説明

知覚過敏型肌掻痒感改善剤

【課題】知覚過敏型肌の掻痒感を改善する外用剤の提供
【解決手段】局所麻酔剤(リドカイン等)、尿素、清涼化剤(メントール、カンフル等)、アルコール類(エタノール、無水エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、セトステアリルアルコール等)及び水を含有する知覚過敏型肌掻痒感改善用の皮膚外用剤。
【効果】知覚過敏型肌のかゆみを素早く他の感覚(清涼感、灼熱感)に置換し、かゆみを抑制し、これらの置換、抑制作用が持続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、知覚過敏型肌の掻痒感の改善作用を有する皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の掻痒感(かゆみ)は耐え難く、不快な症状である。その原因は、敏感肌、アトピー性皮膚炎、虫さされによる炎症など多種多様である。さらに、敏感肌は、表皮バリアが崩壊したタイプ(例えば乾燥肌)、炎症タイプ、知覚過敏タイプに分類される。知覚過敏タイプ以外は皮膚表面に何らかの器質的障害を伴うので、投与する薬剤の性質、剤型などに注意を要する。一方で、知覚過敏タイプは皮膚の性状は健常であるものの、かゆみ知覚神経が過敏であるために掻痒感を感じる症状である。
【0003】
これら多様なかゆみ症状を改善するため、抗炎症成分を配合した外用剤や保湿成分を配合した外用剤、活性剤フリーの低刺激性外用剤などの種々の外用剤が開発されており、また、とりわけ乾燥肌などに対する製剤の技術が多く見受けられるが(特許文献1参照)、知覚過敏型の掻痒感の改善を目的としたものは本発明者の知る限りにおいて知られていなかった。特に、知覚過敏型の掻痒感の場合、皮膚表面は健常であるため、薬剤の浸透性が低く、掻痒感の改善とその改善効果の持続が困難であった。
【特許文献1】特開2005−263660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、知覚過敏型肌のかゆみを素早く他の感覚(清涼感、灼熱感)に置換し、かゆみを抑制し、これらの置換作用、抑制作用が持続する外用剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記従来技術の問題点に鑑み鋭意検討を重ねた結果、局所麻酔剤、尿素、清涼化剤、アルコール類及び水を含有させた外用剤が、知覚過敏型肌のかゆみを素早く清涼感や灼熱感に置き換えてかゆみを抑制し、さらにそのかゆみ抑制作用が持続する製剤となることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は下記の知覚過敏型肌掻痒感改善剤に係るものである。
項1.局所麻酔剤、尿素、清涼化剤、アルコール類及び水を含有する知覚過敏型肌掻痒感改善剤。
項2.アルコール類が低級アルコール、多価アルコール類及び高級アルコールからなる群から選択される1種又は2種以上である項1に記載の知覚過敏型肌掻痒感改善剤。
項3.低級アルコールが無水エタノール、エタノール、メタノール及びイソプロパノールからなる群から選択される1種又は2種以上である項2に記載の知覚過敏型肌掻痒感改善剤。
項4.多価アルコール類が多価アルコール、多価アルコールのアルキルエーテル、多価アルコールのアルキルエステル、糖アルコール、フルフリルアルコール及びポリグリセリンからなる群から選択される1種又は2種以上である項2に記載の知覚過敏型肌掻痒感改善剤。
項5.局所麻酔剤がリドカイン、ジブカイン、プロカイン又はこれらの塩、アミノ安息香酸エチル及びテシットデシチンからなる群から選択される1種又は2種以上である項1〜4のいずれかに記載の知覚過敏型肌掻痒感改善剤。
項6.清涼化剤がl−メントール、dl−メントール、d−カンフル、dl−カンフル、薄荷油及び樟脳油からなる群から選択される1種又は2種以上である項1〜5のいずれかに記載の知覚過敏型肌掻痒感改善剤。
項7.ゲル剤である項1〜6のいずれかに記載の知覚過敏型肌掻痒感改善剤。
【0007】
本発明において、知覚過敏型肌掻痒感とは、皮膚表面の性状異常(例えば虫さされ、乾燥肌、アトピー性皮膚炎など)を伴うかゆみとは異なる。知覚過敏型肌掻痒感は、皮膚がかゆみの原因物質、刺激などの侵食を受けやすい異常な状態(例えば角質バリアが破壊された状態など)ではないにも関わらず、軽度な刺激(例えば布帛製品等による繊維刺激など)によってさえ、反応し生じるものである。知覚過敏型肌掻痒感は、その特性ゆえ、皮膚性状を正常に戻すためのアプローチ(例えば保湿)では掻痒感の改善効果が低い。さらに、知覚過敏型肌において角質バリアなどの機能は正常であることから、外用剤に含まれる薬剤の影響を受けがたい。本発明の知覚過敏型肌掻痒感改善剤は、上記の特性のかゆみを改善するためのものである。
【0008】
本発明の知覚過敏型肌掻痒感改善剤は、局所麻酔剤、尿素、清涼化剤、アルコール類及び水を含有することを特徴とし、知覚過敏型肌のかゆみを素早く他の感覚(清涼感、灼熱感)に置き換えることができ、さらにかゆみを抑制し、これらの置換作用、抑制作用が持続する、掻痒感の改善に優れたものである。
【0009】
本発明において、局所麻酔剤は通常0.3〜5重量%、好ましくは0.5〜4重量%含有され、外用剤の分野で利用されうるものを特に制限なく使用できる。局所麻酔剤は1種のみ含有されていても2種以上含有されていてもよい。局所麻酔剤の例としては、リドカイン、ジブカイン、プロカイン、テトラカイン、ブピパカイン、メピパカイン、クロロプロカイン、プロパラカイン、メプリルカイン又はこれらの塩、安息香酸アルキルエステル(例えばアミノ安息香酸エチル、塩酸パラブチルアミノ安息香酸ジエチルアミノエチル)、オルソカイン、オキセサゼイン、オキシポリエントキシデカン、ロートエキス、ペルカミンパーゼ、テシットデシチンなどが挙げられる。上記の塩としては、塩酸塩などが挙げられる。好ましい局所麻酔剤は、リドカイン、ジブカイン、プロカイン又はこれらの塩、アミノ安息香酸エチル、テシットデシチンであり、より好ましい局所麻酔剤はリドカイン、ジブカイン、プロカイン又はこれらの塩、アミノ安息香酸エチルである。
【0010】
本発明において、尿素は通常3〜20重量%、好ましくは5〜20重量%含有され、外用剤の分野で利用されうるものを特に制限なく使用できる。
【0011】
本発明において、清涼化剤は通常1〜11重量%、好ましくは3〜7重量%含有され、外用剤の分野で利用されうるものを特に制限なく使用できる。清涼化剤の例としては、l−メントール、dl−メントール、d−カンフル、dl−カンフル、薄荷油、樟脳油、乳酸メンチル、クーリングエージェント、リモネン、チモール、ウイキョウ油、ユーカリ油、キシリトールなどが挙げられる。好ましい清涼化剤は、l−メントール、dl−メントール、d−カンフル、dl−カンフル、薄荷油、樟脳油であり、より好ましい清涼化剤は、l−メントール、dl−メントール、d−カンフル、dl−カンフルである。
【0012】
本発明において、アルコール類は外用剤の分野で利用されうるものを特に制限なく使用でき、アルコール類は1種のみ含有されていても2種以上含有されていてもよい。アルコール類は、通常5〜42.5重量%、好ましくは15〜42重量%含有され、より好ましくは低級アルコールが5〜40重量%、より一層好ましくは低級アルコールが12〜39重量%含有される。アルコール類は、低級アルコール、多価アルコール類、高級アルコールなどを包含する。
【0013】
低級アルコールの例としては、無水エタノール、エタノール、メタノール、イソプロパノール又はこれらの変性アルコール(フェニル変性アルコール、8−アセチル化ショ糖変性アルコールなど)などが挙げられる。好ましい低級アルコールは、無水エタノール、エタノール、メタノール、イソプロパノールであり、より好ましい低級アルコールは、無水エタノール、エタノール、イソプロパノールである。
【0014】
多価アルコール類は、多価アルコール、多価アルコールのアルキルエーテル、多価アルコールのアルキルエステル、糖アルコール、フルフリルアルコール、ポリグリセリンなどを包含する。多価アルコール類の例としては、
2価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ジグリセリン、ポリエチレングリコール等);
3価アルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ポリグリセリン等);
4価アルコール(例えば、1,2,6−ヘキサントリオール等のペンタエリスリトール等);
5価アルコール(例えば、キシリトール等);
6価アルコール(例えば、ソルビトール、マンニトール等);
多価アルコールのアルキルエーテル(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2−メチルヘキシルエーテル、エチレングリコールイソアミルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、POP−ブチルエーテル、POP・POE−ブチルエーテル、キシルアルコール、セラキルアルコール、バチルアルコール、トリポリオキシプロピレングリセリンエーテル、POP−グリセリンエーテル等);
多価アルコールのアルキルエステル(エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、エチレングリコールジアジベート、エチレングリコールジサクシネート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、POP−グリセリンエーテルリン酸等);
糖アルコール(ソルビトール、マルチトール、マルトトリオース、マンニトール、ショ糖、エリトリトール、グルコース、フルクトース、デンプン分解糖、マルトース、キシリトース、デンプン分解糖還元アルコール、POP・POE−ペンタンエリスリトールエーテル等);
フルフリルアルコール(テトラハイドロフルフリルアルコール、POE−テトラハイドロフルフリルアルコール等);
ポリグリセリンなどが挙げられる。
多価アルコール類として好ましいのは多価アルコールであり、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリンが特に好ましい。
【0015】
高級アルコールは炭素数8以上のアルコールであり、その例としては、セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール、オクチルドデカノールなどが挙げられる。
【0016】
本発明において、水は特に明示する場合を除き、精製水を表す。水の含有量は上記の各成分が製剤形態となる量であれば特に限定されないが、通常21.5〜90.7重量%、好ましくは27〜76.5重量%である。特に水及びアルコール類の重量比率が水/アルコール類で表すと0.5〜18.14となる量が好ましく、0.6〜5.1となる量がより好ましく、0.8〜4.5となる量がより一層好ましい。とくに低級アルコールを使用し、水/低級アルコールが0.6〜18.4となる量が好ましく、0.7〜7.0となる量がより好ましく、0.9〜6.0となる量がより一層好ましい。水及びアルコール類の重量比率をこの範囲にすると、使用者がより早く、強くかゆみの置換を感じることができ、さらにかゆみの抑制効果に優れる。
【0017】
また、本発明の知覚過敏型肌掻痒感改善剤は、必要に応じて他の有効成分を本発明の効果を損なわない範囲において含有することが可能である。他の有効成分としては、例えば、ステロイド剤(デキサメタゾン、塩酸デキサメタゾン、塩酸ヒドロコルチゾン、吉草酸プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン等)、抗ヒスタミン剤(ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン等)、抗炎症剤(グリチルレチン酸、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルレチン酸モノアンモニウム、アラントイン、サリチル酸、サリチル酸グリコール等)、殺菌剤(塩化ベンザルコニウム、塩化デカリニウム、塩化ベンゼトニウム、イソプロピルメチルフェノール、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、アンモニア水、スルファジアジン、乳酸、フェノール等)、鎮痒剤(クロタミトン等)、皮膚保護剤(コロジオン、ヒマシ油等)などが挙げられる。
【0018】
また、本発明の知覚過敏型肌掻痒感改善剤は、必要に応じて添加剤を本発明の効果を損なわない範囲において含有することが可能である。添加剤としては、例えば、基剤(アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、コーンスターチ、トラガントガム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、カラギーナン、マンナン、アガロース、デキストリン、カルボキシメチルデンプン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、メトキシエチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、プルラン等のポリマー類;ミツロウ、オリーブ油、カカオ油、ゴマ油、ダイズ油、ツバキ油、ラッカセイ油、牛油、豚油、鶏油、ラノリン等の油脂類;白色ワセリン、黄色ワセリン、パラフィン、流動パラフィン、セレシンワックス、スクワラン、軽質流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;ゲル化炭化水素(例えば、商品名プラスチベース、ブリストルマイヤーズスクイブ社製);ステアリン酸等の高級脂肪酸;ポリエチレングリコール(例えば、マクロゴール400、マクロゴール4000等);モノオレイン酸エステル、ステアリン酸グリセリド、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル等の脂肪酸エステル類;生理食塩水、リン酸緩衝液等)、溶解補助剤(ポリビニルピロリドン等)、無機充填剤(タルク、カオリン、ベントナイト、酸化亜鉛、酸化チタン等)、老化防止剤、pH調節剤(トリエタノールアミン等)、保湿剤(セラミド、レシチン等)、防腐剤(パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、クエン酸、クエン酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ砂等)、粘稠剤(コンドロイチン硫酸ナトリウム等)、酸化防止剤(ジブチルヒドロキシトルエン等)などが使用できる。好ましい添加剤としては、ポリマー類、無機充填剤、溶解補助剤、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤などが挙げられる。
【0019】
本発明の知覚過敏型肌掻痒感改善剤の剤型は、皮膚に適用可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、リニメント剤、ローション剤、乳剤、粉剤、懸濁剤、エアゾール剤、液剤などや、基剤を支持体上に支持させた硬膏剤、パップ剤、テープ剤、プラスター剤などが挙げられる。好ましくは、ゲル剤、クリーム剤、ローション剤、乳剤、懸濁剤、液剤であり、さらに好ましくは、ゲル剤である。
【0020】
上記支持体は、その剤型(例えば、パップ剤、テープ剤等)に応じて適宜選択されるが、薬物が不透過又は難透過性で柔軟なものが好ましく、例えば、酢酸セルロース、エチルセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体、エチレン−ブチルアクリレート−一酸化炭素共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの樹脂フィルム;アルミニウムシート、織布、不織布など、及びこれらの積層シートなどが挙げられる。
【0021】
本発明の知覚過敏型肌掻痒感改善剤の使用量は、疾患の種類や症状の程度、患部の大きさなどによって異なるが、通常1回、1患部当たり50〜500mg、好ましくは100〜350mgであり、使用回数は1日に1回又はそれ以上の適当な回数とすることができる。
【0022】
本発明の知覚過敏型肌掻痒感改善剤は、その剤型に応じた常法により製造することができる。例えば、ゲル剤を製造する場合、水などに水溶性有効成分、ポリマー類を分散させ、別にアルコール類などに、他の有効成分を溶解させ、これらを合わせて、真空乳化機などの密閉条件下で撹拌混合できる機器で撹拌混合することによりゲル剤を製造できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の知覚過敏型肌掻痒感改善剤が皮膚に適用されると、知覚過敏型肌のかゆみが素早く清涼感や灼熱感といったかゆみ以外の感覚に置換され、かゆみが抑制され、これらの置換効果、抑制効果が持続する。このような効果は本発明の構成により発揮され、意外にも清涼化剤に通常保湿剤として用いられている尿素を組み合わせることが大きく関与すると推測される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施例等により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、表中の数値の単位はg(グラム)である。
【実施例】
【0025】
実施例1
表1に示す成分、すなわち局所麻酔剤(リドカイン)2重量%、尿素10重量%、清涼化剤(l−メントール)4重量%、低級アルコール(無水エタノール)12重量%、水67重量%、ジフェンヒドラミン1重量%、CVP(カルボキシビニルポリマー)1重量%及びグリセリン3重量%を含有するゲル剤を製造した。すなわち、水に尿素を溶解し、撹拌しながらCVPを加えて水相を調製し、水相とは別に無水エタノールにリドカイン、l−メントール、ジフェンヒドラミン、グリセリンを溶解、混和して有機相を調製し、水相を撹拌しながらここに有機相を徐々に添加し、撹拌混合してゲル化剤を調製した。
【0026】
実施例2〜14
表2及び3に示す成分を使用し、実施例1と同様にしてゲル剤を製造した。
【0027】
比較例1〜5
表1に示す成分を使用し、実施例1と同様にしてゲル剤を製造した。
【0028】
比較例6
表1に示す成分を使用し、ワセリンを40〜60℃に加温し液状になったところに各成分を加え、撹拌混合し、冷却して油系軟膏剤を製造した。
【0029】
試験例1
実施例1〜14及び比較例1〜5のゲル剤、比較例6の軟膏剤を使用して知覚過敏に基づく皮膚のかゆみに関する官能試験を行った。皮膚が乾燥肌でない健常な状態の者を被験者(6名)とし、被験者がかゆみを発生した時にかゆみの発生した部位に実施例及び比較例の製剤を塗布してもらい、SD法などで用いられる意味尺度を利用して5段階(最低1点、最高5点)で評価をしてもらった。評価項目及び評価方法は次のとおりである。結果を表に示した。なお、表中、CVPはカルボキシビニルポリマー、DPGはジプロピレングリコール、PGはポリエチレングリコールを意味する。
【0030】
評価項目
かゆみ以外の感覚(清涼感/灼熱感)の強さ
かゆみ以外の感覚(清涼感/灼熱感)の速さ
かゆみの抑制効果
かゆみ以外の感覚及びかゆみ抑制効果の持続性
評価方法
被験者6名のつけた5段階評価の点の合計点を次の区分で表した。
◎:24〜30点
○:18〜23点
△:12〜17点
×:6〜11点
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
【表3】

【0034】
実施例1〜14の製剤と比較例1〜5の製剤との比較より、局所麻酔剤、尿素、清涼化剤、低級アルコール及び水を含有する製剤が、4種類の評価項目全てにおいて「○」又は「◎」の評価(18点以上の評価)となることが示された。また、比較例6の製剤は従来の軟膏剤のモデルであるが、実施例1〜14の製剤は従来の軟膏剤と比較しても各評価項目において優れていた。実施例1〜14の製剤は知覚過敏に基づくかゆみを効果的に抑制し、その作用が持続するものであった。
【0035】
処方例
表4に示した組成を、常法によりクリーム剤、乳剤、液剤、エアゾール剤、ゲル剤に製した。なお、エアゾール剤は、薬液:噴射剤=1:4でアルミ缶に充填し、エアゾール剤とした。また、表中、BHTはジブチルヒドロキシトルエンを意味する。
【0036】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の知覚過敏型肌掻痒感改善剤は、知覚過敏型肌のかゆみの抑制を目的とした皮膚外用剤の分野で有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所麻酔剤、尿素、清涼化剤、アルコール類及び水を含有する知覚過敏型肌掻痒感改善剤。
【請求項2】
アルコール類が低級アルコール、多価アルコール類及び高級アルコールからなる群から選択される1種又は2種以上である請求項1に記載の知覚過敏型肌掻痒感改善剤。
【請求項3】
低級アルコールが無水エタノール、エタノール、メタノール及びイソプロパノールからなる群から選択される1種又は2種以上である請求項2に記載の知覚過敏型肌掻痒感改善剤。
【請求項4】
多価アルコール類が多価アルコール、多価アルコールのアルキルエーテル、多価アルコールのアルキルエステル、糖アルコール、フルフリルアルコール及びポリグリセリンからなる群から選択される1種又は2種以上である請求項2に記載の知覚過敏型肌掻痒感改善剤。
【請求項5】
局所麻酔剤がリドカイン、ジブカイン、プロカイン又はこれらの塩、アミノ安息香酸エチル及びテシットデシチンからなる群から選択される1種又は2種以上である請求項1〜4のいずれかに記載の知覚過敏型肌掻痒感改善剤。
【請求項6】
清涼化剤がl−メントール、dl−メントール、d−カンフル、dl−カンフル、薄荷油及び樟脳油からなる群から選択される1種又は2種以上である請求項1〜5のいずれかに記載の知覚過敏型肌掻痒感改善剤。
【請求項7】
ゲル剤である請求項1〜6のいずれかに記載の知覚過敏型肌掻痒感改善剤。

【公開番号】特開2007−262031(P2007−262031A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−92525(P2006−92525)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】