説明

立体画像表示装置

【課題】フリッカーやクロストークが低減され、画面の輝度が高く、画面の解像度の低下が無い立体画像表示装置を提供する。
【解決手段】立体画像表示装置は、複数の水平ラインから構成される第一画像形成領域と第二画像形成領域とを有する液晶ディスプレイと、第一および第二画像形成領域に対応して第一偏光領域と第二偏光領域とが配置され、それらの境界に遮光部が設けられた光学手段とを有する。フレーム画像は、第一画像形成領域に右目用画像を、第二画像形成領域に左目用画像を表示し、フレーム切り替え毎に画像形成領域を交互に入れ替えるかまたは上書きするよう構成される。右目用および左目用画像が表示された第一および第二画像形成領域の入れ替えタイミングに合わせて、バックライトの点灯状態を制御するとともに、偏光メガネの位相差状態を左右で交互に入れ替えるよう構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイを使用した液晶テレビの開発が盛んに行われている。そして、その高性能化に向けた一つの取り組みとして、液晶ディスプレイを使用した立体画像表示装置の開発が進められている。
【0003】
この液晶表示装置を使用した立体画像表示装置については、複数種類の方式が提案されている。例えば、パララックスバリア方式や、レンチキュラレンズ方式や、スイッチバックライト式などが知られている。これらは、表示装置からの映像の観察者において専用のメガネを必要としないという利点があるものの、パララックスバリア方式やレンチキュラレンズ方式において水平解像度が低下するなど、画像表示の解像度が一般に低下してしまうという問題点を有し、スイッチバックライト式においては、画像のちらつきであるフリッカーが発生するという不具合を有している。
【0004】
そして、専用のメガネを使用する方式としては、シャッターメガネ方式が知られている。この方式は、解像度の低下が無く、画像表示装置における表示の視野角も広くなるという利点を有する。しかしながら、表示画像のちらつきであるフリッカーの発生や、表示画面における輝度の低下や、左右の眼に映る画像に時間差が発生して観察者にとっては自然な画像が得られないという問題点などを有している。
【0005】
そして、最近では、新規な光学的手段を使用して、立体画像を得る立体画像表示装置が提案されている。例えば、特許文献1には、そのような新規な光学手段である二枚の偏光フィルタを用い、専用のメガネを必要としない立体画像表示装置が開示されている。
【0006】
この特許文献1に記載の立体画像表示装置においては、光源の前面左右に偏光方向が直交する右目用偏光フィルタ部と左目用偏光フィルタ部が配置される。そして、この各フィルタ部を通過した各光をフレネルレンズで略平行光として液晶ディスプレイに照射する。そして、この液晶ディスプレイの両面の偏光フィルタのそれぞれを1水平ライン毎に、互いに直交する直線偏光フィルタライン部を交互に配置するとともに、光源側と観察者側の対向する直線偏光フィルタライン部を直交する偏光方向とする。そして、液晶ディスプレイの液晶パネルには2枚の偏光フィルタの透光ラインに合わせて1水平ライン毎に右眼用と左眼用の映像情報を交互に表示するように構成する。
【0007】
すなわち、表示画面の全水平走査ラインを奇数ラインと偶数ラインに分割し、それぞれのラインに左目用および右目用画像を表示してこれらをその新規な光学手段で観察者の左右の目に振り分けて立体画像を表示するものである。
【0008】
この装置によれば、観察者の見る位置が多少左右にずれても立体画像が損なわれることが無く、さらに、パララックスバリア方式やレンチキュラレンズ方式において課題とされた水平解像度が半減してしまう現象は回避することができる。
【0009】
また、特許文献2には、新規な光学手段として、二つの異なる領域に対向して配され、入射した光の偏光軸を互いに直交させる二つの異なる領域を有する新たな位相差板を用いた立体画像表示装置が開示されている。この立体画像表示装置においては、右目用の画像と左目用の画像をそれぞれ異なる領域に表示させる液晶ディスプレイと、その位相差板とが備えられ、観察者に対して視差画像を投影させて立体画像が得られるように構成されている。そして、広視野角で高解像度の画像を表示することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−63199号公報
【特許文献2】特開2006−284873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載の偏光フィルタを用いた立体画像表示装置においては、表示画面の右目用映像信号に従う表示の位置と左目用映像信号に従う表示の位置が常に固定されているため、左右映像とも垂直解像度が半減してしまうという新たな課題を有している。
【0012】
また、特許文献2に記載の新たな位相差板を用いた立体画像表示装置においては、立体表示装置の鉛直方向の中央に対し、ある視野角の位置から観察すると、液晶ディスプレイ上の右目用画像の一部が、左目用の1/2波長板を通過して観察者の左目に届いてクロストークを生じるという新たな課題を有している。
【0013】
したがって、フリッカーやクロストークを低減し、画面での高い輝度を維持し、さらに解像度の低下を防止するためには、従来の立体画像表示装置では不充分であり、新たな立体画像表示装置が求められている。
【0014】
本発明は、こうした点に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、フリッカーが無く、クロストークが低減され、画面の輝度も高く、左右映像の同時視が可能であり、さらに画面の解像度の低下が無い立体画像表示装置を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的および利点は、以下の記載から明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の態様は、画素を水平方向に配列してなる水平ラインを、垂直方向に複数並べて構成された液晶パネルと、その液晶パネルを挟持する一対の偏光板とを有する液晶ディスプレイと、
液晶ディスプレイの背面側に配置されたバックライトと、
液晶ディスプレイの前面側に設けられた光学手段と、
観察者が掛けて使用する偏光メガネと、を備えた立体画像表示装置であって、
液晶ディスプレイは、液晶パネルの垂直方向に連続して並べられた複数の水平ラインを束ねて構成され且つ交互に配設された第一画像形成領域と第二画像形成領域とを有し、第一画像形成領域は右目用画像および左目用画像のいずれか一方の画像を、第二画像形成領域は他方の画像をそれぞれ同時に表示するよう構成されており、
第一画像形成領域と第二画像形成領域は、(1)フレーム切り替え毎に右目用画像と左目用画像の入れ替えを行う、(2)(1)以外の場合であって、フレームの切り替え時に右目用画像と左目用画像の入れ替えおよび直前のフレームで表示された画像の上書きのいずれか一方を行う、よう構成されており、
バックライトは、右目用画像と左目用画像を入れ替えるタイミングに合わせて点灯状態が制御されるよう構成されており、
光学手段は、第一画像形成領域と第二画像形成領域とに対応する位置と大きさで、第一偏光領域と第二偏光領域とが配置されていて、第一偏光領域と前記第二偏光領域とは、いずれか一方が1/2波長板を構成するか、または、いずれも1/4波長板を構成し且つ互いの光学軸が直交しており、
偏光メガネは、右目用メガネ部と左目用メガネ部とを有し、右目用画像と左目用画像を入れ替えるタイミングに同期して、右目用メガネ部と左目用メガネ部との間で位相差状態が交互に入れ替わるよう構成されたことを特徴とする立体画像表示装置に関する。
【0017】
そして、その光学手段の第一偏光領域と第二偏光領域との境界の少なくとも一部には、遮光部が設けられていることが好ましい。
【0018】
また、第一画像形成領域と第二画像形成領域とはそれぞれ、液晶パネルの垂直方向に連続して並べられた2本から60本の水平ラインからなる画像形成領域であることが好ましい。
【0019】
さらに、第一画像形成領域と第二画像形成領域とはそれぞれ、液晶パネルの垂直方向に連続して並べられた3本から30本の水平ラインからなる画像形成領域であることがより好ましい。
【0020】
また、偏光メガネには赤外線センサが、液晶ディスプレイには赤外線発信装置がそれぞれ備えられていることが好ましく、
第一画像形成領域と第二画像形成領域が右目用画像と左目用画像を入れ替えるタイミングに同期して、その赤外線発信装置から赤外線が発信され、その赤外線を赤外線センサが感知することによって、右目用メガネ部と左目用メガネ部との間で位相差状態が交互に入れ替わるよう構成することができる。
【0021】
右目用メガネ部と左目用メガネ部とは、TN型液晶素子およびSTN型液晶素子のいずれか一方を用いて構成されたものであることが好ましい。
【0022】
また、右目用メガネ部と左目用メガネ部とは、強誘電性液晶素子および反強誘電性液晶素子のいずれか一方を用いて構成されたものであることが好ましい。
【0023】
そして、右目用メガネ部と左目用メガネ部とは、VA型液晶素子、OCB型液晶素子、ホモジニアス型のECB型液晶素子およびHAN型のECB型液晶素子よりなる群から選ばれるいずれか1つの液晶素子を用いて構成されたものであることが好ましい。
【0024】
また、液晶ディスプレイにおけるフレームの切り替えは、120Hz以上の周期で行われることが好ましい。
【0025】
特に、液晶ディスプレイにおけるフレームの切り替えは、240Hz以上の周期で行われることがより好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の第1の態様によれば、一つの画面上で右目用画像と左目用画像とを同時に表示するものであって、フレーム切り替え毎に右目用および左目用画像を形成する領域が入れ替わったとしても、右目では右目用画像光だけを観察することができ、左目では左目用画像光だけを観察することができることになる。したがって、観察者は、常に、これら右目用画像光および左目用画像光を立体画像として認識することができる。
【0027】
そして、従来の立体画像表示装置において、垂直解像度が半減するなど、解像度が低下するのに対して、解像度を全く減じることなくフル解像度での表示が可能となる。
また、常に右目用および左目用画像が表示されていることから、観視者の疲労感を軽減することができる。また、激しい動きをしている立体画像の場合に起きる左右の映像のずれに伴う立体視の違和感を生じさせないという効果もある。
【0028】
そして、右目用および左目用画像を形成する領域を複数水平ラインから構成し、さらに、各領域の境界に遮光部を設けることを可能としたことから、立体表示装置の鉛直方向の中央に対し、ある視野角の位置から観察した場合に、右目用画像の一部が、左目用の1/2波長板を通過して観察者の左目に届いてしまうクロストークを低減している。
【0029】
さらに、必要な液晶ディスプレイおよび偏光メガネに使用する液晶素子の応答速度が遅い場合であっても使用できるようになる。一方、液晶素子の応答速度が速い場合は、従来に比べ格段に輝度の高い立体画像表示を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施の形態の立体画像表示装置の要部構成を説明する模式的な分解斜視図である。
【図2】本実施の形態の立体画像表示装置を構成する液晶パネルの模式的な平面図である。
【図3】本実施の形態の立体画像表示装置において用いる位相差板の概略断面図である。
【図4】本実施の形態の立体画像表示装置の模式的な断面図である。
【図5】本実施の形態の偏光メガネの右目用メガネ部および左目用メガネ部の構成を説明する模式的な分解斜視図である。
【図6】本実施の形態の偏光メガネの右目用メガネ部および左目用メガネ部の別の構成を説明する模式的な分解斜視図である。
【図7】本実施の形態の立体画像表示装置を使用して立体画像を観察者に認識させる方法を説明する図である。
【図8】一般的な液晶ディスプレイの表示方法を説明する図である。
【図9】本実施の形態の立体画像表示装置の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本実施の形態の立体画像表示装置1の要部構成を説明する模式的な分解斜視図である。図1に示すように、立体画像表示装置1は、バックライト2と、液晶ディスプレイ3と、光学手段である位相差板8とをこの順で備え、これらが図示されない筐体に収容されている。そして、立体画像表示装置1は偏光メガネ10を備え、立体画像を観察しようとする観察者がこれを掛けて使用し、位相差板8の前面側から画面上の画像を観察する。このとき、液晶ディスプレイ3の筺体には、後述するが、赤外線発信装置9が設けられ、偏光メガネ10には、その赤外線発信装置9から発射された赤外線を感知する赤外線センサ11が設けられている。
【0032】
バックライト2は、観察者から見て立体画像表示装置1の最も奥側に配され、立体画像表示装置1で画像を表示している状態(以下、「立体画像表示装置1の使用状態」と称する)において、白色の無偏光を偏光板5の一面に向けて均一な光量となるように出射する。なお、本実施形態では、バックライト2に面光源を用いているが、面光源に替えて、例えばLEDなどの点光源と集光レンズとの組み合わせでもよい。この集光レンズの一例は、フレネルレンズシートである。フレネルレンズシートは、一側面に同心上の凹凸するレンズ面を有し、背面側の中心の焦点から入射した光をほぼ平行光として前面側に射出することができる。
【0033】
図2は、本実施の形態の立体画像表示装置1を構成する液晶パネル6の模式的な平面図である。液晶ディスプレイ3は、図2に示すように、画素(図示されない)を水平方向に配列してなる水平ライン23を、垂直方向に複数並べて構成された液晶パネル6が、図1に示すように一対の偏光板5および偏光板7により挟持されて構成される。
【0034】
偏光板5は、液晶ディスプレイ3において、液晶パネル6におけるバックライト2側に配設される。偏光板5は、透過軸およびその透過軸に直交する吸収軸を有し、バックライト2から出射した無偏光が入射すると、その無偏光のうち透過軸方向と平行な偏光軸の光を透過し、吸収軸方向と平行な偏光軸の光を遮断する。ここで、偏光軸の方向とは、光における電界の振動方向のことであり、偏光板5における透過軸の方向は、図1に矢印で示すように、観察者が立体画像表示装置1を見たときの水平方向と平行な方向である。
【0035】
液晶パネル6は、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウム錫)等からなる透明電極などが配設されたガラス基板により液晶を挟持して構成されたものである。そして、TN(Twisted Nematic)モードやIPS(In−Plane−Switching)モード、あるいはVA(Vertical Alignment)モードの液晶パネルの使用が可能である。これらはいずれも印加される電圧に従い液晶の配向変化が起こり、液晶パネル6の両面に配設された偏光板5、7の作用と組み合わされて、その透過光量の調節を可能としている。
【0036】
そして、液晶パネル6は、立体画像表示装置1において画像形成を担う重要な構成部材であり、一つの画面上で右目用画像と左目用画像とを同時に表示するものである。以下、その構成や画像表示に係る機能について説明する。
【0037】
まず、液晶パネル6の画像表示部分においては、水平方向に区切られ、第一画像形成領域21と第二画像形成領域22とが設けられている。これら第一画像形成領域21および第二画像形成領域22は、図1に示すように、液晶パネル6を水平方向に区切った互いに同一の面積を有する領域であり、複数の第一画像形成領域21および第二画像形成領域22が鉛直方向に互い違いに配されている。
【0038】
そして、図2に示すように、液晶パネル6の第一画像形成領域21と第二画像形成領域22は、垂直方向に連続して並べられた複数の水平ライン23からそれぞれ構成されている。なお、図2において示される液晶パネル6では、第一画像形成領域21と第二画像形成領域22はそれぞれ、連続して並べられた3本の水平ライン23から構成されている。
【0039】
その結果、液晶パネル6の最上部にある1本目の水平ラインから3本目の水平ラインまでが束ねられて第一画像形成領域21を構成し、4本目の水平ラインから6本目の水平ラインまでが束ねられて第二画像形成領域22を構成し、さらに、7本目の水平ラインから9本目の水平ラインまでが束ねられて第一画像形成領域21を構成し、10本目の水平ラインから12本目の水平ラインまでが束ねられて第二画像形成領域22を構成して、3本ずつの水平ライン23を順次束ねて、液晶パネル6で互い違いに複数の第一画像形成領域21および第二画像形成領域22が配されている。
【0040】
このとき、第一画像形成領域21と第二画像形成領域22とを構成する水平ライン23の本数は3本に限られるわけではなく、複数本から構成することが可能である。例えば、第一画像形成領域21と第二画像形成領域22とを構成する水平ライン23の本数を10本とすることなどが可能である。
【0041】
その場合、液晶パネル6の最上部にある1本目の水平ラインから10本目の水平ラインまでが束ねられて第一画像形成領域21を構成し、11本目の水平ラインから20本目の水平ラインまでが束ねられて第二画像形成領域22を構成し、さらに、21本目の水平ラインから30本目の水平ラインまでが束ねられて第一画像形成領域21を構成し、31本目の水平ラインから40本目の水平ラインまでが束ねられて第二画像形成領域22を構成して、10本ずつの水平ライン23を順次束ねて、液晶パネル6で互い違いに複数の第一画像形成領域21および第二画像形成領域22が配されていることになる。
【0042】
すなわち、後に詳述するように、クロストークを低減して液晶ディスプレイ3の視野角を広げる観点から、第一画像形成領域21と第二画像形成領域22とを構成する水平ライン23の本数は選択される。
【0043】
そして、立体画像表示装置1の液晶ディスプレイ3の液晶パネル6では、表示される一つのフレーム画像の第一画像形成領域21と第二画像形成領域22とにそれぞれ右目用画像と左目用画像とを表示させ、次の(1)または(2)に示す方法に従い、第一画像形成領域21と第二画像形成領域22との間で右目用画像と左目用画像の入れ替えを行う。
(1)フレーム切り替え毎に右目用画像と左目用画像の入れ替えを行う。
(2)(1)以外の場合であって、フレームの切り替え時に右目用画像と左目用画像の入れ替えおよび直前のフレームで表示された画像の上書きのいずれか一方を行う(尚、入れ替えを行わずにそれぞれが右目用画像と左目用画像を維持し続ける場合は含まない)。
【0044】
尚、図1には示されないが、液晶パネル6の周縁には外枠25が配されており、液晶パネル6における第一画像形成領域21および第二画像形成領域22は、この外枠25に支持される。
【0045】
上述のように、立体画像表示装置1の使用状態において、液晶パネル6の第一画像形成領域21および第二画像形成領域22には、ある一つのフレーム画像表示時において、例えば、それぞれ右目用画像および左目用画像が生成される。このときに偏光板5を透過した光が液晶パネル6の第一画像形成領域21および第二画像形成領域22に入射すると、第一画像形成領域21の透過光は右目用画像の画像光(以下、「右目用画像光」と略称する)となり、第二画像形成領域22の透過光は左目用画像の画像光(以下、「左目用画像光」と略称する)となる。そして、フレームの切り替えに対応して入れ替えが行われる場合、第一画像形成領域21および第二画像形成領域22には、それぞれ左目用画像および右目用画像が生成されるようになる。
【0046】
尚、上述のある一つのフレーム画像表示時における場合の第一画像形成領域21を透過した右目用画像光および第二画像形成領域22を透過した左目用画像光は、後述する偏光板7を透過して、それぞれ特定方向の偏光軸を有する直線偏光となる。ここで、それぞれ特定方向の偏光軸とは、互いに同じ方向であってもよく、図1に示す例においては、ともに偏光軸が後述する偏光板7における透過軸の方向と同じ方向である。
【0047】
偏光板7は、液晶ディスプレイ3における観察者側に配置される。この偏光板7は、上述の場合の第一画像形成領域21を透過した右目用画像光、および、第二画像形成領域22を透過した左目用画像光が入射すると、これらのうち偏光軸が透過軸と平行な光を透過し、偏光軸が吸収軸と平行(透過軸に垂直)な光を遮断する。ここで、偏光板7における透過軸の方向は、図1に矢印で示すように、観察者が立体画像表示装置1を見たときの水平方向と垂直な方向である。
【0048】
位相差板8は、第一偏光領域31および第二偏光領域32を有する。この位相差板8における第一偏光領域31および第二偏光領域32の位置および大きさは、図1に示すように、液晶パネル6の第一画像形成領域21および第二画像形成領域22の位置および大きさに対応している。
【0049】
そして、上述のように、図2に示す本実施の形態の立体画像表示装置1を構成する液晶パネル6においては、液晶パネル6の画像表示にかかる全水平ラインのうち、上から垂直方向に順次3本ずつの水平ライン23が束ねられて便宜上一つの組を構成し、その束ねられた水平ラインの組のそれぞれに対応するよう、同一面積の第一画像形成領域21と第二画像形成領域22とが設けられている。よって、この位相差板8における第一偏光領域31および第二偏光領域32の位置および大きさは、図1に示すように、液晶パネル6の束ねられた3本の水平ラインの組である第一画像形成領域21および第二画像形成領域22の位置および大きさに対応している。
【0050】
したがって、立体画像表示装置1の使用状態において、ある一つのフレーム画像表示時では、第一偏光領域31には、上述の場合の第一画像形成領域21を透過した右目用画像光が入射し、第二偏光領域32には、上述の場合の第二画像形成領域22を透過した左目用画像光が入射する。そして、フレームの切り替えに対応して入れ替れが行われる場合、第一偏光領域31には、第一画像形成領域21を透過した左目用画像光が入射し、第二偏光領域32には、第二画像形成領域22を透過した右目用画像光が入射するようになる。
【0051】
尚、本実施の形態の立体画像表示装置1においては、液晶パネル6の画像表示にかかる全水平ラインの各一本それぞれに対応するよう、第一画像形成領域21と第二画像形成領域22とを設けることも可能である。その場合、位相差板8においても、液晶パネル6の各水平ライン23に対応する第一画像形成領域21および第二画像形成領域22の位置および大きさに対応して、第一偏光領域31および第二偏光領域32が形成される。
【0052】
そして、表示される一つのフレーム画像の水平奇数ラインに対応する第一画像形成領域21と、水平偶数ラインに対応する第二画像形成領域22とにそれぞれ、例えば、右目用画像と左目用画像とを表示させ、フレーム切り替え毎に、その右目用画像と左目用画像の表示された水平ラインを交互に入れ替え、右目用画像と左目用画像がそれぞれインターレースしたフレーム画像を表示するよう構成することができる。
【0053】
しかしながら、その場合、クロストークの問題が顕著となる。
すなわち、立体画像表示装置1の画面を構成する液晶ディスプレイ3の中央鉛直方向からある視野角をもって、観察者50が立体画像表示装置1上の立体画像を観察する場合がある。本来、ある一つのフレーム画像表示時では、位相差板8の第一偏光領域31には、上述の場合の液晶パネル6の第一画像形成領域21を透過した右目用画像光のみが入射し、第二偏光領域32には、第二画像形成領域22を透過した左目用画像光のみが入射することが必要であるのに対し、視野角を大きくとった場合に、液晶パネル6の第一画像形成領域21を透過した右目用画像光の一部が左目用画像光のみが入射すべき第二偏光領域32に入射し、そのまま左目用画像光とともに観察者50の左目に届いてしまうことがある。
【0054】
こうしたタイプのクロストークは、位相差板8において位相差特性の異なる第一偏光領域31と第二偏光領域32とが互いに隣接するように設けられていることに起因する。
すなわち、上述のように、本実施の形態の立体画像表示装置1の液晶パネル6においては、上から垂直方向に順次、例えば3本ずつの水平ライン23が束ねられて便宜上一つの組を構成し、その束ねられた水平ラインの組のそれぞれに対応するよう、同一面積の第一画像形成領域21と第二画像形成領域22とが設けられている。そして、それに対応して位相差板8の第一偏光領域31および第二偏光領域32が互いに隣接するように設けられており、クロストークは立体画像表示装置1の画面の上下方向である視野角以上でもって、観察者50がその画面上の画像を観察する場合に起こりやすい。
【0055】
このタイプのクロストークは、位相差板8の互いに隣接する第一偏光領域31と第二偏光領域32との境界領域で起こる。したがって、これを低減するためには、先ず第一に、位相差板8において第一偏光領域31と隣接する第二偏光領域32との境界領域を減らすことが有効である。
【0056】
例えば、液晶パネル6がフルHD(Full High Definition)仕様に対応して水平ラインが1080本である場合、上記したように全水平ラインのそれぞれに対応するよう、第一画像形成領域21と第二画像形成領域22とを設けるとすると、それらは互い違いに540個ずつ設けられることになる。そして、位相差板8では、液晶パネル6の第一画像形成領域21および第二画像形成領域22の位置および大きさに対応するように540個ずつの第一偏光領域31および第二偏光領域32を有することになる。その結果、第一偏光領域31と隣接する第二偏光領域32との境界領域は1079カ所形成されることになる。
【0057】
そして、観察者50がある視野角をもって立体画像表示装置1の画面を観察する場合、この境界領域のそれぞれでクロストークが発生し、その強度は上記したように全水平ラインのそれぞれに対応するよう、第一画像形成領域21と第二画像形成領域22とを設けた場合に最も高いものとなる。
【0058】
それに対し、図1および図2に例示するように、本実施の形態の液晶パネル6の第一画像形成領域21と第二画像形成領域22とが、複数本の水平ライン23から構成される場合、位相差板8では、液晶パネル6の第一画像形成領域21および第二画像形成領域22の位置および大きさに対応して、第一偏光領域31および第二偏光領域32が形成されているため、それらの面積は、束ねて組にする水平ライン23の本数に従い大きくなる。その結果、位相差板8において、第一偏光領域31と隣接する第二偏光領域32との境界領域を少なくすることができる。
【0059】
すなわち、クロストークを発生させる第一偏光領域31と隣接する第二偏光領域32との境界領域が少なくなることから、本実施の形態の立体画像表示装置1によりある視野角を持って観察者50が立体画像を観察しようとする場合、クロストークの発生は立体画像表示装置1全体としては少なくなる。よって、液晶パネル6の第一画像形成領域21および第二画像形成領域22を形成するために束ねて組にする水平ライン23の本数の増加に従い、クロストークは抑えられ、観察者50はクロストークを感じにくくなる。
【0060】
したがって、本実施の形態の立体画像表示装置1においては、クロストークが低減され、観察可能な視野角が拡大して視野角特性が向上する。
以上から、クロストークを低減するという観点からは、液晶パネル6の第一画像形成領域21および第二画像形成領域22を形成するために、束ねて組にする水平ライン23の本数は、より多いほうが好ましい。
【0061】
また、位相差板8の液晶ディスプレイ3に対向する面における第一偏光領域31と第二偏光領域32との境界領域には、遮光部24を設けることも可能である。この遮光部24は帯状の形状を有し、第一偏光領域31と第二偏光領域32との境界領域に配設されることが好ましい。図3は、本実施の形態の立体画像表示装置1において用いる位相差板8の概略断面図である。
【0062】
こうした遮光部24を設けることにより、位相差板8の第一偏光領域31に隣接する第二偏光領域32に入射するべき右目用または左目用の画像光のうち、その境界を超えて隣接する第一偏光領域31に入射する画像光を吸収して遮ることが可能となる。
【0063】
同様に、遮光部24を設けることにより、位相差板8の第二偏光領域32に隣接する第一偏光領域31に入射するべき右目用または左目用の画像光のうち、その境界を超えて隣接する第二偏光領域32に入射する画像光を吸収して遮ることが可能となる。このように、位相差板8に遮光部を設けることにより、立体画像表示装置1から出射される右目用画像光および左目用画像光においてクロストークを生じにくくさせることが可能となる。
【0064】
この遮光部24は、例えば、バインダー樹脂にフィラー成分を分散させたものなどで形成することが好ましい。フィラー成分は、金属粒子およびその酸化物、または顔料、染料を用いる。フィラー成分の色調は、上記右目用画像光および左目用画像光に対して黒色であることが好ましい。上記顔料および染料を分散あるいは溶解させるバインダー樹脂は、公知の樹脂例えばアクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル、ノボラック樹脂、ポリイミド、エポキシ樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニルコポリマー、ニトロセルロース、または、これらの組み合わせ等を用いることができる。
【0065】
そして、図4は、本実施の形態の立体画像表示装置1の模式的な断面図である。
本実施の形態の立体画像表示装置1では、液晶ディスプレイ3と位相差板8とが積み重ねられているが、そこでは、一例として、位相差板8における遮光部24が設けられた面が液晶ディスプレイ3に対向するように配置されている。
【0066】
ここで、液晶ディスプレイ3は、図4に示すように、予め、周縁に外枠25が配された液晶パネル6の両面に偏光板5および偏光板7がそれぞれ取り付けられた状態で、一面が開放された筐体26に対して取り付けられている。そして、偏光板7が取り付けられた面が筐体26における開放された面から外部に露出している。筐体26は、例えばプラスチックまたはステンレスで形成されており、開放された面と対向する面の内側にバックライト2が固定されている。
【0067】
立体画像表示装置1では、位相差板8と液晶ディスプレイ3とが上記のように配置されることから、液晶ディスプレイ3における偏光板7が取り付けられた側の面が位相差板8における遮光部24が設けられた面と対向している。そして、位相差板8の第一偏光領域31および第二偏光領域32が、液晶パネル6の第一画像生成領域21および第二画像生成領域22とそれぞれ対向するように液晶ディスプレイ3と位相差板8とが互いの面方向について位置決めされており、液晶ディスプレイ3と位相差板8の互いに対向する面を当接するよう構成されている。
【0068】
そして、液晶パネル6の周縁部にあたる外枠25と位相差板8の側面とが接着剤27により接着されている。これにより、立体画像表示装置1の使用時にクロストークは生じにくくなる。なお、位相差板8における外部に露出する側の面にさらに拡散板、反射防止フィルム等を取り付けてもよい。
【0069】
しかしながら、遮光部24は液晶ディスプレイ3を透過して観察者50の目に届く画像光の一部を遮光するかたちで機能することには変わりはない。すなわち、クロストークの低減には有効であるが、立体画像表示装置1の画像表示における画面輝度は低下する。
【0070】
例えば、上記したように、全水平ラインのそれぞれに対応するよう、第一画像形成領域21と第二画像形成領域22とを設けた場合、第一偏光領域31と隣接する第二偏光領域32との境界領域は最も多くなり、その境界領域ごとに形成が必要とされる帯状の遮光部24の数は最も多くなる。その結果、遮光部24の形成による輝度の低下の影響は最も大きなものとなる。
【0071】
したがって、遮光部24を形成してクロストークの低減に有効であるものの、その形成数をなるべく少なくすることが好ましい。
【0072】
その場合、図1および図2に示すように、液晶パネル6の第一画像形成領域21と第二画像形成領域22とを構成する水平ライン23の本数が複数本から構成される場合、位相差板8では、液晶パネル6の第一画像形成領域21および第二画像形成領域22の位置および大きさに対応して、第一偏光領域31および第二偏光領域32が形成されており、それらの面積は、液晶パネル6において束ねて組にする水平ライン23の本数に従い大きくなる。したがって、位相差板8において、第一偏光領域31と隣接する第二偏光領域32との境界領域を減らすことができて、ひいては境界領域に形成される遮光部24は少なくなる。
【0073】
その結果、本実施の形態の立体画像表示装置1により立体画像を観察する場合、観察者50は、液晶パネル6の第一画像形成領域21および第二画像形成領域22を形成するために束ねて組にする水平ライン23の本数の増加に従い、遮光部24による画面輝度の低下は抑制されて、高輝度の立体画像を観察者50は得ることができるようになる。
【0074】
以上の結果から、立体画像表示装置1におけるクロストークの低減と画面輝度の低下抑制の観点からは、液晶パネル6の第一画像形成領域21と第二画像形成領域22とを構成するために束ねて一つの組にされる水平ライン23の本数を複数本とすることが好ましく、さらに、束ねて一つの組にする水平ライン23の本数をより多くすることが好ましいことがわかる。
【0075】
そして、液晶パネル6の第一画像形成領域21と第二画像形成領域22とを構成するために束ねて一つの組にされる複数の水平ライン23の位置と大きさに対応して、より大きな位相差板8の第一偏光領域31および第二偏光領域32を形成することが好ましい。
【0076】
しかしながら、液晶パネル6の第一画像形成領域21と第二画像形成領域22とを構成するために束ねて一つの組にされる水平ライン23の本数を無制限に増大させることは、上述した従来の立体画像表示装置において知られているのと同様の問題を引き起こすことになる。すなわち、従来のシャッターメガネ方式の立体画像表示装置では、表示画像のちらつきであるフリッカーの発生や、表示画面における輝度の低下や、左右の眼に映る画像に時間差が発生して観察者にとっては自然な画像が得られないという問題点などを有しており、同様の問題が懸念される。
【0077】
したがって、本実施の形態の立体画像表示装置1においては、クロストークの低減と画面輝度の低下抑制の観点と、フリッカーの抑制や観察者50にとっての自然な立体画像を可能とするという観点とから、液晶パネル6の第一画像形成領域21と第二画像形成領域22とを構成するために束ねて一つの組にされる水平ライン23の本数を選択することが好ましく、それに対応して位相差板8の第一偏光領域31および第二偏光領域32を形成することが好ましい。
【0078】
そして、鋭意検討の結果から、液晶パネル6の第一画像形成領域21と第二画像形成領域22とはそれぞれ、液晶パネル6の垂直方向に連続して並べられた2本から60本の水平ライン23からなる画像形成領域であることが好ましいことがわかった。
【0079】
さらに、液晶パネル6の第一画像形成領域21と第二画像形成領域22とはそれぞれ、液晶パネル6の垂直方向に連続して並べられた3本から30本の水平ライン23からなる画像形成領域であることがより好ましく、5本から15本の水平ライン23からなる画像形成領域であることが最も好ましいことがわかった。そして、それに対応する位置と大きさで位相差板8の第一偏光領域31および第二偏光領域32を形成することが当然に好ましい。
【0080】
次に、図1に示すように、上記した位相差板8の第一偏光領域31には、偏光軸が水平方向と垂直な方向にある直線偏光として右目用または左目用の画像光が入射するが、この入射した右目用または左目用の画像光を左回りの円偏光として出射する。また、第二偏光領域32は、入射した右目用または左目用の画像光を右回りの円偏光として出射する。
【0081】
したがって、第一偏光領域31を透過した右目用または左目用の画像光と、第二偏光領域32を透過した、対応する左目用または右目用の画像光とは、図1に矢印で示すように、その回転方向が互いに逆方向の円偏光となる。なお、図1の位相差板8における矢印は、この位相差板8を通過した偏光の回転方向を模式的に示している。
【0082】
そして、位相差板8を構成する第一偏光領域31には、光学軸が水平方向から右上45度方向である1/4波長板が用いられ、第二偏光領域32には、光学軸が水平方向から左上45度方向である1/4波長板が用いられる。ここで、光学軸とは、光が第一偏光領域31または第二偏光領域32を透過するときの進相軸または遅相軸の一方を指す。
【0083】
尚、位相差板については、上述のように、光軸が互いに直交する1/4波長板から構成するのみではなく、光学軸が水平方向から右上45度方向である1/2波長板を第一の偏光領域とし、実質的に位相差の無いガラスや樹脂等の部材を第二の偏光領域とした位相差板とすることも可能である。
【0084】
その場合、入射する、直線偏光である画像光に対し、位相差板から出射してきた画像光は、透過する位相差板の領域に従い、光軸の90度回転された直線偏光または光軸が回転されないままの直線偏光となる。したがって、これらの画像光に対し、後述するように、偏光メガネの右目用メガネ部と左目用メガネ部とを上述した液晶素子と偏光板とから適宜構成することによって、それぞれ透過と遮断とを選択することが可能となり、上述と同様の機能を供えた立体画像表示装置を構成することが可能となる。
【0085】
また、上記立体画像表示装置1は、上記したように、位相差板8よりも観察者側に、位相差板8の第一偏光領域31および第二偏光領域32を透過した右目用画像光および左目用画像光を水平方向または鉛直方向の少なくとも一方の方向に拡散する拡散板を有してもよい。このような拡散板には、例えば水平方向または鉛直方向に延伸するかまぼこ状の凸レンズ(シリンドリカルレンズ)が複数配されたレンチキュラーレンズシート、または、凸レンズが平面状に複数配されたレンズアレイシートが用いられる。
【0086】
立体画像表示装置1により立体画像を観察する場合、観察者50は、立体画像表示装置1から投影される右目用画像光および左目用画像光を、偏光メガネ10をかけて観察する。この偏光メガネ10には、観察者50の右目側にあたる位置に右目用メガネ部41が配され、左目側にあたる位置に左目用メガネ部42が配される。
【0087】
これら右目用メガネ部41および左目用メガネ部42は、電気的に駆動が可能であって、互いに液晶の初期の配向状態の異なるTNモード液晶素子または強誘電性液晶素子から構成されている。そして、これら液晶素子の駆動装置(図示されない)とともに偏光メガネ10のフレームに固定されている。
【0088】
なお、偏光メガネ10のフレームには、上述したように赤外線センサ11が備え付けられている。そして、液晶ディスプレイ3におけるフレームの切り替えよる画像領域の入れ替えに同期して液晶ディスプレイ3に備えられた赤外線発信装置9から発信される赤外線を感知して、右目用メガネ部41および左目用メガネ部42を構成する上述の液晶素子の駆動を指示する。
【0089】
すなわち、液晶ディスプレイ3と偏光メガネ10とにおいては、液晶ディスプレイ3におけるフレームの切り替えに同期して液晶ディスプレイ3に備えられた赤外線発信装置9が同期信号としての役割を果たす赤外線を発信する。そして、この発信された赤外線を偏光メガネ10の赤外線センサ11が受信し、これを同期信号として偏光メガネ10では液晶ディスプレイ3でのフレームの切り替えにともなう画像領域の入れ替えを感知する。その結果、フレームの切り替えにともなう画像領域の入れ替えに対応するよう、右目用メガネ部41および左目用メガネ部42を構成する上述の液晶素子の駆動が開始される。
【0090】
尚、本実施の形態の立体画像表示装置1においては、液晶ディスプレイ3におけるフレームの切り替えにともなう画像領域の入れ替えと、偏光メガネ10における右目用メガネ部41および左目用メガネ部42を構成する液晶素子の駆動との同期の取り方については、液晶ディスプレイ3の赤外線発信装置9と偏光メガネ10の赤外線センサ11とからなるシステムによって実現されるよう構成されている。
【0091】
しかし、こうした赤外線による無線のシステムのほかに、液晶ディスプレイ3の駆動回路と偏光メガネ10の右目用メガネ部41および左目用メガネ部42の駆動装置との間を有線接続して、液晶ディスプレイ3の駆動回路からの指令により右目用メガネ部41および左目用メガネ部42の駆動を制御するよう構成することも可能である。
【0092】
偏光メガネ10を構成する右目用メガネ部41および左目用メガネ部42は、電気的に駆動が可能なTN型液晶素子または強誘電性液晶素子を用いて構成されている。
尚、偏光メガネ10を構成する右目用メガネ部41および左目用メガネ部42は、電気的に駆動が可能なSTN(Super Twisted Nematic)型液晶素子または反強誘電性液晶素子を用いて構成することも可能である。TN型液晶素子が、液晶のねじれ角が概ね90度であるのに対し、STN型液晶素子は、液晶のねじれ角が270度程度と大きくされており、液晶の立ち上がり動作の急峻性を高めた液晶素子である。また、反強誘電性液晶素子は反強誘電性相の液晶を用い、非常に高速動作の可能な液晶素子である。
【0093】
さらに、偏光メガネ10を構成する右目用メガネ部41および左目用メガネ部42は、電気的に駆動が可能なECB(Electrically Controlled Birefringence)型液晶素子、VA(Vertical Alignment)型液晶素子またはOCB(Optically Compensated Bend)型液晶素子の使用も可能である。そして、ECB型液晶素子においては、液晶の初期配向がホモジニアス配向であるホモジニアス型のECB型液晶素子および負の誘電異方性を有する液晶を使用して初期配向がハイブリッド配向であるHAN(Hybrid−Aligned Nematic)型液晶素子の使用も可能である。
【0094】
図5は、右目用メガネ部41および左目用メガネ部42がTNモード液晶素子からなる場合の構成を説明する模式的な分解斜視図である。
偏光メガネ10を構成する右目用メガネ部41および左目用メガネ部42は、それぞれ1/4波長板43a、43bと、TN液晶セル44a、44bと、偏光板45a、45bとをこの順で備え、図示されない駆動装置などとともに、これらがフレームに固定されている。
【0095】
このとき、本実施の形態の偏光メガネ10においては、その使用時の観察者50が偏光メガネ10をかけ、液晶ディスプレイ3と対向した場合において、右目用メガネ部41の1/4波長板43aの光学軸が水平方向から右上45度(紙面の右上方45度)の方向にあり、偏光板45aの透過軸が水平方向と平行な方向にある。そして、TN液晶セル44aにおいては、電圧無印加時において入射する直線偏光に対し出射光が左回りに90度旋光するように液晶の初期配向が形成されている。このとき、上述の駆動装置により駆動され、液晶が配向変化していわゆるON状態になった場合、このようなTN液晶セル44aでの旋光性は失われ、入射光はそのままの特性の直線偏光として出射される。
【0096】
また、左目用メガネ部42の1/4波長板43bの光学軸が水平方向から左上45度(紙面の左上方45度)の方向にあり、偏光板45bの透過軸が水平方向と平行な方向にある。そして、TN液晶セル44bにおいては、電圧無印加時において入射する直線偏光に対し出射光が右回りに90度旋光するよう液晶の初期配向が形成されている。このとき、上述の駆動装置により駆動され、液晶が配向変化していわゆるON状態になった場合、このようなTN液晶セル44aでの旋光性は失われ、入射光はそのままの特性の直線偏光として出射される。
【0097】
図6は、右目用メガネ部41’および左目用メガネ部42’が強誘電性液晶素子からなる場合の偏光メガネの構成を説明する模式的な分解斜視図である。右目用メガネ部41’および左目用メガネ部42’を構成する強誘電性液晶素子は表面安定化型強誘電液晶素子である。表面安定化型強誘電液晶素子は応答速度が速く、偏光メガネ10の右目用メガネ部41’および左目用メガネ部42’に用いられた場合、駆動に伴う高速でスムーズな液晶の配向変化が可能となって好ましい。
【0098】
偏光メガネを構成する別の例である右目用メガネ部41’および左目用メガネ部42’は、それぞれ1/4波長板43a’、43b’と、強誘電性液晶セル44a’、44b’と、偏光板45a’、45b’とをこの順で備え、これらが図示されない駆動装置などとともにフレームに固定されている。
【0099】
このとき、本実施の形態の偏光メガネ10’においては、その使用時の観察者50が偏光メガネをかけ、液晶ディスプレイ3と対向した場合において、右目用メガネ部41’の1/4波長板43a’の光学軸が水平方向から右上45度の方向(紙面の右上方45度)にあり、偏光板45a’の透過軸が水平方向と平行な方向にある。
【0100】
そして、強誘電性液晶セル44a’においては、入射する直線偏光に対しそのままの特性で出射させる液晶の配向状態と、90度左回りに回転させて出射させることが可能な配向状態との二つの安定な配向状態を取ることが可能なように、液晶の初期配向が形成されている。このような二つの安定な配向状態の選択は、上述の駆動装置による適当な極性の電圧の印加によって選択がなされうる。
【0101】
また、左目用メガネ部42’の1/4波長板43b’の光学軸が水平方向から左上45度の方向(紙面の左上方45度)にあり、偏光板45b’の透過軸が水平方向と平行な方向にある。
そして、強誘電性液晶セル44b’においては、入射する直線偏光に対しそのままの特性で出射させる液晶の配向状態と、90度右回りに回転させて出射させることが可能な配向状態との二つの安定な配向状態を取ることが可能なように、液晶の初期配向が形成されている。このような二つの安定な配向状態の選択は、上述の駆動装置による適当な極性の電圧の印加によって望みの選択がなされる。
【0102】
本実施の形態の立体画像表示装置1の構成については以上であるが、次に本実施の形態の立体画像表示装置1を使用して、右目用画像光および左目用画像光から、観察者50に立体画像として認識させる方法について説明する。
【0103】
図7は、本実施の形態の立体画像表示装置1を使用して立体画像を観察者に認識させる方法を説明する図である。そして、図7(a)は、ある一つのフレーム画像を観察者に認識させる方法を説明する図であり、図7(b)は、フレームの切り替えにより入れ替わった後のフレーム画像を観察者に認識させる方法を説明する図である。
【0104】
観察者50が、立体画像表示装置1により立体画像を観察するに際し、上述のように、液晶パネル6の第一画像形成領域21および第二画像形成領域22には、ある一つのフレーム画像表示時において、まず、右目用画像および左目用画像がそれぞれ対応して形成される。
【0105】
そして、図7(a)に矢印で示すように、第一画像形成領域21を透過した右目用画像光および第二画像形成領域22を透過した左目用画像光は、偏光板7を透過して、それぞれ水平方向と垂直な方向の偏光軸を有する直線偏光となる。
【0106】
そして、位相差板8に入射するが、位相差板8の第一偏光領域31には、右目用画像光が入射する。そして、図7(a)に矢印で示すように、この入射した右目用画像光を左回りの円偏光として出射する。また、第二偏光領域32では、図7(a)に矢印で示すように入射した左目用画像光を右回りの円偏光として出射する。
次に、こうして得られた右目用画像光と左目用画像光はそれぞれ観察者50の掛ける偏光メガネ10に入射する。
【0107】
偏光メガネ10が、TNモード液晶素子を用いて右目用メガネ部41および左目用メガネ部42を構成している場合、TN液晶セルに適当な電圧を印加して液晶のツイスト状態を解消し、いわゆるON状態を形成した状態が実現される。その場合、左回りの円偏光であった右目用画像光は、図7(a)に矢印で示すように、右目用メガネ部41の備える1/4波長板43aを透過して水平方向と平行な直線偏光に回転され、ON状態のTN液晶セル44aと偏光板45aをそのまま透過し、観察者50の右目に届くこととなる。
【0108】
一方、左回りの円偏光である右目用画像光が左目用メガネ部42に入射した場合、図7(a)に矢印で示すように、左目用メガネ部42の備える1/4波長板43bを透過して水平方向と垂直な直線偏光に戻され、ON状態のTN液晶セル44bを透過し、偏光板45bに入射するが、偏光板45bを透過することができず遮断され、観察者50の左目には届かない。
【0109】
また、右回りの円偏光であった左目用画像光は、左目用メガネ部42の備える1/4波長板43bを透過して水平方向と平行な直線偏光に変換され、ON状態のTN液晶セル44bと偏光板45bをそのまま透過し、観察者50の左目に届くこととなる。
【0110】
一方、右回りの円偏光である左目用画像光が右目用メガネ部41に入射した場合、右目用メガネ部41の備える1/4波長板43aを透過して水平方向と垂直な直線偏光に戻され、ON状態のTN液晶セル44aを透過し、偏光板45aに入射するが透過することができずに遮断され、観察者50の右目には届かないことになる。
【0111】
こうして、位相差板8の第一偏光領域31および第二偏光領域32を透過した右目用画像光および左目用画像光の出射する範囲内において、上記のように、偏光メガネ10をかけて立体画像表示装置1を観察することにより、右目では右目用画像光だけを観察することができ、左目では左目用画像光だけを観察することができることになる。したがって、観察者50は、これら右目用画像光および左目用画像光を立体画像として認識することができる。
【0112】
次に、図7(b)に示すように、観察者50が、立体画像表示装置1により立体画像を観察するに際し、上述のように、フレームの切り替えにともなう画像領域の入れ替えが行われ、液晶パネル6における第一画像形成領域21および第二画像形成領域22には、それぞれ左目用画像および右目用画像が形成されるようになった場合について説明する。
【0113】
上述の場合と同様、液晶パネル6における第一画像形成領域21を透過した左目用画像光および第二画像形成領域22を透過した右目用画像光は、図7(b)に矢印で示すように、後述する偏光板7を透過して、それぞれ水平方向と垂直な方向の偏光軸を有する直線偏光となる。
【0114】
そして、位相差板8に入射するが、位相差板8の第一偏光領域31には、左目用画像光が入射する。そして、図7(b)に矢印で示すように、この入射した左目用画像光を左回りの円偏光として出射する。また、第二偏光領域32では、入射した右目用画像光を右回りの円偏光として出射する。
次に、こうして得られた左目用画像光と右目用画像光はそれぞれ観察者50の掛ける偏光メガネ10に入射する。
【0115】
このとき、偏光メガネ10が、TNモード液晶素子を用いて右目用メガネ部41および左目用メガネ部42を構成している場合、TN液晶セルには電圧を印加せず、いわゆるOFF状態である初期配向状態を形成しておく。
その結果、左回りの円偏光である左目用画像光が右目用メガネ部41に入射した場合、図7(b)に矢印で示すように、右目用メガネ部41の備える1/4波長板43aを透過して水平方向と平行な直線偏光に変換され、OFF状態のTN液晶セル44aにおいて90度さらに回転されて水平方向と垂直な直線偏光に変換され、偏光板45aに入射するが透過できずに遮断され、観察者50の右目には届かないことになる。
【0116】
一方、左回りの円偏光である左目用画像光は、左目用メガネ部42に入射してそれが備える1/4波長板43bを透過し、図7(b)に矢印で示すように、水平方向と垂直な直線偏光に回転される。そして、OFF状態のTN液晶セル44bにおいて、90度さらに回転されて水平方向と平行な直線偏光に変換され、偏光板45bをそのまま透過し、観察者50の左目に届くこととなる。
【0117】
また、右回りの円偏光であった右目用画像光は、図7(b)に矢印で示すように、右目用メガネ部41の備える1/4波長板43aを透過して水平方向と垂直な直線偏光に戻される。そして、OFF状態のTN液晶セル44aにおいて90度回転されて水平方向と平行な直線偏光に変換され、偏光板45aをそのまま透過し、観察者50の右目に届くこととなる。
【0118】
一方、右回りの円偏光である右目用画像光が左目用メガネ部42に入射した場合、図7(b)の矢印で示すように、左目用メガネ部42の備える1/4波長板43bを透過して水平方向と平行な直線偏光に回転される。そして、OFF状態のTN液晶セル44bにおいて90度さらに回転されて水平方向と垂直な直線偏光に変換され、偏光板45bに入射するが、偏光板45bを透過できず遮断され、観察者50の左目には届かない。
【0119】
こうして、位相差板8の第一偏光領域31および第二偏光領域32を透過した左目用画像光および右目用画像光の出射する範囲内において、上記のように、液晶ディスプレイ3でのフレームの切り替えにともなう画像領域の入れ替えに同期させて、位相差状態を左右で交互に入れ替えできるように構成された偏光メガネ10をかけて立体画像表示装置1を観察することにより、フレーム切り替えに伴い右目用および左目用画像を形成する領域が入れ替わる画像領域の入れ替えが行われたとしても、右目では右目用画像光だけを観察することができ、左目では左目用画像光だけを観察することができることになる。よって、観察者50は、常に、これら右目用画像光および左目用画像光を立体画像として認識することができる。
【0120】
したがって、従来の立体画像表示装置において、右目用および左目用画像を形成する画像領域が固定されていたため、垂直解像度が半減するなど、解像度が低下するのに対して、本実施の形態の立体画像表示装置1は解像度を全く減じることなく、液晶ディスプレイ3の性能をフルに発揮させたフル解像度での表示が可能となる。
【0121】
また、従来の立体画像表示装置においては、常に左右の目の映像のいずれか一方しか表示されず、立体を認識する場合の時間差が生じてしまう場合があったが、本実施の形態の立体画像表示装置では、常に左右の絵目の映像が表示されていることから、観視者の疲労感を軽減することができる。また、激しい動きをしている立体画像の場合におきる左右の映像のずれに伴う立体視の違和感を生じさせないという効果もある。
【0122】
さらに本実施の形態の立体画像表示装置では、必要な液晶ディスプレイおよび偏光メガネに使用する液晶素子の応答速度が遅い場合であっても使用できるようになる。一方、液晶素子の応答速度が速い場合は、従来にくらべ格段に輝度の高い立体画像表示を得ることができる。
【0123】
尚、本実施の形態の立体画像表示装置1において、偏光メガネ10が、強誘電性液晶素子を用いて右目用メガネ部41’および左目用メガネ部42’を構成している場合について説明する。
【0124】
強誘電性液晶素子においては上述した選択可能な二つの安定状態のうち、入射する直線偏光に対しそのままの特性で出射させる液晶の配向状態を上述のTNモード液晶素子のON状態と同様に活用することができる。そして、入射直線偏光を90度左回りまたは90度右回りに回転させて出射させることが可能な配向状態を上述のTNモード液晶素子のOFF状態と同様に活用することができる。
【0125】
すなわち、強誘電性液晶素子では、電圧印加によるスイッチングが可能で、その結果、所望の選択が可能な二つの安定配向状態を適宜選択することで、偏光メガネ10がTNモード液晶素子を用いて構成されるのと同様の偏光効果を得ることが可能である。
【0126】
したがって、偏光メガネ10が、強誘電性液晶素子を用いて右目用メガネ部41’および左目用メガネ部42’を構成している場合についても、位相差板8の第一偏光領域31および第二偏光領域32を透過した右目用画像光および左目用画像光の出射する範囲内において、上記のように、偏光メガネ10をかけて立体画像表示装置1を観察することにより、右目では右目用画像光だけを観察することができ、左目では左目用画像光だけを観察することができることになる。したがって、観察者50は、これら右目用画像光および左目用画像光を立体画像として認識することができることになる。
【0127】
次に本実施の形態の立体画像表示装置1の動作について説明する。
上述のように、立体画像の表示において、一つのフレーム画像上に右目用画像と左目用画像とを同時に表示し、上述の光学手段である位相差板を用いて観察者の左右の目に画像を振り分けて立体画像を表示する方式にあって、全ての画像情報を表示するためには、まずフレーム表示画面の垂直方向に連続して並べられた全水平走査ラインについて、複数の水平ラインからそれぞれ構成される第一画像形成領域と第二画像形成領域とに分割するのが有効である。
【0128】
そして、第一画像形成領域は右目用画像および左目用画像のいずれか一方の画像を、第二画像形成領域は他方の画像をそれぞれ同時に表示し、フレームの切り替えと対応して左目用画像と右目用画像を表示する画像形成領域を所定の周期で入れ替え、その画像形成領域の入れ替えと同時に、偏光メガネ10の右目用メガネ部41と左目用メガネ部42の偏光性能を入れ替える方法を用いることが全ての映像情報を表示し、また観賞するために有効である。
【0129】
しかし、立体画像表示装置1において、上述のような液晶ディスプレイ3を用いた場合、図8に示すように、フレーム画像の情報更新は、画面の上の水平ラインから下の水平ラインに向けて順次画面を上書き更新して行くため、常に観察者には前の画像と次の新しい画像が同時に見えてしまい、その結果、クロストークが多く、立体画像の認識が難しいという問題を有している。尚、図8は、一般的な液晶ディスプレイの表示方法を説明する図である。
【0130】
このような問題に対し、本実施の形態の立体画像表示装置1においては、バックライト2の点滅動作を導入し、フレーム画像の情報更新にかかるクロストークの低減を実現している。
【0131】
図9は、本実施の形態の立体画像表示装置1の動作を説明する図である。
【0132】
本実施の形態の立体画像表示装置1は、上述のように、バックライト2と、液晶ディスプレイ3と、光学手段である位相差板8とをこの順で備えるが、併せて画像出力部60および表示制御部61を有し、これらも図示されない筐体に収容されている。そして、立体画像表示装置1は、上述のように、立体画像を観察しようとする観察者が使用する偏光メガネ10を備えている。
【0133】
この表示制御部61は、画像出力部60に対し、一つのフレーム画像上に右目用画像と左目用画像とを同時に出力するよう指示する。この指示を受けて画像出力部60は、例えば、図1で述べた液晶ディスプレイ3を構成する液晶パネル6の垂直方向に連続して並べられた複数の水平ラインに対応して設けられた第一画像形成領域21と第二画像形成領域22とにそれぞれ右目用画像と左目用画像とを出力し表示させる。
【0134】
そして、フレーム切り替えに毎に、その右目用画像と左目用画像の表示された画像形成領域を交互に入れ替え、右目用画像と左目用画像がそれぞれ互い違いに配置されたフレーム画像を表示するようにされている。しかしながら、上述したクロストークを防止するため、表示制御部61が画像出力部60に指示して、一つのフレーム画像上に右目用画像と左目用画像とを同時に表示した後、次のフレームでは画像領域の入れ替えを行なわず、そのまま上書きをするように指示し、上書き画像を少なくとも次の一フレーム期間、液晶ディスプレイ3に表示させることができる。
【0135】
その際、表示制御部61は、バックライト2の点滅を同時に制御し、偏光メガネ10の右目用メガネ部41と左目用メガネ部42の偏光状態の切り替えを制御する。すなわち、一つのフレーム画像を表示する期間はバックライト2を点灯させておき、そしてその前後にある、右目用画像と左目用画像の表示された画像形成領域を入れ替えるフレームではバックライト2を消灯する、または適当に輝度を低下させるように制御する。こうすることで、右目用画像と左目用画像の残像と画像領域の入れ替えに基づく上述のクロストークを、観察者50に感知されなくすることが可能となる。
【0136】
そして、併せて表示制御部61では、右目用画像と左目用画像の表示された画像形成領域を入れ替えるフレームの開始タイミングに同期させ、液晶ディスプレイ3の筺体に設けられた赤外線発信装置9に指示し、偏光メガネ10に設けられた赤外線センサ11に向けて同期信号としての赤外線を発射する。そして、赤外線センサ11における、この発射された赤外線の感知を契機として、偏光メガネ10の右目用メガネ部41と左目用メガネ部42を構成する、例えばTN液晶セル44a、44bを駆動させる。すなわち、TN液晶セル44a、44bを駆動し、ON状態またはOFF状態となるよう制御して、偏光メガネ10の右目用メガネ部41と左目用メガネ部42の偏光状態の切り替えを制御する。
【0137】
このとき、液晶ディスプレイ3においては、一つのフレーム画像上に右目用画像と左目用画像とを同時に表示した後、次のフレームでは画像領域の入れ替えを行なわず、そのまま上書きがされることが可能であるが、偏光メガネ10の右目用メガネ部41と左目用メガネ部42の偏光状態の切り替えも対応するように制御される。
【0138】
すなわち、右目用画像と左目用画像の表示された画像形成領域を入れ替えるフレームの開始タイミングに同期させて、偏光メガネ10の右目用メガネ部41と左目用メガネ部42の偏光状態の切り替えを行う。そして、そのまま上書きを行って画像領域の入れ替えを行わない、以降に続くフレームにおいては、偏光状態の切り替えは行われず、そのままの偏光状態が維持されるように表示制御部61により制御される。
【0139】
こうすることで、フレーム切り替えに対応してある定められた周期で右目用および左目用画像を形成する領域が入れ替わったとしても、観察者50は確実に、右目では右目用画像光だけを観察することができ、左目では左目用画像光だけを観察することができることになる。したがって、観察者50は、画像領域の入れ替えに基づく上述のクロストークを感知すること無く、常に、これら右目用画像光および左目用画像光を立体画像として認識することができる。
【0140】
尚、上述のように、一つのフレーム画像上に右目用画像と左目用画像とを同時に表示した後、次のフレームでは画像領域の入れ替えを行なわず、そのまま上書きをする場合、画像の入れ替え回数が減少し、液晶ディスプレイ3において可能な通常のフレーム周波数60Hzでは、表示画像のスムーズさが失われてしまう。また、バックライト2においては、フレーム毎に行われるバックライトの点滅が30Hzの周期で行われることになり、観察者に感知され、そのことに起因するフリッカーを観察者が感じる懸念がある。
【0141】
したがって、液晶ディスプレイ3におけるフレーム周波数を向上させ、例えば、フレーム周波数は120Hz以上とすることが好ましい。そうすることにより、一つのフレーム画像上に右目用画像と左目用画像とを同時に表示した後、次のフレームでは画像領域の入れ替えを行なわず、そのまま上書きをする場合でも、フレーム周波数60Hzに対応する立体画像の形成が可能となり、画像の切り替え可能な回数も多くなり、また、フリッカーが観察者によって感じられる懸念はない。さらに、上述のバックライト2の点滅に由来するフリッカーも観察者に感知されなくなる。したがって、本実施の形態の立体画像表示装置1により提供される表示画像も自然なものとなる。
【0142】
尚、本実施の形態の立体画像表示装置1においては、制御装置12によって制御される液晶ディスプレイ3におけるフレーム周波数を240Hzとすることも可能である。その場合、一つのフレーム画像上に右目用画像と左目用画像とを同時に表示し、次のフレームでは画像領域の入れ替えを行なわず、そのまま上書きをし、さらにその次のフレームでは画像領域の入れ替えを行ない、またその後のフレームではそのままの上書きを行うようにするというようなパターンで、制御装置12によって制御することが可能である。すなわち、フレーム毎に、液晶ディスプレイ3における右目用画像と左目用画像の表示領域の入れ替えとそのままの上書きとをその順番で繰り返すというパターンに従い、制御装置12によって画像形成の制御をすることが可能である。
【0143】
そのような周期での液晶ディスプレイ3上での画像形成を行う場合、フレーム周波数120Hzに対応する立体画像の形成が可能となり、画像の切り替え可能な回数も多くなり、また、フリッカーが観察者によって感じられる懸念はない。また、バックライト2の点滅も120Hz周期で行なわれることになる。そして、偏光メガネ10の右目用メガネ部41と左目用メガネ部42の偏光状態の切り替えは、上書きのためのフレームでは偏光状態の切り替えが行われないため、60Hzの周期で行われることになる。よって、偏光メガネ10の右目用メガネ部41と左目用メガネ部42の偏光状態の切り替えにより、ちらつきなどが観察者50に感知される懸念はない。
【0144】
また、液晶ディスプレイ3におけるフレーム周波数を240Hzとする場合、フレーム切り替えによって一つのフレーム画像上に右目用画像と左目用画像とを同時に表示した後、引き続く3回のフレームでは画像領域の入れ替えを行なわず、そのまま上書きをするように制御装置12によって制御し、上書き画像を次の3フレーム期間、液晶ディスプレイ3に表示させ、フレーム周波数60Hzに対応する立体画像の形成をすることも可能である。
【0145】
その場合、最初の1フレーム期間である1/240秒間だけ、バックライト2を消灯させ、その後の上書き画像表示を行う、3フレーム期間である3/240秒間は、バックライト2を点灯させることができる。その場合、上述した、フレーム毎に、液晶ディスプレイ3における右目用画像と左目用画像の表示領域の入れ替えとそのままの上書きとを繰り返すというパターンに比べて、画像領域の入れ替え回数は減るものの、それに対応して、バックライトの消灯している期間も減らすことが可能となる。その結果、立体画像表示装置1における立体表示画像の輝度をより向上することが可能となる。
【0146】
そして、そのとき、バックライト2の点滅も対応して60Hz周期で行なわれることになる。よって、バックライト2の点滅に由来するフリッカーも観察者に感知される懸念は無い。
以上のように、液晶ディスプレイ3におけるフレーム周波数を120Hzや240Hzなど向上させることにより、自然で高画質な立体表示画像表示を楽しむことが可能となる。
【0147】
尚、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0148】
1 立体画像表示装置
2 バックライト
3 液晶ディスプレイ
5、7、45a、45b、45a’、45b’ 偏光板
6 液晶パネル
8 位相差板
9 赤外線発信装置
10 偏光メガネ
11 赤外線センサ
21 第一画像形成領域
22 第二画像形成領域
23 水平ライン
24 遮光部
25 外枠
26 筐体
27 接着剤
31 第一偏光領域
32 第二偏光領域
41、41’ 右目用メガネ部
42、42’ 左目用メガネ部
43a、43b、43a’、43b’ 1/4波長板
44a、44b TN液晶セル
50 観察者
60 画像出力部
61 表示制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素を水平方向に配列してなる水平ラインを、垂直方向に複数並べて構成された液晶パネルと、前記液晶パネルを挟持する一対の偏光板とを有する液晶ディスプレイと、
前記液晶ディスプレイの背面側に配置されたバックライトと、
前記液晶ディスプレイの前面側に設けられた光学手段と、
観察者が掛けて使用する偏光メガネと、
を備えた立体画像表示装置であって、
前記液晶ディスプレイは、前記液晶パネルの垂直方向に連続して並べられた前記複数の水平ラインを束ねて構成され且つ交互に配設された第一画像形成領域と第二画像形成領域とを有し、前記第一画像形成領域は右目用画像および左目用画像のいずれか一方の画像を、前記第二画像形成領域は他方の画像をそれぞれ同時に表示するよう構成されており、
前記第一画像形成領域と前記第二画像形成領域は、(1)フレーム切り替え毎に右目用画像と左目用画像の入れ替えを行う、または、(2)(1)以外の場合であって、フレームの切り替え時に右目用画像と左目用画像の入れ替えおよび直前のフレームで表示された画像の上書きのいずれか一方を行う、よう構成されており、
前記バックライトは、前記右目用画像と前記左目用画像を入れ替えるタイミングに合わせて点灯状態が制御されるよう構成されており、
前記光学手段は、前記第一画像形成領域と前記第二画像形成領域とに対応する位置と大きさで、第一偏光領域と第二偏光領域とが配置されていて、前記第一偏光領域と前記第二偏光領域とは、いずれか一方が1/2波長板を構成するか、または、いずれも1/4波長板を構成し且つ互いの光学軸が直交しており、
前記偏光メガネは、右目用メガネ部と左目用メガネ部とを有し、前記右目用画像と前記左目用画像を入れ替えるタイミングに同期して、前記右目用メガネ部と前記左目用メガネ部との間で位相差状態が交互に入れ替わるよう構成されたことを特徴とする立体画像表示装置。
【請求項2】
前記光学手段の前記第一偏光領域と第二偏光領域との境界の少なくとも一部には、遮光部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の立体画像表示装置。
【請求項3】
前記第一画像形成領域と前記第二画像形成領域とはそれぞれ、前記液晶パネルの垂直方向に連続して並べられた2本から60本の水平ラインからなる画像形成領域であることを特徴とする請求項1または2に記載の立体画像表示装置。
【請求項4】
前記第一画像形成領域と前記第二画像形成領域とはそれぞれ、前記液晶パネルの垂直方向に連続して並べられた3本から30本の水平ラインからなる画像形成領域であることを特徴とする請求項1または2に記載の立体画像表示装置。
【請求項5】
前記偏光メガネには赤外線センサが、前記液晶ディスプレイには赤外線発信装置がそれぞれ備えられており、
前記第一画像形成領域と前記第二画像形成領域が右目用画像と左目用画像を入れ替えるタイミングに同期して、前記赤外線発信装置から赤外線が発信され、前記赤外線を前記赤外線センサが感知することによって、前記右目用メガネ部と前記左目用メガネ部との間で位相差状態が交互に入れ替わるよう構成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の立体画像表示装置。
【請求項6】
前記右目用メガネ部と前記左目用メガネ部とは、TN型液晶素子およびSTN型液晶素子のいずれか一方を用いて構成されたものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の立体画像表示装置。
【請求項7】
前記右目用メガネ部と前記左目用メガネ部とは、強誘電性液晶素子および反強誘電性液晶素子のいずれか一方を用いて構成されたものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の立体画像表示装置。
【請求項8】
前記右目用メガネ部と前記左目用メガネ部とは、VA型液晶素子、OCB型液晶素子、ホモジニアス型のECB型液晶素子およびHAN型のECB型液晶素子よりなる群から選ばれるいずれか1つの液晶素子を用いて構成されたものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の立体画像表示装置。
【請求項9】
前記液晶ディスプレイにおけるフレームの切り替えは、120Hz以上の周期で行われることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の立体画像表示装置。
【請求項10】
前記液晶ディスプレイにおけるフレームの切り替えは、240Hz以上の周期で行われることを特徴とする請求項9に記載の立体画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−158777(P2011−158777A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21364(P2010−21364)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000155698)株式会社有沢製作所 (117)
【Fターム(参考)】