説明

置換されたピロリジン−2−オン、ピペリジン−2−オン及びイソチアゾリジン−1,1−ジオキシド、KV1.5カリウムチャネル遮断薬としてのそれらの使用並びにそれらを含む医薬製剤

本発明は、式I
【化1】


(式中、A、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びnは、特許請求の範囲に記載された意味を有する)の化合物に関する。化合物は、特に心房性不整脈、例えば心房細動(AF)又は心房粗動を治療及び予防するための抗不整脈薬活性成分として特に適切である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式I:
【化1】

(式中、A、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びnは、下記の意味を有する)の化合物、その製造及び特に医薬におけるその使用に関する。
【0002】
式Iの発明化合物は、以前には記載されていない。それは、いわゆるKv1.5カリウムチャネル上で作用し、そしてヒト心房において超急速活性化遅延整流を表わすカリウム電流を阻害する。さらに、その化合物は、アセチルコリン依存性カリウムチャネルKACh、及び2PドメインカリウムチャネルTASK-1のような心房に特異的な他のカリウムチャネル上でも作用する。従って、その化合物は、特に心房性不整脈、例えば心房細動(AF)又は心房粗動を治療及び予防するための抗不整脈活性成分としてきわめて適切である。
【背景技術】
【0003】
心房細動(AF)及び心房粗動は、最も一般的な持続性の心不整脈である。発病率は年齢が高まるにつれて上昇し、例えば脳卒中のような致命的な続発症に至ることが多い。米国では毎年、例えば約3百万人の米国人がAFを発症して8万人を超える人が脳卒中に至る。現在使用されているクラスI及びIII抗不整脈薬はAFの再発率を減らすことができるが、それらは潜在的に催不整脈副作用があるため使用が制限される。このため、心房性不整脈を治療するためのより良好な薬剤を開発する医学的必要性が大きい。
【0004】
いわゆるリエントリー脱分極波がほとんどの上室性不整脈の根底にあることがわかっている。このようなリエントリーは、心臓組織が遅い伝導性と同時に非常に短い不応期を有する場合に生じる。活動電位の延長による心筋不応期の増加が、不整脈の終結とその発症予防のために容認された機構である。活動電位の長さは、種々のK+チャネルを通して細胞から流出するK+電流を再分極する程度によって実質的に測定される。これに関して重要なのは、いわゆる遅延整流IKであり、それは3つの異なる成分、IKr、IKs及びIKurからなる。
【0005】
最も知られているクラスIII抗不整脈薬(例えばドフェチリド又はd-ソタロール)は、ヒト心室細胞及び心房中で検出される急速活性化カリウムチャネルIKrを主に又は独占的に遮断する。しかしながら、これらの化合物は、心拍数が低い又は正常なときに不整脈の危険性が高まり、そして観察される不整脈は特にトルサード・ド・ポアンツ(torsades de pointes)と称するものであることがわかっている。場合によっては致命的となるこのような高い危険性に加えて、心拍数が低い場合、ちょうど効果が必要な時である頻脈状態
下でIKr遮断薬の有効性が低下することが見出された(「負の頻度依存性」)。
【0006】
遅延整流IKurの「特に急速に」活性化して非常にゆっくりと不活性化する成分(=超急速活性化遅延整流)は、Kv1.5チャネルに相当し、ヒト心房における再分極の持続期間にとって非常に重要である。従って、IKr又はIKsの阻害と比べて、IKurカリウム外向き電流の阻害は、心房性活動電位を延長し、そしてさらに心房性不整脈を終結又は予防するための特に有効な方法である。ヒト活動電位の数学モデルでは、慢性心房細動の病的状態下でIKur遮断の正の効果を特に正確に表す必要があることが示唆されている(M. Courtemanche, R. J. Ramirez, S. Nattel, Cardiovascular Research 1999, 42, 477-489:“Ionic targets for drug therapy and atrial fibrillation-induced electrical remodeling: insights from a mathematical model”)。
【0007】
ヒト心室中にも生じるIKr及びIKsとは対照的に、IKurは心室ではなくヒト心房において重要な役割を果たす。このため、IKur電流を阻害する場合、IKr又はIKsの遮断とは対照的に心室の催不整脈効果の危険性が初めから排除される(Z. Wang et al, Circ. Res. 73, 1993, 1061 - 1076:“Sustained Depolarisation-Induced Outward Current in Human Atrial Myocytes”; G.-R. Li et al, Circ. Res. 78, 1996, 689 - 696:“Evidence for Two Components of Delayed Rectifier K+-Current in Human Ventricular Myocytes”; G. J. Amos et al, J. Physiol. 491, 1996, 31 - 50:“Differences between outward currents of human atrial and subepicardial ventricular myocytes”)。
【0008】
しかし、IKur電流又はKv1.5チャネルを心房選択的に遮断することによって作用する抗不整脈薬は、これまで市場で入手できなかった。Kv1.5チャネルにおける遮断効果は多くの活性医薬成分(例えばキニジン、ブピバカイン又はプロパフェノン)について記載されてきたが、これらの場合のそれぞれにおけるKv1.5遮断は、物質の他の主効果に加えた副作用でしかない。
【0009】
近年の多くの特許出願には、Kv1.5チャネル遮断薬として種々の物質が記載されている。これらの物質をまとめたものと詳細な議論が最近発表された(J. Brendel, S. Peukert; Curr. Med. Chem. - Cardiovascular & Hematological Agents, 2003, I, 273-287;“Blockers of the Kv1.5 Channel for the Treatment of Atrial Arrhythmias”)。しかし、これまで開示され、その中に記載された全てのKv1.5遮断薬は、本出願の本発明の化合物とは完全に異なるタイプの構造を有する。さらに、これまで開示されたすべての化合物について、効果における臨床データ及びヒトにおける許容度が今のところ開示されていない。前臨床研究から薬剤まで全ての臨床的なハードルの克服に成功するのは、僅かな比率の活性成分であることは経験的に明らかであるため、新規の有望な物質が引き続き必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで驚くべきことに、本発明の式Iの化合物及び/又はその医薬上許容しうる塩は、ヒトKv1.5チャネルの強力な遮断薬であることが見出された。
さらに、式Iの化合物及び/又はその医薬上許容しうる塩は、主に心房で同様に生じるアセチルコリン活性化カリウムチャネルKACh及びTASK-1チャネル上でも作用する(Krapivinsky G., Gordon E.A., Wickman K., Velimirovic B., Krapivinsky L., Clapham D.E.:“The G-protein-gated atrial K+ channel IKACh is a heteromultimer of two inwardly rectivying K+-channel proteins”, Nature 374 (1995) 135-141; Liu, W., Saint, D.A.:“Heterogeneous expression of tandem-pore K+ channel genes in adult and embryonic rat heart quantified by real-time polymerase chain reaction”, Clin. Exp. Pharmacol. Physiol. 31 (2004) 174-178; Jones S.A., Morton, M.J., Hunter M., Boyett M.R.:“Expression of TASK-1, a pH-sensitive twin-pore domain K+ channel, in rat myocytes”, Am. J. Physiol. 283 (2002) H181-H185)。
【0011】
従って、式Iの化合物及び/又はその医薬上許容しうる塩は、心房に特異的な複数のカリウムチャネルにおけるこの複合効果のため、特に有益な安全性プロフィールを有する新規な抗不整脈薬として使用することができる。本化合物は、上室性不整脈、例えば心房細動又は心房粗動の治療に特に適している。
式Iの化合物及び/又はその医薬上許容しうる塩は、心房に特異的なカリウムチャネル、例えばKv1.5、KACh及び/又はTASK-1が、例えば低い投与量の使用によって部分的にしか阻害されない疾患の治療及び予防に使用することもできる。
【0012】
式Iの化合物及び/又はその医薬上許容しうる塩は、K+チャネルが介在する疾患を治療及び予防するため、K+チャネル遮断効果を有する薬剤の製造に使用することができる。さらに、式Iの化合物及び/又はその医薬上許容しうる塩は、活動電位を延長することによって排除できる心不整脈の治療又は予防に使用することができる。
【0013】
式Iの化合物及び/又はその医薬上許容しうる塩は、既存の心房細動又は粗動を終結して洞調律を回復するのに使用することができる(電気除細動)。さらに、その物質は、新しい細動イベントの発症に対する感受性を軽減する(洞調律の維持、予防)。さらに、その物質は、生命にかかわる心室性不整脈(心室細動)を予防するのに有効であり、そしていわゆるQT間隔の望ましくない延長を同時にもたらすことなしに心臓突然死から保護できることが観察された。
【0014】
式Iの化合物及び/又はその医薬上許容しうる塩は、リエントリー不整脈、上室性不整脈、心房細動及び/又は心房粗動を治療又は予防する薬剤を製造するために使用することができる。
【0015】
さらに、式Iの化合物及び/又はその医薬上許容しうる塩は、心不全、特に弛緩性心不全を治療又は予防するための及び心房収縮性を高めるための薬剤の製造に適切である。式Iの化合物及び/又はその医薬上許容しうる塩は、TASKカリウムチャネル、例えばサブタイプTASK-1及びTASK-3、特にサブタイプTASK-1を阻害する。式Iの化合物及び/又はその医薬上許容しうる塩は、TASK阻害性の性質があるため、活性化、すなわち活性化されたTASK-1によって生じる疾患、及びTASK-1関連の損傷によって二次的に生じる疾患の予防及び治療に適切である。
【0016】
また、式Iの化合物及び/又はその医薬上許容しうる塩は、TASKチャネルにおける物質の効果のため、呼吸器障害、特に睡眠時無呼吸、神経変性障害及び癌、例えば睡眠関連の呼吸器障害、中枢性及び閉塞性睡眠時無呼吸、チェーンストークス呼吸、いびき、呼吸駆動の中枢性障害(impaired central respiratory drive)、乳児突然死、手術後の低酸素及び無呼吸、筋肉関連の呼吸器障害、長期的な人工呼吸後の呼吸器障害、高所順応と関連する呼吸器障害、低酸素及び高炭酸ガスによる急性及び慢性の肺障害、神経変性障害、痴呆、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、癌、乳癌、肺癌、大腸癌及び前立腺癌を治療又は予防する薬剤の製造に適切である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、式I:
【化2】

の化合物並びにその医薬上許容しうる塩及びトリフルオロ酢酸塩に関する。
【0018】
式中、意味は、
AはC、S又はS=Oであり;
nは0、1、2又は3であり;
R1はフェニル、ピリジル、チエニル、ナフチル、キノリニル、ピリミジニル又はピラジニルであり、
ここで、これらのアリール基はそれぞれ非置換又はF、Cl、Br、I、CN、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルコキシ、OCF3、メチルスルホニル、CF3、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルキル、ジメチルアミノ、スルファモイル、アセチル及びメチルスルホニルアミノからなる群より選ばれる1、2若しくは3個の置換基によって置換されており;
又は
R1は3、4、5、6又は7個のC原子を有するシクロアルキルであり;
R2はフェニル、ピリジル、チエニル、ナフチル、キノリニル、ピリミジニル又はピラジニルであり、
ここで、これらのアリール基はそれぞれ非置換又はF、Cl、Br、I、CN、COOMe、CONH2、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルコキシ、OCF3、OH、メチルスルホニル、CF3、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルキル、ジメチルアミノ、スルファモイル、アセチル及びメチルスルホニルアミノからなる群より選ばれる1、2若しくは3個の置換基によって置換されており;
【0019】
R3はCpH2p-R8であり;
pは0、1、2、3、4又は5であり;
R8はCH3、CH2F、CHF2、CF3、3、4、5、6若しくは7個のC原子を有するシクロアルキル、C≡CH、C≡C-CH3、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルコキシ、フェニル又はピリジルであり、
ここで、フェニル及びピリジルは非置換又はF、Cl、Br、I、CF3、OCF3、CN、COOMe、CONH2、COMe、OH、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルキル、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルコキシ、ジメチルアミノ、スルファモイル、メチルスルホニル及びメチルスルホニルアミノからなる群より選ばれる1、2若しくは3個の置換基によって置換されており;
R4は水素又は1、2若しくは3個のC原子を有するアルキルであり;
R5は水素又は1、2若しくは3個のC原子を有するアルキルであり;
R6及びR7は相互に独立して水素、F又は1、2若しくは3個のC原子を有するアルキルである。
【0020】
一実施態様において好ましい式Iの化合物は、式中、意味が、
AはC、S又はS=Oであり;
nは0、1、2又は3であり;
R1はフェニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-チエニル、3-チエニル、1-ナフチル、2-ナフチル、2-キノリニル、3-キノリニル、4-キノリニル、5-キノリニル、6-キノリニル、7-キノリニル、8-キノリニル、2-ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ピリミジニル、2-ピラジニル、3-ピリダジニル又は4-ピリダジニルであり、
ここで、これらのアリール基はそれぞれ非置換又はF、Cl、Br、I、CN、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルコキシ、OCF3、メチルスルホニル、CF3、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルキル、ジメチルアミノ、スルファモイル、アセチル及びメチルスルホニルアミノからなる群より選ばれる1、2若しくは3個の置換基によって置換されており;
又は
R1はシクロヘキシルであり;
【0021】
R2はフェニル、2-ピリジル、3-ピ」リジル、4-ピリジル、2-チエニル、3-チエニル、1-ナフチル、2-ナフチル、2-キノリニル、3-キノリニル、4-キノリニル、5-キノリニル、6-キノリニル、7-キノリニル、8-キノリニル、2-ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ピリミジニル、2-ピラジニル、3-ピリダジニル又は4-ピリダジニルであり、
ここで、これらのアリール基はそれぞれ非置換又はF、Cl、Br、I、CN、COOMe、CONH2、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルコキシ、OCF3、OH、メチルスルホニル、CF3、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルキル、ジメチルアミノ、スルファモイル、アセチル及びメチルスルホニルアミノからなる群より選ばれる1、2若しくは3個の置換基によって置換されており;
【0022】
R3はCpH2p-R8であり;
pは0、1、2、3、4又は5であり;
R8はCH3、CH2F、CHF2、CF3、3、4、5、6若しくは7個のC原子を有するシクロアルキル、C≡CH、C≡C-CH3、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルコキシ、フェニル又は2-ピリジルであり、
ここで、フェニル及び2-ピリジルは、非置換又はF、Cl、Br、I、CF3、OCF3、CN、COOMe、CONH2、COMe、OH、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルキル、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルコキシ、ジメチルアミノ、スルファモイル、メチルスルホニル及びメチルスルホニルアミノからなる群より選ばれる1、2若しくは3個の置換基によって置換されており;
R4は水素又は1、2若しくは3個のC原子を有するアルキルであり;
R5は水素又は1、2若しくは3個のC原子を有するアルキルであり;
R6及びR7は相互に独立して水素、F又は1、2若しくは3個のC原子を有するアルキルである;
化合物並びにその医薬上許容しうる塩及びトリフルオロ酢酸塩である。
【0023】
特に好ましい式Iの化合物は、式中、
AはC又はS=Oであり;
nは0、1、2又は3であり;
R1はフェニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-チエニル、3-チエニル、1-ナフチル、2-ナフチル、2-キノリニル、3-キノリニル、4-キノリニル、5-キノリニル、6-キノリニル、7-キノリニル又は8-キノリニルであり、
ここで、これらのアリール基はそれぞれ非置換又はF、Cl、Br、I、CN、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルコキシ、OCF3、メチルスルホニル、CF3及び1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルキルからなる群より選ばれる1若しくは2個の置換基によって置換されており、
又は
R1はシクロヘキシルであり;
【0024】
R2はフェニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-チエニル、3-チエニル、1-ナフチル、2-ナフチル、2-キノリニル、3-キノリニル、4-キノリニル、5-キノリニル、6-キノリニル、7-キノリニル又は8-キノリニルであり、
ここで、これらのアリール基はそれぞれ非置換又はCl、Br、I、CN、CF3、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルキルからなる群より選ばれる1若しくは2個の置換基によって置換されており、
R3はCpH2p-R8であり;
pは0、1、2、3又は4であり;
R8はCH3、CH2F、CHF2、CF3、3、4、5若しくは6個のC原子を有するシクロアルキル、C≡CH、C≡C-CH3、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルコキシ、フェニル又は2-ピリジルであり、
ここで、フェニル及び2-ピリジルは非置換又はF、Cl、Br、I、CF3、OCF3、CN、COOMe、CONH2、COMe、OH、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルキル及び1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルコキシからなる群より選ばれる1若しくは2個の置換基によって置換されており、
R4は水素又は1、2若しくは3個のC原子を有するアルキルであり;
R5は水素又は1、2若しくは3個のC原子を有するアルキルであり;
R6及びR7は相互に独立して水素、F又は1、2若しくは3個のC原子を有するアルキルである;
化合物並びにその医薬上許容しうる塩及びトリフルオロ酢酸塩である。
【0025】
一実施態様には、AがC又はSOとして、例えばCとして定義される式Iの化合物が記載されている。
さらなる実施態様には、nが1又は2である式Iの化合物が記載されている。
さらなる実施態様には、R1がフェニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-チエニル、3-チエニル、1-ナフチル、2-ナフチル、2-キノリニル、3-キノリニル、4-キノリニル、5-キノリニル、6-キノリニル、7-キノリニル、8-キノリニル、2-ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ピリミジニル、2-ピラジニル、3-ピリダジニル、4-ピリダジニル又はシクロヘキシル、好ましくはフェニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-チエニル、3-チエニル、1-ナフチル、2-ナフチル、2-キノリニル、3-キノリニル、4-キノリニル、5-キノリニル、6-キノリニル、7-キノリニル、8-キノリニル又はシクロヘキシル、例えばフェニル、3-ピリジル、4-ピリジル、1-ナフチル、8-キノリニル又はシクロヘキシルであり、ここで、それぞれのアリール基、例えばフェニルは非置換又はF、Cl、Br、I、CN、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルコキシ、OCF3、メチルスルホニル、CF3、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルキル、ジメチルアミノ、スルファモイル、アセチル及びメチルスルホニルアミノ、好ましくはF、Cl、Br、I、CN、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルコキシ、OCF3、メチルスルホニル、CF3及び1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルキルからなる群より選ばれる1、2若しくは3個の置換基によって置換されており、R1は、例えばフェニル、3-ピリジル、4-ピリジル、1-ナフチル、8-キノリニル又はシクロヘキシルとして定義され、ここで、フェニルは非置換又はF、Cl、メトキシ、OCF3、メチルスルホニル若しくはCF3の群から選ばれる1若しくは2個の置換基によって置換されている式Iの化合物が記載されている。
【0026】
さらなる実施態様には、R2がフェニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-チエニル、3-チエニル、1-ナフチル、2-ナフチル、2-キノリニル、3-キノリニル、4-キノリニル、5-キノリニル、6-キノリニル、7-キノリニル、8-キノリニル、2-ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ピリミジニル、2-ピラジニル、3-ピリダジニル又は4-ピリダジニル、好ましくはフェニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-チエニル、3-チエニル、1-ナフチル、2-ナフチル、2-キノリニル、3-キノリニル、4-キノリニル、5-キノリニル、6-キノリニル、7-キノリニル又は8-キノリニル、例えばフェニル、2-ピリジル、3-ピリジル、2-チエニル又は8-キノリニルであり、ここで、これらのアリール基はそれぞれ非置換又はF、Cl、Br、I、CN、COOMe、CONH2、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルコキシ、OCF3、OH、メチルスルホニル、CF3、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルキル、ジメチルアミノ、スルファモイル、アセチル及びメチルスルホニルアミノ、好ましくはF、Cl、Br、I、CN、CF3、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルキルからなる群より選ばれる1、2若しくは3個の置換基によって置換されており、R1は、例えばフェニル、2-ピリジル、3-ピリジル、2-チエニル又は8-キノリニルとして定義され、ここで、フェニル及び2-チエニルは非置換又はF及びメチルの群から選ばれる1若しくは2個、好ましくは1個の置換基によって置換されている式Iの化合物が記載されている。
【0027】
一実施態様には、R3がCpH2p-R8であり、ここで、pは0、1、2、3又は4、例えば0、1、2又は3であり、そしてR8はCH3、CH2F、CHF2、CF3、3、4、5若しくは6個のC原子を有するシクロアルキル、C≡CH、C≡C-CH3、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルコキシ、フェニル又は2-ピリジル、例えばCH3、CH2F、CF3、シクロプロピル、C≡CH、C≡C-CH3、フェニル又は2-ピリジルであり、ここで、フェニル及び2-ピリジル、例えばフェニルは非置換又はF、Cl、Br、I、CF3、OCF3、CN、COOMe、CONH2、COMe、OH、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルキル、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルコキシ、ジメチルアミノ、スルファモイル、メチルスルホニル及びメチルスルホニルアミノ、好ましくはF、Cl、Br、I、CF3、OCF3、CN、COOMe、CONH2、COMe、OH、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルキル及び1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルコキシ、例えばCl、CN、COMe及びメトキシからなる群より選ばれる1若しくは2個の置換基によって置換されており;R3は、例えばCH3、CH2F、CF3、シクロプロピル、C≡CH、C≡C-CH3、フェニル又は2-ピリジルとして定義され、ここで、フェニルは非置換又はCl、CN、COMe及びメトキシの群から選ばれる1若しくは2個、好ましくは1個の置換基によって置換されている式Iの化合物が記載されている。
【0028】
さらなる実施態様には、R4が水素又はメチル、例えば水素である式Iの化合物が記載されている。
さらなる実施態様には、R5が水素又はメチル、例えば水素である式Iの化合物が記載されている。
さらなる実施態様には、置換基R4及びR5の一方がメチルであり、そしてもう一方が水素であるか又はR4及びR5が水素である式Iの化合物が記載されている。
【0029】
さらなる実施態様には、R6及びR7は相互に独立して水素又はメチル、例えば水素である式Iの化合物が記載されている。さらなる実施態様には、置換基R6及びR7の一方がメチルであり、そしてもう一方が水素であるか又はR6及びR7は水素である式Iの化合物が記載されている。
【0030】
式Iの化合物は、立体異性体の形態で存在することができる。存在する不斉中心は、相互に独立してS配置又はR配置を有する。本発明は、全ての可能な立体異性体、例えば鏡像異性体又はジアステレオマー、及びあらゆる比率における2つ若しくはそれ以上の立体異性体の形態、例えば鏡像異性体及び/又はジアステレオマーの混合物を包含する。従って、本発明は、例えばエナンチオピュアな形態の鏡像異性体、左旋性及び右旋性の対掌体、並びに種々の比率における2つの鏡像異性体の混合物の形態又はラセミ体の形態を包含する。個々の立体異性体は、所望により、慣用の方法で混合物を分別するか、又は例えば立体選択的合成によって製造することができる。
【0031】
また、可動性の水素原子が存在する場合、本発明は式Iの化合物の全ての互変異性体の形態を包含する。
【0032】
さらに、本発明は、式Iの化合物の誘導体、例えば溶媒和物、例えば水和物及びアルコール付加物、エステル、プロドラッグ並びに式Iの化合物の他の生理学上許容しうる誘導体、並びに式Iの化合物の活性代謝物を包含する。本発明は、同様に式Iの化合物の全ての結晶の変態を包含する。
【0033】
アルキル基及びアルキレン基は、直鎖又は分枝鎖であることができる。これは式CpH2pのアルキレン基にも適用される。また、アルキル基及びアルキレン基は、置換されるか又は他の基中、例えばアルコキシ基中若しくはフッ化アルキル基中に存在する場合、直鎖又は分枝鎖であることができる。アルキル基の例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル及びtert-ブチルである。これらの基から誘導される二価の基、例えばメチレン、1,1-エチレン、1,2-エチレン、1,1-プロピレン、1,2-プロピレン、2,2-プロピレン、1,3-プロピレン、1,1-ブチレン、1,4-ブチレン、などは、アルキレン基の例である。アルキル及びアルキレン基中の1つ又はそれ以上の、例えば1、2、3、4、5、6、7、8又は9個の水素原子は、フッ素原子によって置き換えられていてもよい。置換されたアルキル基は、すべての位置で置換されうる。
【0034】
シクロアルキル基は、同様に分枝鎖であることができる。3〜7個のC原子を有するシクロアルキル基の例は、シクロプロピル、シクロブチル、1-メチルシクロプロピル、2-メチルシクロプロピル、シクロペンチル、2-メチルシクロブチル、3-メチルシクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、2-メチルシクロヘキシル、3-メチルシクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、シクロヘプチルなどである。シクロアルキル基中の1つ又はそれ以上の、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14個の水素原子は、フッ素原子によって置き換えられていてもよい。置換されたシクロアルキル基は、あらゆる位置で置換されうる。また、シクロアルキル基は、アルキルシクロアルキル又はシクロアルキルアルキル、例えばメチルシクロヘキシル又はシクロヘキシルメチルのような分枝鎖形態であることもできる。
【0035】
フェニル基は、非置換又は同じか若しくは異なる基によって1回もしくはそれ以上、例えば1回、2回若しくは3回置換されていてもよい。フェニル基が置換されている場合、1又は2個の同じか又は異なる置換基を有することが好ましい。一置換されたフェニル基は、2、3又は4位で置換されていてもよく、2,3-、2,4-、2,5-、2,6-、3,4-又は3,5-位で二置換、2,3,4-、2,3,5-、2,3,6-、2,4,5-、2,4,6-又は3,4,5位で三置換されうる。対応する記載は、Nを含む複素芳香族系、例えばピリジル、キノリニル、ピリミジニル又はピラジニル、ナフチル基及びチエニル基、例えば2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-チエニル、3-チエニル、1-ナフチル、2-ナフチル、2-キノリニル、3-キノリニル、4-キノリニル、5-キノリニル、6-キノリニル、7-キノリニル、8-キノリニル、2-ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ピリミジニル、2-ピラジニル、3-ピリダジニル又は4-ピリダジニルにも同様に適用される。
基が二又は三置換される場合、置換基は同じか又は異なっていてもよい。
【0036】
式Iの化合物が1つ若しくはそれ以上の塩基性基又は1つ若しくはそれ以上の塩基性複素環を含む場合、本発明は、対応する生理学上、医薬上又は毒物学上許容しうる塩、特に医薬上許容しうる塩、そしてまたトリフルオロ酢酸塩を包含する。従って、1つ若しくはそれ以上の塩基性の、すなわちプロトン化しうる基を有するか又は1つ若しくはそれ以上の塩基性の複素環式環を含む式Iの化合物は、無機又は有機酸とのそれらの生理学上許容しうる酸付加塩の形態で、例えば塩酸塩、リン酸、硫酸塩、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、リンゴ酸塩、グルコン酸塩などとして使用することもできる。塩は、慣用の方法によって、例えば溶媒若しくは分散媒中で酸と合わせることによって、又は別途、他の塩から陰イオン交換によって式Iの化合物から得ることができる。また、式Iの化合物は、酸性基上で脱プロトン化して、例えばアルカリ金属塩、好ましくはナトリウム若しくはカリウム塩として、又はアンモニウム塩として、例えばアンモニア若しくは有機アミン若しくはアミノ酸との塩として使用することができる。
【0037】
さらに、本発明は、式Iの化合物の製造方法に関する。式Iの化合物は、例えばスキーム1又は2に説明するように式IIの2-アミノ-1,2-ジアリールエタノールから出発して種々の化学的方法によって製造することができ、ここで、A、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びnは上述の意味を有し、そしてYは脱離基、例えば脂肪族基R3の場合、Cl、Br、I、トシレート、メシレート、又はさらに芳香族基R3の場合、Fでもある。
【0038】
【化3】

【0039】
スキーム1に示した転化では、最初に式IIの化合物を、塩基、例えば水酸化ナトリウムの存在下で式IIIの化合物と反応させる。生成した式IVの化合物を、続いて塩基、例えば水素化ナトリウム又は水酸化カリウムの存在下で式Vの化合物と反応させて式Iの所望の化合物を得る。
【0040】
【化4】

【0041】
スキーム2に示した転化では、最初に式IIの化合物を塩基、例えば炭酸水素ナトリウムの存在下で式IIIの化合物と反応させる。生成した式XVIの化合物を、続いて塩基、例えば水酸化ナトリウムと混合し、そしてこの混合物を式Vの化合物と反応させて所望の式Iの化合物を得る。
【0042】
式Iの化合物のさらなる製造方法は下のスキーム3であり、ここで、A、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びnは上述の意味を有し、そしてYは脱離基、例えば脂肪族R3の場合、Cl、Br、I、トシレート、メシレート又はさらに芳香族基R3の場合、Fでもある。
【0043】
【化5】

【0044】
スキーム3に示したように式Iの化合物を製造するには、最初に式XVIIのブロモケトンをNHE3と混合し、続いて式IIIの化合物と反応させる。生成した式XVIIIの化合物をNaBH4で還元して式XVIの化合物を得る。生成した式XVIの化合物を続いて塩基、例えば水酸化ナトリウムと混合し、そしてこの混合物を式Vの化合物と反応させて所望の式Iの化合物を得る。
【0045】
使用した式IIの2-アミノ-1,2-ジアリールエタノールは、購入するか、文献から知られているか又は1,2-アミノアルコールの製造について文献に開示された合成方法と同様にして製造することができる。式IIの化合物の典型的な合成方法及びその後の式Iの発明化合物へのその転化は、以下の実験部分に詳述する。式III、V及びXVIIの化合物は、同様に購入するか、文献に開示されているか又は当業者に知られた合成方法によって製造することができる。
【0046】
生成物及び/又は中間体の処理及び所望により精製は、慣用の方法、例えば抽出、クロマトグラフィ又は結晶化及び慣用の乾燥によって行われる。
式Iの化合物及びその医薬上許容しうる塩の薬剤としての使用が請求されている。
従って、式Iの本発明の化合物及びその医薬上許容しうる塩は、それ自体で医薬として、相互の混合物で又は医薬製剤の形態で動物、好ましくは哺乳動物、そして特にヒトに使用することができる。
【0047】
また、本発明は、前記疾患の治療及び予防に使用するための式Iの化合物及びその医薬上許容しうる塩、並びに前記疾患の薬剤及びK+チャネル遮断作用を有する薬剤を製造するためのその使用に関する。
【0048】
また、有効量の式Iの化合物及び/又はその医薬上許容しうる塩を単独で又は他の薬理学的活性成分若しくは医薬と組み合わせて医薬上許容しうる担体及び添加剤と共に含んでなる医薬製剤が請求されている。医薬製剤は、通常、式Iの化合物及び/又はその医薬上許容しうる塩0.1〜90質量%を含む。医薬製剤は、それ自体知られているやり方で製造することができる。このために、式Iの化合物及び/又はその医薬上許容しうる塩は、1つ又はそれ以上の固体又は液体の医薬媒体及び/又は賦形剤と共にそして所望により他の医薬活性成分と組み合わせて適切な剤形に変換され、次いでこれはヒト医学又は獣医学における医薬として使用することができる。
【0049】
さらに、式Iの化合物及び/又はその医薬上許容しうる塩を含んでなる医薬は、例えば経口的に、非経口的に、静脈内に、直腸に、経皮的に、局所的に又は吸入によって投与することができ、そして好ましい投与は、個々の場合に応じて、例えば障害の特定の症状に応じて左右される。さらに、式Iの化合物は、特に獣医学及びヒト医学の両方において単独で又は医薬賦形剤と共に使用することができる。式Iの活性成分及び/又はその医薬上許容しうる塩を含んでなる医薬は、一般に用量単位当たり0.01mg〜1gの量である。
【0050】
当業者は、どの賦形剤が所望の医薬製剤に適しているか専門知識に基づいて精通している。溶媒、ゲル形成剤、坐剤基剤、錠剤賦形剤及び他の活性物質担体の他に、例えば抗酸化剤、分散剤、乳化剤、消泡剤、マスキングフレーバー、保存剤、可溶化剤、貯蔵効果を得るための薬剤、緩衝物質又は着色剤を使用することができる。
【0051】
経口使用の形態では、活性化合物をこの目的に適した添加剤、例えば担体、安定剤又は不活性希釈剤と混合し、そして慣用の方法によって錠剤、コーティング錠、ツーピースのカプセル剤、水性、アルコール性又は油性の液剤といったような適切な形に変換することができる。使用できる不活性担体の例は、アラビアゴム、マグネシア、炭酸マグネシウム、リン酸カリウム、ラクトース、グルコース又はデンプン、特にコーンスターチである。製剤は乾式及び湿式顆粒剤としての両方で行うことができる。油性担体として又は溶媒として適切なのは、例えば植物油又は動物油、例えばひまわり油又は魚肝油である。水性又はアルコール性の液剤に適切な溶媒は、例えば水、エタノール若しくは糖溶液又はそれらの混合物である。また、他の投与形態について、さらなる賦形剤の例は、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールである。
【0052】
皮下、筋内又は静脈内投与では、所望により、この目的に常用の物質、例えば可溶化剤、乳化剤又はさらなる賦形剤を用いて活性化合物を液剤、懸濁剤又は乳剤に変換する。また、式Iの化合物及び/又はその医薬上許容しうる塩は凍結乾燥することができ、そして生成した凍結乾燥物は、例えば注射又は注入用の生成物を製造するのに使用される。適切な溶媒の例は、水、生理食塩水又はアルコール、例えばエタノール、プロパノール、グリセロール及び糖溶液、例えばグルコース若しくはマンニトール溶液、又はその他、記載された種々の溶媒の混合物である。
【0053】
エーロゾル剤又はスプレー剤の形態で投与するための医薬製剤として適切なのは、例えば医薬上許容しうる溶媒、例えば特にエタノール若しくは水、又はこのような溶媒の混合物中の式Iの活性成分又はその医薬上許容しうる塩の液剤、懸濁剤又は乳剤である。また、必要に応じて、製剤は他の医薬賦形剤、例えば界面活性剤、乳化剤及び安定剤及び推進剤ガスを含むことができる。このような製剤は、活性成分を、通常、約0.1〜10、特に約0.3〜3質量%の濃度で含む。
【0054】
投与する活性成分又はその医薬上許容しうる塩の投与量は、個々の場合に応じて左右され、そして最適効果が得られるように通常通り個々の場合の状況に適応させなければならない。従って、それは、本来、投与頻度、並びに治療又は予防に用いる特定化合物の効力及び作用持続、そしてまた治療する疾患のタイプ及び重症度、並びに治療するヒト又は動物の性別、年齢、体重及び個々の反応、並びに治療が緊急又は予防かどうかに左右される。
【0055】
体重約75kgの患者について式Iの化合物及び/又はその医薬上許容しうる塩の日用量は、通常、少なくとも0.001mg/kg〜100mg/kg体重、好ましくは0.01mg/kg〜20mg/kgである。また、例えば集中治療室での疾患の急性エピソードについてはさらに高い投与量が必要となりうる。例えば集中治療室の梗塞患者については、特に静注使用で最高800mg/日が必要となりうる。用量は一用量の形態であってもよいし、又は一用量を複数、例えば2、3若しくは4回に分割してもよい。例えば集中治療室での、特に心不整脈の急性の場合の治療においては、注射又は注入による非経口投与、例えば持続点滴静注も有益でありうる。
【0056】
また、式Iの化合物及び/又はその医薬上許容しうる塩を他の医薬活性成分と組み合わせて有益な治療効果を得ることができる。従って、心臓血管障害の治療では心血管系に作用する物質との有益な組み合わせが可能である。心臓血管障害に有益なこのような組み合わせパートナーの適切な例は、他の抗不整脈薬、すなわちクラスI、クラスII又はクラスIII抗不整脈薬、例えばIKrチャネル遮断薬、例えばドフェチリド又は血圧を下げる追加の物質、例えばACE阻害剤(例えばエナラプリル、カプトプリル、ラミプリル)、アンギオテンシン拮抗剤、K+チャネル活性化剤、並びにアルファ及びベータ受容体遮断薬、そしてまた交感神経興奮性及びアドレナリン作用化合物、並びにNa+/H+交換阻害剤、カルシウムチャネル拮抗剤、ホスホジエステラーゼ阻害剤並びに陽性変力効果を有する他の物質、例えば、例えばジギタリスグリコシド又は利尿薬である。特に、ベータ遮断薬又はIKrチャネル遮断薬との組み合わせは、特に興味深い。
【0057】
略語のリスト:
TMSCl トリメチルシリルクロリド
TFA トリフルオロ酢酸
Et エチル
DMF N,N-ジメチルホルムアミド
TEA トリエチルアミン
DMSO ジメチルスルホキシド
THF テトラヒドロフラン
【0058】
式Iの化合物は、種々の方法によって製造することができる。実施例の製造に用いた製造方法を下に記載し、ここでR1、R2、R3、R4、R5、R6及びXは、式Iの化合物中と同じ意味を有する。
【0059】
式Iの化合物は、種々の方法によって製造することができる。実施例を製造するために用いた製造方法を下に記載し、ここでA、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びnは、式Iの化合物中と同じ意味を有する。
【0060】
2-アミノ-1,2-ジアリールエタノールの製造
以下の2-アミノ-1,2-ジアリールエタノール:(1S,2R)-2-アミノ-1,2-ジフェニルエタノール、(1R,2S)-2-アミノ-1,2-ジフェニルエタノール、(1R,2R)-2-アミノ-1,2-ジフェニルエタノール及び(1S,2S)-2-アミノ-1,2-ジフェニルエタノールは、市販供給源から入手した。
他の全ての2-アミノ-1,2-ジアリールエタノールは、以下の方法A1、A2又はA3の一つによって製造した。
【0061】
2-アミノ-1,2-ジアリールエタノールを合成する一般的方法
方法A1:
【化6】

【0062】
式VIの特定のアルデヒド1モル当量をアルゴン下でアセトニトリル中のtert-ブチルカルバメート1.5モル当量及びp-トルエンスルフィン酸ナトリウム1.5モル当量の溶液に加えた。0〜10℃に冷却しながら、クロロトリメチルシラン2モル当量を滴加し、そして混合物を室温で一夜撹拌したまま放置した。水400mlを添加した後、沈殿した式VIIの生成物を吸引濾過し、そして真空下50℃で乾燥した。生成した式VIIの化合物1モル当量に塩化メチレン中の3-エチル-5-(2-ヒドロキシエチル)-4-メチルチアゾリウムブロミド0.1〜0.3モル当量及びトリエチルアミン15モル当量の存在下で式VIIIのアルデヒド0.9〜1.0モル当量を加え、そして反応が完了するまで(2〜8時間)混合物を35℃で加熱した。生成した式IXの反応生成物をメタノール中の水素化ホウ素ナトリウム1モル当量で還元し、そしてtert-ブトキシカルボニル基を塩酸又はトリフルオロ酢酸で除去した。2-アミノ-1,2-ジアリールエタノールを混合物又は2つのジアステレオマーとして得、その際、通常、式IIaの記載されたジアステレオマーが70〜90%の比率で優勢であった。
【0063】
方法A2:
【化7】

【0064】
THF中に一緒に溶解した式Xのアルデヒド又はケトン1モル当量及び式XIのイソチオシアネート1.2モル当量を、氷浴中で冷やしたTHF50ml中のカリウムtert-ブトキシド1.2モル当量の溶液に15分かけて滴加した。氷浴をはずした後、撹拌を1時間継続し、続いて希塩酸を加えて反応を停止した。このようにして得た式XIIa及びXIIbのオキサゾリジンチオンは、必要に応じてジアステレオ異性体に分離することができ、これはまずクロマトグラフ法及び分別結晶によって達成することができる。ジアステレオ異性体は、ほとんどの場合、約50:50の比率で製造される。精製された式XIIa及びXIIbのオキサゾリジノン(例えば7mmol)を、通常、メタノール及び2N水酸化ナトリウム溶液中に溶解し、次いで過剰の35%過酸化水素で処理した。溶液は非常に熱くなり、そして室温にさましてさらに1〜3時間撹拌した。大部分のメタノールを除去した後、生成した式XIIIa又はXIIIbのオキサゾリジノンを結晶として得、そして吸引濾過することができた。続いて式IIc又はIIdのアミノアルコールへの加水分解を以下の条件下で行った:式XIIIa又はXIIIbのオキサゾリジノン1モル当量をエタノールに溶解し、そしてH2Oに溶解したKOH 9モル当量を加えた。混合物を還流下で8〜24時間沸騰させた。
【0065】
方法A3:
【化8】

【0066】
水中の亜硝酸ナトリウム81モル当量の溶液を室温で水/濃塩酸(8:1)中の式XIVの1,2-ジアリールエタノン1モル当量の溶液に滴加した。2時間後、溶液を炭酸ナトリウムで中和した。生成した式XVのオキシムをエタノールに溶解し、そして酸化白金3モルパーセントを添加した後、水素がさらに吸収されなくなるまで大気圧下で水素化した。溶液を濾過して濃縮した後、式IIa及びIIbの2つのジアステレオマーの混合物として2-アミノ-1,2-ジアリールエタノールを得た。アリール基R1及びR2に応じて、この段階で又は以下の段階の1つでクロマトグラフィ又は再結晶によってジアステレオマーを分離することができる。
【0067】
2-アミノ-1,2-ジアリールエタノールから1-シクロアミド-2-アルコキシ-1,2-ジアリールエタンを合成する一般的な方法
方法B1:
【化9】

【0068】
トリエチルアミン2〜3モル当量及び式IIIのω-ハロアルキルカルボニル又はスルホニルクロリド(例えば5-クロロブチリルクロリド)1モル当量をDMF中の式IIの2-アミノ-1,2-ジアリールエタノールの溶液にゆっくりと滴加した。20分間撹拌した後、0℃で水酸化ナトリウムペレット10モル当量を加え、そして混合物を室温で3時間撹拌した。混合物を氷水へ注ぎ、そして沈殿した生成物を吸引濾過するか又は酢酸エチルによる抽出によって単離した。続いて式IVのアルコールを式V(ここで、Yは好ましくは、R3が脂肪族である場合、塩素、臭素又はヨウ素であり、そしてR3が芳香族基である場合、フッ素であることもできる)の化合物1モル当量、すなわち例えば、アルキルブロミド又はアリールフッ素化合物、例えばシクロプロピルメチルブロミド又はp-フルオロベンゾニトリルと反応させた。反応は、水素化ナトリウムを少なくとも1モル当量添加したDMF中で又は塩基として水酸化カリウムを用いてDMSO中のいずれかで実施した。反応の進行に応じて、反応が完了するまで追加量の式Vの化合物及び塩基を続いて加えた。
【0069】
方法B2:
【化10】

【0070】
式IIのアミンアルコール又はその塩酸塩の溶液を塩化メチレンに溶解し、そして同容積の炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液をさらに入れた。激しく撹拌している混合物に式IIIのω-ハロアルキルカルボニル又はスルホニルクロリド1.05モル当量を加え、そして混合物を室温でさらに60分間撹拌した。次いで、有機相を分離し、そして結晶化によりそこから式XVIの化合物を単離した。式XVIの化合物をDMSOに溶解し、そして粉末状のNaOH 10〜100モル当量を加えた。室温で10〜30分間撹拌した後、式Vの化合物3〜5モル当量を加え、ここでYは方法B1に記載した意味を有することができる。混合物を室温で1〜10時間撹拌し、そして必要に応じてアルキル化が完了するまで追加量の式Vの化合物を加えた。
【0071】
ブロモケトンから1-シクロアミド-2-アルコキシ-1,2-ジアリールエタンを合成する一般的な方法
方法C:
【化11】

【0072】
R2及びR1によって置換された式XVIIのブロモケトンのジメチルホルムアミド中の溶液を激しく撹拌しながらNH3ガス流を15〜20分間勢いよく通過させ、その後、再び溶液から過剰のNH3を除去するために空気流を30分間勢いよく通過させた。続いてトリエチルアミン1.1モル当量及び式IIIのω-ハロアルキルカルボニル又はスルホニルクロリド1.1モル当量を混合物に加えた。この場合に生成した式XVIIIの化合物を慣用のやり方で単離し、続いてメタノール中の水素化ホウ素ナトリウムで還元した。このようにして得た式XVIのアミノアルコールをDMSOに溶解し、そして粉末状のNaOH 10〜100モル当量を加えた。室温で10〜30分間撹拌した後、式Vの化合物3〜5モル当量を加え、ここでYは方法B1に記載した意味を有することができる。混合物を室温で1〜10時間撹拌し、必要に応じて、アルキル化が完了するまで追加量の式Vの化合物を加えた。
【0073】
合成方法に記載した出発化合物、例えば式III、V、VI、VIII、X、XI、XIV及びXVIIの化合物は、購入することもできるし、又は文献に記載され、当業者に知られている方法によって若しくはそれと同様にして製造することができる。
生成物及び/又は中間体の後処理及び所望により精製は、抽出、クロマトグラフィ又は結晶化及び慣用の乾燥といったような慣用の方法によって実施する。
【0074】
一般的な合成方法の使用実施例
実施例1:
1-[(1R,2S')-2-シクロプロピルメトキシ-1-(4-フルオロフェニル)-2-キノリン-8-イルエチル]-ピペリジン-2-オン(一般的な方法:A1 +B1による合成)
【化12】

【0075】
a) tert-ブチル[(4-フルオロフェニル)(トルエン-4-スルホニル)メチル]カルバメート
4-フルオロベンズアルデヒド15.0g(121mmol)をアルゴン下でアセトニトリル430ml中のtert-ブチルカルバメート21.3g(184mmol)及びp-トルエンスルフィン酸ナトリウム32.3g(181mmol)の溶液に加えた。0〜10℃に冷却しながら、クロロトリメチルシラン26.3g(242mmol)を滴加し、そして混合物を室温で一夜撹拌したまま放置した。水400mlを添加した後、沈殿した生成物を吸引濾過して真空下、50℃で乾燥し、tert-ブチル[(4-フルオロフェニル)(トルエン-4-スルホニル)メチル]カルバメート36.3gを得た。
【0076】
b) tert-ブチル[1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-2-キノリン-8-イルエチル]カルバメート
tert-ブチル[(4-フルオロフェニル)(トルエン-4-スルホニル)メチル]カルバメート1.9g(5.1mmol)、3-エチル-5-(2-ヒドロキシエチル)-4-メチルチアゾリウムブロミド255mg(1.0mmol)、トリエチルアミン10.5ml(76mmol)及び8-キノリンカルバルデヒド0.72g(4.55mmol)を室温で塩化メチレン44ml中に混合し、次いで35℃で3時間加熱した。アルデヒドの反応が完了した後、飽和塩化アンモニウム溶液25mlを加え、そして反応混合物を15分間撹拌した。水相を除去した後、有機相を0.5M水酸化ナトリウム溶液及び飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、そしてtert-ブチル[1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-2-キノリン-8-イルエチル]カルバメート1.7gを得、それを精製することなくさらに反応させた。
【0077】
c) 2-アミノ-2-(4-フルオロフェニル)-1-キノリン-8-イルエタノール
水素化ホウ素ナトリウム0.48g(13mmol)を、0〜5℃でメタノール75ml中のtert-ブチル[1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-2-キノリン-8-イルエチル]カルバメート4.9g(13mmol)の溶液に加えた。1時間後、反応混合物を濃縮して酢酸エチル及び水で希釈し、そして有機相を飽和塩化アンモニウム及び炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄した。有機相を乾燥して濃縮した後、残留物を塩化メチレン40mlに溶解してトリフルオロ酢酸9mlを加えた。2時間後、氷水を加え、そして生成物を水相に抽出した。水相をアルカリ性にし、生成物を塩化メチレンで抽出し、そして2-アミノ-2-(4-フルオロフェニル)-1-キノリン-8-イルエタノール1.5gを得た。
【0078】
d) 1-[(1R',2S')-1-(4-フルオロフェニル)-2ヒドロキシ-2-キノリン-8-イルエチル]ピペリジン-2-オン
5-クロロバレリルクロリド0.43g(2.7mmol)をDMF17ml中の2-アミノ-2-(4-フルオロフェニル)-1-キノリン-8-イルエタノール0.75g(2.7mmol)及びトリエチルアミン0.41g(4.0mmol)の溶液にゆっくりと滴加した。20分間撹拌した後、0℃で水酸化ナトリウムペレット1.3g(33mmol)を加え、そして混合物を室温で3時間撹拌した。混合物を氷水へ注ぎ、そして沈殿した生成物を吸引濾過してヘプタン/酢酸エチルから再結晶した。単一ジアステレオマーとして1-[(1R',2S')-1-(4-フルオロフェニル)-2-ヒドロキシ-2-キノリン-8-イルエチル]ピペリジン-2-オン600 mgを得た。
【0079】
e) 1-[(1R',2S')-2-シクロプロピルメトキシ-1-(4-フルオロフェニル)-2-キノリン-8-イルエチル]ピペリジン-2-オン
水素化ナトリウム26mg(0.55mmol)を、10℃でDMF4ml中の1-[(1R',2S')-1-(4-フルオロフェニル)-2-ヒドロキシ-2-キノリン-8-イルエチル]ピペリジン-2-オン0.2g(0.55mmol)の溶液に加えた。1時間撹拌した後、シクロプロピルメチルブロミド222mg(1.6mmol)を加えた。一夜撹拌した後、出発物質が完全に反応するまでさらに2回それぞれ水素化ナトリウム26mg及びシクロプロピルメチルブロミド222mgを加えた。真空下で濃縮した後、残留物を水20ml及び酢酸エチル20ml中に溶解させ、そして有機相を飽和炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄した。乾燥し、そして真空下で濃縮して1-[(1R',2S')-2-シクロプロピルメトキシ-1-(4-フルオロフェニル)-2-キノリン-8-イルエチル]ピペリジン-2-オン0.23gを得た。
【0080】
実施例2:
1-[(1R',2S')-1-(4-フルオロフェニル)-2-ピリジン-3-イル-2-(4,4,4-トリフルオロブトキシ)エチル]ピロリジン-2-オン(一般的な方法:A1 + B1による合成)
【化13】

【0081】
a) tert-ブチル[1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-2-ピリジン-3-イルエチル]カルバメート
tert-ブチル[(4-フルオロフェニル)(トルエン-4-スルホニル)メチル]カルバメート10.0g(26.4mmol)、3-エチル-5-(2-ヒドロキシエチル)-4-メチルチアゾリウムブロミド665mg(2.6mmol)、トリエチルアミン55ml(395mmol)及び3-ピリジンカルボキシアルデヒド5.6g(26.4mmol)を室温で塩化メチレン230ml中に混合し、次いで、35℃で3時間加熱した。アルデヒドの反応が完了した後、飽和塩化アンモニウム溶液100mlを加え、そして反応混合物を10分間撹拌した。水相を除去した後、有機相を0.5M水酸化ナトリウム溶液及び飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄した。tert-ブチル[1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-2-ピリジン-3-イルエチル]カルバメート9.7gを得、そして精製することなくさらに反応させた。
【0082】
b) (1S',2R')-2-アミノ-2-(4-フルオロフェニル)-1-ピリジン-3-イルエタノール
水素化ホウ素ナトリウム0.36g(9.6mmol)を、0〜5℃でメタノール40ml中のtert-ブチル[1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-2-ピリジン-3-イルエチル]カルバメート3.2g(9.6mmol)の溶液に加えた。3時間後、反応混合物を酢酸エチルで希釈して水で洗浄した。有機相を乾燥して濃縮した後、残留物を塩化メチレン60ml中に懸濁し、そしてジオキサン中のHCl飽和溶液18mlを加えた。2時間後、沈殿した生成物を吸引濾過して(1S',2R')-2-アミノ-2-(4-フルオロフェニル)-1-ピリジン-3-イルエタノール1.7gを塩酸塩として得た。
【0083】
c) 1-[(1R',2S')-1-(4-フルオロフェニル)-2-ヒドロキシ-2-ピリジン-3-イルエチル]ピロリジン-2-オン
5-クロロブチルクロリド0.87g(6.1mmol)をDMF40ml中の(1S',2R')-2-アミノ-2-(4-フルオロフェニル)-1-ピリジン-3-イルエタノール塩酸塩1.7g(6.1mmol)及びトリエチルアミン1.6g(15.4mmol)の溶液にゆっくりと滴加した。30分間撹拌した後、水酸化ナトリウムペレット3.1g(77mmol)を0℃で加え、そして混合物を室温で3時間撹拌した。混合物を氷水100mlへ注ぎ、そして酢酸エチルで抽出した。飽和塩化アンモニウム及び食塩水溶液で有機相を洗浄した後、1-[(1R',2S') -1-(4-フルオロフェニル)-2-ヒドロキシ-2-ピリジン-3-イルエチル]ピロリジン-2-オン1.57gを得た。
【0084】
d) 1-[(1R',2S')-1-(4-フルオロフェニル)-2-ピリジン-3-イル-2-(4,4,4-トリフルオロブトキシ)エチル]-ピロリジン-2-オン
60パーセント水素化ナトリウム0.26g(6.6mmol)及び4,4,4-トリフルオロブチルブロミド1.26g(6.6mmol)を0℃でDMF60ml中の1-[(1R',2S')-1-(4-フルオロフェニル)-2-ヒドロキシ-2-ピリジン-3-イルエチル]ピロリジン-2-オン1.98g(6.6mmol)の溶液に加えた。混合物を室温で5日間放置し、その間に水素化ナトリウム及び4,4,4-トリフルオロブチルブロミドの初期量の50%を再び毎日加えた。水性後処理した後、残留物をクロマトグラフィによって精製し、そして生成した生成物を酢酸エチル及びヘプタンから再結晶した。1-[(1R',2S')-1-(4-フルオロフェニル)-2-ピリジン-3-イル-2-(4,4,4-トリフルオロブトキシ)エチル]ピロリジン-2-オン710mgを得た。
【0085】
実施例3:
1-[(1R',2S')-2-シクロプロピルメトキシ-2-(4-フルオロフェニル)-1-キノリン-8-イルエチル]-ピロリジン-2-オン(一般的な方法:A1 + B2による合成)
【化14】

【0086】
a) tert-ブチル[キノリン-8-イル(トルエン-4-スルホニル)メチル]カルバメート
8-キノリンカルバルデヒド5.0g(32mmol)を、アルゴン下でアセトニトリル112ml中のtert-ブチルカルバメート5.6g(48mmol)及びp-トルエンスルフィン酸ナトリウム8.5g(48mmol)の溶液に加えた。0〜10℃に冷却しながら、クロロトリメチルシラン6.9g(64mmol)を滴加し、そして混合物を室温で一夜撹拌して放置した。水130mlを添加した後、沈殿した生成物を吸引濾過し、そして真空下50℃で乾燥してtert-ブチル[キノリン-8-イル(トルエン-4-スルホニル)メチル]カルバメート11.4gを得た。
【0087】
b) tert-ブチル[2-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1-キノリン-8-イルエチル]カルバメート
tert-ブチル[キノリン-8-イル(トルエン-4-スルホニル)メチル]カルバメート5.5g(13mmol)、3-エチル-5-(2-ヒドロキシエチル)-4-メチルチアゾリウムブロミド336mg(1.3mmol)、トリエチルアミン27ml(200mmol)及び4-フルオロベンズアルデヒド3.9g(13mmol)を室温で塩化メチレン115ml中に混合し、次いで35℃で3時間加熱した。アルデヒドの反応が完了した後、飽和塩化アンモニウム溶液50mlを加え、そして反応混合物を10分間撹拌した。水相を除去した後、有機相を0.5M水酸化ナトリウム溶液及び飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥して濃縮し、半固形残留物を得、それをジエチルエーテル50mlと共に撹拌した。固形残留物を吸引濾過してtert-ブチル[2-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1-キノリン-8-イルエチル]カルバメート3.2gを得た。
【0088】
c) (1S',2R')-2-アミノ-1-(4-フルオロフェニル)-2-キノリン-8-イルエタノール
水素化ホウ素ナトリウム0.30g(7.9mmol)を0〜5℃でメタノール13ml中のtert-ブチル[2-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1-キノリン-8-イルエチル]カルバメート3.0g(7.9mmol)の溶液に加えた。2時間後、反応混合物を酢酸エチル及び水で希釈し、そして有機相を飽和塩化アンモニウム及び炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄した。有機相を乾燥して濃縮した後、残留物を塩化メチレン30mlに溶解し、そしてトリフルオロ酢酸11mlを加えた。2時間後、氷水を加え、そして生成物を水相中に抽出した。水相をアルカリ性にした後、生成物を塩化メチレンで抽出して(1S',2R')-2-アミノ-1-(4-フルオロフェニル)-2-キノリン-8-イルエタノール1.8gを得た。
【0089】
d) (1R',2S')-4-クロロ-N-[2-(4-フルオロフェニル)-2-ヒドロキシ-1-キノリン-8-イルエチル]ブチルアミド
4-クロロブチリルクロリド0.85g(6mmol)を0℃でDMF40ml中の(1S',2R')-2-アミノ-1-(4-フルオロフェニル)-2-キノリン-8-イルエタノール1.8g(4.6mmol)及びトリエチルアミン2mlの溶液に加えた。混合物を一夜放置した後、それを水性後処理にかけ、そしてヘプタン/酢酸エチル25:75〜50:50を用いてクロマトグラフィによって反応生成物を精製した。(1R',2S')-4-クロロ-N-[2-(4-フルオロフェニル)-2-ヒドロキシ-1-キノリン-8-イルエチル]ブチルアミド1.8gを得た。
【0090】
e) 1-[(1R',2S')-2-シクロプロピルメトキシ-2-(4-フルオロフェニル)-1-キノリン-8-イルエチル]ピロリジン-2-オン
DMSO15ml中の4-クロロ-N-[(1R',2S')-2-(4-フルオロフェニル)-2-ヒドロキシ-1-キノリン-8-イルエチル]ブチルアミド1.8g、水酸化カリウム560mg及びシクロプロピルメチルブロミド1.0gの溶液を室温で一夜撹拌した。水性後処理した後に得た粗生成物を、ヘプタン/酢酸エチル50:50を用いてシリカゲル上でクロマトグラフィによって精製して1-[(1R',2S')-2-シクロプロピルメトキシ-2-(4-フルオロフェニル)-1-キノリン-8-イルエチル]ピロリジン-2-オン0.45gを得た。
【0091】
実施例4:
4-[(1R',2S')-1-(3,4-ジフルオロフェニル)-2-(4-フルオロフェニル)-2-(2-オキソピロリジン-1-イル)エトキシ]ベンゾニトリル(一般的な方法:A1 + B1による合成)
【化15】

【0092】
a) tert-ブチル[2-(3,4-ジフルオロフェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソエチル]カルバメート
tert-ブチル[(4-フルオロフェニル)(トルエン-4-スルホニル)メチル]カルバメート30.0g(79mmol)、3-エチル-5-(2-ヒドロキシエチル)-4-メチルチアゾリウムブロミド5.9g(23mmol)、トリエチルアミン164ml(1.2mol)及び3,4-ジフルオロベンズアルデヒド11.2g(79mmol)を室温で塩化メチレン700ml中に混合し、次いで35℃で6時間加熱した。アルデヒドの反応が完了した後、飽和塩化アンモニウム溶液を加え、そして反応混合物を15分間撹拌した。水相を除去した後、有機相を0.5M水酸化ナトリウム溶液及び飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄してtert-ブチル[2-(3,4-ジフルオロフェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソエチル]カルバメート29.0gを得、それを精製することなくさらに反応させた。
【0093】
b) tert-ブチル[(1R',2S')-2-(3,4-ジフルオロフェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-ヒドロキシエチル]カルバメート
水素化ホウ素ナトリウム3.0 g(79mmol)を5℃でメタノール450ml中のtert-ブチル[2-(3,4-ジフルオロフェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソエチル]カルバメート29.0g(79mmol)の溶液に少しずつ加えた。1時間後、分離した沈殿を吸引濾過してtert-ブチル[(1R',2S')-2-(3,4-ジフルオロフェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-ヒドロキシエチル]カルバメート23.3gを得た。
【0094】
c) (1S',2R')-2-アミノ-1-(3,4-ジフルオロフェニル)-2-(4-フルオロフェニル)エタノール
ジオキサン中のHCl飽和溶液20mlを塩化メチレン400ml中のtert-ブチル[(1R',2S')-2-(3,4-ジフルオロフェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-ヒドロキシエチル]カルバメート23.3gの溶液に加え、混合物を室温で3時間撹拌して放置した。0℃に冷却した後、(1S',2R')-2-アミノ-1-(3,4-ジフルオロフェニル)-2-(4-フルオロフェニル)エタノールの塩酸塩17.0gが沈殿した。
【0095】
d) 1-[(1R',2S')-2-(3,4-ジフルオロフェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-ヒドロキシエチル]ピロリジン-2-オン
トリエチルアミン0.9g(9.1mmol)及び4-クロロブチリルクロリド0.51g(3.6mmol)を0℃でTHF45ml中の(1S',2R')-2-アミノ-1-(3,4-ジフルオロフェニル)-2-(4-フルオロフェニル)エタノール塩酸塩1.1g(3.6mmol)の溶液に滴加した。1時間後、水酸化ナトリウム1.8g(45mmol)及びDMF10mlを加えて撹拌を1時間継続した。混合物を氷水に加え、そして有機相を塩化アンモニウム溶液及び塩化ナトリウム溶液で洗浄した。乾燥して濃縮し、1-[(1R',2S')-2-(3,4-ジフルオロフェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-ヒドロキシエチル]ピロリジン-2-オン0.89gを得た。
【0096】
e) 4-[(1R',2S')-1-(3,4-ジフルオロフェニル)-2-(4-フルオロフェニル)-2-(2-オキソピロリジン-1-イル)エトキシ]-ベンゾニトリル
水素化ナトリウム0.13g(2.9mmol)を0℃でDMF40ml中の1-[(1R',2S')-2-(3,4-ジフルオロフェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-ヒドロキシエチル]ピロリジン-2-オン0.89g(2.6mmol)の溶液に加えた。5分後、4-フルオロベンゾニトリル0.32g(2.6mmol)を加え、そして混合物を2時間撹拌した。クロマトグラフィにより粗生成物を精製して4-[(1R',2S')-1-(3,4-ジフルオロフェニル)-2-(4-フルオロフェニル)-2-(2-オキソピロリジン-1-イル)エトキシ]ベンゾニトリル0.69gを得た。
【0097】
実施例5:
1-[(1R',2S')-2-シクロプロピルメトキシ-2-フェニル-1-ピリジン-2イルエチル]ピロリジン-2-オン(一般的な方法:A3 + B1による合成)
【化16】

【0098】
a) 1-フェニル-2-ピリジン-2-イルエタン-1,2-ジオン2-オキシム
水中の亜硝酸ナトリウム8.75g(127mmol)の溶液を室温で水/濃塩酸(8:1)250ml中の1-フェニル-2-ピリジン-2-イルエタノン25g(127mmol)の溶液に滴加した。2時間後、溶液を炭酸ナトリウムで中和した。生成物を一夜結晶化させて1-フェニル-2-ピリジン-2-イルエタン-1,2-ジオン2-オキシム25.3gを得た。
【0099】
b) 2-アミノ-1-フェニル-2-ピリジン-2-イルエタノール
1-フェニル-2-ピリジン-2-イルエタン-1,2-ジオン2-オキシム25.3gをエタノール300mlに溶解し、そして酸化白金1.0gを添加した後、さらに水素が吸収されなくなるまで大気圧下で水素化した。溶液を濾過して濃縮し、2つのジアステレオマーの混合物として2-アミノ-1-フェニル-2-ピリジン-2-イルエタノール21.6gを得た。
【0100】
c) シン及びアンチ-1-(2-ヒドロキシ-2-フェニル-1-ピリジン-2-イルエチル)ピロリジン-2-オン
トリエチルアミン35ml(252mmol)及び4-クロロブチリルクロリド11.3ml(101mmol)を50℃でDMF50ml中の2-アミノ-1-フェニル-2-ピリジン-2-イルエタノール21.6g(101mmol)の溶液に順次滴加した。室温で1時間後、水酸化ナトリウム48.4gを加え、そして混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物を氷水へ注いで塩化メチレンで抽出し、そして有機相を水及び炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄した。酢酸エチル/エタノール20:1を用いてシリカゲル上のクロマトグラフィにより、純粋な形態の1-(2-ヒドロキシ-2-フェニル-1-ピリジン-2-イルエチル)ピロリジン-2-オンのシン及びアンチ-ジアステレオマーをそれぞれ3.0g単離した。相対立体化学をX線分光学によって特定した。
【0101】
d) 1-[(1R',2S')-2-シクロプロピルメトキシ-2-フェニル-1-ピリジン-2-イルエチル]ピロリジン-2-オン
DMSO 2ml中の1-[(1R',2S')-2-ヒドロキシ-2-フェニル-1-ピリジン-2-イルエチル]ピロリジン-2-オン150 mg(0.53mmol)、シクロプロピルブロミド86mg(0.64mmol)及びKOH 0.69mgの溶液を室温で4時間撹拌した。水性後処理し、そして分取HPLCによって精製して1-[(1R',2S')-2-シクロプロピルメトキシ-2-フェニル-1-ピリジン-2-イルエチル]ピロリジン-2-オン30mgを得た。
【0102】
実施例6:
(1R',2S')-1-[2-(4-クロロフェニル)-1-フェニル-2-プロポキシエチル]ピロリジン-2-オン(一般的な方法Cによる合成)
【化17】

【0103】
a) 2-ブロモ-1-(4-クロロフェニル)-2-フェニルエタノン309mg(1mmol)の溶液にNH3流を15分間勢いよく通過させ、そして空気流を20分間勢いよく通過させた。次いで、トリエチルアミン0.2ml及びクロロブチリルクロリド0.17mlを加え、そして混合物を室温で1時間撹拌した。溶液を水80mlで希釈し、そして2N塩酸でpH1〜2に酸性化した。DMFを真空下で除去し、そして水性残留物を酢酸エチルで2回抽出した。中性になるまで有機相を水で洗浄し、そしてMgSO4で乾燥した。真空下で溶媒を蒸発させた後、残留物をシリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィにかけた。ヘプタン/酢酸エチル溶媒混合物を用いて、アシル化されたアミノケトン4-クロロ-N-[2-(4-クロロフェニル)-2-オキソ-1-フェニルエチル]ブチルアミド230mgを溶出した。
【0104】
b) 段階a)の生成物をメタノール4mlに溶解してNaBH4 100mgを加えた。室温で2時間撹拌した後、溶媒を除去し、そして残留物を水で処理してラセミ体の(1R',2S')-4-クロロ-N-[2-(4-クロロフェニル)-2-ヒドロキシ-1-フェニルエチル]ブチルアミドを純粋な形態で得た。
【0105】
c) (1R',2S')-4-クロロ-N-[2-(4-クロロフェニル)-2-ヒドロキシ-1-フェニルエチル]ブチルアミド1gをDMSO 20mlに溶解し、そして粉末状NaOH 1gと共に室温で1時間撹拌した。次いで、ヨウ化プロピル0.5gを加え、そしてヨウ化プロピルの総量が1.4gになるまで追加のヨウ化プロピル0.3gを45分毎に加えた。次いで、反応混合物を酸性化して酢酸エチルで数回抽出した。溶媒を蒸発させた後、残留物をシリカゲル50g上でフラッシュクロマトグラフィにかけた。ヘプタン/酢酸エチル7:1で溶出して最終生成物(1R',2S')-1-[2-(4-クロロフェニル)-1-フェニル-2-プロポキシエチル]ピロリジン-2-オン670mgを得た。
【0106】
実施例7:
(1S,2R)-2-(1,2-ジフェニル-2-プロポキシエチル)イソチアゾリジン-1,1-ジオキシド(一般的な方法B2による合成)
【化18】

【0107】
a) (1R,2S)-(-)-2-アミノ-1,2-ジフェニルエタノール213 mg(1mmol)をDMF2mlに溶解し、そしてトリエチルアミン(1.19mmol)164μl及び3-クロロプロパンスルホニルクロリド137μl(1.13mmol)を加えた。室温で1時間撹拌した後、反応混合物を水へ注いで吸引濾過した。所望の中間体3-クロロ-N-[(1S,2R)-2-ヒドロキシ-1,2-ジフェニルエチル]プロパン1-スルホンアミド310mg(88%)を得た。
【0108】
b) [(1S,2R)-2-ヒドロキシ-1,2-ジフェニルエチル]アミド300mgを2N水酸化ナトリウム溶液8ml中に懸濁し、そして80℃で2時間撹拌し、その間に最初の結晶性懸濁液は油性懸濁液に転化した。混合物をさまして最少量の濃塩酸(pH 1〜2)で酸性化した。これにより(1R,2S)-2-(1,1-ジオキソイソチアゾリジン-2-イル)-1,2-ジフェニルエタノール)の結晶性沈殿が生じ、それを吸引濾過した(70mg,0.221mmol)。
【0109】
c) 段階b)から得た生成物(70mg,0.221mmol)をDMSO 1mlに溶解し、そして粉末状NaOH 110mg、次いでヨウ化n-プロピル169mg(0.995mmol)を加えた。反応混合物を室温で1.5時間撹拌してから水で希釈した。それによって得た結晶性沈殿を吸引濾過した。乾燥後、物質をn-ヘプタンと共に数回撹拌した。(1S,2R)-2-(1,2-ジフェニル-2-プロポキシエチル)イソチアゾリジン1,1-ジオキシド14.5mgを得た。
【0110】
実施例8:
1-(2-シクロプロピルメトキシ-1,2-ジフェニルプロピル)ピロリジン-2-オン(一般的な方法A2 + B2による合成)
【化19】

【0111】
a) カリウムtert-ブトキシド2.63g(24mmol)をTHF50mlに溶解して氷浴中で冷却した。撹拌溶液に20分かけてアルファ-メチルベンジルイソチオシアネート3.918g(24mmol)及びベンズアルデヒド2.123g(20mmol)の混合物を滴加した。試薬を添加した後、氷浴をはずし、そして混合物を1時間撹拌した。混合物を氷水に加え、2N HClで酸性化し、そしてジエチルエーテルで3回抽出した。残留物をシリカゲル上でクロマトグラフィによって予備精製した。粗製ジアステレオ異性体オキサゾリジンチオンをそれぞれ1.1g得た。より速く移動した異性体をジイソプロピルエーテルで摩砕して純粋な形態(0.78g)で単離した。この異性体のみを後の反応にかけた。
【化20】

【0112】
b) 段階a)で得たオキサゾリジンチオン0.74g(2.75mmol)を2N水酸化ナトリウム溶液(7.5ml)及び35%濃度の過酸化水素2.5mlと共にメタノール15ml中で処理した。混合物を氷水に加えて生成物を吸引濾過し、直ちにKOH(H2O 18.75ml中1.1g)と共にメタノール37mlに溶解し、そして還流下で10時間沸騰させた。次いで溶媒を蒸去し、残留物を水で希釈し、そして生成した沈殿(1-アミノ-1,2-ジフェニル-プロパン-2-オール,470 mg)を吸引濾過した。
【0113】
c) 1-アミノ-1,2-ジフェニルプロパン-2-オール330mg(1.452mmol)を通常のやり方で4-クロロブチリルクロリド215mg(1.525mmol)及びトリエチルアミン(154mg,1.525mmol)入りのDMF3.5ml中でアシル化して対応するクロロブチルアミド430mg(89%)を得た。
【化21】

【0114】
d) 段階c)で得たクロロブチルアミド420mg(1.266mmol)をDMSO 4mlに溶解し、そして粉末状NaOH 400mgを加えた。1時間撹拌した後、通常のやり方で後処理し、そして混合物を酢酸エチル/n-ヘプタン1:2の溶離剤を用いてシリカゲル上で精製した。閉環化合物を得た(350mg,94%)。
【化22】

【0115】
e) 段階d)で得た閉環生成物210mg(0.711mmol)をDMSO 2.5mlに溶解し、そして粉末状NaOH 227mg及びブロモメチルシクロプロパン239mg(1.774mmol)と共に室温で4時間撹拌した。通常の後処理後、シリカゲル上でクロマトグラフィにかけた。酢酸エチル/n-ヘプタンを用いて1-(2-シクロプロピルメトキシ-1,2-ジフェニルプロピル)ピロリジン-2-オンを純粋な形態で得た(18mg,9%)。
【0116】
実施例9:4-[(1S',2R')-2-(4-フルオロフェニル)-2-(2-オキソピロリジン-1-イル)-1-キノリン-8-イルエトキシ]ベンゾニトリル(一般的な方法:A1 + B1による合成)
【化23】

及び
実施例10:4-[(1R',2R')-2-(4-フルオロフェニル)-2-(2-オキソピロリジン-1-イル)-1-キノリン-8-イルエトキシ]ベンゾニトリル(一般的な方法:A1 + B1による合成)
【化24】

【0117】
a) tert-ブチル4[1-(4-フルオロフェニル)-2-ヒドロキシ-2-キノリン-8-イルエチル]カルバメート
0〜5℃でメタノール45ml中のtert-ブチル[1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-2-キノリン-8-イルエチル]カルバメート3.16g(8.3mmol)の溶液に水素化ホウ素ナトリウム0.314g(8.3mmol)を4つに分けて加えた。反応混合物を0〜5℃で0.5時間、次いで室温で0.5時間撹拌し、続いてリン酸二水素ナトリウム水溶液(80g/L)中へ注いだ。酢酸エチルで2回抽出した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。濃縮して淡黄色の粉末としてtert-ブチル[1-(4-フルオロフェニル)-2-ヒドロキシ-2-キノリン-8-イルエチル]カルバメート(ジアステレオ異性体混合物:80/20)2.78gを得た(収量:88%)。
【0118】
b) 2-アミノ-2-(4-フルオロフェニル)-1-キノリン-8-イルエタノール塩酸塩
tert-ブチル[1-(4-フルオロフェニル)-2-ヒドロキシ-2-キノリン-8-イルエチル]カルバメート2.78g(7.27mmol)を塩化メチレン75mlに溶解して0℃に冷却した。ジオキサン中のHCl溶液(4N)18mlを加えて混合物を0℃で20分間撹拌し、そして一夜かけて室温に到達させた。反応混合物を真空下で濃縮して残留物をジイソプロピルエーテルで処理した。濾過した後、ジイソプロピルエーテル及びペンタンで洗浄し、そして真空下で乾燥した。淡黄色の非常に吸湿性の粉末として2-アミノ-2-(4-フルオロフェニル)-1-キノリン-8-イルエタノール2.75gを塩酸塩(ジアステレオ異性体混合物:85/15)として得た(収量:定量的)。この物質をさらに精製することなく次の段階に用いた。
【0119】
c) 1-[1-(4-フルオロフェニル)-2-ヒドロキシ2-キノリン-8-イルエチル]ピロリジン-2-オン
-8℃に冷却したDMF15ml中の2-アミノ-2-(4-フルオロフェニル)-1-キノリン-8-イルエタノール塩酸塩1.5g(4.7mmol)及びトリエチルアミン1.96ml(14.1mmol)の溶液に4-クロロブチリルクロリド(95%)0.615 ml(5.18mmol)をゆっくりと滴加した。-8〜10℃で1時間撹拌した後、水酸化ナトリウムペレット2.25g(56.3mmol)及びヨウ化カリウム156mg(0.94mmol)を加え、そして混合物を室温で3時間撹拌した。混合物をリン酸二水素ナトリウム水溶液(80g/L)へ注いだ。ジイソプロピルエーテルで2回抽出した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。真空下で濃縮した後、石油ベンジン/酢酸エチル50:50、次いで30:70〜0:100を用いてクロマトグラフィによって残留物を精製した。1-[1-(4-フルオロフェニル)-2-ヒドロキシ-2-キノリン-8-イルエチル]ピロリジン-2-オン(ジアステレオ異性体A) 845 mg(収率:51%)及び1-[1-(4-フルオロフェニル)-2-ヒドロキシ-2-キノリン-8-イルエチル]ピロリジン-2-オン(ジアステレオマーB)127 mg(収率:8%)を得た。
ジアステレオマーA:1-[(1S',2R')-1-(4-フルオロフェニル)-2-ヒドロキシ-2-キノリン-8-イルエチル]ピロリジン-2-オン
融点:156℃
ジアステレオマーB:1-[(1R',2R')-1-(4-フルオロフェニル)-2-ヒドロキシ-2-キノリン-8-イルエチル]ピロリジン-2-オン
融点:淡黄色の油
【0120】
e) 4-[(1S',2R')-2-(4-フルオロフェニル)-2-(2-オキソピロリジン-1-イル)-1-キノリン-8-イルエトキシ]ベンゾニトリル(実施例9)
水素化ナトリウム(油中50%)41mg(0.86mmol)を、アルゴン下0℃でDMF2ml中の1-[1-(4-フルオロフェニル)-2-ヒドロキシ-2-キノリン-8-イルエチル]ピロリジン-2-オン(ジアステレオ異性体A)200mg(0.57mmol)の溶液に加えた。5分後、4-フルオロベンゾニトリル104mg(0.86mmol)を加え、そして混合物を室温で4時間撹拌した。反応混合物をリン酸二水素ナトリウム水溶液(80g/L)へ注ぎ、そしてジイソプロピルエーテルで2回抽出した。硫酸マグネシウムで乾燥した後、濃縮した。ヘプタン/酢酸エチル30:70を用いてクロマトグラフィにより残留物を精製して白色の粉末として4-[(1S',2R')-2-(4-フルオロフェニル)-2-(2-オキソピロリジン-1-イル)-1-キノリン-8-イルエトキシ]ベンゾニトリル239mg(収率:93%)を得た。
融点:112℃
【0121】
f) 4-[(1R',2R')-2-(4-フルオロフェニル)-2-(2-オキソピロリジン-1-イル)-1-キノリン-8-イルエトキシ]ベンゾニトリル(実施例10)
水素化ナトリウム(油中50%)47mg(0.98mmol)を、アルゴン下、0℃でDMF 2ml中の1-[1-(4-フルオロフェニル)-2-ヒドロキシ-2-キノリン-8-イルエチル]ピロリジン-2-オン(ジアステレオ異性体B)228 mg(0.65mmol)の溶液に加えた。5分後、4-フルオロベンゾニトリル118mg(0.97mmol)を加えて室温で2時間撹拌した。反応混合物を水性リン酸二水素ナトリウム溶液(80g/L)へ注ぎ、そしてジイソプロピルエーテルで2回抽出した。硫酸マグネシウムで乾燥した後、濃縮した。ヘプタン/酢酸エチル30:70を用いてクロマトグラフィにより残留物を精製して4-[(1R',2R')-2-(4-フルオロフェニル)-2-(2-オキソピロリジン-1-イル)-1-キノリン-8-イルエトキシ]ベンゾニトリル(ジアステレオ異性体B)197mg(収率:67%)を得た。
融点:188℃
【0122】
実施例11:1-[(1S',2R')-2-シクロプロピルメトキシ-1-(4-フルオロフェニル)-2-ナフタレン-1-イルエチル]ピロリジン-2-オン(一般的な方法:A1 + B1による合成)
【化25】

及び
実施例12:1-[(1R',2R')-2-シクロプロピルメトキシ-1-(4-フルオロフェニル)-2-ナフタレン-1-イルエチル]ピロリジン-2-オン(一般的な方法:A1 + B1による合成)
【化26】

【0123】
a) tert-ブチル[1-(4-フルオロフェニル)-2-ヒドロキシ-2-ナフタレン-1-イルエチル]カルバメート
0〜5℃でメタノール75ml中のtert-ブチル[1-(4-フルオロフェニル)-2-ナフタレン-1-イル-2-オキソエチル]カルバメート7.2g(18.9mmol)の溶液に水素化ホウ素ナトリウム0.72g(18.9mmol)を4つに分けて加えた。反応混合物を0〜5℃で1時間撹拌し、次いでリン酸二水素ナトリウム水溶液(80g/L)へ注いだ。酢酸エチルで2回抽出した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。濃縮して淡黄色の油としてtert-ブチル[1-(4-フルオロフェニル)-2-ヒドロキシ-2-ナフタレン-1-イルエチル]カルバメート(ジアステレオ異性体混合物:85/15)7.4gを得た(収率:定量的)。この物質をさらに精製することなく次の段階に使用した。
【0124】
b) 2-アミノ-2-(4-フルオロフェニル)-1-ナフタレン-1-イルエタノール塩酸塩
tert-ブチル[1-(4-フルオロフェニル)-2-ヒドロキシ-2-ナフタレン-1-イルエチル]カルバメート7.2g(18.9mmol)を塩化メチレン185mlに溶解して0℃に冷却した。ジオキサン中のHCl溶液(4N)47mlを加え、混合物を0℃で15分間撹拌して一夜かけて室温に到達させた。反応混合物を真空下で濃縮し、そして残留物をジイソプロピルエーテルで処理した。濾過した後、ジイソプロピルエーテル及びペンタンで洗浄し、そして真空下で乾燥した。白色の非常に吸湿性粉末として2-アミノ-2-(4-フルオロフェニル)-1-ナフタレン-1-イル)エタノール5.5gを塩酸塩(ジアステレオ異性体混合物:85/15)として得た(収率:91%)。この物質をさらに精製することなく次の段階に使用した。
【0125】
c) 1-[1-(4-フルオロフェニル)-2-ヒドロキシ2-ナフタレン-1-イルエチル]ピロリジン-2-オン
4-クロロブチリルクロリド(95%)2.15ml(18.1mmol)を、-10℃に冷却したDMF55ml中の2-アミノ-2-(4-フルオロフェニル)-1-ナフタレン-1-イルエタノール塩酸塩5.5g(17.3mmol)及びトリエチルアミン7.2ml(51.7mmol)の溶液にゆっくりと滴加した。室温で2.5時間撹拌した後、水酸化ナトリウムペレット8.3g(208mmol)及びヨウ化カリウム862mg(5.2mmol)を加えて混合物を室温で一夜撹拌した。混合物をリン酸二水素ナトリウム水溶液(80g/L)へ注いだ。ジイソプロピルエーテルで2回抽出した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。真空下で濃縮した後、石油ベンジン/酢酸エチル50:50を用いてクロマトグラフィによって残留物を精製した。1-[1-(4-フルオロフェニル)-2-ヒドロキシ-2-ナフタレン-1-イルエチル]ピロリジン-2-オン(ジアステレオ異性体A)3.8g(収率:63%)及び1-[1-(4-フルオロフェニル)-2-ヒドロキシ-2-(1-ナフチル)エチル]ピロリジン-2-オン(ジアステレオマーB)728 mg(収率:12%)を得た。
ジアステレオマーA:1-[(1S',2R')-1-(4-フルオロフェニル)-2-ヒドロキシ-2-ナフタレン-1-イルエチル]ピロリジン-2-オン
融点:160℃
ジアステレオマーB:1-[(1R',2R')-1-(4-フルオロフェニル)-2-ヒドロキシ-2-ナフタレン-1-イルエチル]ピロリジン-2-オン
融点:190℃
【0126】
d) 1-[(1S',2R')-2-シクロプロピルメトキシ-1-(4-フルオロフェニル)-2-ナフタレン-1-イルエチル]ピロリジン-2-オン(実施例11)
水素化ナトリウム(油中50%)124mg(2.58mmol)を0℃でDMF8ml中の1-[1-(4-フルオロフェニル)-2-ヒドロキシ-2-ナフタレン-1-イルエチル]ピロリジン-2-オン(ジアステレオ異性体A)800 mg(2.28mmol)の溶液に加えた。5分間撹拌した後、シクロプロピルメチルブロミド335μl(3.42mmol)を加えた。室温で2時間撹拌した後、混合物をリン酸二水素ナトリウム水溶液(80g/L)へ注いだ。ジイソプロピルエーテルで2回抽出した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。真空下で濃縮した後、石油ベンジン/酢酸エチル70:30を用いてクロマトグラフィにより残留物を精製した。白色粉末として1-[(1S',2R')-2-シクロプロピルメトキシ-1-(4-フルオロフェニル)-2-ナフタレン-1-イルエチル]ピロリジン-2-オン835mgを得た(収率:90%)。
融点:126℃
【0127】
e) 1-[(1R',2R')-2-シクロプロピルメトキシ-1-(4-フルオロフェニル)-2-ナフタレン-1-イルエチル]ピロリジン-2-オン(実施例12)
水素化ナトリウム(油中50%)149mg(3.1mmol)を0℃でDMF7ml中の1-[1-(4-フルオロフェニル)-2-ヒドロキシ-2-ナフタレン-1-イルエチル]ピロリジン-2-オン(ジアステレオ異性体B)725 mg(2.07mmol)の溶液に加えた。5分間撹拌した後、シクロプロピルメチルブロミド300μl(3.1mmol)を加えた。室温で2時間撹拌した後、混合物をリン酸二水素ナトリウム水溶液(80g/L)へ注いだ。ジイソプロピルエーテルで2回抽出した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。真空下で濃縮した後、石油ベンジン/酢酸エチル60:40を用いてクロマトグラフィにより残留物を精製した。白色粉末として1-[(1R',2R')-2-シクロプロピルメトキシ-1-(4-フルオロフェニル)-2-ナフタレン-1-イルエチル]ピロリジン-2-オン715 mgを得た(収率:85%)。
融点:150℃
【0128】
実施例32:1S,2R-1-(シクロプロポキシ-1,2-ジフェニルエチル)ピロリジン-2-オン
【化27】

1S,2R-1-(1,2-ジフェニル-2-ビニルオキシエチル)ピロリジン-2-オン(実施例120)39 mg(0.127mmol)をアルゴン下で無水塩化メチレン2mlに溶解した。それにトルエン中のジエチル亜鉛1.1モル溶液0.63ml(0.69mmol)の溶液、次いでヨウ化メチレン169mg(0.63mmol)を加えた。混合物を室温で3時間撹拌した。混合物を2N塩酸で希釈して酢酸エチルで抽出した。硫酸マグネシウムで乾燥した溶液を真空下で蒸発させ、そしてヘプタン/酢酸エチル6:4を用いて残留物をシリカゲル上でクロマトグラフィにかけた。1S,2R-1-(シクロプロポキシ-1,2-ジフェニルエチル)ピロリジン-2-オン34 mg(83%)を得た。
【0129】
実施例120:1S,2R-1-(1,2-ジフェニル-2-ビニルオキシエチル)ピロリジン-2-オン
【化28】

1S,2R-1-(2-ヒドロキシ-1,2-ジフェニルエチル)ピロリジン-2-オン84 mg(0.3mmol)に加えて4,7-ジフェニル[1,9]フェナントロリン5 mg(0.015mmol)及びパラジウムビストリフルオロ酢酸塩5mg(0.015mmol)をブチルビニルエーテル1mlに溶解し、次いでアルゴン下でトリエチルアミン9mg(0.09mmol)を加えた。混合物をアルゴン下、70℃で3時間撹拌した。次いで、混合物を水へ注いで酢酸エチルで数回抽出した。合わせた有機相を中性になるまで水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、次いで溶媒を真空下で蒸発させた。溶離剤としてn-ヘプタン/酢酸エチルを用いてシリカゲル20g上で残留物をクロマトグラフィにかけた。1S,2R-1-(1,2-ジフェニル-2-ビニルオキシエチル)ピロリジン-2-オン25mg(27%)を得た。
【0130】
以下の実施例は、上記の合成方法と同様に製造した:
【表1】

【0131】
【表2】

【0132】
【表3】

【0133】
【表4】

【0134】
【表5】

【0135】
【表6】

【0136】
【表7】

【0137】
【表8】

【0138】
【表9】

【0139】
【表10】

【0140】
【表11】

【0141】
【表12】

【0142】
【表13】

【0143】
【表14】

【0144】
【表15】

【0145】
【表16】

【0146】
【表17】

【0147】
【表18】

【0148】
【表19】

【0149】
【表20】

【0150】
【表21】

【0151】
【表22】

【0152】
【表23】

【0153】
【表24】

【0154】
【表25】

【0155】
【表26】

【0156】
【表27】

【0157】
【表28】

【0158】
【表29】

【0159】
【表30】

【0160】
【表31】

【0161】
記載された絶対立体化学を有する化合物は、記載された構造の純粋な鏡像異性体として得た。2つの鏡像異性体の形態であると記載された化合物は、2つの記載された鏡像異性体のラセミ混合物として得た。立体化学が記載されてない構造は、生成しうるジアステレオマーのラセミ混合物を表す。
【0162】
薬理学的研究
Kv1.5チャネルにおける活性の測定
ヒトKv1.5チャネルをゼノパス属(xenopus)の卵母細胞中で発現させた。このために、最初に卵母細胞をアフリカツメガエルから単離して濾胞除去した。次いで、試験管内で合成したKv1.5-コード化RNAをこれらの卵母細胞に注射した。Kv1.5タンパク質を1〜7日間発現した後、2-微小電極電圧固定技術を用いて卵母細胞上でKv1.5電流を測定した。この場合、通常、500ms〜0mV及び40mVを持続する電圧ジャンプでKv1.5チャネルを活性化した。
以下の組成:96mM NaCl,2mM KCl,1.8mM CaCl2,1mM MgCl2,HEPES 5mM(NaOHでpH 7.4
に滴定した)の溶液を浴中に流した。これらの実験は、室温で実施した。以下:Geneclamp増幅器(Axon Instruments, Foster City, USA)並びにMacLab D/Aコンバーター及びソフトウェア(ADInstruments, Castle Hill, Australia) をデータ収集及び分析に使用した。本発明の物質を種々の濃度で浴溶液に加えることによって試験した。物質の効果は、溶液に物質を加えなかったときに得られたKv1.5対照電流のパーセント阻害として算出した。次いで、個々の物質について阻害濃度IC50を決定するためにヒル式を用いてデータを外挿した。
【0163】
TASK-1チャネルにおける活性の測定
ヒトTASK-1チャネルをゼノパス属の卵母細胞中で発現させた。このために、最初に卵母細胞をアフリカツメガエルから単離して濾胞除去した。次いで、試験管内で合成したTASK-1-コード化RNAをこれらの卵母細胞に注射した。TASK-1タンパク質を2日間発現した後、2-微小電極電圧固定技術を用いて卵母細胞上でTASK-1電流を測定した。この場合、通常、250ms〜40mVを持続する電圧ジャンプを用いてTASK-1チャネルを活性化した。以下の組成:96mM NaCl,2mM KCl,1.8mM CaCl2,1mM MgCl2,HEPES 5mM(NaOHでpH 7.4に滴定した)の溶液を浴中に流した。これらの実験は、室温で実施した。以下:Geneclamp増幅器(Axon Instruments, Foster City, USA)並びにMacLab DAコンバーター及びソフトウェア(ADInstruments, Castle Hill, Australia) を、データ収集及び分析に使用した。本発明の物質を種々の濃度で浴溶液に加えて試験した。物質の効果は、物質を溶液に加えなかったときに得られたTASK-1対照電流のパーセント阻害として算出した。次いで、個々の物質について最大半減阻害濃度(IC50)を決定するためにヒル式を用いてデータを外挿した。
【0164】
KAChチャネルにおける活性の測定
マイクロパンクション(micro punction)技術を用いて、単離したモルモット心房上でアセチルコリン活性化カリウムチャネルにおける物質の効果を研究した。頚椎脱臼及び脊柱の断絶によって殺した後、心臓を摘出し、そして細い鋏で左心房を分離して測定室に固定した。改変クレブス−ヘンゼライト液(mmol/l:136 NaCl ,1.0 KCl,1.2 KH2PO4,1.1 MgSO4,1.0 CaCl2,5 グルコース,10 HEPES,pH = 7.4)を組織上に連続的に流した。測定室中の温度は37℃であった。周波数1Hzで1〜3ミリ秒を持続する1〜4ボルトの矩形波パルスで心房を刺激した。3mol/lのKClを充填したガラス微小電極を用いて活動電位を記録した。増幅器(モデル309微小電極増幅器,Hugo Sachs, March-Hugstetten, Germany)によって電気信号を感知し、そしてコンピュータに保存して分析した。実験概要:30分の平衡時間の後、ムスカリン性受容体を刺激することによってKAChイオンチャネルを活性化するために1μmol/l カルバコールを加えた。これにより、再分極90%(APD90)での活動電位持続時間が、カルバコールを添加した後には約150ms(カルバコールなし)から50msに著しく短縮された(Gertjegerdes W., Ravens U., Zeigler A. (1979) Time course of carbachol-induced responses in guinea pig atria under the influence of oubain, calcium, and rate of stimulation. J. Cardiovasc. Pharmacol. 1: 235-243)。全てのさらなる測定において浴溶液中にカルバコールが存在した。3μmol/lの測定物質を加えて30分後、そしてさらに30分間後、活動電位を記録した。KAChチャネルを遮断するとAPD90が延長された。さらに30分後、物質濃度を10μmol/lに高め、そして30分の曝露時間後に測定を実施した。カルバコールによる短縮を100%に設定して、カルバコールによってもたらされるAPD90短縮の延長パーセンテージを物質の効果として算出した。ロジスティック関数を用いて算出した測定値により曲線適合を実施した:
F(x)= yo + axn/(cn + xn
ここで、cはIC50であり、そしてnはヒル係数である。
【0165】
以下の式Iの化合物について以下のIC50値が測定された:
【表32】

【0166】
【表33】

【0167】
【表34】

【0168】
【表35】

【0169】
【表36】

【0170】
【表37】

【0171】
【表38】

【0172】
【表39】

【0173】
【表40】

【0174】
【表41】

【0175】
【表42】

【0176】
【表43】

【0177】
【表44】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

の化合物並びにその医薬上許容しうる塩及びトリフルオロ酢酸塩。
式中、
AはC、S又はS=Oであり;
nは0、1、2又は3であり;
R1はフェニル、ピリジル、チエニル、ナフチル、キノリニル、ピリミジニル又はピラジニルであり、
ここで、これらのアリール基はそれぞれ非置換又はF、Cl、Br、I、CN、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルコキシ、OCF3、メチルスルホニル、CF3、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルキル、ジメチルアミノ、スルファモイル、アセチル及びメチルスルホニルアミノからなる群より選ばれる1、2若しくは3個の置換基によって置換されており;
又は
R1は3、4、5、6又は7個のC原子を有するシクロアルキルであり;
R2はフェニル、ピリジル、チエニル、ナフチル、キノリニル、ピリミジニル又はピラジニルであり、
ここで、これらのアリール基はそれぞれ非置換又はF、Cl、Br、I、CN、COOMe、CONH2、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルコキシ、OCF3、OH、メチルスルホニル、CF3、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルキル、ジメチルアミノ、スルファモイル、アセチル及びメチルスルホニルアミノからなる群より選ばれる1、2若しくは3個の置換基によって置換されており;
R3はCpH2p-R8であり;
pは0、1、2、3、4又は5であり;
R8はCH3、CH2F、CHF2、CF3、3、4、5、6若しくは7個のC原子を有するシクロアルキル、C≡CH、C≡C-CH3、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルコキシ、フェニル又はピリジルであり、
ここで、フェニル及びピリジルは非置換又はF、Cl、Br、I、CF3、OCF3、CN、COOMe、CONH2、COMe、OH、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルキル、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルコキシ、ジメチルアミノ、スルファモイル、メチルスルホニル及びメチルスルホニルアミノからなる群より選ばれる1、2若しくは3個の置換基によって置換されており;
R4は水素又は1、2若しくは3個のC原子を有するアルキルであり;
R5は水素又は1、2若しくは3個のC原子を有するアルキルであり;
R6及びR7は相互に独立して水素、F又は1、2若しくは3個のC原子を有するアルキルである。
【請求項2】
式Iにおいて、
AはC、S又はS=Oであり;
nは0、1、2又は3であり;
R1はフェニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-チエニル、3-チエニル、1-ナフチル、2-ナフチル、2-キノリニル、3-キノリニル、4-キノリニル、5-キノリニル、6-キノリニル、7-キノリニル、8-キノリニル、2-ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ピリミジニル、2-ピラジニル、3-ピリダジニル又は4-ピリダジニルであり、
ここで、これらのアリール基はそれぞれ非置換又はF、Cl、Br、I、CN、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルコキシ、OCF3、メチルスルホニル、CF3、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルキル、ジメチルアミノ、スルファモイル、アセチル及びメチルスルホニルアミノからなる群より選ばれる1、2若しくは3個の置換基によって置換されており;
又は
R1はシクロヘキシルであり;
R2はフェニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-チエニル、3-チエニル、1-ナフチル、2-ナフチル、2-キノリニル、3-キノリニル、4-キノリニル、5-キノリニル、6-キノリニル、7-キノリニル、8-キノリニル、2-ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ピリミジニル、2-ピラジニル、3-ピリダジニル又は4-ピリダジニルであり、
ここで、これらのアリール基はそれぞれ非置換又はF、Cl、Br、I、CN、COOMe、CONH2、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルコキシ、OCF3、OH、メチルスルホニル、CF3、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルキル、ジメチルアミノ、スルファモイル、アセチル及びメチルスルホニルアミノからなる群より選ばれる1、2若しくは3個の置換基によって置換されており;
R3はCpH2p-R8であり;
pは0、1、2、3、4又は5であり;
R8はCH3、CH2F、CHF2、CF3、3、4、5、6若しくは7個のC原子を有するシクロアルキル、C≡CH、C≡C-CH3、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルコキシ、フェニル又は2-ピリジルであり、
ここで、フェニル及び2-ピリジルは非置換又はF、Cl、Br、I、CF3、OCF3、CN、COOMe、CONH2、COMe、OH、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルキル、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルコキシ、ジメチルアミノ、スルファモイル、メチルスルホニル及びメチルスルホニルアミノからなる群より選ばれる1、2若しくは3個の置換基によって置換されており;
R4は水素又は1、2若しくは3個のC原子を有するアルキルであり;
R5は水素又は1、2若しくは3個のC原子を有するアルキルであり;
R6及びR7は相互に独立して水素、F又は1、2若しくは3個のC原子を有するアルキルである;
請求項1記載の式Iの化合物並びにその医薬上許容しうる塩及びトリフルオロ酢酸塩。
【請求項3】
式Iにおいて、
AはC又はS=Oであり;
nは0、1、2又は3であり;
R1はフェニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-チエニル、3-チエニル、1-ナフチル、2-ナフチル、2-キノリニル、3-キノリニル、4-キノリニル、5-キノリニル、6-キノリニル、7-キノリニル又は8-キノリニルであり、
ここで、これらのアリール基はそれぞれ非置換又はF、Cl、Br、I、CN、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルコキシ、OCF3、メチルスルホニル、CF3及び1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルキルからなる群より選ばれる1若しくは2個の置換基によって置換されており、
又は
R1はシクロヘキシルであり;
R2はフェニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-チエニル、3-チエニル、1-ナフチル、2-ナフチル、2-キノリニル、3-キノリニル、4-キノリニル、5-キノリニル、6-キノリニル、7-キノリニル又は8-キノリニルであり、
ここで、これらのアリール基はそれぞれ非置換又はCl、Br、I、CN、CF3、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルキルからなる群より選ばれる1若しくは2個の置換基によって置換されており、
R3はCpH2p-R8であり;
pは0、1、2、3又は4であり;
R8はCH3、CH2F、CHF2、CF3、3、4、5若しくは6個のC原子を有するシクロアルキル、C≡CH、C≡C-CH3、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルコキシ、フェニル又は2-ピリジルであり、
ここで、フェニル及び2-ピリジルは非置換又はF、Cl、Br、I、CF3、OCF3、CN、COOMe、CONH2、COMe、OH、1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルキル及び1、2、3若しくは4個のC原子を有するアルコキシからなる群より選ばれる1若しくは2個の置換基によって置換されており、
R4は水素又は1、2若しくは3個のC原子を有するアルキルであり;
R5は水素又は1、2若しくは3個のC原子を有するアルキルであり;
R6及びR7は相互に独立して水素、F又は1、2若しくは3個のC原子を有するアルキルである;
請求項1又は2記載の式Iの化合物並びにその医薬上許容しうる塩及びトリフルオロ酢酸塩。
【請求項4】
薬剤として使用するための請求項1〜3のいずれか1項に記載の式Iの化合物及び/又はその医薬上許容しうる塩。
【請求項5】
活性成分として有効量の請求項1〜3のいずれか1項に記載された少なくとも1つの式Iの化合物及び/又はその医薬上許容しうる塩を医薬上許容しうる担体及び添加剤と共に含む医薬製剤。
【請求項6】
活性成分として有効量の請求項1〜3のいずれか1項に記載の少なくとも1つの式Iの化合物及び/又はその医薬上許容しうる塩を医薬上許容しうる担体及び添加剤と共に1つ又はそれ以上の他の薬理学的活性成分又は医薬と組み合わせて含む医薬製剤。
【請求項7】
K+チャネルが介在する疾患を治療及び予防するためのK+チャネル遮断効果を有する薬剤を製造するための請求項1〜3のいずれか1項に記載の式Iの化合物及び/又はその医薬上許容しうる塩の使用。
【請求項8】
活動電位の延長によって消失しうる心不整脈を治療又は予防するための薬剤を製造するための請求項1〜3のいずれか1項に記載の式Iの化合物及び/又はその医薬上許容しうる塩の使用。
【請求項9】
リエントリー不整脈を治療又は予防するための薬剤を製造するための請求項1〜3のいずれか1項に記載の式Iの化合物及び/又はその医薬上許容しうる塩の使用。
【請求項10】
上室性不整脈を治療又は予防するための薬剤を製造するための請求項1〜3のいずれか1項に記載の式Iの化合物及び/又はその医薬上許容しうる塩の使用。
【請求項11】
心房細動又は心房粗動を治療又は予防するための薬剤を製造するための請求項1〜3のいずれか1項に記載の式Iの化合物及び/又はその医薬上許容しうる塩の使用。
【請求項12】
呼吸器障害、神経変性障害及び癌を治療又は予防するための薬剤を製造するための請求項1〜3のいずれか1項に記載の式Iの化合物及び/又はその医薬上許容しうる塩の使用。
【請求項13】
睡眠関連の呼吸器障害、中枢性及び閉塞性睡眠時無呼吸、チェーンストークス呼吸、いびき、呼吸駆動の中枢性障害、乳児突然死、手術後の低酸素及び無呼吸、筋肉関連の呼吸器障害、長期的な人工呼吸後の呼吸器障害、高所順応に関連する呼吸器障害、低酸素及び高炭酸ガスによる急性及び慢性肺障害、神経変性障害、痴呆、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、癌、乳癌、肺癌、大腸癌及び前立腺癌を治療又は予防するための薬剤を製造するための請求項1〜3のいずれか1項に記載の式Iの化合物及び/又はその医薬上許容しうる塩の使用。
【請求項14】
心不全、特に拡張期心不全を治療又は予防するための、及び心房の収縮性を高める薬剤を製造するための請求項1〜3のいずれか1項に記載の式Iの化合物及び/又はその医薬上許容しうる塩の使用。
【請求項15】
活性成分として有効量の請求項1〜3のいずれか1項に記載の少なくとも1つの式Iの化合物及び/又はその医薬上許容しうる塩及びベータ遮断薬を医薬上許容しうる担体及び添加剤と共に含む医薬製剤。
【請求項16】
活性成分としての有効量の請求項1〜3のいずれか1項に記載の少なくとも1つの式Iの化合物及び/又はその医薬上許容しうる塩及びIKsチャネル遮断薬を医薬上許容しうる担体及び添加剤と共に含む医薬製剤。

【公表番号】特表2008−543897(P2008−543897A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−517370(P2008−517370)
【出願日】平成18年6月10日(2006.6.10)
【国際出願番号】PCT/EP2006/005579
【国際公開番号】WO2006/136305
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(399050909)サノフィ−アベンティス (225)
【Fターム(参考)】