説明

皮膚の状態および毛の状態を予防および処置するための組成物および方法

本発明は、例えば、脱毛症、乾癬、およびケロイドなどの皮膚疾患および毛疾患の予防および処置のための組成物と方法を開示する。本発明はまた、皮膚の色合いを変えるための組成物と方法に関連する。本発明はまた、神経毒の作用を増強させる方法に関する。
特に、本発明は、患者に、1種または複数のp38インヒビターの有効量を投与することによって、患者の脱毛を処置および/または予防するための方法に関する。p38インヒビターは、毛の再生または脱毛の予防を必要とする領域に局部投与されることが好ましい。p38インヒビターは、局所投与、経皮投与または皮下投与されることがより好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚または毛の状態を予防または処置するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は身体の中で二番目に大きな器官であり、哺乳動物の生存にとって一次的に重要なものである。皮膚は、大部分が、コラーゲン線維、脂肪細胞、および筋肉組織の緩い網目からなる皮下組織を基礎にしている。成人は平均3,000平方インチ以上の皮膚表面面積を有している。全体として、無脂肪皮膚は、個体の全体重の少なくとも6%を占める。皮膚における構造物の密度は、その位置によって相当に変化する。しかし、平均して、1平方センチメートルの皮膚は、約10の毛包、15の皮脂腺、100の汗腺、1/2メートルの血管、神経線維末端に3,000の感覚細胞を有する2メートルの神経、痛みを伝える200の神経末端、触覚刺激の知覚に関する25の圧受容器、冷たさに関する2つの感覚受容器、および熱さに関する12の感覚受容器を含有する。
【0003】
哺乳動物の皮膚は、胚の外胚葉層および中胚葉層に由来する。これら2つの層は、それぞれ、表皮および真皮を生じる。外胚葉層および中胚葉層はまた、感覚神経、汗腺、および毛包などの特殊な付属器を生じる。したがって、皮膚と毛包とは、神経学的に関連している。
【0004】
皮膚は、限定はしないが、柔軟な身体支持の提供、一定温度維持、塩や水などの廃棄物質の排泄、皮膚内の光化学反応によるビタミン類の産生、感覚的機能、メラニンなどの色素沈着による過剰な紫外線に対する保護の提供、器官保護の提供、不要または危険な化学物質の吸収防止、および免疫防御などの種々の機能を果たす。
【0005】
毛は同様の機能を果たす。毛の主な機能は、熱損失に対する防御を提供することである。毛はまた、小さな擦過傷から、また、紫外線から表皮を保護する働きもし得る。さらに、毛は性的発達の指標を提供し得る。それはまた、個体の全身的健康および活力を示すことによって、配偶者を引き付ける重要な役割を演じ得る。さらに、一定の身体部分は、特殊な毛を含有し得る。眉毛および睫毛などの特殊な毛は、体液、粉塵および細塵の運送または除去により眼を保護するために働く。鼻毛は、大気で運ばれた異物粒子を、肺に達する前に捕捉する働きをしている。これらの特殊な毛および他の毛包は、それらの周囲に、環境についての感覚的、触覚的情情報を提供できる高度に発達した神経ネットワークを有している。
【0006】
皮膚および毛に影響を与える多くの状態がある。このような状態としては、限定はしないが、座瘡、瘢痕、白斑、および脱毛が挙げられる。皮膚および毛の状態を予防および/または処置するための新規な方法および組成物を特定することは、望ましいと考えられる。
【0007】
皮膚の色により、人は著しく変化する。今日、多くの人々は、美観上および化粧上の理由から皮膚の色合いを変化させるために、入れ墨を用いている。例えば、一部の個人は、入れ墨の永続的メイキャップを行う。他の者は、天然の色素沈着を模倣するために入れ墨を用いている。入れ墨はまた、ある社会的グループへの加入儀式の一部としても用いられ得る。
【0008】
理由が何であれ、入れ墨は一般的な方法になっている。1千万人以上の米国人が少なくとも1つの入れ墨を有し、4,000近い入れ墨スタジオが、現在米国で運営されていると概算されている。しかし概算によると、入れ墨をする者全体のほぼ50%が、後にそれらの除去を決意することが示されている。
【0009】
入れ墨の除去は、痛みを有し、高価であり得、また、瘢痕または皮膚の変色を生じさせることが多い。今日、もっとも一般的に用いられる色変え法としては、切除術、削皮法(dermabrasion)、レーザー療法、凍結外科手術、移植、カモフラージュ法(camouflaging)、乱切法、およびサラブレーション(salabrasion)がある。しかし、どの方法を用いるとしても、平均的な入れ墨は、それが実質的に除去されるまでに、8〜12の処置を必要とする。したがって、入れ墨除去の処置数減少、入れ墨除去に伴う痛みの軽減、および結果の向上のための新規な方法および組成物を同定することが望ましい。
【0010】
種々の疾患の処置および予防のため、ならびに化粧適用のために、神経毒もまた使用できる。一般的に用いられる神経毒は、ボツリヌス毒素A型である。ボツリヌス毒素A型は、1895年、Emile Pierre van Ermengem教授によって最初に発見された毒素のファミリーのメンバーである。ボツリヌス毒素は、1920年代に、サンフランシスコ、カリフォルニア大学のHerman Sommer博士によって単離、精製された。ボツリヌス毒素A型は、1960年代に、他の型のボツリヌス毒素から分離された。1970年代までに、A型は眼の不随意交差、ならびに頸部および頭部の痙攣に関連した神経障害などの神経障害の処置に有効であることが見出された。それ以来、他の型のボツリヌス毒素(例えば、ボツリヌス毒素のB型、C型、D型、E型、F型、およびG型)も単離され、種々の状態の処置に有効であることが示されてきた。今日、ボツリヌス毒素A型は、最も一般的に用いられるボツリヌス毒素であり、額の皺の除去、ならびに眼瞼痙攣、斜視およびデュエーン症候群などの眼の状態の処置用に承認されている。しかしながら、ボツリヌス毒素A型などの神経毒の使用は危険性があり、重篤な副作用を引き起こし得る。ボツリヌス毒素A型によって引き起こされる副作用の例としては、限定はしないが、流感様症状、処置を受けている筋肉群の脱力、嚥下困難、肺虚脱などが挙げられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、神経毒の効果を高め(例えば、神経毒効果の持続時間を増加させ)、そのことによって、1回の適用当たりに投与される神経毒の量、または処置の1サイクル当たりの適用数を減少させる組成物および方法を同定することが望ましいと考えられる。このような組成物および方法のさらなる利益としては、神経毒に対する抗原性の減少が挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
本発明は、皮膚または毛の状態を処置および/または予防するための方法に関する。
【0013】
特に、本発明は、患者に、1種または複数のp38インヒビターの有効量を投与することによって、患者の脱毛を処置および/または予防するための方法に関する。p38インヒビターは、毛の再生または脱毛の予防を必要とする領域に局部投与されることが好ましい。p38インヒビターは、局所投与、経皮投与または皮下投与されることがより好ましい。
【0014】
また、本発明は、患者に、1種または複数のp38インヒビターの有効量を投与することによって、例えば、白斑および座瘡、ならびに座瘡瘢痕などの皮膚状態を処置および/または予防するための方法に関する。この場合も、p38インヒビターは、局部投与されることが好ましい。p38インヒビターは、局所投与、経皮投与または皮下投与されることがより好ましい。
【0015】
p38インヒビターの例としては、限定はしないが、ピリジニルイミダゾール類、置換ピラゾール類、置換ピリジル類、キナゾリン誘導体、アリール尿素類、ヘテロアリールアナログ、置換イミダゾール化合物、および置換トリアゾール化合物が挙げられる。
【0016】
また、本発明は、皮膚の色合いを変えるための、特に入れ墨除去のための方法および組成物を含む。好ましい実施形態において、本明細書の方法は、皮膚領域への、有効量のサイトカイン(例えば、腫瘍壊死因子、インターフェロン、またはインターロイキン)の投与を提供する。投与されるサイトカインは、GM−CSFでないことが好ましい。投与されるサイトカインは、腫瘍壊死因子、インターフェロン、またはインターロイキンであることが好ましい。投与されるサイトカインは、TNF−α、IFN−α、および/またはIL−1であることがより好ましい。
【0017】
1種または複数のサイトカインが、局部投与されることが好ましい。局部的投与は、局所投与、皮下投与、または経皮投与によってなされることが好ましい。サイトカインは、単回投与、複数回投与、他の薬剤と組み合わせて、および/または他の処置と組み合わせて投与できる。
【0018】
いくつかの実施形態において、サイトカインによって処置されている皮膚領域が、色合い変更処置(color alteration treatment)と共に処置される。色合い変更処置の例としては、限定はしないが、切除術、削皮法、レーザー療法、凍結外科手術、移植、カモフラージュ法、乱切法、およびサラブレーションが挙げられる。好ましい実施形態において、色合い変更処置は、レーザー療法である。いくつかの実施形態において、サイトカインは、色合い変更処置の前に投与される。いくつかの実施形態において、サイトカインは、色合い変更処置の後に投与される。いくつかの実施形態において、サイトカインは、色合い変更処置時に投与される。
【0019】
また、本発明は、神経毒処置の有効性を増加させる組成物および方法に関する。神経毒処置の有効性増強は、例えば、神経接合部修復の阻害または遅延化によって、または神経成長および/または軸索発芽過程を遅延化、減少、阻害または妨害することによって生じる。
【0020】
神経接合部は、神経との任意の接合部であり得る。好ましい実施形態において、神経接合部は、神経と筋肉細胞との間の神経筋接合部である。このような接合部において、神経伝達は、通常、神経伝達物質(例えば、アセチルコリン(ACh))によって行われる。神経接合部の修復および/または再構築は、典型的に、神経細胞のおよび/または軸索発芽を含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、本明細書の方法は、哺乳動物の標的領域に神経毒およびニューロン成長抑制因子を局部投与することを含む。上記神経毒は、ボツリヌス毒素のA型、B型、C型、D型、E型、F型、およびG型からなる群より選択されることが好ましい。神経毒は、A型のボツリヌス毒素であることがより好ましい。ニューロン成長抑制因子は、神経細胞の成長および/または軸索発芽を阻害する任意の薬剤であり得る。好ましい実施形態において、ニューロン成長抑制因子は、Trkレセプターインヒビター、Rasインヒビター、Rafインヒビター、Rap−1インヒビター、MEKインヒビター、ERKインヒビター、PKAインヒビター、PKCインヒビター、p53インヒビター、成長因子インヒビター、または上記のいずれかの活性化因子またはエフェクターのインヒビターからなる群より選択される。好ましい実施形態において、ニューロン成長抑制因子は、MEKインヒビターMEKインヒビターまたはRafインヒビター(例えば、b−Rafインヒビター)である。MEKインヒビターは、PD98059、U0126、PD 184352、2−コロル−3−(N−スクシンイミジル)−1,4−ナフトキノン、PD 184352 ARRY−142886、三環式フラボン、および2−(2−アミノ−3−メトキシフェニル)−4−オキソ−4H−[1]ベンゾピランからなる群より選択されることが好ましい。
【0022】
Rafインヒビターは、Rheb、Bay−43−9006、またはRafキナーゼたんぱく質インヒビター(RKPI)であることが好ましい。
【0023】
神経毒は、ニューロン成長抑制因子投与の前に、同時に、または後に投与できる。好ましい実施形態において、神経毒は、ニューロン成長抑制因子投与の後に投与される。
【0024】
好ましい実施形態において、神経毒とニューロン成長抑制因子の両方が局部投与される。局部的投与の手段には、当該分野に公知の任意の方法が含まれるが、局所投与、経皮投与、真皮下投与、皮下投与、または筋肉内投与によることが好ましい。
【0025】
本発明の新規な特徴は、添付の請求項に具体的に記載されている。本発明の特徴および利点のより十分な理解は、本発明の原理が利用されている例示的な実施形態を記載している以下の詳細な説明、ならびに添付の図面を参照することによって得られるであろう。
【0026】
(参考としての援用)
本明細書に挙げられた全ての刊行物および特許出願は、個々の刊行物または特許出願が参照として具体的および個々に組み込まれているのと同じ程度に、参考として本明細書に援用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(発明の詳細な説明)
本発明は、皮膚および毛の状態を予防および処置するための組成物および方法に関する。本発明の組成物は、少なくとも1種のp38MAPキナーゼ(本明細書では「p38」と称する)インヒビターを含む。本明細書で用いられる用語の「p38」は、天然および合成両方のp38の全ての異性体、スプライシング改変体、相同体、断片、代謝物、プロドラッグ、および模倣物を言う。本明細書で用いられる用語の「p38インヒビター」は、内因性p38の活性を遮断する、減少させる、阻害する、妨害する、制限する、低下させる、軽減させる、限定する、または干渉する任意の薬剤を言う。p38インヒビターはまた、p38の上流または下流で機能して、p38の機能の量をダウンレギュレートすることもできる。
【0028】
p38は、ストレス活性化タンパク質である。p38は、例えば、紫外線、熱、化学的ショックまたは浸透圧ショック、IL−1、TNF、およびエンドトキシンにより活性化され得る。p38は、MAPキナーゼ類の3つのファミリー:細胞外調節キナーゼ(ERK)類、c−Jun NH2末端キナーゼ類またはストレス活性化タンパクキナーゼ(JNKまたはSAPキナーゼ)類、およびp38MAPキナーゼ類のうちの1つである。これらキナーゼファミリー各々の識別特徴は、ERKsがTEYアミノ酸モチーフを有し、JNKsまたはSAPキナーゼ類がTPYアミノ酸モチーフを有し、p38MAPキナーゼ類がTGYアミノ酸モチーフを有することである。
【0029】
p38ファミリーには、4種の異なる異性体:p38αMAPキナーゼ(p38α)、p38βMAPキナーゼ(p38β)、p38γMAPキナーゼ(p38γ)、およびp38δMAPキナーゼ(p38δ)が含まれる。p38αは、遍在的に発現する。Mxi−2として知られているp38αのより短いC末端切断形態もまた、転写因子、MAXとそれとの結合に基づいて、酵母の2ハイブリッドスクリーンにおいて同定されている。p38βは、p38βに見られる8つのアミノ酸挿入を欠如したさらなる異性体、p38β2を有することが示されている。これら2種の改変体の間では、p38βの触媒活性がより小さいことから、p38β2が主要な形態であると考えられている。p38γおよびp38δは、p38αと、それぞれ、63%ならびに61%同一である。p38γは主に、骨格筋に発現し、一方、p38δは主に、精巣、膵臓、前立腺、小腸、および内分泌組織に発現する。
【0030】
p38の相同体およびスプライス改変体は全て、キナーゼドメインVIIとキナーゼドメインVIIIとの間に12のアミノ酸活性化ループを含有する。上記活性化ループは、THr−Gly−Tyrモチーフを含む。TGYモチーフにおけるThr−180とTyr−182(p38αナンバリング)両方の二重リン酸化はp38活性化にとって必須であり、これらの酵素の特異的活性における>1000倍の増加をもたらす。二重リン酸化は、MKK6、MKK3、およびMAP3Kファミリーとも称されるMAPKK(分裂促進因子活性化タンパクキナーゼキナーゼ)ファミリーの他のメンバーによって実施できる。特に、MEKK4/MTK1、ASK1、およびTAK1は、MAP3Kの上流活性化因子として同定されている。また、p38αのTNF刺激活性化は、TRAF2(TNFレセプター結合因子)およびFasアダプタータンパク質、Dazzの動員によって媒介され、これがASK1、引き続いてp38およびJNKの活性化をもたらすと考えられている。また、TAKは、TGF−βに応じてMKK6を活性化することが示されており、IL−1依存様式でTRAF6に結合すると考えられ、IL−1媒介p38活性化におけるTAK1の関与が示唆される。さらに、MKK3およびMKK6に物理的に結合したキナーゼ3の混合系列は、Ste−20結合キナーゼによるp38の活性化に関与していると考えられている。また、Rhoファミリーの小型Gタンパク質であるMEKK3,および哺乳動物細胞におけるCdc−42およびRac1の活性体もまた、p38経路を活性化することが示されている(後者はp21活性化キナーゼにより)。
【0031】
このように、p38は、細胞の免疫系において重要な制御ポイントである。特に、p38はサイトカイン類の産生を調節することによってその作用を発揮する。p38は、MEKs(MKK3またはMKK6)によるThr−180およびTyr−182上のリン酸化によって活性化され、これに応じて、p38はMAPJAP2キナーゼをリン酸化し、これがTNFおよびIL1.mRNAsの3’−UTRに結合するAU豊富な結合タンパク質をリン酸化(したがって、不活化)することにより、TNF−αおよびIL1転写体の転写後抑制を解除する。複数のストレス経路がp38を活性化できるため、p38の阻害により、サイトカイン(例えば、TNF−α、IFN−α、IL1)産生およびその結果である免疫系の活性化を広範囲に抑制することができる。
【0032】
現在まで、p38阻害のために提案されたいくつかの機構ならびに多数の化合物がある。p38阻害のために提案された化合物には、ピリジニルイミダゾール類が含まれる。Young P.R.ら(1997)J.Biol.Chem.272、12116−12121頁;また、Bender,P.E.(1985)J.Med.Chem.28、1169−1177頁を参照されたい。p38を阻害し得るピリジニルイミダゾール類の例としては、6−(4’−フルオロフェニル)−5−(4’−ピリジル)−2,3−ジヒドロイミダゾ(2,1−b)−チアゾールおよびその代謝物(スルホキシド、スルホン)、アナログ、断片、および模倣物が挙げられる。さらに、ピリジニルイミダゾール類の最小構造である4−(ピリジン−4−イル)−5−フェニルイミダゾールが、p38を阻害するためには十分であり得ることが提案されている。Gallagher,TFら(1997)Bio−org.Med.Chem.5、49−64頁を参照されたい。
【0033】
特定の1,5−ジアリール置換ピラゾール化合物もまた、p38インヒビターとして提案されている。このような置換ピラゾール化合物は、意図された全ての目的のために参照として本明細書に組み込まれている、Pharmacia社に譲渡された米国特許出願第6,509,361号に開示されている。p38を阻害するさらなるピラゾール誘導体は、意図された全ての目的のために参照として本明細書に組み込まれている、G.D.Searle & Co.に譲渡された米国特許出願第6,335,336号に開示されている。
【0034】
他のp38インヒビターとしては、意図された全ての目的のために参照として本明細書に組み込まれている米国特許出願公開第2003/0139462号に開示されているものなどの置換ピリジルが挙げられる。
【0035】
さらなるp38インヒビターは、意図された全ての目的のために参照として本明細書に組み込まれている、Sugen社に譲渡された米国特許出願第6,610,688号に開示されたものである。
【0036】
キナゾリン誘導体もまた、p38インヒビターとして機能し得る。p38インヒビターであるキナゾリン誘導体の例は、意図された全ての目的のために参照として本明細書に組み込まれている、Scios社に譲渡された米国特許出願第6,541,477号および第6,184,226号、ならびに、意図された全ての目的のために参照として本明細書に組み込まれている、Vertex Pharmaceuticals社に譲渡された米国特許出願第6,509,363号および第6,635,644号に開示されている。
【0037】
アリール尿素類およびヘテロアリールアナログもまた、p38インヒビターとして機能し得る。p38インヒビターであるアリール尿素類およびヘテロアリールアナログの例は、意図された全ての目的のために参照として本明細書に組み込まれている、Bayer社に譲渡された米国特許出願第6,344,476号に開示されている。1999年、7月1日に公開された国際公開第99/32110号は、p38キナーゼインヒビターとして、ヘテロ環式尿素類を記載している。1999年、7月1日に公開された国際公開第99/32463号は、p38キナーゼを阻害する尿素化合物を記載している。1998年、11月26日に公開された国際公開第98/52558号は、p38キナーゼ阻害のための尿素化合物を記載している。1999年、1月7日に公開された国際公開第99/00357号は、p38キナーゼインヒビターとしての尿素化合物の使用法を記載している。1999年、11月18日に公開された国際公開第99/58502号は、p38キナーゼインヒビターとしての尿素化合物を記載している。本明細書に記載されたこれら、ならびに他の全ての参照文献は、全ての目的のために、参照として組み込まれている。
【0038】
置換イミダゾール化合物および置換トリアゾール化合物もまた、p38インヒビターとして機能し得る。このような化合物は、意図された全ての目的のために参照として本明細書に組み込まれている、米国特許出願第6,560,871号および第6,599,910号にそれぞれ開示されている。
【0039】
さらなるp38インヒビターとしては、RWJ−67657(RW Johnson Pharmaceutical Research Institute);RDP−58(Sangstat Medical社);RDP−58;Scios−469(Scios社);MKK3/MKK6インヒビター(Signal Research Division);SB−210313アナログ、SB−220025、SB−238039、HEP−689、SB−203580、SB−239063、SB−239065、SB−242235(SmithKline Beecham Phrmaceuticals);VX−702およびVX−745(Vertex Phrmaceuticals社);AMG−548(Amgen社);Astex p38キナーゼインヒビター(Bayer社);BIRB−796(Boehringer Ingelheim Phrmaceuticals社);Celltech p38 MAPキナーゼインヒビター(Celtech Group plc.);FR−167653(Fujisawa Pharmaceutical社);681323およびSB−281832(GlaxoSmithKline plc);LEO PharmaceuticalsのMAPキナーゼインヒビター(LEO PhrmaA/S);Merck&Co.p38 MAPキナーゼインヒビター(Merck research Laboratories);SC−040およびSC−XX906(Monsanto社);NovartisアデノシンA3アンタゴニスト類(Novartis AG);p38 MAPキナーゼインヒビター(Novartis Pharma AG);CP−64131(Pfizer社);CNI−1493(Picower Institute for Medical Research);RPR−200765A(Phone−Poulenc Rorer社);およびRoche p38 MAPキナーゼインヒビターおよびRo−320−1195(Roche Bioscience)が挙げられる。
【0040】
好ましい実施形態において、p38インヒビターは、RDP−58(SangStat Medical社)、AMG−548(Amgen社)、BIRB−796(Boehringer Ingelheim Pharma.)、CNI−1493(Picower Institue for Medical Research)、VX−702またはVX−745(Vertex Pharmaceuticals社)である。図1は、p38インヒビターのBIRB−796を示す。図2は、p38インヒビターのCNI−1493を示す。図3は、p38インヒビターのVX−745を示す。
【0041】
また、本発明は、少なくとも1種のp38インヒビター、および任意に、1種または複数のさらなる活性剤を含み得る組成物に関する。活性剤としては、例えば、抗炎症剤、免疫調節剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、および/または抗真菌剤を挙げることができる。
【0042】
抗炎症剤としては、限定はしないが、ピラゾロン類、フェナメート、ジフルニサル、酢酸誘導体、プロピオン酸誘導体、オキシカム類、メフェナミン酸、Ponstel(登録商標)、メクロフェナメート、Meclomen(登録商標)、フェニルブタゾン、Butazolidin(登録商標)、ジフルニサル、Dolobid(登録商標)、ジクロフェナク、Voltaren(登録商標)、インドメタシン、Indocin(登録商標)、スリンダク、Clinoril(登録商標)、エトドラク、Lodine(登録商標)、ケトロラク、Toradol(登録商標)、ナブメトン、Relafen(登録商標)、トルメチン、Tolectin(登録商標)、イブプロフェン、Motrin(登録商標)、フェノプロフェン、Nalfon(登録商標)、フルルビプロフェン、Ansaid(登録商標)、カルプロフェン、Rimadyl(登録商標)、ケトプロフェン、Orudis(登録商標)、ナプロキセン、Anaprox(登録商標)、Naprosyn(登録商標)、イロキシカム、およびFeldene(登録商標)が挙げられる。
【0043】
本明細書に用いられる用語の「免疫調節剤」には、サイトカイン類、幹細胞成長因子、リンホトキシン、共刺激分子、造血因子、およびこれらの分子の合成アナログが含まれる。免疫調節剤の例としては、腫瘍壊死因子、インターロイキン類(例えば、インターロイキン−1(IL−1)、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−14、およびIL−15)、コロニー刺激因子(例えば、顆粒球−コロニー刺激因子および顆粒球マクロファージ−コロニー刺激因子)、インターフェロン類(例えば、インターフェロン−α、β、γ、δ、ε、Ω、T)、「S1因子」と称される幹細胞成長因子、エリスロポイエチン、およびトロンボポイエチンが挙げられる。免疫調節剤のさらなる例としては、限定はしないが、アザチオプリン(Imuran)、6−メルカプトプリン(6−MP、Purinethol)、シクロスポリン(Sandimmune)、およびメトトレキサートが挙げられる。
【0044】
抗菌剤の例としては、限定はしないが、テトラサイクリン、サルファ剤、ペニシリン、キノロン、セファロスポリン、およびそれらの混合物が挙げられる。典型的なテトラサイクリンとしては、ドキシサイクリンおよびミノサイクリンが挙げられる。典型的なサルファ剤としては、スルファセタミドが挙げられる。典型的なセファロスポリンとしては、セファレキシン(KEFLEXとして市販されている)が挙げられる。典型的なキノロンとしては、ロメフロキサシン、オフロキサシン、およびシプロフロキサシンなどのフロキサシン類が挙げられる。
【0045】
抗ウイルス剤の例としては、限定はしないが、アシクロビル、タムビル、ペンシクロビルなど、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0046】
抗真菌剤の例としては、限定はしないが、ファルネゾル、エコナゾール、フルコナゾール、クロトリマゾール、ケトコナゾール、ウンデシレン酸カルシウムまたはウンデシレン酸亜鉛、ウンデシレン酸、塩酸ブテナフィン、シクロピロクスオラミン、硝酸ミコナゾール、ナイスタチン、スルコナゾール、塩酸テルビナフィンなど、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0047】
これらの抗微生物剤の任意の塩、異性体、プロドラッグ、代謝物、または他の誘導体もまた、本発明による抗微生物剤として含まれ得ることは、容易に理解されるはずである。
【0048】
本発明の薬学的組成物は、種々の様式、例えば、皮膚への局所適用に関しては(例えば、脱毛症用に)クリームにおいて、チャフィングに関しては(例えば、皮膚炎用に)洗浄液において、圧注液において、粉末において、液体において、乾燥処方物(例えば、入浴塩または入浴粉末として)など、適用にとって好適であるように配合できる。他の処方物は、当業者には容易に明らかとなろう。好ましい実施形態において、本明細書における組成物は、局部的投与のために、好ましく配合される。上記組成物は、局所投与、皮下投与または経皮投与のために配合されることが好ましい。
【0049】
軟膏として配合される場合、上記活性成分(例えば、p38インヒビター)は、例えば、パラフィン系または水溶性軟膏基材と共に使用できる。あるいは、上記活性成分は、水中油クリーム基剤と共にクリームにおいて配合できる。所望の場合、クリーム基剤の水相は、例えば、少なくとも30重量%のプロピレングリコール、ブタン−1,3−ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロール、ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物などの多価アルコールを含み得る。
【0050】
局所処方物は、皮膚または他の患部を通しての活性成分の吸収または透過を増強する化合物を含み得ることが望ましい。このような皮膚透過増強剤の例としては、ジメチルスルホキシドおよび関連アナログが挙げられる。
【0051】
本明細書における薬学的組成物はまた、例えば、抗酸化剤(例えば、ビタミンE);緩衝剤;潤滑剤(例えば、合成または天然蜜蝋);日焼け止め(例えば、パラアミノ安息香酸);および他の化粧用物質(例えば、着色剤、芳香剤、油、精油、湿潤剤または乾燥剤)を含み得る。増粘剤(例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールまたはカルボキシメチセルロース)もまた、上記組成物に添加できる。
【0052】
本発明の薬学的組成物において利用される担体は、粉末化処方物における使用のために固体ベースの乾燥材料であり得るか、または液体処方物またはゲル処方物における使用のために液体ベースまたはゲルベースの材料であり得る。具体的な処方物は、ある程度、投与の経路または様式に依る。
【0053】
乾燥処方物(例えば、入浴塩)のための典型的な担体としては、限定はしないが、トレハロース、マルトデキストリン、米粉、微結晶セルロース(MCC)、ステアリン酸マグネシウム、イノシトール、フラクトオリゴ糖FOS、グルコオリゴ糖(GOS)、デキストロース、スクロース、タルクなどの担体が挙げられる。上記組成物が乾燥しており、上記組成物が固まり(すなわち、成分スポア、塩、粉末および油の粘着)となる傾向を生じさせる蒸留油を含む場合、上記組成物は、上記成分の分散と固化防止の両方を行う乾燥充填剤を含むことが好ましい。典型的な固化防止剤としては、典型的には、およそ1重量%から95重量%の濃度で添加されるMCC、タルク、珪藻土、非晶質シリカなどが挙げられる。
【0054】
適切な液体ベースまたはゲルベースの担体は当該分野に周知である(例えば、水、生理的塩溶液、尿素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールおよびプロピレングリコールなど)。水ベースの担体は、ほぼ中性のpHであることが好ましい。
【0055】
適切な担体としては、例えば、白色ワセリン、ミリスチン酸イソプロピル、ラノリンまたはラノリンアルコール類、鉱油、香油または精油、ナスタチウム(ナスタチウム)抽出油、モノオレイン酸ソルビタン、プロピレングリコール、セチルステアリルアルコール(一緒に、または種々の組合せで)、ヒドロキシプロピルセルロース(分子量=100,000から1,000,000)、界面活性剤(例えば、ステアリン酸ポリオキシルまたはラウリル硫酸ナトリウム)などの水性および油性担体が挙げられ、ローション、ゲル、クリームまたは半固体組成物を形成するために、水と混合される。他の適切な担体は、ステアリン酸スクロース、スクロースココエート、ジステアリン酸スクロース、鉱油、プロピレングリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ポリオキシプロピレン−15−ステアリルエーテルおよび水などの溶媒による油中水または水中油エマルションならびに乳化剤と皮膚軟化剤との混合物を包含する。例えば、水、ステアリン酸グリセロール、グリセリン、鉱油、合成鯨蝋、セチルアルコール、ブチルパラベン、プロピルパラベン、およびメチルパラベンを含有するエマルションが、市販されている。メチルパラベン、プロピルパラベン、ベンジルアルコールおよびエチレンジアミンテトラアセテート塩などの保存剤もまた上記担体中に含めることができる。周知の香料および/または着色料もまた上記担体中に含めることができる。上記組成物はまた、グリセロールまたはポリエチレングリコール(分子量400から20,000)などの可塑剤を含み得る。上記担体の組成は、上記活性成分(p38インヒビター)の薬理学的活性を有意に妨害しない限り変化させることができる。
【0056】
本明細書における組成物および薬学的組成物は、皮膚および毛の状態を予防および処置するために使用できる。
【0057】
皮膚の状態の例としては、限定はしないが、座瘡、座瘡瘢痕、皮膚硬化症、乾癬、アトピー性皮膚炎、白斑、ケロイド、過形成性瘢痕、および脈管質が挙げられる。また、皮膚の状態には、皮膚の刺激、炎症、感染または変色を引き起こす任意の状態が含まれる。
【0058】
用語の座瘡は、毛孔の詰まり(黒色面疱および白色面疱)、面疱、丘疹、膿疱、斑、嚢腫または結節を言う。座瘡は身体のあらゆる部分に生じ得、あらゆる年齢の人が罹り得る。座瘡は生命を脅かすことはないが、しばしば永続的となり得る瘢痕に至り得る。
【0059】
座瘡は、毛包閉塞から生じ得る。毛包閉塞は、通常は皮膚の表面に排出する皮脂(油)を凝結させ、細菌を増殖させる。座瘡の発生にはアンドロゲンが関与し得ること、また、座瘡を有する人の皮脂腺は、アンドロゲンホルモンの通常のレベルに対して、異なる反応をするか、または過剰に反応すると推定されている。通常、毛包における皮膚細胞は、成長し、成熟し、死に、剥がれ落ちて、皮脂の流れによって皮膚の表面に運ばれる。しかし、座瘡患者では、死んだ細胞は表面に運ばれずに毛包の内側を塞ぎ、油と細菌を捕捉し(例えば、P.座瘡)、次いで座瘡に至ると示唆されている。
【0060】
捕捉された皮脂と細菌が皮膚表面の下に留まる場合は、白色面疱が形成する。他方、捕捉された皮脂と細菌が表面まで通じる場合、それらは皮膚色素であるメラニンによって黒色になり、黒色面疱が形成する。黒色面疱は、内容物が表面に徐々に排出されるため、長期間継続し得る。
【0061】
白色面疱および黒色面疱は、コメドとも称される。コメドは、皮脂、皮脂腺の内側の死細胞、小毛、および時には細菌によって閉塞した皮脂腺である。白色面疱も黒色面疱も滅菌条件下でなされるのでなければ、圧搾したり開いたりしてはならない。これは、引き続く細菌(例えば、ブドウ球菌)による皮膚感染を防ぐためである。
【0062】
この疾患のより重篤な形態においては、丘疹、膿疱、結節、および嚢腫が形成され得る。丘疹は、皮膚表面上からわずかに隆起した小さく固い病巣である。丘疹は通常、幅が5mm未満である。丘疹は座瘡の過程に対する局部の細胞の反応により生じると考えられる。丘疹および微小コメド(黒色面疱および白色面疱)の群は、ほとんど見えないと考えられるが、皮膚にでこぼこな外観を生じさせ得る。
【0063】
丘疹と同様に、結節は、固い、ドーム状の、または不規則な形状の病巣である。しかし、丘疹とは違って、結節は、皮膚のより深い層に拡張し、組織の破壊および/または瘢痕を生じさせ得る炎症を特徴とする。結節は非常に痛い。結節性座瘡は、イソトレチノイン以外の療法には応答し得ない座瘡の重篤な形態である。
【0064】
膿疱は、膿を含有するドーム状の病巣である。膿疱は通常、白血球、死んだ皮膚細胞、および細菌の混合物からなる。皮脂腺上に形成される膿疱は、その中心に毛を有することが一般的である。嚢腫形態に進行することなく治癒する膿疱は通常、瘢痕を残さない。
【0065】
斑は、治癒した座瘡病巣によって残された一時的な赤斑である。斑は一般に、平らで、赤または赤桃色であり、十分限定された境界を有する。斑は消滅する前に、数日間または数週間存続し得る。多数の斑が一度に存在する場合、座瘡の「炎症顔」外観を助長し得る。
【0066】
嚢腫は、液体または半液体の物質を含有する嚢様の病巣である。上記液体は、白血球、死細胞、および細菌からなることが多い。嚢腫は膿疱よりも大きく、皮膚のより深い層内への激しい炎症となり得る。結節と同様、嚢腫は非常に痛みがあり得、瘢痕を生じ得る。
【0067】
嚢腫と結節は、結節嚢腫と呼ばれる座瘡の重篤な形態においては、しばしば一緒に生じる。結節嚢腫に対しては、イソトレチノインによる全身療法が、時には唯一の有効な処置である。
【0068】
したがって、本発明は、座瘡に罹っているか、または座瘡に罹り易い患者に、本明細書の1つまたは複数の組成物の有効量を投与することを含む。このような組成物は、少なくとも1種のp38インヒビターを含む。このような組成物は、局部的に(例えば、局所に、経皮的に、または皮下に)投与されることが好ましい。本明細書における組成物はいずれも、独立して、または1種または複数の追加の薬剤または処置と組み合わせて投与できる。このような薬剤および/または処置としては、限定はしないが、レチノイド、抗生物質、経口避妊薬、アキュテイン(Accutane),レーザー処置(例えば、スムースビーム)、イソトレチノインなどが挙げられる。p38インヒビターは、追加の薬剤の投与および/または治療の実施の前に、同時に、または後に投与できる。p38インヒビターは、追加薬剤(例えば、レチノイド、抗生物質またはイソトレチノイン)の投与前に投与されることが好ましい。
【0069】
また、本発明は、座瘡傷の予防および/または処置も考慮している。医学的に、瘢痕としても知られている傷は、治癒した傷、火傷、または切傷によって残された跡であり、堅い線維性組織からなる。限定はしないが、座瘡傷、ケロイド、肥厚性傷、色素性傷、ホルモン誘導傷、動物咬傷などの多くの形態の傷がある。
【0070】
座瘡傷は、身体のどこにも生じ得る独特の形態の傷である。座瘡傷は、種々の形状、サイズ、および深さであり得る。座瘡傷は、座瘡細菌との戦いにおける免疫系の活性化によって生じると考えられる。一般に、ヒトおよび他の哺乳動物は、侵入する微生物を、それらの微生物パターン、例えば、(1)LPS−リポ多糖、マンノース、フコース、および他の糖残基、(2)テコイド酸(techoid acid)、または(3)N−ホルミルペプチド、を認識することによって認識する。これら、および他の微生物パターンは、パターン認識分子(PRMs)またはパターン認識レセプター(PRRs)によって認識される。PRR’の例としては、N−ホルミルペプチドに結合し、好中球を引き寄せるf−Met−Leu−Pheレセプター;C3bおよびC4bなどの補体成分に結合する補体レセプター(CRs);一般に微生物の表面に存在するマンノース残基に結合するマクロファージマンノースレセプター;一定のアニオン性ポリマーおよびアセチル化低密度リポタンパク質を認識するスカベンジャーレセプター;およびLPSの認識を可能にする、食細胞表面上のCD14レセプターが挙げられる。
【0071】
座瘡細菌は、f−Met−Leu−Pheレセプターの活性化を介して生得的な免疫系を活性化すると推定されている。f−Met−Leu−Pheレセプターによる生得的な免疫系の活性化により、やはり傷の形成時に存在することが示されているp38が活性化される。したがって、p38の阻害によって、座瘡または生得的な免疫系の活性化に起因する他の作用から生じる瘢痕を減少させることが可能であると考えられる。p38の活性化は一次的または長期(さらには永続的)であり得る。
【0072】
座瘡瘢痕に対する現在の処置としては、限定はしないが、削皮法、レーザーリサーフェイシング法、ケミカルピール法、穿孔技法、サブシジョン法(subcision)、およびオーグメンテーション法(augmentation)が挙げられる。削皮法は、急速回転するダイヤモンド端ホイールまたは他の剥脱装置を用いた損傷皮膚の除去を含む。上記ホイールまたは装置の粗さに依って、除去される皮膚の量を制御することができる。レーザーリサーフェイシング法は、皮膚を除去し、その場所に新たな皮膚が形成できるようにするためのレーザーの使用を含む。使用される一般的なレーザーとしては、COレーザーおよびエルビウム(YAG)レーザーが挙げられる。ケミカルピール法は、より滑らかな層が表面に上がれるように、上層を除去するために、皮膚に対する種々のタイプの酸の適用を含む。穿孔技法には:穿孔置換、穿孔切除、および穿孔隆起が含まれる。穿孔置換は、毛移植タイプの穿孔によって凹傷を除去し、次いで、それを、通常は耳の後ろの皮膚移植片によって置換することを含む。これは、深い瘢痕の除去では、最も好結果となる方法である。穿孔切除は、凹傷の除去を含む。次いで、創傷を閉じ、治癒させる。最後に、穿孔隆起は、瘢痕を底部から緩く切り離すことを含むが、それを廃棄しない。したがって、上記瘢痕を、周囲の皮膚の高さまで浮き上がらせる。サブシジョン法は、より深部の組織から瘢痕を切り離し、瘢痕の下部に血液をためることを含む。次いで、血餅が瘢痕下における結合組織の形成を助け、表面と同じ高さにする。さらに、オーグメンテーション法は、コラーゲンおよび/または脂肪などの物質を瘢痕下に注入し、それを表面の高さまでもっていくことを含む(サブシジョンに続いて施され得る)。
【0073】
したがって、本発明は、瘢痕、より好ましくは座瘡瘢痕、またはより好ましくは座瘡嚢腫または結節によって引き起こされた瘢痕の予防および/または処置に関する。好ましい実施形態において、p38インヒビターが、局所、経皮、または皮下など、局部投与される。p38インヒビターは、独立して、または1種または複数の追加の薬剤または処置と組み合わせて投与できる。このような薬剤および/または処置としては、限定はしないが、削皮法、レーザーリサーフェイシング法、ケミカルピール法、穿孔技法、サブシジョン法、およびオーグメンテーション法が挙げられる。例えば、p38インヒビターは、削皮法、レーザー処置、ケミカルピール法、穿孔処置、サブシジョン法および/またはオーグメンテーション法の前に、同時に、または後に投与できる。p38インヒビターおよび/または追加処置を施す量および回数は、種々の因子(例えば、患者の年齢、座瘡瘢痕の位置、処置サイクルの数、皮膚の色合いなど)に依存する。
【0074】
本発明により処置することのできる皮膚の状態または瘢痕の他の例はケロイドである。ケロイドは、皮膚外傷の見える所に、通常は治癒後に発現する稠密な線維性瘢痕組織の過剰増殖である。ケロイド形成は、コラーゲンの過剰量に関連し、コラーゲンの過剰産生は、外傷に対する皮膚細胞の応答である。ケロイドは典型的には、元の傷の境界を越えて増殖するが、下位の皮下組織内まで拡張することは稀である。ケロイドは、典型的には盛り上がり、結節性である。ケロイドの軟度は、柔軟なドウ状から硬いゴム状までの範囲であり得る。初期ケロイド病巣は紅斑性であることが多い。病巣は最初褐赤色で、後に青白色になる。病巣は、通常毛包および他の機能性付属腺を欠く。
【0075】
一旦、ケロイド領域が生じると、その臨床的経過は色々であり得る。多くのケロイドは、数週間または数ヵ月、他のものでは、数年、増殖を続ける。増殖は通常ゆっくりだが、ケロイドは時に急速に拡大化し、数ヵ月以内に三倍になり得る。一旦、ケロイドが増殖を停止すると、それは通常無症状で、安定に留まる。
【0076】
ケロイドは高い再発率を有し、切除したコロイドの50%以上が切除後数年以内に再発する。ケロイドは一般に化粧上の関心事である一方、それらは時々攣縮を引き起こし、それらが関節または顔の上に位置する場合は機能の喪失を生じ得る。
【0077】
ケロイドは、濃い顔色を有する人々により多く見られる。例えば、インド人やマレーシア人よりも、ポリネシア人や中国人に、ケロイドは多く形成されると推定されている。さらに、黒色のアフリカ人の16%もがケロイドを有していると推定されている。白人およびアルビノは最もケロイドに罹っていない。また、ケロイドは、若年男性よりも若年女性により多く見られる。しかし、この異常状態は、男性より女性の方がより多く、耳にピアスをし、皮膚に対してケロイドを引き起こし得る身体的外傷を生じさせている事実に関連していると考えられる。ケロイドは、10〜30歳の年齢の個体に、より高い割合で生じる。ケロイドは、超高齢者で生じることはより少ないが、現在、高齢者が受ける冠動脈バイパス手術および他の同様な処置に起因する前胸部ケロイドの数が増加している。
【0078】
ケロイド形成は、遺伝的要素に関連しており、したがって、ケロイド形成は、家族に同様に見られる傾向がある。ケロイドは、ヒトロイコサイト抗原B14、ヒトロイコサイト抗原B21、ヒトロイコサイト抗原Bw16、ヒトロイコサイト抗原Bw35、ヒトロイコサイト抗原DR5、ヒトロイコサイト抗原DQw3、および血液型Aに遺伝的に関連していると考えられている。常染色体優性と常染色体劣性の両方の伝達が報告されている。
【0079】
肥厚性瘢痕は、いくらかケロイドに類似している。ケロイドと同様に、それは、外傷に対する皮膚細胞の応答に起因するコラーゲンの過剰産生の過剰量に関連している。しかし、ケロイドとは違って、それは元の外傷または損傷の境界内に留まり、典型的には、平坦で滑らかである。肥厚性瘢痕は、時間が経つと自然に退縮する傾向がある。
【0080】
ケロイドおよび肥厚性瘢痕の処置は、それらの位置、サイズ、深さ、患者の年齢、および過去の処置に対する応答に依存する。現在、処置としては、閉鎖包帯、圧迫療法、病巣内副腎皮質注入、凍結手術、切除、放射線療法、レーザー療法、インターフェロン療法、およびイミキモド(imiquimod)5%クリーム(Berman,B.、eMedicine Journal、9月6日(2001)第2巻、第9号、http://www/arabmedmag.com/issue−31−05−2003/dermatology/main05.htmを参照)が挙げられる。
【0081】
したがって、本発明は、p38インヒビターを含有する本明細書の組成物の1つまたは複数を用いた瘢痕(例えば、ケロイドおよび肥厚性瘢痕)の予防および処置を含む。p38インヒビターを含有する組成物は、独立して、または1種または複数の追加の薬剤および/または処置と組み合わせて投与できる。併用療法に有用であり得る薬剤および/または処置の例としては、限定はしないが、閉鎖包帯、圧迫療法、病巣内副腎皮質注入、凍結手術、切除、放射線療法、レーザー療法、インターフェロン療法、およびイミキモドが挙げられる。p38インヒビターを含有する組成物は、局部的に、例えば、局所投与、経皮投与、または皮下投与されることが好ましい。p38インヒビターは、追加薬剤の投与の前に、同時に、または後に投与できる。p38インヒビターは、追加の薬剤または処置の前に投与されることが好ましい。
【0082】
他によく見られる皮膚および毛の疾患は、皮膚硬化症である。皮膚硬化症は、過剰なコラーゲン産生による皮膚の漸次的な硬化および硬直化を含む自己免疫疾患であると考えられる。これは、毛包の「窒息」を、次いで、萎縮をもたらす。過剰なコラーゲン産生は、ところどころに生じ、異なる領域に毛の喪失が生じる。
【0083】
皮膚硬化症は、自然に発現するが、これは、シリカ、塩化ビニルを扱う仕事をする人、シリコン移植後、または一定の薬剤の注入後の人に誘発され得ると考えられる。骨髄移植のレシピアントおよびC型肝炎に罹っている人もまた、皮膚硬化症を発現する傾向がより高いと考えられる。皮膚硬化症は、男性より女性に3倍多く見られる。さらに、皮膚硬化症に罹っている者の少なくとも一部は、遺伝的にこの状態に罹りやすい。
【0084】
皮膚硬化症の最初の症状は、しばしば、早期白髪化、それに続く脱毛を含む。脱毛が頭皮に生じる場合、処置は、皮膚患部領域を除去するための手術を含み得る。
【0085】
上記疾患の進行段階に基づいて区別できる皮膚硬化症のいくつかの異なる分類がある。「局在型皮膚硬化症」は、皮膚硬化症に罹った狭い領域の皮膚を言う。局在型皮膚硬化症は、しばしば、ところどころの脱毛を伴い得る。「クレスト」または「石灰症(軟組織におけるカルシウム沈着)、レイノー現象(寒冷に対する指の過敏症)、食道関与(嚥下困難)、強指症(指の皮膚硬化)、および末梢血管拡張症(口腔周囲の血管拡張)は、皮膚硬化症のより進行性の形態である。いくらか良性ではあるが、クレストは、時折の心不全をもたらし得る。進行性全身性硬化症(PSS)は、上記疾患の最も進行性の形態である。PSSは、これらの組織のいずれかまたは全てにおける継続した線維症の結果である。PSSでは、皮膚硬化症は、身体の外部と同様に内部にも影響を及ぼす。例えば、関節、消化管、肺、腎臓、神経および筋肉(心臓の筋肉を含む)がPSSに冒され得る。
【0086】
皮膚硬化症をもたらすコラーゲンの過剰産生は、サイトカインを産生するリンパ球に起因し、それが次に線維芽細胞を刺激して、コラーゲンの産生を促進させると考えられている。心臓において、コラーゲンの過剰産生および線維症によって、調律の乱れおよび心不全に至り得る。
【0087】
乾癬は、世界の人口の2%までもが罹っている他の皮膚疾患である。乾癬は、慢性で、免疫媒介の、非伝染性の疾患である。白人が他の民族群よりもこの状態に罹り易いため、乾癬は遺伝的要素を有していると考えられる。乾癬は、いずれの年齢においても発現し得るが、乾癬の始まる最もよく見られる年齢は、三十代半ばである。乾癬の正確な原因はまだ不明であるが、いくつかの場合には、連鎖球菌感染またはストレスが、発症に先行することが示されている。
【0088】
臨床的に、乾癬は、薄片状で白色の死んだ皮膚の小鱗片に覆われている隆起した皮膚の淡紅色斑の外観を呈することが多い。乾癬は、かゆみと灼熱感を生じ得る。乾癬は、皮膚を冒すことに加えて、脱毛の原因にもなり得る。例えば、乾癬プラーク(皮膚の患部斑)は、上記状態によってテロゲン静止期に移行させられた毛嚢を含有し得る。これによって、乾癬プラークにはわずかな毛の存在しか見られなくなる。このように、テロゲン剥離が、乾癬患者を冒す脱毛の典型的な形態である。さらに、乾癬は時々、瘢痕性脱毛の原因となり得る。乾癬誘導テロゲン剥離は、適切な処置によって、十分に可逆的であるが、乾癬誘導瘢痕性脱毛は、脱毛の永続的形態である。全般的に、乾癬は、誤シグナルを送り、その結果、皮膚細胞の成長周期を早めることになる免疫系に起因すると考えられる。
【0089】
現在、乾癬に対する処置はないが、いくつかの処置が上記疾患の制御に有用であり得る。例えば、乾癬の軽度の場合には、タールシャンプーが処置でき、一方、上記疾患のより広範囲の形態の処置には、ジスラノールが使用できる。重篤な場合には、副腎皮質ステロイド処置が有用であり得る。副腎皮質ステロイド処置は、局所用クリーム、または時には皮膚患部領域内への局部的副腎皮質ステロイド注入を含み得る。最近、カルシポトリオール含有処方物が、頭皮乾癬の処置に非常に有用であることが示されている。
【0090】
湿疹は、極めてかゆい慢性の皮膚発疹である。それは、炎症性の鱗片状皮膚上に現れる多数の突出(丘疹)または水疱からなる。丘疹は、小さな水疱へと進行する。ひどいかゆみから、しばしば水疱を引っ掻くこととなり、その結果、皮膚患部の出血、潰瘍化および二次的感染を生じ得る。
【0091】
アトピー性皮膚炎は、時には小児湿疹またはアレルギー性湿疹と称される湿疹の1つのタイプである。アトピー性皮膚炎は、全小児の10%から12%が罹っており、症状は、典型的に、小児の人生の最初の数ヶ月、または5歳前に現れる。30歳以降のアトピー性皮膚炎発症が見られることは少なく、皮膚を、厳しいまたは湿潤な条件に晒すことに依ることが多い。アトピー性皮膚炎は、身体の両側に、対称的に生じることが多い。アトピー性皮膚炎により、皮膚は、発赤、腫脹、ひび割れ、浸出、か皮形成および鱗片化を有する炎症性となり得る。
【0092】
したがって、本発明は、本明細書の組成物のいずれかを局部投与することによる、皮膚硬化症、乾癬、湿疹、アトピー性皮膚炎の予防および処置を含む。特に、本発明は、少なくとも1種のp38インヒビターを、患部領域に、局所的に、経皮的に、または皮下に投与することを考慮している。上記組成物は、独立して、および/または、1種または複数の追加の薬剤または処置と組み合わせて投与できる。薬剤および/または処置の例としては、限定はしないが、タール、ジスラノール、副腎皮質ステロイド、カルシポトリオールおよびイミキモドが挙げられる。
【0093】
白斑は、皮膚状態の他の例である。白斑は色素欠損に起因し、白色斑を生じる。身体のいずれの部分も冒され得る。通常、身体の両側が冒される。よく見られる関与領域は、顔、口唇、手、腕、脚、および性器領域である。100人に1人または2人が白斑に罹っている。白斑が発現する者のおよそ半数は、20歳前にこの疾患を発現させる。白斑が発現する者のおよそ五分の一が、同じ状態の家族を有する。
【0094】
白斑は、身体がそれ自身のメラニン細胞色素細胞に、再び抗体を作る自己免疫過程であり得ると考えられる。メラニン細胞は、皮膚、毛、および目の色を決定する色素、メラニンを作る。これらの細胞が死ぬか、またはメラニンを形成できない場合、皮膚の色はより淡くなるか、または完全に白くなる。しかし、白斑を有する人の多くの全身的健康状態は良好である。ただし、白斑は、甲状腺疾患などの他の自己免疫疾患によっても生じ得る。
【0095】
白斑患者における色素欠損の程度は、各々の白斑によって変化し得る。1つの斑において、色素の種々の色合いがあり得るか、またはより暗色の皮膚が淡色の皮膚の領域を丸く縁取っていることもあり得る。白斑は、しばしば急速な色素欠損によって始まる。これは、理由は不明だが、この過程が停止するまで継続する。色素欠損、それに引き続く色素が変化しない時間という周期が、無期限に続行し得る。白斑患者の皮膚色素がそれ自身で復帰することは稀である。もはや白斑を有していないと思っている人々の一部は、実際には、彼らの色素を全て失っていて、皮膚の色を対比させる斑をもはや有していない。彼らの皮膚はただ一色ではあるが、依然として白斑を有している。
【0096】
色素欠損の過程および重症度は、それぞれの人によって異なる。淡色の皮膚の人は、通常、夏に、白斑領域と日焼けした皮膚との間の対比を認める。年間を通じて、白斑は、より暗色の皮膚を有する人でより明瞭である。重篤な症例を有する個体は、全身の色素を欠損し得る。ある個体がどのくらいの色素を欠損するかを予想することはできない。副腎皮質ステロイド化合物を含有する局所用副腎皮質ステロイドクリームが、色素を、狭い白斑領域に戻す上で有効であり得る。
【0097】
PUVAは、ソラレンとして知られている薬剤のタイプが用いられる再色素形成療法の形態である。この化学物質は、皮膚を光に対して極めて高感受性にする。次いで、上記皮膚をUVAと呼ばれる特定のタイプの紫外線で処置する。時には、白斑が少数の狭い領域に限定されている場合、ソラレンを、UVA処置の前に白斑領域に適用できる。他の処置選択肢としては、免疫調節剤と呼ばれる新規な局所用の薬剤クラスが挙げられる。
【0098】
本発明は、白斑に罹り易いかまたは罹っている患者に、少なくとも1種のp38インヒビターを含む組成物の有効量を投与することにより、白斑を予防または処置する方法を考慮している。上記組成物は、白斑に罹っている、または、vitil calcipotroil igoに罹り易い領域に、局部投与されることが好ましい。上記組成物は、独立して、または1つまたは複数の他の薬剤と組み合わせて投与できる。他の薬剤としては、例えば副腎皮質ステロイド、ソラレン、免疫調節剤などが挙げられる。いくつかの実施形態において、p38インヒビターは、追加薬剤の投与の前に、同時に、または後に投与される。p38インヒビターは、追加の薬剤(例えば、副腎皮質ステロイドまたはソラレン)投与の前に投与されることが好ましい。
【0099】
脱毛自体は、重大な健康問題を引き起こすことはあり得ないが、それは重要な社会的役割を演じる。毛の豊かさは、社会の人々によって若さと身体状態の現れとして関連づけられることが多い。したがって、脱毛は、個人の魅力および配偶能力を損なう可能性がある。
【0100】
さらに、頭皮上の毛は、保護をもたらす。主として機械的ショック、熱損失、および紫外線(UV)光への曝露から頭を保護する。同様に、睫毛、眉毛などの特殊な体毛は、空中浮遊粒子および直射日光曝露から目を保護する。さらに耳管および鼻通路内の毛は、内部器官を保護するために粒子および病原体をろ過するのに役立っている。
【0101】
脱毛は、毛疾患の臨床的現れであることが多い。喪失毛数が、再生毛数を超える場合に脱毛が生じる。人の平均的頭皮は、凡そ100,000個の毛包で覆われている。毛包は、毛幹が発達し、皮脂腺が開く表皮内の管状口である。通常、1日当り凡そ50〜100本の毛がランダムに脱け落ちる。各毛包が毛サイクルを経ており、脱けた毛は、毎日、新しい毛により置き換わるため、これは気付かれることがない。
【0102】
毛は、未成熟期、アナゲンと呼ばれる成長期、カタゲンと呼ばれる成長期と休止期との間の移行期、最後に毛が成長を停止して脱け落ちを待っているテロゲンと呼ばれる休止期、からなる特徴的なサイクルを経る。所与の任意の時点で我々の体毛の85%から90%が、発育期または成長期にあり、それらは、いずれの場所でも2年から5年持続する。この期に続いて、短期の退行期、またはカタゲンがあり、2〜3週間持続する。毛包の凡そ1%は、カタゲンにある。毛包の凡そ10〜15%は休止期、カタゲンにあり、約3〜5ヵ月持続する。毛包は典型的に、その生存期間中10〜20回の非同期性サイクルを経る。1日当り100本以上の毛、より好ましくは1日当り150本以上の毛、より好ましくは1日当り200本以上の毛、より好ましくは1日当り300本以上の毛、より好ましくは1日当り400本以上の毛の持続的喪失は、たとえそれが一時的であっても、脱毛の状態、または脱毛症となる。
【0103】
脱毛をもたらす毛の状態は、免疫系により媒介されることが多く、また毛包の炎症に関連することが多い。免疫系により媒介される毛疾患の例としては、限定はしないが、円形脱毛症、瘢痕性脱毛症、完全脱毛症、全身性脱毛症、毛角化症、三角形脱毛症、発育相剥離、アンドロゲン性脱毛症、男性発生脱毛症、エリアセルシ(area celsi)、細菌性濾胞炎、黒色砂毛症、黒点状白癬、ケミカル脱毛症、瘢痕性脱毛症、慢性休止期脱毛、皮膚糸状菌感染、食事欠乏誘導脱毛症、び慢性脱毛症、解離性小胞炎、薬物誘導脱毛症、好酸球膿疱性濾胞炎、びらん性膿疱性皮膚病、家族性限局脱毛症、フェルドマン症候群、女性脱毛症、女性型脱毛症、濾胞性変性症候群、鬚髯毛嚢炎、脱毛性毛嚢炎、ケロイド性毛嚢炎、グラハム−リトル症候群、単純ヘルペス毛嚢炎、帯状ヘルペス毛嚢炎、ホットコーム脱毛症、退行性脱毛症、虚血性脱毛症、毛包性角化症、棘毛脱毛付蛇行状脱毛症、苔癬状プラノピラリス(planopilaris)、脂肪水腫脱毛症、ルース発育相症候群、ルース毛症候群、男性型脱毛症、機械的誘導脱毛症、混合炎症性脱毛症、後頭部脱毛症、後頭部円形脱毛症、オーフジ症候群、丘疹状無毛症、パターン脱毛症、ホフマンの仮性頭部膿瘍性穿掘性毛嚢炎、周皮空隙円形脱毛症、産褥性脱毛症、仮性鬚髯毛嚢炎、ブロックの萎縮性脱毛症、白癬、サルコイドーシス、瘢痕脱毛症、休止期脱毛、熱脱毛症、ダニ咬せき誘導脱毛症、頭部白癬、牽引脱毛症、牽引毛嚢炎、外傷性脱毛症、三角形脱毛症、腋窩菌毛症、抜毛癖、房状毛毛嚢炎、およびワクチン接種誘導脱毛症が挙げられる。
【0104】
脱毛症は、過度の未成熟脱毛の状態である。脱毛症は、多くの因子によって引き起こされ得る。これらの要因としては、限定はしないが、遺伝的因子、加齢、または局所的あるいは全身的疾患が挙げられる。
【0105】
円形脱毛症において、患者は、限局された領域の急激な脱毛を経験する。このような患者は、明白な皮膚疾患または全身疾患を有していない。いずれの毛領域も、円形脱毛症に関与し得る。頭皮およびひげは、最も円形脱毛症に冒されることが多い。全身性脱毛症のようないくつかの場合においては、全ての体毛が喪失する。
【0106】
女性脱毛症においては、女性患者が脱毛を経験する。女性脱毛症は、通常遺伝的因子の結果である。女性脱毛症は、ホルモンおよび男性テストステロンホルモンの増加に関連すると考えられている。例えば、出産、避妊薬ピル、貧血および閉経の結果生じるホルモン変化により、女性脱毛症を引き起こし得る。女性脱毛症は、両親に存在し、娘に伝わる優性遺伝子によって引き起こされると考えられている。
【0107】
脱毛に対する現行の処置法としては、限定はしないが、ミノキシジル(例えば、5%濃度)、レーザー光療法、リバイボゲン、Toppe(登録商標)、およびShen Min(登録商標)が挙げられる。ミノキシジルは、男性型または女性型禿頭症により縮小化した毛包に特異的に作用する毛成長用製品である。ミノキシジルは、毛包を成長期に入らせる。ミノキシジルは血管拡張剤であるが、その効果は、血行を増加させる能力に拠るものではなく、その正確な作用機序は、未知のままである。レーザー光療法は、毛成長を刺激すると考えられている新規な処置法である。レーザー光療法は、例えば、LaserComb(登録商標)を用いて適用できる。毛増殖処置法の別の形態は、Revivogen(登録商標)である。Revivogen(登録商標)は、酵素、5−α−レダクターゼを阻害する最近承認された薬剤である。典型的に、5−α−レダクターゼ酵素は、ジヒドロ−テストステロン(DHT)として公知のホルモン生成を助ける。DHTは、毛包の機能喪失に関連している。脱毛を予防するための別の新規なシステムであるToppek(登録商標)は、毛幹を開き、ケラチンたんぱく質を毛幹内に注入させることによって機能する。さらに、東部野バラ、He Shou Wuに由来する100%天然毛栄養剤であるShen Min(登録商標)もまた、新たな毛成長を生じさせ、および毛色を回復させるのに役立つと考えられている。したがって、上記の任意の処置法(または他の任意の公知の処置法)は、本明細書の組成物と併用できる。
【0108】
このように、本発明は、脱毛または毛の状態、例えば、円形脱毛症および女性脱毛症の予防および/または処置する方法に関する。特に本発明は、患者の毛の状態を予防および/または処置する方法であって、少なくとも1種のp38インヒビターの有効量をこのような患者に投与することを考慮している。このような化合物の投与は、局部的、例えば、局所投与、皮下投与、経皮投与することが好ましい。p38インヒビターの投与は、1種またはそれ以上の他の薬剤(例えば、ミノキシジル(Minozidil)またはリバイボゲン)または処置法(例えば、レーザー光療法)伴うことができる。p38インヒビターは、追加の薬剤の投与前に、投与と同時に、または投与後に投与できる。好ましい実施形態において、p38インヒビターは、他の薬剤の投与前に投与される。
【0109】
クリーム、ローション、ゲル、油状物、軟膏、懸濁剤、エアロゾールスプレー、散剤、半固体処方物(例えば、坐剤)、または製造物品を用いる皮膚または粘膜への局所適用は全て、当該分野に周知の方法を用いて本発明の治療用組成物を含有するように配合される。
【0110】
本明細書に用いられる「有効量」とは、所望の結果を生じさせる組成物量を称す。例えば、治療用途に関する「有効量」は、ある状態を予防または処置するのに臨床的に有意な増加、例えば、毛成長を刺激、および/または増加させ、白斑を減少、および/または排除などを提供するために必要な活性化合物(例えば、p38インヒビター)を含む組成物の量である。
【0111】
本発明はまた、併用療法(例えば、2種またはそれ以上のp38インヒビターを用いる処置法またはp38インヒビターと別の薬剤との併用)を考慮している。併用療法の場合、本発明の方法と組成物との併用によって達成された効果が、それらの独立した有効量の総和よりも大きくなるような相乗効果をもたらすことができる。したがって、2種またはそれ以上のp38インヒビターを投与する場合、またはp38インヒビターと別の薬剤を投与する場合に相乗効果が生じ得ることを、本発明は考慮している。
【0112】
いくつかの実施形態において、本明細書の組成物は、約1回から100回の適用で、好ましくは約1回から50回の適用で、より好ましくは約1回から25回の適用で、または好ましくは約1回から10回の適用で、投与される。
【0113】
本明細書の組成物の各適用は、一般に1適用当りp38インヒビターの約1mgから100g濃度、より好ましくは、1適用当りp38インヒビターの約10mgから10g濃度、またはより好ましくは、1適用当りp38インヒビターの約50mgから1g濃度からなる。いくつかの場合において、毎日の用量は、約0.01mg/kg体重から100mg/kg体重、好ましくは、約0.1mg/kg体重と約50mg/kg体重との間、より好ましくは、約0.5mg/kg体重と約30mg/kg体重との間からなる。
【0114】
適用は、約1日から約1年までの期間行われることが好ましい。しかしながら、特に予防的処置に関しては、より長い処置または生涯にわたる処置も考慮されている。好ましい実施形態において、適用は、12時間毎に約1回から月毎に約1回まで行われる。好ましくは、1ヵ月当り治療用組成物の2回から4回の適用、またはより好ましくは、1週当たり治療用組成物の2回から4回の適用、あるいはより好ましくは、1日当り治療用組成物の2回から4回の適用が行われる。
【0115】
局所投与に関しては、本明細書の組成物は、標的領域に1日1回、2週に1回、週に1回、または他の規則的な間隔で適用される。投与の具体的な経路、投与量、タイミングは、限定はしないが、年齢、体重、性別および医療状態などの因子に、ある程度依存する。局所処方物は、全量中、例えば、0.075重量%から90重量%、好ましくは0.2重量%から50重量%、最も好ましくは0.4重量%から25重量%の有効成分(p38インヒビターを含む)を含有する、局所用ゲル、スプレー、軟膏またはクリームとして適用できる。
【0116】
経皮用デバイスもまた、本発明の組成物を投与するために使用できる。局所投与は、貯蔵層および多孔性膜タイプのパッチまたは固相マトリックス種のパッチのいずれかを用いて達成されることが好ましい。いずれの場合においても、活性剤は、膜を通して貯蔵層またはマイクロカプセルからレシピエントの皮膚または粘膜と接触している活性剤透過性接着剤へ連続的に送達される。上記活性剤が皮膚を通して吸収される場合、上記活性剤の制御されたかつ予め決定された流量が、レシピエントに投与される。マイクロカプセルの場合、封入剤は、膜としても機能できる。経皮用パッチとしては、アクリル系乳濁液およびポリエステルパッチなどの接着剤系を有する適切な溶媒系中の化合物を挙げることができる。
【0117】
本発明および本明細書の方法はまた、皮膚の色合いを変えることを考慮している。
【0118】
皮膚の色合いの変化は、多数の生物学的および非生物学的因子により引き起こすことができる。皮膚の色合いの変化を生じさせることができる非生物学的因子としては、入れ墨が挙げられる。入れ墨という語は、「あるものに印をつけること」を意味するタヒチ人の「tatu」に由来する。入れ墨は、恐らく紀元前12,000年から存在していたと言われている。入れ墨の3つの例としては、装飾的入れ墨、外傷性入れ墨および火薬による入れ墨(gunpowder tattoo)が挙げられる。装飾的入れ墨は、着色インクに含浸させた針を用いて皮膚の反復穿刺により作られる。外傷性入れ墨は、例えば、皮膚が、路面に沿って擦り剥かれ、グリットの小片や炭素粉末が皮膚に入る場合に生じ得る。火薬爆発は、火薬が皮膚を貫通する場合に入れ墨を引き起こし得る。
【0119】
今日、装飾的入れ墨が非常によく見られる。1000万人以上のアメリカ人が、少なくとも1つの入れ墨を有しており、現在、4,000箇所に近いスタジオが米国で経営されていると概算されている。多くの人々は、美観および化粧上の理由から皮膚の色合いを変えるために入れ墨を使用する。例えば、一部の個人は、時間を節約するために、または規則的で一時的なメイキャップを適用することが身体的に困難であることから、永久的なメイキャップ(例えば、眼瞼、唇、眉毛などに)を入れ墨する。入れ墨は、天然の色素沈着をシミュレートするために再建手術、特に顔面または胸の再建手術に加えて、またはその替わりの入れ墨もあり得る。いくつかの場合において、脱毛症(脱毛の一形態)のために眉毛を喪失した人々は、入れ墨された「眉毛」をもつことを選択でき、一方、白斑(皮膚領域における色素の欠損)を有する他の人々は、その状態のカモフラージュを補助するために入れ墨を試みることができる。さらに、入れ墨は、入会の権利(例えば、同胞または仲間への)の一部であり得る。
【0120】
入れ墨は、永続的な色合いを発現させるために、小針を用いて皮膚の皮層内にインクを迅速かつ反復して注入することを含む。小さな入れ墨には、約45分かかり、より大きな入れ墨には、多くの時間がかかるか、通院の繰り返しを要する。入れ墨アーチストの多くが用いるインクは、実際にはインクではなくて、むしろ担体溶液に懸濁されている色素である。この色素は、通常は植物性染料ではない。その代わりに、今日の色素は、主として金属塩である。しかしながら、色素のいくつかは、プラスチックであり、また、いくつかの植物性染料も使用される。上記色素は、入れ墨の色を提供する。担体の目的は、色素懸濁液を殺菌し、均一な混合を維持し、適用を容易にすることである。
【0121】
入れ墨に用いられる色素、グリット、炭素またはインクは、食品医薬品局(FDA)により食品添加物であると見なされており、引き起こされる副作用は最少である。顕微鏡下で入れ墨は、着色顔料の小顆粒として見える。入れ墨顆粒は、注入部位において先ず真皮上部に、それから垂直中心に分散される。注入凡そ7〜14日後、上記顆粒は、より中心位置に濃縮する。入れ墨顆粒は、直径が凡そ2〜400mmの範囲で緩く充填された粒子から構成される。最も一般的な粒径は約40nmである。サイズが約2〜4nmであり、またサイズが約350〜400nmの粒径はあまり見られない。
【0122】
入れ墨顆粒は、真皮内および皮下で線維芽細胞ならびにマクロファージによって飲食される。通常、マクロファージ活性の自然の防御機構によって異物は攻撃され、身体から除去される。しかし、入れ墨粒子は、マクロファージによる活性を阻止するほど十分に大きいため、入れ墨色素、グリット、炭素またはインクは、皮膚内に残る。この結果、マクロファージが「凍結」したように見える。Fujita H、Arch.Histol.Cytol.(1988)Jul;51(3):285−94頁を参照されたい。このように入れ墨は比較的永続的である。
【0123】
最も古い色素は、粉砕された無機物およびカーボンブラックの使用に由来する。今日の色素には、元の無機色素、近代工業の有機色素、2,3の植物ベースの色素、およびいくつかのプラスチックベースの色素が含まれる。多くの色素でアレルギー反応、瘢痕化、光毒性反応(すなわち、光、特に太陽光への曝露による反応)、および他の有害作用の可能性がある。プラスチックベースの色素は、極めて強烈に着色されるが、それらに対する多くの副作用が報告されている。最近、暗所または暗光(紫外線)に反応して輝く色素が開発されている。これらの色素のいくつかは、安全であり得るが、他は、放射性であるか、あるいは毒性である。下表には、入れ墨インクに一般に使用される色素のいくつかを掲げている。このリストは、完全なものではない。他にも色素として使用できるものがある。また、1種またはそれ以上の色素を混合したインクが多い:
(表1)
(入れ墨インクに一般に使用される組成物)
【0124】
【表1】


【0125】
最近まで、政府は入れ墨インクおよびそれらに用いられる色素の使用を規制しようとしていなかった。しかしながら、入れ墨および永続的なメイキャップの人気が高まるにつれ、米国連邦医薬品局は、入れ墨除去、入れ墨色に対する副作用、および入れ墨に起因する感染を調べ始めた。
【0126】
入れ墨を受ける際にしばしば伴う痛みのほかに、入れ墨および入れ墨の除去の両方に関与する多くの危険性がある。これらの危険性としては、アレルギー反応、肉芽種、ケロイド形成、MRI合併症および除去問題が挙げられる。感染は、よく生じるが、清浄な針と滅菌インクの使用により避けることができる。入れ墨色素に対するアレルギー反応は、稀である。しかしながら、アレルギー反応が生じると、特に色素を除去するのが困難となり得るので特に厄介なものとなる。したがって、色素またはインクに対するアレルギー反応のために、入れ墨を除去することが望ましいと考えられる。肉芽種は、身体が異物として知覚する入れ墨インクなどの物質周囲に形成し得る結節である。肉芽種が形成する場合、入れ墨を迅速に除去することが望ましいと考えられる。ケロイド形成は、通常の境界域を超えて増殖する瘢痕である。ケロイドは、皮膚に対する傷害または外傷から形成され得る。入れ墨(および入れ墨除去)は、ケロイド形成をし易い個体において特にケロイド形成を引き起こし得る。入れ墨に関連するさらなる合併症には、入れ墨または永続的メイキャップを有する人々が、磁気共鳴画像法(MRI)を受けた際に入れ墨領域における膨張または火傷を経験したという報告を含む。これは、稀に生じるだけであり、また明らかに作用の継続はないようである。しかしながら、入れ墨色素は、画像品質を妨害し得るという報告もある。これは、永続的なアイライナーを有する人が、目のMRIを受ける場合に主として生じるようである。
【0127】
入れ墨をもつ人々が、医療を求める最も多い理由は、入れ墨除去を望むことである。控えめに見積って、入れ墨をした人全てのうちのほぼ50%が、入れ墨除去を決意することが示唆されている。レーザー技法の進歩にもかかわらず、入れ墨除去は、通常、複数の処置を含み、かなり高価な有痛性の方法である。瘢痕のない完全除去は、不可能であると考えられる。現在、入れ墨除去のためにいくつかの方法がある。これらの方法の中で最も人気のあるものとしては:切除術、削皮法、レーザー療法、凍結外科手術、移植、カモフラージュ法、乱切法、およびサラブレーションが挙げられる。
【0128】
切除術は、上記領域を麻痺させるための局所麻酔注射と、その後、入れ墨を外科的に除去することを含む。次に端部を一緒にして縫合する。この手法により、電気メスによる出血が容易に制御され最少となる。大きな入れ墨を含むいくつかの場合において、身体の別の部分から採取された皮膚移植が必要となり得る。切除術は、時には組織拡張器(入れ墨が切断される際、瘢痕化がより少なくなるように皮膚下に挿入されるバルーン)の使用を含む。より大きな入れ墨は、完全除去のために反復手術が必要となり得る。
【0129】
より小さな入れ墨に通常使用される削皮法は、上記領域を凍結させる溶液により入れ墨にスプレーすることを含む。次に上記入れ墨は、皮膚を剥脱させる回転式剥脱装置により「やすりがけ」される。幾らかの出血が生じ易いことから、包帯を直ちに上記領域に適用する。
【0130】
レーザー療法は、入れ墨除去のために人気のある技法である。よく使用されるレーザーとしては、ヘルパーHレーザーによるVersapuls C、QスイッチNd:YAG(532nm、1064nm)、Qスイッチアレキサンドライト(855nm)、およびQスイッチルビー(694nm)が挙げられる。レーザー療法における最近の開発には、ピコ秒レーザーの開発が含まれる。本発明は、他のレーザー全ても考慮している。Qスイッチルビーおよびアレキサンドライトレーザーは、黒色色素、青色色素、および緑色色素を除去するために有用である。Qスイッチ532nmNd:YAGレーザーは、赤色色素を除去するために使用でき、1064Nd:YAGレーザーは、黒色色素および青色色素を除去するために用いられる。したがって、しばしば1種以上の波長またはレーザーが、複数着色の入れ墨を除去するために用いられる。入れ墨領域を麻痺させた後、レーザー光のパルスを、入れ墨に向ける。レーザーが、入れ墨色素を分解し、引き続き身体の清掃細胞が、処置された着色領域を取り除く。一般に、数回の通院が、ある期間または数週または数ヵ月にわたって必要であり、その処置は高価となり得る。一部の個人の何人かは、患部における低色素形成−自然の皮膚着色の淡色化を経験する。レーザー処置はまた、一部の入れ墨色素を望ましさの劣る色合いに変化させる可能性がある。
【0131】
凍結外科手術は、組織の除去または切除前の組織の凍結である。移植は、入れ墨領域を覆うために身体の別の部分から採取される移植片を取り出すことを含む。乱切法は、酸溶液による入れ墨の除去、その位置における傷の創製を含む。入れ墨のカモフラージュは、新たな文様を形成するか、または入れ墨を皮膚色調の色素によって覆うために、新たな色素の注入を必要とする。しかしながら、注入された色素が、皮膚の自然な半透明性を欠くことから、それらは自然のように見えないことが認められる。
【0132】
サラブレーションは、入れ墨領域を先ず局所麻酔により麻痺させる削皮法と類似の手法である。引き続き、食塩に浸漬させた通常の水道水溶液を、上記領域に塗布し、削皮法で使用された装置またはガーゼに包まれた木製ブロックなど、さらに簡単な装置などの掻爬装置を用いて、上記領域を激しく掻爬する。上記領域の色が深赤色になったら、包帯を付ける。
【0133】
どの技法が使用されても、入れ墨除去は一般に、肌理の変化、瘢痕化、および色むらを生じる。稀な場合だが、局所的および全身的なアレルギー反応が生じ得る。入れ墨除去の有効性は、限定はしないが、入れ墨のサイズ、入れ墨の位置、個体の治癒過程、入れ墨の適用方法、および入れ墨が皮膚に存在した時間の長さなど、種々の因子に依存する。例えば、より経験を重ねた入れ墨アーチストにより実施された入れ墨は、入れ墨が皮膚と同じ高さでむらなく注入されているため、より除去し易くなり得る。かなり長時間皮膚上に存在していた入れ墨は、新しいものよりも除去がより困難となり得る。
【0134】
最近の動物試験の予備的成績により、入れ墨後の急性期に使用された局所用イミキモド(imiquimod)5%クリームは、色素除去のために非外科的方法として有用性があることが示唆されている。Dermatol.Surg.28(1)(2002);またDerm.Times、22(4)(2001)を参照されたく、その両方とも全ての目的のために参照として本明細書に組み込まれている。この試験は、黒色、赤色、緑色および黄色色素で入れ墨された5匹の白皮症モルモットを含んだ。細切採取法が、入れ墨6時間後に採用された。次に対照として用いられた1匹の動物および他の動物を、4つの処置法:ワセリン剤、トレチノイン0.025%、イミキモド5パーセントクリーム、およびイミキモドと交互のトレチノイン、のうちの1つに割り付けた。各薬剤を、7日間6時間毎に塗布し、その応答を臨床的評価し、入れ墨配置後7日目および28日目に生検を繰り返した。巨視的および組織学的にイミキモド単独が、入れ墨を退色させるのに最も有効な措置のようであった。しかしながら、生検評価により、イミキモド処置部位における分離、重篤な炎症と線維症、および皮膚付属器の破壊による表皮および真皮の壊死の存在も明らかとなった。
【0135】
イミキモドは小型の分子であり、先天性免疫応答の複数アームを間接的に活性化できるトール様レセプター(TLR)アゴニストである。図5は、イミキモドによる免疫系の間接的な活性化を示している。特にイミキモドは、細胞表面上にTLR−7を結合させ、TRAF6経路を介してシグナルを発生させる。このシグナル伝達経路は、p38、JNK1またはNF−kB MAPキナーゼ経路を介して細胞核に至る。上記のシグナル伝達経路は、限定はしないが、TNF−α、インターフェロン−α、およびIL−1など、炎症誘発性サイトカイン類の産生を誘発する。
【0136】
したがって、本発明は、皮膚の色合いを変える手段としてのサイトカインの局所的かつ直接的投与を考慮している。本明細書に用いられる用語の「サイトカイン」とは、細胞−細胞相互作用、他の細胞の伝達および/または挙動に対して特異的効果を有する細胞によって産生される物質を称す。サイトカインは、細胞−細胞相互作用、他の細胞の伝達および/または挙動に対して特異的効果を有する細胞によって放出される物質であることがより好ましい。いくつかの実施形態において、サイトカインは、小型のタンパク質または生物学的因子である。サイトカインは、好ましくは1〜40kD、より好ましくは2〜30kD、より好ましくは3〜20kD、またはより好ましくは4〜25kDの範囲にある。好ましい実施形態において、サイトカインは、インターロイキン類、リンホカイン類、腫瘍壊死因子、インターフェロン類、ケモカイン類、および成長因子からなる群より選択される。
【0137】
インターロイキン類は、リンパ球、単球および他の細胞型により産生される分泌タンパク質である。インターロイキン類は、抗原性および非抗原性刺激に応答した細胞により放出されることが多い。インターロイキン類の例としては、限定はしないが、IL−1からIL−15が挙げられる。好ましい実施形態において、本発明のサイトカインは、IL−1またはIL−2、またはそれらの任意の同族体、誘導体、改変体、または模倣物である。本発明のサイトカインは、IL−1、またはその任意の同族体、誘導体、改変体、または模倣物であることがより好ましい。
【0138】
リンホカイン類は、活性化リンホカイン類により分泌され、また他のリンホカイン類および他の細胞型に影響を及ぼす溶解性因子である。リンホカイン類の代表例としては、限定はしないが、IL−1からIL−15、GM−CSF、G−CSF、G−CSF、M−CSF、アルファ−、ベータ−、またはガンマ−インターフェロン、腫瘍壊死因子、およびそれらの個々のレセプターが挙げられる。好ましい実施形態において、リンホカインは、CSFレセプター、アルファ−インターフェロン、インターロイキン−2またはそれらの任意の同族体、誘導体、改変体、または模倣物からなる群より選択される。リンホカインは、インターロイキン−2またはそれらの任意の同族体、誘導体、改変体、または模倣物であることがより好ましい。
【0139】
腫瘍壊死因子は、主としてマクロファージ類ならびに免疫応答および造血(血液細胞形成)の調節に役立つT−リンパ球によって産生されるサイトカイン類である。腫瘍壊死因子例としては:TNF−α(カケクチンとも呼ばれる)およびTNF−β(リンホトキシンとも呼ばれる)が挙げられる。TNF−αは、マクロファージ類によって産生されるが、一方、TNF−βは、活性化CD4+T細胞によって産生される。好ましい実施形態において、本発明のサイトカインは、TNF−αまたはそれらの任意の同族体、誘導体、改変体、または模倣物である。
【0140】
インターフェロン類は、細胞におけるウイルス増殖を防止することによって、通常、ウイルス感染との戦いで役割を演じているヒト細胞に由来する糖タンパク質である。複数種のインターフェロン類(例えば、I型およびII型)がある。インターフェロンI型サイトカイン類の例としては、限定はしないが、インターフェロン−αおよびインターフェロン−βが挙げられる。インターフェロンII型サイトカイン類の例としては、限定はしないが、インターフェロン−γが挙げられる。本発明のサイトカインは、インターフェロン−αまたはそれらの任意の同族体、誘導体、改変体、または模倣物であることが好ましい。
【0141】
ケモカイン類は、白血球の化学走化性因子であるサイトカイン類である。ケモカイン類は、保存システイン対の配列を基準にして2つの一般的な群に細分化でき:C×C群としては、血小板因子4、血小板塩基性タンパク質、IL−8、黒色腫成長刺激タンパク質、およびマクロファージ炎症性タンパク質2が挙げられる。一方、C C群としては、限定はしないが、TECK、TARC、RANTES、MIP−1、MCP−1、MCP−3、MCP−4、MDS、MIP−3、MIP−4、エオタキシン−1、エオタキシン−2、およびエキソダス1が挙げられる。
【0142】
成長因子は、別の細胞に対して作用する白血球により産生される物質である。その例としては、インターロイキン類、インターフェロン−α、リンホトキシン、腫瘍壊死因子、エリトロポイエチン(エポイエチン−α)、およびコロニー刺激因子(CSF)類がある。コロニー刺激因子は、白血球(WBC)類の産生を刺激する。CSF類の例としては、限定はしないが、顆粒球−CSF(C−CSF)(例えば、フィルグラスチン)、および顆粒球マクロファージ−CSF(GM−CSF)(例えば、サルグラモスチム)が挙げられる。CDF類の商業的実施形態の例としては、限定はしないが、Leukine(登録商標)、Neupogen(登録商標)およびNeulasta(登録商標)が挙げられる。上記CSF類の各々は、身体に対する効果および使用のために市販されている適応症において僅かに変わる。好ましい実施形態において、本発明のサイトカインは、CSFではなくて成長因子である。他の実施形態において、本発明のサイトカインは、Leukine(登録商標)、Neupogen(登録商標)およびNeulasta(登録商標)からなる群より選択されるCSFである。
【0143】
サイトカイン類に加えて、本発明はまた、サイトカイン産生を刺激するか、または増強する物質の使用を考慮している。サイトカイン産生を刺激するか、または増強する物質の例としては、限定はしないが、べん節(CSF類を刺激)、Echinacea、エンドセリン類、ビタミンA、ビタミンB5、抗酸化剤などが挙げられる。
【0144】
特に本発明は、皮膚の色合いを変えるために1つまたはそれ以上の物質(サイトカインまたはサイトカイン産生を誘導するか、または増強する物質)の局所投与を考慮している。好ましくは、このような物質は、異なる着色が望ましい皮膚領域に投与される。いくつかの実施形態において、上記皮膚領域は、入れ墨領域を含む。入れ墨は、例えば、装飾的入れ墨、外傷性入れ墨、または火薬による入れ墨であり得、入れ墨の色合いを変化させるか、または入れ墨から色合いの除去あるいは減少が望まれることがあり得る。
【0145】
一例において、異なる着色が望ましい皮膚領域は、1つ以上の色素を有する装飾的入れ墨である。上記色素は、本明細書に開示された色素のいずれか1種、あるいは入れ墨使用に承認されているか、または承認されていない任意の他の色素であり得る。
【0146】
本明細書に開示された皮膚の色合いを変える方法は、本明細書に開示された1つ以上の化合物を、異なる着色が望ましい皮膚領域に、好ましくは局所的に投与することを含む。好ましい実施形態において、投与される化合物は、サイトカインである。より好ましくは、投与される化合物は、インターロイキン、インターフェロン、または腫瘍壊死因子である。投与される化合物は、IL−1、INF−α、またはTNF−αであることがより好ましい。
【0147】
入れ墨の除去または減少させるために、上記方法が用いられる場合、本明細書の化合物のいずれかの投与が、例えば、皮膚への色素の注入直後(例えば、入れ墨アーチストによる過失)または長期間後(例えば、個人が入れ墨除去を望むため)に生じ得る。このアプローチは、免疫系の単一アームのみを選択的に活性化するため、副作用がより少なく、したがってイミキモドの直接的適用(先天性免疫応答の複数アームを活性化させる)よりも効率性能に対してより良好な安全性を有することができる。
【0148】
本発明の化合物は、キットの一部であり得、個々に包装された1種以上のサイトカイン類を含むことができる。皮膚の色変え用キットは、典型的にサイトカインまたはサイトカイン産生を増強する物質などの少なくとも1種または複数の化合物を包含すると考えられる。上記キットはまた、適正使用および使用後の内容物廃棄に関する取り扱い説明書を含んでいることが好ましい。この説明書は、例えば、特定の結果(例えば、色変え)を達成するために使用されるべき化合物、および化合物の投与方法についての記載を含むことができる。
【0149】
本発明の化合物は、任意の適切な経路によって投与でき、好ましくは、このような経路に適合させた薬学的組成物の形態で、また意図された処置に有効な用量で投与できる。活性化合物および組成物は、例えば、経口投与、血管内(IV)投与、腹腔内投与、皮下投与、筋肉内(IM)投与またはパッチ法などによる局所投与であり得る。好ましい実施形態において、本発明の活性化合物は、入れ墨領域に局所的に投与される。
【0150】
本発明の化合物はまた、例えば、生理食塩水、デキストロース、または水が適切な担体として使用できる組成物として注射(IV、IM、皮下または噴射)により投与できる。組成物のpH値は、必要ならば、適切な酸、塩基、または緩衝液により調整できる。マンニトールおよびPEG400を含む適切な増量剤、分散剤、湿潤剤または懸濁剤もまた、組成物に含ませることができる。適切な非経口組成物は、注射用バイアル中、凍結乾燥粉末などの滅菌固体物質として配合された化合物も含むこともできる。注射前に化合物を溶解するために水溶液を加えることができる。
【0151】
薬学的組成物は、任意の治療有効量で本明細書に開示された任意の化合物を含有することができる。薬学的組成物は、約0.1mgから1000mgの化合物(例えば、サイトカインまたはサイトカイン産生を増強する物質)、より好ましくは約7.0mgから350mgの化合物、より好ましくは約15mgから250mgの化合物、またはより好ましくは約20mgから150mgの化合物を含有することが好ましい。本明細書の化合物は、1処置サイクルにつき1回または1処置サイクルにつき複数回投与できる。例えば、単回用量または複数回用量を、各色変えの処置前、処置時、または処置後に施すことができる。
【0152】
いくつかの実施形態において、本明細書の化合物の局所用処方物を、1日当り1〜10回、より好ましくは1日当り1〜5回、またはより好ましくは1日当り1〜3回、入れ墨領域に適用され、例えば、全量の0.075重量%から30重量%、好ましくは0.2重量%から20重量%、最も好ましくは0.4重量%から15重量%の有効成分を含有する局所用ゲル、スプレー、軟膏またはクリームとして塗布されることが好ましい。
【0153】
上記化合物は、色変えの処置前、処置時、または処置後に適用することができる。上記化合物は、色合い変更処置前に適用することがより好ましい。色合い変更処置は、このような皮膚の色合いが天然(例えば、そばかす)のものであってもまたは非天然(例えば、入れ墨)のものであっても、皮膚の色合いを減少させるか、変化させるか、または排除するために使用される、当業者により知られている任意の手法(化学的、 物理的、生物学的などのいずれかであっても)である。色合い変更処置の例としては、限定はしないが、切除術、削皮法、レーザー療法、凍結外科手術、移植、カモフラージュ法、乱切法、およびサラブレーションが挙げられる。好ましい実施形態において、色合い変更処置はレーザー療法である。本明細書の化合物は、色変え(例えば、入れ墨)の処置前、処置時、および/または処置後に投与することができる。
【0154】
一実施形態において、入れ墨から生じる色合いが、本明細書に開示された1種以上の化合物を、入れ墨皮膚領域に投与することによって全体的にまたは部分的に除去される。このような化合物は、局部的(例えば、局所的または経皮的)に投与されることが好ましい。上記化合物は、色変えの処置前または処置時に投与されることが好ましく、一方、色合い変更処置はレーザー療法であることが好ましい。ここでの
軟膏として配合される場合、有効成分(サイトカイン類)は、例えば、パラフィン系または水混和性軟膏基剤と共に使用できる。あるいは、有効成分を、水中油クリーム基剤と共にクリーム中で配合できる。所望ならば、クリーム基剤の水相は、プロピレングリコール、ブタン−1,3−ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロール、ポリエチレングリコールおよびそれらの混液などの少なくとも30重量%の多価アルコールを含むことができる。
【0155】
局所用処方物は、望ましくは皮膚または他の患部を通して有効成分の吸収または透過を増強させる化合物を含むことができる。このような皮膚透過増強剤の例としては、ジメチルスルホキシドおよび関連アナログが挙げられる。
【0156】
本発明の化合物は、経皮投与装置によっても投与することができる。局所投与は、貯蔵層および多孔性膜タイプのパッチまたは固体マトリックス種のパッチを用いて達成されることが好ましい。いずれの場合においても、活性剤は、膜を通して貯蔵層またはマイクロカプセルからレシピエントの皮膚または粘膜と接触している活性剤透過性接着剤へと連続的に送達される。上記活性剤が皮膚を通して吸収される場合、上記活性剤の制御されたかつ予め決定された流量が、レシピエントに投与される。マイクロカプセルの場合、封入剤は、膜としても機能できる。経皮用パッチとしては、アクリル系乳濁液およびポリエステルパッチなどの接着剤系を有する適切な溶媒系中の化合物を挙げることができる。
【0157】
投与される化合物の有効量および用量は、患者の天然の皮膚色、除去されるか、加えられるか、または変化させる望ましい色合い、異なる色合いを有することが望ましい標的領域のサイズ、標的領域の位置、およびサイトカイン類と関連させて使用される色合い変更処置に依って変えられる。
【0158】
状態を処置するためのさらなる方法および組成物は、神経系およびその活性を調節することを含む。神経系は、身体運動および細胞活性を協調させる。ニューロンの多くは、神経伝達物質などの化学物質を放出することによってそれらの作用を達成させる。神経伝達物質は、1つのニューロンの軸索末端から放出され、シナプスとして知られている接合部を通過してから、レセプター細胞(シナプス後細胞)に到達する。シナプス後細胞は、例えば、別のニューロン、筋肉細胞、または腺細胞であり得る。興奮性シナプスにおける神経伝達物質は、シナプス後細胞膜を脱分極させる。
【0159】
体内を通して一般に用いられる神経伝達物質は、アセチルコリン(ACh)である。アセチルコリンは、2つのタイプのレセプター、ムスカリンレセプターおよびニコチンレセプターを活性化することが知られている。ムスカリンレセプターは、副交感神経系の節後ニューロンによって刺激される全てのエフェクター細胞ならびに交感神経系の節後ニューロンによって刺激されるエフェクター細胞に見られる。ニコチンレセプターは、交感および副交感両方の節前ニューロンと節後ニューロンとの間のシナプスに見られる。ニコチンレセプターはまた、神経筋接合部における骨格筋線維の多くの膜にも存在する。
【0160】
アセチルコリンは、細胞内小胞がシナプス前部神経細胞膜と融合するとコリン作動性ニューロンから放出される。小胞は一般に、直径が約50nmで、約10,000分子のAChを含有する。小胞前駆体は、小胞体(ER)および神経細胞体のゴルジにおいて作られ、軸索を通って新たな小胞を創製するために膜がもぎとる末端に輸送される。
【0161】
AChが、シナプス後部細胞膜上のレセプターに結合すると、リガンドゲーテッドナトリウムチャネルが開くと推定されている。これらのリガンドゲーテッドナトリウムチャネルは、Naイオンの流入を可能にし、次にシナプス後部細胞の膜電位を興奮性シナプス後部電位(EPSP)まで減少させる。シナプス後部膜の脱分極化が特定閾値に達すると、シナプス後部細胞内に作用電位が発生する。
【0162】
シナプス小胞体放出および/またはリサイクリングの欠損は、重篤な神経学的疾患および神経筋疾患を引き起こし得る。このような疾患としては、限定はしないが、ランバート−イートン筋無力性症候群(LEMS)、先天性筋無力性症候群、ボツリヌス中毒、および破傷風毒性が挙げられる。シナプス小胞体放出および/またはリサイクリングの欠損に対しては、神経毒、特に神経毒により良好な実施が可能である。特に本発明は、小胞体放出および/またはリサイクリングの阻害、遅延、妨害、または減少のための神経毒投与を考慮している。
【0163】
本発明は、例えば、神経毒の有効期間を増すことによって神経毒処置を改善するための組成物および方法に関する。このような組成物および方法は、神経毒により処置可能または予防可能である状態の処置および予防に有用である。
【0164】
用語の「神経毒」とは、神経機能を阻害する任意の物質を称す。神経毒は、不適切に服用されること、あるいは適用すると極めて毒性であることが多い。神経毒は、例えば、ナトリウムチャネル(例えば、テトロドトキシン)に対して、またはシナプス伝達を遮断する(例えば、クラーレおよびブンガロトキシン、ボツリヌス毒素)ことによって機能を果たすことができる。
【0165】
神経毒の例としては、限定はしないが、クラーレ、ブンガロトキシン、サキシトキシン、テトロドトキシン、破傷風毒素、およびボツリヌス毒素が挙げられる。クラーレ神経毒は、南米インディアン人により用いられる矢毒の有効成分であるアルカロイドである。クラーレアルカロイドは、アセチルコリンに対する競合的アンタゴニストとして作用し、運動終末板伝達を遮断することから、筋弛緩性を有する。ブンガロトキシンは、bungarus multicinctusとして公知のコブラヘビ毒に由来する神経毒タンパク質である。アルファ−ブンガロトキシンは、ニコチン性アセチルコリンレセプターを遮断するが、ベータ−およびガンマ−ブンガロトキシンは、シナプス前に作用しアセチルコリン放出および枯渇を引き起こす。サキシトキシンは、赤潮の渦鞭毛藻類、Gonyaulax catenellaおよびG.Tamarensisにより産生される神経毒である。サキシトキシンは、ナトリウムチャネルに結合し、したがって活動電位の通路を遮断する。この毒素は、クラム、Saxidomus giganteusから元々単離された。テトロドトキンは、日本のフグに由来する神経毒である。テトロドトキンもまた、ナトリウムチャネルに結合し、その活性は、サキシトキシンの活性と幾らか似ている。破傷風毒素は、嫌気性スポア形成バチルス属破傷風菌により引き起こされる毒素である。破傷風菌は通常、汚染された刺創を通して体内に進入するが、火傷、外科創傷、皮膚潰瘍、注射部位なども進入し得る。破傷風毒性は、反復神経刺激により引き起こされた筋肉収縮の持続を伴うことが多い。ボツリヌス神経毒は、嫌気性グラム陽性菌のボツリヌス菌(本明細書ではC.botulinumと称される)により産生される。ボツリヌス神経毒は、哺乳動物における神経麻痺、またはボツリヌス中毒を引き起こし得る。ボツリヌス毒素には、少なくとも7つの公知のタイプ:毒素A、B、C(本明細書では「C」と称される)、D、E、F、およびGがある。
【0166】
ボツリヌス毒素の上記7つのタイプの各々の分子量は、約150kDである。これらのボツリヌス毒素がC.bacteriumによって放出される場合、非毒性タンパク質との複合体となっている。例えば、ボツリヌス毒素A型複合体は、クロストリジウム菌により、900kD、500kD、または300kDのいずれかの形態で産生できる。ボツリヌス毒素B型およびC型は通常、500kD複合体として産生される。ボツリヌス毒素D型は、300kD複合体または500kD複合体のいずれかで産生される。最後にボツリヌス毒素E型およびF型は通常、約300kD複合体として産生される。
【0167】
約150kDを超える分子量のこれらの複合体は、非毒素赤血球凝集素タンパク質および非毒素および非毒素非赤血球凝集素タンパク質を含有すると考えられている。これら2種の非毒素タンパク質は、ボツリヌス毒素分子への変性に対する安定性、および毒素が摂取される際に消化酸類に対する保護を提供するように作用し得る。さらにより大型のボツリヌス毒素複合体は、ボツリヌス毒素複合体の筋肉内注射部位から離れてより遅いボツリヌス毒素の拡散速度をもたらし得ることが可能である。
【0168】
ボツリヌス神経毒は各々、異なる性質と作用を有するが、7種のボツリヌス毒素全ての間でいくつか一般的な構造および官能基類似性がある。例えば、7種の毒素は全て、凡そ150−kDの分子量をもつ単鎖ポリペプチド類として合成されている。これらの単鎖分子は、切断または開裂によりタンパク質分解酵素によって活性化される。それが切断または開裂されると、150−kD単鎖分子は、ジスルフィド結合により結合した約100−kD重鎖(H鎖)および約50kD軽鎖(L鎖)からなる二鎖分子を形成する。上記H鎖は、シナプス前部の神経末端レセプターに対する神経毒の高親和性結合を生じさせ、細胞内への神経毒内部移行を可能にする。上記L鎖は、神経末端膜の内側にある神経伝達小胞(例えば、ACh小胞)を結合させる膜タンパク質(例えば、SNAP−25またはVAMP)を開裂させる亜鉛依存エンドペプチダーゼである。
【0169】
したがって、ボツリヌス神経毒の全てが機能する分子機構は、以下の3つの工程に要約できる。第1の工程において、神経毒は、H鎖と細胞表面レセプターとの間の特異的相互作用を介して標的ニューロンのシナプス前部膜に結合する。ボツリヌス神経毒の各タイプのレセプターと破傷風神経毒のレセプターは異なっている。H鎖(H)のカルボキシル末端セグメントは、細胞表面への毒素の標的化にとって重要であると思われる。第2の工程において、神経毒は、シナプス前部細胞の細胞膜を通過する。神経毒は、レセプター媒介飲食作用を介して細胞に進入する。神経毒を含有するエンドソームが形成される。各エンドソームは、エンドソーム内のpHを減少させるプロトンポンプを含有する。このpH減少により、神経毒内の立体配座の変化が開始され、エンドソームをシナプス前部細胞の細胞質内に流入させる。第3期に、H鎖とL鎖を接続しているジスルフィド結合が還元される。亜鉛(Zn++)エンドペプチダーゼであるL鎖は、SNAREタンパク質を選択的に開裂する。シンタキシン、VAMP、およびSNAP−25を含むSNAREタンパク質は、神経伝達物質含有小胞の認識、結合、放出およびリサイクリングに必須である。
【0170】
各神経毒は、SNAREタンパク質の異なるアミノ酸結合を特異的に開裂する。例えば、破傷風神経毒およびボツリヌス神経毒B型、D型、F型、およびG型は、シナプトブレビン(「小胞関連膜たんぱく質」またはVAMPとしても公知である)。ボツリヌス毒素B型は、Gln76−Ph77でVAMPを開裂する。ボツリヌス毒素D型は、Lys59−Leu−60でVAMPを開裂する。ボツリヌス毒素F型は、Leu−58−Lys59でVAMPを開裂する。および、ボツリヌス毒素G型は、単結合Ala−AlaでVAMPを開裂する。VAMPは、小胞放出に必須であるシナプトソーム膜タンパク質である。シナプス小胞の細胞基質表面に存在するVAMPの大部分は、上記開裂事象のいずれによっても、それらの結果除去される。
【0171】
同様に、ボツリヌス神経毒A型とE型は、SNAP−25としても公知の分子量25キロダルトンのシナプトソーム関連タンパク質を開裂することによりAChの放出を阻害する。ボツリヌス毒素A型は、Gln197−Arg198においてSNAP−25を開裂し、ボツリヌス毒素E型は、Arg180−Ile181においてSNAP−25を開裂する。SNAP−25は、シナプス前部神経細胞の細胞膜の内側に位置する細胞膜タンパク質である。SNAP−25は、小胞放出過程に不可欠である。毒素A型の効力および作用時間は、少なくとも部分的に、SNAP−25に対するその作用に由来すると考えられている。Billante,CR.、Muscle & Nerve、26:395−403頁(2002)を参照されたい。
【0172】
ボツリヌス神経毒C型もまた、SNAP−25を開裂する。さらに、C型はまた、タンパク質シンタキシンを開裂する。シンタキシンは、カルシウムチャネルとSNAP−25とに関連するシナプス前部膜タンパク質である。ボツリヌス神経毒C型は、それらが脂質二重層に挿入される場合にのみLys253−Ala254ペプチド体においてシンタキシンイソ型1Aを、Lys252−Ala253ペプチド結合においてシンタキシンイソ型1Bを、開裂する亜鉛エンドペプチダーゼである。シンタキシンイソ型2および3もまた、ボツリヌス神経毒C型により開裂される。しかしながら、シンタキシンイソ型4は、ボツリヌス神経毒C型開裂に抵抗する。Schiavo G.、J.Biol.Chem.、5:270(18):10566−70頁(1995)を参照されたい。
【0173】
これらタンパク質全ての開裂は、小胞と末端神経膜との融合を阻止する。次にこれは、神経筋接合部またはシナプスへの神経伝達物質(例えば、ACh)の放出を阻止する。ボツリヌス毒素A型のような神経毒類はAChの放出を防ぐが、それらはシナプス前部ニューロンにおけるその合成または貯蔵に影響を及ぼさないことは注目すべきである。さらにそれらは、このような細胞による電気シグナルの伝導に影響を及ぼさない。
【0174】
上記神経毒は、シナプス前部細胞の神経支配を除去するが、シナプス前部細胞は、神経毒に応答して、その終板領域を実際に拡張する証拠が示されている。例えば、部分的に毒素遮断されたレセプター周囲に新たな軸索が発芽して神経筋経路を再建することにより、ボツリヌス毒素A型作用からの回復が成されることが示されている。Billante,C.R.ら、Muscle & Nerve、26:395−403頁(2002)を参照されたい。特にボツリヌス毒素A型からの回復は、2つの異なる期を有することが判明している。第一期における回復は、発芽によるニューロン再支配による。第二期におけるニューロン支配は、神経発芽の退縮による元の神経末端の遮断解除の結果である。同上著。
【0175】
したがって、本発明はまた、1種または複数の神経毒および1種または複数のニューロン成長抑制因子を標的領域に投与することによる神経伝達阻害を考慮している。本明細書に用いられる用語の「ニューロン成長抑制因子」とは、ニューロンおよび/または軸索成長(例えば、発芽)を阻害、妨害、低減または減少させる物質を称す。このように、ニューロン成長抑制因子は、例えば、神経接合部の修復遅延により神経毒の有効性を増加させるのに有用であり得る。
【0176】
好ましい実施形態において、ニューロン成長抑制因子は、MAPK経路またはMEK/ERKの活性化を妨害する任意の物質である。MAPKは、中枢神経系(CNS)の分裂終了細胞におけるシナプス可塑性に関与することが示唆されている。例えば、いくつかの試験により、MAPKは、アメフラシ感覚ニューロン−運動ニューロンシナプスの長期亢進、ウミウシにおける結合性馴化、およびげっ歯類における海馬の長期増強作用にとって必要であることが示唆されている。Adams,J.P.、Neural Notes、1巻、1号(1999)を参照されたい。MAPKカスケードは、一連のキナーゼ類によって調節される。MAPKを経る典型的なシグナル伝達経路は、図1に示されている。図1における成長因子(GF)(例えば、上皮成長因子(EPG)または神経成長因子(NGF))は、細胞表面上の成長因子レセプター(GFR)に結合する。成長因子レセプターは、一般にチロシンキナーゼ(Trk)レセプターである。
【0177】
3つのタイプのTrkレセプターがあり、その各々は、以下の4つの神経栄養:NGR、脳由来神経因子(BDNF)、およびニューロトロフィン3および4(NT3およびNT4)、の1つまたは複数によって活性化できる。Huang,EJ.、Annual Review of Biochemistry、72巻、609−642頁(2003)を参照されたい。これらのレセプターを介する神経栄養シグナル伝達は、部分的に細胞生存、増殖、および軸索と樹状突起成長ならびにパターンづけを調節する。同上著。ニューロトロフィンのシグナルトランスダクタとして機能する別のタイプのレセプターはp75NTRである。p75NTRは、TNFレセプタースーパーファミリーのメンバーであり、NF−kBのエフェクターである。
【0178】
一般に、成長因子のそのTrkレセプターに対する結合は、そのレセプターを同一のレセプターと二量化させる。この二量化により、二量化レセプターの細胞内尾部上のチロシン残基の自動リン酸化が開始される。自動リン酸化から生じるホスホチロシン類は、Grb2(アダプタータンパク質)、SOS(グアニンヌクレオチド交換因子)およびRas(GTP結合タンパク質)などのシグナル伝達分子に対する結合部位として機能する。Trkレセプターにより活性化される他の分子としては、Rap−1、およびCdc−42−Rac−Rhoファミリー、P13K、およびホスホリパーゼ−C−γが挙げられる。
【0179】
特に、Grb2−SOS複合体は、グアノシンジホスフェート(GDP)のグアノシントリホスフェート(GTP)への交換を刺激することによって小型Gタンパク質を活性化する。Rasの他の活性化因子としては、限定はしないが、ホスホリパーゼCおよびカルモジュリン(例えば、カルシウム流入に応答して)が挙げられる。RitおよびRinならびに2種の相同性Ras様タンパク質は、細胞膜に局在化している。Rinは、C末端結合モチーフを介してカルモジュリンを結合する。RitおよびRinは、恐らく膜結合の新規な機構を用いて、Ras関連タンパク質の新規なサブファミリーを規定すること、また、Rinは、ニューロン内へのカルシウム媒介シグナル伝達に関与し得ることが示唆されている。Lee,CHJら、The Journal of Neuroscience、16巻、21号、6784−6794頁(1996)を参照されたい。
【0180】
Rasの活性化は、細胞増殖(成長因子の媒介)、細胞分化(例えば、PC12細胞)、および細胞機能の分化(カルシウムシグナル伝達を媒介する)の促進と関連している。Rasは、GTPと結合し、加水分解するタンパク質であるGTPアーゼの大型ファミリーの注目すべきメンバーである。凡そ50の異なるメンバーを含むRasスーパーファミリーは、機能および配列によってサブファミリーに分類できる。細胞増殖および分化に関連している1つのサブファミリーとしては、以下のメンバー:H−Ras、N−Ras、K−Ras、TC−21、Rap−1、Rap−2、R−Ras、Ral−A、Ral−B、が挙げられる。細胞骨格構造に関連する別のRasスーパーファミリーとしては、以下のメンバー:Rho−A、Rho−B、Rho−G、Rho−E、CDC−42、Rac−1、およびRac−2が挙げられる。小胞体選別に関連する第3のRasスーパーファミリーとしては、以下のメンバー:Rab、Arf、およびRan、が挙げられる。
【0181】
Rasのエフェクターとしては、限定はしないが、ホスファチジルイノシトール−3’−キナーゼ(P13K)、Raf、およびRalが挙げられる。P13Kの過剰発現は、細胞体および軸索幅の拡大と関連する。同上著。またそれは、ニューロンの成長依存の生存に必須であるセリン/トレオニンキナーゼであるAtkの公知の活性化因子である。Markus A.、Neuron、35巻:65−76頁(2002)を参照されたい。Atkの過剰発現は、軸索分枝数の増加ならびに細胞体の拡大に関連する。同上著。
【0182】
Rasは、先端MAPKキナーゼキナーゼ(MAP3K)、MAPKキナーゼ(MEKまたはMKK)、および下流MAPKを包含する中央3層コアシグナル伝達モジュールによってMEKおよびERKを活性化する。次にMEKは、細胞外−シグナル−調節キナーゼ(ERK)をリン酸化し、活性化する。
【0183】
最も一般的なMAP3KはRafである。Rasによるグアノシン二リン酸(GDP)のグアノシン三リン酸(GTP)への交換により立体配置の変化が誘発され、Rafを結合し、活性化することが可能になる。Rafキナーゼファミリーは、特定のセリンおよびトレオニン残基上のヒドロキシル基を触媒するセリン/トレオニンキナーゼである。RasとRafとの相互作用は、Rafを活性化する上で必要であるが、十分ではないと考えられている。哺乳動物は、サイズが70kDaから100kDaの範囲の、3種のRafタンパク質を有している。Raf異性体は:a−Raf、b−Rafおよびc−RafまたはRaf−1として知られているRaf−1は、身体中に偏在的に分布しているが、a−Rafは、尿生殖組織に大量に見られ、b−Rafは、主として神経組織に見られる。
【0184】
一般に、Rasは、Raf(例えば、b−RafまたはRaf−1)を細胞基質からRafが活性化される細胞膜へと動員する。Raf活性化は、タンパク質2A(PP2A)による阻害部位の脱リン酸化およびPAK(p21rac/cdc42−活性化キナーゼ)、Src−ファミリーおよびいくつかの未知のキナーゼ類による活性化部位のリン酸化を含む多段階過程を含むと考えられている。
【0185】
b−Rafキナーゼ類は、アポトーシスを抑制し、細胞分化を調節する細胞外シグナル伝達と関連する。b−Rafのさらなる活性化因子としては、PKA、PKB、PKC,KSR、Pak、および14−3−3が挙げられる。PKAは、大部分の細胞においてRaf−1触媒活性を阻害するが、それは、b−Raf媒介過程である神経成長因子に刺激されるPC12細胞分化を増強する。PC12細胞分化の阻害ではなくてこの増強は、PKAのN末端調節ドメインの結果であると考えられている。このドメインは、b−Raf触媒活性を調節するPKAの能力を妨害し、PKA阻害に対するb−Raf−依存過程の抵抗性を提供すると考えられている。
【0186】
Rheb(脳に大量に存在するRas相同体)は、Gタンパク質の新規なクラスであり、Rasスーパーファミリーのメンバーであり、Rap/Ralサブファミリーの直接的メンバーである。RasおよびRap1と同様にRhebは、b−Rafキナーゼと結合するが、RasおよびRap1とは対照的に、Rhebは、b−Rafキナーゼ活性を阻害し、転写因子Elk−1のb−Raf依存活性化を阻止する。Rheb相同体は、それらの全体的な配列類似性、それらのエフェクタードメイン配列の高保存性、それらのG1ボックスにおけるユニークなアルギニンの存在、および保存CAAXファルネシル化モチーフの存在に基づいて定義することができる。
【0187】
MEKは、トレオニン残基およびチロシン残基両方上のMAPKをリン酸化するユニークなキナーゼである。MEKは、MAPKの唯一の公知の活性化因子であり、MAPKは、MEKの唯一の公知の標的である。活性化ERKは、細胞基質内に、多くの基質(例えば、MAPおよびTauなどの細胞骨格タンパク質、Elk、Myc、Fos、およびJunなどの核転写因子、細胞基質のホスホリパーゼA2などのシグナル伝達分子、およびRSKなどの他のキナーゼ類)を有する。同上著。MEK/MAPKおよびp53経路の阻害は、神経成長阻害に関連している。Pumiglia,K.M.、Proc.Natle.Acad.Sci.USA、94巻、448−452頁(1997年1月)を参照されたく;またAdams,J.P.、Neural Notes、V巻、1号、14−16頁(1999);またMazzoni,I.E.、J.Neurosci.19(22):9716−27頁(1999年11月)を参照されたい。
【0188】
PC12などの神経細胞系において、NGFおよびEGFは、同じRaf/MEK/ERK経路を使用してPC12増殖および分化を生じさせることが示されている。しかしながら、ニューロンの終板成長を誘導する別の経路が存在する。この経路は、脳下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)により活性化される。Vaudry,D.、Science,296巻:1648−49頁(2002)を参照されたい。PACAPは、ERKを活性化することにより強い軸索突起成長を引き起こすことが判明している。PACAPシグナル伝達は、Rasから独立していると考えられている。PACAPは、細胞内cAMPを増加させるアデニル酸シクラーゼ(AC)を活性化すると考えられている。次にcAMPは、PKAを介してERKを活性化する。しかし、H89によるPKAの阻害よって、ERKの活性化が阻止されるとは考えられない。同上著。このことは、cAMPが、Raf/MEK/ERK経路を介して、例えば、Rap−1または別のエフェクターを介してERKを活性化できることを示唆している。
【0189】
したがって、本発明は、種々の状態の処置および/または予防のために神経毒と組み合わせたニューロン成長抑制因子の使用を考慮している。好ましい実施形態において、ニューロン成長抑制因子は、Trkレセプターインヒビター、Rasインヒビター、Rafキナーゼインヒビター、Rap−1インヒビター、PKAインヒビター、p53インヒビター、MEKインヒビター、ERKインヒビター、NF−kBインヒビター、成長因子のインヒビター(例えば、NGF)、または上記酵素のいずれか(例えば、Ras、Raf、Rap−1など)のイソ酵素、誘導体、スプライシング改変体、活性化因子またはエフェクター(標的)のインヒビターからなる群より選択される。
【0190】
MEKインヒビターの例としては、限定はしないが、SL327、PD98059(CalBiochemカタログ番号513000)、U0126(CalBiochemカタログ番号662005)、PD 184352(Delaney,A.M.、Molec.Cell Biol.、22巻、21号、7593−7602頁(2002)を参照);2−コロル−3−(N−スクシンイミジル)−1,4−ナフトキノン(CalBiochemカタログ番号444938)、arry−142886(AstraZeneca)、三環式フラボン、および2−(2−アミノ−3−メトキシフェニル)−4−オキソ−4H−[1]ベンゾピランが挙げられる。
【0191】
Rasインヒビターの例としては、限定はしないが、FTI−277および膜から全てのRasイソ体を移動させる非毒性ファルネシルシステインアナログファルネシルチオサリチル酸(FTS)などのN17Rasおよびファルネシルトランスフェラーゼインヒビター(FTI)類が挙げられる。Kloor,Y.、Mol.Med.Today、6(10);398−402頁(2000);またAletse,C.、JARO、(02)377−378頁(2001)を参照されたい。
【0192】
P13−Kインヒビターの例としては、限定はしないが、LY294002が挙げられる。
【0193】
Raf−Ras相互作用を阻害する化合物の例としては、限定はしないが、Zeng,J.、Protein Engineering、14巻、1号、39−45頁(2001)に記載されているこれらの短鎖ペプチド類およびMCP1ならびにその誘導体53および110(Kato−Stankiewicz,J.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.、99(22):14398−14403頁(2002)を参照)が挙げられる。
【0194】
b−Rafインヒビターの例としては、限定はしないが、b−Rafを阻害する、例えば、BAY−43−9006(Wilhelm S.、Current Pharmaceutical Design、8巻、号(2002)を参照)、b−RafおよびRKIP(Rafキナーゼインヒビタータンパク質)を阻害するRheb(脳に大量に存在するRas相同体)などのビスアリール尿素が挙げられる。
【0195】
PKAインヒビターの例はH−89である。
【0196】
PKCインヒビターの例としては、スタウロスポリンおよびそのビスインドリルマレイミド誘導体、Ro−31−7549、Ro−31−8220、Ro−31−8425、Ro−32−0432およびサンギバマイシンなどのPKC ATP−結合部位に競合的なインヒビター;カルホスチンC、サフィンゴール、D−エリトロ−スフィンゴシンなどのジアシルグリセロールおよびホルボールエステル類の結合部位で競合することによりPKCの調節ドメインと相互作用する薬物;塩化チェレリトリン(chelerythrine chloride)、およびメリッチン(Merittin)などのPKCの触媒ドメインを標的とする薬剤;塩化デクアリニウムなど、UV光への曝露の際PKCに共有結合することによりPKCを阻害する薬剤;Go6976、Go6983、Go7874および他の相同体、硫酸ポリミキシンBなどのCa依存PKCを特異的に阻害する薬剤;PKC配列から誘導される競合的ペプチド類を包含する薬剤;および心臓毒、エラグ酸、HBDDE、1−O−ヘキサデシル−2−O−メチル−rac−グリセロール、ヒペルシン(Hypercin)、K−252、NGIC−I、フロレチン(Phloretin)、ピセアタンノール(piceatannol)、クエン酸タモキシフェンなどの他のPKCインヒビター、が挙げられる。有効であると示されたさらなるインヒビターとしては:542 二塩酸(+−)−1−(5−イソキノリンスルホニル)−2−メチルピペラジン;IC50=6.0μM;543 1−(5−イソキノリンスルホニル)ピペラジン;IC50=6.0μM;609 塩化(+/−)−パルミトイルカルニチン;621 二マレイン酸10−[3−(1−ピペラジニル)プロピル]−2−トリフルオロメチルフェノチアジン;632 塩化(+/−)−ステアロイルカルニチンが挙げられる。開示された方法において有効な別の薬理学的に許容できるインヒビターは、当該分野に公知の多種多様のPKCインヒビター(例えば、Goekjianら、Expert Optin.Investig,Drugs、10、2117−40頁(2001))から容易にスクリーンされ;またBattaini、Pharmacolog.Res.、44、353−61頁(2001)を参照されたい。全ての目的のために参照として本明細書に組み込まれ、Chilgren’s Nedical Center社に譲渡された米国特許第6,664,266号を参照されたい。
【0197】
Rap−1インヒビターの例は、SB203580である。
【0198】
いくつかの実施形態において、本明細書の発明は、PD98059などのMEKを利用して、神経接合部の修復を阻害または遅延させる。いくつかの実施形態において、本明細書の発明は、Rafキナーゼインヒビター、またはより好ましくは、b−Rafキナーゼインヒビター(例えば、RhebまたはBAY−43−9006)を利用して、神経接合部の修復を阻害または遅延させる。
【0199】
さらに、本発明のニューロン成長抑制因子はまた、アンチセンス、抗体、小型または大型の有機または無機分子、または神経細胞の増殖を減少させるか、または阻止する任意の他の化合物であり得る。
【0200】
本明細書に用いられる用語の「アンチセンスオリゴヌクレオチド」または「アンチセンス」は、生理学的条件下で標的DNAまたはRNAに特異的にハイブリダイズし、それによってその転写および/または翻訳を阻害する核酸配列を含む組成物を言う。アンチセンスオリゴヌクレオチド類としては、siRNAが挙げられる(Liang Y.ら、Clin.Cancer Res.2003年:19(16 suppl):77.アブストラクトA111を参照)。アンチセンスオリゴヌクレオチド類は、オリゴリボヌクレオチド、オリゴデオキシリボヌクレオチド、修飾オリゴリボヌクレオチド、または修飾オリゴデオキシリボヌクレオチド、およびそれらの任意の誘導体、改変体、断片、および/または模倣物を含むことができる。アンチセンスオリゴヌクレオチド類は、天然または合成であってもよい。
【0201】
アンチセンスオリゴヌクレオチドの正確な長さおよびその標的との相補性の程度が、標的の配列およびその配列を包含する特定の塩基などの選択された具体的な標的に依存することを、当業者は認識するであろう。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、生理学的条件下で標的と選択的に結合するように、すなわち、生理学的条件下で標的細胞における任意の他の配列に対するよりも標的配列に実質的にハイブリダイズするように構築され、配列されることが好ましい。
【0202】
したがって、好ましい実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、b−Raf、Ras、Rap−1、MEK、PKA、PI3−K、Akt、p53、ERK、成長因子(例えば、NGF)、MAPK/MEK/ERK経路またはp53経路の上流または下流にある任意の構成要素、および/または上記の任意の誘導体、改変体、模倣物、または断片のDNAまたはRNAと特異的にハイブリダイズできる。
【0203】
本明細書に用いられる用語の「抗体」または「抗体類」とは、抗原決定基に特異的に結合する任意の免疫グロブリンを称す。抗体の例としては、限定はしないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、Fab断片、F(ab’)断片、FAb発現ライブラリーにより生じた断片、坑イディオタイプ(坑−Id)抗体、上記の任意のエピトープ結合断片が挙げられる。抗体は、任意の供給源(例えば、ヒト、げっ歯類、非ヒト霊長類、ウサギ、ヤギ、ウシ、ウマ、ヒツジなど)から得られた任意の免疫グロブリン(例えば、IgG、IgM、IgA、IgE、IgDなど)であり得る。いくつかの実施形態において、抗体は、ある種に対して向けられる(例えば、坑マウス、坑ヒトなど)。
【0204】
好ましい実施形態において、ニューロン成長抑制因子は、抗体、より好ましくはモノクローナル抗体、またはより好ましくはキメラ抗体あるいはヒト化抗体であり得る。このような抗体は、神経成長または付随的軸索発芽を増強させるタンパク質のいずれか1つに特異的に結合できることが好ましい。
【0205】
例えば、本発明は、Raf、Ras、Raf、MEK、PKA、PI3−K、Akt、p53、ERK、成長因子(例えば、NGF)、MAPK/MEK/ERK経路またはp53経路の上流または下流にある任意の構成要素、および/または上記の任意の誘導体、改変体、擬態、または断片に特異的に結合できる抗体であるニューロン成長抑制因子を考慮している。好ましい実施形態において、ニューロン成長抑制因子は、MEKまたはERKまたはRafまたはb−Rafに特異的に結合できるモノクローナル抗体である。
【0206】
本発明は、疾患の処置と予防のために少なくとも1種の神経毒および/または少なくとも1種のニューロン成長抑制因子の使用を考慮している。このような疾患は、例えば、神経系の状態、神経筋の状態、泌尿器の状態、皮膚の状態、および眼の状態を挙げることができる。このような状態は、不随筋痙攣、慢性痛、および/または加齢化皮膚をさらに特徴とすることができる。
【0207】
いくつかの実施形態において、本発明は、神経毒が治療剤として使用される状態の処置と予防のために少なくとも1種の神経毒および/または少なくとも1種のニューロン成長抑制因子の使用を考慮している。例えば、今日、ボツリヌス毒素A型は、額皺の除去、眼瞼痙攣、斜視、およびデュエーン症候群への使用が承認されている。眼瞼痙攣は、良性および/またはストレス、断眠、または覚せい剤の使用に関連し得る眼瞼の制御不能な単収縮と関連する状態である。斜視は、視軸が同じ対象物に向けることのできない眼障害である。デュエーン症候群は、罹患眼が、外転の制限または欠如、内転の抑制、内転時の眼球後退、内転時の瞼裂の狭小化および内転時の拡幅、またはふくそう欠損を示す遺伝性先天性症候群である。
【0208】
したがって、本発明は、額皺の除去、眼瞼痙攣、斜視、およびデュエーン症候群などの皮膚および眼の状態の処置または予防のために少なくとも1種の神経毒および/または少なくとも1種のニューロン成長抑制因子の使用を考慮している。神経毒および/またはニューロン成長抑制因子の投与は、局部的(例えば、局所、皮膚下、筋内、または皮下)に成されることが好ましい。併用治療において、上記神経毒は、ニューロン成長抑制因子の投与の前に、同時に、または後に投与できる。好ましい実施形態において、上記神経毒は、ニューロン成長抑制因子の投与前に投与される。
【0209】
神経毒は、局所性ジストニアの処置または予防にも使用できる。局所性ジストニアの例としては、限定はしないが、頚部ジストニア、アンブシュアジストニア、口下顎骨発育ジストニア、痙攣性ジストニア、および書痙が挙げられる。痙性斜頚としても公知の頚部ジストニアは、不随意的に収縮する頚筋を特徴とする局所性ジストニアである。これは、頭および頚の異常な動きと姿勢を生じる。アンブシュアジストニアは、金管楽器および木管楽器奏者を冒すタイプのジストニアを言うために使用される用語である。アンブシュアジストニアは、唇の過度の単収縮を引き起こし、また顎および舌の強い収縮を引き起こす。したがって、顎骨口腔ジストニアを患っている患者は、彼らの口の開閉ならびに咀嚼と会話の困難を経験すると考えられる。痙攣性ジストニアは、会話妨害および声質変化を引き起こし得る声帯の不随意「痙攣」を含む。さらに、書痙は、作業特異的であり、通常手および/または腕を冒す局所性ジストニアの一形態である。
【0210】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、局所性ジストニアの処置のために少なくとも1種の神経毒および/または少なくとも1種のニューロン成長抑制因子の投与を考慮している。例えば、頚部ジストニア、アンブシュアジストニア、顎骨口腔ジストニア、痙攣性ジストニア、および書痙ジストニアなどのジストニアは、少なくとも1種の神経毒および/または少なくとも1種のニューロン成長抑制因子を標的領域に局部投与することによって処置できる。好ましくは、神経毒は、ニューロン成長抑制因子の投与前に投与される。
【0211】
本明細書の組成物および方法によって処置可能または予防可能であり得るさらなる適応症は、神経系の障害である。このような神経系の障害としては、限定はしないが、片頭痛、慢性痛(例えば、慢性腰痛)、慢性筋肉痛(例えば、線維筋痛)、脳卒中、外傷性脳傷害、局部痛(例えば、外陰部知覚異常),脳性麻痺、ミルロイ症候群、多汗症、振せん、無弛緩症、二次的および固有のジストニア、パーキンソン病、脊髄傷害、多発性硬化症、および反射性痙攣が挙げられる。
【0212】
本明細書の組成物および方法は、泌尿器の状態の処置と予防に特に有用であり得る。泌尿器の状態の例としては、限定はしないが、骨盤痛(例えば、間質性膀胱炎、子宮内膜症、プロスタトジニア(prostatodynia)、尿道不安定性症候群)、骨盤筋膜(myofiscial)エレメント(例えば、挙筋括約筋、月経疼痛、痔瘻、痔疾)、尿失禁(例えば、不安定膀胱、不安定括約筋)、前立腺障害(例えば、前立腺肥厚、良性前立腺肥厚、前立腺拡大、BPH前立腺炎、前立腺癌)、再発性炎症(括約筋痙性に副次的)、および尿閉(痙攣性括約筋、膀胱頚部肥厚に副次的)ならびに膀胱機能障害が挙げられる。
【0213】
いくつかの実施形態において、本明細書の組成物および方法は、皮膚の状態を処置し、予防し、および/または創傷治癒を増強するために使用できる。代表的な皮膚の状態は、湿疹、乾癬、皮膚炎、黒色腫、バラ色ひこう疹、酒さ性ひこう疹、および紅色ひこう疹などのひこう疹、ならびに他の皮膚細胞増殖障害が挙げられる。選択的(例えば、外科導入切開)、非選択的(例えば、自動車事故により生じた裂傷)のいずれであっても、皮膚創傷には、例えば、顔面裂傷または身体裂傷が含まれる。
【0214】
いくつかの実施形態において、本明細書の組成物および方法は、筋肉に対する傷害を処置または予防するために使用できる。筋肉傷害の例としては、限定はしないが、打撲傷(挫傷)、裂傷、虚血、挫傷、および完全裂傷が挙げられる。
【0215】
いくつかの実施形態において、本明細書の組成物および方法は、甲状腺機能亢進症、胸腺機能減退症、グレーブス病、甲状腺腫、甲状腺炎、癌、などの甲状腺障害および甲状腺機能亢進症または胸腺機能減退症を生じ得る他の全ての状態を処置するために使用できる。
【0216】
いくつかの実施形態において、本明細書の組成物および方法は、いびき騒音を抑制または軽減するために使用できる。
【0217】
当業者は、製薬上安全な形態においてボツリヌス毒素および破傷風毒素など、本発明の神経毒を得る方法を知っているか、または容易に確認できる。このような形態は、非催奇性であり、毒素抗原に対して検出可能な免疫応答を誘導しないことが好ましい。本発明の大部分の神経毒に関する製薬安全性は、疾患を生じるのに十分であることが知られている投与量と比較して、比較的低用量の毒素が「安全」であるような用量依存である。
【0218】
好ましくは、本発明の神経毒および/またはニューロン成長抑制因子は、製薬的に許容できる担体中の組成物として投与される。その最後に、シナプス前部の神経毒組成物および/またはニューロン成長抑制因子が、投与用の所望の純度の毒素と生理学的に許容できる滅菌担体とを混合することにより調製される。このような担体は、使用される投与量と濃度においては、レシピエントに対して非毒性である。通常、このような組成物の調製は、緩衝液、アスコルビン酸などの抗酸化剤、低分子量(約10未満残基)ポリペプチド、タンパク質、アミノ酸、グルコースまたはデキストリンなどの炭水化物、EDTAなどのキレート化剤、グルタチオンおよび他の安定化剤ならびに賦形剤を組み合わせることを必要とする。このような組成物はまた、凍結乾燥でき、製薬的に許容できる。すなわち、好適に調製され、所望の適用における使用が認められる。
【0219】
本発明の薬学的組成物は、種々の様式で、例えば、皮膚への局所適用(例えば、脱毛症用に)のためにクリーム剤、洗浄液、潅注液、チャッフィング用散剤(例えば、皮膚炎用に)、液剤、乾燥処方物(例えば、浴用塩または浴用粉末として)など、適用に好適であるように配合できる。他の処方物は、当業者に容易に明白となろう。好ましい実施形態において、本明細書の組成物は、局部投与用に配合されることが好ましい。上記組成物は、局所投与、皮下投与、筋肉内投与、または経皮投与用に配合されることが好ましい。
【0220】
経皮投与および局所投与では、神経毒および/またはニューロン成長抑制因子は、皮膚の角質層への、また角質層を越える透過性を増強させるために配合することが好ましい。当業者は、皮膚を通過しての薬物送達(特にペプチドの)を促進する賦形剤および添加物の特性に精通しているか、または容易に確認できる。この点に関するレビューについては、「Novel Drug Delivery Systems」、Chien編集(Marcel Dekker、1992年)に言及されており、この開示は、皮膚の角質層への、また角質層を通過しての薬物送達に関して当該分野の認識状態を説明するために、これを参照として本明細書に組み込まれている。
【0221】
軟膏として配合された場合、有効成分(例えば、神経毒および/またはニューロン成長抑制因子)は、例えば、パラフィン系または水混和性軟膏基剤と共に使用できる。あるいは、有効成分は、水中油クリーム基剤によりクリーム中で配合できる。所望ならば、クリーム基剤の水相は、例えば、プロピレングリコール、ブタン−1,3−ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロール、ポリエチレングリコールおよびそれらの混液などの少なくとも30重量%の多価アルコールを含むことができる。
【0222】
局所用処方物は、皮膚または他の患部を通しての有効成分の吸収または透過を増強する化合物を含むことが望ましい。このような皮膚透過エンハンサーの例としては、ジメチルスルホキシドおよび関連アナログが挙げられる。局所用処方物は、例えば、抗酸化剤(例えば、ビタミンE);緩衝剤;潤滑剤(例えば、合成または天然蜜蝋);日焼け止め(例えば、パラ−アミノ安息香酸);および他の化粧品剤(例えば、着色剤、芳香剤、油類、芳香油、湿潤剤または乾燥剤)をさらに含むことができる。増粘剤(例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールまたはカルボキシメチルセルロース)もまた、組成物に添加することができる。
【0223】
本発明の薬学的組成物中に利用される担体は、粉末処方物に使用のために固体ベースの乾燥材料であっても、あるいは液体処方物またはゲル処方物に使用のための液体ベースまたはゲルベースの材料であってもよい。具体的な処方物は部分的に、投与形態または投与様式に依る。
【0224】
乾燥処方物(例えば、浴用塩類)用の典型的な担体としては、限定はしないが、トレハロース、マルト−デキストリン、コメ粉末、微結晶セルロース(MCC)、ステアリン酸マグネシウム、イノシトール、フルクト−オリゴ糖FOS、グルコ−オリゴ糖(GOS)、デキストロース、ショ糖、タルクなどの担体が挙げられる。上記組成物が乾燥しており、組成物が固まり(すなわち、組成物のスポア、塩類、粉末および油類の粘着)となる傾向を生じる濃縮油類を含む場合、組成物を分散させ、固化を防ぐ乾燥充填剤を含むことが好ましい。代表的な固化防止剤としては、MCC、タルク、珪藻土、非晶質シリカなどが挙げられ、典型的に凡そ1重量%から95重量%までの濃度で添加される。
【0225】
適切な液体またはゲルベースの担体は、当該分野に周知である(例えば、水、生理食塩水、尿素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールおよびプロピレングリコールなど)。水ベース担体は、凡そ中性pHであることが好ましい。
【0226】
さらなる適切な担体としては、例えば、白色ワセリン、ミリスチン酸イソプロピル、ラノリンまたはラノリンアルコール類、鉱油、香油または精油、ナスタチウム抽出油、ソルビタンモノオレエート、プロピレングリコール、セチルステアリルアルコール(一緒にまたは種々の組合せで)、ヒドロキシプロピルセルロース(分子量=100,000から1,000,000)、界面活性剤(例えば、ステアリン酸ポリオキシルまたはラウリル硫酸ナトリウム)などの水性担体および油性担体が挙げられ、水と混合してローション、ゲル、クリームまたは半固体組成物を形成する。他の適切な担体は、油中水または水中油乳濁液および乳化剤と皮膚軟化剤と、ショ糖ステアレート、ショ糖ココエート、ショ糖ジステアレート、鉱油、プロピレングリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ポリオキシプロピレン−15−ステアリルエーテルおよび水などの溶媒との混合物を包含する。例えば、水、グリセロールステアレート、グリセリン、鉱油、合成鯨蝋、セチルアルコール、ブチルパラベン、プロピルパラベンおよびメチルパラベンを含有する乳濁液は、市販されている。保存剤もまた、メチルパラベン、プロピルパラベン、ベンジルアルコールおよびエチレンジアミンテトラアセテート塩類などの担体に含むことができる。周知の香料および/または着色剤もまた、担体に含めることができる。上記組成物はまた、グリセロールまたはポリエチレングリコール(分子量400から20,000)などの可塑剤を含むことができる。担体の組成物は、有効成分(ボツリヌス毒素A型)の薬理学的活性を有意に妨げない限り変えることがきる。
【0227】
神経毒(特にボツリヌス毒素A型)および/またはニューロン成長抑制因子を投与する場合、少用量を適用すべきである。一般に、投与されるべき神経毒および/またはニューロン成長抑制因子の用量は、処置を受ける宿主の年齢、宿主の性別および体重、処置を受ける状態、このような状態の重症度、状態位置、および神経毒の効力に依って変わる。
【0228】
毒素効力は、参照哺乳動物、通常マウスのLD50値の倍数として表される。マウスが、参照動物である場合、毒素の1「単位」は、毒素による接種前に疾患のないマウス群の50%を殺す毒素量である。例えば、市販のボツリヌス毒素A型は、典型的に1ナノグラムが約40マウス単位を含有するような効力を有する。また、各神経毒、神経毒タイプ、および/またはニューロン成長抑制因子は、それ自体のLD50を有し得ること、また、そのLD50は、動物種に依って変わり得ることにも注意すべきである。Allergan社により供給されるボツリヌス毒素A型製品のヒトにおける効力は、約LD50=2,730単位であると考えられている。さらに、ボツリヌス毒素A型は、ラットで生じた麻痺率により測定された効力がボツリヌス毒素B型の500倍であることが示されている。
【0229】
実質的にLD50=2,730単位に等しい効力と仮定すると、神経毒は、約2000単位までの用量で投与できるが、個々の投与量は、より少なくなるであろう。例えば、処置サイクルにおける単回適用は、0.25〜50単位の神経毒、より好ましくは0.5〜25単位の神経毒、より好ましくは1〜10単位の神経毒、より好ましくは1.25〜5単位の神経毒、またはより好ましくは1.25〜2.5単位の神経毒を含むことができる。本発明はまた、より少用量の神経毒(特に併用治療において)を投与することを考慮している。このような用量は、1適用当り5単位未満の神経毒、1適用当り2単位未満の神経毒、1適用当り1単位未満の神経毒、または1適用当り0.5単位未満の神経毒であり得る。
【0230】
神経毒の上記投与量は、1回か、または間隔を反復させて、または必要に基づいて投与できる。例えば、上記の投与量は、1日1回、より好ましくは凡そ週1回、より好ましくは凡そ月1回、より好ましくは凡そ3ヵ月毎に1回、より好ましくは凡そ6ヵ月毎に1回、またはより好ましくは凡そ9ヵ月毎に1回投与できる。より長い期間の間隔もまた、本発明により考慮される。上記投与量はまた、投与される追加の薬剤(例えば、ニューロン成長抑制因子)、処置を受ける状態および状態の重症度、処置を受ける哺乳動物の性別、年齢および種に依って上方または下方に調整できる。最少治療有効用量が投与されることが好ましい。最初の処置において、低用量を標的部位に投与して、神経毒に対する患者の感受性および寛容性を判定できる。同一かまたは異なる用量のさらなる注射は、必要な場合に投与される。
【0231】
したがって、神経毒の有効量は、少なくとも1日間、より好ましくは少なくとも1週間、より好ましくは少なくとも1ヵ月間、より好ましくは少なくとも3ヵ月間、より好ましくは少なくとも6ヵ月間、より好ましくは少なくとも9ヵ月間、より好ましくは少なくとも1年間、神経伝達を遅延、減少、妨害、または阻害するのに十分な投与量である。
【0232】
本明細書のいずれの実施形態においても、ニューロン成長抑制因子を、神経毒に加えて投与できる。ニューロン成長抑制因子と神経毒との併用治療は、少なくとも1種の神経毒の有効量および少なくとも1種のニューロン成長抑制因子の有効量の両方を投与することを含む。併用治療を施す場合、神経毒および/またはニューロン成長抑制因子のいずれかまたは両方の有効量は、両方薬剤の相乗効果により単独薬物療法における有効量未満であり得る。神経毒とニューロン成長抑制因子との併用治療は、ニューロン成長抑制因子の投与前の、投与と同時の、または投与後の神経毒の投与を含み得る。例えば、ニューロン成長抑制因子は、神経毒治療と同時に、直後に、約5分後に、約1時間後に、約2時間後に、約6時間後に、約1日後に、約2日後に、約1週間後に、約2週間後に、約1ヵ月後に、約3ヵ月後に、または6ヵ月後に投与できる。好ましい実施形態において、ニューロン成長抑制因子は、神経毒の投与と同時に、または投与直後に投与される。
【0233】
いくつかの実施形態において、ニューロン成長抑制因子の有効量は、少なくとも1日間、より好ましくは少なくとも1週間、より好ましくは少なくとも1ヵ月間、より好ましくは少なくとも3ヵ月間、より好ましくは少なくとも6ヵ月間、より好ましくは少なくとも9ヵ月間、より好ましくは少なくとも1年間、神経および/または軸索の成長(例えば、発芽)を遅延、減少、妨害、および/または阻害するのに十分な投与量である。
【0234】
いくつかの実施形態において、ニューロン成長抑制因子の有効量は、少なくとも1日間、より好ましくは少なくとも1週間、より好ましくは少なくとも1ヵ月間、より好ましくは少なくとも3ヵ月間、より好ましくは少なくとも6ヵ月間、より好ましくは少なくとも9ヵ月間、より好ましくは少なくとも1年間、神経伝達を遅延、減少、妨害、および/または阻害するのに十分な投与量である。
【0235】
神経毒および/またはニューロン成長抑制因子のいずれかまたは両方の投薬は、単回投与であっても累積投与(連続投与)であってもよく、当業者により容易に判定できる。連続投与(すなわち、1日1回投与、より好ましくは週1回投与、より好ましくは月1回投与、より好ましくは6ヵ月毎に1回投与、より好ましくは8ヵ月毎に1回投与、またはより好ましくは1年毎に1回投与)では、投与計画は、例えば、患者の大きさ、処置を受ける状態、状態の重症度、選択される神経毒、および他の変数に基づいて当業者により容易に判定できる。
【0236】
処置および/または予防の1つの提案されるコースは、神経毒(例えば、ボツリヌス毒素A型)およびニューロン成長抑制因子(例えば、MEKインヒビター)の使用を含む。神経毒は、3日毎に約40単位から神経毒のLD50までを投与される。より好ましくは、神経毒は、3日毎に約20単位から神経毒のLD50までを投与される。より好ましくは、神経毒は、3日毎に約10単位から神経毒のLD50までを投与される。
【0237】
いくつかの実施形態において、ニューロン成長抑制因子を、神経毒に加えて(または代わりに)投与できる。ニューロン成長抑制因子は、1日当り約0.01ミリグラム/kgから2000ミリグラム/kgの用量比、より好ましくは1日当り約0.1ミリグラム/kgから1000ミリグラム/kgの用量比、より好ましくは1日当り約1ミリグラム/kgから750ミリグラム/kgの用量比、より好ましくは1日当り約5ミリグラム/kgから500ミリグラム/kgの用量比、より好ましくは1日当り約10ミリグラム/kgから250ミリグラム/kgの用量比、より好ましくは1日当り約25ミリグラム/kgから100ミリグラム/kgの用量比、またはより好ましくは1日当り約30ミリグラム/kgから75ミリグラム/kgの用量比で投与され得る。この用量比は、各適用間の時間の長さ(例えば、1日当り約1ミリグラム/kgは、1週当り約7ミリグラム/kgに等しい)およびニューロン成長抑制因子と関連して投与される神経毒のタイプに依って変えることができる。
【0238】
ニューロン成長抑制因子は、神経毒の投与の前に、同時に、または後に投与できる。好ましい実施形態において、ニューロン成長抑制因子は、神経毒の投与後に投与される。例えば、ニューロン成長抑制因子は、神経毒投与1/2時間後、より好ましくは神経毒投与1時間後、より好ましくは神経毒投与6時間後、より好ましくは神経毒投与12時間後、より好ましくは神経毒投与1日後、またはより好ましくは神経毒投与1週後に投与できる。
【0239】
本発明は、種々の状態を処置および/または予防するための神経毒およびニューロン成長抑制因子の投与を考慮している。状態に対する素因は、疾患の予めの、または同時診断あるいは上記疾患の家族暦などの従来の臨床基準に従って、本明細書の組成物の投与前に判定できる。このように、状態に対する素因(特に、神経毒により処置可能と知られているもの)により診断された人に、このような状態を防止するために神経毒およびニューロン成長抑制因子を投与できる。
【0240】
多くの適応症(特に局部効果、例えば局所性ジストニア、乾癬、皺などを有するもの)で、標的部位における皮下注射、真皮下注射または筋肉内注射は、最も有効な投与経路である。注射は、標的領域下または領域内に針を挿入することにより、標的領域下または領域内(例えば、筋緊張異常または皺となった筋肉)の皮下領域または真皮下領域に提供されることが好ましい。しかしながら、標的領域が大き過ぎるか、あるいはこのアプローチに感受性でない場合、本明細書の組成物を、1つ以上の標的部位に経皮経路または局所経路により投与できる。しかしながら、これら後者の経路は、皮下注射、真皮下注射または筋肉内注射よりも有効性が低く、したがって亜急性症状に使用されることが最良であると予想される。
【0241】
上記注射は、必要に応じて繰り返される。一般的なガイドラインとして、本発明の方法による成人皮膚の標的領域内または上記領域近辺への神経毒(例えば、ボツリヌス毒素A型)の投与後、処置された領域は、少なくとも2ヵ月間麻痺した(例えば、神経伝達は不活化されている)ままであったことが観察されている。ボツリヌス毒素A型は特に、本明細書の方法によって状態の徴候出現直後に投与された場合に最も有効であると予想される。適用された療法のコースに依って(すなわち、投与量、処置回数および処置に対する個々の患者の感受性に関して)、本発明の方法は、上記状態の緩和(例えば、皺の減少、または他の痛みの軽減)、上記状態の寛解誘導、状態と関連する症状の抑制(例えば、病変部および/または痛みの縮小化)に有効であることが期待できる。
【0242】
本発明の神経毒およびニューロン成長抑制因子は、局部投与することが好ましい。局部投与は、例えば、局所投与、皮下投与、経皮投与、真皮下投与または筋肉内投与によって成すことができる。
【0243】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、神経毒と、神経伝達、神経筋伝達、神経成長、および/または軸索成長(例えば、発芽)を妨害し得る1種以上の他の薬剤との併用治療を哺乳動物に施すことを含む。併用治療は、個々の化合物の必要な用量が、より低くなるような2種以上の化合物間で相乗作用をもたらし得る。併用治療は、2種以上の化合物の同時または連続投与を含み得る。したがって、本発明によれば、神経毒を、1種以上のニューロン成長抑制因子と同時に投与してもよいし、または神経毒を、ニューロン成長抑制因子の投与前に投与してもよいし、また、神経毒を、ニューロン成長抑制因子の投与後に投与してもよい。好ましい実施形態において、上記神経毒は、上記ニューロン成長抑制因子の投与前に投与される。
【0244】
神経毒および/またはニューロン成長抑制因子のいずれかまたは両方の投与は、全身であっても局部であってもよい。好ましい実施形態において、神経毒および/またはニューロン成長抑制因子のいずれかまたは両方が、局部投与される。局部的投与の例としては、限定はしないが、局所投与、皮下投与、真皮下投与、筋肉内投与、脳内投与、膣投与、眼投与、肛門投与、肺投与、および経皮投与が挙げられる。好ましい実施形態において、本明細書の化合物の投与は、局所投与、皮下投与、真皮下投与、または経皮投与により成される。本明細書の化合物の投与は、筋肉内(intramadcular)または経皮微量注入により成されることがより好ましい。しかしながら、無針注入も考慮されている。
【0245】
本発明の好ましい実施形態が本明細書に示され、記載されているが、このような実施形態は、単に例として提供されていることは当業者にとって明白であろう。ここで多数の変更、変化、および置換が、本発明から逸脱することなく当業者に生じるであろう。本明細書に記載された本発明の実施形態に対する種々の代替法が、本発明の実施において使用できることを理解するべきである。添付の特許請求の範囲は、本発明の範囲を規定し、それによってこれらの特許請求の範囲の範囲内の方法および構造ならびにそれらの等価物が包含されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0246】
【図1】図1は、p38インヒビターのBIRB−796を示す。
【図2】図2は、p38インヒビターのCNI−1493を示す。
【図3】図3は、p38インヒビターのRDP−58を示す。
【図4】図4は、p38インヒビターのVX−745を示す。
【図5】図5は、免疫系のシグナル伝達経路を示す。
【図6】図6は、MAPKによる典型的なシグナル伝達経路を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の脱毛を処置または予防するための方法であって、有効量のp38インヒビターを該患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項2】
前記p38インヒビターが、ピリジニルイミダゾール類、置換ピラゾール類、置換ピリジル類、キナゾリン誘導体、アリール尿素類、ヘテロアリールアナログ、置換イミダゾール化合物、および置換トリアゾール化合物からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記p38インヒビターが、RWJ−67657、RDP−58、RDP−58、Scios−323、Scios−469、MKK3/MKK6インヒビター(Signal Research Division);p38/MEK調節剤(Signal Research Division);SB−210313アナログ、SB−220025、SB−238039、HEP−689、SB−203580、SB−239063、SB−239065、SB−242235、VX−702、VX−745、AMG−548、Astex p38キナーゼインヒビター、RPR−200765アナログ、Bayer p38キナーゼインヒビター、BIRB−796、Celltech p38 MAPキナーゼインヒビター、681323、SB−281832、LEO PharmaceuticalsのMAPキナーゼインヒビター、Merck&Co.p38 MAPキナーゼインヒビター、SC−040、SC−XX906、NovartisアデノシンA3アンタゴニスト類、p38 MAPキナーゼインヒビター(Novartis Pharma AG)、CP−64131、CNI−1493、RPR−200765A、Roche p38 MAPキナーゼインヒビター、およびRo−320−1195からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記p38インヒビターが、RDP−58、AMG−548、BIRB−796、CNI−1493、VX−702およびVX−745からなる群より選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記p38インヒビターが、局部投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記p38インヒビターが、局所投与、皮下投与、または経皮投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
患者の毛の状態を処置または予防するための方法であって、有効量のp38インヒビターを該患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項8】
前記毛の状態が、円形脱毛症、瘢痕性脱毛症、完全脱毛症、全身性脱毛症、毛角化症、三角形脱毛症、発育相剥離、アンドロゲン性脱毛症、男性発生脱毛症、エリアセルシ(area celsi)、細菌性濾胞炎、黒色砂毛症、黒点状白癬、セミカル(cemical)脱毛症、瘢痕性脱毛症、慢性休止期脱毛、皮膚糸状菌感染、食事欠乏誘導脱毛症、び慢性脱毛症、解離性小胞炎、薬物誘導脱毛症、好酸球膿疱性濾胞炎、びらん性膿疱性皮膚病、家族性限局脱毛症、フェルドマン症候群、女性脱毛症、女性型禿頭症、濾胞性変性症候群、鬚髯毛嚢炎、脱毛性毛嚢炎、ケロイド性毛嚢炎、グラハム−リトル症候群、単純ヘルペス毛嚢炎、帯状ヘルペス毛嚢炎、ホットコーム脱毛症、退行性脱毛症、虚血性脱毛症、毛包性角化症、棘毛脱毛付蛇行状脱毛症、苔癬状プラノピラリス(planopilaris)、脂肪水腫脱毛症、ルース発育相症候群、ルース毛症候群、男性型脱毛症、機械的誘導脱毛症、混合炎症性脱毛症、後頭部脱毛症、後頭部円形脱毛症、オーフジ症候群、丘疹状無毛症、パターン禿頭症、ホフマンの仮性頭部膿瘍性穿掘性毛嚢炎、周皮空隙円形脱毛症、産褥性脱毛症、仮性鬚髯毛嚢炎、ブロックの萎縮性脱毛症、白癬、サルコイドーシス、瘢痕脱毛症、休止期脱毛、熱脱毛症、ダニ咬せき誘導脱毛症、頭部白癬、牽引脱毛症、牽引毛嚢炎、外傷性脱毛症、三角形脱毛症、腋窩菌毛症、抜毛癖、房状毛毛嚢炎、およびワクチン接種誘導脱毛症からなる群より選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記p38インヒビターが、ピリジニルイミダゾール類、置換ピラゾール類、置換ピリジル類、キナゾリン誘導体、アリール尿素類、ヘテロアリールアナログ、置換イミダゾール化合物、および置換トリアゾール化合物からなる群より選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記p38インヒビターが、RWJ−67657、RDP−58、RDP−58、Scios−323、Scios−469、MKK3/MKK6インヒビター(Signal Research Division);p38/MEK調節剤(Signal Research Division);SB−210313アナログ、SB−220025、SB−238039、HEP−689、SB−203580、SB−239063、SB−239065、SB−242235、VX−702、VX−745、AMG−548、Astex p38キナーゼインヒビター、RPR−200765アナログ、Bayer p38キナーゼインヒビター、BIRB−796、Celltech p38 MAPキナーゼインヒビター、681323、SB−281832、LEO PharmaceuticalsのMAPキナーゼインヒビター、Merck&Co.p38 MAPキナーゼインヒビター、SC−040、SC−XX906、NovartisアデノシンA3アンタゴニスト類、p38 MAPキナーゼインヒビター(Novartis Pharma AG)、CP−64131、CNI−1493、RPR−200765A、Roche p38 MAPキナーゼインヒビター、およびRo−320−1195からなる群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記p38インヒビターが、RDP−58、AMG−548、BIRB−796、CNI−1493、VX−702およびVX−745からなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記p38インヒビターが、局部投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記p38インヒビターが、局所投与、皮下投与、または経皮投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記状態が、円形脱毛症または女性脱毛症である、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
患者の白斑を処置または予防するための方法であって、有効量のp38インヒビターを該患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項16】
前記p38インヒビターが、ピリジニルイミダゾール類、置換ピラゾール類、置換ピリジル類、キナゾリン誘導体、アリール尿素類、ヘテロアリールアナログ、置換イミダゾール化合物、および置換トリアゾール化合物からなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記p38インヒビターが、RDP−58、AMG−548、BIRB−796、CNI−1493、VX−702およびVX−745からなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記p38インヒビターが、局部投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記p38インヒビターが、局所投与、皮下投与、または経皮投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
コルチコステロイド、ソラレン、または免疫調節剤を、前記患者に投与する工程をさらに包含する、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
患者の座瘡瘢痕を処置または予防するための方法であって、p38インヒビターを該患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項22】
前記p38インヒビターが、ピリジニルイミダゾール類、置換ピラゾール類、置換ピリジル類、キナゾリン誘導体、アリール尿素類、ヘテロアリールアナログ、置換イミダゾール化合物、および置換トリアゾール化合物からなる群より選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記p38インヒビターが、RWJ−67657、RDP−58、RDP−58、Scios−323、Scios−469、MKK3/MKK6インヒビター(Signal Research Division);p38/MEK調節剤(Signal Research Division);SB−210313アナログ、SB−220025、SB−238039、HEP−689、SB−203580、SB−239063、SB−239065、SB−242235、VX−702、VX−745、AMG−548、Astex p38キナーゼインヒビター、RPR−200765アナログ、Bayer p38キナーゼインヒビター、BIRB−796、Celltech p38 MAPキナーゼインヒビター、681323、SB−281832、LEO PharmaceuticalsのMAPキナーゼインヒビター、Merck&Co.p38 MAPキナーゼインヒビター、SC−040、SC−XX906、NovartisアデノシンA3アンタゴニスト類、p38 MAPキナーゼインヒビター(Novartis Pharma AG)、CP−64131、CNI−1493、RPR−200765A、Roche p38 MAPキナーゼインヒビター、およびRo−320−1195からなる群より選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記p38インヒビターが、RDP−58、AMG−548、BIRB−796、CNI−1493、VX−702およびVX−745からなる群より選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記p38インヒビターが、局部投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記p38インヒビターが、局所投与、皮下投与、または経皮投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
削皮法、レーザーリサーフェイシング法、ケミカルピール法、穿孔技法、サブシジョン法、およびオーグメンテーション法からなる群より選択される治療を前記患者に施す工程をさらに包含する、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記p38インヒビターが、前記治療前に局部投与される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
患者の座瘡を処置または予防するための方法であって、有効量のp38インヒビターを該患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項30】
前記p38インヒビターが、ピリジニルイミダゾール類、置換ピラゾール類、置換ピリジル類、キナゾリン誘導体、アリール尿素類、ヘテロアリールアナログ、置換イミダゾール化合物、および置換トリアゾール化合物からなる群より選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記p38インヒビターが、RWJ−67657、RDP−58、RDP−58、Scios−323、Scios−469、MKK3/MKK6インヒビター(Signal Research Division);p38/MEK調節剤(Signal Research Division);SB−210313アナログ、SB−220025、SB−238039、HEP−689、SB−203580、SB−239063、SB−239065、SB−242235、VX−702、VX−745、AMG−548、Astex p38キナーゼインヒビター、RPR−200765アナログ、Bayer p38キナーゼインヒビター、BIRB−796、Celltech p38 MAPキナーゼインヒビター、681323、SB−281832、LEO PharmaceuticalsのMAPキナーゼインヒビター、Merck&Co.p38 MAPキナーゼインヒビター、SC−040、SC−XX906、NovartisアデノシンA3アンタゴニスト類、p38 MAPキナーゼインヒビター(Novartis Pharma AG)、CP−64131、CNI−1493、RPR−200765A、Roche p38 MAPキナーゼインヒビター、およびRo−320−1195からなる群より選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記p38インヒビターが、RDP−58、AMG−548、BIRB−796、CNI−1493、VX−702およびVX−745からなる群より選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記p38インヒビターが、局部投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記p38インヒビターが、局所投与、皮下投与、または経皮投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
レチノイド、抗生物質、経口避妊薬、アキュテイン、およびレーザー処置からなる群より選択される処置を前記患者に施す工程をさらに包含する、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
前記p38インヒビターが、前記治療前に投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項37】
ミノキシジル、レーザー光療法、リバイボゲン、Toppe(登録商標)、およびShen Min(登録商標)からなる群より選択される薬剤を前記患者に投与する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
ミノキシジル、レーザー光療法、リバイボゲン、Toppe(登録商標)、およびShen Min(登録商標)からなる群より選択される薬剤を前記患者に投与する工程をさらに包含する、請求項7に記載の方法。
【請求項39】
先天性免疫系の活性化に関連する皮膚の状態または毛の状態を処置するための方法であって、患部に有効量のp38インヒビターを局所投与する工程を包含する、方法。
【請求項40】
前記p38インヒビターが、RWJ−67657、RDP−58、RDP−58、Scios−323、Scios−469、MKK3/MKK6インヒビター(Signal Research Division);p38/MEK調節剤(Signal Research Division);SB−210313アナログ、SB−220025、SB−238039、HEP−689、SB−203580、SB−239063、SB−239065、SB−242235、VX−702、VX−745、AMG−548、Astex p38キナーゼインヒビター、RPR−200765アナログ、Bayer p38キナーゼインヒビター、BIRB−796、Celltech p38 MAPキナーゼインヒビター、681323、SB−281832、LEO PharmaceuticalsのMAPキナーゼインヒビター、Merck&Co.p38 MAPキナーゼインヒビター、SC−040、SC−XX906、NovartisアデノシンA3アンタゴニスト類、p38 MAPキナーゼインヒビター(Novartis Pharma AG)、CP−64131、CNI−1493、RPR−200765A、Roche p38 MAPキナーゼインヒビター、およびRo−320−1195からなる群より選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
皮膚領域の色合いを変化させるための方法であって、有効量のインターロイキンを該領域に投与する工程を包含する、方法。
【請求項42】
前記皮膚領域が、入れ墨を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記入れ墨が、装飾的入れ墨、外傷性入れ墨、火薬による入れ墨からなる群より選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記皮膚領域が、装飾的入れ墨を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記皮膚領域が、外傷性入れ墨を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
前記皮膚領域が、火薬による入れ墨を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項47】
前記変化が、前記色合いの有効量を減少させる工程を包含する、請求項41に記載の方法。
【請求項48】
前記インターロイキンが、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−14、およびIL−15からなる群より選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項49】
前記インターロイキンが、1日に1〜10回投与される、請求項41に記載の方法。
【請求項50】
前記インターロイキンが、局所投与または皮下投与される、請求項41に記載の方法。
【請求項51】
前記インターロイキンが、経皮投与される、請求項41に記載の方法。
【請求項52】
色合い変更処置をさらに包含する、請求項41に記載の方法。
【請求項53】
前記色合い変更処置が、切除術、削皮法、レーザー療法、凍結外科手術、移植、カモフラージュ法、乱切法、およびサラブレーションからなる群より選択される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記色合い変更処置が、レーザー療法である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記レーザー療法が、QスイッチNd:YAGレーザー、Qスイッチアレキサンドライトレーザー、またはQスイッチルビーレーザーにより実施される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記インターロイキンが、前記色合い変更処置前に投与される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記インターロイキンが、前記色合い変更処置前または処置後に投与される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記インターロイキンが、前記レーザー療法前に投与される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記インターロイキンが、IL−1である、請求項48に記載の方法。
【請求項60】
皮膚領域の色合いを変化させるための方法であって、有効量の腫瘍壊死因子を該領域に投与する工程を包含する、方法。
【請求項61】
前記皮膚領域が、入れ墨を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記入れ墨が、装飾的入れ墨、外傷性入れ墨、火薬による入れ墨からなる群より選択される、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記皮膚領域が、装飾的入れ墨を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項64】
前記皮膚領域が、外傷性入れ墨を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項65】
前記皮膚領域が、火薬による入れ墨を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項66】
前記変化が、前記色合いの有効量を減少させる工程を包含する、請求項60に記載の方法。
【請求項67】
前記腫瘍壊死因子が、TNF−αまたはTNF−βである、請求項60に記載の方法。
【請求項68】
前記腫瘍壊死因子が、1日に1〜10回投与される、請求項60に記載の方法。
【請求項69】
前記腫瘍壊死因子が、局所投与または皮下投与される、請求項60に記載の方法。
【請求項70】
前記腫瘍壊死因子が、経皮投与される、請求項60に記載の方法。
【請求項71】
色合い変更処置をさらに包含する、請求項60に記載の方法。
【請求項72】
前記色合い変更処置が、切除術、削皮法、レーザー療法、凍結外科手術、移植、カモフラージュ法、乱切法、およびサラブレーションからなる群より選択される、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記色合い変更処置が、レーザー療法である、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記レーザー療法が、QスイッチNd:YAGレーザー、Qスイッチアレキサンドライトレーザー、またはQスイッチルビーレーザーにより実施される、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記腫瘍壊死因子が、前記色合い変更処置前に投与される、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記腫瘍壊死因子が、前記色合い変更処置前または処置後に投与される、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記腫瘍壊死因子が、前記レーザー療法前に投与される、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記腫瘍壊死因子が、TNF−αである、請求項67に記載の方法。
【請求項79】
皮膚領域の色合いを変化させるための方法であって、有効量のインターフェロンを該領域に投与する工程を包含する、方法。
【請求項80】
前記皮膚領域が、入れ墨を含む、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記入れ墨が、装飾的入れ墨、外傷性入れ墨、火薬による入れ墨からなる群より選択される、請求項79に記載の方法。
【請求項82】
前記皮膚領域が、装飾的入れ墨を含む、請求項80に記載の方法。
【請求項83】
前記皮膚領域が、外傷性入れ墨を含む、請求項80に記載の方法。
【請求項84】
前記皮膚領域が、火薬による入れ墨を含む、請求項80に記載の方法。
【請求項85】
前記変化が、前記色合いの有効量を減少させる工程を包含する、請求項89に記載の方法。
【請求項86】
前記インターフェロンが、インターフェロン−α、インターフェロン−β、およびインターフェロン−γからなる群より選択される、請求項89に記載の方法。
【請求項87】
前記インターフェロンが、1日に1〜10回投与される、請求項89に記載の方法。
【請求項88】
前記インターフェロンが、局所投与または皮下投与される、請求項89に記載の方法。
【請求項89】
前記インターフェロンが、経皮投与される、請求項89に記載の方法。
【請求項90】
色合い変更処置をさらに包含する、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記色合い変更処置が、切除術、削皮法、レーザー療法、凍結外科手術、移植、カモフラージュ法、乱切法、およびサラブレーションからなる群より選択される、請求項89に記載の方法。
【請求項92】
前記色合い変更処置が、レーザー療法である、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記レーザー療法が、QスイッチNd:YAGレーザー、Qスイッチアレキサンドライトレーザー、またはQスイッチルビーレーザーにより実施される、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記インターフェロンが、前記色合い変更処置前に投与される、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記インターフェロンが、前記色合い変更処置前または処置後に投与される、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記インターフェロンが、前記レーザー療法前に投与される、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記インターフェロンが、インターフェロン−αである、請求項79に記載の方法。
【請求項98】
皮膚領域の色合いを変化させるための方法であって、マクロファージコロニー刺激因子を排除するサイトカインの有効量を該領域に投与する工程を包含する、方法。
【請求項99】
前記皮膚領域が、入れ墨を含む、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
前記入れ墨が、装飾的入れ墨、外傷性入れ墨、火薬による入れ墨からなる群より選択される、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
前記変化が、前記色合いの有効量を減少させる工程を包含する、請求項99に記載の方法。
【請求項102】
前記サイトカインが、インターフェロン−α、IL−1、およびTNF−αからなる群より選択される、請求項99に記載の方法。
【請求項103】
前記サイトカインが、1日に1〜10回投与される、請求項99に記載の方法。
【請求項104】
前記サイトカインが、局所投与または皮下投与される、請求項99に記載の方法。
【請求項105】
前記サイトカインが、経皮投与される、請求項99に記載の方法。
【請求項106】
色合い変更処置をさらに包含する、請求項99に記載の方法。
【請求項107】
前記色合い変更処置が、切除術、削皮法、レーザー療法、凍結外科手術、移植、カモフラージュ法、乱切法、およびサラブレーションからなる群より選択される、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
前記色合い変更処置が、レーザー療法である、請求項107に記載の方法。
【請求項109】
前記レーザー療法が、QスイッチNd:YAGレーザー、Qスイッチアレキサンドライトレーザー、またはQスイッチルビーレーザーにより実施される、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
前記サイトカインが、前記色合い変更処置前に投与される、請求項106に記載の方法。
【請求項111】
前記サイトカインが、前記色合い変更処置前または処置後に投与される、請求項106に記載の方法。
【請求項112】
前記サイトカインが、前記レーザー療法前に投与される、請求項108に記載の方法。
【請求項113】
哺乳動物の状態を処置するための方法であって、神経毒およびニューロン成長抑制因子を該患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項114】
前記投与工程が、神経伝達物質の神経伝達阻害をもたらす、請求項113に記載の方法。
【請求項115】
前記阻害が、一時的である、請求項114に記載の方法。
【請求項116】
前記阻害が、少なくとも6ヵ月間続く、請求項114に記載の方法。
【請求項117】
前記神経伝達が、神経伝達物質のアセチルコリンのものである、請求項114に記載の方法。
【請求項118】
前記神経毒が、ボツリヌス毒素、破傷風毒素、クラーレ、ブンガロトキシン、サキシトキシン、およびテトロドトキシンからなる群より選択される、請求項113に記載の方法。
【請求項119】
前記神経毒が、ボツリヌス毒素である、請求項118に記載の方法。
【請求項120】
前記ボツリヌス毒素が、ボツリヌス毒素のA型、B型、C型、D型、E型、F型、およびG型からなる群より選択される、請求項119に記載の方法。
【請求項121】
前記ボツリヌス毒素が、ボツリヌス毒素のA型である、請求項120に記載の方法。
【請求項122】
前記ニューロン成長抑制因子が、Trkレセプターインヒビター、Rasインヒビター、Rafインヒビター、Rap−1インヒビター、MEKインヒビター、ERKインヒビター、PKAインヒビター、PKCインヒビター、p53インヒビター、および成長因子インヒビターからなる群より選択される、請求項113に記載の方法。
【請求項123】
前記ニューロン成長抑制因子が、MEKインヒビターである、請求項113に記載の方法。
【請求項124】
前記MEKインヒビターが、PD98059、U0126、PD 184352、2−クロロ−3−(N−スクシンイミジル)−1,4−ナフトキノン、PD 184352 ARRY−142886、三環式フラボン、および2−(2−アミノ−3−メトキシフェニル)−4−オキソ−4H−[1]ベンゾピランからなる群より選択される、請求項123に記載の方法。
【請求項125】
前記ニューロン成長抑制因子が、b−Rafキナーゼインヒビターである、請求項113に記載の方法。
【請求項126】
前記ニューロン成長抑制因子が、b−Rafキナーゼインヒビターであり、そしてRheb、BAY−43−9006、またはRafキナーゼインヒビタータンパク質である、請求項125に記載の方法。
【請求項127】
前記神経毒が、前記ニューロン成長抑制因子の投与前に投与される、請求項113に記載の方法。
【請求項128】
前記神経毒または前記ニューロン成長抑制因子が、局部投与される、請求項113に記載の方法。
【請求項129】
前記状態が、局所性ジストニアからなる群より選択される、請求項113に記載の方法。
【請求項130】
前記局在性ジストニアが、頚部ジストニア、アンブシュアジストニア、顎骨口腔ジストニア、痙攣性ジストニア、および書痙からなる群より選択される、請求項129に記載の方法。
【請求項131】
前記状態が、甲状腺の状態である、請求項113に記載の方法。
【請求項132】
前記甲状腺の状態が、甲状腺機能亢進症、胸腺機能減退症、グレーブス病、甲状腺腫、甲状腺炎、癌、および甲状腺機能亢進症または胸腺機能減退症を生じ得る他の全ての状態からなる群より選択される、請求項131に記載の方法。
【請求項133】
前記状態が、神経性障害である、請求項113に記載の方法。
【請求項134】
前記神経性障害が、片頭痛、慢性痛(例えば、慢性腰痛)、慢性筋肉痛(例えば、線維筋痛)、脳卒中、外傷性脳傷害、局部痛(例えば、外陰部知覚異常)、脳性麻痺、ミルロイ症候群、多汗症、振せん、無弛緩症、二次的および固有のジストニア、パーキンソン病、脊髄傷害、多発性硬化症、および反射性痙攣からなる群より選択される、請求項133に記載の方法。
【請求項135】
前記状態が、筋肉の損傷である、請求項113に記載の方法。
【請求項136】
前記筋肉の損傷が、打撲傷(挫傷)、裂傷、虚血、挫傷、および完全裂傷からなる群より選択される、請求項135に記載の方法。
【請求項137】
前記状態が、泌尿器の状態である、請求項113に記載の方法。
【請求項138】
前記泌尿器の状態が、骨盤痛、骨盤筋膜エレメント(myofiscial elements)、尿失禁、前立腺障害、再発性感染、および尿閉ならびに膀胱機能不全からなる群より選択される、請求項137に記載の方法。
【請求項139】
前記状態が、眼の状態である、請求項113に記載の方法。
【請求項140】
前記眼の状態が、眼瞼痙攣、斜視、およびデュエーン症候群からなる群より選択される、請求項139に記載の方法。
【請求項141】
前記状態が、皮膚の状態である、請求項113に記載の方法。
【請求項142】
前記皮膚の状態が、加老化皮膚の外観、皺、湿疹、乾癬、皮膚炎、黒色腫、粃糠疹、および皮膚癌からなる群より選択される、請求項141に記載の方法。
【請求項143】
前記状態が、いびきを特徴とする、請求項113に記載の方法。
【請求項144】
前記状態が、創傷である、請求項113に記載の方法。
【請求項145】
前記局部投与が、局所投与、真皮下投与、筋肉内投与、および皮下投与からなる群より選択される、請求項128に記載の方法。
【請求項146】
前記神経毒が、ボツリヌス毒素A型であり、約3ヵ月毎に0.25〜50単位の用量で投与される、請求項113に記載の方法。
【請求項147】
患者の状態を処置または予防するための組成物であって、神経毒およびニューロン成長抑制因子を含む、組成物。
【請求項148】
前記ニューロン成長抑制因子が、Trkレセプターインヒビター、Rasインヒビター、Rafインヒビター、Rap−1インヒビター、MEKインヒビター、ERKインヒビター、PKAインヒビター、PKCインヒビター、p53インヒビター、および成長因子インヒビターからなる群より選択される、請求項147に記載の組成物。
【請求項149】
前記ニューロン成長抑制因子が、PD98059、U0126、PD 184352、2−クロロ−3−(N−スクシンイミジル)−1,4−ナフトキノン、PD 184352 ARRY−142886、三環式フラボン、および2−(2−アミノ−3−メトキシフェニル)−4−オキソ−4H−[1]ベンゾピランからなる群より選択されるMEKインヒビターである、請求項147に記載の組成物。
【請求項150】
前記ニューロン成長抑制因子が、Rheb、BAY−43−9006、およびRafキナーゼインヒビタータンパク質からなる群より選択されるb−Rafインヒビターである、請求項147に記載の組成物。
【請求項151】
前記神経毒が、ボツリヌス毒素、破傷風毒素、クラーレ、ブンガロトキシン、サキシトキシン、およびテトロドトキシンからなる群より選択される、請求項147に記載の組成物。
【請求項152】
前記神経毒が、ボツリヌス毒素A型である、請求項147に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−528393(P2007−528393A)
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−502845(P2007−502845)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【国際出願番号】PCT/US2005/006300
【国際公開番号】WO2005/091891
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(506302228)カイセラ バイオファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】