説明

異方性導電材料及び接続構造体

【課題】電極間の電気的な接続に用いられた場合に、異方性導電材料を速やかに硬化させて導通信頼性を高めることができ、更に得られる接続構造体の高温高湿下での接続信頼性を高めることができる異方性導電材料を提供する。
【解決手段】本発明に係る異方性導電材料は、熱硬化性成分と、導電性粒子5とを含む。本発明に係る異方性導電材料の硬化後の硬化物を温度85℃及び相対湿度85%で48時間放置する前の85℃での弾性率をE1とし、本発明に係る異方性導電材料の硬化後の硬化物を温度85℃及び相対湿度85%で48時間放置した後の85℃での弾性率をE2としたときに、上記E2は500MPa以上であり、上記E1と上記E2との弾性率変化を示すLog(E2/E1)は−0.65以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の導電性粒子を含む異方性導電材料に関し、例えば、フレキシブルプリント基板、ガラス基板、ガラスエポキシ基板及び半導体チップなどの様々な接続対象部材の電極間を電気的に接続するために用いることができる異方性導電材料、並びに該異方性導電材料を用いた接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
ペースト状又はフィルム状の異方性導電材料が広く知られている。該異方性導電材料では、バインダー樹脂などに複数の導電性粒子が分散されている。
【0003】
上記異方性導電材料は、各種の接続構造体を得るために、例えば、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続(FOG(Film on Glass))、半導体チップとフレキシブルプリント基板との接続(COF(Chip on Film))、半導体チップとガラス基板との接続(COG(Chip on Glass))、並びにフレキシブルプリント基板とガラスエポキシ基板との接続(FOB(Film on Board))等に使用されている。
【0004】
上記異方性導電材料により、例えば、半導体チップの電極とガラス基板の電極とを電気的に接続する際には、ガラス基板上に、導電性粒子を含む異方性導電材料を配置する。次に、半導体チップを積層して、加熱及び加圧する。これにより、導電性粒子を圧縮変形し、異方性導電材料を硬化させて、導電性粒子を介して電極間を電気的に接続して接続構造体を得る。
【0005】
上記異方性導電材料の一例として、下記の特許文献1には、エポキシ樹脂組成物と導電性粒子とを含む異方性導電ペーストが開示されている。特許文献1では、(a)異方性導電ペーストと該異方性導電ペーストと同質量の純水とを混和させて得られる水溶液のイオン伝導度が1mS/m以下であること、(b)異方性導電ペーストを厚み50μmに塗布したときの、80〜100℃で20分熱処理した後の組成物のE型粘度が80〜100℃で50〜10000Pa・sであること、(c)異方性導電ペーストの硬化物の0〜100℃での線膨張係数が10×10−5mm/mm/℃以下であること、(d)異方導電性ペーストの硬化物の熱変形温度Tgが100℃以上であること、(e)異方導電性ペーストの吸水率が2質量%以下であること、並びに(f)異方導電性ペーストの比抵抗が1×10Ω・cm以上であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−345010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記接続構造体を得るために、特許文献1に記載のような従来の異方性導電材料を用いた場合には、異方性導電材料が速やかに硬化しないことがある。このため、上記電極間の電気的な接続の際に、ガラス基板などの接続対象部材上に塗布された異方性導電材料及び該異方性導電材料に含まれている導電性粒子が、硬化前に大きく流動することがある。このため、接続されるべき上下の電極間に導電性粒子を確実に配置できずに、得られる接続構造体の導通信頼性が低くなることがある。
【0008】
さらに、特許文献1に記載のような従来の異方性導電材料を用いた場合には、得られる接続構造体の高温高湿下での接続信頼性が低くなることもある。
【0009】
近年、精密電子機器の分野では、回路の高密度化が進んでおり、電極幅及び電極間隔が極めて狭くなっている。このため、粒子径が小さい導電性粒子が用いられている。電極幅及び電極間隔が狭く、粒子径が小さい導電性粒子を含む異方性導電材料を用いた接続構造体が高温高湿下に晒された場合には、異方性導電材料の硬化物の導電性粒子を除く部分が軟化して、上下の電極間の距離が拡がりやすい。また、粒子径が小さい導電性粒子は変形し難いので、この上下の電極間の距離の拡がりに追従して、圧縮変形している導電性粒子が充分に変形せずに、導通不良が生じることがある。すなわち、電極幅及び電極間隔が狭かったり、粒子径が小さい導電性粒子を用いたりした場合には特に、接続構造体の高温高湿下での接続信頼性が低くなりやすいという問題がある。
【0010】
本発明の目的は、電極間の電気的な接続に用いられた場合に、異方性導電材料を速やかに硬化させて導通信頼性を高めることができ、更に得られる接続構造体の高温高湿下での接続信頼性を高めることができる異方性導電材料、並びに該異方性導電材料を用いた接続構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の広い局面によれば、熱硬化性成分と、導電性粒子とを含み、硬化後の硬化物を温度85℃及び相対湿度85%で48時間放置する前の85℃での弾性率をE1とし、硬化後の硬化物を温度85℃及び相対湿度85%で48時間放置した後の85℃での弾性率をE2としたときに、上記E2が500MPa以上であり、上記E1と上記E2との弾性率変化を示すLog(E2/E1)が−0.65以上である、異方性導電材料が提供される。
【0012】
本発明に係る異方性導電材料のある特定の局面では、硬化後の硬化物を温度85℃及び相対湿度85%で48時間放置する前のガラス転移温度をTg1とし、硬化後の硬化物を温度85℃及び相対湿度85%で48時間放置した後のガラス転移温度をTg2としたときに、上記Tg1と上記Tg2とのガラス転移温度の差を示す(Tg1−Tg2)が30℃以下である。
【0013】
本発明に係る異方性導電材料の他の特定の局面では、硬化後の硬化物の吸水率が4重量%以下である。
【0014】
本発明に係る異方性導電材料のさらに他の特定の局面では、上記導電性粒子の平均粒子径は、1μm以上、5μm未満である。
【0015】
本発明に係る異方性導電材料の別の特定の局面では、上記熱硬化性成分として不飽和二重結合を有する硬化性化合物と熱ラジカル発生剤とを含むか、又は光硬化性成分として不飽和二重結合を有する硬化性化合物と光ラジカル発生剤とをさらに含む。
【0016】
本発明に係る異方性導電材料のさらに別の特定の局面では、上記不飽和二重結合を有する硬化性化合物の分子量は500以上である。
【0017】
本発明に係る異方性導電材料の他の特定の局面では、上記熱硬化性成分として、不飽和二重結合と熱硬化性官能基との双方を有する硬化性化合物を含む。
【0018】
本発明に係る異方性導電材料は、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続、又は半導体チップとガラス基板との接続に用いられる異方性導電材料であることが好ましい。
【0019】
本発明に係る接続構造体は、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、該第1,第2の接続対象部材を電気的に接続している接続部とを備え、該接続部が、上述した異方性導電材料により形成されている。
【0020】
本発明に係る接続構造体では、上記第2の接続対象部材と上記第1の接続対象部材とが、フレキシブルプリント基板とガラス基板とであるか、又は半導体チップとガラス基板とであることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る異方性導電材料は、熱硬化性成分と導電性粒子とを含み、硬化後の硬化物を温度85℃及び相対湿度85%で48時間放置する前の85℃での弾性率をE1とし、硬化後の硬化物を温度85℃及び相対湿度85%で48時間放置した後の85℃での弾性率をE2としたときに、上記E2が500MPa以上であり、上記E1と上記E2との弾性率変化を示すLog(E2/E1)が−0.65以上であるので、電極間の電気的な接続に用いられた場合に、異方性導電材料を速やかに硬化させて導通信頼性を高めることができる。さらに、本発明に係る異方性導電材料を用いた接続構造体の高温高湿下での接続信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る異方性導電材料を用いた接続構造体を模式的に示す正面断面図である。
【図2】図2(a)〜(c)は、本発明の一実施形態に係る異方性導電材料を用いて接続構造体を得る各工程を説明するための正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0024】
本発明に係る異方性導電材料は、熱硬化性成分と、導電性粒子とを含む。本発明に係る異方性導電材料の硬化後の硬化物を温度85℃及び相対湿度85%で48時間放置する前の85℃での弾性率をE1とし、本発明に係る異方性導電材料の硬化後の硬化物を温度85℃及び相対湿度85%で48時間放置した後の85℃での弾性率をE2とする。放置後の弾性率である上記E2は500MPa以上であり、放置前の弾性率である上記E1と放置後の弾性率である上記E2との弾性率変化を示すLog(E2/E1)は−0.65以上である。
【0025】
本発明に係る異方性導電材料における上記構成の採用によって、本発明に係る異方性導電材料を電極間の電気的な接続に用いた場合に、異方性導電材料を速やかに硬化させて導通信頼性を高めることができる。すなわち、硬化時に、異方性導電材料及び該異方性導電材料に含まれている導電性粒子の流動を抑制できる。従って、異方性導電材料により形成された硬化物層及び導電性粒子を特定の領域に配置できる。このため、本発明に係る異方性導電材料を用いた接続構造体において、電極間の導通信頼性を高めることができる。
【0026】
さらに、本発明に係る異方性導電材料を用いた接続構造体では、高温高湿下での接続信頼性も高くなる。本発明に係る異方性導電材料の使用により、電極幅及び電極間隔が狭かったり、粒子径が小さい導電性粒子を用いたりしたとしても、高温高湿下での接続信頼性を十分に高めることができる。
【0027】
電極間の導通信頼性をより一層高め、更に高温高湿下での接続信頼性をより一層高める観点からは、放置前の弾性率である上記E1は、好ましくは1000MPa以上、より好ましくは2000MPa以上である。上記E1の上限は特に限定されない。上記E1は、6000MPa以下であることが好ましく、5000MPa以下であることがより好ましい。放置前の弾性率である上記E1と放置後の弾性率である上記E2との弾性率変化を示すLog(E2/E1)の上限は特に限定されない。Log(E2/E1)は−0.1以下であることが好ましく、−0.12以下であることがより好ましく−0.13以下であることが更に好ましい。放置前の弾性率である上記E1と放置後の弾性率である上記E2との弾性率変化を示すLog(E2/E1)は−0.65以上であればよく、−0.2以上であることが好ましく、−0.3以上であることがより好ましい。
【0028】
放置後の弾性率である上記E2は、500MPa以上であればよく、1000MPa以上であることが好ましい。上記E2の上限は特に限定されない。上記E2は、6000MPa以下であることが好ましく、3000MPa以下であることがより好ましく、2500MPa以下であることが更に好ましく、2000MPa以下であることが特に好ましい。
【0029】
放置前の弾性率である上記E1と放置後の弾性率である上記E2とを測定する装置としては、アイティー計測制御社製「粘弾性測定機DVA−200」が挙げられる。測定条件は、昇温速度5℃/min、変形率0.1%、及び10Hzである。
【0030】
電極間の導通信頼性をより一層高め、更に高温高湿下での接続信頼性をより一層高める観点からは、本発明に係る異方性導電材料の硬化後の硬化物を温度85℃及び相対湿度85%で48時間放置する前のガラス転移温度をTg1とし、本発明に係る異方性導電材料の硬化後の硬化物を温度85℃及び相対湿度85%で48時間放置した後のガラス転移温度をTg2としたときに、上記Tg1と上記Tg2とのガラス転移温度の差を示す(Tg1−Tg2)は30℃以下であることが好ましく、15℃以下であることがより好ましい。
【0031】
上記Tg1と上記Tg2とのガラス転移温度の差を示す(Tg1−Tg2)の下限は特に限定されない。(Tg1−Tg2)は5℃以上であることが好ましく、8℃以上であることがより好ましい。
【0032】
放置前のガラス転移温度である上記Tg1と放置後のガラス転移温度である上記Tg2とを測定する装置としては、アイティー計測制御社製「粘弾性測定機DVA−200」が挙げられる。測定条件は、昇温速度5℃/min、変形率0.1%、及び10Hzである。
【0033】
電極間の導通信頼性をより一層高め、更に高温高湿下での接続信頼性をより一層高める観点からは、本発明に係る異方性導電材料の硬化後の硬化物の吸水率は、4重量%以下であることが好ましく、3重量%以下であることがより好ましい。上記吸水率とは、予め重量を測定した硬化物を温度85℃及び相対湿度85%で48時間放置した後、重量増加量を求め、放置後の重量を放置前の重量で除算した値に100を乗じた値である。すなわち、吸水率は、下記式(X)より求められる。
【0034】
吸水率(重量%)=(放置後の重量増加量/放置前の重量)×100 ・・・式(X)
【0035】
上記弾性率E1,E2、上記ガラス転移温度Tg1,Tg2、及び上記吸水率を測定するための硬化後の硬化物は、異方性導電材料が光硬化性化合物を含まない場合には、異方性導電材料を170℃で10秒間加熱して硬化させた硬化物を用いて測定される。異方性導電材料が光硬化性化合物を含む場合には、異方性導電材料に光照射強度が3000mW/cmとなるように波長420nmの紫外線を1秒間照射した後、170℃で10秒間加熱して硬化させた硬化物を用いて測定される。測定する硬化物の大きさは、縦3mm×横15mm×厚み100μmである。
【0036】
上述した硬化条件は、熱硬化成分の熱硬化官能基が90%以上反応する条件でもよく、その反応率は、DSC、FT−IR等により測定することができる。
【0037】
上記異方性導電材料は、熱硬化性成分と導電性粒子とを含む。該熱硬化性成分は、熱硬化性化合物と熱硬化剤とを含有することが好ましい。上記異方性導電材料は、熱ラジカル発生剤を含むことが好ましい。
【0038】
また、上記異方性導電材料は、熱硬化性成分と導電性粒子とに加えて、光硬化性成分をさらに含むことが好ましい。この場合には、光の照射により光硬化性成分を半硬化(Bステージ化)させ、異方性導電材料の流動性を低下させた後、加熱により異方性導電材料を硬化させることができる。該光硬化性成分は、光硬化性化合物と光硬化開始剤とを含むことが好ましい。上記異方性導電材料は、光ラジカル発生剤を含むことが好ましい。上記異方性導電材料は、硬化性化合物として、熱硬化性化合物を含み、光硬化性化合物をさらに含むことが好ましい。
【0039】
上記熱硬化性化合物は、エポキシ基又はチイラン基を有する硬化性化合物を含むことが好ましく、不飽和二重結合を有する硬化性化合物を含むことも好ましく、(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物を含むことがより好ましい。上記光硬化性化合物は、不飽和二重結合を有する硬化性化合物を含むことが好ましく、(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物を含むことがより好ましい。
【0040】
また、本発明に係る異方性導電材料は、不飽和二重結合と熱硬化性官能基との双方を有する硬化性化合物を含むことが好ましい。
【0041】
以下、先ず、本発明に係る異方性導電材料に含まれている各成分、及び含まれることが好ましい各成分を詳細に説明する。
【0042】
[硬化性化合物]
本発明に係る異方性導電材料に含まれている硬化性化合物は、上記E2及び上記Log(E2/E1)が上記値を示すように適宜選択して用いられる。上記硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0043】
上記硬化性化合物としては特に限定されず、不飽和二重結合を有する硬化性化合物及び環状エーテル基を有する硬化性化合物等が挙げられる。
【0044】
また、異方性導電材料の硬化性を高め、電極間の導通信頼性をより一層高め、更に高温高湿下での接続信頼性をより一層高める観点からは、上記硬化性化合物は、不飽和二重結合を有する硬化性化合物を含むことが好ましく、(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物を含むことが好ましい。上記不飽和二重結合は、(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。上記不飽和二重結合を有する硬化性化合物としては、エポキシ基又はチイラン基を有さず、かつ不飽和二重結合を有する硬化性化合物、及びエポキシ基又はチイラン基を有し、かつ不飽和二重結合を有する硬化性化合物が挙げられる。
【0045】
上記(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物として、(メタ)アクリル酸と水酸基を有する化合物とを反応させて得られるエステル化合物、(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物とを反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート、又はイソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート等が好適に用いられる。上記「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基とメタクリロイル基とを示す。上記「(メタ)アクリル」は、アクリルとメタクリルとを示す。上記「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートとを示す。
【0046】
上記(メタ)アクリル酸と水酸基を有する化合物とを反応させて得られるエステル化合物は特に限定されない。該エステル化合物として、単官能のエステル化合物、2官能のエステル化合物及び3官能以上のエステル化合物のいずれも使用可能である。
【0047】
異方性導電材料の硬化性を高め、電極間の導通信頼性をより一層高め、更に高温高湿下での接続信頼性をより一層高める観点からは、上記不飽和二重結合を有する硬化性化合物の分子量は好ましくは500以上、より好ましくは1000以上、好ましくは20000以下である。なお、本明細書において分子量とは、上記硬化性化合物が重合体ではない場合、及び上記硬化性化合物の構造式が特定できる場合は、当該構造式から算出できる分子量を意味する。また、上記硬化性化合物が重合体である場合は、重量平均分子量を意味する。
【0048】
異方性導電材料の硬化性を高め、電極間の導通信頼性をより一層高め、更に高温高湿下での接続信頼性をより一層高める観点からは、本発明に係る異方性導電材料は、不飽和二重結合と熱硬化性官能基との双方を有する硬化性化合物を含むことが好ましい。上記熱硬化性官能基としては、エポキシ基、チイラン基及びオキセタン基等が挙げられる。上記不飽和二重結合と熱硬化性官能基との双方を有する硬化性化合物は、エポキシ基又はチイラン基を有し、かつ不飽和二重結合を有する硬化性化合物であることが好ましく、熱硬化性官能基と(メタ)アクリロイル基との双方を有する硬化性化合物であることが好ましく、エポキシ基又はチイラン基を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物であることが好ましい。
【0049】
上記エポキシ基又はチイラン基を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物は、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有する硬化性化合物の一部のエポキシ基又は一部のチイラン基を、(メタ)アクリロイル基に変換することにより得られた硬化性化合物であることが好ましい。このような硬化性化合物は、部分(メタ)アクリレート化エポキシ化合物又は部分(メタ)アクリレート化エピスルフィド化合物である。
【0050】
上記硬化性化合物は、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有する化合物と、(メタ)アクリル酸との反応物であることが好ましい。この反応物は、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有する化合物と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応することにより得られる。エポキシ基又はチイラン基の20%以上が(メタ)アクリロイル基に変換(転化率)されていることが好ましい。該転化率は、より好ましくは30%以上、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下である。エポキシ基又はチイラン基の40%以上、60%以下が(メタ)アクリロイル基に変換されていることが最も好ましい。
【0051】
上記部分(メタ)アクリレート化エポキシ化合物としては、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、カルボン酸無水物変性エポキシ(メタ)アクリレート、及びフェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0052】
上記硬化性化合物として、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有するフェノキシ樹脂の一部のエポキシ基又は一部のチイラン基を(メタ)アクリロイル基に変換した変性フェノキシ樹脂を用いてもよい。すなわち、エポキシ基又はチイラン基と(メタ)アクリロイル基とを有する変性フェノキシ樹脂を用いてもよい。
【0053】
上記「フェノキシ樹脂」は、一般的には、例えばエピハロヒドリンと2価のフェノール化合物とを反応させて得られる樹脂、又は2価のエポキシ化合物と2価のフェノール化合物とを反応させて得られる樹脂である。
【0054】
また、上記硬化性化合物は、架橋性化合物であってもよく、非架橋性化合物であってもよい。
【0055】
上記架橋性化合物の具体例としては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、グリセリンメタクリレートアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ビニル、ジビニルベンゼン、ポリエステル(メタ)アクリレート、及びウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0056】
上記非架橋性化合物の具体例としては、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート及びテトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0057】
さらに、上記硬化性化合物としては、オキセタン化合物、エポキシ化合物、エピスルフィド化合物、(メタ)アクリル化合物、フェノール化合物、アミノ化合物、不飽和ポリエステル化合物、ポリウレタン化合物、シリコーン化合物及びポリイミド化合物等が挙げられる。
【0058】
上記異方性導電材料の硬化を容易に制御したり、接続構造体における導通信頼性をより一層高めたりする観点からは、上記硬化性化合物は、エポキシ基又はチイラン基を有する硬化性化合物を含むことが好ましく、チイラン基を有する硬化性化合物を含むことがより好ましい。エポキシ基を有する硬化性化合物は、エポキシ化合物である。チイラン基を有する硬化性化合物は、エピスルフィド化合物である。異方性導電材料の硬化性を高める観点からは、上記硬化性化合物100重量%中、上記エポキシ基又はチイラン基を有する化合物の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、100重量%以下である。上記硬化性化合物の全量が上記エポキシ基又はチイラン基を有する硬化性化合物であってもよい。
【0059】
また、本発明に係る異方性導電材料は、エポキシ基又はチイラン基を有する硬化性化合物と、不飽和二重結合を有する硬化性化合物とを含むことが好ましい。
【0060】
上記エポキシ基又はチイラン基を有する硬化性化合物は、芳香族環を有することが好ましい。上記芳香族環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、テトラセン環、クリセン環、トリフェニレン環、テトラフェン環、ピレン環、ペンタセン環、ピセン環及びペリレン環等が挙げられる。なかでも、上記芳香族環は、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環であることが好ましく、ベンゼン環又はナフタレン環であることがより好ましい。また、ナフタレン環は、平面構造を有するためにより一層速やかに硬化させることができるので好ましい。
【0061】
熱硬化性化合物と光硬化性化合物とを併用する場合には、光硬化性化合物と熱硬化性化合物との配合比は、光硬化性化合物と熱硬化性化合物との種類に応じて適宜調整される。上記異方性導電材料は、光硬化性化合物と熱硬化性化合物とを重量比で、1:99〜90:10で含むことが好ましく、5:95〜60:40で含むことがより好ましく、10:90〜40:60で含むことが更に好ましい。
【0062】
(熱硬化剤)
本発明に係る異方性導電材料は、上記熱硬化成分として熱硬化剤を含むことが好ましい。
【0063】
上記熱硬化剤は特に限定されない。上記熱硬化剤として、従来公知の熱硬化剤を用いることができる。上記熱硬化剤としては、イミダゾール硬化剤、アミン硬化剤、フェノール硬化剤、ポリチオール硬化剤、酸無水物、熱カチオン硬化剤及び熱ラジカル発生剤等が挙げられる。上記熱硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0064】
異方性導電材料を低温でより一層速やかに硬化させる観点からは、上記異方性導電材料は、イミダゾール硬化剤、ポリチオール硬化剤、アミン硬化剤又は熱カチオン硬化剤を含むことが好ましい。
【0065】
また、異方性導電材料の保存安定性を高めることができるので、潜在性の硬化剤が好ましい。該潜在性の硬化剤は、潜在性イミダゾール硬化剤、潜在性ポリチオール硬化剤又は潜在性アミン硬化剤であることが好ましい。上記熱硬化剤は、ポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂等の高分子物質で被覆されていてもよい。
【0066】
上記イミダゾール硬化剤としては、特に限定されず、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン及び2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。
【0067】
上記ポリチオール硬化剤としては、特に限定されず、トリメチロールプロパントリス−3−メルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス−3−メルカプトプロピオネート及びジペンタエリスリトールヘキサ−3−メルカプトプロピオネート等が挙げられる。
【0068】
上記アミン硬化剤としては、特に限定されず、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラスピロ[5.5]ウンデカン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、メタフェニレンジアミン及びジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0069】
上記熱カチオン硬化剤として、ヨードニウム塩やスルフォニウム塩が好適に用いられる。例えば、上記熱カチオン硬化剤の市販品としては、三新化学社製のサンエイドSI−45L、SI−60L、SI−80L、SI−100L、SI−110L、SI−150Lや、ADEKA社製のアデカオプトマーSP−150、SP−170等が挙げられる。
【0070】
好ましい熱カチオン硬化剤のアニオン部分としては、PF、BF、及びB(Cが挙げられる。
【0071】
電極間の導通信頼性及び接続構造体の高温高湿下での接続信頼性をより一層高める観点からは、上記異方性導電材料は、熱ラジカル発生剤を含むことが好ましい。上記熱ラジカル発生剤は特に限定されない。上記熱ラジカル発生剤として、従来公知の熱ラジカル発生剤を用いることができる。上記熱ラジカル発生剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。ここで、「熱ラジカル発生剤」とは、加熱によってラジカル種を生成する化合物を意味する。
【0072】
上記熱ラジカル発生剤としては、特に限定されず、アゾ化合物及び過酸化物等が挙げられる。上記過酸化物としては、ジアシルパーオキサイド化合物、パーオキシエステル化合物、ハイドロパーオキサイド化合物、パーオキシジカーボネート化合物、パーオキシケタール化合物、ジアルキルパーオキサイド化合物、及びケトンパーオキサイド化合物等が挙げられる。
【0073】
上記アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジメチル−1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2−tert−ブチルアゾ−2−シアノプロパン、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)二水和物、及び2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等が挙げられる。
【0074】
上記ジアシルパーオキサイド化合物としては、過酸化ベンゾイル、ジイソブチリルパーオキサイド、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、及びDisuccinic acid peroxide等が挙げられる。上記パーオキシエステル化合物としては、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、tert−ヘキシルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5―ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、tert−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシイソフタレート、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシオクトエート及びtert−ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。上記ハイドロパーオキサイド化合物としては、キュメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。上記パーオキシジカーボネート化合物としては、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、及びジ(2−エチルヘキシル)パーオキシカーボネート等が挙げられる。また、上記過酸化物の他の例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、カリウムパーサルフェイト、及び1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0075】
上記熱ラジカル発生剤の10時間半減期を得るための分解温度は、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下である。上記熱ラジカル発生剤の10時間半減期を得るための分解温度が、30℃未満であると、異方性導電材料の貯蔵安定性が低下する傾向があり、80℃を超えると、異方性導電材料を充分に熱硬化させることが困難になる傾向がある。
【0076】
上記熱硬化剤の含有量は特に限定されない。上記硬化性化合物中の上記熱硬化性化合物100重量部に対して、上記熱硬化剤の含有量は、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.05重量部以上、更に好ましくは5重量部以上、特に好ましくは10重量部以上、好ましくは40重量部以下、より好ましくは30重量部以下、更に好ましくは20重量部以下である。上記熱硬化剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、異方性導電材料を充分に熱硬化させることができる。
【0077】
上記熱硬化剤が熱ラジカル発生剤を含む場合に、上記硬化性化合物中の上記熱硬化性化合物100重量部に対して、上記熱ラジカル発生剤の含有量は、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.05重量部以上、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。上記熱ラジカル発生剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、異方性導電材料を充分に熱硬化させることができる。
【0078】
(光硬化開始剤)
上記光硬化開始剤は特に限定されない。上記光硬化開始剤として、従来公知の光硬化開始剤を用いることができる。電極間の導通信頼性及び接続構造体の高温高湿下での接続信頼性をより一層高める観点からは、上記異方性導電材料は、光ラジカル発生剤を含むことが好ましい。上記光硬化開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0079】
上記光硬化開始剤としては、特に限定されず、アセトフェノン光硬化開始剤(アセトフェノン光ラジカル発生剤)、ベンゾフェノン光硬化開始剤(ベンゾフェノン光ラジカル発生剤)、チオキサントン、ケタール光硬化開始剤(ケタール光ラジカル発生剤)、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド及びアシルホスフォナート等が挙げられる。
【0080】
上記アセトフェノン光硬化開始剤の具体例としては、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、及び2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン等が挙げられる。上記ケタール光硬化開始剤の具体例としては、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
【0081】
上記光硬化開始剤の含有量は特に限定されない。上記硬化性化合物中の上記光硬化性化合物100重量部に対して、上記光硬化開始剤の含有量(光硬化開始剤が光ラジカル発生剤である場合には光ラジカル発生剤の含有量)は、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上、好ましくは2重量部以下、より好ましくは1重量部以下である。上記光硬化開始剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、異方性導電材料を適度に光硬化させることができる。異方性導電材料に光を照射し、Bステージ化することにより、異方性導電材料の流動を抑制できる。
【0082】
(導電性粒子)
上記異方性導電材料に含まれている導電性粒子は、第1,第2の接続対象部材の電極間を電気的に接続する。上記導電性粒子は、導電性を有する粒子であれば特に限定されない。導電性粒子の導電層の表面が絶縁層により被覆されていてもよい。この場合には、接続対象部材の接続時に、導電層と電極との間の絶縁層が排除される。上記導電性粒子としては、例えば、有機粒子、金属粒子を除く無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子もしくは金属粒子等の表面を金属層で被覆した導電性粒子、又は実質的に金属のみで構成される金属粒子等が挙げられる。上記金属層は特に限定されない。上記金属層としては、金層、銀層、銅層、ニッケル層、パラジウム層又は錫を含有する金属層等が挙げられる。
【0083】
電極と導電性粒子との接触面積を大きくし、電極間の導通信頼性をより一層高める観点からは、上記導電性粒子は、樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面上に配置された導電層とを有することが好ましい。電極間の導通信頼性をより一層高める観点からは、上記導電性粒子は、少なくとも外側の導電性の表面が低融点金属層である導電性粒子であることが好ましい。上記導電性粒子は、樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面上に配置された導電層とを有し、該導電層の少なくとも外側の表面が、低融点金属層であることがより好ましい。
【0084】
上記低融点金属層は、低融点金属を含む層である。該低融点金属とは、融点が450℃以下の金属を示す。低融点金属の融点は好ましくは300℃以下、より好ましくは160℃以下である。また、上記低融点金属層は錫を含むことが好ましい。上記低融点金属層に含まれる金属100重量%中、錫の含有量は好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上、更に好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。上記低融点金属層における錫の含有量が上記下限以上であると、上記低融点金属層と電極との接続信頼性がより一層高くなる。なお、上記錫の含有量は、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置(堀場製作所社製「ICP−AES」)、又は蛍光X線分析装置(島津製作所社製「EDX−800HS」)等を用いて測定可能である。
【0085】
導電層の外側の表面が低融点金属層である場合には、低融点金属層が溶融して電極に接合し、低融点金属層が電極間を導通させる。例えば、低融点金属層と電極とが点接触ではなく面接触しやすいため、接続抵抗が低くなる。また、少なくとも外側の表面が低融点金属層である導電性粒子の使用により、低融点金属層と電極との接合強度が高くなる結果、低融点金属層と電極との剥離がより一層生じ難くなり、導通信頼性が効果的に高くなる。
【0086】
上記低融点金属層を構成する低融点金属は特に限定されない。該低融点金属は、錫、又は錫を含む合金であることが好ましい。該合金は、錫−銀合金、錫−銅合金、錫−銀−銅合金、錫−ビスマス合金、錫−亜鉛合金、錫−インジウム合金等が挙げられる。なかでも、電極に対する濡れ性に優れることから、上記低融点金属は、錫、錫−銀合金、錫−銀−銅合金、錫−ビスマス合金、錫−インジウム合金であることが好ましい。錫−ビスマス合金、錫−インジウム合金であることがより好ましい。
【0087】
また、上記低融点金属層は、はんだ層であることが好ましい。上記はんだ層を構成する材料は特に限定されないが、JIS Z3001:溶接用語に基づき、液相線が450℃以下である溶加材であることが好ましい。上記はんだ層の組成としては、例えば亜鉛、金、鉛、銅、錫、ビスマス、インジウムなどを含む金属組成が挙げられる。なかでも低融点で鉛フリーである錫−インジウム系(117℃共晶)、又は錫−ビスマス系(139℃共晶)が好ましい。すなわち、はんだ層は、鉛を含まないことが好ましく、錫とインジウムとを含むはんだ層、又は錫とビスマスとを含むはんだ層であることが好ましい。
【0088】
上記低融点金属層と電極との接合強度をより一層高めるために、上記低融点金属層は、ニッケル、銅、アンチモン、アルミニウム、亜鉛、鉄、金、チタン、リン、ゲルマニウム、テルル、コバルト、ビスマス、マンガン、クロム、モリブデン、パラジウム等の金属を含んでいてもよい。低融点金属と電極との接合強度をさらに一層高める観点からは、上記低融点金属は、ニッケル、銅、アンチモン、アルミニウム又は亜鉛を含むことが好ましい。低融点金属層と電極との接合強度をより一層高める観点からは、接合強度を高めるためのこれらの金属の含有量は、低融点金属層100重量%中、好ましくは0.0001重量%以上、好ましくは1重量%以下である。
【0089】
上記導電性粒子は、樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面上に配置された導電層とを有し、該導電層の外側の表面が低融点金属層(はんだ層など)であり、上記樹脂粒子と上記低融点金属層との間に、上記低融点金属層とは別に第2の導電層を有することが好ましい。この場合に、上記低融点金属層は上記導電層全体の一部であり、上記第2の導電層は上記導電層全体の一部である。
【0090】
上記低融点金属層とは別の上記第2の導電層は、金属を含むことが好ましい。該第2の導電層を構成する金属は、特に限定されない。該金属としては、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム、亜鉛、鉛、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム及びカドミウム、並びにこれらの合金等が挙げられる。また、上記金属として、錫ドープ酸化インジウム(ITO)を用いてもよい。上記金属は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0091】
上記第2の導電層は、ニッケル層、パラジウム層、銅層又は金層であることが好ましく、ニッケル層又は金層であることがより好ましく、銅層であることが更に好ましい。導電性粒子は、ニッケル層、パラジウム層、銅層又は金層を有することが好ましく、ニッケル層又は金層を有することがより好ましく、銅層を有することが更に好ましい。これらの好ましい導電層を有する導電性粒子を電極間の接続に用いることにより、電極間の接続抵抗がより一層低くなる。また、これらの好ましい導電層の表面には、低融点金属層をより一層容易に形成できる。なお、上記第2の導電層は、はんだ層などの低融点金属層であってもよい。導電性粒子は、複数層の低融点金属層を有していてもよい。
【0092】
上記導電性粒子の平均粒子径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、好ましくは100μm以下、より好ましくは20μm以下、より一層好ましくは15μm以下、更に好ましくは10μm以下、更に一層好ましくは5μm未満、特に好ましくは4μm以下である。熱履歴を受けた場合の接続構造体の接続信頼性をより一層高める観点からは、導電性粒子の平均粒子径は、1μm以上、10μm以下であることが特に好ましく、1μm以上、4μm以下であることが最も好ましい。
【0093】
導電性粒子の平均粒子径は、1μm以上、5μm未満であることが最も好ましい。本発明に係る異方性導電材料の使用により、導電性粒子の平均粒子径が5μm未満であって、導電性粒子が小さくても、接続構造体の高温高湿下での接続信頼性を十分に高めることができる。
【0094】
上記導電性粒子の「平均粒子径」は、数平均粒子径を示す。導電性粒子の平均粒子径は、任意の導電性粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求められる。
【0095】
上記樹脂粒子は、実装する基板の電極サイズ又はランド径によって使い分けることができる。
【0096】
上下の電極間をより一層確実に接続し、かつ横方向に隣接する電極間の短絡をより一層抑制する観点からは、導電性粒子の平均粒子径Cの樹脂粒子の平均粒子径Aに対する比(C/A)は、1.0を超え、好ましくは3.0以下である。また、上記樹脂粒子と上記はんだ層との間に上記第2の導電層がある場合に、はんだ層を除く導電性粒子部分の平均粒子径Bに対する樹脂粒子の平均粒子径Aに対する比(B/A)は、1.0を超え、好ましくは2.0以下である。さらに、上記樹脂粒子と上記はんだ層との間に上記第2の導電層がある場合に、はんだ層を含む導電性粒子の平均粒子径Cのはんだ層を除く導電性粒子部分の平均粒子径Bに対する比(C/B)は、1.0を超え、好ましくは2.0以下である。上記比(B/A)が上記範囲内であったり、上記比(C/B)が上記範囲内であったりすると、上下の電極間をより一層確実に接続し、かつ横方向に隣接する電極間の短絡をより一層抑制できる。
【0097】
上記導電性粒子の圧縮弾性率は、好ましくは1GPa以上、より好ましくは2GPa以上、好ましくは7GPa以下、より好ましくは5GPa以下である。
【0098】
上記導電性粒子の圧縮変形回復率は、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、好ましくは60%以下、より好ましくは50%以下である。
【0099】
上記導電性粒子の23℃での圧縮弾性率(10%K値)は、以下のようにして測定される。
【0100】
微小圧縮試験機を用いて、直径50μmのダイアモンド製円柱の平滑圧子端面で、圧縮速度2.6mN/秒、及び最大試験荷重10gの条件下で導電性粒子を圧縮する。このときの荷重値(N)及び圧縮変位(mm)を測定する。得られた測定値から、上記圧縮弾性率を下記式により求めることができる。上記微小圧縮試験機として、例えば、フィッシャー社製「フィッシャースコープH−100」等が用いられる。
【0101】
10%K値(N/mm)=(3/21/2)・F・S−3/2・R−1/2
F:導電性粒子が10%圧縮変形したときの荷重値(N)
S:導電性粒子が10%圧縮変形したときの圧縮変位(mm)
R:導電性粒子の半径(mm)
【0102】
上記圧縮弾性率は、導電性粒子の硬さを普遍的かつ定量的に表す。上記圧縮弾性率の使用により、導電性粒子の硬さを定量的かつ一義的に表すことができる。
【0103】
上記圧縮回復率は、以下のようにして測定できる。
【0104】
試料台上に導電性粒子を散布する。散布された導電性粒子1個について、微小圧縮試験機を用いて、導電性粒子の中心方向に、反転荷重値(5.00mN)まで負荷を与える。その後、原点用荷重値(0.40mN)まで除荷を行う。この間の荷重−圧縮変位を測定し、下記式から圧縮回復率を求めることができる。なお、負荷速度は0.33mN/秒とする。上記微小圧縮試験機として、例えば、フィッシャー社製「フィッシャースコープH−100」等が用いられる。
【0105】
圧縮回復率(%)=[(L1−L2)/L1]×100
L1:負荷を与えるときの原点用荷重値から反転荷重値に至るまでのまでの圧縮変位
L2:負荷を解放するときの反転荷重値から原点用荷重値に至るまでの圧縮変位
【0106】
上記導電性粒子の含有量は特に限定されない。異方性導電材料100重量%中、上記導電性粒子の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、更に好ましくは1重量%以上、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下、更に好ましくは19重量%以下である。上記導電性粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、接続されるべき上下の電極間に導電性粒子を容易に配置できる。さらに、接続されてはならない隣接する電極間が複数の導電性粒子を介して電気的に接続され難くなる。すなわち、隣り合う電極間の短絡をより一層防止できる。
【0107】
(他の成分)
上記異方性導電材料は、フィラーを含むことが好ましい。フィラーの使用により、異方性導電材料の硬化物の熱線膨張率を抑制できる。上記フィラーの具体例としては、シリカ、窒化アルミニウム、アルミナ、ガラス、窒化ボロン、窒化ケイ素、シリコーン、カーボン、グラファイト、グラフェン及びタルク等が挙げられる。フィラーは1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。熱伝導率が高いフィラーを用いると、本硬化時間が短くなる。
【0108】
上記異方性導電材料は、硬化促進剤をさらに含むことが好ましい。硬化促進剤の使用により、硬化速度がより一層速くなる。該硬化促進剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0109】
上記硬化促進剤の具体例としては、イミダゾール硬化促進剤及びアミン硬化促進剤等が挙げられる。なかでも、イミダゾール硬化促進剤が好ましい。なお、イミダゾール硬化促進剤又はアミン硬化促進剤は、イミダゾール硬化剤又はアミン硬化剤としても用いることができる。
【0110】
上記異方性導電材料は、溶剤を含んでいてもよい。該溶剤の使用により、異方性導電材料の粘度を容易に調整できる。上記溶剤としては、例えば、酢酸エチル、メチルセロソルブ、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、テトラヒドロフラン及びジエチルエーテル等が挙げられる。
【0111】
(異方性導電材料の詳細及び用途)
本発明に係る異方性導電材料は、ペースト状又はフィルム状の異方性導電材料であり、ペースト状の異方性導電材料であることが好ましい。ペースト状の異方性導電材料は、異方性導電ペーストである。フィルム状の異方性導電材料は、異方性導電フィルムである。異方性導電材料が異方性導電フィルムである場合、該導電性粒子を含む異方性導電フィルムに、導電性粒子を含まないフィルムが積層されてもよい。
【0112】
本発明に係る異方性導電材料は、異方性導電ペーストであって、ペースト状の状態で接続対象部材上に塗布される異方性導電ペーストであることが好ましい。
【0113】
上記異方性導電ペーストの25℃での粘度は、好ましくは20Pa・s以上、好ましくは700Pa・s以下、より好ましくは100Pa・s以上、好ましくは300Pa・s以下である。上記粘度が上記下限以上であると、異方性導電ペースト中での導電性粒子の沈降を抑制できる。上記粘度が上記上限以下であると、導電性粒子の分散性がより一層高くなる。塗布前の上記異方性導電ペーストの上記粘度が上記範囲内であれば、第1の接続対象部材上に異方性導電ペーストを塗布した後に、硬化前の異方性導電ペーストの流動をより一層抑制できる。
【0114】
本発明に係る異方性導電材料は、様々な接続対象部材を接着するために使用できる。上記異方性導電材料は、第1,第2の接続対象部材が電気的に接続されている接続構造体を得るために好適に用いられる。
【0115】
図1に、本発明の一実施形態に係る異方性導電材料を用いた接続構造体の一例を模式的に断面図で示す。
【0116】
図1に示す接続構造体1は、第1の接続対象部材2と、第2の接続対象部材4と、第1,第2の接続対象部材2,4を電気的に接続している接続部3とを備える。接続部3は、硬化物層であり、導電性粒子5を含む異方性導電材料を硬化させることにより形成されている。
【0117】
第1の接続対象部材2は上面2a(表面)に、複数の第1の電極2bを有する。第2の接続対象部材4は下面4a(表面)に、複数の第2の電極4bを有する。第1の電極2bと第2の電極4bとが、1つ又は複数の導電性粒子5により電気的に接続されている。従って、第1,第2の接続対象部材2,4が導電性粒子5により電気的に接続されている。
【0118】
第1,第2の電極2b,4b間の接続は、通常、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材4とを異方性導電材料を介して第1,第2の電極2b,4b同士が対向するように重ね合わせた後に、異方性導電材料を硬化させる際に、加圧することにより行われる。加圧により、一般に導電性粒子5は圧縮される。
【0119】
第1,第2の接続対象部材は、特に限定されない。第1,第2の接続対象部材としては、具体的には、半導体チップ、コンデンサ及びダイオード等の電子部品、並びにプリント基板、フレキシブルプリント基板及びガラス基板等の回路基板などの電子部品等が挙げられる。上記異方性導電材料は、電子部品の接続に用いられる異方性導電材料であることが好ましい。
【0120】
図1に示す接続構造体1は、例えば、図2(a)〜(c)に示す状態を経て、以下のようにして得ることができる。
【0121】
図2(a)に示すように、第1の電極2bを上面2aに有する第1の接続対象部材2を用意する。次に、第1の接続対象部材2の上面2aに、複数の導電性粒子5を含む異方性導電材料を配置し、第1の接続対象部材2の上面2aに異方性導電材料層3Aを形成する。このとき、第1の電極2b上に、1つ又は複数の導電性粒子5が配置されていることが好ましい。
【0122】
次に、異方性導電材料層3Aに光を照射することにより、異方性導電材料層3Aの硬化を進行させる。図2(a)〜(c)では、異方性導電材料層3Aに光を照射して、異方性導電材料層3Aの硬化を進行させて、異方性導電材料層3AをBステージ化している。すなわち、図2(b)に示すように、第1の接続対象部材2の上面2aに、Bステージ化されたBステージ化された異方性導電材料層3Bを形成している。Bステージ化により、第1の接続対象部材2とBステージ化された異方性導電材料層3Bとが仮接着される。Bステージ化された異方性導電材料層3Bは、半硬化状態にある半硬化物である。Bステージ化された異方性導電材料層3Bは、完全に硬化しておらず、熱硬化がさらに進行され得る。但し、異方性導電材料層3AをBステージ化せずに、異方性導電材料層3Aを加熱して、異方性導電材料層3Aを一度に硬化させてもよい。
【0123】
異方性導電材料層3Aの硬化を効果的に進行させるために、光を照射する際の光照射強度は0.1〜6000mW/cmであること好ましく、100〜4000mW/cmであることがより好ましく、1000〜3000mW/cmであることが更に好ましい。積算光量は、0.1〜10J/cmであることが好ましい。光を照射する際に用いる光源は特に限定されない。該光源としては、例えば、波長420nm以下に充分な発光分布を有する光源等が挙げられる。また、光源の具体例としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ及びLEDランプ等が挙げられる。
【0124】
次に、図2(c)に示すように、Bステージ化された異方性導電材料層3Bの上面3aに、第2の接続対象部材4を積層する。第1の接続対象部材2の上面2aの第1の電極2bと、第2の接続対象部材4の下面4aの第2の電極4bとが対向するように、第2の接続対象部材4を積層する。
【0125】
さらに、第2の接続対象部材4の積層の際に、Bステージ化された異方性導電材料層3Bを加熱することにより、Bステージ化された異方性導電材料層3Bをさらに硬化させ、接続部3を形成する。ただし、第2の接続対象部材4の積層の前に、Bステージ化された異方性導電材料層3Bを加熱してもよい。さらに、第2の接続対象部材4の積層の後にBステージ化された異方性導電材料層3Bを加熱してもよい。
【0126】
加熱により異方性導電材料層3A又はBステージ化された異方性導電材料層3Bを硬化させる際の加熱温度は、好ましくは140℃以上、より好ましくは160℃以上、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下である。
【0127】
Bステージ化された異方性導電材料層3Bを硬化させる際に、加圧することが好ましい。加圧によって第1の電極2bと第2の電極4bとで導電性粒子5を圧縮することにより、第1,第2の電極2b,4bと導電性粒子5との接触面積を大きくすることができる。このため、導通信頼性を高めることができる。さらに、導電性粒子5を圧縮することで、接続構造体1が高温高湿下に晒された場合に、第1,第2の電極2b,4b間の距離が拡がっても、この拡がりに追従するように導電性粒子5の粒子径が大きくなる。
【0128】
Bステージ化された異方性導電材料層3Bを硬化させることにより、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材4とが、接続部3を介して接続される。また、第1の電極2bと第2の電極4bとが、導電性粒子5を介して電気的に接続される。このようにして、異方性導電材料を用いた図1に示す接続構造体1を得ることができる。ここでは、光硬化と熱硬化とが併用されているため、異方性導電材料を短時間で硬化させることができる。
【0129】
本発明に係る異方性導電材料は、例えば、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続(FOG(Film on Glass))、半導体チップとフレキシブルプリント基板との接続(COF(Chip on Film))、半導体チップとガラス基板との接続(COG(Chip on Glass))、又はフレキシブルプリント基板とガラスエポキシ基板との接続(FOB(Film on Board))等に使用できる。なかでも、上記異方性導電材料は、FOG用途又はCOG用途に好適であり、COG用途により好適である。本発明に係る異方性導電材料は、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続、又は半導体チップとガラス基板との接続に用いられる異方性導電材料であることが好ましく、半導体チップとガラス基板との接続に用いられる異方性導電材料であることがより好ましい。
【0130】
本発明に係る接続構造体では、上記第2の接続対象部材と上記第1の接続対象部材とが、フレキシブルプリント基板とガラス基板とであるか、又は半導体チップとガラス基板とであることが好ましく、半導体チップとガラス基板とであることがより好ましい。上記第2の接続対象部材と上記第1の接続対象部材とが、フレキシブルプリント基板とガラス基板とであってもよい。
【0131】
FOG用途では、L/Sが比較的広いため、導電性粒子の粒径も大きく濃度も低いので、接続時の圧力が低く、充分な圧痕や樹脂充填性が得られず、電極間の導通信頼性、及び硬化物層における空隙(ボイド)の発生が問題となることが多い。これに対して、本発明に係る異方性導電材料の使用により、FOG用途において、電極間の導通信頼性を効果的に高めることができ、硬化物層における空隙(ボイド)の発生を効果的に抑制できる。
【0132】
COG用途では、L/Sが比較的狭ピッチなことから、異方導電性材料を加熱したときの流動性が不足すると、電極ライン間に異方導電性材料が十分に充填されないため、電極間の導通信頼性、及び硬化物層におけるボイドの発生が問題となることが多い。これに対して、本発明に係る異方性導電材料の使用により、COG用途において、電極間の導通信頼性を効果的に高めることができ、硬化物層におけるボイドの発生を効果的に抑制できる。
【0133】
以下、本発明について、実施例および比較例を挙げて具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0134】
実施例及び比較例では、以下の材料を用いた。
【0135】
(硬化性化合物)
EP3300(可撓性エポキシ樹脂、熱硬化性化合物、ADEKA社製)
EX−201エピ(エピスルフィド樹脂、熱硬化性化合物、下記式(1B)で表される構造を有するエピスルフィド化合物1B)
【0136】
【化1】

【0137】
(不飽和二重結合を有する化合物(硬化性化合物))
EBECRYL3702(脂肪酸変性エポキシアクリレート、不飽和二重結合を有する化合物、分子量500、ダイセル・サイテック社製)
EBECRYL3708(カプロラクトン変性エポキシアクリレート、不飽和二重結合を有する化合物、分子量1500、ダイセル・サイテック社製)
DPCA−120(C5系6官能アクリレート、不飽和二重結合を有する化合物、分子量1950、日本化薬社製)
4HBAGE(4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、不飽和二重結合を有する化合物、分子量200、日本化成社製)
【0138】
(フィラー)
ジェニオパール(シリコーン/アクリルのコア/シェル粒子、旭化成社製)
メチル処理シリカ(平均粒径0.7mm、トクヤマ社製)
【0139】
(熱硬化剤)
TEP−2E4MZ(包摂イミダゾール、日本曹達社製)
フジキュア7000(イミダゾール及びその誘導体、T&K TOKA社製)
【0140】
(シランカップリング剤)
KBE−403(エポキシ基含有シランカップリング剤、信越化学工業社製)
【0141】
(熱ラジカル発生剤)
V−65(2,2’−Azobis(2.4−dimethylvaleronitrile、和光純薬工業社製)
【0142】
(光ラジカル発生剤)
イルガキュア891(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、BASF社製)
導電性粒子(平均粒子径3μm、金メッキ樹脂コア粒子、積水化学工業社製)
【0143】
(実施例1〜3及び比較例1)
異方性導電材料の調製:
下記の表1に示す成分を下記の表1に示す配合量(重量部)で配合して、異方性導電ペーストAを得た。
【0144】
接続構造体(FOG)の作製:
L/Sが17μm/17μm、長さ1mmのアルミニウム電極パターンが上面に形成されたガラス基板(第1の接続対象部材)を用意した。また、L/Sが17μm/17μm、長さ2mmの金メッキされたCu電極パターンが下面に形成されたフレキシブルプリント基板(第2の接続対象部材)を用意した。
【0145】
上記ガラス基板上に、作製直後の異方性導電ペーストAを幅1.5mm、厚さ40μmとなるようにディスペンサーを用いて塗工し、異方性導電ペースト層を形成した。次に、異方性導電ペースト層上に上記フレキシブルプリント基板を、電極同士が対向するように積層した。その後、大橋製作所社製BD−02を用い、異方性導電ペースト層の温度が170℃(本圧着温度)となるように加熱圧着ヘッドの温度を調整しながら、フレキシブルプリント基板の上面に加圧圧着ヘッドを載せ、1MPaの圧力をかけて170℃で10秒間異方性導電ペースト層を硬化させ、接続構造体Aを得た。
【0146】
(実施例4)
異方性導電材料の調製:
下記の表1に示す成分を下記の表1に示す配合量(重量部)で配合して、異方性導電ペーストAを得た。
【0147】
接続構造体(FOG)の作製:
実施例1〜3及び比較例1と同様のガラス基板(第1の接続対象部材)とフレキシブルプリント基板(第2の接続対象部材)とを用意した。
【0148】
上記ガラス基板上に、作製直後の異方性導電ペーストAを厚さ40μmとなるようにディスペンサーを用いて塗工し、異方性導電ペースト層を形成した。次に、異方性導電ペースト層上に上記フレキシブルプリント基板を、電極同士が対向するように積層した。420nmの紫外線を光照射強度が3000mW/cmとなるように1秒間照射し、光重合によって異方性導電ペースト層を半硬化させ、Bステージ化した。その後、大橋製作所社製BD−02を用い、異方性導電ペースト層の温度が170℃(本圧着温度)となるように加熱圧着ヘッドの温度を調整しながら、フレキシブルプリント基板の上面に加圧圧着ヘッドを載せ、1MPaの圧力をかけて170℃で10秒間異方性導電ペースト層を硬化させ、接続構造体Aを得た。
【0149】
(実施例5〜8及び比較例2)
接続構造体(COG)の作製:
実施例1〜4及び比較例1で得られた異方性導電ペーストAを用意した。
【0150】
ピッチ30μm、電極サイズ20μm×100μm、電極間距離10μmのAl−Si電極(厚み500nm)が形成されたガラス基板(第1の接続対象部材)を用意した。また、ピッチ30μm、電極サイズ20μm×100μm、電極間距離10μmのAu電極(高さ12μm)がチップ外周部に726個形成されたSiチップ(サイズ 15,1mm×1.6mm×0.3mm)(第2の接続対象部材)を用意した。
【0151】
実施例5では、実施例1で得られた異方性導電材料Aを用いた。第1,第2の接続対象部材をガラス基板と半導体チップとに変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例5の接続構造体Aを得た。
【0152】
実施例6では、実施例2で得られた異方性導電材料Aを用いた。第1,第2の接続対象部材をガラスエポキシ基板と半導体チップとに変更したこと以外は実施例2と同様にして、実施例6の接続構造体Aを得た。
【0153】
実施例7では、実施例3で得られた異方性導電材料Aを用いた。第1,第2の接続対象部材をガラスエポキシ基板と半導体チップとに変更したこと以外は実施例3と同様にして、実施例7の接続構造体Aを得た。
【0154】
実施例8では、実施例4で得られた異方性導電材料Aを用いた。第1,第2の接続対象部材をガラスエポキシ基板と半導体チップとに変更したこと以外は実施例4と同様にして、実施例8の接続構造体Aを得た。
【0155】
比較例2では、比較例1で得られた異方性導電材料Aを用いた。第1,第2の接続対象部材をガラスエポキシ基板と半導体チップとに変更したこと以外は比較例1と同様にして、比較例2の接続構造体Aを得た。
【0156】
(実施例9及び10)
下記の表1に示す成分を下記の表1に示す配合量(重量部)で配合して、異方性導電ペーストAを得た。得られた異方性導電ペーストAを用いたこと以外は実施例1と同様にして、接続構造体A(FOG)を得た。
【0157】
(評価)
(1)弾性率
実施例1〜3、9、10及び比較例1の異方性導電材料A:
縦3mm×横15mm×厚み100μmの凹部を有するフッ素系樹脂製の型に、得られた異方性導電ペーストAを充填し、ペーストの温度が170℃となってから10秒後、室温まで冷却した。型より硬化物Aを取り出した。
【0158】
粘弾性測定装置(アイティー計測制御社製「DVA−200」)を用いて、室温から昇温速度5℃/min、変形率0.1%、10Hzの条件で、硬化物A(温度85℃及び相対湿度85%で48時間放置する前)の85℃での弾性率E1を測定した。
【0159】
また、硬化物Aを温度85℃及び相対湿度85%で48時間放置して、硬化物Bを得た。硬化物B(温度85℃及び相対湿度85%で48時間放置した後)の85℃での弾性率E2を、弾性率E1と同様にして測定した。
【0160】
実施例4の異方性導電材料A:
縦3mm×横15mm×厚み100μmの凹部を有するフッ素系樹脂製の型に、得られた異方性導電ペーストAを充填した。その後。光照射強度が3000mW/cmとなるように波長420nmの紫外線を1秒間照射した。さらに、ペーストの温度が170℃となってから10秒後、室温まで冷却した。型より硬化物Aを取り出した。粘弾性測定装置(アイティー計測制御社製「DVA−200」)を用いて、室温から昇温速度5℃/min、変形率0.1%、10Hzの条件で、硬化物A(温度85℃及び相対湿度85%で48時間放置する前)の85℃での弾性率E1を測定した。
【0161】
また、硬化物Aを温度85℃及び相対湿度85%で48時間放置して、硬化物Bを得た。硬化物B(温度85℃及び相対湿度85%で48時間放置した後)の85℃での弾性率E2を、弾性率E1と同様にして測定した。
【0162】
(2)ガラス転移温度
上記(1)弾性率の評価で得られた硬化物Aと硬化物Bとを用意した。
【0163】
粘弾性測定装置(アイティー計測制御社製「DVA−200」)を用いて、室温から昇温速度5℃/min、変形率0.1%、10Hzの条件で、硬化物A(温度85℃及び相対湿度85%で48時間放置する前)のガラス転移温度Tg1を測定した。
【0164】
また、硬化物B(温度85℃及び相対湿度85%で48時間放置した後)のガラス転移温度Tg2を、ガラス転移温度Tg1と同様にして測定した。
【0165】
(3)吸水率
上記(1)弾性率の評価で得られた硬化物Aを用意した。
【0166】
硬化物Aの重量を測定した。次に、硬化物Aを温度85℃及び相対湿度85%で48時間放置した後、重量を測定した。放置前の硬化物の重量と放置後の重量とから、上記式(X)により吸水率を求めた。
【0167】
硬化物Aを温度85℃及び相対湿度85%で168時間放置して、硬化物Cを得た。得られた硬化物Cの吸水率を得られた硬化物Aの吸水率と同様にして求めた。その結果、各実施例及び比較例における、硬化物Aを用いた吸水率の測定結果と硬化物C用いた吸水率の測定結果との差の絶対値は全て10%以下であった。
【0168】
(4)導通信頼性
得られた接続構造体A(作製直後、n=15)において、対向する第1の接続対象部材の電極と第2の接続対象部材の電極との1対の接続された電極間の接続抵抗を、4端子測定法により25箇所で評価した。全ての電極間で5Ω以下である場合を「○」、1箇所でも5Ωよりも大きい場合を「×」と判定した。
【0169】
(5)耐湿熱試験
得られた接続構造体A(作製直後、n=15)において、温度85℃及び相対湿度85%の条件で48時間及び168時間放置した後、上記(4)の導通性の評価と同様にして、導通性を評価した。試験後に全ての電極間で2Ω以下かつ試験前後での抵抗値変化率が10%以下である場合を「○○」、試験後に1箇所でも2Ωを超え、5Ω以下である場合を「○」、試験後に1箇所でも5Ωよりも大きい場合を「×」と判定した。
【0170】
結果を下記の表1に示す。
【0171】
【表1】

【0172】
なお、実施例3、9、10の(5)耐湿熱試験の評価結果はいずれも「○」であるが、(5)耐湿熱試験の評価における試験前後での抵抗値変化率は、実施例9の方が実施例3,10よりも小さく、実施例10の方が実施例3よりも小さかった。
【0173】
なお、実施例3、9、10の(5)耐湿熱試験の評価結果はいずれも「○」であるが、(5)耐湿熱試験の評価における試験後での抵抗値は、実施例3の方が実施例9,10よりも小さく、実施例9の方が実施例10よりも小さかった。
【符号の説明】
【0174】
1…接続構造体
2…第1の接続対象部材
2a…上面
2b…第1の電極
3…接続部
3a…上面
3A…異方性導電材料層
3B…Bステージ化された異方性導電材料層
4…第2の接続対象部材
4a…下面
4b…第2の電極
5…導電性粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性成分と、導電性粒子とを含み、
硬化後の硬化物を温度85℃及び相対湿度85%で48時間放置する前の85℃での弾性率をE1とし、硬化後の硬化物を温度85℃及び相対湿度85%で48時間放置した後の85℃での弾性率をE2としたときに、前記E2が500MPa以上であり、前記E1と前記E2との弾性率変化を示すLog(E2/E1)が−0.65以上である、異方性導電材料。
【請求項2】
硬化後の硬化物を温度85℃及び相対湿度85%で48時間放置する前のガラス転移温度をTg1とし、硬化後の硬化物を温度85℃及び相対湿度85%で48時間放置した後のガラス転移温度をTg2としたときに、前記Tg1と前記Tg2とのガラス転移温度の差を示す(Tg1−Tg2)が30℃以下である、請求項1に記載の異方性導電材料。
【請求項3】
硬化後の硬化物の吸水率が4重量%以下である、請求項1又は2に記載の異方性導電材料。
【請求項4】
前記導電性粒子の平均粒子径が、1μm以上、5μm未満である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の異方性導電材料。
【請求項5】
前記熱硬化性成分として不飽和二重結合を有する硬化性化合物と熱ラジカル発生剤とを含むか、又は光硬化性成分として不飽和二重結合を有する硬化性化合物と光ラジカル発生剤とをさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の異方性導電材料。
【請求項6】
前記不飽和二重結合を有する硬化性化合物の分子量が500以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の異方性導電材料。
【請求項7】
前記熱硬化性成分として、不飽和二重結合と熱硬化性官能基との双方を有する硬化性化合物を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の異方性導電材料。
【請求項8】
フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続、又は半導体チップとガラス基板との接続に用いられる異方性導電材料である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の異方性導電材料。
【請求項9】
第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、該第1,第2の接続対象部材を電気的に接続している接続部とを備え、
前記接続部が、請求項1〜8のいずれか1項に記載の異方性導電材料により形成されている、接続構造体。
【請求項10】
前記第2の接続対象部材と前記第1の接続対象部材とが、フレキシブルプリント基板とガラス基板とであるか、又は半導体チップとガラス基板とである、請求項9に記載の接続構造体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−16473(P2013−16473A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−128816(P2012−128816)
【出願日】平成24年6月6日(2012.6.6)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】