説明

自動二輪車の姿勢制御装置及び姿勢制御方法

【課題】部品点数を多くすることなく後輪の浮き上がりを戻すことができる自動二輪車の姿勢制御装置及び姿勢制御方法を提供する。
【解決手段】ブレーキ作動時に後輪WRが走行面より浮いた状態か否かを検出し(ステップS2)、後輪WRが浮いた状態であると検出されると(ステップS2:YES)、後輪WRの回転を上昇させてその反作用により車体後部を下げて後輪WRを接地させる制御を行うようにした(ステップS3)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ作動時の後輪の浮き上がりを戻す自動二輪車の姿勢制御装置及び姿勢制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車は、急ブレーキを掛けた場合に後輪が浮くホッピング現象が発生することがある。このホッピング現象を防止するために、エンジンブレーキを低減させる弁機構を設け、自動二輪車の走行状態に応じてホッピング現象が発生しない範囲でエンジンブレーキを発生させる構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−159594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の構成は、専用の弁機構が必要であり、部品点数が多くなり、コストが高くなってしまう。
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、部品点数を多くすることなく後輪の浮き上がりを戻すことができる自動二輪車の姿勢制御装置及び姿勢制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明は、前輪(WF)と、後輪(WR)と、後輪(WR)を駆動するエンジン(11)と、エンジン(11)を制御するエンジン制御部(51)とを備える自動二輪車の姿勢制御装置において、ブレーキ作動時に前記後輪(WR)が走行面より浮いた状態か否かを検出する浮き上がり検出部(64)を有し、前記エンジン制御部(51)は、前記後輪(WR)が浮いた状態であると検出されると、前記後輪(WR)の回転を上昇させてその反作用により車体後部を下げて前記後輪(WR)を接地させることを特徴とする。
この構成によれば、浮き上がり検出部によって、ブレーキ作動時に後輪が走行面より浮いた状態か否かを検出し、後輪が浮いた状態であると検出されると、エンジン制御部によって、後輪の回転を上昇させてその反作用により車体後部を下げて後輪を接地させるので、専用の部品を使用することなく、エンジン制御によって後輪の浮き上がりを戻すことができる。従って、部品点数を多くすることなく低コストで後輪の浮き上がりを戻すことができる。
【0006】
上記構成において、前記エンジン制御部(51)は、前記後輪(WR)の回転を上昇させる制御として、少なくともエンジン(11)への燃料噴射量、燃料噴射タイミング、点火タイミング、吸気量、変速機構(17)の変速比のいずれか一つを調整するようにしてもよい。この構成によれば、後輪の浮き上がりを簡易な制御で戻すことができる。
また、上記構成において、前記浮き上がり検出部(64)は、車体の前後方向の傾斜角を検出する傾斜センサー(71)を有し、車体が前下がりに所定角度以上傾斜した際に、前記後輪(WR)が浮いた状態であると判定するようにしてもよい。この構成によれば、自動二輪車が具備する傾斜センサーを用いて後輪の浮き上がりを検出することができる。
【0007】
また、上記構成において、前記浮き上がり検出部(64)は、車体の加速度を検出する加速度センサー(72)を有し、車体の減速による加速度が所定値以上に大きくなった際に、前記後輪(WR)が浮いた状態であると判定するようにしてもよい。この構成によれば、自動二輪車が具備する加速度センサーを用いて後輪の浮き上がりを検出することができる。
また、上記構成において、前記前輪(WF)を制動する前輪ブレーキ装置(21)が作動し、前記後輪を制動する後輪ブレーキ装置(23)が作動していない場合、前記浮き上がり検出部(64)は、前記後輪(WR)の車輪速が前記前輪(WF)の車輪速を超えた際に、前記後輪(WR)が浮いた状態であると判定するようにしてもよい。この構成によれば、前輪ブレーキのみ作動した場合の後輪が浮いた状態を精度良く検出できる。
【0008】
また、上記構成において、前記前輪(WF)を制動する前輪ブレーキ装置(21)と、前記後輪を制動する後輪ブレーキ装置(23)との両方が作動した場合、前記浮き上がり検出部(64)は、前記後輪(WR)の車輪速が前記前輪(WF)の車輪速を下回った際に、前記後輪(WR)が浮いた状態であると判定するようにしてもよい。この構成によれば、前後輪ブレーキが作動した場合の後輪が浮いた状態を精度良く検出できる。
また、上記構成において、前記エンジン制御部(51)は、前記後輪(WR)が浮いた状態であると検出されると、車速と車体の減速度とに基づいて、前記後輪(WR)を接地させるための前記後輪(WR)の回転量を算出するようにしてもよい。この構成によれば、後輪がどの程度、浮いているかは、車速及び車体の減速度の各々に比例しており、車体と車体の減速度とを取得すれば、これに基づいて、接地させるための後輪の回転量を適切に算出することが可能になる。
【0009】
また、上記構成において、前記前輪(WF)の車輪速と前記後輪(WR)の車輪速とに差がなく、スロットル開度が零で、かつ、前記前輪(WF)を制動する前輪ブレーキ装置(21)が作動している場合に、姿勢制御開始のスタンバイ状態に移行し、このスタンバイ状態に移行した後に、前記後輪(WR)が浮いた状態であると検出されると、前記後輪(WR)の回転を上昇させて前記後輪(WR)を接地させるようにしてもよい。この構成によれば、減速区間の直前でスタンバイ状態に移行でき、減速区間以外で浮き上がり検出処理等を行うことがなく、処理負担を軽減することができる。
また、上記構成において、前記後輪(WR)の回転を上昇させる制御を開始してから所定時間経過すると、前記後輪(WR)の回転を減速させるようにしてもよい。この構成によれば、所定時間を後輪制御によって確実に車体後部が下がり始めたと判断できる時間に設定しておくことで、車体後部が下がり始めたタイミングで減速開始でき、過度に後輪の回転を上昇させる事態を回避することができる。
【0010】
また、上記構成において、前記後輪(WR)の回転を上昇させる制御を開始した後、前記ブレーキ作動が終了すると、前記後輪(WR)の回転を減速させるようにしてもよい。この構成によれば、ブレーキ終了により車体後部が確実に下がり始めたタイミングで減速開始でき、過度に後輪の回転を上昇させる事態を回避することができる。
また、上記構成において、前記後輪(WR)の回転を減速している際、前記前輪(WF)と前記後輪(WR)の回転数が同じになると、前記後輪(WR)の減速を止めるようにしてもよい。この構成によれば、後輪を過度に減速させてしまう事態を回避できる。
【0011】
また、上記構成において、前記後輪(WR)の回転を減速している際、車体の後部の下がりを検出すると、前記後輪(WR)の減速を止めるようにしてもよい。この構成によれば、この構成によれば、後輪を過度に減速させてしまう事態を回避できる。
【0012】
また、本発明は、前輪(WF)と、後輪(WR)と、後輪(WR)を駆動するエンジン(11)と、エンジン(11)を制御するエンジン制御部(51)とを備える自動二輪車の姿勢制御方法において、ブレーキ作動時に前記後輪(WR)が走行面より浮いた状態か否かを検出し、前記後輪(WR)が浮いた状態であると検出されると、前記エンジン制御部(51)によって、前記後輪(WR)の回転を上昇させてその反作用により車体後部を下げて前記後輪(WR)を接地させることを特徴とする。
この構成によれば、ブレーキ作動時に後輪が走行面より浮いた状態か否かを検出し、前記後輪が浮いた状態であると検出されると、エンジン制御部によって、前記後輪の回転を上昇させてその反作用により車体後部を下げて前記後輪を接地させるので、専用の部品を使用することなく、エンジン制御によって後輪の浮き上がりを戻すことができる。従って、部品点数を多くすることなく低コストで後輪の浮き上がりを戻すことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、浮き上がり検出部によって、ブレーキ作動時に後輪が走行面より浮いた状態か否かを検出し、後輪が浮いた状態であると検出されると、エンジン制御部によって、後輪の回転を上昇させてその反作用により車体後部を下げて後輪を接地させるので、専用の部品を使用することなく、エンジン制御によって後輪の浮き上がりを戻すことができる。従って、部品点数を多くすることなく低コストで後輪の浮き上がりを戻すことができる。
また、前輪を制動する前輪ブレーキ装置と、後輪を制動する後輪ブレーキ装置との両方が作動した場合、後輪の車輪速が前輪の車輪速を下回った際に、後輪が浮いた状態であると判定するようにすれば、前後輪ブレーキが作動した場合の後輪が浮いた状態を精度良く検出できる。
また、前記後輪が浮いた状態であると検出されると、車速と車体の減速度とに基づいて、後輪を接地させるための後輪の回転量を算出するようにすれば、車体と車体の減速度とにより後輪がどの程度、浮いているかを把握でき、接地させるための後輪の回転量を適切に算出することが可能になる。
【0014】
また、前輪の車輪速と後輪の車輪速とに差がなく、スロットル開度が零で、かつ、前輪を制動する前輪ブレーキ装置が作動している場合に、姿勢制御開始のスタンバイ状態に移行し、このスタンバイ状態に移行した後に、後輪が浮いた状態であると検出されると、後輪の回転を上昇させて後輪を接地させるようにすれば、減速区間の直前でスタンバイ状態に移行でき、減速区間以外で浮き上がり検出処理等を行うことがなく、処理負担を軽減することができる。
また、後輪の回転を上昇させる制御を開始してから所定時間経過すると、後輪の回転を減速させるようにすれば、所定時間を車体後部が下がり始めたと判断できる時間に設定しておくことで、車体後部が下がり始めたタイミングで減速開始でき、過度に後輪の回転を上昇させる事態を回避することができる。
【0015】
また、後輪の回転を上昇させる制御を開始した後、ブレーキ作動が終了すると、後輪の回転を減速させるようにすれば、ブレーキ終了により車体後部が確実に下がり始めたタイミングで減速開始でき、過度に後輪の回転を上昇させる事態を回避することができる。
また、後輪の回転を減速している際、前輪と後輪の回転数が同じになると、後輪の減速を止めるようにすれば、後輪を過度に減速させてしまう事態を回避できる。
また、後輪の回転を減速している際、車体の後部の下がりを検出すると、後輪の減速を止めるようにすれば、後輪を過度に減速させてしまう事態を回避できる。
【0016】
また、ブレーキ作動時に後輪が走行面より浮いた状態か否かを検出し、後輪が浮いた状態であると検出されると、エンジン制御部によって、後輪の回転を上昇させてその反作用により車体後部を下げて後輪を接地させるので、専用の部品を使用することなく、エンジン制御によって後輪の浮き上がりを戻すことができる。従って、部品点数を多くすることなく低コストで後輪の浮き上がりを戻すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】発明の第1実施形態に係る自動二輪車の左側面図である。
【図2】自動二輪車の車両制御装置を周辺構成と共に示す図である。
【図3】後輪浮き上がり抑制制御を示すフローチャートである。
【図4】浮き上がり検出処理を示すフローチャートである。
【図5】後輪の回転を上昇させる制御を示すフローチャートである。
【図6】前輪ブレーキ装置のみで減速する場合の一例を示す特性曲線図である。
【図7】前輪ブレーキ装置及び後輪ブレーキ装置の両方で減速する場合の一例を示す特性曲線図である。
【図8】第2実施形態に係る自動二輪車の車両制御装置を周辺構成と共に示す図である。
【図9】後輪の回転を上昇させる制御を示すフローチャートである。
【図10】第3実施形態に係る自動二輪車の車両制御装置を周辺構成と共に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、説明中、前後左右及び上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車体に対する方向と同一とする。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る自動二輪車1の左側面図である。
この自動二輪車1は、サーキットを走行するレーサー型車両(競技車両とも言う)であり、車体フレーム2と、車体フレーム2の前部に操舵自在に支持される左右一対のフロントフォーク(フロントクッション)3と、これらフロントフォーク3の上端部に取り付けられて車体前部の上部に位置する操舵用のハンドル4と、フロントフォーク3下部に回転自在に支持された前輪WFと、車体フレーム2の後下部にピボット軸5を介して上下に揺動自在に支持されるスイングアーム6と、スイングアーム6の後端に支持される後輪WRと、スイングアーム6と車体フレーム2との間に設けられるリヤクッション7とを備えている。
車体フレーム2は、ヘッドパイプ2Aと、ヘッドパイプ2Aから後下方に延びる左右一対のメインフレーム2Bとを有し、メインフレーム2Bは、駆動源となるエンジン(内燃機関)11や燃料タンク12等を支持する。エンジン11はメインフレーム2Bの下方かつ前輪WFと後輪WRとの間に配置され、このエンジン11の上方に燃料タンク12が配置され、この燃料タンク12の後方に乗員用シート13が配置される。なお、図中、符号14は、乗員(運転者)が足を載せるメインステップである。
【0019】
フロントフォーク3は、前輪WFを上下方向に移動させるように伸縮可能なテレスコピック式のフォークであり、前輪WF側には、前輪WFを制動させる前輪ブレーキ装置21が配置される。この前輪ブレーキ装置21は、ディスクブレーキ式の制動装置であり、前輪WFと一体に回転するブレーキディスク21Aと、ブレーキディスク21Aを制動するブレーキキャリパ21Bとを備え、乗員が操作する前輪ブレーキ操作子(ブレーキレバー)の操作に応じて前輪WFを制動させる。
また、後輪WR側には、後輪WRを制動させる後輪ブレーキ装置23が配置される。この後輪ブレーキ装置23は、ディスクブレーキ式の制動装置であり、後輪WRと一体に回転するブレーキディスク23Aと、ブレーキディスク23Aを制動するブレーキキャリパ23Bとを備え、乗員が操作する後輪ブレーキ操作子(ブレーキペダル)の操作に応じて後輪WRを制動させる。
【0020】
図2は、この自動二輪車1に搭載される車両制御装置50を周辺構成と共に示す図である。
車両制御装置50は、CPU、ROM、RAM等からなるコンピューター及び各種電子部品で構成される電装ユニットであり、自動二輪車1の各部を制御する。
この車両制御装置50のエンジン制御部51には、エンジン11に送る吸気量を制御するスロットル弁(本構成では、モーター等で駆動される電子スロットル弁)52と、エンジン11に燃料を送るインジェクタ53と、エンジン11に送られた空気と燃料の混合気に点火する点火装置54と、エンジン回転数を検出するエンジン回転数センサー55と、乗員が操作するスロットルの開度(スロットル開度)を検出するスロットル開度センサー56とが配線接続されており、乗員のスロットル操作に従ったエンジン出力を得るように、予め記憶されたエンジン制御プログラムに従ってスロットル弁52、インジェクタ53及び点火装置54が制御される。
なお、このエンジン制御を含む構成は、従来の自動二輪車が具備する構成であり、公知の構成を広く適用することができる。
【0021】
また、この自動二輪車1は、従動輪である前輪WFの車輪速を検出する前輪速センサー61と、駆動輪である後輪WRの車輪速を検出する後輪速センサー62とを備えており、車輪速検出部63によって前後輪の車輪速や車輪速の差を取得できるように構成されている。
また、この自動二輪車1は、乗員のブレーキ操作(前輪ブレーキ操作子及び後輪ブレーキ操作子の操作)を検出するブレーキ操作検出部57を備えている。
ここで、これら車輪速センサー61,62、車輪速検出部63及びブレーキ操作検出部57は、前輪WFと後輪WRのロックを防止する公知のABSブレーキシステム又は後輪WRを過剰に駆動するのを防止する公知のエンジン出力調整システム等に使用される構成である。すなわち、この自動二輪車1の上記構成は、従来の自動二輪車が備える構成となっている。
【0022】
ところで、この種の自動二輪車ではハードブレーキ時に後輪WRが走行面GD(図1参照)から浮いた状態になることがある。例えば、前輪ブレーキ装置21だけで減速した場合には、車体及び乗員の慣性力によってフロントフォーク3に縮む方向の力(図1中、F1)が作用し、後輪WRが走行面GDから浮き上がることがある。また、前輪ブレーキ装置21と後輪ブレーキ装置23の両方を併用して減速した場合にも、車体及び乗員の慣性力が特に大きい場合には後輪WRが走行面GDから浮き上がることがある。
そこで、この自動二輪車1では、ブレーキ作動時に後輪WRが浮いた状態か否かを検出する浮き上がり検出処理を行い、後輪WRが浮いた状態であると検出されると、後輪WRの回転を上昇させ、その反作用の力(図1中、符号F2で示す)により車体後部を下げて後輪WRを接地させるエンジン制御を行うようにしている。
【0023】
図3は、この制御(後輪浮き上がり抑制制御)を示すフローチャートである。なお、この制御は、所定の割り込み周期で繰り返し実行される制御である。
車両制御装置50において、エンジン制御部51は、前輪ブレーキ装置21が作動して車体が減速状態に入ったか否かを判定するために、前輪ブレーキ装置21がON(作動中)で、かつ、スロットル開度が零で、前輪WFの車輪速と後輪WRの車輪速の差がない、という条件を満たすか否かを判定する(ステップS1)。
エンジン制御部51は、この条件を満たさない場合(ステップS1:NO)、当該制御を一端終了する一方、この条件を満たす場合(ステップS1:YES)、後輪WRの回転制御に備えるべく制御オフの状態から制御スタンバイの状態へと移行し、まず、後輪WRが走行面GDから浮いた状態を状態か否かを検出する処理(浮き上がり検出処理)を開始する(ステップS2)。
ここで、図2には、浮き上がり検出処理を行う浮き上がり検出部64を示している。この浮き上がり検出部64は、ブレーキ操作検出部57及び車輪速検出部63の検出結果に基づいて後輪WRの浮き上がりを検出するものであり、実際には、車両制御装置50のCPUが所定のプログラムを実行することによって後輪WRの浮き上がりを検出する。
【0024】
後輪WRが浮いた状態を検出すると(ステップS2:YES)、エンジン制御部51は、後輪WRの回転を上昇させる制御を行い(ステップS3)、ブレーキがOFF(作動停止)になるまで、つまり、減速が終了するまで(ステップS4:YES)、ステップS2,S3の処理を繰り返し実行する。このため、後輪WRが浮く毎に後輪WRの回転を上昇させる制御が行われる。その後、前後輪両方のブレーキがOFFされると、エンジン制御部51は、当該制御を一旦終了し、所定の割り込み周期でステップS1から再実行する。
【0025】
図4は、ステップS2の内容(浮き上がり検出処理)を示すフローチャートである。
この図に示すように、浮き上がり検出部64は、まず、前輪ブレーキ装置21がONで、かつ、後輪ブレーキ装置23がOFFか否か、つまり、前輪ブレーキのみで減速しているか否かを判定する(ステップS1A)。そして、この判定で肯定結果が得られた場合(ステップS1A:YES)、浮き上がり検出部64は、後輪WRの車輪速が前輪WFの車輪速を超えた際に(後輪速>前輪速)、後輪WRが浮いた状態と判定する(ステップS2A)。
つまり、前輪ブレーキのみで減速している場合、後輪WRが浮き上がった状態では後輪WRが空回りするので、後輪速が前輪速よりも大になる。本構成では、これを検出することによって、後輪WRが浮き上がった状態を確実に検出することができる。
【0026】
一方、ステップS11の判定で否定結果が得られた場合(ステップS1A:NO)、浮き上がり検出部64は、以下の処理を行う。この場合は、ステップS1で前輪ブレーキ装置21がONの状態と既に判定されているので、前輪ブレーキ装置21と後輪ブレーキ装置23の両方を併用して減速していると判断できる。
この場合には、浮き上がり検出部64は、後輪WRの車輪速が前輪WFの車輪速を下回った際に(後輪速>前輪速)、後輪WRが浮いた状態と判定する(ステップS3A)。
つまり、前後輪両方のブレーキで減速している場合、後輪WRが浮き上がった状態では後輪WRの慣性力が前輪WFの慣性力よりも格段に小さいため、後輪速は短時間でほぼ零に制動され、前輪速よりも小になる。本構成では、これを検出することによって、両ブレーキで減速している場合にも後輪WRが浮き上がった状態を確実に検出することができる。
【0027】
図5は、ステップS3の内容(後輪WRの回転を上昇させる制御)を示すフローチャートである。
この図に示すように、エンジン制御部51は、後輪WRの回転を上昇させるべく、インジェクタ53による燃料噴射量、燃料噴射タイミング、点火装置54の点火タイミング、スロットル弁開度の少なくともいずれかの調整を開始する(ステップS1B)。例えば、エンジン制御部51は、燃料噴射量を、通常のエンジン制御の場合に比して増やしてエンジン回転を増速させる制御、燃料噴射タイミングを、通常のエンジン制御の場合に比してエンジン回転を増速させる制御、点火タイミングを早めて(進角させて)エンジン回転を増速させる制御、スロットル弁開度を増やしてエンジン回転を増速させる制御を行う。
このようにして後輪WRの回転が上昇制御されると、その反作用により車体後部を下げる力F2(図1参照)が生じるので、後輪WR2を下げることができる。
【0028】
続いて、エンジン制御部51は、ステップS1Bの姿勢制御開始から所定時間が経過したか、ブレーキの入力が終了したか(両ブレーキ装置21,23がOFFか)の2条件のいずれかの条件を満たしたか否かを判定する(ステップS2B)。
ここで、上記所定時間は、ステップS1Bの姿勢制御開始から後輪制御によって確実に車体後部が下がり始めたと判断できる時間に設定される。このため、この所定時間が経過していれば、車体後部が下がり始めたと判断できる。また、ブレーキの入力が終了していれば、車体が減速しないので車体後部が下がり始めたと判断できる。
【0029】
このステップS2Bの判定で肯定結果が得られると、エンジン制御部51は、後輪WRを減速させるべく、燃料噴射量、燃料噴射タイミング、点火タイミング、スロットル弁開度の少なくともいずれかの調整を開始する(ステップS3B)。例えば、エンジン制御部51は、燃料噴射量を減らしてエンジン回転を減速させる制御(噴射量を零にする制御も含む)、燃料噴射タイミングを遅らせてエンジン回転を減速させる制御、点火タイミングを遅らせて(遅進角させて)、或いは、点火を中断してエンジン回転を減速させる制御、スロットル弁開度を減らして、或いは、スロットル弁を閉じてエンジン回転を減速させる制御を行う。
このようにして後輪WRを確実に減速させた後、エンジン制御部51は、後輪WRの車輪速と前輪WFの車輪速が同じになったらステップS3Bの制御を終了する(ステップS4B)。これにより、後輪WRを過度に減速させてしまう事態を回避できる。この場合、後輪WRを前輪WFと同速にして接地させることができ、車体を安定した状態で後輪WRを接地させることができ、後輪WRの無駄な摩耗を抑えることができる等の効果が得られる。
【0030】
次に、この自動二輪車1のブレーキ作動時の動作を説明する。図6は、前輪ブレーキ装置21のみで減速する場合の一例を示す特性曲線図であり、図7は、前輪ブレーキ装置21及び後輪ブレーキ装置23の両方で減速する場合の一例を示す特性曲線図である。これら図において、符号Rrは、後輪WRの車輪速を示し、符号Frは、前輪WFの車輪速を示している。また、図6,図7中、横軸は時間(time)を示し、縦軸は車速(V)を示している。以下、説明を判りやすくするため、後輪WRの車輪速を後輪速Rr、前輪WFの車輪速を前輪速Frと適宜に表記する。
【0031】
図6及び図7に示すように、自動二輪車1の加速区間AR1では、後輪速Rr及び前輪速Frが同速で増速し、後輪速Rr及び前輪速Frが同速で一定となる一定区間AR2の後に、前輪ブレーキ装置21が作動するため、後輪速Rr及び前輪速Frが減速する減速区間AR3ができる。
本構成では、前輪ブレーキ装置21がON(作動中)で、かつ、スロットル開度が零で、前輪WFの車輪速と後輪WRの車輪速の差がない、という条件を満たすまでは、浮き上がり検出処理を行わないので(上記ステップS1,S2参照)、上記条件を満たすタイミング(図6,図7中、一定区間AR2内のタイミングTM)になるまで、無駄に浮き上がり検出処理を行うことがなく、車両制御装置50の処理負担を軽減できる。
【0032】
図6及び図7では、各減速区間AR3において、時間T1,T2で後輪WRの浮き上がりが生じた場合を示している。
図6に示すように、前輪ブレーキ装置21のみで減速する減速区間AR3では、後輪WRが浮き上がると、後輪速Rrが前輪速Frを上回るが、本構成では、後輪速Rrが前輪速Frを上回ると、後輪WRの回転を上昇させる制御を行うので(図3、図4参照)、直ちに後輪WRを下げて接地させることができる。
従って、図6に示すように、ハードブレーキを行って後輪WRが複数回にわたって浮き上がったとしても、その都度、後輪WRを直ちに接地させることができる。
【0033】
また、図7に示すように、前後輪ブレーキ装置21,23の両方で減速する減速区間AR3では、後輪WRが浮き上がると、後輪速Rrが前輪速Frを下回るが、本構成では、両ブレーキ作動時は、後輪速Rrが前輪速Frを下回ると、後輪WRの回転を上昇させる制御を行うので(図3、図4参照)、直ちに後輪WRを下げて接地させることができる。従って、両ブレーキ作動時においても、ハードブレーキを行って後輪WRが複数回にわたって浮き上がったとしても、その都度、後輪WRを直ちに接地させることができる。
【0034】
以上説明したように、本実施の形態によれば、ブレーキ作動時に後輪WRが走行面GDより浮いた状態か否かを検出する浮き上がり検出部64を有し、エンジン制御部51は、後輪WRが浮いた状態であると検出されると、後輪WRの回転を上昇させてその反作用により車体後部を下げて後輪WRを接地させるので、専用の部品を使用することなく、エンジン制御によって後輪WRの浮き上がりを戻すことができる。このため、車両制御装置50を、後輪WRの浮き上がりを戻す姿勢制御装置として機能させることができ、部品点数を多くすることなく低コストで後輪WRの浮き上がりを戻すことができる。
【0035】
また、エンジン制御部51は、後輪WRの回転を上昇させる制御として、少なくともエンジン11への燃料噴射量、燃料噴射タイミング、点火タイミング、吸気量のいずれか一つを調整するので、後輪WRの浮き上がりを簡易な制御で戻すことができる。
また、前輪ブレーキ装置21が作動し、後輪WRを制動する後輪ブレーキ装置23が作動していない場合、浮き上がり検出部64は、後輪速Rrが前輪速Frを超えた際に、後輪WRが浮いた状態であると判定するので、前輪ブレーキのみ作動した場合の後輪WRが浮いた状態を精度良く検出できる。
また、前輪ブレーキ装置21と後輪ブレーキ装置23との両方が作動した場合、浮き上がり検出部64は、後輪速Rrが前輪速Frを下回った際に、後輪WRが浮いた状態であると判定するので、前後輪ブレーキが作動した場合の後輪WRが浮いた状態を精度良く検出できる。
【0036】
また、本構成では、後輪速Rrが前輪速Frとに差がなく、スロットル開度が零で、かつ、前輪ブレーキ装置21が作動している場合に、姿勢制御開始のスタンバイ状態に移行するので、減速区間ARの直前でスタンバイ状態に移行できる。このため、減速区間AR3以外で浮き上がり検出処理等を行うことがなく、処理負担を軽減することができる。
また、本構成では、後輪WRの回転を上昇させる制御を開始してから所定時間経過すると、或いは、ブレーキ作動が終了すると、後輪WRの回転を減速させるので、車体後部(後輪WRを含む)が確実に下がり始めたタイミングで減速開始でき、過度に後輪WRの回転を上昇させる事態を回避することができる。
この場合、前輪WFと後輪WRの回転数が同じになると、後輪WRの減速を止めるので、後輪WRを過度に減速させてしまう事態を回避できる。
【0037】
<第2実施形態>
図8は、第2実施形態に係る自動二輪車1の車両制御装置50を周辺構成と共に示す図であり、図9は、後輪WRの回転を上昇させる制御を示すフローチャートである。
図8に示すように、この車両制御装置50には、車体の前後方向の傾斜角を検出する傾斜センサー71と、車体の加速度を検出する加速度センサー72とが配線接続されている。
この車両制御装置50では、エンジン制御部51が、傾斜センサー71により検出された傾斜角が、車体が前下がりに傾斜した最低基準角度θ1以上に傾斜した際、或いは、加速度センサー72により検出された加速度が、減速による加速度が最低基準加速度A1以上に大きくなった際に、後輪WRが浮いたと判定する。
【0038】
つまり、最低基準角度θ1は、後輪WRが浮いたと判定可能な最低傾斜角であって、後輪WRが浮いていない通常走行範囲の傾斜角を超えた角度に設定される。また、最低基準加速度A1は、後輪WRが浮く可能性が高いハードブレーキのときの最低加速度に設定される。このようにして、後輪WRが浮いた状態を検出することができる。
この種の傾斜センサー71や加速度センサー72は、車体の走行状態を検出するために自動二輪車1が備える場合があり、本構成では、その場合のセンサー71,72を用いている。従って、本実施形態においても、車両制御装置50を、後輪WRの浮き上がりを戻す姿勢制御装置として機能させることができ、部品点数を多くすることなく低コストで後輪WRの浮き上がりを戻すことができる等の効果を奏する。
【0039】
また、本構成では、図9に示すように、後輪WRの回転を上昇させる制御として、後輪WRの回転上昇の制御(ステップS1B)を行った後に、傾斜センサー71の検出角度に基づいて傾斜の戻りを検出したか否かを判定し(ステップS2D)、傾斜の戻りを検出したら、後輪WRを減速させる。これによって、傾斜センサー71を利用して車体後部が下がり始めたことを検出でき、減速タイミングを適切に検出でき、後輪WRを過度に減速させてしまう事態を回避できる。
このように、本構成では、第1実施形態の前輪速センサー61や後輪速センサー62を使用することなく、車両制御装置50を、後輪WRの浮き上がりを戻す姿勢制御装置として機能させることができる。従って、前輪速センサー61や後輪速センサー62を備えない自動二輪車1に対し、部品点数を多くすることなく低コストで後輪WRの浮き上がりを戻すことが可能である。
なお、本実施形態では、傾斜センサー71と加速度センサー72の両方を使用する場合を説明したが、これに限らず、いずれか一方のセンサーだけを使用してもよい。
【0040】
<第3実施形態>
図10は、第3実施形態に係る自動二輪車1の車両制御装置50を周辺構成と共に示す図である。
この自動二輪車1では、エンジン11と後輪WRとの間に設けられる変速機構17が、クラッチ操作と変速操作をコンピューター制御により行う自動マニュアル変速機(Automated Manual Transmission:以下、AMTという)に構成されている。
このAMT17は、エンジン制御部51の下、クラッチ制御部75によりAMT17が具備するクラッチの断続が制御され、シフト制御部76によりAMT17の変速比が例えば、1速〜6速の間で切り換えられる。また、AMT17の現在の変速比は、ギヤポジションセンサー77を介してエンジン制御部51に通知される。
【0041】
本構成では、後輪WRの回転を上昇させる制御(図5に示すステップS1Bに対応)として、現在の変速比から高い変速比(例えば、2速であれば3速へ、といったように、一段高い変速比)へ切り換える変速制御を行う、つまり、高い変速比に切り換えれば、同じエンジン回転数でも後輪WRの回転を迅速に上昇させることができ、車体後部を下げる大きい反作用力F2(図1参照)を得ることができ、後輪WRを迅速に接地させることが可能になる。
また、高い変速比に切り換えた後に後輪WRを減速させる処理(図5に示すステップS3Bに対応)では、切り換え前の変速比に戻すことにより、後輪WRの回転を迅速に減速させることができる。
【0042】
このように、AMT17を備える場合、このAMT17を用いて後輪WRの回転を変化させ、後輪WRの浮き上がりを戻すことができる。従って、このAMT17を制御する車両制御装置50を、後輪WRの浮き上がりを戻す姿勢制御装置として機能させることができ、部品点数を多くすることなく低コストで後輪WRの浮き上がりを戻すことが可能である。
なお、このAMT17の制御に加え、燃料噴射量、燃料噴射タイミング、点火装置54の点火タイミング、スロットル弁開度の少なくともいずれかの調整を行うようにしてもよい。
【0043】
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。
例えば、上記実施形態において、後輪WRが浮いた状態であると検出されると、エンジン制御部51が、その時点の車速と車体の減速度とを取得し、これらに基づいて、後輪WRを接地させるための後輪WRの目標回転量(目標回転数)を算出し、この目標回転量となるように後輪WRの回転を上昇させるようにしてもよい。ここで、車速は、自動二輪車1のエンジン回転数、変速機構17の変速比、車輪速等から算出してもよいし、予め設けた車速センサーから取得してもよい。また、車体の減速度は、エンジン回転数、車速又は車輪速等の変化から算出してもよいし、予め設けた加速度センサーから取得してもよい。
【0044】
後輪WRがどの程度、浮いているかは、車速及び車体の減速度の各々に比例しており、車体と車体の減速度とを取得すれば、後輪WRがどの程度浮いた状態かを推定することができる。この推定ができれば、上記目標回転量を適切に算出することが可能になる。具体的には、例えば、様々な車速及び車体の減速度に対する上記目標回転量をデータ化しておき、このデータに基づいて上記目標回転量を設定すればよい。なお、目標回転量は、燃料噴射量、燃料噴射タイミング、点火タイミング、吸気量、変速機構17の変速比の調整量として設定してもよい。
また、上記実施形態では、図1に示す自動二輪車1の姿勢制御装置に本発明を適用する場合を説明したが、これに限らず、前輪と後輪を有する様々な車両の姿勢制御装置に適用してもよく、例えば、原動機付き自転車も含む鞍乗り型車両の姿勢制御装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 自動二輪車
11 エンジン(内燃機関)
17 変速機構
21 前輪ブレーキ装置
23 後輪ブレーキ装置
50 車両制御装置
51 エンジン制御部
52 スロットル弁
53 インジェクタ
54 点火装置
61 前輪速センサー
62 後輪速センサー
63 車輪速検出部
64 浮き上がり検出部
71 傾斜センサー
72 加速度センサー
GD 走行面
WF 前輪
WR 後輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪(WF)と、後輪(WR)と、後輪(WR)を駆動するエンジン(11)と、エンジン(11)を制御するエンジン制御部(51)とを備える自動二輪車の姿勢制御装置において、
ブレーキ作動時に前記後輪(WR)が走行面より浮いた状態か否かを検出する浮き上がり検出部(64)を有し、
前記エンジン制御部(51)は、前記後輪(WR)が浮いた状態であると検出されると、前記後輪(WR)の回転を上昇させてその反作用により車体後部を下げて前記後輪(WR)を接地させることを特徴とする自動二輪車の姿勢制御装置。
【請求項2】
前記エンジン制御部(51)は、前記後輪(WR)の回転を上昇させる制御として、少なくともエンジン(11)への燃料噴射量、燃料噴射タイミング、点火タイミング、吸気量、変速機構(17)の変速比のいずれか一つを調整することを特徴とする請求項1に記載の自動二輪車の姿勢制御装置。
【請求項3】
前記浮き上がり検出部(64)は、車体の前後方向の傾斜角を検出する傾斜センサー(71)を有し、車体が前下がりに所定角度以上傾斜した際に、前記後輪(WR)が浮いた状態であると判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の自動二輪車の姿勢制御装置。
【請求項4】
前記浮き上がり検出部(64)は、車体の加速度を検出する加速度センサー(72)を有し、車体の減速による加速度が所定値以上に大きくなった際に、前記後輪(WR)が浮いた状態であると判定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の自動二輪車の姿勢制御装置。
【請求項5】
前記前輪(WF)を制動する前輪ブレーキ装置(21)が作動し、前記後輪を制動する後輪ブレーキ装置(23)が作動していない場合、前記浮き上がり検出部(64)は、前記後輪(WR)の車輪速が前記前輪(WF)の車輪速を超えた際に、前記後輪(WR)が浮いた状態であると判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の自動二輪車の姿勢制御装置。
【請求項6】
前記前輪(WF)を制動する前輪ブレーキ装置(21)と、前記後輪を制動する後輪ブレーキ装置(23)との両方が作動した場合、前記浮き上がり検出部(64)は、前記後輪(WR)の車輪速が前記前輪(WF)の車輪速を下回った際に、前記後輪(WR)が浮いた状態であると判定することを特徴とする請求項1,2,5のいずれか一項に記載の自動二輪車の姿勢制御装置。
【請求項7】
前記エンジン制御部(51)は、前記後輪(WR)が浮いた状態であると検出されると、車速と車体の減速度とに基づいて、前記後輪(WR)を接地させるための前記後輪(WR)の回転量を算出することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の自動二輪車の姿勢制御装置。
【請求項8】
前記前輪(WF)の車輪速と前記後輪(WR)の車輪速とに差がなく、スロットル開度が零で、かつ、前記前輪(WF)を制動する前輪ブレーキ装置(21)が作動している場合に、姿勢制御開始のスタンバイ状態に移行し、このスタンバイ状態に移行した後に、前記後輪(WR)が浮いた状態であると検出されると、前記後輪(WR)の回転を上昇させて前記後輪(WR)を接地させることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の自動二輪車の姿勢制御装置。
【請求項9】
前記後輪(WR)の回転を上昇させる制御を開始してから所定時間経過すると、前記後輪(WR)の回転を減速させることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の自動二輪車の姿勢制御装置。
【請求項10】
前記後輪(WR)の回転を上昇させる制御を開始した後、前記ブレーキ作動が終了すると、前記後輪(WR)の回転を減速させることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の自動二輪車の姿勢制御装置。
【請求項11】
前記後輪(WR)の回転を減速している際、前記前輪(WF)と前記後輪(WR)の回転数が同じになると、前記後輪(WR)の減速を止めることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の自動二輪車の姿勢制御装置。
【請求項12】
前記後輪(WR)の回転を減速している際、車体の後部の下がりを検出すると、前記後輪(WR)の減速を止めることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の自動二輪車の姿勢制御装置。
【請求項13】
前輪(WF)と、後輪(WR)と、後輪(WR)を駆動するエンジン(11)と、エンジン(11)を制御するエンジン制御部(51)とを備える自動二輪車の姿勢制御方法において、
ブレーキ作動時に前記後輪(WR)が走行面より浮いた状態か否かを検出し、前記後輪(WR)が浮いた状態であると検出されると、前記エンジン制御部(51)によって、前記後輪(WR)の回転を上昇させてその反作用により車体後部を下げて前記後輪(WR)を接地させることを特徴とする自動二輪車の姿勢制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−172595(P2012−172595A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35525(P2011−35525)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】