説明

粒状半導体の製造方法および製造装置

【課題】 所望の粒子径かつ均一粒子径の粒状半導体を高い生産性でもって再現性よく製造する製造装置および製造方法を提供すること。
【解決手段】 坩堝1のノズル部1aからシリコンの融液を粒状に排出して落下させるとともに、この粒状の融液を落下中に冷却して凝固させることによって粒状シリコンを製造する粒状シリコンの製造装置において、坩堝1を振動させる加振手段と、坩堝1内を加圧して融液を排出する加圧手段と、排出された融液を観察する観察手段4と、観察された融液の液滴の粒子径を所定の粒子径と比較して、液滴の粒子径が所定の粒子径よりも大きいときには加振手段による振動の振動数を上げ、液滴の粒子径が所定の粒子径よりも小さいときには加振手段による振動の振動数を下げるように制御する制御手段とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状半導体の製造方法および製造装置に関し、特に太陽電池を始めとする光電変換装置に用いられる粒状半導体結晶を得るのに好適な粒状半導体の製造方法、および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、光電変換装置の一つとして、結晶シリコンウエハを用いた光電変換効率(以下、変換効率ともいう)の高い太陽電池が実用化されている。この結晶シリコンウエハは、結晶性が良く、かつ不純物が少なくてその分布に偏りのない大型の単結晶あるいは多結晶シリコンインゴットから切り出されて作製されている。しかし、大型の単結晶あるいは多結晶シリコンインゴットは、作製するのに長時間を要するため生産性が悪く、そのためこれから切り出されるウエハは高価となるので、大型の単結晶あるいは多結晶シリコンインゴットを必要としない、高効率で低価格な次世代太陽電池の出現が強く望まれている。
そこで、今後の市場において有望な太陽電池の一つとして、光電変換手段の構成要素として粒状シリコン結晶を用いた光電変換装置が注目されている。
【0003】
現在、粒状シリコン結晶を作製するための原料としては、単結晶あるいは多結晶シリコン材料を粉砕した結果として発生するシリコンの微小粒子や、流動床法によって気相合成された高純度シリコン等が用いられている。これらの原料から粒状シリコン結晶を作製するには、それら原料をサイズあるいは重量によって分別した後に、赤外線や高周波を用いて容器内で溶融し、この溶融物を液滴(粒状の融液)として自由落下させる方法(例えば、特許文献1,特許文献2および特許文献4を参照。)がある。また、溶融したシリコンを飛散させて粒子状の結晶にする方法(例えば、特許文献3を参照。)もある。
【0004】
【特許文献1】国際公開第99/22048号パンフレット
【特許文献2】米国特許第4188177号明細書
【特許文献3】特開平5−78115号公報
【特許文献4】米国特許第6432330号明細書
【特許文献5】米国特許第6074476号明細書
【特許文献6】特開2002−292265号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの方法では、原料の重量の均一化が困難で生産性が低いという問題がある。原料の重量のバラツキは作られる粒状結晶の球の大きさに反映されるため、均一な重量の原料が必要とされるが、有効な大きさに対応する重量の原料を粉砕や分級等の手法で効率よく得ることは、金属シリコン材料においては困難である。さらに、粉砕をする工程において、粉砕メディアからのコンタミ(汚染)が生じることから、不純物の混入が避けられないという問題がある。さらに、高周波プラズマ加熱溶融装置は非常に大きな電源等が必要であり、装置コストが高く、使用電力が大きいことから生産コストも高いという問題がある。
これらの問題を解決する方法として、半導体材料を坩堝の中で一旦溶融し、それを排出すると同時に粒子化して粒状結晶を得る方法(例えば、特許文献5を参照。)が開示されている。また、坩堝のノズル部に振動を加えると共に、ノズル部から落下する融液を超音波等により振動させる方法が提案されている(例えば、特許文献6を参照。)。
しかしながら、特許文献5、6には、粒状結晶の粒子径ばらつきを制御する方法についての具体的記述はない。また、所望の粒子径に調整、制御する方法ついての具体的記述はない。粒状結晶の粒子径ばらつきが大きく、所望の球径から外れる場合、粒状結晶に電極を形成する工程等の光電変換素子化工程への対応が困難となり、大幅な生産性の低下、歩留まり低下に繋がるため、好ましくない。
従って、以上のような従来の技術においては、粒状半導体の製造装置および製造方法の生産性が低く、作製された粒状半導体の粒子径ばらつきが大きく、作製された粒状半導体の粒子径が所望の粒子径から外れ、しかもコストが高いものとなるという問題点があった。
本発明の課題は、高い生産性を有するとともに、所望の粒子径で均一な粒子径の粒状半導体を低コストで製造することができる粒状半導体の製造装置および製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、坩堝のノズル部からシリコンの融液を粒状に排出して落下させるとともに、この粒状の融液を落下中に冷却して凝固させる際、融液の液滴を観察する観察手段を用いて融液の液滴の粒子径を所定の粒子径と比較し、前記液滴の粒子径が前記所定の粒子径と異なるときには、前記坩堝を振動させる加振手段を用いて振動の振動数(周波数)を制御することにより、高い生産性で均一な粒子径の粒状半導体を製造できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明の粒状半導体の製造装置および製造方法は、以下の構成を有する。
(1)坩堝のノズル部から半導体の融液を粒状に排出して落下させるとともに、この粒状の融液を落下中に冷却して凝固させることによって粒状半導体を製造する粒状半導体の製造装置であって、前記坩堝を振動させる加振手段と、前記坩堝内を加圧して前記融液を排出する加圧手段と、排出された前記融液を観察する観察手段と、観察された前記融液の液滴の粒子径を所定の粒子径と比較して、前記液滴の粒子径が前記所定の粒子径よりも大きいときには前記加振手段による振動の振動数を上げ、前記液滴の粒子径が前記所定の粒子径よりも小さいときには前記加振手段による振動の振動数を下げるように制御する制御手段とを具備していることを特徴とする粒状半導体の製造装置。
(2)前記制御手段は、前記加振手段による振動の振動数を前記製造装置の共振振動数からずれるように制御することを特徴とする(1)に記載の粒状半導体の製造装置。
(3)前記制御手段は、前記ノズル部から連続する柱状を成して排出される前記融液の長さが、所定の長さよりも長いときには前記加圧手段の圧力を下げ、前記所定の長さよりも短いときには前記加圧手段の圧力を上げるように制御することを特徴とする(1)または(2)に記載の粒状半導体の製造装置。
(4)前記制御手段は、前記加圧手段の圧力を下げる際に前記加振手段による振動の振動数を下げ、前記加圧手段の圧力を上げる際に前記加振手段による振動の振動数を上げるように制御することを特徴とする(3)に記載の粒状半導体の製造装置。
(5)前記制御手段は、前記ノズル部から連続する柱状を成して排出される前記融液の径が、所定の径よりも大きいときには前記加振手段による振動の振動数を上げ、前記所定の径よりも小さいときには前記加振手段による振動の振動数を下げるように制御することを特徴とする(1)または(2)に記載の粒状半導体の製造装置。
(6)前記観察手段は、赤外線を減衰させる光学フィルタおよび撮像装置を有していることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の粒状半導体の製造装置。
(7)坩堝のノズル部から半導体の融液を粒状に排出して落下させるとともに、この粒状の融液を落下中に冷却して凝固させることによって粒状半導体を製造する粒状半導体の製造方法であって、前記坩堝のノズル部から半導体の融液を粒状に排出して落下させる際に前記坩堝を振動させるとともに前記坩堝内を加圧して前記融液を排出し、次に排出された前記融液を観察して前記融液の液滴の粒子径を所定の粒子径と比較して、前記液滴の粒子径が前記所定の粒子径よりも大きいときには前記坩堝を振動させる振動の振動数を上げ、前記液滴の粒子径が前記所定の粒子径よりも小さいときには振動数を下げるように制御することを特徴とする粒状半導体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の粒状半導体の製造装置は、(1)によれば、坩堝のノズル部から半導体の融液を粒状に排出して落下させるとともに、この粒状の融液を落下中に冷却して凝固させることによって粒状半導体を製造する粒状半導体の製造装置において、前記坩堝を振動させる加振手段と、前記坩堝内を加圧して前記融液を排出する加圧手段と、排出された前記融液を観察する観察手段と、観察された前記融液の液滴の粒子径を所定の粒子径と比較して、前記液滴の粒子径が前記所定の粒子径よりも大きいときには前記加振手段による振動の振動数を上げ、前記液滴の粒子径が前記所定の粒子径よりも小さいときには前記加振手段による振動の振動数を下げるように制御する制御手段とを具備することによって、半導体融液を所望の粒子径に均一に分裂させ冷却凝固させることにより、所望の粒子径かつ均一粒子径の半導体粒子を高い生産性でもって再現性よく製造することができる。
(2)によれば、上記構成において、前記制御手段が、前記加振手段による振動の振動数を前記製造装置の共振振動数からずれるように制御することにより、振動させたい振動数以外の振動の発生、特に高調波成分を抑制することができる。このことにより、液滴の均一分裂への悪影響を小さくすることができる。
(3)によれば、上記構成において、前記制御手段が、前記ノズル部から連続する柱状を成して排出される前記融液の長さが、所定の長さよりも長いときには前記加圧手段の圧力を下げ、所定の長さよりも短いときには前記加圧手段の圧力を上げるよう制御することにより、ノズル部から連続する柱状を成して排出される融液の長さが前者は短く、後者は長くなるため、常に所定の長さに制御することができる。このことにより、融液の排出量を一定に保つことができ、加振振動数での粒子径の制御をより容易にすることができる。その結果、粒状半導体の生産性の向上、品質の安定、低コスト化を図ることができる。
また、(4)によれば、前記制御手段が、前記加圧手段の圧力を下げる際に前記加振手段による振動の振動数を下げ、前記加圧手段の圧力を上げる際に前記加振手段による振動の振動数を上げるよう制御することにより、前者は粒子径が所望の大きさよりも大きいために粒子径を小さくする際に急激に小さくなるのを防ぐように補正することができ、後者は粒子径が所望の大きさよりも小さいために粒子径を大きくする際に急激に大きくなるのを防ぐように補正することができ、所望の粒子径を常に維持することができる。その結果、粒状半導体の生産性の向上、品質の安定、低コスト化を図ることができる。
(5)によれば、上記構成において、前記制御手段が、前記ノズル部から連続する柱状を成して排出される前記融液の径が、所定の径よりも大きいときには前記加振手段による振動の振動数を上げ、所定の径よりも小さいときには前記加振手段による振動の振動数を下げるよう制御することにより、前者は粒子径が小さくなるように補正することができ、後者は粒子径が大きくなるように補正することができ、所望の粒子径を常に維持することができる。その結果、粒状半導体の生産性の向上、品質の安定、低コスト化を図ることができる。
(6)によれば、上記構成において、前記観察手段が、赤外線を減衰させる光学フィルタおよび撮像装置を有していることにより、半導体融液の発光によるノイズを減衰させ、半導体融液の観察を明瞭に得ることができる。このことにより、制御手段へのフィードバックが適切に行われ、粒状半導体の製造における再現性の向上、品質の安定を図ることができる。
また、本発明の粒状半導体の製造方法は、(7)によれば、坩堝のノズル部から半導体融液を粒状に排出して落下させるとともに、この粒状の融液を落下中に冷却して凝固させることによって粒状半導体を製造する粒状半導体の製造方法において、前記坩堝のノズル部から半導体の融液を粒状に排出して落下させる際に前記坩堝を振動させるとともに前記坩堝内を加圧して前記融液を排出し、次に排出された前記融液を観察して前記融液の液滴の粒子径を所定の粒子径と比較して、前記液滴の粒子径が前記所定の粒子径よりも大きいときには前記坩堝を振動させる振動の振動数を上げ、前記液滴の粒子径が前記所定の粒子径よりも小さいときには振動数を下げるように制御することにより、半導体融液を所望の粒子径に均一に分裂させ冷却凝固させ、所望の粒子径かつ均一な粒子径の半導体粒子を高い生産性で製造できる。その結果、粒状半導体の量産性が向上し、粒状半導体の製造の低コスト化を図ることができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の粒状半導体の製造装置および製造方法の実施の形態の例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の粒状半導体の製造方法の実施の形態の一例における製造装置の概略構成を示す側断面図である。図1において、1は坩堝を、1aは坩堝1の底部に設けられたノズル部を、2は坩堝1の下方に向けて上下方向に配置された管を、3は坩堝1に設けた振動部(加振手段)を、4は粒状の融液を観察する観察手段、5は粒状半導体をそれぞれ示す。
この実施の形態の例では、半導体材料としてシリコンを用いた例について説明する。
【0010】
坩堝1は、所望のシリコン材料を加熱溶融してシリコン材料の融液とするとともに、底部のノズル部1aから粒状の融液として排出するための容器である。坩堝1内で加熱溶融した所望のシリコン材料の融液は、ノズル部1aより管2中へ排出され、粒状の融液となって管2の内部を落下する。坩堝1は所望のシリコン材料の融点より高い融点を有する材料から成る。また、シリコン材料の融液との反応が小さい材料であることが好ましく、シリコン材料の融液との反応が大きい場合には、坩堝1の材料が不純物としてシリコン材料の融液に溶出し、粒状シリコン中へ多量に混入することとなるため好ましくない。坩堝1は、例えば、シリコンとの反応性、高温安定性を考慮して、グラファイト,炭化ケイ素,石英,窒化ケイ素,酸窒化ケイ素,窒化ホウ素等の材料からなる。また、坩堝1においてシリコン材料を融点以上に加熱する加熱方法は、誘導加熱や抵抗加熱等が適当である。
【0011】
坩堝1のノズル部1aから下方に向けて上下方向に配置された管2は、ノズル部1aから排出された粒状のシリコンの融液を落下中に冷却して凝固させる容器である。この管2の内部は所望の雰囲気で所望の圧力に制御されている。この所望の雰囲気としては、ヘリウムまたはアルゴンが好ましい。ヘリウムまたはアルゴンは不活性ガスであり、粒状のシリコンの融液への雰囲気からの不純物混入を防ぐことができる。さらに、粒状のシリコンの融液との反応が小さく、粒状のシリコンの融液が凝固して結晶化する際の妨げとなる溶融したシリコン表面への反応層の形成が抑制できるため好ましい。また、上記圧力は、ガス流入量とガス排出量を調整することにより制御する。これにより、管2は、内部の雰囲気が所定のガスを用いて制御される。
【0012】
また、管2はシリコンの融点(1414℃)よりも高い融点を有する材料から成ることが好ましく、または管2自身を冷却するための冷却構造(図示せず)を有することが好ましい。管2の材料がシリコン材料の融点よりも高い融点を有するときは、粒状のシリコンの融液が斜め方向に排出されて管2の内壁に衝突したとしても、管2がその材料の融点以上に加熱されることはなく、管2の材料が衝突した粒状のシリコンの融液中へ不純物として混入することがない。また、管2の材料の融点がシリコンの融点よりも低いときには、粒状のシリコンの融液が斜め方向に排出されて管2の内壁に衝突した際に、管2がその材料の融点以上に加熱されることとなり、衝突した粒状のシリコンの融液中へ管2の材料が不純物として混入することがあるため好ましくない。この場合、管2にそれ自体を冷却するための水冷管等の冷却構造を付加して、粒状のシリコンの融液の衝突によって管2がその材料の融点以上に加熱されないようにすることで、不純物混入を回避して使用することが可能である。例えば、粒状半導体5の材料がシリコンであるときは、管2の材料はシリコンより高融点である炭素,炭化ケイ素,酸化ケイ素,窒化ケイ素,酸化アルミニウム等であることが好ましい。または、例えば二重管構造や水冷ジャケット等で水冷された管2の場合であれば、管2の材料はステンレス,アルミニウム等であることが好ましい。
【0013】
加振手段である振動部3は、坩堝1に振動を与える部位である。加振方法としては、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)を用いたセラミックアクチュエータ等からなる圧電式、コイルと振動軸等からなる電磁式がある。また、観察手段4の結果から振動数(周波数)を制御するため、振動部3は振動数を調整可能な構造とし、制御手段(図1には図示せず)に接続される。例えば、この制御手段は、観察手段4と振動部3とを結ぶ信号伝送線路上に設けられるものであり、マイクロコンピュータを含む電気(電子)回路装置、コンピュータ装置(端末)を含む電気(電子)装置等である。あるいは、観察手段4で得られた画像に基いて、人手によって加振手段3の振動数、振幅、加圧手段の圧力等を調整するものであってもよい。振動数の調整範囲としては、100Hzから30kHzまでが望ましい。例えば、振動部3の振動数を調整する方法としては、上記の圧電式や電磁式のものに入力する駆動信号の周波数を調整する方法がある。更に、振幅も調整可能な構造であればより好ましい。振幅の調整範囲としては、0.01μmから10mmまでが望ましい。例えば、振動部3の振幅を調整する方法としては、上記の圧電式や電磁式のものに入力する駆動信号の振幅を調整する方法がある。
また、振動部3は坩堝1の加熱されていない部分に接続し、坩堝1全体を振動させ、ノズル1aを含む加熱されている部分を振動させる構成が好ましい。また、振動部3を水冷管等で冷却し、室温付近に維持する構造を設けると、加える振動が安定となるため更に好ましい。振動は、上下の縦振動が好ましいが、縦振動に加えて横振動を重ねてもよい。横振動を重ねると、粒状の半導体の融液同士が衝突して大粒子化するのを有効に抑制することができる。
【0014】
観察手段4は、排出されるシリコンの融液を観察する手段であり、好ましくは、赤外線を減衰させる光学フィルタおよび撮像装置からなる。赤外線を減衰させる光学フィルタは、半導体の融液の発光によるノイズを減衰させ、シリコンの融液の観察を明瞭に得ることができるため好ましい。撮像装置としては、高速、高倍率、長焦点距離であるものが好ましい。シリコンの融液の排出速度が0.5m/sから50m/sと大きいため、シリコンの融液の液滴径を明瞭に観察するには、例えばシャッタースピード1/10000以下の高速度カメラが好ましい。また、シリコンの融液の液滴径は0.1mmから2mmと小さいため、液滴径を明瞭に観察するには、例えば10倍以上の高倍率カメラが好ましい。また、例えばシリコンの融点は1414℃と高温であるため、離れた場所から観察する必要があるため、長焦点距離カメラが好ましい。
【0015】
前記撮像装置によりシリコンの融液の液滴の画像データを取り込み、その画像データの分析結果からシリコンの融液の液滴径を算出して、振動部3の振動数に対して、算出された液滴径に対応する所定の変調を加える自動制御システムを、前記制御手段に付加して用いることができる。これによれば、粒子径の均一な粒状シリコンを効率よく高い量産性をもって製造することが可能である。なお、液滴径の測定装置として、レーザ光の散乱を利用した粒子径測定装置を用いることができる。
【0016】
本発明の粒状半導体の製造装置は、上記したように、排出された融液を観察する観察手段4と、観察された融液の液滴の粒子径を所定の粒子径と比較して、液滴の粒子径が所定の粒子径よりも大きいときには加振手段3による振動の振動数を上げ、液滴の粒子径が所定の粒子径よりも小さいときには加振手段3による振動の振動数を下げるように制御する制御手段とを有する。
振動数を上げることで粒子径を小さい方へ調整し、振動数を下げることで粒子径を大きいほうへ調整することができる。このことから、半導体がシリコンの場合、シリコンの融液を所望の粒子径に均一に分裂させ、冷却凝固させることにより、所望の粒子径をもちかつ均一な粒子径の粒状シリコンを高い生産性でもって再現性よく製造することができる。例えば、所望の粒子径が500μmであり、観察される液滴の粒子径とシリコンの体積膨張から制御前の粒状シリコンの粒子径が550μmであるとき、振動数は、3.1kHzから4kHz、すなわち振動数を1.3倍に上げることで所望の粒子径500μmを得ることができる。
【0017】
また、制御手段が、加振手段3による振動の振動数を製造装置の共振振動数からずれるように制御することが好ましい。振動させたい振動数以外の振動の発生、特に高調波成分を抑制することができるため好ましい。このことにより、液滴の均一分裂への悪影響を小さくすることができる。また、坩堝1の共振ノイズは避けることが困難であるため、坩堝1の共振振動数を利用することも可能である。この場合、製造装置内の水冷部,原料投入部,ガス導入部,ねじ等の固定部材,床,安全枠等の共振振動がノイズとなるため、防振構造の設置、振動部3と固定部の分離等を行って、振動部3への共振ノイズを低減させておくことが好ましい。
【0018】
また、制御手段が、ノズル部1aから連続する柱状を成して排出される融液の長さが、所定の長さよりも長いときには加圧手段(図1では図示せず)の圧力を下げ、所定の長さよりも短いときには加圧手段の圧力を上げるよう制御することが好ましい。ノズル部から連続する柱状を成して排出される融液の長さが前者は短くなり、後者は長くなるため、常に所定の長さに制御することができる。このことにより、融液の排出量を一定に保つことができ、加振手段3の振動数による粒子径制御をより容易にすることができるため好ましい。なお、加圧手段は、油圧式や電動式のピストン及びシリンダーを有するもの、圧縮ポンプ等である。また、加圧手段の圧力は通常は0.2MPa程度(通常値)であり、圧力を変化させる場合、通常値を中心にして−0.19〜+0.2MPa程度変化させる。
また、柱状を成して排出されるシリコンの融液を観察することで、排出される流速、擾乱、異常排出、排出径を正確かつ速やかに知ることができるため好ましい。滴下状、噴霧状、波状の融液排出状態では、流速や異常が正確に把握できない場合があるため好ましくない。更に、坩堝1を振動させる方式の場合、柱状を成して排出されるシリコンの融液の方が、振動による圧力波をノイズによる影響を小さくして、きれいに融液に伝えやすく、振動数に従った均一分裂をしやすいため、より好ましい。
【0019】
また、制御手段が、加圧手段の圧力を下げる際に加振手段による振動の振動数を下げ、加圧手段の圧力を上げる際に加振手段による振動の振動数を上げるよう制御することが好ましい。この場合、前者は圧力を下げることにより流速を下げて、粒子径を小さくする際に、粒子径が急激に小さくなるのを振動数を下げることで緩和し、微調整の補正をすることができ、後者は圧力を上げることにより流速を上げて、粒子径を大きくする際に、粒子径が急激に大きくなるのを振動数を上げることで緩和し、微調整の補正をすることができ、所望の粒子径を常に維持することができるため好ましい。
【0020】
また、制御手段が、ノズル部から連続する柱状を成して排出される融液の径が、所定の径よりも大きいときには加振手段による振動の振動数を上げ、所定の径よりも小さいときには加振手段による振動の振動数を下げるよう制御することが好ましい。前者は粒子径が所定の径よりも大きい場合に小さくなるように補正することができ、後者は粒子径が所定の径よりも小さい場合に大きくなるように補正することができ、所望の粒子径で常に維持することができるため好ましい。
【0021】
所望の粒子径で均一な粒子径のシリコンの液滴とし、管2中を落下しながら熱を放出し凝固することで、量産性および生産性の高い製造装置が実現できる。また、冷却凝固が一定条件で行われるため、結晶品質のばらつきが小さい粒状シリコンを得ることができる。更に、例えば凝固時の温度勾配を制御するために石英管の外に設置する予備ヒーターの位置や、得られた多結晶状態の粒状シリコンをさらに単結晶にするための再溶融工程での条件の設定が容易になる。また、均一粒子径であることで、別途機械的研磨やエッチングによって粒子径揃える工程が不要となる。また、光電変換素子化等の工程においても、処理ばらつきも小さくなることから、条件の設定が容易になる。さらに、電気特性、変換効率においても、シリコン球の配列密度を上げることができるため電流密度の向上、品質ばらつきが小さくなることによる開放電圧、フィルファクタの向上によって、高効率の変換効率の特性を得ることができる。
【0022】
なお、本発明は以上の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の変更を加えても何ら差し支えない。
また、以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明の粒状半導体の製造装置および製造方法を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0023】
本発明の粒状半導体の製造方法の具体例を、図1に示した例に基づいて説明する。
まず、坩堝1をグラファイトで形成し、ノズル部1aの厚みを1mm、開口部の直径を150μmとした。半導体材料としてp型ドーパントとしてホウ素を5×1016原子/cm3添加したシリコンを500g、坩堝1内へ入れ、坩堝1を抵抗加熱ヒーターによって加熱した。そして、シリコン溶融時の坩堝1の温度が1460℃になるように加熱のために供給するエネルギーを調節した。
次に、電磁式の加振手段3(VTS社製加振装置)を用いて坩堝1を800μmの振幅、4800Hzの振動数で上下振動させるとともに、坩堝1内の融液の表面に、坩堝1内の雰囲気ガスとしてアルゴン等の不活性ガスを用いて、例えば0.3MPa加圧して圧力を加え、ノズル部1aから管2の内部へシリコンの融液を排出した。
そして、シリコンの粒状の融液を管2の内部を落下させ、冷却して凝固させ、シリコンの粒状半導体5を得た。このときの初期状態は、観察手段4(日機装社製粒度分布測定装置)による測定の結果、シリコンの液滴径が700μm、柱状シリコン融液の長さが5mm、柱状シリコン融液の径が250μmであった。所望の粒子径である設計粒子径としては700μm±30μmとした。その後、シリコンの液滴径が680μmへと変化したので、4400Hzへ振動数を変化させ、更に2回振動数を調整した。このようにして、実施例のシリコンの粒状半導体5を作製した。
比較例として、振動数を変化させなかった以外は前記と同様の条件にてシリコンの粒状半導体5を作製した。
【0024】
以上の本発明の実施例により得たシリコンの粒状半導体5と、比較例により得たシリコンの粒状半導体5について、粒度分布を評価した。粒度分布の測定には、レーザ回折・散乱式測定装置(日機装社製粒度分布測定装置)を用いて行った。平均粒子径は、横軸に粒子径D(μm)、縦軸にQ%(その粒子径以下の粒子が存在する割合で単位は粒子の体積%)をとった累積粒度曲線において、Q%=50%に対応する粒子径D50の値をとった。
評価の結果、本発明の実施例では平均粒子径697μm、標準偏差12μm(平均粒子径の1.7%)であり、比較例では平均粒子径655μm、標準偏差58μm(平均粒子径の8.9%)であった。
この結果より、本発明の実施例により得たシリコンの粒状半導体5においては、比較例により得たシリコンの粒状半導体5に比較して、粒子径ばらつきが小さく、設計粒子径に近いものであることが確認できた。すなわち、この結果は、本発明の粒状半導体の製造装置及び製造方法によれば、所望の粒子径かつ均一粒子径の粒状半導体5を高い生産性でもって再現性よく製造することができることを示すものであった。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の粒状半導体の製造方法の実施の形態の一例における製造装置の概略構成を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1・・・坩堝
1a・・ノズル部
2・・・管
3・・・振動部(加振手段)
4・・・観察手段
5・・・粒状半導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
坩堝のノズル部から半導体の融液を粒状に排出して落下させるとともに、この粒状の融液を落下中に冷却して凝固させることによって粒状半導体を製造する粒状半導体の製造装置であって、前記坩堝を振動させる加振手段と、前記坩堝内を加圧して前記融液を排出する加圧手段と、排出された前記融液を観察する観察手段と、観察された前記融液の液滴の粒子径を所定の粒子径と比較して、前記液滴の粒子径が前記所定の粒子径よりも大きいときには前記加振手段による振動の振動数を上げ、前記液滴の粒子径が前記所定の粒子径よりも小さいときには前記加振手段による振動の振動数を下げるように制御する制御手段とを具備していることを特徴とする粒状半導体の製造装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記加振手段による振動の振動数を前記製造装置の共振振動数からずれるように制御することを特徴とする請求項1記載の粒状半導体の製造装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記ノズル部から連続する柱状を成して排出される前記融液の長さが、所定の長さよりも長いときには前記加圧手段の圧力を下げ、前記所定の長さよりも短いときには前記加圧手段の圧力を上げるように制御することを特徴とする請求項1または請求項2記載の粒状半導体の製造装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記加圧手段の圧力を下げる際に前記加振手段による振動の振動数を下げ、前記加圧手段の圧力を上げる際に前記加振手段による振動の振動数を上げるように制御することを特徴とする請求項3記載の粒状半導体の製造装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記ノズル部から連続する柱状を成して排出される前記融液の径が、所定の径よりも大きいときには前記加振手段による振動の振動数を上げ、前記所定の径よりも小さいときには前記加振手段による振動の振動数を下げるように制御することを特徴とする請求項1または請求項2記載の粒状半導体の製造装置。
【請求項6】
前記観察手段は、赤外線を減衰させる光学フィルタおよび撮像装置を有していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の粒状半導体の製造装置。
【請求項7】
坩堝のノズル部から半導体の融液を粒状に排出して落下させるとともに、この粒状の融液を落下中に冷却して凝固させることによって粒状半導体を製造する粒状半導体の製造方法であって、前記坩堝のノズル部から半導体の融液を粒状に排出して落下させる際に前記坩堝を振動させるとともに前記坩堝内を加圧して前記融液を排出し、次に排出された前記融液を観察して前記融液の液滴の粒子径を所定の粒子径と比較して、前記液滴の粒子径が前記所定の粒子径よりも大きいときには前記坩堝を振動させる振動の振動数を上げ、前記液滴の粒子径が前記所定の粒子径よりも小さいときには振動数を下げるように制御することを特徴とする粒状半導体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−210834(P2007−210834A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−32096(P2006−32096)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】