磁性体記憶装置
【課題】低電流書き込みと外部磁場耐性を両立した磁性体記憶装置を提供することにあり、特にフリー層の磁気特性のシフトを抑制する手段を提供する。
【解決手段】書き込み配線を挟んで2つの磁性体フリー層2,3が配置され、一方の磁性体フリー層にトンネル絶縁体層4と磁性体ピン層5とが積層された磁性体記憶素子において、もう一方の磁性体フリー層近傍に第2の磁性体ピン層6を設ける。これら2つの磁性体ピン層の漏れ磁場やネールカップリング磁界を用いて、2つの磁性体フリー層の磁気特性シフトをそれぞれゼロに調整する。
【解決手段】書き込み配線を挟んで2つの磁性体フリー層2,3が配置され、一方の磁性体フリー層にトンネル絶縁体層4と磁性体ピン層5とが積層された磁性体記憶素子において、もう一方の磁性体フリー層近傍に第2の磁性体ピン層6を設ける。これら2つの磁性体ピン層の漏れ磁場やネールカップリング磁界を用いて、2つの磁性体フリー層の磁気特性シフトをそれぞれゼロに調整する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁性体記憶装置に関し、特に低電流でデータの書き込みが可能で、外部磁場耐性が高い磁性体記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種の磁性体記憶装置は、例えば、磁気抵抗素子を記憶素子として用いてメモリを構成するものがあった。 まず、磁気抵抗素子の例として、Tunneling Magnetroresistance(以下TMR)と呼ばれるトンネル絶縁膜を2つの磁性体間に挟んだ構造について説明する。図8に2000 IEEE International Solid-State Circuits Conference DIGEST OF TECHNICAL PAPERS (p.128)で報告されたTMRの例を示す。
【0003】
図8ではFeMn(10nm)で形成された反強磁性体層501、CoFe(2.4nm)で形成された強磁性体ピン層502、Al2O3で形成されたトンネル絶縁層503、NiFe(5nm)で形成された強磁性体フリー層504が積層されている。反強磁性体層501とフリー層504には電圧が印加できるよう、導体配線が接続されている。ピン層502の磁化方向は反強磁性体層501によりある方向に固定される。フリー層504はある方向に磁化しやすいように形成されており、その磁化方向は外部から磁場を印加することにより変化させることができる。
【0004】
膜の水平方向のうち、磁化しやすい方向を容易軸、容易軸に垂直で磁化しにくい方向を困難軸と呼ぶ。フリー層504とピン層502との間に電圧を印加するとトンネル絶縁膜503を通して電流が流れるが、フリー層504とピン層502の磁化方向の関係により抵抗値が変化する。すなわち磁化方向が同じ場合は抵抗が低く、反対向きの場合は抵抗が高くなる。
【0005】
次に、図9を用いてTMRを不揮発性メモリの記憶素子として用いた例を示す。本例は2000 IEEE International Solid-State Circuits Conference DIGEST OF TECHNICAL PAPERS (p.130)で報告されている。
【0006】
本例ではアレイ状に配置されたTMR505の上下に、交差する1対の配線が設置される。上部配線506はTMR505のフリー層と接続されており、TMR505の反強磁性体層は第3の配線507を介して下層に形成されたトランジスタ508のドレインに接続されている。2つの配線B、Dに電流を流すことで交点近傍に合成磁場を発生し、電流の方向によりフリー層の磁化方向を設定する。これによりTMR505の抵抗値を変化させることができる。
【0007】
データの読み出しは、読み出すTMR505に接続されたトランジスタ508を配線Wによりオン状態にして、配線BよりTMR505に電圧を印加し、流れる電流でTMRの抵抗値を評価することで行う。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】2000 IEEE International Solid-State Circuits Conference DIGEST OF TECHNICAL PAPERS (p.128)
【非特許文献2】2000 IEEE International Solid-State Circuits Conference DIGEST OF TECHNICAL PAPERS (p.130)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
書き込み配線の電流磁場を効率的に利用する方法として、図10のように書き込み配線511の上下両面にフリー層磁性体512,513を配置し、両者を静磁結合させる方法がある(以降中間配線挿入型と呼ぶ)。この場合、フリー層の磁化量が増加したことになるため熱擾乱耐性が向上するという効果があり、フリー層の異方性を小さくしてもデータを保持することが可能となる。つまり、書き込み電流を小さくすることができる。また、2つのフリー層は磁化方向が逆向きになるため、外部磁界に対する耐性も向上するという効果がある。
【0010】
さて、図8に示した従来のTMRでは、ピン層とフリー層の凹凸に起因すると考えられているネールカップリング磁界がフリー層にかかる。この結果、フリー層の磁化反転特性がシフトする。磁化反転特性がシフトすると、一方のデータの書き込み電流が大きくなる、および外部磁場により容易に磁化反転が起きて記憶データが破壊されるという問題が発生する。
【0011】
従来の対策としては、ピン層端部からの漏れ磁場をピン層の厚さにより調整してフリー層に印加し、ネールカップリング磁界を相殺することで特性シフトを無くし、対称な書き込み特性を得ていた。ところが、前述の中間配線挿入型では、ピン層と面しネールカップリング磁界が加わっているフリー層にピン層から漏れ磁場を印加すると、もう一方のフリー層にもこの磁場がかかり磁化反転特性がシフトしてしまう。
【0012】
このように中間配線挿入型では従来の方法では両者のシフトを同時に相殺することができない。中間配線挿入型におけるデータによる書き込み配線電流の素子数分布の測定例を図11に、外部磁場による反転条件(アステロイドカーブ)の測定例を図12に示す。
【0013】
図11のように書き込み電流のデータ間差が無いように設計した素子でも、図12に示すように外部磁場に対する反転特性は大きくシフトしている。このように、中間配線挿入型では、書き込み電流のデータ間差を無くして低電流化することと、外部磁場による反転特性のシフトを低減して耐性をあげることの両立が困難という問題があった。
【0014】
本発明の目的は、低電流書き込みと外部磁場耐性を両立した磁性体記憶装置を提供することにあり、特にフリー層の磁気特性のシフトを抑制する手段に関する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、記憶データにより磁化状態が異なる第1の磁性体と、前記第1の磁性体と静磁結合し前記第1の磁性体の磁化状態に従って磁化状態が変化する第2の磁性体と、前記第1の磁性体と積層されたトンネル絶縁体と、前記トンネル絶縁体と積層された第1の磁化固定磁性体と、書き込み配線とを有し、前記第1の磁性体と前記第2の磁性体とが前記書き込み配線を挟んで配置され、書き込み配線に流す電流の方向により前記第1の磁性体と前記第2の磁性体の磁化方向を制御する磁性体記憶装置において、前記書き込み配線に対して前記第2の磁性体側に第2の磁化固定磁性体を有することを特徴とする。
【0016】
また、前記第1の磁性体と前記第2の磁性体の磁化量が同程度であり、前記第2の磁性体と前記第2の磁化固定磁性体が静磁結合していることを特徴としている。
【0017】
また、磁化反転に必要な書き込み配線電流がデータに依らず同程度であり、かつ、外部から磁場を印加した時に磁化反転が起きる磁場の大きさが印加磁場の原点に対してほぼ対称な特性であることを特徴としている。
【0018】
また、前記第1の磁性体に加わるネールカップリング磁界をHn5、第1の磁性体に加わる第1の磁化固定磁性体からの磁界をH52、第1の磁性体に加わる第2の磁化固定磁性体からの磁界をH62、第2の磁性体に加わる第1の磁化固定磁性体からの磁界をH53、第2の磁性体に加わる第2の磁化固定磁性体からの磁界をH63、さらにH53=αH52、H62=βH63としたとき、H52がHn5/(1−αβ)と同程度の値であり、かつH63がαH52と同程度であることを特徴としている。
【0019】
また、前記第2の磁性体に前記第2の磁化固定磁性体からのネールカップリング磁界が働いていることを特徴としている。
【0020】
また、前記第1の磁性体に加わるネールカップリング磁界をHn5、第1の磁性体に加わる第1の磁化固定磁性体からの磁界をH52、第1の磁性体に加わる第2の磁化固定磁性体からの磁界をH62、前記第2の磁性体に加わるネールカップリング磁界をHn6、第2の磁性体に加わる第1の磁化固定磁性体からの磁界をH53、第2の磁性体に加わる第2の磁化固定磁性体からの磁界をH63、さらにH53=αH52、H62=βH63としたとき、H52が(Hn5−βHn6)/(1−αβ)と同程度であり、さらにH63がHn6−αH52と同程度であることを特徴としている。
【0021】
このように、本発明の磁性体記憶装置は、書き込み電流を流す配線を挟んで形成された複数の磁性体からなるフリー層それぞれの磁気特性シフトを調整することができる。従って、書き込み電流を対称にできるとともに、外部磁場耐性を向上することができる。この作用により、低電流書き込みが可能で、外部磁場耐性が高い磁性体記憶装置が実現できる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、書き込み配線を挟んで配置したフリー磁性体の磁気特性のシフトをそれぞれゼロに近づけることができる。このため、書き込み電流が対称で、外部磁場耐性が高い磁性体記憶装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す要部断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を示す要部平面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態を示す要部断面図である。
【図4】本発明の第1の実施例を示す要部断面図である。
【図5】本発明の第1の実施例を示す要部平面図である。
【図6】本発明の第2の実施例を示す要部断面図である。
【図7】本発明の第2の実施例を示す要部平面図である。
【図8】従来例の記憶素子を示す構造図である。
【図9】従来例の記憶装置を示す概要図である。
【図10】中間配線挿入型を示す図である。
【図11】素子数分布の測定例を示す図である。
【図12】反転条件の測定例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。 図1、図2を参照すると、本発明の第一の実施の形態として磁性体記憶装置の要部断面図と平面図が示されている。
【0025】
<第一の実施の形態の構成>
第一の実施の形態の磁性体記憶装置は、配線1と、配線1を挟んで配置した第1の磁性体2と第2の磁性体3と、第1の磁性体2に積層したトンネル絶縁体4と、トンネル絶縁体4に積層した第1の磁化固定磁性体5と、配線1に対して第2の磁性体3側に配置した第2の磁化固定磁性体6とを有する。第1の磁性体2と第2の磁性体3とは静磁結合しており、磁化方向は互いに逆向きとなる。データは第1の磁性体2と第2の磁性体3の磁化方向として記憶され、配線1に電流を流すことでこれらの磁化方向を制御する。
【0026】
このため、第1の磁性体2と第2の磁性体3とからなるフリー層は、配線1の電流磁場方向成分を持つ異方性を有する。異方性は、磁性体の結晶構造による異方性を用いたり、図2のように磁性体の形状を一方向に長くすることによる形状異方性を用いる。第1の磁性体2の磁化量と第2の磁性体3の磁化量はほぼ等しくすることで、外部磁場の影響を受けにくくすることができる。
【0027】
第1の磁性体2と第2の磁性体3とはそれぞれ単一の磁性体材料でも複数の磁性体の積層構造でもよい。また、複数の磁性体を非磁性体を挟んで反強磁性結合や強磁性結合させた構造でもよい。図1の上下関係、第1の磁性体から第1の磁化固定磁性体までの構造の上下関係、第2の磁性体と第2の磁化固定磁性体との上下関係はそれぞれ逆になってもよい。
第1の磁性体2には第1の磁化固定磁性体によりネールカップリング磁界Hn5が加わる。また、第1の磁性体2には、第1の磁化固定磁性体5端部からの漏れ磁界H52が加わる。さらに、第1の磁性体2には、第2の磁化固定磁性体6端部からの漏れ磁界H62が加わる。第2の磁性体3には、第1の磁化固定磁性体5端部からの漏れ磁界H53が加わる。さらに、第2の磁性体3には、第2の磁化固定磁性体6端部からの漏れ磁界H63が加わる。第1の磁性体2に加わる磁場H2と第2の磁性体3に加わる磁場H3は、図1の右向きを正とすると、次のように表現できる。
【0028】
H2=−Hn5+H52−H62 (式1)
H3=H53−H63 (式2)
ここで
H53=αH52 (式3)
H62=βH63 (式4)
とすると、下記条件に設計することでH2とH3をともにゼロにする。
【0029】
H52=Hn5/(1−αβ) (式5)
H63=αH52 (式6)
これにより、第1の磁性体2と第2の磁性体3のそれぞれに加わる磁場が相殺されるため、それぞれの磁気特性のシフトをゼロにできる。
【0030】
次に本磁性体記憶装置のデータ書き込み方法について説明する。データ[1]を書き込む場合、配線1に図の奥方向に第1の磁性体2と第2の磁性体3とを磁化反転させるのに十分な書き込み電流を流す。このとき配線1を中心に時計回りの磁場が形成され、第1の磁性体2の磁化方向は右方向に、第2の磁性体3の磁化方向は左方向に設定される。
【0031】
データ[0]を書き込む場合は、配線1に手前方向に書き込み電流を流す。このとき配線1を中心に反時計回りの磁場が形成され、第1の磁性体2の磁化方向は左方向に、第2の磁性体3の磁化方向は右方向に設定される。第1の磁性体2と第2の磁性体3のどちらかの磁気特性がシフトしていれば[0]と[1]の書き込み電流が非対称となり、どちらかが大きな電流を必要とするが、両者ともシフトしていないため、[0]と[1]とも同じ電流値、すなわち最小電流で書き込むことができる。
【0032】
次にデータの読み出し方法について説明する。第1の磁性体2と第1の磁化固定磁性体5の間の抵抗は両者の磁化方向の相違により変化するため、書き込まれたデータにより抵抗値が変化する。第1の磁化固定磁性体5と第1の磁性体2との間の抵抗を評価することで、記憶したデータを読み出すことができる。
【0033】
本実施の形態では、第1の磁性体2と第2の磁性体3とをともに磁気特性のシフトをゼロに設定できる。このため本構造により、データに依らず対称的な書き込み特性を持つ。さらに、外部磁場に対しても、シフトがある場合は本来の磁気特性より小さい外部磁場で磁化反転、すなわちデータ破壊が起きてしまうが、シフトがないため高い外部磁場耐性を有する。このように、本構造により書き込み電流が小さく、かつ外部磁場耐性が高い磁気記憶素子が得られる。
【0034】
図3を参照すると、本発明の第二の実施の形態として磁性体記憶装置の要部断面図が示されている。
【0035】
<第二の実施の形態の構成>
第二の実施の形態の磁性体記憶装置は、配線1と、配線1を挟んで配置した第1の磁性体2と第2の磁性体3と、第1の磁性体2に積層したトンネル絶縁体4と、トンネル絶縁体4に積層した第1の磁化固定磁性体5と、第2の磁性体3と非磁性体7を挟んで積層した第2の磁化固定磁性体6とを有する。第1の磁性体2と第2の磁性体3とは静磁結合しており、磁化方向は互いに逆向きとなる。データは第1の磁性体2と第2の磁性体3の磁化方向として記憶され、配線1に電流を流すことでこれらの磁化方向を制御する。
【0036】
このため、第1の磁性体2と第2の磁性体3とからなるフリー層は、配線1の電流磁場方向成分を持つ異方性を有する。異方性は、磁性体の結晶構造による異方性を用いたり、磁性体の形状を一方向に長くすることによる形状異方性を用いる。第1の磁性体2の磁化量と第2の磁性体3の磁化量はほぼ等しくすることで、外部磁場の影響を受けにくくすることができる。
【0037】
第1の磁性体2と第2の磁性体3とはそれぞれ単一の磁性体材料でも複数の磁性体の積層構造でもよい。また、複数の磁性体を非磁性体を挟んで反強磁性結合や強磁性結合させた構造でもよい。 第1の磁性体2には第1の磁化固定磁性体によりネールカップリング磁界Hn5が加わる。また、第1の磁性体2には、第1の磁化固定磁性体5端部からの漏れ磁界H52が加わる。
【0038】
さらに、第1の磁性体2には、第2の磁化固定磁性体6端部からの漏れ磁界H62が加わる。第2の磁性体3には第2の磁化固定磁性体6によりネールカップリング磁界Hn6が加わる。第2の磁性体3には、第1の磁化固定磁性体5端部からの漏れ磁界H53が加わる。さらに、第2の磁性体3には、第2の磁化固定磁性体6端部からの漏れ磁界H63が加わる。第1の磁性体2に加わる磁場H2と第2の磁性体3に加わる磁場H3は、図3の右向きを正とすると、次のように表現できる。
【0039】
H2=−Hn5+H52+H62 (式7)
H3=−Hn6+H53+H63 (式8)
ここで
H53=αH52 (式9)
H62=βH63 (式10)
とすると、下記条件に設計することでH2とH3をともにゼロにする。
【0040】
H52=(Hn5−βHn6)/(1−αβ) (式11)
H63=Hn6−αH52 (式12)
これにより、第1の磁性体2と第2の磁性体3のそれぞれに加わる磁場が相殺されるため、それぞれの磁気特性のシフトをゼロにできる。 データの書き込み方法と読み出し方法は第一の実施の形態と同様である。本実施の形態では、第一の実施の形態に加え第2の磁化固定磁性体からのネールカップリング磁界も用いており、設計の自由度が広がる。
【実施例】
【0041】
<第一の実施例>
次に、具体的な実施例を用いて本発明の動作を説明する。図4、図5を参照すると、本発明の第一の実施例として磁性体記憶素子の要部断面図、要部平面図がそれぞれ示されている。図4は図5のA−A’部分を示している。
【0042】
まず、図4を参考にして製造方法について説明する。トランジスタ、配線、Cuビア69を層間膜SiO270とともに形成した基板に、SiN(20nm)71、Ta(5nm)72、NiFeシード層(1nm)とPtMn(20nm)73、CoFe(0.5nm)74、Ta(2nm)75、NiFe(2.5nm)76、Ta(5nm)77をスパッタ法により成膜する。Ta75は、CoFe74とNiFe76との間でネールカップリング磁界がほとんど働かない厚さ、例えば0.6nm以上とする。
【0043】
フォトリソグラフィ技術によりTMRの形状にレジストを形成し、Ta77からTa72までをミリング法により加工し、レジストをアッシングにより除去する。TMRは図5に示すように書き込み配線の幅方向に長い楕円形で、長軸が0.4μm、短軸が0.2μmである。全面にSiO2(200nm)78をCVD法により形成後、化学的機械研磨(CMP)技術により平坦化する。書き込み配線以外の形状にレジストを形成し、SiO278をRIEによりエッチングする。
【0044】
レジスト除去後、全面をエッチングすることで開口部のSiN71を除去し、ビア69を露出させる。Cu80(200nm)を全面に成膜し、CMPでSiO278が露出するまで平坦化することで、書き込み配線部分にCu80を埋め込む。次に、Ta(2nm)81、NiFe(2.5nm)82、MgO(1nm)89、CoFe(2.5nm)90、Ru(0.8nm)91、CoFe(2nm)92、PtMn(20nm)93、Ta(50nm)94をスパッタ法により成膜する。NiFe82はNiFe76とほぼ同じ磁化量となるようにする。フォトリソグラフィ技術とミリング法により、Ta94からTa81までをTMR形状に加工する。
【0045】
この後、全面に層間膜SiO296をプラズマCVD法により形成したのち、CMP技術により全面を平坦化する。フォトリソグラフィ技術とドライエッチング技術によりTa94上にビアホールを形成し、Cu97を埋め込む。その後、上部配線Cu98を形成する。次に、250℃〜300℃の高温下でNiFe82パターンの長辺方向、図4では右方向に1000〜20000Oe程度の磁場を印加する。
【0046】
これによりCoFe92とCoFe74は磁場に沿った方向に向き、降温時に反強磁性体PtMn93とPtMn73がこれを支持する磁化状態に固定される。Ru91はCoFe92とCoFe90が反強磁性結合する厚さにしてあるため、CoFe90の磁化方向は左に向く。これによりNiFe82に働くネールカップリング磁界は左向きになる。
【0047】
CoFe90とCoFe92からなるピン層とCoFe74の厚さは、式5,式6を満たすように設計する。磁性膜と特性と形状からシミュレーションで適正値を計算し、これをもとに膜厚を変えて試作を行い、データによる書き込み電流のバランスと、外部磁場耐性から最終的な膜厚を決定する。
【0048】
次に、データの書き込み方法を説明する。書き込み配線Cu80の両端に配置した2つのCuビア69間に電圧を印加し書き込み配線に磁化反転を起こす書き込み電流、例えば1mAを流す。データ[0]を書く場合は、図5の下向き、図4の手前向きに電流を流す。このとき図4の書き込み配線を中心に反時計回りの電流磁場が発生し、NiFe82は左向きに、NiFe76は右向きに磁化方向が設定される。このときNiFe82とCoFe90の磁化方向が同じ向きになるため、TMR抵抗は低抵抗、すなわちデータ[0]となる。
【0049】
データ[1]を書く場合は、図5の上向き、図4の奥向きに電流を流す。このとき図4の書き込み配線を中心に時計回りの電流磁場が発生し、NiFe82は右向きに、NiFe76は左向きに磁化方向が設定される。このときNiFe82とCoFe90の磁化方向が逆向きになるため、TMR抵抗は高抵抗、すなわちデータ[1]となる。
【0050】
次に読み出し方法について説明する。TMR抵抗はデータにより異なる値となっているため、配線Cu98と配線Cu80との間に電流を流してTMR抵抗を評価することでデータが判別できる。Ta75部分には電流が流れないため、絶縁体を用いてもよい。ピン層部、NiFe82、NiFe76、CoFe74はたがいに異なる形状でもよい。NiFe82、NiFe76はデータを保持するため異方性が必要であるが、どちらかに異方性があればもう一方は異方性がなくてもよい。
【0051】
形状は楕円形に限らず,長方形や菱形、平行四辺形なども可能である。各磁性体は単層膜でも、複数の磁性体の積層膜でも、磁性体同士を反強磁性結合や強磁性結合させる非磁性体を挟んだ磁性体積層膜でもよい。
【0052】
本実施例に依れば、NiFe76に加わる静磁界と、NiFe82に加わる静磁界とネールカップリング磁界とをそれぞれ制御できるため、両方ともゼロに近づけることが可能である。このため、データによる書き込み電流特性のシフトと、外部磁場耐性のシフトの両方をゼロに調整できる。これにより、書き込み電流が小さく、外部磁場耐性のよい磁性体記憶装置が実現可能となる。
【0053】
<第二の実施例>
図6、図7を参照すると、本発明の第二の実施例として磁性体記憶素子の要部断面図、要部平面図がそれぞれ示されている。図6は図7のA−A’部分を示している。
【0054】
まず、図6を参考にして製造方法について説明する。トランジスタ、配線、Cuビア69を層間膜SiO270とともに形成した基板に、SiN(20nm)71、Ta(5nm)72、NiFeシード層(1nm)とPtMn(20nm)73、CoFe(2.5nm)74、Ru(0.8nm)100、CoFe(2.7nm)101、MgO(1.1nm)102、NiFe(3nm)76、Ta(5nm)77をスパッタ法により成膜する。Ru100はCoFe74とCoFe101が反強磁性結合する厚さとする。
【0055】
フォトリソグラフィ技術により配線下層磁性体形状にレジストを形成し、Ta77からTa72までをミリング法により加工し、レジストをアッシングにより除去する。形状は図7に示すように直径が0.5μmの円形である。全面にSiO2(200nm)78をCVD法により形成後、化学的機械研磨(CMP)技術により平坦化する。
【0056】
書き込み配線以外の形状にレジストを形成し、SiO278をRIEによりエッチングする。レジスト除去後、全面をエッチングすることで開口部のSiN71を除去し、ビア69を露出させる。Cu80(200nm)を全面に成膜し、CMPでSiO278が露出するまで平坦化することで、書き込み配線部分にCu80を埋め込む。次に、Ta(2nm)81、NiFe(2nm)103、Ru(1.5nm)104、NiFe(2nm)105、MgO(1nm)89、CoFe(2.5nm)90、Ru(0.8nm)91、CoFe(2nm)92、PtMn(20nm)93、Ta(50nm)94をスパッタ法により成膜する。Ru104はNiFe103とNiFe105が強磁性結合する厚さとする。
【0057】
フォトリソグラフィ技術とミリング法により、Ta94からNiFe105までを図7に示す長軸0.45μm、短軸0.3μmの楕円形に加工する。楕円は磁化反転電流が小さくなるように、電流が流れる方向から例えば45度傾けてある。
【0058】
レジスト除去後、全面にSiN(10nm)106をCVD法により成膜し、さらにフォトリソグラフィ技術とミリング法により、Ru104からTa81までを図7に示す直径0.48μmの円形に加工する。強磁性結合しているため同じ磁化方向となるNiFe103とNiFe105との磁化量の和はNiFe76とほぼ同じ磁化量となるようにする。
【0059】
この後、全面に層間膜SiO296をプラズマCVD法により形成したのち、CMP技術により全面を平坦化する。フォトリソグラフィ技術とドライエッチング技術によりTa94上にビアホールを形成し、Cu97を埋め込む。その後、上部配線Cu98を形成する。
【0060】
次に、250℃〜300℃の高温下でNiFe82パターンの長辺方向、図7では右上方向に1000〜20000Oe程度の磁場を印加する。これによりCoFe92とCoFe74は磁場に沿った方向に向き、降温時に反強磁性体PtMn93とPtMn73がこれを支持する磁化状態に固定される。Ru91はCoFe92とCoFe90が反強磁性結合する厚さにしてあるため、CoFe90の磁化方向は左に向く。これによりNiFe105に働くネールカップリング磁界は左向きになる。
【0061】
またRu100もCoFe74とCoFe101が反強磁性結合する厚さにしてあるため、CoFe101の磁化方向は左に向く。これによりNiFe76に働くネールカップリング磁界は左向きになる。CoFe90とCoFe92からなる上部ピン層とCoFe74とCoFe101とからなる下部ピン層の厚さは、式11,式12を満たすように設計する。
【0062】
磁性膜と特性と形状からシミュレーションで適正値を計算し、これをもとに膜厚を変えて試作を行い、データによる書き込み電流のバランスと、外部磁場耐性から最終的な膜厚を決定する。
【0063】
次に、データの書き込み方法を説明する。書き込み配線Cu80の両端に配置した2つのCuビア69間に電圧を印加し書き込み配線に磁化反転を起こす書き込み電流、例えば0.5mAを流す。データ[0]を書く場合は、図7の下向き、図6の手前向きに電流を流す。このとき図6の書き込み配線を中心に反時計回りの電流磁場が発生し、NiFe76は右向きに磁化方向が変化する。円形のNiFe76は異方性が小さいため磁化反転しやすく、これによりNiFe103とNiFe105の磁化反転が誘導され左向きに変化する。このときNiFe105とCoFe90の磁化方向が同じ向きになるため、TMR抵抗は低抵抗、すなわちデータ[0]となる。
【0064】
データ[1]を書く場合は、図7の上向き、図5の奥向きに電流を流す。このとき図5の書き込み配線を中心に時計回りの電流磁場が発生し、NiFe76は左向きに磁化方向が変化し、これに誘導されてNiFe103とNiFe105の磁化方向が右向きに変化する。このときNiFe105とCoFe90の磁化方向が逆向きになるため、TMR抵抗は高抵抗、すなわちデータ[1]となる。 読み出し方法は第1の実施例と同様である。
【0065】
本実施例に依れば、第一の実施例に加えNiFe76にネールカップリング磁界を働かせることで、膜厚や材料の設計の自由度を大きくできる。なお、本発明は上記各実施例に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において各実施例は適宜変更され得ることは明らかである。
【符号の説明】
【0066】
1 配線
2 第1の磁性体
3 第2の磁性体
4 トンネル絶縁体
5 第1の磁化固定磁性体
6 第2の磁化固定磁性体
7 非磁性体
【技術分野】
【0001】
本発明は磁性体記憶装置に関し、特に低電流でデータの書き込みが可能で、外部磁場耐性が高い磁性体記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種の磁性体記憶装置は、例えば、磁気抵抗素子を記憶素子として用いてメモリを構成するものがあった。 まず、磁気抵抗素子の例として、Tunneling Magnetroresistance(以下TMR)と呼ばれるトンネル絶縁膜を2つの磁性体間に挟んだ構造について説明する。図8に2000 IEEE International Solid-State Circuits Conference DIGEST OF TECHNICAL PAPERS (p.128)で報告されたTMRの例を示す。
【0003】
図8ではFeMn(10nm)で形成された反強磁性体層501、CoFe(2.4nm)で形成された強磁性体ピン層502、Al2O3で形成されたトンネル絶縁層503、NiFe(5nm)で形成された強磁性体フリー層504が積層されている。反強磁性体層501とフリー層504には電圧が印加できるよう、導体配線が接続されている。ピン層502の磁化方向は反強磁性体層501によりある方向に固定される。フリー層504はある方向に磁化しやすいように形成されており、その磁化方向は外部から磁場を印加することにより変化させることができる。
【0004】
膜の水平方向のうち、磁化しやすい方向を容易軸、容易軸に垂直で磁化しにくい方向を困難軸と呼ぶ。フリー層504とピン層502との間に電圧を印加するとトンネル絶縁膜503を通して電流が流れるが、フリー層504とピン層502の磁化方向の関係により抵抗値が変化する。すなわち磁化方向が同じ場合は抵抗が低く、反対向きの場合は抵抗が高くなる。
【0005】
次に、図9を用いてTMRを不揮発性メモリの記憶素子として用いた例を示す。本例は2000 IEEE International Solid-State Circuits Conference DIGEST OF TECHNICAL PAPERS (p.130)で報告されている。
【0006】
本例ではアレイ状に配置されたTMR505の上下に、交差する1対の配線が設置される。上部配線506はTMR505のフリー層と接続されており、TMR505の反強磁性体層は第3の配線507を介して下層に形成されたトランジスタ508のドレインに接続されている。2つの配線B、Dに電流を流すことで交点近傍に合成磁場を発生し、電流の方向によりフリー層の磁化方向を設定する。これによりTMR505の抵抗値を変化させることができる。
【0007】
データの読み出しは、読み出すTMR505に接続されたトランジスタ508を配線Wによりオン状態にして、配線BよりTMR505に電圧を印加し、流れる電流でTMRの抵抗値を評価することで行う。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】2000 IEEE International Solid-State Circuits Conference DIGEST OF TECHNICAL PAPERS (p.128)
【非特許文献2】2000 IEEE International Solid-State Circuits Conference DIGEST OF TECHNICAL PAPERS (p.130)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
書き込み配線の電流磁場を効率的に利用する方法として、図10のように書き込み配線511の上下両面にフリー層磁性体512,513を配置し、両者を静磁結合させる方法がある(以降中間配線挿入型と呼ぶ)。この場合、フリー層の磁化量が増加したことになるため熱擾乱耐性が向上するという効果があり、フリー層の異方性を小さくしてもデータを保持することが可能となる。つまり、書き込み電流を小さくすることができる。また、2つのフリー層は磁化方向が逆向きになるため、外部磁界に対する耐性も向上するという効果がある。
【0010】
さて、図8に示した従来のTMRでは、ピン層とフリー層の凹凸に起因すると考えられているネールカップリング磁界がフリー層にかかる。この結果、フリー層の磁化反転特性がシフトする。磁化反転特性がシフトすると、一方のデータの書き込み電流が大きくなる、および外部磁場により容易に磁化反転が起きて記憶データが破壊されるという問題が発生する。
【0011】
従来の対策としては、ピン層端部からの漏れ磁場をピン層の厚さにより調整してフリー層に印加し、ネールカップリング磁界を相殺することで特性シフトを無くし、対称な書き込み特性を得ていた。ところが、前述の中間配線挿入型では、ピン層と面しネールカップリング磁界が加わっているフリー層にピン層から漏れ磁場を印加すると、もう一方のフリー層にもこの磁場がかかり磁化反転特性がシフトしてしまう。
【0012】
このように中間配線挿入型では従来の方法では両者のシフトを同時に相殺することができない。中間配線挿入型におけるデータによる書き込み配線電流の素子数分布の測定例を図11に、外部磁場による反転条件(アステロイドカーブ)の測定例を図12に示す。
【0013】
図11のように書き込み電流のデータ間差が無いように設計した素子でも、図12に示すように外部磁場に対する反転特性は大きくシフトしている。このように、中間配線挿入型では、書き込み電流のデータ間差を無くして低電流化することと、外部磁場による反転特性のシフトを低減して耐性をあげることの両立が困難という問題があった。
【0014】
本発明の目的は、低電流書き込みと外部磁場耐性を両立した磁性体記憶装置を提供することにあり、特にフリー層の磁気特性のシフトを抑制する手段に関する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、記憶データにより磁化状態が異なる第1の磁性体と、前記第1の磁性体と静磁結合し前記第1の磁性体の磁化状態に従って磁化状態が変化する第2の磁性体と、前記第1の磁性体と積層されたトンネル絶縁体と、前記トンネル絶縁体と積層された第1の磁化固定磁性体と、書き込み配線とを有し、前記第1の磁性体と前記第2の磁性体とが前記書き込み配線を挟んで配置され、書き込み配線に流す電流の方向により前記第1の磁性体と前記第2の磁性体の磁化方向を制御する磁性体記憶装置において、前記書き込み配線に対して前記第2の磁性体側に第2の磁化固定磁性体を有することを特徴とする。
【0016】
また、前記第1の磁性体と前記第2の磁性体の磁化量が同程度であり、前記第2の磁性体と前記第2の磁化固定磁性体が静磁結合していることを特徴としている。
【0017】
また、磁化反転に必要な書き込み配線電流がデータに依らず同程度であり、かつ、外部から磁場を印加した時に磁化反転が起きる磁場の大きさが印加磁場の原点に対してほぼ対称な特性であることを特徴としている。
【0018】
また、前記第1の磁性体に加わるネールカップリング磁界をHn5、第1の磁性体に加わる第1の磁化固定磁性体からの磁界をH52、第1の磁性体に加わる第2の磁化固定磁性体からの磁界をH62、第2の磁性体に加わる第1の磁化固定磁性体からの磁界をH53、第2の磁性体に加わる第2の磁化固定磁性体からの磁界をH63、さらにH53=αH52、H62=βH63としたとき、H52がHn5/(1−αβ)と同程度の値であり、かつH63がαH52と同程度であることを特徴としている。
【0019】
また、前記第2の磁性体に前記第2の磁化固定磁性体からのネールカップリング磁界が働いていることを特徴としている。
【0020】
また、前記第1の磁性体に加わるネールカップリング磁界をHn5、第1の磁性体に加わる第1の磁化固定磁性体からの磁界をH52、第1の磁性体に加わる第2の磁化固定磁性体からの磁界をH62、前記第2の磁性体に加わるネールカップリング磁界をHn6、第2の磁性体に加わる第1の磁化固定磁性体からの磁界をH53、第2の磁性体に加わる第2の磁化固定磁性体からの磁界をH63、さらにH53=αH52、H62=βH63としたとき、H52が(Hn5−βHn6)/(1−αβ)と同程度であり、さらにH63がHn6−αH52と同程度であることを特徴としている。
【0021】
このように、本発明の磁性体記憶装置は、書き込み電流を流す配線を挟んで形成された複数の磁性体からなるフリー層それぞれの磁気特性シフトを調整することができる。従って、書き込み電流を対称にできるとともに、外部磁場耐性を向上することができる。この作用により、低電流書き込みが可能で、外部磁場耐性が高い磁性体記憶装置が実現できる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、書き込み配線を挟んで配置したフリー磁性体の磁気特性のシフトをそれぞれゼロに近づけることができる。このため、書き込み電流が対称で、外部磁場耐性が高い磁性体記憶装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す要部断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を示す要部平面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態を示す要部断面図である。
【図4】本発明の第1の実施例を示す要部断面図である。
【図5】本発明の第1の実施例を示す要部平面図である。
【図6】本発明の第2の実施例を示す要部断面図である。
【図7】本発明の第2の実施例を示す要部平面図である。
【図8】従来例の記憶素子を示す構造図である。
【図9】従来例の記憶装置を示す概要図である。
【図10】中間配線挿入型を示す図である。
【図11】素子数分布の測定例を示す図である。
【図12】反転条件の測定例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。 図1、図2を参照すると、本発明の第一の実施の形態として磁性体記憶装置の要部断面図と平面図が示されている。
【0025】
<第一の実施の形態の構成>
第一の実施の形態の磁性体記憶装置は、配線1と、配線1を挟んで配置した第1の磁性体2と第2の磁性体3と、第1の磁性体2に積層したトンネル絶縁体4と、トンネル絶縁体4に積層した第1の磁化固定磁性体5と、配線1に対して第2の磁性体3側に配置した第2の磁化固定磁性体6とを有する。第1の磁性体2と第2の磁性体3とは静磁結合しており、磁化方向は互いに逆向きとなる。データは第1の磁性体2と第2の磁性体3の磁化方向として記憶され、配線1に電流を流すことでこれらの磁化方向を制御する。
【0026】
このため、第1の磁性体2と第2の磁性体3とからなるフリー層は、配線1の電流磁場方向成分を持つ異方性を有する。異方性は、磁性体の結晶構造による異方性を用いたり、図2のように磁性体の形状を一方向に長くすることによる形状異方性を用いる。第1の磁性体2の磁化量と第2の磁性体3の磁化量はほぼ等しくすることで、外部磁場の影響を受けにくくすることができる。
【0027】
第1の磁性体2と第2の磁性体3とはそれぞれ単一の磁性体材料でも複数の磁性体の積層構造でもよい。また、複数の磁性体を非磁性体を挟んで反強磁性結合や強磁性結合させた構造でもよい。図1の上下関係、第1の磁性体から第1の磁化固定磁性体までの構造の上下関係、第2の磁性体と第2の磁化固定磁性体との上下関係はそれぞれ逆になってもよい。
第1の磁性体2には第1の磁化固定磁性体によりネールカップリング磁界Hn5が加わる。また、第1の磁性体2には、第1の磁化固定磁性体5端部からの漏れ磁界H52が加わる。さらに、第1の磁性体2には、第2の磁化固定磁性体6端部からの漏れ磁界H62が加わる。第2の磁性体3には、第1の磁化固定磁性体5端部からの漏れ磁界H53が加わる。さらに、第2の磁性体3には、第2の磁化固定磁性体6端部からの漏れ磁界H63が加わる。第1の磁性体2に加わる磁場H2と第2の磁性体3に加わる磁場H3は、図1の右向きを正とすると、次のように表現できる。
【0028】
H2=−Hn5+H52−H62 (式1)
H3=H53−H63 (式2)
ここで
H53=αH52 (式3)
H62=βH63 (式4)
とすると、下記条件に設計することでH2とH3をともにゼロにする。
【0029】
H52=Hn5/(1−αβ) (式5)
H63=αH52 (式6)
これにより、第1の磁性体2と第2の磁性体3のそれぞれに加わる磁場が相殺されるため、それぞれの磁気特性のシフトをゼロにできる。
【0030】
次に本磁性体記憶装置のデータ書き込み方法について説明する。データ[1]を書き込む場合、配線1に図の奥方向に第1の磁性体2と第2の磁性体3とを磁化反転させるのに十分な書き込み電流を流す。このとき配線1を中心に時計回りの磁場が形成され、第1の磁性体2の磁化方向は右方向に、第2の磁性体3の磁化方向は左方向に設定される。
【0031】
データ[0]を書き込む場合は、配線1に手前方向に書き込み電流を流す。このとき配線1を中心に反時計回りの磁場が形成され、第1の磁性体2の磁化方向は左方向に、第2の磁性体3の磁化方向は右方向に設定される。第1の磁性体2と第2の磁性体3のどちらかの磁気特性がシフトしていれば[0]と[1]の書き込み電流が非対称となり、どちらかが大きな電流を必要とするが、両者ともシフトしていないため、[0]と[1]とも同じ電流値、すなわち最小電流で書き込むことができる。
【0032】
次にデータの読み出し方法について説明する。第1の磁性体2と第1の磁化固定磁性体5の間の抵抗は両者の磁化方向の相違により変化するため、書き込まれたデータにより抵抗値が変化する。第1の磁化固定磁性体5と第1の磁性体2との間の抵抗を評価することで、記憶したデータを読み出すことができる。
【0033】
本実施の形態では、第1の磁性体2と第2の磁性体3とをともに磁気特性のシフトをゼロに設定できる。このため本構造により、データに依らず対称的な書き込み特性を持つ。さらに、外部磁場に対しても、シフトがある場合は本来の磁気特性より小さい外部磁場で磁化反転、すなわちデータ破壊が起きてしまうが、シフトがないため高い外部磁場耐性を有する。このように、本構造により書き込み電流が小さく、かつ外部磁場耐性が高い磁気記憶素子が得られる。
【0034】
図3を参照すると、本発明の第二の実施の形態として磁性体記憶装置の要部断面図が示されている。
【0035】
<第二の実施の形態の構成>
第二の実施の形態の磁性体記憶装置は、配線1と、配線1を挟んで配置した第1の磁性体2と第2の磁性体3と、第1の磁性体2に積層したトンネル絶縁体4と、トンネル絶縁体4に積層した第1の磁化固定磁性体5と、第2の磁性体3と非磁性体7を挟んで積層した第2の磁化固定磁性体6とを有する。第1の磁性体2と第2の磁性体3とは静磁結合しており、磁化方向は互いに逆向きとなる。データは第1の磁性体2と第2の磁性体3の磁化方向として記憶され、配線1に電流を流すことでこれらの磁化方向を制御する。
【0036】
このため、第1の磁性体2と第2の磁性体3とからなるフリー層は、配線1の電流磁場方向成分を持つ異方性を有する。異方性は、磁性体の結晶構造による異方性を用いたり、磁性体の形状を一方向に長くすることによる形状異方性を用いる。第1の磁性体2の磁化量と第2の磁性体3の磁化量はほぼ等しくすることで、外部磁場の影響を受けにくくすることができる。
【0037】
第1の磁性体2と第2の磁性体3とはそれぞれ単一の磁性体材料でも複数の磁性体の積層構造でもよい。また、複数の磁性体を非磁性体を挟んで反強磁性結合や強磁性結合させた構造でもよい。 第1の磁性体2には第1の磁化固定磁性体によりネールカップリング磁界Hn5が加わる。また、第1の磁性体2には、第1の磁化固定磁性体5端部からの漏れ磁界H52が加わる。
【0038】
さらに、第1の磁性体2には、第2の磁化固定磁性体6端部からの漏れ磁界H62が加わる。第2の磁性体3には第2の磁化固定磁性体6によりネールカップリング磁界Hn6が加わる。第2の磁性体3には、第1の磁化固定磁性体5端部からの漏れ磁界H53が加わる。さらに、第2の磁性体3には、第2の磁化固定磁性体6端部からの漏れ磁界H63が加わる。第1の磁性体2に加わる磁場H2と第2の磁性体3に加わる磁場H3は、図3の右向きを正とすると、次のように表現できる。
【0039】
H2=−Hn5+H52+H62 (式7)
H3=−Hn6+H53+H63 (式8)
ここで
H53=αH52 (式9)
H62=βH63 (式10)
とすると、下記条件に設計することでH2とH3をともにゼロにする。
【0040】
H52=(Hn5−βHn6)/(1−αβ) (式11)
H63=Hn6−αH52 (式12)
これにより、第1の磁性体2と第2の磁性体3のそれぞれに加わる磁場が相殺されるため、それぞれの磁気特性のシフトをゼロにできる。 データの書き込み方法と読み出し方法は第一の実施の形態と同様である。本実施の形態では、第一の実施の形態に加え第2の磁化固定磁性体からのネールカップリング磁界も用いており、設計の自由度が広がる。
【実施例】
【0041】
<第一の実施例>
次に、具体的な実施例を用いて本発明の動作を説明する。図4、図5を参照すると、本発明の第一の実施例として磁性体記憶素子の要部断面図、要部平面図がそれぞれ示されている。図4は図5のA−A’部分を示している。
【0042】
まず、図4を参考にして製造方法について説明する。トランジスタ、配線、Cuビア69を層間膜SiO270とともに形成した基板に、SiN(20nm)71、Ta(5nm)72、NiFeシード層(1nm)とPtMn(20nm)73、CoFe(0.5nm)74、Ta(2nm)75、NiFe(2.5nm)76、Ta(5nm)77をスパッタ法により成膜する。Ta75は、CoFe74とNiFe76との間でネールカップリング磁界がほとんど働かない厚さ、例えば0.6nm以上とする。
【0043】
フォトリソグラフィ技術によりTMRの形状にレジストを形成し、Ta77からTa72までをミリング法により加工し、レジストをアッシングにより除去する。TMRは図5に示すように書き込み配線の幅方向に長い楕円形で、長軸が0.4μm、短軸が0.2μmである。全面にSiO2(200nm)78をCVD法により形成後、化学的機械研磨(CMP)技術により平坦化する。書き込み配線以外の形状にレジストを形成し、SiO278をRIEによりエッチングする。
【0044】
レジスト除去後、全面をエッチングすることで開口部のSiN71を除去し、ビア69を露出させる。Cu80(200nm)を全面に成膜し、CMPでSiO278が露出するまで平坦化することで、書き込み配線部分にCu80を埋め込む。次に、Ta(2nm)81、NiFe(2.5nm)82、MgO(1nm)89、CoFe(2.5nm)90、Ru(0.8nm)91、CoFe(2nm)92、PtMn(20nm)93、Ta(50nm)94をスパッタ法により成膜する。NiFe82はNiFe76とほぼ同じ磁化量となるようにする。フォトリソグラフィ技術とミリング法により、Ta94からTa81までをTMR形状に加工する。
【0045】
この後、全面に層間膜SiO296をプラズマCVD法により形成したのち、CMP技術により全面を平坦化する。フォトリソグラフィ技術とドライエッチング技術によりTa94上にビアホールを形成し、Cu97を埋め込む。その後、上部配線Cu98を形成する。次に、250℃〜300℃の高温下でNiFe82パターンの長辺方向、図4では右方向に1000〜20000Oe程度の磁場を印加する。
【0046】
これによりCoFe92とCoFe74は磁場に沿った方向に向き、降温時に反強磁性体PtMn93とPtMn73がこれを支持する磁化状態に固定される。Ru91はCoFe92とCoFe90が反強磁性結合する厚さにしてあるため、CoFe90の磁化方向は左に向く。これによりNiFe82に働くネールカップリング磁界は左向きになる。
【0047】
CoFe90とCoFe92からなるピン層とCoFe74の厚さは、式5,式6を満たすように設計する。磁性膜と特性と形状からシミュレーションで適正値を計算し、これをもとに膜厚を変えて試作を行い、データによる書き込み電流のバランスと、外部磁場耐性から最終的な膜厚を決定する。
【0048】
次に、データの書き込み方法を説明する。書き込み配線Cu80の両端に配置した2つのCuビア69間に電圧を印加し書き込み配線に磁化反転を起こす書き込み電流、例えば1mAを流す。データ[0]を書く場合は、図5の下向き、図4の手前向きに電流を流す。このとき図4の書き込み配線を中心に反時計回りの電流磁場が発生し、NiFe82は左向きに、NiFe76は右向きに磁化方向が設定される。このときNiFe82とCoFe90の磁化方向が同じ向きになるため、TMR抵抗は低抵抗、すなわちデータ[0]となる。
【0049】
データ[1]を書く場合は、図5の上向き、図4の奥向きに電流を流す。このとき図4の書き込み配線を中心に時計回りの電流磁場が発生し、NiFe82は右向きに、NiFe76は左向きに磁化方向が設定される。このときNiFe82とCoFe90の磁化方向が逆向きになるため、TMR抵抗は高抵抗、すなわちデータ[1]となる。
【0050】
次に読み出し方法について説明する。TMR抵抗はデータにより異なる値となっているため、配線Cu98と配線Cu80との間に電流を流してTMR抵抗を評価することでデータが判別できる。Ta75部分には電流が流れないため、絶縁体を用いてもよい。ピン層部、NiFe82、NiFe76、CoFe74はたがいに異なる形状でもよい。NiFe82、NiFe76はデータを保持するため異方性が必要であるが、どちらかに異方性があればもう一方は異方性がなくてもよい。
【0051】
形状は楕円形に限らず,長方形や菱形、平行四辺形なども可能である。各磁性体は単層膜でも、複数の磁性体の積層膜でも、磁性体同士を反強磁性結合や強磁性結合させる非磁性体を挟んだ磁性体積層膜でもよい。
【0052】
本実施例に依れば、NiFe76に加わる静磁界と、NiFe82に加わる静磁界とネールカップリング磁界とをそれぞれ制御できるため、両方ともゼロに近づけることが可能である。このため、データによる書き込み電流特性のシフトと、外部磁場耐性のシフトの両方をゼロに調整できる。これにより、書き込み電流が小さく、外部磁場耐性のよい磁性体記憶装置が実現可能となる。
【0053】
<第二の実施例>
図6、図7を参照すると、本発明の第二の実施例として磁性体記憶素子の要部断面図、要部平面図がそれぞれ示されている。図6は図7のA−A’部分を示している。
【0054】
まず、図6を参考にして製造方法について説明する。トランジスタ、配線、Cuビア69を層間膜SiO270とともに形成した基板に、SiN(20nm)71、Ta(5nm)72、NiFeシード層(1nm)とPtMn(20nm)73、CoFe(2.5nm)74、Ru(0.8nm)100、CoFe(2.7nm)101、MgO(1.1nm)102、NiFe(3nm)76、Ta(5nm)77をスパッタ法により成膜する。Ru100はCoFe74とCoFe101が反強磁性結合する厚さとする。
【0055】
フォトリソグラフィ技術により配線下層磁性体形状にレジストを形成し、Ta77からTa72までをミリング法により加工し、レジストをアッシングにより除去する。形状は図7に示すように直径が0.5μmの円形である。全面にSiO2(200nm)78をCVD法により形成後、化学的機械研磨(CMP)技術により平坦化する。
【0056】
書き込み配線以外の形状にレジストを形成し、SiO278をRIEによりエッチングする。レジスト除去後、全面をエッチングすることで開口部のSiN71を除去し、ビア69を露出させる。Cu80(200nm)を全面に成膜し、CMPでSiO278が露出するまで平坦化することで、書き込み配線部分にCu80を埋め込む。次に、Ta(2nm)81、NiFe(2nm)103、Ru(1.5nm)104、NiFe(2nm)105、MgO(1nm)89、CoFe(2.5nm)90、Ru(0.8nm)91、CoFe(2nm)92、PtMn(20nm)93、Ta(50nm)94をスパッタ法により成膜する。Ru104はNiFe103とNiFe105が強磁性結合する厚さとする。
【0057】
フォトリソグラフィ技術とミリング法により、Ta94からNiFe105までを図7に示す長軸0.45μm、短軸0.3μmの楕円形に加工する。楕円は磁化反転電流が小さくなるように、電流が流れる方向から例えば45度傾けてある。
【0058】
レジスト除去後、全面にSiN(10nm)106をCVD法により成膜し、さらにフォトリソグラフィ技術とミリング法により、Ru104からTa81までを図7に示す直径0.48μmの円形に加工する。強磁性結合しているため同じ磁化方向となるNiFe103とNiFe105との磁化量の和はNiFe76とほぼ同じ磁化量となるようにする。
【0059】
この後、全面に層間膜SiO296をプラズマCVD法により形成したのち、CMP技術により全面を平坦化する。フォトリソグラフィ技術とドライエッチング技術によりTa94上にビアホールを形成し、Cu97を埋め込む。その後、上部配線Cu98を形成する。
【0060】
次に、250℃〜300℃の高温下でNiFe82パターンの長辺方向、図7では右上方向に1000〜20000Oe程度の磁場を印加する。これによりCoFe92とCoFe74は磁場に沿った方向に向き、降温時に反強磁性体PtMn93とPtMn73がこれを支持する磁化状態に固定される。Ru91はCoFe92とCoFe90が反強磁性結合する厚さにしてあるため、CoFe90の磁化方向は左に向く。これによりNiFe105に働くネールカップリング磁界は左向きになる。
【0061】
またRu100もCoFe74とCoFe101が反強磁性結合する厚さにしてあるため、CoFe101の磁化方向は左に向く。これによりNiFe76に働くネールカップリング磁界は左向きになる。CoFe90とCoFe92からなる上部ピン層とCoFe74とCoFe101とからなる下部ピン層の厚さは、式11,式12を満たすように設計する。
【0062】
磁性膜と特性と形状からシミュレーションで適正値を計算し、これをもとに膜厚を変えて試作を行い、データによる書き込み電流のバランスと、外部磁場耐性から最終的な膜厚を決定する。
【0063】
次に、データの書き込み方法を説明する。書き込み配線Cu80の両端に配置した2つのCuビア69間に電圧を印加し書き込み配線に磁化反転を起こす書き込み電流、例えば0.5mAを流す。データ[0]を書く場合は、図7の下向き、図6の手前向きに電流を流す。このとき図6の書き込み配線を中心に反時計回りの電流磁場が発生し、NiFe76は右向きに磁化方向が変化する。円形のNiFe76は異方性が小さいため磁化反転しやすく、これによりNiFe103とNiFe105の磁化反転が誘導され左向きに変化する。このときNiFe105とCoFe90の磁化方向が同じ向きになるため、TMR抵抗は低抵抗、すなわちデータ[0]となる。
【0064】
データ[1]を書く場合は、図7の上向き、図5の奥向きに電流を流す。このとき図5の書き込み配線を中心に時計回りの電流磁場が発生し、NiFe76は左向きに磁化方向が変化し、これに誘導されてNiFe103とNiFe105の磁化方向が右向きに変化する。このときNiFe105とCoFe90の磁化方向が逆向きになるため、TMR抵抗は高抵抗、すなわちデータ[1]となる。 読み出し方法は第1の実施例と同様である。
【0065】
本実施例に依れば、第一の実施例に加えNiFe76にネールカップリング磁界を働かせることで、膜厚や材料の設計の自由度を大きくできる。なお、本発明は上記各実施例に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において各実施例は適宜変更され得ることは明らかである。
【符号の説明】
【0066】
1 配線
2 第1の磁性体
3 第2の磁性体
4 トンネル絶縁体
5 第1の磁化固定磁性体
6 第2の磁化固定磁性体
7 非磁性体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶データにより磁化状態が異なる第1の磁性体と、前記第1の磁性体と静磁結合し前記第1の磁性体の磁化状態に従って磁化状態が変化する第2の磁性体と、前記第1の磁性体と積層されたトンネル絶縁体と、前記トンネル絶縁体と積層された第1の磁化固定磁性体と、書き込み配線とを有し、前記第1の磁性体と前記第2の磁性体とが前記書き込み配線を挟んで配置され、書き込み配線に流す電流の方向により前記第1の磁性体と前記第2の磁性体の磁化方向を制御する磁性体記憶装置において、前記書き込み配線に対して前記第2の磁性体側に第2の磁化固定磁性体を有することを特徴とする磁性体記憶装置。
【請求項2】
前記第1の磁性体と前記第2の磁性体の磁化量が同程度であることを特徴とする請求項1の磁性体記憶装置。
【請求項3】
前記第2の磁性体と前記第2の磁化固定磁性体が静磁結合していることを特徴とする請求項1から2の磁性体記憶装置。
【請求項4】
磁化反転に必要な書き込み配線電流がデータに依らず同程度であり、かつ、外部から磁場を印加した時に磁化反転が起きる磁場の大きさが印加磁場の原点に対してほぼ対称な特性であることを特徴とする請求項1から3の磁性体記憶装置。
【請求項5】
前記第1の磁性体に加わるネールカップリング磁界をHn5、第1の磁性体に加わる第1の磁化固定磁性体からの磁界をH52、第1の磁性体に加わる第2の磁化固定磁性体からの磁界をH62、第2の磁性体に加わる第1の磁化固定磁性体からの磁界をH53、第2の磁性体に加わる第2の磁化固定磁性体からの磁界をH63、さらにH53=αH52、H62=βH63としたとき、H52がHn5/(1−αβ)と同程度の値であり、かつH63がαH52と同程度であることを特徴とする請求項1〜4の磁性体記憶装置。
【請求項6】
前記第2の磁性体に前記第2の磁化固定磁性体からのネールカップリング磁界が働いていることを特徴とする請求項1〜4の磁性体記憶装置。
【請求項7】
前記第1の磁性体に加わるネールカップリング磁界をHn5、第1の磁性体に加わる第1の磁化固定磁性体からの磁界をH52、第1の磁性体に加わる第2の磁化固定磁性体からの磁界をH62、前記第2の磁性体に加わるネールカップリング磁界をHn6、第2の磁性体に加わる第1の磁化固定磁性体からの磁界をH53、第2の磁性体に加わる第2の磁化固定磁性体からの磁界をH63、さらにH53=αH52、H62=βH63としたとき、H52が(Hn5−βHn6)/(1−αβ)と同程度であり、さらにH63がHn6−αH52と同程度であることを特徴とする請求項6の磁性体記憶装置。
【請求項1】
記憶データにより磁化状態が異なる第1の磁性体と、前記第1の磁性体と静磁結合し前記第1の磁性体の磁化状態に従って磁化状態が変化する第2の磁性体と、前記第1の磁性体と積層されたトンネル絶縁体と、前記トンネル絶縁体と積層された第1の磁化固定磁性体と、書き込み配線とを有し、前記第1の磁性体と前記第2の磁性体とが前記書き込み配線を挟んで配置され、書き込み配線に流す電流の方向により前記第1の磁性体と前記第2の磁性体の磁化方向を制御する磁性体記憶装置において、前記書き込み配線に対して前記第2の磁性体側に第2の磁化固定磁性体を有することを特徴とする磁性体記憶装置。
【請求項2】
前記第1の磁性体と前記第2の磁性体の磁化量が同程度であることを特徴とする請求項1の磁性体記憶装置。
【請求項3】
前記第2の磁性体と前記第2の磁化固定磁性体が静磁結合していることを特徴とする請求項1から2の磁性体記憶装置。
【請求項4】
磁化反転に必要な書き込み配線電流がデータに依らず同程度であり、かつ、外部から磁場を印加した時に磁化反転が起きる磁場の大きさが印加磁場の原点に対してほぼ対称な特性であることを特徴とする請求項1から3の磁性体記憶装置。
【請求項5】
前記第1の磁性体に加わるネールカップリング磁界をHn5、第1の磁性体に加わる第1の磁化固定磁性体からの磁界をH52、第1の磁性体に加わる第2の磁化固定磁性体からの磁界をH62、第2の磁性体に加わる第1の磁化固定磁性体からの磁界をH53、第2の磁性体に加わる第2の磁化固定磁性体からの磁界をH63、さらにH53=αH52、H62=βH63としたとき、H52がHn5/(1−αβ)と同程度の値であり、かつH63がαH52と同程度であることを特徴とする請求項1〜4の磁性体記憶装置。
【請求項6】
前記第2の磁性体に前記第2の磁化固定磁性体からのネールカップリング磁界が働いていることを特徴とする請求項1〜4の磁性体記憶装置。
【請求項7】
前記第1の磁性体に加わるネールカップリング磁界をHn5、第1の磁性体に加わる第1の磁化固定磁性体からの磁界をH52、第1の磁性体に加わる第2の磁化固定磁性体からの磁界をH62、前記第2の磁性体に加わるネールカップリング磁界をHn6、第2の磁性体に加わる第1の磁化固定磁性体からの磁界をH53、第2の磁性体に加わる第2の磁化固定磁性体からの磁界をH63、さらにH53=αH52、H62=βH63としたとき、H52が(Hn5−βHn6)/(1−αβ)と同程度であり、さらにH63がHn6−αH52と同程度であることを特徴とする請求項6の磁性体記憶装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−243757(P2011−243757A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114872(P2010−114872)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]