説明

脂質代謝を制御するための組成物

本発明は、脂質代謝を制御するための組成物と、食品産業、ならびに栄養補助食品および治療の分野において使用することができる方法と、に関する。特に、本発明は、対象の(特に、ヒトの)代謝を活性化させるための、食品添加物またはサプリメント、これらを含む組成物およびこれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂質代謝を制御するための組成物と、食品産業ならびに栄養補助食品および治療の分野において使用されてもよい方法と、に関する。特に、本発明は、特に、対象の(特に、ヒトの)代謝を回復させるための、食品添加物またはサプリメント、これらを含む組成物、およびそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
栄養は、対象の良好な健康または一般的な福祉の維持において重大な役割を果たす。特に、栄養は、疲労の低下による対象の一般的な健康状態の強化、身体の活力に必要な特定の機能の促進(特に、一般的な代謝および燃料(脂質、糖質、タンパク質)の代謝の両方の刺激)による記憶の改善を可能にする。
【0003】
フェノフィブラート(登録商標)(EP0295637 WARNER LAMBERT)は、トリグリセリドおよびコレステロールの血中レベルを低下させるために、食事とともに使用される。これは、α ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPAR−α)の活性化によって作用する。この活性化は、脂肪分解の増加、およびアテローム生成粒子(トリグリセリド(LDLおよびVLDL)に富む)の血漿からの除去に関与する。これは全ては、トリグリセリドおよびコレステロールの血中レベルの減少をもたらす。フェノフィブラート(登録商標)によって引き起こされる下記の副作用が認められる:消化器系疾患、筋痛、血中トランスアミナーゼの上昇、頭痛(cephalees、maux de tete)、下痢、および皮膚アレルギー。フェノフィブラート(登録商標)は、重度の肝不全または腎不全またはアレルギーが存在する場合には禁忌である。
【0004】
植物ステロールは、植物、油性植物、およびこれらから抽出された油、ならびにパイン油中に存在する天然化合物である。コレステロールレベルの低下のために使用される植物ステロールは、一般的に、植物油(大豆、トウモロコシ、ヒマワリ、およびナタネ)から抽出され、低い溶解度のろう様物質として現われる。これらは、食品(マーガリン、サラダドレッシング、など)への正常な取り込み、およびよりよい吸収を達成するために、脂肪酸と結合される。これらは近い化学構造であるため、植物ステロールは、腸内のその吸収部位を占めることによって、コレステロールの吸収を遮断する。植物ステロールの化学的記載は1922年にまで遡るが、1970年代まで、コレステロールレベルへのその有益な作用が真剣に考慮されなかった。1970年代半ばから行われた臨床治験は、植物ステロールが、LDL コレステロール(低密度リポタンパク質コレステロール(悪玉コレステロールとも呼ばれる))レベルを8%〜12%低下させることを示した。植物ステロールまたは植物ステロールサプリメントで強化された食品の消費は、カロテノイド(β−カロテノイド、リコピン)の血中レベルを低下させることができる。この効果は、これらの物質の腸管吸収の減少に起因する。植物ステロールは、シトステロール血症、および特定の黄色腫症(xanthomatoses)の場合に禁忌である。植物ステロールは、トリグリセリドに対して無効であり、LDL/コレステロールに対するその有効性はかなり制限されていることが証明された。
【0005】
微量元素、植物、必須元素(アミノ酸)またはビタミンなどの栄養素は、特定の身体的機能を活性化または阻害でき、あるいは純粋にエネルギー中立的な効果を有することができることが知られる。1つ以上の栄養素を、身体に、減少した量で与えるものである微栄養素は、体重減少療法の間の従来の栄養法に関連する問題の部分的な解決を可能にしてきた。これらの減少した量は、栄養素を、細胞であるところの最終的な受容体中に直接的に吸収させる。体重減少療法の間の栄養素は、これを可能にしない。しかし、より重要なことには、微栄養素は、吸収部位を飽和させる問題の解決に役立ってきた。従って、微栄養素は、腸管吸収部位を飽和させない。
【0006】
特許文献1(MARCINOWSKI PETER)(2001年1月11日)は、改善された栄養価を有する食品のタイプを開示し、これは酵母、ビタミン、植物油、特にあまに油、海藻、およびミネラルの混合物を含む。当該酵母は、微量金属およびミネラル、およびビタミンB群を含む。
【0007】
非特許文献1、および特許文献2(FANKERU KK)(2002年10月8日)は、カプセル剤の形態の調製容易な組成物(これは、油、ビタミンB2、チアミン、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、ビオチン、パントテン酸、ビタミンP、D、E、FおよびK、カロテノイド、金属含有酵母、アスコルビン酸、ならびにニコチンアミドを含む)を開示する。使用される油は、エゴマ油、ピーナッツ油、コムギ胚芽油、オリーブ油、グレープシード油、ベニバナ油、DHA、EPA、および月見草油から選択されてもよい。
【0008】
特許文献3(ORLOVA RAISSA PETROVNAら)(2000年11月27日)は、酵母、植物油、およびいくつかの有効成分(ハマナ、木の実および/またはハチミツである)を含む組成物を開示し、これは照射に対する抵抗性を増加させ、刺激特性を有する。当該酵母は、微量金属およびミネラル、およびビタミンB群を含む。
【0009】
非特許文献2は、グレープシード油が、コレステロールの血中レベルを減少させるための食品中の機能性成分として使用できるかもしれないことを開示する。
【0010】
特許文献4(WAKUNAGA OF AMERICA株式会社ら)(2000年2月24日)は、血中ホモシステインレベルの低下のための、ニンニクエキス、ビタミンB6およびB12、ならびに葉酸を含む組成物を開示する。従って、循環器疾患のリスク(心筋梗塞など)が低下する。特に、ニンニクを含む調製物が、コレステロールの血中レベルを低下させることが開示される。
【0011】
特許文献5(KENTON KALEVI JOHN ら)(2002年11月21日)には、アスコルビン酸、ビタミンE、マグネシウム、アミノ酸、フラボノイド、およびリコピンを、循環器疾患(粥状斑など)、およびいくつかの心筋梗塞の予防のための有効成分として含む医薬組成物が記載されている。ニンニク粉末が存在してもよい。
【0012】
特許文献6(タカラバイオ社ら)(2005年10月13日)は、血栓症の予防または治療のための、減少した分子量を有するヒバマタ属型の藻類に由来する多糖類硫酸塩を含む組成物を開示する。
【0013】
非特許文献3および特許文献7(日本合成化学社)(1996年1月9日)には、天然多糖類(カラゲニンなど)および魚油(イワシまたはマグロの油など)を有効成分として含む、コレステロール形成および大脳血栓症を予防するための組成物が記載されている。
【0014】
特許文献8(NAGAOKA HITOSHI)(2002年9月25日)は、アテローム硬化症を阻害するためのシイタケ菌糸体のエキスを含む組成物(Cortinellus shiitake fungus)を開示する。
【0015】
特許文献9(STUECKLER FRANZ)(1999年9月30日)は、循環器疾患に対する予防効果を有する、天然物質に基づく食品組成物を開示する。これは、レシチン、レッドバインおよびトコフェロール酢酸エステルエキス、ならびにサケ油、シイタケエキス、ビタミンB群(葉酸、ビタミンB1、B2、B6、B12、ニコチンアミド、パントテノール、ビオチン)、ニンニクエキス、およびアスコルビン酸を含む。当該組成物のマトリックスは、薬用酵母またはオリーブ油であってもよい。(1)オリーブ油は、その高いオレイン酸含量のため、コレステロールの血中レベルを低下させる;(2)ニンニクエキスは、アテローム硬化症および粥状斑の形成に対する保護効果を有する;(3)ビタミンB群は、ホモシステインの血中レベルを低下させ、従って、動脈硬化症を減少させる;(4)シイタケエキスは、粥状斑の形成を減少させ、コレステロールの血中レベル、および血栓症のリスクを低下させる;(5)魚油は、トリグリセリドの血中レベルを低下させ、かつ血小板の凝集を減少させる、ことが明らかになった。
【0016】
先行技術によって示された解決法にも関わらず、身体に対する望ましくない効果または副作用を有さず、同時に、
−循環脂質を減少させ、
−粥状斑を予防し、
−脂肪肝を予防し、
−体重を制御し、脂肪細胞のサイズを制限するとともに、体脂肪量を安定化することによって肥満を予防し、
−酸化脂質の異化反応および酸素摂取を増加させ、
−かつ、身体能力および持久力を改善するように作用する有効な組成物はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】独国特許出願公開第19930221(A1)号明細書
【特許文献2】特開第2002 291419(A)号公報
【特許文献3】ロシア登録特許第2159 564(C1)号明細書
【特許文献4】国際公開第00/09141(A)号パンフレット
【特許文献5】米国特許公開第2002/172729(A1)号明細書
【特許文献6】国際公開第2005/095427(A)号パンフレット
【特許文献7】特開第08 000219(A)号公報
【特許文献8】特開第2002 275088(A)号公報
【特許文献9】国際公開第99/48386(A)号パンフレット
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】文書データベース WPI Week 200316 Derwent Publications社(ロンドン);YEAR 2003−160118 XP002477227
【非特許文献2】文書データベース FSTA [Online] INTERNATIONAL FOOD INFORMATION SERVICE(IFIS)、FRANKFURT−MAIN、DE;KINSELLA J.E:「Grapeseed oil: a rich source of linoleic acid」XP002477226 データベース受入番号 74−4−07−n0351
【非特許文献3】データベース WPI Week 199610 Derwent Publications社(ロンドン);YEAR 1996−091609 XP002256701
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、ヒトおよび動物における脂質代謝を制御するように設計された革新的な組成物の創出についての要求に対する回答を提案する。とりわけ、本発明の組成物は、特に有利な結果と同時に、総コレステロール(最大−18%)、LDL−C(最大−20%)、およびトリグリセリド(最大−35%)の低下を与える間に、脂肪代謝に対する顕著な作用を可能にする。
【0020】
特に、本発明は、ヒトおよび動物における脂質代謝を制御するように設計された組成物に関する。この組成物は、
7μg〜700μg(100g/100mlあたり)の、ナタネ油、オリーブ油、グレープシード油、および月見草油から選択される少なくとも2つの植物油、
10μg〜1000μg(100g/100mlあたり)の、ナトリウム、マグネシウム、およびカルシウムから選択される正に荷電されたミネラル、
10μg〜1000μg(100g/100mlあたり)の、亜鉛および鉄から選択される金属、
7μg〜700μg(100g/100mlあたり)の、酵母または酵母エキスがセレンで強化されていることに特徴付けられる出芽酵母属に由来する酵母または酵母エキス、
7μg〜700μg(100g/100mlあたり)の、キノコまたはシイタケエキス(菌糸体)、
6μg〜600μg(100g/100mlあたり)の、サムフィア、ニンニク、およびブドウから選択される植物からの少なくとも2つの植物エキス、
8μg〜800μg(100g/100mlあたり)の、ビタミンA、B1、B9、C、E、F、およびPPから選択される少なくとも1つのビタミン、
7μg〜700μg(100g/100mlあたり)の、動物油およびコプラ油(ココヤシ)、
6μg〜600μg(100g/100mlあたり)の、Palmaria palmata(ダルス)、Chondrus crispus(カラゲニン)、およびFucus vesiculosus(ブラダーラック)から選択される少なくとも1つの藻、
ならびに、医薬品および/または食事性の許容できる賦形剤、の組み合わせを含む。当該賦形剤は、100mlの本発明の組成物を得るように、体積を有利に補うだろう。
【0021】
本願明細書における実施例では、本発明の組成物は、予想外の相乗効果を生じることが示され、別々に摂取された成分の効果よりもずっと大きく、記載された組成物と関連付けられた場合は驚くべき結果を生じない。
【0022】
本発明はまた、食品添加物の調製について定義された組成物の使用に関する。
【0023】
本発明の別の目的は、本願において定義された組成物を投与、塗布、または摂取する工程を含む、対象における脂質代謝を制御するための方法に関する。
【0024】
本発明の別の目的は、本発明において定義された組成物を投与する工程を含む、対象におけるトリグリセリドレベルを低下させるための方法に関する。
【0025】
本発明の別の目的は、本発明の組成物を投与する工程を含む、対象におけるコレステロールレベルを低下させるための方法に関する。
【0026】
ヒトおよび動物における脂質代謝を制御するように設計された薬物または栄養製品を調製するための当該組成物の使用はまた、本発明の目的の1つである。
【0027】
特に、脂質代謝の制御は、代謝の一般的作用のリバランスおよび再刺激による、当該ヒトもしくは動物の身体の維持および/または再生であって、
当該身体による脂質消費の刺激および/または
血漿コレステロールおよび/またはトリグリセリドレベルの低下、を含むものからなる。
【0028】
本発明の薬物または栄養製品は、メタボリックシンドロームの治療または予防、粥状斑の形成、脂肪肝および/または循環器疾患のために使用されてもよい。
【0029】
本発明の組成物の他の予想外の利点は、詳細な説明、および本発明の実施態様の例を読むことで明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】ob/ob マウスにおける血漿LDLレベルの変動。
【図2】ob/ob マウスにおける血漿LDLレベルの変動。
【図3】オス APOE ko マウスの大動脈の粥状斑の数(12ヶ月齢の時点)。
【図4】脂肪肝(パラフィン封入された肝臓組織、HE、10× 拡大率)。
【図5】脂肪に富む食餌を受けているOB/OB オスのマウスにおける体重増加(4週対0週)。
【図6a】LDLr(ko)のオスのマウスにおける体重変動。
【図6b】APOEkoのオスのマウスにおける体重変動(治療は10週齢の時点で開始した)。
【図6c】LDLr(ko)のオスのマウスにおける脂肪量の割合。
【図6d】APOEkoのオスのマウスにおける脂肪量の変動(治療は10週齢の時点で開始した)。
【図6e】LDLr koのオスのマウスにおける精巣上体の白色脂肪組織(パラフィン封入された組織、HE、5× 拡大率)。
【図6f】LDLr koのオスのマウスにおける脂肪細胞の平均サイズ。
【図7a】OB/OBのオスのマウス(0週)における酸素摂取曲線。
【図7b】OB/OBのオスのマウス(4週)における酸素摂取曲線。
【図7c】OB/OBのオスのマウスにおける酸素摂取曲線(AUC)下の面積の相違。
【図7d】APOEkoのオスのマウスにおける3ヶ月時点での酸素摂取量(治療は10週齢の時点で開始した)。
【図7e】APOEkoのオスのマウスにおける6ヶ月時点での酸素摂取量(治療は10週齢の時点で開始した)。
【図7f】APOEkoのオスのマウスにおける9ヶ月時点での酸素摂取量(治療は10週齢の時点で開始した)。
【図7g】APOE koのオスのマウスにおける酸素摂取の曲線下の面積(AUC)の相違(治療は10週齢の時点で開始した)。
【図7h】LDLr ko オスのマウスにおける累積酸素摂取量。
【図8a】APOEkoのオスのマウスにおける3ヶ月時点での熱産生量(治療は10週齢の時点で開始した)。
【図8b】APOEkoのオスのマウスにおける6ヶ月時点での熱産生量(治療は10週齢の時点で開始した)。
【図8c】APOEkoのオスのマウスにおける9ヶ月時点での熱産生量(治療は10週齢の時点で開始した)。
【図8d】APOE koのオスのマウスにおける熱産生の曲線下の面積(AUC)の相違(治療は10週齢の時点で開始した)。
【図8e】LDLr koのオスのマウスにおける累積熱産生量。
【図9a】対照に対する、本発明の組成物による治療4週間後のOB/OB マウスにおける酸化的筋肉のミトコンドリアのクリステの密度。
【図9b】対照に対する、本発明の組成物による治療4週間後のOB/OB マウスにおける酸化的筋肉のミトコンドリアのクリステの密度。
【図10】OB/OB マウスにおける強制水泳試験(マウスの体重の7.5%の負荷重量をかけた)。
【図11a】LDLr koのオスのマウスにおける血漿トリグリセリドレベルの変動。
【図11b】APOE koのオスのマウスにおける血漿トリグリセリドレベルの変動(治療は10週齢の時点で開始した)。
【図12a】空腹のLDLr koのオスのマウスにおける血漿トリグリセリドレベル(10ヶ月の治療)。
【図12b】LDLr koのオスのマウスにおける摂食後の血漿トリグリセリドレベル(10ヶ月の治療)。
【図13a】PPARa(ko)LDLr(ko)のオスのマウスにおける体重の変動。
【図13b】10ヶ月の治療後の、空腹ではないLDLrkoPPARakoのオスのマウスにおける血漿トリグリセリドレベル。
【図13c】LDLr(ko)PPARα(ko)のオスのマウスにおける24時間の累積酸素摂取量。
【図13d】LDLr(ko)PPARα(ko)のオスのマウスにおける24時間の累積熱産生量。
【図14】5UAS−LUC + ウミシイタケ + Gal4またはGal4−α−LBDによって形質移入されたNIH3T3細胞における、本発明の組成物によるPPAR−α トランス活性化試験。
【図15】1ヶ月の治療後のOB/OB マウスにおいて、PPAR αによって制御され、かつ、筋肉内で過剰発現した遺伝子。
【図16】神経筋伝達、栄養機能、タンパク質合成、および筋収縮性に関与する、1ヶ月の治療後のOB/OB マウスにおいて過剰発現した筋遺伝子。
【図17】A;肝臓、骨格筋、および脂肪組織において、本発明の組成物での治療によって影響を受けた遺伝子数を示すベン図。比較は、対照動物と、本発明の組成物で処置された動物との間でなされた(群あたりn=7)。差異のある様式で発現した遺伝子は、偽陽性である10%未満の可能性がある。B;本発明の組成物による骨格筋への効果の、遺伝子群による分析。シグナル伝達および代謝経路を示す遺伝子群は、専門家によってコンパイルされ、データベース「Molecular Signatures Database」(MSigDB)において入手できる。本発明の組成物によってかなりの程度まで充実させた経路を表中に示す(P<0.01、偽陽性率<12%)。当該遺伝子群の名称は、MsigDBにおける命名ものと同様に命名され、濃縮スコア(陽性=濃縮(enrichi)、陰性=窮乏(appauvri))、および確率値が示される。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、添加剤または食品もしくは栄養の補助食品として、かつ/または栄養補助食品および/もしくは治療用補助剤として使用でき、脂質代謝に対して特に有利な特性を示す組成物の実施に関する。本発明の組成物は、栄養の分野において、ヒトまたは動物において使用でき、予防ケアを含む。
【0032】
驚いたことに、本発明の組成物は、ヒトにおける総コレステロール(最大−18%)およびトリグリセリド(最大−35%)の、同時かつ実質的な減少、およびLDLレベルの平均的な減少(最大−20%)を引き起こすことができる。従って、本発明の組成物は、コレステロールおよびトリグリセリドに対して同時に作用するという利点を有し、判明した副作用は全くない。これらの特性は、脂質代謝における回復の分野において(例えばメタボリックシンドロームもしくは脂質代謝の調節不全に関連する他の障害に冒されている、または冒される可能性がある対象において)、いくつかの特に有利な利用を本発明の組成物に与える。
【0033】
さらに、行われた研究は、本発明の組成物の効果は、有利でありかつ既存の薬物または調製物と異なる作用の機構に起因することを示す。実際、脂質代謝の調節に対する作用は、コレステロールの合成または吸着に対する抑制作用よりも、むしろコレステロール消費に対する正の作用(刺激または回復)に由来する。コレステロールの消費に対するこの作用は、特に、骨格筋のレベルに影響を及ぼす。
【0034】
さらに、得られたデータは、本発明の組成物の作用が、市販の薬物(フィブラートなど)よりも、少ない代謝経路または遺伝経路を動かすことを示す。従って、これは、現在までに使用されてきた薬物と比較して、限定された数の遺伝子の発現の調節によって得られる。
【0035】
本発明の調製物は、特定の組成物、および、特に有利な機構によって媒介される重要な生物学的作用を示す。
【0036】
本発明の第1の目的は、ヒトおよび動物における脂質代謝を制御するように設計された組成物を与えることである。この組成物は、
7μg〜700μg(100g/100mlあたり)の、ナタネ油、オリーブ油、グレープシード油、および月見草油から選択される少なくとも2つの植物油、
10μg〜1000μg(100g/100mlあたり)の、ナトリウム、マグネシウム、およびカルシウムから選択される正に荷電されたミネラル、
10μg〜1000μg(100g/100mlあたり)の、亜鉛および鉄から選択される金属、
7μg〜700μg(100g/100mlあたり)の、酵母または酵母エキスがセレンで強化されていることに特徴付けられる、出芽酵母属に由来する酵母または酵母エキス、
7μg〜700μg(100g/100mlあたり)の、キノコまたはシイタケエキス(菌糸体)、
6μg〜600μg(100g/100mlあたり)の、サムフィア、ニンニク、およびブドウから選択される植物からの少なくとも2つの植物エキス、
8μg〜800μg(100g/100mlあたり)の、ビタミンA、B1、B9、C、E、F、およびPPから選択される少なくとも1つのビタミン、
7μg〜700μg(100g/100mlあたり)の、動物油およびコプラ油(ココヤシ)、
6μg〜600μg(100g/100mlあたり)の、Palmaria palmata(ダルス)、Chondrus crispus(カラゲニン)、およびFucus vesiculosus(ブラダーラック)から選択される少なくとも1つの藻、
ならびに薬剤的に、かつ/または栄養的に許容できる賦形剤、の組み合わせを含む。
【0037】
好ましくは、本発明の組成物は、冷水魚油(Oleum Pisci mare fresca)および動物油を含む。
【0038】
好ましい実施態様によれば、本発明の組成物は、ビタミンA、B1、B9、C、E、F、およびPPから選択される少なくとも2つのビタミンを含む。
【0039】
特に、本発明の組成物は、好ましくは、
7μg〜700μg(100g/100mlあたり)の、ナタネ油、オリーブ油、グレープシード油、および月見草油、
10μg〜1000μg(100g/100mlあたり)の、ナトリウム、マグネシウム、およびカルシウム、
10μg〜1000μg(100g/100mlあたり)の、亜鉛および鉄、
7μg〜700μg(100g/100mlあたり)の、セレンで強化された出芽酵母または酵母エキス、
7μg〜700μg(100g/100mlあたり)の、菌糸体またはシイタケの菌糸体のエキス、
6μg〜600μg(100g/100mlあたり)の、サムフィア、ニンニク、およびブドウ、
8μg〜800μg(100g/100mlあたり)の、ビタミンA、B1、B9、C、E、F、およびPP、
7μg〜700μg(100g/100mlあたり)の、冷水魚油およびコプラ油、
6μg〜600μg(100g/100mlあたり)の、Palmaria palmata(ダルス)、Chondrus crispus(カラゲニン)、およびFucus vesiculosus(ブラダーラック)、を含む。
【0040】
好ましくは、本発明の組成物は、賦形剤または添加剤(例えば、水、油、ラクトース−サッカロース、またはラクトース−デンプン フルクト−オリゴ糖、ソルビトール、リン酸水素カルシウム)を含むものとする。
【0041】
食品中で(食品添加物として)使用される賦形剤:色素、保存剤(ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム)、香料、抗酸化剤(カロテノイド、ビタミンCおよびE、フラボノイド)、乳化剤(レシチン、脂肪酸のモノおよびジ−グリセリド)、安定化剤およびゲル化剤(レシチン、乳酸カリウム、寒天、カラゲニン、アルギン酸ナトリウム)、調味料(グルタミン酸塩、イノシン酸ナトリウム)、酸性化剤(クエン酸、リンゴ酸ナトリウム)、抗ケーキング剤(ステアリン酸マグネシウム、二酸化ケイ素)、甘味料(ソルビトール、サッカリンナトリウム)。
【0042】
本発明の組成物は、異なる様式で、特に、固形物、液体、ゲル状の、条片、ペースト、粉末、ガムなどの、全ての種類の食品ベースおよび/もしくは飲料に加えられるように設計された栄養補助食品または添加剤として、包装されてもよい。これは、いずれかの適した支持形式(例えば、ボトル、箱、ブリスター包装、フラスコ、薬ビンなど)で包装されてもよい。これは、典型的に、経口投与のために設計される。
【0043】
さらに、本発明の組成物は、栄養補助食品または添加剤として、他の製品、飲料、薬味などと組み合わせて、使用されてもよい。例えば、本発明の組成物は、食品ベースおよび/または飲料(例えば、マーガリン、油、粉乳、乳製品(デザートクリーム、ヨーグルトなど)、シリアルバー、飲料(ミネラルウォーター、果汁など)、塩、薬味、ソースなど)に取り込まれてもよい。
【0044】
出願人は、対象の状態を改善するために、栄養上の有効成分または栄養補助食品または添加剤として、栄養補助食品および/または薬物として使用できる組成物を開発しようとした。特に、出願人は、循環コレステロールの同化およびその除去に対して作用し、脂質の代謝回転の増加に対して作用し、燃料の燃焼と細胞および身体の活力を制御する基礎代謝のための刺激薬として作用し、かつ/または多価不飽和脂肪酸の有益な変換において、例えば、その抗炎症性効果に作用するような、解毒作用および抗酸化作用を有する組成物を開発しようとした。
【0045】
この研究は、特に、下記に作用する特性を示す組成物を完成させることを目的とした。
解毒機能:肝細胞、胆嚢、および小腸の刺激ならびに調節。この機能は、脂質代謝に対する第1の予防作用および制御作用である。これは、毒素の排除、食品由来・細胞活動、微生物の破壊由来・薬物使用由来・脂肪代謝由来・環境汚染由来の排泄物の除去、を可能にする。
遊離基に対する防御は、LDLの酸化を減少させ、かつ、酸素の活性な誘導体を中和するように作用する。
細胞膜の透過性の増加。
燃料の燃焼および細胞活性の一部を制御する基礎代謝。
脂質代謝の制御。
【0046】
この研究は、異なるタイプの成分の選択、ならびに、これらの成分の異なる可能な組み合わせの開発および試験、ならびに、例えば上記で定義された組成物であって下記を含むものの保持、をもたらす:
−植物油、
−ミネラル、
−金属(微量元素)、
−酵母または酵母エキス、
−キノコまたはキノコエキス、
−海藻またはそのエキス、
−野菜エキス(植物)、および
−ビタミン。
【0047】
微量元素は、体内で見出されるメンデレーエフの表の元素、金属または半金属である。
【0048】
植物または植物エキスは、通常、薬草製剤と呼ばれることもある、植物治療作用を有する植物である。これらは、その効果が科学的に認められ、または慣習的に知られた植物である。
【0049】
ビタミンは、身体に対するビタミンの機能を果たすいずれの物質であってもよい。
【0050】
植物油は、好ましくは、ナタネ油、オリーブ油、グレープシード油、および月見草油から選択される少なくとも2つの油を含む。好都合には、当該組成物は、少なくとも3つの植物油を含むべきであり、より優先的には、これはナタネ油、オリーブ油、グレープシード油、および月見草油を含む。
【0051】
ナタネ油(Oleum Brassica napus oleifera)のうちの98%は、脂肪酸トリエステルによって作られ、残りの2%は、ステロールおよびトコフェロール(これはビタミンEである)に富む。これは、α−リノール酸、ω−3 多価不飽和脂肪酸、ω−6 一不飽和脂肪酸(興味深いことには、ω 3:6の比は1:2.5である)に富む油であり、飽和脂肪酸は6〜8%のみである。
【0052】
オリーブ油(Oleum Olea europea)は、オレイン酸:一不飽和脂肪酸(>75%)、ω 6(8%)に富む油であり、オリーブ油はビタミンA、EおよびKを含む。ビタミンE/PUFA(多価不飽和脂肪酸)の比は、全ての油のうちで最も高い。
【0053】
グレープシード油(Vitis Oleum vinifera)は、リノール酸(α−リノール酸およびβ−リノール酸)、オレイン酸、パルミチン酸およびステアリン酸のバランスがとれた油である。70%超はω−6である。強力な不飽和:多価不飽和/飽和の比は>5である。
【0054】
月見草油(Oleum Oenothera biennis)は、リノール酸、γ−リノール酸、およびオレイン酸およびステアリン酸のバランスがとれたω−6 油である。
【0055】
1つの特定の実施態様では、当該組成物は、ナタネ油、オリーブ油、グレープシード油、および月見草油を含む。
【0056】
好ましくは、当該ミネラルは、1つ以上の正に荷電されたミネラル、好ましくは、ナトリウム、マグネシウム、およびカルシウムから選択されるミネラルを含む。
【0057】
ナトリウムは、身体の酸−塩基の調節および細胞代謝を可能にする。これは、活動電位の興奮性および伝導(特に、神経筋および心臓の活動電位)の原因である細胞の脱分極、酸−塩基の平衡の維持、浸透圧の維持、ならびに体液とイオン交換との間の平衡、において重要な役割を果たす。マグネシウムは、イオンチャネルの平衡において必須である。これは、酵素補助因子として作用し、全ての組織中のNA+およびK+の輸送系を調節する。これは、細胞の交換の平衡におけるカルシウムの生理的制御因子である。マグネシウムは、異なる細胞内オルガネラの確立における役割を果たす。これはATP分子の合成に必須であるため、これは、タンパク質を産生するリボソームを確立し、ミトコンドリアによってエネルギーの産生を維持する。エネルギーのこの産生は、全ての細胞寿命の機構および身体の全体の活力のための基盤である。マグネシウムは、細胞の構造(特定のアミノ酸、DNAおよびRNA)の基礎をなすタンパク質の合成に必須である。カルシウムは、多くの酵素反応に関与する。これは、神経インパルスの伝達、筋肉の収縮(アクチノミオシンの形成による)、分泌細胞の刺激(インスリンなどのホルモン)、および神経伝達物質の放出を引き起こす第2のメッセンジャーとして、細胞レベルで情報伝達を可能にする。
【0058】
1つの特定の実施態様では、当該組成物は、ナトリウム、マグネシウム、およびカルシウムを含む。
【0059】
好ましくは、金属は、亜鉛または鉄のいずれかから選択される1つ以上の金属を含むだろう。
【0060】
亜鉛は、ほぼ200の酵素(特に、酸化還元酵素、アルコールデヒドロゲナーゼ、チトクロム還元酵素、およびSODまたはスーパーオキシドジスムターゼなどの酵素系におけるもの)の活性に介入する。亜鉛に結合している酵素は、代謝過程(解糖、ペントース経路、新糖生成、脂質および脂肪酸の代謝)において著しく重要である。
【0061】
亜鉛は、エネルギー代謝に必要な補酵素のうちの大部分にとっての金属活性化因子である。亜鉛は、炎症、細胞分化における酸−塩基の平衡(炭酸脱水酵素)、および遊離基に対する内在性の防御において非常に重要な役割を果たす。亜鉛は、ホルモンの補助因子(成長ホルモン、甲状腺、副腎皮質)であり、DNA鎖の転写において必須である(RNA−ポリメラーゼ)。亜鉛は、細胞膜を安定化させ、チオール基と結合した場合、これは鉄との反応を妨げ、従って、非常に不安定なH2O2遊離基の生成を回避する。特に、これは、ビタミンAの代謝(肝臓レベルでの動員、レチノールの形成)に介入する。これは、タンパク質の構造を安定化させ、遺伝子発現における役割を果たす。
【0062】
チトクロムの成分として、鉄は解毒および甲状腺ホルモンの産生に必須である。これは、身体において重要な役割を果たすタンパク質の活性部位(「鉄タンパク質」として知られる)に属する:ヘモグロビン、ミオグロビン、およびチトクロム。
【0063】
1つの特定の実施態様では、当該組成物は、亜鉛および鉄を含む。
【0064】
酵母または酵母エキスは、好ましくは、酵母菌属の酵母、またはこれらの酵母のエキス(例えば、膜、小胞、タンパク質の調製物など)である。これらは、特に、出芽酵母属の酵母(またはエキス)である。1つの特定の実施態様では、セレンで強化された酵母(のエキス)が使用され、これは抗酸化特性を有する。
【0065】
例えば、酵母菌属の他の酵母もまた、下記において使用されるものとして使用されてもよい:
農業および食品の産業のサッカロマイセス・ブラウディ
アルコール発酵:
−出芽酵母(ワイン、ビールのための「高発酵」)
−アガロース包括固定化酵母(ラガータイプのビールのための「低発酵」)
−分裂酵母(アフリカンビール)
−コウジカビ(日本酒)
あるいはまた、torulaspora delbrueckiiおよびcandida stellata(主にマストに存在する):エステルの増加および揮発酸の形成の減少。
【0066】
植物エキスは、好ましくは1つ以上の植物エキスを含む。より好ましくは、当該組成物は、植物エキスとして、サムフィア、ニンニク、およびブドウから選択される少なくとも2つの植物エキスを含む。有利なことには、当該組成物は、サムフィア、ニンニク、およびブドウを含む。
【0067】
用語、植物「エキス」は、本発明の意味内では、問題になっている植物の全体または一部から得られるいずれかの調製物を指す。これは、種子、葉、茎、樹皮など、または組み合わせから、粉砕され、ろ過されてもよい。当該エキスは、従来技術で調製できる。典型的に、当該エキスは、植物細胞を含み、これは未処理であっても、そうでなくてもよい。
【0068】
サムフィア(Crithmum maritimum)は、ミネラル(亜鉛、鉄、マグネシウム、銅、およびマンガン)、ビタミンA、E、B1、およびB2に非常に富む。これは、解毒作用を有する。
【0069】
ニンニク(Allium sativum)は、ビタミンC、亜鉛、マンガンに富み、コレステロール低下作用を有する。ニンニクは、独自の硫黄物質(アリルトリスルフィド、アホエン E)の存在と、(興味深いことに心血管レベルでの)血液の流動性および血中コレステロールレベルへの有益な効果(血小板の凝集を減少させ、トリグリセリドの合成を減少させる)によって特徴付けられる。
【0070】
ブドウ(raisinまたはvigne)(Vitis vinifera)は、ビタミンAおよびBならびにミネラル(マンガン、カリウム、カルシウム)に非常に富む。ブドウは、胆嚢および肝臓を排出させる。これは、遊離基に対処する物質に非常に富む。
【0071】
本発明の組成物は、Palmaria palmata(ダルス)、Chondrus crispus(カラゲニン)およびFucus vesiculosus(ブラダーラック)から選択される少なくとも1つの藻または藻のエキスを含む。
【0072】
ダルス(Palmaria palmata)は、プロビタミンAに非常に富み、ホルモン性制御にとって良好であり、かつ遊離基へ対処するビタミンCに富む。必須アミノ酸に富む。
【0073】
ブラダーラック(Fucus vesiculosus)はフコステロール(β−シトステロール 植物ステロールなどの脂質を低下させる特性を示すステロール)に富む。これはまた、ヨウ素および鉄に非常に富む。
【0074】
カラゲニン(アイリッシュモス − Chondrus Crispus)は脂肪酸に富み、ω−3 脂肪酸とω−6 脂肪酸との間の均衡がよくとれており、その上、不飽和脂肪酸に富み、コレステロールの同化を可能にする。これはまた、アミノ酸および微量元素(特に、ヨウ素、亜鉛、および鉄)に富み、全てのビタミンを含む。
【0075】
1つの特定の実施態様では、当該組成物は、Palmaria palmata(ダルス)、Chondrus crispus(カラゲニン)、およびFucus vesiculosus(ブラダーラック)のエキスを含む。
【0076】
本発明の組成物は、少なくとも1つのキノコまたはシイタケ(菌糸体)エキスを含む。シイタケの菌糸体(Lentinus edodes)は、アミノ酸、微量元素、およびビタミンに非常に富む。これは、コレステロール低下特性および免疫化促進特性を示す。
【0077】
好ましい様式では、ビタミンは、ビタミンA、B1、B9、C、E、F、およびPPから選択される1つ以上のビタミンを含む。好ましい実施態様では、当該組成物は、上記のビタミンから選択される少なくとも2つの異なるビタミン、より優先的には、少なくとも3、4、5または6つの異なるビタミンを含む。
【0078】
ビタミンA(レチノール)は、腸細胞内でエステル化され、カイロミクロンに取り込まれ、リンパ液中に排出され、リンパ管を通じて体循環に入る。ビタミンAは、細胞膜、ステロイドホルモンの生合成および調節を安定化させる。特定のタンパク質の合成はまた、ビタミンAに依存する。
【0079】
ビタミンB1(チアミン)は、細胞に、脂質、ステロールおよび脂肪酸の合成において最も重要であるNADPH2酸を与える。これは、新脂質生についての必須の関連のうちの1つである。
【0080】
ビタミンB9(葉酸)は、アセチル補酵素Aに変換されるセリンの代謝における重要な役割を果たす。
【0081】
ビタミンC(アスコルビン酸)は、脂質代謝の初期段階で、様々なヒドロキシラーゼと関連して、重要な生化学的役割を果たす。アスコルビン酸の存在下で、ミクロソームのチトクロム P450−依存性 ヒドロキシラーゼは、コレステロールの胆汁酸への変換における触媒として作用する。
【0082】
ビタミンE(α−トコフェロール)は、体循環に達するまで、リンパ管内で、カイロミクロンを伴う。血漿では、α−トコフェロールは、いくつかのリポタンパク質類、40〜60%のトコフェロールを含むLDL、34%のトコフェロールを含むHDL、に結合される。そのレベルは、総脂質およびコレステロールのレベルに強く関連する。これは抗酸化作用を有し、遊離基を緩衝する。これは、膜リン脂質の形成および構造に関わり、細胞膜への安定化効果を有する。
【0083】
ビタミンF(リノール酸)は、脂質の合成および保護において必須の不飽和脂肪酸である。
【0084】
ビタミンPP(ナイアシン)は、コレステロール低下効果(リパーゼタンパク質の刺激、または脂肪組織中の環状AMPによって媒介された脂肪分解の阻害による)を示す。これはまた、身体における全ての酸化還元の現象へのその介入を通じた、細胞のエネルギー代謝における重要な薬剤である。
【0085】
1つの特定の実施態様では、当該組成物は、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB9、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンF、およびビタミンPPを含む。
【0086】
さらに、好ましい実施態様では、本発明の組成物は、動物油、特に魚油、特に冷水魚油(Oleum pisci mare fresca)も含む。この油は、ω 3 脂肪酸に富む。ω 3 脂肪酸は、トリグリセリドの肝臓での合成の減少、血中VLDLおよびその高いトリグリセリド含量の低下によって、トリグリセリドの血中レベルを減少させ、これは、より迅速な代謝を可能にする。ω−3は、良好な膜流動性を可能にする。
【0087】
さらに、1つの特に好ましい実施態様では、本発明の組成物は(ココヤシ)も含む。コプラは、脂肪酸に富み、整腸剤に相当する。
【0088】
従って、本発明の1つの目的は、ナタネ油、オリーブ油、グレープシード油、月見草油、冷水魚油、コプラ、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、鉄、好ましくは、セレンで強化された出芽酵母(単数または複数)(からのエキス)、サムフィア、ニンニク、Palmaria palmata(ダルス)、Chondrus crispus(カラゲニン)、Fucus vesiculosus(ブラダーラック)、シイタケ(菌糸体)ならびにブドウ、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB9、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンF、およびビタミンPPからの植物エキスを含む組成物に関する。
【0089】
成分の系統により、好ましい量が以下のように特定される:
−植物油(ナタネ油、オリーブ油、グレープシード油、月見草油):28μg〜280μg/100gまたは100ml
−微量元素:ミネラル(ナトリウム、マグネシウム、カルシウム)および金属(亜鉛および鉄):40μg〜400μg/100gまたは100ml
−好ましくはセレンで強化された、出芽酵母または酵母エキス:28μg〜280μg/100gまたは100ml
−キノコまたはキノコエキス(シイタケの菌糸体):28μg〜280μg/100gまたは100ml
−海藻またはそのエキス(Palmaria palmata(ダルス)、Chondrus crispus(カラゲニン)、およびFucus vesiculosus(ブラダーラック)):24μg〜240μg/100gまたは100ml
−冷水魚油およびコプラ:28μg〜280μg/100gまたは100ml
−植物エキス(サムフィア、ニンニク、およびブドウ):28μg〜280μg/100gまたは100ml
−ビタミン(A、B1、B9、C、E、FおよびPP):32μg〜320μg/100gまたは100ml。
【0090】
例えば、本発明の組成物は、実験の部の項目Aに記載された下記の調製方法で、または、当業者によって知られ、あるいは開発された、いずれかの他の方法論もしくは技術によって有利に調製されてもよい。本発明は、いずれかの哺乳類、特に、ヒト、成人、老人または子供において実行されてもよい。本発明の組成物は、知られた副作用を有さず、対象に応じて、様々な方法を使用して、投与されてもよい。これは、1つの治療として、または別の栄養上もしくは医療上の治療とともに摂取されることができる。
【0091】
好ましくは、個体に投与、摂取または利用される組成物の1日の量は、理想的には、4〜40μgの範囲である。当然、この量は、個体、彼女/彼の年齢、性別、健康状態、などに応じて、改変させてもよい。医療従事者、栄養士および他の専門家次第で、考慮される個体のパラメータに従って、この量は調整される。
【0092】
本発明はまた、食品または栄養補助食品、あるいはまた食品添加物の調製のために定義された組成物の使用に関する。
【0093】
「食品または栄養補助食品」によって、EU指令 2002/46/CE(2002年6月10日)(規制CE 1925/2006(2006年12月20日)によって補完される)「食糧は、その目的が通常の食事を補うことであり、これは、単独で、または組み合わせて、栄養上のもしくは生理的な効果を有する、栄養素または他の物質の濃縮された供給源であり、剤型(特に、カプセル剤、トローチ剤、錠剤、丸剤の形態、および他の同様の形態)、ならびに粉剤の小袋、液剤のアンプル、液滴を分注するボトル、および、測定された小さい単位の量で摂取されるように設計された液剤および粉剤の他の同様の形態で売られる」ことに沿っていることが理解される。これは、特に(しかし排他的ではない)、ビタミンおよびミネラル、アミノ酸、必須脂肪酸、繊維、様々な植物および植物エキスを含む。
【0094】
以前に示されたように、本発明の組成物は、脂質代謝の制御について有利な特性を示す。特に、本発明の1つの目的は、対象における脂質代謝を制御する方法(本発明において定義された組成物の投与、塗布、または摂取を含む)に関する。
【0095】
従って、本発明の組成物は、ヒトおよび動物における脂質代謝を制御するように設計された薬物または栄養製品を調製するために使用されてもよい。
【0096】
特に、脂質代謝の調節は、下記を含む、当該代謝の一般的な機能のリバランスおよび再刺激による、当該ヒトもしくは動物の身体の維持および/または再生からなる:
当該身体による脂質消費の刺激、ならびに/または
血漿コレステロールおよび/もしくはトリグリセリドレベルの低下。
従って、本発明の組成物は、健康基準への回復を支援する。
【0097】
本発明に基づく薬物または栄養製品はまた、メタボリックシンドローム、粥状斑の形成、脂肪肝、および/もしくは循環器疾患を治療または予防するように設計される。本発明の組成物は、特に、脂質代謝の回復において有効であり、従って、メタボリックシンドロームに冒された患者、またはメタボリックシンドロームを発症するリスクを示す患者にとって特に有用である。用語「メタボリックシンドローム」は、患者に、循環器疾患(アテローム硬化症および脳血管障害(CVA)を含む)を非常に発症させやすい一連の代謝障害を指す。メタボリックシンドロームは、身体の代謝不良(腹部肥満、トリグリセリドおよび/もしくはコレステロールの増加、ならびに/または動脈性高血圧によって特徴付けられる特定の障害を含む)に関連する一連の問題を指す。
【0098】
特に、本発明の好ましい実施態様によれば、メタボリックシンドロームは、体重管理(肥満、ダイエット、または体重の安定化など)に関連する疾病を含む。
【0099】
本発明の1つの目的はまた、酸化的代謝および酸素摂取における増加の支援による、身体による、脂質消費を刺激できるようにすることである。特に、本発明において定義された組成物は、筋肉による脂質の適切な利用を支援する。
【0100】
本発明の別の目的は、本発明の薬物または栄養製品の投与または摂取による、対象の持久力の改善である。下記の実施例において、本発明の薬物または栄養製品が、筋肉の栄養機能および収縮性の改善によって、筋肉のモトリシティをかなり増加させることが証明された。
【0101】
驚いたことに、本発明の薬物または栄養製品は、血漿コレステロールおよび/またはトリグリセリドレベルの低下に対して顕著に寄与する(実施例を参照)。従って、本発明は、脂質代謝の一般的な機能のリバランスおよび再刺激によって、身体を維持、および再生するために定義された組成物の使用に関する。
【0102】
さらに、本発明の薬物または栄養製品は、予想外にも、食品の脂質の腸管吸収を減少させることができる。
【0103】
本発明の組成物はまた、動物またはヒトの栄養にとって有用である可能性がある。
【0104】
有利にも、本発明の組成物はまた、化粧品、特にスキンケアおよび回復において使用されてもよい。
【0105】
当該組成物の目的によれば、その最終処方は、当業者によって、本発明において見出される開示に従う間に、調整されてもよい。
【0106】
従って、解毒作用を促進するために、ニンニクおよび/またはブドウなどの植物由来の特定の成分が、当該組成物において優先されてもよく、これは、膀胱の機能を改善し、キノコ(シイタケの菌糸体など)は、肝細胞を解毒する特性を有し、また、ビタミンB1は、クレブス回路を補強する。
【0107】
OPC(抗酸化オリゴメリックプロシアニジン)に富むビタミンA、E、Cおよびブドウは、酸化の全てのレベルで作用する抗遊離基および抗酸化特性を有する。Palmaria palmata、Chondrus crispusおよびFucus vesiculosusは、抗遊離基および抗酸化色素に富む。解毒および抗遊離基により、身体において、酸化されたLDLのレベルの減少およびその除去、酸素の活性な誘導体の中和が可能になる。
【0108】
細胞膜の透過性の増加を促進するため、下記の存在が好ましい:
− 微量元素:カルシウム、ナトリウム、マグネシウム(これはイオンチャネルの制御によって、同化の増加およびコレステロールのよりよい除去を可能にする);および/または、
− ナタネ、グレープシード、および冷水魚の油(その多価不飽和脂肪酸(PUFA)が、細胞内および細胞外のコレステロール交換を促進する細胞の膜流動性の増加に寄与する)。
【0109】
燃料の燃焼および細胞活性の一部を制御する基礎代謝への作用を促進するため、下記の成分の存在が好ましい:
・基礎的な細胞活性のための元素:ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄
・微量元素(ヨウ素が細胞の燃料の燃焼の制御に寄与する)に富む、Palmaria palmataおよびFucus vesiculosus algas
・ならびにビタミンAおよびPP。
【0110】
多価不飽和脂肪酸の変換に対する作用を促進するため、下記の成分の存在が好ましい:
・油の媒介成分(これは、ω−3/ω−6 組成物における良好なバランスを維持する、一不飽和脂肪酸および多価不飽和脂肪酸を含む):オリーブ油、月見草油、グレープシード油、ナタネ油
・エロンゲースおよび不飽和化酵素を刺激するための、亜鉛、鉄およびセレンで強化された酵母。
【0111】
上記のように、本発明の組成物は、筋肉による脂質の消費を活性化させ、よりよい筋緊張およびよりよい全身エネルギーを保証する。これはまた、基礎代謝の増加および体重管理を補助する。
【0112】
本発明は、下記の実施例を通じてより詳細に記載される。本発明の他の態様および利点は、これらの実施例(これは、例証および非限定的であるものとして考えられなければならない)を読むことで明らかになるだろう。
【実施例】
【0113】
A)製造工程
製造工程は、本発明の組成物(その構成は、直接的または間接的に、脂質代謝に寄与するサブシステムに必要または有用な栄養素をもたらすことを目的とする栄養上の戦略の表出である)の処方の構成をモデルにしている。4つの主要なサブシステムが、基礎(構成される処方および成分は記載されている)を構成する。処方は、このように構成され、これらのサブシステムを表わす他のモジュールと結合される、これらのサブシステム(またはモジュール)のそれぞれに対応する。
【0114】
(1)栄養上の戦略の概要:4つのモジュール
−第1のモジュール:
解毒機能:肝細胞、胆嚢、および小腸の刺激ならびに調節。
この機能は、第1の予防措置、および脂質の代謝制御であり、
ならびにLDLの酸化の減少に作用することによる、遊離基への対処。
−第2のモジュール:
細胞膜の透過性における増加
−第3のモジュール:
燃料の燃焼および細胞活性の一部を制御する基礎代謝
−第4のモジュール:
脂質代謝の調節。
【0115】
(2)各要素に関連する組成物、および成分の存在理由:
−第1のモジュール:解毒機能および遊離基への対処:
植物、藻類、およびキノコ:ニンニク、ブドウ;シイタケの菌糸体;藻類、のレベルでの寄与
ビタミンの計画に対する寄与:ビタミンA、B1、C、E
ニンニクおよびシイタケの菌糸体は、肝細胞に対する解毒特性を示し、ブドウは膀胱の機能を改善し、ビタミンB1は、クレブス回路を補強する。OPC中で富むビタミンA、E、Cおよびブドウは、酸化の全てのレベルで機能する、遊離基に対処する特性、および抗酸化特性を有する。海藻(Palmaria palmata、Chondrus crispus、およびFucus vesiculosus)は、遊離基に対処する色素および抗酸化色素に富む。解毒および遊離基に対する防御は、身体の、酸化されたLDLのレベルの減少を可能にし、およびその除去を可能にする。
【0116】
−第2のモジュール:細胞膜の透過性
ビタミンの計画に対する寄与:カルシウム、ナトリウム、マグネシウム
植物油または動物油の計画に対する寄与:ナタネ、グレープシード、コプラおよび冷水魚の油
微量元素(カルシウム、ナトリウム、マグネシウム)は、イオンチャネルの制御による、同化の増加およびコレステロールのよりよい除去を可能にする。油(ナタネ、グレープシード、および冷水魚の油):PUFAは、コレステロールの細胞内および細胞外の交換を促進する細胞膜の流動性における増加に寄与する。
【0117】
−第3のモジュール:基礎代謝
ビタミンの計画に対する寄与:カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、鉄
藻類の計画に対する寄与:海藻(ダルスおよびヒバマタ)
ビタミンの計画に対する寄与:ビタミンA、PP
カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、鉄は、基礎的な細胞活性の元素である。海藻(Palmaria palmata、Fucus vesiculosus)は、細胞の燃焼の調節に寄与する微量元素(特にヨウ素)、ならびにビタミンAおよびPPに富む。
【0118】
−第4のモジュール:脂質代謝
ビタミンの計画に対する寄与:亜鉛、鉄
植物油および酵母の計画に対する寄与:オリーブ、月見草、グレープシード、およびナタネの油;強化された酵母
油の媒介成分(オリーブ、月見草、グレープシード、ナタネの油)は、ω−3/ω−6の組成物中の良好なバランスを維持する一不飽和脂肪酸および多価不飽和脂肪酸を含む。亜鉛、鉄および、セレンで強化された酵母は、エロンゲースおよび不飽和化酵素の刺激に対して寄与する。
【0119】
(成分を扱う補助および方法)
成分は、乾燥形態(粉末、無機塩、など)または液状形態(含水アルコール性または水性の)で、下記の分類において使用される:ミネラル、植物エキスおよび類似のもの(キノコ、藻類)、ビタミン。選択される生薬の形態に依存し、その脂質溶解性または水溶解性の観点から、当該物質は、油/水、または、水/油の乳剤中で加工される。乾燥形態については、各モジュールに対応する異なる溶液は、連続層中の媒体上で含浸される。油状形態については、4つの油(ナタネ、オリーブ、グレープシード、月見草油)の10%の混合物が、生成物を構成する栄養素を統合するためのベースとして使用される。
【0120】
各元素(微量元素、植物など、ビタミン)は別々に調製される。当該成分の溶液は、当該溶液が各段階で均一化されたことを確かめながら、各成分の連続添加の工程に従って調製される。各新たな添加の間に、当該溶液は、ダイナマイゼーションにさらされる。各モジュールは、栄養上の戦略が構成される時点で定義される。次いで、これらは、最終溶液に到達するために、同様の方法に従って、次々に加えられる。
【0121】
(成分の個々の特性)
(Oleum Brassica napus oleifera − ナタネ油)
98%は脂肪酸トリエステルによって構成される。残りの2%はステロールおよびトコフェロール(これはビタミンEである)に富む。98%は脂肪酸トリエステルによって構成される;脂肪酸トリエステルから構成される98%;脂肪酸トリエステルから構成される98%;これは98%が脂肪酸トリエステルによって構成される。α−リノール酸、多価不飽和 ω−3 脂肪酸、一不飽和 ω−6 脂肪酸に富み(ω−3:6の興味深い比率は1:2.5である)、6〜8%のみが飽和脂肪酸である。
【0122】
(Oleum Olea europea − オリーブ油)
オレイン酸に富む:一不飽和脂肪酸(>75%)、ω 6(8%)。オリーブ油はビタミンA、EおよびKを含む。ビタミンE/PUFA(多価不飽和脂肪酸)の比率は、全ての油のうち最も高い。
【0123】
(Oleum Vitis vinifera − グレープシード油)
リノール酸(α−リノール酸およびβ−リノール酸)は、オレイン酸、パルミチン酸およびステアリン酸のバランスがとれている。70%超はω−6である。非常に不飽和:多価不飽和/飽和の比率は>5である。
【0124】
(Oleum Oenothera biennis − 月見草油)
リノール酸、γ−リノール酸;オレイン酸およびステアリン酸においてバランスのとれたω−6。
【0125】
(Oleum Pisci mare fresca − 冷水魚油)
ω 3 脂肪酸に富む。ω 3 脂肪酸は、トリグリセリドの肝臓での合成を減少させることによって、血中VLDLおよびその高いトリグリセリド含量を低下させることによって、血中トリグリセリドレベルを減少させ、これは、より迅速な代謝を可能にする。ω−3は、良好な膜流動性を可能にする。
【0126】
(Natrum − ナトリウム)
ナトリウムは、身体における酸−塩基の調節、および細胞代謝を可能にする。ナトリウムは、(特に、神経筋および心臓の)興奮性およびインパルス伝導の起点である細胞の脱分極、酸−塩基の平衡の維持、浸透圧の維持、身体における液体とイオン交換との平衡において決定的な役割を果たす。
【0127】
(マグネシウム − マグネシウム)
マグネシウムは、イオンチャネルの平衡に必須である。これは、酵素補助因子として作用し、全ての組織においてNA+およびK+の輸送系を調節する。これは、細胞の交換の平衡におけるカルシウムの生理的制御因子である。マグネシウムは、異なる細胞内オルガネラの確立における役割を果たす。これはATP分子の合成に必須であるため、これはタンパク質を産生するリボソームを確立し、ミトコンドリアによるエネルギーの産生を維持する。エネルギーのこの産生は、全ての細胞の寿命の機構および身体の全体の活力の基盤である。マグネシウムは、細胞の構造(特定のアミノ酸、DNAおよびRNA)の基礎をなすタンパク質の合成に必須である。
【0128】
(Calcarea − カルシウム)
カルシウムは、多くの酵素反応に関与する。カルシウムは、神経インパルスの伝達、(アクチノミオシンの形成による)筋肉の収縮、分泌細胞の刺激(インスリンなどのホルモン)、および神経伝達物質の放出を引き起こす第2のメッセンジャーとして、細胞レベルでの情報伝達を可能にする。細胞内液および細胞外液における、カルシウムとマグネシウムとの平衡は、良好なイオン分布に必須である。
【0129】
(Zincum − 亜鉛)
亜鉛は、ほぼ200の酵素(特に、酸化還元酵素、アルコールデヒドロゲナーゼ、チトクロム還元酵素およびSODなどの酵素系)の活性に介入する。亜鉛に結合している酵素は、代謝過程(解糖、ペントース経路、新糖生成、脂質および脂肪酸の代謝)において非常に重要である。亜鉛は、エネルギー代謝に必要な補酵素のうちの大部分にとっての金属活性化因子である。亜鉛は、酸−塩基の平衡(炭酸脱水酵素)、細胞分化、遊離基に対する内在性の防御において、非常に重要な役割を果たす。亜鉛は、ホルモンの補助因子(成長ホルモン、甲状腺、副腎皮質)であり、DNA鎖の転写(RNA−ポリメラーゼ)に必須である。亜鉛は細胞膜を安定化させ、チオール基と結合した場合、これは、鉄とのその反応を防ぎ、従って、非常に不安定なH2O2 遊離基の生成を回避する。特に、これは、ビタミンAの代謝に介入する(肝臓レベルでの動員、レチノールの形成)。
【0130】
(Ferrum − 鉄)
チトクロムの成分である、鉄は、解毒に必須であり、これは、甲状腺ホルモンの産生に必須である。鉄は必須の微量元素であり、体内で、フェリチンおよびヘモシデリンの形態で、骨髄、肝臓および脾臓中に貯蔵される。鉄は、生命に必須の元素の構成において、最重要な役割を果たす。これは、身体において重要な役割を果たすタンパク質の活性部位(「鉄タンパク質」として知られる)(ヘモグロビン、ミオグロビン、およびチトクロム)に属する。
【0131】
(出芽酵母 − (セレンで強化された)酵母)
グルタチオン・ペルオキシダーゼのセレン活性部位は、抗酸化特性を有する。
【0132】
(ココヤシ − コプラ)
脂肪酸に富む。整腸剤。
【0133】
(Crithmum maritimum − サムフィア)
ミネラル(亜鉛、鉄、マグネシウム、銅、およびマンガン)、ビタミンA、E、B1、およびB2に非常に富む。解毒作用を有する。
【0134】
(Allium sativum − ニンニク)
ビタミンC、亜鉛、およびマンガンに富む。コレステロール低下作用。ニンニクは、心血管レベルで興味深い、血液の流動性に対する有益な効果(血小板の凝集を減少させる)および血中コレステロールレベルに対する有益な効果(トリグリセリドの合成を減少させる)を有する、独自の硫黄物質(アリルトリスルフィド、アホエン E)の存在によって特徴付けられる。
【0135】
(Palmaria palmata − ダルス)
プロビタミンAに非常に富み、ホルモン性制御にとって良好であり、かつ遊離基に対処するビタミンCに富む。必須アミノ酸に富む。
【0136】
(Fucus vesiculosus − ブラダーラック)
フコステロール(脂質(β−シトステロール 植物ステロールなど)を低下させる特性を示すステロール)に富む。これは、下記を含む:
−微量元素:ヨウ素および鉄に非常に富む。セレン、マンガン、銅、クロム、および亜鉛。
−ビタミン:C、B1、B2、B6、B12。
−有効成分:アルギン酸塩、フェノール化合物。
【0137】
(Chondrus Crispus − カラゲニン(アイリッシュモス))
脂肪酸に富み、ω−3とω−6との間のバランスがとれ、かつ、不飽和脂肪酸が、コレステロールの同化を可能にする。アミノ酸、微量元素(特に、ヨウ素、亜鉛および鉄)に富み、全てのビタミンを含む。
【0138】
(Lentinus edodes − シイタケ(菌糸体))
菌糸体のシイタケは、アミノ酸、微量元素およびビタミンに非常に富む。これは、コレステロール低下特性および免疫化促進特性を示す。
【0139】
(Vitis vinifera − グレープシード(ブドウ))
ブドウは、ビタミンA、C、およびB群、ならびに無機塩(マンガン、カリウム、カルシウム)に非常に富む。ブドウは、胆嚢および肝臓を排出させる。これは、遊離基に対処する物質に非常に富む。
【0140】
(ビタミンA(レチノール))
レチノールは、腸細胞内でエステル化され、カイロミクロン中に取り込まれ、リンパ液中に排出され、リンパ管を通じて体循環に入る。ビタミンAは、細胞膜、ステロイドホルモンの生合成および調節を安定化させる。特定のタンパク質の合成は、ビタミンAに依存する。
【0141】
(ビタミンB1(チアミン))
ビタミンB1は、細胞に、脂質、ステロールおよび脂肪酸の合成において最も重要であるNADPH2酸を与える。これは、新脂質生成についての重要な関連のうちの1つである。
【0142】
(ビタミンB9(葉酸))
ビタミンB9は、アセチル補酵素Aに変換されるセリンの代謝における重要な役割を果たす。
【0143】
(ビタミンC(アスコルビン酸))
ビタミンCは、脂質代謝の初期段階で、様々なヒドロキシラーゼと関連して、重要な生化学的役割を果たす。これらのミクロソームのチトクロム P 450−依存性 ヒドロキシラーゼは、胆汁酸へのコレステロールの変換における触媒として作用する。
【0144】
(ビタミンE(α−トコフェロール))
α−トコフェロールは、リンパ管内で、体循環に到達するまで、カイロミクロンを伴う。血漿中で、α−トコフェロールは、いくつかのリポタンパク質類(40〜60%のトコフェロールを含むLDL、および34%のトコフェロールを含むHDL)に結合する。そのレベルは、総脂質およびコレステロールのレベルと密接に相関する。これは、抗酸化作用を有し、遊離基を緩衝する。これは、膜リン脂質の形成および構造に寄与し、細胞膜に対して安定化効果を有する。
【0145】
(ビタミンF(リノール酸))
リノール酸は、脂質の合成および保護に必須の不飽和脂肪酸である。
【0146】
(ビタミンPP/B3(ナイアシン))
ニコチン酸は、脂質低下効果を有する(タンパク質リパーゼの刺激、または脂肪組織中の環状AMPによって媒介された脂肪分解の阻害による)。これはまた、身体の全ての酸化還元の現象におけるその介入を通じた、細胞のエネルギー代謝における重要な薬剤である。
【0147】
しかし、下記の実施例では、本発明の組成物は、予想外の相乗効果を生じることが示され、これは、別々に摂取された成分の効果よりずっと大きく、本発明によってもたらされる問題に反応するほどに十分な結果を生じない。
【0148】
B)本発明の組成物の調製
(実施例1:液状形態)
下記の成分から構成される組成物を液状形態(飲料、スプレーなど)で調製した。本発明に基づくこの組成物100g/100mlにつき、
7μg〜700μgのナタネ油、オリーブ油、グレープシード油、月見草油、
10μg〜1000μgのナトリウム、マグネシウム、およびカルシウム、
10μg〜1000μgの亜鉛および鉄、
7μg〜700μgの、セレンで強化された、酵母または出芽酵母の酵母エキス、
7μg〜700μgのシイタケ(菌糸体)[SIC]、
7μg〜700または600μgのダルス(Palmaria palmata)、ブラダーラック(Fucus vesiculosus)、およびカラゲニン(Chondrus crispus)、
7μg〜700μgのサムフィア、6μg〜600μgのニンニクおよびブドウ、
8μg〜800μgのビタミンA、B1、B9、C、E、F、およびPP
ならびに7μg〜700μgの冷水魚油およびコプラ油、を含む。
【表1】

【0149】
(実施例2:油状形態)
実施例1に記載される成分から作られる組成物を、油状形態で、または脂肪物質として、下記のように調製した。
【表2】

【0150】
(実施例3:カプセル剤の形態)
実施例1に記載される成分から作られる組成物は、カプセル剤の形態で調製され、または、乾燥形態(錠剤、カプセル剤など)でも設計される。
【表3】

【0151】
C)動物における研究
(実施例4:血漿LDLレベルの低下における本発明の組成物の役割の実証)
図1は、マウスにおける(mmolL−1での)LDLの血漿レベルの相違を示すグラフであり、当該マウスは、レプチン遺伝子を発現しておらず(以下、マウス ob/obとして表記する)、標準的な飼料を4週間供され、3群に分けられた:胃管栄養法によって投与されたフェノフィブラート(F)、食餌に取り込まれた本発明の組成物(M)、対照(C)。p値は、図2におけるもののように、有意性の統計的な程度を表わす。
【0152】
8週齢であり、この週齢では、既に混合型の高脂血症を呈しているこれらの遺伝的に肥満のマウスにおいて、本発明の組成物は、LDL−コレステロールについて、対照と比較して、有意な減少(p=0.007)を引き起こし、一方、フェノフィブラートは、このレベルまでの血漿LDLの低下について無効だった。
【0153】
(実施例5:血漿トリグリセリドレベルの低下における本発明の組成物の役割の実証)
図2は、標準的な飼料を4週間供され、かつ上記のように3群に分けられた、これらの同様のob/ob マウスの(mmolL−1での)血漿トリグリセリドレベルの相違を表わすグラフである。
【0154】
本発明の組成物(微量養素)を受けた群における血漿トリグリセリドレベル(TG)の低下は、フェノフィブラート(トリグリセリドを標的とする活性薬剤)を摂取したマウスのものと同一だった。本発明の組成物によって処置された群と、対照群と間の相違は統計的に有意である(p=0.0078)。
【0155】
(実施例6:粥状斑の形成の予防における本発明の組成物の役割の実証)
図3は、10週齢の始めで処置されたマウスに対する、3週齢の始めで処置された12ヶ月齢のAPOE ノックアウト(ko)マウスにおける大動脈の粥状斑の数を示す。
【0156】
これらのAPOE ko マウスは、アポリポタンパク質E 遺伝子を欠いており、粥状斑を自然に発症しており、従って、ヒト アテローム硬化症の研究、特に、血管壁上への脂肪の沈着を予防するための治療の有効性の試験のための良好な動物モデルを構成する。これらの血管のアテロームは、動脈を遮断し、従って、循環器疾患(心臓の冠動脈が遮断された場合の心筋梗塞を含む)の起点である。粥状斑の形成は、一生の間進行し、非常に若い年齢で開始する長い過程である(アテローム硬化症の線条は、ヒトにおいて10歳という位の早期に現れるかも知れない)。図1に示された実験の結果は、本発明の組成物が、若年齢で投与された場合に、粥状斑の形成を減少させることができるかどうかを検証する目的を有する。同齢のAPOE koのオスのマウスの2群に、食餌に加えた本発明の組成物を、第1の群については3週齢の始め(離乳の直後)、第2の群については、10週齢の始め(成年期)に与えた。2つの群のマウスに、常に、本発明の組成物を含む同量の食餌を与え、12ヶ月齢の時点で屠殺した。解剖した時点で、3週齢の始めで処置されたマウスの大動脈は、遅れて処置されたマウスの大動脈(10週齢の始め)において見出された数よりも、少ない数の斑を含んでいた。この相違は統計的に有意であるため、従って、発明者らは、アテローム硬化症の予防における本発明の組成物の有効性を確認できた(有意性の統計的な閾値は、p<0.05の値を仮定した)。
【0157】
(実施例7:脂肪肝の予防における本発明の組成物の役割の実証)
図4は、対照に対する、本発明の組成物による治療10ヶ月後のLDLr koのオスのマウスの肝臓の組織学的態様を示す(プラセボ/賦形剤)。
【0158】
LDLr ko マウスは、LDL コレステロール 受容体遺伝子を欠いており、肝臓レベルで脂肪を蓄積する傾向がある。脂肪肝(foie grasまたはsteatose hepatique)は、硬変に発展する可能性があり、これは、さらに、肝不全(肝臓の生理的機能の喪失であり、最終段階で肝移植を必要とする)を生じる合併症を発症する可能性があり、かつ/または悪性の肝癌に発展する。従って、脂肪肝の予防が可能になることは、公衆衛生に関連して、非常に興味深い。実験の目的(その結果は図4によって表わされる)は、本発明の組成物の連続的投与が、長期間で、肝臓における脂肪の蓄積、および脂肪肝の発症を予防できるかどうかを確認することである。2つの群のLDLr koのオスのマウスに、9週齢の始めに、第1の群については、食品に加えられた本発明の組成物、または第2の群については、食品に加えられたプラセボのいずれかを与えた。2つ群のマウスには、常に同量の食餌を与え、10ヶ月の治療後に屠殺した。解剖した時点で、処置されたマウスの肝臓は、脂肪沈着を全く含んでおらず、その組織学的態様は、完全に正常であったが、一方、プラセボを与えたマウスの肝臓は、肝実質に満ちた空胞の形態で脂質を蓄積していた。従って、組織学的態様におけるこの明らかな相違を前提とすると、発明者らは、脂肪肝の予防における本発明の組成物の有効性を確認できる。
【0159】
(実施例8:体重増加の制限による肥満の予防における本発明の組成物の役割の実証)
図5は、プラセボに対する、35%の脂肪を含み(上記および下記の実験のために使用された標準的な飼料は、4.5%の脂肪を含む)、本発明の組成物を含む食餌を与えたOB/OBのオスのマウスの4週間の体重増加を示す。
【0160】
ob/ob マウスは、食欲を制御し、満腹をもたらすレプチン遺伝子の自然突然変異を有する。これらのマウスは、非機能的な変異レプチン遺伝子を生じ、従って、持続的に自身を満足させ、健康にすることができない。この摂食行動性障害は、肥満に対する非常な増加傾向の原因であり、これらのマウスを、体重の制御を標的とする治療の有効性の研究のための良好なモデルにしている。世界における肥満に対する進行の程度、ならびに心血管、呼吸器、肝胆道、骨−関節、生殖、および心理社会的レベルについての公衆衛生のその主要な合併症を前提にすると、脂肪に富む食事を取っていてさえも、体重増加を制御できる治療は、医学的にかなり興味深い。実験の目的(その結果は図3に示される)は、脂肪に富む食事への本発明の組成物の添加は、この食餌によって引き起こされる体重増加を制限できるかどうかについて検証することである。9週齢の始めに、2つの群のOB/OBのオスのマウスに、第1の群については、食品に加えられた本発明の組成物、または第2の群については、同様に食品に加えられたプラセボのいずれかを与えた。当該2つ群のマウスには、常に、同量の食餌を与え、1ヶ月の治療の前後で秤量した。4週と0週との間の体重の相違は、対照に対して処置されたマウスにおいて低い体重増加を示した。この相違は統計的に有意であるため、従って、発明者らは、体重増加の制限および体重の制御による肥満の予防における本発明の組成物の有効性を確かめることができた。
【0161】
(実施例9:体重の安定化による肥満の予防における本発明の組成物の役割の実証)
図6は複数であり、対照に対する、LDLr koおよびAPOE ko マウスにおける体重増加の制限、ならびに、本発明の組成物によって引き起こされた脂肪細胞(adipocytes、cellules graisseuses)のサイズにおける制限とともに体重の安定化を示す。
【0162】
実施例8で説明される体重増加における制限は、長期間で、2つの他の上記マウス系統(LDLr KB(図6a)およびAPOE KB(図6b))について確かめられ、発明者らは、肥満の予防における本発明の組成物の有効性を確かめることができた。それにも関わらず、体重増加の制限が、実際に脂肪組織の安定化を通じて起きることを検証することは重要であった。従って、当該実験の目的(その結果は、図6c、6d、6e、および6fに示される)は、体重に対する本発明の組成物の効果を実証することである。2つの群のLDLrko オスのマウスには、2ヶ月齢の始めに、第1の群については、食品に加えられた本発明の組成物、または、第2の群については、同様に食品に加えられたプラセボのいずれかを与えた。APOE koのオスのマウスによる実験についても同様である。各マウス系統についての2つの実験群には、常に同量の食品を与え、LDLr ko マウスにおいては10ヶ月の治療後に、APOE ko マウスにおいては3、6および9ヶ月の治療後に、EchoMRIでスキャンした。図6cは、処置群におけるLDLr ko マウスの体重は、対照群のものよりも、治療の終了時において少ないことを示す。さらに、図6dは、長期間における体脂肪量の変化に対する本発明の組成物の確かな効果を示す。実際、図6dにおいて、体重が、処置されたAPOE ko マウスにおいては安定なままであり、一方、これは未処置のマウス(対照)においては増加することを検証することは容易である。これらの相違は統計的に有意であるため、従って、発明者らは、体重の安定化による肥満の予防における本発明の組成物の有効性を確かめることができる。図6eおよび6fはまた、組織学的レベルでの(体脂肪量を構成する)より小さい脂肪細胞、従って、LDLr koの処置されたマウスにおいて、対照に対して、少ない脂肪を含むことを示すことによって、この効果を支持する(図6e)。図6fは、LDLr koの処置されたマウスにおける脂肪細胞の平均サイズは、未処置群(対照)の細胞のものよりも、ずっと低いことを示す。この相違はまた、統計的に有意であり、発明者らは、本発明の組成物が、脂肪細胞中の脂肪の蓄積を制限することによって、体脂肪量を安定化させることを確かめることができる。
【0163】
(実施例10:酸素摂取の増加における本発明の組成物の役割の実証)
図7は複数であり、対照に対する、OB/OB マウス(図7a、bおよびc)、APOE ko(図7d、e、f、およびg)およびLDLr ko(図7h)における、本発明の組成物によって引き起こされた酸素摂取の増加を示す。
【0164】
身体によるエネルギー基質としての脂質の使用は、その酸化、従って酸素摂取に関与する。本発明の組成物による脂肪蓄積の制限を示す実施例6における所見によれば、図7は、この組成物が、蓄積される代わりに脂質酸化のために使用される酸素摂取が増加し、従って、除去されることを示す。2つの群のOB/OBのオスのマウスには、2ヶ月齢の始めに、第1の群については、食品に加えられた本発明の組成物、または第2の群については、食品に同様に加えられたプラセボのいずれかを与えた。LDLrkoおよびAPOE koのオスのマウスによる実験についても同様である。各マウス系統についての2つの実験群には、常に、同量の食餌を与え、OB/OB マウスについては1ヶ月の治療の前後に、LDLr ko マウスについては5ヶ月の治療後、APOE ko マウスについては3、6、および9ヶ月の治療後に、熱量測定ケージ中で維持した。図7aは、特に、このパラメータを測定できるように整えた個々の熱量測定ケージ中で、マウスの24時間の滞在の間に記録された酸素摂取曲線を示す。この図で示された曲線は、本発明の組成物による治療の開始前に記録した。図5aに示される通り、治療前の2つの実験群の酸素摂取曲線は重複する。1ヶ月の治療後、本発明の組成物によって処置された群の酸素摂取曲線は、図7bにおいて示される通り、対照群からの曲線と比較され、従って、本発明の組成物によって引き起こされた酸素摂取における増加を明らかにした。この所見は、0週(治療前)および4週(1ヶ月の治療後)での、処置群および対照群の酸素摂取の曲線下の見かけの相違を示す図7cにおいてよく示される。従って、対照群のものと比較して、処置群の曲線が頂点へ上方移動するように、処置群と対照群との間の曲線下の見かけの相違に6を乗じた。本発明の組成物によって引き起こされた酸素摂取におけるこの増加を、2つの他のAPOE koおよびLDLr koのマウス系統について確かめた。図7aおよびbと同様に、図7d、e、およびfは、3ヶ月(図5d)、6ヶ月(図5e)、および9ヶ月(図7f)の治療後の、対照群および本発明の組成物によって処置された群を構成するAPOE ko マウス群の酸素摂取曲線を表わす。これらの図において、進行性かつ一定の上方移動が、これらの月の治療を通じて、対照群と比較して、処置群の酸素摂取曲線において見られるかも知れない。図7c同様に、図7gは、処置群の酸素摂取曲線下の見かけと、対照群のものとの間のギャップを体系的に拡大するこの移動を効果的に示し、3ヶ月と6ヶ月との間では3倍に増え、次いで、9ヶ月では8倍に増えている。最後に、図7hは、LDLr ko マウスについては、本発明の組成物はまた、その酸素摂取も増加させることを示す。実際に、この図は、処置されたマウス群および対照マウス群の24時間の酸素の累積消費量の曲線を示す。処置群の曲線は、この群の酸素摂取が、対照群のものより高いことを示す。この相違は統計的に有意であるため、従って、発明者らは、本発明の組成物が身体における酸素消費を増加させることを確認できる。
【0165】
(実施例11:酸化的代謝の増加における本発明の組成物の役割の実証)
図8は複数であり、対照群に対する、本発明の組成物によって引き起こされた、APOE ko(図8a、b、c、およびd)およびLDLr ko(図8e)マウスによる、熱産生における増加を示す。
【0166】
酸化的代謝における増加は、酸素摂取および熱産生の合わせた増加が反映される。従って、これらの2つのパラメータを増加させることにより、本発明の組成物は、身体における酸化的代謝を明らかに増加させる。実際に、生じるキロカロリー値は、消費された酸素量の計測値として、同時に、同一の動物において得られ、図8a、b、c、およびdの解釈は、9ヶ月の治療の間中、対照群のものと比較して、処置群の熱産生曲線の進行性かつ一定の上方移動を示す図8d、e、f、およびgの解釈をモデルにすることができる。図7gと同様に、図8dは、この移動が、処置群の熱産生曲線下の見かけと、対照群のものとの間のギャップを体系的に拡大していることを効果的に示し、これは、3ヶ月と6ヶ月との間では4倍超増えており、次いで、9ヶ月では13倍増えている。同様にして、図8eは、LDLr ko マウスについてのものを示し、本発明の組成物はまた、その熱産生を増加させる。実際に、この図は、処置群と対照群のマウスの、24時間の累積熱産生曲線を示す。処置群の曲線は、この群の熱産生が、対照群のものよりも多いことを示す。この相違は統計的に有意であるため、従って、発明者らは、本発明の組成物が、身体の熱産生および酸素消費を一緒に増加させることによって、酸化的代謝を増加させることを確かめることができる(実施例7)。
【0167】
(実施例12:酸化的代謝の中枢であるミトコンドリアの先端の生合成の増加における本発明の組成物の役割の実証)
図9は、対照に対する、本発明の組成物による1ヶ月の治療後に引き起こされた、OB/OB マウスにおけるミトコンドリアの先端の密度の増加を示す。
【0168】
2ヶ月齢の始めに、2つの群のOB/OBのオスのマウスに、第1の群については、食品に加えられた本発明の組成物、または第2の群については、食品に加えられたプラセボのいずれかを与えた。2つの実験群には、常に同量の食品を与え、1ヶ月の治療後に、ヒラメ筋(これは酸化的筋肉である)をマウスの後脚のレベルで採取するために解剖し、電子顕微鏡下で、その超微細構造を分析した。ミトコンドリアは、身体の大部分の細胞に備えられるエネルギー生産ユニットであり、脂質の酸化は、ミトコンドリアの先端のレベルで起きる。対照群(図9b)に対する、処置群(図9a)における、これらの先端の密度増加により、発明者らは、本発明の組成物が、脂質の酸化、従って、身体によるその消費を増加させることを確かめることができる。
【0169】
(実施例13:身体能力および持久力の増加における本発明の組成物の役割の実証)
図10は、対照に対する、本発明の組成物による1ヶ月の治療後のOB/OB マウスの水泳時間の増加を示す。
【0170】
2ヶ月齢の始め、2つの群のOB/OBのオスのマウスに、第1の群については、食品に加えられた本発明の組成物、または第2の群については、食品に加えられたプラセボのいずれかを与えた。当該2つの実験群には、常に同量の食品を与えた。当該マウスを、その後脚に取り付けられた重り(マウスの体重の7.5%)によって強制的に泳がせ、これらの条件下で、各マウスについて、1ヶ月の治療の前後に、水泳時間を記録した。水泳時間における増加は、持久力における増加の指標として認められた。従って、図10において示される通り、発明者らは、年齢とともに減少する身体能力の自然変動に従って水泳時間がさらに減少した対照群とは反対に処置された、処置されたマウスの群における水泳時間の増加、従って、持久力の増加を記録した。この増加は顕著であるため、発明者らは、本発明の組成物が持久力および身体能力を増加させることを確認することができる。従って、運動能力の最適化、ならびに身体フィットネスの改善および維持のための、この組成物における栄養上の関心は、非常に有意義である。
【0171】
(実施例14:血漿トリグリセリドレベルの安定化における本発明の組成物の役割の実証)
図11は、対照に対する、本発明の組成物によって引き起こされた、LDLr koおよびAPOE koのマウスにおける血漿トリグリセリドレベルの安定化を示す。
【0172】
長期間にわたる血漿トリグリセリドレベルの安定化は、メタボリックシンドロームおよび循環器疾患との戦いにおける主要な利点である。従って、当該実験の目的(その結果は図11aおよび11bに示される)は、本発明の組成物の脂質低下の効果が長期間維持されるかどうかを検討することだった。2ヶ月齢の始め、2つの群のLDLrkoのオスのマウスに、第1の群については、食品に加えられた本発明の組成物、または第2の群については、食品に加えられたプラセボのいずれかを与えた。APOE koのオスのマウスによる実験についても同様である。各マウス系統についての2つの実験群には、常に同量の食品を与え、その血液は、後眼窩の穿刺によって、治療の開始前、次いで1ヶ月、次いで2ヶ月、次いで10ヶ月の治療後に、LDLr ko マウス(図11a)において採取し、3および9ヶ月の治療後に、APOE ko マウス(図11b)において採取した。2つの図(11aおよび11b)は、LDLr koおよびAPOE ko マウスにおいて、長期間の安定な血漿トリグリセリドレベルの維持における本発明の組成物の同様の有効性を示し、一方、対照マウスにおいては、これらの割合は治せないほど増加する。この相違は統計的に有意であるため、発明者らは、本発明の組成物の、長期間の脂質低下の有効性、従って、メタボリックシンドロームおよび循環器疾患の予防におけるその役割を確かめることができる。
【0173】
(実施例15:安定な摂食後の(食事後の)血漿トリグリセリドレベルの維持における本発明の組成物の役割の実証)
図12は、対照に対する、本発明の組成物による、LDLr ko マウスにおける血漿トリグリセリドレベルの摂食後の増加の不存在を示す。
【0174】
脂質低下の機構のうちの1つは、食品のトリグリセリドの腸管吸収における減少である。さらに、食品のトリグリセリドにおける摂食後の血漿の過負荷は、主要かつよく認識された血管の危険因子である。従って、摂食後の血漿トリグリセリドレベルの増加の阻害によって、本発明の組成物は、脂質の過負荷による身体のフラッディングを防ぐだけでなく、血管壁を保護し、従って、粥状斑の形成を予防する(実施例7参照)。従って、当該実験の目的(その結果は、図12aおよび12bに示される)は、本発明の組成物の脂質低下の効果が、食品の脂質の腸管吸収における制限を通過するかどうかを検証することである。
【0175】
2ヶ月齢の始めに、2つの群のLDLrkoのオスのマウスに、第1の群については、食品に加えられた本発明の組成物、または第2の群については、食品に加えられたプラセボのいずれかを与えた。各マウス系統についての2つの実験群には、常に同量の食品を与え、その血液は、後眼窩の穿刺によって、10ヶ月の治療後、16時間の絶食後(図12a)、次いで、栄養を与えられた状態(図12b)で採取した。図12aは、2つの実験群における絶食後の対応する血漿トリグリセリドレベルを示す。一方、図12bは、2つの実験群について、栄養を与えられた状態での異なる血漿トリグリセリドレベルを示し、対照群で有意に増加し、これは、本発明の組成物で処置された群においては回避された。この相違は、統計的に非常に有意であるため、発明者らは、安定な摂食後のトリグリセリド血症の維持における本発明の組成物の有効性、従って、メタボリックシンドロームおよび循環器疾患の予防におけるその役割を確かめることができる。
【0176】
(実施例16:酸化脂質の異化反応における主要な因子であるPPAR−α 受容体の活性化を介した、筋肉による脂質の利用の増加における本発明の組成物の役割の実証)
図13は、体重(図13a)、および血漿トリグリセリドレベル(図13b)、酸素摂取(図13c)、および熱産生(図13d)に対する、PPAR−αを欠くLDLr ko マウスにおける、本発明の組成物の効果の消失を示す。
【0177】
ノックアウト(ko)マウスモデル(すなわち、所定の遺伝子を欠いている)の使用は、遺伝子機能、および所定の制御におけるその重要性の研究のための選択の方法である。まさに図13に示された場合において、PPAR−αについてのko マウスモデルの使用は、本発明の組成物の代謝的効果における媒介物としてのこの受容体の重要性の確認を可能にする。実際に、本発明の組成物によって10ヶ月間処置されたLDLrkoのオスのマウスにおいて認められた、体重増加における制限、血漿トリグリセリドレベルの安定化、および酸化的代謝における増加(熱産生における増加を伴う酸素摂取における増加)は、PPAR−α 遺伝子が、この同様のマウス系統において不能になってすぐに消失し、LDLrおよびPPAR−αの両方について二重に異常を生じた。従って、当該実験の目的(その結果は、図13a、b、c、およびdに示される)は、本発明の組成物の代謝的効果が、PPAR−α 受容体の活性化に依存しているかどうかについて検証することである。2ヶ月齢の始めに、2つの群のLDLr ko−PPARα ko マウスに、第1の群については、食品に加えられた本発明の組成物、または第2の群については、食品に加えられたプラセボのいずれかを与えた。当該2つの実験群には、常に同量の食品を与えた。これらを10ヶ月の治療の間、定期的に体側し、これらの血液を、栄養を与えられた状態で、後眼窩の穿刺によって採取し、これらを、治療の終了時に、個々に熱量測定ケージ中に維持した。図13は、体重変動(図13a)、血漿トリグリセリドレベルの安定化(図13b)、酸素摂取(図13c)、および熱産生(図13d)に関して、PPAR−αを欠くマウスについての実験の2つの処置群と対照群との間の統計的有意差がないこと示す。LDLrkoのオスのマウスにおいて以前に認められ、LDLr ko−PPAR−α koのオスのマウスにおいて消失した代謝的効果により、発明者らは、本発明の組成物の有効性におけるPPAR−αの最重要性を確かめることができ、従って、この受容体についての天然リガンドであることが判明した。PPAR−αは、脂質の酸化的異化反応の主要な因子であり、体重、トリグリセリドレベルおよび酸化的代謝に対する本発明の組成物の効果は、実験14(下記)に示された通り、本発明の組成物によるPPAR−αの直接的な活性化を介して説明できる。
【0178】
図14は、本発明の組成物によるPPAR−αの細胞の活性化を、この活性化を確認する用量の効果とともに示す。
【0179】
トランス活性化試験は、転写因子を直接的に活性化する所定の物質の信頼できる確認を可能にする試験である。PPAR−α は、一旦活性化されると、一定数の遺伝子の転写を制御する核内受容体である。このトランス活性化試験を実行するため、NIH3T3 細胞(このような試験に対して通常使用される)に、これらの同様の細胞において形質移入された1つの外因性転写因子(GAL4)によってのみ活性化され得るプロモーター(5xUAS)の制御下で、ルシフェラーゼ遺伝子を含むプラスミドによって、単独で、またはPPAR−α リガンドの結合領域(GAL4−αLBD)とともに、形質移入した。これらの同様の細胞において、形質移入の対照として、ウミシイタケも導入し、その発現レベルは、ルシフェラーゼの発現レベルの安定化を可能にする。従って、ルシフェラーゼ、ウミシイタケおよびGAL4で形質移入された全ての細胞培養について、培地中に本発明の組成物を添加した後、ルシフェラーゼの転写の活性化はほとんどなかったが、一方、ルシフェラーゼ、ウミシイタケ、およびGAL4−αLBDで形質移入されたものは、培地中の本発明の組成物の量の増加とともに、比例的に増加したルシフェラーゼの発現を示した。従って、本発明の組成物は、リガンド−結合領域に結合する間に、PPAR−αを直接的に活性化し、従って、図15(下記)に示される通り、この核内受容体および転写因子の標的遺伝子の発現を引き起こす。
【0180】
図15は、本発明の組成物による、PPAR−αの活性化を示し、これは、転写がこの活性化に依存する、全ての標的遺伝子の過剰発現をもたらす。
【0181】
標的 PPAR−α 遺伝子の過剰発現は、対照に対して、4週間、本発明の組成物によって処置されたOB/OBのオスのマウスにおける、その活性化を明らかにした。2ヶ月齢の始め、2つの群のOB/OBのオスのマウスに、第1の群については、食品に加えられた本発明の組成物、または第2の群については、食品に加えられたプラセボのいずれかを与えた。当該2つの実験群には、常に同量の食品を与えた。1ヶ月の治療後、マウスを解剖し、骨格筋のいくつかの試料を、この組織において本発明の組成物によって引き起こされた、その遺伝子発現特性を分析するために、採取した。筋肉において本発明の組成物によって引き起こされた遺伝子のうち、その発現がPPAR αの活性化に依存するものの全てが過剰発現した(Rakhshandehroo M、Sanderson LM、Matilainen M、Stienstra R、Carlberg C、de Groot PJ、Muller M、Kersten S. Comprehensive Analysis of PPARalpha−Dependent Regulation of Hepatic Lipid Metabolism by Expression Profiling.PPAR Res.2007;2007:26839.。これらの遺伝子の全ては、ミトコンドリアレベルおよびペルオキシソームのレベルで、筋肉における脂肪酸の捕集およびその酸化に関与する。従って、本発明の組成物は、脂質の異化反応、および筋肉におけるエネルギー基質としてのその利用を引き起こす。筋肉による脂質の利用におけるこの増加は、実施例8に記載された筋肉の持久力の増加と合致している。実際に、持久性運動の間、筋肉は、好ましくは、脂質をエネルギー基質として利用し、かつ交換的に、筋肉による脂質の利用を増加させ、従って、これをより強くする。筋肉の持久力におけるこの増加に対する他の可能な説明は、筋肉の栄養機能および収縮性の増加である。
【0182】
図16は、対照に対する、本発明の組成物による、栄養機能、神経筋接合部、および筋収縮性を制御する遺伝子の発現における増加を示す。
【0183】
当該実験(その結果は図16に示される)のため、2ヶ月齢の始めに、2つの群のOB/OBのオスのマウスに、第1の群については、食品に加えられた本発明の組成物、または第2の群については、食品に加えられたプラセボのいずれかを与えた。当該2つの実験群には、常に同量の食品を与えた。1ヶ月の治療後、マウスを解剖し、この組織において本発明の組成物によって引き起こされたその遺伝子発現特性を分析するために、骨格筋のいくつかの試料を採取した。本発明の組成物による持久力の増加(実施例13参照)は、固い筋線維束の形成を補助し、従って、強化運動によって引き起こされる微小な病変の発症を遅らせる、CCDC28BおよびCCDC98の遺伝子発現の強化による、よりよい質の筋線維によって説明できるかも知れない。筋肉の栄養機能のための最も重要な遺伝子の1つは、HRASであり、その不存在は、細い腱および15%の筋肉の癌のリスクによって特徴付けられる、コステロの醜形障害の起点である。本発明の組成物で処置した動物において、HRASの遺伝子発現は、対照に対して、5倍超強化される。遺伝子 PDIA6は、その発現が、本発明の組成物を与えた動物において、対照に対し、ほぼ5倍強化され、上記の微小な病変の有効かつ迅速な修復を可能にする新しい筋肉のタンパク質の合成に寄与する。持久力の増加はまた、良好な収縮能を意味する。従って、主要な収縮性タンパク質(ACTC1およびMYBPHなど)の発現は、対照に対して、本発明の組成物によって処置された動物において、5倍超強化される。良好な収縮能は、神経筋接合部の良好な動作に依存する。筋肉への神経インパルスの伝達に関与するPKP2およびZNRF2などの遺伝子の発現が、処置された動物において強化されるのは当然である。従って、本発明の組成物は、筋ジストロフィー(特に神経筋伝達の減少によるもの)、または、リハビリテーションの運動を行う間の良好な筋肉の動作の迅速な回復の促進による、単に長期の固定化(骨折におけるもののように)によるものにおいて、補助的治療などに位置付けられる。
【0184】
(実施例17:本発明の組成物のゲノム効果)
(A.筋肉は、本発明の組成物のゲノム作用の主な標的である)
(実験の経過)
肥満ob/ob マウスを、4週間、標準的な飼料(本発明の組成物を含むもの、または含まないもの)で飼育した。遺伝子発現に関連する情報を含むリボ核酸(RNA)を、肝臓、腓腹筋−ヒラメ筋、および精巣上体の白色脂肪組織から抽出した。これらのRNAを精製し、標識し、Affymetrix マウスゲノム 430.2.0 チップ上にハイブリダイズした。データの統計解析は、R 統計学的コンピュータープログラミング言語(R Core、2004、http://www.R−project.org)を使用することによって行った。当該データは、各組織について、別々に、RMA(Irizarry、R.A.ら、2003)を使用することによって標準化し、本発明の組成物によって制御された遺伝子は、limma プログラムによる線形モデル(Smyth、G.K.2004)によって同定した。
【0185】
(結果)
図17Aは、本発明の組成物が主に筋肉に作用することを示す。制御された遺伝子を、10%未満の偽陽性率を得るために選択した。386の遺伝子が筋肉において異なって発現していたが、肝臓または脂肪組織では発現していなかった。しかし、この実験により、未だ試験されていない他の標的器官を除外することができなかった。最終的に、この研究は、本発明の組成物が、RNAの構造改変、またはタンパク質合成の改変、または肝臓もしくは脂肪組織における構造の改変を引き起こし、かつ、統計検定の検出力の欠如によって不足していた可能性がある少数の遺伝子の発現への効果を有することを除外できない。
【0186】
(B.本発明の組成物は、筋肉の代謝活性に関与する遺伝子に作用する)
(実験の経過)
試験は、特定の代謝経路またはシグナル伝達経路に属する遺伝子が、本発明の組成物による治療後に、体系的に過剰発現または低発現するかどうかを特定するために行った。このために、遺伝子セットの濃縮解析(「遺伝子セットの濃縮解析」)として知られる分析(Moothaら(2003)によって提案されたものと同様のものである)を行った。しかし、プログラム limma によって計測された統計量から始まる濃縮スコアを計測できるようにするために、改変を与えた。スコアの有意性は、値の帰無分布を評価するために、試料のランダム置換によって評価した。標準的な細胞経路を表わす遺伝子の群は、データベース「Molecular Signatures Database」(MSigDB、www.broad.mit.edu/gsea/msigdb/)由来である。
【0187】
(結果)
遺伝子セットの濃縮解析は、本発明の組成物が、26の標準的な経路の有意な変化を引き起こすことを示す。これらのうち、いくつかの代謝経路が影響を受けている:ピルビン酸代謝、クレブス回路、酸化的リン酸化、脂肪酸 ブタン酸、プロピオン酸、およびパントテン酸の代謝経路、およびアセチル−CoAの生合成(図17B)。これは、本発明の組成物による治療下での、筋細胞の代謝能の一般的な増加を示す。ミトコンドリアの代謝活性における増加は、細胞を損傷する酸化ストレス(「活性酸素種」、ROS)を生じる。しかし、本発明の組成物で処置されたマウスにおいては、ROSの主要な制御因子であり、かつ、その分解における触媒として作用するスーパーオキシドジスムターゼ2および3をコードするRNAの増加を認めた。これらの酵素は、「長寿経路」に属する。いくつかの細胞内シグナル伝達経路はまた、本発明の組成物によって正の影響も受ける(バイオペプチド、Spry、Pyk2、Igf−1、Il−6、Egf、fMLP、p38、およびGPCRの経路)。これは、これらのシグナル伝達経路における異常が認められたインスリン抵抗性症候群において起きたことと逆である。
【0188】
(参考文献)
Irizarry、R.A.ら(2003)、Exploration、Normalization、and Summaries of High Density Oligonucleotide Array Probe Level Data、Biostatistics 4:249−64。
Mootha VKら(2003)、PGC−1alpha−responsive genes involved in oxidative phosphorylation are coordinately downregulated in human diabetes、Nat Genet.34:267−73。
Smyth、G.K.2004.Linear models and empirical Bayes methods for assessing differential expression in microarray experiments.Stat.Appl.Genet.Mol.Biol.3:3。
【0189】
(C.ヒトにおける予備臨床研究)
これらの研究は、下記の基準を満たした成人の集団において行った。
− − 男性および女性の両方について、年齢は18〜80歳の範囲でなければならない。
− − 3ヶ月にわたる健康−食事ダイエット(regime hygieno−dietetique)に失敗した後である。
− 総コレステロール≧2.30g/l(6.05mmol/l)、LDL−C≧1.50g/l(3.9mmol/l)および/またはトリグリセリド≧1.50g/l(1.69mmol/l)を示す人々である。
− 運動および栄養補助食品の摂取が、当該研究の期間、安定でなければならず、かつ変化してはならない。
− 10g/日よりも多い、コレステロールを低下させる食品(オートブラン、大豆タンパク質)の摂食を、研究の開始前に少なくとも3ヶ月は変えてはならず、当該研究の期間に変えてはならない。
【0190】
下記の人々はこれらの研究から除外した。
− 既知かつ重度の家族性高コレステロール血症を有する者
− 脂質低下薬(レジン、フィブラート、スタチン、ニコチン酸)を使用した治療下にある者(当該製品の使用の終了後3ヶ月であることを要求した)
− スタノール、選択的腸管コレステロール吸収阻害剤、ω−3を摂取している者
− 妊娠した女性
− 癌性の疾病に罹患している者、または栄養療法を固守するのに適していると思われない者
− 1型糖尿病(当該研究の期間は、対照を得るほどに十分長くはない)に罹患している者
− 18歳よりも若い者。
【0191】
(実施例18:実施例1に基づく本発明の組成物を使用することによる脂質代謝)
当該栄養療法は、4週間の試験期間にわたって、35人の成人(13人の男性および22人の女性)の集団(平均年齢は61.1歳であり、D0において、2.85g/l(7.5mmol/l)の平均コレステロールレベル、および2.02g/l(5.25mmol/l)のLDL−Cを示した)において行われた研究である。この成人の集団を2群に分けた:
− 単独型高コレステロール血症(75症例)
− 混合型高脂血症(29症例)
研究期間の間、当該患者は、彼らの以前の食生活を変えてはいけない。研究の第1日から、実施例1によって得られた組成物は、全ての料理の調理(ドレッシングおよび揚げ物)におけるその体系的な使用のための助言を添えて、毎日、毎食摂取された(最小大さじ2杯)。血液の管理(CT、LDL−C、HDL、TG)、および臨床検査(体重、身長、BP)、およびコンプライアンス管理は、D0、次いで4、8、および12週において行った。得られた結果を、下記の表1にまとめた。
【表4】

低反応または無反応の症例のうち19%は、甲状腺または糖尿病性の障害を有することが判明した。それにも関わらず、12週間を超える追跡調査の継続は、これらの症例のうち30%におけるCT値およびLDL−C値の漸進的な改善を示した。
【0192】
(実施例19:実施例3に基づく本発明の組成物における脂質代謝)
包含および除外の基準は、前述の研究と同一である。当該栄養療法は、4週間の試験期間にわたって、35人の成人(13人の男性および22人の女性)の集団(平均年齢は61.1歳であり、D0において、2.85g/l(7.5mmol/l)の平均コレステロールレベル、および2.02g/l(5.25mmol/l)のLDL−Cを示した)において行われた研究である。研究の第1日に、実施例3によって得られた組成物は、毎日、毎朝晩に、食事と別々に摂取された。臨床的および生物学的な管理(D0および4週)は、同様である。得られた結果を、下記の表2にまとめた。
【表5】

低反応または無反応の症例のうち20%は、甲状腺、心血管、または糖尿病性の障害を患っていることが判明した。それにも関わらず、4週間を超える追跡調査の継続は、これらの症例のうち34%におけるCT値およびLDL−C値の漸進的な改善を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトおよび動物における脂質代謝を制御するように設計された組成物であって、前記組成物は、100g/100mlあたり、
7μg〜700μgの、ナタネ油、オリーブ油、グレープシード油、および月見草油から選択される少なくとも2つの植物油、
10μg〜1000μgの、ナトリウム、マグネシウム、およびカルシウムから選択される正に荷電されたミネラル、
10μg〜1000μgの、亜鉛および鉄から選択される金属、
7μg〜700μgの、酵母または酵母エキスがセレンで強化されていることに特徴付けられた、出芽酵母属からの酵母または酵母エキス、
7μg〜700μgの、キノコまたはシイタケ(菌糸体)エキス、
6μg〜600μgの、サムフィア、ニンニク、およびブドウから選択される植物からの少なくとも2つの野菜エキス、
8μg〜800μgの、ビタミンA、B1、B9、C、E、F、およびPPから選択される少なくとも1つのビタミン、
7μg〜700μgの、動物油およびコプラ油(ココヤシ)、
6μg〜600μgの、Palmaria palmata(ダルス)、Chondrus crispus(カラゲニン)、およびFucus vesiculosus(ブラダーラック)から選択される少なくとも1つの藻、ならびに薬剤的に、かつ/または栄養的に許容できる賦形剤、の組み合わせを含むことに特徴付けられる組成物。
【請求項2】
前記動物油は、冷水魚油(Oleum Pisci mare fresca)からなることに特徴付けられる、請求項1記載のヒトおよび動物における脂質代謝を制御するように設計された組成物。
【請求項3】
前記組成物は、ビタミンA、B1、B9、C、E、F、およびPPから選択される少なくとも2つのビタミンを含むことに特徴付けられる、ヒトおよび動物における脂質代謝を制御するように設計された請求項1または請求項2記載の組成物。
【請求項4】
100g/100mlあたり、
7μg〜700μgの、ナタネ油、オリーブ油、グレープシード油、および月見草油、
10μg〜1000μgの、ナトリウム、マグネシウム、およびカルシウム、
10μg〜1000μgの、亜鉛および鉄、
7μg〜700μgの、セレンで強化された、酵母または出芽酵母の酵母エキス、
7μg〜700μgの、菌糸体またはシイタケの菌糸体のエキス、
6μg〜600μgの、サムフィア、ニンニク、およびブドウ、
8μg〜800μgの、ビタミンA、B1、B9、C、E、F、およびPP、
7μg〜700μgの、冷水魚油およびコプラ油、
6μg〜600μgの、Palmaria palmata(ダルス)、Chondrus crispus(カラゲニン)、およびFucus vesiculosus(ブラダーラック)、を含むことに特徴付けられる請求項1〜3いずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
賦形剤または添加剤(甘味料、安定化剤、保存剤、色素、乳化剤またはゲル化剤、調味料、酸性化剤、および香料など)をさらに含むことに特徴付けられる、請求項1〜4いずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
その外観は、固形物、液体、油、ゲル、条片、ペースト、粉末、またはガムの形態であってもよいことに特徴付けられる、請求項1〜5いずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
経口投与に適していることに特徴付けられる、請求項1〜6いずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
全ての形態の食品ベースおよび/または飲料に加えられるように設計された、請求項1〜7いずれか1項に記載の組成物、ならびにサプリメントまたは食品添加物。
【請求項9】
薬物として使用することができる請求項1〜8いずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
ヒトおよび動物における脂質代謝を制御するための薬物または栄養製品の調製における、請求項1〜9いずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項11】
脂質代謝の調節は、前記代謝の一般的な機能のリバランスおよび再刺激による、前記ヒトもしくは動物の身体の維持および/または再生にあることに特徴付けられ、
前記身体による脂質消費の刺激、ならびに/または
血漿コレステロールおよび/もしくはトリグリセリドレベルの低下、を含む請求項10記載の薬物または栄養製品の使用。
【請求項12】
メタボリックシンドローム、粥状斑の形成、脂肪肝および/もしくは循環器疾患の治療または予防のための請求項10または請求項11記載の薬物または栄養製品の使用。
【請求項13】
メタボリックシンドロームは、体重管理(肥満、ダイエット、または体重の安定化など)に関連する疾病を含むことに特徴付けられる、請求項12記載の薬物または栄養製品の使用。
【請求項14】
前記身体による脂質消費の刺激は、酸化的代謝および酸素摂取における増加を助けることに特徴付けられる、請求項11記載の薬物または栄養製品の使用。
【請求項15】
前記薬物または栄養製品は、持久力を改善することに特徴付けられる、請求項14記載の薬物または栄養製品の使用。
【請求項16】
動物またはヒトの栄養のための請求項1〜8いずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項17】
化粧品中の、特に、スキンケアおよび皮膚再生のための請求項1〜8いずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項18】
血漿コレステロールおよび/またはトリグリセリドレベルの低下に対して寄与するように設計された薬物または栄養製品の調製における、請求項1〜8いずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項19】
食品の脂質の腸管吸収を減少させるように設計された薬物または栄養製品の調製における請求項1〜8いずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項20】
筋肉の栄養機能および収縮性の改善によって筋肉の運動性を増加させるように設計された薬物または栄養製品の調製における請求項1〜8いずれか1項に記載の組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図6d】
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【図6e】
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【図6f】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図7d】
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【図7e】
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【図7f】
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【図7g】
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【図7h】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図8d】
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【図8e】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10】
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【図11a】
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【図11b】
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【図12a】
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【図12b】
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【図13a】
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【図13b】
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【図13c】
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【図13d】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2011−501667(P2011−501667A)
【公表日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529469(P2010−529469)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際出願番号】PCT/IB2008/002815
【国際公開番号】WO2009/050580
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(510089605)エグジコール エスエー. (1)
【Fターム(参考)】