説明

紫外線照射装置及びその消灯時制御方法

【課題】低圧蒸気放電灯の消灯時に冷却ベース部の温度及び発光管部の温度を適切に制御する。
【解決手段】発光管部(10)の端部に発光管内の水銀蒸気圧を制御するための冷却ベース部(15)を備えた低圧水銀蒸気放電灯(17)、冷却ベース部を冷却する第一の冷却装置(31)、発光管部を冷却する第二の冷却装置(32)、点灯信号及び消灯信号を受けて低圧水銀蒸気放電灯の点灯及び消灯を行なう点灯装置(20)、並びに第一の冷却装置、第二の冷却装置及び点灯装置を制御する制御部(40)を備えた紫外線照射装置において、制御部が、消灯信号を受けると、放電灯を点灯させたまま冷却ベース部の温度と発光管部の温度の温度勾配が小さくなるように第一の冷却装置及び第二の冷却装置の動作状態を制御した後に、点灯装置に低圧水銀蒸気放電灯を消灯させるよう構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短波長紫外線を利用して殺菌や光改質等を行う低圧水銀蒸気放電灯を照射する紫外線照射装置及びその消灯時制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
波長185nmや254nmなどの短波長紫外線を効率良く放射する光源として、低圧水銀蒸気放電灯(以下、「放電灯」という)が用いられている。この放電灯を用いた紫外線照射装置は、空気、水、食品等の殺菌分野、光改質の原理を応用した有機物分解、オゾン洗浄、光アッシング等の半導体製造関連において利用されてきている。
【0003】
これらの分野では、上記紫外線作用による処理の高速化のため、放電灯の高出力化が求められている。この高出力タイプの放電灯は、放電電流密度を上げて出力を増加させているため、点灯中発光管内部の温度が上昇し、水銀蒸気圧が過剰となる。その結果、水銀原子の自己吸収が起こり、上記短波長の発光効率が著しく低下する。そのため、特許文献1に記載されているように発光管の一部を冷却して水銀蒸気圧が制御される。
【0004】
具体的には、図2に示すように、放電灯17の一部にアルミ材などからなる冷却ベース(金属ベース部)15が固着され、金属冷却ブロック31に冷却ベース部15が密着させるように設置される。この金属冷却ブロックは循環水冷方式などにより、温度が40℃程度に安定するよう制御される。
【0005】
また、発光管内に電流密度が1.0〜5.0A/cm程度の電流が流れるため、発光管表面は150℃程度まで上昇し、照射装置内の温度も上昇させてしまう。この温度上昇は、紫外線照射面の被照射物に対して影響し、被照射物の材質によっては形状の変形、歪みなどの不具合を生じてしまう。
【0006】
さらに、放電灯から放射される波長185nmの紫外線は空気中の酸素Oを分解する。分解されて不安定な状態となった酸素原子Oは周囲の酸素Oと結合して人体に有害なオゾンOとなる。
そのため、照射装置においては放電灯の管壁、及び照射装置内の冷却と、O排出の目的で紫外線照射部より空気を排出する空冷が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許4280841号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、冷却ベースの冷却と発光管部の空冷が放電灯の始動性に悪影響を及ぼすことがあることが分かった。
点灯中に放電灯の発光管内で水銀蒸気となっている水銀原子は、放電灯消灯後の水銀蒸気圧の低下に伴い発光管内で液化し始める。ここで、液化を開始する箇所は発光管内の最も温度が低い最冷部である。そのため発光管の温度分布が一様でないと水銀の液化分布が偏った分布となり、高温部と最冷部の温度勾配が大きいほど水銀の液化分布の偏りも大きくなってしまう。
【0009】
放電灯の発光管内にはネオンやアルゴンなどの不活性ガスが封入されている。これは、不活性ガス原子の電子との衝突による励起、及びエネルギー準位安定化による電子の放出と、水銀原子の励起した不活性ガス原子との衝突によるイオン化の際の電子放出や自由電子との衝突により、なだれ効果的に電子の流れをつくるペニング効果と呼ばれる現象が、放電灯点灯時の放電空間の絶縁破壊に大きな役割を果たすことによる。このため、前述したように放電空間内の水銀分布の偏りが非常に大きく、放電空間内に存在する水銀が過少となっている場合、前記ペニング効果が充分に活かされず絶縁破壊が困難となり、結果として放電灯の始動不良を引き起こしてしまう。
従って、放電灯の次回点灯における確実な始動のために、消灯時に冷却ベース部の温度及び発光管部の温度を適切に制御しておく必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の側面は、発光管部(10)の端部に発光管内の水銀蒸気圧を制御するための冷却ベース部(15)を備えた低圧水銀蒸気放電灯(17)、冷却ベース部を冷却する第一の冷却装置(31)、発光管部を冷却する第二の冷却装置(32)、点灯信号及び消灯信号を受けて低圧水銀蒸気放電灯の点灯及び消灯を行なう点灯装置(20)、並びに第一の冷却装置、第二の冷却装置及び点灯装置を制御する制御部(40)を備えた紫外線照射装置において、制御部が、消灯信号を受けると、放電灯を点灯させたまま冷却ベース部の温度と発光管部の温度の温度勾配が小さくなるように第一の冷却装置及び第二の冷却装置の動作状態を制御した後に、点灯装置に低圧水銀蒸気放電灯を消灯させるよう構成された紫外線照射装置である。
【0011】
一実施例では、制御部が、消灯信号を受けると、第一の冷却装置の冷却能力を安定点灯時よりも低下させ、又は第一の冷却装置を停止させてから、点灯装置に低圧水銀蒸気放電灯を消灯させるよう構成される。
他の実施例では、制御部が、消灯信号を受けると、第二の冷却装置の冷却能力を安定点灯時よりも上昇させてから、点灯装置に低圧水銀蒸気放電灯を消灯するよう構成される。
さらに他の実施例では、制御部が、消灯信号を受けると、第一の冷却装置の冷却能力を安定点灯時よりも低下させ、又は第一の冷却装置を停止させるとともに、第二の冷却装置の冷却能力を安定点灯時よりも上昇させてから、点灯装置に低圧水銀蒸気放電灯を消灯するよう構成される。
【0012】
本発明の第2の側面は、発光管部(10)の端部に発光管内の水銀蒸気圧を制御するための冷却ベース部(15)を備えた低圧水銀蒸気放電灯(17)の消灯時制御の方法であって、(S1)制御部(40)が消灯信号を受けるステップ、(S2)制御部が、放電灯を点灯させたまま冷却ベース部を冷却する第一の冷却装置(31)及び発光管部を冷却する第二の冷却装置(32)を、冷却ベース部の温度と発光管部の温度の温度勾配が小さくなるように制御するステップ、及び(S3)制御部が点灯装置に低圧水銀蒸気放電灯を消灯させるステップを備える方法である。
【0013】
上記において、ステップ(S2)は、(S21)第一の冷却装置の冷却能力を安定点灯時よりも低下させ、又は第一の冷却装置を停止させるステップからなっていてもよいし、(S22)第二の冷却装置の冷却能力を安定点灯時よりも上昇させるステップからなっていてもよい。
また、上記ステップ(S21)と(S22)を並行して行なってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】低圧水銀蒸気放電灯を示す図である。
【図2】紫外線照射装置内の紫外線照射部を示す図である。
【図3】本発明第1の実施例による消灯方法での低圧水銀蒸気放電灯の発光管と冷却ベース部の温度変化を示す図である。
【図4】本発明第2の実施例による消灯方法での低圧水銀蒸気放電灯の発光管と冷却ベース部の温度変化を示す図である。
【図5】本発明第3の実施例による消灯方法での低圧水銀蒸気放電灯の発光管と冷却ベース部の温度変化を示す図である。
【図6】本発明による消灯方法のフローチャートである。
【図7】従来の消灯方法での低圧水銀蒸気放電灯の発光管と冷却ベース部の温度変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<本発明の概要>
図1は本発明の紫外線照射装置に設置される低圧水銀蒸気放電灯(以下、「放電灯」という)である。
放電灯17は、石英材料からなる発光管部10、放電灯17の電極となるフィラメント11及び12、放電時にフィラメント電極の損耗を軽減するようフィラメント電極よりも前方に突き出し、放電電子を受けるよう設置されたタングステンやタンタルなどの金属からなる陽極13及び14、発光管端部を冷却制御するためのアルミなどの金属材料からなる冷却ベース15、並びに電力供給線16から構成されている。電力供給線16は図2に示す放電灯点灯装置20(以下、「点灯装置20」という)に接続される。点灯装置20は点灯信号及び消灯信号を受けて放電灯17を点灯又は消灯する。なお、このような放電灯には、発光管が直管で、その両端に冷却ベースを有しているタイプのものもあるが、本開示においては、図1に示すように発光管部をU字型に曲げて電極が封入された発光管端部を互いに近づけた構成として冷却ベースが1つで済むようにしたタイプを用いて説明する。
【0016】
この放電灯に関する動作は以下の通りである。放電灯始動時には、電力供給線16に接続された点灯装置20から無負荷電圧と呼ばれる電極間の絶縁破壊を引き起こすための高電圧が印加される。この高電圧の値は放電灯の発光管長さ、発光管内の不活性ガス圧力などにより変わるが、一般的には300V程度から1000V程度である。
【0017】
発光管内の放電空間が無負荷電圧により絶縁破壊されると、点灯装置20の出力電圧は放電灯の両端電圧まで低下し、また放電灯17は点灯装置20から供給される電力により、グロー放電を経てアーク放電に至り安定点灯状態となる。
【0018】
放電灯17の安定点灯中は、図2に示すように、発光管部10が空冷装置32によって空冷され、また、冷却ベース部15が冷却ブロック31の水冷により冷却され、冷却ブロック31が所望の温度に温度制御される。
前述したとおり、放電灯17の安定点灯中は発光管部10の温度が上昇し、放電灯の点灯電力にもよるが冷却を行わないと管壁温度が150℃程度まで上昇してしまい、被照射物に熱による不具合を生じさせてしまう。また、発光管周辺部からはOが発生するため、O排出と冷却を目的として、排気ダクト33を含む空冷装置32によって紫外線照射部から空気を排出する空冷が行われ、放電灯17の管壁温度が100℃〜120℃程度に制御される。
【0019】
また、放電灯17の発光管内の水銀蒸気圧は、発光管部10の最冷部温度により決定されるため、水銀蒸気圧を制御することで点灯を安定させ、また放電灯の発光効率を向上させることも可能となる。一般的には、この発光効率が最もよくなるのは35℃〜45℃程度であり、冷却ベース部15が設置された冷却ブロック31は水冷により40℃程度に温度制御される。
【0020】
紫外線照射装置による処理が終了すると、放電灯17を消灯することになるが、消灯後は紫外線照射部に被照射物がなくなり、またOの発生もなくなるため一般的には放電灯17の消灯に同期して空冷装置32による空冷も停止されることになる。図7は放電灯消灯後に空冷装置32及び冷却ブロック31を停止したときの発光管部10及び冷却ベース部15の温度変化を示すものである。放電灯17の管壁は消灯により点灯時と比較してその温度は若干低下するが、紫外線照射装置内部に点灯時の放射熱が蓄えられているため、放電灯17の管壁温度が低下するのに時間を要してしまう。
そのため、図7のような制御を行うと、発光管部と冷却ベース部の温度勾配が大きい状態が維持され、発光管内の水銀蒸気圧低下に伴って液化する水銀は温度の低い冷却ベース部15側に偏って析出することになる。
【0021】
仮に、消灯後に空冷装置32の空冷を継続動作させたとしても、冷却ベース部15が40℃程度の温度であったのに対して、発光管部10の温度は100℃以上の状態から徐々に低下していくので、やはり液化する水銀は温度の低い冷却ベース部15側に偏って析出することになる。
【0022】
そこで、本発明においては、制御部40が消灯信号を受けると、冷却ベース部15の温度と発光管部10の温度の温度勾配が小さくなるように冷却ブロック31(第一の冷却装置)及び空冷装置32(第二の冷却装置)の動作状態を制御した後に、点灯装置20に放電灯17を消灯させるよう制御部40が構成される。
【実施例1】
【0023】
本実施例では、放電灯17を消灯する際、冷却ベース部15を冷却している冷却ブロック31の冷却能力を停止する期間を設けてから消灯するようにした。
【0024】
制御部40に消灯信号が入力されると、制御部40は放電灯17を点灯させかつ空冷装置32の冷却能力を維持した状態で冷却ブロック31による冷却を停止し、この状態を3分間維持する。図3は本実施例における冷却ベース部15及び発光管部10の温度変化を示すものである。これにより40℃程度に温度制御されていた冷却ベース部15の温度は、他の条件にもよるが60℃から70℃程度まで上昇することになる。
【0025】
その後、放電灯17を消灯する際に、上記の結果として消灯直後の発光管部10と冷却ベース部15付近との温度勾配(温度差)が図7に示す従来の消灯方法の場合と比較して20℃〜30℃小さくなり、発光管内水銀の液化する位置の偏りを小さくすることができる。なお、冷却ブロック31を停止せずに冷却能力を低下させるだけでも上記効果が得られることを注記しておく。
【0026】
本実施例による、放電灯の再始動性の改善効果を確認するため、発明者らは次のような実験を行った。
まず、本実施例を再現するため紫外線照射装置、低圧水銀蒸気放電灯、及び点灯装置を準備した。紫外線照射装置は、前記したように紫外線照射部をファンにより空冷可能とし、また冷却ベース部を取り付けて、水冷するための冷却ブロックを備えたものである。点灯装置は放電灯を始動させるための無負荷電圧を可変としたものであり、通常は放電灯の始動のために矩形波の760Vを出力するものであるが、本試験においては放電灯の始動性を低下させ、強制的に再点灯時の不点灯を発生させ易くするためにその出力無負荷電圧を500Vとした。
【0027】
放電灯は点灯させてから30分以上安定点灯を維持して発光管部、及び冷却ベース部の温度が安定するようにし、その後従来の消灯方法(図7参照)と、本実施例の消灯方法(図3参照)を実行し、消灯して10分経過後に放電灯を再点灯させた時の点灯確率を比較した。実験に使用した低圧水銀蒸気放電灯は定格電力800Wのものであり、5000時間以上を点灯し、新品のものと比較すると始動性が低下しているもの5本を用いて、上記実験を5本のランプそれぞれについて3回、延べ15回ずつの実験を行った。
【0028】
すると、従来の消灯方法では再点灯時に15回中4回の不点灯が発生したのに対して、本実施例の消灯方法では、再点灯時の不点灯は15回中0回であった。
この結果から、本発明が紫外線照射装置における放電灯の消灯後の温度勾配に起因する水銀液化位地の偏りによる再点灯性の悪化に対して、充分な改善効果が得られることが確認できた。
【実施例2】
【0029】
本実施例では、放電灯17を消灯する際、発光管部10を冷却している空冷装置32の冷却能力を安定点灯時よりも上げ、それを維持する期間を設けてから消灯するようにし、消灯後も所定の期間は空冷装置32による空冷を継続するようにした。
【0030】
制御部40に消灯信号が入力されると、制御部40は放電灯17を点灯させかつ冷却ブロックの冷却能力を維持した状態で空冷装置32による冷却を強め、この状態を3分間維持する。図4は本実施例における冷却ベース部15及び発光管部10の温度変化を示すものである。具体的には、安定点灯時における紫外線照射部からの排気量を5.0m/分に設定し、冷却を強めた時の排気量を10.0m/分とした。これにより安定点灯時は発光管の管壁温度が約120℃であるのに対し、冷却を強めて3分経過後の発光管管壁温度は約100℃まで低下する。
【0031】
その後、放電灯17を消灯する際、消灯直後の管壁温度が従来の消灯方法(図7参照)と比較して約20℃低く、また消灯後の冷却が強められているので発光管管壁温度も急速に低下する。この結果として、消灯後の発光管部10と冷却ベース部15付近との温度勾配が小さくなり、発光管内水銀の液化する位置の偏りを小さくすることができる。
【0032】
本実施例による、放電灯の再始動性の改善効果を確認するため、発明者らは実施例1における実験と同様の実験を行った。本実施例においても実施例1と同様の結果が得られ、本発明が紫外線照射装置における消灯後の温度勾配に起因する水銀液化位地の偏りによる再点灯性の悪化に対して、充分な改善効果が得られることが確認できた。
【実施例3】
【0033】
本実施例は、上記実施例1と実施例2を組み合わせ、放電灯の消灯前の冷却能力変更期間を短縮したものである。
本実施例においては、放電灯を消灯する際、冷却ベース部15を冷却している冷却ブロック31の冷却能力を停止する期間を設け、なおかつ発光管部10を冷却している空冷装置32の冷却能力を安定点灯時よりも上げ、それを維持する期間を設けてから放電灯17を消灯するようにし、消灯後も所定の期間は空冷装置32による空冷を継続するようにした。
【0034】
制御部40に消灯信号が入力されると、制御部40は放電灯17を点灯させたまま冷却ブロック31による冷却を停止し、かつ空冷装置32の冷却を強め、この状態を2分間維持する。図5は本実施例における冷却ベース部15及び発光管部10の温度変化を示すものである。これにより40℃程度に温度制御されていた冷却ベース部15の温度は、他の条件にもよるが50℃から60℃程度まで上昇することになる。一方、安定点灯時における紫外線照射部からの排気量を5.0m/分に設定し、冷却を強めた時の排気量を10.0m/分とした。これにより安定点灯時は発光管管壁温度が約120℃であるのに対し、冷却を強めて2分経過後の発光管管壁温度は105℃〜110℃まで低下する。
【0035】
その後、放電灯17を消灯する際、消灯直後の冷却ベース部15付近の温度が、従来の消灯方法(図7参照)と比較して20℃〜30℃高く、さらに消灯直後の発光管管壁温度が従来の消灯方法と比較して約20℃低いので、従来消灯方法と比較して冷却ベース部付近と発光管管壁の温度差が40℃〜50℃小さくなる。さらに消灯後の発光管部10の冷却が強められているので発光管管壁温度も急速に低下する。この結果として、消灯後も発光管部10と冷却ベース部15付近との温度勾配が小さくなり、発光管内水銀の液化する位置の偏りを小さくすることができる。
【0036】
本実施例による、放電灯の再始動性の改善効果を確認するため、発明者らは実施例1及び実施例2にある実験と同様の実験を行った。本実施例においても実施例1及び実施例2と同様の結果が得られ、本発明が紫外線照射装置における低圧水銀蒸気放電灯の消灯後の温度勾配に起因する水銀液化位地の偏りによる再点灯性の悪化に対して、充分な改善効果が得られることが確認できた。
【0037】
以上より、低圧水銀蒸気放電灯の再点灯時の始動性を向上させることが可能となった。
【0038】
図6に上述の消灯時制御の方法のフローチャートを示す。
ステップS1において、制御部40に消灯信号が入力される。
ステップS2において、制御部40が、放電灯17を点灯させたままの状態で冷却ブロック31及び空冷装置32を、冷却ベース部15と発光管部10の温度の温度勾配小さくなるように制御する。
ステップS3において、制御部40が点灯装置20に放電灯17を消灯させる。
【0039】
上記において、ステップS2が、冷却ブロック31の冷却能力を安定点灯時よりも低下させ、又は冷却ブロック17を停止させるステップS21からなっていてもよいし、ステップS2が、空冷装置32の冷却能力を安定点灯時よりも上昇させるステップS22からなっていてもよい。
なお、ステップS21とステップS22を並行して行なってもよい。これにより消灯信号が入力されてから実際に放電灯を消灯するまでの期間を短縮することができる。ステップS21及びS22を並行して行なう場合のステップS2の期間は、ステップS21又はS22を単独で採用する場合の3分の2程度である。
【0040】
なお、上記実施例は本発明の最も好適な例として示したものであるが、それに関連して以下を注記しておく。
(1)低圧水銀蒸気放電灯については、熱陰極方式、冷陰極方式、その他の方式であればよい。また、発光管の形状は任意であり開示したものに限定されない。
(2)冷却ベース部の形状、材料等は任意に選択され、開示したものに限定されない。
(3)冷却ベース部を冷却する冷却ブロックの冷却手段については、冷却能力を可変であれば水冷、空冷、及びその他のいずれの冷却手段でも構わない。
(4)放電灯の点灯装置については、その回路方式、放電灯点灯波形、放電灯点灯周波数などの仕様は適宜選択される。
(5)実施例では、消灯前後の「冷却ブロックの冷却能力/空冷装置の冷却能力」の関係について、「低下(停止)/維持」(実施例1)、「維持/上昇」(実施例2)、及び「低下(停止)/上昇」(実施例3)の組合せを示したが、結果として冷却ベース部の温度と発光管部の温度の温度勾配が小さくなるのであれば、例えば「上昇/上昇」の組合せとしてもよい。即ち、この場合、冷却ブロックの冷却能力の上昇レベルよりも空冷装置の冷却能力の上昇レベルが上回れば本発明の効果が得られる。また、「低下/低下」の組合せについても同様に可能である。
(6)本実施例では主に消灯直前の冷却ブロック及び空冷装置の種々の動作を説明したが、同様の各動作を消灯直後にも適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
10:発光管(部)
11、12:フィラメント電極
13、14:陽極
15:冷却ベース(部)
16:電力供給線
17:低圧水銀蒸気放電灯
20:放電灯点灯装置
30:紫外線被照射物
31:冷却ブロック
32:空冷装置
33:排気ダクト
40:制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光管部(10)の端部に発光管内の水銀蒸気圧を制御するための冷却ベース部(15)を備えた低圧水銀蒸気放電灯(17)、前記冷却ベース部を冷却する第一の冷却装置(31)、前記発光管部を冷却する第二の冷却装置(32)、点灯信号及び消灯信号を受けて前記低圧水銀蒸気放電灯の点灯及び消灯を行なう点灯装置(20)、並びに前記第一の冷却装置、前記第二の冷却装置及び前記点灯装置を制御する制御部(40)を備えた紫外線照射装置において、
前記制御部が、消灯信号を受けると、前記放電灯を点灯させたまま前記冷却ベース部の温度と前記発光管部の温度の温度勾配が小さくなるように前記第一の冷却装置及び前記第二の冷却装置の動作状態を制御した後に、前記点灯装置に前記低圧水銀蒸気放電灯を消灯させるよう構成された紫外線照射装置。
【請求項2】
請求項1の紫外線照射装置において、前記制御部が、前記消灯信号を受けると、前記第一の冷却装置の冷却能力を安定点灯時よりも低下させ、又は前記第一の冷却装置を停止させてから、前記点灯装置に前記低圧水銀蒸気放電灯を消灯させるよう構成された紫外線照射装置。
【請求項3】
請求項1の紫外線照射装置において、前記制御部が、前記消灯信号を受けると、前記第二の冷却装置の冷却能力を安定点灯時よりも上昇させてから、前記点灯装置に前記低圧水銀蒸気放電灯を消灯するよう構成された紫外線照射装置。
【請求項4】
請求項1の紫外線照射装置において、前記制御部が、前記消灯信号を受けると、前記第一の冷却装置の冷却能力を安定点灯時よりも低下させ、又は前記第一の冷却装置を停止させるとともに、前記第二の冷却装置の冷却能力を安定点灯時よりも上昇させてから、前記点灯装置に前記低圧水銀蒸気放電灯を消灯するよう構成された紫外線照射装置。
【請求項5】
発光管部(10)の端部に発光管内の水銀蒸気圧を制御するための冷却ベース部(15)を備えた低圧水銀蒸気放電灯(17)の消灯時制御の方法であって、
(S1)制御部(40)が消灯信号を受けるステップ、
(S2)前記制御部が、前記放電灯を点灯させたまま前記冷却ベース部を冷却する第一の冷却装置(31)及び前記発光管部を冷却する第二の冷却装置(32)を、前記冷却ベース部の温度と前記発光管部の温度の温度勾配が小さくなるように制御するステップ、及び
(S3)前記制御部が前記点灯装置に前記低圧水銀蒸気放電灯を消灯させるステップ
を備える方法。
【請求項6】
請求項5の方法において、前記ステップ(S2)が、(S21)前記第一の冷却装置の冷却能力を安定点灯時よりも低下させ、又は前記第一の冷却装置を停止させるステップからなる方法。
【請求項7】
請求項5の方法において、前記ステップ(S2)が、(S22)前記第二の冷却装置の冷却能力を安定点灯時よりも上昇させるステップからなる方法。
【請求項8】
請求項5の方法において、前記ステップ(S2)が、(S21)前記第一の冷却装置の冷却能力を安定点灯時よりも低下させ、又は前記第一の冷却装置を停止させるステップ、及び(S22)前記第二の冷却装置の冷却能力を安定点灯時よりも上昇させるステップを並行して行なうことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−104527(P2011−104527A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262675(P2009−262675)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】