説明

緊急警報放送受信装置

【課題】緊急警報放送を受信したとき、周辺に位置する情報端末に緊急警報情報を伝達することが可能な緊急警報放送受信装置を実現する。
【解決手段】緊急警報放送受信装置は、緊急警報放送処理部(12)、端末検索部(13)、情報生成部(14)及び短距離無線通信部(15)を備えている。緊急警報放送処理部(12)は、受信した緊急警報放送の内容を抽出する。端末検索部(13)は、緊急警報放送の受信があったとき、短距離無線通信部(15)と通信可能な周辺の情報端末を検索する。情報生成部(14)は、緊急警報放送処理部(12)によって抽出された内容に基づいて緊急警報情報を生成する。短距離無線通信部(15)は、情報生成部(14)によって生成された緊急警報情報を端末検索部(13)によって検索された情報端末に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊急警報放送受信装置に関し、特に、緊急警報放送を利用した緊急警報情報の伝達技術に属する。
【背景技術】
【0002】
地震や津波などの災害発生時に、放送事業者等から災害地域に対して緊急警報放送が行われる。これまで緊急警報放送の受信装置は、家庭内での据え置き型が一般的であった。近年、携帯電話端末などにもテレビジョン放送受信機能が搭載されたことにより、外出先でも緊急警報放送を視聴することが可能となっている。
【0003】
緊急警報放送に先立って放送開始を予告するメールが送信され、これを受信した緊急警報放送受信装置が、当該メールに続いて発信される緊急警報放送を受信し、予め設定された通報形態により当該緊急警報放送を通報する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、携帯電話端末に搭載されているメール機能を用いて、緊急警報放送から抽出した緊急警報情報を予め登録された宛先に送信することにより、他の情報端末に緊急警報情報を伝達する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−336227号公報
【特許文献2】特開2005−117584号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
緊急警報放送を受信するには、携帯電話等の情報端末がテレビジョン放送受信機能を備えている必要がある。すなわち、テレビジョン放送受信機能を備えていない情報端末は緊急警報放送を受信できない。前者の技術はテレビジョン放送受信機能を備えた情報端末を対象としているため、テレビジョン放送受信機能を備えていない情報端末は、相変わらず緊急警報放送を受信できないままである。後者の技術は、緊急警報情報の送信先を予め登録する必要があるため、限定された情報端末にしか緊急警報情報を伝達できない。また、メール機能を用いて伝達を行うため、メール送受信システムに負荷がかかり緊急警報情報の伝達に時間がかかることが予測される。
【0006】
上記問題に鑑み、本発明は、緊急警報放送を受信したとき、周辺に位置する不特定の情報端末に緊急警報情報を伝達することができる緊急警報放送受信装置を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明が講じた手段は、緊急警報放送を受信可能な装置として、短距離無線通信部と、受信した緊急警報放送の内容を抽出する緊急警報放送処理部と、当該装置の周辺に所在する情報端末であって、前記短距離無線通信部と通信可能な情報端末を検索する端末検索部と、前記緊急警報放送処理部によって抽出された内容に基づいて、緊急警報情報を生成する情報生成部とを備えたものとする。ここで、前記短距離無線通信部は、前記情報生成部によって生成された緊急警報情報を、前記端末検索部によって検索された情報端末に送信するものとする。
【0008】
これによると、受信した緊急警報放送の内容が緊急警報放送処理部によって抽出され、抽出された内容に基づいて情報生成部によって生成された緊急警報情報が、端末検索部によって検索された周辺の情報端末に短距離無線通信部によって送信される。したがって、緊急警報放送を受信したとき、短距離無線通信部と通信可能な周辺の情報端末に緊急警報情報を伝達することができる。
【0009】
具体的には、前記情報生成部は、前記緊急警報放送の警報対象地域及び警報の種類を示す情報及び前記緊急警報放送の発信元の放送局を特定する情報のいずれかを含む前記緊急警報情報を生成するものとする。
【0010】
また、具体的には、前記情報生成部は、前記緊急警報放送の静止画像及び動画像のいずれかを含む前記緊急警報情報を生成するものとする。
【0011】
好ましくは、前記緊急警報放送処理部は、前記緊急警報放送の発信元の放送局を特定するものとし、上記の緊急警報放送受信装置は、前記緊急警報放送の受信があったとき、前記緊急警報放送処理部によって特定された放送局の放送コンテンツをユーザインタフェースを介して提示する提示制御部を備えたものとする。
【発明の効果】
【0012】
以上、本発明によると、緊急警報放送を受信したとき、周辺の情報端末に緊急警報情報を伝達することができる。また、通信手段として短距離無線通信を用いるため、メール送受信システムに負荷をかけることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
(緊急警報放送受信装置の実施形態)
図1は、緊急警報放送受信装置の構成の一例を示す。本緊急警報放送受信装置1Aは、アンテナ10、放送受信部11、緊急警報放送処理部12、端末検索部13、情報生成部14、短距離無線通信部15、提示制御部16及びユーザインタフェース17を備えた携帯電話端末である。なお、緊急警報放送受信装置1Aは、デジタル放送における緊急警報放送を受信する。
【0014】
放送受信部11は、アンテナ10を介して放送波を受信する。緊急警報放送処理部12は、放送受信部11によって受信された放送波を受け、これから緊急警報放送の内容を抽出する。図2は、放送コンテンツの構成例を示す。放送コンテンツは、映像、音声、番組特定情報、番組配列情報及び字幕・文字スーパーが多重化されたものである。多重化の際には、伝送多重化制御信号TMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)が付加される。緊急警報放送の場合は、TMCCの緊急警報放送用起動フラグが“1”に設定され、番組特定情報のPAT(Program Map Table)の緊急情報記述子に緊急警報情報が設定される。
【0015】
図3は、緊急情報記述子のデータ構造を示す。緊急情報記述子は、記述子タグ101、記述子長102、サービス識別103、開始/終了フラグ104、信号種別105、地域符号長106及び地域符号107等により構成される。記述子タグ101には、記述子の種類を特定するための値が設定される。記述子長102には、記述子のデータサイズが設定される。サービス識別103には、放送番組番号が設定される。開始/終了フラグ104は、緊急放送の開始及び終了を示す1ビットのフラグであり、“1”の場合は緊急警報信号が開始もしくは放送中であることを示し、“0”の場合は緊急警報信号が終了したことを示している。信号種別105は、緊急警報信号の種別を示す1ビットのフィールドであり、“0”の場合は、大規模地震や災害による警戒宣言の発令又は地方自治体(知事)からの要請により発せられた第1種開始信号であることを示している。また、“1”の場合は、津波警報の発令により発せられた第2種開始信号であることを示している。地域符号長106には、地域符号107のデータサイズが設定される。地域符号107は、郵政省告示昭60第405号に規定されたものである。
【0016】
緊急警報放送処理部12は、図2に示したTMCCの緊急警報放送用フラグが“1”になると、図3に示した緊急情報記述子の開始/終了フラグ104の値を解析する。開始/終了フラグ104が“1”のとき、受信した放送波から、図3に示した緊急情報識別子の地域符号107及び信号種別105等の緊急警報放送の内容を抽出する。また、場合によっては、緊急警報放送処理部12は、緊急警報放送の発信元の放送局を特定する。
【0017】
図1に戻って、端末検索部13は、緊急警報放送受信装置1Aの周辺に所在する情報端末であって、後述する短距離無線通信部15と通信可能な情報端末を検索する。情報生成部14は、緊急警報放送処理部12によって抽出された緊急警報放送の内容に基づいて、緊急警報情報を生成する。図4は、緊急警報情報の例を示す。図4(a)は、緊急警報放送処理部12によって抽出された緊急情報識別子の地域符号107及び信号種別105に基づいて、警報対象地域と警報の種類とを記したテキストである。図4(b)は、上記の内容に、緊急警報放送の送信元の放送局を示す情報として緊急警報放送へのリンクを追加したものである。緊急警報情報は、緊急警報放送のコンテンツをキャプチャした静止画や動画を含んでいてもよい。短距離無線通信部15は、例えば、Bluetooth(登録商標)又はIrDAである。短距離無線通信部15は、情報生成部14によって生成された緊急警報情報を、端末検索部13によって検索された情報端末に送信する。
【0018】
提示制御部16は、受信した放送波から緊急警報放送処理部12によって特定された緊急警報放送の送信元の放送局を選局して、緊急警報放送のコンテンツをユーザインタフェース17を介してユーザに提示する。ユーザインタフェース17は、液晶画面やスピーカ等を含む。具体的には、提示制御部16は、緊急警報放送の受信があったとき、緊急警報放送受信装置1Aにおいて、ユーザがブラウザ使用中やメール作成中である場合には、これらの操作を中断して緊急警報放送のコンテンツを画面に表示する。また、緊急警報放送受信装置1Aにおいて、ユーザが通話中や操作されていない場合には、アラーム音を鳴らす等して緊急警報放送の受信をユーザに通知してもよい。
【0019】
以下に、図5のフローチャートを参照しながら、緊急警報放送受信装置1Aの動作について説明する。放送波が受信されると(S11)、放送コンテンツに含まれるTMCCの緊急警報放送用フラグが“1”であるか否かが判定される(S12)。緊急警報放送用フラグが“1”の場合(S12のYES肢)、PMTの緊急情報記述子の値が解析される(S13)。緊急情報記述子の開始/終了フラグ104が“1”ならば(S14のYES肢)、ステップS11において受信された放送波から、緊急警報放送の内容が抽出される(S15)。
【0020】
また、短距離無線通信可能な周辺の情報端末が検索され(S16)、ステップS15において抽出された緊急警報放送の内容に基づいて、緊急警報情報が生成される(S17)。ステップS17において生成される緊急警報情報は、例えば、緊急警報放送の開始と警報の種類を示すものである。ステップS17において生成された緊急警報情報は、ステップS16において検索された情報端末に送信されて(S18)処理が終了する。
【0021】
一方、TMCCの緊急警報放送用フラグが“1”でないと判定された場合(S12のNO肢)、又は緊急情報記述子の開始/終了フラグが“1”でないと判定された場合(S14のNO肢)は、ステップS19において緊急警報放送の受信中であるか否かが判定される。緊急警報放送の受信中である場合には(S19のYES肢)、ステップS18において緊急警報情報が送信された端末に、緊急警報放送の終了を示す情報が送信されて(S20)処理が終了する。また、緊急警報放送の受信中でない場合にも(S19のNO肢)処理が終了する。
【0022】
なお、ステップS16の実行タイミングはこれに限るものではなく、ステップS18が実行されるまでの間であればよい。また、ステップS17において生成される緊急警報情報が、図4に示したものや、緊急警報放送の静止画又は動画を含むものである場合には、ステップS19は省略可能である。
【0023】
(情報端末の実施形態)
次に、上記の緊急警報放送受信装置1Aから送信された緊急警報情報を受信する情報端末について説明する。図1に示した緊急警報放送受信装置1Aと同一の符号を付したものについては、同じ機能を有するものとしその説明を省略する。図6は、情報端末の構成の一例を示す。本情報端末1Bは、短距離無線通信部15、提示制御部16、ユーザインタフェース17及び緊急警報通信処理部18を備えた携帯電話端末である。なお、情報端末1Bは、図6に示したようにアンテナ10および放送受信部11を有していてもよい。
【0024】
緊急警報通信処理部18は、短距離無線通信部15が受信した情報から、緊急警報放送受信装置1Aから送信された緊急警報情報を抽出する。具体的には、緊急警報通信処理部18は、短距離無線通信部15が受信した情報に緊急警報情報であることを示す所定の信号が含まれているか否かによって緊急警報情報を判別して抽出する。
【0025】
提示制御部16は、緊急警報通信処理部18によって抽出された緊急警報情報をユーザインタフェース17を介してユーザに提示する。具体的には、提示制御部16は、緊急警報通信処理部18によって図4(a)に示したテキスト又は緊急警報放送の動画又は静止画を含む緊急警報情報が抽出されたとき、これらの緊急警報情報を提示する。
【0026】
以上、本実施形態によると、緊急警報放送受信装置が緊急警報放送を受信したとき、周辺の情報端末に緊急警報情報を送信することができる。さらに、この送信には短距離無線通信が用いられるため、メール送受信システムに負荷をかけることがない。
【0027】
また、情報端末が特にテレビジョン放送受信機能を備えていないであっても、緊急警報放送を受信した緊急警報放送受信装置から送信された緊急警報情報を受信することにより、緊急警報情報をユーザに提示することが可能となる。
【0028】
なお、情報端末1Bがテレビジョン放送受信機能を備えている場合には、緊急警報通信処理部18は、緊急警報情報が図4(b)に示したような緊急警報放送へのリンクや、緊急警報放送の開始を示す情報を含むものであるとき、当該緊急警報情報から緊急警報放送の発信元の放送局を特定してもよい。この場合、放送受信部11は、緊急警報通信処理部18によって特定された放送局から発信された緊急警報放送をアンテナ10を介して受信する。また、提示制御部16は、当該緊急警報放送のコンテンツをユーザインタフェース17を介してユーザに提示する。したがって、より詳細な緊急警報情報を提示可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明に係る緊急警報放送受信装置は、緊急警報放送を受信したとき、周辺の情報端末に緊急警報情報を伝達可能であるため、携帯型のデジタルテレビジョン放送受信装置や放送受信機能を備えた携帯電話機等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】緊急警報放送受信装置の構成の一例を示す図である。
【図2】放送コンテンツの構成例を示す図である。
【図3】緊急情報記述子のデータ構造を示す図である。
【図4】情報生成部によって生成される緊急警報情報の例を示す図である。
【図5】図1に示した緊急警報放送受信装置における処理のフローチャートである。
【図6】情報端末の構成の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1A 緊急警報受信装置
11 放送受信部
12 緊急警報放送処理部
13 端末検索部
14 情報生成部
15 短距離無線通信部
16 提示制御部
17 ユーザインタフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緊急警報放送を受信可能な装置であって、
短距離無線通信部と、
受信した緊急警報放送の内容を抽出する緊急警報放送処理部と、
当該装置の周辺に所在する情報端末であって、前記短距離無線通信部と通信可能な情報端末を検索する端末検索部と、
前記緊急警報放送処理部によって抽出された内容に基づいて、緊急警報情報を生成する情報生成部とを備え、
前記短距離無線通信部は、前記情報生成部によって生成された緊急警報情報を、前記端末検索部によって検索された情報端末に送信する
ことを特徴とする緊急警報放送受信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の緊急警報放送受信装置において、
前記情報生成部は、前記緊急警報放送の警報対象地域及び警報の種類を示す情報及び前記緊急警報放送の発信元の放送局を特定する情報のいずれかを含む前記緊急警報情報を生成するものである
ことを特徴とする緊急警報放送受信装置。
【請求項3】
請求項1に記載の緊急警報放送受信装置において、
前記情報生成部は、前記緊急警報放送の静止画像及び動画像のいずれかを含む前記緊急警報情報を生成するものである
ことを特徴とする緊急警報放送受信装置。
【請求項4】
請求項1に記載の緊急警報放送受信装置において、
前記緊急警報放送処理部は、前記緊急警報放送の発信元の放送局を特定するものであり、
前記緊急警報放送の受信があったとき、前記緊急警報放送処理部によって特定された放送局の放送コンテンツをユーザインタフェースを介して提示する提示制御部を備えた
ことを特徴とする緊急警報放送受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−17008(P2008−17008A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−184363(P2006−184363)
【出願日】平成18年7月4日(2006.7.4)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】