説明

膜厚測定装置及び膜厚測定方法

【課題】積層型3次元半導体装置の貫通電極の製造工程において、貫通穴底に形成した薄膜の厚さを非破壊で測定する。
【解決手段】本発明の一態様に係る膜厚測定装置100は、第1波長の照明光と第2波長の照明光とを切替可能な光源部と、試料30で反射した反射光を検出して、試料30の所定の領域における画像を取得する光検出器19と、光源部からの照明光を試料30まで導くとともに、試料30からの反射光を光検出器19まで導く共焦点光学系と、薄膜の膜厚を算出するために、第1波長の光による第1画像と、第2波長の光による第2画像とに基づいて、第1波長及び第2波長に対する反射率の測定データをそれぞれ求める処理部20とを備え、処理部20は、波長と反射率との関係が前記薄膜の膜厚毎にそれぞれ示されている計算データを参照して、測定データから薄膜の膜厚を近似して算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜厚測定装置及び膜厚測定方法に関し、特に、積層型3次元半導体装置の貫通電極の製造工程において、貫通穴底に形成した薄膜の厚さを非破壊で計測する膜厚測定装置及び膜厚測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デバイスを縦方向に積層した半導体装置を製造する場合、すでにトランジスタ構造や多層配線、電極等を形成したウエハに対し、貫通電極(TSV:Through Silicon Via)を形成し、3次元構造を完成させなければならない。貫通電極は、トランジスタ構造・多層配線・電極等を完成させた後、通常裏面を削ってSi基板を薄くし、裏面より貫通穴を形成して電極パッドまで電極を通すことにより形成される。
【0003】
この製造過程を図8に示す。図8に示すように、この製造過程は大きく分けて、(a)Si基板1のエッチング、(b)貫通穴の形成、(c)側面絶縁のためのSiO膜7形成、(d)貫通穴底面のSiO膜7のエッチング、(e)バリアメタル8形成、(d)電極材料9の形成の流れとなる。
【0004】
このような製造工程の中で、貫通穴底面のSiO膜7のエッチングを行う際、SiO膜7が適切にエッチングされ、電極パッド2が露出しているかどうかが非常に重要となる。電極パッド2が露出していない場合は、電気的にショートとなってしまうからである。一方、エッチングを必要以上に行うと、下層の電極パッド2へのダメージや、横方向にエッチングが進み、構造に不具合が生じるおそれがある。このため、エッチングを行う前に、貫通穴底面のSiO膜7の正確な厚さを把握することが望ましい。エッチング深さを測定する方法は、例えば特許文献1に記載されている。
【0005】
また、SiO膜が残存している場合には、再度エッチングを行う必要がある。このようなやり直しの作業を避けるために、実際どのようにエッチングが行われているかの基礎実験が必要となり、そのときに貫通電極の穴底のSiO膜の厚さを非破壊で正しく測定しておく計測する技術が必要となる。
【0006】
従来、膜厚の測定方法として、(1)反射分光による方法、(2)偏光解析による方法、(3)白色光を用いた光干渉法、(4)共焦点顕微鏡による方法が挙げられる。膜厚を測定する方法は、例えば特許文献2に記載されている。しかしながら、これらの方法にはそれぞれ以下に示すような問題がある。
【0007】
(1)反射分光による方法では、白色光により試料を照明して、その反射光を分光することで、分布スペクトルを測定する。分光スペクトルは、光の波長、膜厚、膜と基板の屈折率、減衰係数で決定される条件により、干渉強度の波長依存性という形で計算される。計測データを理論値に対して、膜厚をパラメータとしてフィッティングすることにより膜厚を決定することができる。しかしながら、膜厚の空間分布を高分解に測定することができず、膜厚は光が照明されるエリアの平均的な値となる。また、貫通穴底からの反射光と基板面からの反射光を分離するのは困難である。
【0008】
(2)偏光解析による方法では、偏光解析法(エリプソメトリー)により反射光を計算することで膜厚を求めることができる。しかしながら、この方法では、試料に対して照明光を射入射させる必要がある。このため、ウエハに形成された貫通穴低に光を照射し、反射光を受光することが難しい。また、膜厚の空間分布を高分解に測定することができず、膜厚は光が照明するエリアの平均的な値となる。
【0009】
(3)白色光を用いた光干渉法は、試料あるいは対物レンズをz方向にスキャンすることにより、白色光の干渉縞の最大強度位置を計算することで高さを求めることができる。膜厚を測定するために、基板と膜表面からの干渉強度信号をそれぞれ分離して測定することが必要である。しかし、膜厚が1μm以下となると、それらの強度信号を分離することが難しくなる。さらに、反射率の高い基板上に、反射率の低い透明膜が存在する場合には、透明膜からの干渉強度を精密に測定することができず、膜厚測定は一層困難なものとなる。また、深い貫通穴の底から反射する光が、貫通穴内部で一点に収束するような場合には、それが擬似焦点として認識されるため、正確な焦点位置を計測することができない。
【0010】
(4)共焦点顕微鏡では、対物レンズとの距離を試料間の距離をz方向にスキャンすることにより変化させ、合焦点位置を検出することにより膜厚が求められる。合焦点位置を精密に測定するには、対物レンズの開口数を大きくする必要がある。しかし、対物レンズの開口数が大きいほど、穴底に対する照明光が光軸に対して射入射することになる。このため、照明光が貫通穴の底まで届かなくなり、測定が困難となる。また、深い貫通穴の底から反射する光が、貫通穴内部で一点に収束するような場合には、それが擬似焦点として認識されるため、正確な焦点位置を計測することができない。
【特許文献1】特開2000−292129号公報
【特許文献2】特開平9−292207号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような事情を背景としてなされたものであり、本発明の目的は、積層型3次元半導体装置の貫通電極の製造工程において、貫通穴底に形成した薄膜の厚さを非破壊で測定することができる膜厚測定装置及び膜厚測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様に係る膜厚測定装置は、試料上に設けられている薄膜の膜厚を測定する膜厚測定装置であって、第1波長の照明光と第2波長の照明光とを切替可能な光源部と、前記試料で反射した反射光を検出して、前記試料の所定の領域における画像を取得する光検出器と、前記光源部からの照明光を前記試料まで導くとともに、前記試料からの前記反射光を前記光検出器まで導く共焦点光学系と、前記薄膜の膜厚を算出するために、前記第1波長の光による第1画像と、前記第2波長の光による第2画像とに基づいて、前記第1波長及び第2波長に対する反射率の測定データをそれぞれ求める処理部とを備え、前記処理部は、波長と反射率との関係が前記薄膜の膜厚毎にそれぞれ示されている計算データを参照して、前記測定データから前記薄膜の膜厚を近似して算出するものである。これにより、薄膜の膜厚を非接触・非破壊で算出することができる。
【0013】
本発明の第2の態様に係る膜厚測定装置は、上記の膜厚測定装置において、前記処理部は、前記測定データと前記計算データから、最小二乗法により前記薄膜の膜厚を算出するものである。本発明では、このような場合により正確に薄膜の膜厚を算出することができる。
【0014】
本発明の第3の態様に係る膜厚測定装置は、上記の膜厚測定装置において、前記試料は、前記薄膜が底面に形成された貫通穴を備え、前記処理部は、前記第1画像及び前記第2画像の前記貫通穴に対応する領域の反射率の測定データを求めるものである。これにより、貫通穴底に形成した薄膜の厚さを非破壊・非接触で測定することができる。
【0015】
本発明の第4の態様に係る膜厚測定装置は、上記の膜厚測定装置において、前記光源部は、水銀キセノンランプを含み、前記水銀キセノンランプの輝線に対応する波長の光を出射するものである。本発明は、このような場合に特に有効である。
【0016】
本発明の第5の態様に係る膜厚測定装置は、上記の膜厚測定装置において、前記光源部は、連続光を出射するものである。連続波長の光源を用いることにより、測定する波長を多数選択することができる。この場合、計算した反射データと測定データを完全に一致させる近似を使わずとも、連続したカーブが得られる場合は、反射率の極大や極小の位置を合わせる近似を行う一般的な方法で膜厚を算出できる。
【0017】
本発明の第6の態様に係る膜厚測定装置は、上記の膜厚測定装置において、前記第1波長の照明光から前記第2波長第2波長の照明光へと切替える際に、前記試料上における焦点高さを調整する焦点高さ調整手段をさらに備えるものである。これにより、観察波長の変化による合焦点位置のズレをキャンセルすることができる。
【0018】
本発明の第7の態様に係る膜厚測定方法は、試料上に設けられている薄膜の膜厚を測定する膜厚測定方法であって、共焦点光学系を介して、前記試料に第1波長の照明光と第2波長の照明光とを切替えて照射し、前記試料で反射した反射光を共焦点光学系を介して検出して、前記第1波長の光による第1画像と、前記第2波長の光による第2画像とを取得し、前記薄膜の膜厚を算出するために、前記第1画像と前記第2画像とに基づいて、前記第1波長及び第2波長に対する反射率の測定データをそれぞれ求め、波長と反射率との関係が前記薄膜の膜厚毎にそれぞれ示されている計算データを参照して、前記測定データから前記薄膜の膜厚を近似して算出する。これにより、薄膜の膜厚を非接触・非破壊で算出することができる。
【0019】
本発明の第8の態様に係る膜厚測定方法は、上記の膜厚測定方法において、前記測定データと前記計算データから、最小二乗法により前記薄膜の膜厚を算出する。本発明では、このような場合により正確に薄膜の膜厚を算出することができる。
【0020】
本発明の第9の態様に係る膜厚測定方法は、上記の膜厚測定方法において、前記試料は、前記薄膜が底面に形成された貫通穴を備え、前記第1画像及び前記第2画像の前記貫通穴に対応する領域の反射率の測定データを求める。これにより、貫通穴底に形成した薄膜の厚さを非破壊・非接触で測定することができる。
【0021】
本発明の第10の態様に係る膜厚測定方法は、上記の膜厚測定方法において、前記第1波長の照明光から前記第2波長の照明光へと切替える際に、前記試料上における焦点高さを調整する。これにより、観察波長の変化による合焦点位置のズレをキャンセルすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、積層型3次元半導体装置の貫通電極の製造工程において、貫通穴底に形成した薄膜の厚さを非破壊で測定することができる膜厚測定装置及び膜厚測定方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、測定の基本的な原理として、反射分光式の膜厚測定法を利用する。貫通穴底の膜厚を測定するという目的のため、以下の2点を利用した反射分光膜厚測定を考えた。
(1)共焦点光学系を用いて、貫通穴のエッジからの散乱光や基板上面からの反射光を除去する。
(2)従来の反射分光法のように反射光を分光する代わりに、照明光を単色光として試料の反射強度を測定する。そして、照明光の波長を変える度に、反射強度を同一視野に対して測定する。これにより、反射率の波長依存性、すなわち、反射スペクトルを得る。
【0024】
(1)、(2)から、観察画像の各画素に対して、分光スペクトルを得ることができるので、膜厚をパラメータとするフィッティングを行うことにより、1μm以下の膜厚を求めることができる。なお、面の粗度や形状の影響が顕著な場合には、反射率を補正(バイアス)するパラメータを含めてもよい。
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。以下の説明は、本発明の好適な実施の形態を示すものであって、本発明の範囲が以下の実施の形態に限定されるものではない。以下の説明において、同一の符号が付されたものを実質的に同様の内容を示している。
【0026】
本発明の実施の形態に係る膜厚測定装置100の構成について、図1を参照して説明する。図1は、本実施の液体に係る膜厚測定装置100の構成を示す図である。本発明では、共焦点光学系を備える顕微鏡を用いる。図1に示すように、本実施の形態に係る膜厚測定装置100は、光源11、干渉フィルター12、レンズ13a、13b、13c、スリット14、ビームスプリッタ15、振動ミラー16、対物レンズ17、ステージ18、光検出器19、処理装置20を備えている。
【0027】
本発明に係る膜厚測定装置100では、積層型3次元半導体装置の貫通電極の製造工程において、貫通穴底に形成された薄膜を測定対象とする。図2に、このような試料30の構成を示す。図2に示すように、試料30は、Si基板31、Al層32、SiO層33を備えている。Si基板31には、貫通穴34が形成されている。Si基板31の下面には、Al層32が形成されている。Al層32は、Si基板31に貫通穴34が形成されることにより露出されている。Al層32が、電極パッドとなる。Si基板31上には、SiO層33が形成されている。SiO層33は、Si基板31上、貫通穴34の内部の側面、及び、貫通穴34の底面のAl層32上を覆うように形成されている。本発明では、この貫通穴34の底面のSiO層33の膜厚を測定する。
【0028】
なお、図2において、空気の屈折率をN=n、SiO層33の屈折率をN=n−ik、Al層32の屈折率をN=n−ikとする。また、SiO層33の厚みは未知であるものとし、その膜厚をdとする。なお、本実施の形態においては、媒質の一例として空気とした場合について説明するが、これに限定されるものではなく、アルゴンガス等他の気体中で測定してもよい。
【0029】
本実施の形態に係る膜厚測定装置100は、波長選択が可能な共焦点光学系を有する。光源11としては、水銀キセノンランプのような連続スペクトルに複数の輝線を含む白色光源が用いられる。なお、例えば、紫外から赤外域(185nm〜2000nm)に幅広い連続スペクトルを有するキセノンランプを用いてもよい。もちろん、光源11としては、キセノンランプに限らず、白色ダイオード、白色レーザ等を用いてもよい。後述するように、波長が選択できればどのような光源を用いてもよい。
【0030】
光源11からの光によって、試料30を観察するための光学系について説明する。光源11から出射した光は、干渉フィルター12を通過し、特定の波長の光に変換される。干渉フィルター12としては、例えば、特定波長の光を選択的に透過させる複数のバンドパスフィルタを用いることができる。これにより、複数の単一波長の照明光を選択的に透過させる。例えば、照明光の波長として、水銀キセノンランプの輝線に対応する波長の405nm、436nm、488nm、515nm、546nm、577nm、及び水銀キセノンランプの輝線ではない630nmを選択することができる。水銀キセノンランプを用いる場合、輝線に対応する波長以外の波長の光をフィルターで選択することも可能である。輝線の波長以外の光は強度が小さいため、干渉フィルターの半値幅を広くすることによりバランスを取ることができる。なお、波長の切替は連続的でもよいし、断続的でもよく、例えば、400nm〜650nmの間で5〜7波長を選択してもよい。
【0031】
なお、光源11として単波長のレーザ光を出射するレーザ光源を用い、波長変換素子を設けてもよい。例えば、第二高調波発生により、波長変換素子に入射する単波長の光の波長変換を行うことができる。また、光源11として、可変波長レーザを用いることも可能である。さらに、異なる波長のレーザ光を出射する複数のレーザ光源を設けて、複数のレーザ光源のうちの所望の波長の光を選択するようにしてもよい。
【0032】
そして、干渉フィルター12を透過した単一波長の照明光はレンズ13aを透過して、スリット14に入射する。照明光は、スリット14を通してX方向のライン状に整形される。そして、ライン状の照明光は、ビームスプリッタ15に入射する。ビームスプリッタ15は、偏光状態によらずに、反射光と透過光の光量が略1:1になるように、光を分岐する。従って、照明光の略半分がビームスプリッタ15を透過する。
【0033】
その後、図1中右方向に進む光は、振動ミラー16に入射する。振動ミラー16により、X方向のライン状の照明光で試料30上をY方向に走査する。これにより、試料30面上をXYに走査することができる。振動ミラー16としては、例えばガルバノミラー、ポリゴンミラー等を用いることができる。
【0034】
振動ミラー16により、下方に反射された照明光は、対物レンズ17により集光され、試料30に照射される。試料30は、ステージ18上に載置されている。そして、試料30からの反射光は、再度対物レンズ17を通過し、振動ミラー16により再び反射され、ビームスプリッタ15へ入射する。その後、入射した光の略半分がビームスプリッタ15で反射され、レンズ13cに入射する。レンズ13cは、光検出器19の受光面に合成光を結像させる。レンズ13cを透過した光は、光検出器19で受光される。
【0035】
本実施の形態では、光検出器19は、試料30のコンフォーカル画像を撮像するCCDラインセンサである。光源11からスリット14を透過した照明光が、試料30で反射して、CCDラインセンサにより検出される。振動ミラー16により、試料30上を走査することにより、スリットコンフォーカル画像が撮像される。なお、共焦点光学系の方式が用いられていれば、走査方法等は異なってもよく、スリットや光検出器は方式に適応したものを適宜用いることができる。例えば、X方向とY方向にスキャンするための振動ミラーを用いてもよく、X方向に音響光学素子であるAODを用いることも可能である。
【0036】
ステージ18は、図示しないZ軸駆動モータを有しており、試料30を図1の上下方向に移動させることができる。このステージ18は、Z軸方向に移動することにより、試料面が焦点位置にくるように制御される。なお、ステージ18がZ方向に移動するかわりに、対物レンズ17を移動させて焦点位置調整を行うこともできる。
【0037】
共焦点光学系において、観察波長を変えると合焦点位置が変化することが考えられ、これによる輝度の変化が予想される。これは、各波長の合焦点位置のズレ分を予め測定してPCに記憶しておき、波長切り替えの際に、ズレ分だけ自動的に試料30あるいは対物レンズ17のZ位置を微調整することでキャンセルすることができる。あるいは、それぞれの波長において、全焦点画像をZスキャンにより作製してもよい。なお、観察光学系自身の波長依存性は、シリコンや石英ガラスなどの、反射スペクトルが既知のサンプルを予め測定しておくことで、計算により補正できる。
【0038】
処理装置20は、複数の異なる波長の照明光を照射したときのそれぞれの光検出器19で得られた画像から反射率を測定し、貫通穴34の底面に形成されたSiO層33の膜厚を算出する。すなわち、処理装置20は、SiO層33の膜厚を算出するために、ある波長の照明光による画像と、それと異なる波長の照明光による画像とに基づいて、それぞれの波長に対する反射率の測定データを求める。そして、処理装置20は、波長と反射率との関係がSiO層33の膜厚毎にそれぞれ示されている計算データを参照して、測定データからSiO層33の膜厚を近似して算出する。この膜厚の測定方法については、後に詳述する。
【0039】
本発明では、共焦点顕微鏡を用いて、照明波長を切り替えながら、反射率を測定する。これにより、貫通穴34のエッジからの散乱光やSi基板31上面からの反射光を除去し、穴底のSiO層33の膜厚測定ができる。このように、貫通穴34底のSiO層33の膜厚を非接触・非破壊で短時間に測定することができる。なお、条件によっては、高アスペクト比の貫通穴34底の膜厚測定の可能性もある。波長による反射強度の相対変化による計測であるため、反射光焦点位置の検出による膜厚測定では問題となっていた擬似焦点にも影響されない。また、光学顕微鏡の焦点深度より大きな段差のある表面の膜厚測定にも対応できる。
【0040】
ここで、上述した膜厚測定装置100を用いて、本実施の形態に係る膜厚測定方法について詳細に説明する。上述したように、本実施の形態に係る膜厚測定装置100は、波長を選択することが可能な共焦点顕微鏡を用いたものである。また、ここでは、図2に示したような、貫通穴34の底面に形成されたSiO層33の膜厚を求める。なお、求めたいSiO層33の膜厚をdとする(なお、dは1μm以下であるものとする)。
【0041】
貫通穴34の底の構造は上から、空気/SiO/Alとなる。それぞれの層の波長λに対する複素屈折率をそれぞれN、N、Nとし、屈折率をn=1、n、n2、消衰係数をk=0、k、kとする。それぞれの層の波長λに対する複素屈折率をそれぞれN、N、Nは、以下の式(1)、(2)、(3)で表される。
【数1】

【数2】

【数3】

【0042】
まず、膜厚dに対する反射率の波長依存性を計算する。すなわち、膜厚dを算出する際に参照される波長と反射率との関係がSiO層33の膜厚毎にそれぞれ示される計算データを求める。Al層32上のSiO層33による薄膜干渉強度について図3を参照して考える。なお、図3では、模式的に照明光が斜め入射にしているように図示しているが、波長λの光が膜に対して垂直に入射するものとする。
【0043】
入射した光の一部は、空気/SiO層33界面で反射し、残りの一部は透過しSiO層33/Al層32界面で反射する。SiO層33/Al層32界面からの反射光は空気/SiO層33界面を透過するが、さらに一部は反射され再びSiO層33/Al層32界面で反射する。一般的に薄膜ではこのような多重反射が起こる。これらの反射光が全て干渉し合計されたものから、反射率(R)が得られる。複素屈折率が既知であるならば、反射率(R)は波長λと膜厚dだけで決まる。
【0044】
界面0(空気/SiO界面)と界面1(SiO/Al界面)での振幅反射率は、それぞれ、式(4)(5)で表される。
【数4】

【数5】

【0045】
このとき、SiO層33を1回透過する光の位相変化δは式(6)、振幅変化γは式7のように表される。
【数6】

【数7】

【0046】
多重反射を考慮した膜構造全体の振幅反射率は、式(8)となる。
【数8】

反射率Rは振幅反射率の絶対値の自乗となるので、式(9)となる。
【数9】

【0047】
従って、複素屈折率が既知であれば、反射率は波長λと膜厚dから計算することができる。可視光領域の400〜650nmにおける反射率を、SiO層33の膜厚を変えて計算したものを図4に示す。図4においては、SiO層33の膜厚を100nm、300nm、500nm、700nm、1000nmと変化させた場合のそれぞれの反射率の波長依存性について図示している。
【0048】
そして、試料の測定反射率(測定データ)を求める。ここで、照明光の波長として、405nm、488nm、515nm、546nm、577nm、630nmを選択したとする。干渉フィルター12で、照明光の波長を切替え、それぞれの波長の照明光での同一視野の画像を取得する。そして、各波長での反射率を求める。反射率は、キャプチャーした画像の輝度値:Isampleから求められる。なお、取得した画像の所定のエリアに関する輝度値の平均値を用いて反射率を求めてもよく、1画素のみの輝度値を用いて反射率を求めてもよい。
【0049】
各波長の反射率を求めることにより、反射率の波長依存性が得られる。そして、各波長の測定反射率を、式(9)で求められる計算反射率に対して最小自乗法でdをパラメータとして最小二乗法によりフィッティングさせることで、膜厚dを求めることができる。
【0050】
なお、反射率を測定する場合は、測定に使用している光学系の特性や光源の特性を補正するために、反射率が既知である基準試料の反射率測定を行ってもよい。例えば、Siを基準とする場合は、各波長でSiの反射画像をキャプチャーする(カラーバランス、ゲインコントロール等は一定にする)。このSiの輝度値:ISiに対する相対値として、試料の反射率を計算し、さらに、Siの既知の反射率の波長依存性のデータ:RSiで補正を行う。従って、試料の反射率は式(10)のように求められる。
【数10】

【0051】
ここで、具体的な膜厚の測定例について説明する。図5に示すように、石英基板上にアモルファスシリコン薄膜(a−Si薄膜)を約200nm形成した試料の、a−Si薄膜の膜厚を測定する例について説明する。照明光の波長は、405nm、436nm、546nm、577nm、630nmの5種類の波長による測定を行った。基準試料にはSiウエハを用いた。
【0052】
共焦点顕微鏡のゲイン調整を固定した状態で、Siウエハと試料について、同一の視野の画像を、波長を変えて取得した。その結果得られた画像を、図6に示す。図6中四角で囲んだエリアに関する輝度値の平均値を使い、式(10)から反射率を求めた。
【0053】
式(10)から求めた測定反射率と、式(9)から求めた計算反射率をプロットしたものを図7に示す。図7に示す曲線は、膜厚dを170nm、180nm、183nm、190nmと変化させた場合の、波長と反射率との関係をそれぞれ示す計算データである。また、図7中、黒四角が各波長での測定反射率を示している。
【0054】
そして、最小二乗法により以下の式(11)を用いて、測定値(Rm)と計算値(Rc)の残差(Σ)を各膜厚に対して計算した。
【数11】

【0055】
表1に、この各膜厚における残差の結果示す。
【表1】

【0056】
残差Σが最小になる場合のdをこの試料の測定エリアの膜厚とすることができる。従って、ここではd=183nmと決定できる。5波長の測定でも±5nm程度で膜厚測定できると推定される。同様の方法で、画像の各画素に対して膜厚を求めることができるので、膜厚分布を表示することも原理的に可能である。
【0057】
このように、共焦点顕微鏡を用いることにより、貫通穴34のエッジからの散乱光やSi基板31上面からの反射光を除去し、穴底のSiO層33の膜厚を非接触・非破壊で短時間に測定できる。また、波長による反射強度の相対変化による計測であるため、反射光焦点位置の検出による膜厚測定では問題となっていた擬似焦点にも影響されない。
【0058】
なお、共焦点顕微鏡を用いることにより、試料30の表面で反射し、内部への透過率の低い照明波長を選択することにより、表面形状も独立に測定することができる。膜厚分布と表面形状分布を独立に測定することにより、基板表面形状(基板と膜の界面)を求めることができる。
【0059】
また、膜厚が数μm以上あるような場合は、共焦点顕微鏡で合焦点位置の違いを検出できるので、焦点位置の読みとりにより従来どおり膜厚測定ができる。すなわち、本発明によれば、膜厚が1μm以下の場合には上述のように照明光の波長を切替えながら反射強度を測定することができ、膜厚が厚い場合には従来どおりの膜厚測定を切替えて行うことができる。さらに、表面に焦点深度を超える起伏がある場合でも、共焦点顕微鏡により全焦点画像を作成することにより、全表面の反射率を測定することができる。
【0060】
なお、上述の例では、断続的に複数の波長について反射率を測定したが、連続的に波長を切替えるようにしてもよい。連続波長の光源を用いることにより、測定する波長を多数選択することができる。この場合、計算した反射データと測定データを完全に一致させる近似を使わずとも、連続したカーブが得られる場合は、反射率の極大や極小の位置を合わせる近似を行う一般的な方法で膜厚を算出できる。すなわち、連続波長による方法を使う場合は、ピーク波長だけを使って膜厚計算できるので、反射率既知の基準試料で正確に補正する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】実施の形態に係る膜厚測定装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】実施の形態に係る試料の構成を模式的に示す図である。
【図3】試料に光が入射したときの、各界面での光の反射及び透過の状態を示す図である。
【図4】SiO層の膜厚を変えて、可視光領域の400〜650nmにおける反射率を計算した結果を示す図である。
【図5】実施例に係る試料の構成を模式的に示す図である。
【図6】実施例に係る試料について、波長を変えて取得した同一の視野の画像を示す図である。
【図7】測定反射率と、計算反射率をプロットしたグラフである。
【図8】積層型3次元半導体装置の貫通電極の製造工程を説明するための図である。
【符号の説明】
【0062】
11 光源
12 干渉フィルター
13a、13b、13c レンズ
14 スリット
15 ビームスプリッタ
16 振動ミラー
17 対物レンズ
18 ステージ
19 光検出器
20 処理装置
30 試料
31 Si基板
32 Al層
33 SiO
34 貫通穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料上に設けられている薄膜の膜厚を測定する膜厚測定装置であって、
少なくとも第1波長の照明光と第2波長の照明光とを切替可能な光源部と、
前記試料で反射した反射光を検出して、前記試料の所定の領域における画像を取得する光検出器と、
前記光源部からの照明光を前記試料まで導くとともに、前記試料からの前記反射光を前記光検出器まで導く共焦点光学系と、
前記薄膜の膜厚を算出するために、前記第1波長の光による第1画像と、前記第2波長の光による第2画像とに基づいて、前記第1波長及び第2波長に対する反射率の測定データをそれぞれ求める処理部と、を備え、
前記処理部は、波長と反射率との関係が前記薄膜の膜厚毎にそれぞれ示されている計算データを参照して、前記測定データから前記薄膜の膜厚を近似して算出する膜厚測定装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記測定データと前記計算データから、最小二乗法により前記薄膜の膜厚を算出する請求項1に記載の膜厚測定装置。
【請求項3】
前記試料は、前記薄膜が底面に形成された貫通穴を備え、
前記処理部は、前記第1画像及び前記第2画像の前記貫通穴に対応する領域の反射率の測定データを求める請求項1又は2に記載の膜厚測定装置。
【請求項4】
前記光源部は、水銀キセノンランプを含み、前記水銀キセノンランプの輝線に対応する波長の光を出射する請求項1〜3のいずれか1項に記載の膜厚測定装置。
【請求項5】
前記光源部は、連続光を出射する請求項1〜3のいずれか1項に記載の膜厚測定装置。
【請求項6】
前記第1波長の照明光から前記第2波長第2波長の照明光へと切替える際に、前記試料上における焦点高さを調整する焦点高さ調整手段をさらに備える請求項1〜5のいずれか1項に記載の膜厚測定装置。
【請求項7】
試料上に設けられている薄膜の膜厚を測定する膜厚測定方法であって、
共焦点光学系を介して、前記試料に第1波長の照明光と第2波長の照明光とを切替えて照射し、
前記試料で反射した反射光を、前記共焦点光学系を介して検出して、前記第1波長の光による第1画像と、前記第2波長の光による第2画像とを取得し、
前記薄膜の膜厚を算出するために、前記第1画像と前記第2画像とに基づいて、前記第1波長及び第2波長に対する反射率の測定データをそれぞれ求め、
波長と反射率との関係が前記薄膜の膜厚毎にそれぞれ示されている計算データを参照して、前記測定データから前記薄膜の膜厚を近似して算出する膜厚測定方法。
【請求項8】
前記測定データと前記計算データから、最小二乗法により前記薄膜の膜厚を算出する請求項7に記載の膜厚測定方法。
【請求項9】
前記試料は、前記薄膜が底面に形成された貫通穴を備え、
前記第1画像及び前記第2画像の前記貫通穴に対応する領域の反射率の測定データを求める請求項7又は8に記載の膜厚測定方法。
【請求項10】
前記第1波長の照明光から前記第2波長の照明光へと切替える際に、前記試料上における焦点高さを調整する請求項7〜9のいずれか1項に記載の膜厚測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−204313(P2009−204313A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−43919(P2008−43919)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000115902)レーザーテック株式会社 (184)
【Fターム(参考)】