説明

白色を含む複数色のインクを用いた印刷

【課題】白色を含む複数色のインクを用いて印刷を行う際に、印刷媒体上にカラー画像と共に所望の色の白色画像を形成することを可能とする。
【解決手段】白色を含む複数色のインクを用いて印刷を行う印刷装置は、インクを噴射してカラーの第1の画像を印刷媒体上に形成する第1の画像形成部と、インクを噴射して第2の画像の少なくとも一部が第1の画像に重なるように第2の画像を印刷媒体上に形成する第2の画像形成部と、を備える。第2の画像形成部は、第2の画像の内の第1の画像に重なる部分の少なくとも一部である第1の部分を白色のインクのみを用いて形成すると共に、第2の画像の内の第1の画像に重ならない部分の少なくとも一部である第2の部分を白色と白色以外の少なくとも1色とのインクを用いて形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色を含む複数色のインクを用いて印刷を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
シアン、マゼンタ、イエローといったカラーインクの他に、白色(ホワイト)インクを用いて印刷を行う印刷装置が知られている(例えば特許文献1参照)。白色インクを含む複数色のインクを用いて印刷を行う印刷装置は、例えば、印刷媒体の地色に影響されずにカラー画像を再現するために、白色インクを用いて印刷媒体の下地処理や地色に応じた補色処理を行うことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−38063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
白色インクを含む複数色のインクを用いてカラー部分と白色部分とを含む画像の印刷を行う場合に、白色部分の色は白色インクの色により決まるため、白色部分の色を所望の色とすることは困難であった。一般に、同じ「白色インク」と呼ばれるインクであっても、例えばグラビア印刷やフレキソ印刷といった印刷機で用いられる白インク(白インキ)の色と、インクジェットプリンターといったプリンターで用いられる白インクの色とは、互いに相違する場合がある。また、例えば、インクジェットプリンターで用いられる白インクであっても、プリンターの機種によって色が互いに相違する場合もある。従って、例えば、グラビア印刷機による印刷により作成された白色部分とカラー部分とを含む商品の包装フィルムをインクジェットプリンターで再現する場合に、包装フィルムの白色部分の色を忠実に再現することは困難であった。
【0005】
なお、このような問題は、インクジェットプリンターを用いる場合に限らず、白色インクを含む複数色のインクを用いて印刷を行う場合に共通の問題であった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、白色を含む複数色のインクを用いて印刷を行う際に、印刷媒体上にカラー画像と共に所望の色の白色画像を形成することを可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の少なくとも一部を解決するために、本発明は、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]白色を含む複数色のインクを用いて印刷を行う印刷装置であって、
インクを噴射してカラーの第1の画像を印刷媒体上に形成する第1の画像形成部と、
インクを噴射して第2の画像の少なくとも一部が前記第1の画像に重なるように前記第2の画像を前記印刷媒体上に形成する第2の画像形成部であって、前記第2の画像の内の前記第1の画像に重なる部分の少なくとも一部である第1の部分を白色のインクのみを用いて形成すると共に、前記第2の画像の内の前記第1の画像に重ならない部分の少なくとも一部である第2の部分を白色と白色以外の少なくとも1色とのインクを用いて形成する第2の画像形成部と、を備える、印刷装置。
【0009】
この印刷装置では、白色を含む複数色のインクを用いて、カラーの第1の画像を印刷媒体上に形成すると共に、第2の画像の少なくとも一部が第1の画像に重なるように第2の画像を印刷媒体上に形成することができる。このとき、第2の画像の内の第1の画像に重なる部分の少なくとも一部である第1の部分は、白色のインクのみを用いて形成され、第2の画像の内の第1の画像に重ならない部分の少なくとも一部である第2の部分は、白色と白色以外の少なくとも1色とのインクを用いて形成される。そのため、第2の画像の内の第1の画像に重ならない部分の少なくとも一部である第2の部分の色を、調整された白色とすることができる。従って、この印刷装置では、白色を含む複数色のインクを用いて印刷を行う際に、印刷媒体上にカラー画像と共に所望の色の白色画像を形成することができる。さらに、この印刷装置では、第2の画像の内の第1の画像に重なる部分の少なくとも一部である第1の部分が白色のインクのみを用いて形成されるため、第2の画像を形成することによるカラーの第1の画像の色への影響を抑制することができる。
【0010】
[適用例2]適用例1に記載の印刷装置であって、さらに、
印刷中の少なくとも一部の期間において、前記第1の画像形成部による前記第1の画像の形成と前記第2の画像形成部による前記第2の画像の形成とは並行して行われるように、前記第1の画像形成部と前記第2の画像形成部とを制御する制御部を備える、印刷装置。
【0011】
この印刷装置では、印刷中の少なくとも一部の期間において、第1の画像形成部による第1の画像の形成と第2の画像形成部による第2の画像の形成とが並行して行われるため、印刷媒体上にカラー画像と共に所望の色の白色画像を形成する印刷処理を効率的に実行することができる。
【0012】
[適用例3]適用例2に記載の印刷装置であって、
前記制御部は、前記第1の画像を表す画像データと前記第2の画像を表す画像データとを用いて、前記第2の画像の前記第1の部分を表す画像データと、前記第2の画像の前記第2の部分を表す画像データと、を生成する画像データ変換部を含む、印刷装置。
【0013】
この印刷装置では、第1の画像を表す画像データと第2の画像を表す画像データとを取得できれば、第2の画像の第1の部分を表す画像データと第2の画像の第2の部分を表す画像データとを生成し、生成された画像データに基づいて、第2の画像の内の第1の部分を白色のインクのみを用いて形成すると共に、第2の画像の内の第2の部分を白色と白色以外の少なくとも1色とのインクを用いて形成することができる。
【0014】
[適用例4]適用例2または適用例3に記載の印刷装置であって、さらに、
前記第1の画像形成部としての第1のノズル群と、前記第2の画像形成部としての第2のノズル群と、を有するヘッドを備える、印刷装置。
【0015】
この印刷装置では、ヘッドの第1のノズル群により第1の画像を印刷媒体上に形成することができると共に、ヘッドの第2のノズル群により第2の画像を印刷媒体上に形成することができ、白色を含む複数色のインクを用いて印刷を行う際に、印刷媒体上にカラー画像と共に所望の色の白色画像を形成することができると共に、第2の画像を形成することによるカラーの第1の画像の色への影響を抑制することができる。
【0016】
[適用例5]適用例4に記載の印刷装置であって、さらに、
前記印刷媒体を前記ヘッドに対して所定の方向に相対移動させる印刷媒体送り機構を備え、
前記ヘッドは、前記所定の方向に沿って伸びると共に、前記複数色のインクのそれぞれに対応する複数のノズル列を含み、
前記制御部は、前記ヘッドを前記所定の方向に沿って上流部分と下流部分とに区分した場合における前記上流部分と前記下流部分との一方に位置する前記複数のノズル列の部分を前記第1のノズル群と設定し、前記上流部分と前記下流部分との他方に位置する前記複数のノズル列の部分を前記第2のノズル群と設定する、印刷装置。
【0017】
この印刷装置では、第1のノズル群を用いた第1の画像の形成と第2のノズル群を用いた第2の画像の形成とを並行して実行することができる。
【0018】
[適用例6]適用例5に記載の印刷装置であって、さらに、
前記第1の画像と前記第2の画像との重複部分における印刷順を指定する印刷順指定情報を受領する印刷順指定受領部を備え、
前記制御部は、前記印刷順指定情報が前記第1の画像を先に形成する印刷順を指定する場合には、前記ヘッドの前記上流部分に位置する前記複数のノズル列の部分を前記第1のノズル群と設定し、前記印刷順指定情報が前記第2の画像を先に形成する印刷順を指定する場合には、前記ヘッドの前記下流部分に位置する前記複数のノズル列の部分を前記第1のノズル群と設定する、印刷装置。
【0019】
この印刷装置では、第1の画像と第2の画像との印刷順がいずれであっても、第1のノズル群を用いた第1の画像の形成と第2のノズル群を用いた第2の画像の形成とを並行して実行することができる。
【0020】
[適用例7]適用例4ないし適用例6のいずれかに記載の印刷装置であって、
前記第2のノズル群は、前記複数色のインクの内、白色以外の少なくとも1色のインクを噴射しない、印刷装置。
【0021】
[適用例8]適用例7に記載の印刷装置であって、
前記複数色のインクは、少なくとも1つの色相について淡色インクと濃色インクとの組み合わせを含み、
前記第2のノズル群は、前記濃色インクを噴射しない、印刷装置。
【0022】
この印刷装置では、印刷媒体上にカラー画像と共に所望の色の白色画像を形成することができると共に、白色画像における画質の低下(粒状感の増加)を抑制することができる。
【0023】
[適用例9]適用例7または適用例8に記載の印刷装置であって、
前記複数色のインクは、黒色インクを含み、
前記第2のノズル群は、前記黒色インクを噴射する、印刷装置。
【0024】
この印刷装置では、印刷媒体上にカラー画像と共に所望の色の白色画像を形成することができると共に、白色画像の明度の調整が可能となり、白色画像の色の選択可能な範囲を拡張することができる。
【0025】
[適用例10]適用例1ないし適用例9のいずれかに記載の印刷装置であって、さらに、
前記第2の画像の前記第2の部分の色について濃度値と所定の表色系における表色値とを取得する色指定部を備え、
前記第2の画像形成部は、前記取得された値に基づき、前記第2の画像の前記第2の部分の形成を行う、印刷装置。
【0026】
この印刷装置では、印刷媒体上にカラー画像と共に所望の色の白色画像を形成することができると共に、第2の画像の第2の部分の色(白色画像の色)を正確にかつ容易に指定することができる。
【0027】
[適用例11]適用例10に記載の印刷装置であって、
前記色指定部は、物体の測色結果に基づき、前記濃度値と前記所定の表色系における表色値との少なくとも一方を取得する、印刷装置。
【0028】
この印刷装置では、印刷媒体上にカラー画像と共に所望の色の白色画像を形成することができると共に、第2の画像の第2の部分の色(白色画像の色)をより正確にかつより容易に指定することができる。
【0029】
[適用例12]適用例11に記載の印刷装置であって、
前記色指定部は、白色背景における測色結果と黒色背景における測色結果とに基づき、前記濃度値と前記所定の表色系における表色値との少なくとも一方を取得する、印刷装置。
【0030】
この印刷装置では、白色背景における測色結果と黒色背景における測色結果とに基づき濃度値と所定の表色系における表色値との少なくとも一方が取得されるため、例えば白色背景における測色結果に基づく所定の表色系における表色値の取得や、黒色背景における測色結果に基づく濃度値の取得を行うことにより、第2の画像の第2の部分の色(白色画像の色)をより正確にかつより容易に指定することができる。
【0031】
[適用例13]適用例10ないし適用例12のいずれかに記載の印刷装置であって、
前記所定の表色系は、L***表色系とL***表色系との一方である、印刷装置。
【0032】
[適用例14]適用例1ないし適用例13のいずれかに記載の印刷装置であって、
前記第2の画像形成部は、前記第2の画像の前記第2の部分の内、白色部分と白色以外の部分とで構成される所定のコードの前記白色部分を構成する部分は、白色のインクのみを用いて形成する、印刷装置。
【0033】
この印刷装置では、第2の画像の第2の部分であっても、所定のコードの白色部分を構成する部分である場合には、白色のインクのみを用いて画像が形成されるため、コードの読み取り精度の低下を抑制することができる。
【0034】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、印刷方法および装置、印刷制御方法および装置、印刷装置と印刷制御装置とを含む印刷システム、これらの方法、装置またはシステムの機能を実現するためのコンピュータープログラム、そのコンピュータープログラムを記録した記録媒体、そのコンピュータープログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号、等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1実施例における印刷システムの構成を概略的に示す説明図である。
【図2】PC200の構成を概略的に示す説明図である。
【図3】プリンター100の構成を概略的に示す説明図である。
【図4】PC200の構成を機能的に示すブロック図である。
【図5】プリンター100の構成を機能的に示すブロック図である。
【図6】本実施例の印刷システム10における印刷処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】印刷画像PIカラー画像データCdata非重複部白画像データWINdataおよび重複部白画像データWIOdataの一例を示す説明図である。
【図8】カラー画像と白画像との印刷順を示す説明図である。
【図9】プリンタードライバー300を実行するCPU210による処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】調色白指定処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】調色白指定用のUIウィンドウの一例を示す説明図である。
【図12】リアルプリントRPの測色方法を示す説明図である。
【図13】調色白画像用の色変換処理インク色分版処理ハーフトーン処理の流れを示すフローチャートである。
【図14】調色白画像用ルックアップテーブルLUTwの一例を部分的に示す説明図である。
【図15】カラー画像用の色変換処理インク色分版処理ハーフトーン処理の流れを示すフローチャートである。
【図16】カラー画像用ルックアップテーブルLUTcの一例を部分的に示す説明図である。
【図17】コマンド作成処理の流れを示すフローチャートである。
【図18】コマンド作成処理により作成されるコマンドの一例を示す説明図である。
【図19】インクコード表ICTの内容の一例を示す説明図である。
【図20】プリンター100による処理の流れを示すフローチャートである。
【図21】ラスターバッファーおよびヘッドバッファーの詳細構成を示す説明図である。
【図22】プリンター100のプリントヘッド144の構成を示す説明図である。
【図23】白色を調整する白調色の概念を示す説明図である。
【図24】カラー画像および白画像の色再現域(ガマット)の一例を示す説明図である。
【図25】第2実施例における調色白画像用の色変換処理インク色分版処理およびハーフトーン処理の流れを示すフローチャートである。
【図26】第3実施例のPC200bの構成を機能的に示すブロック図である。
【図27】第3実施例におけるプリンタードライバー300を実行するCPU210による処理の流れを示すフローチャートである。
【図28】第4実施例における印刷画像PIカラー画像データCdata非重複部白画像データWINdataおよび重複部白画像データWIOdataの一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.第1実施例:
A−1.印刷システムの構成:
A−2.印刷処理:
B.第2実施例:
C.第3実施例:
D.第4実施例:
E.変形例:
【0037】
A.第1実施例:
A−1.印刷システムの構成:
図1は、本発明の第1実施例における印刷システムの構成を概略的に示す説明図である。本実施例の印刷システム10は、プリンター100と、パーソナルコンピューター(PC)200と、を備えている。プリンター100は、インクを噴射して印刷媒体(例えば印刷用紙や透明フィルム)上にインクドットを形成することにより画像を印刷するインクジェット式カラープリンターである。PC200は、プリンター100に印刷用データを供給すると共に、プリンター100による印刷動作を制御する印刷制御装置として機能する。プリンター100とPC200とは、有線または無線によって情報通信可能に接続されている。具体的には、本実施例では、プリンター100とPC200とは、USBケーブルによって互いに接続されている。なお、図1には、例えばグラビア印刷機による印刷により作成された実際の印刷物(以下、「リアルプリントRP」とも呼ぶ)が示されている。
【0038】
本実施例のプリンター100は、シアン(C)と、マゼンタ(M)と、イエロー(Y)と、ブラック(K)と、ライトシアン(Lc)と、ライトマゼンタ(Lm)と、ホワイト(W)と、の合計7色のインクを用いて印刷を行うプリンターである。本実施例の印刷システム10は、印刷媒体としての透明フィルム上に、カラー画像と白画像とを並行して形成する印刷処理を実現する。カラー画像と白画像とが形成された透明フィルムは、例えば、商品包装用のフィルムとして使用される。
【0039】
なお、本明細書において「白色」とは、可視光線のすべての波長を100%反射する物体の表面色である厳密な意味での白色に限らず、いわゆる「白っぽい色」のように、社会通念上、白色と呼ばれる色を含むものとする。「白色」とは、例えば、(1)x-rite社製の測色機eye-one Proを用いて測色モード:スポット測色、光源:D50、バッキング:Black、印刷媒体:透明フィルムで測色した場合に、Lab系での標記がa**平面上で半径20の円周及びその内側にあり、かつL*が70以上で表される色相範囲内の色か、(2)ミノルタ製の測色計CM2022を用いて測定モードD502°視野、SCFモード、白地バックで測色した場合に、Lab系での標記がa**平面上で半径20の円周及びその内側にあり、かつL*が70以上で表される色相範囲内の色か、(3)特開2004−306591号公報に記載されているように画像の背景として用いられるインクの色かをいい、背景として用いられるのであれば純粋な白に限られない。本明細書では、白(ホワイト)インクに他色のインクを混ぜて白色を調整することを「白調色」と呼び、白調色により生成された白色(調整された白色)を「調色白」と呼ぶ。また、本明細書では、白色の画像を「白画像」と呼び、白画像の中で調色白によって構成される画像を特に「調色白画像」と呼ぶ。
【0040】
図2は、PC200の構成を概略的に示す説明図である。PC200は、CPU210と、ROM220と、RAM230と、USBインターフェース(USB I/F)240と、ネットワークインターフェース(N/W I/F)250と、ディスプレイインターフェース(ディスプレイ I/F)260と、シリアルインターフェース(シリアル I/F)270と、ハードディスクドライブ(HDD)280と、CDドライブ290と、を含んでいる。PC200の各構成要素は、バスを介して互いに接続されている。
【0041】
PC200のUSBインターフェース240には、USBインターフェース対応の測色器CMが接続されている。ディスプレイインターフェース260には、表示装置としてのモニターMONが接続されている。シリアルインターフェース270には、入力装置としてのキーボードKBおよびマウスMOUが接続されている。なお、図2に示したPC200の構成はあくまで一例であり、PC200の構成要素の一部を省略したり、PC200にさらなる構成要素を付加したりする変形が可能である。
【0042】
図3は、プリンター100の構成を概略的に示す説明図である。プリンター100は、CPU110と、ROM120と、RAM130と、ヘッドコントローラー140と、プリントヘッド144と、キャリッジコントローラー(CRコントローラー)150と、キャリッジモーター(CRモーター)152と、印刷媒体送りコントローラー(PFコントローラー)160と、印刷媒体送りモーター(PFモーター)162と、USBインターフェース(USB I/F)170と、ネットワークインターフェース(N/W I/F)180と、表示部としてのモニター190と、を含んでいる。プリンター100の各構成要素は、バスを介して互いに接続されている。
【0043】
プリンター100のCPU110は、ROM120に格納されているコンピュータープログラムを実行することにより、プリンター100全体の動作を制御する制御部として機能する。プリンター100のプリントヘッド144は、図示しないキャリッジに搭載されている。キャリッジコントローラー150は、キャリッジモーター152を制御して、キャリッジを所定の方向に往復移動させる。これにより、プリントヘッド144が印刷媒体の所定の方向(主走査方向)に沿って往復移動する主走査が実現される。また、印刷媒体送りコントローラー160と印刷媒体送りモーター162とは、印刷媒体送り機構として機能する。すなわち、印刷媒体送りコントローラー160は、印刷媒体送りモーター162を制御して、印刷媒体を主走査方向と直交する方向(副走査方向)に搬送する副走査を行う。プリントヘッド144は、インクを噴射するノズル群(図22参照)を有しており、ヘッドコントローラー140は、主走査および副走査に連動してプリントヘッド144によるノズル群からのインク噴射を制御する。これにより、印刷媒体上への画像の形成(画像の印刷)が実現される。
【0044】
図4は、PC200の構成を機能的に示すブロック図である。PC200のROM220(図2)には、CPU210により実行されるコンピュータープログラムとして、アプリケーションプログラムAPと、プリンタードライバー300と、が格納されている。アプリケーションプログラムAPは、印刷媒体としての透明フィルム上への印刷の対象となる画像(以下、「印刷画像PI」とも呼ぶ)の生成、編集等を行うためのプログラムである。CPU210は、アプリケーションプログラムAPを実行することにより、印刷画像PIの生成、編集を実現する。
【0045】
また、アプリケーションプログラムAPを実行するCPU210は、ユーザーによる印刷実行指示に応じて、カラー画像データCdataと非重複部白画像データWINdataと重複部白画像データWIOdataと印刷順指定情報SSとをプリンタードライバー300に対して出力する。これら各データの内容は、「A−2.印刷処理」において詳述する。
【0046】
プリンタードライバー300(図4)は、アプリケーションプログラムAPから出力されたデータに基づき印刷用データ(印刷用コマンド)を生成し、印刷用データに基づきプリンター100(図1)を制御して印刷処理を行うためのプログラムである。CPU210(図2)は、プリンタードライバー300を実行することにより、プリンター100による印刷の制御を実現する。
【0047】
図4に示すように、プリンタードライバー300は、カラー画像用インク色分版処理モジュール310と、カラー画像用ハーフトーン処理モジュール320と、調色白指定モジュール330と、調色白画像用色変換モジュール340と、調色白画像用インク色分版処理モジュール350と、調色白画像用ハーフトーン処理モジュール360と、コマンド作成モジュール370と、を含んでいる。調色白指定モジュール330は、UI制御モジュール332を含んでいる。また、PC200のHDD280(図2)には、カラー画像用ルックアップテーブル(LUT)LUTcと、カラー画像用ハーフトーン(HT)リソースHTcと、調色白画像用ルックアップテーブル(LUT)LUTwと、調色白画像用ハーフトーン(HT)リソースHTwと、インクコード表ICTと、が格納されており、プリンタードライバー300および各モジュールは、これらの情報を参照して処理を実行する。各モジュールの機能や各情報の内容は、「A−2.印刷処理」において詳述する。
【0048】
図5は、プリンター100の構成を機能的に示すブロック図である。プリンター100のROM120(図3)には、CPU110により実行されるコンピュータープログラムとして、コマンド処理モジュール112が格納されている。後述するように、CPU110は、コマンド処理モジュール112を実行することにより、PC200から受信した印刷用コマンドの処理を実現する。また、プリンター100のRAM130(図3)は、ラスターバッファー132を有している。ラスターバッファー132は、カラー画像用ラスターバッファー132cと、白画像用ラスターバッファー132wと、の2つの領域を含んでいる。また、プリンター100のヘッドコントローラー140(図3)は、ヘッドバッファー142を有している。ヘッドバッファー142は、上流用ヘッドバッファー142uと、下流用ヘッドバッファー142lと、を含んでいる。これらのプログラムやバッファーの機能および詳細構成は、「A−2.印刷処理」において詳述する。
【0049】
A−2.印刷処理:
図6は、本実施例の印刷システム10における印刷処理の流れを示すフローチャートである。本実施例の印刷処理は、印刷媒体としての透明フィルム上に、カラー画像と白画像とを並行して形成し、カラー画像と白画像とが形成された印刷物を作成する処理である。なお、カラー画像は、本発明における第1の画像に相当し、白画像は、本発明における第2の画像に相当する。
【0050】
ステップS110(図6)では、アプリケーションプログラムAP(図4)を実行するCPU210(図2)が、ユーザーによる印刷実行指示を受領する。CPU210は、印刷実行指示の受領に応じて、カラー画像データCdataと非重複部白画像データWINdataと重複部白画像データWIOdataと印刷順指定情報SSとをプリンタードライバー300に対して出力する(図4)。カラー画像データCdataは、印刷画像PIにおけるカラー画像を表すデータであり、非重複部白画像データWINdataは、印刷画像PIにおける非重複白領域Awn(後述)を特定するデータであり、重複部白画像データWIOdataは、印刷画像PIにおける重複白領域Awo(後述)を特定するデータであり、印刷順指定情報SSは、カラー画像と白画像とが重なる部分におけるカラー画像と白画像との印刷順(後述)を特定するデータである。
【0051】
図7は、印刷画像PI、カラー画像データCdata、非重複部白画像データWINdataおよび重複部白画像データWIOdataの一例を示す説明図である。図7(a)は、印刷画像PIの一例を示している。印刷画像PIは、カラー画像Icとして、図形の画像と文字の画像(図中の「abcde」の画像)とを含んでいる。また、印刷画像PIは、白領域(非重複白領域Awnおよび重複白領域Awo)と非白領域Anとにより構成されている。白領域は、白画像に対応する領域(印刷の際に白画像が形成されるべき領域)であり、非白領域Anは、白画像に対応する領域以外の領域(印刷の際に白画像が形成されない領域)である。
【0052】
本実施例では、印刷画像PIにおいてカラー画像Icが配置される領域は、すべて白領域として設定される。従って、印刷の際には、カラー画像は常に白画像と重なるように形成される。これは、カラー画像Icの位置において印刷媒体としての透明フィルムを介して印刷物の反対側が透けてしまうことを抑制するためである。また、印刷の際には、非白領域Anに対応する印刷媒体上の領域には、カラー画像も白画像も形成されず、印刷媒体の地色が表れることとなる。
【0053】
重複白領域Awoは、白領域の内のカラー画像Icと重なる部分である。ただし、本実施例では、重複白領域Awoは、白領域の内、文字の画像を除くカラー画像Icと重なる部分であるとしている。従って、図7(a)に示す印刷画像PIにおいて、重複白領域Awoは、二重のハート形線に挟まれた領域(クロスハッチングを付して示す領域)である。本実施例では、印刷の際に、重複白領域Awoに対応する印刷媒体上の領域に、白インクのみを用いて白画像が形成される。重複白領域Awoは、本発明における第2の画像(白画像)の第1の部分に相当する。
【0054】
非重複白領域Awnは、白領域の内のカラー画像Icと重ならない部分である。ただし、本実施例では、非重複白領域Awnは、白領域の内、文字の画像を除くカラー画像Icと重ならない部分であるとしている。従って、図7(a)に示す印刷画像PIにおいて、非重複白領域Awnは、内側のハート型線に囲まれた領域(シングルハッチングを付して示す領域)である。本実施例では、印刷の際に、非重複白領域Awnに対応する印刷媒体上の領域に、調色白によって構成される白画像である調色白画像が形成される。非重複白領域Awnは、本発明における第2の画像(白画像)の第2の部分に相当する。
【0055】
図7(b)は、カラー画像データCdataを概念的に示している。本実施例では、カラー画像データCdataは、印刷画像PIのカラー画像Icのみに注目した場合における印刷画像PIの各画素の色をそれぞれ8ビットのC値、M値、Y値、K値で特定するデータである。カラー画像データCdataは、印刷画像PIのカラー画像Icに対応する画素の値が当該カラー画像Icの色を特定する値であり、残りの画素の値がカラー画像を形成しないことを示す値(例えばC,M,Y,K=0)であるデータとなる。
【0056】
図7(c)は、非重複部白画像データWINdataを概念的に示している。本実施例では、非重複部白画像データWINdataは、印刷画像PIからカラー画像Icを除外した場合における印刷画像PIの非重複白領域Awnの各画素の色を8ビットのW値で特定するデータである。ただし、W値の取り得る値は、0と255とのいずれか一方となっている。非重複部白画像データWINdataは、印刷画像PIの非重複白領域Awnに対応する画素の値が白画像を形成することを示す値(例えばW=255)であり、残りの画素の値が白画像を形成しないことを示す値(例えばW=0)であるデータである。なお、非重複部白画像データWINdataは、各画素について2ビットの値で表現されたデータであってもよい。
【0057】
図7(d)は、重複部白画像データWIOdataを概念的に示している。本実施例では、重複部白画像データWIOdataは、印刷画像PIからカラー画像Icを除外した場合における印刷画像PIの重複白領域Awoの各画素の色を8ビットのW値で特定するデータである。ただし、W値の取り得る値は、0と255とのいずれか一方となっている。重複部白画像データWIOdataは、印刷画像PIの重複白領域Awoに対応する画素の値が白画像を形成することを示す値(例えばW=255)であり、残りの画素の値が白画像を形成しないことを示す値(例えばW=0)であるデータである。なお、重複部白画像データWIOdataは、各画素について2ビットの値で表現されたデータであってもよい。
【0058】
図8は、カラー画像と白画像との印刷順を示す説明図である。図8(a)は、印刷媒体PMとしての透明フィルム上に白画像Iwを形成し、白画像Iwの上にカラー画像Icを形成する印刷順を示している。本明細書では、この印刷順を、「白−カラー印刷」または「W−C印刷」と呼ぶ。図8(a)に示したW−C印刷では、観察者は、図の上方から印刷物を観察することとなる(図中の矢印参照)。
【0059】
図8(b)は、印刷媒体PMとしての透明フィルム上にカラー画像Icを形成し、カラー画像Icの上に白画像Iwを形成する印刷順を示している。本明細書では、この印刷順を、「カラー−白印刷」または「C−W印刷」と呼ぶ。図8(b)に示したC−W印刷では、観察者は、図の下方から印刷物を観察することとなる(図中の矢印参照)。
【0060】
ユーザーは、印刷物の使用態様に応じて、W−C印刷を行うかC−W印刷を行うかを選択する。アプリケーションプログラムAPを実行するCPU210は、ユーザーにより選択された印刷順を特定する印刷順指定情報SSを生成し、プリンタードライバー300に対して出力する(図4)。
【0061】
印刷処理(図6)のステップS120では、プリンタードライバー300(図4)を実行するCPU210による処理が実行される。図9は、プリンタードライバー300を実行するCPU210による処理の流れを示すフローチャートである。ステップS210では、CPU210が、アプリケーションプログラムAPから出力されたカラー画像データCdataと非重複部白画像データWINdataと重複部白画像データWIOdataと印刷順指定情報SSとを受信する(図4参照)。
【0062】
ステップS220(図9)では、調色白指定モジュール330(図4)が、調色白指定処理を実行する。調色白指定処理は、印刷画像PIの非重複白領域Awn(図7(a)参照)に対応する印刷媒体上の領域に形成する白画像(調色白画像)の色を指定する処理である。図10は、調色白指定処理の流れを示すフローチャートである。ステップS310では、調色白指定モジュール330のUI制御モジュール332(図4)が、PC200のモニターMON(図2)に、調色白指定用のUIウィンドウを表示する。
【0063】
図11は、調色白指定用のUIウィンドウの一例を示す説明図である。図11(a)に示すように、本実施例の調色白指定用UIウィンドウW1は、サンプル画像表示エリアSaと、2つのスライダーバーSl1,Sl2と、ab平面表示エリアPlと、印刷順指定欄Se1と、値入力ボックスBo1と、測定(Measurement)ボタンB1と、OKボタンB2と、が含まれている。
【0064】
図11(a)に示した調色白指定用UIウィンドウW1において、サンプル画像表示エリアSaは、指定された調色白のサンプル画像を表示するための領域である。サンプル画像表示エリアSaは、左右に2分割されており、左側が白色背景(White Backing)における調色白を示す領域(白色背景エリア)であり、右側が黒色背景(Black Backing)における調色白を示す領域(黒色背景エリア)である。なお、サンプル画像表示エリアSaの最外周領域は、背景色(白色または黒色)を示す領域(背景色領域)であり、背景色領域の内側の領域が調色白を示す領域(白画像領域)である。また、サンプル画像表示エリアSaの中央付近には、白色背景エリアおよび黒色背景エリアの両方にまたがるように、カラー画像(図中の「A」の画像)が表示されている。このカラー画像の色や形は任意に設定可能である。
【0065】
調色白指定用UIウィンドウW1において、値入力ボックスBo1は、L***表色系における表色値(L*値(以下、単に「L値」とも表す)、a*値(以下、単に「a値」とも表す)、b*値(以下、単に「b値」とも表す))およびT値を入力することによって調色白を指定するための部分である。L値は、調色白の明るさを示す値であり、調色白画像を印刷する際の黒(K)インクの量に相関する。a値およびb値は、調色白の赤−緑軸および黄−青軸に沿った色度を表す値であり、調色白画像を印刷する際のカラーインクの量に相関する。T値は、濃度を示す値であり、調色白画像を印刷する際の単位面積あたりのインク量に相関する。すなわち、T値は、背景色の透過度に相関する。
【0066】
調色白指定用UIウィンドウW1において、スライダーバーSl1,Sl2およびab平面表示エリアPlも、Lab値およびT値を入力することによって調色白を指定するための部分である。
【0067】
なお、調色白指定用UIウィンドウW1において、印刷順指定欄Se1は、上述した印刷順の指定を示すための部分である。印刷順は、アプリケーションプログラムAPにおいて設定され、印刷順を特定する印刷順指定情報SSがアプリケーションプログラムAPからプリンタードライバー300に対して出力される(図4参照)。印刷順指定欄Se1には、印刷順指定情報SSにより特定される印刷順が、W−C印刷(W−C Print)とC−W印刷(C−W Print)とのいずれであるかが示される。なお、調色白指定用UIウィンドウW1において、印刷順指定欄Se1に示された印刷順の変更(新たな印刷順の指定)を指定できるものとしてもよい。
【0068】
また、最初に調色白指定用のUIウィンドウW1が表示される際には、値入力ボックスBo1やサンプル画像表示エリアSa等の表示状態は、デフォルトの調色白に対応する表示状態となっている。例えば、デフォルトの状態は、プリンター100の白インクの色として予め設定されたLab値およびT値に対応する表示状態である。
【0069】
UI制御モジュール332(図4)は、調色白指定用UIウィンドウW1が表示されている際に、ユーザーによるキーボードKBやマウスMOU(図2)を介した操作の有無を監視する(図10のステップS320)。操作があったと判定され(ステップS320:Yes)、操作がOKボタンB2でも測定ボタンB1でもない場合には(ステップS330:No、S340:No)、UI制御モジュール332は、操作に応じた値を取得し(ステップS360)、取得された値を値入力ボックスBo1等に表示し(ステップS370)、サンプル画像表示エリアSaの表示を更新する(ステップS380)。
【0070】
例えば、ユーザーがキーボードKB(図2)を介して、値入力ボックスBo1を選択すると共に値を入力すると、入力値が値入力ボックスBo1に表示されると共に、サンプル画像表示エリアSaの色が入力値により特定される色(調色白)に変更される。ユーザーが値入力ボックスBo1におけるa値やb値を変更すると、サンプル画像表示エリアSaの白画像領域の色(調色白)の色味が変更される。また、ユーザーが値入力ボックスBo1のL値を変更すると、サンプル画像表示エリアSaの白画像領域の色の明るさが変更される。ユーザーが値入力ボックスBo1のT値を変更した場合には、背景色の透過度が変更されるため、サンプル画像表示エリアSaの黒色背景エリアにおける白画像領域の色の明るさが変更されるが、白色背景エリアにおける白画像領域の色は変更されない。そのため、T値(濃度値)の変化に応じた色の変化を、サンプル画像表示エリアSaの黒色背景エリアと白色背景エリアとを対比することで容易に確認することができ、ユーザーは調色白をより正確にかつより容易に指定することができる。
【0071】
また、例えば、ユーザーがマウスMOU(図2)を操作してスライダーバーSl1の位置を変更すると、位置に応じたL値が取得され、サンプル画像表示エリアSaの色が、取得値により特定される色に変更される。同様に、ユーザーがマウスMOUを操作してスライダーバーSl2の位置を変更すると、位置に応じたT値が取得され、サンプル画像表示エリアSaの色が変更される。また、ユーザーがマウスMOUを操作してab平面表示エリアPlの指定点(図中×で示す)の位置を変更すると、×の位置に応じたa値およびb値が取得され、サンプル画像表示エリアSaの色が変更される。
【0072】
なお、値入力ボックスBo1とスライダーバーSl1,Sl2およびab平面表示エリアPlとは連動している。すなわち、値入力ボックスBo1において値が変更された場合には、スライダーバーSl1,Sl2の位置やab平面表示エリアPlにおける×の位置が変更される。同様に、スライダーバーSl1,Sl2の位置やab平面表示エリアPlにおける×の位置が変更された場合には、変更された指定値が値入力ボックスBo1に表示される。
【0073】
本実施例では、リアルプリントRP(図1参照)の測色結果に基づき調色白を指定することもできる。リアルプリントRPの測色結果に基づき調色白を指定することにより、リアルプリントRPの白部分の色を忠実に再現した印刷処理を実現することができる。
【0074】
図12は、リアルプリントRPの測色方法を示す説明図である。リアルプリントRPは、印刷媒体PM上に、白部分Pwの画像およびカラー部分Pcの画像が形成された印刷物である。図12(a)に示すように、測色は、リアルプリントRPの白部分Pwの任意の点を測定点MPとして設定し、測定点MPの色を表す値(Lab値およびT値)を測色器CM(図2)にて測定することにより行われる。測色方法は、白色背景Bw上にリアルプリントRPを載置して行う白色背景測色と、黒色背景Bb上にリアルプリントRPを載置して行う黒色背景測色と、がある。図12(b)に示すように、リアルプリントRPの白部分Pwの濃度により、白色背景測色と黒色背景測色とでは、測色値(L値)が異なる場合がある。本実施例では、白色背景測色は、Lab値を取得するために行われ、黒色背景測色は、T値を取得するために行われる。これにより、より正確かつ容易な調色白の指定が可能となる。
【0075】
図10のステップS320において操作があったと判定され(ステップS320:Yes)、操作がOKボタンB2ではなく(ステップS330:No)、測定ボタンB1であると判定された場合には(ステップS340:Yes)、UI制御モジュール332(図4)は、PC200のモニターMON(図2)に、図11(b)に示す測色用UIウィンドウW2を表示する(ステップS350)。
【0076】
測色用UIウィンドウW2(図11(b))は、リアルプリントRPの測色により調色白を指定するためのUIウィンドウである。測色用UIウィンドウW2には、背景選択領域Se2と、測色値表示ボックスBo2と、測定(Measurement)ボタンB3と、OKボタンB4と、が含まれている。背景選択領域Se2は、白色背景測色と黒色背景測色とのいずれを行うかを選択するための部分である。ユーザーは、背景選択領域Se2において測色方法を選択すると共に測定ボタンB3を選択し、選択された方法で測色を実行する。測色は、白色背景測色と黒色背景測色との両方が順番に実行されてもよいし、白色背景測色と黒色背景測色とのいずれか一方のみが実行されてもよい。測色が完了すると、測色結果に基づいた値(Lab値とT値との少なくとも一方)が取得され(図10のステップS360)、測色値表示ボックスBo2に表示される(ステップS370)。ユーザーがOKボタンB4を選択すると、調色白指定用UIウィンドウW1(図11(a))が再度表示される。このとき、調色白指定用UIウィンドウW1のサンプル画像表示エリアSaや、値入力ボックスBo1等の表示は、測色結果に基づいた表示に変更された状態となる(ステップS380)。なお、測色が実行された後に、調色白指定用UIウィンドウW1において、ユーザーは、測色結果に基づいて取得された値(Lab値およびT値)を修正することもできる。
【0077】
図10のステップS320において操作があったと判定され(ステップS320:Yes)、操作がOKボタンB2であると判定された場合には(ステップS330:Yes)、UI制御モジュール332(図4)は、その時点で取得され表示されているLab値およびT値により特定される色を調色白画像の色として設定し、Lab値およびT値を保存する(ステップS390)。以上の処理により、ユーザーは、正確にかつ容易に調色白画像の色を指定することができる。特に、測色器CMによる測色結果に基づき調色白のLab値およびT値を指定することにより、調色白画像の色をより正確にかつより容易に指定することができる。また、本実施例では、調色白をLab値とT値とにより指定できるため、調色白画像の濃度を含む色の値を正確に指定することができる。また、本実施例の調色白指定用UIウィンドウW1では、指定された色がサンプル画像表示エリアSaに表示されるため、ユーザーは表示された色を確認しながら容易に色を指定することができる。
【0078】
なお、保存されたLab値およびT値は、非重複部白画像データWINdata(図7(c)参照)と組み合わせられる。すなわち、非重複部白画像データWINdataにおいて、白画像を形成することを示すデータ(W=255)が割り当てられた画素に、Lab値およびT値が対応付けられる。本明細書では、Lab値およびT値が対応付けられた非重複部白画像データWINdataを、調色白画像データとも呼ぶ。
【0079】
プリンタードライバー300による処理(図9)におけるステップS230では、プリンタードライバー300が、調色白画像用の色変換処理と、インク色分版処理と、ハーフトーン処理と、を実行する。図13は、調色白画像用の色変換処理、インク色分版処理、ハーフトーン処理の流れを示すフローチャートである。ステップS410では、調色白画像用色変換モジュール340(図4)が、調色白指定処理(図10)のステップS390において保存されたLab値をCMYK値に色変換する。色変換は、調色白画像用ルックアップテーブルLUTw(図4)を参照して実行される。
【0080】
図14は、調色白画像用ルックアップテーブルLUTwの一例を部分的に示す説明図である。図14(a)には、Lab値からCMYK値への色変換の際に参照される調色白画像用ルックアップテーブルLUTw1を示している。図14(a)に示すように、調色白画像用ルックアップテーブルLUTw1には、予め設定されたLab値とCMYK値との対応関係が規定されている。なお、調色白画像用ルックアップテーブルLUTw1において、CMYKの各階調値は、0以上100以下の範囲の値として規定されている。調色白画像用色変換モジュール340は、調色白画像用ルックアップテーブルLUTw1を参照して、Lab値をCMYK値に変換する。
【0081】
ステップS420(図13)では、調色白画像用インク色分版処理モジュール350(図4)が、ステップS410において決定されたCMYK値と調色白指定処理(図10)のステップS390において保存されたT値との組み合わせをインク色別階調値に変換するインク色分版処理を行う。上述したように、本実施例のプリンター100は、シアン(C)と、マゼンタ(M)と、イエロー(Y)と、ブラック(K)と、ライトシアン(Lc)と、ライトマゼンタ(Lm)と、ホワイト(W)と、の合計7色のインクを用いて印刷を行う。従って、インク色分版処理では、CMYK値およびT値の組み合わせが、7つのインク色のそれぞれの階調値に変換される。インク色分版処理も、調色白画像用ルックアップテーブルLUTw(図4)を参照して実行される。図14(b)には、CMYK値およびT値の組み合わせからインク色別階調値への変換の際に参照される調色白画像用ルックアップテーブルLUTw2を示している。図14(b)に示すように、調色白画像用ルックアップテーブルLUTw2には、予め設定されたCMYK値およびT値の組み合わせとインク色のそれぞれの階調値との対応関係が規定されている。なお、調色白画像用ルックアップテーブルLUTw2において、インク色の階調値は、0以上255以下の範囲の値として規定されている。調色白画像用インク色分版処理モジュール350は、調色白画像用ルックアップテーブルLUTw2を参照して、CMYK値とT値との組み合わせをインク色別階調値に変換する。
【0082】
なお、図14(b)に示すように、本実施例では、白調色(白インクに他色のインクを混ぜて白色を調整すること)に、白色を除く6色のインクの内、イエロー(Y)と、ブラック(K)と、ライトシアン(Lc)と、ライトマゼンタ(Lm)と、の4色のインクが用いられ、シアン(C)とマゼンタ(M)との2色のインクは使用されない。すなわち、白調色には、同一の色相についての淡色インクと濃色インクとの2種類のインクの内、濃色インクは使用されない。
【0083】
ステップS430(図13)では、調色白画像用インク色分版処理モジュール350(図4)が、調色白画像データにおける1画素のデータを取り出す。ステップS440では、調色白画像用インク色分版処理モジュール350が、取り出された画素の値が、調色白画像を形成しないことを示す値(ゼロ)と調色白画像を形成することを示す値(255)であるとのいずれであるかを判定する。画素の値が255であると判定された場合には(ステップS440:No)、調色白画像用インク色分版処理モジュール350は、ステップS420で決定されたインク色別階調値を保存する(ステップS450)。一方、画素の値が0(ゼロ)であると判定された場合には(ステップS440:Yes)、ステップS450の処理はスキップされる。
【0084】
図13のステップS430からS450までの処理は、調色白画像データのすべての画素についての処理が終了するまで繰り返し実行される(ステップS460参照)。全画素についての処理が終了した場合には(ステップS460:Yes)、調色白画像用ハーフトーン処理モジュール360(図4)が、1画素のインク色別階調値を取り出し(ステップS470)、インク色毎にディザパターンを参照して2値化処理(ハーフトーン処理)を行う(ステップS480)。2値化処理は、予め設定された調色白画像用ハーフトーンリソースHTw(図4)を参照して実行される。なお、調色白画像用ハーフトーンリソースHTwは、調色白画像におけるドットの埋まりを重視して設定されているとしてもよい。2値化処理は、全インク色についての処理が終了するまで繰り返し実行される(ステップS490参照)。また、ステップS470からS490までの処理は、すべての画素についての処理が終了するまで繰り返し実行される(ステップS492参照)。
【0085】
図13に示した調色白画像用の色変換処理、インク色分版処理、ハーフトーン処理により、調色白画像を形成する際の各画素の各インク色のドットのON/OFFを規定する調色白画像用ドットデータが生成される。
【0086】
プリンタードライバー300による処理(図9)におけるステップS240では、プリンタードライバー300が、カラー画像用の色変換処理と、インク色分版処理と、ハーフトーン処理と、を実行する。図15は、カラー画像用の色変換処理、インク色分版処理、ハーフトーン処理の流れを示すフローチャートである。ステップS510では、カラー画像用インク色分版処理モジュール310(図4)が、カラー画像データにおける1画素のデータを取り出す。ステップS520では、カラー画像用インク色分版処理モジュール310が、取り出した1画素のデータ(CMYK値)をインク色別階調値に変換するインク色分版処理を行う。上述したように、本実施例のプリンター100は、シアン(C)と、マゼンタ(M)と、イエロー(Y)と、ブラック(K)と、ライトシアン(Lc)と、ライトマゼンタ(Lm)と、ホワイト(W)と、の合計7色のインクを用いて印刷を行う。従って、インク色分版処理では、CMYK値が7つのインク色のそれぞれの階調値に変換される。インク色分版処理は、カラー画像用ルックアップテーブルLUTc(図4)を参照して実行される。
【0087】
図16は、カラー画像用ルックアップテーブルLUTcの一例を部分的に示す説明図である。図16に示すように、カラー画像用ルックアップテーブルLUTcには、予め設定されたCMYK値とインク色のそれぞれの階調値との対応関係が規定されている。なお、カラー画像用ルックアップテーブルLUTcにおいて、CMYKの各階調値は、0以上100以下の範囲の値として規定されており、インク色の階調値は、0以上255以下の範囲の値として規定されている。カラー画像用インク色分版処理モジュール310は、カラー画像用ルックアップテーブルLUTcを参照して、CMYK値をインク色別階調値に変換する。なお、図16に示すように、本実施例では、カラー画像の形成に、白色を除く6色のインクが用いられ、白色インクは使用されない。
【0088】
図15のステップS510およびS520の処理は、カラー画像データのすべての画素についての処理が終了するまで繰り返し実行される(ステップS530参照)。全画素についての処理が終了した場合には(ステップS530:Yes)、カラー画像用ハーフトーン処理モジュール320(図4)が、1画素のインク色別階調値を取り出し(ステップS540)、インク色毎にディザパターンを参照して2値化処理(ハーフトーン処理)を行う(ステップS550)。2値化処理は、予め設定されたカラー画像用ハーフトーンリソースHTc(図4)を参照して実行される。なお、カラー画像用ハーフトーンリソースHTcは、粒状感の抑制を重視して設定されているものとしてもよい。2値化処理は、全インク色についての処理が終了するまで繰り返し実行される(ステップS560参照)。また、ステップS540からS560までの処理は、すべての画素についての処理が終了するまで繰り返し実行される(ステップS570参照)。
【0089】
図15に示したカラー画像用の色変換処理、インク色分版処理、ハーフトーン処理により、カラー画像を形成する際の各画素の各インク色のドットのON/OFFを規定するカラー画像用ドットデータが生成される。
【0090】
プリンタードライバー300による処理(図9)におけるステップS250では、プリンタードライバー300のコマンド作成モジュール370(図4)が、コマンド作成処理を行う。コマンド作成処理は、調色白画像用およびカラー画像用のハーフトーン処理(図9のステップS230およびS240)により生成された調色白画像用およびカラー画像用のドットデータと、アプリケーションプログラムAPから出力された重複部白画像データWIOdataおよび印刷順指定情報SS(図4参照)と、に基づき、プリンター100による印刷処理を制御するための印刷用コマンドを生成する処理である。
【0091】
図17は、コマンド作成処理の流れを示すフローチャートである。ステップS610では、コマンド作成モジュール370(図4)が、アプリケーションプログラムAPから出力された印刷順指定情報SSに基づき、印刷順指定コマンドを作成する。図18は、コマンド作成処理により作成されるコマンドの一例を示す説明図である。図18(a)には、印刷順指定コマンドの例を示している。図18(a)に示すように、印刷順指定コマンドは、コマンド先頭を表す識別子と、印刷順指定コマンドであることを示す識別子と、コマンド長(2バイト)と、印刷順指定と、を含んでいる。印刷順指定においては、例えば、値「0」がC−W印刷(先にカラー画像Icを形成し、カラー画像Icの上に白画像Iwを形成する印刷順)を表し、値「1」がW−C印刷(先に白画像Iwを形成し、白画像Iwの上にカラー画像Icを形成する印刷順)を表す。コマンド作成モジュール370は、印刷順指定情報SSを参照して印刷順を特定し、特定された印刷順を指定する印刷順指定コマンドを作成する。
【0092】
ステップS620(図17)では、コマンド作成モジュール370(図4)が、カラー画像用ハーフトーン処理モジュール320から受領したカラー画像用ドットデータと調色白画像用ハーフトーン処理モジュール360から受領した調色白画像用ドットデータと重複部白画像データWIOdataとに基づき、垂直位置指定コマンドを作成する。垂直位置指定コマンドは、垂直方向(Y方向)に沿った画像の開始位置を指定するコマンドである。垂直位置指定コマンドは、全インクに共通のコマンドとして作成される。
【0093】
次に、コマンド作成モジュール370(図4)は、ステップS630(図17)からS670までの処理を通じて、カラー画像に対応するラスターコマンドを作成する。ステップS630では、コマンド作成モジュール370が、カラー画像用ドットデータに基づき、選択された1つのインク色についての水平位置指定コマンドを作成する。水平位置指定コマンドは、カラー画像形成の際の1つのインク色についての水平方向(X方向)に沿った画像の開始位置を指定するコマンドである。コマンド作成モジュール370は、1つのインク色についてのカラー画像用ドットデータを参照し、適当な画像開始位置を設定し、水平位置指定コマンドを作成する。
【0094】
ステップS640(図17)では、コマンド作成モジュール370(図4)が、カラー画像用ドットデータから、選択された1つのインク色について1ラスター分のドットデータを取り出す。ステップS650では、コマンド作成モジュール370が、インクコード表ICTを参照して、インクコードを検索する。図19は、インクコード表ICTの内容の一例を示す説明図である。図19に示すように、本実施例では、インク色のそれぞれに、固有のインク略称およびインクコードが割り当てられている。さらに、本実施例では、1つのインク色に対して、カラー画像用と白画像用との2種類の互いに異なるインク略称およびインクコードが割り当てられている。すなわち、インク略称およびインクコードは、複数のインク色のそれぞれと、カラー画像および白画像のそれぞれと、の組み合わせに対して一意に対応している。例えば、シアンについては、カラー画像用としてインク略称「C」とインクコード「01H」とが割り当てられ、白画像用としてインク略称「WC」とインクコード「81H」とが割り当てられている。同様に、白については、カラー画像用としてインク略称「IW」とインクコード「40H」とが割り当てられ、白画像用としてインク略称「W」とインクコード「C0H」とが割り当てられている。本ステップ(S650)では、コマンド作成モジュール370は、インクコード表ICTのカラー画像用のインクコードを検索する。
【0095】
ステップS660(図17)では、コマンド作成モジュール370(図4)が、取り出された1ラスター分のドットデータと検索されたインクコードとに基づき、ラスターコマンドを作成する。図18(b)には、ラスターコマンドの例を示している。図18(b)に示すように、ラスターコマンドは、コマンド先頭を表す識別子と、ラスターコマンドであることを示す識別子と、インクコードと、データ圧縮の有無を示す識別子と、1画素あたりのビット数と、X方向長さ(2バイト)と、Y方向長さ(2バイト)と、ラスターデータ(ドットデータ)と、を含んでいる。
【0096】
コマンド作成処理(図17)のステップS630からS660までの処理は、カラー画像の形成に用いられるインク色すべてについて終了するまで、繰り返し実行される。すなわち、まだ処理の対象となっていないインク色がある場合には(ステップS670:No)、処理対象となっていない1つのインク色が選択され、選択されたインク色についてステップS630からS660までの処理が実行される。全インクについての処理が終了すると(ステップS670:Yes)、1ラスターについて、カラー画像の形成に用いられるインク色のそれぞれに対応するラスターコマンドの作成が完了する。
【0097】
次に、コマンド作成モジュール370(図4)は、ステップS680(図17)からS720までの処理を通じて、非重複白領域Awn(図7)の白画像(調色白画像)に対応するラスターコマンドを作成する。ステップS680では、コマンド作成モジュール370が、調色白画像用ドットデータに基づき、選択された1つのインク色についての水平位置指定コマンドを作成する。水平位置指定コマンドは、調色白画像形成の際の1つのインク色についての水平方向(X方向)に沿った画像の開始位置を指定するコマンドである。コマンド作成モジュール370は、1つのインク色についての調色白画像用ドットデータを参照し、適当な画像開始位置を設定し、水平位置指定コマンドを作成する。
【0098】
ステップS690(図17)では、コマンド作成モジュール370(図4)が、調色白画像用ドットデータから、選択された1つのインク色について1ラスター分のドットデータを取り出す。ステップS700では、コマンド作成モジュール370が、インクコード表ICTを参照して、インクコードを検索する。コマンド作成モジュール370は、インクコード表ICT(図19)の白画像用のインクコードを検索する。
【0099】
ステップS710(図17)では、コマンド作成モジュール370(図4)が、取り出された1ラスター分のドットデータと検索されたインクコードとに基づき、ラスターコマンド(図18(b)参照)を作成する。コマンド作成処理のステップS680からS710までの処理は、調色白画像の形成に用いられるインク色すべてについて終了するまで、繰り返し実行される。すなわち、まだ処理の対象となっていないインク色がある場合には(ステップS720:No)、処理対象となっていない1つのインク色が選択され、選択されたインク色についてステップS680からS710までの処理が実行される。全インクについての処理が終了すると(ステップS720:Yes)、1ラスターについて、調色白画像の形成に用いられるインク色のそれぞれに対応するラスターコマンドの作成が完了する。
【0100】
次に、コマンド作成モジュール370(図4)は、ステップS730(図17)からS760までの処理を通じて、重複白領域Awo(図7)の白画像に対応するラスターコマンドを作成する。なお、上述したように、重複白領域Awoの白画像は、白インクのみを用いて形成されるため、重複白領域Awoの白画像に対応するラスターコマンドは白インクに対応するもののみが作成される。
【0101】
ステップS730(図17)では、コマンド作成モジュール370が、重複部白画像データWIOdataに基づき、水平位置指定コマンドを作成する。水平位置指定コマンドは、水平方向(X方向)に沿った画像の開始位置を指定するコマンドである。コマンド作成モジュール370は、重複部白画像データWIOdataを参照し、適当な画像開始位置を設定し、水平位置指定コマンドを作成する。
【0102】
ステップS740(図17)では、コマンド作成モジュール370(図4)が、重複部白画像データWIOdataから1ラスター分のドットデータを取り出す。ステップS750では、コマンド作成モジュール370が、インクコード表ICT(図19)を参照して、白画像用の白インクのインクコードを検索する。ステップS760では、コマンド作成モジュール370が、取り出された1ラスター分のドットデータと検索されたインクコードとに基づき、ラスターコマンド(図18(b)参照)を作成する。
【0103】
コマンド作成処理(図17)のステップS620からS760までの処理は、印刷画像PIの全ラスターについて完了するまで、繰り返し実行される。すなわち、まだ処理の対象となっていないラスターがある場合には(ステップS770:No)、処理対象となっていないラスター(前回の処理対象ラスターの1つ下のラスター)が選択され、選択されたラスターについてステップS620からS760までの処理が実行される。全ラスターについての処理が終了すると(ステップS770:Yes)、全ラスターについて、カラー画像および白画像の形成に用いられるインク色のそれぞれに対応するコマンドの作成が完了する。
【0104】
プリンタードライバー300による処理(図9)におけるステップS260では、プリンタードライバー300が、ステップS250で作成された印刷順指定コマンドと垂直位置指定コマンドと水平位置指定コマンドとラスターコマンドとを、プリンター100へ送信する。以上で、プリンタードライバー300による処理が完了する。
【0105】
印刷処理(図6)のステップS130では、プリンター100による処理が実行される。図20は、プリンター100による処理の流れを示すフローチャートである。ステップS810では、プリンター100のコマンド処理モジュール112(図5)を実行するCPU110(図3)が、PC200のプリンタードライバー300から送信されたコマンドを受信する。CPU110は、受信したコマンドの種類を判別し(ステップS820)、コマンドの種類に応じた処理を実行する。CPU110は、受信したコマンドが印刷順指定コマンドである場合には、印刷順指定コマンドにより指定された印刷順を示す情報をRAM130に保存し(ステップS830)、受信したコマンドが水平位置指定コマンドである場合には、水平方向の印刷開始位置Xを更新する(ステップS840)。
【0106】
また、コマンド処理モジュール112(図5)を実行するCPU110(図3)は、受信したコマンドがラスターコマンドである場合には、ラスターコマンドに含まれるラスターデータ(ドットデータ)をインクコード別のラスターバッファー132(図5)へ格納する(ステップS850)。図21は、ラスターバッファーおよびヘッドバッファーの詳細構成を示す説明図である。図21の上段にはカラー画像用のラスターバッファー132cを示しており、中段には白画像用のラスターバッファー132wを示している。図21に示すように、ラスターバッファー132は、インクコード(図19参照)別に領域が割り当てられている。すなわち、カラー画像用のラスターバッファー132cは、カラー画像用のインクコードのそれぞれに対応する領域の集合として構成されており、白画像用のラスターバッファー132wも、白画像用のインクコードのそれぞれに対応する領域の集合として構成されている。ラスターバッファー132の各領域のX方向のサイズは画像サイズに対応しており、Y方向のサイズはプリントヘッド144の高さの2分の1以上のサイズとなっている。ラスターバッファー132には、どこまでラスターデータを受信したかを示すY方向のラスターバッファーポインターを有している。
【0107】
図21の下段にはヘッドバッファー142(図5)を示している。図21に示すように、ヘッドバッファー142は、7つのインク色別に領域が割り当てられている。すなわち、ヘッドバッファー142は、シアン用(C,WC用)の領域と、マゼンタ用(M,WM用)の領域と、イエロー用(Y,WY用)の領域と、ブラック用(K,WK用)の領域と、ライトシアン用(Lc,WLc用)の領域と、ライトマゼンタ用(Lm,WLm用)の領域と、ホワイト用(IW,W用)の領域と、の集合として構成されている。ヘッドバッファー142の各領域のX方向のサイズは、キャリッジの走査距離に対応しており、Y方向のサイズはプリントヘッド144のノズル列146を構成するノズル数に対応している。また、ヘッドバッファー142のインク色別の領域のそれぞれは、上流用142uと下流用142lとに2分されている。
【0108】
図22は、プリンター100のプリントヘッド144の構成を示す説明図である。図22(a)および(b)に示すように、プリントヘッド144は、7つのインク色のそれぞれに対応するノズル列146が設けられている。ノズル列146は、Y方向(印刷媒体送り方向)に沿って伸びるように形成されている。また、図22(c)に示すように、各ノズル列146は、印刷媒体送り方向に沿って並ぶ32個のノズル群により構成されている。ノズル列146を構成するノズル群の内、印刷媒体送り方向に沿って上流側半分に位置するノズル群(1番目のノズル(ノズル1)から16番目のノズル(ノズル16)まで)を上流ノズル群と呼び、印刷媒体送り方向に沿って下流側半分に位置するノズル群(17番目のノズル(ノズル17)から32番目のノズル(ノズル32)まで)を下流ノズル群と呼ぶ。
【0109】
図22(a)に示すように、W−C印刷の際には、プリントヘッド144の各ノズル列146の上流ノズル群を用いて白画像の形成が行われ、下流ノズル群を用いてカラー画像の形成が行われる。また、図22(b)に示すように、C−W印刷の際には、プリントヘッド144の各ノズル列146の上流ノズル群を用いてカラー画像の形成が行われ、下流ノズル群を用いて白画像の形成が行われる。なお、W−C印刷の際には、プリントヘッド144の各ノズル列146の上流ノズル群は本発明における第2のノズル群に相当し、下流ノズル群は本発明における第1のノズル群に相当する。反対に、C−W印刷の際には、プリントヘッド144の各ノズル列146の上流ノズル群は本発明における第1のノズル群に相当し、下流ノズル群は本発明における第2のノズル群に相当する。
【0110】
図21に示すように、上流用ヘッドバッファー142uは、プリントヘッド144の印刷媒体送り方向に沿って上流側の部分(上流ノズル群)に対応するヘッドバッファー142であり、下流用ヘッドバッファー142lは、プリントヘッド144の印刷媒体送り方向に沿って下流側の部分(下流ノズル群)に対応するヘッドバッファー142である。
【0111】
図20のステップS850において、CPU110(図3)は、受信したラスターコマンドに含まれるインクコードを参照し、当該インクコードに対応するラスターバッファー132のラスターバッファーポインターにより指定される位置にラスターデータを格納する。そのため、CPU110は、ラスターコマンドがカラー画像用と白画像用とのいずれであるかを意識することなく、ラスターデータを適切なラスターバッファー132に振り分けることができる。
【0112】
コマンド処理モジュール112(図5)を実行するCPU110(図3)は、受信したコマンドが垂直位置指定コマンドである場合には、垂直方向の印刷開始位置Yを更新する(ステップS860)。次に、CPU110は、プリントヘッド144(図5)の高さの2分の1に対応するラスターバッファー132がフルであるか(すなわちラスターデータが格納されているか)否かを判定する(ステップS870)。未だフルではないと判定された場合には(ステップS870:No)、CPU110は、ラスターバッファー132のラスターバッファーポインターを更新する(ステップS880)。
【0113】
以上説明した処理が繰り返され、プリントヘッド144の高さの2分の1に対応するラスターバッファー132にラスターデータが格納されると、プリントヘッド144の高さの2分の1に対応するラスターバッファー132がフルであると判定される(ステップS870:Yes)。このとき、CPU110(図3)は、RAM130に保存された印刷順を示す情報に基づき、印刷順がC−W印刷とW−C印刷とのいずれであるかを判定する(ステップS880)。印刷順がC−W印刷であると判定された場合には(ステップS880:Yes)、CPU110は、カラー画像用ラスターバッファー132cから上流用ヘッドバッファー142u(図5)へラスターデータを転送すると共に、白画像用ラスターバッファー132wから下流用ヘッドバッファー142l(図5)へラスターデータを転送する(ステップS890)。図21には、印刷順がC−W印刷である場合に、カラー画像用ラスターバッファー132cから上流用ヘッドバッファー142uへとラスターデータが転送され、白画像用ラスターバッファー132wから下流用ヘッドバッファー142lへとラスターデータが転送される様子を示している。これにより、プリントヘッド144の各ノズル列146の上流ノズル群を用いてカラー画像の形成が行われ、下流ノズル群を用いて白画像の形成が行われるC−W印刷(図22(b))の準備が整うこととなる。
【0114】
一方、印刷順がW−C印刷であると判定された場合には(ステップS880:No)、CPU110は、カラー画像用ラスターバッファー132cから下流用ヘッドバッファー142l(図5)へラスターデータを転送すると共に、白画像用ラスターバッファー132wから上流用ヘッドバッファー142uへラスターデータを転送する(ステップS900)。これにより、プリントヘッド144の各ノズル列146の上流ノズル群を用いて白画像の形成が行われ、下流ノズル群を用いてカラー画像の形成が行われるW−C印刷(図22(a))の準備が整うこととなる。
【0115】
次に、CPU110(図3)は、印刷媒体送りコントローラー160および印刷媒体送りモーター162を制御して、印刷媒体PMをヘッド位置Yまで搬送する(副走査する)(ステップS910)と共に、CRコントローラー150およびCRモーター152を制御してプリントヘッド144を印刷開始位置Xまで移動し(ステップS920)、さらに、主走査を行ってプリントヘッド144の高さ分の印刷を実行する(ステップS930)。このとき、W−C印刷(図22(a)参照)では、プリントヘッド144のノズル列146の上流ノズル群(図22(c)参照)による白画像の形成と下流ノズル群によるカラー画像の形成とが並行して実行される。また、C−W印刷(図22(b)参照)では、プリントヘッド144のノズル列146の上流ノズル群によるカラー画像の形成と下流ノズル群による白画像の形成とが並行して実行される。
【0116】
次に、CPU110(図3)は、ラスターバッファー132のラスターバッファーポインターをクリアすると共に(ステップS940)、印刷画像PI全体の印刷処理が完了したか否かを判定し(ステップS950)、印刷処理が完了したと判定されるまでステップS810からS940までの処理を繰り返し実行する。印刷処理が完了したと判定されると、印刷処理(図6)は終了する。
【0117】
以上説明したように、本実施例の印刷システム10では、白色を含む複数色のインクを用いて印刷媒体PM上にカラー画像と白画像とを形成する印刷処理を実行することができる。印刷システム10による印刷処理の際には、プリンター100のプリントヘッド144に設けられた7つのインク色に対応する7つのノズル列146のそれぞれが、上流ノズル群と下流ノズル群とに分けられる(図22(c)参照)。そして、W−C印刷(図22(a)参照)の際には、上流ノズル群からインクを噴射することにより白画像が形成され、C−W印刷(図22(b)参照)の際には、下流ノズル群からインクを噴射することにより白画像が形成される。ここで、本実施例では、白画像に対応する白領域の内、文字の画像を除くカラー画像Icと重ならない部分が非重複白領域Awnと設定され、非重複白領域Awnに対応する印刷媒体PM上の領域に白色と白色以外の少なくとも1色とのインクを用いて調色白画像が形成される。そのため、本実施例では、白色を含む複数色のインクを用いて印刷を行う際に、カラー画像と共に、印刷媒体上の観察可能な部分に所望の色の白色画像(調色白画像)を形成することができる。また、本実施例では、白画像に対応する白領域の内、文字の画像を除くカラー画像Icと重なる部分が重複白領域Awoと設定され、重複白領域Awoに対応する印刷媒体PM上の領域に白色インクのみを用いて白画像が形成される。そのため、本実施例では、白画像を形成することによるカラー画像の色への影響を抑制することができる。
【0118】
図23は、白色を調整する白調色の概念を示す説明図である。図23(a)には、a*−b*平面におけるプリンター100の白インクの色の位置P1の一例を示しており、図23(b)には、さらに、ターゲットの白色の位置P2およびプリンター100の白インクにイエローインクを所定量混ぜた色の位置P3の一例を示している。図23(b)に示すように、例えば、プリンター100の白インクにイエローインクを混ぜることにより、白画像の色をターゲットの白色に近づけることができる。また、例えばさらにライトマゼンタのインクを所定量混ぜることにより、白画像の色をさらにターゲットの白色に近づけることができる。このように、白画像の形成の際に、白色インクと白色以外の少なくとも1色のインクとを用いることにより、白画像の色を所望の色とすることができる。
【0119】
図24は、カラー画像および白画像の色再現域(ガマット)の一例を示す説明図である。図24(a)には、−b*方向から見たカラー画像のガマットGcと調色白画像のガマットGwとを示しており、図24(b)には、+a*方向から見たカラー画像のガマットGcと調色白画像のガマットGwとを示している。上述したように、本実施例では、カラー画像(第1の画像)の形成には、プリントヘッド144のノズル列146の上流ノズル群と下流ノズル群との一方(第1の画像形成部)が用いられる。また、カラー画像の形成には、7色のインクの内、白色を除く6色のインク(第1のインクグループ)が用いられ、白色インクは使用されない。一方、白画像(第2の画像)の形成には、プリントヘッド144のノズル列146の上流ノズル群と下流ノズル群との他方(第2の画像形成部)が用いられる。また、白画像の内、調色白画像の形成には、7色のインクの内、白色とイエローとブラックとライトシアンとライトマゼンタとの5色のインク(第2のインクグループ)が用いられ、シアンとマゼンタの2色のインクは使用されない。第1のインクグループの色再現域と第2のインクグループの色再現域とは互いに異なっているため、カラー画像のガマットGc(第1の色再現域)と調色白画像のガマットGw(第2の色再現域)とは互いに異なっている。本実施例の印刷システム10による印刷処理では、互いに色再現域の異なる2つの画像(カラー画像および調色白画像)を印刷媒体PM上に形成することができ、色再現域の異なる複数の画像を含む多様な印刷物を容易に作成することができる。また、本実施例の印刷システム10による印刷処理では、印刷中の少なくとも一部の期間において、カラー画像の形成と調色白画像の形成とが並行して行われるため、色再現域の異なる複数の画像を含む多様な印刷物を効率的にかつ容易に作成することができる。
【0120】
また、本実施例の印刷システム10による印刷処理では、W−C印刷およびC−W印刷のいずれの場合にも、同一主走査(同一パス)において、上流ノズル群と下流ノズル群との一方を用いた白画像の形成と、他方を用いたカラー画像の形成と、を並行して実行可能である。そのため、まず白画像とカラー画像との一方の全体を印刷媒体上に形成した後に他方の全体を印刷媒体上に形成するのではなく、1回の印刷処理で印刷媒体上にカラー画像と白画像とを形成することができると共に、調色白画像の色を所望の色とすることができる。
【0121】
また、本実施例の印刷システム10による印刷処理では、プリンター100がPC200から印刷順を指定する印刷順指定コマンド(図18(a))を受領し、カラー画像を先に形成する印刷順が指定された場合には、上流ノズル群をカラー画像の形成に用いるノズル群として設定すると共に下流ノズル群を白画像の形成に用いるノズル群として設定し、白画像を先に形成する印刷順が指定された場合には、上流ノズル群を白画像の形成に用いるノズル群として設定すると共に下流ノズル群をカラー画像の形成に用いるノズル群として設定する。そのため、本実施例の印刷システム10による印刷処理では、C−W印刷およびW−C印刷のいずれであっても調色白画像の色を所望の色とすることができ、印刷物の広い使用態様に対応することができる(図8参照)。
【0122】
また、本実施例の印刷システム10では、印刷用コマンドとしてのラスターコマンド(図18(b))に含まれるインクコードが、7色のインクのそれぞれと、カラー画像と白画像とのそれぞれと、の組み合わせに対して一意に対応するように設定されている。そのため、プリンター100のCPU110は、ラスターコマンドがカラー画像用か白画像用かを意識することなく、カラー画像に対応するインクコードを含むラスターコマンドに基づきカラー画像の形成に用いるノズル群(上流ノズル群もしくは下流ノズル群)を制御すると共に、白画像に対応するインクコードを含むラスターコマンドに基づき白画像の形成に用いるノズル群(下流ノズル群もしくは上流ノズル群)を制御することができる。
【0123】
また、本実施例の印刷システム10では、プリンター100のラスターバッファー132がカラー画像用の領域132cと白画像用の領域132wとを含む(図5参照)。そのため、プリンター100のCPU110は、カラー画像に対応するインクコードを含むラスターコマンドに含まれるラスターデータをラスターバッファー132がカラー画像用の領域132cに格納し、白画像に対応するインクコードを含むラスターコマンドに含まれるラスターデータを白画像用の領域132wに格納することにより、カラー画像の形成に用いるノズル群と白画像の形成に用いるノズル群とを制御することができる。
【0124】
また、本実施例の印刷システム10による印刷処理では、調色白画像の形成に、白色を除く6色のインクの内、イエロー(Y)と、ブラック(K)と、ライトシアン(Lc)と、ライトマゼンタ(Lm)と、の4色のインクが用いられ、シアン(C)とマゼンタ(M)との2色のインクは使用されない。すなわち、調色白画像の形成には、同一の色相についての淡色インクと濃色インクとの2種類のインクの内、濃色インクは使用されない。そのため、本実施例の印刷処理では、調色白画像の色を所望の色としつつ、調色白画像における画質の低下(粒状感の増加)を抑制することができる。また、本実施例の印刷処理では、調色白画像の形成にブラック(K)インクが用いられるため、調色白画像の明度の調整が可能となり、調色白画像の色の選択可能な範囲を拡張することができる。
【0125】
また、本実施例の印刷システム10による印刷処理では、調色白指定用UIウィンドウW1(図11)において調色白(調色白画像の色)を指定することができるため、白色を含む複数色のインクを用いてカラー画像および白画像の印刷を行う際の調色白画像の色を正確にかつ容易に指定することができる。特に、本実施例の印刷システム10では、測色器CMによる測色結果に基づき色(Lab値およびT値)を指定することができるため、調色白画像の色をより正確にかつ容易に指定することができる。また、本実施例の印刷システム10では、調色白をLab値とT値とにより指定できるため、調色白画像の濃度を含む色の値を正確に指定することができる。また、本実施例の印刷システム10では、調色白指定用UIウィンドウW1のサンプル画像表示エリアSaに指定された色が表示されるため、ユーザーは表示された色を確認しながら容易に色を指定することができる。
【0126】
B.第2実施例:
第1実施例では、印刷画像PIの非重複白領域Awn(図7(a)参照)の色は、調色白指定処理(図9のステップS220)により指定された1色とされ、調色白画像は指定された1色の画像として形成される。これに対し、第2実施例では、非重複白領域Awnの色が部分毎に異なることを許容する。すなわち、第2実施例では、調色白指定処理において、印刷画像PIの非重複白領域Awnを複数の部分領域に分けた部分領域毎に色(Lab値およびT値)の指定が可能となっている。
【0127】
図25は、第2実施例における調色白画像用の色変換処理、インク色分版処理およびハーフトーン処理の流れを示すフローチャートである。図25では、図13に示した第1実施例のステップと同じ内容のステップには、共通のステップ番号を付している。第1実施例では、調色白画像データの非重複白領域Awnに対応する各画素の色(Lab値およびT値)はすべて同一であるため、Lab値からCMYK値への色変換(図13のステップS410)や、CMYK,T値からインク色別階調値への変換(図13のステップS420)は、全画素共通として実行されている。これに対して、第2実施例では、調色白画像データの非重複白領域Awnに対応する画素の色は画素毎に異なる場合があるため、調色白画像データの1画素が取り出され(図25のステップS402)、取り出された画素毎にLab値からCMYK値への色変換(図25のステップS410)や、CMYK,T値からインク色別階調値への変換(図25のステップS420)が行われる。これらの処理が全画素について終了されるまで繰り返し実行される(図25のステップS422参照)。図25のステップS470以降の処理(ハーフトーン処理)は、図13に示した第1実施例と同様である。
【0128】
以上説明したように、第2実施例においても、印刷媒体PM上にカラー画像と白画像とを形成することができ、白画像の内の調色白画像の色を所望の色とすることができる。さらに、第2実施例では、印刷媒体PM上に互いに色の異なる複数種類の調色白画像を形成することができるため、より多様な印刷物を作成することができる。
【0129】
C.第3実施例:
図26は、第3実施例のPC200bの構成を機能的に示すブロック図である。第3実施例のPC200bは、アプリケーションプログラムAPbがUI制御モジュールUMを含む点と、プリンタードライバー300bが調色白指定モジュール330を含まない代わりに白画像データ変換モジュール390を含む点とが、図4に示した第1実施例のPC200と異なっている。第3実施例では、調色白指定処理(図9のステップS220)が、プリンタードライバー300bではなく、アプリケーションプログラムAPbによって実行される。第3実施例における調色白指定処理の内容は、第1実施例に示した調色白指定処理の内容と同じである。
【0130】
第3実施例の印刷処理は、図6に示した第1実施例と同様に実行される。第3実施例の印刷処理では、アプリケーションプログラムAPbによる調色白指定処理が実行された後、ユーザーによる印刷実行指示が行われると(図6のステップS110)、カラー画像データCdataと白画像データWIdataと印刷順指定情報SSとがプリンタードライバー300bに対して出力され、プリンタードライバー300bによる処理(ステップS120)が開始される。
【0131】
図27は、第3実施例におけるプリンタードライバー300を実行するCPU210による処理の流れを示すフローチャートである。ステップS212では、CPU210が、アプリケーションプログラムAPから出力されたカラー画像データCdataと白画像データWIdataと印刷順指定情報SSとを受信する(図26参照)。カラー画像データCdataおよび印刷順指定情報SSの内容は、第1実施例と同様である。
【0132】
白画像データWIdataは、印刷画像PI(図7(a)参照)における白領域(非重複白領域Awnと重複白領域Awoとを合わせた領域)を特定すると共に、調色白指定処理によって指定された調色白を特定するデータである。具体的には、白画像データWIdataは、印刷画像PIの白領域に対応する画素の値が白画像を形成することを示す値(例えばW=255)であり、残りの画素の値が白画像を形成しないことを示す値(例えばW=0)であるデータである。なお、白画像データWIdataは、各画素について2ビットの値で表現されたデータであってもよい。さらに、白画像データWIdataは、調色白を特定するLab値およびT値を示すデータを含む。
【0133】
ステップS222(図27)では、白画像データ変換モジュール390(図26)が、カラー画像データCdataと白画像データWIdataとを用いて、白画像データ変換処理を行う。白画像データ変換処理は、白画像データWIdataから、非重複部白画像データWINdataと重複部白画像データWIOdataとを生成する処理である。非重複部白画像データWINdataおよび重複部白画像データWIOdataの内容は、第1実施例と同様である。すなわち、非重複部白画像データWINdataは、印刷画像PIの非重複白領域Awnに対応する画素の値が白画像を形成することを示す値(例えばW=255)であり、残りの画素の値が白画像を形成しないことを示す値(例えばW=0)であるデータである。ただし、第3実施例では既に調色白指定処理が行われているため、非重複部白画像データWINdataは、調色白を特定するLab値およびT値を示すデータを含んでいる。また、重複部白画像データWIOdataは、印刷画像PIの重複白領域Awoに対応する画素の値が白画像を形成することを示す値(例えばW=255)であり、残りの画素の値が白画像を形成しないことを示す値(例えばW=0)であるデータである。
【0134】
白画像データ変換処理において、白画像データ変換モジュール390(図26)は、カラー画像データCdataと白画像データWIdataとに基づき、印刷画像PIにおける非重複白領域Awnと重複白領域Awoとを特定する。具体的には、白画像データ変換モジュール390は、白画像データWIdataにより特定される白領域とカラー画像データCdataにより特定されるカラー画像Icとの重なりを判定し、白領域の内のカラー画像Ic(より詳細には文字の画像を除くカラー画像Ic)と重ならない部分を非重複白領域Awnとして特定すると共に、白領域の内のカラー画像Ic(より詳細には文字の画像を除くカラー画像Ic)と重なる部分を重複白領域Awoとして特定する。そして、白画像データ変換モジュール390は、白画像データWIdataから非重複白領域Awnに対応する部分のデータを抽出して非重複部白画像データWINdataとして設定すると共に、重複白領域Awoに対応する部分のデータを抽出して重複部白画像データWIOdataとして設定する。なお、本実施例では、カラー画像データCdataにおいて、カラー画像の内の文字の画像を特定する情報が含まれており、白画像データ変換モジュール390は、当該情報を用いて非重複白領域Awnと重複白領域Awoとを特定するものとする。
【0135】
プリンタードライバー300bによる処理(図27)の白画像データ変換処理(ステップS222)において生成された非重複部白画像データWINdataは調色白画像用色変換モジュール340に供給され、重複部白画像データWIOdataはコマンド作成モジュール370に供給される(図26参照)。プリンタードライバー300bによる処理のステップS230以降の処理や、印刷処理のその後の処理は、図9および図6に示した第1実施例と同様に実行される。
【0136】
以上説明したように、第3実施例においても、白色を含む複数色のインクを用いて印刷を行う際に、カラー画像と共に印刷媒体上の観察可能な部分に所望の色の白画像(調色白画像)を形成することができると共に、白画像を形成することによるカラー画像の色への影響を抑制することができる。特に第3実施例では、プリンタードライバー300の白画像データ変換モジュール390が、カラー画像データCdataと白画像データWIdataとを用いて、非重複部白画像データWINdataと重複部白画像データWIOdataとを生成する白画像データ変換処理を行うことができる。そのため、第3実施例では、アプリケーションプログラムAPbにおいては非重複白領域Awnと重複白領域Awoとの区別が行われず、非重複白領域Awnと重複白領域Awoとを含む白領域の色(調色白)が指定された場合であっても、非重複白領域Awnと重複白領域Awoとを特定し、重複白領域Awoに対応する白画像を白色インクのみを用いて形成すると共に非重複白領域Awnに対応する白画像を白色インクと白色以外のインクとを用いて形成することができるため、カラー画像と共に印刷媒体上の観察可能な部分に所望の色の白画像を形成することができると共に、白画像を形成することによるカラー画像の色への影響を抑制することができる。
【0137】
D.第4実施例:
図28は、第4実施例における印刷画像PI、カラー画像データCdata、非重複部白画像データWINdataおよび重複部白画像データWIOdataの一例を示す説明図である。第4実施例においても、第1実施例と同様に、アプリケーションプログラムAPからカラー画像データCdataと、非重複部白画像データWINdataと、重複部白画像データWIOdataと、印刷順指定情報SSと、がプリンタードライバー300に対して出力される(図4参照)。第4実施例では、印刷画像PIが黒色部分Pbと白色部分Pwとで構成されるバーコードCoを含む点が、図7に示した第1実施例の印刷画像PIとは異なっている。
【0138】
バーコードCoの黒色部分Pbはカラー画像Icであるため、図28(b)に示すように、カラー画像データCdataは、バーコードCoの黒色部分Pbに対応する画素の色(黒色)を特定するデータを含む。また、第4実施例でも、カラー画像Icが配置される領域はすべて白領域として設定されるため、バーコードCoの黒色部分Pbは重複白領域Awoとして設定される。そのため、図28(d)に示すように、重複部白画像データWIOdataにおいては、バーコードCoの黒色部分Pbに対応する画素の値は白画像を形成することを示す値となる。
【0139】
また、バーコードCoの白色部分Pwは、白領域であってカラー画像Icに重ならない部分であるため、本来は非重複白領域Awnとして設定されるところであるが、本実施例では重複白領域Awoとして設定される。従って、図28(d)に示すように、重複部白画像データWIOdataにおいては、バーコードCoの白色部分Pwに対応する画素の値は白画像を形成することを示す値となる。一方、図28(c)に示すように、非重複部白画像データWINdataにおいては、バーコードCoの白色部分Pwに対応する画素の値は白画像を形成しないことを示す値となる。
【0140】
第4実施例においても、第1実施例と同様に印刷処理が実行される。従って、バーコードCoの白色部分Pwに対応する白画像は、重複白領域Awoに対応する白画像として、白色インクのみを用いて形成される。すなわち、バーコードCoの白色部分Pwに対応する白画像の色は、調色白ではなく、白色インクの色となる。
【0141】
以上説明したように、第4実施例においても、白色を含む複数色のインクを用いて印刷を行う際に、カラー画像と共に印刷媒体上の観察可能な部分に所望の色の白画像(調色白画像)を形成することができると共に、白画像を形成することによるカラー画像の色への影響を抑制することができる。また、第4実施例では、白色画像の内のバーコードCoの白色部分Pwを構成する部分がカラー画像Icと重ならない場合であっても、当該部分の色は調色白ではなく白色インクの色となるため、バーコードCoの読み取り精度の低下を抑制することができる。
【0142】
E.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0143】
E1.変形例1:
上記各実施例における印刷システム10の構成はあくまで一例であり、印刷システム10の構成は種々に変形可能である。例えば、上記各実施例では、プリンター100は、シアンとマゼンタとイエローとブラックとライトシアンとライトマゼンタと白色との7色のインクを用いて印刷を行うプリンターであるとしているが、プリンター100は白色を含む複数色のインクを用いて印刷を行うプリンターであればよい。例えば、プリンター100は、シアンとマゼンタとイエローとブラックと白色との5色のインクを用いて印刷を行うプリンターであってもよい。
【0144】
また、上記各実施例では、カラー画像の形成には、白色を除く6色のインクが用いられ、白色インクは使用されないとしているが、カラー画像の形成に用いられるインク色は、プリンター100の使用可能なインク色に応じて任意に設定可能である。例えば、カラー画像の形成に、白色インクが用いられるものとしてもよい。
【0145】
また、上記各実施例では、調色白画像の形成には、白色とイエローとブラックとライトシアンとライトマゼンタとの5色のインクが用いられ、シアンとマゼンタの2色のインクは使用されないとしているが、調色白画像の形成に用いられるインク色は、白色と白色以外の少なくとも1色が含まれればよく、プリンター100の使用可能なインク色に応じて任意に設定可能である。例えば、調色白画像の形成に、白色とイエローとライトシアンとライトマゼンタとの4色のインクのみが用いられるとしてもよいし、白色とイエローとブラックとライトシアンとライトマゼンタとシアンとマゼンタとの7色のインクが用いられるとしてもよい。
【0146】
また、上記各実施例では、プリンター100は、プリントヘッド144を搭載するキャリッジを往復移動(主走査)させながら印刷を行うプリンターであるとしているが、本発明は、キャリッジの往復移動を伴わないラインプリンターによる印刷処理にも適用可能である。
【0147】
また、上記各実施例では、プリンタードライバー300がPC200に含まれ、プリンター100は、PC200のプリンタードライバー300からコマンドを受信して印刷を実行するものとしているが(図4参照)、プリンター100が調色白指定モジュール330やUI制御モジュール332を含むプリンタードライバー300と同じ機能を有し、プリンター100がPC200のアプリケーションプログラムAPからカラー画像データCdata、非重複部白画像データWINdata、重複部白画像データWIOdata、印刷順指定情報SSを受信して印刷を実行するものとしてもよい。あるいは、プリンター100がさらにアプリケーションプログラムAPと同じ機能も有し、プリンター100においてカラー画像データCdata、非重複部白画像データWINdata、重複部白画像データWIOdata、印刷順指定情報SSの生成や、印刷処理が実行されるものとしてもよい。
【0148】
また、上記第1実施例では、UI制御モジュール332を含む調色白指定モジュール330がプリンタードライバー300に含まれているが(図4参照)、第3実施例(図26参照)と同様に、プリンタードライバー300は調色白指定モジュール330を含まず、代わりにアプリケーションプログラムAPがUI制御モジュールUMを含むとしてもよい。この場合には、アプリケーションプログラムAPにおいて調色白指定処理が実行され、指定された調色白を特定する値(Lab値およびT値)が対応付けられた非重複部白画像データWINdataが、アプリケーションプログラムAPからプリンタードライバー300の調色白画像用色変換モジュール340に送信されるとしてもよい。あるいは、指定された調色白を特定する値(Lab値およびT値)を含むデータが非重複部白画像データWINdataとは独立してプリンタードライバー300の調色白画像用色変換モジュール340に送信されるとしてもよい。調色白を特定する値を含むデータが独立して調色白画像用色変換モジュール340に送信される場合には、非重複部白画像データWINdataは、調色白画像用色変換モジュール340ではなく調色白画像用インク色分版処理モジュール350に入力されるものとしてもよい。
【0149】
また、上記第3実施例では、UI制御モジュールUMがアプリケーションプログラムAPbに含まれているが(図26参照)、第1実施例(図4参照)と同様に、アプリケーションプログラムAPbはUI制御モジュールUMを含まず、代わりにプリンタードライバー300bがUI制御モジュール332を含む調色白指定モジュール330を有するとしてもよい。この場合には、アプリケーションプログラムAPbから出力される白画像データWIdataは白領域を特定するのみのデータであって、調色白を特定する値(Lab値およびT値)を含まないこととなる。また、この場合には、白画像データWIdataに基づき白画像データ変換モジュール390により生成された非重複部白画像データWINdataが、UI制御モジュール332を含む調色白指定モジュール330に入力され、調色白指定処理に供された後に、調色白画像用色変換モジュール340に入力されるとすればよい。
【0150】
また、上記各実施例では、ラスターデータ(ドットデータ)をプリントヘッド144(図5)へのデータ転送方式に変換する処理がプリンター100において実行されるとしているが、同処理がプリンタードライバー300によって実行されるとしてもよい。この場合には、プリンター100がラスターバッファー132を有していないとしてもよい。
【0151】
また、上記各実施例における調色白画像用ルックアップテーブルLUTw(図14)やカラー画像用ルックアップテーブルLUTc(図16)の内容はあくまで一例であり、これらの内容は例えばプリンター100の使用インクの組成に応じて予め実験的に設定される。また、これらの内容は、アプリケーションプログラムAPから出力されるデータの内容(使用色空間)や、プリンター100の使用インク色に応じて種々に変形可能である。同様に、これらのテーブルを用いた色変換処理やインク色分版処理の内容も種々に変形可能である。
【0152】
また、上記各実施例では、カラー画像用ハーフトーン処理モジュール320や調色白画像用ハーフトーン処理モジュール360(図4)により、ディザパターンを参照したハーフトーン処理が行われるとしているが、誤差拡散法といった他の方法によるハーフトーン処理が行われるとしてもよい。また、プリンター100が、各インク色について複数サイズのドットを形成可能である場合には、ハーフトーン処理によって、ドットのON/OFFを決定する2値化ではなく、ドットのON/OFFおよびドットサイズを決定する多値化が行われるとしてもよい。
【0153】
また、上記各実施例における印刷順指定コマンドやラスターコマンドの構成(図18)、インクコード表ICTの内容(図19)は、あくまで一例であり、種々変形可能である。なお、上記各実施例では、インクコードが、複数のインク色のそれぞれと、カラー画像および白画像のそれぞれと、の組み合わせに対して一意に対応しているが、インクコードは必ずしもこのように設定される必要はない。ただし、インクコードがこのように設定されていれば、プリンター100のCPU110がラスターコマンドがカラー画像用か白画像用かを意識することなくラスターコマンドに含まれるインクコードに従ってコマンドの処理を行うことができる。
【0154】
また、上記各実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。
【0155】
また、本発明の機能の一部または全部がソフトウェアで実現される場合には、そのソフトウェア(コンピュータープログラム)は、コンピューター読み取り可能な記録媒体に格納された形で提供することができる。この発明において、「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスクやCD−ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種のRAMやROM等のコンピューター内の内部記憶装置や、ハードディスク等のコンピューターに固定されている外部記憶装置も含んでいる。
【0156】
E2.変形例2:
上記第1実施例では、重複白領域Awoは、白画像が形成されるべき白領域の内、文字の画像を除くカラー画像Icと重なる部分であるとしているが(図7参照)、白領域の内のカラー画像Icと重なる部分の少なくとも一部の領域であれば、異なる領域が重複白領域Awoとして設定されるとしてもよい。例えば、重複白領域Awoは、白領域の内のカラー画像Icと重なる部分の全領域であるとしてもよい。すなわち、図7(a)に示した印刷画像PIにおける白領域の内、図形のカラー画像Icと重なる部分(図7(d)において示すハッチングを付して示す部分)だけでなく、文字のカラー画像IC(図7(a)中の「abcde」の画像)と重なる部分も重複白領域Awoとして設定されるとしてもよい。
【0157】
また、上記第1実施例では、非重複白領域Awnは、白画像が形成されるべき白領域の内、文字の画像を除くカラー画像Icと重ならない部分であるとしているが、白領域の内のカラー画像Icと重ならない部分の少なくとも一部の領域であれば、異なる領域が非重複白領域Awnとして設定されるとしてもよい。例えば、非重複白領域Awnは、白領域の内のカラー画像Icと重ならない部分の全領域であるとしてもよい。すなわち、図7(a)に示した印刷画像PIにおける白領域から、図形のカラー画像Icと重なる部分(図7(d)において示すハッチングを付して示す部分)だけでなく、文字のカラー画像IC(図7(a)中の「abcde」の画像)と重なる部分をも除いた領域が、非重複白領域Awnとして設定されるとしてもよい。
【0158】
E3.変形例3:
上記第4実施例では、アプリケーションプログラムAPにおいて、印刷画像PI(図28(a))に含まれるバーコードCoの白色部分Pwは非重複白領域Awnではなく重複白領域Awoであるとされ、印刷の際に当該部分の白画像は白インクのみを用いて形成されるとしているが、アプリケーションプログラムAPにおいては、印刷画像PIのバーコードCoの白色部分Pwは原則通り非重複白領域Awnとされるとしてもよい。この場合であっても、非重複白領域Awnを特定する非重複部白画像データWINdataは、バーコードCoの白色部分Pwを特定するデータを含むものとし、非重複部白画像データWINdataを受信するプリンタードライバー300において、非重複部白画像データWINdataに基づきバーコードCoの白色部分Pwを特定すると共に当該部分の白画像が白インクのみを用いて形成されるように制御を行えばよい。
【0159】
また、上記第4実施例では、印刷画像PIにバーコードCoが含まれるとしているが、バーコードCo以外の白色部分と白色以外の部分(例えば灰色部分)とで構成されたコード(例えばQRコード(登録商標)といった2次元コード)が印刷画像PI含まれるとしてもよい。この場合にも、コードを構成する白色部分の白画像は、白インクのみを用いて形成されるとすれば、コードの読み取り精度の低下を抑制することができる。
【0160】
E4.変形例4:
上記各実施例では、印刷媒体PMとしての透明フィルム上に、カラー画像と白画像とを並行して形成し、カラー画像と白画像とが形成された印刷物を作成する印刷処理について説明したが、印刷処理に用いられる印刷媒体PMは、透明フィルムに限られず、半透明フィルムや紙、布といった任意の媒体を選択可能である。なお、印刷媒体PMとして透明フィルムを用いると、C−W印刷(図8(b))においてもカラー画像Icをそのままの見えとなるように形成することができる。
【0161】
また、上記各実施例におけるプリンター100は、カラー画像(白色インクを使用して形成するカラー画像を含む)のみを形成する印刷処理を実行可能であり、この場合には、プリントヘッド144のノズル列146(図22参照)を上流と下流とに分けることなく、ノズル列146の全体を使用して印刷が行われる。すなわち、プリンター100は、カラー画像と白画像とを形成する印刷処理を行う場合に、ノズル列146をカラー画像を形成するためのノズル群と白画像を形成するためのノズル群とに区分して、印刷を行うことが可能であるとすればよい。
【0162】
E5.変形例5:
上記各実施例における調色白指定用UIウィンドウW1および測色用UIウィンドウW2(図11)の表示内容はあくまで一例であり、これらの表示内容は種々に変更可能である。例えば、上記各実施例の調色白指定用UIウィンドウW1では、L***表色系(色空間)における表色値により調色白を指定するものとしているが、他の表色系(例えばL***表色系)により調色白を指定するものとしてもよい。また、上記各実施例の調色白指定用UIウィンドウW1では、T値により調色白の濃度を指定するものとしているが、T値の指定は省略してもよい。また、上記各実施例の調色白指定用UIウィンドウW1では、測色による調色白の指定が可能となっているが(測色用UIウィンドウW2参照)、測色による調色白の指定は必ずしも可能である必要はない。
【符号の説明】
【0163】
10…印刷システム
100…プリンター
110…CPU
112…コマンド処理モジュール
120…ROM
130…RAM
132…ラスターバッファー
140…ヘッドコントローラー
142…ヘッドバッファー
144…プリントヘッド
146…ノズル列
150…キャリッジコントローラー
152…キャリッジモーター
160…印刷媒体送りコントローラー
162…印刷媒体送りモーター
200…PC
210…CPU
220…ROM
230…RAM
260…ディスプレイインターフェース
270…シリアルインターフェース
300…プリンタードライバー
310…カラー画像用インク色分版処理モジュール
320…カラー画像用ハーフトーン処理モジュール
330…調色白指定モジュール
332…UI制御モジュール
340…調色白画像用色変換モジュール
350…調色白画像用インク色分版処理モジュール
360…調色白画像用ハーフトーン処理モジュール
370…コマンド作成モジュール
390…白画像データ変換モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色を含む複数色のインクを用いて印刷を行う印刷装置であって、
インクを噴射してカラーの第1の画像を印刷媒体上に形成する第1の画像形成部と、
インクを噴射して第2の画像の少なくとも一部が前記第1の画像に重なるように前記第2の画像を前記印刷媒体上に形成する第2の画像形成部であって、前記第2の画像の内の前記第1の画像に重なる部分の少なくとも一部である第1の部分を白色のインクのみを用いて形成すると共に、前記第2の画像の内の前記第1の画像に重ならない部分の少なくとも一部である第2の部分を白色と白色以外の少なくとも1色とのインクを用いて形成する第2の画像形成部と、を備える、印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、さらに、
印刷中の少なくとも一部の期間において、前記第1の画像形成部による前記第1の画像の形成と前記第2の画像形成部による前記第2の画像の形成とは並行して行われるように、前記第1の画像形成部と前記第2の画像形成部とを制御する制御部を備える、印刷装置。
【請求項3】
請求項2に記載の印刷装置であって、
前記制御部は、前記第1の画像を表す画像データと前記第2の画像を表す画像データとを用いて、前記第2の画像の前記第1の部分を表す画像データと、前記第2の画像の前記第2の部分を表す画像データと、を生成する画像データ変換部を含む、印刷装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の印刷装置であって、さらに、
前記第1の画像形成部としての第1のノズル群と、前記第2の画像形成部としての第2のノズル群と、を有するヘッドを備える、印刷装置。
【請求項5】
請求項4に記載の印刷装置であって、さらに、
前記印刷媒体を前記ヘッドに対して所定の方向に相対移動させる印刷媒体送り機構を備え、
前記ヘッドは、前記所定の方向に沿って伸びると共に、前記複数色のインクのそれぞれに対応する複数のノズル列を含み、
前記制御部は、前記ヘッドを前記所定の方向に沿って上流部分と下流部分とに区分した場合における前記上流部分と前記下流部分との一方に位置する前記複数のノズル列の部分を前記第1のノズル群と設定し、前記上流部分と前記下流部分との他方に位置する前記複数のノズル列の部分を前記第2のノズル群と設定する、印刷装置。
【請求項6】
請求項5に記載の印刷装置であって、さらに、
前記第1の画像と前記第2の画像との重複部分における印刷順を指定する印刷順指定情報を受領する印刷順指定受領部を備え、
前記制御部は、前記印刷順指定情報が前記第1の画像を先に形成する印刷順を指定する場合には、前記ヘッドの前記上流部分に位置する前記複数のノズル列の部分を前記第1のノズル群と設定し、前記印刷順指定情報が前記第2の画像を先に形成する印刷順を指定する場合には、前記ヘッドの前記下流部分に位置する前記複数のノズル列の部分を前記第1のノズル群と設定する、印刷装置。
【請求項7】
請求項4ないし請求項6のいずれかに記載の印刷装置であって、
前記第2のノズル群は、前記複数色のインクの内、白色以外の少なくとも1色のインクを噴射しない、印刷装置。
【請求項8】
請求項7に記載の印刷装置であって、
前記複数色のインクは、少なくとも1つの色相について淡色インクと濃色インクとの組み合わせを含み、
前記第2のノズル群は、前記濃色インクを噴射しない、印刷装置。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の印刷装置であって、
前記複数色のインクは、黒色インクを含み、
前記第2のノズル群は、前記黒色インクを噴射する、印刷装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の印刷装置であって、さらに、
前記第2の画像の前記第2の部分の色について濃度値と所定の表色系における表色値とを取得する色指定部を備え、
前記第2の画像形成部は、前記取得された値に基づき、前記第2の画像の前記第2の部分の形成を行う、印刷装置。
【請求項11】
請求項10に記載の印刷装置であって、
前記色指定部は、物体の測色結果に基づき、前記濃度値と前記所定の表色系における表色値との少なくとも一方を取得する、印刷装置。
【請求項12】
請求項11に記載の印刷装置であって、
前記色指定部は、白色背景における測色結果と黒色背景における測色結果とに基づき、前記濃度値と前記所定の表色系における表色値との少なくとも一方を取得する、印刷装置。
【請求項13】
請求項10ないし請求項12のいずれかに記載の印刷装置であって、
前記所定の表色系は、L***表色系とL***表色系との一方である、印刷装置。
【請求項14】
請求項1ないし請求項13のいずれかに記載の印刷装置であって、
前記第2の画像形成部は、前記第2の画像の前記第2の部分の内、白色部分と白色以外の部分とで構成される所定のコードの前記白色部分を構成する部分は、白色のインクのみを用いて形成する、印刷装置。
【請求項15】
白色を含む複数色のインクを用いて印刷を行う印刷方法であって、
(a)インクを噴射してカラーの第1の画像を印刷媒体上に形成する工程と、
(b)インクを噴射して第2の画像の少なくとも一部が前記第1の画像に重なるように前記第2の画像を前記印刷媒体上に形成する工程であって、前記第2の画像の内の前記第1の画像に重なる部分の少なくとも一部である第1の部分を白色のインクのみを用いて形成すると共に、前記第2の画像の内の前記第1の画像に重ならない部分の少なくとも一部である第2の部分を白色と白色以外の少なくとも1色とのインクを用いて形成する工程と、を備える、印刷方法。
【請求項16】
白色を含む複数色のインクを用いて印刷を行う印刷装置を制御するためのコンピュータープログラムであって、
インクを噴射してカラーの第1の画像を印刷媒体上に形成する第1の画像形成機能と、
インクを噴射して第2の画像の少なくとも一部が前記第1の画像に重なるように前記第2の画像を前記印刷媒体上に形成する第2の画像形成機能であって、前記第2の画像の内の前記第1の画像に重なる部分の少なくとも一部である第1の部分を白色のインクのみを用いて形成すると共に、前記第2の画像の内の前記第1の画像に重ならない部分の少なくとも一部である第2の部分を白色と白色以外の少なくとも1色とのインクを用いて形成する第2の画像形成機能と、を、コンピューターに実現させる、コンピュータープログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2010−253927(P2010−253927A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6530(P2010−6530)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】