説明

移動体周辺情報取得装置

【課題】移動体の位置を随時適当に補正しながら周辺情報を搭乗者等のユーザに提供する移動体周辺情報取得装置を得る。
【解決手段】移動体1に搭載されている速度発電機2の出力電圧を入力した計算部3が移動体1の位置を示すデータを求め、このデータを無線部4が小電力無線通信によって送信し、通信部4からの移動体1の位置を示すデータを端末5の情報通信部10が受信して、制御部12の速度発電機情報補正部21がGPSデータを用いて移動体1の位置を示すデータを補正し、補正した位置の周辺情報を位置関連情報検索表示部23がデータベース14を検索して表示部13に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、列車等の移動体の現在位置を速度発電機の出力電圧から求めて移動体が位置する場所の周辺情報を端末に表示する移動体周辺情報取得装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動体の例えば列車の位置を検出するとき、軌道に複数の軌道回路を構成して列車に搭載されている速度発電機のパルス出力から走行距離を検知し、この走行距離を用いて軌道回路によって得られた絶対位置情報を補正して列車の位置を検知するものがある(例えば、特許文献1参照)。
また、列車に例えば超音波の送受波器を備え、速度発電機からの出力を積算して走行距離を求め、この走行距離と路線データとを用いて列車位置情報を求めるとき、上記の送受波器から超音波を放射し、対象物等によって反射した超音波に応じて列車位置情報を補正するものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−178614号公報(第4,5頁、図1〜4)
【特許文献2】特開2000−134704号公報(第2,3頁、図1〜3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の移動体の位置検出は以上のように行われているので、軌道回路が切り替わるとき以外は位置検出に関して補正が行われず、移動により刻々と変化する位置に対応して位置補正を行うことができなかった。また、超音波の反射波などを用いて位置補正を行うものでは、移動している周辺に例えばトンネルや跨線橋などの障害物もしくは対象物等が多く存在していないと適宜補正ができず、また、予め移動体が通過する周辺の対象物等を記憶/登録しておくことを要するという課題があった。
【0005】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、移動体の位置を随時適当に補正しながら周辺情報を搭乗者等のユーザに提供する移動体周辺情報取得装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る移動体周辺情報取得装置は、移動体に搭載されている速度発電機の出力電圧から計算手段が求めた該移動体の位置を示すデータを無線通信によって送信する通信手段と、通信手段から受信した移動体の位置を示すデータを補正して、該補正した位置の周辺情報を自らの表示手段に表示する端末とを備えるものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、移動体に搭載されている速度発電機の出力電圧から計算手段が求めた該移動体の位置を示すデータを通信手段が無線通信によって送信し、端末が通信手段から受信した移動体の位置を示すデータを補正して、補正した位置の周辺情報を自らの表示手段に表示するようにしたので、端末を所持しているユーザに移動体が位置する周辺情報を提供することができるという効果がある。
また、GPS受信手段を用いて受信したGPSデータを使用して通信手段からの移動体の位置を示すデータを補正し、該位置を示すデータを用いてデータベースを検索するようにしたので、受信したGPSデータのみを用いて測位したときよりも正確な位置を求めて該位置に対応する周辺情報をデータベースから検索することができるという効果がある。
また、速度発電機の出力電圧のみを用いて測位したときよりも正確な位置を求めて該位置に対応する周辺情報をデータベースから検索することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明の実施の一形態を説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による移動体周辺情報取得装置の構成を示すブロック図である。図示した移動体1は、バスなどの車両や列車等のように車輪を有するもので、当該移動体1の車輪等の回転に伴って出力電圧を発生する速度発電機2、例えばコンピュータから成り、速度発電機2の出力電圧を入力する計算部3、及び、計算部3の出力信号を入力して移動体1の搭乗者が所持している端末5と赤外線通信、あるいは無線LAN通信などの小電力無線通信を行う通信部4を備えている。なお、通信部4とデータ通信を行う端末5は、一台に限定されるものではない。
【0009】
図2は、実施の形態1による移動体周辺情報取得装置の端末の構成を示すブロック図である。この図は、図1の端末5の構成例を示したものである。端末5は、Global Positioning System(以下、GPSと記載する)受信機能を備えた例えばPersonal Digital Assistant(以下、PDAと記載する)、携帯電話機、またはパソコンなどのコンピュータ等から成るもので、移動体1に備えられている通信部4と相互方向の無線通信を行う情報通信部10、GPS衛星から送信されているGPSデータを受信するGPS受信部、端末5の動作を制御する制御部12、制御部12の制御動作に応じて画像等を表示する表示部13、及び、例えば病院やガソリンスタンドの所在などを表す位置関連情報を格納しているデータベース14を備えている。なお、データベース14は、外部に設置してデータ通信回線等を介して端末5の制御部12と接続するように構成してもよい。制御部12は、プロセッサやメモリ等から成るもので、例えば速度発電機情報補正部21、GPS不感時間位置推定部22、位置関連情報検索表示部23などのソフトウエア/プログラムを備えて制御動作を行うように構成されている。
【0010】
次に動作について説明する。
例えば列車等の移動体1が走行しているとき、移動体1の車輪等に接続されている速度発電機2が回転して電圧を発生する。速度発電機2の出力電圧は前述のように計算部3へ入力され、計算部3は速度発電機2の出力電圧即ち移動体1の速度を検知し、この速度と走行時間との積算を行って移動体1の走行距離を求める。
計算部3は、入力している速度発電機2の出力電圧を例えば毎秒測定して、時々刻々と変化している移動体1の速度を各時点において順次求め、このような速度に対して時間をファクタとした積分演算を行い、移動体1の走行距離を求める。ここで計算部3は、予め自らに設定されている起点を用いて上記の走行距離を求める。また、後述するように移動体1の走行中に任意の時刻を基準として例えば端末5から当該移動体1の位置が設定され、このように計算部3の外部から設定された位置を用いて走行距離を求める。前述のように各時点における走行距離を求め、例えば予め自らに記憶/設定されている移動経路、線路上の位置などを表す各データと上記の走行距離とを用いて移動体1の各時点即ち任意の時刻における位置を求める。なお、上記の移動経路は、例えば通過順に並べられた各地点の緯度及び経度の点列で表現されたデータである。
【0011】
計算部3は、前述のように各時点即ち各時刻における位置を求め、一定期間、例えば1分の間に移動体1が存在した各位置を表す緯度・経度のデータを一つの速度発電機情報として、通信部4へ出力する。また、前述のようにして求めた移動体1の各位置データを時刻に対応させて例えば図示されない自ら備える記憶部に記憶させておく。
通信部4は、前述のように小電力無線通信を行うもので、計算部3から入力した速度発電機情報を移動体1の内部、例えば列車内のみで受信が可能なように送信する。
移動体1に搭乗しているユーザに操作された端末5の制御部12は、情報通信部10を制御して、通信部4からの送信データ即ち移動体1の一定期間における位置を表す速度発電機情報を受信し、制御部12に備えられている速度発電機情報補正部21が当該速度発電機情報の補正を行う。
【0012】
図3は、実施の形態1による移動体周辺情報取得装置の動作を示す説明図である。この図は、端末5の制御部12が移動体1の検知位置を補正する処理を示したもので、横軸が移動体1の走行時間、縦軸が移動体1の位置を表し、ここでは移動体1の位置として前述のような起点からの距離を表している。例えば、図中破線で示した曲線Aは、経過時間に応じて速度発電機2の出力電圧から求めた速度発電機位置情報によって示される距離を表し、図中実線で示した曲線Cは、移動体1の実際の位置即ち移動体1の走行時間に対応した移動距離を表している。また、図中一点破線で示した曲線Dは、制御部12の速度発電機情報補正部21によって補正された移動体1の位置データによって示される距離を表している。
【0013】
速度発電機2の出力電圧から移動体1の移動距離を求めるときには、車輪の空転等によって細かな速度ずれが生じ、速度発電機2の回転速度に対して時間積分を行うことによって求めた距離には相当の誤差が含まれてしまう。また、速度発電機2の出力特性は回転数と出力電圧がリニアに対応しているとは限らず、移動体1の実際の速度に対する出力電圧に誤差が生じてしまう。
端末5は、前述のようにGPSデータを受信するGPS受信部11を有している。このGPS受信部11が受信したGPSデータは端末5の存在する位置を示すもので、端末5の制御部12、詳しくは制御部12の速度発電機情報補正部21は、GPS受信部11が受信したGPSデータを使用して、図3に矢印Eで示したように、曲線Aの速度発電機情報を曲線Cに近似させるように、好ましくは同一となるように、速度発電機情報を成す計算部3が速度発電機2の出力から求めた位置を、GPSデータが示す位置に入れ替えて速度発電機情報の補正を行う。
【0014】
補正された速度発電機情報、即ち移動体1の補正後の位置データは、位置関連情報検索表示部23へ入力され、また、端末5の情報通信部10から通信部4へ送信される。なお、この通信は、例えば1秒に1回というように定期的に行う。また、前述の通信部4から端末5の情報通信部10へのデータ通信等も同様に定期的に行う。
通信部4は、受信した補正後の位置データを計算部3へ入力する。計算部3は、入力した補正後の位置データを、各時刻に対応させて自らの記憶部に記憶している位置データと置き換えて記憶する。また、計算部3は、補正後の位置データを時刻毎に記憶させた後、当該補正後の位置データの時刻よりも以降の時刻の位置データを速度発電機2の出力電圧から求めるときには、前述の補正後の位置データを基準として、このデータが示す位置からの移動距離を加算した位置を求め、前述と同様に記憶部に記憶する。
【0015】
速度発電機情報補正部21は、前述の速度発電機情報を補正する前に、GPS受信部11が受信したGPSデータについて、例えばDilution of Presision(以下、DOPと記載する)による測位精度の評価を行う。上空のGPS衛星の分布が狭くなると測位精度が劣化することから、各GPS衛星から電波を受信しているとき上記のような指標を求め、この指標が上空に満遍なくGPS衛星が分布していることを示しているとき、例えば図3に示した期間Bの間に受信したGPSデータを用いて速度発電機情報の補正を行う。なお、測位精度を評価するとき、前述のDOPの他に、一つの測位点が散乱して計測されたとき平均位置までの距離を求め、この距離を二乗平均して平方根を求め、その二倍の値を測位誤差の目安とする2drmsを用いるようにしてもよい。
【0016】
前述のように速度発電機情報補生部21がGPSデータを評価したとき測位精度に劣化がみられたとき、また、GPS衛星からの電波が受信できない場所に移動体1が存在するときなど、良好なGPSデータが受信されていないときには速度発電機情報補正部21による補正を行わず、GPS不感時間位置推定部22が前述の速度発電機情報を用いて移動体1の位置を求める。換言すると、GPS受信部11から出力された不完全なGPSデータを速度発電機情報の各位置データで補正し、これを位置関連情報検索表示部23へ出力する。なお、上記の補正を行うときも各位置データの時刻を対応させて行う。
【0017】
位置関連情報検索表示部23は、前述のように速度発電機情報補正部21またはGPS不感時間位置推定部22から入力した位置データに対応する周辺情報をデータベース14から抽出する。データベース14には、緯度・経度に対応させて例えばガソリンスタンド、病院などの所在を示す周辺情報が予め格納されている。位置関連情報検索表示部23は、入力した位置データが示す緯度・経度を用いてデータベース14を検索し、当該緯度・経度に対応する周辺情報を読み出す。具体的には、例えばデータベース14を検索するとき、前述の位置データが示す緯度・経度を検索キーとして、当該検索キーの近傍となる緯度・経度に関連する周辺情報を読み出す。位置関連情報検索表示部23は、表示部13を制御して、前述のようにしてデータベース14から読み出した周辺情報を示す画像等を表示する。なお、周辺情報を表示するときには、移動体1の走行している線路や道路ならびに地形などを含む地図画像と重ねて移動体1の現在位置、ならびにその周辺状況が認識できるように画像表示を行う。
【0018】
この発明は、車輪の回転に対応して電圧出力を行う速度発電機のように速度等に対応する信号を出力するものを備える移動体であれば、列車に限らず適用することができる。
【0019】
以上のように実施の形態1によれば、計算部3が移動体1に備えられた速度発電機2の出力電圧から位置を示すデータを求め、このデータを通信部4が端末5へ送信して端末5がGPSデータを用いて位置データを補正し、補正した位置の周辺情報をデータベース14から抽出して表示するようにしたので、ユーザが所持する端末5に時々刻々と変化する移動体1の周辺情報を表示することができるという効果がある。
また、速度発電機2の出力特性によって生じる誤差や車輪の空転などによって生じる誤差をGPSデータを用いて補正するようにしたので、移動体1に搭乗しているユーザが所持する端末5は移動体1の正確な位置の周辺情報を表示することができるという効果がある。
また、端末5の速度発電機情報補正部21がGPSデータを用いて補正した位置データを通信部4を介して計算部3へ送信し、計算部3が以降の位置を示すデータを求めるときに上記の端末5による補正後の位置データを用いるようにしたので、速度発電機2の出力電圧から求める位置を示すデータの誤差を抑えることができるという効果がある。
また、端末5のGPS不感時間位置推定部22が、良好なGPSデータを受信することができないときには通信部4から受信した速度発電機情報を用いて周辺情報をデータベース14から抽出するようにしたので、GPSデータの受信状態によらず正確な位置を表示すると共に周辺情報を表示することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の実施の形態1による移動体周辺情報取得装置の構成を示ブロック図である。
【図2】実施の形態1による移動体周辺情報取得装置の端末の構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態1による移動体周辺情報取得装置の動作を示す説明図である。
【符号の説明】
【0021】
1 移動体、2 速度発電機、3 計算部、4 通信部、5 端末、10 情報通信部、11 GPS受信部、12 制御部、13 表示部、14 データベース、21 速度発電機情報補正部、22 GPS不感時間位置推定部、23 位置関連情報検索表示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載されている速度発電機の出力電圧から計算手段が求めた該移動体の位置を示すデータを無線通信によって送信する通信手段と、
前記通信手段から受信した移動体の位置を示すデータを補正し該補正した位置の周辺情報を自らの表示手段に表示する端末と、
を備える移動体周辺情報取得装置。
【請求項2】
端末は、GPS受信手段を用いて受信したGPSデータを使用して通信手段からの移動体の位置を示すデータを補正する速度発電機情報補正手段と、データベースを検索して前記速度発電機情報補正手段から出力された位置を示すデータに対応する周辺情報を抽出する位置関連情報検索手段と、を備えることを特徴とする請求項1記載の移動体周辺情報取得装置。
【請求項3】
端末は、GPS受信手段が良好なGPSデータを受信していないとき、通信手段からの移動体の位置を示すデータを用いて前記GPSデータを補正し、該補正した位置を示すデータを用いて位置関連情報検索手段に周辺情報の検索を行わせるGPS不感時間位置推定手段を備えることを特徴とする請求項2記載の移動体周辺情報取得装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−8491(P2009−8491A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−169153(P2007−169153)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】