説明

細径同軸ケーブルの接続構造、配線パターンの形成方法、ケーブルハーネス、およびプリント配線板

【課題】伝送特性および信号品質の劣化を低減することができ、狭い実装スペースでも実装可能な細径同軸ケーブルの接続構造を提供する。
【解決手段】基板11上に、電子機器の信号入出力端子に一端が接続される所定の厚さの信号用配線パターン13を形成し、その信号用配線パターン13の他端部に中心導体用溝19を形成し、信号用配線パターン13の他端部を囲むように、所定の厚さのグランド用配線パターン14を形成し、グランド用配線パターン14に外部導体用溝20を形成しておき、中心導体用溝19に細径同軸ケーブル12の中心導体15を嵌合させて、信号用配線パターン13と中心導体15とを電気的に接続すると共に、外部導体用溝20に細径同軸ケーブル12の外部導体17を嵌合させて、グランド用配線パターン14と外部導体17とを電気的に接続するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細径同軸ケーブルの接続構造、配線パターンの形成方法、ケーブルハーネス、およびプリント配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板(プリント配線板)に搭載されるLSI(Large Scale Integrated Circuit)などの電子機器間の伝送線路には、一般に、細径同軸ケーブルが用いられている。LSIなどの電子機器同士を細径同軸ケーブルを介して接続することにより、伝送路に起因するクロストークなどのノイズを低減することができ、さらに、細径同軸ケーブルの両端に電子機器を搭載する基板をそれぞれ接続してハーネス化することにより、携帯電話やノートパソコンなどの可動部(あるいは回転部)を通して配線することが可能となる。
【0003】
このように細径同軸ケーブルを使用する場合、電子機器が搭載される基板に細径同軸ケーブルを実装する必要がある。
【0004】
従来、図17に示すように、細径同軸ケーブル(多心細径同軸ケーブル)171の両端にコネクタ172を設け、そのコネクタ172を基板173に実装する方法が知られている。細径同軸ケーブル171は、コネクタ172および基板173上に形成された配線パターンを介してLSI174に電気的に接続される。
【0005】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、次のものがある。
【0006】
【特許文献1】特開2003−243110号公報
【特許文献2】特開平7−135037号公報
【特許文献3】特開平6−36809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のコネクタ172を用いる方法では、伝送線路に複数の電気接続点(加工箇所)が形成されるため、その電気接続点に起因する損失、反射、放射ノイズなどが生じ、伝送特性および信号品質の劣化が引き起こされるという問題がある。
【0008】
より具体的には、コネクタ172を用いる方法では、(a)コネクタ172と基板173の接続部、(b)コネクタ172内部の構造、(c)細径同軸ケーブル171の端末加工部(細径同軸ケーブル171とコネクタ172の接続部)の3箇所で、損失、反射、放射ノイズなどが発生する。伝送特性および信号品質の観点から、電気接続点をできるだけ少なくすることが望まれている。
【0009】
さらに、コネクタ172を用いることで、基板173上に広い実装スペースが必要となり、機器の小型化に向けた弊害にもなっている。
【0010】
そこで、本発明の目的は、LSIなどの電子機器間で伝送する信号の伝送特性および信号品質の劣化を低減することができ、狭い実装スペースでも実装可能な細径同軸ケーブルの接続構造、配線パターンの形成方法、ケーブルハーネス、およびプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、請求項1の発明は、基板に搭載されるLSIなどの電子機器同士を、中心導体、絶縁体及び外部導体を順次同心円上に配置してなる細径同軸ケーブルを介して接続する細径同軸ケーブルの接続構造において、前記基板上に、前記電子機器の信号入出力端子に一端が接続される所定の厚さの信号用配線パターンを形成すると共に、その信号用配線パターンの他端部に、前記細径同軸ケーブルの前記中心導体を嵌合させるための中心導体用溝を形成し、かつ、前記信号用配線パターンの他端部を囲むように、所定の厚さのグランド用配線パターンを形成すると共に、該グランド用配線パターンに、前記細径同軸ケーブルの前記外部導体を嵌合させるための外部導体用溝を形成しておき、前記中心導体用溝に前記細径同軸ケーブルの中心導体を嵌合させて、前記信号用配線パターンと前記中心導体とを電気的に接続すると共に、前記外部導体用溝に前記細径同軸ケーブルの外部導体を嵌合させて、前記グランド用配線パターンと前記外部導体とを電気的に接続する細径同軸ケーブルの接続構造である。
【0012】
請求項2の発明は、前記信号用配線パターンおよび前記グランド用配線パターンは、前記細径同軸ケーブルの半径以上の厚さに形成される請求項1記載の細径同軸ケーブルの接続構造である。
【0013】
請求項3の発明は、前記信号用配線パターンと前記中心導体とを半田付けすると共に、前記グランド用配線パターンと前記外部導体とを半田付けする請求項1または2記載の細径同軸ケーブルの接続構造である。
【0014】
請求項4の発明は、前記信号用配線パターンと前記中心導体との電気接続部、および前記グランド用配線パターンと前記外部導体との電気接続部を覆うように埋め込み樹脂がそれぞれ設けられる請求項3記載の細径同軸ケーブルの接続構造である。
【0015】
請求項5の発明は、前記細径同軸ケーブルの端部から延出された中心導体および外部導体には、剛性を付与すべくめっきが施される請求項1〜4いずれかに記載の細径同軸ケーブルの接続構造である。
【0016】
請求項6の発明は、前記基板に、前記細径同軸ケーブルの位置決めをするための凹み部を形成した請求項1〜5いずれかに記載の細径同軸ケーブルの接続構造である。
【0017】
請求項7の発明は、前記外部導体用溝が、断面視で略台形状に形成される請求項1〜6いずれかに記載の細径同軸ケーブルの接続構造である。
【0018】
請求項8の発明は、前記中心導体用溝が、断面視で略台形状に形成される請求項1〜7いずれかに記載の細径同軸ケーブルの接続構造である。
【0019】
請求項9の発明は、前記細径同軸ケーブルの中心導体の先端にレーザを照射して球状部を形成すると共に、前記信号用配線パターンに、前記球状部を嵌合するための球状部嵌合穴を形成し、該球状部嵌合穴に前記球状部を嵌合させる請求項1〜7いずれかに記載の細径同軸ケーブルの接続構造である。
【0020】
請求項10の発明は、請求項1記載の細径同軸ケーブルの接続構造における信号用配線パターンとグランド用配線パターンを形成するに際して、前記基板上に銅層を形成し、該銅層にエッチングを施して、信号用配線パターン第1層と、前記外部導体用溝を形成したグランド用配線パターン第1層を形成した後、フォトリソグラフィにより、前記信号用配線パターン第1層の他端部に、断面視が略台形状のフォトレジストを長手方向に沿って形成すると共に、前記グランド用配線パターン第1層の外部導体用溝に断面視が略台形状のフォトレジストをそれぞれ形成し、その後、前記信号用配線パターン第1層および前記グランド用配線パターン第1層上に、銅めっき層を形成し、前記フォトレジストを除去することで、断面視で略台形状の中心導体用溝が形成された信号用配線パターンと、断面視で略台形状の外部導体用溝が形成されたグランド用配線パターンとを形成する配線パターンの形成方法である。
【0021】
請求項11の発明は、前記断面視で略台形状のフォトレジストは、フォトリソグラフィで斜め露光することで形成される請求項10に記載の配線パターンの形成方法である。
【0022】
請求項12の発明は、請求項1〜9いずれかに記載の細径同軸ケーブルの接続構造により、細径同軸ケーブルの両端に、基板がそれぞれ接続されたケーブルハーネスである。
【0023】
請求項13の発明は、請求項1〜9いずれかに記載の細径同軸ケーブルの接続構造により、細径同軸ケーブルの両端が基板に接続され、前記細径同軸ケーブルが前記基板上に配線されたプリント配線板である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、LSIなどの電子機器間で伝送する信号の伝送特性および信号品質の劣化を低減することができ、かつ、電子機器が搭載される基板に細径同軸ケーブルを狭ピッチで実装することが可能となり、狭い実装スペースでも実装可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0026】
図1(a)は、本実施形態に係る細径同軸ケーブルの接続構造の斜視図であり、図1(b)はその1B−1B線断面図、図1(c)はその1C−1C線断面図である。
【0027】
図1(a)〜(c)に示すように、細径同軸ケーブルの接続構造10は、基板11に搭載されるLSIなどの電子機器同士を細径同軸ケーブル12を介して接続すべく、基板11の配線パターンに細径同軸ケーブル12を接続する構造である。
【0028】
細径同軸ケーブル12は、中心導体15の外周に、絶縁体16、外部導体17、シース18を順次形成したものであり、その径は数100μm程度(例えば、200μm程度)である。外部導体17は、横巻き、編組のいずれの構造でもよい。
【0029】
細径同軸ケーブル12は、端末処理によりその端部より中心導体15および外部導体17が延出されており、端部より延出された中心導体15および外部導体17には、剛性を付与すべくめっきが施されている。細径同軸ケーブル12の端末処理については後述する。
【0030】
基板11上には、LSIなどの電子機器の信号入出力端子に一端が接続される所定の厚さの信号用配線パターン13が形成され、その信号用配線パターン13の他端部を囲むように、所定の厚さのグランド用配線パターン14が形成される。
【0031】
これら信号用配線パターン13およびグランド用配線パターン14は、細径同軸ケーブル12の半径以上の厚さに形成される。
【0032】
信号用配線パターン13の他端部には、細径同軸ケーブル12の中心導体15を嵌合させるための中心導体用溝19が形成され、グランド用配線パターン14には、細径同軸ケーブル12の外部導体17を嵌合させるための外部導体用溝20が形成される。これら中心導体用溝19、外部導体用溝20は、断面視で略台形状に形成される。
【0033】
細径同軸ケーブルの接続構造10では、信号用配線パターン13の中心導体用溝19に、細径同軸ケーブル12の中心導体15を嵌合させて、信号用配線パターン13と中心導体15とを電気的に接続すると共に、グランド用配線パターン14の外部導体用溝20に、細径同軸ケーブル12の外部導体17を嵌合させて、グランド用配線パターン14と外部導体17とを電気的に接続する。細径同軸ケーブル12は、基板11上に沿わせた状態で、基板11の信号用配線パターン13、グランド用配線パターン14に接続される。
【0034】
中心導体用溝19および外部導体用溝20を断面視で略台形状に形成することで、嵌合した導体(中心導体15、外部導体17)を保持することが可能となり、細径同軸ケーブル12が基板11の上方向に抜けることを抑制できる。
【0035】
また、図2(a)〜(c)に示すように、信号用配線パターン13と中心導体15とを半田付けし、グランド用配線パターン14と外部導体17とを半田付けしてもよい。半田としては、クリーム半田を用いるとよい。
【0036】
このように、半田付け部(電気接続部)21を形成することにより、細径同軸ケーブル12がその長手方向にも抜けにくくなる。
【0037】
さらに、図3(a)、(b)に示すように、半田付け部21の接続強度を向上させるべく、各半田付け部21を覆うように埋め込み樹脂31をそれぞれ形成するようにしてもよい。埋め込み樹脂31としては、インピーダンス制御の観点から所望のインピーダンスが得られるような誘電率を示すものを選択する必要がある。
【0038】
また、図4(a)、(b)に示すように、基板11をリュータなどで加工して、細径同軸ケーブル12の位置決めをするための凹み部41を形成してもよい。凹み部41の最深部の深さは、シース18の厚さと同程度にするとよい。これにより、細径同軸ケーブル12を基板11に接続する際に、シース18の厚さ分浮いてしまうことを防止でき、基板11と細径同軸ケーブル12の接続強度をより向上させることが可能となる。
【0039】
次に、細径同軸ケーブル12の端末処理について説明する。
【0040】
図5(a)に示すように、まず、細径同軸ケーブル12を配列させる。図5(a)では、4本の細径同軸ケーブル12(4心の多心同軸ケーブル)の端末処理を行う場合を説明するが、細径同軸ケーブル12の本数についてはこれに限定されない。
【0041】
図5(b)に示すように、細径同軸ケーブル12の端部のシース18を除去し、外部導体17を露出させる。その後、図5(c)に示すように、露出させた外部導体17の端部を除去し、絶縁体16を露出させる。
【0042】
この状態で、図5(d)に示すように、外部導体17にめっきを施す。めっきとしては、はんだめっき、金めっき、ニッケルめっきなどを用いるとよい。
【0043】
その後、図5(e)に示すように、絶縁体16を除去して中心導体15を露出させ、図5(f)に示すように、中心導体15にめっきを施す。めっきとしては、外部導体17と同様に、はんだめっき、金めっき、ニッケルめっきなどを用いるとよい。
【0044】
このように、中心導体15および外部導体17にめっきを施すことにより、中心導体15および外部導体17に剛性を付与することができ、中心導体15を中心導体用溝19に、あるいは外部導体17を外部導体用溝20に嵌合するのが容易となる。
【0045】
次に、細径同軸ケーブルの接続構造10における信号用配線パターン13とグランド用配線パターン14の形成方法を説明する。
【0046】
図6(a)に示すように、まず、基板11上に銅層61を形成する。基板11上に銅層61を形成する方法については、公知であるため説明を省略する。
【0047】
その後、図6(b)に示すように、フォトリソグラフィにより、信号用配線パターン13とグランド用配線パターン14を形成する場所にフォトレジスト62を形成する。このとき、グランド用配線パターン14の外部導体用溝20を形成する位置には、フォトレジスト62を形成しないようにする。
【0048】
フォトレジスト62を形成した後、図6(c)に示すように、フォトレジスト62が形成されていない銅層61をエッチングにより除去する。
【0049】
エッチングを行った後、フォトレジスト62を除去すると、図6(d)に示すように、信号用配線パターン第1層63と、外部導体用溝20が形成されたグランド用配線パターン第1層64が得られる。
【0050】
その後、図6(e)に示すように、フォトリソグラフィにより、信号用配線パターン第1層63の他端部に、断面視が略台形状のフォトレジスト65を長手方向に沿って形成すると共に、グランド用配線パターン第1層64の外部導体用溝20に断面視が略台形状のフォトレジスト66をそれぞれ形成する。
【0051】
これらフォトレジスト65,66は、例えば、フォトリソグラフィで斜め露光することで形成される。
【0052】
フォトレジスト65,66を形成した後、図6(f)に示すように、信号用配線パターン第1層63およびグランド用配線パターン第1層64上に、電解めっきにより銅めっき層67を形成する。
【0053】
その後、フォトレジスト65,66を除去することで、図6(g)に示すように、断面視で略台形状の中心導体用溝19が形成された信号用配線パターン13と、断面視で略台形状の外部導体用溝20が形成されたグランド用配線パターン14とが形成される。
【0054】
次に、複数の細径同軸ケーブル12を基板11に接続する場合を説明する。
【0055】
一般に、高周波の信号を伝送する際には差動伝送が用いられている。差動伝送を用いる場合は、2本のケーブルを対にして伝送を行うのが一般的である。ここでは、2本の細径同軸ケーブル12を接続する場合を説明するが、細径同軸ケーブル12の本数はこれに限定されない。
【0056】
図7(a)〜(c)に示すように、細径同軸ケーブルの接続構造70は、基板11上に中心導体用溝19を形成した複数(図7では2つ)の信号用配線パターン13を所定の間隔をおいて整列させて形成すると共に、信号用配線パターン13間およびその両側から各信号用配線パターン13の他端部を囲むようにグランド用配線パターン14を形成し、グランド用配線パターン14に各信号用配線パターン13に対応する外部導体用溝20を形成し、各中心導体用溝19および外部導体用溝20にそれぞれ細径同軸ケーブル12の中心導体15、外部導体17を嵌合させて、中心導体15と信号用配線パターン13、外部導体17とグランド用配線パターン14を電気的に接続したものである。
【0057】
すなわち、細径同軸ケーブルの接続構造70は、図1の細径同軸ケーブルの接続構造10を複数(図7では2つ)並べて配置し、信号用配線パターン13間のグランド用配線パターン14を共通としたものである。
【0058】
細径同軸ケーブル12を複数用いた場合、細径同軸ケーブル12と基板11との接続箇所でのインピーダンス制御が問題になるが、細径同軸ケーブルの接続構造70では、配線パターン(信号用配線パターン13、グランド用配線パターン14)の設計、すなわち、中心導体用溝19、外部導体用溝20の幅、スペース(広さ)、高さ、ピッチ寸法を設計することにより、容易にインピーダンスを制御することが可能となる。
【0059】
また、図8(a)〜(c)に示すように、信号用配線パターン13の他端部全体を囲むようにグランド用配線パターン14を形成し、各信号用配線パターン13に対応した外部導体用溝20をグランド用配線パターン14に形成するようにしてもよい。
【0060】
図1(a)の細径同軸ケーブルの接続構造10、図7(a)の細径同軸ケーブルの接続構造70、図8(a)の細径同軸ケーブルの接続構造80のいずれを選択するかは、所望するインピーダンスの設計により決定するとよい。つまり、配線パターン(信号用配線パターン13、グランド用配線パターン14)の形状によっても、インピーダンスの設計を行うことが可能となる。
【0061】
図7(a)の細径同軸ケーブルの接続構造70、図8(a)の細径同軸ケーブルの接続構造80では、信号用配線パターン13と中心導体15、グランド用配線パターン14と外部導体17を半田付けしたり、その半田付け部を覆うように埋め込み樹脂を形成して、接続強度を向上させるようにしてもよい。
【0062】
以上説明したように、本実施形態に係る細径同軸ケーブルの接続構造10では、基板11上に、所定の厚さの信号用配線パターン13およびグランド用配線パターン14を形成し、信号用配線パターン13に形成された中心導体用溝19に細径同軸ケーブル12の中心導体15を嵌合させて、信号用配線パターン13と中心導体15とを電気的に接続すると共に、グランド用配線パターン14に形成された外部導体用溝20に細径同軸ケーブル12の外部導体17を嵌合させて、グランド用配線パターン14と外部導体17とを電気的に接続している。
【0063】
これにより、コネクタを用いない細径同軸ケーブルの接続構造を実現することができ、細径同軸ケーブル12を、基板11に形成された配線パターン(信号用配線パターン13、グランド用配線パターン14)に直接接続することができるため、電気接続点(加工箇所)を減らすことができる。そのため、電気接続点に起因する損失や反射などの伝送特性劣化に寄与する要因を低減させることができる。
【0064】
また、コネクタを使用しないため、コネクタ使用時には実現し得なかった狭ピッチでの接続が可能となり、狭い実装スペースでも実装可能となる。
【0065】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。
【0066】
図9(a)〜(c)に示すように、細径同軸ケーブルの接続構造90は、細径同軸ケーブル12の中心導体15の先端にレーザを照射して、中心導体15の先端を球状あるいは楕円状に変形させて、球状部91を形成すると共に、信号用配線パターン13に、球状部91を嵌合するための球状部嵌合穴92を形成し、球状部嵌合穴92に球状部91を嵌合させるようにしたものである。信号用配線パターン13に形成される中心導体用溝19、およびグランド用配線パターン14に形成される外部導体用溝20は、断面視が略矩形状となるように形成される。
【0067】
細径同軸ケーブルの接続構造90における配線パターン(信号用配線パターン13、グランド用配線パターン14)を形成した基板11の斜視図を図10(a)に、中心導体15の先端に球状部91を形成した細径同軸ケーブル12の斜視図を図10(b)に示す。
【0068】
このように、中心導体15の先端に球状部91を形成し、その球状部91を信号用配線パターン13に形成した球状部嵌合穴92に嵌合させることで、細径同軸ケーブル12がその長手方向に抜けるのを抑制できる。
【0069】
図11(a)〜(c)に示すように、信号用配線パターン13と中心導体15(球状部91)、グランド用配線パターン14と外部導体17を半田付けしてもよく、図12(a)、(b)に示すように、その半田付け部(電気接続部)111を覆うように、埋め込み樹脂121を形成してもよい。
【0070】
これにより、基板11の上方向に細径同軸ケーブル12が抜けてしまうことも抑制でき、基板11と細径同軸ケーブル12の接続強度をより向上させることが可能となる。
【0071】
ここで、細径同軸ケーブルの接続構造90における細径同軸ケーブル12の端末処理について説明する。
【0072】
図13(a)に示すように、まず、細径同軸ケーブル12を配列させ、その後、図13(b)に示すように、細径同軸ケーブル12の端部のシース18を除去し、外部導体17を露出させる。ここでは、4本の細径同軸ケーブル12(4心の多心同軸ケーブル)の端末処理を行う場合を説明するが、細径同軸ケーブル12の本数についてはこれに限定されない。
【0073】
その後、図13(c)に示すように、露出させた外部導体17の端部を除去し、絶縁体16を露出させ、この状態で、図13(d)に示すように、外部導体17にめっきを施す。
【0074】
外部導体17にめっきを施した後、図13(e)に示すように、絶縁体16を除去して中心導体15を露出させ、図13(f)に示すように、中心導体15の先端にレーザを照射して球状部91を形成する。このとき照射するレーザについては特に限定しないが、例えば、YAGレーザや、CO2レーザを用いるとよい。球状部91を形成した後、図13(g)に示すように、球状部91および中心導体15にめっきを施す。
【0075】
細径同軸ケーブルの接続構造90における配線パターン(信号用配線パターン13、グランド用配線パターン14)の形成方法は、図6(a)〜(g)で説明した細径同軸ケーブルの接続構造10における配線パターンの形成方法と基本的に同じであり、図6(e)において、フォトレジスト65,66を断面視で略矩形状となるように形成し、かつ、信号用配線パターン第1層63上に形成されたフォトレジスト65の一端部に、球状部嵌合穴92を形成するための円柱状のフォトレジストを設けるようにすればよい。
【0076】
複数の細径同軸ケーブル12を基板11に接続する場合は、図14(a)に示すように、基板11上に中心導体用溝19および球状部嵌合穴92を形成した複数(図14(a)では2つ)の信号用配線パターン13を所定の間隔をおいて整列させて形成すると共に、信号用配線パターン13間およびその両側から各信号用配線パターン13の他端部を囲むようにグランド用配線パターン14を形成し、グランド用配線パターン14に各信号用配線パターン13に対応する外部導体用溝20を形成し、各中心導体用溝19および球状部嵌合穴92に中心導体15、球状部91を嵌合させ、外部導体用溝20に外部導体17を嵌合させるようにするとよい。
【0077】
また、図14(b)に示すように、信号用配線パターン13の他端部全体を囲むようにグランド用配線パターン14を設け、各信号用配線パターン13に対応した外部導体用溝20をグランド用配線パターン14に形成するようにしてもよい。
【0078】
図9(a)の細径同軸ケーブルの接続構造90、図14(a)の細径同軸ケーブルの接続構造140、図14(b)の細径同軸ケーブルの接続構造145のいずれを選択するかは、所望するインピーダンスの設計により決定するとよい。
【0079】
図15に示す細径同軸ケーブルの接続構造150は、図9(a)〜(c)の細径同軸ケーブルの接続構造90において、外部導体用溝20を断面視で略台形状に形成したものである。
【0080】
球状部91を球状部嵌合穴92に嵌合させ、かつ、外部導体17を断面視が略台形状の外部導体用溝20に嵌合させることにより、細径同軸ケーブル12の長手方向および基板11の上方向に、細径同軸ケーブル12が抜けてしまうのを抑制することが可能となる。
【0081】
次に、本発明の細径同軸ケーブルの接続構造を適用したケーブルハーネス、およびプリント配線板について説明する。
【0082】
図16(a)に示すように、ケーブルハーネス160は、本発明の細径同軸ケーブルの接続構造により、細径同軸ケーブル12の両端に、基板161がそれぞれ接続されたものである。基板161には、LSIなどの電子機器がそれぞれ搭載され、各電子機器は細径同軸ケーブル12を介して電気的に接続される。図16(a)では、複数本の細径同軸ケーブル12からなる多心細径同軸ケーブル162の両端に基板161を接続した例を示す。
【0083】
ケーブルハーネス160によれば、多心細径同軸ケーブル162の両端に基板161がついた状態で取り扱いができるようになるため、取り扱いが容易となり、また、例えば携帯電話などの回転部を通して配線することが可能となる。
【0084】
図16(b)に示すように、プリント配線板165は、本発明の細径同軸ケーブルの接続構造により、細径同軸ケーブル12の両端が基板166に接続され、細径同軸ケーブル12が基板166上に配線されたものである。細径同軸ケーブル12が動かないように、基板166に樹脂などで接着するようにしてもよい。図16(b)では、複数本の細径同軸ケーブル12からなる多心細径同軸ケーブル162を基板166上に配線した例を示す。
【0085】
プリント配線板165によれば、細径同軸ケーブル12(多心細径同軸ケーブル162)を基板166上に配線したプリント配線板が実現できるため、取り扱いが容易となる。また、プリント配線板165において、信号の伝送には細径同軸ケーブル12(多心細径同軸ケーブル162)を用い、電源の伝送(電源系)にはプリント配線板内部の配線を用いることが可能となる。信号の伝送と電源の伝送の媒体を分けることで、両者の干渉による伝送品質劣化を低減することができる。
【0086】
ケーブルハーネス160、プリント配線板165には、上述の細径同軸ケーブルの接続構造10,70,80,90,140,145,150のいずれを用いてもよい。
【0087】
上記実施形態では、信号用配線パターン13およびグランド用配線パターン14を、細径同軸ケーブル12の半径以上の厚さに形成したが、これに限定されず、例えば、信号用配線パターン13およびグランド用配線パターン14の厚さを、細径同軸ケーブル12の半径未満とし、かつ、外部導体用溝20を形成する位置の基板11を加工して凹部を形成しておき、その凹部に細径同軸ケーブル12を配置し、外部導体用溝20に外部導体17を嵌合させるようにしてもよい。この場合、まず基板11の外部導体用溝20となる位置に凹部を形成しておき、その後、配線パターン(信号用配線パターン13、グランド用配線パターン14)を形成するようにするとよい。
【0088】
また、上記実施形態では、中心導体用溝19および外部導体用溝20を断面視で略台形状とする場合(図1(a)〜(c)参照)、中心導体用溝19および外部導体用溝20を断面視で略矩形状とし、中心導体15の先端に形成した球状部91を球状部嵌合穴92に嵌合させる場合(図9(a)〜(c)参照)、および外部導体用溝20を断面視で略台形状とし、球状部91を球状部嵌合穴92に嵌合させる場合(図15(a)〜(c)参照)を説明したが、図1(a)〜(c)の細径同軸ケーブルの接続構造10において、中心導体用溝19および外部導体用溝20を断面視で略矩形状としてもよい。
【0089】
中心導体用溝19および外部導体用溝20を断面視で略矩形状とすると、中心導体15および外部導体17が抜けやすくなるので、細径同軸ケーブル12と基板11との接続強度は低減するが、この場合でも、細径同軸ケーブル12の位置決めすることができ、また、基板11と細径同軸ケーブル12を直接接続するので、電気接続点を少なくすることができる。細径同軸ケーブル12と基板11との接続強度については、信号用配線パターン13と中心導体15、グランド用配線パターン14と外部導体17を半田付けするか、あるいはこれら半田付け部を覆うように埋め込み樹脂をそれぞれ設けることで、向上させること可能である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】図1(a)は、本発明の一実施形態に係る細径同軸ケーブルの接続構造の斜視図であり、図1(b)はその1B−1B線断面図、図1(c)はその1C−1C線断面図である。
【図2】図2(a)は、図1の細径同軸ケーブルの接続構造において半田付けを行った際の斜視図であり、図2(b)はその2B−2B線断面図、図2(c)はその2C−2C線断面図である。
【図3】図3(a)、(b)は、図2の細径同軸ケーブルの接続構造において半田付け部を覆うように埋め込み樹脂を形成した際の断面図である。
【図4】図4(a)は、図1の細径同軸ケーブルの接続構造で用いる基板に凹み部を形成した際の斜視図であり、図4(b)はその4B−4B線断面図である。
【図5】図5(a)〜(f)は、図1の細径同軸ケーブルの接続構造における細径同軸ケーブルの端末処理を説明する図である。
【図6】図6(a)〜(g)は、図1の細径同軸ケーブルの接続構造における配線パターンの形成方法を説明する図である。
【図7】図7(a)は、本発明の一変形例に係る細径同軸ケーブルの接続構造の斜視図であり、図7(b)はその7B−7B線断面図、図7(c)はその7C−7C線断面図である。
【図8】図8(a)は、本発明の一変形例に係る細径同軸ケーブルの接続構造の斜視図であり、図8(b)はその8B−8B線断面図、図8(c)はその8C−8C線断面図である。
【図9】図9(a)は、本発明の一実施形態に係る細径同軸ケーブルの接続構造の斜視図であり、図9(b)はその9B−9B線断面図、図9(c)はその9C−9C線断面図である。
【図10】図10(a)は、図9の細径同軸ケーブルの接続構造で用いる基板の斜視図であり、図10(b)は、図9の細径同軸ケーブルの接続構造で用いる細径同軸ケーブルの斜視図である。
【図11】図11(a)は、図9の細径同軸ケーブルの接続構造において半田付けを行った際の斜視図であり、図11(b)はその11B−11B線断面図、図11(c)はその11C−11C線断面図である。
【図12】図12(a)、(b)は、図11の細径同軸ケーブルの接続構造において半田付け部を覆うように埋め込み樹脂を形成した際の断面図である。
【図13】図13(a)〜(g)は、図9の細径同軸ケーブルの接続構造における細径同軸ケーブルの端末処理を説明する図である。
【図14】図14(a)、(b)は、本発明の一変形例に係る細径同軸ケーブルの接続構造の斜視図である。
【図15】図15(a)は、本発明の一実施形態に係る細径同軸ケーブルの接続構造の斜視図であり、図15(b)はその15B−15B線断面図、図15(c)はその15C−15C線断面図である。
【図16】図16(a)は、本発明のケーブルハーネスの斜視図であり、図16(b)は、本発明のプリント配線板の斜視図である。
【図17】従来の細径同軸ケーブルの接続構造の斜視図である。
【符号の説明】
【0091】
10 細径同軸ケーブルの接続構造
11 基板
12 細径同軸ケーブル
13 信号用配線パターン
14 グランド用配線パターン
15 中心導体
16 絶縁体
17 外部導体
18 シース
19 中心導体用溝
20 外部導体用溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に搭載されるLSIなどの電子機器同士を、中心導体、絶縁体及び外部導体を順次同心円上に配置してなる細径同軸ケーブルを介して接続する細径同軸ケーブルの接続構造において、
前記基板上に、前記電子機器の信号入出力端子に一端が接続される所定の厚さの信号用配線パターンを形成すると共に、その信号用配線パターンの他端部に、前記細径同軸ケーブルの前記中心導体を嵌合させるための中心導体用溝を形成し、かつ、前記信号用配線パターンの他端部を囲むように、所定の厚さのグランド用配線パターンを形成すると共に、該グランド用配線パターンに、前記細径同軸ケーブルの前記外部導体を嵌合させるための外部導体用溝を形成しておき、
前記中心導体用溝に前記細径同軸ケーブルの中心導体を嵌合させて、前記信号用配線パターンと前記中心導体とを電気的に接続すると共に、前記外部導体用溝に前記細径同軸ケーブルの外部導体を嵌合させて、前記グランド用配線パターンと前記外部導体とを電気的に接続することを特徴とする細径同軸ケーブルの接続構造。
【請求項2】
前記信号用配線パターンおよび前記グランド用配線パターンは、前記細径同軸ケーブルの半径以上の厚さに形成される請求項1記載の細径同軸ケーブルの接続構造。
【請求項3】
前記信号用配線パターンと前記中心導体とを半田付けすると共に、前記グランド用配線パターンと前記外部導体とを半田付けする請求項1または2記載の細径同軸ケーブルの接続構造。
【請求項4】
前記信号用配線パターンと前記中心導体との電気接続部、および前記グランド用配線パターンと前記外部導体との電気接続部を覆うように埋め込み樹脂がそれぞれ設けられる請求項3記載の細径同軸ケーブルの接続構造。
【請求項5】
前記細径同軸ケーブルの端部から延出された中心導体および外部導体には、剛性を付与すべくめっきが施される請求項1〜4いずれかに記載の細径同軸ケーブルの接続構造。
【請求項6】
前記基板に、前記細径同軸ケーブルの位置決めをするための凹み部を形成した請求項1〜5いずれかに記載の細径同軸ケーブルの接続構造。
【請求項7】
前記外部導体用溝が、断面視で略台形状に形成される請求項1〜6いずれかに記載の細径同軸ケーブルの接続構造。
【請求項8】
前記中心導体用溝が、断面視で略台形状に形成される請求項1〜7いずれかに記載の細径同軸ケーブルの接続構造。
【請求項9】
前記細径同軸ケーブルの中心導体の先端にレーザを照射して球状部を形成すると共に、前記信号用配線パターンに、前記球状部を嵌合するための球状部嵌合穴を形成し、該球状部嵌合穴に前記球状部を嵌合させる請求項1〜7いずれかに記載の細径同軸ケーブルの接続構造。
【請求項10】
請求項1記載の細径同軸ケーブルの接続構造における信号用配線パターンとグランド用配線パターンを形成するに際して、
前記基板上に銅層を形成し、該銅層にエッチングを施して、信号用配線パターン第1層と、前記外部導体用溝を形成したグランド用配線パターン第1層を形成した後、
フォトリソグラフィにより、前記信号用配線パターン第1層の他端部に、断面視が略台形状のフォトレジストを長手方向に沿って形成すると共に、前記グランド用配線パターン第1層の外部導体用溝に断面視が略台形状のフォトレジストをそれぞれ形成し、
その後、前記信号用配線パターン第1層および前記グランド用配線パターン第1層上に、銅めっき層を形成し、前記フォトレジストを除去することで、断面視で略台形状の中心導体用溝が形成された信号用配線パターンと、断面視で略台形状の外部導体用溝が形成されたグランド用配線パターンとを形成することを特徴とする配線パターンの形成方法。
【請求項11】
前記断面視で略台形状のフォトレジストは、フォトリソグラフィで斜め露光することで形成される請求項10に記載の配線パターンの形成方法。
【請求項12】
請求項1〜9いずれかに記載の細径同軸ケーブルの接続構造により、細径同軸ケーブルの両端に、基板がそれぞれ接続されたことを特徴とするケーブルハーネス。
【請求項13】
請求項1〜9いずれかに記載の細径同軸ケーブルの接続構造により、細径同軸ケーブルの両端が基板に接続され、前記細径同軸ケーブルが前記基板上に配線されたことを特徴とするプリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−97703(P2010−97703A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−265109(P2008−265109)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】