説明

移動体の高精度姿勢検出装置

【課題】 移動体に搭載した慣性センサ出力の中から移動体の姿勢演算に不要な慣性成分を除去して、移動体の姿勢検出を精度良く検出することのできる移動体の高精度姿勢検出装置を提供する。
【解決手段】 移動体の高精度姿勢検出装置は、移動体に、当該移動体の慣性を検出する慣性検出手段と、当該移動体の動作を生成する動作生成手段と、姿勢演算を行う演算処理手段を備え、演算処理手段により慣性検出手段の出力と動作生成手段の出力に基づき移動体の姿勢を高精度に検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の姿勢を高精度に検出する高精度姿勢検出装置に関するものであり、詳細には、歩行ロボットや車輪型移動ロボットなどの移動ロボットの姿勢の安定制御を行うため、この移動ロボットの本体の加速度や姿勢回転角速度や姿勢角等を高精度に計測を行う場合などに好適に利用できる移動体の高精度姿勢検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動体である移動ロボットの姿勢制御は、従来より、例えば、特許文献1に示されているように、ロボット本体の一軸の姿勢に対して、一つのレートジャイロや一つの加速度センサを用いて姿勢角を検出し、その信号をフィードバックして、移動体の姿勢制御を行っていた。
【0003】
ところが、レートジャイロや加速度センサ等の姿勢センサ出力には温度によるドリフトが存在するため、移動体の姿勢制御を精度良く制御できない問題があった。また、特に長時間に渡り移動体の姿勢制御を行う場合はドリフト量が顕著になるため、移動ロボットでも特に歩行ロボットにいたっては転倒を起こす問題があった。
【0004】
このような問題を解決する1つ目の方法として、温度センサを用いた姿勢センサの出力を補正する方法が考えられている。
【0005】
しかしながら、この1つ目の解決方法は、姿勢センサを駆動する電源を安定して供給できるシステムを備えた移動体には有効であるものの、姿勢センサの駆動電源が変動し、その結果、姿勢センサ出力も変動する場合には、やはり移動体の姿勢制御を精度良く制御できない問題があった。特に、小型軽量であり、限られたロボット本体の本体スペースに、制御用コンピュータ、センサ、駆動電源等を搭載する歩行ロボットの場合、制御用コンピュータでの演算処理による負荷変動が、駆動電源の出力変動を引き起こし、その結果、姿勢角の検出変動・ドリフトまでも引き起こしている。そのため、温度センサを用いた姿勢センサの出力を補正したところで、やはり、歩行ロボットにいたっては転倒を起こす問題があった。
【0006】
また、ドリフトの問題を解決する別の方法として、例えば、特許文献2に示されているように、2つの差動回路のみならず、同期検波回路、平滑回路、移相回路を用いて、ドリフトを検出し補正する方法がある。
【0007】
しかしながら、この解決方法では、回路が複雑になる問題があった。また、センサ出力をドリフト補償したにも関わらず、姿勢制御装置の駆動電源変動、すなわちアナログ・デジタル変換回路の基準電圧変動により、制御演算処理等を行う姿勢制御装置に取り込んだ際には制御信号として、やはりドリフトが発生する問題があった。
【0008】
レートジャイロのドリフト問題の別の解決方法として、例えば、レートジャイロと加速度センサと併用し、カルマンフィルタ等の姿勢角検出アルゴリズムを構成し、姿勢センサのドリフトを補正しながら姿勢角を検出する方法が考えられている。
【0009】
しかしながら、レートジャイロのドリフトを解消する役割の加速度センサ自体のドリフトを補正できない問題があった。更には、カルマンフィルタ等の姿勢角検出アルゴリズムにおいては、静的(もしくは低周波数領域)において姿勢角の補正が行われているため、移動体に動的な運動を行わせる場合、動的な(もしくは高周波数領域の)姿勢角を精度良く検出できない問題も存在する。これらの問題により、カルマンフィルタ等の姿勢角検出アルゴリズムにより姿勢角を検出したところで、やはり、歩行ロボットにいたっては転倒を起こす問題があった。
【0010】
姿勢検出センサの温度ドリフト、姿勢検出手センサに供給する駆動電源の変動、制御演算処理機構での取り込み時に発生する変動ドリフトなどが存在する場合の解決方法としては、本発明者らが先に提案した特許文献3に示すように、移動体の姿勢検出手段と、この姿勢検出手段に対して出力が反転して出力されるもう一つの姿勢検出手段を備え、姿勢検出手段と制御演算処理機構が共通の駆動電源で駆動されて、制御演算処理機構により移動体の姿勢を高精度に検出する方法がある。
【特許文献1】特開2001−9772号公報
【特許文献2】特開平07−218269号公報
【特許文献3】特開2004−53530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献3に示されるように、本発明者らは、移動体の高精度姿勢検出方法を提案したが、更に、解決すべき課題として、特許文献3に記載の移動体の高精度姿勢検出方法おいては、移動体自身が急な加減速を行う場合、旋回移動により遠心加速度が移動体に働く場合、加減速する台車に移動体が搭乗している場合など、加速度センサ自身に移動体の慣性加速度が作用している場合には、姿勢角を高精度に検出できないという問題が存在していた。また、移動体の慣性加速度の影響を除去するため、姿勢検出演算過程でレートジャイロに重みを付けて姿勢角を算出する方法が考えられるが、自転する環境(星上:地球上に限らず月や火星などを含む全ての星上)に移動体が居る場合には、レートジャイロセンサ自身に自転の回転角速度が影響するため、姿勢角を高精度に検出できないという問題が存在していた。
【0012】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、移動体に搭載した慣性センサ出力の中から移動体の姿勢演算に不要な慣性成分を除去して、移動体の姿勢を精度良く検出することのできる移動体の高精度姿勢検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するため、本発明の第1の解決手段によれば、移動体に、当該移動体の慣性を検出する慣性検出手段と、当該移動体の動作を生成する動作生成手段と、移動体の姿勢演算を行う演算処理手段を備え、前記演算処理手段により慣性検出手段の出力と動作生成手段の出力に基づき移動体の姿勢を高精度に検出することができる移動体の高精度姿勢検出装置が提供される。
【0014】
このような本発明の第1の解決手段によれば、移動体に搭載した慣性検出手段の出力の中から移動体の姿勢演算に不要な慣性成分を、移動体の動作を生成する動作生成手段の出力(目標値)を用いて除去することができるため、移動体自身が急な加減速を行う場合、旋回移動により遠心加速度が移動体に働く場合、加減速する台車に移動体が搭乗している場合、または、移動体が自転する環境(星上:地球上に限らず月や火星などを含む全ての星上)に居る場合のいずれの場合においても、精度良く移動体の姿勢を検出することができる。
【0015】
本発明の第1の解決手段の第1の具体的方法によれば、前記慣性検出手段には、少なくとも加速度センサが備えられ、前記動作生成手段の出力から少なくとも動作の加速度目標値が出力されており、前記演算処理手段は、加速度目標値に基づき慣性検出手段の加速度センサ出力を補正し、補正した加速度センサの出力に基づき、移動体の姿勢を高精度に検出することができる。
【0016】
本発明の第1の解決手段の第2の具体的方法によれば、前記慣性検出手段には、少なくとも加速度センサが備えられ、前記動作生成手段の出力から少なくとも移動体が居る環境の自転による遠心力が出力されており、前記演算処理手段は、遠心力に基づき慣性検出手段の加速度センサ出力を補正し、補正した加速度センサの出力に基づき移動体の姿勢を高精度に検出することができる。
【0017】
本発明の第1の解決手段の第3の具体的方法によれば、前記慣性検出手段には、少なくともレートジャイロが備えられ、前記動作生成手段の出力から少なくとも移動体が居る環境の自転速度が出力されており、前記演算処理手段は、自転速度に基づき慣性検出手段のレートジャイロ出力を補正し、補正したレートジャイロの出力に基づき移動体の姿勢を高精度に検出することができる。
【0018】
また、本発明の第2の解決手段によれば、移動体に、当該移動体の慣性を検出する慣性検出手段と、当該移動体が居る環境の情報を検出し記憶する環境情報手段と、移動体の姿勢演算を行う演算処理手段を備え、前記演算処理手段により慣性検出手段の出力と環境情報手段の出力に基づき移動体の姿勢を高精度に検出することができる移動体の高精度姿勢検出装置が提供される。
【0019】
このような本発明の第2の解決手段によれば、移動体に搭載した慣性検出手段の出力の中から移動体の姿勢演算に不要な慣性成分を、移動体が居る環境の情報を検出し記憶する環境情報手段の出力を用いて除去することができるため、移動体自身が急な加減速を行う場合、旋回移動により遠心加速度が移動体に働く場合、加減速する台車に移動体が搭乗している場合、または、移動体が自転する環境(星上:地球上に限らず月や火星などを含む全ての星上)に居る場合のいずれの場合においても、精度良く移動体の姿勢を検出することができる。
【0020】
本発明の第2の解決手段の第1の具体的方法によれば、前記慣性検出手段には、少なくとも加速度センサが備えられ、前記環境情報手段には、少なくとも移動体と環境との間に作用する力を検出する力センサと、前記力センサと前記加速度センサとの間の座標変換を行う座標変換手段が備えられ、前記演算処理手段は、力センサの出力から動作を生成する加速度値を演算し、演算した加速度値と前記座標変換手段の出力に基づき慣性検出手段の加速度センサ出力を補正し、補正した加速度センサの出力に基づき移動体の姿勢を高精度に検出することができる。
【0021】
本発明の第2の解決手段の第2の具体的方法によれば、前記慣性検出手段には、少なくとも加速度センサが備えられ、前記環境情報手段には、少なくとも移動体の緯度を検出するGPSセンサと、方位を検出する方位センサと、環境(床)と前記加速度センサとの間の座標変換を行う座標変換手段が備えられ、前記演算処理手段は、GPSセンサの出力、方位センサの出力、座標変換手段の出力により、移動体が居る位置での自転による遠心力を演算し、演算した遠心力に基づき慣性検出手段の加速度センサ出力を補正し、補正した加速度センサの出力に基づき移動体の姿勢を高精度に検出することができる。
【0022】
本発明の第2の解決手段の第3の具体的方法によれば、前記慣性検出手段には、少なくともレートジャイロが備えられ、前記環境情報手段には、少なくとも移動体の緯度を検出するGPSセンサと、方位を検出する方位センサと、環境(床)と前記レートジャイロとの間の座標系の変換を行う座標変換手段が備えられ、前記演算処理手段は、GPSセンサの出力、方位センサの出力、座標変換手段の出力により、移動体が居る位置での自転による回転角速度を演算し、演算した回転角速度に基づき慣性検出手段のレートジャイロ出力を補正し、補正したレートジャイロの出力に基づき移動体の姿勢を高精度に検出することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明による移動体の高精度姿勢検出装置によれば、移動体自身が急な加減速を行う場合、旋回移動により遠心加速度が移動体に働く場合、加減速する台車に移動体が搭乗している場合、加速度センサ自身に移動体の慣性加速度が作用している場合のいずれの場合においても、姿勢角を高精度に検出する装置を得ることができる。また、移動体が自転する環境(星上:地球上に限らず月や火星などを含む全ての星上)に移動体が居て、レートジャイロセンサ自身に自転の回転角速度が影響する場合においても、姿勢角を高精度に検出する装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、本発明の第1実施例の高精度姿勢検出装置の構成を概略的に示す図であり、高精度姿勢検出装置2aによって、歩行ロボットの胴体3の姿勢角を、高精度に検出する実施例の装置の構成を説明する図である。図1は本発明が対象とする移動体の例として、歩行ロボットを用いて示したものであるが、移動体としては歩行ロボットに限らず、車輪型移動ロボットなどさまざまな移動体であってよい。
【0025】
図1において、3はロボット胴体、10は慣性検出手段、20は動作生成手段である。また、4aは片脚の大腿リンク、4bは片脚の下腿リンク、5は片脚の足裏、6aは第1の関節モータ、6bは第2の関節モータ、6cは第3の関節モータであり、これらは、それぞれ図示しない他方の片脚分についても備えられている。図示されないが、各関節の関節角は、エンコーダやポテンショメータなどの関節角センサにより検出される。加えて、同じく図示しない制御装置により、動作生成手段20により生成される動作を忠実に再現するように各関節のアクチュエータが制御されて、図示する歩行ロボットが移動する。
【0026】
高精度姿勢検出装置2aは、慣性検出手段10及び動作生成手段20から構成されている。慣性検出手段10には、加速度センサ(11a,11b)が備え付けられており、ここでの動作生成手段20からは、重力加速度成分を含まず、生成している動作の加減速成分のみからなる加速度目標値21aが出力されている。加速度目標値21aは、後述するように、演算処理の簡略化のためには、加速度センサ(11a,11b)と同じ方向成分で出力されていることが好ましい。加速度センサ(11a,11b)と同じ方向成分で出力されていない場合には、後述するように、演算処理部に座標変換手段を設けて、加速度目標値21aの出力座標と目標姿勢状態にある胴体3に設置された加速度センサ(11a,11b)の出力座標との間の座標変換を行い、同じ方向成分として演算する。以下、説明の簡略化のため、加速度目標値21aは、加速度センサ(11a,11b)と同じ方向成分で出力されているとする。
【0027】
図2は、図1の高精度姿勢検出装置2aの演算処理部の構成を示すブロック図であり、歩行ロボットの胴体3の姿勢角を、高精度に検出する実施例の装置の構成を説明する図である。具体的には、動作生成手段20から出力される加速度目標値21aの内、加速度センサ11aと同じ方向の成分で、且つ重力成分を含まない加速度目標値「αa_ref1」に基づき、加速度センサ11aの出力「αa_sen」を補正し、補正加速度「αa」を算出している。同様にして、動作生成手段20から出力される加速度目標値21aの内、加速度センサ11bと同じ方向の成分であり、且つ重力成分を含まない加速度目標値「αb_ref1」に基づき、加速度センサ11bの出力「αb_sen」を補正し、補正加速度「αb」を算出している。最終的には、この補正した加速度信号の「αa」と「αb」に基づき、移動体の姿勢を高精度に検出する。
【0028】
この場合、高精度姿勢検出装置2aの演算処理によって得られる補正した加速度信号の補正加速度「αa」と補正加速度「αb」は、それぞれ
αa=αa_sen−αa_ref1
αb=αb_sen−αb_ref1
であり、移動体自身の移動に伴う加減速成分を除去することにより、高精度に歩行ロボットの胴体3の姿勢に起因する加速度(αa,αb)を求めることができる。
そのため、図2に示す演算処理部の演算処理は、具体的には
姿勢角=−tan−1(αb/αa)
により姿勢角を求める。これにより、移動体自身が急な加減速を行う場合、または旋回移動により遠心加速度が移動体に働く場合においても、高精度に歩行ロボットの胴体3の姿勢角を求めることができる。
【0029】
図3〜図5は、本発明による高精度姿勢検出装置の動作を説明する図である。本発明の第1実施例の具体例として、図3に示すように、移動体の胴体3が水平を維持したまま、加速している状態に関して概略を説明する。
【0030】
従来においては、例えば、特許文献3の高精度姿勢検出装置においては、姿勢角の演算処理過程において、移動体の移動に伴う加速度を考慮していないため、図3に示すように、胴体3が加速をおこなっている状況においては、図4に示すように、胴体3の姿勢が傾いていると誤認識する場合があった。そのため、この姿勢検出情報を用いて移動体の姿勢制御を行った場合、誤った姿勢に制御されてしまうという問題があった。特に、歩行ロボットにいたっては、転倒を起こすという問題があった。
【0031】
これに対して、本発明の第1実施例の高精度姿勢検出装置では、姿勢角の演算処理過程において、加速度センサに含まれる移動体の移動に伴う加速度を、動作生成手段20の出力(加速度目標値)を用いて除去しているため、図3のように、胴体3が加速をおこなっている状況においても、図5に示すように、胴体3の姿勢を高精度に演算することが可能となる。そのため、この姿勢検出情報を用いて移動体の姿勢制御を行った場合、目標姿勢に高精度に制御を行うことが可能であり、歩行ロボットにいたっては、転倒を回避して、安定した歩行の実現が可能となる。
【0032】
図6は、本発明の第2実施例の高精度姿勢検出装置の構成を概略的に示す図であり、高精度姿勢検出装置2bによって、歩行ロボットの胴体3の姿勢角を、高精度に検出する実施例の装置の構成を説明する図である。第2実施例の高精度姿勢検出装置2bは、第1実施例の高精度姿勢検出装置2aと同様に、慣性検出手段10と動作生成手段20から構成されており、慣性検出手段10には、加速度センサ(11a,11b)が備え付けられている。相違点は、動作生成手段20からは、生成している動作の加減速成分と重力成分を合算した加速度目標値21bが出力されている共に、既知重力加速度22と目標姿勢角23も出力されている点である。これらのデータを用いて、高精度に移動体の姿勢角を検出する。なお、第1実施例の高精度姿勢検出装置2aと同様に、以下の説明の簡略化のために、加速度目標値21bは、加速度センサ(11a,11b)と同じ方向成分で出力されているとする。
【0033】
図7は、図6の高精度姿勢検出装置2bの演算処理部の構成を示すブロック図であり、歩行ロボットの胴体3の姿勢角を、高精度に検出する実施例の装置の構成を説明する図である。具体的には、動作生成手段20から出力される加速度目標値21bの内、加速度センサ11aと同じ方向の成分で、且つ動作の加減速成分と重力成分を合算した加速度目標値「αa_ref2」と、既知の重力加速度22と、目標姿勢角23に基づき、加速度センサ11aの出力「αa_sen」を補正し、補正加速度「αa」を算出している。同様にして、動作生成手段20から出力される加速度目標値21bの内、加速度センサ11bと同じ方向の成分で、且つ動作の加減速成分と重力成分を合算した加速度目標値「αb_ref2」と、既知の重力加速度22と、目標姿勢角23に基づき、加速度センサ11bの出力「αb_sen」を補正し、補正加速度「αb」を算出している。最終的には、この補正した加速度信号の補正加速度「αa」と補正加速度「αb」に基づいて、移動体の姿勢を高精度に検出している。
【0034】
ここでは、既知重力加速度22と目標姿勢角23によって、移動体の胴体3の姿勢角が目標姿勢角23になっている場合の重力成分を算出している。すなわち、加速度センサ11aと同じ方向の成分「αa_grav」と加速度センサ11bと同じ方向の成分「αb_grav」とを演算している。そのため、高精度姿勢検出装置2bの演算処理によって得られる補正した加速度信号の補正加速度「αa」と補正加速度「αb」は、それぞれ
αa=αa_sen−αa_ref2+αa_grav
αb=αb_sen−αb_ref2+αb_grav
であり、移動体自身の移動に伴う加減速成分を除去することにより、高精度に歩行ロボットの胴体3の姿勢に起因する加速度(αa,αb)を求めることができる。
そのため、図7に示す演算処理部の演算処理、具体的には
姿勢角=−tan−1(αb/αa)
により姿勢角を求める。これにより、移動体自身が急な加減速を行う場合や旋回移動により遠心加速度が移動体に働く場合においても、高精度に歩行ロボットの胴体3の姿勢角を求めることができる。
【0035】
図8は、本発明の第3実施例の高精度姿勢検出装置の構成を概略的に示す図であり、高精度姿勢検出装置2cによって、歩行ロボットの胴体3の姿勢角を、高精度に検出する実施例の装置の構成を説明する図である。
【0036】
前述した第1実施例の高精度姿勢検出装置2a、第2実施例の高精度姿勢検出装置2bと同様に、第3実施例の高精度姿勢検出装置2cは、慣性検出手段10と動作生成手段20から構成されており、慣性検出手段10には、加速度センサ(11a,11b)が備え付けられている。相違点は、動作生成手段20からは、移動体が居る環境(星)の自転による遠心力24が出力されている点である。遠心力24は、後述するように、演算処理部による演算処理の簡略化のため、移動体の居る位置での遠心力であるとともに、加速度センサ(11a,11b)と同じ方向成分で出力されていることが好ましい。移動体の居る位置での遠心力が出力されていない場合には、移動体が居る環境(星)の既知半径と既知自転速度と目標緯度から算出する。また、加速度センサ(11a,11b)と同じ方向成分で出力されていない場合には、座標変換手段を備え、座標変換手段により、目標方位と目標姿勢を使用し、遠心力24の出力座標と目標姿勢状態にある胴体3に設置された加速度センサ(11a,11b)の出力座標との間の座標変換を行う。以下、説明の簡略化のため、遠心力24は、移動体の居る位置での遠心力であるとともに、加速度センサ(11a,11b)と同じ方向成分で出力されているとする。
【0037】
図9は、図8の高精度姿勢検出装置2cの演算処理部の構成を示すブロック図であり、歩行ロボットの胴体3の姿勢角を、高精度に検出する実施例の装置の構成を説明する図である。具体的には、動作生成手段20から出力される遠心力24の内、加速度センサ11aと同じ方向の成分「αa_cen1」に基づき、加速度センサ11aの出力「αa_sen」を補正し、補正加速度「αa」を算出している。同様にして、動作生成手段20から出力される遠心力24の内、加速度センサ11bと同じ方向の成分「αb_cen1」に基づき、加速度センサ11bの出力「αb_sen」を補正し、補正加速度「αb」を算出している。最終的には、この補正した加速度信号の補正加速度「αa」と補正加速度「αb」に基づき、移動体の姿勢を高精度に検出する。
【0038】
この場合、高精度姿勢検出装置2cの演算処理によって得られる補正した加速度信号の補正加速度「αa」と補正加速度「αb」は、それぞれ
αa=αa_sen−αa_cen1
αb=αb_sen−αb_cen1
であり、移動体が居る環境(星)の自転により遠心力成分を除去することにより、高精度に歩行ロボットの胴体3の姿勢に起因する加速度(αa,αb)を求めることができる。
そのため、図9に示す演算処理部の演算処理、具体的には
姿勢角=−tan−1(αb/αa)
により姿勢角を求める。これにより、移動体が居る環境(星)が自転しており、加速度センサ出力に自転による遠心力成分が混入するような場合においても、高精度に歩行ロボットの胴体3の姿勢角を求めることができる。
【0039】
図10は、本発明の第4実施例の高精度姿勢検出装置の構成を概略的に示す図であり、高精度姿勢検出装置2dによって、歩行ロボットの胴体3の姿勢角を、高精度に検出する実施例の装置の構成を説明する図である。
【0040】
第4実施例の高精度姿勢検出装置2dは、前述した第1〜3実施例の高精度姿勢検出装置(2a,2b,2c)と同様に、慣性検出手段10と動作生成手段20から構成されている。これらの第1〜3実施例の高精度姿勢検出装置との相違点は、慣性検出手段10には、レートジャイロ12c備え付けられており、動作生成手段20からは、移動体が居る環境(星)の自転速度25が出力されている点である。自転速度25は、後述する演算処理部の演算処理の簡略化のため、レートジャイロ12cと同じ方向成分で出力されていることが好ましい。レートジャイロ12cと同じ方向成分で出力されていない場合には、座標変換手段を用いて、目標緯度と目標方位と目標姿勢を使用し、自転速度25の出力座標と目標姿勢状態にある胴体3に設置されたレートジャイロ12cの出力座標との間の座標変換を行う。以下、説明の簡略化のため、自転速度25は、レートジャイロ12cと同じ方向成分で出力されているとする。
【0041】
図11は、図10の高精度姿勢検出装置2dの演算処理部の構成を示すブロック図であり、歩行ロボットの胴体3の姿勢角を、高精度に検出する実施例の装置の構成を説明する図である。具体的には、動作生成手段20から出力される自転速度25の内、レートジャイロ12cと同じ方向の成分「ωc_rot1」に基づき、レートジャイロ12cの出力「ωc_sen」を補正し、補正角速度「ωc」を算出している。最終的には、この補正した角速度信号の補正角速度「ωc」に基づき、移動体の姿勢を高精度に検出している。
【0042】
この場合、高精度姿勢検出装置2dの演算処理部の演算処理によって得られる補正した角速度信号の補正角速度「ωc」は、
ωc=ωc_sen−ωc_rot1
であり、移動体が居る環境(星)の自転による自転速度成分を除去することにより、高精度に歩行ロボットの胴体3の姿勢に起因する角速度(ωc)を求めることができる。
そのため、図11に示す演算処理部の演算処理、具体的には
【数1】


により姿勢角を求める。これにより、移動体が居る環境(星)が自転しており、レートジャイロ出力に自転による自転速度成分が混入するような場合においても、高精度に歩行ロボットの胴体3の姿勢角を求めることができる。
【0043】
図12は、本発明の第5実施例の高精度姿勢検出装置の構成を概略的に示す図であり、高精度姿勢検出装置2eによって、歩行ロボットの胴体3の姿勢角を、高精度に検出する実施例の装置の構成を説明する図である。
【0044】
第5実施例の高精度姿勢検出装置2eは、慣性検出手段10と環境情報手段30から構成されており、慣性検出手段10には、2つの加速度センサ(11a,11b)が備え付けられている。また、環境情報手段30には、移動体と環境との間に作用する力を検出する力センサ31が備え付けられている。図12には図示していないが、力センサ31の出力座標と胴体3に設置された加速度センサ(11a,11b)の出力座標との間の座標変換を行う座標変換手段40が設けられている。各関節の関節角を検出するエンコーダやポテンショメータなどの関節角センサ32、もしくは、同じく図示していない動作生成手段20から出力されている各関節の関節角指令から、座標変換を行って、必要な方向成分を取り出すように逐次、演算されている。
【0045】
図13は、図12の高精度姿勢検出装置2eの演算処理部の構成を示すブロック図であり、歩行ロボットの胴体3の姿勢角を、高精度に検出する実施例の装置の構成を説明する図である。第5実施例の高精度姿勢検出装置2eの演算処理の内容は、第1実施例の高精度姿勢検出装置2aや第2実施例の高精度姿勢検出装置2bの演算処理に類似している。相違点は、動作生成手段20から出力されるデータを用いずに、環境情報手段30からのデータを用いて演算処理を行う点である。以下に、具体的な処理の内容を説明する。
【0046】
先ず、力センサ31の出力である水平方向成分「Fx_sen」と垂直方向成分「Fz_sen」と既知重力加速度22を用いて、動作を生成する加速度値「αx_mot」を求める。歩行ロボットなど、着地衝撃により垂直方向成分「Fz_sen」にノイズ成分が多く現れてしまうような場合には、力センサの垂直方向成分「Fz_sen」を用いずに、既知体重値を用いても実用上問題はない。次に、動作を生成する加速度値「αx_mot」を、座標変換手段40による座標変換によって、加速度センサ(11a,11b)と同じ方向成分の加速度値(αa_mot,αb_mot)に変換する。そして、この方向成分の加速度値「αa_mot」と加速度値「αb_mot」に基づき、加速度センサ(11a,11b)の出力(αa_sen,αb_sen)を補正して、補正加速度「αa」と補正加速度「αb」を算出している。最終的には、この補正した加速度信号の補正加速度「αa」と補正加速度「αb」に基づき、移動体の姿勢を高精度に検出している。
【0047】
この場合、力センサ31を用いて算出する動作を生成する加速度値「αx_mot」は、胴体3の重力方向を含まず、胴体3の水平方向の加減速を生成する加速度値である。
【数2】

【0048】
一方、胴体3が移動に伴って水平方向に加減速すると、その加速度値「αx_mot」の成分が、加速度センサ(11a,11b)の出力に現れる。この影響を算出するため、座標変換手段40により、力センサ31の出力座標と加速度センサ(11a,11b)の出力座標との間の座標変換「ba_R_xz」を行い、加速度値「αx_mot」を、加速度センサ(11a,11b)と同じ方向成分(αa_mot,αb_mot)にそれぞれ変換している。
【数3】

【0049】
最終的には、高精度姿勢検出装置2eの演算処理によって得られる補正した加速度信号の補正加速度「αa」と補正加速度「αb」は、それぞれ
αa=αa_sen−αa_mot
αb=αb_sen−αb_mot
であり、移動体自身の移動に伴う加減速成分を除去することにより、高精度に歩行ロボットの胴体3の姿勢に起因する加速度(αa,αb)を求めることができる。
そのため、図13に示す演算処理部の演算処理、具体的には
姿勢角=−tan−1(αb/αa)
により姿勢角を求める。これにより、移動体自身が急な加減速を行う場合や旋回移動により遠心加速度が移動体に働く場合においても、高精度に歩行ロボットの胴体3の姿勢角を求めることができる。
【0050】
なお、図13では説明の簡略化のために、2次元図面により説明を簡略化して説明したが、3次元での高精度な姿勢検出を行う場合には、この2つの加速度センサ(11a,11b)の両方に直交する更に別の加速度センサ11cが備え付けられ、力センサ31に関してもx方向の出力「Fx_sen」とz方向の出力「Fz_sen」の両方に直交するy方向の出力「Fy_sen」が得られるものが備え付けられていれば、3次元への拡張は容易である。このような拡張は、本発明の全ての実施例に対して有効であることは言うまでもないが、以下、高精度姿勢検出装置2eに関して説明をしておく。
具体的には、力センサ31を用いて算出する動作を生成する加速度値を、
【数4】



【数5】


により算出し、
【数6】


のように、座標変換を行い、
αa=αa_sen−αa_mot、
αb=αb_sen−αb_mot、
αc=αc_sen−αc_mot
のように、加速度センサを補償した後、
c軸周りの姿勢角=−tan−1(αb/αa)
b軸周りの姿勢角=+tan−1(αc/αa)
のような計算により、3次元での胴体3の姿勢を高精度に検出することができる。更に、ノイズに対する信頼性を向上したい場合には、補正した加速度センサの加速度値(αa,αb,αc)を既存のカルマンフィルタを用いて処理することにより、3次元での胴体3の姿勢を高精度に信頼性良く検出することができる。
【0051】
図14は、本発明の第6実施例の高精度姿勢検出装置の構成を概略的に示す図であり、高精度姿勢検出装置2fによって、歩行ロボットの胴体3の姿勢角を、高精度に検出する実施例の装置の構成を説明する図である。
【0052】
第6実施例の高精度姿勢検出装置2fは、第5実施例の高精度姿勢検出装置2eと同様に、慣性検出手段10と環境情報手段30から構成されており、慣性検出手段10には、加速度センサ(11a,11b)と、加速度センサ(11a,11b)に直交する加速度センサ11c(図示せず)が備え付けられている。第5実施例の高精度姿勢検出装置2eとの相違点は、環境情報手段30が、GPSセンサ33と方位センサ34から構成されると同時に、環境情報手段30によって、移動体が居る環境(星)の自転速度25と半径35の情報が記憶されている。
【0053】
環境情報手段30におけるGPSセンサ33によって、移動体が居る緯度を検出しており、方位センサ34により、移動体が向いている方向を検出している。更に、GPSセンサ33の出力と、移動体が居る環境(星上:地球上に限らず月や火星などを含む全ての星上)の自転速度25と半径35の情報から、移動体の居る位置での遠心力が、逐次、演算されている。加えて、環境(床)と前記加速度センサとの間の座標変換を行う座標変換手段41が設けられており、必要な座標変換を行う。すなわち、各関節の関節角を検出するエンコーダやポテンショメータなどの関節角センサ32(図示せず)、同じく動作生成手段20(図示せず)から出力されている各関節の関節角指令、または、同じく図示していない動作生成手段20から出力されている胴体3の目標姿勢角と方位センサ34の出力から遠心力が、逐次、演算されて、また、必要な座標変換が行われる。方位センサ34は、2台のGPSセンサ33から構成されても良い。
【0054】
図15は、図14の高精度姿勢検出装置2fの演算処理部の構成を示すブロック図であり、歩行ロボットの胴体3の姿勢角を、高精度に検出する実施例の装置の構成を説明する図である。第6実施例の高精度姿勢検出装置2fの演算処理の内容は、高精度姿勢検出装置2cの演算処理に類似している。相違点は、動作生成手段20の代わりに環境情報手段30を用いている点である。以下に、具体的な処理の内容を説明する。
【0055】
先ず、GPSセンサ33の出力と、この移動体が居る環境(星)の既知情報である自転速度25と半径35の情報から、移動体の居る位置での遠心力(αx_cen2,αy_cen2,αz_cen2)を先ず算出する。この遠心力(αx_cen2,αy_cen2,αz_cen2)を、関節角センサ32の値から算出される足裏5と胴体3との間の姿勢角と、方位センサ34で検出される方位角から座標変換手段41による座標変換を行い、加速度センサ(11b,11c,11a)と同じ方向成分(αb_cen2,αc_cen2,αa_cen2)に変換する。そして、この方向成分(αb_cen2,αc_cen2,αa_cen2)に基づき、それぞれの加速度センサ(11b,11c,11a)の出力(αb_sen,αc_sen,αa_sen)を補正し、補正加速度(αb,αc,αa)を算出している。最終的には、この補正した加速度信号の補正加速度(αb,αc,αa)に基づき、移動体の姿勢を高精度に検出する。
【0056】
この場合、まず、GPSセンサ33の出力「θ_gps」と、この移動体が居る環境(星)の自転速度25の「ω_rot」と半径35の「r」の情報から、移動体の居る位置での遠心力を計算する。
【数7】

【0057】
一方、移動体が自転している環境(星)に居ると、自転による遠心力の成分が、加速度センサ(11a,11b,11c)の出力に現れる。この影響を算出するため、座標変換手段41により、関節角センサ32の値から算出される足裏5と胴体3との間の姿勢角と方位センサ34で検出される方位角からの座標変換「bca_R_xyz」を用いて、遠心力(αx_cen2,αy_cen2,αz_cen2)を、加速度センサ(11b,11c,11a)と同じ方向成分(αb_cen2,αc_cen2,αa_cen2)に変換している。
【数8】

【0058】
最終的には、第6実施例の高精度姿勢検出装置2fの演算処理によって得られる補正した加速度信号の補正加速度(αa,αb,αc)は、それぞれ
αa=αa_sen−αa_cen2
αb=αb_sen−αb_cen2
αc=αc_sen−αc_cen2
であり、移動体がいる環境(星)の自転に伴う遠心力を除去することにより、高精度に歩行ロボットの胴体3の姿勢に起因する加速度(αa,αb,αc)を求めることができる。
そのため、図15に示す演算処理部の演算処理、具体的には
c軸周りの姿勢角=−tan−1(αb/αa)
b軸周りの姿勢角=+tan−1(αc/αa)
により姿勢角を求める。これにより、移動体が居る環境(星)が自転しており、加速度センサ出力に自転による遠心力成分が混入するような場合においても、高精度に歩行ロボットの胴体3の姿勢角を求めることができる。なお、更にノイズに対する信頼性を向上したい場合には、補正した加速度センサ値(αa,αb,αc)を既存のカルマンフィルタを用いて処理することにより、3次元での胴体3の姿勢を高精度に信頼性良く検出することができる。
【0059】
図16は、本発明の第7実施例の高精度姿勢検出装置の構成を概略的に示す図であり、高精度姿勢検出装置2gによって、歩行ロボットの胴体3の姿勢角を、高精度に検出する実施例の装置の構成を説明する図である。
【0060】
第7実施例の高精度姿勢検出装置2gは、第5実施例の高精度姿勢検出装置2eおよび第6実施例の高精度姿勢検出装置2fと同様に、慣性検出手段10と環境情報手段30から構成されている。これらの実施例の高精度姿勢検出装置(2e,2f)との相違点は、慣性検出手段10に、レートジャイロ12cと、当該レートジャイロ12cに直交するレートジャイロ(12a,12b;図17に示す)が備え付けられていると同時に、環境情報手段30が、GPSセンサ33と方位センサ34から構成されており、環境情報手段30により、移動体が居る環境(星)の自転速度25の情報が記憶されている点である。このGPSセンサ33により、移動体が居る緯度を検出している。また、方位センサ34によって、移動体が向いている方向を検出している。加えて、座標変換手段41により、必要な座標変換を行い、図示しないが、各関節の関節角を検出するエンコーダやポテンショメータなどの関節角センサ32、動作生成手段20から出力されている各関節の関節角指令、動作生成手段20から出力されている胴体3の目標姿勢角と方位センサ34の出力からの座標変換された回転角速度が、逐次、演算されている。方位センサ34は、2台のGPSセンサ33から構成しても良い。
【0061】
図17は、図15の高精度姿勢検出装置2gの演算処理部の構成を示すブロック図であり、歩行ロボットの胴体3の姿勢角を、高精度に検出する実施例の装置の構成を説明する図である。この高精度姿勢検出装置2gの演算処理内容は、高精度姿勢検出装置2dの演算処理に類似しており、相違点は動作生成手段20の代わりに環境情報手段30を用いている点である。以下に、具体的な処理の内容を説明する。
【0062】
先ず、GPSセンサ33の出力と、移動体が居る環境(星)の既知情報である自転速度25の情報から、移動体の居る位置での自転速度の回転角速度(ωx_rot2,ωy_rot2,ωz_rot2)を算出する。この移動体の居る位置での回転角速度(ωx_rot2,ωy_rot2,ωz_rot2)を、座標変換手段41により座標変換を行い、関節角センサ32の値から算出される足裏5と胴体3との間の姿勢角と方位センサ34で検出される方位角からの座標変換によって、レートジャイロ(12b,12c,12a)と同じ方向成分(ωb_rot2,ωc_rot2,ωa_rot2)に変換する。そして、この方向成分(ωb_rot2,ωc_rot2,ωa_rot2)に基づき、レートジャイロ(12b,12c,12a)の出力(ωb_sen,ωc_sen,ωa_sen)を補正し、補正角速度(ωb,ωc,ωa)を算出している。最終的には、この補正した角速度信号(ωb,ωc,ωa)に基づき、移動体の姿勢を高精度に検出している。
【0063】
この場合、GPSセンサ33の出力「θ_gps」と、この移動体が居る環境(星)の自転速度25の「ω_rot」の情報から、移動体の居る位置での自転速度成分を計算する。
【数9】

【0064】
一方、移動体が自転している環境(星)に居ると、この自転速度成分が、レートジャイロ(12a,12b,12c)の出力に現れる。この影響を算出するため、座標変換手段41により、関節角センサ32の値から算出される足裏5と胴体3との間の姿勢角と方位センサ34で検出される方位角からの座標変換の「bca_R_xyz」を用いて、自転速度成分(ωx_ro2t,ωy_rot2,ωz_rot2)を、レートジャイロ(12b,12c,12a)と同じ方向成分(ωb_rot2,ωc_rot2,ωa_rot2)に変換している。
【数10】

【0065】
最終的には、高精度姿勢検出装置2gの演算処理によって得られる補正した角速度信号(ωb,ωc,ωa)は、それぞれ
ωa=ωa_sen−ωa_rot2
ωb=ωb_sen−ωb_rot2
ωc=ωc_sen−ωc_rot2
であり、移動体がいる環境(星)の自転に伴う自転速度成分を除去することにより、高精度に歩行ロボットの胴体3の姿勢に起因する角速度ωa,ωb,ωcを求めることができる。
そのため、図17に示す演算処理部の演算処理、具体的には
【数11】

により姿勢角を求める。これにより、移動体が居る環境(星)が自転しており、レートジャイロ出力に自転による自転速度成分が混入するような場合においても、高精度に歩行ロボットの胴体3の姿勢角を求めることができる。なお、より正確に姿勢角を求めたい場合には、補正した角速度値(ωa,ωb,ωc)を既存のカルマンフィルタを用いて処理することにより、3次元での胴体3の姿勢をより正確で高精度に検出することができる。
【0066】
本発明の高精度姿勢検出装置は、更に、前述した第1実施例〜第7実施例の高精度姿勢検出装置を組み合わせることにより、より高精度な姿勢検出が可能となる。
具体的には、補正した加速度信号(αb,αc,αa)と補正した角速度信号(ωb,ωc,ωa)を次のようにして求める。

αa=αa_sen−{Wa1・αa_ref1
+Wa2・(αa_ref2−αa_grav)+(1−Wa1−Wa2)・αa_mot}
αb=αb_sen−{Wb1・αb_ref1
+Wb2・(αb_ref2−αb_grav)+(1−Wb1−Wb2)・αb_mot}
αa=αa_sen−{Wc1・αc_ref1
+Wc2・(αc_ref2−αc_grav)+(1−Wc1−Wc2)・αc_mot}

ωa=ωa_sen−{Va・ωa_rot1+(1−Va)ωa_rot2}
ωb=ωa_sen−{Vb・ωb_rot1+(1−Vb)ωb_rot2}
ωc=ωa_sen−{Vc・ωc_rot1+(1−Vc)ωc_rot2}

但し、Wa1,Wa2,Wb1,Wb2,Wc1,Wc2,Va,Vb,Vcは、
高精度姿勢検出装置2aから2gを選択して使用する重み係数である。
【0067】
これにより、加速度センサの出力から、移動体自身の移動に伴う加減速成分と移動体がいる環境(星)の自転に伴う遠心力を除去することにより、高精度に歩行ロボットの胴体3の姿勢に起因する加速度(αa,αb,αc)を求めることができる。また、レートジャイロセンサの出力から、移動体がいる環境(星)の自転に伴う自転速度成分を除去することにより、高精度に歩行ロボットの胴体3の姿勢に起因する角速度(ωa,ωb,ωc)を求めることができる。この補正した加速度信号の補正加速度(αb,αc,αa)と補正した角速度信号の補正角速度(ωb,ωc,ωa)を、既存のカルマンフィルタを用いて処理することにより、3次元での胴体3の姿勢を高精度に信頼性良く検出することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上に詳述したように、本発明による移動体の高精度姿勢検出装置は、移動体自身が急な加減速を行う場合、旋回移動により遠心加速度が移動体に働く場合、加減速する台車に移動体が搭乗している場合、加速度センサ自身に移動体の慣性加速度が作用している場合のいずれの場合であっても、姿勢角を高精度に検出する高精度姿勢検出装置を得ることができる。また、移動体が自転する環境(星上)に移動体が居て、レートジャイロセンサ自身に自転の回転角速度が影響する場合においても、姿勢角を高精度に検出する装置を得ることができる。このため、移動体である歩行ロボットの姿勢の安定制御を行うため、歩行ロボットの本体の加速度や姿勢回転角速度や姿勢角等を高精度に計測を行う場合などに好適に利用できる
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1実施例の高精度姿勢検出装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】高精度姿勢検出装置2aの演算処理部の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明による高精度姿勢検出装置の動作を説明する第1の図である。
【図4】本発明による高精度姿勢検出装置の動作を説明する第2の図である。
【図5】本発明による高精度姿勢検出装置の動作を説明する第3の図である。
【図6】本発明の第2実施例の高精度姿勢検出装置の構成を概略的に示す図である。
【図7】高精度姿勢検出装置2bの演算処理部の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第3実施例の高精度姿勢検出装置の構成を概略的に示す図である。
【図9】高精度姿勢検出装置2cの演算処理部の構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の第4実施例の高精度姿勢検出装置の構成を概略的に示す図である。
【図11】高精度姿勢検出装置2dの演算処理部の構成を示すブロック図である。
【図12】本発明の第5実施例の高精度姿勢検出装置の構成を概略的に示す図である。
【図13】高精度姿勢検出装置2eの演算処理部の構成を示すブロック図である。
【図14】本発明の第6実施例の高精度姿勢検出装置の構成を概略的に示す図である。
【図15】高精度姿勢検出装置2fの演算処理部の構成を示すブロック図である。
【図16】本発明の第7実施例の高精度姿勢検出装置の構成を概略的に示す図である。
【図17】高精度姿勢検出装置2gの演算処理部の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0070】
2a〜2g 高精度姿勢検出装置
3 ロボット胴体
4a 片脚の大腿リンク
4b 片脚の下腿リンク
5 片脚の足裏
6a 第1の関節モータ
6b 第2の関節モータ
6c 第3の関節モータ
10 慣性検出手段
11a 加速度センサ
11b 加速度センサ
11c 加速度センサ
12a レートジャイロ
12b レートジャイロ
12c レートジャイロ
20 動作生成手段
25 自転速度
30 環境情報手段
32 関節角センサ
33 GPSセンサ
34 方位センサ
35 半径
40 座標変換手段
41 座標変換手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に、当該移動体の慣性を検出する慣性検出手段と、当該移動体の動作を生成する動作生成手段と、移動体の姿勢演算を行う演算処理手段を備え、
前記演算処理手段により前記慣性検出手段の出力と前記動作生成手段の出力に基づき演算処理を行い、移動体の姿勢を高精度に検出する
ことを特徴とする移動体の高精度姿勢検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の移動体の高精度姿勢検出装置において、
前記慣性検出手段には、少なくとも加速度センサが備えられ、前記動作生成手段の出力から少なくとも動作の加速度目標値が出力されており、
前記演算処理手段は、前記加速度目標値に基づき慣性検出手段の加速度センサ出力を補正し、補正した加速度センサの出力に基づき移動体の姿勢を高精度に検出する
ことを特徴とする移動体の高精度姿勢検出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の移動体の高精度姿勢検出装置において、
前記慣性検出手段には、少なくとも加速度センサが備えられ、前記動作生成手段の出力から少なくとも移動体が居る環境の自転による遠心力が出力されており、
前記演算処理手段は、遠心力に基づき慣性検出手段の加速度センサ出力を補正し、補正した加速度センサの出力に基づき移動体の姿勢を高精度に検出する
ことを特徴とする移動体の高精度姿勢検出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の移動体の高精度姿勢検出装置において、
前記慣性検出手段には、少なくともレートジャイロが備えられ、前記動作生成手段の出力から少なくとも移動体が居る環境の自転速度が出力されており、
前記演算処理手段は、自転速度に基づき慣性検出手段のレートジャイロ出力を補正し、補正したレートジャイロの出力に基づき移動体の姿勢を高精度に検出する
ことを特徴とする移動体の高精度姿勢検出装置。
【請求項5】
移動体に、当該移動体の慣性を検出する慣性検出手段と、当該移動体が居る環境の情報を検出し記憶する環境情報手段と、移動体の姿勢演算を行う演算処理手段を備え、
前記演算処理手段により前記慣性検出手段の出力と環境情報手段の出力に基づき移動体の姿勢を高精度に検出することを特徴とする移動体の高精度姿勢検出装置。
【請求項6】
請求項5に記載の移動体の高精度姿勢検出装置において、
前記慣性検出手段には、少なくとも加速度センサが備えられ、
前記環境情報手段には、少なくとも移動体と環境との間に作用する力を検出する力センサと、前記力センサと前記加速度センサとの間の座標変換を行う座標変換手段が備えられ、
前記演算処理手段は、力センサの出力から動作を生成する加速度値を演算し、演算した加速度値と前記座標変換手段の出力に基づき慣性検出手段の加速度センサ出力を補正し、補正した加速度センサの出力に基づき移動体の姿勢を高精度に検出する
ことを特徴とする移動体の高精度姿勢検出装置。
【請求項7】
請求項5に記載の移動体の高精度姿勢検出装置において、
前記慣性検出手段には、少なくとも加速度センサが備えられ、
前記環境情報手段には、少なくとも移動体の緯度を検出するGPSセンサと、方位を検出する方位センサと、環境と前記加速度センサとの間の座標変換を行う座標変換手段が備えられ、
前記演算処理手段は、GPSセンサの出力、方位センサの出力、座標変換手段の出力により、移動体が居る位置での自転による遠心力を演算し、演算した遠心力に基づき慣性検出手段の加速度センサ出力を補正し、補正した加速度センサの出力に基づき移動体の姿勢を高精度に検出する
ことを特徴とする移動体の高精度姿勢検出装置。
【請求項8】
請求項5に記載の移動体の高精度姿勢検出装置において、
前記慣性検出手段には、少なくともレートジャイロが備えられ、
前記環境情報手段には、少なくとも移動体の緯度を検出するGPSセンサと、方位を検出する方位センサと、環境と前記レートジャイロとの間の座標系の変換を行う座標変換手段が備えられ、
前記演算処理手段は、GPSセンサの出力、方位センサの出力、座標変換手段の出力により、移動体が居る位置での自転による回転角速度を演算し、演算した回転角速度に基づき慣性検出手段のレートジャイロ出力を補正し、補正したレートジャイロの出力に基づき移動体の姿勢を高精度に検出する
ことを特徴とする移動体の高精度姿勢検出装置。
【請求項9】
請求項1〜8の何れかに記載の移動体の高精度姿勢検出装置の複数の出力値が重み係数を付加して加算されて、移動体の姿勢を高精度に検出する
ことを特徴とする移動体の高精度姿勢検出装置。
【請求項10】
請求項1〜9の何れかに記載の移動体の高精度姿勢検出装置が搭載されている歩行ロボット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−75967(P2007−75967A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−269140(P2005−269140)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度、新エネルギー・産業技術総合開発機構、「基盤技術研究促進事業(民間基盤技術研究支援制度)実環境で働く人間型ロボット基盤技術の研究開発」、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】