説明

窒化物半導体装置

【課題】リードフレーム上に搭載された窒化物FETを備えスイッチング特性に優れた窒化物半導体装置を提供する。
【解決手段】窒化物FETと、複数のリードを含むリードフレームと、を備え、前記窒化物FETは少なくとも第1の主電極と第2の主電極と制御電極とを有し、前記リードフレームは、前記第1の主電極に接続される第1のリードと、前記第2の主電極に接続される第2のリード及び第3のリードと、前記制御電極に接続される第4のリードと、を有し、前記窒化物FETは、前記第3のリードと前記第4のリードとの間に印加される電圧に応じて前記第1のリードと前記第2のリードとの間に電流を流すことを特徴とする窒化物半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物FETが複数のリードを含むリードフレーム上に搭載されてなる窒化物半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)等の窒化物半導体からなる電界効果トランジスタまたは双方向スイッチは、高周波用・高耐圧用の窒化物FET(Field Effect Transistor)として注目されている。一般的に窒化物FETなどの半導体素子は、配線及び放熱板を兼ねるリードフレーム上に搭載された後にモールド樹脂により封止された形態で実用される。例えば、窒化物FETを凸形状のリードフレーム上に配置することで、放熱性を改善できる窒化物半導体装置が知られる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−80633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで窒化物FETは、非常に高速なスイッチング特性を有するデバイスであることが知られるが、特許文献1に記載される従来の窒化物半導体装置においては、スイッチング特性を引き出すための十分な検討がなされていなかった。
【0005】
本発明は、リードフレーム上に搭載された窒化物FETを備えスイッチング特性に優れた窒化物半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、窒化物FETと、複数のリードを含むリードフレームと、を備え、前記窒化物FETは少なくとも第1の主電極と第2の主電極と制御電極とを有し、前記リードフレームは、前記第1の主電極に接続される第1のリードと、前記第2の主電極に接続される第2のリード及び第3のリードと、前記制御電極に接続される第4のリードと、を有し、前記窒化物FETは、前記第3のリードと前記第4のリードとの間に印加される電圧に応じて前記第1のリードと前記第2のリードとの間に電流を流すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、リードフレーム上に搭載された窒化物FETを備えスイッチング特性に優れた窒化物半導体装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る窒化物半導体装置の構造を示す模式的な平面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るスイッチング回路の構成を示す回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであることに留意すべきである。又、以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施形態は、構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の実施形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
本発明の実施形態に係る窒化物半導体装置10は、図1に示すように、窒化物FET1と、複数のリード21を含むリードフレーム2と、を備える。窒化物FET1は少なくとも第1の主電極Dと第2の主電極Sと制御電極Gとを有し、リードフレーム2は、第1の主電極Dに接続される第1のリードLと、第2の主電極Sに接続される第2のリードLS1及び第3のリードLS2と、制御電極Gに接続される第4のリードLと、を有し、窒化物FET1は、第3のリードLS2と第4のリードLとの間に印加される電圧に応じて第1のリードLと第2のリードLS1との間に電流を流す。
【0011】
窒化物FET(Field Effect
Transistor)1は、例えば周知のHEMT(High Electron Mobility Transistor)からなる。すなわち、窒化物FETはAlInGa1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)で表わされる窒化物半導体層からなる活性領域11を備え、活性領域11の主面上に形成されたドレイン電極(第1の主電極)D、ソース電極(第2の主電極)S及びゲート電極(制御電極)Gを備える。活性領域11は、Siからなる導電性基板上に緩衝層を介して配置される。ドレイン電極Dとソース電極Sとは、活性領域11上において互いに離間して配置されるとともに、平面的に見て、互いに入り組んだフィンガ型の電極構造を有する。ゲート電極Gは、ドレイン電極Dとソース電極Sとの間に配置され、上記フィンガ型の電極構造に合わせて折り返し構造を有する。また、窒化物FET1は、活性領域11上に形成されたドレイン電極Dに電気的に接続されるドレインパッド12、ソース電極Sに電気的に接続されるソースパッド13及びゲート電極Gに電気的に接続されるゲートパッド14を備える。なお、図示は省略するが、各電極並びにパッドが形成されない活性領域11の主面と各電極の上面とは、絶縁物からなる保護膜により被覆される。
【0012】
リードフレーム2は、破線で示すモールド樹脂内に封止されるインナーリード部21と、インナーリード部21に電気的に接続され且つモールド樹脂外部に露出するように延伸するアウターリード部22と、を備える。またインナーリード部21は、窒化物FET1が半田層を介して配置されるダイパッド部23を備える。アウターリード部22は、同一方向に延伸するドレインリードL、第1のソースリードLS1、第2のソースリードLS2及びゲートリードLを有し、後述するように外部機器との接続端子及び放熱板として機能する。すなわち、窒化物半導体装置10は窒化物FET1のソースが2つの個別なリード(LS1,LS2)に分割される。なお、ソースリードと同様にドレインリードを複数本設けることもできる。リードフレーム2の各部は、Cu等の導電性金属材料からなり、窒化物FET1とインナーリード部21及びアウターリード部22とはボンディングワイヤBW等を介して電気的に接続される。第1のソースリードLS1は、ダイパッド23と機械的に一体化された構造を有する。各リードは、同一の幅・厚みに形成されても良く、互いに異なる幅・厚みに形成されても良い。本実施形態における窒化物半導体装置10は、比較的幅広に形成されたドレインリードL及び第1のソースリードLS1と比較的幅狭に形成された第2のソースリードLS2及びゲートリードLとを有する。また、図1に示すアウターリード部22を構成する各リードは、全て同一方向(図1における下方向)に延伸するが、例えば上下方向のように互いに異なる方向に延伸するように配置されても良い。ボンディングワイヤBWは、Cu,Al又はAu等の導電性金属材料からなり、平条形状を有するリボンワイヤにより置きかえられても良い。
【0013】
本実施形態に係る窒化物半導体装置10は、図2に示すようなスイッチング回路に利用される。本実施形態に係るスイッチング回路は、コイル(L負荷)に流れる電流を制御するリニアソレノイド駆動装置であり、直流電源31とコイル32と制御回路33と窒化物半導体装置10とから構成される。直流電源31は、例えばバッテリであり、その正極は窒化物半導体装置10のドレインリード(ドレイン端子)Lと制御回路33の電源端子331とに接続され、その負極は接地される。コイル32の一端は窒化物半導体装置10の第1のソースリード(第1のソース端子)LS1に接続され、他端は接地される。制御回路33は、上述した電源端子と窒化物半導体装置10のゲートリードLに接続される端子332と第2のソースリードLS2に接続される端子333と接地される端子とを少なくとも備える。また、制御回路33はその外部機器(図示せず)から出力される信号に基づき、窒化物半導体装置10の第2のソースリードLS2とゲートリードLとの間に、ソースリードLS2の電位を基準とした電圧信号を出力し、窒化物半導体装置10をオンオフ動作させる。窒化物半導体装置10がオンすると、直流電源31の正極→ドレインリードL→第1のソースリードLS1→コイル32という経路で電流が流れる。窒化物半導体装置10がオフすると、ドレインリードLと第1のソースリードLS1との間の電流経路が遮断され、第1のソースリードLS1の電位が上昇する。
【0014】
上記の説明のように、図1に示した窒化物半導体装置10は、電流経路用の第1のソースリードLS1とゲートバイアス用の第2のソースリードLS2とが個別のリードとして配置される。そのため、窒化物FET1をオンオフさせる際に電流経路における寄生インダクタンスの影響を受けにくく、窒化物FET1を高速に精度良くスイッチングすることができる。
【0015】
また、第1のソースリードLS1は、比較的幅広に形成されるため、電流経路における寄生インダクタンスを低減させることができるとともに、窒化物半導体装置10の放熱性が改善される。
【0016】
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。即ち、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0017】
1 窒化物FET
2 リードフレーム
21 インナーリード
22 アウターリード
23 ダイパッド
ドレインリード
S1 第1のソースリード
S2 第2のソースリード
ゲートリード


【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物FETと、複数のリードを含むリードフレームと、を備え、
前記窒化物FETは少なくとも第1の主電極と第2の主電極と制御電極とを有し、
前記リードフレームは、前記第1の主電極に接続される第1のリードと、前記第2の主電極に接続される第2のリード及び第3のリードと、前記制御電極に接続される第4のリードと、を有し、
前記窒化物FETは、前記第3のリードと前記第4のリードとの間に印加される電圧に応じて前記第1のリードと前記第2のリードとの間に電流を流すことを特徴とする窒化物半導体装置。
【請求項2】
前記第2のリードは、前記第3のリード及び前記第4のリードよりも寄生インダクタンスが低くなるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−26342(P2013−26342A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158160(P2011−158160)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【Fターム(参考)】