説明

皮膚外用剤

【課題】皮膚の老化防止に対して改善効果のある皮膚外用剤を提供する。
【解決手段】ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、セラミドからなる群から選ばれる一種または二種以上とシロキクラゲ科キノコの抽出物を含有することを特徴とする皮膚外用剤。シロキクラゲ科キノコとは、シロキクラゲ(Tremella fuciformis BERK.)、ハナビラニカワタケ(Tremella foliacea Fr.)、及びコガネニカワタケ(Tremella mesenterica Retz.Fr.)などを用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、セラミドからなる群から選ばれる一種または二種以上とシロキクラゲ科キノコの抽出物を含有する皮膚外用剤であり、優れた使用感を有し、さらに、皮膚老化防止効果を有するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、セラミドは皮膚老化防止の目的として、化粧品や医薬品に配合されるている。シロキクラゲ科キノコの抽出物は整肌効果が知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開昭61−260006
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、セラミドを配合すると、べたつきやツッパリ感などの使用感の低下が問題となる場合があるとともに、また、より高い皮膚老化防止効果も求められている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者等は、上記事項に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、セラミドからなる群から選ばれる一種または二種以上とシロキクラゲ科キノコの抽出物とを組み合わせると、使用感を低下させることなく皮膚老化防止効果が相乗的に亢進することを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、セラミドからなる群から選ばれる一種または二種以上とシロキクラゲ科キノコの抽出物を含有することを特徴とする皮膚外用剤を提供するものである。
【0005】
以下、本発明の構成について詳述する。本発明に用いられるムコ多糖は、例えばヒアルロン酸、コンドロイチン−4−硫酸、コンドロイチン−6−硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパリン等およびそれらの塩類が用いられる。好ましくは、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸ナトリウムである。コラーゲンは、例えば、水溶性コラーゲンである加水分解コラーゲン、アテロ化コラーゲン(サクシニルアテロコラーゲン、ミリストイルサクシニルアテロコラーゲン等)が用いられる。好ましくは、鮭、鯛、カレイ科オヒョウなどの魚由来のコラーゲンが優れている。エラスチンは、加水分解エラスチン等が用いられる。好ましくは、加水分解エラスチンである。
【0006】
本発明におけるセラミドは、特に限定されないが、スフィンゴシンあるいはフィトスフィンゴシンのいずれかを骨格とし、アミド結合により、脂肪酸、α−ヒドロキシ酸あるいはω−ヒドロキシ酸と結合している。これには、脂肪酸の炭素数及び不飽和度の異なるいくつかの化合物がある。好ましくは、(2S,3R)−2−オクタデカノイルアミノオクタデカン−1,3−ジオール(以下セラミド2と表す)、N−2−ヒドロキシステアロイルフィトスフィンゴシン(以下セラミド6と表す)である。これらは、動植物からの抽出あるいは合成によって得られるが、これらに限定するものではない。
【0007】
これらの群の中から一種又は二種以上が適宜選ばれて用いられる。本発明で用いられるムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、セラミドの配合量は、皮膚外用剤全量中の0.0001〜30重量%の範囲が好ましい。さらに好ましくは、0.01〜3重量%である。
【0008】
本発明で使用するシロキクラゲ科キノコとは、シロキクラゲ(Tremella fuciformis BERK.)、ハナビラニカワタケ(Tremella foliacea Fr.)、及びコガネニカワタケ(Tremella mesenterica Retz.Fr.)などを用いることができる。分類は、今関六也・本郷次雄著「原色日本新菌類図鑑2」230から232頁、1989年、保育社発行によるものである。本発明で用いる材料としては、シロキクラゲ科キノコの子実体また培養菌体を用いることができ、天然、人工培養のいずれの場合も使用でき、生のまま、あるいは乾燥品のいずれも使用できる。
【0009】
シロキクラゲ科キノコの抽出物は、例えば、シロキクラゲ科キノコの乾燥品を抽出溶媒と共に浸漬または加熱した後、濾過し、必要ならば濃縮して得られる。抽出溶媒としては、例えば、水、低級1価アルコール類(メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等)、液状多価アルコール(1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール等)、炭化水素(ヘキサン、ペンタン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、エーテル類(エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル等)、アセトニトリル等があげられる。これらの溶媒は単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。好ましくは、水あるいは水溶性溶媒(水と任意の割合で混合可能な溶媒。例えば、エタノール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール等)のうち1種または2種以上の溶媒を用いるのがよい。抽出物はそのまま用いてもよいし、溶媒を一部、または全部留去して用いてもよい。
【0010】
シロキクラゲ科キノコの抽出物の配合量は乾燥エキスとして皮膚外用剤全量中の0.00001〜10重量%の範囲内が好ましい。さらに好ましくは、0.01〜3重量%である。
【0011】
本発明の皮膚外用剤は、効果を損なわない範囲内で、通常の外用剤に用いられる成分である油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、金属石鹸、pH調整剤、防腐剤、香料、保湿剤、粉体、紫外線吸収剤、増粘剤、色素、酸化防止剤、美白剤、キレート剤等の成分を配合することもできる。
【0012】
本発明の皮膚外用剤の剤型としては、例えば、化粧水、クリーム、乳液、ゲル剤、エアゾール剤、軟膏、パップ剤、ペースト剤、プラスター剤、エッセンス、パック、洗浄剤、浴用剤、ファンデーション、打粉、口紅等が挙げられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の皮膚外用剤は、ムコ多糖またはそれらの塩類、コラーゲン、エラスチン、セラミドからなる群から選ばれる一種または二種以上とシロキクラゲ科キノコの抽出物を併用することにより、使用感を低下させることなく皮膚老化防止効果が相乗的に亢進するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に本発明を詳細に説明するため、実施例として本発明に用いる抽出物の製造例、処方例及び実験例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例に示す配合量は重量%を示す。
【実施例1】
【0015】
製造例1 シロキクラゲのエタノール抽出物
シロキクラゲの子実体の乾燥物100gに900mLの30%エタノールを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、シロキクラゲのエタノール抽出物を3.4g得た。
【0016】
製造例2 シロキクラゲの熱水抽出物
シロキクラゲの子実体の乾燥物20gに4Lの精製水を加え、95〜100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してシロキクラゲの熱水抽出物を1.5g得た。
【0017】
製造例3 シロキクラゲの1,3−ブチレングリコール水溶液抽出物
シロキクラゲの子実体の乾燥物100gに1kgの精製水及び1kgの1,3−ブチレングリコールを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、シロキクラゲの1,3−ブチレングリコール水溶液抽出物を1.9kg得た。
【0018】
製造例4 ハナビラニハワタケの熱水抽出物
ハナビラニカワタケの子実体の乾燥物20gに4Lの精製水を加え、95〜100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してハナビラニカワタケの熱水抽出物を1.4g得た。
【実施例2】
【0019】
処方例1 クリーム
処方 配合量(重量%)
1.シロキクラゲの熱水抽出物(製造例2) 0.1
2.ヒアルロン酸 0.9
3.スクワラン 5.5
4.オリーブ油 3.0
5.ステアリン酸 2.0
6.ミツロウ 2.0
7.ミリスチン酸オクチルドデシル 3.5
8.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
9.ベヘニルアルコール 1.5
10.モノステアリン酸グリセリン 2.5
11.香料 0.1
12.1,3−ブチレングリコール 8.5
13.パラオキシ安息香酸エチル 0.05
14.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
15.精製水 67.15
[製造方法]成分3〜10を加熱して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1、2および12〜15を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分11を加え、更に30℃まで冷却して製品とする。
【0020】
処方例2 クリーム2
処方例1において、ヒアルロン酸をサクシニルアテロコラーゲン(鮭の皮由来、平均分子量30万)に置き換えたものをクリーム2とした。
【0021】
処方例3 クリーム3
処方例1において、ヒアルロン酸を加水分解コラーゲン(鮭の皮由来、平均分子量約2,500)に置き換えたものをクリーム3とした。
【0022】
処方例4 クリーム4
処方例1において、ヒアルロン酸をセラミド2に置き換えたものをクリーム4とした。
【0023】
処方例5 クリーム5
処方例1において、ヒアルロン酸を加水分解コラーゲン(鮭の皮由来、平均分子量約2,500)およびセラミド2(1:1)に置き換えたものをクリーム5とした。
【0024】
処方例6 クリーム6
処方例1において、ヒアルロン酸をヒアルロン酸、加水分解コラーゲン(鮭の皮由来、平均分子量約2,500)およびセラミド2(1:1:1)に置き換えたものをクリーム6とした。
【0025】
比較例1 従来のクリーム1
処方例1において、シロキクラゲのエタノール抽出物を精製水に置き換えたものを従来のクリーム1とした。
【0026】
比較例2 従来のクリーム2
処方例1において、ヒアルロン酸を精製水に置き換えたものを従来のクリーム2とした。
【0027】
処方例7 化粧水
処方 配合量(重量%)
1.ハナビラニカワタケの熱水抽出物(製造例4) 0.05
2.加水分解コラーゲン(カレイ科オヒョウ
の皮由来、平均分子量約1,500) 0.05
3.1,3−ブチレングリコール 8.0
4.グリセリン 2.0
5.キサンタンガム 0.02
6.クエン酸 0.01
7.クエン酸ナトリウム 0.1
8.エタノール 5.0
9.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
10.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.) 0.1
11.香料 0.1
12.精製水 84.47
[製造方法]成分1〜7及び12と、成分8〜11をそれぞれ均一に溶解し、両者を混合し濾過して製品とする。
【0028】
処方例8 乳液
処方 配合量(重量%)
1.シロキクラゲの熱水抽出物(製造例2) 0.01
2.加水分解エラスチン 0.04
3.スクワラン 5.0
4.オリーブ油 5.0
5.ホホバ油 5.0
6.セタノール 1.5
7.モノステアリン酸グリセリン 2.0
8.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
9.ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート 2.0
10.香料 0.1
11.プロピレングリコール 1.0
12.グリセリン 2.0
13.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
14.精製水 73.15
[製造方法]成分3〜9を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1、2及び11〜14を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分10を加え、更に30℃まで冷却して製品とする。
【0029】
処方例9 軟膏
処方 配合量(重量%)
1.シロキクラゲの1,3−ブチレン
グリコール水溶液抽出物(製造例3) 0.5
2.セラミド2 0.5
3.ポリオキシエチレンセチルエーテル(30E.O.) 2.0
4.モノステアリン酸グリセリン 10.0
5.流動パラフィン 5.0
6.セタノール 6.0
7.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
8.プロピレングリコール 10.0
9.精製水 65.9
[製造方法]成分2〜6を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1及び7〜9を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら30℃まで冷却して製品とする。
【0030】
処方例10 ファンデーション
処方 配合量(重量%)
1.シロキクラゲの1,3−ブチレン
グリコール水溶液抽出物(製造例3) 0.1
2.セラミド6 0.9
3.ステアリン酸 2.4
4.ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート 1.0
(20E.O.)
5.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 2.0
6.セタノール 1.0
7.液状ラノリン 2.0
8.流動パラフィン 3.0
9.ミリスチン酸イソプロピル 6.5
10.パラオキシ安息香酸ブチル 0.1
11.カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.1
12.ベントナイト 0.5
13.プロピレングリコール 4.0
14.トリエタノールアミン 1.1
15.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
16.二酸化チタン 8.0
17.タルク 4.0
18.ベンガラ 1.0
19.黄酸化鉄 2.0
20.香料 0.1
21.精製水 60.0
[製造方法]成分2〜10を加熱溶解し、80℃に保ち油相とする。成分21に成分11をよく膨潤させ、続いて、成分1及び12〜15を加えて均一に混合する。これに粉砕機で粉砕混合した成分16〜19を加え、ホモミキサーで撹拌し75℃に保ち水相とする。この水相に油相をかき混ぜながら加え、冷却し、45℃で成分20を加え、かき混ぜながら30℃まで冷却して製品とする。
【0031】
処方例11 浴用剤
処方 配合量(重量%)
1.シロキクラゲの熱水抽出物(製造例2) 1.0
2.加水分解コラーゲン(鯛鱗由来、平均分子量約5,000)
4.0
3.炭酸水素ナトリウム 50.0
4.黄色202号(1) 0.05
5.香料 0.25
6.無水硫酸ナトリウム 44.7
[製造方法]成分1〜6を均一に混合し製品とする。
【実施例3】
【0032】
実験例1 使用試験
処方例1〜6のクリーム及び比較例1、2の従来のクリームを用いて、しわ、たるみに悩む女性30人(23〜46才)を対象に6ヶ月間の使用試験を行った。使用後、しわ、たるみの改善とともに使用感についてのアンケート調査を行った。アンケートの評価基準は、有効なものを「優」、やや有効なものを「良」、わずかに有効なものを「可」、無効なものを「不可」として評価した。また、使用感については、使用感の良いものを「優」、やや良いものを「良」、わずかに良いものを「可」、良くないものを「不可」として評価した。
【0033】
これらの結果を表1に示した。処方例1〜6の皮膚外用剤は優れたしわ、たるみの改善効果を示し、使用感においても良好であった。また、コラーゲンおよびセラミドにシロキクラゲ抽出物を併用、あるいは、ヒアルロン酸、コラーゲンおよびセラミドにシロキクラゲ抽出物を併用するとさらに顕著な効果が認められた。なお、試験期間中皮膚トラブルは一人もなく、安全性においても問題なかった。
【0034】
【表1】

【0035】
処方例7〜11の化粧水、乳液、軟膏、ファンデーション、浴用剤の使用試験を行ったところ、いずれも使用感を低下させることなく、優れたしわ、たるみの改善効果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の活用例として、化粧品、医薬部外品または医薬品のいずれにも用いることができる。その剤型としては、化粧水、クリーム、乳液、ゲル剤、エアゾール剤、軟膏、パップ剤、ペースト剤、プラスター剤、エッセンス、パック、洗浄剤、浴用剤、ファンデーション、打粉、口紅等が挙げられ、皮膚のしわ、たるみ等の防止効果が得られる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、セラミドからなる群から選ばれる一種または二種以上とシロキクラゲ科キノコの抽出物を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項2】
ムコ多糖がヒアルロン酸または、コンドロイチン硫酸およびその塩類、コラーゲンがアテロ化コラーゲンまたは加水分解コラーゲン、エラスチンが加水分解エラスチンであることを特徴とする請求項1の皮膚外用剤。
【請求項3】
コラーゲンが魚由来のコラーゲンであることを特徴とする請求項1または2の皮膚外用剤。
【請求項4】
シロキクラゲ科キノコが、シロキクラゲ、ハナビラニカワタケ、コガネニカワタケから選ばれる1種または2種以上である請求項1〜3の皮膚外用剤。


【公開番号】特開2006−131557(P2006−131557A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−322847(P2004−322847)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(592262543)日本メナード化粧品株式会社 (223)
【Fターム(参考)】