27の最下段に示すように、照射位置の進行方向の後側にシフトさせてもよい。
【0125】
このような場合であっても、描画ずれの補正を行わない場合のシフト量である標準シフト量を単位幅Tの1/2倍に設定し、1つの画素に対応する基板9または記録媒体9a上の領域の主走査方向の幅の半分から画素群の描画ずれに基づく距離(上記実施の形態では、線幅補正シフト量および位置補正シフト量)を増減した値を、(画素の加工に伴う)修正を行う前のシフト量とすることにより、光変調素子461の出力光量の遷移位置を主走査方向の両側に容易に移動させることができ、その結果、画像を精度よく記録することが可能となる。
【0126】
画素列加工部632における画素列の加工を伴う画像記録装置1,1aでは、仮に初期ベースクロック間画素数が1とされると、図13.AのステップS12の処理にてベースクロック間画素数を初期ベースクロック間画素数よりも少ない数に決定することができず、ベースクロック期間における複数の変化点の存在を防止することができなくなる。したがって、画素列の加工を伴う画像記録装置1,1aでは、図28の中段および下段に示すように初期ベースクロック間画素数が4や2とされる、すなわち、2以上とされることが必要となる。
【0127】
上記第1および第2の実施の形態では、画素加工テーブル6301および修正シフト量テーブル6171を用いることにより、1画素に相当する距離を超える遷移位置のシフトを容易に行うことが実現されるが、各変化点のシフト量が1画素に相当する距離を超える場合に、当該シフト量を当該距離にて除した値の整数部分の画素数だけ当該変化点が移動するように、対象画像の画素の画素値が変更されるとともに、当該変化点に対応するシフト量が小数部に相当する値に修正されるのであるならば、画素加工テーブル6301および修正シフト量テーブル6171を用いることなく画像記録が行われてもよい。
【0128】
また、複数の光変調素子461において描画される線幅のばらつきが許容範囲内である等、線幅補正シフト量を考慮する必要が無い場合には、画像記録装置1,1aにおいて、画素加工テーブル6301および修正シフト量テーブル6171の生成(および、シフト量超過検出部621、テーブル生成部622、画素列加工部632および修正シフト量取得部618)が省略されてもよい。この場合、位置ずれ量から付加画素数と共に取得される単位幅未満の位置補正シフト量が、修正シフト量テーブル6171に代えて素子駆動要素61のメモリ617に記憶され、各変化点における2つの画素値の組合せに関係なく、基準位置アドレスおよび位置補正シフト量を足し合わせた値がシフトディレイ数として求められ、出力光量の遷移位置のシフトが行われる。また、このような画像記録装置では、ベースクロック間画素数を1とする(すなわち、論理的な最小線幅を1画素に相当する幅とする)ことも可能であり、この場合、位置補正シフト量がシフトディレイ数となる。
【0129】
上記実施の形態における空間光変調器46では、全ての光変調素子461を単位としてのみ能動化と非能動化との切り替えが可能とされる、すなわち、一部の光変調素子461のみへの駆動に係るデータの入力、または、一部の光変調素子461のみへの駆動に係るデータの非入力を行うことができないため、全ての光変調素子461に対応する付加済み画素列の長さが等しくされるが、空間光変調器の設計によっては、それぞれが2以上の光変調素子461である複数の素子群にて空間光変調器が構成され、素子群毎に能動化と非能動化との切り替えが可能とされてもよい。この場合、主演算部62では、複数の素子群のそれぞれにおいて、対応する付加済み画素列の長さが等しくされる。
【0130】
以上のように、画像記録装置では、空間光変調器の複数の(全ての)光変調素子461が、それぞれが2以上の光変調素子461である少なくとも1つの素子群にて構成される場合に、各画素列の末尾にもダミー画素を付加することにより、各素子群にて対応する付加済み画素列の長さが等しくされ、これにより、基板9上に画像を適切に記録することが可能となる。なお、各素子群に含まれる光変調素子461は必ずしも連続して並ぶものである必要はなく、例えば、1つ置きに存在する複数の光変調素子461が一の素子群に含められ、残りの光変調素子461が他の素子群に含められてもよい。もちろん、画像記録装置では、光変調素子461毎に能動化と非能動化との切り替えが可能とされる空間光変調器が用いられてもよい。
【0131】
画像記録装置1,1aにおいて、描画における信号光は必ずしも0次光である必要はなく、1次回折光が信号光とされてもよい。また、撓んでいない状態の可撓リボン461aと固定リボン461bとの相対的位置関係が上記実施の形態とは異なり、可撓リボン461aが撓んだ状態で0次光が出射される光変調素子461が用いられてもよい。これらの場合においても、光変調素子461の動作タイミングをシフトすることにより、適切な画像記録が実現される。
【0132】
可撓リボン461aおよび固定リボン461bは帯状の反射面として捉えることができるのであるならば、厳密な意味でのリボン形状である必要はない。例えば、ブロック形状の上面が固定リボンの反射面としての役割を果たしてもよい。また、光変調素子461に含まれる各リボン対の双方が互いに異なる量だけ撓むことにより、0次光の出射、または、1次回折光の出射が行われてもよい。
【0133】
光変調素子461は回折格子型に限定されず、例えば液晶シャッタ等であってもよい。さらに、光変調素子461は光を反射するものにも限定されず、例えば、レーザアレイが光変調素子461としての役割を果たしてもよい。これらの場合においても複数の素子にそれぞれ対応する複数の照射領域の位置ずれを補正することにより、適切な画像記録が実現される。
【0134】
また、2次元の空間光変調器が採用されてもよく、この場合、光変調素子の各1次元の配列に対して、上記実施の形態における複数の光変調素子に対する補正が適用される。
【0135】
図1および図25の画像記録装置1,1aでは、各光変調素子461に対する位置ずれ量から付加画素数および位置補正シフト量を求め、合計シフト量が単位幅を超える変化点を移動しつつシフト量を修正する演算部が、主演算部62、複数のFPGA制御要素63および複数の素子駆動要素61により実現されるが、画像を高速に記録する必要がない場合には、演算部の機能が主演算部62における演算のみにより(ソフトウェア的に)実現されてもよい。
【0136】
基板9および記録媒体9a上の複数の照射領域は、照射領域の配列に交差する走査方向に基板9および記録媒体9aに対して相対的に移動可能であるならば他の手法により移動されてもよい。また、画像の情報を保持する記録媒体(板状やシート状以外の他の形状であってもよい。)は、プリント配線基板や半導体基板等の感光性材料が塗布された、あるいは、感光性を有する他の材料であってもよく、光の照射による熱に反応する材料であってもよい。
【符号の説明】
【0137】
1,1a 画像記録装置
2 保持部移動機構
3 基板保持部
6,6a 制御部
9 基板
9a 記録媒体
46 空間光変調器
61 素子駆動要素
62 主演算部
63 FPGA制御要素
71,71a 画素
72,720 ダミー画素
81 モータ
92a〜92c 照射領域
460 ベース板
461 光変調素子
461a 可撓リボン
461b 固定リボン
617,630 メモリ
618 修正シフト量取得部
632 画素列加工部
691a〜691c 画素列
6171 修正シフト量テーブル
6301 画素加工テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の照射により記録媒体に画像を記録する画像記録装置であって、
複数の光変調素子を有する光変調器と、
前記複数の光変調素子からの光がそれぞれ照射され、記録媒体上におよそ直線状に並ぶ複数の照射領域を、前記複数の照射領域の配列に交差する走査方向に、前記記録媒体に対して相対的に移動する移動機構と、
記録媒体への記録対象である対象画像において前記走査方向に対応する列方向に並ぶ複数の画素を画素列として、前記複数の光変調素子が前記対象画像に含まれる複数の画素列にそれぞれ対応付けられており、1つの画素に相当する記録媒体上の領域の前記走査方向の幅を単位幅として、記録媒体上において前記複数の照射領域に対して相対的に固定された参照位置と各照射領域との間における前記走査方向の位置ずれ量と、前記単位幅のα倍(ただし、αは正の整数)との差が前記単位幅未満となる前記αだけ所定数から増減した数の非描画を示すダミー画素を前記各照射領域に対応する画素列の先頭に付加して付加済み画素列を生成するとともに、前記差を前記各照射領域に対する位置補正シフト量として取得する演算部と、
前記移動機構に同期しつつ、付加済み画素列および位置補正シフト量に基づいて各光変調素子を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像記録装置であって、
前記対象画像の各画素列が、それぞれが前記列方向に連続して同一の画素値を有する複数の画素群の集合であり、
前記演算部が、各付加済み画素列において隣接する2つの画素群の間の位置である各変化点に関して、画素群の描画ずれを補正するために光変調素子からの出力光量の遷移位置をシフトするシフト量を、前記位置補正シフト量および画素群の描画幅を補正するための線幅補正シフト量に基づいて求め、前記シフト量を前記単位幅にて除した値の整数部分の画素数だけ前記各変化点が前記列方向に移動するように、前記各付加済み画素列に含まれる画素の画素値を変更するとともに、前記各変化点に対応する前記シフト量を前記値の小数部に相当する値に修正し、
前記制御部が、変更後の前記各付加済み画素列および修正後の前記シフト量に基づいて前記各光変調素子を制御することを特徴とする画像記録装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像記録装置であって、
前記演算部において、前記各変化点に対して、前記隣接する2つの画素群の画素値の組合せに基づいて修正前の前記シフト量が求められ、
前記演算部が、
前記各光変調素子に対して、複数通りの2つの画素値の組合せのそれぞれに対する変化点の移動量を示す画素加工テーブルを記憶する第1テーブル記憶部と、
前記各付加済み画素列の前記各変化点における2つの画素値の組合せを用いて前記画素加工テーブルを参照することにより、前記各変化点の移動量を取得して前記各変化点を前記列方向に移動する画像変更部と、
前記各光変調素子に対して、前記複数通りの2つの画素値の組合せのそれぞれに対する修正後のシフト量を示す修正シフト量テーブルを記憶する第2テーブル記憶部と、
前記各付加済み画素列の前記各変化点における2つの画素値の組合せを用いて前記修正シフト量テーブルを参照することにより、前記各変化点に対する前記修正後のシフト量を取得するシフト量取得部と、
を備えることを特徴とする画像記録装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像記録装置であって、
記録媒体を保持する保持部をさらに備え、
前記移動機構により前記保持部が前記走査方向に前記光変調器に対して相対移動することにより、前記複数の光変調素子が前記対象画像に含まれる前記複数の画素列の描画を行い、前記保持部が前記走査方向に垂直かつ記録媒体に沿う方向に相対移動し、その後、前記複数の画素列の描画時とは反対方向に相対移動することにより、前記複数の光変調素子が前記対象画像に含まれる他の複数の画素列の描画を行い、
前記複数の画素列の描画時、および、前記他の複数の画素列の描画時において、前記各光変調素子に対して異なる画素加工テーブルおよび修正シフト量テーブルが用いられることを特徴とする画像記録装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の画像記録装置であって、
前記複数の光変調素子が、それぞれが2以上の光変調素子である少なくとも1つの素子群にて構成され、素子群毎に能動化と非能動化との切り替えが可能となっており、
前記演算部が、前記各照射領域に対応する画素列の末尾にもダミー画素を付加することにより、前記少なくとも1つの素子群のそれぞれにおいて、対応する付加済み画素列の長さが等しくされることを特徴とする画像記録装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の画像記録装置であって、
前記複数の光変調素子のそれぞれが、少なくとも1つのリボン対を有する回折格子型の光変調素子であり、前記複数の光変調素子が同一のベース板上にて一の方向に配列形成されており、前記参照位置と前記各照射領域との間における前記走査方向の前記位置ずれ量が、前記ベース板の法線方向への反りに起因することを特徴とする画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4.A】
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【図4.B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13.A】
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【図13.B】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2010−224474(P2010−224474A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74447(P2009−74447)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】