説明

終端抵抗装置、半導体装置、及び終端抵抗の制御方法

【課題】終端抵抗を設定する際に伝送路に発生するノイズを低減することができる。
【解決手段】
本発明に係る終端抵抗装置の一態様は、互いに等しい抵抗値を有し、伝送路1001に接続可能に設けられた複数の第1終端抵抗素子12N、Pを有する可変終端抵抗部10と、可変終端抵抗部10にサーモメータコードからなる第1制御信号NDRV、PDRVを出力することで、伝送路1001に接続する第1終端抵抗素子12N、Pを選択する終端抵抗制御部11と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、終端抵抗装置、半導体装置、及び終端抵抗の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータ、サーバ、及びワークステーション等の装置の動作スピードは高速化されている。このような装置において、信号伝送にかかる遅延時間を最小化するために、装置内部の半導体素子間の信号の振幅は次第に小さくなっている。動作スピードの高速化が要求される半導体素子においては、ノイズやインピーダンス不整合の対策としてオンダイターミネーション(On Die Termination:ODT)とよばれるインピーダンスマッチング回路を搭載する場合が多い。
【0003】
図8は、特許文献1によって開示された終端抵抗装置70の構成を示す図である。特許文献1において、終端抵抗装置70は、送信側の半導体素子であるLSI3000のインタフェース回路として設けられている。終端抵抗装置70は、可変終端抵抗部(ODT回路)82及び終端抵抗制御部(ODT制御回路)83から構成される。可変終端抵抗部82には、伝送路80と、電源ライン及び接地ラインの間に、それぞれ複数の終端抵抗素子85N、Pが設けられている。終端抵抗素子85N、Pは、P型又はN型のMOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field−Effect Transistor)によって構成されている。電源ラインと伝送路80の間には、P型トランジスタからなる終端抵抗素子85Pが設けられ、伝送路80と接地ラインの間には、N型トランジスタからなる終端抵抗素子85Nが設けられている。
【0004】
終端抵抗素子85P、Nにおいて、複数の素子は、互いに異なる抵抗値を有している。ここで、抵抗値は、トランジスタのゲート幅によって調整することができるため、ゲート幅Wの大きさを用いて抵抗値を説明する。説明のために、終端抵抗素子85Nについて左側のトランジスタから順にゲート幅Wを、W0、W1、W2、W3とすると、それぞれのゲート幅Wの比は、1:2:4:8となっている。終端抵抗素子85Pについても同様に、紙面左側のトランジスタから順にゲート幅が1:2:4:8となっている。このように構成された終端抵抗素子85N、Pは、それぞれのトランジスタのゲートに入力される制御信号PDRV[0]〜[3]、NDRV[0]〜[3]によって、伝送路80への接続が切り替え可能である。
【0005】
終端抵抗制御部83は、論理部87、可変抵抗部88、及びカウンタ89を備えている。可変抵抗部88には、可変終端抵抗部82に設けられた終端抵抗素子85N、Pのそれぞれに対応する比較抵抗素子(図示せず)が設けられている。比較抵抗素子は、可変終端抵抗部82と同様に、複数のトランジスタが検出点に接続可能に設けられている。比較抵抗素子のゲートには、終端抵抗素子85N、Pのゲートに入力される制御信号NDRV[0]〜[3]、PDRV[0]〜[3]と同一の制御信号が入力される。比較抵抗素子は、制御信号NDRV、PDRVによって検出点への接続が切り替えられる。
【0006】
論理部87は、カウンタ89の出力に基づいて、順次、コード信号を生成し、生成したコード信号を制御信号NDRV、PDRVとして可変終端抵抗部82及び可変抵抗部88に出力する。論理部87は、検出点の電圧と基準電圧とを比較し、その比較結果に基づいて、制御信号NDRV[0]〜[3]、PDRV[0]〜[3]の設定を行う。
【0007】
図9は、論理部87において生成されたコード信号の遷移状態を示す図である。なお、終端抵抗の調整にあたっては、P型、N型のそれぞれにおいて、伝送路80に接続する終端抵抗素子85N、Pを選択するが、ここでは、説明のため、N型トランジスタからなる終端抵抗素子85N側の接続を設定する場合を例として説明を行う。前述のように、終端抵抗素子85Nのゲート幅Wは、図8の紙面左側のトランジスタから順にW0:W1:W2:W3=1:2:4:8である。
【0008】
論理部87は、カウンタ89の出力に基づいて順次コード信号をインクリメントする。具体的には、伝送路80に接続する終端抵抗素子85Nのゲート幅Wの合計を"0"に設定する場合には、制御信号NDRV[0]〜[3]を全て"0"に設定する。これによりすべての終端抵抗素子85Nは、伝送路80から切り離される。また、伝送路80に接続する終端抵抗素子85Nのゲート幅Wの合計を"1"に設定する場合には、ゲート幅W0=1を有する終端抵抗素子85Nに入力される制御信号NDRV[0]のみを"1"に設定し、その他の制御信号NDRV[1]〜[3]を"0"に設定する。これにより、ゲート幅W0=1である終端抵抗素子85Nが伝送路80に接続される。
【0009】
コードをインクリメントするに従って、伝送路80に接続される終端抵抗素子85Nのゲート幅Wの合計が大きくなる。なお、終端抵抗値は、伝送路80に接続された終端抵抗素子85Nのゲート幅Wの合計の逆数として表すことができるため、コードがインクリメントされるに従い、終端抵抗値は減少していくこととなる。
【0010】
なお、特許文献2には、伝送路を介してデータを送受信する装置の出力側のインピーダンスを、ゲート容量を用いて調整する装置が開示されている。
【特許文献1】特開2006−66833号公報、図4
【特許文献2】特開2008−182516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ここで、コードをインクリメントしていく場合には、図9に示すように、4本のコード信号線NDRV[0]〜[3]のうちの何本かが"0から1"あるいは"1から0"へ変化することとなる。ここで、1つ上のコードからコードが変化するときに、状態が変化するコード信号の本数を「ハミング距離」という。例えば、伝送路に接続される終端抵抗素子85Nのゲート幅Wの合計が"3"から"4"に切り替わるときは、制御信号NDRV[0]、[1]が"0から1"に変化し、NDRV[2]が"1から0"に切り替わるため、ゲート幅の合計が"4"となるときのハミング距離は3となる。コード信号線は全部で4本なので、ハミング距離は1〜4の値を取る。なお、ハミング距離が最大となるのは、すべてのコード信号の電圧レベルが変化するときである。
【0012】
特許文献1に開示された構成では、終端抵抗素子85N、Pのゲート幅Wが1:2:4:8、すなわち、互いに2倍と異なっており、制御信号NDRV、PDRVは、二進数により値を表すバイナリコードとなっている。そのため、コードを順次変化させる際には、電圧レベルが"0から1"あるいは"1から0"に切り替わるコードの本数、すなわちハミング距離が大きくなることがある。
【0013】
ハミング距離が1の場合は、終端抵抗の変化は1回であるが、ハミング距離が大きくなればなるほど、終端抵抗が変化する回数が増える。そのため、コードが全て切り替わるまでは、終端抵抗の値が不安定になる。このように、ハミング距離が大きい場合は、一時的に可変終端抵抗部の終端抵抗が変化し、電流の変化によって終端電圧に起電力が発生し、終端電圧に発生するノイズの原因となる。この終端電圧に発生するノイズは、波形品質を悪化させ、半導体素子の誤動作の要因となる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る終端抵抗装置の一態様は、互いに等しい抵抗値を有し、伝送路に接続可能に設けられた複数の第1終端抵抗素子を有する可変終端抵抗部と、前記伝送路に接続する前記第1終端抵抗素子を選択するための、サーモメータコードからなる第1制御信号を前記可変終端抵抗部に対して出力する終端抵抗制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明に係る終端抵抗装置の一態様によれば、等しい抵抗値を有する複数の第1終端抵抗素子を、サーモメータコードにより選択して伝送路に接続することで、終端抵抗を変化させる際に、電圧レベルが変化するコード信号の本数、すなわちハミング距離を小さくすることができる。これにより、終端抵抗を設定する際にコードが切り替わる毎に伝送路に発生するノイズを低減することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る半導体素子の一態様によれば、終端抵抗を設定する際に伝送路に発生するノイズを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付した図面を参照して、本発明の最良な実施の形態について説明する。
【0018】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る終端抵抗装置100の全体構成例を示す図である。この終端抵抗装置100は、データが送受信される伝送路1001の終端抵抗を、受信側で調整する装置である。説明では、終端抵抗装置100は、メモリ装置1000に設けられているものとして説明を行う。なお、終端抵抗装置100は、説明のように受信側で終端抵抗を調整する構成に限らず、送信側で終端抵抗を調整するように構成してもよい。また、終端抵抗装置100は、メモリ装置1000に限らず、LSI(Large Scale Integration Circuit)等にも設けることもできる。
【0019】
終端抵抗装置100は、入出力バッファ101と伝送路1001との間に設けられている。説明では、終端抵抗装置100は、可変終端抵抗を16段階に調整することができる構成として説明を行う。なお、本発明は、これに限定されるものではなく任意の段階に可変抵抗を調整できる構成とすることができる。この終端抵抗装置100は、互いに等しい抵抗値を有し、伝送路1001に接続可能に設けられた複数の第1終端抵抗素子12N、Pを有する可変終端抵抗部10と、可変終端抵抗部10にサーモメータコードからなる第1制御信号(PDRV、NDRV)を出力することで、伝送路1001に接続する第1終端抵抗素子12N、Pを選択する終端抵抗制御部11と、を有している。
【0020】
可変終端抵抗部10において、伝送路1001と接地ラインの間には、15個の互いに等しい抵抗値を有する第1終端抵抗素子12Nが設けられている。第1終端抵抗素子12Nは、N型トランジスタからなるスイッチング素子8と第1抵抗素子14を備えている。また、伝送路1001と電源ラインの間には、15個の互いに等しい抵抗値を有する第1終端抵抗素子12Pが設けられている。第1終端抵抗素子12Pは、P型トランジスタからなるスイッチング素子13と第1抵抗素子14を備えている。なお、図面では、一部の第1終端抵抗素子12P、Nを省略している。
【0021】
説明では、第1終端抵抗素子12N、Pは、抵抗素子とスイッチング素子によって構成されているが、第1終端抵抗素子12N、Pを1つのN型またはP型MOSトランジスタで構成することもできる。また、第1終端抵抗素子12N、Pは、メタル配線(線形抵抗)とスイッチング用のMOSトランジスタで構成することもできる。
【0022】
第1終端抵抗素子12Nにおいて、第1抵抗素子14は、一端が伝送路1001に接続され、他端がスイッチング素子8に接続されている。また、スイッチング素子8は、一端が第1抵抗素子14に接続され、他端が接地ラインに接続され、ゲートには、制御信号NDRVが入力される。複数の第1終端抵抗素子12Nは、制御信号NDRVによってN型トランジスタ(スイッチング素子8)が活性化されると、接地ラインと伝送路1001との間に並列接続される。
【0023】
同様に、第1終端抵抗素子12Pにおいて、第1抵抗素子14は、一端が伝送路1001に接続され、他端がP型のスイッチング素子13に接続されている。また、スイッチング素子13は、一端が第1抵抗素子14に接続され、他端が電源ラインに接続され、ゲートには、制御信号PDRVが入力される。複数の第1終端抵抗素子12Pは、制御信号PDRVによってP型トランジスタ(スイッチング素子13)が活性化されると、電源ラインと伝送路1001との間に並列接続される。
【0024】
第1の実施形態においては、それぞれ第1終端抵抗素子12N、Pの抵抗値は、互いに等しい値になるよう構成されている。すなわち、全ての第1終端抵抗素子12Nにおいて、スイッチング素子8及び第1抵抗素子14の合成抵抗は、互いに等しい値に設定されている。また、全ての第1終端抵抗素子12Pにおいて、スイッチング素子13と第1抵抗素子14の合成抵抗は、互いに等しい値に設定されている。
【0025】
ここで、抵抗値はトランジスタのゲート幅によって調整することができるため、1つの第1終端抵抗素子12Nを、1つのトランジスタとして仮定したときのゲート幅の大きさをWとし、このゲート幅Wを用いて第1終端抵抗素子12Nの抵抗値について説明する。第1終端抵抗素子12Nにおいて、それぞれを1つのトランジスタと仮定したときのゲート幅Wを、紙面左側からW0、W1、W2・・・W13、W14とする。第1の実施形態においては、すべての第1終端抵抗素子12Nの抵抗値は互いに等しいため、W0:W1:W2・・・W13:W14は、1:1:1・・・1:1となっている。なお、第1終端抵抗素子12Pについても同様に、1つのトランジスタとして仮定したときのゲート幅Wは互いに等しくなるよう構成されている。
【0026】
終端抵抗制御部11は、論理部16、可変抵抗部15、カウンタ18及びバイナリコード−サーモメータコード変換部17、を備えて構成されている。
【0027】
可変抵抗部15は、可変終端抵抗部10の有する各々の第1終端抵抗素子12N、Pに対応する後述する比較抵抗素子を備えている。この比較抵抗素子には、第1終端抵抗素子12N、Pに入力される制御信号NDRV、PDRVが入力されている。比較抵抗素子は、制御信号NDRV、PDRVに応じて検出点への接続が切り替わる。論理部16は、この検出点の電圧レベルを基準電圧と比較することで、制御信号NDRV、PDRVの設定を行う。なお、詳細については後述する。
【0028】
論理部16は、クロックCLKに従って動作するカウンタ18の出力に基づいて、コード信号NDRV、PDRVを生成する。ここで、論理部16によって生成されるコード信号NDRV、PDRVは、"0"と"1"によって表現される二進数で値が表されるバイナリコードである。このバイナリコードによるコード信号NDRV、PDRVは、バイナリコード−サーモメータコード変換部17に出力される。
【0029】
バイナリコード−サーモメータコード変換部17は、論理部16で生成されたバイナリコードによるコード信号NDRV、PDRVを入力し、サーモメータコードに変換して制御信号NDRV、PDRVとして可変終端抵抗部10に出力する。ここで、サーモメータコードとは、コード信号が表す値が"1"又は"0"の個数によって値を表すコードである。例えば、"1"の個数で"5"の値を表現する場合には、5個のコード信号が"1"に設定され、その他のコード信号が"0"に設定される。バイナリコード−サーモメータコード変換部17で生成した制御信号NDRV、PDRV(サーモメータコード)は、可変終端抵抗部10の他にも可変抵抗部15にも入力される。
【0030】
続いて、図2を用いて、可変抵抗部15の詳細な構成について説明する。可変抵抗部15は、第1終端抵抗素子12Nのそれぞれに対応する比較抵抗素子を有する1組の比較抵抗素子群43と、第1終端抵抗素子12Pのそれぞれに対応する比較抵抗素子を有する2組の比較抵抗素子群41、42を備えている。検出点Aと接地ラインの間には、比較抵抗素子群43が設けられ、検出点Aと電源ラインとの間には、比較抵抗素子群42が設けられている。また、電源ラインと検出点Bとの間には、比較抵抗素子群41が設けられている。
【0031】
比較抵抗素子群43は、抵抗素子50と、この抵抗素子50を検出点Aに接続するか否かを切り替えるN型トランジスタからなるスイッチング素子51を備えている。抵抗素子50及びスイッチング素子51は直列接続されている。15組の抵抗素子50及びスイッチング素子51は、第1終端抵抗素子12Nの有する15組のスイッチング素子8及び第1抵抗素子14のそれぞれに対応しており、スイッチング素子51のゲートには、対応するスイッチング素子8に入力される制御信号NDRVと同じ制御信号が入力されている。15組の抵抗素子50及びスイッチング素子51は、検出点Aと接地ラインとの間に並列接続されている。なお、15組すべての抵抗素子50及びスイッチング素子51の合成抵抗は、第1終端抵抗素子12Nと同様に、互いに同じ値に設定されている。ゲート幅Wを用いて換言すると、抵抗素子50及びスイッチング素子51を1つのトランジスタと仮定したときのゲート幅Wは、互いに等しい値に設定されている。
【0032】
電源ラインと検出点Aとの間に接続された比較抵抗素子群42は、同様に、15組の抵抗素子50及びP型トランジスタからなるスイッチング素子52を備えている。この抵抗素子50及びスイッチング素子52は、第1終端抵抗素子12Pの有する第1抵抗素子14及びスイッチング素子13のそれぞれに対応している。スイッチング素子52のゲートには、対応する第1終端抵抗素子12Pのスイッチング素子13と同一の制御信号PDRVが入力されている。
【0033】
検出点Aの電圧レベルは、検出点Aに接続された比較抵抗素子群42、43の抵抗値によって決定される。この検出点Aの電圧レベルは、比較回路45の一端に入力される。比較回路45は、一方に入力された検出点Aの電圧レベルと、他端に入力された1/2・VDDを比較し、比較結果COMP2を論理部16に出力する。
【0034】
電源ラインと検出点Bとの間に接続された比較抵抗素子群41は、比較抵抗素子群42と略同一構成を有している。なお、詳細な説明については比較抵抗素子群42と略同一であるためその説明を省略する。検出点Bと接地との間には、基準抵抗1002が接続されている。検出点Bの電圧レベルは、基準抵抗1002と比較抵抗素子群41の抵抗値によって決定される。比較回路44は、一方に検出点Bの電圧レベルを入力し、他方に1/2・VDDを入力し、比較結果COMP1を論理部16に出力する。
【0035】
次に、図2を用いて、このように構成された終端抵抗装置100における終端抵抗の設定方法について説明する。論理部16は、比較回路44、45から出力される比較結果COMP2、1に基づいて、終端抵抗の値を設定する。具体的にその手順について説明する。論理部16は、第1段階として比較抵抗素子群41の設定を行った後に、第2段階として比較抵抗素子群43の設定を行う。まず、第1段階において、比較回路44から出力される比較結果COMP1の状態が変化するまで、コード信号をインクリメントすることで制御信号PDRV[0]〜[14]を切り替える。制御信号PDRVが切り替わる毎に、比較抵抗素子群41の検出点Bへの接続が切り替わり、検出点Bの電圧レベルが変化する。
【0036】
論理部16は、比較結果COMP1をモニタし、比較結果COMP1の状態が切り替わったとき、又はその切り替わる直前の制御信号PDRV[0]〜[14]の状態を記憶する。ここで、比較結果COMP1の出力の遷移は、基準抵抗1002と比較抵抗素子群41によって決定される検出点Bの電圧レベルが、直前の制御信号PDRVの切り替えの前後で1/2・VDDになったことを示す。換言すれば、COMP1の状態が切り替わったときは、比較抵抗素子群41の抵抗値と、基準抵抗1002の抵抗値が略同一となったときである。そのため、このときの制御信号PDRV[0]〜[14]、又は直前の制御信号PDRV[0]〜[14]の状態を記憶し、第1段階における制御信号PDRV[0]〜[14]の設定を終了する。
【0037】
次に、第2段階において、比較抵抗素子群43の抵抗値を設定する。第1段階において、制御信号PDRV[0]〜[14]の設定が完了しているため、比較抵抗素子群41と同一の制御信号PDRVによって制御される比較抵抗素子群42は一定の抵抗値を示した状態となる。この状態のまま、コード信号をインクリメントし、制御信号NDRVを切り替える。これにより、検出点Aの電圧は、接続される比較抵抗素子の数により変化する。
【0038】
論理部16は、比較回路45の比較結果COMP2をモニタし、比較結果COMP2の状態が切り替わるまで、制御信号NDRVを変化させる。そして、比較結果COMP2の状態が切り替わったとき、又は切り替わる直前の制御信号NDRVの状態を記憶し、制御信号NDRVの設定を完了する。ここで、比較結果COMP2の状態が切り替わったときは、比較抵抗素子群42、43によって設定される検出点Aの電圧レベルが略1/2・VDDとなったときである。以上のように第1段階、第2段階の制御信号の設定方法により、制御信号PDRV[0]〜[14]及びNDRV[0]〜[14]が決定される。
【0039】
なお、論理部16において制御信号PDRV[0]〜[14]及びNDRV[0]〜[14]が設定される間も、制御信号PDRV[0]〜[14]及びNDRV[0]〜[14]は、可変終端抵抗部10に入力されている。論理部16によって設定された制御信号PDRV[0]〜[14]及びNDRV[0]〜[14]は、設定完了後も可変終端抵抗部10に入力される。これによって、可変終端抵抗部10によって実現される終端抵抗が設定される。
【0040】
次に、本発明の第1の実施形態に係る終端抵抗装置100の効果について説明する。図3は、本発明の第1の実施形態に係る終端抵抗装置100における、コード信号の遷移を示す図である。前述したように、第1制御部NDRV、PDRVは別々に設定が行われ、伝送路1001へ接続される第1終端抵抗素子12N、Pが選択されるが、ここでは、説明のため、第1終端抵抗素子12Nの接続の設定時のコード信号の遷移を例として説明を行う。
【0041】
第1の実施形態においては、すべての第1終端抵抗素子12Nのゲート幅Wは同じ大きさに設定されている。したがって、第1終端抵抗素子12Nの抵抗値を設定する際にコード信号がインクリメントされると、1つずつ第1終端抵抗素子12Nが伝送路1001に接続される。具体的には、伝送路1001に接続する第1終端抵抗素子12Nのゲート幅Wの合計を"0"とする場合には、すべての制御信号NDRV[0]〜[14]を"0"に設定し、すべての第1終端抵抗素子12Nを伝送路1001から切り離す。
【0042】
また、伝送路1001に接続する第1終端抵抗素子12Nのゲート幅Wの合計を"1"とする場合には、制御信号NDRV[0]のみ"1"に設定し、他の制御信号NDRV[1]〜[14]を"0"に設定する。これにより、制御信号NDRV[0]が"0から1"となり、制御信号NDRV[0]が入力される第1終端抵抗素子12Nが伝送路1001に接続される。
【0043】
ここで、コードがインクリメントされていく際には、15本のコード信号線NDRV[0]〜[14]のうちいずれかが"0から1"へ変化することとなる。ここで、1つ上のコードからコードが変化するときに、状態が変化するコード信号の本数を「ハミング距離」という。例えば、活性化したトランジスタのゲート幅の合計が"2から3"に切り替わるときは、制御信号NDRV[2]が"0から1"に変化するため、ゲート幅Wの合計が"3"となるときのハミング距離は1となる。第1の実施形態においては、すべての第1終端抵抗素子12Nが同じゲート幅Wを有するように構成されているため、活性化したトランジスタのゲート幅Wの合計を16段階に変化させる際には、すべての切り替え動作においてハミング距離が1となる。
【0044】
図4は、図8に示す従来技術と第1の実施形態に係る終端抵抗装置100における、コード数、コード信号線の本数、及びハミング距離を示す図である。従来技術及び第1の実施形態では、N側、P側の終端抵抗素子を用いてそれぞれ16段階に抵抗値を切り替えることができる。すなわち、従来技術及び第1の実施形態では共にコード数は16である。また、従来技術では、N側、P側のコード信号線の本数は4本ずつ設けられるのに対し、本発明の第1の実施形態では、P側、N側のコード信号線は15本ずつ設けられている。また、従来技術において、ハミング距離の最大値は4であるのに対し、第1の実施形態におけるハミング距離の最大値は1である。
【0045】
このように、従来技術のようなバイナリコードによって終端抵抗素子の伝送路への接続を切り替える方法では、ハミング距離の最大値は、コード信号の本数となるのに対し、第1の実施形態のようにサーモメータコードを用いて終端抵抗素子の伝送路への接続を切り替える場合には、ハミング距離の最大値は1となる。ここで、ハミング距離が1のときは、終端抵抗の変化は1回であり、ハミング距離が小さいほど、インピーダンスの変化回数が減り、コードが全て切り替わるまでの終端抵抗が安定する。そのため、本発明の第1の実施形態によれば、第1終端抵抗素子のゲート幅Wを互いに等しく構成し、サーモメータコードを用いて終端抵抗素子の伝送路への接続を切り替えることで、電流の変化による終端電圧への起電力を小さくすることができ、終端電圧におけるノイズ発生の原因を減少させることができる。
【0046】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図5は、本発明の第2の実施形態に係る終端抵抗装置の構成例を示す図である。第2の実施形態の特徴は、論理部16で生成したコード信号(バイナリコード)のうち、一部がバイナリコード−サーモメータコード変換部17によってサーモメータコードに変換されて可変終端抵抗部30へ転送され、残りのコード(バイナリコード)はバイナリコードのまま可変終端抵抗部30へ転送される点にある。可変終端抵抗部30は、互いに等しい抵抗値を有する第1終端抵抗素子12N、Pを備えた第1終端抵抗部201と、第1終端抵抗素子12N、Pと異なる抵抗値を有する第2終端抵抗素子31N、Pを有する第2終端抵抗部202の有している。第2終端抵抗素子31N、Pは、第1終端抵抗素子12N、Pの抵抗値の2(nは正負の整数)倍の抵抗値を有するよう構成されている。なお、第2の実施形態においては、1本のコード信号がバイナリコードとなっている。
【0047】
第1の実施形態と同様に基準抵抗の範囲をカバーするように、すなわち終端抵抗を16段階に調整可能に構成すると、可変終端抵抗部30は、抵抗値の比が1:1:1:1:1:1:1:2となる8個の終端抵抗素子12N、31Nと、それらの8個の終端抵抗素子12N、31Nの伝送路1001への接続を制御するコード信号線を8本必要とする。なお、終端抵抗素子12N、31Nの抵抗比を、ゲート幅Wを用いて説明すると、紙面左側の終端抵抗素子から順に、ゲート幅WをW0、W1、・・・W7とすると、W0:W1:W2:W3:W4:W5:W6:W7は、2:2:2:2:2:2:2:1となる。なお、第2終端抵抗素子31P、Nは、第1終端抵抗素子12N、Pと抵抗値が異なるだけであり、接続関係については第1終端抵抗素子12N、Pと同様であるためその説明を省略する。
【0048】
第1終端抵抗素子12N、Pは、第1の実施形態と同様に、バイナリコード−サーモメータコード変換部17により変換されたサーモメータコードからなる制御信号PDRV[0]〜[7]、NDRV[0]〜[7]によって伝送路1001への接続が制御されている。一方、第2終端抵抗素子31N、Pは、論理部16によって生成されるバイナリコードによる制御信号NDRV、PDRVによって、伝送路1001への接続が制御されている。すなわち、第2終端抵抗素子31N、Pには、バイナリコード−サーモメータコード変換部17を介さずに制御信号NDRV、PDRVが入力される。可変終端抵抗部30によって実現される終端抵抗は、伝送路1001に接続された第1終端抵抗素子12N、P、及び第2終端抵抗素子31N、Pによって決定される。
【0049】
終端抵抗制御部38の有する可変抵抗部39は、第1の実施形態と同様に、可変終端抵抗部30の第1終端抵抗素子12N、P及び第2終端抵抗素子31N、Pのそれぞれに対応する比較抵抗素子を有する比較抵抗群が設けられている。第1終端抵抗素子12N、Pに対応する比較抵抗素子は、バイナリコード−サーモメータコード変換部17によって生成されたサーモメータコードからなる制御信号NDRV、PDRVによって検出点への接続が切り替えられる。一方、第2終端抵抗素子31N、Pに対応する比較抵抗素子は、論理部16によって生成されたバイナリコードからなる制御信号NDRV、PDRVによって検出点への接続が切り替えられる。なお、詳細な構成については、第1の実施形態と略同一であるためその構成の説明を省略する。
【0050】
次に、このように構成された第2の実施形態に係る終端抵抗装置200の動作について説明する。終端抵抗制御部38は、クロックCLKに従ってカウンタ18を動作させ、論理部16でコード信号(バイナリコード)を発生する。コード信号(バイナリコード)の一部は、バイナリコード−サーモメータコード変換部17によってサーモメータコードに変換され、第1可変終端抵抗部201へ転送される。また、論理部16によって生成された残りのコード信号(バイナリコード)は、サーモメータコードへ変換されることなく、そのまま第2可変終端抵抗部202へ転送される。
【0051】
また、第1の実施形態と同様に、バイナリコード−サーモメータコード変換部17によって生成されたサーモメータコードNDRV、PDRV及び論理部16で発生したコード信号NDRV、PDRV(バイナリコード)は、可変抵抗部39にも入力される。そして、論理部16は、可変抵抗部39において検出点の電圧と基準電圧が比較された比較結果をモニタし、両者が略一致したときの制御信号NDRV、PDRV、NDRV、PDRVを用いて可変終端抵抗部30によって実現される終端抵抗値を設定する。
【0052】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る終端抵抗装置200におけるコード信号の遷移状態を示す図である。第2の実施形態においては、サーモメータコードからなる制御信号NDRV、PDRVの信号本数は7本に減り、ハミング距離の最大値は2である。第2の実施形態に係る終端抵抗装置200によれば、第1の実施形態と比べてハミング距離は増えるが、すべての制御信号をバイナリコードで構成した従来技術よりはハミング距離を小さくすることができ、コード切り替わり時のノイズの発生を従来技術よりも抑えることができる。
【0053】
また、第1の実施形態では、ハミング距離を小さくするために、すべてのコード信号をサーモメータコード化したため、コード信号線の本数は従来技術の8(P側4本+N側4本)本に比べて、30(P側15本+N側15本)本と増加している。すなわち、第1の実施形態では、コード信号線の配線領域が多く必要であったが、第2の実施形態では、制御信号としてバイナリコード及びサーモメータコードを併用することで第1の実施形態よりも配線領域を小さくすることができる。
【0054】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態に係る終端抵抗装置の構成例について説明する。第3の実施形態では、第2の実施形態よりもさらにコード信号線の本数を削減するために、バイナリコード信号をN側、P側それぞれ2本にしている。この構成ではサーモメータコード部の信号線本数は3本になり、信号線本数は、5本となる。なお、全体の構成例については、第2の実施形態と略同一構成を有するためその説明を省略する。
【0055】
図7は、本発明の第3の実施形態に係る終端装置のコード信号の遷移状態を示す図である。このように、第3の実施形態においては、バイナリコード信号を2本とすることで、従来技術よりもハミング距離を小さくすることができる。すなわち、コード信号の一部をサーモメータコード化することにより、終端電圧に発生するノイズを減らすことができる。また、第2の実施形態よりも更にコード本数を削減することができる。
【0056】
以上のように、本発明では、終端抵抗装置において2段階に終端抵抗が調整する構成の場合に、サーモメータ化するコードの本数を(K−2)本以上とすることで、従来のように全てバイナリコードによって制御信号を生成する場合よりもハミング距離を小さくすることができる。
【0057】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る終端抵抗装置100の全体構成例を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る終端抵抗装置100の可変抵抗部15の構成例を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る終端抵抗装置100におけるコード信号の遷移の状態を示す図である。
【図4】図8に示す従来技術と、第1の実施形態に係る終端抵抗装置100における、コード数、コード信号線の本数、及びハミング距離を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る終端抵抗装置200の全体構成例を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る終端抵抗装置200におけるコード信号の遷移状態を示す図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る終端抵抗装置におけるコード信号の遷移状態を示す図である。
【図8】特許文献1によって開示された終端抵抗装置70の構成を示す図である。
【図9】特許文献1における、論理部87において生成されたコード信号の遷移状態を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
8、13、34、35 スイッチング素子
10、30、82 可変終端抵抗部
11 終端抵抗制御部
12、12N、12P 第1終端抵抗素子
14 第1抵抗素子
15 可変抵抗部
16、87 論理部
17 バイナリコード−サーモメータコード変換部
18、89 カウンタ
1002、81 基準抵抗
31N、31P 第2終端抵抗素子
33 第2抵抗素子
38 終端抵抗制御部
39 可変抵抗部
41〜43 比較抵抗素子群
44、45 比較回路
50 抵抗素子
51 スイッチング素子
70 終端抵抗装置
83 終端抵抗制御部
85N、P 終端抵抗素子
88 可変抵抗部
100、200 終端抵抗装置
101 入出力バッファ
201 第1可変終端抵抗部
202 第2可変終端抵抗部
1000 メモリ装置
1001、80 伝送路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに等しい抵抗値を有し、伝送路に接続可能に設けられた複数の第1終端抵抗素子を有する可変終端抵抗部と、
前記伝送路に接続する前記第1終端抵抗素子を選択するための、サーモメータコードからなる第1制御信号を前記可変終端抵抗部に対して出力する終端抵抗制御部と、
を備えた終端抵抗装置。
【請求項2】
前記可変終端抵抗部は、前記第1終端抵抗素子の抵抗値の2倍(nは、正負の整数)の抵抗値を有し、前記伝送路に接続可能に設けられた第2終端抵抗素子を備え、
前記終端抵抗制御部は、前記伝送路に接続する前記第2終端抵抗素子を選択するための、バイナリコードからなる第2制御信号を前記可変終端抵抗部に対して出力する
請求項1に記載の終端抵抗装置。
【請求項3】
前記終端抵抗制御部は、入力されたバイナリコードを前記サーモメータコードに変換するバイナリコード−サーモメータコード変換回路を備えた
請求項1又は2に記載の終端抵抗装置。
【請求項4】
前記終端抵抗制御部は、
前記第1終端抵抗素子のそれぞれに対応し、検出点に接続可能に設けられた比較抵抗素子、及び前記検出点の電圧と基準電圧を比較する比較回路を有する可変抵抗部と、
前記比較回路の比較結果に基づいて、前記伝送路に接続する前記第1終端抵抗素子を選択する論理部と、を備え、
前記比較抵抗素子は、対応する前記第1終端抵抗素子に入力される前記第1制御信号によって、前記検出点への接続が切り替えられる
請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の終端抵抗装置。
【請求項5】
前記第1終端抵抗素子は、配線幅を調整することで抵抗値が設定される抵抗素子と、前記第1制御信号に基づいて前記第1終端抵抗素子の前記伝送路への接続を切り替えるスイッチング素子を有する
請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の終端抵抗装置。
【請求項6】
前記スイッチング素子は、MOSトランジスタにより構成される
請求項5に記載の終端抵抗装置。
【請求項7】
前記第1終端抵抗素子は、トランジスタにより構成される
請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の終端抵抗装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちいずれか1項に記載の終端抵抗装置を備えた半導体装置。
【請求項9】
前記半導体装置は、半導体メモリである
請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
互いに等しい抵抗値を有し伝送路に接続可能に設けられた複数の第1終端抵抗素子に、サーモメータコードからなる第1制御信号を出力することで、前記伝送路に接続する前記第1終端抵抗素子を選択する終端抵抗の制御方法。
【請求項11】
前記第1終端抵抗素子の抵抗値の2倍(nは、正負の整数)の抵抗値を有し前記伝送路に接続可能に設けられた第2終端抵抗素子に、バイナリコードからなる第2制御信号を出力することで、前記伝送路に接続する前記第2終端抵抗素子を選択する
請求項10に記載の終端抵抗の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−130504(P2010−130504A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−304756(P2008−304756)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】