説明

異方性導電接着剤、その製造方法、接続構造体及びその製造方法

【課題】ニッケル被覆樹脂粒子等の磁性粉体を、異方性導電接着剤の導電粒子として使用した場合に、絶縁性接着剤組成物中に導電粒子が凝集せずに存在している異方性導電接着剤を提供する。
【解決手段】絶縁性接着剤組成物中に導電粒子が分散されてなる異方性導電接着剤において、該導電粒子として、その少なくとも一部が磁性材料から構成されている磁性粉体を使用する。この場合、導電粒子を、当該異方性導電接着剤を用いて異方性導電接続を行うときまでに脱磁処理しておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁性樹脂組成物中に導電粒子として磁性粉体が分散されてなる異方性導電接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
異方性導電フィルムは、絶縁性接着剤に導電粒子を分散させ、フィルム状に成形することにより製造されている。この場合、導電粒子として、配線のファインピッチ化に応じて粒径がいっそう小さなものが使用されるようになっており、また、異方性導電接続に適した導電性と変形性とを示し、しかも比較的入手コストが安いニッケルメッキ被膜で被覆された樹脂粒子(以下、ニッケル被覆樹脂粒子と称する)が広く使用されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−259787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ニッケル粒子やニッケル被覆樹脂粒子等の少なくとも一部が磁性材料から構成されている導電粒子を使用した異方性導電フィルムで半導体チップを配線基板に異方性導電接続した場合、異方性導電接続の際に絶縁性接着剤成分を溶融流動させるため、導電粒子も移動し易くなり、結果的に磁性を有する導電粒子の凝集が発生するという問題があった。このような導電粒子の凝集が生ずることは導電粒子の局在化を招き、導通不良を生じさせたり、ショートを生じさせたりする危険性が高まる。
【0005】
本発明の目的は、以上の従来の技術の問題点を解決することであり、ニッケル被覆樹脂粒子等の少なくとも一部が磁性材料から構成されている導電粒子を使用するペースト状又はフィルム状の異方性導電接着剤を用いて異方性導電接続する際に、異方性導電接着剤中に導電粒子の凝集が発生しないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、異方性導電接着剤に配合すべき導電粒子として使用するニッケル被覆樹脂粒子等の少なくとも一部が磁性材料から構成されている導電粒子に対し、当該異方性導電接着剤を用いて異方性導電接続を行うときまでに脱磁処理することにより、上述の目的を達成できることを見出した。より具体的には、そのような導電粒子として、絶縁性接着剤組成物中に分散される前の粉体の状態で、絶縁性接着剤組成物中に分散されたペーストの状態で、又はそのようなペーストをフィルム化したフィルムの状態で脱磁処理されたものを使用することにより、上述の目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、絶縁性接着剤組成物中に磁性導電粒子が分散されてなる異方性導電接着剤において、該磁性導電粒子が、当該異方性導電接着剤を用いて異方性導電接続を行うときまでに脱磁処理されていることを特徴とする異方性導電接着剤を提供する。
【0008】
また、本発明は、絶縁性接着剤組成物中に磁性導電粒子が分散されてなる上述の異方性導電接着剤の製造方法であって、磁性導電粒子を当該異方性導電接着剤を用いて異方性導電接続を行うときまでに脱磁処理することを特徴とする製造方法を提供する。
【0009】
更に、本発明は、第1の電子部品の端子と第2の電子部品の端子とが、上述の異方性導電接着剤により異方性導電接続されていることを特徴とする接続構造体を提供する。
【0010】
加えて、本発明は、電気素子が配線基板に接続されてなる接続構造体の製造方法であって、第1の電子部品の端子と第2の電子部品の端子との間に、上述の異方性導電接着剤を配し、異方性導電接着剤を加熱しながら電気素子を配線基板に押圧することにより、該端子間を異方性導電接続することを特徴とする接続構造体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
磁性導電粒子を使用する本発明の異方性導電接着剤においては、磁性導電粒子として、当該異方性導電接着剤を用いて異方性導電接続を行うときまでに脱磁処理をしたものを使用する。このため、異方性導電接続の際に、磁性導電粒子が凝集することを防止もしくは大きく抑制することができる。よって、本発明によれば、磁性導電粒子を使用した異方性導電接着剤の接続信頼性及び絶縁信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明に好ましく適用できる脱磁方法の説明図である。
【図2】図2は、本発明に好ましく適用できる脱磁方法の説明図である。
【図3】図3は、本発明に好ましく適用できる脱磁方法の説明図である。
【図4】図4は、本発明に好ましく適用できる脱磁方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明の異方性導電接着剤は、絶縁性接着剤組成物中に磁性導電粒子が分散されてなるものである。その特徴は、磁性導電粒子として、当該異方性導電接着剤を用いて異方性導電接続を行うときまでに脱磁処理したものを使用することである。
【0015】
<異方性導電接着剤を構成する磁性導電粒子>
本発明において使用する磁性導電粒子は、前述したように、その少なくとも一部が磁性材料から構成されている磁化し得る導電粒子である。従って、磁性導電粒子には、磁化している場合も脱磁されている場合も含まれる。このような磁性導電粒子としては、導電粒子全体が単一の磁性材料から形成されている場合のみならず、導電粒子又は絶縁粒子の表面に磁性材料の薄膜が形成されている粒子、そのような磁性薄膜上に更に非磁性金属膜が形成されている粒子、これらの磁性粉体の最表面に更に非磁性の絶縁性樹脂の薄膜が形成されている粒子などを挙げることができる。
【0016】
磁性導電粒子として使用できる磁性粉体の具体例としては、ニッケル、鉄、酸化鉄、酸化クロム、フェライト、コバルト、センダストなどの磁性金属あるいは磁性合金の粉体、ハンダ、銅等の非磁性導電粒子や絶縁樹脂コア粒子の表面に磁性材料の薄膜が形成された金属被覆樹脂粒子などの粉体、それらの表面に更に金メッキ薄膜が形成された粉体、あるいは絶縁性樹脂層で被覆された粉体などを挙げることができる。
【0017】
これらの中でも、異方性導電接続用の磁性導電粒子として、製造コスト、接続時の加熱加圧での変形等を考慮すると、ニッケル被覆樹脂粒子を好ましく挙げることができる。コアになる樹脂としては、特に制限はないが、耐熱性、耐薬品性を備えた無機あるいは有機の材料を好ましく使用することができる。
【0018】
また、磁性導電粒子を構成する磁性材料として使用するニッケル粒子を生産する際、その凝集を抑制する手法として、ニッケル中にリン元素を含有させることが挙げられる。この場合、リン元素の含有量は、0質量%より大、好ましくは1質量%以上、より好ましくは4質量%以上である。他方、ニッケル中のリン元素の含有量が多すぎると接続が高抵抗となるので、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下とすることが望まれる。ニッケル中のリン元素は、通常、ニッケルメッキ浴のpH調整用に使用されるリン酸化合物、亜リン酸化合物等に由来するものであるが、これに制限されるものではない。
【0019】
本発明で使用する磁性導電粒子の平均粒子径は、小さすぎると磁性導電粒子全体における磁性金属の割合が高くなるため磁気の影響を受け易くなり、そのため磁性導電粒子の凝集塊が生じてショートが発生したり、また、導電粒子の異方性導電機能が低下し、電子部品の端子の高さのバラツキに追随できなくなり接続信頼性に不具合が生じたりする傾向があり、他方、大きすぎると導電粒子により配線間の絶縁性が低下し、ファインピッチ接続自体に対応できなくなる傾向があるために、好ましくは0.5〜30μm、より好ましくは1〜10μmである。
【0020】
磁性導電粒子の脱磁処理は、特に制限はなく、従来公知の脱磁方法を適用して行うことができる。中でも、異方性導電接続に使用するような微細な磁性導電粒子は、脱磁処理の際に、磁場の変動により動き易いため、脱磁効率が低下する傾向がある。そこで、このような磁性導電粒子の脱磁の際には、磁性導電粒子を、磁性導電粒子同士の相対的位置関係が変動しないように脱磁処理することが好ましい。磁性導電粒子同士の相対的位置関係が変動しないようにする脱磁する方法として、以下に説明する方法を好ましく適用することができる。
【0021】
(磁性導電粒子の脱磁処理に適用する脱磁方法)
本発明に適用することのできる脱磁方法として、当該異方性導電接着剤を用いて異方性導電接続を行うときまでに、磁性導電粒子を脱磁処理できる種々の方法を適用することができる。好ましくは、当該異方性導電接着剤を用いて異方性導電接続を行うときまでに磁性導電粒子同士の相対的位置関係が変動しないような状態で脱磁処理する方法が挙げられる。ここで、磁性導電粒子同士の相対的位置関係が変動しないような状態とは、脱磁処理の際に、磁性導電粒子が脱磁処理により印可される磁界により、発明の効果が大きく損なわれないように、他の磁性導電粒子に対して実質的に位置変位が生じず、しかもそれ自体の回転も殆ど生じない状態を意味する。逆にいえば、脱磁処理を行う際に、発明の効果が大きく損なわれない範囲であれば、磁性導電粒子同士の相対的位置関係が多少変動してもよい場合があることを意味する。
【0022】
磁性導電粒子を以上のような状態で脱磁する方法は、大きく、磁性導電粒子を粉体の状態、ペーストの状態又はフィルムの状態で脱磁処理する方法に分けることができる。粉体の状態で脱磁処理する態様としては、以下の第1のモードと第2のモードとを、ペーストの状態で脱磁処理する態様としては、以下の第3のモード、フィルムの状態で脱磁処理する態様としては、以下の第4のモードをそれぞれ挙げることができる。以下、脱磁方法(脱磁処理)の第1のモード、第2のモード、第3のモード及び第4のモードについて更に詳細に説明する。なお、脱磁手法としては、処理公知の脱磁手法を採用することができる。
【0023】
<脱磁方法の第1のモード>
第1のモードは、磁性導電粒子を粉体の状態で脱磁処理する態様である。ここで、粉体の状態とは、絶縁性接着剤組成物に分散する前の粉体の状態を意味している。
【0024】
この第1のモードとしては、例えば、磁性導電粒子を容器内に充填し、粉体の状態で脱磁処理するものである。具体的には、第1のモードは、図1に示すように、磁性導電粒子1を、開口部2aを有する容器2に投入し、次いで、容器2の口部2aから容器2内に挿入された押圧手段3で押圧して容器2内に仮固定し、その容器2を、脱磁コイル10により形成された脱磁用磁場の中を、磁界強度を減衰させながら矢印の方向に、少なくとも1回脱磁コイルから遠ざけるように移動させることにより、磁性導電粒子を粉体の状態で脱磁処理する態様である。また、脱磁処理の効率を高めるために、容器2を往復運動(複数回の移動)させてもよい。なお、容器2は開口部を有する容器に限定されるものではなく、例えば、容器に磁性導電粒子を充填後、真空封止を行って開口部を封止した場合も、好適に使用することができる。
【0025】
第1のモードの脱磁方法で使用する容器及び後述する第2、第3のモードの脱磁方法で使用することができる容器としては、非磁性材料、透磁率の低い材料等から形成されたものであり、例えば、ガラス容器、アルミナ容器、磁器容器等を挙げることができる。容器の形状としては、筒型形、特に円筒形が好ましいが、多角筒形でもよい。底部はラウンド型になっていることが好ましい。また、底部が開閉可能となっていてもよい。
【0026】
押圧手段3としては、特に制限はなく、例えば、硬質あるいは弾性を示す平板3aをプッシャ3bで押しつける構成でもよい。押圧のレベルは、脱磁すべき磁性粉体にダメージを与えないように且つ脱磁処理の際に磁性粉体の動きを抑制できるレベルであり、磁性粉体の種類、大きさ、形状、脱磁条件などに応じて決めることができる。
【0027】
<脱磁方法の第2のモード>
第2のモードは、磁性導電粒子を粉体の状態で脱磁処理する態様であるが、第1のモードとは異なる態様である。ここで、粉体の状態とは、絶縁性接着剤組成物に分散する前の粉体の状態を意味している。
【0028】
具体的には、第2のモードは、図2に示すように、磁性導電粒子21を容器23に入れられた液体22中に投入し、次いで、その液体22を凝固させ、凝固物中に仮固定し、その容器23を、脱磁コイル10により形成された脱磁用磁場の中を、磁界強度を減衰させながら矢印の方向に少なくとも1回脱磁コイルから遠ざけるように移動させることにより、磁性導電粒子を粉体の状態で脱磁処理する態様である。また、脱磁処理の効率を高めるために、容器2を往復運動(複数回の移動)させてもよい。このように、液体22で凝固させて脱磁処理した場合も、絶縁性接着剤組成物に分散されておらず、凝固物を融解させれば元に戻るため、粉体の状態で脱磁処理したものと見なすことができる。
【0029】
なお、第2のモードでは、通常、容器23中で液体を凝固させるが、凝固させた後の脱磁処理の際には、容器を取り除くことができる。
【0030】
本発明の第2のモードの脱磁方法においては、磁性導電粒子を液体に投入した後、脱泡処理した後に液体を凝固させることが好ましい。これは、脱泡していないと、液体を凝固させたときに泡も凝固物の中に取り込まれ、泡近傍の磁性導電粒子が動きやすくなるからである。
【0031】
液体を凝固させる具体的な手法としては、液体を、その凝固点以下に冷却することにより凝固させる方法がある。液体としては、水、エタノール等のアルコール類、ヘキサン、シクロヘキサン等のアルカン類、トルエン、ナフタレン等のアリール類などを使用することができる。凝固の具体例としては、液体として水を使用した場合には、0℃以下に冷却することにより凝固させることができる。シクロヘキサン(融点7℃)を使用した場合には、7℃以下、好ましくは−10℃に冷却することが挙げられる。この場合、脱磁処理後に、凝固物を液体の凝固点以上になるまで放置又は加熱し、脱磁処理した磁性導電粒子を常法により液体から分離すればよい。
【0032】
また、液体を凝固させる他の手法としては、液体に、その液体を凝固させ得る凝固剤を更に配合し、磁性粉体が投入されたあとで、その凝固剤で液体を凝固処理する方法がある。例えば、凝固剤として液体のゲル化剤を使用する方法である。具体的には、液体が水である場合に、凝固剤としてゼラチンを使用し、ゼラチンを水に加熱溶解し、それに磁性粉体を投入し、必要に応じて脱泡処理し、次いで冷却してゲル化させることが挙げられる。この場合、ゼラチン由来のゲルは加熱により消失する可逆的なものであるので、脱磁処理後に、凝固物をゲルが消失する温度にまで加熱し、脱磁処理した磁性導電粒子を常法により液体から分離すればよい。
【0033】
<脱磁方法の第3のモード>
第3のモードは、磁性導電粒子をペーストの状態で脱磁処理する態様である。ここで、ペーストの状態とは、磁性導電粒子を、絶縁性接着剤組成物中に分散してペーストとした状態を意味する。
【0034】
具体的には、第3のモードは、図3に示すように、絶縁性接着剤組成物に磁性導電粒子を分散させたペースト31を開口部32を有する容器33に投入し、次いで、容器33の開口部32に必要に応じて蓋を被せ、その容器33を、脱磁コイル10により形成された磁場の中を、磁場強度を減衰させながら矢印の方向に少なくとも1回脱磁コイルから遠ざけるように移動させることにより、磁性導電粒子をペーストの状態で脱磁処理する態様である。また、脱磁処理の効率を高めるために、容器33を往復運動(複数回の移動)させてもよい。
【0035】
第3のモードにおいて、絶縁性接着剤組成物の磁性導電粒子配合後の粘度は、低すぎると磁性導電粒子の動きを抑制することが不十分となり、高すぎると分散が困難になる傾向があるので、好ましくは1Pa・s〜10000Pa・sである。
【0036】
磁性導電粒子を絶縁性接着組成物へ分散する手法としては、特に制限はなく、公知の分散方法に従って行うことができる。
【0037】
<脱磁方法の第4のモード>
第4のモードは、磁性導電粒子を、フィルムの状態で脱磁処理する態様である。ここで、フィルムの状態とは、磁性導電粒子を絶縁性接着組成物に分散させ、公知の手法によりフィルム成形して得たフィルムを意味する。
【0038】
具体的には、第4のモードは、図4に示すように、非磁性ベース41上に、枚葉の異方性導電フィルム42を載置し、その上から非磁性カバー43で押さえ、そして、その異方性導電フィルム42を、脱磁コイル10により形成された磁場の中を、磁場強度を減衰させながら矢印の方向に少なくとも1回脱磁コイルから遠ざけるように移動させることによりフィルムの状態で脱磁処理する態様である。この場合、枚葉の異方性導電フィルムに代えてリール状に巻き回した異方性導電フィルムを適用してもよい。また、脱磁処理の効率を高めるために、容器33を往復運動(複数回の移動)させてもよい。
【0039】
以上説明した第1〜第4のモードの脱磁方法における脱磁処理の際の磁界強度は、低すぎると脱磁の効果が得られなくなり、導電粒子が凝集することとなり、高すぎると逆に導電性粒子が着磁する可能性があるので、100〜2000Gの範囲で適宜使用することができ、好ましくは200〜2000G、より好ましくは200〜400Gである。
【0040】
さらに、脱磁方法における脱磁処理の際の脱磁速度は、図1〜図4のような構成の場合、遅すぎると生産効率が低下し、速すぎると磁性効率が得られ難くなる傾向があるので、好ましくは0.1〜100mm/s、より好ましくは1〜100mm/s、更に好ましくは1〜50mm/sである。
【0041】
以上説明した、脱磁処理された磁性導電粒子の異方性導電接着剤中における配合量は、少なすぎると接続信頼性が不十分となり、多すぎると異方性が失われるので、好ましくは絶縁性接着剤組成物中の硬化後に膜形成成分となる全成分(モノマー、オリゴマー、非重合性ポリマー、硬化剤等)100質量部に対し、好ましくは1〜100質量部、より好ましくは2〜70質量部である。
【0042】
<異方性導電接着剤を構成する絶縁性接着剤組成物>
本発明の異方性導電接着剤を構成する絶縁性接着剤組成物としては、従来の異方性導電接着剤において用いられている熱硬化性のバインダー樹脂組成物の中から適宜選択して使用することができる。例えば、熱硬化型エポキシ樹脂、熱硬化型尿素樹脂、熱硬化型メラミン樹脂、熱硬化型フェノール樹脂等に、イミダゾール系硬化剤、アミン系硬化剤等の硬化剤を配合した絶縁性接着剤組成物を挙げることができる。中でも、硬化後の接着強度が良好な点を考慮すると、熱硬化型エポキシ樹脂をバインダー樹脂として使用した絶縁性接着剤組成物を好ましく使用することができる。
【0043】
このような熱硬化型エポキシ樹脂としては、液状でも固体状でもよく、エポキシ当量が通常100〜4000程度であって、分子中に2以上のエポキシ基を有するものが好ましい。例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、エステル型エポキシ化合物、脂環型エポキシ化合物等を好ましく使用することができる。また、これらの化合物にはモノマーやオリゴマーが含まれる。
【0044】
このような絶縁性接着剤組成物には、必要に応じてシリカ、マイカなどの充填剤、顔料、帯電防止剤などを含有させることができる。着色料、防腐剤、ポリイソシアネート系架橋剤、シランカップリング剤、溶媒などを配合することもできる。
【0045】
<異方性導電接着剤の調製>
本発明の異方性導電接着剤は、含有している磁性粉体からなる導電粒子が、上述した第1のモード〜第4のモードのいずれかの脱磁方法により脱磁処理が施されていること以外は、従来のペースト状あるいはフィルム状の異方性導電接着剤と同様の手法により製造することができる。
【0046】
本発明の異方性導電接着剤は、異方性導電ペーストという形態で使用することができるが、更に、キャスト法等の成膜技術によりフィルム状に成形することができる。
【0047】
<接続構造体>
本発明の異方性導電接着剤は、第1の電子部品の端子と第2の電子部品の端子とを異方性導電接続する際に、好ましく適用することができる。この異方性導電接続により第1の電子部品の端子と第2の電子部品の端子とが異方性導電接続されてなる接続構造体が得られる。このような接続構造体も本発明の一態様である。
【0048】
第1の電子部品及び第2の電子部品としては、発光素子、半導体チップ、半導体モジュールなどの公知の電気素子、フレキシブルプリント配線基板、ガラス配線基板、ガラスエポキシ基板等を適用することができる。また、端子は、銅、金、アルミ、ITOなどの公知の材料から形成された配線や電極パッドあるいはバンプであってもよく、そのサイズにも特に制限はない。
【0049】
なお、本発明の接続構造体の具体例として、COG(chip on glass)、COF(chip on film)、FOG(film on glass)、FOB(Film on Board)等と称されるものを好ましく挙げることができる。
【0050】
<接続構造体の製造方法>
以上説明した接続構造体は、第1の電子部品の端子と第2の電子部品の端子との間に、上述の異方性導電接着剤を配し、異方性導電接着剤を加熱しながら第1の電子部品を第2の電子部品に押圧することにより、それらの端子同士を異方性導電接続することにより製造することができる。この場合、押圧は、金属製加圧ボンダーや弾性ボンダーなどを使用して行うことができる。加熱については、第1の電子部品又は第2の電子部品が載置されるステージに加熱手段を設けて加熱してもよく、ボンダーに加熱手段を設けて加熱してもよい。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0052】
実施例1(脱磁方法の第2のモードによる脱磁処理)
(導電粒子の脱磁処理)
開口部内径10cm、深さ20cmの容量900mlのガラス製の耐溶剤性円筒形容器に、後述するように調製された、平均粒径3〜4μmのニッケル被覆樹脂粒子100gを投入し、更に、シクロヘキサン500gを投入し、分散混同した。
【0053】
このシクロヘキサン混合物を−40℃に冷却し凝固させた。凝固したシクロヘキサン混合物が入ったガラス容器を貫通型の脱磁装置(ソニーケミカル&インフォメーションデバイス(株)製)に装着し、表1〜表3に示した条件で脱磁処理した。脱磁処理後、室温に戻し、ニッケル被覆樹脂粒子をシクロヘキサンから濾取し、ヘキサンで洗浄し、乾燥させることにより、脱磁処理した導電粒子を得た。
【0054】
(ニッケル被覆樹脂粒子の調製)
3μmのジビニルベンゼン系樹脂粒子(5g)に、パラジウム触媒を浸漬法により担持させた。次いで、この樹脂粒子に対し、硫酸ニッケル六水和物、次亜リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、トリエタノールアミン及び硝酸タリウムから調製された無電解ニッケルメッキ液(pH12、メッキ液温50℃)を用いて無電解ニッケルメッキを行い、種々のリン含有量を有するニッケルメッキ層(金属層)が表面に形成されたニッケル被覆樹脂粒子を導電粒子として得た。得られた導電粒子の平均粒子径は3〜4μmの範囲であった。
【0055】
(異方性導電フィルムの作成)
導電粒子として脱磁処理したニッケル被覆樹脂粒子35質量部と、成膜成分としてビスフェノールA型フェノキシ樹脂(YP50、東都化成(株))30質量部と、液状成分としてビスフェノールAエポキシ化合物(EP828、ジャパンエポキシレジン(株))30質量部と、アミン系硬化剤(PHX3941HP、旭化成(株))39質量部と、エポキシシランカップリング剤(A−187、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ合同会社)1質量部とを、トルエンで固形分が50質量%となるように希釈し、混合することにより異方性導電接着剤を調製した。この接着剤を剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルムに乾燥厚25μmとなるようにバーコーターで塗布し、80℃のオーブン中で5分間乾燥することにより、異方性導電フィルムを作成した。
【0056】
(接続構造体の作成)
更に、この異方性導電フィルムを、ITO電極を有するガラス配線基板の電極と、高さ15μmの金バンプが形成された13mm×1.5mm角のICチップのバンプとの間に配置し、フリップチップボンダーで180℃、40MPaで15秒間加熱加圧することにより接続構造体を得た。
【0057】
比較例1
(異方性導電フィルムの作成)
脱磁処理したニッケル被覆樹脂粒子に代えて、脱磁処理していないニッケル被覆樹脂粒子を使用すること以外、実施例1と同様にして異方性導電接着剤を調製し、更に異方性導電フィルムを作成し、加えて接続構造体を得た。
【0058】
(評価)
得られた異方性導電フィルム又は接続構造体について、「絶縁性」及び「接続抵抗」を、脱磁速度可変条件下(表1)、及びリン含有量可変条件下(表2)で、以下に説明するように評価した。
【0059】
<絶縁性>
剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルムを引き剥がしていない実施例1及び比較例1のそれぞれの異方性導電フィルムの接着層面に、ガラス基板上に櫛の歯状に配設されたITO配線に有するショート評価用絶縁TEG(高さ15μmの金バンプが形成された13mm×1.5mm角のICチップ;バンプサイズ25×140μm;バンプ間スペース10μm)を、ボンダーで到達温度180℃、圧着時間15秒という条件で圧着した。そしてバンプ間の絶縁抵抗を測定し、ショートの発生数をカウントし、以下の評価基準に従って評価した。得られた結果を表1及び表2に示す。なお、ショート発生部分においては、光学顕微鏡を用いて導電粒子の詰まり具合等から、凝集の有無、程度についても観察した。
【0060】
ランク 内容
A: 絶縁ショート発生数が40サンプル中、10個未満
B: 絶縁ショート発生数が40サンプル中、10個以上20個未満
C: 絶縁ショート発生数が40サンプル中、20個以上
【0061】
<接続抵抗>
実施例1及び比較例1で得た直後の接続構造体の導通抵抗を、4端子法により測定した。
得られた結果を表1及び表2に示す。
【0062】
ランク 内容
A: 接続抵抗値が10Ω未満
B: 接続抵抗値が10Ω以上50Ω未満
C: 接続抵抗値が50Ω以上











【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
<実施例1及び比較例1の総合評価>
脱磁処理していない導電粒子を使用した比較例1の結果は、リン含量可変下において絶縁性が「C」又は「B」評価であった。それに対し、脱磁処理した導電粒子を使用した実施例1の結果は、脱磁速度可変下、リン含量可変下のいずれにおいても、極端な条件下で一部に絶縁性が「C」評価があるものの、基本的に「A」又は「B」評価であった。これらの結果から、本発明の異方性導電接着剤及び接続構造体は、使用した磁性粉体である導電粒子の脱磁が効率よく実現されていたため、良好な接続信頼性、絶縁信頼性を示したことがわかる。なお、以下に、脱磁条件の傾向についての知見を示す。
【0066】
<絶縁性についての評価>
1)脱磁速度可変の場合
表1からわかるように、脱磁速度の増大とともに、絶縁性が低下する傾向が見て取れるが、大きく低下するものではない。
2)リン含有量可変の場合
表2の結果からわかるように、リンの含有量によらず、磁界強度が200〜2000Gであれば、絶縁性が低下することはない。なお、光学顕微鏡観察の結果、「ショート」の発生した箇所では、導電粒子の凝集が観察され、特に評価「C」の場合に顕著であった。
【0067】
<接続抵抗についての評価>
脱磁処理をしない場合の接続抵抗値は低いものであり、脱磁処理をした場合にそれよりも接続抵抗値が増大しないことが望まれるが、表1及び表2の「接続抵抗」の欄の結果から、脱磁速度、リン含有量を変化させても、好ましい接続抵抗値が維持されることがわかる。
【0068】
実施例2(脱磁方法の第1のモードによる脱磁処理)
開口部内径60mm、深さ70mmの容量100mlのガラス製の耐溶剤性円筒形容器に、実施例1で調製したものと同じ平均粒径3〜4μmのニッケル被覆樹脂粒子(脱磁未処理)100gを入れた。樹脂粒子の表面は開口部から20mmの位置であった。なお、ニッケル中には、リン原子が4質量%含有されていた。
【0069】
次に、開口部から直径60mm、厚さ10mmの円盤状のガラス板を、樹脂粒子表面に置き、それを500Nの力で押しつけ、脱着可能に固定した。このガラス容器を貫通型の脱磁装置(ソニーケミカル&インフォメーションデバイス(株)製)に装着し、磁界強度400G、脱磁速度50mm/s、室温下で脱磁処理を行った。
【0070】
この実施例で得た導電粒子を使用する以外は、実施例1と同様にして異方性導電接着剤、更に異方性導電フィルムならびに接続構造体を作成した。得られた異方性導電フィルム及び接続構造体を用いて、実施例1と同様に試験評価したところ、実施例1の評価結果と同じ傾向を示した。
【0071】
実施例3(脱磁方法の第3のモードによる脱磁処理)
(異方性導電接着剤の調製)
導電粒子として、実施例1で調製したものと同じ平均粒径3〜4μmのニッケル被覆樹脂粒子(脱磁未処理)35質量部と、成膜成分としてビスフェノールA型フェノキシ樹脂(YP50、東都化成(株))30質量部と、液状成分としてビスフェノールAエポキシ化合物(EP828、ジャパンエポキシレジン(株))30質量部と、アミン系硬化剤(PHX3941HP、旭化成(株))39質量部と、エポキシシランカップリング剤(A−187、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ合同会社)1質量部とを、トルエンで所定の粘度(25℃)となるように固形分が50質量%となるように希釈し、混合することによりペースト状の異方性導電接着剤を調製した。なお、ニッケル中には、リン原子が4質量%含有されていた。
【0072】
(ペースト状異方性導電接着剤の状態での脱磁処理)
このペースト状の異方性導電接着剤を、開口部内径60mm、深さ70mmの容量100mlのガラス製の耐溶剤性円筒形容器に入れた。異方性導電接着剤の表面は開口部から20mmの位置であった。
【0073】
次に、このガラス容器を貫通型の脱磁装置(ソニーケミカル&インフォメーションデバイス(株)製)に装着し、所定の磁界強度で、脱磁速度50mm/s、室温下で脱磁処理を行った。これにより脱磁処理された導電粒子を含有するペースト状の異方性導電接着剤を得た。
【0074】
この実施例で得た脱磁処理された導電粒子を含有するペースト状の異方性導電接着剤を使用する以外は、実施例1と同様にして異方性導電フィルムならびに接続構造体を作成した。得られた異方性導電フィルム及び接続構造体を用いて、実施例1と同様に試験評価した。得られた結果を表3に示す。
【0075】
比較例2
ペースト状の異方性導電接着剤の状態で脱磁処理を行わない以外、実施例3と同様にして異方性導電接着剤を調製し、更に異方性導電フィルムを作成し、加えて接続構造体を得た。得られた異方性導電フィルム及び接続構造体を用いて、実施例1と同様に試験評価した。得られた結果を表3に示す。
【0076】
【表3】

【0077】
<実施例3及び比較例2の総合評価>
脱磁処理していない導電粒子を使用した比較例2の結果は、異方性導電接着剤粘度可変下において絶縁性が「C」評価であった。それに対し、ペースト状の異方性導電接着剤の状態で脱磁処理した導電粒子を使用した実施例3の結果は、接着剤粘度可変下において、極端な条件下で一部に絶縁性が「C」評価があるものの、基本的に「A」又は「B」評価であった。これらの結果から、本発明のペースト状の異方性導電接着剤及び接続構造体は、使用した磁性粉体である導電粒子の脱磁が効率よく実現されていたため、良好な接続信頼性、絶縁信頼性を示したことがわかる。なお、以下に、脱磁条件の傾向についての知見を示す。
【0078】
<絶縁性についての評価>
1)異方性導電接着剤粘度可変の場合
表3からわかるように、脱磁速度の増大とともに、絶縁性が低下する傾向が見て取れるが、大きく低下するものではない。なお、光学顕微鏡観察の結果、「ショート」の発生した箇所では、導電粒子の凝集が観察され、特に評価「C」の場合に顕著であった。
【0079】
<接続抵抗についての評価>
脱磁処理をしない場合の接続抵抗値は低いものであり、脱磁処理をした場合にそれよりも接続抵抗値が増大しないことが望まれるが、表3の「接続抵抗」の欄の結果から、接着剤組成物粘度を変化させても、好ましい接続抵抗値が維持されることがわかる。また、リンの含有量を変化させた場合、表2の場合と同様の傾向を示した。
【0080】
実施例4(脱磁方法の第4のモードによる脱磁処理)
(異方性導電接着剤の調製)
導電粒子として、実施例1で調製したものと同じ平均粒径3〜4μmのニッケル被覆樹脂粒子(脱磁未処理)35質量部と、成膜成分としてビスフェノールA型フェノキシ樹脂(YP50、東都化成(株))30質量部と、液状成分としてビスフェノールAエポキシ化合物(EP828、ジャパンエポキシレジン(株))30質量部と、アミン系硬化剤(PHX3941HP、旭化成(株))39質量部と、エポキシシランカップリング剤(A−187、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ合同会社)1質量部とを、トルエンで固形分が50質量%となるように希釈し、混合することにより異方性導電接着剤を調製した。なお、ニッケル中には、リン原子が4質量%含有されていた。
【0081】
(異方性導電フィルムの作成)
この異方性導電接着剤を剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルムに乾燥厚25μmとなるようにバーコーターで塗布し、80℃のオーブン中で5分間乾燥することにより、異方性導電フィルムを作成した。
【0082】
(異方性導電フィルムの状態での脱磁処理)
次に、この異方性導電フィルムを非磁性ベースとカバーとに挟み込んだ積層物を貫通型の脱磁装置(ソニーケミカル&インフォメーションデバイス(株)製)に装着し、所定の磁界強度で、脱磁速度可変下、室温下で脱磁処理を行った。これにより脱磁処理された導電粒子を含有する異方性導電フィルムを得た。
【0083】
(接続構造体の作成)
更に、この異方性導電フィルムを、ITO電極を有するガラス配線基板の電極と、高さ15μmの金バンプが形成された13mm×1.5mm角のICチップのバンプとの間に配置し、フリップチップボンダーで180℃、40MPaで15秒間加熱加圧することにより接続構造体を得た。
【0084】
得られた異方性導電フィルム及び接続構造体を用いて、実施例1と同様に試験評価した。得られた結果を表4に示す。
【0085】
比較例3
脱磁処理したニッケル被覆樹脂粒子に代えて、脱磁処理していないニッケル被覆樹脂粒子を使用すること以外、実施例4と同様にして異方性導電接着剤を調製し、更に異方性導電フィルムを作成し、加えて接続構造体を得た。得られた異方性導電フィルム及び接続構造体を用いて、実施例4と同様に試験評価した。得られた結果を表4に示す。
【0086】
【表4】

【0087】
<実施例4及び比較例3の総合評価>
脱磁処理していない異方性導電フィルムを使用した比較例3の結果は、絶縁性が「C」評価であった。それに対し、異方性導電フィルムの状態で脱磁処理した実施例4の結果は、脱磁可変下において、基本的に「A」又は「B」評価であった。これらの結果から、本発明のフィルム状の異方性導電接着剤及び接続構造体は、使用した磁性粉体である導電粒子の脱磁が効率よく実現されていたため、良好な接続信頼性、絶縁信頼性を示したことがわかる。なお、以下に、脱磁条件の傾向についての知見を示す。
【0088】
<絶縁性についての評価>
1)脱磁速度可変の場合
表4からわかるように、脱磁速度の増大とともに、絶縁性が低下する傾向が見て取れるが、大きく低下するものではない。なお、光学顕微鏡観察の結果、「ショート」の発生した箇所では、導電粒子の凝集が観察された。
【0089】
<接続抵抗についての評価>
脱磁処理をしない場合の接続抵抗値は低いものであり、脱磁処理をした場合にそれよりも接続抵抗値が増大しないことが望まれるが、表4の「接続抵抗」の欄の結果から、脱磁速度を変化させても、好ましい接続抵抗値が維持されることがわかる。また、リンの含有量を変化させても、表2の場合と同様の傾向を示した。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の異方性導電接着剤は、導電粒子として、その少なくとも一部が磁性材料から構成されている磁性粉体を使用するが、当該異方性導電接着剤を用いて異方性導電接続を行うときまでに脱磁処理をしておく。このため、異方性導電接続の際に、凝集することを防止もしくは大きく抑制することができるので、電気素子と配線基板との異方性導電接続に有用である。
【符号の説明】
【0091】
1、21 磁性導電粒子
2、23 容器
2a、32 開口部
3 押圧手段
10 脱磁コイル
22 液体
31 ペースト
33 容器
41 非磁性ベース
42 異方性導電フィルム
43 非磁性カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性接着剤組成物中に磁性導電粒子が分散されてなる異方性導電接着剤において、該磁性導電粒子が、当該異方性導電接着剤を用いて異方性導電接続を行うときまでに脱磁処理されていることを特徴とする異方性導電接着剤。
【請求項2】
該磁性導電粒子が、絶縁性接着剤組成物中に分散される前の粉体の状態で、絶縁性接着剤組成物中に分散されたペーストの状態で、または該ペーストから形成されたフィルムの状態で脱磁処理されている請求項1記載の異方性導電接着剤。
【請求項3】
該導電粒子が、ニッケル被覆樹脂粒子またはニッケル金属粒子である請求項1又は2記載の異方性導電接着剤。
【請求項4】
ニッケル被覆樹脂粒子のニッケルが、リン元素が含有している請求項1〜3のいずれかに記載の異方性導電接着剤。
【請求項5】
ニッケル被覆樹脂粒子のニッケルが、リン元素を1〜10質量%含有している請求項4記載の異方性導電接着剤。
【請求項6】
導電粒子の平均粒子径が0.5〜30μmである請求項1〜5のいずれかに記載の異方性導電接着剤。
【請求項7】
該磁性導電粒子が、容器内に充填され、粉体の状態で脱磁処理されたものである請求項1〜6記載の異方性導電接着剤。
【請求項8】
該磁性導電粒子が、液体中に投入され、次いで、その液体を凝固させて凝固物中に仮固定され、粉体の状態で脱磁処理されたものである請求項1〜6記載の異方性導電接着剤。
【請求項9】
該磁性導電粒子が、絶縁性接着剤組成物中に分散して得たペーストの状態で脱磁処理されたものである請求項1〜6記載の異方性導電接着剤。
【請求項10】
フィルム状に成形されている請求項1〜9のいずれかに記載の異方性導電接着剤。
【請求項11】
該磁性導電粒子が、絶縁性接着剤組成物に分散され、得られた分散物をフィルム化して得たフィルムの状態で脱磁処理されたものである請求項7記載の異方性導電接着剤。
【請求項12】
磁性導電粒子の脱磁処理が、200〜2000Gの磁界強度で行われる請求項1〜11のいずれかに記載の異方性導電接着剤。
【請求項13】
絶縁性接着剤組成物中に磁性導電粒子が分散されてなる請求項1〜12のいずれかに記載の異方性導電接着剤の製造方法であって、磁性導電粒子を当該異方性導電接着剤を用いて異方性導電接続を行うときまでに脱磁処理することを特徴とする製造方法。
【請求項14】
第1の電子部品の端子と第2の電子部品の端子とが、請求項1〜13のいずれかに記載の異方性導電接着剤により異方性導電接続されていることを特徴とする接続構造体。
【請求項15】
第1の電子部品の端子と第2の電子部品の端子とが接続されてなる接続構造体の製造方法であって、第1の電子部品の端子と第2の電子部品の端子との間に、請求項1〜13のいずれかに記載の異方性導電接着剤を配し、異方性導電接着剤を加熱しながら第1の電子部品を第2の電子部品に押圧することにより、端子同士を異方性導電接続することを特徴とする接続構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−17355(P2012−17355A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153825(P2010−153825)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】