説明

移動車両

【課題】ステップフロアー周辺の構造を変更して、燃費や製造コストを低減できるものとする。
【解決手段】運転席の前方下部に、合成樹脂材で一体状に成形された燃料タンク21を配置し、該燃料タンクの上壁部21aに凹凸模様が形成されるようにブロー成形されたステップフロアーSFが構成され、燃料タンクの側面壁部に凹みを形成し、該凹み部が補助ステップS1Sなされた構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインなどの移動車両に関し、より詳細には、運転操作部のステップフロアー周辺の構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
運転操作部のフロアフレームに合成樹脂材で一体状に成形された燃料タンクを配設されると共に、該燃料タンクの上側近傍に運転者の足を支持するための略水平なステップフロアーを形成されたコンバインは従来より存在している(例えば特許文献1参照)。
この際、ステップフロアーは、一般に、フロアー用の平板部材の周辺をフロアフレームと同体のステップフレームに支持させボルト止めする構造となされる。
また地上とステップフロアーとの間で昇降するときに足掛け部として使用される補助ステップがステップフロアーよりも下側の燃料タンクの横側に設けられることがある(例えば特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平8−113044号公報
【特許文献2】特開平10−94315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、コンバインなどの移動車両では、製造コストを低減するため、成る可く軽量でしかも製造容易な部品を使用すると共に部品点数が少ないことが要求されるのであり、本発明は斯かる要求に適うものとした移動車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するものとした本願の第1発明に係る移動車両は、請求項1に記載したように、合成樹脂材で一体状に成形された燃料タンクの上面壁部をステップフロアーとなされていることを特徴とするものである。
【0006】
該発明は次のように具体化することができる。
即ち、請求項2に記載したように、前記燃料タンクが上面壁部の上面に凹凸模様が形成されるようにブロー成形されている構成となす。
また請求項3に記載したように、前記燃料タンクの側面壁部に横向きの凹み部を形成し、該凹み部が補助ステップとなされている構成となす。
また請求項4に記載したように、前記ステップフロアーよりも低い位置に踏み面を有する補助ステップが合成樹脂材により前記燃料タンクと一体状に形成され且つ前記燃料タンクの側面壁部に横外方への張り出し状に形成されている構成となす。
【0007】
本願の第2発明に係る移動車両は、請求項5に記載したように、ステップフロアーをなす板状部と、前記ステップフロアーよりも低い位置に踏み面を有する補助ステップとを合成樹脂材で一体状に形成されてなるステップフロアー構造体を備え、該ステップフロアー構造体が前記板状部の下面に設けられた複数の突起部を介して機台と同体状個所に脱着可能に固定されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
上述した本発明によれば、次のような効果が得られる。
即ち、請求項1に記載したものによれば、燃料タンクが合成樹脂材で形成されており且つ、燃料タンクの上面壁部がステップフロアーとなされて従来のフロアー用の平板部材が不要になって、コンバインなどの燃料タンク周辺の構造が大幅に軽量化されること、及び、フロアー用の平板部材やこれを固定させるための構造が不要となって部品点数が減少されることから、製造コストを効果的に低減させることができるのであり、また燃料タンクが機体重心から離れて配置されていて該燃料タンクに比較的多くの燃料が供給される場合にも、燃料タンク周辺構造が軽量化されることにより、燃料タンク周辺の過重化を阻止して機体バランスの向上を図ることができる。また燃料タンクの上面壁部であるステップフロアーの外周囲が燃料タンクの周面の壁部と一体に結合され固定された状態となり且つ燃料タンク内にてこれの底面壁部と上面壁部とを結合した補強部を設けることにより、ステップフロアーの剛性が大きく増大されて、その振動を安価且つ効果的に抑制することができるのであり、さらにはステップフロアーと補助ステップが一緒になること、或いは燃料タンクと補助ステップが一緒になることで、燃料タンクの高さ範囲内に或いは燃料タンクよりも下側に補助ステップを形成することができて、ステップフロアーに対する運転者などの昇降が行い易くなるのである。
【0009】
請求項2に記載したものによれば、燃料タンク及びステップフロアーを量産する場合に、これらを極めて安価且つ能率的に製造することができる。
【0010】
請求項3に記載したものによれば、燃料タンクの側面壁部に横向きの凹み部を形成し、該凹み部を補助ステップとするため、補助ステップの高さ変更可能範囲を大きくなすことができ且つ、補助ステップの使い勝手の便宜性を維持した上で、補助ステップが機体の横外方へ張り出すのを阻止することができ、補助ステップが他物と接触するのを防止することができる。
【0011】
請求項4に記載したものによれば、補助ステップが合成樹脂材で形成され且つ燃料タンクやステップフロアーと一体状になされているため、補助ステップの重量が従来よりも軽量となり、しかも、燃料タンクと補助ステップとからなる2つの部品が単一となることから、コンバインなどの製造コストを一層低減させることができる。
【0012】
請求項5に記載したものによれば、ステップフロアーをなす板状部と、ステップフロアーよりも低い位置に踏み面を有する補助ステップとを合成樹脂材で一体状に形成されているため、ステップフロアー及び補助ステップを従来よりも軽量になすことができ、しかもステップフロアーと補助ステップとからなる2つの部品が単一となり、コンバインなどの燃費や製造コストを従来よりも低減させることができる。
【0013】
またステップフロアーが突起部を介して機台と同体状個所に脱着可能に固定されるため、ステップフロアー構造体の固定が突起部を介して確実に行われると共に、該ステップフロアー構造体を取り外すことで、補助ステップも取り外されるため、ステップフロアーの下側の保守点検が容易に行えるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1〜図8は本発明に係るコンバイン に関するもので、図1は右側面図、図2は平面図、図3は正面図、図4は運転操作部を後上方から見た図、図5は運転操作部を右後方から見た図、図6はフロントマスクを示す図、図7は運転操作部のシートコラムの動きを示す平面図、図8は運転操作部の変形例を示す平面図、図9はステップフロアー構造体を示す図である。
【0015】
図1〜図3に示すように、本発明に係るコンバインは、左右一対のクローラ走行装置1a、1bからなる走行部1、走行部1に支持された機台2、そして、機台2の前方に設けた刈取部3を備えている。そして機台2上の前部右側で刈取部3のやや後寄り横方に運転操作部4を設け、刈取部3の後側に脱穀部5及び排藁処理部6を設け、運転操作部4の後側に穀粒タンク7を設け、穀粒タンク7の後方から刈取部上方にわたって穀粒排出オーガ8を設けている。なお、脱穀部5内には扱胴5cや処理胴5dが設けられている。
【0016】
刈取部3は分草板9、穀稈引起こし装置10、掻込み装置11、刈刃装置12及び後向き搬送部13を備えており、これら全体が機台2に支持された刈取主フレーム14を介して機台2上の横向き支点軸回りへ上下揺動可能となされている。
【0017】
この際、穀稈引起こし装置10は左右方向上の2カ所に配置された2つの引起こし部10a、10bからなり、各引起こし部10a、10bは圃場に植立した各穀稈条列に対して斜め後上り方向へ単列状に配列されたタインt群で穀稈を引き起こすものとなされる。掻込み装置11は刈刃装置12で刈り取られた穀稈を刈刃装置12の左右巾中央へ掻き集めて後向き搬送部13へ送り込むもので、左右一対のベルト掻込み部11a、11bと、図示しないスターホイール掻込み部からなる。後向き搬送部13は刈刃装置12で刈り取られた刈取穀稈の株元部を脱穀部5の扱室入り口へ向けて挟持搬送する株元側挟持搬送部13aと、その刈取穀稈の穂先部をフィードチェーン5aへ向けて係止搬送する穂先側係止搬送部13bとを具備したものとなされる。
【0018】
上記コンバイン は、走行部1の作動により走行し、機体の前進中に分草板9が植立穀稈の条列間を移動して隣接した条列穀稈の絡みを解し、穀稈引起こし装置10が上方へ移動されるタインtによりその対応した条列穀稈を引き起こし、刈刃装置12がこのように引き起こされた穀稈の株元を切断し、後向き搬送部13がこうして刈り取られた刈取穀稈を後向き斜め上方へ搬送して脱穀部5に送り込み、脱穀部5がこの送り込まれた刈取穀稈を脱穀すると共に脱穀により得られた穀粒や藁片などの混合物を選別して穀粒を選り出し、この選り出した穀粒を穀粒タンク7へ向けて送り出し、一方では排藁処理部6が前記脱穀により生成された排藁を送り込まれてこれを寸断する等の処理を行うように作動する。
また穀粒排出オーガ7は、穀粒タンク7内の穀粒を外方へ排出するもので、作業者の操作により、穀粒タンク7の後側で縦軸回りに旋回されたり横軸回りへ揺動されて機体周囲の任意な特定位置に穀粒を排出するものとなる。
【0019】
次に上記運転操作部4について詳細に説明する。機台2上の脱穀部5の前方右側に箱形のシートコラム18が配設されており、該シートコラム18の上面に運転座席17が固定されている。この際、シートコラム18は前面壁部18a、後面壁部18b、上面壁部18c、右側面壁部18dを具備し、コンバイン の各部に動力を供給するためのエンジン19を覆うと共に右側面壁部18dにエンジン用空気の取入通路をなすダクト部a1を形成されている。ダクト部a1の上面で運転座席17の外側には縦面に沿って配置され肘掛け部として機能する外側アシストバー20が固設されている。シートコラム18の前側には機台の右前端を延長した態様のフロアーフレーム2aが形成されており、該フロアーフレーム2aの上面に燃料タンク21がボルトで固定され、該燃料タンク21の上面壁部21aが略水平面状の足支持面を有するステップフロアーSFとなされている。燃料タンク21の前側となるフロアーフレーム2a個所にステアリング支持部22が形成され、該ステアリング支持部22の上部からステアリングコラム23が起立されており、図4に示すようにステアリングコラム23の左右側のステアリング支持部22の上面は緩やかな前上がりの前部フロアー22aとなされている。
【0020】
ステアリングコラム23の上部からはハンドル軸24aが立設されており、ハンドル軸24aの上端に丸形の操向ハンドル24が固定されている。該操向ハンドル24は回転操作されることにより左右のクローラ走行装置1a、1bに回転速度差を発生させて機体の進路を変化させるものである。
【0021】
ステアリングコラム23の右側の前部フロアー22aには燃料張込み口部25が配設されており、該燃料張込み口部25は前部フロアー22aに固定された張込み管25aとこれの上端に螺着された燃料蓋25bとで形成されており、張込み管25aの下端と燃料タンク21とはゴム管26で連通されている。
【0022】
ステップフロアーSF及びシートコラム18の左側にサイドコラム27が形成され、その高さを運転座席17の座面高さよりいくらか低い程度となされているのであり、さらに具体的には、機台2に同体状に固定された図示しない骨組み構造体の上側に、図4に示すようにレバー挿通用案内透孔b1、b2、b3、b4及び電子表示装置b5などの設けられたサイドコラム上面板27aが固定され、また前記骨組み構造体の運転席17側となる箇所に前後方向のサイドコラム側面板27bが固定されている。そして前記骨組み構造体の前面及び左側面にはこれらを覆うように配置され且つ上縁部をサイドコラム上面板27a周囲に固定されたゴム板27cが垂れ下がり状に設けられ、さらにサイドコラム上面板27aの上面にこれの前後方向長さの略全範囲に及ぶ内側アシストバーb6が上方への突出状に形成されている。
【0023】
上記レバー挿通用案内透孔b1、b2、b3、b4のそれぞれには、走行部1を駆動するための図示しない油圧駆動系の作動速度を変化させるための主変速操作レバー28、走行部1の駆動系統の歯車の噛み合い状態を変化させて走行部1の作動速度を変化させるための副変速操作レバー29、脱穀部5への動力供給を断続させるための脱穀クラッチ操作レバー30、刈取部3への動力供給を断続させるための刈取クラッチ操作レバー31が挿通される。
【0024】
サイドコラム27の縦向き側面板27bは次のようになされているのであって、即ち、図5に示すように、前後向き垂直面部c1と、機体右側へ傾斜された前後向き傾斜面部c2とで形成されており、前後向き傾斜面部c2はこれの上縁を前後向き垂直面部c1の下端縁に結合されると共に、下端をステップフロアーSFの左側縁近傍に位置されフロアーフレーム2aと同体状の図示しないステップフレームに結合された状態となされている。
【0025】
ステップフロアーSFの左側にはフートペダル式となされた駐車ブレーキ操作部材32が配置されており、該駐車ブレーキ操作部材32の揺動支点軸33はステップフロアーSFの近傍上側箇所に位置し、縦向き側面板27bの透孔に挿通され、サイドコラム27内で機台2と同体状に固定された軸受部材34を介して揺動自在に支持されている。該駐車ブレーキ操作部材32の足踏み部32aはステアリングコラム23と前記側面板27bとの間に位置され、またそのアーム部32bは成る可く前記側面板27bの近傍に位置される。
【0026】
ステアリング支持部22の右側面個所にはハンドレバー式の駐車ブレーキ操作部材35が設けてあり、該駐車ブレーキ操作部材35は、横向き支点軸36回りへ揺動させることにより、走行部1の走行速度をゼロとなしその後に制動をかけて走行部1の回転を規制するものである。
【0027】
ステアリング支持部22の前端面及び左右側面にはこれらを覆うためのフロントカバー37が被着してあり、該フロントカバー37は全体を合成樹脂材で一体成形されたものであって、フロアフレーム2a及びステアリング支持部22にボルト固定され、上縁部37aを前部フロアー22aの前端高さより幾分高くなされている。
【0028】
運転操作部4の最前方位置にはフロントマスク38が設けてある。該フロントマスク38は、図6に示すように、前部フロアー22a高さ近傍に位置される下端縁38aの左右巾がステアリング支持部22の略全巾に及ぶ寸法となされ且つ上縁部38b高さが運転座席17の座面よりいくらか高くなされた本体部38Aと、該本体部38Aの機体内方側の側縁38cの略下半分範囲をさらに横方へ延長した張出マスク部38Bとを備えている。この際、本体部38Aは前部フロアー22aの正面に位置されると共にフロントカバー37の上縁部37aをさらに上方へ延長するように配置されている。なお本体部38Aの高さは運転座席17の座面とほぼ同一、あるいはいくらか低くなすことも差し支えない。
【0029】
フロントマスク38の全体は固定用の金具を除いた部分を合成樹脂材で一体成形されており、図6Aに示すように、本体部38A上部の略全巾箇所に横長の透孔dを形成されており、該透孔dの上側である上部フロントマスク部分38dはアシストバーとして使用され得るように横向きの棒状に形成されている。
【0030】
透孔dは下側周縁の左右方向中央箇所e1の高さを最低となすような弧状に形成されており、上部フロントマスク部分38dの前面は図6Bに示すように左右方向中央箇所e2を最前方に位置させるような弧状に形成されている。そして透孔dの下側周囲の近傍をなす透孔下部フロントマスク部分38eの前面は上方へ向けて変位するに伴って漸次に大きく後側へ変位するように傾斜させ、また透孔下部フロントマスク部分38eの前面から後面までの前後方向寸法は上方へ向かうに伴って漸減するものとなされている。
【0031】
一方、張出マスク部38Bは本体部38Aの機体内方側の側縁38cの略下半分範囲をさらに横方へ延長された左右向き起立面部38hと、上縁を後方へ延長された水平縁部38iとを具備したものとなされている。
【0032】
また本体部38Aの下部後面特定箇所e4の左右端部箇所と、透孔dの下側近傍特定箇所e5の本体部38A後面の左右端部箇所とにナット39が埋設されており、これらナット39を介することにより、本体部38Aは本体部38A下端部の左右箇所を、ステアリング支持部22の左右箇所からこれと同体状に起立させた固定片にボルト固定されると共に、透孔d下側近傍の本体部38A箇所でステアリングコラム23を挟む左右箇所を、ステアリングコラム23とサイドコラム27とを結合した図5に示す結合棒部材40に固着された支持片にボルト固定される。
【0033】
本体部38Aは上方へ向かうに伴って後方へ変位するように傾斜され、刈取部3の最前部に装着された分草板9の周辺が、運転座席17に座して少し前屈み姿勢となった運転者によりフロントマスク38の上縁上及び透孔dを通じて目視できるようになされている。
【0034】
さらに張出マスク部38Bは本体部38Aとサイドコラム27との間の下寄り箇所に存在した空間と、結合棒部材40とを起立面部38hによりこれらの前側から覆うものとなし、また結合棒部材40の左右向き部分の上方を水平縁部38iにより覆うものとなしている。なお、ステップフロアーSF及びステアリング支持部22の前後方向左側縁と、サイドコラム27の右側面下部と、張出マスク部38Bの下部とで囲まれた空間は縦向き側面板27bの傾斜面部c2や図示しない付加板により地上側から遮断されるように覆われている。
【0035】
次にシートコラム18の支持開閉構造について説明する。
図4に示すように、前面壁部18aの下端縁近傍の機台2個所に左右方向f1への伸縮可能となされた伸縮案内体41が設けてある。該伸縮案内体41は縦支持軸42の固定された左右移動体41aがローラや伸縮案内レール41bを介して左右方向f1へ移動され機台2外方まで張り出した状態となるものとなされている。そして縦支持軸42に前面壁部18aの左端縁が回動自在に装着され、シートコラム18の全体が縦支持軸42回りへ回動されるものとなされている。
【0036】
一方では、後面壁部18bの下端縁の左右端部に支持輪42、42を装着すると共に、これら支持輪42、42を左右方向f1へ案内する案内レール43を機台2に固定している。この際、案内レール43に案内される支持輪42、42はシートコラム18の左右移動を円滑になすと共に縦支持軸42回りのシートコラム18の変位を規制する上でも寄与する。
【0037】
シートコラム18は位置固定具44を介してサイドコラム27に固定されており、位置固定具44による位置固定を解除させた後、右側への引き力を付与されることにより、伸縮案内体41及び支持輪42を介して円滑に右側へ移動され、右側の移動終端に達したとき、図7に仮想線g1で示すように機台2の外方に位置される。このとき、シートコラム18は伸縮案内体41と縦支持軸42を介して機台2に支持される。
【0038】
該状態のシートコラム18に矢印方向f2の回転力を付与することにより、シートコラム18は縦支持軸42回りへ回動され、図7に仮想線g2で示す開放位置に移動する。このときエンジン19の右側、前後側及び上側は作業者の進入可能な状態となる。なお、シートコラム27を元位置に復帰させるには、上記手順の逆を行う。
【0039】
上記したシートコラム18の支持開閉構造によれば、エンジン19の周囲や穀粒タンク7の裏側などが大きく開放されるためエンジン19周辺の保守などが容易に行えるようになり、またシートコラム18を開閉するためのスペースが少なくて済むため、シートコラム18周辺の機器や部品を密状に配置できて無駄なスペースが生まれるのを回避できると共に穀粒タンク7の形状を大きくなしてその容量を増大させることができるのであり、またシートコラム18の開閉操作が重力に逆らわないで水平方向の押し引きのみで行えるようになり、該開閉操作に要する力が小さくて済むのである。
【0040】
次に燃料タンク21について説明する。
燃料タンク21はブロー成形により合成樹脂材で一体状に成形されたものであり、図5に示すように、上面壁部21a、底面壁部21b、前面壁部21c、後面壁部21d、左側面壁部21e及び右側面壁部21fを備えるほか、内部には上面壁部21aと底面壁部21bを結合した図示しない補強部を形成されている。ステップフロアーSFをなす上面壁部21aの上面にはここに載せた足が滑るのを阻止するための凹凸模様hが設けてある。該凹凸模様hを設けないで、上面壁部21aの上面に凹凸の形成されたゴムマットを被着するようにしてもよい。
【0041】
この際、上面壁部21aは直方体の一面をなしていて外縁の全周囲を前面壁部21c、後面壁部21d、左右の側面壁部21e、21fに連続状に固定され且つ、底面壁部21bとの間を図示しない補強部で結合されているため、該ステップフロアーSFの振動に対する剛性は、ステップフロアーSFが独立した平板部材となされ且つ該平板部材の周囲がボルトでフロアフレーム2aと同体状のステップフレームに結合されている構造におけるステップフロアーSFのそれに較べて大きいものとなる。
【0042】
前面壁部21cの幅中央位置の下部には前記ゴム管26の下端を連通される給油管接続口部j1が突出状に形成されており、また外壁部の適当個所にはエンジン19の燃料系と連通される図示しない燃料供給口部や燃料戻り口部が形成されるほか、必要に応じて図示しないエア抜き口部が形成される。
【0043】
また右側面壁部21fには側面視方形状の凹み部j2が形成されており、該凹み部j2は運転者などがステップフロアーSFと地上との間を昇降する際に足先を挿入される補助ステップS1をなし、これの下面部が踏み面21gとして使用される。
【0044】
燃料タンク21の外壁面の複数個所にはボルト孔を有する固定部が形成されるほか、必要に応じてナットを埋設された固定部が形成されるのであり、これら固定部がボルトを介して機台2と同体のフロアーフレーム2aに固定されることにより、燃料タンク21はフロアフレーム2aに強固に位置保持される。
【0045】
上記燃料タンク21に燃料を供給するときは、燃料蓋25bを外して張込み管25aの上端開口から燃料を注ぎ入れるようにする。
また運転者などが運転操作部4に対し昇降するときは、例えば、操向ハンドル24又はフロントマスク38の上縁部38bを一方の手で持ち、他方の手で外側アシストバー20を持つなどした後、一方の足先を凹み部j2に挿し入れてその踏み面kに掛け止めるようにする。
【0046】
運転操作部4に乗った運転者は通常では運転座席17に座し、ステップフロアーSFに足を載せた姿勢で運転するのであり、必要に応じてステップフロアーSF上に起立する。
【0047】
このように使用されるステップフロアーSFにはかなりの重量が作用することになるが、ステップフロアーSFは振動に対する剛性が大きいものとなって、運転者を安定的に支持するのであり、また単に足を載せただけの状態、或いは何ら重量の作用しない状態での振動をも効果的に抑制されるものとなる。
【0048】
上記したコンバインは次のように変形できる。
即ち、燃料タンク21に凹み部j2を設けないで、右側面壁部21fに横外方への張り出し状個所を形成し、該個所を補助ステップS1となすこともできる。このような張り出し状の補助ステップS1は運転者などの足掛け動作を容易となす。
【0049】
また燃料タンク21に凹み部j2を設けないで底面壁部21bを比較的高く位置させ、該底面壁部21bの下側に補助ステップS1を設けるようになすこともできる。これにより燃料タンク21の容量を確保した上で、補助ステップS1の高さを比較的低くなすことができ、補助ステップS1の上下位置が大きな範囲で変更され得るものとなる。
【0050】
また燃料タンク21の凹み部j2を無くすると共に上面壁部21aをステップフロアーSFとして使用せずにその高さを低くなしておき、上面壁部21aの上側に図8に示すようなステップフロアー構造体45を装着することも差し支えない。
【0051】
該ステップフロアー構造体45はブロー成形により形成されており、図9にも示すように、上面に凹凸模様hを形成されステップフロアーSFをなしている板状部45Aと、上面が凹凸模様h付の踏み面46aとなされた棒状部46を具備した補助ステップS1とが合成樹脂材で一体状に結合されると共に、補助ステップS1がステップフロアーSFよりも右側へ張り出されるほか、ステップフロアーSFの下面に止着用の突起部45aを複数形成されたものとなされている。
【0052】
突起部45aはステップフロアー構造体45をフロアフレーム2aに固定するためのもので、燃料タンク21の上面壁部21aに形成された止着孔或いは、フロアフレーム2aと同体状のステップフレームに形成された止着孔に挿入されて取外し可能に固定される。この際、ステップフロアー構造体45は公知構造により突起部45aのみで位置決めされ且つ脱着可能に固定されるものとなすことができる。なお、ステップフロアー構造体45を金属材で形成することも可能である。
【0053】
このような構成とすれば、補助ステップs1がステップフロアーSFよりも右側へ張り出されるため、補助ステップs1は機体2のフロアフレーム2aよりも右側へ突出することになり、作業中に誤って補助ステップs1を壁等へぶつけることが生じ得るが、この場合、補助ステップs1はステップフロアーSFと同体状であるため容易に交換が可能である(従来は補助ステップはフロアフレームから突出されていたので交換が難しかった)。
【0054】
またステップフロアー構造体45を突起部45aで固定する際に、異常な荷重がかかった場合に突起部45aがこれを固定した側から離脱するようになすこともできるのであり、このようにすれば、補助ステップs1が他物に接触するなどして異常な荷重が作用したとき、ステップフロアー構造体45まるごとが機体側から離脱して損傷が避けられる。
【0055】
ステップフロアーSFの下側の燃料タンク21を省略し、代わりにフロントマスク38を燃料タンクに兼用することもできる。この場合、フロントマスク38に中空部を形成し、該中空部を燃料の収容場所となす。燃料張込み口部25Aは例えば本体部38Aの前上部に凹み部m1を形成してここに配設し、デザインを損ねないように、凹み部m1の前方を開閉可能なカバー体m2で覆われた状態となす。そして、フロントマスク38内の燃料の残量を目視などにより確認することを可能とした液面計m3などを設ける。このようにすれば、フロントマスク28周囲に熱気がこもらないため、フロントマスク28内に収容された燃料は温度上昇を防止される。また燃料を供給する際、殆ど身体を屈めることなく起立姿勢で行えるのである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係るコンバイン の右側面図である。
【図2】上記コンバイン の平面図である。
【図3】上記コンバイン の正面図である。
【図4】上記コンバイン の運転操作部を後上方から見た図である。
【図5】上記運転操作部を右斜後方から見たである。
【図6】上記運転操作部のフロントマスクを示し、Aは正面図Bは平面図である。
【図7】上記運転操作部のシートコラムの動きを示す平面図である。
【図8】上記運転操作部の変形例を示す平面図である。
【図9】上記変形例に係るステップフロアー構造体を示し、Aは前斜上方から見た図でBは左右方向で縦断した断面図である。
【符号の説明】
【0057】
21 燃料タンク
21a 上面壁部
21f 側面壁部
21g 踏み面
S1 補助ステップ
SF ステップフロアー(上面壁部、板状部)
h 凹凸模様
j2 凹み部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂材で一体状に成形された燃料タンクの上面壁部をステップフロアーとなされていることを特徴とする移動車両。
【請求項2】
前記燃料タンクが上面壁部の上面に凹凸模様が形成されるようにブロー成形されたものであることを特徴とする請求項1記載の移動車両。
【請求項3】
前記燃料タンクの側面壁部に横向きの凹み部を形成し、該凹み部が補助ステップとなされている構成を特徴とする請求項1又は2記載の移動車両。
【請求項4】
前記ステップフロアーよりも低い位置に踏み面を有する補助ステップが合成樹脂材により前記燃料タンクと一体状に形成され且つ前記燃料タンクの側面壁部に横外方への張り出し状に形成されていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の移動車両。
【請求項5】
ステップフロアーをなす板状部と、前記ステップフロアーよりも低い位置に踏み面を有する補助ステップとを合成樹脂材で一体状に形成されてなるステップフロアー構造体を備え、該ステップフロアー構造体が前記板状部の下面に設けられた複数の突起部を介して機台と同体状個所に脱着可能に固定されていることを特徴とする移動車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−56392(P2006−56392A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−240451(P2004−240451)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000005164)セイレイ工業株式会社 (125)
【Fターム(参考)】