説明

積層型電子部品の製造方法

【課題】特性のばらつきが少なく、小型で高容量の電子部品を、低コストで製造することが可能な積層型電子部品の製造方法を提供すること。
【解決手段】グリーンシートに所定パターンで電極ペースト膜を形成する工程と、グリーンシートを積層して積層体4aを準備する工程と、積層体を、支持基板36の粘着層34に付着する工程と、積層方向と直交する第1方向に沿って、支持基板は切断せずに積層体を切断して端子電極接続面15a,15bを形成し、積層方向および第1方向と直交する第2方向に沿って、積層体および支持基板を切断してギャップ面16を形成し、支持基板と一体化された棒状体38を得る工程と、ギャップ面が同一平面に配置されるように複数の棒状体38を並べ、ギャップ面16に、セラミックペースト42を塗布する工程と、粘着層の粘着力を弱め、積層体2aと支持基板36とを分離する工程とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば積層セラミックコンデンサのような積層型電子部品を製造する場合には、セラミックグリーンシートに電極ペーストを所定パターンで印刷した後で、セラミックグリーンシートを積層して積層体を製造し、積層体を所定サイズに切断する工程を必要とする。しかしながら、従来の方法では、電極ペーストの印刷ばらつき、積層ずれ、切断ずれなどが原因で、コンデンサの容量に寄与する内部電極層の対向領域の面積にばらつきが生じやすく、コンデンサの容量のばらつきが生じてしまうという課題を有している。
【0003】
そこで、帯状に連続した電極ペースト膜が形成されたグリーンシートを積層して積層体を製造し、その積層体を切断して積層体チップを作製した後で、個々の積層体チップが所定方向を向くように並べて、絶縁性のギャップ領域を形成することにより、容量のばらつきが小さい電子部品を製造する技術が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、特許文献1に示す技術では、切断後にバラバラとなった積層体チップを、一個ずつ方向をそろえて並べる必要があるために手間がかかり、製造コストが高くなるという課題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−267915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、特性のばらつきが少なく、小型で高容量の電子部品を、低コストで製造することが可能な積層型電子部品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る積層型電子部品の製造方法は、
焼成後にセラミック層となるグリーンシートの表面に、所定パターンで、焼成後に内部電極層となる電極ペースト膜を形成する工程と、
前記電極ペースト膜が形成された前記グリーンシートを積層して積層体を準備する工程と、
前記積層体を、支持基板の粘着層に付着する工程と、
前記セラミック層の積層方向と直交する第1方向に沿って、前記支持基板は切断せずに前記積層体を切断して端子電極接続面を形成し、前記積層方向および前記第1方向と直交する第2方向に沿って、前記積層体および前記支持基板を切断してギャップ面を形成し、前記支持基板と一体化された棒状体を得る工程と、
前記ギャップ面が同一平面に配置されるように複数の前記棒状体を並べ、前記ギャップ面に、セラミックペーストを塗布する工程と、
前記粘着層の粘着力を弱め、前記積層体と前記支持基板とを分離する工程とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明では、第2方向に沿って積層体および支持基板を切断することにより、積層体の切断面にギャップ面が形成される。すなわち、ギャップ面において、電極ペースト膜の端部が揃うことになる。また、第1方向に沿って積層体を切断することにより、積層体は個々のチップ(焼成前のグリーンチップ)となるが、支持基板は第1方向に沿って切断しないので、第1方向に長い長方形状の支持基板の表面に、粘着層を介して個々のチップが整列した棒状体を得ることができる。
【0009】
次に、ギャップ面が同一平面に配置されるように複数の棒状体を並べる。上述したように、棒状体には、支持基板を介して多数のチップが整列している。このため、複数のチップのギャップ面に、セラミックペーストを、一度に均一の厚みで塗布することができる。その後、支持基板の粘着層の粘着力を弱めることにより、ギャップ面にセラミックペースト膜が形成されたチップをバラバラにすること(個片化)ができる。このため、個々のチップを得るまでの工程の手間を、大幅に削減できる。なお、上述したセラミックペーストで塗った部分が、焼成後に、ギャップ領域となる。
【0010】
また、ギャップ面において、電極ペースト膜の端部が揃っているので、ギャップ領域の厚みを、従来に比べ薄くすることができる。そのため、電子部品をより小型化することができる。また、電子部品のサイズを小さくしても、対向する内部電極層の対向面積を大きくすることができ、静電容量を向上させることができる。
【0011】
また、本発明では、ギャップ面において、電極ペースト膜を露出させてからギャップ領域を形成するので、ギャップ領域から電極ペースト膜がはみ出すことは無く、ギャップ領域を均一な厚みで形成することができる。そのため、ギャップ領域による内部電極層の保護効果が向上する。たとえば焼成後のチップの端子電極接続面に、端子電極となるメッキを施しても、チップ内部にメッキ液が浸入することがなく、ショート不良を防止することができる。また、電子部品の使用状態において、内部電極を有効に保護することができる。
【0012】
好ましくは、前記端子電極接続面には、一対の端子電極とそれぞれ接続されるべき前記電極ペースト膜の接続端がそれぞれ露出し、しかも、前記第2方向に沿って対向する前記ギャップ面には、前記電極ペースト膜の側端が露出するように、前記積層体を切断する。
【0013】
上記のように積層体を切断することにより、少なくともギャップ面での切断ずれを考慮する必要がなくなる。たとえば、一方の端子電極接続面には、一方の端子電極と接続する電極ペースト膜の接続端のみが露出すべきであり、他方の端子電極接続面には、他方の端子電極と接続する電極ペースト膜の接続端のみが露出すべきであるため、切断ずれが生じないように切断する必要がある。これに対して、ギャップ面では、上記のように電極ペースト膜が露出するように積層体を切断し、その後にギャップ領域を形成するので、切断ずれが生じても問題がない。
【0014】
好ましくは、整列用基板の表面に、前記棒状体同士を、前記棒状体に付着している前記支持基板を介して互いに密着するように並べる。
【0015】
棒状体同士を上記のように並べることで、複数の棒状体に対し、ギャップ面に一度にセラミックペーストを塗布することができ、大量のチップを効率良く製造することができる。しかも、粘着層の粘着力を弱めた後には、隣り合う棒状体同士は、支持基板を介して配列してあるために、チップの個片化を自動的に行うことができる。
【0016】
好ましくは、前記セラミックペーストは、スクリーン印刷により所定パターンで塗布される。これにより、支持基板の切断面にはセラミックペーストを塗布せずに、積層体のギャップ面にのみセラミックペーストを塗布することができる。そのため、粘着層の粘着力を弱めた後のチップの個片化に際して、外力などを加えることなく、チップの個片化が可能となる。
【0017】
前記粘着層の粘着力を弱めた後に、前記棒状体に外力を加えて、前記積層体と前記支持基板とを分離しても良い。好ましくは、前記粘着層は、熱により粘着力が低下する粘着層、紫外線により粘着力が低下する粘着層、または水溶性粘着層などで構成してある。
【0018】
粘着層が熱により粘着力が低下する粘着層であれば、積層体を加熱するのみで、チップから支持基板を剥離できる。また、粘着層が紫外線により粘着力が低下する粘着層であれば、紫外線を照射するのみで、チップから支持基板を剥離できる。また、粘着層が水溶性粘着層であれば、水処理するのみで、チップから支持基板を剥離できる。また、これらの機能を有する樹脂成分を混合させたものを用いてもよく、この場合は、各種条件の組み合わせを最適化することで簡便に粘着力を低下させることが可能となる。
【0019】
好ましくは、前記積層体を前記支持基板から分離して得られた素子本体を、バレル研磨する工程をさらに有する。これにより、チップの角部を研磨して除くことができ、その後の製造工程(脱バインダ、および焼成処理など)、または製品使用時において、チップにクラックが発生することを防止できる。
【0020】
前記支持基板は、前記第2方向に沿って、予め切断してあっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る電子部品の製造方法で製造した積層セラミックコンデンサの断面図である。
【図2】図2は、図1に示すII−II断面図である。
【図3】図3は、図1に示す積層セラミックコンデンサの一製造工程で、電極ペーストが形成されたグリーンシートを積層した積層体を説明する断面図である。
【図4】図4は、図3に示す積層体を、支持基板の粘着層に付着する工程を示す斜視図である。
【図5】図5は、図4に示した切断線に沿って積層体を切断した状態を誇張してある斜視図である。
【図6】図6は、図5に示すそれぞれの棒状体を、整列用基板の表面に並べた状態を示す斜視図である。
【図7】図7は、図6に示す棒状体の一方のギャップ面に、セラミックペーストを塗布した状態を示す斜視図である。
【図8】図8は、図7に示す棒状体の他方のギャップ面に、セラミックペーストを塗布した状態を示す斜視図である。
【図9】図9(A)は、図8に示すIXA−IXA断面図、図9(B)は、図9(A)に示す棒状体の粘着層の粘着力を弱めた後の状態を示す断面図、図9(C)は、グリーンチップを個片化した様子を示す断面模式図である。
【図10】図10は、図6に示す棒状体の一方のギャップ面に、スクリーン印刷により、セラミックペーストを印刷している状態を示す斜視図である。
【図11】図11(A)は、スクリーン印刷によってセラミックペーストが印刷された棒状体の断面図、図11(B)は、図11(A)に示す棒状体の粘着層の粘着力を弱めた後の状態を示す断面図、図11(C)は、グリーンチップを個片化した様子を示す断面模式図である。
【図12】図12は、本発明の他の実施形態で電子部品を製造する一工程を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
第1実施形態
まず、本発明の実施形態に係る方法により製造される積層型電子部品の一実施形態として、セラミック層としての誘電体層を有する積層セラミックコンデンサの全体構成について説明する。
【0023】
図1に示すように、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2は、素子本体4と、素子本体4の第1端子電極接続面15aの外側に形成してある第1端子電極6と、素子本体4の第2端子電極接続面15bの外側に形成してある第2端子電極8とを有している。第1端子電極接続面15aと第2端子電極接続面15bとは、X軸方向に相互に対向している。素子本体4は、第1内部電極層12および第2内部電極層13を有し、第1内側誘電体層10および第2内側誘電体層11の間に、これらの内部電極層12,13が交互に積層してある。
【0024】
素子本体4は、その積層方向(Z軸方向)の両端面に、外側誘電体層14を有する。交互に積層される一方の第1内部電極層12の接続端12aは、素子本体4の第1端子電極接続面15aに露出し第1端子電極6に電気的に接続してある。また、交互に積層される他方の第2内部電極層13の接続端13aは、素子本体4の第2端子電極接続面15bに露出し第2端子電極8に電気的に接続してある。
【0025】
図2に示すように、第2端子電極接続面15bには、Z軸方向に所定間隔で第2内部電極層13の接続端13aが露出している。第2内部電極層13は、Y軸方向に沿って直線状に形成され、各側端13bは、Y軸に略垂直なギャップ面16に沿って一列に配置してある。各ギャップ面16のY軸方向外側には、それぞれギャップ領域17が形成してある。
【0026】
なお、第1端子電極接続面15aに関しても、図2と同様であり、第1端子電極接続面15aには、Z軸方向に所定間隔で第1内部電極層12の接続端12aが露出している。第1内部電極層12は、Y軸方向に沿って直線状に形成され、各側端12bは、Y軸に略垂直なギャップ面16に沿って一列に配置してある。各ギャップ面16のY軸方向外側には、それぞれギャップ領域17が形成してある。
【0027】
第1および第2内側誘電体層10,11、外側誘電体層14およびギャップ領域17の材質は、特に限定されず、たとえばチタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウムおよび/またはチタン酸バリウムなどの誘電体材料で構成される。各内側誘電体層10,11の厚みは、特に限定されないが、0.5μm〜数十μmのものが一般的である。また、外側誘電体層14からなる外層部の厚みは、特に限定されないが、好ましくは10〜200μmの範囲である。
【0028】
第1および第2端子電極6,8の材質も特に限定されないが、通常、Ni,Pd,Ag,Au,Cu,Pt,Rh,Ru,Ir,Sn,Ti等の少なくとも1種、又はそれらの合金を用いることができる。通常は、Cu,Cu合金、Ni又はNi合金等や、Ag,Ag−Pd合金等が使用される。端子電極6,8の厚みも特に限定されないが、例えば、5〜30μm程度とすることができる。
【0029】
積層セラミックコンデンサ2の形状やサイズは、目的や用途に応じて適宜決定すればよい。積層セラミックコンデンサ2は、通常、縦0.2〜5.7mm×横0.1〜5.0mm×厚み0.1〜3.2mm程度である。
【0030】
次に、本発明の一実施形態としての積層セラミックコンデンサ2の製造方法について説明する。
【0031】
まず、図3に示すシート積層体4aを形成する。このシート積層体4aを形成するために、第1内部電極パターン12cが形成される第1グリーンシート10aと、第2内部電極パターン13cが形成される第2グリーンシート11aを交互に積層し、シート積層体4aを形成する。
【0032】
グリーンシート10a,11aを形成するための誘電体用ペーストは、通常、セラミック粉末と有機ビヒクルとを混練して得られた有機溶剤系ペースト、または水系ペーストで構成される。
【0033】
なお、有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いるバインダは特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。
【0034】
内部電極パターン12c,13cは、グリーンシート10a,11aの表面に形成される。内部電極パターン12c,13cを形成するための内部電極用ペーストは、各種導電性金属や合金からなる導電材、あるいは焼成後に導電材となる各種酸化物、有機金属化合物、レジネート等と、上記した有機ビヒクルとを混練して調製する。なお、内部電極用ペーストには、必要に応じて、共材としてセラミック粉末が含まれていても良い。共材は、焼成過程において導電性粉末の焼結を抑制する作用を奏する。
【0035】
グリーンシート10a,11aは、上記の誘電体用ペーストを用いたドクターブレード法などで形成される。また、グリーンシート10a,11aの各表面に内部電極パターン12c,13cを形成するには、上記の内部電極用ペーストを用いてスクリーン印刷などを行えばよい。
【0036】
シート積層体4aにおける第1グリーンシート10aは、最終的には図1に示す第1内側誘電体層10となる部分であり、第2グリーンシート11aは、最終的には図1に示す第2内側誘電体層11となる部分である。また、第1内部電極パターン12cは、最終的には図1に示す第1内部電極層12となる部分であり、第2内部電極パターン13cは、最終的には図1に示す第2内部電極層13となる部分である。
【0037】
図3では、図示の容易化のために、シート積層体4aにおける内部電極パターン12cおよび13cの積層数を少なく図示してあるが、数層から数百層と自由に設定することができる。
【0038】
なお、シート積層体4aにおける積層方向Zの両端部には、外側誘電体層14となるべきグリーンシート14aが積層してある。シート積層体4aにおける積層方向Zの厚みは、焼成後において、図1に示す素子本体4の厚みに対応する。
【0039】
図3に示すように、シート積層体4aにおいて、第1内部電極パターン12cと第2内部電極パターン13cは、パターン12c,13cの電極長手方向X(積層方向Zに垂直な方向)に沿って、半パターンずらしてある長方形の繰り返しパターンである。第1内部電極パターン12cと第2内部電極パターン13cは、X軸およびZ軸に垂直なY軸方向に、連続して形成してある。
【0040】
次に、シート積層体4aを、図4に示すように、シート積層体4aの積層方向片面を、支持基板36の粘着層34の表面に付着させる。支持基板36は、支持フィルム層32と、粘着層34とで構成されている。支持フィルム層32の材質としては、特に限定されないが、PET等を用いることが好ましい。粘着層34は、熱により粘着力が低下する粘着層、紫外線により粘着力が低下する粘着層、または水溶性粘着層などで構成してあることが好ましい。熱により粘着力が低下する粘着層は、熱発泡樹脂で構成されることが好ましい。紫外線により粘着力が低下する粘着層は、UV樹脂で構成されることが好ましい。水溶性粘着層は、水溶性樹脂で構成されることが好ましい。また、粘着層として、上記の熱、紫外線、水溶性等の機能によって粘着力が低下する複数の樹脂成分を混合させたものを用いても良い。その場合は、加熱や紫外線照射、水分の付与等の各種条件の組み合わせを最適化することで、単独の機能を有する粘着層の粘着力を低下させる場合よりも短時間で粘着力を低下させることが可能となる。なお、本実施形態では、粘着層34は、熱により粘着力が低下する粘着層であるとして説明を行う。
【0041】
次に、図4に示すように、第1方向(X軸方向)に沿う第1切断線30xに沿って、シート積層体4aの切断を行う。さらに、第2方向(Y軸方向)に沿う第2切断線30yに沿って、シート積層体4aの切断を行う。なお、第2切断線30yに沿って、シート積層体4aの切断を行い、次に、第1切断線30xに沿って、シート積層体4aの切断を行っても良く、切断の順序は、上述した順序に限定されない。第2切断線30yに沿ってシート積層体4aを切断する際には図5に示すように、シート積層体4aから支持フィルム層32に至るまで、完全に切断する。そして、図4に示すように、第1切断線30xに沿って切断する際には、図5に示すように、少なくともシート積層体4aが完全に切断されるようにし、しかも支持フィルム層32が切断されないようにする。
【0042】
このような切断を行った結果、図5に示すように、個々のグリーンチップ2aが支持フィルム層32の上に粘着層34を介して接着されたX軸方向に長い直方体の棒状体38を、複数個得ることができる。
【0043】
次に、図6に示すように、ギャップ面16が同一平面に配置されるように、印刷保持板40の表面40a上に、複数の棒状体38を、支持基板36を介して密着するように並べ、棒状体群38aを作る。棒状体群38aは、グリーンチップ2aがX軸方向およびZ軸方向にマトリックス状に密に並ぶことで構成されている。なお、棒状体群38aにおけるグリーンチップ2a相互間には、支持基板36が介在される。
【0044】
次に、図7に示すように、焼成後にギャップ領域17となるセラミックスラリー42を、たとえばドクターブレード法によって、ギャップ面16が並んだ面の全体に塗布する。次に、セラミックスラリー42の塗布膜を乾燥させた後に、図8に示すように、棒状体群38aを、図8に矢印で示すように180°回転させて、印刷保持板(図示省略)の上に配置する。この時にも、焼成後にギャップ領域17となるセラミックスラリー42を、たとえばドクターブレード法によって、ギャップ面16が並んだ平面の全体に塗布する。その後、セラミックスラリー42の塗布膜を乾燥させる。両面のギャップ面にセラミックスラリー42を塗布・乾燥させた状態を、図9(A)に、図8のIXA−IXA断面で示す。
【0045】
次に、棒状体群38aを加熱し、図9(B)に示すように、粘着層(熱発泡層)34を除去する。加熱温度は、粘着層34の粘着力が低下する温度であれば特に限定されないが、たとえば90〜150℃であることが好ましい。なお、粘着層34は、必ずしも完全に除去されなくても良く、グリーンチップ2aおよび支持フィルム層32との接触面積を小さくすることで、剥離しやすくなればよい。図9(B)の図示では、粘着層34は、完全に無くなっている状態を示している。この時、乾燥したセラミックスラリー42の塗布膜は、個々のグリーンチップ2a同士を連結している。
【0046】
次に、棒状体群38aに軽く外力を与え、上記連結された部分を破断し、グリーンチップ2aを個片化する(図9(C))。好ましくは、個片化されたグリーンチップ2aに対し、たとえばバレル研磨を施す。これにより、グリーンチップ2aの角部が削れてRが形成され、クラックなどの発生を防止することができる。バレル研磨で、角部にRを形成することにより、グリーンチップ2aの角部を研磨して除くことができ、その後の製造工程(脱バインダ、および焼成処理など)、または製品使用時において、チップにクラックが発生することを防止できる。
【0047】
研磨後に脱バインダ処理、続いて、グリーンチップ2aの焼成を行う。脱バインダ処理および焼成は一般的な条件で行う。
【0048】
上記のようにして得られたコンデンサ素子本体の端子電極接続面15a,15bに、たとえばバレル研磨やサンドブラストなどにより端面研磨を施し、端子電極用ペーストを塗布して焼き付け、必要に応じ、めっき処理を行い、図1に示す第1端子電極6、第2端子電極8を形成する。
【0049】
このようにして製造された本実施形態の積層セラミックコンデンサ2は、ハンダ付等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。
【0050】
本実施形態では、図4に示すように、第2方向(Y軸方向)に沿ってセラミック積層体4aおよび支持基板36を切断することにより、セラミック積層体4aの切断面にギャップ面16が形成される。すなわち、ギャップ面16において、第1内部電極層12および第2内部電極層13の側端12b,13bが揃うことになる。
【0051】
また、第1方向(X軸方向)に沿ってセラミック積層体4aを切断することにより、セラミック積層体4aは個々のチップ(焼成前のグリーンチップ2a)となるが、支持フィルム層32は第1方向に沿って切断しないので、X軸方向に長い長方形状の支持フィルム層32の表面に、粘着層34を介して個々のグリーンチップ2aが整列した棒状体38を得ることができる。
【0052】
次に、図6に示すように、ギャップ面16が同一平面に配置されるように複数の棒状体38を並べる。上述したように、棒状体38には、支持基板36を介して多数のグリーンチップ2aが整列している。棒状体38同士を上記のように並べるため、複数のグリーンチップ2aのギャップ面16に、セラミックペースト42を、一度に均一の厚みで塗布することができ、大量のグリーンチップ2aを効率良く製造することができる。
【0053】
その後、支持基板36の粘着層34の粘着力を弱める。熱によって粘着層34の粘着力を弱めた後には、隣り合う棒状体38同士は、支持フィルム層32を介して配列してあるために、グリーンチップ2aの個片化を自動的に行うことができる。このため、個々のグリーンチップ2aを得るまでの工程の手間を、大幅に削減できる。なお、上述したセラミックペースト42で塗った部分が、焼成後に、ギャップ領域17となる。
【0054】
また、ギャップ面16において、第1内部電極層12および第2内部電極層13の側端部12b,13bが揃っているので、ギャップ領域17のY軸方向厚みWOを、従来(50〜60μm)に比べ薄くすることができる。本実施形態では、ギャップ領域17の厚み(ギャップ面16から素子本体4のY軸方向外表面までの厚み)WOを、WO=1.0〜30μmにすることができる。ただし、電子部品として利用する際の耐湿性や強度等を考慮すると、焼結後の厚みが5.0μm以上となるようにすることが好ましい。本実施形態では、ギャップ領域17のY軸方向厚みWOをZ軸方向に沿って均一にすることができる。そのため、積層セラミックコンデンサ2を、より小型化することができる。また、積層セラミックコンデンサ2のサイズを小さくしても、対向する内部電極層(第1内部電極層12および第2内部電極層13)の対向面積を大きくすることができ、静電容量を向上させることができる。
【0055】
また、本実施形態では、ギャップ面16において、電極ペースト膜(第1内部電極パターン12cおよび第2内部電極パターン13c)を露出させてからギャップ領域17を形成する。したがって、ギャップ領域17から電極ペースト膜(第1内部電極パターン12cおよび第2内部電極パターン13c)がはみ出すことは無く、ギャップ領域17を均一な厚みで形成することができる。そのため、ギャップ領域17による内部電極層(第1内部電極層12および第2内部電極層13)の保護効果が向上する。たとえば焼成後のチップの第1端子電極接続面15aおよび第2端子電極接続面15bに、第1端子電極6および第2端子電極8となるメッキを施しても、チップ内部にメッキ液が浸入することがなく、ショート不良を防止することができる。また、積層セラミックコンデンサ2の使用状態において、内部電極(第1内部電極層12および第2内部電極層13)を保護する効果もある。
【0056】
また、本実施形態のようにシート積層体4aを切断することにより、少なくともギャップ面16での切断ずれを考慮する必要がなくなる。たとえば、第1端子電極接続面15aには、第1端子電極6と接続する第1内部電極パターン12cの接続端12aのみが露出すべきであり、第2端子電極接続面15bには、第2端子電極8と接続する第2内部電極パターン13cの接続端13bのみが露出すべきである。そのため、切断ずれが生じないように切断する必要がある。これに対して、ギャップ面16では、上記のように電極ペースト膜(第1内部電極パターン12cおよび第2内部電極パターン13c)が露出するようにシート積層体4aを切断し、その後にギャップ領域を形成するので、切断ずれが生じても問題がない。
【0057】
また、粘着層34が熱発泡層なので、シート積層体4aを加熱するのみで、グリーンチップ2aから支持フィルム層32を剥離できる。
【0058】
第2実施形態
以下に述べる以外は、上述した第1実施形態と同様にして、積層セラミックコンデンサ2を製造する。
【0059】
本実施形態では、図10に示すように、棒状体群38aのギャップ面16へセラミックスラリー42を塗布する工程において、スクリーン印刷により所定パターンでセラミックペースト42を印刷する。図10に示すように、スクリーン44には、メッシュ46が、矢印で示す印刷方向に長い長方形パターンで、印刷方向に直交する方向に沿って所定間隔で配置されている。このようなメッシュ46が形成されたスクリーン44を、メッシュ46とギャップ面16とが対応するように配置する。
【0060】
次に、スキージ48を、図10の矢印方向へスライドさせながら、セラミックスラリー42を、棒状体群38aのギャップ面16へ印刷する。セラミックスラリー42をギャップ面16へ印刷した状態の棒状体群38aの切断面を、図11(A)に示す。
【0061】
本実施形態では、支持基板36の切断面36aにはセラミックペースト42を塗布せずに、グリーンチップ2aのギャップ面16にのみセラミックペースト42を塗布する。そして、棒状体群38aを加熱し、図11(B)および図11(C)に示すように、粘着層(熱発泡シート)34を除去する。本実施形態では、乾燥したセラミックスラリー42は、個々のグリーンチップ2a同士を連結していない。そのため、粘着層34の粘着力を弱めた後のグリーンチップ2aの個片化に際して、外力などを加えることなく、グリーンチップ2aの個片化が可能となる。
【0062】
なお、図5では、第2切断線30yに沿って、シート積層体4aおよび粘着層34が切断された結果を示しているが、粘着層34は、必ずしも切断しなくても良い。また、上述した実施形態では、同一の切断具を用いてシート積層体4aと支持基板36とを切断しているが、第1切断線30xに沿って切断する際には、シート積層体4aと支持フィルム層32とを、別々の切断具を用いて切断しても良い。
【0063】
また、図12に示すように、支持基板36は、Y軸方向に沿って、予め所定間隔に切断されていても良い(切断線39)。シート積層体4aの積層方向片面を、短冊状の支持基板36の粘着層34の表面に付着させた後に、シート積層体4aのみを、第1切断線30xおよび第2切断線30yに沿って切断しても良い。また、シート積層体4aは、予め個片化されていても良い。
【0064】
また、上述した実施形態のように、積層方向にプレスされたシート積層体4aのギャップ面16にセラミックペースト42を塗布すると、焼成後に、シート積層体4aを構成するセラミック層に比べ、ギャップ領域17のセラミック層の密度が低くなり易い。シート積層体4aを構成するセラミック層はプレスされるのに対して、ギャップ領域17のセラミック層(セラミックスラリー42)はプレスされないからである。そこで、層間セラミック層と、ギャップ領域17のセラミック層とで、焼成後の密度が同じになるようにするために、ギャップ面16に塗布するセラミックペースト42の焼結性を、第1グリーンシート10a、第2グリーンシート11a、およびグリーンシート14aの焼結性に比べ、高くしても良い。
【0065】
たとえば、セラミックペースト42を構成するセラミック粒の平均粒径を、グリーンチップ2aを構成する(第1グリーンシート10a、第2グリーンシート11a、および外側グリーンシート14a)セラミック粒の平均粒径に比べ、90%の平均粒径にしても良い。また、たとえば、セラミックペースト42を構成するセラミック粒の組成と、グリーンチップ2aを構成するセラミック粒の組成とを異ならせても良い。また、たとえば、セラミックペースト42におけるセラミック粒の密度と、グリーンチップ2aを構成するグリーンシート用ペーストおけるセラミック粒の密度とを異ならせても良い。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
【0067】
また、上述した実施形態では、本発明に係る電子部品として積層セラミックコンデンサを例示したが、本発明に係る電子部品としては、積層セラミックコンデンサに限定されず、上記構成を有する電子部品であれば何でも良い。
【符号の説明】
【0068】
4a…シート積層体
6…第1端子電極
8…第2端子電極
10a…第1グリーンシート
11a…第2グリーンシート
14a…外側グリーンシート
10…第1内側誘電体層
11…および第2内側誘電体層
14…外側誘電体層
12…第1内部電極層
13…第2内部電極層
12a,13a…接続端
12b,13b…側端
12c…第1内部電極パターン
13c…第2内部電極パターン
15a…第1端子電極接続面
15b…第2端子電極接続面
16…ギャップ面
34…粘着層
36…支持基板
38…棒状体
40…整列用基板
42…セラミックペースト
X…第1方向
Y…第2方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼成後にセラミック層となるグリーンシートの表面に、所定パターンで、焼成後に内部電極層となる電極ペースト膜を形成する工程と、
前記電極ペースト膜が形成された前記グリーンシートを積層して積層体を準備する工程と、
前記積層体を、支持基板の粘着層に付着する工程と、
前記セラミック層の積層方向と直交する第1方向に沿って、前記支持基板は切断せずに前記積層体を切断して端子電極接続面を形成し、前記積層方向および前記第1方向と直交する第2方向に沿って、前記積層体および前記支持基板を切断してギャップ面を形成し、前記支持基板と一体化された棒状体を得る工程と、
前記ギャップ面が同一平面に配置されるように複数の前記棒状体を並べ、前記ギャップ面に、セラミックペーストを塗布する工程と、
前記粘着層の粘着力を弱め、前記積層体と前記支持基板とを分離する工程とを有することを特徴とする積層型電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記端子電極接続面には、一対の端子電極とそれぞれ接続されるべき前記電極ペースト膜の接続端がそれぞれ露出し、しかも、前記第2方向に沿って対向する前記ギャップ面には、前記電極ペースト膜の側端が露出するように、前記積層体を切断することを特徴とする請求項1に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項3】
整列用基板の表面に、前記棒状体同士を、前記棒状体に付着している前記支持基板を介して互いに密着するように並べることを特徴とする請求項1または2に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記セラミックペーストは、スクリーン印刷により所定パターンで塗布されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記粘着層は、熱により粘着力が低下する粘着層、紫外線により粘着力が低下する粘着層、または水溶性粘着層のいずれか1種または複数種類の組み合わせからなる構成であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記粘着層の粘着力を弱めた後に、前記棒状体に外力を加えて、前記積層体と前記支持基板とを分離することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項7】
前記積層体を前記支持基板から分離して得られた素子本体を、バレル研磨する工程をさらに有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項8】
前記支持基板は、前記第2方向に沿って、予め切断してあることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の積層型電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−26257(P2013−26257A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156357(P2011−156357)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】