説明

自動二輪車および自動二輪車用懸架装置

【課題】ユーザに乗り心地の違和感が生じるのを有効に抑制することが可能な自動二輪車を提供する。
【解決手段】この自動二輪車1は、車輪(前輪6および後輪37)と車体とが相対的に移動するときの伸長方向および圧縮方向の少なくとも一方側の力を減衰させ、減衰力特性を低速用減衰力特性と高速用減衰力特性に切替可能な減衰機構(圧縮側電子制御バルブ23、伸長側電子制御バルブ24、圧縮側電子制御バルブ48および伸長側電子制御バルブ49)を含む懸架装置(右側フロントフォーク13およびリヤサスペンション38)と、減衰機構の減衰力特性を電気的に制御する制御部25aとを備えている。また、制御部25aは、車速が速度V1になった際に低速用減衰力特性から高速用減衰力特性への切替動作を開始するとともに、車速が速度V2に到達する際に低速用減衰力特性から高速用減衰力特性への切替動作を完了するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動二輪車および自動二輪車用懸架装置に関し、特に、懸架装置の減衰機構の減衰力特性を電気的に制御するように構成された自動二輪車および自動二輪車用懸架装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、懸架装置の減衰機構の減衰力特性を電気的に制御する懸架装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。上記特許文献1には、車両に搭載される車両用懸架装置が開示されている。具体的には、上記特許文献1には、互いに減衰力の異なる2つのモード特性を切り替えることにより減衰力特性を切替可能な油圧シリンダを含む懸架装置と、油圧シリンダのモード特性を電気的に切り替える制御を行う制御部とを備えた車両用懸架装置が開示されている。この車両用懸架装置の制御部は、車速に基づいて、減衰力特性のモード特性を切り替えるように構成されている。具体的には、制御部は、車速が強制切替速度に到達すると、油圧シリンダを減衰力の小さいモード特性から減衰力の大きいモード特性に切り替え始めるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−149090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された車両用懸架装置では、制御部は、強制切替速度に到達した際に、懸架装置の油圧シリンダの減衰力特性を減衰力の小さいモード特性から減衰力の大きいモード特性に切り替えるように構成されている。この場合、油圧シリンダのモード切替時の応答速度分だけ、モード切替に時間を要する。さらに、車両は走行しているため、減衰力の大きいモード特性への切り替えが完了した時点の車両の速度は走行状態により異なる。ここで、自動二輪車は、自動車と比較すると、車両の変動に対するユーザの感じ方が大きい。さらに、自動車と比較すると、加速性能がよいため、モード切替の完了時点での自動二輪車の速度のばらつきが大きくなると考えられる。このため、上記特許文献1の技術を自動二輪車に適用した場合には、ユーザに乗り心地の違和感が生じやすいという問題点がある。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、ユーザに乗り心地の違和感が生じるのを有効に抑制することが可能な自動二輪車を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による自動二輪車は、車輪と、車体と、車輪と車体との間に設けられるとともに、車輪と車体とが相対的に移動するときの伸長方向および圧縮方向の少なくとも一方側の力を減衰させ、かつ、第1減衰力特性と、第1減衰力特性よりも減衰力が大きい第2減衰力特性とを切替可能に構成された減衰機構を含む懸架装置と、車体の車速情報を検出する車速情報検出部と、車速情報検出部の検出値に基づいて、懸架装置の減衰機構の減衰力特性を電気的に制御するための制御部とを備え、制御部は、少なくとも車体の車速が増加している状態の場合には、車速情報検出部による検出値が第1の車速情報値になった際に第1減衰力特性から第2減衰力特性への切替を開始するとともに、車速情報検出部による検出値が第1の車速情報検出値よりも大きい第2の車速情報検出値に到達する際には第1減衰力特性から第2減衰力特性への切替動作が完了されるように制御するように構成されている。
【0007】
この第1の局面による自動二輪車では、上記のように、懸架装置の減衰機構を、第1減衰力特性と、第1減衰力特性よりも減衰力が大きい第2減衰力特性とに切替可能に構成し、制御部を、少なくとも車体の車速が増加している状態の場合には、車速情報検出部による検出値が第1の車速情報値になった際に第1減衰力特性から第2減衰力特性への切替を開始する制御を行うとともに、車速情報検出部による検出値が第1の車速情報検出値よりも大きい第2の車速情報検出値になった際に第1減衰力特性から第2減衰力特性への切替動作を完了させるように制御するように構成する。これにより、第1減衰力特性から第2減衰力特性への切替時に減衰力制御機器の応答の遅れなどがあるとともに、加速性能のよい自動二輪車の車速情報検出値が急激に増加した場合にも、目標の車速情報値(第2の車速情報検出値)よりも小さい第1の車速情報検出値から切り替えを開始することができるので、車速情報検出部による検出値が第2の車速情報検出値に到達する際には、懸架装置の減衰機構の減衰力特性が第1減衰力特性から減衰力の大きい第2減衰力特性に確実に切り替えを完了させることができる。その結果、車両の変動に対するユーザの感じ方の大きい自動二輪車においても、車速情報検出部による検出値が第2の車速情報検出値に到達する際に、ユーザに乗り心地の違和感が生じるのを有効に抑制することができる。ここで、自動車と比較して加速性能がよいために急激に車速が増加しやすい自動二輪車に対して、第2の車速情報検出値に到達する所定時間前から時間をパラメータとして減衰力特性の移行を開始するような制御を行った場合に、所定時間を短くした場合には、急激に車速が増加すると、減衰力特性の切替動作の完了時の車速情報検出値のばらつきが大きいとともに、第2の車速情報検出値に到達する際に、減衰力特性の切替動作を完了するのが難しいため、目標の減衰力特性を得るのが難しい。この場合に、上記のように、車速情報をパラメータとして減衰力特性を切り替えるようにすれば、車速情報が急激に変化する場合にも、第2の車速情報検出値に到達した際に確実に目標の減衰力特性を得ることができるので、この点でも、本発明は、自動二輪車に特に有効であると言える。
【0008】
この発明の第2の局面による自動二輪車用懸架装置は、第1減衰力特性と、第1減衰力特性よりも減衰力が大きい第2減衰力特性とを切替可能に構成された減衰機構と、車体の車速情報を検出する車速情報検出部の検出値に基づいて、減衰機構の減衰力特性を電気的に制御するための制御部とを備え、制御部は、少なくとも車体の車速が増加している状態の場合に、車速情報検出部による検出値が第1の車速情報値になった際に第1減衰力特性から第2減衰力特性への切替を開始するとともに、車速情報検出部による検出値が第1の車速情報検出値よりも大きい第2の車速情報検出値に到達する際には第1減衰力特性から第2減衰力特性への切替動作が完了されるように制御するように構成されている。
【0009】
この第2の局面による自動二輪車用懸架装置では、上記のように、懸架装置の減衰機構を、第1減衰力特性と、第1減衰力特性よりも減衰力が大きい第2減衰力特性とに切替可能に構成し、制御部を、少なくとも車体の車速が増加している状態の場合には、車速情報検出部による検出値が第1の車速情報値になった際に第1減衰力特性から第2減衰力特性への切替を開始する制御を行うとともに、車速情報検出部による検出値が第1の車速情報検出値よりも大きい第2の車速情報検出値になった際に第1減衰力特性から第2減衰力特性への切替動作を完了させるように制御するように構成する。これにより、第1減衰力特性から第2減衰力特性への切替時に減衰力制御機器の応答の遅れなどがあるとともに、加速性能のよい自動二輪車の車速情報検出値が急激に増加した場合にも、目標の車速情報値(第2の車速情報検出値)よりも小さい第1の車速情報検出値から切り替えを開始することができるので、車速情報検出部による検出値が第2の車速情報検出値に到達する際には、懸架装置の減衰機構の減衰力特性が第1減衰力特性から減衰力の大きい第2減衰力特性に確実に切り替えを完了させることができる。その結果、車両の変動に対するユーザの感じ方の大きい自動二輪車においても、車速情報検出部による検出値が第2の車速情報検出値に到達する際に、ユーザに乗り心地の違和感が生じるのを有効に抑制することが可能な自動二輪車用懸架装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態による自動二輪車の全体構造を示した側面図である。
【図2】図1に示した一実施形態による自動二輪車のフロントフォークの構成を説明するための図である。
【図3】図1に示した一実施形態による自動二輪車の構成を示すブロック図である。
【図4】図1に示した一実施形態による自動二輪車のリヤサスペンションの構成を説明するための図である。
【図5】図1に示した一実施形態による自動二輪車に搭載されたフロントフォークおよびリヤサスペンションに設けられている電子制御バルブに対して印加される電流値と車速との関係を説明するためのグラフである。
【図6】図1に示した一実施形態による自動二輪車に搭載されたエンジンのエンジン回転数/車速相関図を示したグラフである。
【図7】本発明の一実施形態の第1応用例による自動二輪車に搭載されたフロントフォークまたはリヤサスペンションの減衰力特性を示したグラフである。
【図8】本発明の一実施形態の第1応用例による自動二輪車に搭載されたフロントフォークまたはリヤサスペンションの減衰力と印加される電流値との関係を示したグラフである。
【図9】本発明の一実施形態の第1応用例による自動二輪車に搭載されたECUの制御部による減衰機構の減衰力特性の選択動作を説明するためのフローチャートである。
【図10】本発明の一実施形態の第2応用例による自動二輪車の構成を示すブロック図である。
【図11】図10に示した一実施形態の第2応用例による自動二輪車に搭載されたフロントフォークまたはリヤサスペンションの減衰力特性を示したグラフである。
【図12】図10に示した一実施形態の第2応用例による自動二輪車に搭載されたフロントフォークおよびリヤサスペンションに設けられている電子制御バルブに対して印加される電流値と減衰力との関係を説明するためのグラフである。
【図13】本発明の変形例による自動二輪車に搭載されたフロントフォークおよびリヤサスペンションに設けられている電子制御バルブに対して印加される電流値と車速との関係を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
まず、図1〜図4を参照して、本発明の一実施形態による自動二輪車1の構成について詳細に説明する。なお、図中、矢印FWDは、自動二輪車の走行方向の前方を示している。
【0013】
本発明の一実施形態による自動二輪車1では、図1に示すように、ヘッドパイプ2の後方には、メインフレーム3が配置されている。また、メインフレーム3には、シートレール4が接続されている。これらのヘッドパイプ2、メインフレーム3およびシートレール4によって、車体フレームが構成されている。なお、ヘッドパイプ2、メインフレーム3およびシートレール4は、本発明の「車体」の一例である。
【0014】
また、ヘッドパイプ2には、ステアリングシャフト5が取り付けられている。このステアリングシャフト5の上部には、前輪6を操舵するためのハンドル7が取り付けられている。なお、前輪6は、本発明の「車輪」の一例である。
【0015】
また、ヘッドパイプ2の前方には、図1に示すように、ヘッドパイプ2の前方を覆うフロントカウル8が設けられている。また、フロントカウル8の前部には、ヘッドライト9が配置されている。また、フロントカウル8の下方には、前輪6の上方に配置されるフロントフェンダ10が配置されている。また、前輪6は、一対のフロントフォーク11の下端部に回転可能に取り付けられている。なお、フロントフォーク11は、本発明の「懸架装置」の一例である。このフロントフォーク11は、前輪6と車体とが相対的に移動するときの伸縮する力を減衰させる機能を有する。
【0016】
また、フロントフォーク11は、図2に示すように、走行方向に向かって前輪6の左側に配置される左側フロントフォーク12と、走行方向に向かって右側に配置される右側フロントフォーク13とにより構成されている。この左側フロントフォーク12は、アウターチューブ14およびインナーチューブ15が軸方向に摺動して伸縮可能に設けられるとともに、右側フロントフォーク13は、アウターチューブ16およびインナーチューブ17が軸方向に摺動して伸縮可能に設けられることによって、テレスコピック型に構成されている。また、アウターチューブ14および16は、ステアリングシャフト5に固定されたアンダーブラケット18およびアッパーブラケット19に固定されている。また、インナーチューブ15および17には、アクスルブラケット20および21がそれぞれ設けられているとともに、アクスルブラケット20および21には、前輪6の車軸6aが取り付けられている。
【0017】
また、左側フロントフォーク12には、左側フロントフォーク12の伸縮量を検出するための検出装置22が設けられている一方、右側フロントフォーク13には、右側フロントフォーク13の減衰力特性を調整可能に構成されている圧縮側電子制御バルブ23および伸長側電子制御バルブ24が設けられている。なお、圧縮側電子制御バルブ23および伸長側電子制御バルブ24は、本発明の「減衰機構」の一例である。これら圧縮側電子制御バルブ23および伸長側電子制御バルブ24は、それぞれ、ソレノイドバルブにより構成されており、印加する電流量を制御することによって、弁を流れるオイルの圧力を制御可能なように構成されている。
【0018】
また、検出装置22、圧縮側電子制御バルブ23および伸長側電子制御バルブ24は、それぞれ、ECU(電子制御ユニット)25と接続されている。このECU25は、フロントフォーク11および後述するリヤサスペンション38において発生される減衰力を制御する機能を有する。具体的には、ECU25は、図3に示すように、フロントフォーク11、後述するエンジン34およびリヤサスペンション38などを電気的に制御するCPUからなる制御部25aと、後述する圧縮側電子制御バルブ23および伸長側電子制御バルブ24のそれぞれの低速用減衰力特性および高速用減衰力特性に対応する電流値やエンジン回転数/車速相関図(テーブル)などが記憶されている記憶部25bとを含んでいる。また、ECU25の制御部25aには、メインスイッチ26が接続されており、ECU25は、メインスイッチ26をオンすることにより起動される。なお、ECU25の詳細な構成については、後ほど説明する。
【0019】
また、左側フロントフォーク12のストロークセンサ22は、検出された左側フロントフォーク12の伸縮量をECU25に送信可能に構成されている。そして、ECU25の制御部25aは、左側フロントフォーク12の伸縮量から左側フロントフォーク12が圧縮および伸長する際のそれぞれのストロークスピードを検出可能に構成されている。
【0020】
また、右側フロントフォーク13は、図2に示すように、アウターチューブ16に固定されたロッド部27と、ロッド部27の端部に設けられているピストン部28とを含んでいる。そして、右側フロントフォーク13の内部は、ピストン部28により、圧縮側オイル室13aと、伸長側オイル室13bとに隔てられている。この圧縮側オイル室13aには、オイル通路部29のオイル通路29aが接続されており、オイル通路部29は、圧縮側オイル室13aに充填されているオイルがオイル通路29aに流入され、圧縮側電子制御バルブ23、中間通路29b、29c、チェックバルブ30aおよびオイル通路29dを介して伸長側オイル室13bに流入可能に構成されている。また、伸長側オイル室13bには、オイル通路部29のオイル通路29dが接続されている。オイル通路部29は、伸長側オイル室13bに充填されているオイルがオイル通路29dに流入され、伸長側電子制御バルブ24、中間通路29e、29c、チェックバルブ30bおよびオイル通路29aを介して圧縮側オイル室13aに流入可能に構成されている。また、中間通路29b、29cおよび29eには、リザーバ31に接続されるオイル通路29fが設けられている。
【0021】
また、圧縮側電子制御バルブ23および伸長側電子制御バルブ24は、ECU25により、それぞれを通過するオイルの圧力を調整可能に構成されている。そして、圧縮側電子制御バルブ23は、通過するオイルの圧力を小さくするのに従って、右側フロントフォーク13が圧縮される際の減衰力が小さくされるように構成されているとともに、通過するオイルの圧力を大きくするのに従って、右側フロントフォーク13が圧縮される際の減衰力が大きくされるように構成されている。また、伸長側電子制御バルブ24は、通過するオイルの圧力を小さくするのに従って、右側フロントフォーク13が伸長される際の減衰力が小さくされるように構成されているとともに、通過するオイルの圧力を大きくするのに従って、右側フロントフォーク13が伸長される際の減衰力が大きくされるように構成されている。
【0022】
また、メインフレーム3の上部には、図1に示すように、燃料タンク32が配置されている。また、燃料タンク32の後方には、シート33が配置されている。また、メインフレーム3の下方には、エンジン34が取り付けられている。このエンジン34には、エンジン34の図示しないクランク軸の回転数を検出する回転センサ34aが設けられているとともに、エンジン34の図示しない所定のギヤの回転数を検出することにより、自動二輪車1の車速を検出する車速センサ34bが設けられている。また、エンジン34には、6段階の変速を行うために、ギア径の異なる6つの変速ギア(図示せず)を有する変速部(図示せず)において、選択されている変速ギアを検出することにより変速状態を検出するギアセンサ34cが設けられている。なお、車速センサ34bは、本発明の「車速情報検出部」の一例である。また、回転センサ34aは、本発明の「車速情報検出部」および「エンジン回転センサ」の一例であり、ギアセンサ34cは、「車速情報検出部」および「変速検出センサ」の一例である。また、車速およびエンジン回転数は、本発明の「車速情報」の一例である。
【0023】
また、エンジン34の前方には、エンジン34を冷却するためのラジエーター35が設けられている。また、メインフレーム3の後部には、図示しないピボット軸が設けられている。このピボット軸により、リヤアーム36の前端部が上下に揺動可能に支持されている。このリヤアーム36の後端部には、後輪37が回転可能に取り付けられている。なお、後輪37は、本発明の「車輪」の一例である。
【0024】
また、メインフレーム3の後部の上側には、支持部3aが設けられている。この支持部3aには、リヤサスペンション38の上部取付部39が軸部材40により取り付けられている。なお、リヤサスペンション38は、本発明の「懸架装置」の一例である。また、リヤサスペンション38の下部取付部41は、メインフレーム3の後部の下側に設けられた支持部3bを中心として揺動可能に設けられた揺動部材42に取り付けられている。この揺動部材42の下部は、リヤアーム36の支持部36aに連結部材43によって連結されている。これにより、リヤアーム36が上下に揺動するにともなって、揺動部材42がメインフレーム3の支持部3bを中心として揺動するとともに、リヤサスペンション38を伸縮させることが可能となる。
【0025】
また、リヤサスペンション38は、図4に示すように、一方端部に上部取付部39が設けられたシリンダ部44と、シリンダ部44の内周面を摺動可能に設けられたピストン45と、一方端部がピストン45に取り付けられているとともに、他方端部が下部取付部41に取り付けられているロッド部46とを含んでいる。また、リヤサスペンション38には、リヤサスペンション38の伸縮量を検出するためのストロークセンサ47が設けられているとともに、リヤサスペンション38の減衰力特性を調整可能に構成されている圧縮側電子制御バルブ48および伸長側電子制御バルブ49が設けられている。なお、圧縮側電子制御バルブ48および伸長側電子制御バルブ49は、本発明の「減衰機構」の一例である。これら圧縮側電子制御バルブ48および伸長側電子制御バルブ49は、それぞれ、ソレノイドバルブにより構成されており、通電する電流量を制御することによって、弁を流れるオイルの圧力を制御可能なように構成されている。また、ストロークセンサ47、圧縮側電子制御バルブ48および伸長側電子制御バルブ49は、それぞれ、フロントフォーク11のストロークセンサ22、圧縮側電子制御バルブ23および伸長側電子制御バルブ24と同様、ECU(電子制御ユニット)29と接続されている。
【0026】
また、リヤサスペンション38のストロークセンサ47は、図3に示すように、検出されたリヤサスペンション38の伸縮量(ストローク)をECU25に送信可能に構成されている。そして、ECU25の制御部25aは、リヤサスペンション38の伸縮量からリヤサスペンション38が圧縮および伸長する際のそれぞれのストロークスピードを検出可能に構成されている。
【0027】
また、リヤサスペンション38の内部は、ピストン45により、圧縮側オイル室42aと、伸長側オイル室42bとに隔てられている。この圧縮側オイル室42aには、オイル通路部50のオイル通路50aが接続されており、オイル通路部50は、圧縮側オイル室42aに充填されているオイルがオイル通路50aに流入され、圧縮側電子制御バルブ48、中間通路50b、50c、チェックバルブ51aおよびオイル通路50dを介して伸長側オイル室42bに流入可能に構成されている。また、伸長側オイル室42bには、オイル通路部50のオイル通路50dが接続されており、オイル通路部50は、伸長側オイル室42bに充填されているオイルがオイル通路50dに流入され、伸長側電子制御バルブ49、中間通路50e、50c、チェックバルブ51bおよびオイル通路50aを介して圧縮側オイル室42aに流入可能に構成されている。また、中間通路50b、50cおよび50eには、リザーバ52に接続されるオイル通路50fが設けられている。
【0028】
また、圧縮側電子制御バルブ48および伸長側電子制御バルブ49は、ECU25により、それぞれを通過するオイルの圧力を調整可能に構成されている。そして、圧縮側電子制御バルブ48は、通過するオイルの圧力を小さくするのに従って、リヤサスペンション38が圧縮される際の減衰力が小さくされるように構成されているとともに、通過するオイルの圧力を大きくするのに従って、リヤサスペンション38が圧縮される際の減衰力が大きくされるように構成されている。また、伸長側電子制御バルブ49は、通過するオイルの圧力を小さくするのに従って、リヤサスペンション38が伸長される際の減衰力が小さくされるように構成されているとともに、通過するオイルの圧力を大きくするのに従って、リヤサスペンション38が伸長される際の減衰力が大きくされるように構成されている。
【0029】
図5は、図1に示した本発明の一実施形態による自動二輪車に搭載されたフロントフォークおよびリヤサスペンションに設けられている電子制御バルブに対して印加される電流値と車速との関係を説明するためのグラフである。また、図6は、本実施形態による自動二輪車の記憶部に記憶されたエンジン回転数/車速相関図(テーブル)である。次に、図3、図5および図6を参照して、本発明の一実施形態による自動二輪車1のECU25の構成について詳細に説明する。
【0030】
図3に示すように、本実施形態による自動二輪車1のECU25の制御部25aは、右側フロントフォーク13の圧縮側電子制御バルブ23および伸長側電子制御バルブ24、および、リヤサスペンション38の圧縮側電子制御バルブ48および伸長側電子制御バルブ49に対して電流を印加することにより、右側フロントフォーク13およびリヤサスペンション38の減衰力を調整する制御を行うように構成されている。このとき、右側フロントフォーク13およびリヤサスペンション38の減衰力は、制御部25aにより印加される電流値に略比例する。つまり、制御部25aは、右側フロントフォーク13の圧縮側電子制御バルブ23および伸長側電子制御バルブ24と、リヤサスペンション38の圧縮側電子制御バルブ48および伸長側電子制御バルブ49とに対して印加する電流の電流値を調整することにより、右側フロントフォーク13およびリヤサスペンション38の減衰力を制御するように構成されている。
【0031】
また、右側フロントフォーク13およびリヤサスペンション38は、車速に応じた低速用減衰力特性と、低速用減衰力特性よりも減衰力の大きい高速用減衰力特性とを有している。また、制御部25aは、右側フロントフォーク13の圧縮側電子制御バルブ23および伸長側電子制御バルブ24、および、リヤサスペンション38の圧縮側電子制御バルブ48および伸長側電子制御バルブ49に対して、低速用減衰力特性と高速用減衰力特性とのそれぞれに対応した電流値を印加するように構成されている。なお、低速用減衰力特性は、本発明の「第1減衰力特性」の一例であり、高速用減衰力特性は、本発明の「第2減衰力特性」の一例である。
【0032】
ここで、本実施形態では、制御部25aは、車速の変化に対応して印加する電流値(減衰力)を変化させるように構成されている。具体的には、制御部25aは、車速が速度V1(60km/h)から速度V2(80km/h)に向かって増加する場合に、図5に示すように、車速(車速センサ34bの検出値)が速度V1(60km/h)未満の場合には、フロントフォーク11およびリヤサスペンション38の減衰力特性として低速用減衰力特性を選択するとともに、電流値I1の電流を印加する制御を行うように構成されている。また、制御部25aは、車速が速度V1(60km/h)に到達した際に、低速用減衰力特性から高速用減衰力特性に切り替え始めるように構成されている。そして、制御部25aは、車速が速度V1(60km/h)以上で、かつ、速度V2(80km/h)以下である場合には、低速用減衰力特性から高速用減衰力特性に切り替えられる途中の移行期間であると判断され、車速に応じて、低速用減衰力特性が選択された場合に印加される電流値I1から、高速用減衰力特性が選択された場合に印加される電流値I2に向かって連続的に、かつ、直線的に電流値(減衰力)を変化させるように構成されている。また、制御部25aは、車速が速度V2(80km/h)を越えている場合には、高速用減衰力特性を選択するとともに、電流値I1よりも大きい電流値I2の電流を印加するように構成されている。これにより、低速用減衰力特性から高速用減衰力特性への切替が徐々に行われるので、車速が速度V2に到達する際には、低速用減衰力特性から高速用減衰力特性への切替動作を完了させることが可能となる。なお、速度V1は、本発明の「第1の車速情報検出値」の一例であり、速度V2は、本発明の「第2の車速情報検出値」の一例である。
【0033】
また、本実施形態では、制御部25aは、車速が速度V1(60km/h)以上で、かつ、速度V2(80km/h)以下の速度Vxである場合には、以下の式(1)に示す式を用いて低速用減衰力特性から高速用減衰力特性に変化する途中(移行期間)の電流値Ixを算出するように構成されている。この電流値Ixの算出は、たとえば、制御部25aを構成するCPUの制御周期(たとえば数msec)毎に行われる。このため、微視的に見れば、段階的に(ステップ状に)電流値が変化するが、CPUの制御周期は非常に短い間隔であるため、連続的かつ直線的に電流値が変化しているとみなすことが可能である。
電流値Ix=電流値I1+(電流値I2−電流値I1)×(速度V2−速度Vx)/(速度V2−速度V1) ・・・(1)
【0034】
また、上記した式(1)を用いて電流値を算出することにより、変化する速度Vx(車速センサ34bの検出値)に基づいて、低速用減衰力特性から高速用減衰力特性に向かって連続的に減衰力が変化される。また、速度Vx=速度V2である際には、算出される電流値は、電流値I2となる。つまり、速度Vxが速度V2に近づくほど、算出される電流値は、電流値I2に近づく。
【0035】
また、制御部25aは、速度V2(80km/h)よりも大きい車速から速度V1(60km/h)未満に向かって車速が減少する場合には、車速に応じて、高速用減衰力特性から低速用減衰力特性に切り替えられるように構成されている。具体的には、制御部25aは、車速が速度V2(80km/h)に到達した際に、高速用減衰力特性から低速用減衰力特性に切り替え始めるように構成されている。そして、制御部25aは、車速が速度V2(80km/h)以下で、かつ、速度V1(60km/h)以上である場合には、高速用減衰力特性から低速用減衰力特性に切り替えられる途中の移行期間であると判断され、上記式(1)を用いて、高速用減衰力特性が選択された場合に印加される電流値I2から、低速用減衰力特性が選択された場合に印加される電流値I1に向かって連続的に、かつ、直線的に電流値(減衰力)を変化させるように構成されている。また、制御部25aは、車速が速度V1(60km/h)未満である場合には、低速用減衰力特性を選択するとともに、電流値I1の電流を印加するように構成されている。これにより、高速用減衰力特性から低速用減衰力特性への切替が徐々に行われるので、車速が速度V1(60km/h)に到達する際には、高速用減衰力特性から低速用減衰力特性への切替動作を完了させることが可能となる。
【0036】
また、ECU25の記憶部25bには、図6に示すようなギアセンサ34cにより検出された選択されている変速ギア(図示せず)と、回転センサ34aにより検出されるエンジン回転数とから車速を計算するエンジン回転数/車速相関図(テーブル)が記憶されている。このエンジン回転数/車速相関図によれば、最も高速なギアである6速ギアが選択されている場合に、車速が速度V1(60km/h)に到達するエンジン回転数ER1は、3000rpmである。つまり、制御部25aは、検出された変速状態に関わらず、エンジン回転数がER1(3000rpm)に到達すれば、車速が最大でも速度V1であると判断するように構成されている。
【0037】
また、本実施形態では、制御部25aは、車速センサ34bが故障した場合などに車速センサ34bから車速データが正しく伝達されない場合には、回転センサ34aによるエンジン回転数の検出値に基づいて、右側フロントフォーク13およびリヤサスペンション38を、低速減衰力特性から高速用減衰力特性に切り替える制御を行うように構成されている。具体的には、制御部25aは、車速センサ34bから伝達される車速が速度V0(4km/h)未満で、かつ、エンジン回転数がER1(3000rpm)以上である場合には、車速データが正しく伝達されていないと判断するように構成されている。この場合、制御部25aは、図6に示したエンジン回転数/車速相関図に沿って、回転センサ34aにより検出されるエンジン回転数により車速を算出するように構成されている。そして、制御部25aは、エンジン回転数から算出された車速を用いて、車速センサ34bからの伝達される車速データが正確である場合と同様の上述した制御を行うように構成されている。
【0038】
本実施形態では、上記のように、右側フロントフォーク13およびリヤサスペンション38の減衰機構(圧縮側電子制御バルブ23、伸長側電子制御バルブ24、圧縮側電子制御バルブ48および伸長側電子制御バルブ49)を、低速用減衰力特性と、低速用減衰力特性よりも減衰力が大きい高速用減衰力特性とに切替可能に構成し、制御部25aを、車速センサ34bにより検出される車速が増加している状態である場合には、車速が速度V1(60km/h)になった際に低速用減衰力特性から高速用減衰力特性への切替動作を開始するとともに、車速が速度V1よりも大きい速度V2(80km/h)に到達する際に低速用減衰力特性から高速用減衰力特性への切替動作が完了されるように制御するように構成する。これにより、低速用減衰力特性から高速用減衰力特性への切替時に右側フロントフォーク13およびリヤサスペンション38の減衰機構(圧縮側電子制御バルブ23、伸長側電子制御バルブ24、圧縮側電子制御バルブ48および伸長側電子制御バルブ49)の応答の遅れなどがある場合にも、目標車速(速度V2)よりも小さい速度V1(60km/h)に到達した際に、低速用減衰力から高速用減衰力特性への切替動作を開始することができるので、車速が速度V2(80km/h)に到達する際には、右側フロントフォーク13およびリヤサスペンション38の減衰機構を高速用減衰力特性に確実に切替動作を完了させることができる。その結果、車両の変動に対するユーザの感じ方の大きい自動二輪車1においても、車速が速度V2に到達する際に、ユーザに乗り心地の違和感が生じるのを有効に抑制することができる。
【0039】
ここで、自動車などと比較して加速性能がよいために急激に速度が増加しやすい自動二輪車に対して、たとえば、車速が速度V1(60km/h)に到達してから減衰力特性の切替動作を開始し、所定時間後に切替動作が完了するような制御を行った場合には、自動二輪車のように急激に速度が増加すると、減衰力特性の切替動作の完了時の車速情報検出値のばらつきが大きいとともに、車速が速度V2(80km/h)に到達する際に、減衰力特性の切替動作が完了するのが難しいため、目標の減衰力特性を得るのが難しい。この場合に、本実施形態のように、車速をパラメータとして減衰力特性を切り替えるようにすれば、車速が急激に変化する場合にも、車速が速度V2(80km/h)に到達した際に確実に目標の減衰力特性を得ることができるので、この点でも、本構成を自動二輪車に適用することは、特に有効であると言える。
【0040】
また、本実施形態では、上記のように、制御部25aを、低速用減衰力特性から高速用減衰力特性に切り替える際に、速度V1と速度V2との間の車速(車速センサ34bの検出値)に応じて、低速用減衰力特性から高速用減衰力特性に向かって連続的に減衰力特性を変化させるように構成する。これにより、制御部25aが低速用減衰力特性から高速用減衰力特性に切り替える際に、右側フロントフォーク13およびリヤサスペンション38の減衰機構(圧縮側電子制御バルブ23、伸長側電子制御バルブ24、圧縮側電子制御バルブ48および伸長側電子制御バルブ49)の減衰力特性が急激に変化するのを抑制することができる。その結果、右側フロントフォーク13およびリヤサスペンション38の減衰力特性が低速用減衰力特性から高速用減衰力特性に切り替えられる際に、ユーザに乗り心地の違和感が生じるのを抑制することができる。
【0041】
また、本実施形態では、上記のように、制御部25aを、低速用減衰力特性から高速用減衰力特性に切り替える際に、車速(車速センサ34bの検出値)に基づいて、低速用減衰力特性から高速用減衰力特性へ変化させる途中の減衰力(電流値)を算出するように構成する。これにより、容易に、右側フロントフォーク13およびリヤサスペンション38の減衰機構(圧縮側電子制御バルブ23、伸長側電子制御バルブ24、圧縮側電子制御バルブ48および伸長側電子制御バルブ49)の減衰力特性を、車速に応じて低速用減衰力特性から高速用減衰力特性に向かって連続的に変化させることができる。
【0042】
また、本実施形態では、上記のように、制御部25aを、低速用減衰力特性から高速用減衰力特性へと変化させる途中の減衰力特性を電流値として算出するように構成する。これにより、減衰力特性と電流値とは略比例関係であるので、電流値を算出することにより、容易に、移行時の減衰力特性を得ることができる。
【0043】
また、本実施形態では、上記のように、制御部25aを、車速センサ34bにより検出される車速に基づいて、低速用減衰力特性から高速用減衰力特性に切り替える制御を行うように構成する。これにより、低速用減衰力特性から高速用減衰力特性への切替動作を、容易に、車速に基づいて行うことができる。
【0044】
また、本実施形態では、上記のように、制御部25aを、車速センサ34bにより車速データが正しく伝達されなくなった場合に、回転センサ34aの検出値(エンジン回転数)に基づいて、低速用減衰力特性から高速用減衰力特性に切り替える制御を行うように構成する。これにより、断線や故障などに起因して車速センサ34bにより車速が正しく伝達されなくなった場合にも、低速用減衰力特性から高速用減衰力特性への切り替えを行うことができる。その結果、断線や故障などに起因して車速センサ34bにより車速データが正しく伝達されなくなった場合にも、ユーザに乗り心地の違和感が生じるのを抑制することができる。
【0045】
また、本実施形態では、上記のように、制御部25aを、車速センサ34bにより検出される車速が減少している状態である場合に、車速が速度V2になった際に、高速用減衰力特性から低速用減衰力特性への切替を開始するとともに、車速がV1に到達する際には高速用減衰力特性から低速用減衰力特性への切替動作が完了されるように制御するように構成する。これにより、車速が速度V1に到達する際には、減衰力特性を低速用減衰力特性に確実に切替動作を完了させることができる。
【0046】
(本実施形態の第1応用例)
図7は、図1に示した本発明の一実施形態の第1応用例に用いるストロークスピードと減衰力との関係に基づく複数の減衰力特性マップ(ストロークスピード/減衰力マップ)を示したグラフであり、図8は、図7の所定のストロークスピードVstにおける減衰力と電流値との関係を示したグラフである。次に、図5、図7および図8を参照して、上記した本発明の一実施形態の構成を、図7に示すストロークスピード/減衰力マップを用いる自動二輪車に適用した場合の例について説明する。
【0047】
本実施形態の第1応用例では、減衰力特性マップ(ストロークスピード/減衰力マップ)がECU25の記憶部25bに記憶されている。このストロークスピード/減衰力マップは、サーキットマップA、スポーツマップB、ノーマルマップCおよびコンフォートマップD(それぞれ図7参照)の走行状態に応じたマップによって構成されている。なお、ストロークスピード/減衰力マップは、フロントフォーク11およびリヤサスペンション38が相対的に伸縮する際のストロークスピードと、そのストロークスピードに対応する減衰力との関係を表したグラフである。
【0048】
ここで、制御部25aは、記憶部25bに記憶されているストロークスピード/減衰力マップに基づいて、ストロークセンサ22の検出値に基づいて検出したストロークスピードに対応した減衰力により右側フロントフォーク13を減衰させるように、圧縮側電子制御バルブ23および伸長側電子制御バルブ24に対して所定の電流を通電させる機能を有する。また、制御部25aは、記憶部25bに記憶されているストロークスピード/減衰力マップに基づいて、ストロークセンサ47の検出値に基づいて検出したストロークスピードに対応した減衰力によりリヤサスペンション38を減衰させるように、圧縮側電子制御バルブ48および伸長側電子制御バルブ49に対して所定の電流を通電させる機能を有する。
【0049】
また、サーキットマップA、スポーツマップB、ノーマルマップCおよびコンフォートマップD(それぞれ図7参照)は、圧縮側電子制御バルブ23、伸長側電子制御バルブ24、圧縮側電子制御バルブ48および伸長側電子制御バルブ49について、それぞれ、別々に設けられている。すなわち、サーキットマップA、スポーツマップB、ノーマルマップCおよびコンフォートマップD(それぞれ図7参照)は、フロントフォーク11の圧側および伸び側の両方について設けられているとともに、リヤサスペンション38の圧側および伸び側の両方について設けられている。
【0050】
サーキットマップAは、図7に示すように、自動二輪車1をサーキットなどで走行させる際に最も適した減衰力特性を示すストロークスピード/減衰力マップである。サーキットマップAは、ストロークスピードVstに対応する減衰力FAが、スポーツマップB、ノーマルマップCおよびコンフォートマップDのそれぞれのストロークスピードVstに対応する減衰力FB、FCおよびFDと比べて、大きくなるように構成されている。
【0051】
また、スポーツマップBは、自動二輪車1を高速走行させる際に最も適した減衰力特性を示すストロークスピード/減衰力マップである。スポーツマップBは、ストロークスピードVstに対応する減衰力FBが、ノーマルマップCおよびコンフォートマップDのそれぞれのストロークスピードVstに対応する減衰力FCおよびFDと比べて、大きくなるように構成されている。
【0052】
また、ノーマルマップCは、自動二輪車1を郊外路において走行させる際に最も適した標準的な減衰力特性を示すストロークスピード/減衰力マップである。ノーマルマップCは、ストロークスピードVstに対応する減衰力FCが、コンフォートマップDのストロークスピードVstに対応する減衰力FDと比べて、大きくなるように構成されている。
【0053】
また、コンフォートマップDは、自動二輪車1を石畳のような凹凸が多い路面において走行させる際に最も適した減衰力特性を示すストロークスピード/減衰力マップである。コンフォートマップDは、ストロークスピードVstに対応する減衰力FD(FD1およびFD2)が、サーキットマップA、スポーツマップBおよびノーマルマップCのそれぞれのストロークスピードVstに対応する減衰力FA、FBおよびFCと比べて、小さくなるように構成されている。また、コンフォートマップDは、さらに、低速走行用の減衰力特性を有する低速用コンフォートマップD1と、ストロークスピードVstに対応する減衰力FD2が減衰力FD1よりも大きい(低速用コンフォートマップD1よりも減衰力が大きい)高速走行用の減衰力特性を有する高速用コンフォートマップD2とを有している。これら低速用コンフォートマップD1と高速用コンフォートマップD2とは、車速によって切り替えられる。この点に関しては、後に詳しく説明する。
【0054】
ここで、図8に示すように、ストロークスピードが一定(Vst)の場合、右側フロントフォーク13およびリヤサスペンション38の減衰力と、右側フロントフォーク13の圧縮側電子制御バルブ23および伸長側電子制御バルブ24、および、リヤサスペンション38の圧縮側電子制御バルブ48および伸長側電子制御バルブ49に対して印加される電流値とは、略比例関係である。
【0055】
また、制御部25aは、低速用コンフォートマップD1が選択されている場合で、かつ、ストロークスピードがVstの場合には、右側フロントフォーク13の圧縮側電子制御バルブ23および伸長側電子制御バルブ24、および、リヤサスペンション38の圧縮側電子制御バルブ48および伸長側電子制御バルブ49に対して、減衰力FD1と対応する電流値I1(約290mA、図8参照)を印加するように構成されている。また、ストロークスピードがVstの場合で、かつ、高速用コンフォートマップD2が選択されている場合には、電流値I1よりも大きく、減衰力FD2と対応する電流値I2(約400mA、図8参照)を印加するように構成されている。
【0056】
また、本実施形態の第1応用例では、図7に示したストロークスピード/減衰力マップに基づく減衰力制御を行っている構成の自動二輪車に、上記実施形態の図5に示した車速に基づく減衰力の切替制御を行う構成を適用する場合に、図7のストロークスピードVstにおける低速用コンフォートマップD1および高速用コンフォートマップD2の減衰力FD1およびFD2、および、それに対応する図8の電流値I1およびI2に対して、図5に示した車速に基づく減衰力の切替制御を適用する。
【0057】
すなわち、制御部25aは、車速(車速センサ34bの検出値)が速度V1(60km/h)未満である場合には、低速用コンフォートマップD1(図7参照)に沿って、ストロークセンサ22および47により検出されるストロークスピードに応じて減衰力特性を制御するように電流値を変化させるように構成されている。また、制御部25aは、車速が速度V1(60km/h)に到達した際に、図7のストロークスピードVstにおける低速用コンフォートマップD1の減衰力FD1に対応する電流値I1(図8参照)を印加するように構成されている。そして、制御部25aは、車速が速度V1(60km/h)以上で、かつ、速度V2(80km/h)以下の場合には、電流値を車速に応じて上記式(1)に示す式を用いて連続的に算出するように構成されている。これにより、右側フロントフォーク13およびリヤサスペンション38に対して印加される電流値は、低速用コンフォートマップD1(図7参照)のストロークスピードがVstの時の電流値I1(図8参照)から高速用コンフォートマップD2(図7参照)の電流値I2(図8参照)に向かって連続的に上昇される。また、制御部25aは、車速がV2(80km/h)になって、高速用コンフォートマップD2の電流値I2に到達した後に、車速が速度V2(80km/h)を越える場合には、高速用コンフォートマップD2(図7参照)に沿って、ストロークセンサ22および47により検出されるストロークスピードに応じて減衰力特性を制御するように電流値を変化させるように構成されている。
【0058】
図9は、図7および図8に示した本発明の一実施形態の第1応用例における制御部のフロントフォークおよびリヤサスペンションの減衰力特性を切り替える際の処理動作を説明するためのフローチャートである。次に、図3、図6〜図9を参照して、コンフォートマップDが選択されている際の車速に基づく制御部25aの処理動作について詳細に説明する。
【0059】
まず、ステップS1において、制御部25aにより、コンフォートマップD(図7参照)が選択されているか否かが判断される。そして、ステップS1において、コンフォートマップD(図7参照)が選択されていると判断された場合には、ステップS2に移行する。また、ステップS1において、コンフォートマップD(図7参照)が選択されていない(サーキットマップA、スポーツマップBまたはノーマルマップC(それぞれ図7参照)が選択されている)と判断された場合には、処理が終了される。
【0060】
そして、ステップS2において、低速用コンフォートマップD1(図7参照)が選択されているか否かが判断される。そして、ステップS2において、低速用コンフォートマップD1(図7参照)が選択されていると判断された場合には、ステップS3に移行する。また、ステップS2において、低速用コンフォートマップD1(図7参照)が選択されていない場合には、高速用コンフォートマップD2(図7参照)が選択されていると判断され、ステップS5に移行して、高速用コンフォートマップD2(図7参照)を用いて右側フロントフォーク13の圧縮側電子制御バルブ23および伸長側電子制御バルブ24、および、リヤサスペンション38の圧縮側電子制御バルブ48および伸長側電子制御バルブ49に対して印加される電流値が演算される。
【0061】
そして、ステップS3において、車速が速度V1(60km/h)以上か否かが車速センサ34bの検出値に基づいて判断される。そして、ステップS3において、車速が速度V1(60km/h)以上であると判断された場合には、ステップS4に移行する。また、ステップS3において、車速が速度V1(60km/h)未満であると判断された場合には、ステップS11に移行する。
【0062】
ステップS4においては、車速が速度V2(80km/h)を越えているか否かが車速センサ34bの検出値に基づいて判断される。そして、ステップS4において、車速が速度V2(80km/h)を越えていると判断された場合には、ステップS5に移行して、高速用コンフォートマップD2(図7参照)を用いて右側フロントフォーク13の圧縮側電子制御バルブ23および伸長側電子制御バルブ24、および、リヤサスペンション38の圧縮側電子制御バルブ48および伸長側電子制御バルブ49に対して印加される電流値が演算される。そして、ステップS6に移行して、右側フロントフォーク13の圧縮側電子制御バルブ23および伸長側電子制御バルブ24、および、リヤサスペンション38の圧縮側電子制御バルブ48および伸長側電子制御バルブ49に対して高速用コンフォートマップD2(図7参照)を用いて求められた演算結果に基づいた電流値の電流が印加され、処理が終了される。
【0063】
ここで、本実施形態の第1応用例では、ステップS4において、車速が速度V2以下であると判断された場合には、ステップS21に移行して、上記した式(1)および速度Vxに基づいて右側フロントフォーク13の圧縮側電子制御バルブ23および伸長側電子制御バルブ24、および、リヤサスペンション38の圧縮側電子制御バルブ48および伸長側電子制御バルブ49に対して印加される電流値が演算される。このとき、車速は、速度V1以上で、かつ、速度V2以下(速度V1≦車速≦速度V2)であると判断され、低速用コンフォートマップD1(図7参照)から高速用コンフォートマップD2(図7参照)に切り替えられる途中の移行期間であると判断される。そして、制御部25aにより、上記した式(1)および車速に基づいて、ストロークスピードがVstのときの低速用コンフォートマップD1(図7参照)における減衰力FD1(図7参照)に対応する電流値I1(図8参照)と、ストロークスピードがVstのときの高速用コンフォートマップD2(図7参照)における減衰力FD2(図7参照)に対応する電流値I2(図8参照)との間の電流値が制御周期ごとに算出される。なお、図9に示した制御フローチャートの制御周期は、数msecである。これにより、右側フロントフォーク13の圧縮側電子制御バルブ23および伸長側電子制御バルブ24、および、リヤサスペンション38の圧縮側電子制御バルブ48および伸長側電子制御バルブ49に対して印加される電流値を、連続的に変化させることが可能となる。
【0064】
また、図9に示すように、ステップS11において、車速が速度V0(4km/h)未満か否かが車速センサ34bの検出値に基づいて判断される。そして、ステップS11において、車速が速度V0(4km/h)未満であると判断された場合には、ステップS12に移行する。また、ステップS11において、車速が速度V0(4km/h)未満ではないと判断された場合(速度V0≦車速<速度V1であると判断された場合)には、ステップS13に移行して、低速用コンフォートマップD1を用いて右側フロントフォーク13の圧縮側電子制御バルブ23および伸長側電子制御バルブ24、および、リヤサスペンション38の圧縮側電子制御バルブ48および伸長側電子制御バルブ49に対して印加される電流値が演算され、ステップS6に移行する。
【0065】
そして、ステップS12において、エンジン回転数が回転数ER1以上か否かが回転センサ34aの検出値により判断される。そして、ステップS12において、エンジン回転数が回転数ER1以上であると判断された場合には、ステップS5に移行して、高速用コンフォートマップD2を用いて右側フロントフォーク13の圧縮側電子制御バルブ23および伸長側電子制御バルブ24、および、リヤサスペンション38の圧縮側電子制御バルブ48および伸長側電子制御バルブ49に対して印加される電流値が演算される。このとき、制御部25aにより、断線や故障などに起因して車速センサ34bからの情報伝達が正しく行われていないと判断され、図6に示したエンジン回転数/車速相関図とエンジン回転数とに基づいて、6速選択時の車速を算出することにより、印加される電流値が算出される。そして、ステップS6に移行する。また、ステップS12において、エンジン回転数が回転数ER1未満であると判断された場合には、ステップS13に移行する。
【0066】
なお、一連の処理動作が終了した後には、ステップS1に戻り、処理が繰り返される。
【0067】
(本実施形態の第2応用例)
図10は、本発明の一実施形態における自動二輪車の構成を説明するためのブロック図である。また、図11は、第2応用例に用いるストロークスピードと減衰力との関係に基づく複数の減衰力特性マップ(ストロークスピード/減衰力マップ)を示したグラフであり、図12は、図11の減衰力と電流値との関係を示したグラフである。次に、図10〜図12を参照して、上記した本実施形態の構成を、図11に示すストロークスピード/減衰力マップを用いる自動二輪車に適用した例について説明する。
【0068】
本発明の一実施形態の第2応用例では、図10に示すように、ECU125は、制御部125aと、右側フロントフォーク13の圧縮側電子制御バルブ23および伸長側電子制御バルブ24、および、リヤサスペンション38の圧縮側電子制御バルブ48および伸長側電子制御バルブ49のそれぞれのストロークスピード/減衰力マップが記憶されている記憶部125bとを含んでいる。この記憶部125bに記憶されている減衰力特性マップ(ストロークスピード/減衰力マップ)は、サーキットマップA、スポーツマップB、ノーマルマップCおよびコンフォートマップD(それぞれ図11参照)によって構成されている。
【0069】
また、制御部125aは、図12に示すように、ストロークスピードVst(図11参照)の場合で、かつ、コンフォートマップD(図11参照)が選択されている場合には、右側フロントフォーク13の圧縮側電子制御バルブ23および伸長側電子制御バルブ24、および、リヤサスペンション38の圧縮側電子制御バルブ48および伸長側電子制御バルブ49に対して、減衰力FD(図11参照)と対応する電流値I11を印加するように構成されている。また、ストロークスピードがVstの場合で、かつ、ノーマルマップC(図11参照)が選択されている場合には、減衰力FC(図11参照)に対応するとともに、電流値I11よりも大きい電流値I12を印加するように構成されている。
【0070】
ここで、本実施形態の第2応用例では、図11に示したストロークスピード/減衰力マップに基づく減衰力制御を行っている構成の自動二輪車に、上記実施形態の図5に示した車速に基づく減衰力の切替制御を行う構成を適用する場合に、図11のストロークスピードVstにおけるコンフォートマップDおよびノーマルマップCの減衰力FDおよびFC、および、それに対応する図12の電流値I11およびI12に対して、図5に示した車速に基づく減衰力の切替制御を適用する。
【0071】
すなわち、制御部125aは、車速(車速センサ34bの検出値)が速度V1(60km/h)未満である場合には、コンフォートマップD(図11参照)に沿って、ストロークセンサ22および47により検出されるストロークスピードに応じて減衰力特性を制御するように電流値を変化させるように構成されている。また、制御部125aは、車速が速度V1(60km/h)に到達した際に、図11のストロークスピードVstにおけるコンフォートマップDの減衰力FDに対応する電流値I11(図12参照)を印加するように構成されている。そして、制御部125aは、車速が速度V1(60km/h)以上で、かつ、速度V2(80km/h)以下の場合には、電流値を車速に応じて上記式(1)に示す式を用いて連続的に算出するように構成されている。これにより、右側フロントフォーク13およびリヤサスペンション38に対して印加される電流値は、コンフォートマップD(図11参照)のストロークスピードがVstの時の電流値I11(図12参照)からノーマルマップC(図11参照)の電流値I12(図12参照)に向かって連続的に上昇される。また、制御部125aは、車速が速度V2(80km/h)になってノーマルマップCの電流値I12に到達した後に、車速が速度V2(80km/h)を越えた場合には、ノーマルマップC(図11参照)に沿って、ストロークセンサ22および47により検出されるストロークスピードに応じて減衰力特性を制御するように電流値を変化させるように構成されている。
【0072】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0073】
たとえば、上記実施形態では、リヤサスペンションおよびフロントフォークに設けられた電子制御バルブを、それぞれ、伸長側および圧縮側の両方で設けることにより、伸長方向および圧縮方向の両方の減衰力特性を任意の減衰力特性に設定変更可能に構成した例について示したが、本発明はこれに限らず、伸長方向および圧縮方向のいずれか一方の減衰力特性を任意の減衰力特性に設定変更可能に構成してもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、リヤサスペンションおよびフロントフォークの両方に任意の減衰力特性に設定変更可能な電子制御バルブを設けた例について示したが、本発明はこれに限らず、リヤサスペンションおよびフロントフォークのいずれか一方に任意の減衰力特性に設定変更可能な電子制御バルブを設けるようにしてもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、制御部がリヤサスペンションおよびフロントフォークに設けられた電子制御バルブに印加する電流値を算出することによりリヤサスペンションおよびフロントフォークの減衰力を制御する例について示したが、本発明はこれに限らず、電圧値を算出することにより減衰力を制御してもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、制御部を、車速センサにより検出された車速に基づいて低速用減衰力特性から高速用減衰力特性への切替動作を行うとともに、車速センサから正しい車速情報が得られなくなった場合に回転センサにより検出されたエンジン回転数に基づいて低速用減衰力特性から高速用減衰力特性への切替動作を行うように構成する例を示したが、本発明はこれに限らず、制御部を、車速センサを用いずに回転センサのみを用いることにより、エンジン回転数により算出された車速に基づいて、低速用減衰力特性から高速用減衰力特性への切替動作を行うように構成してもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、低速用減衰力特性から高速用減衰力特性への切替動作を行う際に、車速センサにより検出された検出値を車速として用いる例を示したが、本発明はこれに限らず、回転センサにより検出されるエンジン回転数と、ギアセンサにより検出される選択されているギアの情報とに基づいて、図6に示したエンジン回転数/車速相関図により算出された車速を用いてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、低速用減衰力特性から高速用減衰力特性への切替動作を開始する速度V1を60km/hに設定するとともに、低速用減衰力特性から高速用減衰力特性への切替動作を完了する速度V2を80km/hに設定する例を示したが、本発明はこれに限らず、上記設定値以外の設定値を適用してもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、車速が減少する場合の高速用減衰力特性から低速用減衰力特性への切り替える車速を、車速が増加する場合の低速用減衰力特性から高速用減衰力特性へ切り替える車速と同じ速度とする例を説明したが、本発明はこれに限らず、車速が減少する場合の高速用減衰力特性から低速用減衰力特性への切り替える車速を、車速が増加する場合の低速用減衰力特性から高速用減衰力特性へ切り替える車速と異なる速度に設定してもよい。たとえば、図13に示す変形例のように、高速用減衰力特性が選択されている場合に、車速が速度V3まで低下した際に、高速用減衰力特性から低速用減衰力特性への切替動作が開始されるとともに、速度V4までさらに低下した際に、高速用減衰力特性から低速用減衰力特性への切替動作が完了されるように構成し、車速が速度V3以下で、かつ、速度V4以上の場合には、電流値を連続的に変化させるように構成してもよい。なお、速度V3は、本発明の「第3の車速情報検出値」の一例であり、速度V4は、本発明の「第4の車速情報検出値」の一例である。
【符号の説明】
【0080】
1 自動二輪車
2 ヘッドパイプ(車体)
3 メインフレーム(車体)
4 シートレール(車体)
6 前輪(車輪)
7 ハンドル
11 フロントフォーク(懸架装置)
13 右側フロントフォーク(懸架装置)
23、48 圧縮側電子制御バルブ(減衰機構)
24、49 伸長側電子制御バルブ(減衰機構)
25a、125a 制御部
34 エンジン
34a 回転センサ(車速情報検出部、エンジン回転センサ)
34b 車速センサ(車速情報検出部)
34c ギアセンサ(車速情報検出部、変速検出センサ)
37 後輪(車輪)
38 リヤサスペンション(懸架装置)
V1 速度(第1の車速情報検出値、第4の車速情報検出値)
V2 速度(第2の車速情報検出値、第3の車速情報検出値)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪と、
車体と、
前記車輪と前記車体との間に設けられるとともに、前記車輪と前記車体とが相対的に移動するときの伸長方向および圧縮方向の少なくとも一方側の力を減衰させ、かつ、第1減衰力特性と、前記第1減衰力特性よりも減衰力が大きい第2減衰力特性とを切替可能に構成された減衰機構を含む懸架装置と、
前記車体の車速情報を検出する車速情報検出部と、
前記車速情報検出部の検出値に基づいて、前記懸架装置の減衰機構の減衰力特性を電気的に制御するための制御部とを備え、
前記制御部は、少なくとも前記車体の車速が増加している状態の場合に、前記車速情報検出部による検出値が第1の車速情報値になった際に前記第1減衰力特性から前記第2減衰力特性への切替を開始するとともに、前記車速情報検出部による検出値が前記第1の車速情報検出値よりも大きい第2の車速情報検出値に到達する際には前記第1減衰力特性から前記第2減衰力特性への切替動作が完了されるように制御するように構成されている、自動二輪車。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1減衰力特性から前記第2減衰力特性に切り替える際に、前記第1の車速情報検出値と前記第2の車速情報検出値との間の前記車速情報検出部の検出値に応じて、前記第1減衰力特性から前記第2減衰力特性に向かって連続的に減衰力特性を変化させるように構成されている、請求項1に記載の自動二輪車。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1減衰力特性から前記第2減衰力特性に切り替える際に、前記車速情報検出部の検出値に基づいて、前記第1減衰力特性から前記第2減衰力特性へと変化させる途中の減衰力特性を算出するとともに算出された減衰力特性に基づいて減衰力特性を変化させるように構成されている、請求項2に記載の自動二輪車。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1減衰力特性から前記第2減衰力特性へと変化させる途中の減衰力特性を電流値または電圧値として算出するように構成されている、請求項3に記載の自動二輪車。
【請求項5】
前記車速情報検出部は、車速を検出する車速センサを含み、
前記制御部は、前記車速センサにより検出される車速に基づいて、前記第1減衰力特性から前記第2減衰力特性に切り替える制御を行うように構成されている、請求項1に記載の自動二輪車。
【請求項6】
エンジンをさらに備え、
前記車速情報検出部は、前記エンジンの回転速度を検出するエンジン回転速度センサをさらに含み、
前記制御部は、前記車速センサによる車速データが伝達されなくなった場合には、少なくとも前記エンジン回転速度センサの検出値に基づいて、前記第1減衰力特性から前記第2減衰力特性に切り替える制御を行うように構成されている、請求項5に記載の自動二輪車。
【請求項7】
エンジンをさらに備え、
前記車速情報検出部は、前記エンジンの回転速度を検出するエンジン回転速度センサを含み、
前記制御部は、少なくとも前記エンジン回転速度センサの検出値に基づいて、前記第1減衰力特性から前記第2減衰力特性に切り替える制御を行うように構成されている、請求項1に記載の自動二輪車。
【請求項8】
前記エンジンは、複数段階の変速を行う変速部を含み、
前記車速情報検出部は、前記変速部の変速状態を検出する変速検出センサをさらに含み、
前記制御部は、前記エンジン回転速度センサの検出値と前記変速検出センサの検出結果とに基づいて車速を算出するとともに、算出された車速に基づいて、前記第1減衰力特性から前記第2減衰力特性に切り替える制御を行うように構成されている、請求項6または7に記載の自動二輪車。
【請求項9】
前記制御部は、前記車体の車速が減少している状態の場合に、前記車速情報検出部による検出値が第3の車速情報値になった際に前記第2減衰力特性から前記第1減衰力特性への切替を開始するとともに、前記車速情報検出部による検出値が前記第3の車速情報検出値よりも小さい第4の車速情報検出値に到達する際には前記第2減衰力特性から前記第1減衰力特性への切替動作が完了されるように制御するように構成されている、請求項1に記載の自動二輪車。
【請求項10】
前記第3の車速情報値は、前記第2の車速情報値と同じであり、前記第4の車速情報値は、前記第1の車速情報値と同じである、請求項9に記載の自動二輪車。
【請求項11】
前記懸架装置は、フロントフォークと、リヤサスペンションとをさらに含み、
前記制御部は、前記フロントフォークと前記リヤサスペンションとの少なくとも一方における減衰力特性の設定を変更可能に構成されている、請求項1に記載の自動二輪車。
【請求項12】
第1減衰力特性と、前記第1減衰力特性よりも減衰力が大きい第2減衰力特性とを切替可能に構成された減衰機構と、
車体の車速情報を検出する車速情報検出部の検出値に基づいて、前記減衰機構の減衰力特性を電気的に制御するための制御部とを備え、
前記制御部は、少なくとも前記車体の車速が増加している状態の場合に、前記車速情報検出部による検出値が第1の車速情報値になった際に前記第1減衰力特性から前記第2減衰力特性への切替を開始するとともに、前記車速情報検出部による検出値が前記第1の車速情報検出値よりも大きい第2の車速情報検出値に到達する際には前記第1減衰力特性から前記第2減衰力特性への切替動作が完了されるように制御するように構成されている、自動二輪車用懸架装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−167907(P2010−167907A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12202(P2009−12202)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】