説明

発光素子

【課題】高輝度の発光素子を提供する。
【解決手段】本発明に係る発光素子1は、支持基板20と、支持基板20の側から第1導電型の第1導電型層と、光を発する活性層15と、第1導電型とは異なる第2導電型の第2導電型層とを有する発光部10と、支持基板20と発光部10との間に設けられ、光を発光部10の側に反射する反射部40と、反射部40と発光部10との間に設けられ、光を透過し、電気絶縁性を有する絶縁層50と、絶縁層50と発光部10との間の一部に設けられる界面電極60と、第2導電型層の活性層15の反対側の表面に設けられ、界面電極60の直上とは異なる領域に設けられる第1電極72と、第1電極72が設けられる側に第1電極72とは別に設けられ、第1電極72が接触している第2導電型層とは異なる発光部10の部分、又は界面電極60に電気的に接続する第2電極70とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子に関する。特に、本発明は、光取り出し面側にアノード電極及びカソード電極を備える発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板上に、n型半導体層、発光層、及びp型半導体層が積層され、p型半導体層上に透光性正極が積層されると共に、透光性正極に正極ボンディングパッドが設けられ、n型半導体層上に負極ボンディングパッドが設けられた半導体発光素子を製造する方法であって、p型半導体層上に透光性酸化物導電材料の透光性正極を化学量論組成よりも酸素不足した状態で形成した後、酸素含有雰囲気中においてアニール処理し、その後、無酸素雰囲気において再アニール処理する半導体発光素子の製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−287786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の発光素子のようにアノード電極とカソード電極とを共に光取り出し面側に単に設けただけの場合、両電極は半導体層の隅にのみオーミック接合するだけである。そうすると、電極に注入された電子又は空孔は、薄い半導体層内で分散せざるを得ず、発光素子の平面方向に電流を均一に分散させることは困難である。したがって、高輝度の発光素子を実現することが困難である。
【0005】
したがって、本発明の目的は、高輝度の発光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、支持基板と、支持基板の側から第1導電型の第1導電型層と、光を発する活性層と、第1導電型とは異なる第2導電型の第2導電型層とを有する発光部と、支持基板と発光部との間に設けられ、光を発光部の側に反射する反射部と、反射部と発光部との間に設けられ、光を透過し、電気絶縁性を有する絶縁層と、絶縁層と発光部との間の一部に設けられる界面電極と、第2導電型層の活性層の反対側の表面に設けられ、界面電極の直上とは異なる領域に設けられる第1電極と、第1電極が設けられる側に第1電極とは別に設けられ、第1電極が接触している第2導電型層とは異なる発光部の部分、又は界面電極に電気的に接続する第2電極とを備える発光素子が提供される。
【0007】
また、上記発光素子において、第2電極が、平面視にて界面電極に重なる領域を有し、第1導電型層、又は界面電極に接触してもよい。
【0008】
また、上記発光素子において、界面電極が、反射部に接触せずに設けられてもよい。
【0009】
また、上記発光素子において、支持基板が、Si基板、Ge基板、GaAs基板、GaP基板、又はメタル基板であってもよい。
【0010】
また、上記発光素子において、絶縁層が、SiO又はSiNを含んで構成されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る発光素子によれば、高輝度の発光素子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)は本発明の第1の実施の形態に係る発光素子の平面図であり、(b)は図1の(a)のA−A線における断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る発光素子の製造工程の流れを示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る発光素子の製造工程の流れを示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る発光素子の製造工程の流れを示す図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る発光素子の製造工程の流れを示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る発光素子の製造工程の流れを示す図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る発光素子の製造工程の流れを示す図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る発光素子の製造工程の流れを示す図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係る発光素子の製造工程の流れを示す図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態に係る発光素子の製造工程の流れを示す図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態に係る発光素子の製造工程の流れを示す図である。
【図12】(a)は本発明の第2の実施の形態に係る発光素子の平面図であり、(b)は図12の(a)のG−G線における断面図である。
【図13】比較例に係る発光素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施の形態]
図1の(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る発光素子の平面図の一例を示し、図1の(b)は、図1の(a)のA−A線における断面の概要を示す。
【0014】
(発光素子1の構造の概要)
第1の実施の形態に係る発光素子1は、一例として、赤色光を放射する発光素子としての発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)である。具体的に発光素子1は、支持基板20と、支持基板20の上に設けられる金属密着層としての密着層30と、密着層30の上に設けられる反射金属層としての反射部40と、反射部40の上に設けられる絶縁層50と、絶縁層50の上に設けられる発光部10とを備える。また、発光部10の絶縁層50の反対側に、アノード電極又はカソード電極としての第1電極72と、カソード電極又はアノード電極としての第2電極70とがそれぞれ独立に設けられる。なお、発光部10は複数の化合物半導体層を有して構成されており、第1電極72が設けられる化合物半導体層と第2電極70が設けられる化合物半導体層とは異なる化合物半導体層である。
【0015】
ここで、発光部10は、支持基板20の側から第1導電型の第1導電型層としてのp型コンタクト層11と、光を発する活性層15と、第1導電型とは異なる第2導電型の第2導電型層としてのn型コンタクト層19とを有する。また、反射部40は支持基板20と発光部10との間に設けられ、絶縁層50は反射部40と発光部10との間に設けられる。更に、発光素子1は、絶縁層50と発光部10との間の一部に設けられる界面電極60を備える。
【0016】
(支持基板20)
支持基板20は、発光素子1の製造工程において発光素子1に加わる力、発光素子1の使用状況において発光素子1に加わる力に耐え得る機械的強度を有する材料、及び厚さを有する。一例として、支持基板20は、熱伝導率が高く、導電性を有するSi基板を用いる。また、支持基板20として、Ge基板、GaAs基板、GaP基板、又はメタル基板を用いることもできる。なお、支持基板20は、導電性を有さない材料、又は熱伝導率がSi基板より高い材料を用いて構成することもできる。
【0017】
(密着層30)
密着層30は、支持基板20と反射部40とを接続する。密着層30は、例えば、金属の単層又は複数の金属層を含んで構成される。一例として、密着層30は、支持基板20の側からTi層、Pt層、Au層をこの順に積層させて構成される。なお、この場合、Au層が反射部40に接合する機能を発揮する。また、支持基板20を構成する材料が反射部40に拡散することにより反射部40の反射特性が変化することを抑制する拡散防止バリア層としての機能をPt層が発揮する。
【0018】
(反射部40)
反射部40は、活性層15が発する光を発光部10の側に向けて反射する機能を有する。そして、反射部40は、例えば、活性層15が発する光の発光波長に対し、80%以上の反射率を有する金属層を有して構成される。具体的に、反射部40は、Au、Ag、若しくはAlのいずれかの金属材料、又はこれらの金属材料を含む合金から構成することができる。例えば、反射部40は、金属の単層又は複数の金属層を含んで構成することができる。一例として、反射部40は、密着層30の側からAu層、Ti層、Al層をこの順に積層させて構成される。この場合、Au層が密着層30に接合する機能を発揮し、Al層が光を反射する機能を発揮する。また、Au層を構成する材料がAl層に拡散すること、及び/又はAl層を構成する材料がAu層に拡散することを防止する拡散バリア層としての機能をTi層が発揮する。
【0019】
(絶縁層50)
絶縁層50は、活性層15が発する光を透過する。そして、絶縁層50は、電気絶縁性を有する材料を用いて形成される。例えば、絶縁層50は、SiO又はSiNを含んで構成することができる。また、絶縁層50は、活性層15が発する光の発光波長をλ、絶縁層50を構成する材料の屈折率をnとした場合に、(2×λ)/(4×n)以上の厚さを有する。
【0020】
(界面電極60)
界面電極60は、絶縁層50と発光部10との間の一部の領域に設けられる。具体的には、絶縁層50の発光部10側の表面、又は発光部10の絶縁層50側の表面に界面電極60は埋設された状態で設けられる。第1の実施の形態に係る界面電極60は、絶縁層50の発光部10側の表面に埋設されて設けられる。したがって、第1の実施の形態では、界面電極60は、絶縁層50の内部に位置することになる。換言すれば、界面電極60は絶縁層50を貫通せずに設けられると共にp型コンタクト層11に接触するので、反射部40に界面電極60は接触しない。
【0021】
また、界面電極60は、図1の(a)に示すように、発光素子1の平面視にて、発光素子1の一の辺(以下、「第1の辺」という)に略平行に伸びると共に略等しい間隔で並ぶ複数の界面細線部60aと、複数の界面細線部60aの端部をそれぞれ連結し、第1の辺に垂直な他の辺(以下、「第2の辺」という)に沿って延びる界面細線部60bとを有して構成される。
【0022】
そして、後述する第1電極72の複数の細線電極72aとの配置の関係を考慮して、複数の界面細線部60aのうち第1の辺に最も近い位置の界面細線部60aの長さと、第1の辺の対辺に最も近い位置の界面細線部60aの長さとは異ならせて形成される。例えば、第1の辺に最も近い位置の界面細線部60aの長さが最も短く、第1の辺の対辺に最も近い位置の界面細線部60aの長さが最も長く形成され、この2つの界面細線部60aに挟まれる位置に設けられる複数の界面細線部60aの長さは、この2つの界面細線部60aの長さの間の長さであり、互いに略等しい長さに形成される。
【0023】
また、界面電極60は、発光素子1の一の角部の領域に平面視にて略円形状の領域を有する。この円形状の領域は、一の界面細線部60aと界面細線部60bとを接続する。そして、この円形状の上方に、後述する第2電極70が設けられる。
【0024】
更に界面電極60は、Be、Zn、Ni、Ti、Pt、Al、Au等の金属材料から選択される少なくとも1つのp型電極用の金属材料を含んで形成される。例えば、界面電極60は、AuBe(又はAuZn)から形成することができる。
【0025】
(発光部10)
発光部10は、支持基板20の側からp型コンタクト層11と、p型クラッド層13と、活性層15と、n型クラッド層17と、n型コンタクト層19とを有する。発光部10を構成する各層は、(AlGa1−xIn1−yP(ただし、0<x<1、0<y<1)、GaP、又はGaAsで表される化合物半導体から構成される。例えば、p型コンタクト層11はp型のGaPから形成され、p型クラッド層13はp型の(AlGa1−xIn1−yPから形成される。また、活性層15は、アンドープの(AlGa1−xIn1−yPから形成される。そして、n型クラッド層17はn型の(AlGa1−xIn1−yPから形成され、n型コンタクト層19はn型のGaAsから形成される。なお、界面電極60は、p型コンタクト層11にオーミック接合する。
【0026】
また、発光部10の絶縁層50の反対側においては、第2電極70が設けられる領域に対応するp型クラッド層13と、活性層15と、n型クラッド層17と、n型コンタクト層19とが除去されることによりp型コンタクト層11の表面の一部が露出する。この露出した領域の一部の領域に第2電極70が設けられる。また、発光部10の絶縁層50の反対側においては、第1電極72が設けられる領域に対応するn型コンタクト層19を除く部分のn型コンタクト層19が除去されることによりn型クラッド層17の表面が露出する。そして、露出したn型クラッド層17の表面には、凹凸部17aが設けられる。
【0027】
(凹凸部17a)
凹凸部17aは、n型クラッド層17の活性層15の反対側の表面を粗面化して形成される。凹凸部17aは、予め定められたパターンを有して当該表面に形成される。また、凹凸部17aは、当該表面を所定のエッチャントでエッチングすることによりランダムな形状を有して形成することもできる。更に、凹凸部17aは、発光素子1の光取り出し効率を向上させることを目的として、最大高さRyが0.5μm以上3.0μm以下であることが好ましい。
【0028】
(第1電極72)
第1電極72は、n型コンタクト層19の活性層15の反対側の表面側(すなわち、光取り出し面側)に設けられ、界面電極60の直上に対応するn型クラッド層17の表面とは異なる領域のn型コンタクト層19上に設けられる。すなわち、第1電極72は、発光素子1の平面視にて界面電極60を光取り出し面に投影した場合に、界面電極60に重ならない領域に設けられる。
【0029】
第1電極72は、n型コンタクト層19にオーミック接触する材料から形成される。具体的に、第1電極72は、Ge、Ni、Ti、Pt、Al、Au等の金属材料から選択される少なくとも1つのn型電極用の金属材料を含んで形成される。例えば、第1電極72は、n型コンタクト層19側からAuGe、Ti、Auの順に積層された積層構造を有して形成することができる。
【0030】
そして、第1電極72は、図1の(a)に示すように、発光素子1の平面視にて、発光素子1の第1の辺に略平行に伸びると共に略等しい間隔で並ぶ複数の細線電極72aと、複数の細線電極72aの端部をそれぞれ連結し、第2の辺の対辺に沿って延びる細線電極72bとを有して構成される。ここで、第1電極72を構成する細線電極72a及び細線電極72bは、界面電極60を構成する界面細線部60a及び界面細線部60bに重ならない配置でn型コンタクト層19上に設けられる。例えば、複数の界面細線部60aと複数の細線電極72aとが、発光素子1の平面視にて互い違いになる配置に設けられる。
【0031】
また、第1電極72は、発光素子1の一の角部の対角部分に平面視にて略円形状の領域を有する。この円形状の領域は、一の細線電極72aと細線電極72bとに接続される。そして、この円形状の領域上に平面視にて円形状のパッド電極80が形成される。
【0032】
また、複数の細線電極72aのうち第1の辺に最も近い位置の細線電極72aの長さと、第1の辺の対辺に最も近い位置の細線電極72aの長さとは異ならせて形成される。例えば、第1の辺に最も近い位置の細線電極72aの長さが最も長く、第1の辺の対辺に最も近い位置の細線電極72aの長さが最も短く形成され、この2つの細線電極72aに挟まれる位置に設けられる複数の細線電極72aの長さは、この2つの細線電極72aの長さの間の長さであり、互いに略等しい長さに形成される。
【0033】
(第2電極70)
第2電極70は、第1電極72が設けられる側に第1電極72とは別に設けられる。そして、第2電極70は、第1電極72が接触しているn型コンタクト層19とは異なる発光部10の部分に電気的に接続する。第1の実施の形態において第2電極70は、発光部10の一部のn型コンタクト層19からp型クラッド層13までを除去して露出するp型コンタクト層11の表面の一部に電気的に接続する。
【0034】
そして、第2電極70は、平面視にて界面電極60に重なる領域を有し、p型コンタクト層11の表面にオーミック接触する。すなわち、第2電極70は、発光部10の一部をn型コンタクト層19の表面からp型コンタクト層11に向けて除去して露出するp型コンタクト層11の表面であって、界面電極60の円形状の領域の直上にオーミック接触して設けられる。
【0035】
また、第2電極70は、パッド電極80と同一の材料を用いて形成することができる。第2電極70及びパッド電極80は、例えば、Ti層とAu層とを含む金属層の積層構造を有して形成される。なお、第2電極70を構成する材料とパッド電極80を構成する材料とが異なっていてもよい。
【0036】
(発光素子1の製造方法)
図2〜図11は、本発明の第1の実施の形態に係る発光素子の製造工程の流れの一例を示す。
【0037】
第1の実施の形態に係る発光素子1は、例えば、以下のようにして製造することができる。まず、半導体基板100を準備する。半導体基板100としては、例えば、GaAs基板を用いることができる。そして、半導体基板100上に、例えば、有機金属気相成長法(Metal Organic Vapor Phase Epitaxy:MOVPE法)によって複数のIII−V族化合物半導体層を含む半導体積層構造を形成する。すなわち、半導体基板100の側からエッチングストップ層12、n型コンタクト層19、n型クラッド層17、活性層15、p型クラッド層13、及びp型コンタクト層11をこの順に含む半導体積層構造を半導体基板100上に形成する。これにより、半導体基板100と発光部10との間にエッチングストップ層12を備えたエピタキシャルウエハが製造される(図2参照。)。
【0038】
ここで、MOVPE法を用いた半導体積層構造の形成は、成長温度、成長圧力、半導体積層構造が有する複数の化合物半導体層のそれぞれの成長速度、及びV/III比をそれぞれ所定の値に設定して実施する。なお、V/III比とは、トリメチルガリウム(TMGa)、トリメチルアルミニウム(TMAl)等のIII族原料のモル数を基準にした場合における、アルシン(AsH)、ホスフィン(PH)等のV族原料のモル数の比である。
【0039】
また、MOVPE法において用いる原料は、Ga原料として、トリメチルガリウム(TMGa)、又はトリエチルガリウム(TEGa)を用いることができ、Al原料としてトリメチルアルミニウム(TMAl)を用いることができ、In原料としてトリメチルインジウム(TMIn)等の有機金属化合物を用いることができる。また、As源としてアルシン(AsH)を用いることができ、P源としてホスフィン(PH)等の水素化物ガスを用いることができる。更に、n型のドーパントの原料は、セレン化水素(HSe)、ジシラン(Si)を用いることができる。そして、p型のドーパントの原料は、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(CpMg)を用いることができる。
【0040】
また、n型のドーパントの原料として、モノシラン(SiH)、ジシラン(Si)、ジエチルテルル(DETe)、又はジメチルテルル(DMTe)を用いることもできる。そして、p型のドーパントの原料として、CpMgの代わりに、ジメチルジンク(DMZn)又はジエチルジンク(DEZn)を用いることもできる。
【0041】
次に、エピタキシャルウエハをMOVPE装置から取り出した後、p型コンタクト層11の表面に絶縁膜50aを形成する。絶縁膜50aは、例えば、プラズマCVD装置を用いてp型コンタクト層11の表面に成膜することができる。続いて、絶縁膜50aの表面にフォトリソグラフィー法を用い、界面電極60を形成すべき領域を除く領域にマスクパターンを形成する。そして、マスクパターンを形成した後、形成したマスクパターンをマスクとして、絶縁膜50aにエッチング処理を施す。例えば絶縁膜50aをSiOから形成する場合、フッ酸系のエッチャントを用いてエッチング処理できる。
【0042】
これにより、界面電極60を形成すべき領域の絶縁膜50aが除去された開口が形成され、界面電極60を形成すべき領域に対応するp型コンタクト層11の表面が露出する。そして、真空蒸着法を用い、この開口に界面電極60を構成する金属材料を蒸着する。例えば、AuZnをこの開口に蒸着する。これにより、絶縁膜50aに設けられた開口に界面電極60が形成される(図3参照。)。
【0043】
続いて、再びプラズマCVD装置を用い、絶縁膜50a及び界面電極60を覆うように絶縁材料(例えば、SiO)を成膜することにより、絶縁層50を形成する。この絶縁層50の形成により、界面電極60は絶縁層50内に配置されることになる(図4参照。)。
【0044】
次に、絶縁層50の表面、すなわち、絶縁層50のp型コンタクト層11に接している面の反対側の表面に反射部40を形成する。反射部40は、真空蒸着法、スパッタ法等を用いて形成することができる。例えば反射部40は、絶縁層50側からAl層、Ti層、Au層をこの順に成膜することにより形成される。また、支持基板20の一方の面に密着層30を形成する。密着層30も真空蒸着法、スパッタ法等を用いて形成することができる。例えば密着層30は、支持基板20の側からTi層、Pt層、Au層をこの順に成膜することにより形成される。そして、支持基板20の密着層30とエピタキシャルウエハの絶縁層50上に形成した反射部40の表面とを対向させて重ね、この状態をカーボン等から形成される冶具で保持する。
【0045】
続いて、この接触した状態を保持している冶具を、ウエハ貼合わせ装置内に導入する。そして、ウエハ貼合わせ装置内を所定圧力にする。一例として、1.333Pa(0.01Torr)の圧力に設定する。そして、互いに重なり合っている支持基板20とエピタキシャルウエハとに冶具を介して圧力を加える。一例として、30kgf/cmの圧力を加える。次に、冶具を所定温度まで所定の昇温速度で加熱する。
【0046】
例えば、冶具の温度を350℃まで加熱する。そして、冶具の温度が350℃程度に達した後、冶具を当該温度で約30分保持する。その後、冶具を徐冷する。冶具の温度を、例えば室温まで十分に低下させる。冶具の温度が低下した後、冶具に加わっている圧力を開放する。そして、ウエハ貼合わせ装置内の圧力を大気圧にして冶具を取り出す。これにより、支持基板20とエピタキシャルウエハとが密着層30と反射部40との間において機械的・電気的に接合する(以下、支持基板20にエピタキシャルウエハが接合した状態の構造を「接合構造体」という)。
【0047】
次に、接合構造体を研磨装置の冶具に貼り付け用ワックスで貼り付ける。具体的に、支持基板20側を当該冶具に貼り付ける。そして、接合構造体の半導体基板100を所定の厚さになるまで研磨する。続いて、研磨後の接合構造体を研磨装置の冶具から取り外して、支持基板20の表面に付着しているワックスを洗浄除去する。そして、半導体基板100のエッチング用のエッチャントを用いて、研磨後の接合構造体から半導体基板100を選択的に完全に除去してエッチングストップ層12を露出させる。半導体基板100がGaAsから形成されている場合、半導体基板100のエッチング用エッチャントとしては、GaAsエッチング用のエッチャントであるアンモニア水と過酸化水素水との混合液を用いることができる。なお、半導体基板100を研磨せずに、全ての半導体基板100をエッチングにより除去することもできる。
【0048】
続いて、エッチングストップ層12を選択的にエッチングするエッチャントを用い、エッチングストップ層12を除去する。例えばエッチングストップ層12がAlGaInP系の化合物半導体から形成されている場合、エッチングストップ層12を選択的にエッチングするエッチャントとしては、塩酸を用いることができる。これにより、n型コンタクト層19が露出する(図6参照。)。
【0049】
続いて、フォトリソグラフィー法及び真空蒸着法を用いて、n型コンタクト層19の表面の所定の位置に、第1電極72を形成する。第1電極72は、例えば、AuGe、Ti、Auをこの順にn型コンタクト層19上に蒸着することにより形成される。この場合に、第1電極72は、界面電極60の直上に位置しないように形成される。なお、第1電極72の形状の詳細は、上記「(第1電極72)」において説明したのでここでは省略する。
【0050】
次に、第1電極72をマスクとして、第1電極72の直下に対応するn型コンタクト層19を除くn型コンタクト層19をエッチングして除去する。例えば、n型コンタクト層19がGaAsから形成されている場合、硫酸と過酸化水素水と水との混合液を用いて第1電極72の直下に対応するn型コンタクト層19を除くn型コンタクト層19をエッチングして除去することができる。これにより、第1電極72の直下を除く領域に、n型クラッド層17の表面が露出する(図7参照。)。
【0051】
更に、フォトリソグラフィー法を用い、露出したn型クラッド層17の表面に凹凸部17aを形成する。例えばフォトリソグラフィー法を用い、n型クラッド層17の表面に予め定められたパターンを有するフォトレジストパターンを形成する。そして、フォトレジストパターンをマスクとしてn型クラッド層17の表面にウェットエッチング処理を施す。これにより、n型クラッド層17の表面に凹凸部17aが形成される(図8参照。)。なお、予め定められたパターンとは、例えば、1.0μm〜3.0μmの周期を有するパターンである。
【0052】
次に、フォトリソグラフィー法を用い、素子間分離用のパターンをn型クラッド層17の表面に形成する。そして、n型クラッド層17の表面からp型コンタクト層11の表面までを塩酸系のエッチャントを用いたエッチング処理により除去する。これにより、発光素子1が形成される領域が、各発光素子1間に形成される隙間である分離領域90により互いに分離される(図9参照。)。
【0053】
続いて、第1電極72及び界面電極60に対し、不活性雰囲気下においてアロイ処理を施す。例えば、窒素ガス雰囲気中、400℃の加熱処理を第1電極72及び界面電極60に5分間施す。これにより、第1電極72とn型コンタクト層19とがオーミック接合すると共に、界面電極60とp型コンタクト層11とがオーミック接合する。更に、ワイヤーボンディング用のパッド電極80と第2電極70とをフォトリソグラフィー法及び真空蒸着法を用いて形成する(図10参照。)。パッド電極80は第1電極72の円形状の領域上に形成する。また、第2電極70は、界面電極60の円形状の領域の上方に形成知る。例えば、パッド電極80及び第2電極70は、支持基板20側からTiとAuとをこの順に蒸着することにより形成される。
【0054】
そして、ダイシング装置を用いて分離領域90を切断する。これにより、第1の実施の形態に係る発光素子1が製造される(図11参照。)。なお、発光素子1の上面視における形状は略矩形であり、上面視における寸法は、一例として、300μm角である。
【0055】
(変形例)
発光素子1が備えるn型コンタクト層19、n型クラッド層17、p型クラッド層13、及びp型コンタクト層11の化合物半導体層は、これらの化合物半導体層を構成する化合物半導体の導電型を本実施の形態の反対にすることもできる。
【0056】
また、活性層15は量子井戸構造を有して形成することもできる。量子井戸構造は、単一量子井戸構造、多重量子井戸構造、又は歪み多重量子井戸構造のいずれの構造からも形成することができる。なお、発光部20は、n型コンタクト層19、n型クラッド層17、活性層15、p型クラッド層13、及びp型コンタクト層11とは異なる半導体層を含んで形成することもできる。
【0057】
(第1の実施の形態の効果)
青色、緑色、及び赤色の三原色のLEDを組み合わせて白色LEDを実現するに際し、アノード電極及びカソード電極が光取り出し面側に設けられているGaN系のLEDを青色及び緑色用のLEDとして用い、本実施の形態に係る発光素子1を赤色用のLEDとして用いることができる。本実施の形態に係る発光素子1は、第1電極72及び第2電極70がいずれも同一の面(すなわち、光取り出し面)側に設けられているので、青色用、緑色用、及び赤色用の全ての発光素子のアノード電極及びカソード電極を一方の面に向けることができ、複数の発光素子をステム等に実装することが容易になる。
【0058】
また、発光素子1は、発光部10と絶縁層50との間に界面電極60を備えているので、界面電極60に供給される電流を発光部10の面内に略均一に分散させることができる。これにより、高輝度の発光素子1を提供できる。そして、支持基板20を熱伝導率の高い材料から形成した場合、発光素子1への投入電力が大きい場合であっても、支持基板20から効率的に放熱させることができるので、発光素子1の発光出力が低下することを抑制できる。
【0059】
また、発光素子1の支持基板20として、抵抗率を高くすることが困難なSi基板を用いたとしても、支持基板20と発光部10との間に絶縁層50が設けられているので、発光素子1をステム等に実装した場合において発光部10と支持基板20の下面(すなわち、支持基板20の発光部10が設けられている側の反対側の面)との間で十分な絶縁をとることができる。これにより、発光素子1においてリーク電流が発生することを防止できる。
【0060】
更に、発光素子1の製造方法において、例えば、分離領域90をレーザースクライバー装置によって切断する場合に、レーザーで発光素子1の側面が溶けた場合であっても、発光部10と反射部40との間に絶縁層50が存在しているので、支持基板20と発光部10との間で絶縁を維持することができる。
【0061】
(第2の実施の形態)
図12の(a)は、本発明の第2の実施の形態に係る発光素子の平面図の一例を示し、図12の(b)は、図12の(a)のG−G線における断面の概要を示す。
【0062】
第2の実施の形態に係る発光素子1aは、第1の実施の形態に係る発光素子1とは第2電極70が設けられる個所が発光素子1と異なる点を除き、発光素子1と略同一の構成及び機能を備える。したがって、相違点を除き詳細な説明は省略する。
【0063】
発光素子1aにおいては、第2電極70は、界面電極60の電気的に接続する。すなわち、第2電極70は、外部に露出している界面電極60の表面に直接接触する。具体的には、発光部10の一部のn型コンタクト層19からp型コンタクト層11までを除去して露出する界面電極60の表面の一部に電気的に第2電極70は接触する。例えば、界面電極60の円形状の領域の直上に、第2電極70は接触して設けられる。
【実施例1】
【0064】
実施例1に係る発光素子として、第1の実施の形態に係る発光素子1の構成を備える発光素子を作製した。
【0065】
まず実施例1では、n型のGaAs基板上に半導体積層構造を形成した。具体的には、n型のGaAs基板の側から、アンドープの(Al0.7Ga0.30.5In0.5Pエッチングストップ層、n型(ただし、Siドープ)のGaAsコンタクト層、n型(ただし、Siドープ)の(Al0.7Ga0.30.5In0.5Pクラッド層、アンドープの(Al0.1Ga0.90.5In0.5P活性層、p型(ただし、Mgドープ)の(Al0.7Ga0.30.5In0.5Pクラッド層、p型(ただし、Mgドープ)のGaPコンタクト層をこの順にMOVPE法でエピタキシャル成長させた。なお、MOVPE法による成長条件は、成長温度が650℃、成長圧力が50Torr、各層の成長速度が0.3〜1.0nm/sec、V/III比が約200前後になるように制御した。
【0066】
そして、第1の実施の形態において説明した製造方法に沿って実施例1に係る発光素子を製造した。なお、絶縁層50を構成する材料としてはSiOを用い、支持基板20としては導電性Si基板を用いた。密着層30としては導電性Si基板側からTi層、Pt層、Au層を形成し、反射部40としては絶縁層50の側からAl層、Ti層、Au層を形成した。そして、第1電極72としてはn型コンタクト層19の側からAuGe層、Ti層、Au層を形成し、界面電極60はAuZnから形成した。そして、パッド電極80及び第2電極70は、Ti層とAu層とから形成した。
【0067】
そして、実施例1に係る発光素子を、TO−18ステムにダイボンディングした後、発光素子にワイヤーボンディングを施した。そして、実施例1に係る発光素子の初期特性を評価した。その結果、20mA通電時(評価時)の発光出力は15.0mAであり、順方向電圧は2.05Vであった。また、25℃環境下、50mAの電流を1000時間通電した後の特性変化は、発光出力が+2.0%、順方向電圧が+0.25%であった。
【実施例2】
【0068】
実施例2に係る発光素子として、第2の実施の形態に係る発光素子1aの構成を備える発光素子を作製した。なお、第2電極70が設けられる個所を実施例1に係る発光素子とは異なる点を除き、実施例2に係る発光素子は実施例1に係る発光素子と同様にして作製した。
【0069】
具体的に実施例2に係る発光素子の製造方法においては、分離領域90を形成する工程においてp型のGaPコンタクト層も除去することにより界面電極60を露出させた。そして、露出させた界面電極60上に第2電極70を形成した。
【0070】
そして、実施例2に係る発光素子について実施例1と同様に初期特性を評価した。その結果、20mA通電時(評価時)の発光出力は15.3mAであり、順方向電圧は2.02Vであった。また、25℃環境下、50mAの電流を1000時間通電した後の特性変化は、発光出力が+1.0%、順方向電圧が+0.16%であった。
【0071】
(比較例)
図13は、比較例に係る発光素子の断面の概要を示す。
【0072】
比較例に係る発光素子は、実施例1に係る発光素子と異なり、界面電極60を備えていない構成である。界面電極60を備えていない点を除き、実施例1に係る発光素子と同様にして比較例に係る発光素子を作製した。
【0073】
比較例に係る発光素子について、実施例1に係る発光素子と同様にその初期特性を評価した。その結果、20mA通電時(評価時)の発光出力は7.8mAであり、順方向電圧は2.85Vであった。また、25℃環境下、50mAの電流を1000時間通電した後の特性変化は、発光出力が−25%、順方向電圧が+3.8%であった。すなわち、実施例1に係る発光素子、及び実施例2に係る発光素子と比較して、比較例に係る発光素子は、発光出力が低下すると共に順方向電圧が増加し、信頼性試験結果も劣化した。
【0074】
比較例に係る発光素子は界面電極60を備えていないので、p型コンタクト層11に供給された電流はp型コンタクト層11内で分散される。p型コンタクト層11は化合物半導体から構成されており、その厚さも薄いことから金属からなる界面電極60と比較して電気抵抗が大きい。したがって、比較例においては電流分散抵抗が大きくなり、順方向電圧が大きくなったと考えられる。また、電流分散抵抗が大きいことから、発光素子内における電流経路が局所的になり、発光出力の低下及び信頼性の低下を招いたと考えられる。
【0075】
以上、本発明の実施の形態及び実施例を説明したが、上記に記載した実施の形態及び実施例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態及び実施例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0076】
1、1a 発光素子
3 発光素子
10 発光部
11 p型コンタクト層
12 エッチングストップ層
13 p型クラッド層
15 活性層
17 n型クラッド層
17a 凹凸部
19 n型コンタクト層
20 支持基板
30 密着層
40 反射部
50 絶縁層
50a 絶縁膜
60 界面電極
60a、60b 界面細線部
70 第2電極
72 第1電極
72a、72b 細線電極
80 パッド電極
90 分離領域
100 半導体基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と、
前記支持基板の側から第1導電型の第1導電型層と、光を発する活性層と、前記第1導電型とは異なる第2導電型の第2導電型層とを有する発光部と、
前記支持基板と前記発光部との間に設けられ、前記光を前記発光部の側に反射する反射部と、
前記反射部と前記発光部との間に設けられ、前記光を透過し、電気絶縁性を有する絶縁層と、
前記絶縁層と前記発光部との間の一部に設けられる界面電極と、
前記第2導電型層の前記活性層の反対側の表面に設けられ、前記界面電極の直上とは異なる領域に設けられる第1電極と、
前記第1電極が設けられる側に前記第1電極とは別に設けられ、前記第1電極が接触している前記第2導電型層とは異なる前記発光部の部分、又は前記界面電極に電気的に接続する第2電極と
を備える発光素子。
【請求項2】
前記第2電極が、平面視にて前記界面電極に重なる領域を有し、前記第1導電型層、又は前記界面電極に接触する請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記界面電極が、前記反射部に接触せずに設けられる請求項2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記支持基板が、Si基板、Ge基板、GaAs基板、GaP基板、又はメタル基板である請求項3に記載の発光素子。
【請求項5】
前記絶縁層が、SiO又はSiNを含んで構成される請求項4に記載の発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−114179(P2012−114179A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260844(P2010−260844)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】