説明

異物除去方法及び半導体装置の製造方法

【課題】微細な凹部に付着した異物の除去が可能な異物除去方法及び半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】カーボンナノチューブ13の先端を、異物5が存在する凹部11に向けて下降させ凹部(溝)11の底面11aにカーボンナノチューブ13の先端を接触させた後、さらにカーボンナノチューブ13を下降させてカーボンナノチューブ13をたわませてカーボンナノチューブ13の側面13aを凹部11の底面11aに押し付け、その側面13aを凹部11の底面11aに押し付けた状態のままカーボンナノチューブ13を凹部11の底面11a上で移動させることで、異物5に対して力を加える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異物除去方法及び半導体装置の製造方法に関し、特に半導体集積回路を形成するために用いられるパターン転写体に付着した異物を除去する異物除去方法及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路のパターン転写に用いるフォトマスク等の製造工程において凹部(溝)に何らかの異物が入り込み付着してしまった場合に、その付着力が強いと洗浄を行っても異物をマスクから洗い流すことは難しく、異物を一旦マスクから剥離させた(付着力を弱めた)上で洗浄を行うのが効果的である。例えば、特許文献1、2には、AFM(Atomic Force Microscope)技術を利用して、探針で異物に荷重を加えてスクラッチすることが開示されている。
【0003】
この場合、探針によって異物にある程度の力を加えて異物を移動させる(密着状態を解く)必要があり、通常のAFMにおける試料表面観察用に使われるシリコン製の探針では破損したり摩耗が激しくなることが懸念される。そこで、例えば特許文献1には、ダイヤモンド製の探針を用いて異物をスクラッチすることが開示されている。
【0004】
マスクに形成されたパターンサイズ、すなわち溝幅が小さくなればなるほど細い探針を用いなければならない。現在のハーフピッチ45nm世代のパターンサイズでは、現状の探針をまだ利用できる余地が残っているものの、今後微細化がより進んでいけばシリコンやダイヤモンドを加工した探針では細くするのに限界がある。
【特許文献1】特開2006−293064号公報
【特許文献2】特開2008−102402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、微細な凹部に付着した異物の除去が可能な異物除去方法及び半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、凹凸パターンが形成されたパターン転写体の画像を取得し、この画像に基づいて前記凹凸パターンの凹部に付着した異物の位置を特定する工程と、カーボンナノチューブの先端を、前記異物が存在する前記凹部に向けて相対的に移動させ前記凹部の底面に前記カーボンナノチューブの先端を接触させた後、さらに前記カーボンナノチューブを相対移動させて前記カーボンナノチューブをたわませて前記カーボンナノチューブの側面を前記凹部の前記底面に押し付ける工程と、前記側面を前記凹部の前記底面に押し付けた状態のまま前記カーボンナノチューブを前記凹部の前記底面上で相対的に移動させることで、前記異物に対して力を加える工程と、を備えたことを特徴とする異物除去方法が提供される。
また、本発明の他の一態様によれば、上記異物除去方法により異物を除去したナノインプリント用のテンプレートを被加工膜上に形成したレジストに接触させてレジストパターンを形成し、前記レジストパターンをマスクに前記被加工膜を加工する工程を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、微細な凹部に付着した異物の除去が可能な異物除去方法及び半導体装置の製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
各図面中、実質同じ要素には同じ符号を付している。
【0009】
例えばラインアンドスペースのパターンにおいてハーフピッチ20nm世代でEUV(Extreme Ultra Violet)露光技術が確立されれば、マスク上での溝幅は約100nm前後となる。この溝に入り込ませることが可能なように、ダイヤモンドチップを加工し頂角が小さく先端径も小さいダイヤモンド探針を作製したとしても、異物以外のパターン部分にダメージを与えてしまうことが懸念される。
【0010】
さらにEUV露光の次世代技術として、樹脂(レジスト)を塗布した半導体ウェーハに対して、ナノメートルレベルのパターン加工を施したテンプレートを押し付け、そのパターンを樹脂上に転写するナノインプリント技術が実用化された場合、ナノインプリント用のテンプレートとウェーハとのサイズは1:1であるので、少なくとも20nm前後の溝に探針を入り込ませなければならない。この場合にはどんなに先端を鋭敏に作り上げても、図9に示すように、溝11の中にダイヤモンドチップ51の先端を入り込ませて異物5をスクラッチするのは不可能である。
【0011】
なお、AFM用の細い探針としてカーボンナノチューブが挙げられる。カーボンナノチューブであれば、ナノインプリント用のテンプレートに形成された20nm以下の幅の溝に先端を入れることが可能である。しかし、カーボンナノチューブは可撓性に富み、図10に示すように、異物5に対して横方向から力を加えて異物5を動かそうとしても、点線で示すようにカーボンナノチューブ13が曲がってしまうため、異物5を動かす(剥離する)のに十分な力を異物5に対して加えることができない。
【0012】
以上説明したようなことから、パターンの溝幅が100nmを下回るあたりから、先端の細さと、異物除去に必要な剛性とを両立する探針が存在しなくなる。
【0013】
そこで、本発明の実施形態では、以下に説明する装置構成及び方法を採用することで、微細パターン凹部に付着した異物を除去するようにしている。
【0014】
[第1の実施形態]
本実施形態では、凹凸パターンが形成されたパターン転写体として、図1に示すようなナノインプリント用のテンプレート10を一例に挙げて説明する。
図1(a)はテンプレート10の上面図を示し、図1(b)は(a)におけるA−A断面を示す。
【0015】
このテンプレート10には、例えばラインアンドスペースに対応した凹凸パターンが形成され、例えば、凹部である溝11の幅(ハーフピッチ)が20nm、溝11の深さが50nmであり、溝11のアスペクト比は2.5である。
【0016】
図2は、本実施形態に係る異物除去装置の概略構成を例示する模式図である。
【0017】
以下、本明細書においては、説明の便宜上、XYZ直交座標系を導入する。図1において、テンプレート10のラインアンドスペースの並列方向をX方向、ラインアンドスペースの延在方向(長手方向)をY方向、XY平面に対して直交する上下方向をZ方向とする。テンプレート10は、XYZ方向の移動が可能な図示しないステージ上にセットされている。
【0018】
本実施形態に係る異物除去装置は、AFM(Atomic Force Microscope)装置を利用している。AFM装置は、探針と試料との間に働く原子間力または分子間力によるカンチレバー14のたわみ(上下方向の変位)を検出して、試料表面形状を画像化する。
【0019】
本実施形態では、探針としてカーボンナノチューブ13を使っている。カーボンナノチューブ13はその先端を下方のテンプレート10側に向けた状態で、カンチレバー14の一端部に保持されている。
【0020】
カーボンナノチューブ13における先端(下端)とは反対側の端部は、例えば錐体状に加工されたシリコン製のベース12の先に取り付けられている。また、図3に示すように、ベース12の先端近傍を例えばFIB(Focused Ion Beam)処理するなどして、鉛直方向に平行な平面12aを形成し、その平面12aにカーボンナノチューブ13を取り付けることで、カーボンナノチューブ13が傾くことなく鉛直方向に沿って延在した状態で保持することが可能となる。この構造を採用することで、テンプレート10の溝11の側壁と異物5との位置関係を正確に捉えやすくなる。
【0021】
カーボンナノチューブ13は、その長さが溝11の深さよりも十分に長いものを使用し、また、直径が20nmよりも細いものを使用する。現在のところ、シングルウォールタイプのもので直径が数nm〜10nm、マルチウォールタイプのもので直径が10nm〜100nmのものが製造する上で制御可能であり、入り込ませるべき溝幅に合わせて適切なサイズのカーボンナノチューブ13を選択すればよい。
【0022】
カンチレバー14は、カーボンナノチューブ13が設けられた一端部とは反対側の他端部で片持ち支持され、その他端部には、例えばピエゾ素子を利用した3軸微動機構21が設けられている。3軸微動機構21は制御装置22によって制御され、この3軸微動機構21により、カンチレバー14及びこれに保持されたカーボンナノチューブ13をXYZの3方向に駆動させることができる。
【0023】
カンチレバー14のたわみ(変位)は光てこ測定系により検出される。すなわち、半導体レーザー24からのレーザー光をカンチレバー14の背面に照射し、反射光の光路の変化を光検出器(例えばフォトダイオード)25によって検出することで、カンチレバー14のたわみ量を検出する。
【0024】
光検出器25で検出されたカンチレバー14のたわみ量は、たわみ信号(たわみ情報)として、Z変位量フィードバック機構23を介して3軸微動機構21にフィードバック可能となっている。
【0025】
次に、以上説明した装置を用いた本実施形態に係る異物除去方法について説明する。
ここで、図4は異物除去の際のカンチレバー14及びカーボンナノチューブ13の動作をカーボンナノチューブ13の側面方向から見た模式図を示し、図5は図4と同様な動作を溝11内の異物5との位置関係がわかるように示した模式図である。
【0026】
ナノインプリント用のテンプレート10は、図2の装置において図示しないステージ上にセットされる。そしてまず、テンプレート10に形成された凹凸パターンの画像を取得する。例えば、前述した光てこ測定系を利用してカンチレバー14のたわみ量すなわちカーボンナノチューブ13のZ変位量を一定にするようにカンチレバー14を上下に駆動制御させながら、凹凸パターンが形成されたテンプレート10表面上をスキャンする。これにより、テンプレート10の表面形状(凹凸パターン)が画像化される。この画像に基づいて、異物5の存在の有無、さらに異物5がある場合にはその位置を特定する。
【0027】
異物5があり、その位置が特定されると、その異物5が付着している溝11の上までカーボンナノチューブ13を移動させた後、カーボンナノチューブ13の先端を異物5が存在する溝11の底面11aに向けてZ方向を下降させ、図4(a)及び図5(a)に示すように、溝11の底面11aにカーボンナノチューブ13の先端を接触させる。
【0028】
カーボンナノチューブ13のXY方向及びZ方向の移動は、3軸微動機構21によりカンチレバー14を駆動させることで行われる。3軸微動機構21は、例えばピエゾ素子またはボイスコイルモータを利用したアクチュエータであり、ナノメートルオーダーの微動制御が可能である。
【0029】
カーボンナノチューブ13の先端が溝11の底面11aに到達したことは、光検出器25及びZ変位量フィードバック機構23を介して得られるカンチレバー14のたわみ情報によって把握することができる。以下の工程におけるカーボンナノチューブ13の移動動作においても、カンチレバー14のたわみ量がモニターされており、そのたわみ情報に基づいてカーボンナノチューブ13の状態または挙動が把握され、その移動動作が制御される。
【0030】
カーボンナノチューブ13の先端を溝11の底面11aに接触させた後、さらにカーボンナノチューブ13をZ方向に下降させる。これにより、可撓性を有するカーボンナノチューブ13は、図4(b)及び図5(b)に示すように、弓なり状にたわみ始める。
【0031】
このとき、カンチレバー14をZ方向に押し下げながら、同時に溝11に沿ったY方向にカンチレバー14を駆動させる。これにより、カーボンナノチューブ13は、図4(c)及び図5(c)に示すように、先端側の一部の側面13aを溝11の底面11aに押し付けつつ例えば直角に近い角度で湾曲した状態となる。
また、図6は、カンチレバー14が下方に駆動されてたわみ、カーボンナノチューブ13が湾曲した状態を模式的に示す。
【0032】
カンチレバー14を溝11に沿ったY方向に駆動させるにあたっては、異物5から離れる方向に駆動させることで、図5(c)に示すようにカーボンナノチューブ13が湾曲した状態でその先端を異物5に向けることができる。
【0033】
カンチレバー14を前述したZ方向及びY方向に駆動させてカーボンナノチューブ13をしならせる力は、カーボンナノチューブ13とベース12との接合部が破壊されない程度に抑えることが必要である。カーボンナノチューブ13を溝11の底面11aに押し付ける力が適切であるか否かはカンチレバー14のたわみ情報により把握することが可能であるが、下方への押し付け力を制御する代わりに、カーボンナノチューブ13を下方に押し下げる距離を予め設定しておいて、その設定値にしたがってカンチレバー14を駆動させ、カーボンナノチューブ13の側面13aを溝11の底面11aに押し付けるようにしてもよい。
【0034】
上記たわみ情報に基づいて、カーボンナノチューブ13の溝底面11aへの適切な押し付け力が確認されると、カンチレバー14の下方への駆動を停止し、カーボンナノチューブ13の側面13aが溝底面11aに押し付けられてカーボンナノチューブ13がたわんだ状態を維持したまま、溝11に沿ったY方向にカンチレバー14を駆動させる。この駆動の際も、カンチレバー14のたわみ量を光てこ測定系によりモニターしておく。カーボンナノチューブ13の、溝底面11aに押し付けられた部分が、溝底面11a上を上記Y方向に移動してカーボンナノチューブ13の先端もしくは溝底面11aに押し付けられた部分が異物5に当たると、このときの反力により発生するカンチレバー14の大きな変位量を上記光てこ測定系で検出できる。
【0035】
その大きな変位量を検出したら、カーボンナノチューブ13とベース12との接合部が破壊されないようカンチレバー14を駆動変位させる力を制御しながら、カーボンナノチューブ13における先端も含めた溝底面11aに押し付けられている部分を、異物5の近傍で往復させたり、異物5に押し付けたりすることで、異物5に対して力を加える。
【0036】
このとき、カーボンナノチューブ13をたわませていることで、図5(d)に示すように、溝11の側壁11bにたわんだカーボンナノチューブ13の側面13aが接した状態でカーボンナノチューブ13を溝11に沿って移動させることができ、カーボンナノチューブ13が異物5に当たった際に、異物5に対する押し付け力を分散させることなく異物5に対して効率よく加えることができる。これにより、可撓性を有するカーボンナノチューブ13であっても異物5に対して十分な力を加えることができ、溝11に付着している異物5を剥離させることができる。
【0037】
この異物5の剥離は一時的なものであり、異物5は溝11内にまだ残っているが、一旦異物5を剥離させた後は、テンプレート10との付着力が低下している状態なので、通常のマスク洗浄工程におけるウェット洗浄を行うことで、容易にテンプレート10上から異物5を洗い流して除去することができる。
【0038】
本実施形態によれば、微細化に限界があるシリコンやダイヤモンドの探針では溝11内に入り込ませることのできない微細パターンでも、カーボンナノチューブ13を探針として用いることで溝11内の異物5の観察発見が可能となる。また、カーボンナノチューブ13は剛性がないことにより異物5を剥離させるほどの力を加えることができなかったが、本実施形態によれば、前述したようにカーボンナノチューブ13をたわませて側面13aを溝11の底面11aに押し付けた状態で溝11内を移動させることで異物5に対して十分な押圧力を加えることができ、異物5の剥離(移動)が可能となる。
【0039】
すなわち、本実施形態では、カーボンナノチューブ13の微細さと柔軟性を利用することで、微細パターン間に入った異物でも剥離させ除去することができる。特に、これまでのフォトマスクに比較し、より微細でアスペクト比の大きなナノインプリント用のテンプレートの異物除去に対して非常に有効である。
【0040】
また、本実施形態では、カーボンナノチューブ13を鉛直方向に下降させてその先端を溝11の底面11aに接触させた後、引き続きカーボンナノチューブ13を溝底面11aに向けて押し下げながら異物5から離れる方向に溝底面11a上を移動させる制御を行っており、これにより、カーボンナノチューブ13をたわませてその側面13aを溝底面11aに対して押し付ける工程が非常に簡単に行える。この方法以外にも例えば溝底面11aに対して斜めに傾けた状態でカーボンナノチューブ13を溝底面11aに近づけて押し付ける方法も考えられるが、この場合にはカーボンナノチューブ保持機構全体を傾ける、あるいはテンプレートを保持するステージを傾けるなどの機構が必要となる。
【0041】
また、本実施形態では、カーボンナノチューブ13の移動に際してカンチレバー14のたわみ量をモニターしているため、カーボンナノチューブ13をたわませてその側面13aを溝底面11aに押し付ける際や、カーボンナノチューブ13を異物5に対して押し当てる際に過剰な力をかけすぎることを回避でき、カーボンナノチューブ13とベース12との接合部の破損を防ぐことができる。
【0042】
また、カンチレバー14のたわみ情報は異物5が剥離したかどうかの検知にも利用されている。この方法以外に例えば異物付着箇所の画像を取得することで異物5が剥離して位置が移動したことを確認する方法も考えられる。しかし、この場合、カーボンナノチューブ13を画像取得用探針として機能させてあらためて画像を取り直さなければならず、非常に時間がかかってしまう。これに対して、カンチレバー14のたわみ情報を利用すれば、カーボンナノチューブ13の移動動作中にリアルタイムで異物5の剥離(移動)の確認を行え、工程全体の時間短縮が図れる。
【0043】
[第2の実施形態]
図7は、本発明の第2の実施形態に係る異物除去装置の概略構成を示す模式図である。
【0044】
本実施形態では、SEM(Scanning Electron Microscope)とAFM(Atomic Force Microscope)とを組み合わせた構成の装置を用い、カーボンナノチューブの移動及び異物が剥離する様子をSEMで観察している。
【0045】
減圧雰囲気とされる筐体43内における図示しないステージ上にテンプレート10はセットされる。また、筐体43内にはマイクロピンセット45が設けられ、このマイクロピンセット45にカーボンナノチューブ13が保持されている。マイクロピンセット45及びこれに保持されたカーボンナノチューブ13は鉛直方向及び水平面に対して傾いており(例えば水平面に対して30度ほど傾けられている)、SEMの鏡筒42との干渉を防ぐ構造となっている。さらに、マイクロピンセット45及びこれに保持されたカーボンナノチューブ13は、同じく筐体43内に設けられた二次電子検出器44と干渉しない位置に設けられている。
【0046】
まず、SEM機能を使ってテンプレート10に形成された凹凸パターンの画像を取得する。すなわち、エミッター41から電子ビームEBをテンプレート10の表面に向けて照射し、この照射により発生する二次電子を二次電子検出器44で検出することで、テンプレート10表面の画像を得る。この画像に基づいて、異物の有無、さらには異物がある場合にはその付着位置を特定する。
【0047】
そして、異物があり、その位置が特定されると、カーボンナノチューブ13を保持したマイクロピンセット45の先端部を、異物が存在する溝近傍まで接近させ、その異物が存在する溝内にカーボンナノチューブ13の先端を入れる。
【0048】
マイクロピンセット45を異物が存在する特定の溝に向けて移動させ、カーボンナノチューブ13の先端を溝底面11に接触させるには、平面方向のXY座標情報のほかに高さ情報が必要であるが、これは予めマイクロピンセット45の高さ情報を持つことと、テンプレート10の表面高さ情報をレーザー干渉計などのシステムで取得しておくことで可能となる。この高さ情報に基づいて、マイクロピンセット45を異物が存在する溝内に入れ、図8(a)に示すようにカーボンナノチューブ13の先端が溝底面11aに接触するまでマイクロピンセット45を溝底面11aに向けて下げていく。なお、カーボンナノチューブ13先端と、溝底面11aとの接触はトンネル電流のモニターによっても把握できる可能性があり、この方法を用いてもよい。
【0049】
カーボンナノチューブ13の先端が溝底面11aに接触した後は、SEMによる画像観察を行いながらさらにマイクロピンセット45を下げていくことで、マイクロピンセット45の移動量を制御し、図8(b)に示すように、カーボンナノチューブ13をたわませることができる。カーボンナノチューブ13の側面が溝底面11aに押し付けられるまでカーボンナノチューブ13が湾曲したところで、マイクロピンセット45の下方向への動きをとめる。
【0050】
この後、前述した第1の実施形態と同様に、カーボンナノチューブ13の側面が溝底面11aに押し付けられた状態のまま、溝に沿ってカーボンナノチューブ13を移動させ、異物5に対してカーボンナノチューブ13を押し当てて異物5に対して力を加える。これにより、異物5を溝から一旦剥離させることができる。この動作も、SEMによる画像観察をしながら行うことで、異物5が剥離したかどうかの判断をリアルタイムで行うことができる。
【0051】
異物の剥離が確認されれば、カーボンナノチューブ13を溝底面11aから離し、テンプレート10を装置から取り出す。その後、テンプレート10のウェット洗浄を行うことで、異物を洗い流すことができる。本実施形態においても、カーボンナノチューブ13の微細さと柔軟性を利用することで、微細パターン間に入った異物でも剥離させ除去することができる。
【0052】
異物剥離時のカンチレバーのたわみ量変化が非常に微小で検出不可能な場合であっても、本実施形態によれば、SEM画像観察によりリアルタイムで且つ確実に異物剥離の確認を行うことができる。
【0053】
前述した各実施形態に係る異物除去方法により異物が除去されたナノインプリント用テンプレートを用いて、半導体装置の製造におけるナノインプリントプロセスを実施することにより、半導体装置のパターンを形成することが可能である。
すなわち、凹部パターンが形成されたテンプレートを洗浄した後、基板上に形成したレジストにテンプレートを接触させてレジストをテンプレートの凹部に充填し、さらに光照射等によりレジストを硬化し、テンプレートを離型することでレジストパターンを形成できる。続いて、レジストパターンをマスクにレジスト下の被加工膜を加工して、各種半導体装置のパターンを形成することができる。このように、異物が適切に取り除かれたテンプレートを用いてナノインプリントプロセスを実施することにより、パターン欠陥の少ない半導体装置を製造することができる。
【0054】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、それらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0055】
前述した実施形態では、パターン転写体としてナノインプリント用のテンプレートを例に挙げて説明したが、これに限らず、フォトマスク、EUV露光用マスクなどにも同様に本発明を適用して異物除去を行うことができる。
【0056】
また、前述した実施形態では、除去すべき異物が入り込んだ凹部としてラインアンドスペースパターンの溝を例に挙げたが、ホール内に付着した異物に対しても本発明は適用可能である。すなわち、カーボンナノチューブをたわませる(しならせる)ことで、カーボンナノチューブの側面をホール底面及び側壁面に押し付けることができ、その状態で異物に対してカーボンナノチューブを押し当てれば、力を分散させることなく効果的に異物に対して加えることができ、異物を剥離させることができる。
【0057】
また、カーボンナノチューブを凹部底面に向けて移動させたり、凹部底面上で移動させたりするにあたっては、位置を固定させたパターン転写体に対してカーボンナノチューブを動かすことに限らず、パターン転写体の方をこれを支持するステージごと、固定させたカーボンナノチューブに対して移動させてもよく、もちろん、カーボンナノチューブとパターン転写体との双方を動かしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】ナノインプリント用のテンプレートの模式図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る異物除去装置の概略構成を示す模式図。
【図3】同異物除去装置におけるカーボンナノチューブの取付構造の一例を示す模式図。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る異物除去方法の流れを示す模式図。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る異物除去方法の流れを示す模式図。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る異物除去装置の概略構成を示す模式図。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る異物除去装置の概略構成を示す模式図。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る異物除去方法の流れを示す模式図。
【図9】従来例のAFM装置における探針と微細パターンとの関係を示す模式図。
【図10】カーボンナノチューブを用いて異物を除去する比較例を示す模式図。
【符号の説明】
【0059】
12…ベース、13…カーボンナノチューブ、14…カンチレバー、21…3軸微動機構、22…制御装置、23…Z変位量フィードバック機構、24…半導体レーザー、25…光検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸パターンが形成されたパターン転写体の画像を取得し、この画像に基づいて前記凹凸パターンの凹部に付着した異物の位置を特定する工程と、
カーボンナノチューブの先端を、前記異物が存在する前記凹部に向けて相対的に移動させ前記凹部の底面に前記カーボンナノチューブの先端を接触させた後、さらに前記カーボンナノチューブを相対移動させて前記カーボンナノチューブをたわませて前記カーボンナノチューブの側面を前記凹部の前記底面に押し付ける工程と、
前記側面を前記凹部の前記底面に押し付けた状態のまま前記カーボンナノチューブを前記凹部の前記底面上で相対的に移動させることで、前記異物に対して力を加える工程と、
を備えたことを特徴とする異物除去方法。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブの先端を前記凹部の前記底面に接触させた後、前記カーボンナノチューブを前記底面に垂直な方向に相対移動させながら前記底面の平面方向に前記異物から離れるように移動させることで、前記カーボンナノチューブの側面を前記底面に押し付けること特徴とする請求項1記載の異物除去方法。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブはその先端を下方に向けた状態でカンチレバーの端部に保持され、前記カンチレバーの変位をモニターしながら前記カーボンナノチューブの移動を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の異物除去方法。
【請求項4】
前記凹凸パターンが形成されたパターン転写体は、ナノインプリント用のテンプレートであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の異物除去方法。
【請求項5】
請求項4記載の異物除去方法により異物を除去したナノインプリント用のテンプレートを被加工膜上に形成したレジストに接触させてレジストパターンを形成し、前記レジストパターンをマスクに前記被加工膜を加工する工程を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−54773(P2010−54773A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−219229(P2008−219229)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】