説明

結晶化中にドープ半導体チャージを添加する半導体の凝固方法

【課題】半導体の凝固方法を提供する。
【解決手段】ドーパントを含む第一の半導体チャージ120から溶融半導体103のバスを形成する段階と、溶融半導体103の凝固段階とを含み、更に、ドーパントを含む補充半導体チャージ120を溶融半導体103のバスに添加する一つ以上の段階を、凝固中に実施することを含む。補充半導体チャージ120は固体状または液体状である。また、電子アクセプタードーパントはホウ素原子であり、電子ドナードーパントはリン原子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝固中に半導体のドーピングを制御することのできる、半導体(特にシリコン)の凝固方法に関する。本発明は特に、光起電電池基板の製造用に用いられるリボン又はインゴットの形状の液相冶金シリコンの結晶化に適用される。
【背景技術】
【0002】
一以上のドーパントを含む半導体の方向性を有する凝固中において、形成される固体の組成は液体のものと異なるので(最も一般的な場合において、液体中には一般的にドーパントの蓄積がある)、ドーパント濃度は結晶化方向に沿って異なる。特に、液体の完全な混合物の場合、結晶化方向に沿ったそのインゴット中のドーパントの分布は、Scheil‐Gulliver方程式によって定められる。その方程式では、各タイプのドーパントに対して、その分配係数k=S/Sが用いられ、Sは、固体シリコン中のドーパント種の溶解度であり、Sは、液体(溶融)シリコン中のドーパント種の溶解度である。ホウ素及びリンは両方とも、液体シリコン中よりも固体シリコン中において低い溶解度を有し、1未満の分配係数で表される。
【0003】
所定のドーパント種に対して、Scheil‐Gulliver方程式は以下のように表される:
= k・CL0・(1−fk−1
: 固体結晶化半導体中のドーパント種の濃度
L0: 液体半導体中のドーパント種の初期濃度
k: ドーパント種の分配係数
: 半導体の総量(液体+固体)に対する結晶化半導体の割合
【0004】
この濃度変化は、導電性等の電気的性質の変化をもたらす。更に、この濃度が急激に増大するインゴットの最上部が、不合格ということになり、その方法の原料歩留まりが低下する。
【0005】
現状の標準的な光起電電池は一般的に、精製された冶金シリコンインゴット製の基板から作られる。このタイプのシリコンは、不純物とドーパント種又はドーパントを含み、シリコンにある程度の導電性が与えられる。
【0006】
半導体は、電子アクセプタードーパントと電子ドナードーパントの両方を含む場合に、“補償”されていると表現される。このような半導体中の自由キャリア濃度は、ドーパントによって提供される電子数と正孔数の差に対応し、ドーパントは、半導体がシリコンである場合、一般的にホウ素(p型、電子アクセプター)及びリン(n型、電子ドナー)である。
【0007】
リンに対する分配係数kは0.35であり、ホウ素に対する分配係数kは0.8である。
【0008】
非補償型のp型シリコンインゴットの結晶化中において、インゴットは、ドーパント種としてホウ素のみを含む。ホウ素に対する分配係数が0.8であるとして、シリコン中のこの元素の偏析が僅かであるので、インゴット中のホウ素原子の分布は、インゴットの高さ方向に大部分にわたって極めて一様である。
【0009】
しかしながら、リンを含むシリコン、つまり、補償型若しくは非補償型のn型シリコン、又は、補償型のp型シリコンのインゴットの製造中においては、リンがホウ素よりも偏析するとして(k=0.35)、得られるインゴットの抵抗率は、シリコンインゴットの高さ方向にわたって非一様である。
【0010】
更に、p型の補償型シリコンのインゴットの開始部(つまり、最初に結晶化した部分)において、ホウ素濃度は、リン濃度よりも高い。リンがホウ素よりも大きく偏析するとして、特定の高さまで凝固した後では、シリコンには、ホウ素よりもリンが豊富に存在し、インゴット中の導電型の変化が生じる。従って、インゴットの一部は使い物にならない。更に、インゴットの開始部におけるホウ素濃度とリン濃度の差が小さいと、つまり、高抵抗性シリコン、例えば光起電電池の製造用のもの(略0.1Ω・cmよりも高い抵抗率)を得ることが望まれる場合に、この影響が際立つ。更に、シリコンが所定の抵抗率に対して多量のリンを含む場合に、この影響が更に際立つ。
【0011】
この導電型の変化は、n型インゴットでは観測されない。何故ならば、リン濃度が常にホウ素濃度よりも高いままであるからである。しかしながら、両者の濃度の差は、インゴットの開始部よりもインゴットの最上部において大きくなり、インゴットの高さ方向に沿って減少する非一様な抵抗率が生じる。
【0012】
従って、あらゆる場合において、抵抗率の非一様性、又は、導電型の変化に起因して、インゴットの大部分が使い物にならない。
【0013】
特許文献1に記載されている半導体インゴットの製造方法においては、抵抗率の非一様性を減じ、インゴット中の導電型の変化位置を押し戻すために、n型又はp型ドーパントが、シリコンの結晶成長中に加えられる。これらのドーパントの添加は、成長中の半導体バス内のドーパント種間のバランスが、Scheil‐Gulliver方程式に従う添加無しの成長と比較して、より良く制御されることを意味するものではあるが、ドーパント種の総数は、添加無しの場合よりもはるかに大きくなり、得られる結晶化シリコンから作製される装置の電気的性質(特に、移動度)に影響を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2007/001184号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的の一つは、所望の導電型に応じた半導体の凝固(例えば、インゴット形状の結晶化)用に用いられ、凝固半導体全体にわたって一様な抵抗率を有する一方で、半導体の全体又は大部分にわたって導電型の変化を防止して、得られる半導体から作製される装置の電気的性質に悪影響を与えない方法を提案することである。
【0016】
また、本発明の目的の一つは、結晶化過程中の添加の無い従来の方法よりも、インゴットの全体又は一部にわたって、結晶化方向に沿った自由キャリア密度の変動が小さい一方で、純粋なドーパントの添加によって自由キャリア密度の変動を補正する場合よりも、全自由キャリア密度の変動が小さいことを保証する、ドープ半導体の方向性を有する結晶化用の改善された方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的を達成するため、本発明は、少なくとも
‐ ドーパントを含む少なくとも一つの第一の半導体から溶融半導体のバスを形成する段階と、
‐ 溶融半導体の凝固段階とを含む半導体の凝固方法であって、更に、溶融半導体の凝固中に、ドーパントを含む一つ以上の補充半導体チャージを溶融半導体のバスに添加して、バス中の溶融半導体の
【数1】

の項の値の変動を、ドーパント種に対する分配係数の値によって自然に達成される変動に対して、
【数2】

であれば、
【数3】

となり、
【数4】

であれば、
【数5】

となるように低下させて、また、バス中の溶融半導体の
【数6】

の項の値を、純粋なドーパント種の添加によって達成される変動に対して、
【数7】

であれば、
【数8】

及び
【数9】

となり、
【数10】

であれば、
【数11】

及び
【数12】

となるように低下させる一つ以上の段階を、凝固方法中の少なくとも一部の間に使用することを含む方法を提案する。ここで、
: 溶融半導体のバス中の電子アクセプタードーパントiの濃度;
: 溶融半導体のバス中の電子ドナードーパントjの濃度;
: 添加される補充チャージ中の電子アクセプタードーパントiの濃度;
: 添加される補充チャージ中の電子ドナードーパントjの濃度;
: 電子アクセプタードーパントiの分配係数、
: 電子ドナードーパントjの分配係数
である。
【0018】
従って、バス中のドーパント間の相対的な組成に応じて(
【数13】

の場合には、電子アクセプタードーパントiが豊富、
【数14】

の場合には、電子ドナードーパントjが豊富)、ドーパント種iに関する添加チャージの組成Cが、それから形成される第一の固体が、電子アクセプタードーパントが豊富な場合における添加無しのバスによって形成された固体よりも小さい自由キャリア密度を有し、又は、電子ドナードーパントが豊富な場合における添加無しのバスによって形成された固体よりも大きい自由キャリア密度を有するようなものであれば、つまり、
電子アクセプタードーパントiが豊富な場合には、
【数15】

又は、電子ドナードーパントjが豊富な場合には、
【数16】

であるようなものであれば、希釈化が自由キャリア密度の変動の減少に影響を与える。
【0019】
希釈化は、自由キャリアの総数にも影響を与える:即ち、電子アクセプタードーパントiが豊富なバスの場合には、
【数17】

であり、電子ドナードーパントjが豊富なバスの場合には、
【数18】

である。
【0020】
更に、
【数19】

の場合には、
【数20】

であり、
【数21】

の場合には、
【数22】

であるという条件を課すことによって、常に希釈現象が存在しているように、ドーパントの濃度が限定される。凝固速度が添加濃度に直接つながっているとしても、この限定が設定される。
【0021】
従って、まず初めに、ドーパント濃度に関して平均組成の異なる少なくとも二つのサブチャージが選択される。次に、半導体バスが、第一のサブチャージを例えば坩堝内で溶融することによって、形成される。次に、この第一のサブチャージの凝固が開始され、その凝固中に、第二のサブチャージが、優先的には結晶化全体にわたって連続的に、半導体バスに加えられ、半導体バスにドーパントが加えられるが、バス中の溶融シリコンの量が増加するとして、ドーパントの希釈が達成される。
【0022】
純粋なドーパントではなくてドープシリコンを加えることは、多数キャリアの移動度が影響を受けないということを意味する。何故ならば、従来技術とは異なり、溶融半導体バス中のドーパントの濃度は全く又は僅かしか増加しないからである。
【0023】
本方法は、僅かではない量の半導体の添加によって、(偏析による)凝固中のバスに対するドーパントの添加を補償する。実際、この半導体の添加は、バス内の半導体の希釈によってドーパント濃度を低下させ、従って、半導体バス中の多重キャリアの総数(
【数23】

の項に対応)が効果的に一定レベルに維持され、得られる凝固半導体から作製される装置(例えば、光起電電池)の電気的性質に悪影響を与えない。例えば、僅かではない量で加えられるチャージのドーピングは、チャージの導電型に関係なく、電子アクセプタードーパントの所定のレベルに対する初期チャージよりも少ない電子ドナードーパントを含み得る。従って、必要な量の電子アクセプタードーパントが、この希釈化の結果として加えられる。更に、本方法は、再利用されたチャージを用いて、この凝固を行うことができるということを意味する。
【0024】
従って、その高さの略90%超に対して、10%未満の抵抗率及び自由キャリア数の変動を示すp型の非補償型凝固シリコンを得ることができる。また、電子アクセプタードーパントの数対電子ドナードーパントの数の比が0.6から3の間であり、その高さの略70%超に対して、20%未満の抵抗率の変動及び略50%未満のキャリアの総数の変動を示すp型の補償型凝固シリコンを得ることもできる。
【0025】
また、本方法は、凝固の原料歩留まりを上昇させることができる。何故ならば、凝固半導体の大部分が所望の電気的性質を示すとして、凝固半導体の極僅かな部分しか剥ぎ取られないからである。
【0026】
より一般的には、本発明は、ドーピングに関して異種のシリコンチャージを用いて、ドーパントの偏析現象に関わらず(ドーパントに関わらず、たとえホウ素又はリン以外のドーパントでも)、その高さの大部分にわたって、一定の抵抗率のものである半導体インゴットが凝固され得るということを意味する。
【0027】
本発明は、あらゆるタイプの半導体の凝固方法に適用され、特に、あらゆるタイプの液相結晶化方法に適用される。
【0028】
上述の方法は、一般論として、一以上の電子ドナードーパントi及び一以上の電子アクセプタードーパントjが使用された場合で説明される。ホウ素のみが電子アクセプタードーパントiとして使用され、リンのみが電子ドナードーパントjとして使用される場合、添え字n及びmは1であり、添え字iのパラメータはホウ素のパラメータ(k、C、C)に対応し、添え字jのパラメータはリンのパラメータ(k、C、C)に対応する。
【0029】
補充半導体チャージは、以下の関係が観測されることを保証しながら、添加され得る:
【数24】

及び
【数25】

ここで、dm/dt: kg/s単位での添加速度
dm/dt: kg/s単位での結晶化速度。
【0030】
従って、これらの関係が観測されることを保証することによって、補充半導体チャージが、本凝固方法の少なくとも一部の間において、k及びkの項の値をほぼ一定に保つ添加速度で、加えられる。
【0031】
補充半導体チャージは、dm/dm<1となるように、つまり、結晶化速度未満の添加速度で添加され得る。これは、C<k及びC<kとなる添加ドーパントの濃度に対応する。
【0032】
このような添加速度によって、特に、結晶化の終わりの前に、添加を完了することが可能になる。
【0033】
補充半導体チャージは、固体状で半導体バスに添加され得て、その後、溶融されて、溶融半導体のバスと混合され得る。
【0034】
補充半導体チャージは、本凝固方法の少なくとも一部の間において、液体状で半導体バスに添加され得る。優先的な実施形態の一つでは、この液体状での添加は、連続的に行われる。
【0035】
複数の補充半導体チャージが凝固中に加えられる場合、補充半導体チャージは、凝固半導体の質量が、本凝固方法の終わりに得られる凝固半導体の全質量に対して最大1%増加するたびに、添加され得る。
【0036】
本凝固方法の段階は、ブリッジマン型炉内で実施され得て、半導体バスは、その炉の坩堝内に位置し得る。
【0037】
炉は、坩堝が配置されるアルゴン雰囲気下にある密閉されたエンクロージャを含み得る。
【0038】
補充半導体チャージが、固体状で半導体バスに添加される場合、その添加は、補充半導体チャージの予熱も行うことのできる分配装置を用いて、行われ得る。
【0039】
この場合、補充半導体チャージの添加が行われる時点は、分配装置の制御手段によって、決められ得る。
【0040】
第一の半導体チャージ内のドーパントの少なくとも一種の濃度は、補充半導体チャージ内の同じ種類のドーパントの濃度と異なり得る。
【0041】
第一の半導体チャージ内の一つの導電型のドーパントの濃度は、補充半導体チャージ内の同じ導電型のドーパントの濃度以上であり得る。
【0042】
溶融半導体は、インゴット又はリボンの形状に凝固され得る。
【0043】
本発明は、添付図面を参照しながら、純粋に説明目的であって限定的なものではない実施形態の記載を読むことによって、より良く理解されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の目的である半導体の凝固方法が実施されるブリッジマン型炉を示す。
【図2】本発明の目的である方法に従って凝固されたシリコンインゴットに沿った、及び、従来技術の方法に従って凝固されたインゴットに沿った、ドーパント濃度及び抵抗率のシミュレーションの曲線を示す。
【図3】本発明の目的である方法に従って凝固されたシリコンインゴットに沿った、及び、従来技術の方法に従って凝固されたインゴットに沿った、ドーパント濃度及び抵抗率のシミュレーションの曲線を示す。
【図4】本発明の目的である方法に従って凝固されたシリコンインゴットに沿った、及び、従来技術の方法に従って凝固されたインゴットに沿った、ドーパント濃度及び抵抗率のシミュレーションの曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下で説明される多様な図面の同一、同様又は等価な部分には、同一の参照符号を付し、一つの図面から他の図面への移行を容易にする。
【0046】
図面を見易くするため、図面に示される多様な部分は、必ずしも均等な縮尺では示されていない。
【0047】
多様な可能性(変形及び実施形態)は、互いに排他的なものではなく、互いに組み合わせ可能なものとして理解されたい。
【0048】
まず、図1を参照すると、ブリッジマン型炉100、又は、ゾーン溶融炉が示されていて、半導体の凝固方法(ここでは結晶化)が行われる。
【0049】
炉100は、結晶化される溶融半導体103を保持するように設計された坩堝102を含む。図1では、結晶化半導体118も、半導体バス103の下方において、坩堝中に見られる。炉100は、加熱素子104も含み、例えば、電力供給され、坩堝102の上方に、及び、坩堝102の側壁の上部に対向するように配置される。加熱素子104は、固体の半導体が坩堝102内に導入された際に半導体を溶融し、その溶融状態を維持するために用いられる。炉100は、熱絶縁性側壁106も含む。
【0050】
炉100は、坩堝102の下方に配置された冷却システム108を含み、熱流を下方(半導体の成長軸に平行)に導き、半導体中の柱状粒子成長を促進するのに用いられる。従って、坩堝102内の溶融半導体103は、坩堝102の底から始まって、徐々に結晶化する。また、炉100は、密閉されたエンクロージャ112も含み、結晶化される半導体が、不活性ガス、例えばアルゴン雰囲気に配置されるようになる。
【0051】
炉100は更に、坩堝102の上方に配置された分配装置110を含む。この分配装置110は、半導体の結晶化方法中に、補充半導体チャージ120を添加することを可能にする。補充チャージ120は、ここでは、固体状で加えられ、例えば、略10cmよりも小さい、優先的には略1cmよりも小さい寸法を有し、補充チャージが半導体バス103中で急速に溶融することができるようになる。優先的には、ポンピング用の及びアルゴン導入用のシステムを有する密閉エアロックを用いて結晶化方法が行われるのにつれて、分配装置110が徐々に充填される。更に、この分配装置110は、凝固方法の過程において坩堝102内に導入される半導体を予熱するのにも用いられる。
【0052】
一変形例では、結晶化方法中に加えられる補充の半導体は液状であり得て、この場合、この補充の半導体は、半導体バスの外部で溶融されて、その後、半導体バスに連続的又は不連続な溶融物として加えられる。
【0053】
最後に、炉100は、坩堝102の上方に設置されたセンサロッド114(例えばシリカ製)を含み、半導体の凝固先端116、つまり、溶融半導体103と結晶化半導体118との間の境界の位置を、結晶化時間の関数として、見つけるのに用いられる。
【0054】
炉100内で実施される半導体の結晶化方法をこれから説明する。
【0055】
ドーパントを含む第一の半導体チャージ(例えば、シリコン製)は坩堝102内に配置される。その後、この第一の半導体チャージは、加熱素子104を用いて溶融され、溶融シリコンバス103を形成する。一変形例では、坩堝102内に溶融シリコンを直接注入することも可能である。その後、溶融半導体の結晶化方法が開始される。特定の結晶化時間の終わりに、少量の予熱シリコンが、溶融シリコンバスの上方に配置された分配装置110を用いて、加えられる。溶融シリコンバス内に固体状で到達するこのシリコンは、シリコンバス103の表面に浮かぶ。何故ならば、その密度が溶融シリコンのもの未満であるからである。この補充シリコンチャージは溶融して、シリコンバス103と混合されて、その後結晶化される。結晶化インゴット中のドーパントのほぼ一定の濃度を維持するために、シリコンの添加が、所定の頻度で繰り返される。
【0056】
使用されるドーパント濃度及びシリコンチャージの質量、並びに、補充チャージが加えられる時点を適切に選択することによって、溶融半導体バス中のk−k及びk+kの項の値が、結晶化方法の全体又は大部分にわたって、ほぼ一定に保たれ得る。C及びCはそれぞれ、坩堝102中の溶融半導体内の電子アクセプター及びドナーのドーパント濃度に対応する。k及びkはそれぞれ、電子アクセプター及びドナーのドーパントの分配係数に対応する。
【0057】
補充半導体チャージの添加は、結晶化方法中に一回以上実施され得る。添加される多様なチャージは、特に、異なる質量及び/又はドーパント濃度を有し得て、例えば、結晶化物質の製造フローに最大で等しい物質フロー(添加半導体の量)とされる。
【0058】
本結晶化方法において用いられる多様な半導体チャージは、ドーパント種濃度、個々の分配係数、結晶化半導体の望まれる最終的な性質(組成の一様性及び電気的性質)に応じて、選択される。一様性は、補充半導体の添加を開始する時点と、この添加が行われる速度との選択によって最適化されるが、ここで、この添加は連続的又は不連続であり得る。
【0059】
これら全てのパラメータは、結晶化半導体のインゴット中のドーパントの所望の濃度及び抵抗率に応じて、選択される。本結晶化方法を実施するのに使用される半導体チャージのタイプを選択するのに用いられる計算について、これから説明する。
【0060】
まず、得たいインゴットの抵抗率ρ(その値は自由キャリアの数na−ndに依存する)を選択する。その関係は以下のとおりである:
【数26】

ここで、q: 電子の電荷
μ: 多数キャリアの移動度
na−nd: 多数キャリアの数。
【0061】
移動度μ(多数キャリアの全密度na+ndに依存する)は、以下の経験的な関係によって定められる:
【数27】

ここで、Tn: 300Kに対して正規化された温度。この関係において用いられる定数は、キャリア特性(n型に対して電子、p型に対して正孔)に依存し、以下の表に表される値に等しい。
【0062】
【表1】

【0063】
na及びndの項はそれぞれ、電子ドナー及び電子アクセプターのドーパント原子の数を表し、結晶化シリコン中のホウ素とリン原子の数に相当する。単位体積に対して、結晶化シリコン中のドーパント濃度がna及びndに対応すると仮定して:
na=C=k(t)、nd=C=k(t)と、ppma単位で表される。
【0064】
ホウ素とリンに対する分配係数が異なるとして(k=0.8、k=0.35)、na−ndの項の値は、結晶化中に補充半導体チャージを添加する段階を含まない結晶化方法において、一定ではない。このことは、このような方法中において、液体シリコンのリンでの濃縮によって、この濃縮が後々結晶化シリコンに反映されるということを示す。この濃縮は、以下の関係によりScheil‐Gulliver方程式によって表される:
i(g)=kL0(1−f−1 (3)
ここで、i: ドーパント種(i=B又はP)、
: 半導体の凝固割合、
L0: 液体中の種iの初期濃度。
【0065】
ドーパントを含む補充半導体チャージの添加を結晶化中に実施することによって、上述のリンの濃縮に対する補償が達成される。例えば、リンのドープの少ない(又はホウ素がより多くドープされている)シリコンの添加によって行われ、結晶化中の半導体バスにおいて、na−nd又はk−kの項の値を添加無しの場合よりも低く保ち、na+nd又はk+kの項の値を純粋なドーパントの添加の場合よりも低く保つ。
【0066】
使用される第一のチャージの特性、又は添加が行われる時点における液体バスの特性:
‐ 質量 (M又はM)、
‐ ドーパント濃度 (C、C)又は(C、C)に応じて、
また、結晶化半導体の所望の特性:
‐ 初期抵抗率ρ
‐ 不連続なチャージの添加による時点tでのna−ndの変動、
‐ インゴットの二つの高さの間でのna−ndの変化に応じて、
適切な補充チャージ(C、C)(可変又は一定)が本方法中に加えられるように選択されて、また、可変又は一定の添加速度対結晶化速度(dm/dm)が選択される。
【0067】
時点tでの補充チャージの濃度及び添加速度を求めるために、シリコンの液体部分の溶質平衡を定める。この溶質平衡は、ドーパントi=B、Pの両方に対して以下のように定められる:
d(C)=Cdm−kdm (4)
‐ dm: 時間dt中に添加される質量、
‐ C: 添加されるチャージ中の種iの濃度、
‐ dm: 時間dt中に凝固する質量。
ここで、濃度は、ppma(parts per million atoms,百万分の一原子数)で表される。
【0068】
この平衡は、液体中のドーパントiの原子数の変動が、時間間隔dt中に、添加により提供されたドーパントiの原子数から結晶化したドーパントiの原子数を引いたものに等しいということを示す。
【0069】
(t)の項は、利用される他の半導体の質量の関数として、以下の方程式で表すことができる:
(t)=M+m(t)−m(t) (5)
ここで、M: 第一のチャージの質量(一定)、
(t): 時点tで加えられているシリコンの全質量(添加の終わりtにおいて、m(t)=M)、
(t): 時点tで結晶化しているシリコンの全質量(添加の終わりtにおいて、m(t)=M+M)。
【0070】
上記方程式(4)及び(5)から、液体中の変動dC(t)をdm(t)及びdm(t)の関数として表すことができる:
【数28】

【0071】
二つのドーパントに対するk−kの変動の値を求めるため、以下のようにする。
【数29】

【0072】
第一項は、添加無しの場合の所定の液体質量mに対するScheil方程式から導かれるk−kの変動を表す。第二項は、ドープシリコンの添加によるk−kの変動を表す。添加無しの場合に対する改善を得るため、この第二項は、ホウ素の豊富なバスの場合には正でなければならず
【数30】

リンの豊富なバスの場合には負でなければならない
【数31】

【0073】
この結果としての最適な添加速度は、k−kが一定のままである場合には、
【数32】

に等しい。
【0074】
同じ平衡(6)を用いて、k+kの項の値の変動を求めて、それを、純粋なドーパントの添加の場合におけるk−kの所定の変動と比較することができ、以下のことが推定される:
リンの豊富なバスの場合にはC<Cであり、ホウ素の豊富なバスの場合にはC<Cである。
【0075】
及びkが結晶化全体にわたって一定に保たれる場合、これらの項は、常にk、kに等しい。そこで、方程式(6)は、種iの各々に対して、結晶化の前に添加を終了させるために、添加速度対結晶化速度が一定であり、1未満であるとして、以下の形となる:
【数33】

【0076】
従って、添加チャージの濃度は以下の関係を満たさなければならない:
【数34】

ここで、添加速度は以下の通りである:
【数35】

【0077】
この場合、添加チャージの全質量は
【数36】

であり、優先的には、極少量のチャージとして分配される。
【0078】
非補償型シリコンのp型インゴット(ドーパント種としてホウ素のみを含み、その望まれる抵抗率が略3.32Ω・cmであるもの)の生成の第一の実施形態について、これから説明する。
【0079】
初期溶融チャージは、0.04ppmw(つまり5.2×1015原子数/cm)の濃度でホウ素のみをドープしたマイクロエレクトロニクスシリコンのものである。第一のチャージの質量は、インゴットの最終的な質量の半分に等しい。結晶化方法中にシリコンバスに加えられる補充チャージも同様に、エレクトロニクス由来のシリコンに基づいたものであるが、0.004ppmwの濃度でホウ素のみがドープされている。補充チャージの全質量は、インゴットの最終的な質量の半分である。
【0080】
補充チャージの添加は、結晶化半導体の質量が本結晶化方法の最後に得られる結晶化半導体の全質量に対して略0.2%増加するたびに、行われる。この添加は、結晶化が始まり次第、開始される。
【0081】
図2の曲線200は、インゴットの高さ(横軸、正規化されたスケール)の関数として、結晶化シリコン中のホウ素濃度(右の縦軸)を表す。得られるインゴットが、インゴットの高さ全体にわたって略4.2×1015原子数/cmに等しい一定のホウ素濃度を示すことが見て取れる。同様に、図2の曲線202は、インゴットの高さの関数として、結晶化シリコンの抵抗率(左の縦軸)を表す。この曲線202から、得られるインゴットが、インゴットの高さ全体にわたって略3.32Ω・cmに等しい一定の抵抗率を示すことが見て取れる。
【0082】
対照的に、曲線204は、上述の初期チャージのものと同様の特性の溶融チャージの結晶化によって得られてはいるが、シリコンの結晶化過程中に補充チャージの添加が行われていないシリコンインゴット中のホウ素濃度を、インゴットの高さの関数として、表す。この曲線204から、結晶化中にホウ素が偏析するので、Scheil‐Gulliver方程式に従って、結晶化と共にホウ素濃度が徐々に増加することが見て取れる。曲線206は、そのインゴットの高さの関数として、結晶化シリコンの抵抗率を表す。この曲線から、結晶化が終わると、インゴットの最上部に向けて、インゴットの抵抗率がゼロに向けて低下するのが見て取れる。
【0083】
従って、シリコンの結晶化中に補充チャージの添加を規則的に行うことによって得られたインゴットは、その長さ全体にわたって使用可能であり、例えば、光起電電池の製造用の基板が生成される。一方、略3.32Ω・cmから2.6Ω・cm(つまり、3.32Ω・cmの最適値に対して20%の変動)の間の抵抗率の基板を生成することが望まれる場合、補充チャージの添加無しで生成されたインゴットからは、そのインゴットの68%しか使用することができない。抵抗率の値の10%の変動が許容可能な場合、このインゴットの43%しか使用することができない。最後に、抵抗率の値の5%の変動が許容可能な場合、そのインゴットの24%しか、ウェーハの製造に使用することができない。一方、チャージの添加で結晶化させたインゴットは全体が使用可能である。
【0084】
非補償型シリコンのn型インゴット(ドーパント種としてリンのみを含み、その望まれる抵抗率が略4.89Ω・cmであるもの)の第二の実施形態について、これから説明する。
【0085】
初期溶融チャージは、0.05ppmw(つまり2.28×1015原子数/cm)の濃度でリンのみをドープしたマイクロエレクトロニクスシリコンから作られる。第一のチャージの質量は、インゴットの最終的な質量の略半分に等しい。本結晶化方法中にシリコンバスに加えられる補充チャージも、同じエレクトロニクス由来のシリコンに基づくものであるが、0.005ppmwの濃度でリンのみがドープされている。補充チャージの全質量は、インゴットの最終的な質量の半分である。
【0086】
補充チャージの添加は、結晶化半導体の質量が本結晶化方法の終わりに得られる結晶化半導体の全質量に対して略0.2%増加するたびに、行われる。本例では、添加は、インゴットの略10%が結晶化した時に開始される。
【0087】
図3の曲線300は、インゴットの高さ(横軸、正規化されたスケール)の関数として、結晶化シリコン中のホウ素濃度(右の縦軸)を表す。インゴットの最初の10%(つまり補充チャージの添加が行われていない)において増大し、その後補充チャージの添加が行われるとインゴットの高さの最大略85%まで一定となるホウ素濃度を、得られる結晶化シリコンが示すことが見て取れる。同様に、図3の曲線302は、インゴットの高さの関数として、結晶化シリコンの抵抗率(左の縦軸)を表す。この曲線302から、インゴットの最初の10%に対して低下し、インゴットの高さの最大略85%まで略4.89Ω・cmで一定になる抵抗率を、得られる結晶化シリコンが示すことが見て取れる。
【0088】
対照的に、曲線304は、0.0578ppmwの濃度でリンをドープしたマイクロエレクトロニクスシリコンの溶融チャージの結晶化によって得られたものではあるが、インゴットの結晶化過程中に補充チャージの添加が行われなかったシリコンインゴットのリン濃度を、インゴットの高さの関数として表す。この曲線304から、リンが結晶化中に偏析するので、Scheil‐Gulliver方程式に従って、インゴットの高さ方向全体に沿って、結晶化シリコン中のリン濃度が低下するのが見て取れる。曲線306は、このインゴットの高さの関数として、シリコンの抵抗率を表す。この曲線から、このインゴットの抵抗率が結晶化全体にわたってゼロに向けて低下することが見て取れる。
【0089】
補充チャージの添加で得られたインゴットから、4.89Ω・cmの最適値に対して最大20%抵抗率が変動する基板を生成することが望まれる場合、インゴットの91%が使用可能である。対照的に、この場合、補充チャージの添加無しで生成されるインゴットの30%しか使用することができない。抵抗率の値の10%の変動が許容される場合、添加で作製されたインゴットの85%が使用可能であるのに対して、添加無しで作製されたインゴットではその15%しか使用できない。最後に、抵抗率の値の5%の変動が許容可能な場合、添加で得られるインゴットの81%が使用可能であるのに対して、添加無しで作製されたインゴットのではその8%しか使用できない。
【0090】
上述の例では、補充チャージの添加は、インゴットの全高さの略10%が結晶化した時に、行われることが好ましい。何故ならば、インゴットの最初の10%は一般的に剥ぎ取られるからである。一変形例では、結晶化が開始され次第、補充チャージの添加を行うことができるが、インゴットの全高さの略90%が結晶化した時に、停止する。
【0091】
補償型のp型シリコンインゴット(リン及びホウ素の両方を含み、ホウ素のレベルは略2ppmwに設定され、その望まれる抵抗率が略0.63Ω・cmに等しい)の第三の実施形態について、これから説明する。
【0092】
初期溶融チャージは、2ppmwの濃度でホウ素を、9.5ppmwの濃度でリンをドープした冶金由来の精製シリコン製である。この第一のチャージの重さは、インゴットの最終的な質量の略半分である。本結晶化方法中にシリコンバスに加えられる補充チャージも、冶金由来のシリコンに基づくものであり、2ppmwの濃度でホウ素がドープされているが、2ppmwのリン濃度を有するものである。補充チャージの全質量はインゴットの最終的な質量の半分である。
【0093】
補充チャージの添加は、結晶化シリコンの質量が本結晶化方法の終わりに得られる半導体の全凝固質量に対して略0.2%増加するたびに、行われる。本例では、インゴットの略10%が結晶化した時に、添加を開始する。
【0094】
図4の曲線400は、インゴットの高さ(横軸、正規化されたスケール)の関数として、結晶化シリコン中の多数キャリアの全濃度na+nd(右の縦軸)を表す。得られる濃度が、インゴットの高さの略85%までは、バス内のチャージを希釈する補充チャージの添加の結果として、比較的僅かに増大することが見て取れる。同様に、図4の曲線402は、インゴットの高さの関数として、結晶化シリコンの抵抗率(左の縦軸)を表す。この曲線402から、得られるインゴットが、インゴットの最初の10%に対しては増加し、その後、インゴットの高さの略85%までは、補充チャージの添加の結果として、0.63Ω・cmの値付近で比較的一定になる抵抗率を示すことが見て取れる。導電型の発散が、リンがホウ素よりも偏析するという、リンとホウ素との分配係数の差の結果として、シリコンインゴットの全高さの略92%において急激に生じる。従って、インゴットの最後の8%はn型である。
【0095】
対照的に、曲線404は、2ppmwの濃度でホウ素を、10.42ppmwの濃度でリンをドープした精製冶金シリコンの溶融チャージの結晶化によって得られたものではあるが、インゴットの結晶化過程中に補充チャージの添加の行われなかったシリコンインゴット中の多数キャリアの全濃度na+ndを、インゴットの高さの関数として表す。この曲線404から、リン及びホウ素が結晶化中に偏析するので、Scheil‐Gulliver方程式に従って、na+nd濃度が、結晶化全体にわたって増加するのが見て取れる。曲線406は、インゴットの高さの関数として、結晶化シリコンの抵抗率を表す。この曲線から、このシリコンの抵抗率が、インゴットの高さの39.5%付近において、大きく変動し、無限大に向かい発散し、導電型(n型)を変化させることが見て取れる。
【0096】
その抵抗率の変動が0.63Ω・cmの最適値に対して最大20%である基板を生成することが望まれる場合、補充チャージの添加で生成されたインゴットから、そのインゴットの略85%が使用可能である。対照的に、この場合、補充チャージの添加無しで生成されたインゴットの9%しか使用することができない。抵抗率の値の10%の変動が許容される場合、添加で作製したインゴットの略81%が使用可能であるのに対して、添加無しで作製されたインゴットではその5%しか使用できない。最後に、抵抗率の値の5%の変動が許容可能である場合、補充チャージの添加で作製したインゴットの略44%が使用可能である一方、添加無しで作製したインゴットの3%しか使用することができない。
【0097】
補償型のp型シリコンインゴット(ホウ素のレベルが略1ppmwに等しくなるようにリン及びホウ素の両方を含み、望まれる抵抗率が略0.62Ω・cmに等しいもの)の第四の実施形態について、これから説明する。
【0098】
初期溶融チャージは、略1ppmw(つまり、1.3×1017原子数/cm)に等しい濃度でホウ素を、また、略4ppmw(1.82×1017原子数/cm)に等しい濃度でリンをドープした冶金由来の精製シリコンから作製される。その重さは、インゴットの最終的な質量の略半分である。本結晶化方法中にシリコンバスに加えられる補充チャージも、冶金由来のシリコンに基づくものであり、略1ppmwに等しい濃度でホウ素がドープされているが、略2ppmwに等しいリン濃度を有する。補充チャージの全質量は、インゴットの最終的な質量の略半分である。
【0099】
補充チャージの添加は、本結晶化方法の終わりに得られる結晶化半導体の全質量に対して、結晶化半導体の質量が略0.2%増加するたびに、行われる。本例では、添加は、インゴットの略10%が結晶化した時に、開始される。
【0100】
この場合、導電型の変化が、インゴットの全高さの略86%において生じる。対照的に、略1ppmwに等しい濃度でホウ素を、また、略4.35ppmwに等しい濃度でリンをドープした精製冶金シリコンのチャージから、結晶化中に補充チャージの添加無しでインゴットを作製することによって、導電型の変化が、インゴットの高さの略59.5%において観測される。
【0101】
補充チャージの添加で生成されたインゴットから、0.62Ω・cmの最適値に対して最大20%抵抗率が変動する基板を生成することが望まれる場合、そのインゴットの略73%が使用可能である。対照的に、この場合、補充チャージの添加無しで生成したインゴットの18%しか使用することができない。抵抗率の値の10%の変動が許容可能な場合、添加で作製されたインゴットの略68%が使用可能である一方、添加無しで作製したインゴットではその11%しか使用できない。最後に、抵抗率の値の5%の変動が許容可能な場合、添加で作製したインゴットの略64%が使用可能である一方、添加無しで作製したインゴットの6%しか使用することができない。
【0102】
上述の第三及び第四の実施形態では、初期チャージ中に含まれるホウ素が多いほど、同じ抵抗率を維持するのに必要なリン濃度が高くなることがわかる。従って、本方法は、ホウ素の豊富な(従って、所定の抵抗率に対してリンの豊富な)チャージの場合において、更に興味深いものと成る。例えば、略4ppmwに等しいホウ素濃度で0.63Ω・cm程度の抵抗率の初期チャージに対して、この第一のチャージは、略22.8ppmwに等しいリン濃度を有する。この場合、n型への変異が、インゴットの27%程度において生じる。4ppmwのホウ素及び4ppmwのリンの補充チャージの添加によって、インゴットの90%での変異前の抵抗率の値が0.67Ω・cmであるとして、インゴットの91%でのn型への急激な変化が生じる。
【符号の説明】
【0103】
100 炉
102 坩堝
103 溶融半導体
104 加熱素子
106 熱絶縁性側壁
108 冷却システム
110 分配装置
112 エンクロージャ
114 センサロッド
116 凝固先端
118 結晶化半導体
120 補充チャージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドーパントを含む少なくとも一つの第一の半導体チャージから、溶融半導体のバス(103)を形成する段階と、
前記溶融半導体(103)の凝固段階とを少なくとも含む半導体の凝固方法であって、
前記溶融半導体(103)の凝固過程中に、ドーパントを含む一つ以上の補充半導体チャージ(120)を前記溶融半導体のバス(103)に添加して、前記バス(103)内の溶融半導体の
【数1】

の項の値の変動を、ドーパント種に対する分配係数の値によって自然に達成される変動に対して、
【数2】

であれば、
【数3】

となり、
【数4】

であれば、
【数5】

となるように低下させ、また、前記バス(103)内の溶融半導体の
【数6】

の項の値の変動を、純粋なドーパント種の添加によって達成される変動に対して、
【数7】

であれば、
【数8】

及び
【数9】

となり、
【数10】

であれば、
【数11】

及び
【数12】

となるように低下させる一つ以上の段階を、凝固方法中の少なくとも一部の間に実施することを更に含み、ここで、
は、前記溶融半導体のバス(103)中の電子アクセプタードーパントiの濃度であり、
は、前記溶融半導体のバス(103)中の電子ドナードーパントjの濃度であり、
は、添加される補充チャージ(120)中の電子アクセプタードーパントiの濃度であり、
は、添加される補充チャージ(120)中の電子ドナードーパントjの濃度であり、
は、前記電子アクセプタードーパントiの分配係数であり、
は、前記電子ドナードーパントjの分配係数である、半導体の凝固方法。
【請求項2】
電子アクセプタードーパントiがホウ素原子であり、電子ドナードーパントjがリン原子である、請求項1に記載の半導体の凝固方法。
【請求項3】
前記補充半導体チャージ(120)が、
【数13】

及び
【数14】

という関係が保たれることを保証しながら、添加され、ここで、
dm/dtは、kg/s単位での添加速度であり、
dm/dtは、kg/s単位での結晶化速度である、請求項2に記載の半導体の凝固方法。
【請求項4】
前記補充半導体チャージ(120)が、結晶化速度未満の添加速度で添加されて、C<k及びC<kとなることを保証する、請求項3に記載の半導体の凝固方法。
【請求項5】
前記補充半導体チャージ(120)が固体状で半導体のバス(103)に添加されて、溶融され、溶融半導体のバス(103)と混合される、請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体の凝固方法。
【請求項6】
前記補充半導体チャージ(120)が、凝固方法の少なくとも一部の間において、液体状で半導体のバス(103)に添加される、請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体の凝固方法。
【請求項7】
複数の補充半導体チャージ(120)を凝固中に添加する際に、一つの補充半導体チャージが、凝固半導体(118)の質量が凝固方法の終わりに得られる凝固半導体の全質量に対して最大1%増加するたびに、添加される、請求項1から6のいずれか一項に記載の半導体の凝固方法。
【請求項8】
前記凝固方法の段階が、ブリッジマン型炉(100)内で行われ、半導体のバスが該炉(100)の坩堝(102)内に位置する、請求項1から7のいずれか一項に記載の半導体の凝固方法。
【請求項9】
前記炉(100)が、前記坩堝(102)が配置されるアルゴン雰囲気下の密閉されたエンクロージャ(112)を含む、請求項8に記載の半導体の凝固方法。
【請求項10】
前記補充半導体チャージ(120)が固体状で半導体のバス(103)に添加される際に、該添加が、前記補充半導体チャージ(120)の予熱も行う分配装置(110)を用いて、行われる、請求項1から9のいずれか一項に記載の半導体の凝固方法。
【請求項11】
前記補充半導体チャージ(120)の添加が行われる時点が、分配装置(110)の制御手段によって決められる、請求項7に記載の半導体の凝固方法。
【請求項12】
前記第一の半導体チャージ中の少なくとも一種のドーパントの濃度が、前記補充半導体チャージ(120)中の同じ種類のドーパントの濃度と異なる、請求項1から11のいずれか一項に記載の半導体の凝固方法。
【請求項13】
前記溶融半導体が、インゴット又はリボンの形状に凝固される、請求項1から12のいずれか一項に記載の半導体の凝固方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−189253(P2010−189253A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−236(P2010−236)
【出願日】平成22年1月4日(2010.1.4)
【出願人】(502124444)コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ (383)
【Fターム(参考)】