説明

膜の製造方法、電気光学装置、及びマスク

【課題】 画素領域を狭めることなく、画素の点灯に必要な電流を流すことが可能な補助配線を形成することができる膜の製造方法、電気光学装置、及びマスクを提供する。
【解決手段】 細長状の補助配線16の製造方法は、第1補助配線16aと第2補助配線16bとに分割して形成する。まず工程11では、蒸着マスク55を基板52上に固定する。次に、蒸着マスク55の開口孔61を介して、基板52上に第1補助配線16aを点線状に形成する。工程12では、蒸着マスク55を基板52に対して相対的に移動させる。工程13では、蒸着マスク55の開口孔61を介して、点線状に形成された第1補助配線16aの間を埋めるように、第2補助配線16bを形成する。2回に分けて補助配線16を形成することにより、蒸着マスク55の開口孔61の長さを短くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電気光学装置の共通電極に補助配線である膜を形成する、膜の製造方法、その方法を用いて製造された電気光学装置、及び、その方法に用いるマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
上記した電気光学装置の一つに、例えば、有機EL(Electro Luminescence:エレクトロルミネッセンス)装置がある。有機EL装置は、例えば、発光層を含む複数の有機層を、下側に配置された陽極と上側に配置されたベタ状の共通電極である陰極とで挟み込んで構成され、供給された電流値に応じて発光層が発光するようになっている。
【0003】
有機EL装置は、上記したように陰極がベタ状に形成されており、上面から光を放出するトップエミッション構造の場合、陰極を厚く付けることによって光の透過性を悪くしてしまうことから、光の透過性を良くするために上側に配置される陰極の厚みを薄くしている。よって、薄い陰極の両端に電圧を印加した場合、表示領域における中央付近の電圧降下の量が大きくなり、表示領域における中央付近になるに従って発光層に流れる電流値が小さくなる。これにより、画素の輝度が小さくなり、その結果、表示領域全体で発光輝度ムラ(点灯ムラ)が発生することがある。このような輝度ムラは、表示領域が大きくなるに従って顕著に表れやすい。
以上のような電圧降下(輝度ムラ)を抑えるために、表示領域全体を略等電位にするべく、陰極と電気的に接続するとともに、画素に重ならない領域(画素境界領域)に、例えば、アルミからなる補助配線を形成し、表示領域全体に必要な電流が流れるようにしている。
【0004】
補助配線は、例えば、金属製のメタルマスクを用いた真空蒸着法によって形成される。詳しくは、メタルマスクに形成された開口孔を介して、画素境界領域に補助配線を形成する。また、メタルマスクは、基板上に配置された基板を支持するマグネットステージの磁力によって基板に吸引固定される。メタルマスクの厚みは、蒸着させる膜の形状精度を良くするために薄いことが望ましい。薄いマスクの撓みを抑えるために、特許文献1に記載のように、マスクを周囲から引っ張ることで開口部の形状を整えている(平坦化を行っている)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−311336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、表示領域が大きくなったり高精細になったりすることで、画素間に形成する補助配線を細長くしなければならず、これに伴い、マスクの開口孔の形状が細長くなる。加えて、マスクの厚みが薄いことから、マスクを周囲から引っ張ったとしても、マスクの開口孔周囲の梁の強度が弱く撓みやすいことから、マスクが正規の状態に固定されなかった。これにより、基板上に補助配線を形成したとき、補助配線が細くなり過ぎて輝度ムラになることを抑えられなかったり、補助配線の直進性が得られず画素領域と重なることにより画素領域を狭めてしまったりするという問題があった。
【0007】
本発明は、画素領域を狭めることなく、画素の点灯に必要な電流を流すことが可能な補助配線を形成することができる膜の製造方法、その方法を用いて製造された電気光学装置、及び、その方法に用いるマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る膜の製造方法は、基板上に直線的な細長状の膜を形成すべく、前記膜における第1膜の形状に相当する開口孔が形成されたマスクを用いて、前記基板上に前記第1膜を形成する第1膜形成工程と、前記膜における第2膜の形状に相当する開口孔が形成された前記マスクを用いて、前記基板上に前記第2膜を形成する第2膜形成工程と、を有する。
【0009】
この方法によれば、第2膜形成工程によって、第1膜形成工程によって形成した第1膜に加えて第2膜を形成するので、膜を完成させるのに複数回に分割して形成することが可能となる。これにより、マスクの開口孔を、膜を分割した第1膜又は第2膜の形状に合わせて小さくすることができる。よって、マスクにおける開口孔と開口孔との間の梁が撓む量を少なくすることができ、マスクを固定したとき、開口孔の形状を正規の形状にすることが可能となる。その結果、基板上に正規の形状の膜を形成することができる。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る膜の製造方法は、基板上に形成された画素部と画素部との間に直線的な細長状の膜を形成すべく、前記膜における長手方向に分割された第1膜の形状に相当する開口孔が形成されたマスクを用いて、前記基板上に前記第1膜を形成する第1膜形成工程と、前記膜における前記長手方向に分割された第2膜の形状に相当する開口孔が形成された前記マスクを用いて、前記基板上に前記第2膜を形成する第2膜形成工程と、を有する。
【0011】
この方法によれば、第2膜形成工程によって、第1膜形成工程によって形成した第1膜に加えて第2膜を画素部と画素部との間に形成するので、膜を完成させるのに複数回に分割して形成することが可能となる。これにより、マスクの開口孔を、膜を分割した第1膜又は第2膜の形状に合わせて小さくすることができる。よって、マスクにおける開口孔と開口孔との間の梁が撓む量を少なくすることができ、マスクを固定したとき、開口孔の形状を正規の形状にすることが可能となる。その結果、基板上の画素部と画素部との間に正規の形状の膜を形成することができ、膜が正規の状態に形成されないときに起きる画素部の領域を狭めることを防ぐことができる。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係る膜の製造方法は、基板上に、画素電極と、前記画素電極と対向する位置に形成された共通電極と、前記画素電極と前記共通電極との間に設けられた発光層と、が重なる部分に画素部が形成されており、前記画素部と前記画素部との間の境界領域に、前記画素が正規の状態で発光するのに必要な電流を流すべく、前記共通電極に接した直線的な細長状の膜を形成する膜の製造方法であって、前記膜における長手方向に分割された第1膜の形状に相当する開口孔が形成されたマスクを用いて、前記基板上に前記第1膜を形成する第1膜形成工程と、前記膜における前記長手方向に分割された第2膜の形状に相当する開口孔が形成された前記マスクを用いて、前記基板上に前記第2膜を形成する第2膜形成工程と、を有する。
【0013】
この方法によれば、第2膜形成工程によって、第1膜形成工程によって形成した第1膜に加えて第2膜を画素部と画素部との間に形成するので、膜を完成させるのに複数回に分割して形成することが可能となる。これにより、マスクの開口孔を、膜を分割した第1膜又は第2膜の形状に合わせて小さくすることができる。よって、マスクにおける開口孔と開口孔との間の梁が撓む量を少なくすることができ、マスクを固定したとき、開口孔の形状を正規の形状にすることが可能となる。その結果、基板上の画素部と画素部との間に正規の形状の膜を形成することができ、膜が正規の状態に形成されないときに起きる画素部の領域を狭めることを防ぐことができる。更に、膜によって画素部を正規の状態で発光させることが可能となるので、点灯ムラ(輝度ムラ)の少ない表示部(画素部)を形成することができる。
【0014】
本発明に係る膜の製造方法は、前記膜は、金属膜からなる補助配線であり、垂直方向に形成することが望ましい。
【0015】
この方法によれば、共通電極と電気的に接続された金属膜からなる補助配線を、垂直方向(例えば、電圧を印加する端部側から境界領域を垂直方向)に形成するので、電圧を印加した端部側から離れた場所であったとしても、画素部に正規の電流を流すことが可能となる。これにより、基板における電圧を印加する側から離れた、例えば、基板の中央付近においても発光する光の輝度を弱くすることなく、基板全体に亘って輝度ムラ(点灯ムラ)が発生することを抑えることができる。
【0016】
本発明に係る膜の製造方法は、前記第1膜形成工程は、前記第1膜を点線状に形成し、前記第2膜形成工程は、点線状に形成された前記第1膜が形成されていない領域に前記第2膜を点線状に形成することが望ましい。
【0017】
この方法によれば、点線状に第1膜を形成したあとに、第1膜が形成されていない領域に点線状の第2膜を形成することにより、直線的な細長状の膜を形成するので、第1膜及び第2膜を形成するためのマスクの開口孔を1つに繋げることなく、分割した開口孔にすることができる。これにより、各開口孔の長さを短くすることが可能となり、開口孔間の梁の強度を高めることができる。
【0018】
本発明に係る膜の製造方法は、前記開口孔の位置を前記第1膜または前記第2膜を形成すべく位置に合わせるために、前記基板と前記マスクとを相対的に移動する移動工程を更に有することが望ましい。
【0019】
この方法によれば、移動工程により、基板とマスクとを相対的に移動させるので、同じマスクの開口孔を用いて第1膜と第2膜とを分割して形成することが可能となる。これにより、複数のマスクを用いることなく、1つのマスクだけで、第1膜と第2膜とを形成することができる。よって、マスクを製造するのにかかるコストを抑えることができる。
【0020】
本発明に係る膜の製造方法は、前記膜は、真空蒸着法によって形成されることが望ましい。
【0021】
この方法によれば、真空蒸着法によって膜を形成するので、マスクの開口孔を介して膜の基である蒸発させた材料粒子を、基板上の所定領域に蒸着させることができる。
【0022】
本発明に係る膜の製造方法は、前記マスクは、金属マスクであり、磁力によって前記基板に吸引固定されることが望ましい。
【0023】
この方法によれば、磁力によって基板にマスクを吸引固定させたときに、マスクの梁の撓んでいる量が少ないことから、マスクを正規の状態で基板に吸引固定することが可能となる。これにより、画素部と画素部との間に正規の形状の膜を形成することができる。その結果、膜が正規の形状でないときに起きる画素領域を狭めることを防ぐことができる。
【0024】
本発明に係る膜の製造方法は、前記第1膜形成工程は、前記第1膜を形成すべく第1マスクを用いて前記第1膜を形成し、前記第2膜形成工程は、前記第2膜を形成すべく第2マスクを用いて前記第2膜を形成することが望ましい。
【0025】
この方法によれば、第1膜と第2膜とを形成するのに、第1マスクと第2マスクとを別々に用いるので、基板とマスクとを相対的に移動させる移動機構を用いることなく、膜を完成させることができる。
【0026】
上記目的を達成するために、本発明に係る電気光学装置は、膜の製造方法を用いて形成される。
【0027】
これによれば、画素領域を狭めることなく、輝度ムラ(点灯ムラ)の少ない表示領域(表示部)を有する電気光学装置を提供することができる。
【0028】
上記目的を達成するために、本発明に係るマスクは、膜の製造方法に用いられる。
【0029】
これによれば、画素領域を狭めることなく、画素の点灯に必要な電流を流すことが可能な膜を形成することができるマスクを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明に係る膜の製造方法、その方法を用いて製造された電気光学装置、及び、その方法に用いるマスクの実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0031】
(第1実施形態)
図1は、電気光学装置の一つである有機EL(Electro Luminescence:エレクトロルミネッセンス)装置の構造を示す模式平面図である。以下、第2基板及びカラーフィルタ(共に、図2参照)を除く有機EL装置の構造を、図1を参照しながら説明する。
【0032】
図1に示すように、有機EL装置11は、例えば、発光した光を上方に照射する、いわゆるトップエミッション構造であり、発光層で白色に発光した光をカラーフィルタを通すことでカラー表示させる。また、有機EL装置11は、例えば、第1基板12上に、図示しない複数のデータ線と複数の走査線とが格子状に配置され、これらデータ線及び走査線に区画されたマトリクス状の画素部22毎に駆動用TFT(Thin Film Transistor)が接続された、アクティブマトリクス型である。
【0033】
有機EL装置11は、例えば、第1基板12上における表示領域21の左右両端に、図示しない走査線駆動回路が配置される。また、有機EL装置11は、例えば、第1基板12における表示領域21の上下に、図示しないデータ線駆動回路が配置されている。
有機EL装置11は、第1基板12と、画素電極(陽極)13と、発光層(有機層)14と、共通電極(陰極)15と、膜である補助配線16とを有する。
【0034】
第1基板12は、例えば、ガラスなどの透明材料によって構成されている。なお、第1基板12は、本実施形態のように、トップエミッション構造の有機EL装置11の場合、絶縁性を有する不透明材料で構成するようにしてもよい。
【0035】
画素電極(陽極)13は、第1基板12上の、画素部22(赤色(R)22r、緑色(G)22g、青色(B)22bなど)の領域に対応してそれぞれ形成されている。画素電極13は、透明電極で構成されており、例えば、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)膜である。また、画素電極13は、本実施形態のように、トップエミッション構造の有機EL装置11の場合、透明電極に限定されず、例えば、不透明材料によって構成するようにしてもよいし、透明材料と不透明材料とを積層して構成するようにしてもよい。
【0036】
画素部22は、画素電極13と共通電極15と発光層14とが平面的に重なった領域である。画素部22は、発光層14の上下に配置された画素電極13と共通電極15(図2参照)とに電圧が印加されることにより発光層14から発光する。画素部22は、上記したように、表示領域21における縦方向および横方向に、それぞれ離間してマトリクス状に配置されており、赤色(R)22r、緑色(G)22g、青色(B)22bなどのサブ画素部を有する。
【0037】
発光層(有機層)14は、画素電極13上に、例えば表示領域21を覆うように形成されており、公知の発光材料で構成されている。発光層14は、画素電極13及び共通電極15によって発光層14を流れる電流量に応じて発光する。
【0038】
共通電極(陰極)15は、発光層14上に、発光層14を覆うように形成されている。つまり、共通電極15は、各画素部22に対して共通の電極となる。共通電極15は、例えば、マグネシウムと銀(Mg、Ag)を真空蒸着法によって同時に蒸着することにより形成される。共通電極15は、有機EL装置11がトップエミッション構造であるので、光を透過させやすいように共通電極15の膜厚を薄くしている。共通電極15の膜厚は、例えば、100Åである。
【0039】
補助配線16は、表示領域21における画素部22と画素部22との間(Y方向における画素部22間)に、X方向に直線的に細長く形成されている。また、補助配線16は、発光層14と共通電極15との間に設けられている。補助配線16は、例えば、低抵抗材料であるアルミ(Al)配線である。詳しくは、薄い共通電極15と補助配線16とを電気的に接続可能に形成することにより、共通電極15の導電性を向上させており(表示領域21の全体を等電位にしており)、表示領域21における輝度ムラを抑えることが可能となっている。なお、共通電極15及び補助配線16は、例えば、発光層14の外側の左右両端がコンタクト部となっている。補助配線16は、例えば、真空蒸着法によって形成される。
【0040】
補助配線16の長さ(X方向の長さ)は、例えば、210mmである。補助配線16の幅(Y方向)は、例えば、40μmである。補助配線16と画素部22との距離Aは、例えば、18μmである。これらの寸法は、例えば、画素部22の領域と補助配線16とが重ならないように、真空蒸着処理に用いられる蒸着マスク55(図4参照)の形状精度や、第1基板12と蒸着マスク55とのアライメント誤差を考慮して決められている。また、補助配線16は、画素部22の領域に補助配線16が重ならないように、直進性が求められているとともに、共通電極15の導通性を向上させるために、形状精度が求められている。
【0041】
以上のように、補助配線16を、画素部22と画素部22との間(Y方向における画素部22間)をX方向に、正規の状態(直進性や形状精度など)に形成することにより、画素部22の発光領域を小さくせずに効率的に発光させることができるとともに、輝度ムラを抑えて表示させることができる。
【0042】
図2は、有機EL装置の構造を示す模式断面図である。以下、有機EL装置の構造を、図2を参照しながら説明する。
【0043】
図2に示すように、有機EL装置11は、例えば、カラーフィルタ31を介して赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各色の波長を有する光を出射することで、フルカラー表示ができるように構成されている。有機EL装置11は、第1基板12と、駆動用TFT形成層32と、画素電極13と、バンク33と、発光層14と、補助配線16と、共通電極15と、封止層34と、第2基板35と、カラーフィルタ31とを有する。
【0044】
駆動用TFT形成層32は、図示しない駆動用TFTが形成されており、第1基板12上に配置される。詳しくは、第1基板12上に、例えば、シリコン酸化膜からなる下地絶縁膜が形成され、下地絶縁膜上には、駆動用TFTが形成される。駆動用TFT上には、第1基板12全体を覆うように絶縁膜が形成されている。駆動用TFTは、コンタクトホールを介して画素電極13と電気的に接続されている。
【0045】
バンク33は、画素部22の形状を決めるために用いられ、画素電極13の周縁部に沿って形成されている。
【0046】
発光層14は、発光する層を含む複数の有機層によって構成されており、画素電極13と共通電極15とに挟まれて形成されている。発光層14は、例えば、真空蒸着法を用いて形成される。発光層14は、例えば、複数の発光材料層を重ねて形成することにより白色の光を発光する。なお、発光層14は、複数の発光材料層によって白色に発光させることに限らず、一層の発光材料層によって白色に発光させるようにしてもよい。
【0047】
補助配線16は、上記したように、発光層14と共通電極15との間に形成されており、発光層14上におけるバンク33の上方に形成されている。つまり、画素部22の領域に、補助配線16が平面的に重なるような形成をしないため、発光する領域を遮ることなく発光させることができる。
また、上記したように、補助配線16は、共通電極15と電気的に接続することにより電気抵抗を低下させているので、共通電極15に発生する電圧降下を緩和させることが可能となる。これにより、表示領域21の表示ムラ(輝度ムラ)を抑えることができる。
【0048】
封止層34は、公知の材料を用いて共通電極15上に形成される。共通電極15上に封止層34を形成することにより、共通電極15が腐食されることを防ぐことが可能となっている。
【0049】
第2基板35は、第1基板12の封止層34と対向する位置に配置されている。第2基板35は、例えば、ガラス基板であり、カラーフィルタ31を固定するために用いられる。
【0050】
カラーフィルタ31は、第2基板35における封止層34側の、各画素部22に対応する領域に設けられている。カラーフィルタ31は、赤色(R)カラーフィルタ31r、緑色(G)カラーフィルタ31g、青色(B)カラーフィルタ31bを有する。第2基板35には、これら三色のカラーフィルタ31r,31g,31bと、図示しない、遮光用のブラックマトリックスとが形成されている。有機EL装置11は、各画素部22の発光層14から出射した白色光を、それぞれのカラーフィルタ31r,31g,31bを通すことで光に着色し、各色の光を組み合わせることで、カラー表示することができる。
【0051】
以上のように、有機EL装置11は、共通電極15を補完する補助配線16が、発光層14上における非表示領域にあたるバンク33の上方に形成されているので、共通電極15における電圧降下を抑制することができる。これにより、表示領域21における各画素部22の発光輝度の均一化を図ることが可能となり、表示ムラの発生を防ぐことができる。
【0052】
図3は、補助配線を形成するまでの有機EL装置の構造を示す模式側面図である。図3(a)は、図1においてY方向側にみた模式側面図であり、図3(b)は、図1においてX方向側にみた模式側面図である。以下、補助配線を形成するまでの有機EL装置の構造を、図3を参照しながら説明する。なお、後述する補助配線形成を説明する便宜上、補助配線以外の膜は、簡略して説明する。
【0053】
図3に示すように、有機EL装置11は、第1基板12と、駆動用TFT形成層32と、発光層形成層41と、第1膜である第1補助配線16aと、第2膜である第2補助配線16bとを有する。
【0054】
駆動用TFT形成層32は、上記したように、第1基板12上に、図示しない駆動用TFTが形成されている。
【0055】
発光層形成層41は、上記したような、画素電極13及びバンク33から発光層14までの形成層であり、詳細の図示は省略する。発光層形成層41の画素電極13(図2参照)は、上記したように、駆動用TFT形成層32の駆動用TFTとコンタクトホールを介して電気的に接続されている。
なお、第1基板12と駆動用TFT形成層32と発光層形成層41とを合わせて、基板52とする。
【0056】
第1補助配線16aは、補助配線16を構成する点線状に形成された膜である。第1補助配線16aは、例えば、真空蒸着法によって1回目に形成される。第1補助配線16aの長さは、例えば、10mmである。第1補助配線16aの厚みは、例えば、4000Åである。
【0057】
第2補助配線16bは、補助配線16を構成する第1補助配線16aが形成されていない領域に形成された膜である。第2補助配線16bは、例えば、真空蒸着法によって2回目に形成する部分である。第2補助配線16bの長さは、例えば、10.1mmである。第2補助配線16bの厚みは、例えば、第1補助配線16aと同様に4000Åである。補助配線16を分割して形成するとき、第2補助配線16bの両端部を第1補助配線16aと重ならして形成することにより、第1補助配線16aと第2補助配線16bとを確実に導通をさせることが可能となり、電気的に繋がった一本の補助配線16(図1参照)とすることができる。
【0058】
詳しくは、第2補助配線16bと第1補助配線16aとの重なり量Bは、例えば、10μm〜100μmである。また、第2補助配線16bと第1補助配線16aとが重なった部分の厚みは、例えば、8000Åである。
【0059】
図4は、真空蒸着装置の構造を模式的に示す側面図である。以下、真空蒸着装置の構造を、図4を参照しながら説明する。
【0060】
図4に示すように、真空蒸着装置51は、例えば、基板52上に補助配線16を形成するために用いられ、真空チャンバ53と、マグネットステージ54と、蒸着マスク55と、材料容器56と、加熱部57と、真空ポンプ58とを有する。
【0061】
真空チャンバ53は、密閉された中空の空間を有し、内部を真空状態にするために、排気管59を介して真空ポンプ58と接続されている。
【0062】
マグネットステージ54は、真空チャンバ53内の上側に配置されており、図示しない固定機構によって、基板52を固定させるために用いられる。加えて、マグネットステージ54は、磁力によって蒸着マスク55を基板52に固定させるために用いられる。
【0063】
蒸着マスク55は、上記したように、マグネットステージ54の磁力によって基板52に吸引固定されている。蒸着マスク55には、基板52上に蒸着する補助配線16a,16bと同じ形状の開口孔61(図5参照)が形成されている。基板52上には、蒸着すべく材料粒子50aがこの開口孔61を通過することにより、材料粒子50aが所望の形状に蒸着される。また、真空チャンバ53内には、蒸着マスク55と基板52との位置を相対的に移動させるための、図示しない移送機構が備えられている。
【0064】
移送機構は、例えば、基板52に対して、蒸着マスク55を移動することが可能になっている。蒸着マスク55は、例えば、マグネットステージ54の磁力をOFFにすることにより移動することが可能となる。また、真空蒸着装置51は、基板52と蒸着マスク55との位置をアライメントするための、図示しないアライメント機構を有する。
【0065】
アライメント機構は、例えば、蒸着マスク55の位置を、X、Y、θ方向に調整することが可能になっている。アライメント機構によって、基板52に対する蒸着マスク55の位置を調整することにより、例えば、基板52上の補助配線16を形成すべく位置と、蒸着マスク55の開口孔61の位置とを合わせることができる。詳しくは、基板52には、例えば、基板52の両サイドにアライメントマークが形成されている。一方、蒸着マスク55には、蒸着マスク55の両サイドに、アライメントマークの位置に相当する位置に丸孔が形成されている。
また、真空蒸着装置51には、基板52と蒸着マスク55との位置を合わせるために、例えば、真空チャンバ53の上方に、図示しないCCDカメラが備えられている。
【0066】
CCDカメラは、例えば、真空チャンバ53に設けられた図示しない覗き窓を通して、基板52と蒸着マスク55との位置を検出するために用いられる。検出された互いの位置情報を基に、アライメント機構によって、蒸着マスク55の位置を基板52に合うようにアライメントが行われる。
【0067】
材料容器56は、真空チャンバ53内における、基板52及び蒸着マスク55と対向する下側に配置されている。材料容器56には、基板52上に蒸着すべく補助配線16の基である膜材料50が収納(貯留)されている。膜材料50は、例えば、アルミニウム(Al)である。
【0068】
加熱部57は、真空チャンバ53内の下側に材料容器56を受けるように配置されており、材料容器56に入った膜材料50を加熱して蒸発(気化)させるために用いられる。また、加熱部57には、加熱部57を加熱させるための、図示しない電源部が接続されている。
【0069】
真空ポンプ58は、上記したように、排気管59を介して真空チャンバ53内と接続されている。真空ポンプ58は、真空チャンバ53内を真空状態にするとともに、基板52に蒸着されなかった材料粒子50aを排気するために用いられる。
【0070】
図5は、マスクの構成を模式的に示す平面図である。以下、マスクの構成を、図5を参照しながら説明する。
【0071】
図5に示すように、蒸着マスク55は、上記したように、基板52上に補助配線16を形成するために用いられ、複数の開口孔61がX方向に点線状に形成されている。詳しくは、この蒸着マスク55を用いて、2回に分割して蒸着処理を行うことにより、1本の補助配線16を形成している。蒸着マスク55の材質は、例えば、ステンレス(SUS)、インバー(ニッケル鋼)、42アロイ(低膨張係数)、ニッケル合金などである。
【0072】
蒸着マスク55の厚みは、薄いことが望ましく、例えば、50μmである。詳しくは、蒸着マスク55の厚みが厚い場合、開口孔61に対して真っ直ぐ入り込まない材料粒子50a(図4参照)は、蒸着マスク55の厚み分の影(壁)になる量が多く、これにより、開口孔61の形状に沿って蒸着されず、正規の形状とならないことがある。
一方、蒸着マスク55の厚みが薄い場合、開口孔61に対して真っ直ぐ入り込まない材料粒子50aがあったとしても、蒸着マスク55の厚み分の影(壁)になる量が少なく、これにより、開口孔61の形状に近い形状に蒸着させることができる。
【0073】
開口孔61は、スリット状の長孔であり、例えば、長さLが10mmで形成されており、幅Wが40μmで形成されている。幅Wは、補助配線16として機能することが可能な幅や、画素部22の面積を確保することが可能な製造精度及びアライメント公差を基に求められており、例えば、5μm〜60μmの範囲であればよい。また、開口孔61と開口孔61との距離Mは、例えば、9.9mmである。つまり、蒸着マスク55を用いて、基板52上に真空蒸着を行った場合、10mmの第1補助配線16a(図3参照)が9.9mmの間隔をあけて、X方向(横方向)に点線状に蒸着される。
【0074】
また、点線状の開口孔61は、蒸着マスク55におけるY方向に、複数形成されている。開口孔61と開口孔61とのY方向(縦方向)のピッチ寸法Pは、例えば、210μmである。また、開口孔61間の梁の寸法Qは、例えば、170μmである。なお、ピッチ寸法Pは、有機EL装置11の精細度によって変動する。
【0075】
以上のように、補助配線16を形成するとき、2回に分割して形成させることにより、補助配線16の形状と同等な1つの細長状の開口孔(例えば、210mm×40μm)でなく、分割して短くした形状(10mm×40μm)の開口孔61にすることができる。これにより、新たに、距離Mの梁をつくることができるとともに、開口孔61と開口孔61との距離Qの梁の強度を強くすることが可能となり、自重によって梁が撓む量を少なくすることができる。これにより、基板52に蒸着マスク55を正規の状態で密着させることが可能となる。
【0076】
図6は、蒸着マスクを用いて真空蒸着処理を行う膜である補助配線の製造方法を工程順に示す模式図である。(a)、(c)、(e)は、補助配線の製造方法を工程順に示す模式平面図である。(b)、(d)、(f)は、補助配線の製造方法を工程順に示す模式側面図である。以下、補助配線の製造方法を、図6を参照しながら説明する。
【0077】
図6に示すように、補助配線16の製造方法は、まず工程11(第1膜形成工程)では、補助配線16における第1補助配線16aを形成する。詳しくは、まず、蒸着マスク55を、マグネットステージ54の磁力によって基板52に吸着させる(図4参照)。このとき、蒸着マスク55の開口孔61を複数に分割して形成してあることから、自重によって梁(距離M、距離Q)の撓む量が少なくなっている。これにより、蒸着マスクを吸着固定するとき、開口孔61の形状を正規の状態に維持することができる。
なお、蒸着マスク55は、蒸着マスク55の周囲からテンションをかけて引っ張るようにしながら吸着固定させるようにしてもよい。
【0078】
次に、真空蒸着装置51の真空チャンバ53内で、補助配線16の原料である膜材料50(アルミ材料)を加熱部57によって加熱する。これにより、膜材料50が蒸発して、真空チャンバ53内が材料粒子50aの雰囲気になる。材料粒子50aは、蒸着マスク55の開口孔61の中を通り抜けて、基板52上に蒸着する。このとき、蒸着マスク55の開口孔61の形状が正規の状態になっていることから、開口孔61の形状と略同じ形状の第1補助配線16a(材料粒子50a)が、基板52上のY方向における画素部22と画素部22との間に点線状に形成される。
【0079】
工程12(移動工程)では、基板52を固定した状態で、蒸着マスク55をX方向に移動する。詳しくは、補助配線16を完成すべく、工程11において形成した第1補助配線16a間を埋めるべく場所に開口孔61が位置するように、蒸着マスク55を移動する。なお、蒸着マスク55を移動するとき、マグネットステージ54による磁力をOFFの状態にするとともに、膜材料50の加熱を停止する。蒸着マスク55をX方向に移動する距離は、例えば、9.95mmである。
【0080】
基板52と蒸着マスク55とには、上記したように、図示しないアライメントマークが形成されているので、真空チャンバ53の上方に設けられたCCDカメラによって、お互いの位置情報を取得することが可能となっている。これにより、アライメント機構によって、蒸着マスク55を、2回目に蒸着させる正規の位置に合わせることが可能となっている。
なお、基板52には、1回目に蒸着するときに位置合わせを行うアライメントマークと、2回目に蒸着するときに位置合わせを行うアライメントマークとが、2つづつ形成されている。蒸着マスク55には、共通に使用できる丸孔が形成されている。
【0081】
工程13(第2膜形成工程)では、補助配線16における第2補助配線16bを形成する。詳しくは、まず、工程11と同様に、移動したあとの蒸着マスク55を、マグネットステージ54の磁力によって、基板52に吸着させる。このとき、工程11と同様に、蒸着マスク55の開口孔61を複数に分割して形成してあることから、自重によって梁(距離M、距離Q)の撓む量が少なくなっている。これにより、蒸着マスクを吸着固定するとき、開口孔61の形状を正規の状態に維持することができる。
【0082】
次に、膜材料50を加熱して、真空チャンバ53内を材料粒子50aの雰囲気にする。材料粒子50aは、蒸着マスク55の開口孔61の中を通り抜けて、基板52上の第1補助配線16a間に蒸着する。このとき、蒸着マスク55の開口孔61の形状が正規の状態になっていることから、正規の開口孔61の形状と同じ形状の第2補助配線16b(材料粒子50a)が点線状に形成される。
【0083】
また、第1補助配線16aと第2補助配線16bとが重なって蒸着された部分には、突起状になった補助配線が形成されている。これは、第1補助配線16aと第2補助配線16bとを確実に導通接続させるものであり、補助配線16の抵抗を増加させるものでなければよい。
【0084】
また、2回目に蒸着処理するとき、基板52と蒸着マスク55との間に、1回目に蒸着した第1補助配線16aの厚み分の隙間が生じることがあるが、補助配線16としての機能を低下させない面積が確保できるとともに、補助配線16が画素部22に重ならない状態であればよい。基板52と蒸着マスク55との隙間は、例えば、10μm以下が望ましい。
【0085】
以上のように、補助配線16を形成するのに、細長い開口孔を有する蒸着マスクを用いて1回で形成するのではなく、2回に分割して形成することにより、開口孔61の長さを短くすることが可能となる。これにより、自重によって梁が撓む量を少なくすることができ、磁力によって基板52に蒸着マスク55を吸着させたときに、正規の状態(形状)に近づけて固定することができる。これにより、正規の形状の開口孔61に沿った補助配線16a,16bを形成することが可能となる。
【0086】
なお、本発明に係る膜の製造方法を適用することが可能な電気光学装置は、上記した有機EL装置11の他に、例えば、液晶装置、電気泳動表示装置、プラズマ表示装置、SED(Surface Conduction Electron-emitter Display:表面電界ディスプレイ)、FED(Field Emission Display:電界放出ディスプレイ)などがある。
【0087】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
(1)本実施形態によれば、第2膜形成工程(工程13)によって、第1膜形成工程(工程11)によって形成した点線状の第1補助配線16aと繋げて、点線状の第2補助配線16bを形成し補助配線16を完成させるので、蒸着マスク55の開口孔の長さを、補助配線16を分割した領域分に短くすることができる。よって、蒸着マスク55の開口孔61間の梁が撓む量を少なくすることができ、蒸着マスク55を正規の状態に固定することが可能となる。その結果、画素部22間に正規の形状の補助配線16を形成することができ、各画素部22に必要な電流を流す(表示領域21全体を等電位にする)ことが可能となる。その結果、補助配線16が正規の状態に形成されない(ぼやけたり、細くなったりする)ことによる、表示領域21における輝度ムラを抑えることができる。
加えて、補助配線16が高導電性の材料であるアルミから形成されているので、共通電極15の低抵抗化を実現することができる。
【0088】
(2)本実施形態によれば、上記した蒸着マスク55を正規の状態で基板52に吸着させることができるので、正規の形状の補助配線16a,16bをY方向における画素部22間に蒸着させることができる。これにより、蒸着させた補助配線16a,16bが画素部22にかかることを防ぐことができ、画素部22の発光領域を狭めることを防ぐことができる。その結果、本来の目的であるトップエミッション構造の開口率を高める(効率的に発光させる)ことができる。
【0089】
(3)本実施形態によれば、第1補助配線16aを形成したあと、移動工程(工程12)における移動機構を用いて、基板52に対して蒸着マスク55を移動させ、第1補助配線16aが形成されていない領域に第2補助配線16bを形成することが可能となるので、1つの蒸着マスク55だけで、2つの補助配線16a,16bを分割して形成することができる。よって、複数の蒸着マスクを製造することに比較して、蒸着マスク55を製造するのにかかるコストを抑えることができる。
【0090】
(第2実施形態)
図7は、蒸着マスクの構成を模式的に示す平面図である。図7(a)は、第1蒸着マスクを示す模式平面図である。図7(b)は、第2蒸着マスクを示す模式平面図である。以下、第1蒸着マスク及び第2蒸着マスクを、図7を参照しながら説明する。
なお、2回に分割して補助配線16を形成するのに、第1実施形態のように1枚の蒸着マスク55を用いることに対して、第2実施形態は2枚の蒸着マスク72,73を用いて補助配線16を形成している部分が、第1実施形態と異なっている。
【0091】
図7に示すように、本実施形態の補助配線16の形成は、第1補助配線16aと第2補助配線16bとを別々に形成するのに、それぞれ専用の蒸着マスクによって蒸着させるために、第1蒸着マスク72と、第2蒸着マスク73とを用いる。
【0092】
第1蒸着マスク72は、第1補助配線16aを蒸着させるために用いられ、複数の第1開口孔74がX方向に点線状に形成されている。第1蒸着マスク72の材質は、第1実施形態の蒸着マスク55と同様に、例えば、ステンレス(SUS)、インバー(ニッケル鋼)、42アロイ(低膨張係数)、ニッケル合金などである。第1蒸着マスク72の厚みは、第1実施形態と同様に、例えば、50μmである。
【0093】
第1開口孔74は、第1実施形態で使用する蒸着マスク55の開口孔61と同様の寸法に形成されている。第1開口孔74は、例えば、長さLが10mmで形成されており、幅Wが40μmで形成されている。距離Mは、例えば、9.9mmである。また、ピッチ寸法Pは、例えば、210μmであり、第1開口孔74間の梁の寸法Qは、例えば、170μmである。
【0094】
第2蒸着マスク73は、第2補助配線16bを蒸着させるために用いられ、複数の第2開口孔75がX方向に点線状に形成されている。第2蒸着マスク73の材質及び厚みは、第1蒸着マスク72と同様である。
【0095】
第2開口孔75は、第2補助配線16bを形成すべく、第1蒸着マスク72の第1開口孔74に対して、例えば、X方向に9.95mmずれた位置に形成されている。つまり、第1蒸着マスク72と第2蒸着マスク73とを重ねたとき、それぞれの開口孔74,75を繋げた形状が、補助配線16の形状となるように形成されている。詳しくは、第1蒸着マスク72と第2蒸着マスク73とを重ねたとき、第1開口孔74と第2開口孔75との境界には、確実に第1補助配線16aと第2補助配線16bとを導通接続するために、重複する領域が形成されるようになっている。
第1蒸着マスク72と第2蒸着マスク73とを用いることにより、蒸着マスクをX方向に移送する移送機構が、真空蒸着装置51に設けられていなかったとしても、補助配線16を分割して蒸着させることが可能となる。
【0096】
また、第2開口孔75の寸法は、第1開口孔74の寸法と同様に形成されている。詳しくは、例えば、長さLが10mmで形成されており、幅Wが40μmで形成されている。距離Mは、例えば、9.9mmである。第2蒸着マスク73を用いて、基板52上に真空蒸着を行った場合、点線状の第1補助配線16aの間に第2補助配線16bを蒸着させる(図3参照)ことが可能となっている。
【0097】
以上のように、補助配線16を形成するとき、2回に分割して形成させることにより、補助配線16の形状と同等な1つの細長状の開口孔(例えば、210mm×40μm)でなく、分割して短くした形状(10mm×40μm)の第1開口孔74にすることができる。これにより、新たに、距離Mの梁をつくることができるとともに、第1開口孔74と第1開口孔74(第2開口孔75と第2開口孔75も同様)との距離Qの梁の強度を強くすることが可能となり、自重によって梁が撓む量を少なくすることができる。これにより、基板52に蒸着マスク72,73を正規の状態で密着させることが可能となる。
【0098】
図8は、補助配線の製造方法を工程順に示す模式図である。(a)、(c)、(d)、(e)は、補助配線の製造方法を工程順に示す模式平面図である。(b)、(f)は、補助配線の製造方法を工程順に示す模式側面図である。以下、補助配線の製造方法を、図8を参照しながら説明する。
【0099】
図8に示すように、補助配線16の製造方法は、まず工程21(第1膜形成工程)では、補助配線16における第1補助配線16aを形成する。詳しくは、第1実施形態と同様に、まず、第1蒸着マスク72を、マグネットステージ54の磁力によって基板52に吸着させる(図4参照)。このとき、第1蒸着マスク72の第1開口孔74を複数に分割して形成してあることから、自重によって梁(距離M、距離Q)の撓む量が少なくなっている。これにより、第1蒸着マスク72を吸着固定するとき、第1開口孔74の形状を正規の状態に維持することができる。
【0100】
次に、真空蒸着装置51の真空チャンバ53内で、補助配線16の原料である膜材料50(アルミ材料)を加熱部57によって加熱する。これにより、膜材料50が蒸発して、真空チャンバ53内が材料粒子50aの雰囲気になる。材料粒子50aは、第1蒸着マスク72の第1開口孔74の中を通り抜けて、基板52上に蒸着する。このとき、第1蒸着マスク72の第1開口孔74の形状が正規の状態になっていることから、第1開口孔74の形状と略同じ形状の第1補助配線16a(材料粒子50a)が、基板52上のY方向における画素部22と画素部22との間に点線状に形成される。
【0101】
工程22では、第1蒸着マスク72から第2蒸着マスク73に交換する。まず、マグネットステージ54による磁力をOFFの状態にするとともに、膜材料50の加熱を停止する。次に、第1蒸着マスク72から第2蒸着マスク73に交換する。
【0102】
基板52と第2蒸着マスク73とには、図示しないアライメントマークが形成されているので、真空チャンバ53の上方に設けられた図示しないCCDカメラによって、お互いの位置情報を取得することが可能となっている。これにより、アライメント機構によって、第2蒸着マスク73を基板52に合わせることが可能となっている。
【0103】
工程23(第2膜形成工程)では、補助配線16における第2補助配線16bを形成する。詳しくは、まず、工程21と同様に、交換したあとの第2蒸着マスク73を、マグネットステージ54の磁力によって、基板52に吸着させる。このとき、第1蒸着マスク72と同様に、第2蒸着マスク73の第2開口孔75を複数に分割して形成してあることから、自重によって梁(距離M、距離Q)の撓む量が少なくなっている。これにより、蒸着マスクを吸着固定するとき、第2開口孔75の形状を正規の状態に維持することができる。
【0104】
次に、第1実施形態と同様の方法で、第2蒸着マスク73の第2開口孔75を介して、基板52の所定領域に材料粒子50aを蒸着させる。これにより、工程21で形成した点線状の第1補助配線16aの間を埋めるように、第2補助配線16bが形成される。このとき、第2蒸着マスク73の第2開口孔75の形状が正規の状態になっていることから、正規の第2開口孔75の形状と同じ形状の第2補助配線16b(材料粒子50a)が形成される。
【0105】
以上のように、補助配線16を形成するのに、細長い開口孔を有する蒸着マスクを用いて1回で形成するのではなく、2回に分割して形成することにより、第1開口孔74及び第2開口孔75の長さを短くすることが可能となる。これにより、自重によって梁が撓む量を少なくすることができ、磁力によって基板52に第1蒸着マスク72又は第2蒸着マスク73を吸着させたときに、正規の状態(形状)に近づけて固定することができる。これにより、正規の形状の第1開口孔74及び第2開口孔75に沿った第1補助配線16a及び第2補助配線16bを形成することが可能となる。
【0106】
以上詳述したように、本実施形態によれば、第1実施形態の効果(1)、(2)に加えて、以下に示す効果が得られる。
(4)本実施形態によれば、第1補助配線16aと第2補助配線16bとを形成するのに、それぞれ別々の第1蒸着マスク72と第2蒸着マスク73とを用いるので、1つの蒸着マスクを移動させる動作をなくすことができる。よって、真空蒸着装置51に移送機構が設けられていない場合であっても、基板52上に、第1補助配線16aと第2補助配線16bとを形成して補助配線16を完成させることができる。
【0107】
なお、第1実施形態及び第2実施形態は上記に限定されず、以下のような形態で実施することもできる。
(変形例1)上記したように、補助配線16を発光層14と共通電極15との間に形成していることに代えて(図2参照)、共通電極15上(共通電極15と封止層34との間)に形成するようにしてもよい。この場合、少なくとも補助配線16と画素電極13とが電気的に分離されており、補助配線16と共通電極15とが電気的に接続されている状態であればよい。
【0108】
(変形例2)上記した第1実施形態において、第1補助配線16aを形成したあとに第2補助配線16bを形成するとき、蒸着マスク55を基板52に対して相対的に移動させていることに代えて、基板52を蒸着マスク55に対して相対的に移動させるようにしてもよい。また、蒸着マスク55と基板52との両方を相対的に移動させるようにしてもよい。
【0109】
(変形例3)上記した第1実施形態において、アライメント機構によって、固定された基板52に対する蒸着マスク55(第2実施形態における第1蒸着マスク72、第2蒸着マスク73も同様)の位置を調整していることに代えて、蒸着マスク55(第1蒸着マスク72、第2蒸着マスク73も同様)に対して基板52の位置を調整するようにしてもよい。
【0110】
(変形例4)上記したように、補助配線16を形成するのに、2回に分割して形成していることに代えて、例えば、3回や4回のように複数回に分けて形成するようにしてもよい。これによれば、蒸着する回数が増えるものの、蒸着マスク55、第1蒸着マスク72、第2蒸着マスク73に形成された開口孔61、第1開口孔74、第2開口孔75の周囲の梁の強度を高めることができ、更によい状態で蒸着マスク55,72,73を基板52に吸着固定させることができる。
【0111】
(変形例5)上記した第1実施形態において、移送機構によって蒸着マスク55をX方向に移動させたあと、CCDカメラ及びアライメント機構によって、基板52と蒸着マスク55との位置をアライメントしていたことに代えて、CCDカメラ及びアライメント機構を用いずに、移送機構によって蒸着マスク55をX方向にピッチ分(2回目に蒸着する位置まで)移動させるだけにするようにしてもよい。これによれば、基板52と蒸着マスク55との位置関係は、移送機構の移動精度(機械精度)に依存するものの、補助配線16が画素部22に重ならなければよく、アライメントする時間を短縮することができる。
【0112】
(変形例6)上記した第2実施形態において、同じ真空チャンバ53内で、第1蒸着マスク72から第2蒸着マスク73に交換していることに代えて、2つの真空チャンバを設け、1つの真空チャンバに対して1つの蒸着マスクを専用に配置するようにしてもよい。これによれば、一方の真空チャンバに移し変える作業が必要になるものの、蒸着マスクを交換する作業を省くことができる。加えて、異なる材料を基板52上に蒸着させるときなど、材料を交換するなどの時間をかけずに、別の材料を蒸着させることができる。
【0113】
(変形例7)上記したように、蒸着マスク55,72,73を用いて細長状の補助配線16を形成することに限定されず、他の用途の細長状の膜に適用するようにしてもよい。
【0114】
(変形例8)上記したように、補助配線16を真空蒸着法によって形成することに限定されず、マスクを用いて補助配線16が形成できる方法であればよく、例えば、スパッタ蒸着法によって形成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】一実施形態における、有機EL装置の構造を示す模式平面図。
【図2】有機EL装置の構造を示す模式断面図。
【図3】補助配線を形成するまでの有機EL装置の構造を示す模式断面図。(a)は、図1における有機EL装置をY方向からみた模式側面図。(b)は、図1における有機EL装置をX方向からみた模式側面図。
【図4】真空蒸着装置の構造を模式的に示す側面図。
【図5】マスクの構成を示す模式平面図。
【図6】補助配線の製造方法を工程順に示す模式図。(a)、(c)、(e)は、補助配線の製造方法を工程順に示す模式平面図。(b)、(d)、(f)は、補助配線の製造方法を工程順に示す模式側面図。
【図7】マスクの構成を示す模式平面図。(a)は、第1蒸着マスクの構成を示す模式平面図。(b)は、第2蒸着マスクの構成を示す模式平面図。
【図8】補助配線の製造方法を工程順に示す模式図。(a)、(c)、(d)、(e)は、補助配線の製造方法を工程順に示す模式平面図。(b)、(f)は、補助配線の製造方法を工程順に示す模式側面図。
【符号の説明】
【0116】
11…有機EL装置、12…第1基板、13…画素電極(陽極)、14…発光層(有機層)、15…共通電極(陰極)、16…膜である補助配線、16a…第1膜である第1補助配線、16b…第2膜である第2補助配線、21…表示領域、22,22r,22g,22b…画素部、31,31r,31g,31b…カラーフィルタ、32…駆動用TFT形成層、33…バンク、34…封止層、35…第2基板、41…発光層形成層、50…膜材料、50a…材料粒子、51…真空蒸着装置、52…基板、53…真空チャンバ、54…マグネットステージ、55…蒸着マスク、56…材料容器、57…加熱部、58…真空ポンプ、59…排気管、61…開口孔、72…第1蒸着マスク、73…第2蒸着マスク、74…第1開口孔、75…第2開口孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に直線的な細長状の膜を形成すべく、前記膜における第1膜の形状に相当する開口孔が形成されたマスクを用いて、前記基板上に前記第1膜を形成する第1膜形成工程と、
前記膜における第2膜の形状に相当する開口孔が形成された前記マスクを用いて、前記基板上に前記第2膜を形成する第2膜形成工程と、
を有することを特徴とする膜の製造方法。
【請求項2】
基板上に形成された画素部と画素部との間に直線的な細長状の膜を形成すべく、前記膜における長手方向に分割された第1膜の形状に相当する開口孔が形成されたマスクを用いて、前記基板上に前記第1膜を形成する第1膜形成工程と、
前記膜における前記長手方向に分割された第2膜の形状に相当する開口孔が形成された前記マスクを用いて、前記基板上に前記第2膜を形成する第2膜形成工程と、
を有することを特徴とする膜の製造方法。
【請求項3】
基板上に、画素電極と、前記画素電極と対向する位置に形成された共通電極と、前記画素電極と前記共通電極との間に設けられた発光層と、が重なる部分に画素部が形成されており、前記画素部と前記画素部との間の境界領域に、前記画素が正規の状態で発光するのに必要な電流を流すべく、前記共通電極に接した直線的な細長状の膜を形成する膜の製造方法であって、
前記膜における長手方向に分割された第1膜の形状に相当する開口孔が形成されたマスクを用いて、前記基板上に前記第1膜を形成する第1膜形成工程と、
前記膜における前記長手方向に分割された第2膜の形状に相当する開口孔が形成された前記マスクを用いて、前記基板上に前記第2膜を形成する第2膜形成工程と、
を有することを特徴とする膜の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の膜の製造方法であって、
前記膜は、金属膜からなる補助配線であり、垂直方向に形成することを特徴とする膜の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の膜の製造方法であって、
前記第1膜形成工程は、前記第1膜を点線状に形成し、
前記第2膜形成工程は、点線状に形成された前記第1膜が形成されていない領域に前記第2膜を点線状に形成することを特徴とする膜の形成方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の膜の製造方法であって、
前記開口孔の位置を前記第1膜または前記第2膜を形成すべく位置に合わせるために、前記基板と前記マスクとを相対的に移動する移動工程を更に有することを特徴とする膜の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の膜の製造方法であって、
前記膜は、真空蒸着法によって形成されることを特徴とする膜の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の膜の製造方法であって、
前記マスクは、金属マスクであり、磁力によって前記基板に吸引固定されることを特徴とする膜の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の膜の製造方法であって、
前記第1膜形成工程は、前記第1膜を形成すべく第1マスクを用いて前記第1膜を形成し、
前記第2膜形成工程は、前記第2膜を形成すべく第2マスクを用いて前記第2膜を形成することを特徴とする膜の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の膜の製造方法を用いて形成されたことを特徴とする電気光学装置。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の膜の製造方法に用いられることを特徴とするマスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−92109(P2007−92109A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−281517(P2005−281517)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】