説明

真空成膜方法、及び該方法によって得られる積層体

【課題】ロールツーロール技術において、作業の効率化、或いは、改善を更に図った成膜方法を提供する。
【解決手段】第1基体を第1ロール室から第2ロール室へ向う第1の方向に第1ロール室から繰り出す段階、第1基体を脱ガスする段階、第1基体に第2成膜室で第2の膜材料を成膜する段階、第1基体を第2ロール室で巻取ることにより第1基体を生成する段階を備え、更に、第2ロール室から第1ロール室へ向う第2の方向において第2基体を生産するために同様の動作を行う。ここで、第2の膜材料が成膜された第1基体を生成するにあたり、第1成膜室の第1カソード電極が第1成膜室から取り除かれ、また、第1の膜材料が成膜された第2基体を生成するにあたり、第2成膜室の第2カソード電極が第2成膜室から取り除かれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜方法、特に、長尺の基体に連続的に真空成膜を行う成膜方法、及び該方法によって得られる積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
成膜方法として、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の、各種の方法が開発されてきた。これらの成膜方法によって得られた積層体は、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示装置、半導体装置等の製造に幅広く利用されている。積層体は、これら表示装置や半導体装置等の保護フィルムや、光学フィルタ、反射防止フィルムといった各種の機能性フィルムとして利用できる。
【0003】
近年、液晶テレビや、携帯電話、テレビゲーム機等、これらの機能性フィルムを用いるデバイス装置の需要が急激に伸びている。需要の伸びに伴い、機能性フィルムを短期間に大量に生産する技術の開発が急務となっている。このような要求に応えるため、ロールツーロール技術が開発された。ロールツーロール技術は、ロール状に巻かれた長尺の基体をロール間で搬送させて、連続成膜を可能とすることにより、作業の効率化を図るものである。
【0004】
しかしながら、従来の単純なロールツーロール技術によっては、量産にも限界がある。また、機能性フィルムに要求される層構成は、それら機能性フィルムを適用する装置毎に異なることがあり、更に、機能性フィルムに要求される性能等によっても異なることがあるため、多様な積層体構造を、短時間で、容易に且つ安価に製造できる、柔軟な成膜方法の開発が望まれる。
【0005】
ロールツーロール技術を利用した成膜方法の一例が、特許4415584号(特許文献1)に示されている。この成膜方法では、2つのロール間に1つの回転ドラムを設け、基板を運搬する1つの回転ドラムに対して複数のターゲットによる連続成膜を可能として作業の効率化が図られている。
【0006】
特開2010−236076号(特許文献2)や特開平07−098854号(特許文献3)には、ロールツーロール技術を利用して、両面に成膜を行うことができる成膜方法が示されている。両面成膜を可能とするため、ここでは、2つの回転ドラムとこれらの間に配置された1つの巻き取りロールが用いられ、繰り出しロールから繰り出されたロールに、互いに反対方向に回転中の2つの回転ドラムを通じて成膜を行った後に、巻き取りロールで巻き取りが行われるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許4415584号
【特許文献2】特開2010−236076号
【特許文献3】特開平07−098854号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これら従来の成膜方法を実施する装置では、ターゲットが回転ドラムに対して所定の距離を隔てて固定されており、これらカソード電極によって支持されているターゲットにメンテナンスを行うために成膜作業を中断する必要があり、この結果、作業の効率が悪化するという問題があった。
【0009】
また、特許文献2や特許文献3の成膜方法によっては、せいぜい、両面或いは片面に膜を製造することができるだけであり、これ以外の多様な積層体構造の製造には対応できず、種々の積層体を製造するために、その都度異なる製造ラインを設けることが必要とされ、コストの増大を招いていた。
【0010】
更に、これらの従来の成膜方法では、成膜が行われた後に、加熱処理が十分に行われないおそれもあり、この結果、成膜された膜材料が完全に結晶化されないおそれといった問題も生じていた。
【0011】
本発明は、これら従来技術における問題点を解決するためになされたものであり、ロールツーロール技術において、例えば、メンテナンスが必要なカソード電極を成膜室から取り除くことができるようにして、成膜作業の効率化を図った成膜方法を提供し、また、例えば、二重成膜及び表裏面の成膜に同時に対応可能な成膜方法を提供して、作業の効率化、或いは、改善を図った成膜方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成する本発明は、長尺の基体に連続的に真空成膜を行う方法であって、a)ロール状に巻かれた長尺の第1基体を第1ロール室から第2ロール室へ向う第1の方向に前記第1ロール室から繰り出す段階、b)前記第1の方向に繰り出された前記第1基体を脱ガスする段階、c)前記脱ガスされた前記第1基体に第2成膜室の第2カソード電極によって支持されたターゲットを用いて第2の膜材料を成膜する段階、d)前記第2の膜材料が成膜された前記第1基体を前記第2ロール室で巻取ることにより前記第2の膜材料が成膜された第1基体を生成する段階、更に、a’)ロール状に巻かれた長尺の、前記第1基体とは異なる第2基体を前記第2ロール室から前記第1ロール室へ向う第2の方向に前記第2ロール室から繰り出す段階、b’)前記第2の方向に繰り出された前記第2基体を脱ガスする段階、c’)前記脱ガスされた前記第2基体に前記第1成膜室の第1カソード電極によって支持されたターゲットを用いて第1の膜材料を成膜する段階、d’)前記第1の膜材料が成膜された前記第2基体を前記第1ロール室で巻取ることにより前記第1の膜材料が成膜された第2基体を生成する段階、を備え、前記第2の膜材料が成膜された第1基体を生成するにあたり、前記第1成膜室の第1カソード電極が前記第1成膜室から取り除かれ、また、前記第1の膜材料が成膜された第2基体を生成するにあたり、前記第2成膜室の第2カソード電極が前記第2成膜室から取り除かれる、ことを特徴とする成膜方法を提供する。この構成によれば、第1及び第2の成膜室の一方では、膜材料のターゲットのメンテナンス作業を行い、第1及び第2の成膜室の他方では、継続して成膜作業を行うことができるため、生産効率を上げることができる。
【0013】
上記成膜方法において、前記第1ロール室から繰り出された後であって前記第2の膜材料が成膜される前に、前記第1基体にプラズマ処理を行ってもよいし、また、前記第2ロール室から繰り出された後であって前記第1の膜材料が成膜される前に、前記第2基体にプラズマ処理を行ってもよい。これにより、プラズマ処理の強化を図ることができる。
【0014】
また、上記成膜方法において、前記第1ロール室から繰り出された後であって前記第1成膜室で脱ガスされる前に、前記第1基体を脱ガスしてもよいし、また、前記第2ロール室から繰り出された後であって前記第2成膜室で脱ガスされる前に、前記第2基体を脱ガスしてもよい。これにより、脱ガス処理の強化を図ることができる。
【0015】
更に、上記成膜方法において、前記第1の膜材料が成膜された後であって前記第1ロール室で巻取られる前に、前記第2基体をアニールしてもよいし、また、前記第2の膜材料が成膜された後であって前記第2ロール室で巻取られる前に、前記第1基体をアニールしてもよい。これにより、アニール処理の強化を図ることができる。
【0016】
尚、前記第1の膜材料と前記第2の膜材料が透明導電膜であってもよい。
また、上記目的を達成する本発明は、長尺の基体に連続的に真空成膜を行う方法であって、a)ロール状に巻かれた長尺の基体を第1ロール室から第2ロール室へ向う第1の方向に前記第1ロール室から繰り出す段階、b)前記第1の方向に繰り出された前記基体を脱ガスする段階、c)前記脱ガスされた前記基体の面に第2成膜室において第2の膜材料を成膜する段階、d)前記第2の膜材料が成膜された前記基体を前記第2ロール室で巻取る段階、e)前記第2ロール室で巻き取った前記基体を前記第2ロール室から前記第1ロール室へ向う第2の方向に前記第2ロール室から繰り出す段階、f)前記第2の方向に繰り出された前記基体の前記面に第1成膜室において第1の膜材料を成膜する段階、g)前記第2の膜材料の上に前記第1の膜材料が積層された前記基体を前記第1ロール室で巻取る段階、を備え、前記第1の方向に繰り出された前記基体の前記面に第2成膜室において第2の膜材料を成膜するにあたり、前記第1の膜材料のターゲットを支持する前記第1成膜室の第1カソード電極が前記第1成膜室から取り除かれ、また、前記第2の方向に繰り出された前記基体の前記面に第1成膜室において第1の膜材料を成膜するにあたり、前記第2の膜材料のターゲットを支持する前記第2成膜室の第2カソード電極が前記第2成膜室から取り除かれることを特徴とする成膜方法を提供する。この構成によれば、第1及び第2の成膜室の一方では、膜材料のターゲットのメンテナンス作業を行い、第1及び第2の成膜室の他方では、継続して成膜作業を行うことができるため、生産効率を上げることができる。更に、この構成によれば、第1ロール室から前記第2ロール室に前記基体を送る第1のパスの間に第2の膜材料を成膜し、第2ロール室から第1ロール室に前記基体を送る戻りの第2のパスの間に第1の膜材料を成膜することができるため、基体を第1ロール室と第2ロール室の間で往復させることによって、第2の膜材料と第1の膜材料がこの順に積層された積層体をロールツーロール方式で連続的に製造することができる。
更に、上記目的を達成する本発明は、長尺の基体に連続的に真空成膜を行う方法であって、a)ロール状に巻かれた長尺の基体を第1ロール室から第2ロール室へ向う第1の方向に前記第1ロール室から繰り出す段階、b)前記第1の方向に繰り出された前記基体を脱ガスする段階、c−1)第1搬送経路では、前記脱ガスされた前記基体を前記第1の方向で第2成膜室へ案内し、前記第1の方向に案内中の前記基体の第1の面に第2成膜室において第2の膜材料を成膜し、前記第2の膜材料が成膜された前記基体を前記第2ロール室で巻き取り、前記第2ロール室で巻き取った前記基体を前記第2ロール室から前記第1ロール室へ向う第2の方向に前記第2ロール室から繰り出し、前記第2の方向に繰り出された前記基体の前記第1の面に成膜された第2の膜材料の上に第1成膜室において第1の膜材料を成膜し、前記第2の膜材料の上に前記第1の膜材料が積層された前記基体を前記第1ロール室で巻取る段階を有し、c−2)第2搬送経路では、前記脱ガスされた前記基体を前記第1の方向で前記第1成膜室へ案内し、前記第1の方向に案内中の前記基体の前記第1の面に前記第1成膜室において第3の膜材料を成膜し、前記第3の膜材料が成膜された前記基体を、前記第2の方向で前記第2成膜室へ案内し、前記第2の方向に案内中の前記基体の前記第1の面とは反対側の第2の面に前記第2成膜室において第4の膜材料を成膜し、前記第1の面に前記第3の膜材料が成膜され且つ前記第2の面に前記第4の膜材料が成膜された前記基体を第3ロール室で巻取る段階を有し、前記第1搬送経路において、前記第1の方向に繰り出された前記第1基体の前記第1面に第2成膜室において第2の膜材料を成膜するにあたり、前記第1の膜材料のターゲットを支持する前記第1成膜室の第1カソード電極が前記第1成膜室から取り除かれ、また、前記第1搬送経路において、前記第2の方向に繰り出された前記第1基体の前記第1面に第1成膜室において第1の膜材料を成膜するにあたり、前記第2の膜材料のターゲットを支持する前記第2成膜室の第2カソード電極が前記第2成膜室から取り除かれることを特徴とする成膜方法を提供する。この構成によれば、第1及び第2の成膜室の一方では、膜材料のターゲットのメンテナンス作業を行い、第1及び第2の成膜室の他方では、継続して成膜作業を行うことができるため、生産効率を上げることができる。更に、この構成によれば、第1搬送経路では、基体を第1ロール室と第2ロール室の間で往復させることにより、第1の方向に案内中は第1の面に第2の膜材料を成膜し、第2の方向に案内中は第1の面に第1の膜材料を成膜して、基体の上に第2の膜材料と第1の膜材料がこの順に積層された積層体をロールツーロール方式で連続的に製造することができ、一方、第2搬送経路では、第1の方向に案内中は第1の面に第3の膜材料を成膜し、第2の方向に案内中は第2の面に第4の膜材料を成膜して、前記基体の前記第1の面に前記第3の膜材料が前記第2の面に前記第4の膜材料がそれぞれ成膜された積層体をロールツーロール方式で連続的に製造することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ロールツーロール技術を用いつつ、成膜の効率化、或いは、その改善を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による成膜方法を実施することができる成膜装置の一例を示す図である。
【図2】本発明の成膜方法の下で可能なカソード電極の配置を示す図である。
【図3】本発明による成膜方法によって製造される積層体の構成例を示す図である。
【図4】本発明による成膜方法を実施することができる他の成膜装置の一例を示す図である。
【図5】本発明による成膜方法によって製造される積層体の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
添付図面を参照しつつ、本発明の一つの好適な実施形態について以下に説明する。
図1に、本発明による第1の成膜方法と第2の成膜方法を実施することができる成膜装置1の一例を示す。この成膜装置1には、例えば、ロール状に巻かれた長尺の基体10を収容することができる第1ロール室W1及び第2ロール室W2と、これら第1ロール室W1と第2ロール室W2の間に設けた第1成膜室41及び第2成膜室42、第1ロール室W1と第1成膜室41の間に設けた加熱室31、更に、第1加熱室31と第1成膜室41の間に設けたプラズマ処理装置40が含まれる。
【0020】
真空成膜方法として、真空蒸着法、スパッタリング法、化学気相成長法(CVD)等が知られている。本装置1は、これらいずれの方法にも適用することができる。取り分け、スパッタリング法によれば、大面積の均一スパッタリングが可能であり、また、連続生産性が高く、安定性が良好で、緻密な薄膜形成が可能である。また、スパッタリング法の中でも、特に、DCマグネトロンスパッタ法によれば、ターゲット表面に磁場を形成し、電子を閉じ込めることで、基体の損傷を抑えることができる。
【0021】
真空状態を効果的に保つため、本装置1の各室と室の間には仕切り14が設けられている。また、各仕切り14には、基体10を通過させる隙間13が設けられている。
【0022】
本方法で使用される基体10は、例えば、PETフィルム等の各種の樹脂フィルム、アルミニウムシート等の各種金属シートといった、成膜可能な材質から成っていればよく、その材質は特に限定されない。但し、基体10は、全体として長尺状であって、可撓性を有し、ロール状に巻回可能なものとする。成膜の際、基体10は、複数配列された案内ロール29等を利用して、第1ロール室W1や第2ロール室W2の間、場合によっては、その他のロール室の間を、第1ロール室W1から第2ロール室W2へ向う第1の方向Aや第2ロール室W2から第1ロール室W1へ向う第2の方向Bに、ロールツーロール方式で搬送される。
【0023】
基体10をロール状に巻回するため、第1ロール室W1には第1繰出・巻取ロール21が、第2ロール室W2には第2巻取・繰出ロール22が、それぞれ設けられている。基体10を第1の方向Aに搬送させる際、第1繰出・巻取ロール21は繰り出しを、第2繰出・巻取ロール22は巻き取りを行う。一方、基体10を第2の方向Bに搬送させる際、第2繰出・巻取ロール22は繰り出しを、第1繰出・巻取ロール21は巻き取りを行う。
【0024】
加熱室31は、基体10を加熱するために使用する。加熱室を設ける位置は特に限定されないが、以下に説明するように、それを設ける位置や装置の使用態様によって、得られる効果は相違する。
【0025】
例えば、図1に示すように、加熱室31を、第1ロール室W1と第1成膜室41の間に設けた場合、基体10は、第1成膜室41における成膜前に、加熱室31によって加熱される。真空処理時等には、基体10から水分が生ずることがあるが、この水分は成膜される膜の組成に大きな影響を与えてしまう。上記の位置に加熱室31を設けることにより、成膜前に基体10を脱ガスして、水分を除去して、影響を低減させることができる。
【0026】
また、特に図示しないが、加熱室を、例えば、第2成膜室42と第2ロール室W2の間に設けてもよい。このような位置に加熱室を設けることにより、第2成膜室42において基体10を成膜した後に、基体10を加熱することが可能となり、これによって、基体10に成膜した膜材料をアニールし、膜の原子配列を規則的に並んだ結晶粒とすることができる。
【0027】
更に、必要に応じて、例えば、第1成膜室41と第2成膜室42の間等に加熱室を設けてもよい。但し、加熱室は必ずしも必要なものではなく、例えば、成膜室における加熱機能を利用することによって、加熱室を設けることなく同様の効果を得ることもできる。
【0028】
プラズマ処理装置は、基体10をプラズマ処理するために使用する。プラズマ処理を施すことにより、基体10の表面を活性化し、また、クリーニングすることができ、これによって、成膜をより効果的に行うことできる。加熱室同様、プラズマ処理装置を設ける位置は特に限定されない。
【0029】
例えば、図1の例では、プラズマ処理装置40を、第1加熱室31と第1成膜室41の間に設けている。上記の位置にプラズマ処理装置を設けることにより、第1の成膜室41における成膜前に基体10にプラズマ処理を行うことができる。更に、必要に応じて、例えば、第1成膜室41と第2成膜室42の間に加熱室を設けることもできる。尚、プラズマ処理装置は必ずしも必要なものではなく、また、後述する成膜室の回転ドラムによる加熱機能等を利用して省略することもできる。
【0030】
成膜装置1は、第1ロール室W1と第2ロール室W2の間に、少なくとも2つ、ここでは、第1成膜室41と第2成膜室42を有する。成膜室は少なくとも2つ設けられていれば足りるが、追加の成膜室を設けてもよい。追加の成膜室を設ける位置は、第1ロール室W1と第2ロール室W2の間であれば、特に限定されるものではなく、例えば、加熱室31と第1成膜室41の間に設けてもよい。更に、これらの成膜室で成膜される膜材料も特に限定されず、例えば、銅や銅合金、或いは、銀又は銀合金のような金属や透明導電膜であってもよい。銀合金としては、例えば、銀(Ag)にパラジウム(Pd)と銅(Cu)を加えたAPC(Ag−Pd−Cu)と呼ばれる合金であってもよい。この場合、銀は、APCの主成分として90原子%以上含有されていてもよい。
【0031】
第1成膜室41は、第1回転ドラム51と第1カソード電極61を備える。第1回転ドラム51は、基体10を第1の方向A或いは第2の方向Bに運搬するように回転自在とされており、基体10は、それらの周囲を経て、第1の方向Aや第2の方向Bに搬送される。更に、第1回転ドラム51は、基体10を加熱する機能を有していてもよい。第1回転ドラム10の加熱機能によって得られる効果は、加熱室と同様と考えてよい。この結果、第1回転ドラム51によって加熱室の加熱機能を代替することもできるし、逆に、加熱室の加熱機能によって第1回転ドラム51における加熱機能を代替することもできる。
【0032】
第1カソード電極61は、第1回転ドラム51に対して複数設けられる。これら複数の第1カソード電極61は各々、所定の膜材料を成膜するためのターゲットを支持した状態で、第1回転ドラム51に対向して可動状態で配置され得る。成膜すべき膜材料は、装置の使用態様によって自由に変更できる。例えば、基体10が、第1回転ドラム51の周囲を第1の方向に通されているときは第1の膜材料、又は、第3の膜材料等としてもよい。これら第1の膜材料と第3の膜材料は、装置の使用態様に応じて自由に変更することができる。この第1カソード電極61を利用して、基体10が第1回転ドラム51の周囲を通される間に、基体10に第1の膜材料や第3の膜材料等、所定の膜材料が成膜されことになる。
【0033】
第2成膜室42は、第1成膜室41と同一又は類似の構成及び機能を有し、少なくとも、第2回転ドラム52と第2カソード電極62を備える。第2回転ドラム52は、その周囲を経て、基体10を第1の方向A及び第2の方向Bに連続的に搬送させることができ、また、基体10を加熱することもできる。第2回転ドラム52の周囲には、複数の第2カソード電極62が、第2回転ドラム52に対向して配置されており、第2カソード電極62における膜材料は、例えば、基体10が第2回転ドラム52の周囲を第1の方向に通されているときは、第2の膜材料、基体10が第2回転ドラム52の周囲を第2の方向に通されているときは、第4の膜材料等としてもよい。これら第2の膜材料と第4の膜材料は、装置の使用態様に応じて自由に変更することができる。第2カソード電極62を利用して、基体10が第2回転ドラム52の周囲を通される間に、基体10には、所定の膜材料が成膜されることになる。
【0034】
尚、第1回転ドラム51や第2回転ドラム52における加熱処理と成膜処理は、互いに独立した機能であって、例えば、第1成膜室41では加熱処理のみを行い、第2成膜室42では成膜処理のみを行うこともできる。また、加熱処理が十分に行われるように、第1回転ドラム51や第2回転ドラム52の径を比較的大きく設定して、搬送時間を長くしてもよい。
【0035】
図1とともに図2を参照して、成膜装置1を利用した、本発明による第1の成膜方法を説明する。図2は、第1の成膜方法の下で可能な、カソード電極の配置を示す図である。この第1の成膜方法によれば、第1ロール室W1から第2ロール室W2へ向う第1の方向Aにおいて、第2の膜材料が成膜された基体(便宜上、ここでは「第1基体」と呼ぶ)を製造し、更に、第2ロール室W2から第1ロール室W1へ向う第2の方向Bにおいて、第1の膜材料が成膜された基体(便宜上、ここでは「第2基体」と呼ぶ)を製造することができる。
【0036】
図1に示すように、先ず、第1基体が、第1の方向Aに第1ロール室W1から繰り出される。繰り出された第1基体は、第1加熱室31や第1成膜室41の第1回転ドラム51の加熱機能を用いて脱ガスされる。更に、脱ガスされた第1基体に、第2成膜室42の第2カソード電極62を用いて第2の膜材料が成膜され、その後、第2ロール室W2で巻取りが行われる。更に、第1基体とは異なる第2基体が、第2の方向Bに第2ロール室W2から繰り出される。繰り出された第2基体は、第2成膜室42において脱ガスされ、更に、脱ガスされた第2基体に、第1成膜室41の第1カソード電極61を用いて第1の膜材料が成膜され、その後、第1ロール室W1で巻取りが行われる。
【0037】
図2の(a)は、第1の方向Aにて第1基体が成膜される際に可能な、第1成膜室41の第1カソード電極61及び第2成膜室42の第2カソード電極62の配置の状態を、図2の(b)は、第2の方向Bにて第2基体が成膜される際に可能な、第1成膜室41の第1カソード電極61及び第2成膜室42の第2カソード電極62の配置の状態を、それぞれ、概略平面図で示した図である。
【0038】
この第1の成膜方法の下では、例えば、第2の膜材料が成膜された第1基体を生成する際、第1成膜室41では、第1成膜室41の第1回転ドラム51による加熱処理(脱ガス)が行われれば十分であって、第1カソード電極61を用いた成膜処理は行う必要がないから、図2の(a)に示すように、第1成膜室41の第1カソード電極61を、第1カソード電極61を支持する本体60を移動させること等により、第1成膜室41から取り除いた状態で脱ガス等を行うことができる。この結果、第1成膜室41から取り除いた第1カソード電極61に対しては、交換等のメンテナンスを行うことができ、このようなメンテナンス作業中にも、第2成膜室42において、成膜を継続的に行うことができる。尚、第1成膜室41から第1カソード電極61を取り除くことによって第1成膜室41に生じた開口は、必要であれば、仮蓋等を利用して閉じることができる。
【0039】
同様に、この第1の成膜方法の下では、例えば、第1の膜材料が成膜された第2基体を生成する際、第2成膜室42では、第2成膜室42の第2回転ドラム52による加熱処理(脱ガス)が行われれば十分であって、第2カソード電極62を用いた成膜処理は行う必要がないから、図2の(b)に示すように、第2成膜室42の第2カソード電極62を第2成膜室42から取り除いた状態で脱ガス等を行うことができる。この結果、第2成膜室42から取り除いた第2カソード電極62に対しては、交換等のメンテナンスを行うことができ、このようなメンテナンス作業中にも、第1成膜室41において、成膜を継続的に行うことができる。尚、上に説明したように、第2成膜室42から第2カソード電極62を取り除くことによって第2成膜室42に生じた開口は、必要であれば、仮蓋等を利用して閉じることができる。
【0040】
このように、第1の成膜方法によれば、第1成膜室41又は第2成膜室42の一方で第1カソード電極61又は第2カソード電極62のメンテナンス作業を行い、第1成膜室41又は第2成膜室42の他方で継続して成膜作業を行うことができるため、基体の生産効率を高めることができる。
【0041】
尚、この第1の成膜方法において、例えば、第1加熱室31と第1成膜室41の間に設けたプラズマ処理装置40や、第1成膜室41と第2成膜室42の間に設けたプラズマ処理装置(図示されていない)を用いて、第1ロール室W1から繰り出された後であって第2成膜室42において第2の膜材料が成膜される前に、第1基体にプラズマ処理を行うこともできる。また、例えば、第2ロール室W2と第2成膜室42の間に設けたプラズマ処理装置(図示されていない)や、第2成膜室42と第1成膜室41の間に設けたプラズマ処理装置(図示されていない)を用いて、第2ロール室W2から繰り出された後であって第1成膜室41において第1の膜材料が成膜される前に、第2基体にプラズマ処理を行うこともできる。プラズマ処理を施すことにより、成膜をより効果的に行うことできる。
【0042】
また、例えば、第1ロール室W1と第1成膜室41の間に設けた加熱室31を用いて、第1ロール室W1から繰り出された後であって第1成膜室41の加熱機能(51)によって脱ガスされる前に、第1基体を脱ガスすることもできる。また、例えば、第2ロール室W2と第2成膜室42の間に設けた加熱室(図示されていない)を用いて、第2ロール室W2から繰り出された後であって第2成膜室42の加熱機能(52)によって脱ガスされる前に、第2基体を脱ガスすることもできる。
【0043】
更に、例えば、第1成膜室41と第1ロール室W1の間に設けた加熱室31を用いて、第1の膜材料が成膜された後であって第1ロール室W1で巻取られる前に、第2基体をアニールすることもできる。また、例えば、第2成膜室42と第2ロール室W2の間に設けた加熱室(図示されていない)を用いて、第2の膜材料が成膜された後であって第2ロール室W2で巻取られる前に、第1基体をアニールすることもできる。
【0044】
再び図1を参照して、上記の成膜装置1を用いた本発明による第2の成膜方法を説明する。
【0045】
第2の成膜方法では、先ず、第1ロール室W1から第2ロール室W2に基体10を送る第1のパスの間に、第1の方向Aにおいて基体10が第1ロール室W1から繰り出され、繰り出された基体10は第1加熱室31や第1成膜室41の第1回転ドラム51の加熱機能を用いて脱ガスされる。更に、脱ガスされた基体10の面に、第2成膜室42の第2カソード電極62を用いて、第2の膜材料が成膜され、その後、第2の膜材料が成膜された基体10は第2ロール室W2で一旦巻取られる。続く、第2ロール室W2から第1ロール室W1に基体10を送る戻りの第2のパスの間に、第2の方向Bにおいて基体10が第2ロール室W2から繰り出され、繰り出された基体10の面に第1成膜室41の第1カソード電極61を用いて、第1の膜材料が成膜され、最後に、第2の膜材料の上に第1の膜材料が積層された基体10は第1ロール室W1で巻取られる。
【0046】
明らかなように、この第2の成膜方法によれば、基体10を第1ロール室W1と第2ロール室W2の間で往復させることによって、第2の膜材料と第1の膜材料がこの順に積層された1つの積層体をロールツーロール方式で連続的に製造することができる。図3に、この第2の成膜方法によって製造される積層体の構成例を示している。積層体は、基体10の上に第2の膜材料10−2と第1の膜材料10−1をこの順に有する。例えば、第1の膜材料10−1として、銅(Cu)又は銅合金、或いは、銀(Ag)又は銀合金(APC等)のような金属を用い、第2の膜材料10−2として、非晶質又は結晶ITOのような透明導電膜を用いてもよい。但し、これらの膜材料は特に限定されるものではない。
【0047】
尚、この第2の成膜方法において、例えば、第1加熱室31と第1成膜室41の間に設けたプラズマ処理装置40や、第1成膜室41と第2成膜室42の間に設けたプラズマ処理装置(図示されていない)を用いて、第1ロール室W1から繰り出された後であって第2成膜室42において第2の膜材料が成膜される前に、基体10にプラズマ処理を行うこともできる。また、例えば、第2ロール室W2と第2成膜室42の間に設けたプラズマ処理装置(図示されていない)や、第2成膜室42と第1成膜室41の間に設けたプラズマ処理装置(図示されていない)を用いて、第2ロール室W2から繰り出された後であって第1成膜室41において第1の膜材料が成膜される前に、基体10にプラズマ処理を行うこともできる。
【0048】
また、例えば、第1ロール室W1と第1成膜室41の間に設けた加熱室31や、第1成膜室41と第2成膜室42の間に設けた加熱室(図示されていない)、更に、第1成膜室41の第1回転ドラム51による加熱機能を用いて、第1ロール室W1から繰り出された後であって第2成膜室42において第2の膜材料が成膜される前に、基体10を脱ガスすることもできる。また、例えば、第2ロール室W2と第2成膜室42の間に設けた加熱室(図示されていない)や、第2成膜室42と第1成膜室41の間に設けた加熱室(図示されていない)、第2成膜室42の第2回転ドラム52による加熱機能を用いて、第2ロール室W2から繰り出された後であって第1成膜室41において第1の膜材料が成膜される前に、基体10を脱ガスすることもできる。
【0049】
更に、例えば、第2成膜室42と第2ロール室W2の間に設けた加熱室(図示されていない)を用いて、第2の膜材料が成膜された後であって第2ロール室W2で巻取られる前に、基体10をアニールすることもできる。
【0050】
尚、この第2の成膜方法においても、第1の成膜方法と同様に、例えば、第1のパスにおいて第2の膜材料を成膜する際、第1成膜室41では、第1カソード電極61を用いた成膜処理は行う必要がないことから、第1成膜室41の第1カソード電極61を第1成膜室41から取り除いた状態で脱ガス等を行うことができる。この結果、第1成膜室41から取り除いた第1カソード電極61に対しては、交換等のメンテナンスを行うことができ、このようなメンテナンス作業中にも、第2成膜室42において、成膜を継続的に行うことができる。
【0051】
同様に、例えば、第2のパスにおいて第2の膜材料の上に第1の膜材料を成膜する際、第2成膜室42では、第2カソード電極62を用いた成膜処理は行う必要がないことから、第2成膜室42の第2カソード電極62を第2成膜室42から取り除いた状態で脱ガス等を行うことができる。この結果、第2成膜室42から取り除いた第2カソード電極62に対しては、交換等のメンテナンスを行うことができ、このようなメンテナンス作業中にも、第1成膜室41において、成膜を継続的に行うことができる。
【0052】
図4に、本発明による第3の成膜方法を実施することができる成膜装置の構成例を示す。図4において、図1に示す成膜装置1と同様の部材には、図1と同様の参照番号を付している。尚、この成膜装置2は、主には、第3の成膜方法を実施するための成膜装置であるが、以下の記載からも明らかなように、第3の成膜方法だけでなく、上に説明した第1の成膜方法と第2の成膜方法をも実施することができる。
【0053】
成膜装置2は、図1の成膜装置1に類似する構成を有するが、成膜装置1の構成に加えて、更に、成膜装置2第3ロール室W3と、切替ロール83、83’、及び、これら切替ロール83、83’を利用して形成され得る2種類の案内ロール配列を備える。ここでは、便宜上、切替ロール83が組み込まれた案内ロール配列による基体の搬送経路を第1搬送経路、切替ロール83’が組み込まれた案内ロール配列による基体の搬送経路を第2搬送経路と呼ぶことにする。
【0054】
基体10が第1ロール室W1から繰り出され、第1の方向で搬送されているとき、基体10は、第1搬送経路と第2搬送経路において、切替ロール83に達するまで同じ経路に沿って移動する。切替ロール83に達した後は、基体10は、第1の搬送経路では、実線で示すように、第2成膜室42を第1の方向Aで通過し、第2の搬送経路では、切替ロール83’で反転させられることにより、破線で示すように、第2成膜室42を第2の方向Bで通過する。
【0055】
以下に、第3の成膜方法をより詳細に説明する。基体10は、先ず、第1の方向Aにおいて第1ロール室W1から繰り出され、その後、第1加熱室31や第1成膜室41の第1回転ドラム51の加熱機能を用いて脱ガスされる。脱ガスされた基体10は、その後、切替ロール83、83’を用いて、第1搬送経路又は第2搬送経路に沿って移動する。
【0056】
第1搬送経路では、脱ガスされた基体10は、第1の方向Aで第2成膜室42へ案内され、案内中の基体10の第1の面に第2成膜室42の第2カソード電極62で、第2の膜材料が成膜され、その後、第2の膜材料が成膜された基体10は第2ロール室W2で一旦巻き取られる。続いて、第2の方向Bにおいて同じ基体10が第2ロール室W2から繰り出され、繰り出された基体10の面に第1成膜室41の第1カソード電極61を用いて、第1の膜材料が成膜され、最後に、第2の膜材料の上に第1の膜材料が積層された基体10が第1ロール室W1で巻取られる。第1搬送経路は、このように、基体10を、上に説明した第2の成膜方法と同じように移動させるものであって、第1ロール室W1と第2ロール室W2の間で基体10を往復させることにより、第1の方向Aに案内中は第1の面に第2の膜材料を成膜し、第2の方向に案内中は第1の面に第1の膜材料を成膜して、基体の上に第2の膜材料と第1の膜材料がこの順に積層された積層体をロールツーロール方式で連続的に製造させることができる。
【0057】
一方、第2搬送経路では、第1加熱室31で脱ガスされた、或いは、第1成膜室41の第1回転ドラム51を用いて脱ガス中の、基体10の第1の面aに、第1成膜室41の第1カソード電極61を用いて、第3の膜材料が成膜され、次いで、第3の膜材料が成膜された基体10は、切替ロール83’を利用して第2の方向Bで第2成膜室42へ案内され、第2の方向に案内中の、基体10の第1の面aとは反対側の第2の面bに、第2成膜室42の第2カソード電極62を用いて、第3の膜材料とは別の第4の膜材料が成膜された後、第3ロール室W3で巻取られる。第2搬送経路では、このように、第1の方向に案内中は第1の面に第3の膜材料が成膜され、第2の方向に案内中は第2の面に第4の膜材料が成膜されるため、表裏面に第3の膜材料と第4の膜材料がそれぞれ別々に形成された積層体をロールツーロール方式で連続的に製造することができる。
【0058】
明らかなように、第1搬送経路を介して得られる積層体は、図3の積層体と同じである。図3の積層体と同様に、例えば、第1の膜材料として、銅(Cu)又は銅合金、或いは、銀(Ag)又は銀合金(APC等)のような金属を用い、第2の膜材料として、非晶質又は結晶ITOのような透明導電膜を用いることもでき、膜材料は特に限定されない。
【0059】
図5に、第2搬送経路を介して得られる積層体の構成例を示す。基体10の第1の面aに第3の膜材料10−3が、第2の面bに第4の膜材料10−4が、それぞれ積層されている。例えば、図示の例のように、第3の膜材料10−3や第4の膜材料10−4として、非晶質又は結晶ITOのような透明導電膜を用いることもできる。但し、膜材料は特に限定されるものではない。
【0060】
尚、この第3の成膜方法において、例えば、第1加熱室31と第1成膜室41の間に設けたプラズマ処理装置40や、第1成膜室41と第3ロール室W3の間、或いは、第3ロール室W3と第2成膜室42の間に設けたプラズマ処理装置(図示されていない)によって、例えば、第1ロール室W1から繰り出された後であって第2の膜材料が成膜される前に、基体10にプラズマ処理を行うこともできる。
【0061】
また、例えば、第2成膜室42と第2ロール室W2の間に設けた加熱室(図示されていない)を用いて、第1ロール室W1から繰り出された後であって第2ロール室W2で巻取られる前に、基体10をアニールすることもできる。
【0062】
尚、この第3の成膜方法においても、第1や第2の成膜方法と同様に、例えば、第1搬送経路において、第2成膜室42で第2の膜材料を成膜する際、第1成膜室41では、第1カソード電極61を用いた成膜処理は行う必要がないことから、第1成膜室41の第1カソード電極61を第1成膜室41から取り除いた状態で脱ガス等を行うことができる。この結果、第1成膜室41から取り除いた第1カソード電極61に対しては、交換等のメンテナンスを行うことができ、このようなメンテナンス作業中にも、第2成膜室42において成膜を継続的に行うことができる。
【0063】
同様に、例えば、第1搬送経路において、第2成膜室42で第2の膜材料を成膜する際、第2成膜室42では、第2カソード電極62を用いた成膜処理は行う必要がないことから、第2成膜室42の第2カソード電極62を第2成膜室42から取り除いた状態で脱ガス等を行うことができる。この結果、第2成膜室42から取り除いた第2カソード電極62に対しては、交換等のメンテナンスを行うことができ、このメンテナンス作業中にも、第1成膜室41において成膜を継続的に行うことができる。
【0064】
尚、成膜室を2つのみ設けた例を説明してきたが、成膜室を3つ以上とした場合にも、同様の効果が得られることは勿論である。また、装置構成の説明でも述べたように、加熱室やプラズマ処理装置を適当な位置に適宜に設けて、本発明の成膜方法に組み込むこともできる。
このように、本願発明は、その技術的思想に包含される種々の変形例を含む。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の方法は、様々な種類の成膜装置に、幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 成膜装置
2 成膜装置
10 基体
29 ガイドロール
31 加熱室
40 プラズマ処理装置
41 第1成膜室
42 第2成膜室
51 第1回転ドラム
52 第2回転ドラム
83 切替ロール
W1 第1ロール室
W2 第2ロール室
W3 第3ロール室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の基体に連続的に真空成膜を行う方法であって、
a) ロール状に巻かれた長尺の第1基体を第1ロール室から第2ロール室へ向う第1の方向に前記第1ロール室から繰り出す段階、
b) 前記第1の方向に繰り出された前記第1基体を脱ガスする段階、
c) 前記脱ガスされた前記第1基体に第2成膜室の第2カソード電極によって支持されたターゲットを用いて第2の膜材料を成膜する段階、
d) 前記第2の膜材料が成膜された前記第1基体を前記第2ロール室で巻取ることにより前記第2の膜材料が成膜された第1基体を生成する段階、
更に、
a’) ロール状に巻かれた長尺の、前記第1基体とは異なる第2基体を前記第2ロール室から前記第1ロール室へ向う第2の方向に前記第2ロール室から繰り出す段階、
b’) 前記第2の方向に繰り出された前記第2基体を脱ガスする段階、
c’) 前記脱ガスされた前記第2基体に前記第1成膜室の第1カソード電極によって支持されたターゲットを用いて第1の膜材料を成膜する段階、
d’) 前記第1の膜材料が成膜された前記第2基体を前記第1ロール室で巻取ることにより前記第1の膜材料が成膜された第2基体を生成する段階、
を備え、
前記第2の膜材料が成膜された第1基体を生成するにあたり、前記第1成膜室の第1カソード電極が前記第1成膜室から取り除かれ、
また、
前記第1の膜材料が成膜された第2基体を生成するにあたり、前記第2成膜室の第2カソード電極が前記第2成膜室から取り除かれる、
ことを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
前記第1ロール室から繰り出された後であって前記第2の膜材料が成膜される前に、前記第1基体にプラズマ処理を行う請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記第2ロール室から繰り出された後であって前記第1の膜材料が成膜される前に、前記第2基体にプラズマ処理を行う請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記第1ロール室から繰り出された後であって前記第1成膜室で脱ガスされる前に、前記第1基体を脱ガスする請求項1乃至3のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項5】
前記第2ロール室から繰り出された後であって前記第2成膜室で脱ガスされる前に、前記第2基体を脱ガスする請求項1乃至4のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項6】
前記第1の膜材料が成膜された後であって前記第1ロール室で巻取られる前に、前記第2基体をアニールする請求項1乃至5のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項7】
前記第2の膜材料が成膜された後であって前記第2ロール室で巻取られる前に、前記第1基体をアニールする請求項1乃至6のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項8】
前記第1の膜材料と前記第2の膜材料が透明導電膜である請求項1乃至7のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項9】
長尺の基体に連続的に真空成膜を行う方法であって、
a) ロール状に巻かれた長尺の基体を第1ロール室から第2ロール室へ向う第1の方向に前記第1ロール室から繰り出す段階、
b) 前記第1の方向に繰り出された前記基体を脱ガスする段階、
c) 前記脱ガスされた前記基体の面に第2成膜室において第2の膜材料を成膜する段階、
d) 前記第2の膜材料が成膜された前記基体を前記第2ロール室で巻取る段階、
e) 前記第2ロール室で巻き取った前記基体を前記第2ロール室から前記第1ロール室へ向う第2の方向に前記第2ロール室から繰り出す段階、
f) 前記第2の方向に繰り出された前記基体の前記面に第1成膜室において第1の膜材料を成膜する段階、
g) 前記第2の膜材料の上に前記第1の膜材料が積層された前記基体を前記第1ロール室で巻取る段階、
を備え、
前記第1の方向に繰り出された前記基体の前記面に第2成膜室において第2の膜材料を成膜するにあたり、前記第1の膜材料のターゲットを支持する前記第1成膜室の第1カソード電極が前記第1成膜室から取り除かれ、
また、
前記第2の方向に繰り出された前記基体の前記面に第1成膜室において第1の膜材料を成膜するにあたり、前記第2の膜材料のターゲットを支持する前記第2成膜室の第2カソード電極が前記第2成膜室から取り除かれることを特徴とする成膜方法。
【請求項10】
長尺の基体に連続的に真空成膜を行う方法であって、
a) ロール状に巻かれた長尺の基体を第1ロール室から第2ロール室へ向う第1の方向に前記第1ロール室から繰り出す段階、
b) 前記第1の方向に繰り出された前記基体を脱ガスする段階、
c−1) 第1搬送経路では、
前記脱ガスされた前記基体を前記第1の方向で第2成膜室へ案内し、
前記第1の方向に案内中の前記基体の第1の面に第2成膜室において第2の膜材料を成膜し、
前記第2の膜材料が成膜された前記基体を前記第2ロール室で巻き取り、
前記第2ロール室で巻き取った前記基体を前記第2ロール室から前記第1ロール室へ向う第2の方向に前記第2ロール室から繰り出し、
前記第2の方向に繰り出された前記基体の前記第1の面に成膜された第2の膜材料の上に第1成膜室において第1の膜材料を成膜し、
前記第2の膜材料の上に前記第1の膜材料が積層された前記基体を前記第1ロール室で巻取る段階を有し、
c−2) 第2搬送経路では、
前記脱ガスされた前記基体を前記第1の方向で前記第1成膜室へ案内し、
前記第1の方向に案内中の前記基体の前記第1の面に前記第1成膜室において第3の膜材料を成膜し、
前記第3の膜材料が成膜された前記基体を、前記第2の方向で前記第2成膜室へ案内し、
前記第2の方向に案内中の前記基体の前記第1の面とは反対側の第2の面に前記第2成膜室において第4の膜材料を成膜し、
前記第1の面に前記第3の膜材料が成膜され且つ前記第2の面に前記第4の膜材料が成膜された前記基体を第3ロール室で巻取る段階を有し、
前記第1搬送経路において、前記第1の方向に繰り出された前記第1基体の前記第1面に第2成膜室において第2の膜材料を成膜するにあたり、前記第1の膜材料のターゲットを支持する前記第1成膜室の第1カソード電極が前記第1成膜室から取り除かれ、
また、
前記第1搬送経路において、前記第2の方向に繰り出された前記第1基体の前記第1面に第1成膜室において第1の膜材料を成膜するにあたり、前記第2の膜材料のターゲットを支持する前記第2成膜室の第2カソード電極が前記第2成膜室から取り除かれることを特徴とする成膜方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−237058(P2012−237058A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−68802(P2012−68802)
【出願日】平成24年3月26日(2012.3.26)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】