説明

等方性銅エッチングのためのエッチング調合物

【課題】調合物及び等方性銅エッチング調合物を利用して銅を等方的にエッチングして除去する方法を提供する。
【解決手段】銅をエッチングする調合物は、水溶液を含み、水溶液は、(a)ジアミン、トリアミン、および、テトラミンからなるグループから選択される二座配位子、三座配位子、四座配位子の錯化剤、および、(b)酸化剤を含む。水溶液のpHは、5から12である。一実施形態では、エッチ液は、pH約6から10のエチレンジアミン(EDA)および過酸化水素を含む。銅層の実質的な表面を粗くせずに高速で銅をエッチングすることができる(例えば少なくとも約1,000Å/分)溶液が提供される。調合物は、半製品の半導体デバイスから銅を除去する(例えば銅積載部分をエッチングする)のに特に有益に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅のエッチング方法に関する。より詳しくは、半導体基板上に銅を等方的にエッチングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造の分野では、銅および銅合金は、導電材料として広く用いられている。導体としての銅は、導電率が高く良好なエレクトロマイグレーション耐性を有するので、アルミニウムなどの他の金属より好まれることが多い。このような利点により、銅充填線またはビアは、集積回路などの半導体デバイスの素子同士を接続する導電路として、現在至る所で見られる。
【0003】
半導体デバイスの製造中に銅を処理するのは、やや困難である。と言うのも、銅は、プラズマエッチングしにくいので、銅含有デバイスは、一般的に、ダマスク処理を用いて製造される必要がある。ダマスク処理では、銅は、ビアおよびトレンチなどの予め形成された凹みのあるダマスクパターンを有する基板上にインレーとして堆積される。凹みのあるパターンは、通常、フォトリソグラフィ技術によって形成される。凹みを形成した後、銅が凹みに充填されてフィールド領域上に銅積載層を形成するよう、銅は基板全体に堆積される。ここで、フィールド領域とは、銅が堆積される前の基板の上面のことを指す。続いて、銅積載部分は、ケミカルメカニカルポリシング(CMP)のような平坦化技術によって除去され、銅充填導電路のパターンを有する平坦化基板が得られる。
【0004】
銅を効率的に除去する方法は、半導体デバイス製造のさまざまな段階で望まれるが、従来のウェット銅エッチング技術は、一般的に半導体製造過程に組み込むのは無理だとされているので、広く導入されていない。従来のケミカルエッチングの重大な欠点の1つは、異方性であることを含む。異方性エッチングは、ある特定の方向での銅の選択性エッチング、および/または、あるタイプの粒子配向の選択性エッチングに通じるので、その結果、銅の表面の凸凹、くぼみ、および、粒界に依存する不均一な銅除去を招く。多くの場合、この欠点は、銅をきれいにかつ滑らかに等方性に除去することが一般的に望まれる半導体製造では許容できない。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、等方性銅エッチングのための調合物、および、当該等方性銅エッチング調合物を利用して銅を等方的に除去する方法を提供することにより、上記特定された問題に取り組む。これらの調合物は、表面を実質的に粗くせずに銅を非常に速いエッチ速度(例えば少なくとも約1,000Å/分の速度で)除去するのに用いられうる。例えば、いくつかの実施形態では、エッチングされた銅表面の表面粗さを増大させずに(エッチングと同時に表面反射率の低下が起きないことにより判断される)1,000Åの銅を除去することができる溶液が提供される。他の実施形態では、表面粗さは、わずかながら増大する(例えば、エッチングされた銅の1,000Åにつき表面反射率の初期低下が約20%を下回る)。
【0006】
一側面では、(a)ジアミン、トリアミン、および、テトラミンからなるグループから選択される二座配位子、三座配位子、四座配位子の錯化剤、および、(b)酸化剤を含む水溶液を有するエッチング調合物が提供される。溶液は、5から12のpH、より一般的には6から10のpHを有する。いくつかの実施形態における溶液は、例えば、pHアジャスタのような他の成分を有してよい。
【0007】
適切な酸化剤は、過酸化物、過マンガン酸塩、ペルオキソ硫酸塩、および、オゾン溶液を含むがこれらに限定されない。過酸化水素(H)は、多くの実施形態において好適な酸化剤である。
【0008】
いくつかの実施形態では、調合物に用いられる錯化剤は、ジアミンである。好適な二座配位子のジアミンは、エチレンジアミン(EDA、HNCHCHNH)、および、N−メチルエチレンジアミン(HCNHCHCHNH)を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、錯化剤は、例えば、三座配位子のトリアミン、ジエチレントリアミン(HNCHCHNHCHCHNH)などのトリアミンである。
【0010】
さらなる他の実施形態では、錯化剤は、トリス(2−アミノエチル)アミン(N(CHCHNH)のようなテトラミンである。いくつかの実施形態では、エッチ液は、ポリアミンの混合物を含んでよく、ポリアミンは、ジアミン、トリアミン、および、テトラミンからなるグループから選ばれる。
【0011】
1つの特定の実施形態では、エッチング調合物は、エチレンジアミン、過酸化水素、および、オプションでpHアジャスタ(硫酸など)を含み、約6から10のpHを有する。
【0012】
他の側面では、半製品の半導体基板の銅含有部分をエッチングする方法が提供される。方法は、さまざまなプロセスで用いられてよい。例えば、エッチングおよびキャッピングプロセスなどにおいて、銅積載部分をエッチングすることにより、銅充填ビア内に凹部を形成してよい。方法は、(a)銅が露出した領域を有する半製品の半導体基板を収容する段階と、(b)基板を、pHが約5から12の範囲のウェットエッチ液と接触させることによって、基板上の銅をエッチングする段階と、を備え、エッチ液は、(i)ジアミン、トリアミン、および、テトラミンからなるグループから選ばれる二座配位子、三座配位子、または、四座配位子の錯化剤、および、(ii)酸化剤を含む。エッチ液は、上記のような組成物を有してよく、好ましくは、高速で銅を等方的にエッチングすることが可能である。
【0013】
エッチ液は、多数の方法を用いて基板に供給されてよい。方法は、浸漬法、吹き付け法、接触スピン法、薄膜リアクタに入れる方法などを含む。基板にエッチ液を吹き付ける方法は、いくつかの実施形態において好適である。
【0014】
本発明のこれらおよび他の特徴、長所は、添付の図面を参照して以下にさらに詳しく説明される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】等方性銅エッチングが用いられるプロセスの例を示すダマスク構造の一部の断面の概略図である。
【図1B】等方性銅エッチングが用いられるプロセスの例を示すダマスク構造の一部の断面の概略図である。
【図1C】等方性銅エッチングが用いられるプロセスの例を示すダマスク構造の一部の断面の概略図である。
【0016】
【図2】異なるケミカルエッチングに対する銅エッチ速度を示す棒グラフである。
【0017】
【図3】EDAおよび過酸化水素を含有するエッチ液の吹き付け時間とエッチングされた銅の量との依存関係を示す実験的プロットである。
【0018】
【図4】EDAおよび過酸化水素を含有するエッチ液のpHと銅エッチ速度との依存関係を示す実験的プロットである。
【0019】
【図5】EDAおよび過酸化水素を含有するエッチ液の過酸化水素濃度と銅エッチ速度との依存関係を示す実験的プロットである。
【0020】
【図6】EDAおよび過酸化水素を含有するエッチ液のEDA濃度と銅エッチ速度との依存関係を示す実験的プロットである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
上述のごとく、本発明は、銅を等方的にエッチングするための調合物および方法を提供する。例えば、銅積載部分をエッチングし、銅充填ビアに凹部を形成するなどの、半製品の半導体基板上の銅をエッチングするために特に有益な調合物が提供される。
【0022】
本願明細書中で用いられる「銅」とは、銅金属およびその合金、ならびに、有機化合物(銅を電気メッキする間に一般的に用いられるレベラー、アクセラレータ、および、サプレッサなど)を含浸する銅金属のことを指す。例えば、これらに限定されないが、酸化銅および水酸化物を含む酸化銅種などの他の銅含有材料をエッチングすることができる調合物も提供されることに留意されたい。
【0023】
本願明細書中で用いられる「半導体基板」とは、このような基板を処理するいかなる段階における半導体材料(シリコンウェハまたはダイだど)を含有する基板のことを指す。半導体基板は、当該半導体基板上に堆積されるさまざまな材料(誘導体および導体)を含んでよい。
【0024】
「等方性エッチング」とは、全方向に実質的に同じ速度で銅を除去すること、および/または、全粒子配向で実質的に同じ速度で銅を除去することを指す。いくつかの実施態様では、等方性エッチングは、エッチングにおいて銅はほとんどまたは全く粗くないことを特徴とする。表面粗さは、エッチングの前、および、一定量の銅(1,000Åなど)が除去された後の表面反射量率を測定することによって測定されてよい。いくつかの実施形態では、1,000Åの銅がエッチングされる毎の反射率の初期低下が約20%を下回ることを特徴とするエッチング調合物が提供される。いくつかの実施形態では、反射率における初期低下は約15%未満であり、例えば約10%未満であり、例えば5%以下でよい。
【0025】
銅のエッチングは、酸化剤および錯化剤を含有する特定の組成物を用いて等方的に実行されてよい。予想外にも、実質的なピッチングまたはラフィングなしに等方性で均一なエッチングが望まれる場合、錯化剤の性質が特に重要であることが発見された。約5から12、好ましくは約6から10のpH範囲における高いエッチ速度(例えば、少なくとも約1,000Å/分、好ましくは、少なくとも約2,000Å/分)を提供するエッチング組成物が開発された。注目に値すべきなのは、いくつかの実施形態では、エッチングは、異なるサイズの凹部(または銅充填線)内で実質的に同じ速度で行われる。さらに、凹部内の異なる表面は、実質的に同じ速度でエッチングされ、例えば、形成された凹部の隅は、凹部の底と同じ速度でエッチングされる。いくつかの実施形態では、上記組成物によるエッチングは、ウェハにおいて不均一に行われ、ウェハの中心部分と縁部との間のエッチ速度にわずかな差がある。
【0026】
対照的に、例えば、約5を下回る低いpHを有するエッチング組成物などの従来の銅エッチング組成物は、一般的に、異方性を示し、小さい特徴部分におけるエッチ速度は、大きい特徴部分におけるエッチ速度より実質的に大きい。さらに、従来のエッチング組成物を用いると、ピッチングおよび表面粗さが高いことが観察される。
【0027】
本願明細書中に記載されるエッチングの特異な等方性は、銅表面に生じる速度制限反応によるものと考えられる。特定の理論に束縛されるものではないが、約6から12のpH範囲では、銅表面に酸化銅が形成されると直ちに可溶化されて、銅エッチング組成物の錯化剤によって除去される。いくつかの実施形態では、本願明細書中に記載されるエッチング組成物は、好都合にも、銅表面には銅酸化物層を形成せず、その代わりに、反射率の高い滑らかな酸化物フリーの銅表面を提供することができることに留意されたい(例えば、5,000Åをエッチングした後は(シリコン表面に比べて)120%より高い反射率であり、銅を1,000Åエッチングする毎の反射率の低下は、約10%未満である)。したがって、エッチング反応中に酸化物が形成される場合、追加の酸化物除去動作が必要となる前に直ちにその場で除去される。
【0028】
エッチングは、一般的に非粒子特性であり、例えば、かなりの高速ではいかなる粒子配向に沿ってもまたは粒界においても行われず、したがって、望ましくないファセット形成が生じない。エッチ速度は、形状およびピッチに依らない。さらに、記載されるエッチング調合物は、ピッチングおよび表面粗さを抑制し、高反射率を有する滑らかな酸化物フリーの表面を提供する。
【0029】
一実施形態によれば、組成物は、酸化剤(過酸化物、ペルオキソ硫酸塩、過マンガン酸塩オゾン溶液など)、および、ジアミン、トリアミン、または、テトラミンである二座配位子、三座配位子、または、四座配位子の錯化剤を含む。過酸化水素は、溶解度が高く、低コストなので、いくつかの実施形態において好適な酸化剤である。
【0030】
錯化剤の性質は、特に重要であることがわかっている。例えば、アンモニアのような単純な単座配位子、および、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)のような大きい高純度カルボン酸塩多座配位子は、エッチ速度が低く、結果として酸化被膜を形成することがわかっている。いくつかの実施形態では、4より大きい配位座数(denticities)を有する配位子(例えばEDTA)が実質的になく、アンモニアおよびその塩もフリーのウェットエッチ液が提供される。
【0031】
予想外にも、二座配位子、三座配位子、四座配位子のジアミン、トリアミン、および、テトラミンは、優れたエッチ速度、等方性、低表面粗さを提供し、酸化被膜を残さないことがわかっている。さまざまな二座配位子、三座配位子、四座配位子のアミンが用いられてよい。これらは、窒素で誘導化されるか、(N−アルキル置換される)、または、他の位置で誘導化されるか、あるいは、誘導化されなくてもよい。例としては、エチレンジアミン(EDA、HNCHCHNH)、N−メチルエチレンジアミン(CHNHCHCHNH)、ジエチレントリアミン(HNCHCHNHCHCHNH)、および、トリス(2−アミノエチル)アミン(N(CHCHNH)などが挙げられる。二座配位子、三座配位子、四座配位子アミンの混合もエッチング調合物で用いられてよい。
【0032】
有利なことには、非常に高いエッチ速度を提供し、非常に高い反射率を有する滑らかな金属面を導くエッチング組成物が提供される。さらに、いくつかの実施形態では、ポリアミンは、所望のpHに到達させるための、場合によっては高価である塩基性pHアジャスタを少しもまたは大量には必要としない。ポリアミンを含む典型的なエッチング組成物は、pHが約6から10のポリアミン(EDAなど)およびHを有する組成物を含む。他の実施形態では、水酸化テトラアルキルアンモニウムのような塩基性pHアジャスタが組成物に添加されてよい。いくつかの実施形態では、エッチング組成物は、硫酸(HSO)のような酸性pHアジャスタを有することにより、pHを下げる。5を上回るpHでは(提供される組成物が動作する)、酸性のpHアジャスタは、エッチ液中では塩として大部分が存在するだろう。したがって、例えば、「硫酸を含むエッチ液」という用語は、必須のpHに対する硫酸の適切な共役塩基を含む溶液のこととして解釈されるものとする。エッチング組成物のためにさまざまな酸性pHアジャスタが用いられてよい。いくつかの実施形態では、HClOのような毒性または爆発性のpHアジャスタは除外されることが望ましい。
【0033】
1つの典型的なエッチング組成物は、エチレンジアミン、過酸化水素、および、オプションで硫酸を含む組成物であり、当該組成物のpHは、約6から10である。一般にエッチ液はさまざまな添加成分を含む場合があるが(例えば、界面活性剤、腐食防止剤など)いくつかの実施形態では、溶液は、基本的に水、ジアミン、トリアミン、テトラミンからなるグループから選ばれる二座配位子、三座配位子、四座配位子の錯化剤、酸化剤、および、オプションでpHアジャスタによって構成される。
【0034】
本発明の組成物の他の有利な特徴は、高いpHではエッチングをすばやく抑制することができる(すなわちエッチ速度を下げられる)ということである。例えば、工程中、エッチングを特定の時刻に停止することが必要な場合、塩基性pHアジャスタがシステムに供給されることにより、エッチ液のpHを例えば約10から12より高くしてよい。所望のエッチング組成物のエッチ速度は、pHが高いと低くなり、適切なpHアジャスタ(例えばOH含有アジャスタ)を導入することにより、エッチングは高いpHで停止してよい。適切な塩基性pHアジャスタは、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)のような水酸化テトラアルキルアンモニウムを含む。
【0035】
研磨粒子を含まず、金属除去の間にパッドによる表面の機械磨耗に依存しないという点で、ケミカルメカニカルポリシング溶液またはスラリーとは異なる水溶液であるエッチング調合物が提供される。したがって、例えば、パッド(溶液中に研磨剤、または、パッドに保持または固定された研磨剤を有する、あるいはパッド中または溶液中に研磨剤を含まない)は、提供されるエッチング方法には必要なく、エッチングは、基板をエッチ液に浸漬させるか、または、溶液を基板に吹き付けることによって簡単に実現できる。多くの実施形態において、吹き付けは、エッチング組成物を基板上に供給するのに好適な方法である。一例示的実施態様では、エッチ液は、室温において回転する(例えば、約20から200rpmの速度で)基板の表面上に一筋スプレーするノズル(いわゆる「ファンノズル」)から吹き付けられる。一般的に、エッチ速度を上げるには温度を高くするのがよい。いくつかの例では、エッチ液を塗布する装置は、多くのEBR(エッジベベル面取り)またはSRD(スピンリンスドライヤー)用途に用いられるものを含む。その用途に適した装置および方法の例は、2001年10月30日発行の米国特許第6,309,981(マイヤーら)、および、2003年7月1日発行の米国特許第6,586,342(マイヤーら)にさらに詳細が記載されている。さらに、いくつかの実施形態では、エッチ液は、接触スピン法を用いて、または、薄膜リアクタにおいて基板と接触させてよい。
【0036】
記載されたエッチング組成物は、半導体処理中のさまざまな状況において用いられてよい。例えば、組成物は、露出した誘電体が存在する場合、銅線に凹部を形成するために用いられてよい。さらに、記載された組成物は、拡散バリア材料(例えばタンタルおよび/または窒化タンタル)がある場合、銅の選択的エッチングに用いられてよい。他の例では、エッチング組成物は、銅積載部分を有する基板上に供給されることにより、当該銅積載部分を一部または完全に除去する。
【0037】
本願明細書中に記載される等方性エッチングのための組成物は、上記用途に限らず、銅の等方性エッチングが望まれるいかなる用途に用いられてよい。記載された組成物および方法は、集積回路(IC)製造を超越した多種多様な用途において、約400nm未満の幅を有する銅充填特徴部分を有する半導体デバイスの製造中に用いられるのに特に有利である。
【0038】
半導体処理において用いられる場合、銅エッチングの方法は、(a)銅領域を有する半導体基板を提供する段階と、(b)銅領域を本願明細書中に記載されるエッチング組成物と接触させる段階と、を含む。いくつかの実施形態では、エッチングの初期期間の後、エッチ液のpHを高めることによって(例えば、塩基性pHアジャスタを添加することによって)エッチング反応は抑制される(すなわち、エッチ速度が下げられるか、または、反応が停止する)。
【0039】
図1Aから1Cは、提供されたエッチング方法が用いられるダマスク構造の典型的な断面図である。図1Aは、埋め込まれた銅充填凹部111を有する基板101(誘電体など)を含む構造を示す。銅積載層109が基板のフィールド領域上に存在する。銅領域109および111と、基板領域101との間には薄いコンフォーマル拡散バリア層105(例えばタンタルおよび/または窒化タンタル)が存在する。一実施形態では、銅積載部分109は、基板と本願明細書中に提供される等方性ウェットエッチ液とを接触させることにより、完全にまたは一部エッチングされてよい。いくつかの実施形態では、CMPまたはエレクトロプラナリゼーション(electroplanarization)のような平坦化動作がウェットエッチングの前後に実行される。
【0040】
図1Bは、銅積載部分を除去した後に得られる基板を示す。拡散バリア層105は、フィールド領域内で露出し、銅層111は、銅充填凹部の最上部で露出する。いくつかの実施形態では、本願明細書中に提供される等方性エッチ液は、拡散バリア層105が選択的に存在する(拡散バリア層をエッチングしない)場合、基板上に供給されて、銅層111内に凹部を形成し、図1Cに示されるような、銅充填層111の上部に形成された凹みを示す構造になる。次に、いくつかの実施形態では、この凹みは、例えば、無電解メッキによってキャップ(例えばコバルト含有キャップ)が満たされてよい。このように覆われた銅相互接続は、相互接続のエレクトロマイグレーション特性を向上させるので、いくつかの実施形態において望ましい。
【0041】
本願明細著中で提供される等方性エッチング組成物の使用は、上記例示された実施形態(例えばエッチングおよびキャッピング)に制限されない。提供された等方性組成物は、ダマスク手順フロー(例えば多くの状況での銅積載部分エッチングなど)およびそれを越えたさまざまな状況において用いられてよい。例えば、提供されるエッチ液は、半導体基板のエッジ領域から、または、基板の背面から、不要な銅を除去するために用いられてよい。
【0042】
以下のセクションでは、エッチング組成物および方法の実験の詳細を説明する。
[実験]
銅エッチング組成物における配位子の比較
【0043】
まず被覆銅フィルム層が堆積され、次にさまざまなウェットエッチング組成物を用いてエッチングが行われた。エッチングの前後に、銅表面の反射率の測定が波長約480nmで行われ、シリコン表面と相対的なパーセントで示された。以下の水溶液は、銅を等方的にエッチングする能力を試験された。
(a)エチレンジアミン(0.066M)、H(1.06M)、pH8.9、20℃。
この溶液は、4600Å/分という非常に高いエッチ速度を示し、かつ、優れた等方性を示した。6900Åの除去毎のエッチング後の銅表面の反射率は131%であった(エッチング前は134%)。
(b)グリシン(0.066M)、H(1.06M)、pH8.9、20℃。
この溶液は、エッチ速度1580Å/分であり、等方性を示した。エッチ速度はEDAに比べて遅い。1053Åの除去毎のエッチング後の銅表面の反射率は140%であった(エッチング前は134%)。
(c)過硫酸アンモニウム(0.066M)、過酸化水素なし、pH2.6、20℃。
この低pH(酸性)エッチ液は、エッチ速度1849Å/分であったが、エッチング後の銅表面の粗さが高かった。1849Åの除去毎のエッチング後の銅表面の反射率は、わずか61%であった(エッチング前は134%)。マットな仕上げが観察された。
(d)過硫酸アンモニウム(0.066M)、H(1.06M)、pH3.6、20℃。
この低pHエッチ液は、エッチ速度1163Å/分であったが、エッチング中および後において銅表面に赤/茶の酸化物が得られた。1163Åの除去毎のエッチング後の銅表面の反射率はたったの8.8%であった(エッチング前は134%)。
(e)過硫酸アンモニウム(0.066M)、過酸化水素なし、pH8.9、20℃。
このエッチ液は、エッチ速度が613Å/分であり、エッチング後、銅表面に赤/茶の酸化物が得られた。429Åの除去毎のエッチング後の銅表面の反射率は52%であった(エッチング前は134%)。
(f)水酸化アンモニウム(0.066M)、H(1.06M)、pH8.9、20℃。
このエッチ液は、エッチ速度が53Å/分であり、エッチング後、銅表面に赤/茶の酸化物が得られた。53Åの除去毎のエッチング後の銅表面の反射率は68%であった(エッチング前は134%)。
(g)EDTA(0.066M)、H(1.06M)、pH8.9、20℃。
エッチ液を含有したこのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)は、エッチ速度がたったの5Å/分であった。5Åの除去毎のエッチング後の銅表面の反射率は135%であった(エッチング前は134%)。表面との相互作用はほとんどなかった(すなわち金属除去または被膜形成がほとんどない)。
(h)クエン酸(0.066M)、H(1.06M)、pH8.9、20℃。
このエッチ液では測定可能なエッチングは全く認められなかった。
(i)シュウ酸(0.066M)、H(1.06M)、pH8.9、20℃。このエッチ液でも測定可能なエッチングは全く認められなかった。
(j)酢酸アンモニウム(0.066M)、H(1.06M)、pH9.6、20℃。
このエッチ液は、エッチ速度が429Å/分であり、エッチング後、銅表面に赤/茶の酸化物が得られた。429Åの除去毎のエッチング後の銅表面の反射率は13%であった(エッチング前は134%)。
ケミカルエッチングとエッチ速度との依存関係を表す棒グラフが図2に示されている。
【0044】
上記例から、EDAおよびグリシンのみが高いエッチ速度と等方性との両方を提供することがわかるであろう。水酸化アンモニウムおよびアンモニウム塩は、銅表面における酸化物の堆積、および/または、高い表面粗さを招く。EDTA、クエン酸、および、シュウ酸は感知できるほどのエッチ速度を示さない。EDAは、かなり高いエッチ速度を示すことからグリシンより優れている。
EDAおよびH含有エッチ液
【0045】
基板上にEDA(4g/L、0.067M)、および、H(120g/Lの30%H、または、約1.9M)を含むエッチ液を吹き付けて銅フィルムをエッチングした。溶液のpHは8.9であり、温度は20℃とした。約4,600Å/分のエッチ速度が観察された。銅を7,000Å除去した後、反射率は122%であった(エッチング前の反射率は125%)。
【0046】
図3は、エッチングの吹き付け時間とエッチングされた銅の量との依存関係を示す。約120秒で約9,000Åが除去されたことがわかるだろう。エッチングされた銅の量は、エッチングの吹き付け時間と線形の依存関係にある。
【0047】
他の実験では、pHと銅のエッチ速度との依存関係が調べられた。エッチ速度とpHとの依存関係は図4に示されている。2g/L(0.033M)のEDAおよび30g/Lの30%H(9g/Lまたは0.47M)を含むエッチ液が用いられた。pHは、未修正のEDA/過酸化物混合値から、pHを上下させる必要に応じてHSOまたはTMAHによって調整された。pH値が7未満だと銅表面は粗くなり、表面がマットで反射せず、縞模様や渦巻きがあり、外観的に概して不均一であった。pHが高いと(11より上)、表面上は比較的変わらない(反射する/滑らか)ように見えるが、エッチ速度は低下した。EDAによるエッチングの好適なpHは、約7から10.5であり、より典型的には約8.5から10であることがわかった。
【0048】
図5は、エッチ速度と、固定のpH8.9でのEDA(0.067M)およびH(10から40g/L)含有溶液におけるH濃度との依存関係を示す。H量が増えるにしたがってエッチ速度はゆるやかに上昇した。
【0049】
図6は、エッチ速度と、固定のpH8.9でのEDA(0から8g/LおよびH(1M)含有溶液におけるEDA濃度との依存関係を示す。エッチ速度は、EDA濃度に強く依存し、EDA濃度の上昇に伴いほぼ線形に近い状態で上昇する。
【0050】
表2は、EDAおよび過酸化水素を含有するエッチ液の反射率(等方性の基準)の変化を示す。ここでは、EDAは1から8g/Lの濃度であり、過酸化水素は約10から約40g/Lの濃度であり、pH値は、7から11.6の範囲である。すべてのケースで反射率の値は15%以下にならないことがわかるだろう。
【表2】

表2 EDAを含む他の溶液でエッチングした後に得られた銅の表面粗さ。
アミノ基を含有する他の錯化剤を含むエッチ液
【0051】
異なる錯化剤を含有する多数の溶液が調べられた。pHは、TMAHまたはHSOにより8.9または8.8に調整された。
(a)N−メチルエチレンジアミン(0.066M)、H(1.00M)、pH8.9、20℃。
この溶液は、1575Å/分というかなりのエッチ速度および等方性を示した。1575Åの除去毎のエッチング後の銅表面の反射率は127%であった(エッチング前は134%)。
(b)サルコシン(0.066M)、H(1.00M)、pH8.9、20℃。
この溶液は、11.5Å/分のエッチ速度を示した。
(c)タウリン(0.066M)、H(1.00M)、pH8.9、20℃。
この溶液は、12Å/分のエッチ速度を示した。
(d)エタノールアミン(0.066M)、H(1.00M)、pH8.9、20℃。
この溶液は、感知できるほどのエッチングを示さなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶液を含むウェットエッチング調合物であって、前記水溶液は、
(a)ジアミン、トリアミン、および、テトラミンからなるグループから選ばれる二座配位子、三座配位子、または、四座配位子の錯化剤と、
(b)酸化剤と、
を備え、
エッチ液のpHは、約7から10.5であり、前記エッチング調合物は、銅を1,000Åエッチングする毎に、エッチングされた銅表面の反射率が15%以下にならないように等方性にエッチングすることができる、
ウェットエッチング調合物。
【請求項2】
前記ウェットエッチング調合物は、少なくとも約1,000Å/分のエッチ速度で銅をエッチングすることができる、請求項1に記載のウェットエッチング調合物。
【請求項3】
前記ウェットエッチング調合物は、エッチングされた銅領域の表面粗さを増大させずに、基板から少なくとも約1,000Åの銅を除去することができる、請求項1に記載のウェットエッチング調合物。
【請求項4】
前記酸化剤は、過酸化水素(H)を含む、請求項1に記載のウェットエッチング調合物。
【請求項5】
前記錯化剤は、ジアミンを含む、請求項1に記載のウェットエッチング調合物。
【請求項6】
前記ジアミンは、エチレンジアミン(HNCHCHNH)、および、N−メチルエチレンジアミン(HCNHCHCHNH)の少なくとも1つである、請求項5に記載のウェットエッチング調合物。
【請求項7】
前記錯化剤は、トリアミンを含む、請求項1に記載のウェットエッチング調合物。
【請求項8】
前記トリアミンは、ジエチレントリアミン(HNCHCHNHCHCHNH)である、請求項7に記載のウェットエッチング調合物。
【請求項9】
前記錯化剤は、テトラミンを含む、請求項1に記載のウェットエッチング調合物。
【請求項10】
前記テトラミンは、トリス(2−アミノエチル)アミン(N(CHCHNH)である、請求項9に記載のウェットエッチング調合物。
【請求項11】
前記水溶液は、エチレンジアミン、および、過酸化水素を含む、請求項1に記載のウェットエッチング調合物。
【請求項12】
前記ウェットエッチング調合物は、pHアジャスタを含む、請求項1に記載のウェットエッチング調合物。
【請求項13】
前記pHアジャスタは、硫酸を含む、請求項12に記載のウェットエッチング調合物。
【請求項14】
銅領域を含む半製品の半導体基板における銅含有部分をエッチングする方法であって、
(a)露出した銅領域を有する前記半製品の半導体基板を収容する段階と、
(b)前記半製品の半導体基板と、pH約5から12のウェットエッチ液とを接触させることにより、前記半製品の半導体基板上の銅をエッチングする段階と、
を備え、
前記ウェットエッチ液は、
(i)ジアミン、トリアミン、および、テトラミンからなるグループから選ばれる二座配位子、三座配位子、または、四座配位子の錯化剤と、
(ii)酸化剤と、
を含み、
前記基板と接触させることは、前記ウェットエッチ液を回転する基板に吹き付けること、接触スピン、および、前記基板と前記ウェットエッチ液とを薄膜リアクタ内で接触させること、からなるグループから選ばれる、
方法。
【請求項15】
前記ウェットエッチ液は、pHアジャスタをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記錯化剤は、ジアミンを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記ジアミンは、エチレンジアミン(HNCHCHNH)、または、N−メチルエチレンジアミン(HCNHCHCHNH)からなるグループから選ばれる、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記ウェットエッチ液は、エチレンジアミン、および、過酸化水素を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記ウェットエッチ液は、pHアジャスタをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ウェットエッチ液は、約6から10のpHを有する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記錯化剤は、トリアミンおよびテトラミンからなるグループから選ばれる、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
エッチングされた前記銅領域は、銅積載部分を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記銅は、少なくとも約1,000Å/分の速度でエッチングされる、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
前記エッチングする段階は、略等方的に行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
前記ウェットエッチ液の前記pHを上昇させることにより、前記エッチングする段階を停止させる段階をさらに備える、請求項14に記載の方法。
【請求項26】
前記ウェットエッチ液の前記pHを上昇させることは、前記ウェットエッチ液に塩基性pHアジャスタを添加することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記接触させることは、前記ウェットエッチ液を前記回転する基板に吹き付けることを含む、請求項14に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−49508(P2011−49508A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−207571(P2009−207571)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(501080848)ノベルス・システムズ・インコーポレーテッド (20)
【氏名又は名称原語表記】NOVELLUS SYSTEMS, INCORPORATED
【Fターム(参考)】