説明

窒化ガリウム系化合物半導体、発光素子、照明装置及び窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法

【課題】 二硼化物単結晶上に成長させる窒化ガリウム系化合物半導体の極性を制御することによって、高品質、低転位の窒化ガリウム系化合物半導体を得ること。
【解決手段】 窒化ガリウム系化合物半導体は、XB(ただし、XはZr,Ti及びHfから選択される1種以上の元素である。)から成る基板10の主面上に形成されたXBから成る膜11上に形成されたGa1−x−yAlInN単結晶層(ただし、0<x+y≦1、0≦y<0.1)12と、その上に形成されたGa極性の窒化ガリウム系化合物半導体層13とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化ガリウム系化合物半導体、その窒化ガリウム系化合物半導体を用いた発光素子、その発光素子を用いた照明装置、及び窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム(GaN),窒化インジウム(InN),窒化アルミニウム(AlN)等の窒化物系化合物半導体(窒化ガリウム系化合物半導体)は、直接遷移型の化合物半導体であり、また広いバンドギャップを持つため、青色光、青紫色光または紫色光の発光ダイオード(LED)や半導体レーザ(レーザダイオード:LD)等の発光素子、フォトディテクターや火炎センサー等の受光素子として利用されている。
【0003】
また、電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor),MESFET(Metal-Semiconductor FET),MISFET(Metal-Insulator-Semiconductor FET),高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)等の電子素子においては、窒化ガリウム系化合物半導体はGaAsに近いキャリア輸送特性を有し、ワイドバンドギャップを持ち破壊電界が高いことから、高周波及び高出力トランジスタの材料として有望視されている。
【0004】
特に、近年、青色光発光素子、紫色光発光素子、紫外光発光素子等の窒化ガリウム系化合物半導体からなる発光素子からの発光を受け、光を発する蛍光体及び燐光体を設けた照明装置の製品開発が進んでいる。このような照明装置においては、蛍光体及び燐光体の発光効率を向上させることと、発光素子の発光効率を向上させることが重要課題となっている。
【0005】
発光素子の発光効率を向上させるには、内部量子効率を向上させることが重要であり、そのためには非発光再結合中心となる結晶欠陥を低減した窒化ガリウム系化合物半導体を製造する必要がある。
【0006】
窒化ガリウム系化合物半導体の結晶成長には、窒化ガリウム系化合物半導体に対して良好な格子整合性を有する良質な基板が実現していないため、サファイア基板や窒化珪素(6H−SiC)基板等の、異種材料(窒化ガリウム系化合物半導体との格子整合性、熱膨張係数の整合性が良好とはいえない材料)の単結晶から成る基板を用いている。
【0007】
これらの格子不整合の大きい基板を用いた窒化ガリウム系化合物半導体のエピタキシャル成長においては、歪み緩衝層(バッファ層)を基板と窒化ガリウム系化合物半導体との間に挿入する構成が用いられている。具体的には、サファイア基板上に窒化ガリウム系化合物半導体層(GaN層)を成長させる場合、低温(400〜500℃)でAlNまたはGaNからなるバッファ層を成長させた後に、GaN層を成長させる方法が採られている。
【0008】
この場合、サファイア基板上に低温堆積させたAlNまたはGaNからなるバッファ層は、ほとんどアモルファスの状態で堆積する。その後、バッファ層は、昇温過程において結晶化し、柱状組織を形成する。次に、柱状組織が形成されたバッファ層上に、GaN層が隣接する柱状構造を埋め込むようにして成長し、平坦なGaN層が成長する。従って、上記GaN層の成長過程では、初期成長は3次元の島状成長から始まり、最終的に2次元の層状成長になる。そのため、砒化ガリウム(GaAs)基板上にGaAs層を成長するようなホモエピタキシ成長にみられる2次元の層状成長の過程に比べて、Ga元素とN元素の積層順序が反転した反位領域境界(inversion domain boundary)に発生する欠陥、また微結晶と微結晶が横方向成長して合体する際に発生すると考えられる欠陥が多く発生する。
【0009】
なお、反位領域境界とは、GaNのように結晶構造に対称中心を持たない系では、Ga原子とN原子の位置を入れ替えると、元の結晶構造と極性が異なる。このような極性を異にする領域が隣り合って生成した場合の境界であり、この境界は一種の面欠陥である。
【0010】
近年、窒化ガリウム系化合物半導体成長用の基板の候補として、結晶構造が六方晶系からなる、化学式XB(但し、XはZr,Ti,Mg,Al及びHfのうちの少なくとも1種を含む。)で表される導電性の二硼化物単結晶から成る基板が注目を集めている。
【特許文献1】特開平2−42770号公報
【特許文献2】特開平2−257679号公報
【特許文献3】特開平6−196757号公報
【特許文献4】特開平6−268257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来、窒化ガリウム系化合物半導体層を成長させる際には、基板と窒化ガリウム系化合物半導体層(エピタキシャル層)との間の格子不整合を緩和する目的で、上記のような低温堆積層に代表される歪み緩衝層(バッファ層)を挿入する技術が用いられている。この歪み緩衝層の挿入によって、窒化ガリウム系化合物半導体層と大きな格子不整合性を有する基板であっても、デバイス応用が可能な窒化ガリウム系化合物半導体層の成長が可能になるが、照明装置への応用を目的とした高発光効率の発光素子の実現を考えた場合、窒化ガリウム系化合物半導体層の結晶品質は決して十分なものとは言えない。
【0012】
発光素子の発光効率の向上にとっては、窒化ガリウム系化合物半導体層の非発光再結合中心となる結晶欠陥の密度低減が必須となる。この点で、化学式XB(ただし、XはTi,Mg,Al,Hf及びZrのうち少なくとも1種を含む。)で表される二硼化物単結晶から成る基板、特にZrB単結晶から成る基板は、窒化ガリウム(GaN)との格子不整合が約0.6%と小さいことから、ホモエピタキシャル成長と同様に、上述した低温で形成するバッファ層(低温バッファ層)等のプロセスを経ずに最適な成長温度で直接成長することが可能である。従って、窒化ガリウム系化合物半導体層(エピタキシャル層)と二硼化物単結晶から成る基板との界面において、原子レベルで連続した、結晶性が高品質の窒化ガリウム系化合物半導体層が得られる。
【0013】
しかし、二硼化物単結晶は窒化ガリウム系化合物半導体に対して無極性であるため、二硼化物単結晶から成る基板上に成長した窒化ガリウム系化合物半導体層は、Ga極性、N極性のいずれの形態にもなり得る。特に、ZrB単結晶からなる基板上に、GaN層等の窒化ガリウム系化合物半導体層を成長させた場合、エネルギー的に安定なN極性の窒化ガリウム系化合物半導体層が成長する。
【0014】
図1に示すように、窒化ガリウム系化合物半導体の結晶の極性にはGa極性とN極性の2種類がある。これらは、結晶構造に差異は無いが、結晶の向きが異なる。具体的には、N極性の結晶は表面に現れる一つのN原子が3つのGa原子と結合しており、Ga極性の結晶の場合には表面に現れる一つのN原子は一つのGa原子と結合している。N極性の窒化ガリウム系化合物半導体層は、成長中に飛来するGa原子に対してN原子の結合手が1本しかないため結合力が弱くなることから成長速度が遅い。また、同様な理由からGa空孔などを形成しやすく、結晶品質がGa極性の窒化ガリウム系化合物半導体層に比べて劣る。以上のことから、N極性の窒化ガリウム系化合物半導体層は発光素子や電子デバイスへの応用には不適であり、結晶性が高品質の窒化ガリウム系化合物半導体層の実現には、Ga極性の窒化ガリウム系化合物半導体層を形成する必要がある。
【0015】
従って、本発明は上記従来の技術における問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、窒化ガリウム系化合物半導体と格子整合性の高い、化学式XB(但し、XはZr,Ti,Mg,Al及びHfのうちの少なくとも1種を含む。)で表される二硼化物単結晶から成る基板上に成長させる窒化ガリウム系化合物半導体の極性を制御することによって、高品質、低転位の窒化ガリウム系化合物半導体を得ること、またその窒化ガリウム系化合物半導体を用いた発光素子、その発光素子を用いた照明装置、及び結晶性が高品質で低転位の窒化ガリウム系化合物半導体を得ることのできる窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の窒化ガリウム系化合物半導体は、基板の表面に形成された化学式XB(ただし、XはZr,Ti及びHfから選択される1種以上の元素である。)で表される二硼化物単結晶から成る膜上に形成された窒化ガリウム系化合物半導体であって、前記膜上に形成されたGa1−x−yAlInN単結晶層(ただし、0<x+y≦1、0≦y<0.1)と、その上に形成されたGa極性の窒化ガリウム系化合物半導体層とを有していることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の窒化ガリウム系化合物半導体は好ましくは、Alを含む前記Ga1−x−yAlInN単結晶層のAlの組成比が、前記Ga極性の窒化ガリウム系化合物半導体層のAlの組成比以上であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の窒化ガリウム系化合物半導体は好ましくは、前記膜は二硼化物単結晶から成る基板上に形成されていることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の窒化ガリウム系化合物半導体は好ましくは、前記膜は基板上に形成されており、前記基板は、シリコン(Si),サファイア(Al23),炭化珪素(SiC),窒化ガリウム(GaN),スピネル(MgAl24),酸化亜鉛(ZnO),燐化ガリウム(GaP),砒化ガリウム(GaAs),酸化マグネシウム(MgO),酸化マンガン(MnO2)またはイットリア安定化ジルコニア(YSZ)から成ることを特徴とする。
【0020】
本発明の発光素子は、上記本発明の発光層を含む窒化ガリウム系化合物半導体と、前記窒化ガリウム系化合物半導体の前記発光層を上下から挟む位置に形成された、前記発光層に電流を注入するための導電層とを具備していることを特徴とする。
【0021】
本発明の照明装置は、上記本発明の発光素子と、該発光素子からの発光を受けて光を発する蛍光体及び燐光体の少なくとも一方とを具備していることを特徴とする。
【0022】
本発明の窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法は、化学式XB(ただし、XはZr,Ti及びHfから選択される1種以上の元素である。)で表される二硼化物単結晶から成る膜上に形成された窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法であって、前記膜上にバッファ層としてのGa1−x−yAlInN単結晶層(ただし、0<x+y≦1、0≦y<0.1)を形成し、次に前記Ga1−x−yAlInN単結晶層上にGa極性の窒化ガリウム系化合物半導体層を形成することを特徴とする。
【0023】
また、本発明の窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法は好ましくは、Alを含む前記Ga1−x−yAlInN単結晶層のAlの組成比を、その上に形成する前記Ga極性の窒化ガリウム系化合物半導体層のAlの組成比以上とすることを特徴とする。
【0024】
また、本発明の窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法は好ましくは、前記Ga1−x−yAlInN単結晶層の成長温度が700℃以上であることを特徴とする。
【0025】
また、本発明の窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法は好ましくは、前記Ga1−x−yAlInN単結晶層の厚みが(100/x)nm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明の窒化ガリウム系化合物半導体は、化学式XB(ただし、XはZr,Ti及びHfから選択される1種以上の元素である。)で表される二硼化物単結晶から成る膜上に形成された窒化ガリウム系化合物半導体であって、前記膜上に形成されたGa1−x−yAlInN単結晶層(ただし、0<x+y≦1、0≦y<0.1)と、その上に形成されたGa極性の窒化ガリウム系化合物半導体層とを有していることから、結晶性が高品質で低転位の窒化ガリウム系化合物半導体を得ることができる。
【0027】
即ち、Ga極性の窒化ガリウム系化合物半導体層は、表面に現れる一つのN原子は一つのGa原子と結合しているため、成長中に飛来するGa原子に対してN原子の結合手が3本あることとなり、その結果結合力が強くなるとともに成長速度が速くなる。また、同様な理由から、Ga空孔などが形成されにくく、結晶品質がN極性の窒化ガリウム系化合物半導体層に比べて優れたものとなる。以上のことから、Ga極性の窒化ガリウム系化合物半導体層は発光素子や電子デバイスへの応用に適している。
【0028】
また、本発明の窒化ガリウム系化合物半導体は好ましくは、Alを含むGa1−x−yAlInN単結晶層のAlの組成比が、Ga極性の窒化ガリウム系化合物半導体層のAlの組成比以上であることから、二硼化物単結晶から成る膜と窒化ガリウム系化合物半導体層との間の結合力、歪み応力に変調を加えることができ、これによって窒化ガリウム系化合物半導体層の極性をGa極性となるように制御することが可能となる。
【0029】
また、本発明の窒化ガリウム系化合物半導体は好ましくは、前記膜は二硼化物単結晶から成る基板上に形成されていることから、二硼化物単結晶から成る基板上に二硼化物単結晶から成る膜をホモエピタキシャル成長により良好に形成することができる。
【0030】
また、本発明の窒化ガリウム系化合物半導体は好ましくは、前記膜は基板上に形成されており、前記基板は、シリコン(Si),サファイア(Al23),炭化珪素(SiC),窒化ガリウム(GaN),スピネル(MgAl24),酸化亜鉛(ZnO),燐化ガリウム(GaP),砒化ガリウム(GaAs),酸化マグネシウム(MgO),酸化マンガン(MnO2)またはイットリア安定化ジルコニア(YSZ)から成ることから、二硼化物単結晶から成る膜が、極性制御された窒化ガリウム系化合物半導体層のエピタキシャル成長をするための成長表面としての働きをする。従って、上記の種々の基板を用いても、結晶性が高品質で低転位の窒化ガリウム系化合物半導体を得ることができる。
【0031】
本発明の発光素子は、上記本発明の発光層を含む窒化ガリウム系化合物半導体と、窒化ガリウム系化合物半導体の発光層を上下から挟む位置に形成された、発光層に電流を注入するための導電層とを具備していることから、発光効率が高い発光素子を得ることができる。
【0032】
本発明の照明装置は、上記本発明の発光素子と、発光素子からの発光を受けて光を発する蛍光体及び燐光体の少なくとも一方とを具備していることから、輝度及び照度の高い照明装置を得ることができる。
【0033】
本発明の窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法は、化学式XB(ただし、XはZr,Ti及びHfから選択される1種以上の元素である。)で表される二硼化物単結晶から成る膜上に形成された窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法であって、前記膜上にバッファ層としてのGa1−x−yAlInN単結晶層(ただし、0<x+y≦1、0≦y<0.1)を形成し、次に前記Ga1−x−yAlInN単結晶層上にGa極性の窒化ガリウム系化合物半導体層を形成することから、高品質、低転位の窒化ガリウム系化合物半導体を早い成長速度でもって製造することができる。
【0034】
また、本発明の窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法は好ましくは、Alを含むGa1−x−yAlInN単結晶層のAlの組成比を、その上に形成するGa極性の窒化ガリウム系化合物半導体層のAlの組成比以上とすることから、二硼化物単結晶から成る膜と窒化ガリウム系化合物半導体層との間の結合力、歪み応力に変調を加えることができ、これによって窒化ガリウム系化合物半導体層の極性をGa極性となるように制御して窒化ガリウム系化合物半導体層を成長させることができる。
【0035】
また、本発明の窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法は好ましくは、Ga1−x−yAlInN単結晶層の成長温度が700℃以上であることから、成長開始からGa1−x−yAlInN単結晶層が単結晶でエピタキシャル成長することになり、その上に形成されるGa極性の窒化ガリウム系化合物半導体層が高品質な結晶層となる。
【0036】
また、本発明の窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法は好ましくは、Ga1−x−yAlInN単結晶層の厚みが(100/x)nm以下であることから、二硼化物単結晶から成る膜とGa極性の窒化ガリウム系化合物半導体層との格子不整合に起因する窒化ガリウム系化合物半導体層の転位欠陥を抑制し、欠陥の非常に少ない高品質な窒化ガリウム系化合物半導体を形成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の窒化ガリウム系化合物半導体、発光素子、照明装置及び窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法について、詳細に説明する。
【0038】
本発明の窒化ガリウム系化合物半導体は、化学式XB(ただし、XはZr,Ti及びHfから選択される1種以上の元素である。)で表される二硼化物単結晶から成る膜(以下、二硼化物単結晶膜ともいう)上に形成された窒化ガリウム系化合物半導体であって、前記膜上に形成されたGa1−x−yAlInN単結晶層(中間層)(ただし、0<x+y≦1、0≦y<0.1)と、その上に形成されたGa極性の窒化ガリウム系化合物半導体層とを有している構成である。
【0039】
XB(ただし、XはZr,Ti及びHfから選択される1種以上の元素である。)から成る膜は、例えば硼化ジルコニウム(ZrB)膜であり、硼化ジルコニウム膜は窒化ガリウム系化合物半導体との格子整合性に優れ、熱膨張係数差も小さいため、結晶性に優れた高品質の窒化ガリウム系化合物半導体を形成することができる。
【0040】
二硼化物単結晶膜上に形成されるGa1−x−yAlInN単結晶層(ただし、0<x+y≦1、0≦y<0.1)は、例えばGa0.09Al0.9In0.01N等である。なお、yが0.1以上では、成長温度を高くすることが難しくなる。
【0041】
Ga1−x−yAlInN単結晶層の厚みは(100/x)nm以下がよく、この場合、二硼化物単結晶から成る膜とGa極性の窒化ガリウム系化合物半導体層との格子不整合に起因する窒化ガリウム系化合物半導体層の転位欠陥を抑制し、欠陥の非常に少ない高品質な窒化ガリウム系化合物半導体を形成することが可能となる。従って、Ga1−x−yAlInN単結晶層の厚みが(100/x)nmを超えると、Ga極性の窒化ガリウム系化合物半導体層の転位欠陥を抑制することが難しくなり、高品質な窒化ガリウム系化合物半導体を形成することが難しくなる。なお、Ga1−x−yAlInN単結晶層の厚み(下限値)は1nm以上であることが、原子ステップなどの凹凸のある表面をくまなく中間層で覆う点で好ましい。
【0042】
本発明の窒化ガリウム系化合物半導体は、Alを含むGa1−x−yAlInN単結晶層のAlの組成比が、Ga極性の窒化ガリウム系化合物半導体層のAlの組成比以上であることが好ましい。これにより、二硼化物単結晶から成る膜と窒化ガリウム系化合物半導体層との間の結合力、歪み応力に変調を加えることができ、窒化ガリウム系化合物半導体層の極性をGa極性となるように制御することが可能となる。変調の効果には、結合力の増加、引っ張り歪み変調等、その他諸々の効果が挙げられる。本発明においては詳細な作用機構については不明であるが、上記の組成比とすることにより窒化ガリウム系化合物半導体層の極性をGa極性となるように制御することができる。
【0043】
なお、Ga極性の窒化ガリウム系化合物半導体層であるかN極性の窒化ガリウム系化合物半導体層であるかの判別をすることができる分析方法としては、KOHによるエッチング耐性評価、収束電子線回折法、同軸型直衝突イオン分光法等という方法がある。
【0044】
本発明の窒化ガリウム系化合物半導体において好ましくは、二硼化物単結晶から成る膜が基板上に形成されており、その基板は、二硼化物単結晶(ZrB2,TiB2,HfB2等),シリコン(Si),サファイア(Al23),炭化珪素(SiC),窒化ガリウム(GaN),スピネル(MgAl24),酸化亜鉛(ZnO),燐化ガリウム(GaP),砒化ガリウム(GaAs),酸化マグネシウム(MgO),酸化マンガン(MnO2)またはイットリア安定化ジルコニア(YSZ)等から成る。
【0045】
二硼化物単結晶膜を形成する基板が、二硼化物単結晶(ZrB2,TiB2,HfB2等)から成るときには、二硼化物単結晶膜をホモエピタキシャル成長により良好に形成することができる。この場合、二硼化物単結晶膜を真空中で形成した後、その二硼化物単結晶膜は窒化ガリウム系化合物半導体を形成する迄、真空中に置かれると良い。二硼化物単結晶基板の表面に比べて二硼化物単結晶膜の表面に含まれる酸素の量を少なくすることができ、Ga1−x−yAlInN単結晶層を良好に形成することができるからである。
【0046】
さらに、基板の表面に二硼化物単結晶からなる膜を形成した場合、その膜を発光素子の電極として用いることができる。その結果、発光素子の電流分布が均一になるとともに発光層からの発光分布も均一となり、発光特性の良好な発光素子を作製することが可能となる。
【0047】
また、二硼化物単結晶から成る基板上に直接窒化ガリウム系化合物半導体を形成する場合、基板の表面に形成された自然酸化膜を除去するために、基板の前処理工程が複数必要であるが、これと比較して、本発明の窒化ガリウム系化合物半導体は、基板の表面に二硼化物単結晶から成る膜を形成することができ、その場合、膜の形成に引き続いて窒化ガリウム系化合物半導体を成長させることができるため、基板の表面の前処理工程を複数必要としない。その結果、製造工程を簡略化することができ、製造コストを低減することができる。即ち、基板の表面の前処理工程を複数行わなくても、窒化ガリウム系化合物半導体の成長に必要な清浄な膜の表面を得ることができる。
【0048】
二硼化物単結晶膜を形成する基板が、シリコン(Si),サファイア(Al23),炭化珪素(SiC),窒化ガリウム(GaN),スピネル(MgAl24),酸化亜鉛(ZnO),燐化ガリウム(GaP),砒化ガリウム(GaAs),酸化マグネシウム(MgO),酸化マンガン(MnO2)またはイットリア安定化ジルコニア(YSZ)から成るときには、二硼化物単結晶膜が、極性制御された窒化ガリウム系化合物半導体層のエピタキシャル成長をするための成長表面としての働きをするため、上記の種々の基板を用いても、結晶性が高品質で低転位の窒化ガリウム系化合物半導体を得ることができる。
【0049】
二硼化物単結晶から成る膜の厚みは20nm〜200nmがよい。20nm未満では、膜の窒化ガリウム系化合物半導体層の積層方向と垂直な方向の電気抵抗が高くなるだけでなく、窒化ガリウム系化合物半導体層と良好なオーミック接触が形成でき難くなる。200nmを超えると、膜の成長に要する時間が長くなり、生産性が低下する。
【0050】
二硼化物単結晶から成る基板の表面に二硼化物単結晶から成る膜を形成する場合、基板の厚みは100μm〜500μm程度がよい。100μm未満では、基板のハンドリング時に割れが発生しやすい。500μmを超えると、二硼化物単結晶のインゴットからの基板の取れ数が減少し、生産性が低下する。また、この場合、窒化ガリウム系化合物半導体を形成した後に、基板をエッチング法等によって除去することもできる。
【0051】
膜を形成する基板がシリコン等から成る場合、基板の厚みは100μm〜500μm程度がよい。100μm未満では、基板のハンドリング時に割れが発生しやすい。500μmを超えると、シリコン等のインゴットからの基板の取れ数が減少し、生産性が低下する。また、この場合、窒化ガリウム系化合物半導体を形成した後に、基板をエッチング法、研削法等によって除去することもできる。
【0052】
本発明の窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法の一例として、有機金属気相成長法(MOVPE法)による製造方法の工程を示す模式図を図2(a)〜(c)に示す。また、図3に、窒化ガリウム系化合物半導体の製造工程における二硼化物単結晶から成る膜の温度と時間との関係を示す温度シーケンスのグラフ、及び原料供給シーケンスのグラフを示す。
【0053】
本発明の窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法は、化学式XB(ただし、XはZr,Ti及びHfから選択される1種以上の元素である。)で表される二硼化物単結晶から成る膜上に形成された窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法であって、前記膜上にバッファ層としてのGa1−x−yAlInN単結晶層(ただし、0<x+y≦1、0≦y<0.1)を形成し、次に前記Ga1−x−yAlInN単結晶層上にGa極性の窒化ガリウム系化合物半導体層を形成する構成である。
【0054】
本発明の窒化ガリウム系化合物半導体を製造する成膜装置としては、MOVPE装置、分子線エピタキシャル(MBE)装置、ガスソース分子線エピタキシャル(ガスソースMBE)装置、有機金属分子線エピタキシャル(MOMBE)装置等を用いることができる。
【0055】
図2は、二硼化物単結晶から成る基板10上に、二硼化物単結晶から成る膜11を形成し、膜11上に窒化ガリウム系化合物半導体を形成する場合について図示したものである。基板10として、XB(ただし、XはZr,Ti及びHfから選択される1種以上の元素である。)で表される二硼化物単結晶、例えばZrB単結晶からなる基板10を用い、その結晶の(0001)面を二硼化物単結晶から成る膜13の成長面として、MOVPE装置内にセットする。そして、基板10を600〜1200℃、例えば1000℃まで昇温し、基板10表面の自然酸化膜の除去を行う。
【0056】
次に、基板10の温度を900〜1200℃に保った状態で、例えば硼素(B)及びジルコニウム(Zr)の化合物原料から成る原料、例えばテトラヒドロボレートジルコニウム(Zr(BH44)を加熱することにより、基板10の一主面(成長面)に、硼素(B)及びジルコニウム(Zr)を供給し、硼化ジルコニウム膜11を、20〜200nm程度の厚みで成長させる(図3の工程(1))。この工程(1)は10分程度実施される。
【0057】
次に、温度(1000℃)を保った状態で、Ga,Al,Inの1種あるいは複数種の有機金属化合物原料からなる3族原料、例えばトリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMI)と、N原料、例えばアンモニア(NH)を供給し、基板10の一主面(成長面)に形成された硼化ジルコニウム膜11上に、バッファ層(中間層)としてのGa1−x−yAlInN単結晶層(ただし、0<x+y≦1、0≦y<0.1)12を、10〜20nm程度の厚みで成長させる(図3の工程(2))。この工程(2)は1〜120分程度実施される。
【0058】
このとき、TMA,TMG,TMIの供給比を調整することにより、堆積させるGa1−x−yAlInN単結晶層(中間層)12の組成比を調整することができる。この組成比の調節によって、単結晶成長可能な基板10及び硼化ジルコニウム膜11の温度の調整、歪み臨界膜厚の調整を行うことができる。
【0059】
Ga1−x−yAlInN単結晶層12の成長温度は700℃以上がよいが、700℃未満では、良質な単結晶の成長が困難である。
【0060】
次に、3族原料であるTMA,TMG,TMIの供給を休止し、基板10温度を700〜1100℃、例えば1100℃に昇温する。所定の基板10温度に達した後、3族原料であるTMA,TMG,TMIと窒素源であるアンモニアを同時に供給して、図2(c)に示すように、Ga極性の窒化ガリウム系化合物半導体層13を所望の厚み(10nm〜5μm程度)まで堆積させる(図3の工程(3))。この工程(3)は1〜120分程度実施される。
【0061】
Ga極性の窒化ガリウム系化合物半導体層13の形成は、例えば、Ga1−x−yAlInN単結晶層12のAlの組成比を、その上に形成する窒化ガリウム系化合物半導体層13のAlの組成比以上とすることによって行うことができる。これによって、窒化ガリウム系化合物半導体層13の極性をGa極性となるように制御して窒化ガリウム系化合物半導体層13を成長させることができる。Ga1−x−yAlInN単結晶層12のAlの組成比を、その上に形成する窒化ガリウム系化合物半導体層13のAlの組成比以上とすると、膜11との結合力の増大、歪み応力の圧縮から引っ張りへの変調などという理由によって、窒化ガリウム系化合物半導体層13の極性をGa極性とすることができる。
【0062】
また、Ga1−x−yAlInN単結晶層12のAlの組成比を、その上に形成する窒化ガリウム系化合物半導体層13のAlの組成比よりも大きくするには、Ga1−x−yAlInN単結晶層12を形成する際にAl原料供給量を増加する、あるいは成長温度を上げるなどの操作を行えばよい。
【0063】
Ga1−x−yAlInN単結晶層12の組成比によっては、図3中の温度プロセス2(点線)に示したような、Ga1−x−yAlInN単結晶層12の成長後の昇温プロセスを伴わない工程も採り得る。即ち、温度プロセス1は、Ga1−x−yAlInN単結晶層12を一定温度に保って成長させ、Ga1−x−yAlInN単結晶層12の成長後に昇温プロセスを伴う温度プロセスである。
【0064】
Ga極性の窒化ガリウム系化合物半導体層13は、例えば化学式Ga1−xa−yaInyaAlxaN(ただし、0≦xa+ya≦1、xa≧0、ya≧0とする)で表されるものであるが、具体的にはAl0.24Ga0.76N(xa=0.24,ya=0)という組成のものである。特に、このようなAlを含む窒化ガリウム系化合物半導体層13は、二硼化物単結晶(例えばZrB単結晶)から成る基板10と良好な格子整合性を得ることができる。
【0065】
そして、3族原料の供給の停止と同時に基板10温度を降温する。このとき、窒化ガリウム系化合物半導体層13の表面からの窒素の離脱を防止するために、アンモニアの供給は500℃以下で停止する。
【0066】
本発明の窒化ガリウム系化合物半導体層13が発光素子を構成するものである場合、図4に示すように、その窒化ガリウム系化合物半導体層13の構成は以下のようになる。
【0067】
即ち、例えば窒化ガリウム系化合物半導体層13は、化学式Ga1−x1−y1Iny1Alx1N(ただし、0<x1+y1<1、x1>0、y1≧0とする。)で表される窒化ガリウム系化合物半導体から成る第1導電型窒化ガリウム系化合物半導体層13aと、化学式Ga1−x2−y2Iny2Alx2N(ただし、0<x2+y2<1、x2>0、y2≧0とする。)で表される窒化ガリウム系化合物半導体から成る第2導電型窒化ガリウム系化合物半導体層13cとの間に、化学式Ga1−x3−y3Iny3Alx3N(ただし、0<x3+y3<1、x3>0、y3≧0とする。)で表される窒化ガリウム系化合物半導体から成る発光層13bが挟まれて接合されている構成(ただし、(x1,x2)>(x3,y1,y2)≦y3とする。)である。
【0068】
また、例えば第1導電型窒化ガリウム系化合物半導体層13a及び第2導電型窒化ガリウム系化合物半導体層13cは、それぞれp型窒化ガリウム系化合物半導体層及びn型窒化ガリウム系化合物半導体層である。窒化ガリウム系化合物半導体をp型半導体とするには、元素周期律表において2族の元素であるマグネシウム(Mg)等をドーパントとして、窒化ガリウム系化合物半導体に混入させればよい。また、窒化ガリウム系化合物半導体をn型半導体とするには、元素周期律表において4族の元素であるシリコン(Si)等をドーパントとして窒化ガリウム系化合物半導体に混入させればよい。
【0069】
また、第1導電型窒化ガリウム系化合物半導体層13a及び第2導電型窒化ガリウム系化合物半導体層13cは、両方ともアルミニウム(Al)を含む窒化ガリウム系化合物半導体から成るものとし、いずれも発光層13bに含まれるアルミニウムよりもその含有量を多くする。このようにすると、第1及び第2導電型窒化ガリウム系化合物半導体層13a,13cの禁制帯幅が両方とも発光層13bの禁制帯幅よりも大きくなるので、発光層13bに電子と正孔とを閉じ込めて、これら電子と正孔を効率良く再結合させて強い発光強度で発光させることができる。
【0070】
また、第1及び第2導電型窒化ガリウム系化合物半導体層13a,13cは、アルミニウムを含んだ窒化ガリウム系化合物半導体からなることにより、第1及び第2導電型窒化ガリウム系化合物半導体層13a,13cにおける禁制帯幅が比較的大きくなり、第1及び第2導電型窒化ガリウム系化合物半導体層13a,13cにおける紫外光等の短波長側の光の吸収を小さくすることができる。
【0071】
なお、第1導電型窒化ガリウム系化合物半導体層13a及び第2導電型窒化ガリウム系化合物半導体層13bはそれぞれn型窒化ガリウム系化合物半導体層及びp型窒化ガリウム系化合物半導体層としても構わない。
【0072】
また、第1導電型窒化ガリウム系化合物半導体層13a及び第2導電型窒化ガリウム系化合物半導体層13cにはそれぞれ、発光層13bに電流を注入するための導電層(電極)14,15を形成する。これにより、LEDや半導体レーザ(LD)等の発光素子が形成される。
【0073】
また、発光層13bを成す窒化ガリウム系化合物半導体の組成は、所望の発光波長が得られる適当なものに設定すればよい。例えば、発光層13bを、アルミニウムもインジウムも含まないGaNからなるものとすれば、禁制帯幅は約3.4エレクトロンボルト(eV)となり、約365ナノメートル(nm)の発光波長である紫外光によって発光層13bを発光させることができる。また、これよりも発光波長を短波長とする場合、発光層13bは、禁制帯幅を大きくする元素であるアルミニウムを発光波長に応じて設定される量だけ含ませた窒化ガリウム系化合物半導体から成るものとすればよい。
【0074】
また、発光層13bに禁制帯幅を小さくする元素であるインジウム(In)を含有させてもよく、所望の発光波長となるようにアルミニウムをより多く含有させる等して、アルミニウム,インジウム及びガリウムの組成比を適宜設定すればよい。また、発光層13bは、禁制帯幅の広い障壁層と禁制帯幅の狭い井戸層とから成る量子井戸構造が複数回繰り返し規則的に積層された超格子である多層量子井戸構造(MQW:Multi Quantum Well)としてもよい。
【0075】
このような発光素子は次のように動作する。即ち、発光層13bを含む窒化ガリウム系化合物半導体にバイアス電流を流して、発光層13bで波長350〜400nm程度の紫外光〜近紫外光を発生させ、発光素子の外側にその紫外光〜近紫外光を取り出すように動作する。
【0076】
また、本発明の照明装置を図5に示す。照明装置は、本発明の発光素子と、発光素子からの発光を受けて光を発する蛍光体及び燐光体の少なくとも一方とを具備している構成である。この構成により、輝度及び照度の高い照明装置を得ることができる。この照明装置は、本発明の発光素子を透明樹脂17等で覆うか内包するようにし、その透明樹脂17等に蛍光体や燐光体を混入させた構成とすればよく、蛍光体や燐光体によって発光素子の紫外光〜近紫外光を白色光等に変換するものとすることができる。また、集光性を高めるために透明樹脂17等に凹面鏡等の光反射部材を設けることもできる。このような照明装置は、従来の蛍光灯等よりも消費電力が小さく、小型であることから、小型で高輝度の照明装置として有効である。なお、図5において、16は発光素子18を載置するための金属やセラミックスから成る基体、18は発光素子である。
【0077】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内での種々の変更や改良等を施すことはなんら差し支えない。例えば、窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法はMOVPE法としたが、これに代えて分子線エピタキシャル(MBE)法、ガスソース分子線エピタキシャル(ガスソースMBE)法、もしくは有機金属分子線エピタキシャル(MOMBE)法でもよい。また、3族原料として有機金属化合物を用いたが、セル中で加熱した金属蒸気でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】N極性、Ga極性の窒化ガリウム系化合物半導体の結晶構造を模式的に示す斜視図である。
【図2】(a),(b),(c)は、本発明の窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法について実施の形態の一例を示し、二硼化物単結晶から成る膜及び窒化ガリウム系化合物半導体の成長工程毎の模式的な断面図である。
【図3】本発明の窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法について実施の形態の一例を示し、窒化ガリウム系化合物半導体の成長工程における温度シーケンス及び原料供給シーケンスをそれぞれ示すグラフである。
【図4】本発明の発光素子について実施の形態の一例を示す断面図である。
【図5】本発明の照明装置について実施の形態の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0079】
10:基板
11:二硼化物単結晶から成る膜
12:Ga1−x−yAlInN単結晶層
13:窒化ガリウム系化合物半導体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式XB(ただし、XはZr,Ti及びHfから選択される1種以上の元素である。)で表される二硼化物単結晶から成る膜上に形成された窒化ガリウム系化合物半導体であって、前記膜上に形成されたGa1−x−yAlInN単結晶層(ただし、0<x+y≦1、0≦y<0.1)と、その上に形成されたGa極性の窒化ガリウム系化合物半導体層とを有していることを特徴とする窒化ガリウム系化合物半導体。
【請求項2】
Alを含む前記Ga1−x−yAlInN単結晶層のAlの組成比が、前記Ga極性の窒化ガリウム系化合物半導体層のAlの組成比以上であることを特徴とする請求項1記載の窒化ガリウム系化合物半導体。
【請求項3】
前記膜は二硼化物単結晶から成る基板上に形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の窒化ガリウム系化合物半導体。
【請求項4】
前記膜は基板上に形成されており、前記基板は、シリコン,サファイア,炭化珪素,窒化ガリウム,スピネル,酸化亜鉛,燐化ガリウム,砒化ガリウム,酸化マグネシウム,酸化マンガンまたはイットリア安定化ジルコニアから成ることを特徴とする請求項1または2記載の窒化ガリウム系化合物半導体。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかの窒化ガリウム系化合物半導体であって発光層を含む窒化ガリウム系化合物半導体と、前記窒化ガリウム系化合物半導体の前記発光層を上下から挟む位置に形成された、前記発光層に電流を注入するための導電層を具備していることを特徴とする発光素子。
【請求項6】
請求項5の発光素子と、該発光素子からの発光を受けて光を発する蛍光体及び燐光体の少なくとも一方とを具備していることを特徴とする照明装置。
【請求項7】
化学式XB(ただし、XはZr,Ti及びHfから選択される1種以上の元素)で表される二硼化物単結晶から成る膜上に形成された窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法であって、前記膜上にバッファ層としてのGa1−x−yAlInN単結晶層(ただし、0<x+y≦1、0≦y<0.1)を形成し、次に前記Ga1−x−yAlInN単結晶層上にGa極性の窒化ガリウム系化合物半導体層を形成することを特徴とする窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法。
【請求項8】
Alを含む前記Ga1−x−yAlInN単結晶層のAlの組成比を、その上に形成する前記Ga極性の窒化ガリウム系化合物半導体層のAlの組成比以上とすることを特徴とする請求項7記載の窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法。
【請求項9】
前記Ga1−x−yAlInN単結晶層の成長温度が700℃以上であることを特徴とする請求項7または8記載の窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法。
【請求項10】
前記Ga1−x−yAlInN単結晶層の厚みが(100/x)nm以下であることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか記載の窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−176759(P2009−176759A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−72747(P2007−72747)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】