説明

窒化アルミニウム単結晶の製造方法

【課題】気相法による窒化アルミニウム単結晶の製造において、原料ガスや炉内に含まれる酸素に由来する窒化アルミニウム単結晶への酸素の固溶を低減するための単結晶製造方法を提供する。
【解決手段】ヒーター5によって容器3内部に収容された原料4を昇華、気化、又は反応によりアルミニウム酸化物のガスを生成させることにより結晶成長用基体2にアルミニウム酸化物ガスを供給すると同時に、窒素又は窒素含有ガス供給路6を介して結晶成長用基体2に窒素又は窒素含有ガスを供給することにより、窒化アルミニウム単結晶を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相成長法を利用した窒化アルミニウム単結晶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、気相成長法の一つである昇華法を利用して窒化アルミニウム単結晶を製造した場合、原料ガスや炉内に含まれる酸素が結晶成長用基体に供給されるために、窒化アルミニウム単結晶に酸素が固溶してしまう(非特許文献1参照)。そして、窒化アルミニウム単結晶に酸素が固溶した場合には、窒化アルミニウム単結晶の体積抵抗率が低下すると共に、色調が茶色又は黒色となることによって光の透過率が低下してしまう。
【非特許文献1】Journal of Crystal Growth, 265(2004)577-581
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような背景から、昇華法を利用して窒化アルミニウム単結晶を製造する場合には、光学用の素子や基板として利用可能な窒化アルミニウム単結晶を製造することが困難であった。
【0004】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、窒化アルミニウム単結晶に酸素が固溶することを防止可能な窒化アルミニウム単結晶の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の課題を解決するために、本発明に係る窒化アルミニウム単結晶の製造方法の特徴は、原料ガス供給路を介して結晶成長用基体にアルミニウム酸化物ガスを供給すると同時に、窒素又は窒素含有ガス供給路を介して結晶成長用基体に窒素又は窒素含有ガスを供給することにより窒化アルミニウム単結晶を製造することにある。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る窒化アルミニウム単結晶の製造方法によれば、原料ガスや炉内に含まれる酸素が結晶成長用基体に供給されることを防止できるので、窒化アルミニウム単結晶に固溶する酸素量を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態となる窒化アルミニウム単結晶の製造方法について説明する。
【0008】
本発明の実施形態となる窒化アルミニウム単結晶の製造装置は、図1に示すように、Arガス雰囲気に調整された原料ガス供給路1と、原料ガス供給路1内部に配設された窒化アルミニウム等の結晶成長用基体2と、結晶成長用基体2よりも上流側の原料ガス供給路1内部に配設された容器3と、容器3内に収容されたアルミニウム酸化物を含有する原料4と、原料ガス供給路1の周部に設けられたヒーター5と、結晶成長用基体2に窒素又は窒素含有ガスを供給する窒素又は窒素含有ガス供給路6とを主な構成要素として備える。
【0009】
そしてこの製造装置では、ヒーター5によって容器3内部に収容された原料4を昇華、気化、又は反応によりアルミニウム酸化物のガスを生成させることによりArガス雰囲気の原料ガス供給路1を介して結晶成長用基体2にアルミニウム酸化物ガスを供給すると同時に、窒素又は窒素含有ガス供給路6を介して結晶成長用基体2に窒素又は窒素含有ガスを供給することにより、窒化アルミニウム単結晶を製造する。このような製造方法によれば、原料4や原料ガス供給路1から結晶成長用基体2に酸素が供給されることを防止できるので、窒化アルミニウム単結晶に酸素が固溶することを防止できる。
【0010】
なお、窒化アルミニウム単結晶に固溶する酸素量をより多く低減するために、結晶成長用基体2の周囲に炭素等により形成された酸素のゲッターを設けることにより、結晶成長用基体2周辺の酸素分圧を0.03[MPa]以下に調整することが望ましく、望ましくは酸素分圧を0.01[MPa]以下、更に望ましくは酸素分圧を1×10−5[MPa]以下、更に望ましくは酸素分圧を1×10−13[MPa]以下に調整することが好ましい。また、窒素又は窒素含有ガスの流量は0.01[l/min]以上100[l/min]以下の範囲内に調整することが望ましい。
【0011】
また、原料ガス供給路1は、高融点金属、窒化物、炭化物、炭素のうちのいずれか、又は、窒化アルミニウムにより形成することが望ましい。また、結晶成長用基体2へのガス供給を開始する前に、ヒーター5によって結晶成長用基体2を結晶成長温度より20[℃]以上昇温することが望ましい。
【0012】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、この実施の形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、上記実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態となる窒化アルミニウム単結晶の製造方法を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0014】
1:原料ガス供給路
2:結晶成長用基体
3:容器
4:原料
5:ヒーター
6:窒素又は窒素含有ガス供給路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガス供給路を介して結晶成長用基体にアルミニウム酸化物ガスを供給すると同時に、窒素又は窒素含有ガス供給路を介して結晶成長用基体に窒素又は窒素含有ガスを供給することにより窒化アルミニウム単結晶を製造することを特徴とする窒化アルミニウム単結晶の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の窒化アルミニウム単結晶の製造方法であって、前記結晶成長用基体周辺の酸素分圧が0.03[MPa]以下の範囲内に調整されていることを特徴とする窒化アルミニウム単結晶の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の窒化アルミニウム単結晶の製造方法であって、前記窒素又は窒素含有ガスの流量が0.01[l/min]以上100[l/min]以下の範囲内に調整されていることを特徴とする窒化アルミニウム単結晶の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のうち、いずれか1項に記載の窒化アルミニウム単結晶の製造方法であって、前記結晶成長用基体の周囲に酸素濃度を低減する酸素濃度低減手段が設けられていることを特徴とする窒化アルミニウム単結晶の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の窒化アルミニウム単結晶の製造方法であって、前記酸素濃度低減手段は炭素により形成されていることを特徴とする窒化アルミニウム単結晶の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のうち、いずれか1項に記載の窒化アルミニウム単結晶の製造方法であって、前記原料ガス供給路は、高融点金属、窒化物、炭化物、炭素のうちのいずれかにより形成されていることを特徴とする窒化アルミニウム単結晶の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5のうち、いずれか1項に記載の窒化アルミニウム単結晶の製造方法であって、前記原料ガス供給路は、窒化アルミニウムにより形成されていることを特徴とする窒化アルミニウム単結晶の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のうち、いずれか1項に記載の窒化アルミニウム単結晶の製造方法であって、ガス供給を開始する前に結晶成長用基体を結晶成長温度より20[℃]以上昇温することを特徴とする窒化アルミニウム単結晶の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のうち、いずれか1項に記載の窒化アルミニウム単結晶の製造方法であって、前記結晶成長用基体は窒化アルミニウムにより形成されていることを特徴とする窒化アルミニウム単結晶の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−246344(P2007−246344A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−72942(P2006−72942)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】