説明

省電力機能を備えた電子機器

【課題】電子機器を省電力状態からレディ状態へ効果的に自動復帰させる。
【解決手段】印刷履歴記録部101は、印刷ジョブが開始されると、印刷履歴テーブル1000内の対応する時間帯の印刷ジョブ回数をインクリメントする。印刷履歴分析部103は印刷履歴テーブル1000内の印刷ジョブ回数が閾値以上である場合に、該当する時間帯に対応する復帰時刻の復帰フラグを1とする。復帰判断部104は、復帰フラグが1である時刻に、画像形成装置を省電力状態からレディ状態に復帰させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙に転写されるトナー像を加熱定着する複写機、プリンタ、ファクシミリ、これらを備えた複合機、又は、パーソナルコンピュータ等の電子機器に係り、特に電子機器が未使用状態の時に電子機器の一部又は全体を自動オフする省電力機能(省エネモード)を有する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、複写機、プリンタ、ファクシミリ、これらを備えた複合機、及び、パーソナルコンピュータ等の電子機器では、消費電力の低減を図るため、省電力機能を有しており、特に電源が投入されている状態で実質的に未使用状態が継続すると、自動的に省電力状態に移行させている。以下、電源が投入されている状態で実質的に未使用状態をレディ状態、及び、自動的に省電力状態に移行させるまでのレディ状態の時間を最大レディ時間(設定時間)と称す。また、実質的に未使用状態とは、画像形成装置がユーザの操作やジョブの実行による入出力動作を行わない状態である。
【0003】
下記特許文献1には、ユーザの使用頻度を記録し、その使用頻度と最大レディ時間との対応テーブルを基に、使用頻度の低い時間帯においては、画像形成装置の消費電力を考慮して、最大レディ時間を短く設定し、かつ、使用頻度の高い時間帯においては、ユーザの使い勝手を考慮して、最大レディ時間を長く設定する構成が開示されている。
【0004】
この構成によれば、ユーザの使用頻度に応じて、最大レディ時間を設定することが可能であり、ユーザにとって必要のない時間帯には消費電力を抑え、かつ、ユーザが画像形成装置を継続的に使用する場合には、ユーザは不快に感じることなく、即座に使用することができる。
【特許文献1】特開2004−101919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の発明は、前記最大レディ時間経過し画像形成装置が一旦省電力状態に移行した後、ユーザがそれを再度使用する場合を考慮に入れていない。このため、図1(B)に示すようにユーザは画像形成装置を再度使用する際に、画像形成装置が省電力状態から復帰してレディ状態になるまでの時間(以下、復帰時間と称す)待たなければならず、不便である。
【0006】
これらの問題点は、他の電子機器、例えばコンピュータにおいても同様である。
【0007】
本発明の目的は、このような問題点に艦み、図1(A)に示すように、ユーザの使用状況に応じて省電力状態からレディ状態に効果的に復帰することが可能な、省電力機能を備えた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
レディ状態が設定時間継続した場合に、省電力状態に自動移行する機能を有する電子機器において、
本発明の第1態様における電子機器では、
時刻をカウントするタイマと、
該電子機器の使用履歴データ、及び、該電子機器の使用度合いに関する閾値が格納される記憶手段と、
該電子機器が使用される場合に、該タイマを参照し、その値に基づく該電子機器の使用情報で該使用履歴データを更新する使用履歴記録部と、
該電子機器が該省電力状態である場合に、該タイマの値に応じて、該使用履歴データと該閾値とに基づき、該電子機器を該省電力状態から該レディ状態に復帰させる復帰処理部と、を備える。
【0009】
本発明の第2態様における電子機器では、第1態様において、
前記復帰処理部は、前記タイマが示す時刻と、時間帯ごとに設定された時刻とが一致し、かつ、該時間帯に含まれる使用情報の度数が前記閾値以上である場合に、前記電子機器を前記省電力状態から前記レディ状態に復帰させる。
【0010】
本発明の第3態様における電子機器では、第1態様において、
前記使用履歴データは、前記使用情報に含まれる時刻を時間帯ごとに振り分けたヒストグラムであり、
前記使用履歴記録部は、該使用情報により、前記タイマの値に該当する時間帯の該使用履歴データを更新し、
前記復帰処理部は、該タイマを参照して、該タイマが示す時刻と、該使用履歴データの該時間帯に対応する時刻とが一致するか否かを判断し、一致した場合に、該時間帯の度数が前記閾値以上であるか否かをさらに判断し、該閾値以上である場合に、前記電子機器を前記省電力状態から前記レディ状態に復帰させる。
【0011】
本発明の第4態様における電子機器では、第3態様において、
前記タイマはさらに、曜日をカウントし、
前記ヒストグラムは曜日ごとのヒストグラムであり、
前記使用履歴記録部は、前記使用情報により、該タイマの値に該当する曜日の前記使用履歴データを更新し、
前記復帰処理部は、該タイマを参照して、該タイマが示す該曜日及び前記時刻と、該使用履歴データの該曜日及び前記時間帯に対応する時刻とが一致するか否かを判断し、一致した場合に、該曜日の該時間帯の度数が前記閾値以上であるか否かを判断し、該閾値以上である場合に、前記電子機器を前記省電力状態から前記レディ状態に復帰させる。
【0012】
本発明の第5態様における電子機器では、第2乃至第4のいずれか1つの態様において、
前記記憶手段にはさらに、前記設定時間のデータが格納され、
前記復帰処理部は、前記時間帯の間隔に対応して、該データが示す該設定時間を該間隔以下に設定する。
【0013】
本発明の第6態様における電子機器では、第1乃至第5のいずれか1つの態様において、
前記省電力状態は休止状態であり、
前記電子機器は、電子機器本体と、
前記使用履歴記録部、前記復帰処理部、および、前記タイマを有した制御装置と、を含み、
該制御装置は該電子機器本体が該休止状態においても電力が供給され、
該復帰処理部は、該電子機器本体を該休止状態から該レディ状態に復帰させる。
【発明の効果】
【0014】
上記第1態様の構成によれば、電子機器が使用される場合に、使用履歴記録部が、タイマを参照し、その値に基づく該電子機器の使用情報で使用履歴データを更新させ、該電子機器が省電力状態である場合に、復帰処理部が、該タイマの値に応じて該使用履歴データと閾値とに基づき、該電子機器を省電力状態からレディ状態に復帰させるので、ユーザが使用したい時に該電子機器を即座に使用することができるという効果を奏する。
【0015】
また、ユーザが不必要な時は、電子機器は復帰しないので、消費電力を低減することができるという効果を奏する。
【0016】
さらに、ユーザの使用履歴に基づいてユーザが使用したい時には、復帰処理部により既に電子機器が復帰しているので、レディ状態から省電力状態へ自動移行する設定時間を長くする必要が無く、消費電力を低減することができるという効果を奏する。
【0017】
上記第2態様及び第3態様の構成によれば、タイマが示す時刻と、時間帯ごとに設定された時刻とが一致し、かつ、該時間帯に含まれる使用情報の度数又は使用履歴データが示す度数が閾値以上である場合に、復帰処理部が電子機器を省電力状態からレディ状態に復帰させるので、各時間帯の使用頻度に応じて適切に該電子機器を復帰させることができ、ユーザは不快感なく即座に該電子機器を使用することができるという効果を奏する。
【0018】
また、使用履歴記録部と復帰処理部とにより、所定の時間帯ごとに、電子機器を適切に省電力状態からレディ状態に復帰するか否かを判断するので、不必要な時間帯に電子機器を復帰させることが無く、消費電力を低減することができるという効果を奏する。
【0019】
さらに、復帰処理部は使用頻度が高い時間帯ごとに、電子機器を省電力状態からレディ状態に復帰させるので、該レディ状態から該省電力状態へ自動移行する設定時間を該時間帯以上にする必要がなく、消費電力を低減することができるという効果を奏する。
【0020】
上記第4態様の構成によれば、使用履歴記録部が使用情報により、タイマの値に該当する曜日の時間帯の使用履歴データを更新させ、復帰処理部が、該タイマが示す曜日の時刻と、該使用履歴データの該曜日の時間帯に対応する時刻が一致し、かつ、該曜日の時間帯の度数が閾値以上である場合に、電子機器を省電力状態からレディ状態に復帰させるので、使用頻度が高い曜日の時間帯において適切に該電子機器を復帰させることができ、ユーザは不快感なく即座に該電子機器を使用することができるという効果を奏する。
【0021】
また、復帰処理部が曜日と時間帯の使用情報に基づいて、電子機器を適切に省電力状態からレディ状態に復帰させることにより、不必要な曜日の時間帯に電子機器が復帰しないので、消費電力を低減することができるという効果を奏する。
【0022】
上記第5態様の構成によれば、復帰処理部が、使用情報が区分される時間帯の間隔に対応して、データが示す設定時間を該間隔以下に設定するので、電子機器を必要以上にレディ状態のまま継続させることがなく、消費電力を低減できるという効果を奏する。
上記第6態様の構成によれば、電子機器本体が休止状態であっても、使用履歴記録部、復帰処理部、および、タイマを有した制御装置には電源が供給されているので、
該復帰処理部は、該電子機器本体が休止状態においても、レディ状態に復帰させることができる。その結果、ユーザが必要としない時間帯は電子機器本体全てを休止状態にすることができ、さらに消費電力を低減することができるという効果を奏する。
【0023】
本発明の他の目的、構成及び効果は以下の説明から明らかになる。
【実施例1】
【0024】
本実施例1では、本発明を画像形成装置に適用する場合を説明する。
【0025】
図7は、本発明の実施例1に係る画像形成装置のハードウェア構成を示す概略ブロック図である。
【0026】
この画像形成装置10は、例えば複合機であり、制御装置11、操作パネル12及び画像形成装置本体13を備えている。また、制御装置11には、インターフェース14を介してMPU15に、EEPROM16、EEPROM17、DRAM18、HDD19、NIC20、及び、タイマ21が結合されている。図7では、簡単化のため、複数のインターフェースを1つのブロックで示している。
【0027】
制御装置11は、操作パネル12で設定された情報やディフォルトの設定値に基づいて、画像形成装置本体13で読み取られた原稿画像を処理し、又は、NIC20に結合された不図示の外部のホストコンピュータから供給される設定情報及び画像データに基づいて、画像形成装置本体13に対し画像を形成させる。
【0028】
操作パネル12は、設定値又は指示を入力し、設定画面や状態などを表示させるためのものである。
【0029】
画像形成装置本体13には、プリンタ、スキャナ、FAX等が備えられている。プリンタは、プリントエンジン、定着器並びに用紙の給紙部、搬送部及び排紙部を備えており、供給されるビットマップデータに基づいてプリントエンジンの感光ドラムに静電潜像を形成し、これをトナーで現像し、用紙に転写し定着させた後に排紙する。ここで、定着器にはヒータ22が備えられ、トナー像が静電転写された用紙は、ヒータ22で過熱され、加圧ローラで加圧されることによって定着される。
【0030】
EEPROM16及びEEPROM17は、例えばフラッシュメモリである。EEPROM16には、BIOS(Basic Input Output System)が格納されている。EEPROM17には、OS(オペレーティングシステム)、OSの上層のサービスプログラム及びアプリケーション並びにOSの下層のデバイスドライバが格納されている。DRAM18はワークエリア用であり、HDD19はデータ格納用である。
【0031】
HDD19には、本発明で使用する印刷履歴テーブル1000及び復帰時刻設定テーブル1001が格納されている。印刷履歴テーブル1000は、毎月初日から末日までの印刷ジョブ回数の履歴が曜日ごとかつ時間帯ごとに区分されて記録されている。復帰時刻設定テーブル1001には、印刷履歴テーブル1000における時間帯に対応する復帰時刻と、その復帰時刻に復帰するか否かを決定する復帰フラグが予め設定されている。
【0032】
NIC20は、不図示のケーブル又は無線の通信媒体及びルータを介してホストコンピュータに結合され、プリントジョブ、電子メール送受信及びインターネットファクシミリ送信に用いられる。
【0033】
タイマ21には、画像形成装置10がオフ状態の時においても電力が供給されている。また、タイマ21は独自のクロックで動作し、タイムアウトパルスをインターフェース14の割込入力端子に供給する。インターフェース14はこれに応答して、MPU15に割込をかける。
【0034】
図2は、この画像形成装置10における本発明に関係した部分を示す機能ブロック図である。
【0035】
ここで、システム制御部100、印刷履歴記録部101、復帰処理部102の印刷履歴分析部103と復帰判断部104はソフトウェア、MPU15、EEPROM16、EEPROM17、HDD19及びNIC20の組み合わせで構成されているものとする。
【0036】
システム制御部100は、操作パネル12、NIC20、又は、復帰判断部104からの要求に基づき、画像形成装置本体13を制御する。
【0037】
印刷履歴記録部101は、システム制御部100により印刷ジョブ(ファクシミリによる印刷ジョブを除く)が開始されると、タイマ21を参照し、図4に示すような印刷履歴テーブル1000内の対応する曜日かつ時間帯の印刷ジョブ回数をインクリメントする。データ記入前の印刷履歴テーブル1000はEEPROM17に予め記録されており、これがHDD19へコピーされて使用される。なお、印刷ジョブ回数は5分ごとに区分するように時間帯の設定がされているが、この時間帯の間隔は操作パネル12により変更できる。
【0038】
復帰処理部102は、印刷履歴分析部103、復帰時刻設定テーブル1001よび、復帰判断部104を含む。
【0039】
印刷履歴分析部103は、毎月初日において、図5に示すような復帰時刻設定テーブル1001の全ての曜日及び時間帯に対応する復帰フラグをゼロクリアする。次に、図4に示してある先月の印刷ジョブ回数の履歴である印刷履歴テーブル1000を参照して、印刷ジョブ回数が閾値である5以上である場合に、該当する曜日かつ時間帯に対応する復帰時刻の復帰フラグが1となるように、復帰時刻設定テーブル1001を更新する。また、今月の印刷ジョブ回数の履歴を記録するために、印刷履歴テーブル1000の全ての曜日かつ時間帯に対応する回数欄をゼロクリアする。
【0040】
例えば、図4における印刷履歴テーブル1000では、月曜日の時間帯09:05〜09:10における印刷ジョブ回数が閾値である5回以上であるので、図5に示す復帰時刻設定テーブル1001の月曜日の時刻9:05に該当するフラグを1に設定する。なお、印刷ジョブ回数の閾値設定は、操作パネル12により設定される。また、復帰時刻設定テーブル1001の復帰時刻は、印刷履歴テーブル1000における印刷ジョブ回数を区分する時間帯の初めの時刻でなくとも良く、印刷ジョブ回数を区分する時間帯の初めの時刻から印刷準備に必要とされる時間(復帰時間)を差し引いた時刻であってもよい。
【0041】
図2に戻って、復帰判断部104は、印刷履歴分析部103によって作成される復帰時刻設定テーブル1001の内容に基づき、タイマ21を参照し、システム制御部100を介して、定着器のヒータ22をオンする。このようにして、画像形成装置10は省電力状態からレディ状態に復帰する。
【0042】
以下に、この復帰判断部104が、システム制御部100を介し、定着器のヒータ22をオンすることによって、画像形成装置10が省電力状態からレディ状態になるまでの処理を、図3に示すフローチャートを用いて説明する。この処理は、タイマ21による周期的な割込みによって、MPU15により開始される。括弧内は図3中のステップ識別符号である。
【0043】
(S1)復帰判断部104は、タイマ21から現日時を取得し、現時刻が復帰時刻設定テーブル1001内の該当する曜日の時刻と一致しているか否かを判断する。一致している場合には、処理はステップS2に進み、そうでなければ処理を終了する。
【0044】
(S2)復帰判断部104は、復帰時刻設定テーブル1001内の、現時刻と一致した曜日の時刻に該当する復帰フラグが1であるか否かを判断する。復帰フラグが1である場合には、処理はステップS3に進み、そうでなければ処理を終了する。
【0045】
(S3)復帰判断部104は、画像形成装置10が省電力状態(本実施例では、定着器のヒータがオフ状態)であるか否かを判断し、省電力状態である場合には、処理はステップS4へ進み、そうでなければ処理を終了する。
【0046】
(S4)復帰判断部104は、システム制御部100に定着器のヒータ22をオンするよう要求する。システム制御部100は、これに応答して、定着器のヒータ22をオンにさせて、画像形成装置10を省電力状態からレディ状態へ復帰させる。
【0047】
図6(A)は、図4に示す印刷履歴テーブル1000内の前月の月曜日における時間帯と印刷ジョブ回数との関係をグラフに表したものである。
【0048】
図6(B)には、今月の月曜日現在の時間帯において、復帰判断部104によって定着器のヒータ22をオンにする時点を示したものである。
【0049】
図6(C)は、本発明を適用した画像形成装置10を用いて、今月の月曜日現在における画像形成装置10の状態と時刻との関係を示している。黒色領域は、ジョブ実行中の時間帯である。
【0050】
図6(B)において、点線の矢印は、ステップS3において復帰判断部104の判断により、ヒータ22をオンする処理を実行しないことを示している。つまり、その時刻において復帰時刻設定テーブル1001では定着器のヒータ22をオンするように設定されているが、図6(C)に示すように、画像形成装置10が既にレディ状態であるので、復帰判断部104の判断により、定着器のヒータ22をオンする処理を実行しないようにしている。
【0051】
以上のような処理により、例えば図6(C)に示しているように、ユーザの使用頻度が高いと予想される時間帯9:05〜9:10において、ユーザが使用する前に、画像形成装置10が既に自動復帰して、レディ状態にあるので、ユーザは復帰時間を待つ必要が無い。また、本実施例1では最大レディ時間として固定値1分を使用している。これは、最大レディ時間を短くしても次の使用開始時刻を予測してヒータ22をオンにするので、長くする必要性が少ないと考えられるからであり、これにより省電力化が達成される。
【0052】
本実施例1では、ユーザの印刷履歴を基にして、復帰時刻設定テーブル1001を更新し、それに基づいて定着器のヒータ22をオンにさせることによって、ユーザの使用状況に応じてレディ状態に最適に復帰できる。これにより、図6(C)に示すように、ユーザは、必要とするときに、復帰時間を待たずに画像形成装置10を即座に使用できるので、不快感なく必要とする処理を行うことができるという効果を奏する。
【0053】
また、5分単位で印刷ジョブ回数を区分し、印刷履歴テーブル1000を更新し、印刷ジョブ回数が多いときにのみ、5分単位で画像形成装置10を復帰させるので、最大レディ時間を5分以上に設定しなくてもよく、最大レディ時間を短くすることにより、省電力効果を期待できる。
【0054】
さらに、印刷履歴分析部103が閾値を用いて、印刷ジョブ回数が閾値を越えているときのみ、復帰時刻設定テーブル1001を更新するので、使用頻度が高い場合を正確に予測して、画像形成装置10を最適に復帰でき、これにより、消費電力を抑え、かつ、ユーザは必要なときに不快感なく即座に画像形成装置10を使用できるという効果を奏する。
【0055】
ここで、図6(C)に示している9時5分から9時10分までにおいて、最大レディ時間が1分と短いので、ユーザは、要望する3回目の時刻において、ユーザは復帰時間を待たなければならない。最適な最大レディ時間は、印刷履歴テーブル1000の時間帯の間隔に対応していることが望ましい。このようにすることで、よりユーザの都合に考慮した画像形成装置が実現可能となる。なお、印刷履歴テーブル1000の時間帯の間隔を変更する場合には、最大レディ時間をその時間帯に対応するように自動的に変更する構成であってもよい。
【0056】
本実施例1では印刷履歴テーブル1000の時間帯の間隔を5分としたが、使用頻度に応じ、それより短く又は長く設定してもよい。しかし、長すぎる場合、最大レディ時間を長くしないと、ユーザに不快感を与えてしまう。また、短すぎる場合、正確な統計を取得することが難しくなり、復帰時刻設定テーブル1001を最適に更新することができないことが考えられる。よって、印刷履歴テーブル1000における印刷ジョブ回数の時間区分は、短すぎず、かつ、長すぎないように使用頻度に応じ設定されることが望ましい。画像形成装置が多くのユーザに使用される場合では、時間帯が短くても印刷ジョブ回数の正しい統計を取得することができるので、時間軸に対して画像形成装置の復帰がより正確となり、さらに最大レディ時間を短くすることができる。
【実施例2】
【0057】
本実施例2では、本発明をコンピュータに適用する場合を説明する。
【0058】
この場合は、省電力状態としての休止状態(レジューム可能にデータをHDDに書き込んで電源をオフにした状態)からレディ状態に復帰する場合を想定する。従来コンピュータにおいては、電源が投入されて実質的に未使用状態が続く場合には、スタンバイモード又は休止状態に移行する。この場合においてユーザが再度使用する時には、コンピュータが復帰するまで待たなければならない。
【0059】
図8は、コンピュータにおける本発明に関係した部分を示す機能ブロック図である。
【0060】
本発明におけるコンピュータ30は、実施例1で述べた機能を有した制御装置31と、コンピュータ本体13Aにより構成されている。
【0061】
ここで、コンピュータ本体13Aには従来のコンピュータが備えているハードウェア構成を全て含むものとし、休止状態においてはコンピュータ本体13Aの各ハードウェア構成の電源は全てオフになっている。しかし、制御装置31はコンピュータ本体13Aがオフ状態の場合でも、電力が供給されているものとする。
【0062】
本実施例2において、図4に示す印刷ジョブ回数は、コンピュータ起動回数であり、起動履歴記録部101A、起動履歴分析部103Aは、それぞれ印刷履歴記録部101、印刷履歴分析部103と同様の働きをする。すなわち、起動履歴記録部101Aは図4に示すような起動履歴テーブル1000Aを更新し、起動履歴分析部は、図5に示すような復帰時刻設定テーブル1001Aを作成する。また、復帰処理部102Aは、起動履歴分析部103A、復帰時刻設定テーブル1001A、復帰判断部104A及びシステム制御部100Aを含むものとする。
【0063】
ここで、起動履歴記録部101Aは、ユーザの手動により起動された場合、その起動の時点を起動として認識し、起動履歴テーブル1000Aの該当する起動回数を更新する。また、復帰判断部104Aによりコンピュータ30が自動復帰した場合、起動履歴記録部101は、自動復帰した時点を起動として認識するのではなく、コンピュータが自動復帰した後最初にユーザにより使用された時点(マウス操作又はキーボード入力等)を起動として認識し、起動履歴テーブル1000Aの該当する起動回数を更新する。
【0064】
復帰判断部104Aは、タイマ21の割込みにより、現時刻と復帰時刻設定テーブル1001Aの内容が一致するか否かを判断し、一致した場合に、コンピュータ本体13Aの電源がオフか否かを判断し、シャットダウンされていた場合には、システム制御部100Aを介してコンピュータ本体13Aに電源を投入する。
【0065】
本実施例2では、コンピュータが休止状態である場合において、制御装置31が、コンピュータ起動回数に応じて、復帰時刻設定テーブル1001Aを更新し、その内容に基づいてコンピュータ本体13Aを起動させるので、ユーザが使用したい時に即座に使用することができるという効果を奏する。
【0066】
また、上記の機能を備えることによって、ユーザはコンピュータの設定において、最大レディ時間を短く設定することができる。さらに、休止状態においてユーザが使用したいときに即座に使用できるので、コンピュータの設定において、省電力機能をスタンバイモード(メモリ以外のモニタやハードディスクを切断)から、休止状態に変更でき、消費電力を低減することが可能となるという効果を奏する。
【0067】
なお、本発明には他にも種々の変形例が含まれる。
【0068】
実施例1では、タイマ21は画像形成装置10に供給される電源を使用しているが、タイマ21が独自の電池を備えている構成であってもよい。また、実施例1では、タイマ21がハードである構成を説明したが、画像形成装置10の制御部11には省電力状態においても電力が供給されているので、タイマ手段を、ハードウェアではなく、ソフトウェアで構成してもよい。また、実施例2においても同様の構成であってもよい。
【0069】
また、実施例1では、復帰判断部104が、タイマ21が示す現時刻と復帰時刻設定テーブル1001に記録されている時刻が一致するか否かを判断しているが、復帰判断部104が、タイマ21に復帰時刻設定テーブル1001に記録されている復帰時刻を書き込むことによって、タイマ21自身が、現時刻と復帰時刻が一致するか否かを判断する構成であってもよい。この構成では、タイマ21は現時刻と復帰時刻が一致した場合のみ、MPU15に割込要求を与え、復帰判断部104は割込み処理をする。また、実施例2においても同様の構成であってもよい。
【0070】
さらに、実施例1では、画像形成装置10を省電力状態から自動的に復帰させレディ状態にさせるのに印刷ジョブ回数の履歴を用いたが、印刷枚数、省電力状態からレディ状態に移行する回数、操作パネル12が操作された回数、又は、外部のコンピュータによりデータを受け付けた回数の履歴を用いてもよい。ここで、上記の省電力状態からレディ状態に移行する回数を用いる場合は、復帰判断部104により画像形成装置10が自動復帰する場合を履歴に反映しない。
【0071】
さらにまた、実施例2においては、コンピュータ30がユーザにより起動された時点及び自動復帰後のユーザによる最初の操作を起動回数として用いたが、このような場合分けをせずコンピュータ30が起動された後のユーザによる最初の操作又は最初のアプリケーションの起動を起動回数として用いる構成であってもよい。
【0072】
また、実施例1又は2における印刷履歴テーブル1000又は起動履歴テーブル1000Aは、1ヶ月間の印刷ジョブ回数の履歴が記録され、初期化が行われるが、1日単位、1週間単位又は年単位で、更新、初期化が行われる構成であってもよい。
【0073】
さらに、実施例1では、復帰判断部104により、1ヶ月間同じ内容の復帰時刻設定テーブル1001に基づいて定着器のヒータ22をオンするが、印刷履歴分析部103による復帰時刻設定テーブル1001の更新を、月の初めではなく、毎日新しい履歴データを追加させるとともに印刷履歴テーブル1000中の一番古い日付の履歴データを削除することによって、常に新しい復帰時刻設定テーブル1001に基づいて定着器のヒータ22をオンしてもよい。なお、この場合印刷履歴分析部103は、印刷履歴テーブル1000に、印刷ジョブごとに印刷日時を記録する。また、実施例2においても同様の構成であってもよい。
【0074】
さらにまた、実施例1では、省電力状態とは、定着器のヒータ22のみオフになっている状態として説明したが、省電力状態は、定着器のヒータ22以外にも、省電力状態で画像形成装置10が必要としないCPU、メモリ、HDD、画像形成装置10各部の光源、又は、それらの組み合わせがオフの状態であってもよい。この場合においては、復帰判断部104は、画像形成装置10を復帰させるために、定着器のヒータ22をオンするだけでなく、オフになっている状態の各ハードウェアをオンする。
【0075】
また、実施例1では、復帰処理部102は、復帰時刻設定テーブル1001を含む場合を説明したが、復帰時刻設定テーブル1001を含まない構成であってもよい。つまり、復帰判断部104は、印刷履歴分析部103が更新する復帰時刻設定テーブル1001に基づいて定着器のヒータ22をオンするが、復帰判断部104は、印刷履歴分析部103を備え、復帰時刻設定テーブル1001を作成せず、タイマ21による割込み処理がある場合に、直接印刷履歴テーブル1000に基づいて、随時、定着器のヒータ22をオンするか否かを判断するようにしてもよい。また、実施例2においても同様の構成であってもよい。
【0076】
さらに、復帰判断部104と104Aは、それぞれシステム制御部100、100Aに含まれてもよい。
【0077】
さらにまた、実施例1ではシステム制御部100、印刷履歴記録部101、印刷履歴分析部103、及び、復帰判断部104はソフトウェア、MPU16、EEPROM16、EEPROM17、HDD19及びNIC20の組み合わせで構成されている場合を説明したが、フリップフロップ等の論理回路で構成されてもよい。また、実施例2においても同様の構成であってもよい。
【0078】
また、実施例2では、制御装置31はコンピュータ本体13Aと独立しているが、起動履歴記録部101A、起動履歴テーブル1000A、及び、起動履歴分析部103Aは、コンピュータ本体13A側に備えられた構成であってもよい。
【0079】
さらに、実施例1では本発明を画像形成装置に適用し、実施例2ではコンピュータに適用したが、本発明はこれらの電子機器に限定されず、省電力状態又は電源オフ状態からレディ状態に移行するのに時間を要する冷暖房機等の電子機器に適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】(A)は、本発明を適用した画像形成装置の状態の説明図であり、(B)は、従来の画像形成装置の状態を、本発明を適用した画像形成装置の状態と対比した説明図である。
【図2】画像形成装置における本発明に関係した部分を示す機能ブロック図である。
【図3】タイマ割込みによる復帰判断部の処理を示すフローチャートである。
【図4】印刷履歴記録部により更新される印刷履歴テーブルの説明図である。
【図5】印刷履歴分析部により更新される復帰時刻設定テーブルの説明図である。
【図6】(A)は、先月月曜日の時間帯における印刷ジョブ回数を示した説明図であり、(B)は、復帰判断部によって画像形成装置を復帰させる時点を示した説明図であり、(C)は、現在の画像形成装置の状態を示した説明図である。
【図7】画像形成装置のハードウェア構成を示す概略ブロック図である。
【図8】コンピュータにおける本発明に関係した部分を示す機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0081】
10 画像形成装置
11 制御装置
12 操作パネル
13 画像形成装置本体
13A コンピュータ本体
14 インターフェース
15 MPU
16 EEPROM
17 EEPROM
18 DRAM
19 HDD
20 NIC
21 タイマ
22 ヒータ
30 コンピュータ
31 制御装置
100、100A システム制御部
101 印刷履歴記録部
101A 起動履歴記録部
102、102A 復帰処理部
103 印刷履歴分析部
103A 起動履歴分析部
104、104A 復帰判断部
1000 印刷履歴テーブル
1000A 起動履歴テーブル
1001、1001A 復帰時刻設定テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レディ状態が設定時間継続した場合に、省電力状態に自動移行する機能を有する電子機器において、
時刻をカウントするタイマと、
該電子機器の使用履歴データ、及び、該電子機器の使用度合いに関する閾値が格納される記憶手段と、
該電子機器が使用される場合に、該タイマを参照し、その値に基づく該電子機器の使用情報で該使用履歴データを更新する使用履歴記録部と、
該電子機器が該省電力状態である場合に、該タイマの値に応じて、該使用履歴データと該閾値とに基づき、該電子機器を該省電力状態から該レディ状態に復帰させる復帰処理部と、
を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記復帰処理部は、前記タイマが示す時刻と、時間帯ごとに設定された時刻とが一致し、かつ、該時間帯に含まれる使用情報の度数が前記閾値以上である場合に、前記電子機器を前記省電力状態から前記レディ状態に復帰させることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記使用履歴データは、前記使用情報に含まれる時刻を時間帯ごとに振り分けたヒストグラムであり、
前記使用履歴記録部は、該使用情報により、前記タイマの値に該当する時間帯の該使用履歴データを更新し、
前記復帰処理部は、該タイマを参照して、該タイマが示す時刻と、該使用履歴データの該時間帯に対応する時刻とが一致するか否かを判断し、一致した場合に、該時間帯の度数が前記閾値以上であるか否かをさらに判断し、該閾値以上である場合に、前記電子機器を前記省電力状態から前記レディ状態に復帰させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
前記タイマはさらに、曜日をカウントし、
前記ヒストグラムは曜日ごとのヒストグラムであり、
前記使用履歴記録部は、前記使用情報により、該タイマの値に該当する曜日の前記使用履歴データを更新し、
前記復帰処理部は、該タイマを参照して、該タイマが示す該曜日及び前記時刻と、該使用履歴データの該曜日及び前記時間帯に対応する時刻とが一致するか否かを判断し、一致した場合に、該曜日の該時間帯の度数が前記閾値以上であるか否かを判断し、該閾値以上である場合に、前記電子機器を前記省電力状態から前記レディ状態に復帰させる、
ことを特徴とする請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記記憶手段にはさらに、前記設定時間のデータが格納され、
前記復帰処理部は、前記時間帯の間隔に対応して、該データが示す該設定時間を該間隔以下に設定することを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1つに記載の電子機器。
【請求項6】
前記電子機器は画像形成装置であって、前記省電力状態は少なくともヒータの電力供給が切断されている状態であり、
前記復帰処理部は、前記使用履歴データが前記閾値以上である場合に、該ヒータに電力を供給することにより、前記電子機器を該省電力状態から該レディ状態に復帰させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載の電子機器。
【請求項7】
前記省電力状態は休止状態であり、
前記電子機器は、電子機器本体と、
前記使用履歴記録部、前記復帰処理部、および、前記タイマを有した制御装置と、を含み、
該制御装置は該電子機器本体が該休止状態においても電力が供給され、
該復帰処理部は、該電子機器本体を該休止状態から前記レディ状態に復帰させることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つに記載の電子機器。
【請求項8】
前記電子機器本体は、電子計算機であることを特徴とする請求項7に記載の電子機器。
【請求項9】
レディ状態が設定時間継続した場合に省電力状態に自動移行する機能を有する電子機器が使用される際に、タイマを参照し、その値に基づく該電子機器の使用情報で、記憶手段に格納されている使用履歴データを更新するステップと、
該電子機器が該省電力状態である場合に、該タイマの値に応じて、該使用履歴データと、該記憶手段に格納されている、該電子機器の使用度合いに関する閾値とに基づき、該電子機器を該省電力状態から該レディ状態に復帰させるステップと、
をプロセッサに対し実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−87353(P2008−87353A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−271613(P2006−271613)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】